JP2001032055A - 鉄損特性の優れた一方向性珪素鋼板およびその製造方法 - Google Patents

鉄損特性の優れた一方向性珪素鋼板およびその製造方法

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JP2001032055A
JP2001032055A JP11204022A JP20402299A JP2001032055A JP 2001032055 A JP2001032055 A JP 2001032055A JP 11204022 A JP11204022 A JP 11204022A JP 20402299 A JP20402299 A JP 20402299A JP 2001032055 A JP2001032055 A JP 2001032055A
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silicon steel
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Masao Iguchi
征夫 井口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フォルステライト系被膜の膜質を効果的に改
善することによって鉄損特性の向上を図る。 【解決手段】 フォルステライト系被膜を有する仕上げ
焼鈍済みの一方向性珪素鋼板を、その長手方向に引張っ
た状態で、該フォルステライト系被膜中にイオン化した
金属粒子および/またはセラミック粒子を含浸させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】一方向性珪素鋼板の電気・磁
気的特性の改善のうち鉄損の低減に係わる極限的な要請
を満たそうとする近年来の目覚ましい開発努力が、逐次
その実を挙げつつある。本発明は、鉄損特性の優れた一
方向性珪素鋼板およびその製造方法に関し、特にフォル
ステライト系被膜を効果的に改質することによって、鉄
損特性の一層の向上を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】一方向性珪素鋼板は、周知のとおり製品
の2次再結晶粒を(110)〔001〕すなわちゴス方
位に高度に集積させたもので、主として変圧器その他の
電機機器の鉄心として利用され、電気・磁気的特性とし
ては製品の磁束密度(B8 値で代表される)が高く、鉄
損(W17/50 で代表される)が低いこと、さらには磁歪
特性にも優れていることが要求される。
【0003】この一方向性珪素鋼板は、複雑多岐にわた
る工程を経て製造されるが、かかる製造法についてはこ
れまでにも数多くの改良が加えられていて、今日では、
板厚:0.30mmの製品で磁束密度B8 が1.90T以上、鉄損
17/50 が1.05W/kg以下、また板厚:0.23mmの製品で磁
束密度B8 が1.89T以上、鉄損W17/50 が0.80W/kg以下
の超低鉄損一方向性珪素鋼板が製造されるようになって
きた。
【0004】一般に一方向性珪素鋼板は、2次再結晶前
の脱炭・1次再結晶焼鈍時に鋼板表面に形成されるファ
イヤライト(FeSiO4)と呼ばれる鉄酸化物とMgO を主体
とする焼鈍分離剤との仕上げ焼鈍時における高温反応に
よって生成されたフォルステライト系被膜と、その上に
被成されるリン酸塩とコロイダルシリカを主成分とする
絶縁被膜とによって鋼板表面に張力を付与することによ
り、鉄損の低減および磁歪の改善が行われてきた。
【0005】一方、最近では、珪素鋼板の仕上げ焼鈍時
に形成されるフォルステライト系被膜を除去したのち、
鋼板表面を研磨し、その後さらにCVDやPVDによっ
てセラミック被膜を被成することにより、鉄損特性を改
善する方法が提案されている(例えば特公昭63−54767
号公報)。また、仕上げ焼鈍時に、フォルステライト系
被膜を形成させずに、直接、鏡面化を達成する方法につ
いても種々提案されている。
【0006】上記した技術はいずれも主に冶金学的な手
法であるが、これらの方法とは別に、特公昭57−2252号
公報に提案されているように、仕上げ焼鈍後の鋼板の表
面にレーザー照射やプラズマ照射(B.Fukuda, K.Sato,
T.Sugiyama, A.Honda and Y.Ito : Proc. of ASM Con.
of Hard and Soft Magnetic Materials. 8710-008,(US
A), (1987) )を行い、人為的に180 °磁区幅を減少さ
せて鉄損を低減する方法(磁区細分化技術)が開発され
た。この技術の開発により、一方向性珪素鋼板の鉄損は
大幅に低減されるようになった。しかしながら、この技
術は、高温での焼鈍に耐え得ないという欠点があり、用
途が歪取焼鈍を必要としない積鉄心変圧器に限定される
という問題があった。
【0007】この点、歪取焼鈍に耐え得る磁区細分化技
術として、一方向性珪素鋼板の仕上げ焼鈍後の鋼板表面
に線状の溝を導入し、溝による反磁界効果を応用して磁
区の細分化を図る方法が工業化された(H.Kobayashi,
E.Sasaki, M.Iwasaki and N.Takahashi : Proc. SMM −
8.,(1987), P.402)。また、これとは別に、一方向性
珪素鋼板の最終冷延板に局所的な電解エッチングを施す
ことによって溝を形成し、磁区を細分化する方法(特公
平8−6140号公報)も開発され、工業化されている。
【0008】上述したとおり、最近の鉄損改善技術は、
冶金学的には、仕上げ焼鈍後の鋼板表面を鏡面化または
平滑化することが主流であるが、鋼板の表面を鏡面化ま
たは平滑化するには、形成されたフォルステライト系被
膜を除去したり、フォルステライト系被膜を形成させな
いための様々な工夫を必要とし、工程的にもまたコスト
的にも多大の負荷を余儀なくされる。この点、従来のよ
うに、仕上げ焼鈍時に形成されるフォルステライト系被
膜をそのまま有効に活用して、鏡面化材と遜色のない磁
気特性が得られるならばその効果は計り知れない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の要請
に有利に応えるもので、フォルステライト系被膜の膜質
を効果的に改善することによって鉄損特性の改善を図っ
た一方向性珪素鋼板を、その有利な製造方法と共に提案
することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記
の目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、フォルステ
ライト系被膜付きの珪素鋼板の表面に、微細な金属粒子
またはセラミック粒子を注入し、フォルステライト系被
膜の隙間や地鉄との界面近傍をかような微細粒子で埋め
てやると、フォルステライト系被膜との界面近傍に新た
に引張り歪みが導入され、その結果鉄損特性が格段に向
上することの知見を得た。本発明は、上記の知見に立脚
するものである。
【0011】すなわち、本発明の要旨構成は次のとおり
である。 1.フォルステライト系被膜を有する仕上げ焼鈍済みの
一方向性珪素鋼板であって、該フォルステライト系被膜
の隙間および地鉄との界面近傍に、金属粒子および/ま
たはセラミック粒子を含浸させたことを特徴とする鉄損
特性の優れた一方向性珪素鋼板。
【0012】2.フォルステライト系被膜を有する仕上
げ焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面全面に、その長手
方向にわたる引張り状態下で、イオン化した金属粒子お
よび/またはセラミック粒子を含浸させることを特徴と
する鉄損特性の優れた一方向性珪素鋼板の製造方法。
【0013】3.上記2において、鋼板に付加する引張
り応力が0.01〜10 kgf/mm2である鉄損特性の優れた一方
向性珪素鋼板の製造方法。
【0014】上記の製造方法において、フォルステライ
トの隙間や地鉄との界面近傍にイオン化した微細な金属
粒子やセラミック粒子を効率よく含浸させるには、地鉄
鋼板に電圧を印加してイオンの注入量を増大させること
が望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を完成するに至った
実験結果について説明する。 C:0.076 wt%、Si:3.38wt%、Mn:0.071 wt%、Se:
0.020 wt%、Sb:0.025 wt%、Al:0.020 wt%、N:0.
0078wt%およびMo:0.012 wt%を含有し、残部は実質的
にFeの組成になる珪素鋼連鋳スラブを、1350℃で4時間
加熱後、熱間圧延を施して板厚:2.2mm の熱延板とし、
ついで1050℃、1.5 分間の熱延板焼鈍(均一化焼鈍とも
いう)を施したのち、1000℃の中間焼鈍を挟む2回の冷
間圧延を施して板厚:0.23mmの最終冷延板とした。
【0016】ついで、この冷延板の表面に、アルキド系
樹脂を主成分とするエッチングレジストインキをグラビ
アオフセット印刷により、非塗布部が圧延方向とはぼ直
角に幅:200 μm 、間隔:4mmで線状に残存するように
塗布したのち、200 ℃で3分間焼付けた。この時のレジ
スト厚は2μm であった。このようにしてエッチングレ
ジストを塗布した鋼板に、電解エッチングを施すことに
より、幅:200 μm 、深さ:20μm の線状の溝を形成
し、ついで有機溶剤中に浸漬してレジストを除去した。
この時の電解エッチングは、NaCl電解液中で電流密度:
10 A/dm2、処理時間:20秒の条件で行った。
【0017】その後、840 ℃の湿H2中にて脱炭・1次再
結晶焼鈍を行ったのち、鋼板表面にMgO を主成分とする
焼鈍分離剤をスラリー塗布し、ついで 850℃で15時間の
焼鈍後、850 ℃から10℃/hの速度で1150℃まで昇温して
ゴス方位に強く集積した2次再結晶粒を発達させた後、
1200℃の乾H2中で純化処理した。
【0018】しかるのち、未反応のMgO を除去後、3vol
%燐酸液中(60℃、45秒) に浸漬処理してフォルステラ
イト被膜(膜厚:1.2 μm )を活性化したのち、鋼板の
長手方向に対し2 kgf/mm2の引張り応力を付加した状態
で、PVD 装置を用いてTi (HCD 法) および SiNX (マグ
ネトロンスパッタ法)を被膜全面に注入・含浸させた。
その後、燐酸塩とコロイダルシリカを含むコーティング
液を塗布・焼付けて、絶縁被膜を形成した。かくして得
られた方向性珪素鋼板の鉄損特性とフォルステライト被
膜中へのTiおよび SiNX の含浸量との関係について調べ
た結果を、図1に示す。
【0019】なお、フォルステライト被膜中へのTiおよ
び SiNX の含浸量を直接的に測定することは難しい。し
かしながら、この含浸量は、かかる微粒子を平滑面に堆
積させた時の堆積量すなわち膜厚に比例する。そこで、
本発明では、化学研磨により平滑化した珪素鋼板である
別のサンプルを用いて測定した膜厚(この膜厚の測定
は、Alpha - step 200 (Tencor instrument(株) を用い
て行った)で、フォルステライト被膜中へのTiおよび S
iNX の含浸量を代替表示するものとした。なお、特にマ
グネトロンスパッタ法による SiNX の含浸に際しては、
図2に示すような装置を用い、珪素鋼基板に−50Vの電
圧を印加して実験を行った。
【0020】図1から明らかなように、フォルステライ
ト被膜中に、膜厚代替表示で0.01〜0.5 μm 厚のTiおよ
び SiNX を含浸させることによって、鉄損を大幅に低減
することができた。
【0021】このように、フォルステライト被膜中に微
細な金属粒子やセラミック粒子を含浸させることによっ
て、鉄損特性が改善される理由については、まだ明確に
解明されたわけではないが、発明者らは次のように考え
ている。すなわち、図3(a) に示す模式図は、現行の珪
素鋼板のフォルステライト被膜上に絶縁被膜を塗布した
状況を示したものであるが、フォルステライトの凹凸の
上に絶縁被膜が塗布された状況で張力が付与されている
ため、珪素鋼板において十分な張力効果を発揮している
とは言えない状況となっている。これに対し、本発明を
模式的に示した図3(b) によれば、フォルステライト被
膜の隙間および地鉄との界面近傍にTiや SiNX の微細粒
子が含浸しているため、珪素鋼板の界面では新たに引張
り歪みが生じ、その分鋼板に対する付与張力が増大する
ので、鉄損が低減するものと考えられる。ここで、これ
らの微細粒子は、フォルステライト被膜の隙間および地
鉄との界面近傍に含浸していることにより上記の効果を
生じるが、フォルステライト被膜の表面に付着していて
も良い。
【0022】このように、本発明では、珪素鋼板の界面
近傍に効果的に張力を付与することができるので、高磁
束密度および低鉄損が得られるのである。さらに、本発
明では、フォルステライト被膜中の隙間に微量のTiや S
iNX を含浸させるだけで良いので、低コストで極めて効
果的に鉄損を低減させることができる技術である。な
お、この場合に、TiやSiは、イオン化したTi+ やSi+
数Åの微粒子であるので、フォルステライト被膜の隙間
に容易に含浸させることかできる。
【0023】次に、本発明における好適素材および製造
条件について説明する。本発明の素材である含珪素鋼と
しては、従来公知の成分系いずれもが適合するが、代表
組成を掲げると次のとおりである。 C:0.01〜0.08wt% Cが、0.01wt%より少ないと熱延集合組織の抑制が不十
分となって大きな伸長粒が形成されるため磁気特性が劣
化し、一方0.08wt%より多いと脱炭工程で脱炭に時間が
かかり経済的でないので、0.01〜0.08wt%程度とするの
が好ましい。
【0024】Si:2.0 〜4.0 wt% Siが、2.0 wt%より少ないと十分な電気抵抗が得られな
いため渦電流損が増大して鉄損の劣化を招き、一方 4.0
wt%より多いと冷延の際に脆性割れが生じ易くなるの
で、 2.0〜4.0 wt%程度の範囲とすることが好ましい。
【0025】Mn:0.01〜0.2 wt% Mnは、一方向性珪素鋼板の2次再結晶を左右する分散析
出相としてのMnSまたはMnSe量を決定する重要な成分で
ある。Mn含有量が0.01wt%を下回ると2次再結晶を生じ
させるのに必要なMnS等の絶対量が不足し、不完全2次
再結晶を起こすと同時に、ブリスターと呼ばれる表面欠
陥が増大する。一方、0.2 wt%を超えると、スラブ加熱
等においてMnS等の解離固溶が行われたとしても、熱延
時に析出する分散析出相が粗大化し易く、抑制剤として
望まれる最適サイズ分布が損なわれて磁気特性が劣化す
るので、Mn量は0.01〜0.2 wt%程度とすることが好まし
い。
【0026】 S:0.008 〜0.1 wt%、Se:0.003 〜0.1 wt% SおよびSeはいずれも、0.1 wt%以下、中でもSは0.00
8 〜0.1 wt%、またSeは0.003 〜0.1 wt%の範囲とする
ことが好ましい。というのは、これらが 0.1wt%を超え
ると熱間および冷間加工性が劣化し、一方それぞれ下限
値に満たないとMnS、MnSeとしての1次粒成長抑制機能
に格別の効果を生じないからである。その他、インヒビ
ターとして従来公知のAl,Sb,Cu,SnおよびB等を複合
添加することは、本発明の効果を妨げるものではない。
【0027】次に、本発明に従う一方向性珪素鋼板の製
造工程について説明する。まず、素材を溶製するには、
LD転炉、電気炉、平炉、その他公知の製鋼炉を用い得
ることは勿論のこと、真空溶解やRH脱ガス処理を併用
することもできる。
【0028】本発明に従い、素材中に含有されるS、Se
あるいはその他の1次粒成長抑制剤を溶鋼中に微量添加
する方法としては、従来公知の何れの方法を用いても良
く、例えばLD転炉、RH脱ガス終了時あるいは造塊時
の溶鋼中に添加することができる。また、スラブ製造
は、コスト低滅、さらにはスラブ長手方向における成分
あるいは品質の均一性等の経済的・技術的利点の面で連
続鋳造法の採用が有利ではあるが、従来の造塊スラブの
使用を妨げるものではない。
【0029】連続鋳造スラブは、スラブ中のインヒビタ
ーを解離・固溶させるために、1300℃以上の温度に加熱
される。その後、このスラブは熱間粗圧延ついで熱間仕
上げ圧延が施されて、通常厚み 1.3〜3.3 mm程度の熱延
板とされる。
【0030】次に熱延板は、必要に応じ 850〜1100℃程
度の温度範囲で熱延板焼鈍を施したのち、1回または中
間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して最終板厚とする
が、高磁束密度で低鉄損の特性を有する製品を得るには
最終冷延率(通常55〜90%)に注意を払う必要がある。
なお、板厚については特に制限はなく、この種鋼板の通
常の板厚である 0.1〜0.5mm のものいずれもが有利に適
合する。
【0031】鋼板表面に、磁区細分化のための線状溝を
形成する場合には、この最終冷延を終え製品板厚となっ
た鋼板に対して行うのがとりわけ有利である。すなわ
ち、最終冷延板または2次再結晶前後の鋼板の表面に、
圧延方向と交差する向きに2〜10mmの間隔で、幅:50〜
500 μm 、深さ:0.1 〜50μm の線状の凹領域を形成さ
せるのである。ここに、線状凹領域の間隔を2〜10mmの
範囲に限定したのは、2mmに満たないと鋼板凹凸があま
りにも顧著で磁束密度が低下し経済的でなくなり、一方
10mmを超えると磁区細分化効果が小さくなるからであ
る。また、凹領域の幅が50μm に満たないと反磁界効果
を利用することが困難となり、一方500 μm を超えると
磁束密度が低下し経済的でなくなるので、凹領域の幅は
50〜500 μm の範囲が好ましい。さらに、凹領域の深さ
が 0.1μm に満たないと反磁界効果を効果的に利用する
ことができず、一方50μm を超えると磁束密度が低下し
経済的でなくなるので、凹領域の深さは 0.1〜50μm の
範囲が好ましい。なお、線状凹領域の形成方向は、圧延
方向と直角方向すなわち振幅方向とするのが最適である
が、振幅方向に対し±30°以内であればほぼ同様の効果
を得ることができる。
【0032】さらに、線状凹領域の形成方法としては、
最終冷延板の表面に、印刷によりエッチングレジストを
塗布、焼き付けた後、エッチング処理を施し、しかるの
ち該レジストを除去する方法が、従来のナイフの刃先や
レーザー等を用いる方法に比較して、工業的に安定して
実施できる点、および張力により一層効果的に鉄損を低
滅できる点で有利である。
【0033】以下、上記のエッチングによる線状溝形成
技術の典型例について具体的に説明する。最終冷延板の
表面に、アルキド系樹脂を主成分とするエッチングレジ
ストインキをグラビアオフセット印刷により、非塗布部
が圧延方向にほぼ直角に幅:200μm 、間隔:4mmで線
状に残存するように塗布したのち、200 ℃で約20秒間焼
き付ける。このとき、レジスト厚は2μm 程度とする。
このようにしてエッチングレジストを塗布した鋼板に、
電解エッチングまたは化学エッチングを施すことによ
り、幅:200 μm 、深さ:20μm の線状の溝を形成し、
ついで有機溶剤中に浸漬してレジストを除去する。この
時の電解エッチング条件は、NaCl電解液中で電流密度:
10 A/dm2、処理時間:20秒程度、また化学エッチング条
件は、HNO3液中で浸漬時間:10秒間程度とすれば良い。
【0034】ついで、鋼板には脱炭焼鈍が施される。こ
の焼鈍は、冷延組織を1次再結晶組織にすると同時に、
最終焼鈍(仕上げ焼鈍とも呼ばれる)で(110)[0
01]方位の2次再結晶粒を発達させる場合に有害なC
を除去することを目的とし、例えば 750〜880 ℃の湿水
素中で行う。
【0035】最終焼鈍は、(110)[001]方位の
2次再結晶粒を十分発達させるために施されるもので、
通常、箱焼鈍によって直ちに1000℃以上に昇温し、その
温度に保持することによって行われる。この最終焼鈍
は、マグネシア等の焼鈍分離剤を塗布して行い、鋼板表
面にフォルステライト系被膜も同時に形成させる。な
お、この最終焼鈍において、(110)[001]方位
に高度に集積した2次再結晶組織を発達させるために
は、 820℃から900 ℃の低温で保定焼鈍する方が有利で
あるが、その他、例えば 0.5〜15℃/h程度の昇温速度で
の徐熱焼鈍でも良い。
【0036】本発明では、上記のようにして製造したフ
ォルステライト系被膜を有する一方向性珪素鋼板に対
し、その長手方向にわたる引張り状態下で、イオン化し
た金属粒子および/またはセラミック粒子を注入して、
該鋼板全面のフォルステライト被膜の隙間や地鉄との境
界に微細な金属やセラミック粒子を含浸させる。このフ
ォルステライト被膜の隙間に微細な金属およびセラミッ
ク粒子を含浸させる方法としては、どのような方法を用
いても良いが、最も手軽で効果的な方法として、真空中
で溶解あるいは溶解・イオン化させた金属を基板近傍で
反応窒素、炭素、酸素ガスを用いて反応させた窒化物、
炭化物、酸化物セラミックの微粒子を用いる方法があ
る。この場合のPVD法としては、イオン化率の高いH
CD法やマグネトロンスパッタ法を使用する方がより効
果的である。
【0037】また、上記の含浸処理に際し、鋼板に付加
する引張り応力は0.01〜10 kgf/mm2程度とすることが好
ましい。というのは、鋼板に付加する引張り応力が0.01
kgf/mm2に満たないと、十分な量の微細粒子を含浸させ
ることができず、一方10 kgf/mm2を超えると、塑性変形
により磁束密度の劣化を招くからである。より好適な範
囲は0.05〜5 kgf/mm2である。
【0038】なお、上記フォルステライト被膜の隙間に
含浸させるべき微細な金属およびセラミック粒子の量は
極めて少なくても鉄損の低減に効果があり、図1に示し
たように、膜厚代替表示で0.01〜0.5 μm 程度で良い。
なお、さらに含浸量を多くしても鉄損の低減の効果が全
く無くなるわけではないが、イオン化した金属粒子およ
び/またはセラミック粒子の含浸処理によってコストア
ップとなり、経済的でなくなる。
【0039】ついで、珪素鋼板はその後、珪素鋼板の表
面に、常法に従いリン酸塩とコロイダルシリカを主成分
とする張力絶縁被膜用コーティング液を塗布したのち、
500〜1000℃で焼き付けて、張力絶縁被膜(膜厚:0.5
〜5μm )を被成する。ここに、リン酸塩とコロイダル
シリカを主成分とする張力絶縁被膜用コーティング液と
しては、例えば特公昭53−28375 号公報に開示されるよ
うな、コロイド状シリカ:4〜16wt%、リン酸アルミニ
ウム:3〜24wt%、無水クロム酸および/またはクロム
酸塩:0.2 〜4.5 wt%を添加したコーティング液や、特
公昭56−52117 号公報に開示されるような、コロイド状
シリカ:7〜24wt%、リン酸マグネシウム:5〜30wt%
(ただし、リン酸マグネシウムとコロイド状シリカとの
モル比:20/80〜30/70)、さらに必要に応じて無水ク
ロム酸、クロム酸塩および/または重クロム酸塩:0.01
〜5wt%を添加したコーティング液が有利に適合する。
【0040】
【実施例】C:0.075 wt%,Si:3.33wt%,Mn:0.072
wt%,Se:0.020 wt%,Sb:0.025 wt%,Al:0.020 wt
%,N:0.0073wt%およびMo:0.012 wt%を含有し、残
部は実質的にFeの組成になる珪素鋼連鋳スラブを、1330
℃で3時間の加熱処理後、熱間圧延により厚み:2.2 mm
の熱延板とし、ついで1050℃の均一化焼鈍を施したの
ち、1000℃の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して0.
23mm厚の最終冷延板に仕上げた。ついで、この冷延板の
表面に、アルキド系樹脂を主成分とするエッチングレジ
ストインキをグラビアオフセット印刷により、非塗布部
が圧延方向とほぼ直角に幅:200 μm 、間隔:4mmで線
状に残存するように塗布したのち、 200℃で約20秒間焼
付けた。この時のレジスト厚は2μm であった。このよ
うにしてエッチングレジストを塗布した鋼板に、電解エ
ッチングを施すことにより、幅:200 μm、深さ:20μm
の線状の溝を形成し、ついで有機溶剤中に浸潰してレ
ジストを除去した。この時の電解エッチングは、NaCl電
解液中で電流密度:10 A/dm2、処理時間:20秒の条件で
行った。
【0041】その後、840 ℃の湿H2中にて脱炭・1次再
結晶焼鈍を行ったのち、鋼板表面にMgO を主成分とする
焼鈍分離剤をスラリー塗布し、ついで 850℃で15時間の
焼鈍後、850 ℃から10℃/hの速度で1180℃まで昇温して
ゴス方位に強く集積した2次再結晶粒を発達させたの
ち、1220℃の乾H2中で純化処理を施した。
【0042】かくして得られたフォルステライト被膜付
き珪素鋼板を2 vol%燐酸(60℃、45秒)液中に酸洗処
理してフォルステライト被膜(膜厚:0.1 μm )を活性
化したのち、鋼板の長手方向に対し3 kgf/mm2の引張り
応力を付加した状態で、マグネロンスパッタ法を用い
て、下記の金属および/またはセラミック粒子を含浸さ
せた。 (1) SiNX :膜厚代替表示で0.12μm 。 (2) Cr:膜厚代替表示で0.08μm 。 (3) Cr+TiN :膜厚代替表示で(0.05+0.03)μm 。 その後、燐酸塩とコロイダルシリカを含むコーティング
液を塗布・焼付けて、絶縁被膜を形成した。
【0043】かくして得られた各製品板の磁気特性につ
いて調べた結果を表1に示す。また、同表には、比較の
ため、上記したような処理しない従来材についての調査
結果も併せて示す。
【0044】
【表1】
【0045】同表から明らかなように、本発明に従い、
珪素鋼板のフォルステライト被膜の全面に、微細なセラ
ミック粒子や金属粒子を含浸させた場合には、微量で効
果的な鉄損低減が達成されている。
【0046】
【発明の効果】かくして、本発明によれば、仕上げ焼鈍
時に形成されるフォルステライト系被膜をそのまま有効
に活用して、従来材に比べて磁気特性が格段に優れた一
方向性珪素鋼板を、安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 方向性珪素鋼板の鉄損とフォルステライト被
膜中へのTiおよび SiNXの含浸量との関係を示したグラ
フである。
【図2】 本発明の実施に用いて好適なマグネトロンス
パッタ装置の模式図である。
【図3】 現行の珪素鋼板のフォルステライト被膜上に
絶縁被膜を塗布した状態(a) および本発明に従いフォル
ステライト被膜中の隙間および地鉄との境界にTiや SiN
X 等の微細粒子を含浸させたのち、絶縁被膜を塗布した
状態(b) を比較して示した図である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フォルステライト系被膜を有する仕上げ
    焼鈍済みの一方向性珪素鋼板であって、該フォルステラ
    イト系被膜の隙間および地鉄との界面近傍に、金属粒子
    および/またはセラミック粒子を含浸させたことを特徴
    とする鉄損特性の優れた一方向性珪素鋼板。
  2. 【請求項2】 フォルステライト系被膜を有する仕上げ
    焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面全面に、その長手方
    向にわたる引張り状態下で、イオン化した金属粒子およ
    び/またはセラミック粒子を含浸させることを特徴とす
    る鉄損特性の優れた一方向性珪素鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項2において、鋼板に付加する引張
    り応力が0.01〜10 kgf/mm2である鉄損特性の優れた一方
    向性珪素鋼板の製造方法。
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