JP2001100067A - 光ファイバテープ心線及び光ファイバケーブル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は一括被覆除去が容易な光ファイバテー
プ心線及び該光ファイバテープ心線を用いてなり光伝送
特性の良好な光ファイバケーブルを提供する。 【解決手段】複数本並列に配置された光ファイバ心線の
外周に一括被覆層を形成してなる光ファイバテープ心線
において、上記一括被覆層として防水コンパウンド用オ
イル内での収縮率が０．５％以上５．０％以下である樹
脂を用いたことを特徴とする光ファイバテープ心線及び
上記光ファイバテープ心線に接触して防水コンパウンド
が充填されてなる光ファイバケーブル。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は被覆除去が容易な光
ファイバテープ心線及び該光ファイバ心線を用いた光フ
ァイバケーブルに関する。

【０００２】

【従来の技術】光ファイバは、少なくともコア及びクラ
ッドを有する光ファイバ用プリフォームを線引して得ら
れるが、線引き直後の光ファイバの外周には、保護補
強、可撓性付与、漏光防止等の目的でプライマリ層、セ
カンダリ層等の樹脂被覆層を少なくとも１層以上設け、
更に外周に識別或いはハンドリング性向上の目的で着色
剤（インク）を含有する樹脂又は樹脂組成物（以下、
「樹脂又は樹脂組成物」を「樹脂」と総称する）からな
る着色層（インク層）を設けたものを光ファイバ着色心
線という。図１に示すにように、このような光ファイバ
（着色）心線(1) の複数本を並列に配置し、その外周に
共通した一括被覆層(2) を形成してテープ状としたもの
を光ファイバテープ心線(3) という。光ファイバ接続の
際には、この一括被覆層及び着色層、セカンダリ層、プ
ライマリ層を一括して除去する必要があり、その除去特
性を一括被覆除去性という。

【０００３】また、光ファイバテープ心線を集合させ空
隙部分に防水コンパウンドを充填し、外部被覆層を形成
した防水型通信ケーブルが知られている。光ファイバ用
の防水コンパウンドとしては、例えばポリブテン系オイ
ルあるいはペトロラクタム系オイルに低分子量ポリエチ
レンを添加したもの（特開昭５７−２０２０１５号公
報）、合成油又は合成油と鉱油からからなるもの（特開
昭６１−１２６７０６号公報）、鉱油と疎水性シリカか
らなるもの（特開昭５８−８７７７号公報）等が知られ
ている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】従来の光ファイバ用防
水コンパウンド（以下、防水コンパウンドと略記するこ
ともある）については、防水コンパウンドの主成分であ
るオイル成分が光ファイバ外周の被覆材料中に浸透しや
すく、被覆材料を膨潤あるいは劣化させてしまうこと、
また浸透により被覆中に応力が発生することからマイク
ロベンディングが生じ光伝送損失増加をもたらすこと等
の問題があった。

【０００５】これに対し出願人は、防水コンパウンドが
充填された光ファイバケーブルにおいて、上記防水コン
パウンドによる光ファイバ被覆材料の膨潤度〔具体的に
は被覆材料の試験片を一定条件において防水コンパウン
ド中に浸漬した場合に該被覆材料が防水コンパウンド成
分を吸収する度合いを初期重量に対する重量変化から数
１に示すように計算して求め、％表示する〕

【数１】 が１０重量％以下とした光ファイバケーブルを提案して
おり、膨潤度を１０重量％以下とすることにより、オイ
ル成分の光ファイバ被覆中への浸透による被覆材料劣化
の防止に非常に有効である（特開平３−１２５１０５号
公報）。

【０００６】本発明者らは特開平３−１２５１０５号公
報に提案した種々の光ファイバケーブルの更なる特性改
善を目指して研究を重ねた結果、光ファイバテープ心線
を用いたケーブルの場合には、その一括被覆除去性を悪
化させる場合があることに気づいた。すなわち、ケーブ
ル中の光ファイバの接続等の場合のように光ファイバを
被覆層から引き抜く（被覆層を除去する）際に、最外周
の一括被覆層のみが除去され、着色層以下の層がファイ
バ表面に残留してしまう、いわゆる「すっぽ抜け」とい
う現象が起きてしまう場合があった。本発明は、被覆除
去性の向上した光ファイバテープ心線及び光ファイバケ
ーブルの提供を課題とするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の光ファイバケーブルの特徴は、少なくとも１条の光
ファイバテープ心線に接触して防水コンパウンドが充填
されてなる光ファイバケーブルにおいて、該光ファイバ
テープ心線が複数本並列に配置された光ファイバ心線の
外周に一括被覆層を形成されてなり、上記一括被覆層と
して防水コンパウンド用オイル内での収縮率が０．５％
以上５．０％以下である樹脂を用いたことにある。ま
た、本発明の光ファイバテープ心線の特徴は、複数本並
列に配置された光ファイバ心線の外周に一括被覆層を形
成してなる光ファイバテープ心線において、上記一括被
覆層として防水コンパウンド用オイル内での収縮率が
０．５％以上５．０％以下である樹脂を用いたことにあ
る。なお、本発明における収縮率とは、正方形の試験片
をオイル成分に２５℃で４週間浸漬した後、浸漬終了後
の対角線２本平均長さを求め、浸漬開始前の平均長さ
（初期値）に対する減少率を数２の式で求め、１００分
率で表したものである。

【数２】

【０００８】

【発明の実施の形態】図１は本発明の光ファイバテープ
心線(3) の一具体例の構造を示す概略断面図である。図
２は図１の光ファイバテープ心線(3) を用いたケーブル
の一具体例を示す概略断面図であり、中心にテンション
メンバー(4) を配置し、外周部に複数の収納溝(6) を備
えたスペーサ(5) の上記収納溝(6) 内に図１に示す光フ
ァイバテープ心線(3) が収納され、該収納溝(6) の空隙
部分には防水コンパウンド(7)が充填されている。前記
スペーサ(5) の上には抑え巻きテープ(8) を施し、さら
にその上に外部被覆層(9) を設けて防水型光ファイバケ
ーブル(10)を形成している。

【０００９】本発明において光ファイバ（ガラスファイ
バ）自体の組成、構造、製法は特に限定されるところは
なくこの種技術分野の公知の手法に従う。また、線引直
後に設けられるプライマリ層、セカンダリ層等の被覆材
料としては、例えばウレタンアクリレート系、エポキシ
アクリレート系、シリコンアクリレート系、フッ化物ア
クリレート系の光又は熱等エネルギー線硬化型樹脂等が
挙げられるがこれらに限定されるものではないし、また
被覆の形成手段についても限定されるところはなく、こ
の種技術分野における公知手段のいずれによってもよ
い。例えば熱又は光等のエネルギー線硬化型樹脂の場合
には、対応するエネルギー線を照射して被覆材料を硬化
させて被覆層とする。紫外線硬化型樹脂を用いれば、被
覆形成時間が短いという利点がある。

【００１０】着色層形成用被覆材料はベース樹脂及び着
色剤を含有してなる組成物からなり、ベース樹脂として
は前記した被覆材料が挙げられ、着色剤としては公知の
有機又は無機顔料を用いることができ、例えばナフトー
ルレッド、フタロシアニンブルー、酸化チタン等が挙げ
られる。さらに該組成物には、重合開始剤、酸化防止
剤、反応促進剤、レベリング剤、分散安定剤等を含有す
ることができる。

【００１１】テープ心線の一括被覆材料としては、例え
ばウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、
シリコンアクリレート系、フッ化物アクリレート系の光
又は熱等エネルギー線硬化型樹脂等が挙げられるがこれ
らに限定されるところはない。一括被覆の方法もこの種
技術分野において公知の方法を採用できる。

【００１２】本発明の光ファイバケーブルに用いる防水
コンパウンドとしては、例えばシリコーンオイル、ポリ
ブテンオイル、α−オレフィンオイル、ミネラルオイル
等のオイル成分、シリカ、ベントナイト、クレイ等の増
稠剤成分、スチレン系ブロック共重合体等によるオイル
分離抑制剤の３種を主成分とするものであり、この他に
酸化防止剤、紫外線安定剤等を添加してもよい。ケーブ
ルの構造、製法についても公知技術を採用できる。

【００１３】本発明において、防水コンパウンドに接触
する一括被覆樹脂の、該防水コンパウンドのオイル成分
による収縮率が０．５〜５％となるようにするが、一括
被覆樹脂の収縮率は、防水コンパウンド中のオイル成分
の種類、一括被覆樹脂の種類、組成によって異なるの
で、オイル成分と一括被覆樹脂の組合せの中から、本発
明の範囲に入るように選択する。

【００１４】（作用）一括被覆樹脂を含めたファイバ被
覆樹脂が、防水コンパウンドに浸されると、その主成分
であるオイル成分がファイバ被覆樹脂中に浸透し被覆樹
脂を膨潤（体積増加）させるが、同時にファイバ被覆樹
脂内の未硬化成分はオイル成分抽出され収縮（体積減
少）を伴う。結果的にファイバ被覆樹脂の体積変化はそ
の総和で表される。ここで一括被覆層中に浸透したオイ
ル成分は、まず一括被覆樹脂層と着色層との界面まで達
して、この界面での一括被覆材と着色層との化学的な結
合を切断する。そのためにこの界面での密着力は低下
し、この状態でテープ心線の一括被覆除去時には、一括
被覆樹脂のみが除去され着色層以下が残る、いわゆる
「すっぽ抜け」現象が生じやすくなる。

【００１５】そこで本発明では、オイル成分との接触に
よる一括被覆樹脂の膨張率を抑える、すなわち収縮させ
ることにより、着色層（又は心線の最外被覆層）／一括
被覆層間の密着力の低下を招いたとしても着色心線への
締め付け力を発現させることが可能となり、「すっぽ抜
け」現象を抑えることができる。この新規な知見により
実験を重ねた結果、オイル成分に接触した際の被覆材料
の収縮率が０．５％以上が必要であることを見いだし
た。この体積収縮率が大きすぎると被覆樹脂中に浸透し
たオイルにより、被覆樹脂中に応力が発生しマイクロベ
ンドによる光伝送損失増加が生じてしまう。したがっ
て、収縮率は０．５％以上５．０％以下とする。

【００１６】

【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明する
が、本発明はこれに限定されるものではない。

【００１７】（実施例１）外径１２５μｍのガラスファ
イバの外周にプライマリ樹脂層を外径１９０〜２００μ
ｍ、その外側にセカンダリ樹脂層を外径２４０〜２５０
μｍとなるように被覆光ファイバを製造し、その外側に
着色層を７〜８μｍの厚さで形成し、光ファイバ着色心
線を製造した。そしてその着色心線を４本並列に並べ、
表１に示すＡ〜Ｅの一括被覆層用樹脂組成物を用いて一
括被覆し、厚さ約３８０μｍの光ファイバテープ心線を
製造した。一括被覆樹脂Ａ〜Ｅは、ウレタンアクリレー
ト系紫外線硬化型樹脂であり、各々の収縮率を変えるた
めに、架橋密度を変化させているものである。架橋密度
を増加させるためには、原料モノマーの含有する官能基
数を増やしており、一括被覆樹脂Ｅには３官能性モノマ
ーを用いた。なお、架橋密度が大になると、収縮率も大
となる。

【００１８】また一括被覆層用樹脂Ａ〜Ｅの収縮率は以
下の測定方法で測定した。当該一括被覆層用樹脂Ａ〜Ｅ
をそれぞれ厚さ約１００μｍ、９ｃｍ×９ｃｍの正方形
のシートに形成し、窒素下１００ｍＪ／ｃｍ² の紫外線
照射で硬化させた。このシートを試験片として各３枚用
意した。の試験片の２本の対角線の長さの平均値を本試
験前の寸法（長さ）として求めておいた。次に、防水コ
ンパウンド用オイル成分として長瀬産業（株）製 Ｓｙ
ｎｃｏｆｏｘ ４１５ ＤＰＬ−Ｎ（商品名、α−オレ
フィンオイルを主としたオイル）を用い、２５℃におい
て該オイル成分中に各試験片を４週間浸漬した。浸漬後
の試験片の対角線長さ（平均）を測定して試験前後の対
角線の長さ変化から数３の式により収縮率を求めた。結
果を表１に示す。

【００１９】

【数３】

【００２０】被覆（一括）除去性の評価は、加熱リムー
バＪＲ−４Ａ（住友電工（株）製）を使用、ＪＲ−４Ａ
の温度設定を９０℃にし、テープ心線を３秒間把持した
後、力を入れて引き抜く。その後、表面をアルコールで
一拭き清拭し、着色層以下の残留を観察し、被覆層が全
く存在しなければ一括被覆除去成功、一部でも被覆残存
が観察されれば失敗と判定する。測定サンプル数ｎ＝１
０として、成功率（％）を求めた。結果を表１に示す。

【００２１】また、一般に低温環境においては被覆が収
縮してヤング率が上昇し、このときにファイバにイレギ
ュラリティが存在すると応力がかかり、いわゆるマイク
ロベンディングを発生しやすくなるので、低温での伝送
特性を試験した。試験方法は、テープ心線を、２５℃で
Ｓｙｎｃｏｆｏｘ ４１５ ＤＰＬ−Ｎ（商品名、長瀬
産業（株）製）中に４週間浸漬後、ＯＴＤＲ（ Optical
Time Domain Reflectmeter)を用いて、−４０℃での波
長１．５５μｍにおける伝送損失の測定を行い、２５℃
における波長１．５５μｍにおける伝送損失と比較し
て、伝送損失増加量（dB／km）を求めた。結果を表１に
示す。収縮率が大きいものが低温伝送特性の悪化を示し
た。

【００２２】

【表１】

【００２３】

【発明の効果】以上述べたように、２５℃での防水コン
パウンド用オイル中での一括被覆材の収縮率が、０．５
％以上５．０％以下という本発明の範囲内であれば、良
好な被覆除去特性及び光伝送特性を得ることができる。
これは、一括被覆材の収縮量がある程度大きければ、オ
イル成分の被覆層内への浸透により、より内側の被覆層
との界面の結合が切断されることで密着力は低下するも
のの、着色心線を締めつける力が発生するため、被覆一
括除去性の劣化がある程度抑制されるからである。ま
た、一括被覆樹脂が収縮するものを用いても、本発明の
収縮率の範囲内であれば、被覆収縮による応力発生等に
起因する伝送損失の増加はなく光伝送特性に優れた光フ
ァイバ、光ファイバケーブルとして実用に有利である。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の光ファイバ着色心線の一例の構造を
説明する概略断面図である。

【図２】 本発明の防水型光ファイバケーブルの一例の
構造を説明する概略断面図である。

【符号の説明】 １ 光ファイバ、 ２ 一括被覆層、 ３ 光ファ
イバテープ心線、 ４テンションメンバー、 ５ ス
ペーサ、 ６ 収納溝、 ７ 防水コンパウンド、
８ 抑え巻きテープ、 ９ 外部被覆層、 １
０ 防水型光ファイバケーブル。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも１条の光ファイバテープ心線
   に接触して防水コンパウンドが充填されてなる光ファイ
   バケーブルにおいて、該光ファイバテープ心線が複数本
   並列に配置された光ファイバ心線の外周に一括被覆層を
   形成されてなり、上記一括被覆層として防水コンパウン
   ド用オイル内での収縮率が０．５％以上５．０％以下で
   ある樹脂を用いたことを特徴とする光ファイバケーブ
   ル。
2. 【請求項２】 上記防水コンパウンド用オイルが炭化水
   素系オイルであり、上記樹脂が紫外線硬化型樹脂である
   ことを特徴とする請求項１記載の光ファイバケーブル。
3. 【請求項３】 複数本並列に配置された光ファイバ心線
   の外周に一括被覆層を形成してなる光ファイバテープ心
   線において、上記一括被覆層として防水コンパウンド用
   オイル内での収縮率が０．５％以上５．０％以下である
   樹脂を用いたことを特徴とする光ファイバテープ心線。
4. 【請求項４】 上記防水コンパウンド用オイルが炭化水
   素系オイルであり、上記樹脂が紫外線硬化型樹脂である
   ことを特徴とする請求項３記載の光ファイバテープ心
   線。