JP2001061470A - マウス胚性幹細胞 - Google Patents

マウス胚性幹細胞

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JP2001061470A
JP2001061470A JP24276399A JP24276399A JP2001061470A JP 2001061470 A JP2001061470 A JP 2001061470A JP 24276399 A JP24276399 A JP 24276399A JP 24276399 A JP24276399 A JP 24276399A JP 2001061470 A JP2001061470 A JP 2001061470A
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embryonic stem
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mouse
cell
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Sadahiro Azuma
貞宏 東
Minesuke Yokoyama
峯介 横山
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National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
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Science & Tech Agency
Agency of Industrial Science and Technology
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 汎用近交系マウスからキメラ形成能および生
殖細胞への分化能力を有し、インジェクション法及びア
グリゲーション法によるキメラ個体の作出に使用でき
る、雌のES細胞を樹立する。 【解決手段】 C57BL/6N系雌マウスの透明帯か
らイン・ビトロで孵化させた孵化胚盤胞をフィーダー細
胞上で培養し、分離したICMを培養し、イン・ビトロ
で継代維持が可能なES細胞を分離する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、C57BLマウス
系統から分離された雌の胚性幹細胞(ES細胞)に関す
るものである。本発明のES細胞は、インジェクション
( 注入) 法およびアグリゲーション( 集合) 法によるキ
メラ個体の作成に使用される。
【0002】
【従来の技術】胚性幹(Embryonic Stem, ES)細胞は初期
胚から分離された全能性を持つ細胞株である。このES細
胞は正常な胚とキメラ胚を形成させることにより、成体
のあらゆる成熟細胞へと分化する能力を保有しながら培
養維持が可能な細胞である。また、ES細胞はイン・ビト
ロの分化誘導条件によっても様々な細胞を生成させる能
力をもっている。マウス個体を構成する細胞は胚盤胞期
の内部細胞塊(Inner Cell Mass, ICM) あるいは外胚葉
(epiblast、エピブラスト)から派生した一次外胚葉に
由来している。その意味ではICM およびエピブラストは
全能性を持った幹細胞群であるといえる。このICM から
未分化状態を維持したまま培養分離されるのが胚性幹(E
mbryonic Stem, ES)細胞である。
【0003】このES細胞は形態的には胚性癌(Embryonal
Carcinoma,EC)細胞と類似しているが、イン・ビボおよ
びイン・ビトロでの分化能は高く、初期胚とキメラ胚を
形成させることにより、正常な胎仔発生に貢献し、成体
のあらゆる臓器にES細胞由来の成熟細胞が検出されるこ
とから、全能性の幹細胞と見なされている。ES細胞を未
分化状態で維持するには白血病抑制因子(leukaemia inh
ibitry factor, LIF)存在下にゼラチンコートしたプレ
ート上で、あるいは胎仔由来の線維芽細胞をフィーダー
細胞として培養することが必要である。この条件下では
遺伝子導入およびクローン化が可能であり、遺伝子改変
動物の作製において有力な手法として知られている。
【0004】一方、培養系を操作することにより、ES
細胞から血球系、心筋、骨格筋、神経など多数の細胞群
へ分化させることが可能である.ES細胞は、塊( 胚様
体)を形成して三次元的に増殖し、内胚葉、中胚葉、外
胚葉の三胚葉を構成しながら各成熟細胞へと分化するこ
とから、嚢胚期の胚の発生過程を再現していると見られ
ている。しかも、培養細胞であることからスケールアッ
プが容易であり、ICMおよびエピブラストから発生し
てくる様々な系列の前駆細胞を多数単離するのに非常に
都合が良い。したがって、ES細胞は、このような細胞
の発生過程に必要な液性因子のスクリーニングや遺伝子
機能の検討に威力を発揮する哺乳動物では唯一の実験系
である。
【0005】現在までに雌のES細胞でキメラ形成能が確
認されているものは、Evans 等 (In"Genetic Manipuati
on of the Early Mammalian Embryo"(初期哺乳類胚に
おける遺伝子操作) Constantiniおよび Jaenisch 編
集。コールド・スプリング・ハーバー・ニュ−ヨーク発
行、 1985 年 )によって129 系統マウスから樹立された
細胞株2 例と単為発生2 倍体化胚より樹立された129 系
統マウス由来の細胞株2例、CBA とC57BL 系統マウス間
のF1の単為発生胚に由来する2 例の細胞株に限られてい
る。さらに、汎用近交系C57BL マウス由来の細胞株で生
殖細胞への分化能力を維持しているものは、Ledermanお
よびBurki (Experimental Cell Research(エクスペリ
メンタル・セル・ リサーチ) 197, 254-258,1991) によ
り得られた雄の1 株(BL-III)にすぎない。また、その他
の近交系であるDBA(Experimental Cell Research(エク
スペリメンタル・セル・ リサーチ)221, 520-525,1995)
からも生殖細胞への分化能力を保持したES細胞が樹立さ
れているが、この株もやはり雄の細胞株1 株である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】現在使用されているES
細胞の殆ど全ては生殖細胞からテラトーマ(奇形腫)、
いわゆる胚性癌細胞(teratocarcinoma )を高率に形成
する系統として確立された系統である129系マウスに
由来する細胞である。汎用近交系から樹立されキメラ形
成能および生殖細胞への分化能力を持っている雌のES細
胞は存在しない。そのため、従来公知のES細胞は、雌
特異的な遺伝子改変実験には適しておらず、さらにES細
胞を体外で様々な組織に分化させ組織を個体へ移植しよ
うとした場合、拒絶反応を抑える免疫抑制剤投与による
障害を排除するためには雄個体のみへ移植することとな
る。そこで、一般的なマウス系統でしかも免疫系の研究
の蓄積が多く存在する汎用近交系C57BL 系マウスから雌
のES細胞の樹立が望まれている。
【0007】
【課題を解決するための手段】汎用近交系C57BL 系マウ
スからのES細胞を樹立すべく試みたところ、キメラ形成
能および生殖細胞への分化能力を有し、雌特異的な遺伝
子改変実験あるいは免疫抑制剤の障害を排除した組織移
植実験に大きく貢献する雌のES細胞H14-2-1 株の樹立に
はじめて成功し,本発明を完成するに至った。すなわ
ち、透明帯から脱出した孵化胚盤胞をES細胞の樹立に
使用すると効率的にES細胞を樹立できること、イン・
ビボで孵化させた場合、胚盤胞の回収率が低下するの
で、C57BL系統由来の胚盤胞をイン・ビトロで培養
することにより、透明帯から脱出させた孵化胚盤胞を作
成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】本発明は、以下の発明を包含する。 (1)汎用近交系C57BLマウス系統から分離され、
キメラ形成能および生殖細胞への分化能力を有する、雌
の胚性幹細胞。 (2)寄託番号FERM P−17534として寄託さ
れているH14-2-1 株である1項に記載の胚性幹細胞。 (3)イン・ビトロで透明帯から孵化させた胚盤胞を使
用して、胚性幹細胞株を樹立させる1項または2項に記
載の胚性幹細胞の樹立法。 (4)透明帯から孵化させた孵化胚盤胞を、胎仔より採
取し、マイトマイシンCにより***を抑制した線維芽細
胞をフィーダー細胞として、この上に播き、内部細胞塊
を増殖させる3項に記載の胚性幹細胞の樹立法。 (5)インジェクション法またはアグリゲーション法に
よるキメラ個体作成のための1項1または2項に記載の
胚性幹細胞の使用。 (6)BALB/c系マウス胚を受容体としてキメラ個
体を作成する5項に記載の使用。
【0009】
【発明の実施の形態】汎用近交系C57BL マウスから樹立
され、キメラ形成能および生殖細胞への分化能力を有す
る、本発明の雌の胚性幹細胞(ES 細胞)は、桑実胚期ま
での初期胚に細胞を接着させて集合させるアグリゲーシ
ョン( 集合) 法および胚盤胞の胞胚腔内へ細胞を注入す
るインジェクション( 注入) 法によりキメラ個体を作成
するのに使用される。本発明のES細胞を使用し、BA
LB/c系マウス胚を受容体(宿主胚) としてキメラ個
体を作成するとES細胞の寄与度の高いキメラ個体が得
られる。
【0010】ES細胞株を樹立するには、通常胚盤胞の
内部細胞塊の細胞を使用して培養を開始する。桑実胚の
解離細胞や着床を遅らせた胚盤胞も使用できる。しかし
ながら、これらの胚細胞は、直ちに上皮様細胞等に分化
するので、STO細胞株やマウス胎仔から調製した初代
繊維芽細胞を使用したフィーダー細胞層の上で、適当な
細胞密度を保ちつつ,培養液を頻繁に交換しながら、細
胞の解離と継代を繰り返すことにより、未分化幹細胞の
性質を保持した細胞を維持できる。
【0011】ES細胞の樹立に使用される標準的な方法
は、Evans et.al.、Nature、29
2,154−156(1981);Martin e
t.al.、Proc.Natl.Acad.Sci.
USA.,Vol.78、7634−7638(198
1)およびRobertson,E,J.、Embry
o−derived stem cells(胚由来幹
細胞).,IRL Press Ltd,Oxford
(1987)Teratocarcinomasand
Embryonic Stem Cells,A P
racticalApproach.(奇形腫細胞およ
び胚性幹細胞、実際的なアプローチ)に記載されてい
る。ES細胞の樹立には、10%FCS添加のウイッテ
ン培地で孵化させた胚を用いる方が、樹立効率が高い傾
向にある。したがって、本発明のES細胞は、胚盤胞を
イン・ビトロで孵化させて使用するのが好ましい。すな
わち、イン・ビボで孵化させた場合には、胚盤胞の回収
率が低下するので、C57BL系統由来の胚盤胞は、イ
ン・ビトロで培養して、透明帯から脱出させた孵化胚盤
胞をES細胞の樹立に使用するのが好ましい。
【0012】本発明のES細胞は、以下のようにして作
成される。まず、C57BL/6N系マウス雌10匹に
ついて、交配後3.5 日の子宮より36個の胚盤胞を採取
し、16個の胚盤胞は採取直後にフィーダー細胞上に播
き、残りの20個についてはFCS (牛胎児血清)を10% に
なるように添加したウイッテン(Whitten)培地
で一晩培養して透明帯から孵化させた孵化胚盤胞をフィ
ーダー細胞上に播いた。フィーダー細胞は妊娠15.5日目
の胎仔より線維芽細胞を採取し、マイトマイシンCによ
り***抑制を施して使用した。その結果、胚盤胞、孵化
胚盤胞共に全ての胚でICM (内部細胞塊)の増殖が確認
された。また、孵化胚盤胞由来ICM は胚盤胞由来のもの
に比べて増殖速度が速く、さらに大きなICM の塊を形成
して目立った分化像を示さなかったが、胚盤胞由来のIC
M の場合ICM 塊が小さな状態でも分化像を呈するものが
多く認められた。最終的に6 株の孵化胚盤胞に由来する
ES細胞株の樹立に成功した。
【0013】得られたES細胞株について染色体検査を
行ったところ、胚盤胞の由来にかかわらず、全てのES
細胞株において、正2倍体(40本)の染色体を有する
ことが確認された。また、同時に実施した浮遊培養によ
るイン・ビトロでの分化試験の結果、胚様体を形成し、
培養5日目には原始外胚葉と原始内胚葉様組織を構成し
た。さらに、これら二胚葉を構成した時点で、三次元的
な浮遊培養を継続するものと二次元的に接着培養するも
のとに分けて培養を継続した。その結果、三次元的に培
養したものでは赤血球が形成され、胚葉体が赤く染ま
り、自立的に拍動する心筋細胞経の分化が確認された。
また、二次元的に培養した胚葉体はシート状に広がり、
心筋、骨格筋、神経、上皮系、血管構造を作り出すのが
観察された。このように、イン・ビトロで胚盤胞を透明
帯から脱出させることにより、高率でC57BL由来の
胚からES細胞株の樹立に成功した。さらに、得られた
ES細胞を三次元的に分化誘導することにより赤血球細
胞の生成が確認された。
【0014】得られた6株のうち1株についてインジェ
クション法とアグリゲーション法によりキメラマウスを
作製し、ES細胞由来の産仔を確認した。インジェクシ
ョン法とアグリゲーション法とを比較すると、インジェ
クション法は、宿主胚として宿主胚自身のICMが存在
する胚盤胞を使用するので、個体への発生率、キメラ産
仔の出現率がアグリゲーション法に比べて高い傾向にあ
る。しかし、1回に処理できる数が限られる。一方、ア
グリゲーション法の場合は、大量の胚を1回で処理でき
るので、キメラ産仔の出現率が低くても、使用する価値
がある。いずれの方法を使用するかは、ES細胞の性質
により決定される。
【0015】
【実施例】以下の実施例により,本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明は,その要旨を超えない限り、以下
の実施例によって制限されるものではない。
【0016】実施例1 使用した培地の組成およびその作成法は、以下のとおり
であるES細胞培養用培地(Stem Cell Medium,SCM) SCMの組成(100ml) 80ml DMEM高グルコース 20ml FCS 1ml 2−メルカプトエタノール ストック(1) 1ml 非必須アミノ酸 (Gibco Cat. No.320-1140PG) 1mlヌクレオシド ストック(2) (1) 2−メルカプトエタノール ストック: 10ml のPBS に7 μl の2−メルカプトエタノールを溶解する。 (2) ヌクレオシド ストック: アデノシン 80mg グアノシン 85mg シチジン 73mg ウリジン 73mg チミジン 24mg を100 ml のmilli Q 水に添加して37℃に温めながら溶
解し、6ml ずつ分注して−20℃で保存し、添加するとき
は、37℃に温めて完全に溶解してからDMEMに加える。非
必須アミノ酸も同様にして保存して、添加する。
【0017】リン酸緩衝生理食塩水 (PBS) 10.0g NaCl 0.25g KCl 1.44g Na2 HPO4 ・12H2 O 0.25g KH2 PO4 1000mlのMilli Qに溶解してpHを7.2 に調整し、500
mlづつに分注後オートクレーブする。
【0018】トリプシン-EDTA (T-E) 2.5g トリプシン (Porcine Sigma Cat. No. T-0646) 0.4g EDTA 7.0g NaCl 0.3g Na2 HPO4 ・12H2 O 0.24g KH2 PO4 0.37g KCl 1.0g D-グルコース 3.0g Tris 1.0ml フェノールレッド (Gibco. 0.5%) 1000mlに溶解してpH7.6 に調整する。0.22μm フィルタ
ーで濾過滅菌後10mlづつ分注して−20℃で保存す
る。
【0019】凍結培地 DMEM,20%(v/v)FCS,10%(v/v)
DMSOウイッテン(Whitten)培地 (100ml) 514mg NaCl 36mg KCl 16mg KH2 PO4 53mg 乳酸Ca−5H2 O 29mg MgSO4 −7H2 O 190mg NaHCO3 100mg グルコース 0.37ml 60%乳酸Na 3.5mg ピルビン酸Na 300mg BSA(ウシ血清アルブミン) 8mg ペニシリン 5mg ストレプトマイシン を、100mlMilliQ水に溶解後、0.22μm フィ
ルターで濾過する。ウイッテン(Whitten)培地
−Hepesは、上記ウイッテン培地のNaHCO3
22mgに減量し、代わりにHepes477.6mgを
入れ、HClでpHを7.2に調整して得られる。
【0020】(1) 胚の回収 C57BL/6N系マウスの発情雌を外隠部の兆候から
10匹選び出し、夕方(16時〜17時)に雄のケージ
に入れ、翌朝8匹の個体に膣栓を確認し、これを集め
た。3日後(受精から3.5日後)これらの雌個体から
子宮を取り出し、ウイッテン培地−Hepes(Whi
tten Medium−Hepes)(組成は培地組
成の項参照)で胚を洗い流した。ここで36個の胚盤胞
を得た。
【0021】(2) 胚盤胞の孵化 得られた胚盤胞を60mmディッシュ中にミネラルオイ
ルで覆ったウイッテン培地−10%FCS 0.2ml
の小滴を作り、その小滴中で1晩培養し、透明帯から孵
化させた。
【0022】(3) 孵化胚盤胞の培養 孵化胚盤胞を、あらかじめフィーダー細胞層を形成させ
た4ウェルプレートに1個ずつ入れSCM−20%FC
S(組成は培地組成の項参照)1ml中で培養した。フ
ィーダー細胞に栄養外胚葉(Trophoblast)
が接着して内部細胞塊(Inner C ell M as
s;ICM)が増殖を始めた時点(3日〜4日培養後)
で、ICMが増殖していて、かつそれが目立った分化が
認められないウェルについて、培地をPBS(培地の項
参照)1 mlに置き換えた。
【0023】なお、フィーダー細胞は、以下のようにし
て作成した。まず、コンフルエントの100mlディッ
シュにマイトマイシンCを5ml添加し、2.5時間処
理して***抑制をかけ、次いで培地を除き、5mlPB
Sで5回洗浄し、MMCを完全に除く。さらに、T−E
処理により、細胞を剥がし、遠心して上清を除く。10
mlDMEMに再懸濁して、3×105 /mlに調節し
て1、3.5、60mmプレート当たり各々0.5、
1、2mlずつ播く。なお、フィーダー細胞は、使用す
る前日までに作成する。その使用期間は、MMC処理後
7日以内とする。
【0024】(4) ICMの分離 PBSに置き換えたウェルからICMを、ガラス毛細管
を用いて吸引し、フィーダー細胞と分離採取した。これ
をミネラルオイルで覆った20μlのT−E緩衝液(組
成は培地の項参照)中に加え、細胞がばらばらになった
ら(3分〜5分)、SCM20μlを添加しトリプシンの
作用を止めた。このICMを先端の直径100〜200
μmのガラス毛細管(自家製)を用いて吸引、吹き出し
を繰り返すことによりICMを10個くらいの細胞塊に
分離した。
【0025】
【0026】(5) ICMの培養 上記のようにして、ばらばらにしたICMを、SCM1
mlを入れた4ウェルプレートで7日〜10日(ウェル
によって増殖の仕方が違うので培養時間は異なった)培
養し、ES細胞様の細胞が増殖し、かつそれが目立った
分化を起こさないまま直径200μm以上になったこと
を確認した。
【0027】(6) ES様細胞の分離 上記のようにしてES様であることを確認した細胞は、
ガラス毛細管で吸い上げ、これをミネラルオイルで覆っ
た20μlのT−E溶液(組成は培地の項参照)に加
え、細胞がばらばらになったら(3分〜5分)SCM2
0μlを添加してトリプシンの作用を止めた。このES
様細胞を含んだ液を100〜200μmのガラス毛細管
(自家製)を用いて吸引、吹き出しを繰り返すことによ
り完全に1個の細胞に分離した。このようにしてC57
BL系統から分離された雌のES細胞H14−2−1株
は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄
託番号FERM P−17534として寄託されている
(寄託日: 平成11年8月26日)。
【0028】(7) ES細胞の凍結、融解 60mmのディッシュにコンフルエントに増殖した上記
のES細胞をT-E 溶液で剥して1500r.p.m で 5分間、遠心
して細胞を集め、冷やしておいた凍結培地(Freezing m
edium ) 1mlに懸濁して1.8ml クライオチューブに入
れ、凍結ボックス(freezing box)に納めて-80 ℃に一
晩、その後液体窒素中で保存する。凍結したES細胞は
使用する都度融解する。凍結バイアル(Freezing vial
)を30℃の微温湯で融解し、10mlのDMEMに懸濁して150
0r.p.m で 5分間遠心して細胞を集め、これをSCM4mlに
再懸濁して60mmディッシュ中でコンフルエントになるま
で培養する。
【0029】(8) ES細胞の培養 凍結しておいたES細胞を融解し、60mmのフィーダ
ー細胞層の存在するディッシュにまき、細胞がコンフル
エントになったディッシュはSCMを捨て、5mlのP
BSで洗い、1mlのT−E溶液で2〜3分処理した。
T−E溶液で処理したディッシュに1mlのSCMを加
えトリプシンの反応を中和し、先端を炎で焼いて滑らか
にしたパスツールピペットで単一の細胞になるまでピペ
ッティングした。次に1500rpmで遠心して細胞を
集め、5〜10mlのSCMに再懸濁して5〜10枚の
フィーダー細胞層の存在するディッシュにまきかえる。
このようなな継代作業を繰り返して未分化状態を維持し
たまま培養できることを確認した。
【0030】なお、ES細胞は、非常に良く増殖する細
胞なので、培地交換を毎日行う必要があり、pHを酸性
にしたままにすると分化する。また、ES細胞は、凝集
が分化シグナルになるので、継代のときに完全に単一に
する最初の段階では、ピペッティング後顕微鏡で凝集を
確認するのが好ましい。さらに、継代のときの細胞数を
一定にしないと分化が起こる。
【0031】(9) キメラマウスの作出(注入法;インジ
ェクション法) 標準的な方法は、文献(Robertson,E.J.,Embryo-derive
d stem cells.,IRL Press Ltd,Oxford(1987) Teraroca
rcinomas and Embryonic Stem Cells, A Prectical App
roach.)に記載されており、以下に記載の方法はこれに
則して行った。
【0032】インジェクションピペット(Drummo
nd社製;100 disposable micro
−pipet)に10個〜15個のES細胞を吸引し、
そのインジェクションピペットを差込んで、6〜12週
齢のBALB/C系雌マウスから得た胚盤胞の胞胚腔内
にES細胞を注入した。ES細胞の注入は23個の胚盤
胞について行い、それらの胚盤胞を60mmディッシュ
中にミネラルオイルで覆ったウイッテン培地−20%F
CS 0.2mlの小滴を作り、その小滴中で1時間培
養し、再び胞胚腔を形成させた。この胚を11〜12個
ずつ、偽妊娠2.5日目のICR系マウス、計2匹の受
容雌子宮角に移植した。
【0033】(10)キメラマウスの作出(集合法;アグリ
ゲーション法) 標準的な方法は文献(Nagy, A. and Rossant, J.(199
3) Production of completely ES cell-derived fetus
es.In Gene Targeting: A Practical Approach(ed.A.L.
Joyner).IRL Press, Oxford)に記載されており、以下
に記載の方法はこれに則して行った。
【0034】60mmディッシュにダーニングニードル
(Cat.No.DN−09;Biochemical
Laboratory Service Ltd.
製)を用いてくぼみを作製した。このくぼみにES細胞
1〜20個を入れ、その上にかぶさるようにICR、B
ALB/c系雌マウスから採取し、あらかじめ酸性タイ
ロード溶液(Sigma 社 Cad.No.T1788)で透明体を除去
した後、ウイッテン培地+10%FCSでpHを中和し
た8細胞期胚1個を入れた。これを1晩培養し、胞胚腔
が開き始めたところでICR系偽妊娠2.5日雌マウス
合計12匹の子宮角に移植した。
【0035】(11)ES細胞の生殖細胞への分化の確認 (9)(10) で作製したキメラマウスを、BALB/c系マ
ウス(アルビノ様)と交配し、その産仔を生後3週間目
で毛色の表現型を観察した。アルビノの個体は受容胚由
来の産仔で、有色の個体はES細胞由来の産仔である。
最終的な結果を以下の表1に示した。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】透明帯から孵化させた、汎用近交系であ
るC57BL/6N系マウスの孵化胚盤胞を、マイトマ
イシンCにより***抑制したフィーダー細胞で培養し、
次いで増殖したICMを培養して得られるES細胞は、
キメラ形成能および生殖細胞系への分化能力を有し、雌
特異的な遺伝子改変実験あるいは免疫抑制剤の障害を排
除した組織移植実験に使用できる。本発明のES細胞
は、インジェクション法及びアグリゲーション法による
2種類のキメラ作出法のどちらを使用してもキメラ個体
が得られる。また、BALB/c系マウス胚を受容体と
してキメラ個体を作成すると、ES細胞の寄与度の高い
キメラ個体が得られる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 汎用近交系C57BLマウス系統から分
    離され、キメラ形成能および生殖細胞への分化能力を有
    する、雌の胚性幹細胞。
  2. 【請求項2】 寄託番号FERM P−17534とし
    て寄託されているH14-2-1 株である請求項1に記載の胚
    性幹細胞。
  3. 【請求項3】 イン・ビトロで透明帯から孵化させた胚
    盤胞を使用して、胚性幹細胞株を樹立させることを特徴
    とする請求項1または2に記載の胚性幹細胞の樹立法。
  4. 【請求項4】 透明帯から孵化させた孵化胚盤胞を、胎
    仔より採取し、マイトマイシンC により***を抑制した
    線維芽細胞をフィーダー細胞として、この上に播き、内
    部細胞塊を増殖させることを特徴とする請求項3に記載
    の胚性幹細胞の樹立法。
  5. 【請求項5】 インジェクション法またはアグリゲーシ
    ョン法によるキメラ個体作成のための請求項1または2
    に記載の胚性幹細胞の使用。
  6. 【請求項6】 BALB/c系マウス胚を受容体として
    キメラ個体を作成する請求項5に記載の使用。
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