JP2000212700A - 溶接性に優れた金型 - Google Patents

溶接性に優れた金型

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JP2000212700A
JP2000212700A JP32518399A JP32518399A JP2000212700A JP 2000212700 A JP2000212700 A JP 2000212700A JP 32518399 A JP32518399 A JP 32518399A JP 32518399 A JP32518399 A JP 32518399A JP 2000212700 A JP2000212700 A JP 2000212700A
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hardness
weldability
mold
present
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JP32518399A
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Kunichika Kubota
邦親 久保田
Miki Yamaoka
美樹 山岡
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Proterial Ltd
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Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 靭性や耐摩耗性といった機械的性質を低下さ
せずに、溶接性や被削性に優れた工具鋼を達成し、求め
られる諸特性に優れた金型を提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.45〜0.65%未満、Si:0.1
〜2.1%、Mn:0.1〜1.2%、Cr:4.5〜12.0%、MoまたはWの1
種あるいは2種を(Mo+1/2W):1.5〜3.5%、V:0.05〜0.5%未
満を含有し、残部がFeおよび不可避の不純物からなり、
共晶値Z[=8×(C%)+0.6×(Cr%)]が10.8以下の工具鋼を5
5HRC以上の硬さに調質し、切削加工を行なうことで作製
した金型である。好ましくは、前記供される工具鋼を、
Cr:4.5〜9.0%、MoまたはWの1種あるいは2種を(Mo+1/2
W):1.5〜2.5%とし、S:0.005〜0.1%、Ni≦5.0%、Ca≦100
ppmとする。加えて、1000〜1050℃での焼入れ、500℃以
上の焼戻しに適用され、55HRC以上の硬さになる工具鋼
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、家庭電化
製品、農機具等に使用される鋼板の打抜、曲げ、絞りあ
るいはトリミング用等の金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車メーカー等では、価格競争に打ち
勝ち収益を確保するために、これまであらゆる分野での
コスト低減を実施してきた。その分野は金型関連までに
もおよび、コスト低減のため、プレス金型で成形される
製品の製作工程の短縮や金型製作数の削減、更には、金
型の加工方法や工具の開発等、種々の低減施策が実施さ
れてきた。
【0003】このような金型において、従来より使用さ
れる金型材、特に冷間加工用金型材には、耐摩耗性付与
のため炭化物を多量に含み、更に、焼入れ性に優れかつ
靭性を確保するためCr含有量が多い材料が求められて
おり、例えば、JIS G4404規定の合金工具鋼鋼
材であるSKD11等の高C−高Cr系鋼が使用されて
いる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、近年の傾向と
しては、金型を構成する部品数の削減や一体成形、形状
の複雑化等で、上述のSKD11のごとき鋼材からの加
工による形状出しでは、耐摩耗性には優れているが加工
すべき体積が膨大となり、製造コスト増加の原因となっ
ている。一方、SKD11に相当する材質の成分で鋳造
化して加工代を減少する試みも成されてきたが、炭化物
を多量に含むため、靭性等に問題があり、適切な合金設
計での実用化までには至っていないのが現状である。
【0005】そして、特に鋼板の打抜、曲げ、絞りある
いはトリミング等に使用される金型では、三次元的に変
化している被打抜品の形状を成形する金型にて割れが頻
発するようになり、溶接補修性等の要求が高まってき
た。つまり、最近の動向を見てみると、金型加工工程の
立ち上げが短期化してきたための設計変更による形状修
正や、金型使用中の過酷な条件等による破損や割れが生
じても、救済により再使用ができるための溶接性が重要
となってきたのである。
【0006】以上、従来より金型等に適用されてきた工
具鋼には、その最近において求められる機械的特性につ
いて各々、一長一短がある。そこで、本発明は、靭性や
耐摩耗性といった機械的性質を低下させずに、溶接性や
被削性に優れた工具鋼を達成し、上記課題を解決し得る
金型を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、靭性や耐
摩耗性といった基本的な機械的特性の維持を鑑みた上
で、溶接性や被削性の改善に要求される基本条件を見直
した。
【0008】まず、このような金型材は、現状では耐摩
耗性重視のため硬質脆性な炭化物を多量に含有する成分
設計を行っているが、近年の耐摩耗性付与手段として表
面処理の技術が発達してきたことから、金型材自体の耐
摩耗性確保は現状ほど重視する必要性が無くなってき
た。そして、耐割れ性の点から見ると、このような炭化
物はクラック進展を促進させる因子であるので、適切な
量まで低くする必要がある。
【0009】これら考慮の結果として、本発明者らは、
工具鋼を構成する基本成分であるC含有量を減少しても
良好な機械的性質、特に硬さ及び靭性を得るに充分な成
分構成および組成を見いだし、更に溶接性や被削性、表
面処理特性にも優れた工具鋼に想到し、本発明の金型に
至った。
【0010】すなわち、本発明は、重量%で、C:0.
45〜0.65%未満、Si:0.1〜2.1%、M
n:0.1〜1.2%、Cr:4.5〜12.0%、M
oまたはWの1種あるいは2種を(Mo+1/2W):
1.5〜3.5%、V:0.05〜0.5%未満を含有
し、残部がFeおよび不可避の不純物からなり、共晶値
Z[=8×(C%)+0.6×(Cr%)]が10.8
以下である工具鋼を55HRC以上の硬さに調質し、切
削加工を行なうことで作製した金型である。
【0011】好ましくは、前記供する工具鋼を、重量%
で、Cr:4.5〜9.0%、MoまたはWの1種ある
いは2種を(Mo+1/2W):1.5〜2.5%と
し、あるいは、S:0.005〜0.1%、Ni≦5.
0%、Ca≦100ppmとする。そして、これら本発
明に加えて、1000〜1050℃での焼入れ、500
℃以上の焼戻しに適用され、55HRC以上の硬さにな
る工具鋼よりなる金型である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の特徴は、工具鋼を構成す
る基本成分であるC含有量を減少しても良好な機械的性
質、特に硬さ及び靭性を得るに充分な成分構成および組
成を見いだし、更に溶接性や被削性、表面処理特性にも
優れた工具鋼とすることで、その作製される金型の特性
向上を達成したところにある。
【0013】つまり、本発明の金型に供される工具鋼
は、Cの含有量を抑えて優れた溶接性を確保するもので
あり、金型に使用すれば、その優れた靭性と共に、使用
中の破損や割れ、摩耗が生じても溶接による補修にて容
易に再使用が可能である。そして、C含有量の抑制によ
る耐摩耗性の不足が生じた場合にも対処すべく、優れた
表面処理性をも確保したものである。
【0014】本特許において、溶接性が優れるあるいは
溶接可能というのは、規定の予熱、後熱処理を行うJI
S Z 3158のY形状試験にて溶接割れが認められ
ないことを指す。溶接を行うにおいては、その際の溶接
割れを防止するために、通常は予熱、後熱を行う。予熱
は一般的に溶接時の高温割れ防止のために行い、後熱は
低温割れの防止を目的とし、特に溶接熱影響部の硬さを
下げる一種の焼戻しである。
【0015】一般に金型は、その製造途中または使用中
の状況により形状変更や補修のために溶接が実施される
が、合金鋼は溶接時の割れを防止するために高温に予熱
した状態で実施される。特に、Cr等を含む場合は45
0〜550℃以上に予熱後実施するのが一般的である
が、本発明では、この予熱温度を下げても、具体的には
250℃にまで下げても、JIS Z 3158のY形
状試験による溶接割れが認められない工具鋼が提供で
き、溶接性に優れた金型を達成できる。これによって、
溶接に係る作業性が向上し、経済的でもある。
【0016】次に、高C、Cr鋼では溶接後の後熱も重
要になるが、溶接熱影響部の硬さを下げることで、後熱
における加熱温度、時間を低くすることができる。特に
溶接熱影響部のコントロールにはC量を0.65%未満
にすることと、Cr量を4.5%以上にすることが有効
であり、これは、溶接性を左右するマルテンサイト組織
中の固溶C、Cr量を最適に調整するに有効となる。
【0017】次に、本発明の表面処理性について述べて
おく。本発明は、C含有量の抑制による耐摩耗性の不足
が生じた場合にも対処すべく、表面処理性をも十分に確
保するものである。そのために必要な特性は、焼入性お
よび、塩浴法やCVD処理といった表面処理温度でのオ
ーステナイト組織中に固溶するC量と表面近傍部の母材
の硬さである。
【0018】つまり、焼入れ性は、あらゆる表面処理装
置への適用を可能にすべく付与するものであり、主にC
r量を4.5%以上に維持することで確保できる。同時
に、4.5%以上のCr含有は、複雑形状物へ表面処理
後の冷却中におこる一種の焼き割れ現象を防止する目的
で確保すべきものでもある。
【0019】表面処理温度でのオーステナイト組織中に
固溶するC量は、十分な膜厚を有するMX型化合物(T
iC、VC等)の生成に重要である。つまり、固溶C
は、表面処理法にてMX型化合物を生成するために、そ
の鋼材から供給すべく必要となり、その最適量は、表面
処理温度に保持する前のマルテンサイト組織中に固溶す
るC量による。その固溶C量の調整をすべく、本発明の
金型は、その作製に供される工具鋼のC含有量を0.4
5%以上としている。そして、表面近傍部の母材の硬さ
を維持することは、表面処理による形成膜の耐剥離性を
付与するに重要な要素である。
【0020】加えて、工具鋼より金型を製作するにあた
り、そのコスト低減のための一手段に工具鋼の被削性向
上がある。本発明に供される工具鋼は、その焼きなまし
状態に加えて焼入れ焼戻し後の被削性にも優れ、具体的
には55HRC以上という焼入れ焼戻し状態においても
優れた被削性が達成できる。そのため、本発明に供する
工具鋼は、いわゆるプリハードン鋼として、所定の硬さ
に調質してから切削加工を行なうことで作製する金型に
最適である。これらに基いて、本発明の金型に供される
工具鋼を構成する元素およびその含有量の限定理由につ
いて述べる。
【0021】Cは、焼入れ性を向上し、熱処理後の硬さ
を維持するために必要である。耐摩耗性を達成すべく熱
処理後の硬さを55HRC以上に確保し、CVD処理や
塩浴法といった表面処理において十分なMX型炭化物の
膜厚を確保するためには、0.45%以上の含有量が必
要である。0.45%未満では、焼入硬さが不足し十分
な強度を確保できず、かつ塩浴法もしくはCVD法によ
る3μm以上の膜厚を生成させるのが困難となる。
【0022】また、Cは、Cr、Mo、Vと結合して炭
化物を形成し、耐摩耗性や焼戻し軟化抵抗を向上させ
る。添加量が過多になると靭性を低下させ、0.65%
以上になると溶接性を劣化させる。更に、固液共存温度
幅が大きくなり鋳造欠陥発生の危険、つまり共晶値Zが
増す原因となる。よってCの添加量は0.45〜0.6
5%未満とした。なお、共晶値Zとは、共晶凝固の起こ
り易さを評価する指標であり、Z=8×(C%)+0.
6×(Cr%)で定義する。この式での(C%)と(C
r%)とは工具鋼に含有されるCおよびCrの重量%で
ある。
【0023】Siは、脱酸剤および鋳造性改善の目的で
含有するが、その効果を得るためには少なくとも0.1
%以上が必要である。一方、過多の含有は、被削性と溶
接性を阻害する原因となり、また、マトリックスの成分
偏析も激しくなる。このため、Siの含有量は、0.1
〜2.1%とした。
【0024】Mnは、焼入性向上のために含有するが、
0.1%未満では焼入硬さを安定して得るためには不十
分である。一方、多すぎると溶接性を劣化させる原因と
なり、更にSiと同様、マトリックスの成分偏析も激し
くなるので、0.1〜1.2%とした。ただし、Mnは
高価なCrやMo等と置換できる経済的な元素でもあ
り、CrやMo等の効果が十分発揮される場合にはMn
は無添加としても良い。
【0025】Crは、Cと結合して炭化物を生成し耐摩
耗性を向上すると共に、焼入性を増す効果、そして、C
VD処理や塩浴法などによる複雑形状物への表面処理後
の冷却中におこる一種の焼き割れ現象を防止する効果が
ある。しかし、多すぎるとCr炭化物の増加による靭性
の低下をきたす。更に、Cの添加と同様に、固液共存温
度幅が大きくなり鋳造欠陥発生の危険(共晶値Z)が増
す原因となる。よってCrの添加量は、4.5〜12.
0%とし、好ましくは、4.5〜9.0%とした。
【0026】MoおよびWは、焼入性を向上する。ま
た、Cと結合して硬い炭化物を形成し、耐摩耗性を向上
させる。Wの原子量はMoの約2倍であるため、Mo1
%の含有量はW2%の含有量と等しい効果を有し、(M
o+1/2W)量でその効果を表すことが可能である。
本発明ではMo、Wの1種または2種を含有させること
ができ、つまり、Moの全含有量を2倍のW含有量で置
き換え使用してもよく、Moの一部をそれに相当するW
量に置き換え使用してもよい。(Mo+1/2W)量で
どちらの成分を優先して使うかは経済性を考慮して判断
すればよい。(Mo+1/2W)の添加量が1.5%未
満では高温焼戻しでの硬さの確保が不十分である。一
方、過多の添加量では疲労特性を低下させる塊状の共晶
炭化物が発生するので、1.5〜3.5%とし、好まし
くは、1.5〜2.5%とした。
【0027】Vは、焼入れによる残留オーステナイトの
成長を抑制し、靭性を確保するのに有効であり、この効
果を発揮するためには、0.05%以上の含有が必要で
ある。逆に、過多の含有は凝固時に巨大なV系炭化物を
晶出し、溶接性と靭性を低下させる原因となるので0.
05〜0.5%未満とした。
【0028】共晶値Zは、先述したように共晶凝固の起
こり易さを評価する指標であり、共晶値Zが増す程、固
液共存温度幅が大きくなる。本発明の金型作製に供され
る工具鋼においては、共晶値Zが大きくなると溶接時の
高温割れや靭性の劣化が懸念されるので、10.8以下
とする。
【0029】また、本発明の金型に供される工具鋼は、
その他求められる効果に則して、上記の成分組成にS、
Zr、Ca、Pb、Se、Te、Bi、In、Be、C
eのうちの1種または2種以上を含有してもよい。その
うち、Sは、脆化元素の代表として溶接、高硬度鋼の分
野では忌み嫌われる元素であるが、快削効果があるた
め、靭性、溶接性を向上させた分、被削性向上の目的で
0.1%程度までなら含有を許容することができる。本
発明に好ましくは、0.005〜0.1%とする。
【0030】Niは、焼入性と衝撃遷移温度を上げるこ
とによる靭性向上が認められる元素であるが、本合金系
では、特に高C量域での靭性維持による効果で溶接性劣
化を防止でき、実用的に操業可能な表面処理領域を広げ
る方向に作用する。しかし、過多のNi含有は製造上の
困難性から上限を5.0%以下とした。上記の効果を得
るに好ましくは、0.005%以上、更に好ましくは、
0.01%以上とする。
【0031】Caは、機械的性質の低下や組織の変質を
伴わない、理想的な快削元素である。その快削性向上の
機構は、鋼中に微量に分散している酸化物を低融点化さ
せ、これが切削熱で溶けだし、刃先に保護膜を形成する
ものである。しかし、蒸気圧が高く溶鋼中から抜け出し
易いため、多量の添加が難しいのが現状である。技術レ
ベルに鑑み、本発明では100ppmを上限とする。そ
の他、希土類は、本発明に供される工具鋼における被削
性を向上する目的のもとに0.2%以下、好ましくは、
0.1%以下の含有が可能である。
【0032】以上に述べた本発明に供される工具鋼であ
れば、優れた溶接性の付与に加えて、従来のSKD11
と同等の熱処理条件である1000〜1050℃からの
焼入れ、500℃以上の焼戻しによっても55HRC以
上の硬さが確保できる。そして、その55HRC以上の
硬さにて優れた被削性の達成に加え、塩浴法やCVD処
理といった表面処理性にも優れるものである。また、本
発明の工具鋼を金型に使用するにあたっては、その求め
られる機能に応じて必要な部位のみに火焔焼入れ等を実
施しても良く、製作工数あるいは必要特性を考慮して硬
さを得るための熱処理方法を選択すればよい。
【0033】なお、本発明では、本効果の更なる向上に
おいて、焼入後の状態を調整することが有効である。つ
まり、焼入れ後のマルテンサイト組織中に固溶するCお
よびCr含有量を重量%でC:0.45〜0.6%、C
r:3.0〜6.0%とすること、そして、断面組織中
のM型一次炭化物を面積%にて1.5%以下とす
ることである。
【0034】マルテンサイト組織中の固溶C、Cr量を
調整することは、溶接性の向上に有効である。高C、C
r鋼では溶接後の後熱も重要であり、溶接熱影響部の硬
さを下げることで、後熱における加熱温度、時間を低く
することができることは先述の通りである。その手段と
してマルテンサイト組織中の固溶C、Cr量の調整は有
効であり、本発明において具体的には、固溶C量を0.
6%以下、固溶Cr量を3.0%以上とすることであ
る。更には、固溶Cr量を6.0%以下とすることであ
り、この場合、被削性の向上の面においても有効であ
る。
【0035】また、表面処理性の向上にも繋がる焼入れ
性の向上おいて、本発明に供される工具鋼に含有される
Cr量を4.5%以上にすることは先述の通りである
が、好ましくは、そのうちマルテンサイト組織中の固溶
Cr量を3.0%以上にすることが有効である。また、
固溶C量を確保する理由は、先述のごとく、表面処理法
にてMX型化合物を生成するために鋼材からの供給が必
要となるためでもあって、硬さを維持する上でも、その
固溶C量を0.45%以上とすることが好ましい。一次
炭化物は、良好な被削性を確保する上で、その断面組織
中の1.5(面積%)以下にすることが好ましい。な
お、一次炭化物量は、本発明の工具鋼にて規定する化学
組成に加え、熱処理によっても低減が可能である。
【0036】
【実施例】次に、本発明の実施例について詳細に説明す
るが、本発明はこれらの実施例により何等限定されるも
のではない。 (実施例1)まず、50kg高周波炉を使用して材料を
溶解し、表1に示す化学組成を有したインゴットを作成
した。なお、比較材1はSKD11相当材である。次
に、鍛造比が5程度になるように熱間圧延をし、冷却
後、850℃で4時間保持の焼鈍を実施した。
【0037】
【表1】
【0038】次に、上記焼鈍材をJIS Z 3158
のY型試験片に整え、真空加熱炉を用いて1025℃に
加熱保持後、不活性ガスでガス冷却焼入れを実施した。
更に続けて各試験片の目標硬さがHRC55以上となる
ように、500〜550℃で焼戻しを実施した。このよ
うにして製作した試験片を表2に示す条件で溶接し、溶
接性の評価を行なった。なお、比較材4〜10は、50
0℃以上の焼戻しで55HRC以上の硬さを得ることが
できなかった。
【0039】
【表2】
【0040】溶接性の評価は、溶接後の割れの有無によ
って行ない、その結果を焼入れ、焼戻し熱処理による硬
さと共に表3に示す。本発明材には、いずれの場合も溶
接割れが発生しなかったが、比較材では予熱温度が35
0、450℃で割れを生じた。
【0041】
【表3】
【0042】次に、上記焼鈍材から引張試験用にJIS
4号試験片(直径14mm)を、シャルピー衝撃試験用
に10mm角、長さ55mm、中央部切り欠き深さ2m
m、半径10mmの試験片を圧延方向に切り出し、機械
的性質(引張強さ、シャルピー衝撃値、抗折応力)の評
価に供した。なお、熱処理は真空加熱炉で1025℃に
加熱後、不活性ガスでガス冷却焼入れを実施し、更に目
標硬さがHRC55以上となるように500〜550℃
で焼戻しを実施した。これらの結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】表4より、本発明材1〜3は、55HRC
以上の硬さにて優れた靭性が達成されており、機械的性
質に優れることが分かる。
【0045】(実施例2)次に、被削性の評価を行なっ
た。まず、表1に示す素材にて、硬さ24HRC以下の
焼きなまし状態である供試材を作製し、スクエアエンド
ミルでの被削性の評価を行った。なお、切削試験は表5
に示す条件で行った。表6に示す結果より、本発明材1
〜3は、SKD11相当である比較材1に比べて、3倍
以上の工具寿命が得られることが分かる。
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】次に、表1に示す素材にて、本発明の熱処
理条件により硬さ57〜60HRCに焼入れ焼戻しした
供試材を作製し、スクエアエンドミルでの被削性の評価
を行った。切削条件は表7に示す。表8に示す試験結果
より、本発明材1〜3は、SKD11相当である比較材
1に比べて、6倍以上の工具寿命が得られることが分か
る。
【0049】
【表7】
【0050】
【表8】
【0051】(実施例3)次に、溶接前の予熱温度と溶
接後の冷却時間が溶接性に及ぼす影響を調査した。調査
にあたっては、上記焼鈍材を真空加熱炉を用いて102
5℃に加熱保持後、不活性ガスでガス冷却焼入れを実施
し、続けて500〜550℃で焼戻して所定の硬さとし
たものを供試材とし、溶接後の後熱は450℃で1時間
保持後、3時間または7時間をかけて常温まで冷却する
ものとした。この条件による割れの発生有無を、調整硬
さおよび予熱温度と共に、表9に示す。
【0052】
【表9】
【0053】表9より、本発明材1〜3では、冷却時間
が3時間の場合でも割れが発生しなかったのに対し、比
較材では7時間の冷却時間においても割れを生じた。
【0054】
【発明の効果】以上、本発明によれば、SKD11と比
較して、基本成分であるC含有量を減少しても良好な機
械的性質、特に硬さ、靭性を確保することができ、溶接
性に優れ、更に被削性の優れた鋼材を提供することがで
きる。更に溶接時の予熱温度を低めに設定でき、冷却時
間を短縮しても割れが発生し難く、作業性にも優れてい
る。加えて、優れた表面処理性にも考慮がなされている
ことから、本発明の金型による工業的価値は大きい。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.45〜0.65%未
    満、Si:0.1〜2.1%、Mn:0.1〜1.2
    %、Cr:4.5〜12.0%、MoまたはWの1種あ
    るいは2種を(Mo+1/2W):1.5〜3.5%、
    V:0.05〜0.5%未満を含有し、残部がFeおよ
    び不可避の不純物からなり、共晶値Z[=8×(C%)
    +0.6×(Cr%)]が10.8以下である工具鋼を
    55HRC以上の硬さに調質し、切削加工を行なうこと
    で作製したことを特徴とする溶接性に優れた金型。
  2. 【請求項2】 前記工具鋼が、重量%で、Cr:4.5
    〜9.0%、MoまたはWの1種あるいは2種を(Mo
    +1/2W):1.5〜2.5%であることを特徴とす
    る請求項1に記載の溶接性に優れた金型。
  3. 【請求項3】 前記工具鋼が、重量%で、S:0.00
    5〜0.1%であることを特徴とする請求項1または2
    に記載の溶接性に優れた金型。
  4. 【請求項4】 前記工具鋼が、重量%で、Ni≦5.0
    %であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか
    に記載の溶接性に優れた金型。
  5. 【請求項5】 前記工具鋼が、重量比で、Ca≦100
    ppmであることを特徴とする請求項1ないし4のいず
    れかに記載の溶接性に優れた金型。
  6. 【請求項6】 前記工具鋼が、1000〜1050℃で
    の焼入れ、500℃以上の焼戻しに適用され、55HR
    C以上の硬さになることを特徴とする請求項1ないし5
    のいずれかに記載の溶接性に優れた金型。
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