JP2001107175A - プラズマ切断部の疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法 - Google Patents

プラズマ切断部の疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法

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JP2001107175A
JP2001107175A JP29005399A JP29005399A JP2001107175A JP 2001107175 A JP2001107175 A JP 2001107175A JP 29005399 A JP29005399 A JP 29005399A JP 29005399 A JP29005399 A JP 29005399A JP 2001107175 A JP2001107175 A JP 2001107175A
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Hideo Sakaibori
英男 堺堀
Akihiko Nagayoshi
明彦 永吉
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラズマ切断ままでも繰り返し応力が作用す
る部材として用いることができる鋼材が存在しない。 【解決手段】 C:0.01〜0.2 %、Si:0.1 〜0.6 %、
Mn:0.4 〜1.60%、Cr:0.01〜0.6 %、Mo:0.01〜0.5
%、Nb:0.01〜0.06%および/またはTi:0.005 〜0.03
%を含有する鋼組成を有するとともに、焼入性指数Dl
が18以上であって、プラズマ切断面の硬化層部における
オーステナイト粒径が20μm以下である組織を有する鋼
材である。プラズマ切断部の疲労特性が優れており、プ
ラズマ切断ままでも繰り返し応力が作用する部材として
用いることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラズマ切断部の
疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法に関し、より
具体的には、プラズマ切断部の疲労特性に優れることか
ら、例えば船舶、海洋構造物、橋梁、建築物、タンクさ
らには自動車等に、プラズマ切断ままでも好適に使用す
ることができる鋼材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば船舶、海洋構造物、橋梁、建築
物、タンクさらには自動車等に使用される鋼材は、適当
な切断法により所望の形状に切断される。このような切
断法として、従来から用いられてきたガス切断に比較し
て数倍以上の高速切断が可能であることから、金属ノズ
ルによる熱的ピンチ効果を利用して形成した高温・高速
のプラズマ流を用いるプラズマ切断が近年多用される。
このプラズマ切断は切断精度も相当高いことから、プラ
ズマ切断された鋼材は、切断ままで使用される場合があ
る。
【0003】しかしながら、例えば「鉄鋼便覧 第3版
VI 二次加工・表面処理・熱処理・溶接」の第651 頁
の (16・3・4 切断部の材質変化) の欄にも記載され
ているように、プラズマ切断によるプラズマ切断面近傍
の冷却速度は大きくなるために切断面近傍の組織が硬化
してしまう。このため、プラズマ切断ままの鋼材を繰り
返し応力が作用する部材に用いると、硬度が上昇した切
断面近傍から疲労亀裂が発生し易くなり、この亀裂が起
点となって疲労寿命が低下してしまう。
【0004】このため、プラズマ切断された鋼材は、多
くの場合、プラズマ切断面近傍に例えば研削等の機械加
工を仕上げ加工として行う必要があり、加工コストや加
工時間の上昇は否めなかった。
【0005】ところで、鋼材の疲労寿命を改善する発明
として、特開平6−271930号公報には、ベイナイトと体
積率10%以上の残留オーステナイトとを主相とする複合
組織を有する鋼板の表面に後処理としてショットピーニ
ング処理を行って、表層部の残留オーステナイト相を歪
誘起変態させることによって、鋼材の疲労特性を改善す
る発明が、提案されている。この提案にかかる発明によ
れば、プラズマ切断された鋼材の切断面を含めて鋼材全
体の疲労特性を改善することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この発明によ
っても、鋼材に後処理を行う必要があるため、加工コス
トおよび加工時間の上昇は否めない。すなわち、従来に
は、プラズマ切断ままでも繰り返し応力が作用する部材
として用いることができる鋼材は、存在しなかったので
ある。
【0007】ここに、本発明の目的は、プラズマ切断部
の疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法を提供する
ことである。より具体的には、本発明の目的は、プラズ
マ切断部の疲労特性に優れることから、例えば船舶、海
洋構造物、橋梁、建築物、タンクさらには自動車等の構
成部材のうちで繰り返し応力が作用する部材に、プラズ
マ切断ままでも好適に使用することができる鋼材および
その製造方法を提供することである。さらに、本発明の
目的はこれらの鋼材の加工コストおよび加工時間をいず
れも低減することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋼板全体
ではなくプラズマ切断部の疲労特性の改善に影響する因
子を鋭意検討した結果、以下に列記する新規な知見〜
知見を得て、本発明を完成した。
【0009】プラズマ切断面の硬化層部におけるオー
ステナイト粒径を20μm以下に抑制するとともに、焼入
性指数Dlを18以上とすることによって、プラズマ切断
面の硬化層部の組織を細粒組織化することができ、これ
により、繰り返し応力の作用による転位の発生を抑制し
て、プラズマ切断部の高疲労寿命化を図れること。
【0010】プラズマ切断部の組織はプラズマ切断の
入熱による加熱によってオーステナイト化されるもの
の、NbやTi等を適正量添加して炭窒化物を形成すること
により、オーステナイト粒の成長を抑制でき、これによ
り、プラズマ切断面の硬化層部におけるオーステナイト
粒径を20μm以下に細粒組織化することができる。
【0011】焼入性指数Dlを18以上に高めるには、
C量およびMn量をいずれも増加させることが効果的では
あり鋼板自体の強度も上昇するが、靱性が劣化する。そ
こで、鋼板の組成を適切に特定することによって、母材
特性を劣化させることなく母材およびプラズマ切断部の
特性をいずれも所望の程度に保つことができる。
【0012】上記の項〜項を用いることにより、
切断面に機械加工等の後処理を行わなくとも、プラズマ
切断ままで高疲労特性を有する鋼材を得ることができ、
これにより、加工コストおよび加工時間をいずれも短縮
できる鋼材を提供できる。
【0013】本発明は、C:0.01〜0.2 % (本明細書に
おいては特にことわりがない限り、「%」は「質量%」
を意味するものとする。) 、Si:0.1 〜0.6 %、Mn:0.
4 〜1.60%、Cr:0.01〜0.6 %、Mo:0.01〜0.5 %、N
b:0.01〜0.06%および/またはTi:0.005 〜0.03%、
望ましくはCu:0.05〜0.6 %、Ni:0.05〜0.6 %および
V:0.01〜0.08%からなる群から選ばれた1種または2
種以上、を含有する鋼組成を有するとともに、下記(1)
式により規定される焼入性指数Dlが18以上であって、
プラズマ切断されることにより形成されるプラズマ切断
面の硬化層部におけるオーステナイト粒径が20μm以下
である組織を有することを特徴とするプラズマ切断部の
疲労特性に優れた鋼材である。
【0014】 Dl=DIC×DISi ×DIMn ×DICr ×DIMo ・・・・・・・(1) ただし、(1) 式において、符号DICは炭素量の基本値を
示し、符号DISi はSiの焼入性指数 (1+0.7 ×Siの質
量%) を示し、符号DIMn はMnの焼入性指数 [Mn含有量
が1.2 %以下の場合は (1+0.33×Mnの質量%) であ
り、Mn含有量が1.2 %超の場合は (5+5.1 ×[Mn の質
量%−1.2]) である] を示し、符号DICrはCrの焼入性
指数 (1+2.16×Crの質量%) を示し、符号DIMo はMo
の焼入れ性指数 (1+3 ×Moの質量%) を示す。
【0015】別の面からは、本発明は、C:0.01〜0.2
%、Si:0.1 〜0.6 %、Mn:0.4 〜1.60%、Cr:0.01〜
0.6 %、Mo:0.01〜0.5 %、Nb:0.01〜0.06%および/
またはTi:0.005 〜0.03%、望ましくはCu:0.05〜0.6
%、Ni:0.05〜0.6 %およびV:0.01〜0.08%からなる
群から選ばれた1種または2種以上、を含有する鋼組成
を有するとともに、上記(1) 式により規定される焼入性
指数Dlが18以上である鋼を、1200℃以下の温度域に加
熱した後、Ar3 点以上(Ar3点+50℃) 以下の温度域で圧
延を終了した後、空冷または30℃/分以下の冷却速度で
の冷却を行うことを特徴とするプラズマ切断部の疲労特
性に優れた鋼材の製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかるプラズマ切
断部の疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法の実施
の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。な
お、以降の説明では、鋼材が熱延鋼板である場合を例に
とるが、これは例示であり、本発明は熱延鋼板以外の他
の鋼材に対しても、同様に適用される。
【0017】まず、本発明にかかる製造方法において、
用いる鋼の組成を限定する理由を説明する。
【0018】(鋼の組成)C:0.01〜0.2 % Cは、0.01%以上含有することにより鋼の強度および焼
入れ性指数Dlを高める成分である。しかしながら、C
含有量が0.2 %を超えると、必要な強度や靱性を確保す
ることは困難になる。そこで、本発明では、C含有量は
0.01%以上0.2%以下と限定する。後述する焼入れ性指
数Dl、母材の強度および靱性を確保するためには、C
含有量の下限は0.06%、上限は0.18%であることが、そ
れぞれ望ましい。
【0019】Si:0.1 〜0.6 % Siは、0.1 %含有することにより鋼の脱酸に寄与する。
しかし、Si含有量が0.6 %を超えると鋼の靱性が損なわ
れる。そこで、本発明では、Si含有量は0.1 %以上0.6
%以下と限定する。同様の観点から、Si含有量の下限は
0.15%、上限は0.4 %であることが、それぞれ望まし
い。
【0020】Mn:0.4 〜1.60% Mnは、0.4 %以上含有することにより鋼の強度を向上さ
せるとともに焼入れ性指数Dlを確保することができ
る。しかし、Mn含有量が1.60%を超えると、鋼の靱性お
よび加工性を損なう。そこで、本発明では、Mn含有量は
0.4 %以上1.60%以下と限定する。同様の観点から、Mn
含有量の上限は1.50%であることが望ましい。
【0021】Cr:0.01〜0.6 % Crは、0.01%以上含有することにより、焼入れ性を向上
させ強度を高める成分である。しかしながら、0.6 %超
含有することにより著しい強度上昇が見られるが、それ
に対し靱性が劣化する。そこで、本発明では、Cr含有量
は0.01%以上0.6 %以下と限定する。同様の観点から、
Cr含有量の下限は0.03%、上限は0.5 %であることが、
それぞれ望ましい。
【0022】Mo:0.01〜0.5 % Moは、0.01%以上含有することにより、焼入れ性を上げ
強度を高める成分である。しかしながら、Mo含有量が0.
5 %を超えると、著しい強度上昇が見られるが、それに
対し靱性が劣化する。そこで、本発明では、Mo含有量は
0.01%以上0.5%以下と限定する。同様の観点から、Mo
含有量の下限は0.02%、上限は0.4 %であることが、そ
れぞれ望ましい。
【0023】Nb:0.01〜0.06% Nbは、0.01%以上含有することにより炭窒化物を形成し
てフェライトおよびオーステナイトの粒成長を抑制し、
本発明の目標であるオーステナイト粒径20μm以下が得
られ、これにより、組織を細粒化し強度および靱性向上
に効果がある。しかしながら、Nb含有量が0.06%を超え
ると、鋼の強度上昇が著しく、靱性が損なわれる。そこ
で、本発明では、Nb含有量は0.01%以上0.06%以下と限
定する。同様の観点から、Nb含有量の下限は0.02%、上
限は0.05%であることが、それぞれ望ましい。
【0024】Ti:0.005 〜0.03% Tiは、0.005 %以上含有することによりNbと同様の効果
を奏する元素であるが、Ti含有量が0.03%を超えると溶
接割れが発生し易くなる。そこで、本発明では、Ti含有
量は0.005 %以上0.03%以下と限定する。同様の観点か
ら、Ti含有量の下限は0.01%、上限は0.02%であること
が望ましい。
【0025】本発明では、上述したNbおよびTiは、少な
くとも一方が含有されていればよい。
【0026】また、本発明では、これらの元素以外に品
質向上を図るために、Cu、NiおよびVを任意添加元素と
して含有してもよい。そこで、これらの任意添加元素に
ついても説明する。
【0027】Cu:0.05〜0.6 % Cuは、鋼材が腐食環境下で使用される場合に、必要に応
じ0.05%以上添加されることにより耐食性を向上するこ
とができる。しかしながら、Cu含有量が0.6 %を超える
と、これらの効果が飽和するとともに鋼の強度が過剰に
上昇し過ぎ、靱性が損なわれる。そこで、Cuを添加する
場合には、その含有量は0.05%以上0.6%以下と限定す
ることが望ましい。同様の観点から、Cu含有量の下限は
0.1 %、上限は0.5 %であることが、それぞれ望まし
い。
【0028】Ni:0.05〜0.6 % Niは、0.05%以上添加されることにより腐食環境下での
耐食性向上の効果を示す。しかしながら、Ni含有量が0.
6 %を超えると、これらの効果が飽和するとともに鋼の
強度が過剰に上昇し過ぎ、靱性が損なわれる。そこで、
Niを添加する場合には、その含有量は0.05%以上0.6 %
以下と限定することが望ましい。同様の観点から、Ni含
有量の下限は0.1 %、上限は0.5 %であることが、それ
ぞれ望ましい。
【0029】V:0.01〜0.08% Vは、0.01%以上添加されることにより組織を細粒化し
て鋼材の疲労強度の上昇に寄与する。しかしながら、V
含有量が0.08%を超えるとかかる効果が飽和するととも
に強度が過剰に上昇し過ぎ、靱性が損なわれる。そこ
で、Vを添加する場合には、その含有量は0.01%以上0.
08%以下と限定することが望ましい。同様の観点から、
V含有量の下限は0.02%、上限は0.06%であることが、
それぞれ望ましい。
【0030】焼入性指数Dl:18以上 焼入性指数Dlは、本発明者らが焼入れ性を表示するた
めに規定した特性値である。すなわち、焼入性指数Dl
は、太さが異なる多種の試料 (丸棒) を、同じ条件で水
焼入れしてその断面を検鏡することにより、試料の中心
部の組織の50%がマルテンサイトになる限界の太さ (直
径) を示している。焼入性指数Dlは、上記(1) 式によ
り規定される。
【0031】焼入性指数Dlが18mm以上であれば、切断
における熱により形成される硬化組織がマルテンサイト
化される。このため、繰り返し応力に伴う転位の発生が
抑制されて高疲労寿命化され、疲労限度が向上する。一
方、焼入性指数Dlが18mm未満であると、疲労限度が従
来レベルとなる。そこで、本発明では、焼入性指数Dl
を18mm以上と限定する。
【0032】(鋼加熱)本発明では、かかる鋼組成および
焼入性指数Dlを有する鋼を、1200℃以下の温度域に加
熱する。鋼を1200℃を超える高温に加熱すると、鋼のオ
ーステナイト粒の粗大化が著しくなり、鋼の靱性を阻害
する。そこで、鋼加熱温度は1200℃以下と限定する。
【0033】(圧延)このようにして加熱した鋼に対し、
圧延を行う。圧延は、Ar3 点以上(Ar3点+50℃) 以下の
温度域で終了させる。鋼の靱性を向上させるには未再結
晶域での圧延が好ましく、未再結晶域以外の圧延では、
鋼の組織が粗大化して靱性を劣化させるからである。
【0034】(冷却)このようにして圧延を終了した後
に、空冷または30℃/分以下の冷却速度での冷却を行
う。本発明では、圧延終了後に、空冷または30℃/分以
下の冷却速度での冷却を行うことにより、所望の機械的
性質が得られる。
【0035】ここで、30℃/分以下の冷却速度での冷却
としては、水冷やミスト冷却等を例示できる。
【0036】(本発明にかかる鋼材)このようにして、上
記の鋼組成および焼入性指数Dlを有する本発明にかか
る鋼材、すなわちC:0.01〜0.2 %、Si:0.1 〜0.6
%、Mn:0.4 〜1.60%、Cr:0.01〜0.6 %、Mo:0.01〜
0.5 %、Nb:0.01〜0.06%および/またはTi:0.005〜
0.03%を含有する鋼組成を有するとともに、(1) 式によ
り規定される焼入性指数Dlが18以上である鋼材が得ら
れる。
【0037】この本発明にかかる鋼材は、プラズマ切断
されることにより形成されるプラズマ切断面の硬化層部
におけるオーステナイト粒径が20μm以下である組織を
有する。プラズマ切断されることにより形成されるプラ
ズマ切断面の硬化層部の幅は、切断条件によっても変動
するが、本発明者らの知見によれば、焼入性指数Dlが
18mm以上であれば、切断面から内部側へ向けて約2mmの
範囲内で板厚全厚にわたって硬化層部が形成される。本
発明では、この硬化層部におけるオーステナイト粒径を
20μm以下に限定する。以下、この限定理由を説明す
る。
【0038】図1に示す平面形状を有する軸力疲労試験
片をプラズマ切断によって作製し、室温で繰り返し周波
数5Hz、応力比0.1 、応力振幅 284〜421 N/mm2 の軸力
片振り引張り荷重制御方式により、図2に示す20トン電
気油圧式疲労試験機を用いて疲労試験を行った。なお、
図2における符号1は軸力疲労試験片であり、符号2は
荷重を検出するロードセルであり、符号3は軸力疲労試
験片1に荷重を与える油圧シリンダであり、符号4は波
形発生器であり、符号5は負荷制御器であり、符号6は
サーボバルブであり、さらに符号7は油圧源である。
【0039】そして、この軸力疲労試験において、破断
繰り返し数が107 回となる応力振幅を疲労限度Δσw(N/
mm2)として測定するとともに、試験終了後の試験片のプ
ラズマ切断面の硬化層部の組織をピクリン酸とライポン
Fおよび塩化第二鉄の混合腐食液によって腐食すること
により観察される組織の粒径を、オーステナイト粒径と
して測定した。なお、オーステナイト粒径の測定手段
は、この手段には限定されず、他の手段により測定して
もよい。
【0040】結果を、図3および図4にグラフで示す。
図3は、オーステナイト粒径 (μm) が疲労限度Δσw
(N/mm2)に及ぼす影響を示し、図4は、焼入れ性指数D
l(mm)が疲労限度Δσw(N/mm2)に及ぼす影響を示す。
【0041】図3に示すグラフから、オーステナイト粒
径が20μm以下であれば、疲労限度Δσw(N/mm2)が顕著
に向上するとともに、オーステナイト粒径が20μm超で
あると疲労限度Δσw(N/mm2)は従来と同レベルとなるこ
とがわかる。そこで、本発明では、プラズマ切断される
ことにより形成されるプラズマ切断面の硬化層部におけ
るオーステナイト粒径は、20μm以下と限定する。オー
ステナイト粒径が20μm以下に抑制されることにより、
繰り返し応力に伴う転位の発生が抑制され、高疲労寿命
化が得られる。
【0042】図4に示すグラフから、焼入性指数Dlを
18mm以上としたときに疲労限度が向上するとともに、焼
入性指数Dlを18mm未満とすると、疲労限度が、従来レ
ベルと大差なくなる。そこで、本発明では、焼入性指数
Dlを18mm以上と限定する。
【0043】このようにして、本発明により、プラズマ
切断部の疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法、よ
り具体的には、プラズマ切断部の疲労特性に優れること
から、例えば船舶、海洋構造物、橋梁、建築物、タンク
さらには自動車等の構成部材のうちで繰り返し応力が作
用する部材に、プラズマ切断ままでも好適に使用するこ
とができる鋼材およびその製造方法が提供される。この
ため、加工コストおよび加工時間をいずれも低減するこ
とができる。
【0044】
【実施例】次に、本発明を実施例を参照しながらより具
体的に説明する。
【0045】表1および表2にそれぞれ示す鋼組成およ
び焼入性指数Dlを有するとともに、SM490A規格に準ず
る強度と25mmの板厚とを有する供試材1〜供試材40か
ら、図1に示す軸力疲労試験片1を、表3に示す切断条
件のプラズマ切断で切断した後、図2に示す軸力疲労試
験機を用いて、軸力疲労試験を行った。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】そして、この軸力疲労試験において、破断
繰り返し数Nfが 107回となる応力振幅を疲労限度Δσw
としてを測定した。また、切断後の供試材の切断面硬化
層部の組織をピクリン酸エッチングにより腐食させ、オ
ーステナイト粒径(mm)を測定した。測定結果を表1およ
び表2に併せて示す。表2における*印は、本発明の範
囲外であることを示す。
【0050】表1における試料No.1〜試料No.24 は、い
ずれも、本発明の範囲を満足する本発明例であり、疲労
限度Δσw が 431〜372(N/mm2)と、高い値を示してい
る。
【0051】これに対し、表2における試料No.25 は、
加熱温度が本発明の範囲の上限を上回るとともに焼入れ
性指数Dlが本発明の範囲の下限を下回り焼入れ性が不
足している。このため、疲労限度Δσw が 304(N/mm2)
と劣化した。
【0052】試料No.26 は、Nb量が本発明の範囲の下限
を下回っているため、オーステナイト粒径が本発明の範
囲の上限を上回った。このため、疲労限度Δσw が 314
(N/mm2) と劣化した。
【0053】試料No.27 は、圧延終了温度が本発明の範
囲の下限を下回るとともに、Ti量が本発明の範囲の上限
を上回っているため、オーステナイト粒径が本発明の範
囲の上限を上回った。このため、疲労限度Δσw が 294
(N/mm2) と劣化した。
【0054】試料No.28 は、Nb量が本発明の範囲の上限
を上回っているため、オーステナイト粒径が本発明の範
囲の上限を上回った。このため、疲労限度Δσw が 284
(N/mm2) と劣化した。
【0055】試料No.29 は、冷却速度が本発明の範囲の
上限を上回っているとともに、Ti含有量が本発明の範囲
の下限を下回っているため、オーステナイト粒径が本発
明の範囲の上限を上回った。このため、疲労限度Δσw
が 284(N/mm2) と劣化した。
【0056】試料No.30 は、Nb量が本発明の範囲の下限
を下回っているとともに、Ti含有量が本発明の範囲の上
限を上回っているため、オーステナイト粒径が本発明の
範囲の上限を上回った。このため、疲労限度Δσw が 2
74(N/mm2) と劣化した。
【0057】試料No.31 は、圧延終了温度が本発明の範
囲の上限を上回るとともに、Nb量が本発明の範囲の上限
を上回り、さらに、Ti含有量が本発明の範囲の下限を下
回っているため、オーステナイト粒径が本発明の範囲の
上限を上回った。このため、疲労限度Δσw が 245(N/m
m2) と劣化した。
【0058】試料No.32 は、Nb量が本発明の範囲の上限
を上回っているとともに、Ti含有量が本発明の範囲の上
限を上回っているため、オーステナイト粒径が本発明の
範囲の上限を上回った。このため、疲労限度Δσw が 2
55(N/mm2) と劣化した。
【0059】試料No.33 は、Nb量が本発明の範囲の上限
を上回っているため、オーステナイト粒径が本発明の範
囲の上限を上回った。このため、疲労限度Δσw が 298
(N/mm2) と劣化した。
【0060】試料No.34 は、Ti量が本発明の範囲の上限
を上回っているため、オーステナイト粒径が本発明の範
囲の上限を上回った。このため、疲労限度Δσw が 280
(N/mm2) と劣化した。
【0061】試料No.35 は、Nb量が本発明の範囲の下限
を下回っているため、オーステナイト粒径が本発明の範
囲の上限を上回った。このため、疲労限度Δσw が 278
(N/mm2) と劣化した。
【0062】試料No.36 は、Ti量が本発明の範囲の下限
を下回っているため、オーステナイト粒径が本発明の範
囲の上限を上回った。このため、疲労限度Δσw が 240
(N/mm2) と劣化した。
【0063】試料No.37 は、Nb量が本発明の範囲の上限
を上回っているため、オーステナイト粒径が本発明の範
囲の上限を上回った。このため、疲労限度Δσw が 273
(N/mm2) と劣化した。
【0064】試料No.38 は、Ti量が本発明の範囲の上限
を上回っているため、オーステナイト粒径が本発明の範
囲の上限を上回った。このため、疲労限度Δσw が 298
(N/mm2) と劣化した。
【0065】試料No.39 は、Nb量が本発明の範囲の上限
を上回っているとともに、Ti量が本発明の範囲の下限を
下回っているため、オーステナイト粒径が本発明の範囲
の上限を上回った。このため、疲労限度Δσw が 320(N
/mm2) と劣化した。
【0066】さらに、試料No.40 は、Nb量が本発明の範
囲の下限を下回っているため、オーステナイト粒径が本
発明の範囲の上限を上回った。このため、疲労限度Δσ
w が282(N/mm2) と劣化した。
【0067】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
り、プラズマ切断部の疲労特性に優れることから、例え
ば船舶、海洋構造物、橋梁、建築物、タンクさらには自
動車等の構成部材のうちで繰り返し応力が作用する部材
に、プラズマ切断ままでも好適に使用することができる
鋼材およびその製造方法を提供することが可能となっ
た。このため、このような鋼材の加工コストおよび加工
時間をいずれも低減することができた。
【0068】かかる効果を有する本発明の意義は、極め
て著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】軸力疲労試験片の平面形状を示す説明図であ
る。
【図2】20トン電気油圧式疲労試験機を示す説明図であ
る。
【図3】オーステナイト粒径 (μm) が疲労限度Δσw
(N/mm2)に及ぼす影響を示すグラフである。
【図4】焼入れ性指数Dl(mm)が疲労限度Δσw(N/mm2)
に及ぼす影響を示すグラフである。
【符号の説明】
1 軸力疲労試験片 2 ロードセル 3 油圧シリンダ 4 波形発生器 5 負荷制御器 6 サーボバルブ 7 油圧源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K032 AA04 AA05 AA11 AA14 AA16 AA19 AA22 AA23 AA31 AA35 AA36 BA01 CA02 CC02 CC03 CD01 CD05

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C:0.01〜0.2 %、Si:0.1 〜0.6 %、Mn:0.4 〜1.60
    %、 Cr:0.01〜0.6 %、Mo:0.01〜0.5 %、 Nb:0.01〜0.06%および/またはTi:0.005 〜0.03%を
    含有する鋼組成を有するとともに、下記(1) 式により規
    定される焼入性指数Dlが18以上であって、プラズマ切
    断されることにより形成されるプラズマ切断面の硬化層
    部におけるオーステナイト粒径が20μm以下である組織
    を有することを特徴とするプラズマ切断部の疲労特性に
    優れた鋼材。 Dl=DIC×DISi ×DIMn ×DICr ×DIMo ・・・・・・・(1) ただし、符号DICは炭素量の基本値を示し、符号DISi
    はSiの焼入性指数 (1+0.7 ×Siの質量%) を示し、符
    号DIMn はMnの焼入性指数 [Mn含有量が1.2 %以下の場
    合は (1+0.33×Mnの質量%) であり、Mn含有量が1.2
    %超の場合は (5+5.1 ×[Mn の質量%−1.2]) であ
    る] を示し、符号DICr はCrの焼入性指数(1+2.16×C
    rの質量%) を示し、符号DIMo はMoの焼入れ性指数
    (1+3 ×Moの質量%) を示す。
  2. 【請求項2】 さらに、質量%で、Cu:0.05〜0.6 %、
    Ni:0.05〜0.6 %およびV:0.01〜0.08%からなる群か
    ら選ばれた1種または2種以上を含有する請求項1に記
    載されたプラズマ切断部の疲労特性に優れた鋼材。
  3. 【請求項3】 質量%で、 C:0.01〜0.2 %、Si:0.1 〜0.6 %、Mn:0.4 〜1.60
    %、 Cr:0.01〜0.6 %、Mo:0.01〜0.5 %、 Nb:0.01〜0.06%および/またはTi:0.005 〜0.03%を
    含有する鋼組成を有するとともに、下記(1) 式により規
    定される焼入性指数Dlが18以上である鋼を、1200℃以
    下の温度域に加熱した後、Ar3 点以上(Ar3点+50℃) 以
    下の温度域で圧延を終了した後、空冷または30℃/分以
    下の冷却速度での冷却を行うことを特徴とするプラズマ
    切断部の疲労特性に優れた鋼材の製造方法。 Dl=DIC×DISi ×DIMn ×DICr ×DIMo ・・・・・・・(1) ただし、符号DICは炭素量の基本値を示し、符号DISi
    はSiの焼入性指数 (1+0.7 ×Siの質量%) を示し、符
    号DIMn はMnの焼入性指数 [Mn含有量が1.2 %以下の場
    合は (1+0.33×Mnの質量%) であり、Mn含有量が1.2
    %超の場合は (5+5.1 ×[Mn の質量%−1.2]) であ
    る] を示し、符号DICr はCrの焼入性指数(1+2.16×C
    rの質量%) を示し、符号DIMo はMoの焼入れ性指数
    (1+3 ×Moの質量%) を示す。
  4. 【請求項4】 前記鋼は、さらに、質量%で、Cu:0.05
    〜0.6 %、Ni:0.05〜0.6 %およびV:0.01〜0.08%か
    らなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する請
    求項3に記載されたプラズマ切断部の疲労特性に優れた
    鋼材の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005054533A1 (ja) * 2003-12-01 2005-06-16 Sumitomo Metal Industries, Ltd. 疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法
CN112962023A (zh) * 2021-01-29 2021-06-15 江苏永钢集团有限公司 窄淬透性齿轮钢及其制造方法

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