JP2001055958A - 空気掃気型の２サイクルエンジン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 小型で単一のチョーク弁５０によって混合気
通路９と空気通路１４を同時に開閉でき、しかも混合気
通路９から空気通路１４への混合気Ｍの吹き返しをなく
して、ＨＣ排出濃度を軽減できる空気掃気型の２サイク
ルエンジンを提供する。 【解決手段】 シリンダ１の燃焼室１ａにエアクリーナ
４を通った空気Ａと燃料の混合気Ｍを導入する前に、エ
アクリーナ４を通った空気Ａを導入して初期掃気を行う
２サイクルエンジンにおいて、前記エアクリーナ４に、
気化器３に設けられた混合気通路９および空気通路１４
の各入口９ｉ，１４ｉと、両入口に連通する入口室４２
と、この入口室４２に連通してエアクリーナ４内に開口
する共通孔４５と、前記入口室４２内に位置して前記共
通孔４５と各入口９ｉ，１４ｉとを区画して接続する区
画壁４６と、前記共通孔４５を開閉するチョーク弁５０
を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば刈払機のよ
うな小形回転機械の駆動源として用いられる空気掃気型
の２サイクルエンジンに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来のこの種エンジンの一例として、シ
リンダおよびシリンダヘッド内の燃焼室とクランクケー
ス内のクランク室とを連通する複数の掃気通路を形成し
て、これら掃気通路に、混合気通路のエアクリーナ下流
から空気を導入するための空気通路を接続し、混合気に
よる燃焼室内の掃気に先立って、空気による初期掃気を
行って、混合気の排気ポートからの吹抜けを抑制するも
のがある（特開平１０ー１２１９７３号公報参照）。

【０００３】また、他の例として、本件出願人は、先
に、クランク室から燃焼室へ混合気を供給する第１掃気
ポートとは別に、第１掃気ポートの上端よりも高い位置
にある上端を持つ第２掃気ポートを形成し、この第２掃
気ポートに、エアクリーナを通った掃気用空気を導入す
る空気通路を接続し、掃気行程において、第１掃気ポー
トが開かれる前に第２掃気ポートを開いて、掃気用空気
を燃焼室内に噴出し、その内部の燃焼ガスを排気ポート
から排出して、燃焼室内の空気による初期掃気を行うこ
とにより、前記吹抜けを抑制したものを提案した（特願
平１１−１５７７０３号）。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のよう
な空気による初期掃気を行うエンジンでは、混合気通路
と空気通路の両通路をエアクリーナに連通させて、エア
クリーナの内部に、エンジン始動時に両通路に供給する
空気の量を抑制するためのチョーク弁を設ける場合、前
記両通路に通じるエアクリーナ内の２つの入口に対して
各別にチョーク弁を設けると、チョーク弁の数が増すと
ともに、その操作系が複雑化する。そこで、前記エアク
リーナ内の入口を開閉するためには、例えば実公昭６３
ー３２３６２号公報に記載されているような単一のチョ
ーク弁により両通路の２つの入口を同時に開閉すること
が望ましい。しかし、単一のチョーク弁を用いて両入口
を開閉させる場合、大きなチョーク弁が必要となり、ま
たそのストローク量も大きくなるので、従来より使用さ
れているエアクリーナの内部にそのような大きなチョー
ク弁の収納スペースを確保することが困難になる。

【０００５】また、エンジン運転中には、チョーク弁を
開いてエアクリーナ内の両入口が開放されるため、混合
気通路からの吹き返し混合気が、混合気通路内の入口か
ら空気通路の入口へと入り込み、空気通路から混合気が
掃気行程時に燃焼室内に噴出されて、混合気の吹き抜け
を生じる可能性がある。

【０００６】そこで本発明は、チョーク弁を大型とする
ことなく、従来より使用されているエアクリーナ内に収
容可能な大きさの単一のチョーク弁で混合気通路と空気
通路を同時に開閉でき、しかも混合気通路から空気通路
への混合気の流入をなくして、確実にＨＣ排出濃度の軽
減を実現できる空気掃気型の２サイクルエンジンを提供
することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、シリンダの燃焼室に、エアクリーナを通
った空気と気化器において供給される燃料との混合気を
導入する前に、エアクリーナを通った空気を導入して初
期掃気を行う２サイクルエンジンにおいて、前記エアク
リーナに、前記気化器に設けられた混合気通路および空
気通路の各入口と連通する入口室と、この入口室に連通
してエアクリーナ内に開口する共通孔と、前記入口室内
に位置して前記共通孔と前記各入口とを区画して接続す
る区画壁と、前記共通孔を開閉するチョーク弁とが設け
られている。

【０００８】このエンジンによれば、エアクリーナに気
化器の混合気通路と空気通路の各入口に入口室を介して
連通する共通孔が形成され、この共通孔を単一のチョー
ク弁で開閉することにより、両通路に供給する空気の量
が調整される。このように、チョーク弁は単一で済むう
えに、共通孔と合致する程度の大きさとすればよいの
で、従来より使用されているエアクリーナ内に十分収納
できる。

【０００９】また、前記入口室内には、共通孔と各入口
を区画して接続する区画壁が設けられているので、この
区画壁により、混合気通路からの吹き返し混合気が空気
通路へ侵入するのを抑制できる。このため、掃気行程時
に空気通路から混合気混じりの空気が燃焼室内に噴出さ
れることは殆どなくなる。

【００１０】請求項２のエンジンは、請求項１の構成に
おいて、前記入口室は、気化器側の端部が開放され、か
つエアクリーナの内方側に底壁を持つ窪み状に形成さ
れ、前記共通孔は、前記底壁に設けられて、気化器の混
合気通路および空気通路の一部と対向している。これに
よれば、簡単な構成で共通孔をエアクリーナ内に設ける
ことができ、また、底壁の一部が気化器の混合器通路か
らの混合気の吹き返しの規制壁になって、エアクリーナ
内へ吹き返そうとする混合気の一部を底壁により効果的
に阻止できる。したがって、前記区画壁の作用により混
合気の吹き返しが空気通路内に侵入するのが防止される
ことと相まって、ＨＣ排出濃度の軽減が実現できる。

【００１１】請求項３のエンジンは、請求項１または２
の構成において、前記共通孔の横断面形状を円形として
いる。このようにすれば、従来と同一形状の小形のチョ
ーク弁がそのまま使える。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態
について図面を参照しながら説明する。図１は、本発明
の一実施形態にかかる空気掃気型の２サイクルエンジン
の一部を切欠いた正面図を示す。このエンジンは、例え
ば刈払機に使用される。同図においては、内部に燃焼室
１ａを形成したシリンダ１がクランクケース２の上部に
連結されている。シリンダ１の一側部（右側）には、吸
気系を構成する気化器３とエアクリーナ４が接続され、
他側部（左側）には排気系を構成するマフラー５が接続
されており、クランクケース２の下部には燃料タンク６
が装着されている。７はシリンダ１内を軸方向（この例
では上下方向）に往復動するピストンである。

【００１３】前記シリンダ１と気化器３の間には、左右
２分割構造のアダプタ８が設けられ、これら１，３，８
の内部に混合気通路９を形成して、その出口端の吸気ポ
ート１０をピストン７が摺動するシリンダ１の筒部１ｂ
内に開口させている。また、このシリンダ１の筒部１ｂ
の吸気ポート１０よりも上方位置には、クランクケース
２内のクランク室２ａと掃気通路３１を介して連通する
第１掃気ポート１１が形成されている。さらにシリンダ
１の筒部１ｂには、マフラー５に連通し、前記第１掃気
ポート１１の上端よりも高い上端をもつ排気ポート１２
が形成されている。

【００１４】また、前記シリンダ１の筒部１ｂには、第
１掃気ポート１１の上端よりも高く、かつ排気ポート１
２の上端よりも低い上端をもつ第２掃気ポート１３を開
口させている。つまり、排気ポート１２、第１掃気ポー
ト１１および第２掃気ポート１３のそれぞれの上端位置
をＨ１，Ｈ２，Ｈ３としたとき、上方からＨ１，Ｈ３，
Ｈ２の順に低くなる。図２に示すように、第１掃気ポー
ト１１は前後方向に対向して２つ設けられ、排気ポート
１２から離れる方向に向かって、掃気Ｓを噴出するよ
う、燃焼室１ａの軸心Ｃから排気ポート１２と反対側へ
偏位した位置Ｃ１に向かって開口している。この第１掃
気ポート１１は１つ、または３つ以上でもよい。

【００１５】第２掃気ポート１３は、シリンダ１の筒部
１ｂの一側部に並んで３つが形成されている。また、図
１に示すシリンダ１の周壁部とアダプタ８および気化器
３の内部で前記混合気通路９の上部側には、これと平行
状に空気通路１４が形成され、この空気通路１４を介し
て前記第２掃気ポート１３をエアクリーナ４のクリーナ
エレメント４ａ（図５）の下流側に連通させている。前
記各第２掃気ポート１３は、図２に示す排気ポート１２
の径方向対向位置に設けられ、かつ、図１に示す燃焼室
１ａの上方に向って空気Ａを送給するように、燃焼室１
ａの軸心（シリンダ１の筒部１ｂの軸心）Ｃに向かって
斜め上方に開口させている。

【００１６】さらに、前記アダプタ８の内部には、図２
に示すように、空気通路１４を開閉して、空気Ａの下流
側への通過を許し、上流側への逆流を阻止するリード弁
からなる逆止弁１５が設けられ、この逆止弁１５の下流
側でアダプタ８の一部とシリンダ１に、空気通路１４の
一部を構成して第２掃気ポート１３のそれぞれに開口す
る３つの分岐通路１４ａが形成されている。分岐通路１
４ａは、１本または２本あるいは４本以上としてもよ
い。なお、図中、１５ａは逆止弁１５のストッパであ
る。

【００１７】また、前記空気通路１４における逆止弁１
５の下流側とクランク室２ａとの間に連通路１６を形成
する。この連通路１６として、シリンダ１の筒部１ｂの
近くに、各分岐通路１４ａに対して直交する方向に延び
る連結孔１７を形成し、これの前後両側に筒状の連結具
１８を取り付けるとともに、図３に示すように、クラン
ク室２ａの下部の前後両側にも筒状の連結具１９を取付
けて、これら連結具１８，１９に、エンジンの外部に配
設されて前記連通路１６の一部を形成する連結パイプ２
０を接続している。連結パイプ２０は、この実施形態で
は、連通路１６の長さの半分以上となる主要部を形成し
ている。こうして連通路１６は、連結孔１７、連結具１
８，１９および連結パイプ２０により構成される。図２
において、２１はシリンダ１とアダプタ８の間に介装さ
れたガスケットで、これの右側には前記各分岐通路１４
ａの一部となる、３つの孔１４ｂが、また図３に示すよ
うに孔１４ｂの下部側には前記混合気通路９の一部とな
る矩形状の１つの孔９ａが、それぞれ形成されている。

【００１８】図１に示す気化器３には、混合気Ｍと空気
Ａの供給量を同時に制御するための回転弁２２を上下方
向に軸心を向けて取付ける。この回転弁２２は、図４に
示すように、軸方向に離間した空気孔２４と吸気孔２５
を有している。すなわち、円柱状の弁本体２３の上部側
に前記空気通路１４の一部を形成する空気孔２４を、ま
た下部側には前記混合気通路９の一部を形成する吸気孔
２５を、それぞれ径方向に貫通させて設けている。吸気
孔２５には、気化器３（図１）の下部から燃料を吸気孔
２５内に噴出するメインノズル３３が設けられている。

【００１９】刈払機の図示しない操作杆に設けたスロッ
トルレバー操作で、図１に示すワイヤなどの連結体２６
を介して、気化器３に取り付けた回転機構２７を駆動
し、この回転機構２７に連結された回転弁２２を軸心周
りに回転させることにより、混合気通路９および空気通
路１４に対する吸気孔２５と空気孔２４の開口面積、つ
まり通路面積を調整して、これら両通路９，１４からク
ランク室２ａに至る混合気と空気の量をそれぞれ同時に
調整制御する。このとき、運転時に必要とする混合気量
は空気量よりも多いので、前記空気孔２４に対し吸気孔
２５は大きめに形成される。エンジンの運転時には、ス
ロットルレバーで回転弁２２を回転させることにより、
その吸気孔２５と空気孔２４の混合気通路９および空気
通路１４に対する開口面積が調整されて、運転時に前記
両通路９，１４からクランク室２ａに至る混合気Ｍと空
気Ａの供給量が同時に制御される。

【００２０】前記気化器３の上流側に連設されたエアク
リーナ４は、図５に示すように、２つのケース半体４０
ａ，４０ｂが結合されて、全体がほぼ直方体の形状を呈
する中空のクリーナケース４０を備えている。このクリ
ーナケース４０の気化器側に位置する第１ケース半体４
０ａには、その気化器側の底壁４８に外方（気化器側）
に向かって膨出する膨出部４１が設けられ、この膨出部
４１の内径側に、前記混合気通路９の入口９ｉと空気通
路１４の入口１４ｉとに連通するように上下方向に延び
る長円形状の入口室４２が形成されている（図８）。さ
らに、この入口室４２は気化器側端部が開放されてお
り、エアクリーナ４の内方側に底壁４８ａを持つ窪み状
に形成されるとともに、この入口室４２における両通路
９，１４の入口９ｉ，１４ｉとの対向部分に、第１およ
び第２の接続口４３，４４が形成されている。

【００２１】膨出部４１の内径側に、第１ケース半体４
０ａの内方側に若干突出する形で、入口室４２の前記底
壁４８ａが形成されており、この底壁４８ａに、エアク
リーナ４内の清浄空気Ａを入口室４２の各接続口４３，
４４に送る共通孔４５が形成されている。また、第１ケ
ース半体４０ａの底壁４８の内面に複数のエアクリーナ
エレメント７０の支持杆４９を突設して、クリーナエレ
メント７０をそれらの外周に配設して支持させている。
このクリーナエレメント７０により、クリーナケース内
が、外径側の前室４ａと内径側の後室４ｂに仕切られて
おり、前記ケース半体４０ａに形成した空気口７１（図
６）から前室４ａに取入れた空気Ａを、クリーナエレメ
ント７０を通過させ、このエレメント７０で清浄化され
た空気Ａを後室４ｂから共通孔４５に供給するようにし
ている。

【００２２】前記共通孔４５は、前記入口室４２の底壁
４８ａで、入口室４２の上下方向中間部に形成する。ま
た、共通孔４５は、共通孔４５の軸心方向から見て各接
続口４３，４４の一部に跨って対向するような大きさの
横断面円形状に形成する。このようにすれば、前記共通
孔４５を開閉するために設けられる後述のチョーク弁５
０が小型にできる。上記のように、この実施形態の共通
孔４５は、最もコンパクトな円形状としたが、空気流量
の分配等の条件によって楕円にするなど、形状を変更し
てもよい。

【００２３】また、前記入口室４２の内部には、その気
化器端面から共通孔４５の出口端面４５ａの近傍まで達
する区画壁４６が形成されており、この区画壁４６によ
り、第１および第２接続口４３、４４と共通孔４５と
が、つまり混合気通路入口９ｉおよび空気通路入口１４
ｉと共通孔４５とが、区画して接続されている。この区
画壁４６は、この実施形態の場合、図８のように、長円
形の入口室４２の上方側円弧部の中心点を中心として、
この円弧部と連続して円形を呈するように半円弧状に形
成されている。この区画壁４６により入口室４２の空気
通路１４への第２接続口４４は円形状とされ、また混合
気通路９（図５）への第１接続口４３は、入口室４２の
下方側円弧部と区画壁４６とで囲まれた非円形状を呈し
ており、エアクリーナ４の内方から共通孔４５をその軸
心方向に見たとき、共通孔４５に対する第１接続口４３
の開口面積（共通孔４５と第１接続口４３のオーバーラ
ップした面積）は、第２接続口４４のそれより大きくし
ている。前記区画壁４６は、図５の混合気通路９と空気
通路１４に送る空気の比率に応じて共通孔４５に対する
上下方向の取付位置や前記開口面積を適宜決めればよ
い。

【００２４】また、区画壁４６は上記したように気化器
端面から共通孔４５の出口端面４５ａの近傍まで延びて
いるが、区画壁４６の端部４６ａと共通孔４５の出口端
面４５ａの間には隙間Ｂが設けられている。すなわち、
区画壁４６は、気化器３の混合気通路９から空気通路１
４側への吹き返しを防止できる高さを持つとともに、区
画壁４６により共通孔４５から空気通路１４への接続部
分が絞られて大きい吸気抵抗にならないように、共通孔
４５の出口端面４５ａとの間に適度の隙間をもつように
形成されている。

【００２５】さらに、第１ケース半体４０ａには、共通
孔４５を開閉するチョーク弁５０を取り付ける。このチ
ョーク弁５０は、従来使用されているものと同様のもの
で、図８のように、前記半体４０ａの内部に配置されて
前記共通孔４５を開通する塞止部５１と、この塞止部５
１から延びて、図９のようにケース半体４０ａの外部に
突出する操作部５２とを備え、これら塞止部５１と操作
部５２は前記底壁４８に貫通させた共通軸５３により互
いに連結されている。そして、共通軸５３を支点に操作
部５２を手動で揺動操作することにより、図８の実線お
よび仮想線で示すように、塞止部５１が共通孔４５を開
閉する。前記塞止部５１には、チョーク弁５０による共
通孔４５の閉止時にエアクリーナ４内の清浄空気Ａの一
部を入口室４２側に供給するための小孔５１ａを形成し
ている。前記第１ケース半体４０ａの外部には、図９に
示すように、操作部５２のガイド部５４を設けている。

【００２６】図５に示すように、第１ケース半体４０ａ
の底壁中央部４８ａの一部である下半部４８ａａ、つま
り共通孔４５の下方に位置する部分は、気化器の混合気
通路９の一部（下半部）と対向する吹返し規制壁を形成
している。

【００２７】図５に示すエアクリーナ４の内部には、前
記共通孔４５と対向するように、金属製の吹き返し防止
部材６０が装着されている。この防止部材６０は、図６
に示すように、前記共通孔４５と所定間隔をおいて対向
する吹き返し規制部６１と、図７に明示するように、こ
れの左右両側から第１ケース半体４０ａの底壁４８の内
面に向かって延びる一対の脚部６２と、この脚部６２の
先端から規制部６１と平行に延びる一対の取付部６３と
を備えている。各取付部６３を、前記第１ケース半体４
０ａの底壁４８における共通孔４５の左右両側に突設し
たボス部４７に、ボルトのような固定具６４により固定
し、かつ前記規制部６１に第２ケース半体４０ｂの中央
部分をボルトのような固定具６５により固定する。図の
実施形態では、前記規制部６１の第１半体４０ａ側にナ
ット６６を溶接のような手段で固着し、これに第２ケー
ス半体４０ｂの中央部分に形成した貫通孔６７からボル
ト６５を螺着することにより、第２ケース半体４０ｂを
前記規制部６１に固定している。

【００２８】次に、以上の構成によるエンジンの作用に
ついて説明する。図１に示すシリンダ１内のピストン７
が上昇して（圧縮行程）、第１掃気ポート１１，第２掃
気ポート１３，および排気ポート１２がこの順序で閉じ
られると、燃焼室１ａの内部圧力が上昇するとともに、
クランク室２ａは負圧になる。これにより、このクラン
ク室２ａに連通する連通路１６と、この連通路１６に接
続された空気通路１４とが負圧になって逆止弁１５が開
き、エアクリーナ４からの空気Ａが空気通路１４を通っ
て連通路１６に導入され、その連結パイプ２０内の一部
もしくは全部に充満する。さらに、ピストン７が上昇し
て吸気ポート１０が開かれたとき、混合気Ｍが気化器３
から混合気通路９を経てクランク室２ａ内に導入され
る。

【００２９】ピストン７の上死点付近で、燃焼室１ａ内
の混合気が点火プラグ３２により点火されて爆発し、ピ
ストン７が下降を開始する（膨張行程）。この下降に伴
い、先ずシリンダ１の排気ポート１２が開かれて、燃焼
室１ａ内の燃焼ガスＧが外部のマフラー５に排出され始
め、これにより燃焼室１ａの内部圧力が若干下がる。次
に、第２掃気ポート１３と第１掃気ポート１１が開放さ
れ始める（掃気行程）。まず、第２掃気ポート１３が開
かれる。このとき、ピストン７の下降によってクランク
室１ａ内の圧力はかなり上昇しているため、連通路１６
および分岐通路１４ａの圧力も上昇して逆止弁１５が閉
じられるので、連結パイプ２０内に充満していた空気Ａ
が圧力低下した燃焼室１ａ内に噴出され、その内部の燃
焼ガスＧが排気ポート１２からマフラー５に追い出され
て，燃焼室１ａ内の空気による掃気が行われる。

【００３０】このとき、前記各掃気ポート１３からの空
気Ａは、排気ポート１２に対するシリンダ１の径方向対
向位置から燃焼室１ａの軸心Ｃの方向に向け、ピストン
７の上方に向って噴出される。このため、燃焼室１ａ内
に残る燃焼ガスＧが掃気行程の初期に空気Ａによって素
早く掃気されて、掃気効率が高められる。こうして、燃
焼室１ａに、エアクリーナ４を通った空気Ａと気化器３
において供給される燃料との混合気Ｍを導入する前に、
エアクリーナ４を通った清浄な空気Ａを導入して初期掃
気を行う。マフラー５に排出された燃焼ガスＧは、マフ
ラー５内で消音され、温度が低下した排ガスＥは、図２
に示すマフラー５の背面に設けた排出パイプ３０から外
部に排出される。

【００３１】ピストン７がさらに下降して第１掃気ポー
ト１１が開かれたとき、クランク室２ａ内の混合気Ｍ
が、掃気通路３１を通って第１掃気ポート１１から燃焼
室１ａに導入され、第２掃気ポート１３付近の燃焼室内
壁に当って反転しながら、残りの燃焼ガスＧを排気ポー
ト１２に向けて押し出すことにより、掃気が完了する。

【００３２】以上のエンジンを始動するときには、図５
に示すチョーク弁５０を揺動操作して、その塞止部５１
によりエアクリーナ４に設けた共通孔４５を閉鎖する。
これにより、チョーク弁５０の小孔５１ａを通った少量
の空気Ａの一部が入口室４２から第１接続口４３を経て
混合気通路９に送られ、この混合気通路９の途中で気化
器３のメインノズル３３から噴出される燃料が混合され
て、空気量に対し燃料の量の多いリッチな混合気Ｍが供
給される。

【００３３】一方、エンジンの運転中は、前記チョーク
弁５０が開放位置に回動されて、共通孔４５が開放さ
れ、この共通孔４５を通った空気Ａとメインノズル３３
からの燃料が所定の比率で混合されて、この所定比率の
混合気Ｍが供給される。また、共通孔４５を通った空気
Ａが空気通路１４に送られて、この空気Ａで掃気が行わ
れる。

【００３４】エアクリーナ４には、前記混合気通路９と
空気通路１４のそれぞれに連通する共通孔４５が形成さ
れているので、リッチな混合気Ｍをシリンダー１の燃焼
室１ａに供給するのに、共通孔４５を単一のチョーク弁
５０で開閉すればよい。また、チョーク弁５０は共通孔
４５と合致する程度の大きさとすればよいので、従来よ
り使用されているエアクリーナ４内の小さなスペースに
十分収納できる。

【００３５】さらに、エンジンの運転中には、混合気通
路９から空気通路１４への混合気Ｍの吹き返しが発生し
ようとするが、この吹き返しは、次のようにして抑制さ
れる。すなわち、エンジンの運転中には、脈動などによ
り混合気通路９内の混合気Ｍの一部が逆流して、前記第
１接続口４３から入口室４２および第２接続口４４を経
て空気通路１４に入ろうとする。しかし、クリーナケー
ス４０の入口室４２の第１接続口４３と第２接続口４４
の間に設けられた区画壁４６により、吹返し混合気の空
気通路１４への侵入が阻止されて、次の吸入工程時の混
合気通路９内に戻る。また、吹返し混合気はエアクリー
ナ４の内方（後室４ｂ）へも流出しようとし、一部は共
通孔４５を通って流出するが、他の一部は底壁４８ａに
おける吹返し規制壁４８ａａで阻止され、次の吸入工程
で混合気通路９へ戻る。従って、エアクリーナ４の内方
へ流出する混合気は一部のみで、しかも吸入空気で薄め
られるので、排気ガスへの影響、つまり、図１の空気通
路１４から燃焼室１ａを経て排気ポート１２から排気ガ
スに混じって流出することは殆どない。

【００３６】こうして、エンジンの運転中に吹返しが起
っても、図５の区画壁４６により混合気通路９から空気
通路１４への混合気Ｍの吹き返しが防止される。また、
入口室４２とエアクリーナ４の後室４ｂ内に入った混合
気は、吸入行程時に再び入口室４２に吸入されるが、そ
れは吹き返し混合気の一部であり、しかも、空気で薄め
られるので、掃気行程時に空気通路１４から混合気混じ
りの空気が燃焼室１ａ内に噴出されても濃度が薄い。し
たがって、混合気Ｍ中の燃料の吹き抜けが抑制されて、
低燃費となり、またＨＣ排出濃度が確実に軽減される。

【００３７】

【発明の効果】以上のように、本発明のエンジンによれ
ば、チョーク弁を大形とすることなく、従来より使用さ
れているエアクリーナ内に収容可能な大きさの単一のチ
ョーク弁で混合気通路と空気通路を同時に開閉でき、し
かも混合気通路から空気通路への吹き返し混合気の侵入
をなくして、ＨＣ排出濃度を軽減できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかるエンジンの一実施形態を示す一
部切り欠いた正面図である。

【図２】同エンジンの一部切り欠いた平面図である。

【図３】同エンジンの一部切り欠いた背面図である。

【図４】回転弁の縦断面図である。

【図５】同エンジンのエアクリーナ部分の断面図であ
る。

【図６】エアクリーナの一部切り欠いた側面図である。

【図７】図６のVII-VII 線から見た断面図である。

【図８】エアクリーナの第１ケース半体の内側面図であ
る。

【図９】同第１ケース半体の外側面図である。

【符号の説明】

１…シリンダ、１ａ…燃焼室、４…エアクリーナ、９…
混合気通路、１４…空気通路、４０…クリーナケース、
４２…入口室、９ｉ，１４ｉ…入口、４３，４４…接続
口、４５…共通孔、４６…区画壁、４８ａａ…吹返し規
制壁、５０…チョーク弁、６０…吹き返し防止部材、９
…混合気通路、１４…空気通路、Ａ…空気、Ｍ…混合気

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｆ０２Ｍ 17/34 Ｆ０２Ｍ 17/34 Ａ 35/10 ３１１ 35/10 ３１１Ｄ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダの燃焼室に、エアクリーナを通
   った空気と気化器において供給される燃料との混合気を
   導入する前に、エアクリーナを通った空気を導入して初
   期掃気を行う２サイクルエンジンであって、 前記エアクリーナに、 前記気化器に設けられた混合気通路および空気通路の各
   入口と連通する入口室と、 前記入口室に連通してエアクリーナ内に開口する共通孔
   と、 前記入口室内に位置して前記共通孔と前記各入口とを区
   画して接続する区画壁と、 前記共通孔を開閉するチョーク弁とが設けられている空
   気掃気型の２サイクルエンジン。
2. 【請求項２】 請求項１において、 前記入口室は、気化器側の端部が開放され、かつエアク
   リーナの内方側に底壁を持つ窪み状に形成され、 前記共通孔は、前記底壁に設けられて、気化器の混合気
   通路および空気通路の一部と対向している。
3. 【請求項３】 請求項１または２において、前記共通孔
   は横断面形状が円形である空気掃気型の２サイクルエン
   ジン。