【発明の詳細な説明】
[発明の名称]黄栢皮とオミナエシ植物の混合抽出物を含有するC型肝炎治療用
製薬組成物
[技術分野]
本発明は黄栢皮とオミナエシ植物(敗醤)の混合抽出物を有効成分として含有
するC型肝炎治療用製薬組成物に関するものである。さらに具体的には、本発明
は黄栢皮(Phellodendron amurense RUPRECHT cortex)とオミナエシ(Pat
riniascabiosaefolia FISCH.)の混合物を水あるいはアルコールで抽出し
て収得される混合抽出物を有効成分として含有し、C型肝炎ウイルスに対して抗
−ウイルス活性を有すると同時に損傷されたTヘルパー(helper)細胞を回復さ
せ宿株免疫システムを強化させることにより、C型肝炎及びC型肝炎由来の肝硬
変症まで効果的に治療することのできる医薬組成物に関するものである。
[背景技術]
慢性C型肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV)によって門脈域を中心に肝臓内で持
続的な炎症を引起す疾病であり、これを放置すると肝硬変や原発性肝細胞がんを
発症する例が多い。C型肝炎はA型またはB型肝炎とは違って初期感染の場合に
も約90%に GPT(glutamic-pyruvic transaminase)の異常が表れて慢性化す
る。最近、C型肝炎ウイルスが肝臓がんの誘発に直接関与することもあるという
論文が発表された[参照:Sakamuro,Furukawa and Takegami,J.Virol.69:389
3-3896,1995; Ray,Logging,Meyer and Ray,J.Virol.70: 4438-4443,1996]
。さらに、欧米諸国の肝細胞がん(hepatocellular carcinoma)患者の30%に
C型肝炎ウイルスが見つかると報告されている[参照:Mangia,Vallari andBi
sceglie,J.Med.Virol.43; 125-128,1994]。
1988年に米国カイロン社(Chiron Inc.)が開発した HCV 抗体(C100-3抗
体)測定計が登場することにより、非A非B型肝炎の大部分がC型肝炎ウイルス
の感染によるものであることが明らかになった。日本では、抗体測定計を用いた
検索方法によって非A非B型肝炎患者の70%からC型肝炎ウイルス抗体が検出さ
れ、B型肝炎ウイルス感染のない肝臓がん患者の90%以上からC型ウイルス抗体
が検出されているという。
1989 年に非A非B型肝炎を引起したチンパンジー血清から原因ウイルス遺伝
子の一部が分離され、C型肝炎ウイルスの実体が初めて明らかになった。つまり
、C型肝炎ウイルスはフラビビリダエ(Flaviviridae)に属し、9.5kbの陽性(+)
鎖の RNA を遺伝子として有するウイルスであって、宿主細胞の中でポリペプ
チド前駆体を合成する。この前駆体蛋白質は宿主のシグナルペプチダーゼ(sign
al peptidase)とC型肝炎ウイルスによって生成されるメタロプロテアーゼ(me
talloprotease)及びセリンプロテアーゼ(serine proteasc)によってウイルス
構造形成に直接的に関与する構造蛋白質(core,E1,E2)とウイルス増殖及
び後翻訳修飾後、酵素的な機能を有する非構造蛋白質(NS2,NS3,NS4
A,NS4B,NS5A,NS5B)に変換される。特に E2 遺伝子の5'末
端側に2個の超可変領域(HVR1及びHVR2)が存在し、状況によって多様な
変種が作られ得る。
慢性C型肝炎から肝臓がんへの転換メカニズムは未だ明らかになっていないが
、慢性炎症及び炎症の強度が密接に関与していると考えられる。即ち、宿主免疫
系はC型肝炎ウイルスに対する中和抗体を生成するが、この中和抗体は制限され
た種類のウイルスにのみ作用し非常に速い速度で中和抗体に耐性を有する変種(
速い速度の遺伝的突然変異)らが出現する。中和抗体が存在するにもかかわらず
、変種らは宿主で持続的に炎症を引起し得る(免疫脱出;immuneescape)。さら
に、持続的な感染による損傷に対処しようとする宿主肝細胞の再生能力はがん発
生を招き得る。最近の報告によると宿主細胞の2本鎖の RNA
ー依存性蛋白質キナーゼR(PKR)が elF-2a をりん酸化させ、ウイルスの
アポトーシス(apoptosis)を促進させることができる。しかし、C型肝炎ウイ
ルスは PKR を不活性化させ得る蛋白質を生産する。たとえばインターフェロ
ンの投与によるC型肝炎ウイルスの耐性はC型肝炎ウイルスの変種による PK
R の不活性化に起因し得る。したがって、かかる変種らの存在はC型肝炎ウイ
ルスに対するワクチン製造に大きい障害となる。
このようなC型肝炎ウイルスの特徴のため、現在C型肝炎治療剤として使用さ
れている多くの薬剤は、C型肝炎に対して充分な治療効果を提供していない。イ
ンターフェロンの効果もC型肝炎ウイルスを実質的に減少させるよりは肝硬変や
その原発性肝細胞がん発症を予防するに過ぎない。さらに実際臨床においてイン
ターフェロンの副作用が多数報告されている。したがって、最近C型肝炎の治療
剤としてC型肝炎ウイルスプロテアーゼの阻害剤を開発しようとする努力が試み
られている。
そこで本発明者らは既に使用されてきているインターフェロンのようなC型肝
炎治療剤の問題点を解消し、C型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス効果を有する
のみならず、免疫増強機能を有し、C型肝炎を効果的に治療できる物質を見出す
ための研究を持続的に遂行し、特に多様な天然薬用植物らを対象に研究を行った
。その結果、種々の天然植物の中から黄栢皮とオミナエシ植物を混合して抽出し
た混合抽出物が上記のような目的を達成し得ることを確認し本発明を完成するに
至った。
[発明の開示]
したがって、本発明の目的は有効成分として黄栢皮とオミナエシ植物の混合抽
出物を含有するC型肝炎治療剤用製薬組成物に関するものである。
さらに具体的には、本発明は黄栢皮とオミナエシ植物の混合水抽出物あるい
はアルコール抽出物を有効成分として含有するC型肝炎治療用製薬組成物に関す
るものである。
[図面の簡単な説明]
本発明の本質及び目的の完全な理解のため、以後発明の詳細な説明は添付の図
面を参考しなければならない。
図1は、オミナエシ(Patrinia scabiosaefolia FISCH.)から得た水
抽出物のUV走査(scanning)プロフィールのグラフである。
図2は、黄栢皮(Phellodendron amurense RUPRECHT Cortex)か
ら得た水抽出物のUV走査(scanning)プロフィールのグラフである。
図3は、本発明の混合水抽出物のUV走査(scanning)プロフィールのグラフ
である。
図4は、オミナエシ(Patrinia scabiosaefolia FISCH.)から得た水
抽出物のHPLCプロフィールのグラフである。
図5は、黄栢皮(Phellodendron amurense RUPRECHT Cortex)か
ら得た水抽出物の HPLC プロフィールのグラフである。
図6は、本発明の混合水抽出物の HPLC プロフィールのグラフである。
図7は、標準糖、即ちスクロース、ラクトース、グルコース、キシロース、マ
ンノース及びフラクトースのHPLCプロフィールのグラフである。
図8、標準糖、即ちマルトース及びガラクトースの HPLC プロフィールの
グラフである。
図9は、本発明の混合水抽出物中の糖の HPLC プロフィールのグラフであ
る。
図10は・オミナエシ(Patrinia scabiosaefolia FISCH.)から得た水抽出
物のアミノ酸分析クロマトグラムである。
図11は、黄栢皮(Phellodendron amurense RUPRECHT Cortex)
から得
た水抽出物のアミノ酸分析クロマトグラムである。
図12は、本発明の混合水抽出物のアミノ酸分析クロマトグラムである。
図13は、臨床実験結果を表すグラフである。実験例1によって本発明の混合
水抽出物をC型肝炎患者に経口投与した後、抗ウイルス効果を抗体力価値及びRN
Aコピー数で表した[図13A:増例1、図13B:増例2、図13C:増例3、図13D
:増例4、図13E:増例5、図13F:増例6]。
図14は、生体内におけるT細胞依存性抗体生成反応に対する本発明によるそ
れぞれの黄栢皮とオミナエシあるいはこれらの混合水抽出物の効果を表したグラ
フである。
図15は、生体内におけるT細胞依存性抗体生成反応に対する本発明の黄栢皮
とオミナエシの混合水抽出物とアルコール抽出物の効果を比較して表したグラフ
である。
図16は、本発明の黄栢皮とオミナエシ植物の混合水抽出物がT細胞の増殖に
及ぼす影響を表したグラフである。
図17は、本発明の黄栢皮とオミナエシの混合水抽出物が免疫細胞の増殖に及
ぼす影響を表したグラフである。
図18は、本発明の黄栢皮とオミナエシの混合水抽出物が免疫細胞マイトジェ
ン(mitogen)、レクチン(PHA)によって誘発された免疫細胞の増殖に及ぼ
す影響を表すグラフである。
図19は、本発明の黄栢皮とオミナエシ植物の混合水抽出物がマウスの肝臓、
腎臓及び心臓(組織形態学)に及ぼす影響を表した写真である[投与量15g/kg、
H&E染色、図19A:肝臓 400倍、図19B:腎臓 200倍、図19C:心臓 200
倍]。
図20は、本発明の混合抽出物の抗酸化剤活性を表す。
[発明を実施するための最良の形態]
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明は黄栢皮とオミナエシの混合抽出物、具体的には黄栢皮とオミナエシの
混合物を水あるいはアルコールで抽出して得られる混合水抽出物あるいはアルコ
ール抽出物を有効成分として含有するC型肝炎治療用製薬組成物に関するもので
ある。特に、本発明の組成物はC型肝炎ウイルス感染による肝炎や肝硬変初期に
直接的な抗ウイルス効果を表すと同時に、炎症を減少させ、宿主の免疫系中Tヘ
ルパー細胞の活性を強化させることにより、攻撃及び防御メカニズム全てによっ
てC型肝炎やそれによる肝硬変を効果的に治療することができる。
さらに、本発明の混合出物は以下の実験例で具体的に立証されるようにC型肝
炎に対する治療効果が高いながらも毒性は非常に低いため、人体に対し副作用を
表さず、薬物の耐性も生じない。したがって本発明の組成物は安全性及び長期治
療における使用の面で理想的な薬物である。
本発明による抽出物の製造に使用される植物であるオミナエシ(Patriniascab
iosaefolia FISCH.)(オミナエシ科(Valerianaceae))は白花敗醤(Pa
triniavillosa JUSS.)、岩敗醤(Patrinia sibirica JUSS.)などと
同類に属する。オミナエシは韓国を始めとして世界各地の温帯地方の山野で自生
する多年生の草本植物である。漢方では眼疾患、化膿連鎖球菌感染症、浮腫、帯
下症などに消炎剤として古くから用いられている。さらにオミナエシは次の作用
を有するものとして報告されている。
a)熱水抽出物の抗腫瘍効果(たとえば子宮がん、食道がん、胃がん、腸がん
、肺がんなど);
b)黄色ぶどう状球菌、連鎖状球菌などに対する抗菌効果;
c)損傷された肝細胞の再生能を有しているためその変性を防止する作用;
d)門脈の循環を改善して肝細胞の再生を促進する効果;
e)中枢神経系を安定化させる効果;
f)強力な鎮痛効果;
g)血圧降下効果及び抗利尿(antidiuretic)効果。
オミナエシの根には精油、多様なサポニン成分、炭水化物及びキューマリン(
cumarin)のような微量のアルカロイドが入っている。根の真皮層には酢酸、ホ
ルム酸、吉草酸などがあり、カチニン(chatinine)及びバレリアニン(valeria
nine)などのアルカロイドが含有されている。この中で吉草酸(valericacid)
は非常に強力な鎮痛効果を有するものとして知られている。乾燥された種子には
19.4〜19.9%の蛋白質と30〜34.4%の脂肪が含有されている。しかし未だオミナ
エシの活性成分やそれによる薬理効果に対する具体的な研究がなされておらず、
しかもオミナエシのいかなる抽出物もC型肝炎ウイルスに対する抑制効果を表す
という研究結果は報告されたことがない。
本発明の抽出物製造に使用されるさらに異なる植物である黄栢皮(Phellodend
ron amurense RUPRECHT cortex)は韓国、日本、中国などで自生す
る黄栢木(Phellodendron amurense RUPRECHT)(Rutaceae)の幹(ste
m)の皮(cortex layer)である。黄栢木の変種としてはラチホリオラトムナカ
イ(var.latifoliolatum NAKAI)、ジャポニカムオイ(var.japonicum
OHWI)、フェロデンドロンインシュラルナカイ(P.insulare NAKAI
)、フェロデンドロンモレナカイ(P.molle NAKAI)、フェロデンドロン
サカリネンスサルジエント(P.sachalinense Sarg.)などがある。黄栢皮に
は黄色あるいは黄褐色の色素物質と数種のアルカロイド成分が1.5〜4.5%含まれ
ている。アルカロイドの主成分はベルベリン(berberine)である。その他にパ
ルマチン(palmatine)、マグノフロリン(magnoflorine)、グアニジン(guani
dine)、ジャテオリジン(jateorrizine)、フェロデンドリン(phellodendrine
)、カンジシン(candicine)、
メニスペリン(menisperine)などが含まれており、苦味質(bitter component
)としてはオウバクノン(obakunone)及びオウバクラクトン(obakulactone)
、β−シトステロール(β-sitosterol)などが含まれているものとして知られ
ている。これら成分は強い抗菌作用、血圧降下作用、中枢神経抑制作用、アセチ
ルコリン増強作用及び抗炎症作用があって、漢方では骨疾患及び黄疸に使用され
た。さらに黄栢皮には腸チフス、コレラに効果的な成分が含まれており、胃腸管
疾患にも効果的な治療剤である。一方、これらの樹皮は苦味健胃剤(bitterstom
achic)、整腸剤(agent for intestinal flora)、消炎性収斂薬(anti-inf
lammatoryastringent)として胃腸炎、腹痛、黄疸などにも使用されてきた。し
かし黄栢皮がC型肝炎ウイルスの増殖を抑制したり、免疫機能を増強あるいは復
活させたりするなどの報告は今までなかった。
本発明では黄栢皮とオミナエシの混合物を水あるいはアルコールで抽出して収
得した混合抽出物が、C型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス効果と免疫系のTヘ
ルパー細胞の増殖を促進させて免疫機能を強化させる効果を有しており、また混
合抽出物は黄栢皮とオミナエシそれぞれの抽出物を単独で使用した場合に比して
極めて優秀な相乗的作用効果を表すことを実験的に確認して本発明を完成したの
である。
本発明で有効成分として使用される黄栢皮とオミナエシの混合抽出物は次のよ
うな方法によって収得される。
即ち、黄栢皮とオミナエシの混合水抽出物を製造しようとする場合には、両植
物の混合物を水で抽出し、該抽出液を高圧下で濾過し、遠心分離して固められた
蛋白質の沈殿物を取り除き、上清液から水層を凍結乾燥させることにより粉末状
の残留物(混合水抽出物)を得ることができる。
さらに、黄栢皮とオミナエシの混合アルコール抽出物を製造しようとする場合
には、両植物の混合物をアルコール、好ましくはメタノール、エタノールな
どのような炭素数1ないし4の低級アルコールで抽出し、溶媒を蒸発させ、残留
物に水を加え加熱して水溶化させた後、混合物を濾過し、濾液に有機溶媒を加え
て有機溶媒−可溶性物質を溶出させて除去した後、水層を分離し凍結乾燥させる
ことにより混合アルコール抽出物を収得することができる。
この時黄栢皮とオミナエシは重量基準で1:0.1〜5、好ましくは1:1〜2の
重量比で配合して使用する。特に、本発明では黄栢皮とオミナエシを1:1の重
量比で配合して抽出することが好ましい。
以下、本発明によるそれぞれの混合抽出物の製造方法をさらに具体的に説明す
る。
本発明の方法によると混合水抽出物は第1段階で、乾燥させた黄栢皮とオミナ
エシの混合物を粉砕して上水(tap water)あるいは蒸留水のような水を溶媒と
して飽和蒸気圧(121℃、15pound/in a2)下で加熱抽出する。
第1段階で水を混合物1重量部に対して 10〜45 重量部の比、特に好ましくは
25〜35 重量部の比で使用する。
次に、第2段階で抽出物を遠心分離して沈殿物を除去し、抽出物をさらに高圧
下で飽和させ、たとえばオートクレーブ内で蒸気圧(121℃、15pound/in a2)下
で沸騰させ残存する蛋白質を凝固させた後、遠心分離などにより濾過して除去す
る。
第3段階では分離された濾液をクロロホルム、ヘキサン、ジクロロメタン、シ
クロヘキサンなどの有機溶媒、好ましくはクロロホルムあるいはヘキサンを使用
して抽出することによって樹脂、繊維質などの不純物を除去する。次いで水層を
さらにタルクなどを用いて精製した後に凍結乾燥させることにより目的とする混
合水抽出物を収得する。
本発明の混合アルコール抽出物を製造しようとする場合には、まず第1段階で
乾燥させた黄栢皮とオミナエシの混合物を粉砕し、アルコール、好ましくは
メタノール、エタノールなどのような炭素数1ないし4の低級アルコールで抽出
する。
第1段階でアルコールは混合物1重量部に対して 5〜40 重量部の比、特に好
ましくは 10〜20 重量部の比で使用する。
次に、第2段階ではアルコール抽出物を冷却し、回転蒸発機を使用し蒸発させ
てアルコールを除去する。残留アルコール抽出物は水を加え加熱して水溶化させ
た後、濾過する。
この段階で水の量は原料物質として使用された黄栢皮とオミナエシの混合物1
重量部に対して 5〜30 重量部、特に 5〜15 重量部の比で使用するのが好まし
い。蒸発によって得られたアルコール抽出物に上記のような量の水を加えて短時
間、一般的に5ないし10分間加熱してアルコール抽出物を溶解させた後、濾過す
る。
第3段階では分離された濾液をクロロホルム、ヘキサン、ジクロロメタン、シ
クロヘキサンなどの有機溶媒、好ましくはクロロホルムあるいはヘキサンを使用
して抽出することによって樹脂、繊維質などの不純物を除去し、水層をさらにタ
ルクなどを用いて精製した後に凍結乾燥させることにより目的とする混合アルコ
ール抽出物を収得する。
上記のような方法によって得られる黄栢皮とオミナエシの混合抽出物は、上述
したように薬物学的に有用なアンチ−HCV 効果及びTヘルパー細胞と関連さ
れる免疫体系に対する強化効果を表し、C型肝炎治療用製薬組成物として有用に
使用することができる。
本発明による黄栢皮とオミナエシの混合抽出物はC型肝炎を治療するための臨
床的目的のため、治療学的有効量を単独であるいは薬剤学的に許容される担体と
いっしよに薬剤学的分野で通常的な方法によって適合した薬剤学的組成物の形態
に剤形化し、薬剤学的分野で通常的な方式で、好ましくは経口で投与
することができる。一般的に、本発明の組成物は経口投与に適合した錠剤、カプ
セル剤、溶液剤、懸濁剤あるいはシロップ剤の形態に剤形化させることができ、
さらに飲料の形態に製造することもできる。
本発明による混合抽出物の投与用量は抽出物のタイプ(水抽出物またはアルコ
ール抽出物)、肝炎の重症度、患者の性別、年齢、体重、及び目的とする効果が
いかなるものであるかによって違ってくるが、一般的には成人に経口投与する場
合、体重1kg当り1日5ないし 50mg、好ましくは 10 ないし 40mgの用量で投与
することができる。
さらに本発明による混合抽出物は必要によって他の肝炎治療剤、抗炎症剤、抗
ウイルス剤などのような薬剤と配合あるいは併用することができる。本発明によ
る組成物と配合あるいは併用して使用できる薬剤としてはたとえばDDB(diph
enyl dimethyl dicarboxylate)、にんにく油(galic oil)などがある。
本発明は以下の実施例及び実験例によりさらに具体的に説明するが、これらは
単に本発明を説明するため提供されるものであり、本発明がこれらによって何ら
制限されるものではない。
実施例1:混合水抽出物の製造
乾燥した黄栢皮(Phellodcndron amurense RUPRECHT cortcx)とオミ
ナエシ(Patrinia scabiosacfolia FISCH.)を重量基準で1:1に混合して
粉砕機で粉砕した。この混合粉末から 100g を分取し、ここに蒸留水 3000ml を
加えて蒸気圧 121℃、15pound/in a2下で 40〜60 分間抽出した後、水不溶性残
渣を除去して抽出液を得た。抽出液を遠心分離して沈殿物を除去し、濾液の全量
が 1500mlになるように加熱濃縮して濾過した。濾液をさらに蒸気圧 121℃、15p
ound/in a2下で 15 分間飽和させ生成された凝固蛋白質を含めた沈殿物を遠心分
離して除去した後に濾過した。濾液を分液漏斗(separatory funnel)に入れ、
クロロホル
ム400mlを加えて樹脂及び繊維質などを溶出させてクロロホルム層を分離除去し
た。同じ操作を2回繰返し行った後、水層に再びn−ヘキサン 200ml を加えて
残存する蛋白質、樹脂、繊維質及びn−ヘキサン可溶性物質などを溶出させた。
水層を分離回収して 60〜80℃で加温した後にタルク 500g を加えて攪拌した後
、減圧化で濾過しタルクを除去し、この濾液を再び徐々に濾過し、該濾液を凍結
乾燥させて粉末化した。この方法によって黄栢皮とオミナエシの混合物より約 1
5%の収率(乾燥重量基準)で目的とする混合水抽出物約 15g を収得した。
実施例2:混合アルコール抽出物の製造
乾燥した黄栢皮とオミナエシを重量基準で 1:1 に混合して粉砕機で粉砕した
粉末 100g を分取し、ここに70%エタノール 1500ml を加えて度々攪拌しながら
48〜72時間放置した後、これを減圧濾過し、残差を除去してアルコール抽出物を
得た。収得されたアルコール抽出物より還流冷却装置を用いてアルコールを回収
し、残留するアルコール抽出物に蒸留水 1000ml を加えて混合し、5分間加熱し
て水溶化させた。得られた溶液にタルク 500g を加えて攪拌した後、減圧濾過し
1次精製した。精製された濾液を分液漏斗に入れ、クロロホルム400mlを加えて
樹脂及び繊維質などを溶出させクロロホルム層を分離除去した。同じ操作を2回
繰り返し行った。次いで、水層にn−ヘキサン 200ml を加えて残存する蛋白質
、樹脂、繊維質及びn−ヘキサン可溶性物質などを溶出させた。水層を回収して
60〜80℃で加温した後に再びタルク 500g を加えて攪拌した後、減圧下で濾過
してタルクを除去し、濾液を再び徐々に濾過した後、該濾液を凍結S乾燥させ粉
末化した。この方法によって黄栢皮とオミナエシの混合物より約10%の収率(乾
燥重量基準)で目的とする混合アルコール抽出物約 10g を収得した。
植物材料の抽出物の特性を決定するため次の実施例において全ての抽出物は実
施例1と同じ方法によって得た。
実施例3:本発明の混合水抽出物の UV 及びHPLC特性
本発明の抽出物、即ちオミナエシ及び黄栢皮並びにこれらの混合植物をUV走
査機(Shimazu社製,日本)及び HPLC(Watcrs社製)によって分析した。図
1はオミナエシから得た水抽出物の UV 走査プロフィールである。図2は黄栢
皮から得た水抽出物の UV 走査プロフィールである。図3は本発明の混合水抽
出物の UV 走査プロフィールである。
HPLC 分析のため、各植物からの抽出物及び本発明の抽出物を 50%メタノ
ール中に1mg/mlの濃度で溶解させた。10μlの溶液を HPLC(Waters社製 5
10)に注入させた。Incrtsil ODS 3V(4.6mm i.d.×250mmL)逆相カラ
ムを使用し、移動相は 50%MeOH 定組成溶出液であった。流速は 1.2ml/min
であった。ピークはUV検出器によって 254nm で検出された。各植物の特徴的
なピークがHPLC側面図で観察された。図4はオミナエシからの抽出物の H
PLC プロフィールであり、オミナエシからの抽出物の特徴的なピークは 18分
の滞留時間に現れた。図5は黄栢皮からの抽出物のHPLCプロフィールであ
り、黄栢皮の抽出物の特徴的なピークは25分に現れた。図6は本発明の混合水
抽出物のHPLCプロフィールを表し、特徴的なピークは19分及び25分に観察さ
れた。
19 分での特徴的なピークはオミナエシの抽出物のピークとして確認され、25分
での特徴的なピークは黄栢皮の抽出物のピークとして確認された。19分及び25分
でのこれら特徴的なピークを再現することができたので、これらは各植物の標準
物質であると思われる。19分でのピーク強度は144.3±15.5(平均±S.E.:標
準エラー)及びピーク高さは49.98±0.39であった。25 分でのピーク強度は233.
6±14.6であってピーク高さは97.8±0.79であった。
UV 走査及び HPLC 分析の結果から本発明者らは本発明の抽出物の品質
管理のための標準化法を設定した。
実施例4:本発明の混合水抽出物の元素分析
本発明の混合水抽出物の元素を元素分析機(Carlo Erba/E.A. 1108)で分析
した。表1は炭素、水素、窒素及び硫黄が本発明の混合水抽出物に含有されてい
ることを表す。
<表1>本発明の抽出物の元素
実施例5:本発明の混合水抽出物の粗蛋白質、脂肪及び灰分の分析
(1)粗蛋白質及び窒素含有化台物の分析
窒素含有化合物の含量はケルダール窒素分析法を使用して調査した。この方法
は次のように簡単に説明する。
窒素を含有する有機化合物は、沸騰したH2SO4中で分解され生成物としてア
ンモニウムを生成した。得られたアンモニウムの量は酸で適定して定量化し窒素
の含量を計算した。
本発明の抽出物で粗蛋白質の含量はケルダール法によって測定したところ
約 59.98%であった。
(2)粗脂肪の分析
本発明の抽出物から粗脂肪をエーテルで抽出した。エーテルを回転蒸発機上で
蒸発させ、乾燥された抽出物を粗脂肪として評価した。
粗脂肪の含量はエーテル抽出物の約 2.29%であった。
(3)粗灰の分析
本発明の抽出物の試料を 500-500℃で燃焼させた。粗鉱物分画を表す灰分が非
揮発されたまま残った。粗灰分の含量は約9.68%であった。
実施例6:本発明の混合水抽出物の無機イオンの分析
無機イオンの組成はICP/AES(Shimazu ICPS-1000III)及びICP/
MASS(FisonsPQ3 STEI)によって調査した。その結果を下記の表2
に表した。
ICP/AES(Shimazu ICPS-1000III)動作条件
forward power/W 1200
冷却ガスフロー/分 14
Auxガスフロー/分 0.4
Nebガスフロー/分 0.8
試料取込速度/分 0.6
噴霧チャンバ:ガラス、水冷却、0℃
ネブライザ:Meinhard concentric
主元素(100ppm以上の元素)
ICP/MASS(Fisons STEI)の動作条件
forward power/W 1200
冷却ガスフロー/分 14
Auxガスフロー/分 0.4
Nebガスフロー/分 0.8
試料取込速度/分 0.6
噴霧チャンバ:ガラス、水冷却、0℃
ネブライザ:Meinhard concentric
ピークジャンピング獲得変数
ピーク当りポイント:3
滞留時間/ms:10.24
検出モード PC
微量元素(100ppm未満の元素)
<表2>本発明の抽出物及び各植物の抽出物の無機イオン 表2に表しているように本発明の抽出物の重金属量は非常に低かったため、本
発明の抽出物は実験動物及びヒトに害のないものであることが明らかになった。
実施例7:本発明の混合水抽出物の遊離糖の分析
本発明の抽出物の遊離糖の量はHPLC(Waters 510)によって調査した。標
準物質(Sigma社製)及び本発明の抽出物を水中に 10mg/ml の濃度で溶解させシ
リンジフィルター(0.45μm)で濾過した。各試料20μlをHPLCに注入した。
HPLC条件
−カラム:Micro-guard Carbo-PのあるAmincx HPX(300×7.8mm)
(Bio-Rad Laboratories)
−検出器:R401 Waters(Attenuation 32)
−オーブン温度:80℃
−移動相:H2O
−流速:0.6ml/分
図7及び8は標準糖、即ちスクロース、ラクトース、グルコース、キシロース
、マンノース、フラクトース、マルトース及びガラクトースのHPLCプロフィ
ールである。図9は本発明の混合水抽出物中のHPLCクロマトグラムを表す。
本発明の混合水抽出物の糖量はmg/g抽出物として計算した(表3)。
<表3>本発明の混合水抽出物の糖量
実施例8:本発明の混合水抽出物のアミノ酸分析
本発明の抽出物及び各植物の抽出物(オミナエシ及び黄栢皮)のアミノ酸組成
をHPLC(Pharmacia社製)を使用して分析した。各試料 100μg をピコータ
グ(pico-tag)法を用いて 6N HCI で加水分解させた。遊離アミノ酸をP
ITC(イソチオシアン酸フェニル)でラベルした。試料を逆相 ODS カラム
による HPLCに注入し、ピークをUV検出器を使用して 254nm で検出した。
図10はオミナエシから得た水抽出物のアミノ酸分析クロマトグラムであり、
図11は黄栢皮の抽出物のアミノ酸分析クロマトグラムを表す。図12は本発明
の混合抽出物のアミノ酸分析クロマトグラムを表す。
表4に表しているように、酸性及び塩基性アミノ酸を含有する極性アミノ酸の
量は本発明の混合抽出物で高かった。
<表4>オミナエシあるいは黄栢皮の抽出物及び本発明の混合抽出物のアミノ
酸の量
実施例9:本発明の混合水抽出物のアルカロイド及び有機酸の分析
オミナエシ及び黄栢皮のそれぞれの抽出物及び本発明によるこれらの混合物は
ジクロロメタン、酢酸エチル、n−ブタノール及び水を用い溶媒抽出によって次
の工程図に表している方法により分画化した。 上記の方法においてそれぞれの溶媒は分画に対し充分量を使用して次の溶媒の
使用は TLC によって決定した。
各分画をカラムクロマトグラフィーにより再び分離した。ジクロロメタン層の
分離のためシリカゲルカラムを用いた。シリカゲルカラム(3cm×130cm)の移
動相はジクロロメタン及びメタノールの勾配系であった(流速 1.5ml/分)。セ
ファデックス LH20カラム(3cm×130cm)を酢酸エチル及びブタノール層に
使用し、水及びメタノールの勾配系を移動相に用いた(流速 1.5ml/分)。
カラムクロマトグラフィーから大規模の各分画を予備HPLC(Pharmacia 社
製)によって再び製造した。予備HPLCのため逆相カラムを使用し、メタノー
ル及び水の混合物を移動相に用いた。流速は 4.0ml/分であった。ピークはUV
検出器によって254nmで検出した。予備HPLCによって単離された単一化合物
の構造は1H NMR(1H nuclear magnetic resonancc spectroscopy:
AQMS-500/Bruker)及び MASS(HP5988A Quardropolc Mass Spectr
ometer)によって解明した。1H NMR スペクトルは標準物質と比較した(Sig
ma Chemical Co.,St. Louis,Mo,U.S.A.)。
本発明の抽出物の組成は表5に表した。
<表5>本発明の混合水抽出物の組成
投与形態
本発明の抗−HCV剤の投与形態は特に制限されず、必要に応じて適切に選ば
れる。投与形態の例としては錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤及び液剤剤形が含
まれる。
以下、本発明による黄栢皮とオミナエシの混合水抽出物の投与形態を具体的に
説明する。また混合アルコール抽出物も同じ方式で剤形化され得ることを理解し
なければならない。投与形実施例1:錠剤
実施例1で製造された黄栢皮とオミナエシの凍結乾燥された粉末状の混合水抽
出物250mg を賦形剤であるラクトース260mg及びアビセル(微細結晶性セルロー
ス)35 mg、崩解補助剤であるナトリウム澱粉グリコネート 15 mg、結合剤であ
るL−HPC(Low−hydroxypropylcellulose)80 mgを混合し、U型混合機に入
れて約 20 分間混合した。混合が完了された後に滑沢剤としてマグネシウムステ
アレート 10 mgを追加に加えて約3分間混合した後に、通常の方法により錠剤に
打錠してフィルムコーティングし、1錠当り混合水抽出物250mgを含有する錠剤
を製造した。
投与形実施例2:シロップ剤
一定量の水に適当量の白糖を溶解させ、そこに保存剤としてパラオキシベンゾ
エート 80 mg及びパラオキシプロピルベンゾエート 16 mgを加えて実施例1で製
造された黄栢皮とオミナエシの凍結乾燥された粉末状の混合水抽出物4.5gを加え
、60℃で維持させ完全に溶解させた後に冷却させ、蒸留水を加えて総量が 150ml
になるように 1ml 当り混合水抽出物 30 mgを含有するシロップ剤を製造した
。
投与形実施例3:カプセル剤
実施例1で製造された黄栢皮とオミナエシの凍結乾燥された粉末状の混合水抽
出物300mgを担体としてラクトース200mgと混合して軽質ゼラチンカプセルに充填
し、1カプセル当り混合水抽出物300mgを含有するカプセル剤を製造した。
投与形実施例4:飲料組成物
実施例1で製造された黄栢皮とオミナエシの凍結乾燥された粉末状の混合水抽
出物500mgを適当量の水に溶解させた後、補助成分としてビタミンC、苦味剤と
してクエン酸、クエン酸ナトリウム、高果糖を適当量加え、保存剤として適当量
の安息香酸ナトリウムを加えた後に、水を加え全量を100mlに作って飲料用組成
物を製造した。
実験例1:混合水抽出物のC型肝炎ウイルス焼失成績
本発明による黄栢皮とオミナエシの混合水抽出物を6名のC型肝炎患者に直接
投与し臨床実験を行った。
床例1から3までではアンチ−HCV抗体を RIA(放射性同位元素分析)
方法で調査して得た抗原力価(antigen titer)値で結果を表し、床例4から6
まででは RT−PCR を用いて調査した HCV の RNA コピー(copy)数
で結果を表した。床例1(図 13A)はC型慢性肝炎と診断された患者であるが
、この場合本発明の混合水抽出物を1日に 2000 mgずつ5ヶ月間投与した結果、
抗原力価値が0に近くに落ちたことが確認できた。床例2の場合は76歳の老人で
C型慢性肝炎治療前の抗原力価値が7程度で高かったが、本発明の混合水抽出物
を1日に2000mgずつ持続的に投与した結果、徐々に減少し始めて24ヶ月後には抗
原力価値が0近くに落ちた。床例3は慢性B型肝炎及びC型肝炎患者の場合であ
る。図13Cに表したように、本発明の混合水抽出物を5ヶ月間1日に2000mgずつ
投与した結果、HCV に対する抗原力価値が0近く落ちたことに測定された。
床例4(図13D)はC型慢性肝炎患者で治療前RT−PCR方法による RNA
コピー数が 1ml 当り1×107であったのが本発明の混合水抽出物を1日に2000m
gずつ投与して治療してから1ヶ月後には RNA コピー数が 1×106に落ち、
6ヶ月後には検査基準値(cut-off value)の1×103以下に落ちて検出されなか
った。床例5及び6でも RT−PCR 方法によって血液1mlの RNA コピー
数を測定
しながら1日に 2000 mgずつ混合水抽出物を投与した。床例5(図 13E)は15
年間HCVを保有していた慢性肝炎患者で8ヶ月後に1×108個から1×105個
にウイルス数の減少を示した。床例6( 13F)は 20年 間 HCV を保有して
いた患者でHCV RNAコピー数が1ml当り1×109であったのが本発明の混
合水抽出物の投薬7ヶ月後に1×104個に落ちた。
上記のような臨床実験結果より、本発明の混合水抽出物はC型肝炎に卓越な効
果のあることがわかる。
実験例2:生体内でのT細胞−依存性抗体生成反応に対する混合水抽出物の効 果
体重17−20g程度のBalb/cマウス65匹を5匹ずつ13個群に分け各群にSRBC
(羊赤血球)2.4×108細胞を腹腔内に移植し、実施例1で収得した本発明によ
る混合水抽出物と、その原料生薬の黄栢皮とオミナエシそれぞれの水抽出物を、
それぞれ移植初日から3日間、1日に体重1kg当り、3、10、30、100mgの量
を経口投与した(0、1、2日)。対照群には実験動物当り、生理食塩水だけを
経口投与した。4日後各実験動物を犠牲させて無菌的に脾臓を摘出した後、組織
を細かく切った後、メッシュ(mesh)を使用して脾臓細胞を分離し、EBSS(Ea
rle'sBalanced Salt Solution)3ml が入っているペトリ皿で注射器のプラン
ジャ(plunger)を利用して細胞を遊離させた。収得した細胞懸濁液を 15ml の
コニカルチューブに移して5分間放置した後、上澄液2ml を取り、1200rpm で
10分間遠心分離した。上澄液を捨て残留物を再びEBSS2ml に懸濁させた後、
EBSSで 30 倍希釈し、この脾臓細胞希釈液を一回にプラーク形成細胞分析に 100
μlずつ使用した。かくして収得した脾臓細胞希釈液 100μl を EBSS で洗
浄したSRBC(25μl、標的細胞)、EBSS で2倍希釈したギニアブタ補体
(guinca pigcomplement、25μl)及びアガロース(EBSS 中 0.85%、350μ
l)と混合した後、
ペトリ皿に注ぎ固化させて 37℃の CO2培養機で約1時間放置した。その後、
抗体生成細胞(antibody forming cclls)の数は変形されたジャニプラーク分
析方法(Modified Jerne Plaque Assay)[参照:Hwan M. Kim, et al.,
J.Toxicological Sciences 21:41-45, 1996]でプラーク数及び細胞数を計
数し、結果を106細胞当り抗体生成細胞の数で表した。測定された結果の平均値
は下記の表6及び図14に表した。
<表6>本発明の混合水抽出物の生体内におけるT−細胞依存性抗体生成反応
に対する効果
*:実施例1で得た黄栢皮とオミナエシの混合水抽出物
これらの結果よりわかるように、本発明による混合水抽出物を投与した場合に
は抗体生成細胞の数が薬物の濃度によって比例的に増加し、100mg/kg投与群は対
照群に比して抗体生成細胞の数において 307%の増加を表した。また、黄栢皮や
オミナエシの水抽出物をそれぞれ単独に 100 mg/kgの量で投与した場合に比して
、2種の生薬の混合水抽出物をその1/10に該当する 10mg/kgの量で投与した場合
にも抗体生成細胞数が大分増加し、このことからそれぞれの生薬の水抽出物を単
独に投与した場合に比して、2種の生薬の混合水抽出物を投与した場合に、かな
り優秀な相乗的効果が表れることがわかる。したがって本発明による黄栢皮とオ
ミナエシの混合水抽出物は卓越な相乗的免疫増強効果を表すことがわかる。
さらに、本発明によって実施例1で製造された混合水抽出物と実施例2で製造
されたアルコール抽出物の免疫増強効果を比較してみた。即ち、混合水抽出物と
アルコール抽出物それぞれ 100 mg/kgずつを使用して上記と同じ方法により実験
を行い、抗体生成細胞の数を測定した。測定された結果を下記の表7及び添付の
図15に表した。
<表7>本発明の混合水抽出物及び混合アルコール抽出物の生体内T−細胞依
存性抗体生成反応に対する効果
上記の表7及び図15に図示されている結果より、本発明の混合水抽出物と混
合アルコール抽出物はいずれも抗体生成細胞の数を増加させ、特に混合アルコー
ル抽出物が混合水抽出物に比して抗体生成細胞の数を更に51%増加させたことが
わかる。
実験例3:T細胞活性化反応に対する混合水抽出物の効果
本発明による黄栢皮とオミナエシの混合水抽出物のT細胞活性化反応に対する
効果を混合免疫細胞反応法で測定した。
主組織適合性遺伝子複合体[MHC:major histocompatibility complex]抗
原が相互異なる B6C3F1(H-2k)とBDFI(H-2d)の二種類のマウスより
脾臓を無菌的に摘出し、細かく切った後、メッシュを使用して脾臓細胞を遊離さ
せた。遊離された脾臓細胞をそれぞれ2.5×106細胞/mlになるように調節した後
に 96ウェルプレートに B6C3F1(H-2k)とBDFI(H-2d)脾臓細胞をそ
れぞれウェル
当り100μlずつ入れ最終的に200μlにつくった。
脾臓細胞を実施例1で得た混合水抽出物を 0.01 ないし 100μg/ml の濃度で
処理した後、37℃、CO2培養機で3日間培養した。培養が終わる 18 時間前に
各ウェル当り1μCiの[3H]チミジンを添加した。自動細胞回収機(automati
c cellharvestor)を用いて細胞を収去した後に、[3H]チミジンの吸収程度を
ベタカウンター(Beta Countcr, Beckman LSC)で測定することにより免
疫細胞の増殖度を測定した。測定された結果は下記の表8及び図16に表した。
<表8>本発明の混合水抽出物のT細胞の増殖に対する影響
上記の表8及び図16記載の結果より、本発明の混合水抽出物は使用された濃
度に比例してT細胞の増殖を増加させることがわかる。
実験例4:免疫細胞増殖に対する混合水抽出物の効果
マウスを頚椎脱骨させた後、脾臓を摘出して緩衝液(EBSS)で洗浄した。
注射器のプランジャを用いて脾臓細胞を遊離させた。かくして収得した脾臓細胞
を含有する懸濁液をチューブに移し約5-10分間放置した後、上澄液を取り遠心分
離(1200rpm,10分間)した。上澄液は捨て、沈殿物をRPMI1640培養液[10%F
CS(fetal calf serum),2-メルカプトエタノール(2-ME)]に再懸濁さ
せた後、
細胞数と細胞生存率を測定した。分離した脾臓細胞を 106細胞/ml の濃度にして
96-ウェルプレートのウェル当り 200μl ずつ分注し、本発によって実施例1で
収得した混合水抽出物を0.01ないし100μg/mlの濃度で処理した後に、5psiの混
合ガス(7% O2, 10% CO2,83% N2)が詰められた培養機でロッキン
グプレート(rocking plate)を用いて3日間培養した。培養が完了した後に、
[3H]-チミジンを 5μCi/ml の濃度で加えて吸収程度をベタカウンターで測
定することにより免疫細胞の増殖度を測定した。測定された結果は下記の表9及
び図17に表した。
<表9>本発明の混合水抽出物の免疫細胞増殖に対する影響
上記の表9及び添付の図17に示しているように、本発明の混合水抽出物は適用
された濃度に比例して免疫細胞の増殖を増加させることがわかる。
実験例5:レクチンフィトアグルチニンと併用した混合水抽出物の免疫細胞に 対する影響
本発明の混合水抽出物がTヘルパー細胞の増殖に及ぼす影響をより確実に観察
するため、本発明の混合水抽出物をCD4 T−細胞を剌激して増殖を誘導する
標準類似***誘導物質であるレクチン類のフィトアグルチニン(PHA)と併
用して使用し、その効果を測定してみた。即ち、実験例2と同じ方法でマウスよ
り無菌的に分離した脾臓細胞を 0.5×107細胞/ml となるように調節した後に96-
ウェルプレートにウェル当り 200μl ずつ分注した後、250μg/ml濃度の PHA
を4μl/ウェルずつ添加して最終濃度が5μg/mlとなるようにし、そこに本発明
の混合水抽出物を0.01ないし 100μg/ml の濃度で処理した後、37℃のCO2培養
機で3日間培養した後、CD4 T−細胞の増殖程度を[3H]を用いて実験例
3と同じ方法によって測定した。対照群には本発明の混合水抽出物を添加しなか
った。測定された結果は下記の表10及び図18に表した。
<表10>レクチンと併用した本発明の混合水抽出物の免疫細胞増殖に対する
影響
上記の表10及び添付の図18に表しているように、PHAと併用処理した本
発明の混合水抽出物は適用された濃度に比例して免疫細胞の増殖を著しく増加さ
せることがわかる。
実験例6:混合水抽出物の生体内による脾臓、胸腺、骨髄の免疫細胞構成比率 の変化
本発明のよって実施例1で製造された黄栢皮とオミナエシの混合水抽出物
を 100 及び 300mg/kgの濃度でマウスに3日間経口投与した後、マウスを犠牲さ
せ脾臓、胸腺及び骨髄を分離した。これら臓器より免疫細胞を実験例2で脾臓細
胞を分離させる方法と同じ方法で分離した後、遠心分離した。上澄液を捨てた後
、細胞沈殿物を赤血球溶血用緩衝液(ACK buffer,0.15M NH4Cl,0.01
MKHCO3,0.1mM Na2EDTA,pH 7.2)を臓器当り 1ml ずつ使用して
2ないし3分間処理した。免疫細胞を培地で洗浄した後、細胞濃度を 107 細胞/
ml に調節した後、チューブ当り100μlずつ分注した。B細胞を測定するためマ
ウスB細胞抗原に対するラットモノクロナル抗体 B220 にピコエリトリン(P
E)が結合されたものを使用しており、T細胞の場合にはThy-1-PE(Caltag L
aboratories)を使用し、CD4 T細胞の場合にはCD4-FITC(Caltag La
boratorics)、CD8 T細胞の場合にはLy2-FITC(Caltag Laboratorci
s)を使用した。これた抗体をそれぞれのチューブに加えた後、40分程度氷上で
反応させた。反応が完了した後にりん酸塩緩衝食塩水(PBS)を使用して洗浄
し、FACScan(Becton Dickenson,San Jose, CA)を用いて各免疫細胞
の構成比率を測定した。測定された結果は次の表11に表した。
<表11>本発明の混合水抽出物による免疫細胞構成比率の変化(単位%)
10,000個の細胞を測定した結果、上記の表11に記載されているように脾臓の
場合にはB細胞、T細胞及びCD4 T細胞の構成比率が増加しており、胸腺の
場合にはThy-1抗体が付いたT細胞の構成比率が増加し、CD4抗体が付いたC
D4 T細胞も増加した。骨髄の場合にはB220抗体が付くB細胞の構成比率が
増加した。このような結果より、本発明による黄栢皮とオミナエシの混合抽出物
は免疫系の中から特にTヘルパー細胞を増強させてC型肝炎ウイルスに対する抵
抗性を増加させるものと判断することができる。
実験例7:本発明の混合水抽出物の抗酸化剤作用
抗酸化剤作用を有する化合物がさらにC型肝炎を含める抗−ウイルス活性を有
するものとして知られている。本発明の混合水抽出物の抗酸化剤作用はchemilum
inescence assay を用いて決定した。ABEI-ミクロペルオキシダーゼーH2
O2システムを用いて本発明の抽出物の抗-酸化剤作用を分析した。ミクロペルオ
キシダーゼ、アミノブチルエチルイソルミノール(ABEI)及びH2O2は米
国MO,St.Louis所在のシグマ社から購入した。
ABEIは0.18μMの濃度で使用した。分析される抽出物は最大濃度として 1
0mg/ml及び10倍順次希釈で使用した。ABEI 200μl及び抽出物200μlをバ
ースオルド(Berthold)9502 ルミノメターに使用するのに適合したポリスチレ
ンチューブ中に入れた。過酸化水素(0.35%)及びミクロペルオキシダーゼ(0.
01mg/ml)をチューブ内に自動注入させ酸化反応を開始した。ルミネセンスはバ
ースオルドルミノメター9502を用いて2秒間測定した。蒸留水をコントロールと
して使用した。
一般に、抗−酸化剤は酸化反応を防止し、この分析システムで光の強度を減少
させる。したがって、抗酸化剤活性は光の強度で減少程度によって評価すること
ができる。図20によると、本発明の抽出物は優れた抗−酸化剤作用を表す。こ
のような結果は本発明の抽出物が強力な抗−酸化剤を含有することを表す。本発
明の抽出物は各植物の抽出物よりさらに高い抗−酸化剤活性を有するため、本発
明の混合水抽出物は各植物抽出物の相乗的抗酸化剤効果を有する。
実験例8:毒性実験
本発明による黄栢皮とオミナエシの混合抽出物の安定性を確認するため薬物の
急性毒性を表す指標となる重要な意味のある数値としてLD50(実験動物の50%
を致死せしめられる量)値を次のような方法によって求めた。
正常ICRマウス(♀,19±1g)30匹を1力群に6匹ずつAないしEの5群に
分け、A群には体重1kg当り本発明によって実施例1で製造された黄栢皮とオミ
ナエシの混合水抽出物 3g を投与することから等差的に量を増加させB群には6g
、C群には9g、D群には 12g及びE群には 15g ずつをそれぞれ経口投与してベ
ーレンス−カルバー(Behrens-Kirber)法によって混合水抽出物の経口(p.o.)
投与によるLD50値を測定した。結果を下記の表12に記載した。
<表12>本発明の混合水抽出物の経口投与による致死量(LD50)
注)*z:2個の連続される用量で死亡した動物数の1/2値
**d:2個の連続される用量の違い
上記の表12記載の結果からわかるように、本発明による黄栢皮とオミナエシ
の混合水抽出物を体重1kg当り 15g の高用量で経口投与した群からも動物が1
匹も死亡せず混合水抽出物の経口投与によるLD50値は15g/kg以上であり、した
がって生体に非常に安全な物質であることがわかった。即ち、本発明による黄栢
皮とオミナエシの混合水抽出物は毒性の殆どない安全投与できるものであること
が明らかに分かる。
さらにLD50値の測定の際に使用した実験動物に対して剖検及び病理組織学的
試験を次のような方法で行った。LD50測定試験終了の際に全生存動物に対して
エーテル麻酔後に放血致死させた後、臓器を摘出し肉眼的に臓器の異常を検査し
た。病理組織検査のため剖検した全臓器を 10%中性ホルマリン溶液に10日以上
固定させた後、脱水過程を経てパラフィン包埋法(Fisher,HistomaticTissue
Processor,166A,Shadon,UK)により包埋した後、ロタリーミクロトーム(
AO Rotary Microtomc,LEICA,Germany)で 5μm 切片をつくりへマ
トキシリンとエオシン染色して観察した。
各群の全ての動物を解剖し顕微鏡で調査した病理組織学的所見は添付の図19
に表した。即ち、本発明による黄栢皮とオミナエシの混合水抽出物をマウス体重
1kg当り 15g まで経口投与した場合にも肝臓組織で薬物投与による異常所見
は観察されなかった(図19A)。また腎臓においても薬物投与による異常所見は
観察されず(図19B)、心臓の心筋細胞においても薬物投与による異常所見は全
く観察されなかった(図19C)。その他の主要臓器である消化管、膵臓、肺、脾臓
、副腎、脳、睾丸、卵巣、骨髄などにおいても薬物投与による異常所見は観察さ
れなかった。
したがって、本発明による黄栢皮とオミナエシの混合水抽出物は(マウスに投
与できる最大用量)体重1kg当り15g投与の時にも全臓器に対して急性毒性によ
る副作用がなく、またいかなる臓器損傷などの毒性も誘発しない安全な薬物であ
るものと判断された。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY,
DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I
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,CF,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,
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(72)発明者 ホン ウン キョン
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ンドン モクリョンアパート 1222―102
(72)発明者 ジョン ヨン シン
大韓民国 ソウル市 ソチョ−グ ソチョ
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(72)発明者 リュウ ボー イム
大韓民国 ソウル市 ソンパグ シンチョ
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(72)発明者 キム サン ゴン
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(72)発明者 リー キョン ヨン
大韓民国 ソウル市 ガンドング ミョン
1ドン ゴドクヒョンデアパート 13―
1403