JP2000199524A - 転動装置 - Google Patents

転動装置

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JP2000199524A
JP2000199524A JP13749399A JP13749399A JP2000199524A JP 2000199524 A JP2000199524 A JP 2000199524A JP 13749399 A JP13749399 A JP 13749399A JP 13749399 A JP13749399 A JP 13749399A JP 2000199524 A JP2000199524 A JP 2000199524A
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rolling
bearing
steel
hardness
ball
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Susumu Tanaka
進 田中
Manabu Ohori
學 大堀
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NSK Ltd
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NSK Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】静粛性、輸送時の衝撃や振動或いは機器の作動
時のフレッチング耐久性を向上すると共に、ハイブリッ
ド軸受で問題視される耐衝撃性、予圧抜けなどの問題も
解消する。 【解決手段】転がり軸受をはじめとする転動装置の外方
部材、内方部材、転動体のうちの少なくとも一つを鋼製
とし、その表面にHv800以上、好ましくはHv90
0以上の窒化層を付与し、その転動面の表面粗さが0.
1μmRa以下となるように仕上加工する。また、C
r、Mo、V、Nb、W、Ti、Al、Si等を含有し
て窒化粒子径を小さくし、2%Da(直径の2%の意)
深さにおける硬さをHv653以上とする。また、転動
体表面の窒化層の化合物層の厚さを3μm以上2%Da
以下とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工作機械や食品機
械或いはハードディスクドライブ装置(HDD)やビデ
オテープレコーダー(VTR),ディジタルオーディオ
テープレコーダー(DAT)等に組み込まれる玉軸受を
はじめとする転がり軸受やリニアガイド、ボールねじ等
の転動装置に関し、特にそれらの高機能化や耐久性向上
を図るものである。
【0002】
【従来の技術】転がり軸受をはじめとする転動装置は、
その構成部品として外方部材と内方部材と両者に接触し
ながら転動する転動体とを備えており、当該転動体を含
み、外方部材並びに内方部材と転動体とが接触しながら
転動している面を転動面という。また、外方部材とは、
転がり軸受にあっては外輪、リニアガイドにあってはス
ライダ又は案内レール、ボールねじにあってはナットを
示し、内方部材とは、転がり軸受にあっては内輪又は軸
体、リニアガイドにあっては案内レール又はスライダ、
ボールねじにあってはねじ軸を示す。従って、外方部材
の転動面とは、転がり軸受にあっては外輪の軌道面、リ
ニアガイドにあってはスライダ又は案内レールの軌道
溝、ボールねじにあってはナットのねじ溝を示し、内方
部材の転動面とは、転がり軸受にあっては内輪の軌道
面、リニアガイドにあっては案内レール又はスライダの
軌道溝、ボールねじにあってはねじ軸のねじ溝を示す。
【0003】一般に、転がり軸受をはじめとする転動装
置は、転動体である玉ないしころ、外方部材並びに内方
部材である外輪、内輪、軸体、スライダ、案内レール、
ナット、ねじ軸等の材料として、主として軸受鋼であれ
ば日本工業規格のSUJ2が、ステンレス鋼であれば日
本工業規格のSUS440C或いは13Cr系のマルテ
ンサイト系ステンレス鋼が、肌焼鋼であれば日本工業規
格のSCR420相当の鋼材が使用されている。また、
このような転がり軸受その他の転動装置は、前述した転
動面において、高面圧下で繰り返し剪断応力とすべりを
受けて使用されるため、その剪断応力に耐える転がり疲
労寿命とすべりに対する耐摩耗性を確保できるように、
軸受鋼には焼入・焼戻、肌焼鋼にはAc1以上のオース
テナイト領域で浸炭又は浸炭窒化後に焼入・焼戻を施し
てHRC58〜64の硬度としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、転がり軸受
のうち、特にHDDやVTR等の情報機器或いはファン
モータ等に使用される玉軸受にあっては、トルクや音
響、騒音の低減等に対する要求が非常に厳しいため、極
めて高精度に仕上げ加工されている。これらに用いられ
る軸受材料には、高炭素クロム軸受鋼であるSUJ2又
はマルテンサイト系ステンレスであるSUS440Cや
0.7C−13Crステンレス等の材料が使用されるこ
とが多く、必要とされる硬さや耐磨耗性を得るために焼
入・焼戻しが施され、軌道輪の硬さはHRC58〜64
とされている。また、転動体は、特殊な場合を除き、基
本的には軌道輪或いは外輪,内輪の何れか一方と同一の
材料で構成されることが多い。
【0005】従来より、これらの軸受を構成する材料に
はSUJ2が使用されることが多かったが、錆びが問題
となることが多く、ステンレス鋼が多く採用されるよう
になっている。しかし、SUS440C等の従来のステ
ンレス鋼では、凝固過程で粗大な共晶炭化物を生成し、
熱処理後もそれが内在するため、SUJ2より静粛性に
劣り、比較的静粛性が要求される軸受には幾分適用限界
があった。
【0006】そこで、本発明者等は鋭意研究を行い、特
開平9−287053号公報に開示されるように、従来
のステンレス鋼に見られるような粗大な共晶炭化物の生
成を防止し、優れた静粛性と耐食性を兼ね備えた軸受用
ステンレス鋼を開発した。しかしながら、近年、機器の
小型化による可搬性が高まったことで、搬送中の落下や
輸送中に振動にさらされる機会が増え、機器に組み込ま
れた玉軸受の転動面表面がフレッチング損傷して機器の
性能を劣化させる場合があり、更なる耐久性向上の要求
が高まっている。つまり、機器に衝撃荷重が加えられた
場合、特に小型の玉軸受においては、接触楕円が小さい
こともあって、比較的小さな衝撃荷重でも軌道面が永久
変形し、音響劣化や回転トルクむらの発生等が生じ、玉
軸受を組み込んだ機器の性能が劣化するのである。この
問題は、鋼中に内在する残留オーステナイト等の軟質成
分の降伏応力が低いために発生すると考えられており、
玉軸受に必要な硬さを保持しながら、且つ残留オーステ
ナイトを低減化するために、SUJ2を焼入後、サブゼ
ロ処理するか、或いは220〜240℃程度の比較的高
い温度で焼戻しするなどして、衝撃荷重による音響劣化
等を防止するような対策が施されている。しかし、機器
の振動や動作等で生じるフレッチングに対しては、これ
まで、材料面では対策がなされていない。
【0007】また、工作機械やその他の転がり軸受にお
いても、使用環境が益々、高温、高速化の傾向にあり、
転がり疲労寿命はもとより、耐熱性、耐焼付性等の特性
も非常に重要になってきた。また、リニアガイドやボー
ルねじ等の転動装置においても例外ではなく、構造上、
玉軸受に比較してすべりが生じ易く、更に微小揺動又は
超低速で使用されることが多いため、転動面における潤
滑状態が悪くなる傾向にあり、このため、摩耗の進行が
早く、転動体と外方部材並びに内方部材との間の隙間が
大きくなって、結果として早期に予圧が抜けて、例えば
機械の精密な位置決めができなくなってしまうという問
題もある。
【0008】本発明は前記諸問題を解決すべく開発され
たものであり、疲労寿命はもとより、フレッチング耐久
性や耐摩耗性或いは耐焼付性などの諸特性に優れる転動
装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】前述のような問題に対し
て、例えば玉軸受では、転動体に窒化珪素等のセラミッ
クスを採用するケースが増えている(以下、転動体にセ
ラミックスを使用した転がり軸受をハイブリッド軸受と
称する)。セラミックスは高価であるが、転動体のみで
あれば、コストの増大を最小限に抑えることができ、同
時に転動体をセラミックスにすることで、接触面での凝
着摩耗が抑制されて、前述のような諸特性が大幅に向上
する。しかし、ハイブリッド軸受でも、転動体に占める
コストの割合が非常に大きいだけでなく、弾性係数や線
膨張係数が鋼と比較して著しく異なるため、例えば静粛
性に対する要求の高い情報機器用玉軸受では、軸受に衝
撃荷重が加わった場合に、軌道輪に圧痕形成が生じて音
響劣化し易いとか、また疲労寿命の観点では、面圧が大
きくなるため、寿命低下の傾向にあり、また温度変化に
伴って予圧が変化してトルク変動が生じ、著しい場合に
は剛性が著しく損なわれるといった異なる諸問題があ
る。
【0010】本発明者等は、基本的には鋼の特性をその
まま利用し、転動装置の構成部品の表面のみ適当な改質
層を形成させることによって、疲労寿命はもとより、フ
レッチング耐久性、耐摩耗性、耐焼付性等の諸特性を改
善することができないか検討を重ねた。表面改質法に
は、PVD法やCVD法等の蒸着或いはめっき法等があ
るが、これらにより得た改質被膜は所謂デポジットした
ものであり、摺動性には優れるものの、複雑形状部品の
表面に均一な改質層を形成させること非常に困難で、且
つ高い剪断応力がかかる転動部材としては、母材と皮膜
との界面強度が不足して、容易に皮膜の脱落が生じる恐
れがあり、信頼性に欠けるという問題がある。
【0011】そこで、本発明者等は、拡散性改質処理で
ある窒化処理の適用可否を検討した。窒化処理は、塩浴
窒化、ガス窒化、イオン窒化処理等があり、古くから機
械部品の表面処理法として利用されているが、基本的に
は摺動性を付与することを目的に実施されるのであっ
て、これまで高い剪断応力を受ける転がり軸受等の転動
部品に適用されるケースは少ない。
【0012】例えば特開平10−131970号公報で
は、一般軸受鋼からなる構成部品の一つに窒化処理を施
し、耐食性改善を図ると共に、表面層における窒化物の
平均粒子径を1μm以下とすることで耐焼付性を向上さ
せ、自動車のエンジンのウォーターポンプ等の補機に好
適な転がり軸受が提案されているが、この公報では窒化
層表面に関する記述のみで、転がり寿命への考慮が不十
分である。例えば表面に窒化層が形成された場合には、
下地は非常に高い温度で焼戻しされることになるので、
硬度が非常に低下する。転がり軸受やその他の転動装置
においては、高い剪断応力を受けるため、下地に十分な
強度が確保されていないと、表面の窒化層が容易に破損
し、結果として疲労寿命の低下を招く。また、表面に形
成された窒化物粒子の大きさを限定するだけで、その表
面粗さの規定がないので、単に窒化したままでは表面が
粗く、静粛性が要求される情報機器用の玉軸受などには
到底使用できない。
【0013】而して、本発明に係る転動装置は、外方部
材と内方部材との間に転動体を配設し、当該転動体は外
方部材及び内方部材に接触しながら転動する転動装置に
おいて、前記外方部材及び内方部材及び転動体の少なく
とも一つが軸受用鋼で構成され、且つその完成品表面に
Hv800以上、好ましくはHv900以上の窒化層を
有し、且つその少なくとも転動面表面は表面粗さ0.1
μmRa以下に仕上加工されていることを特徴とするも
のである。
【0014】また、Cr、Mo、V、Nb、W、Ti、
Al、Siの少なくとも1種以上を総含有量で2%以上
25%以下含有する鋼を母材とし、2%Da(直径の2
%の意)深さにおける硬さが少なくともHv653以上
であることが望ましい。また、転動体表面に窒化層を形
成した場合、その窒化層は化合物層と拡散層とからな
り、そのうちの化合物層の厚さが3μm以上2%Da以
下であることが望ましい。
【0015】また、転動装置が玉軸受である場合にあっ
ては、外輪及び内輪及び複数の転動体から構成される
か、又は外輪及び軸体及び複数の転動体から構成される
玉軸受において、前記転動体を除く、構成部品の少なく
とも何れか一方が、HRC58以上で且つ残留オーステ
ナイトが4%以下の軸受鋼からなり、前記転動体が鋼製
で且つ表面層にHv900以上の表面硬化層を備えるこ
とが望ましい。
【0016】以下に臨界的意義について説明する。 [材料について]母材となる軸受用鋼としては、高炭素
クロム軸受鋼の他に、浸炭鋼、耐熱鋼、ステンレス鋼、
合金工具鋼、高速度工具鋼、クロム鋼、クロムモリブデ
ン鋼等を使用し、表面層にはHv800以上、好ましく
はHv900以上の窒化層を形成する。また、好ましく
は、Cr、Mo、V、Nb、W、Ti、Al、Siの少
なくとも1種以上を総含有量で2%以上、好ましくは5
%以上25%以下含有する鋼を使用して、表面に窒化層
を設けると、当該窒化層には、これらの元素を含む微細
な窒化物が析出して、フレッチング耐久性、耐焼付性、
耐摩耗性が向上する。また、窒化処理は通常、400〜
600℃程度の比較的高い処理温度で実施されるため、
母材に十分な耐熱性がない場合には、窒化層を支える下
地の強度が不足して、容易に表面窒化層の破損を招く。
従って、最大剪断応力位置でもある2%Da深さにおけ
る硬度を少なくともHv653以上確保する。具体的に
は、前記合金元素添加によって耐熱性を向上させるか、
或いは窒化層(拡散層)をより深く設ける。また、窒化
処理前に浸炭、浸炭窒化処理を行って耐熱性を確保して
もよい。また、マルテンサイト系ステンレス鋼或いは高
速度工具鋼等であれば、十分な耐熱性があり、窒化処理
後においても十分な硬度を保持できるため、より好まし
い。また、窒化処理温度が高い場合には、母材の耐熱性
が不足して、十分な下地の硬度が得られない場合もある
ため、窒化処理温度は好ましくは500℃以下、更に好
ましくは460℃以下とする。 [表面粗さについて]窒化処理後の表面粗さは、0.5
〜2.0μmRa程度と大きいため、このままでは、静
粛性が要求される情報機器用玉軸受或いは各種ファンモ
ータ用の玉軸受等には適用できない。また、表面の窒化
物或いは酸化物粒子が転動時に脱落するなどして装置の
信頼性を低下させるため、少なくとも転動面は窒化処理
後に仕上加工されていることが必要である。また、その
粗さが大きい場合には、転動面において相手材への攻撃
性が強まる傾向にあり、例えば境界潤滑下で寿命が短く
なる傾向にある。従って、これらの問題を回避して十分
な特性を引き出すために、少なくとも転動面は0.1μ
m以下に仕上加工する。 [窒化層が化合物層と拡散層とからなり、化合物層厚さ
が3μm以上2%Da以下であることについて]窒化層
は一般的には化合物層と拡散層とからなるため、被膜と
母材との密着性が強く、剥離しにくい。但し、転がり軸
受のように、窒化層よりも深い位置で、大きな剪断応力
を受けると、やはり剥離の問題を伴うことになるので、
前述したように下地の硬度も考慮する必要がある。ま
た、化合物層は,(Fe、Cr)2, 3or4N、CrN、C
2 N、Mo2 N、VN等の緻密な窒化物から構成され
ており、優れた表面特性を有する。また、化合物層厚さ
が大きくなると、処理コストが嵩むだけでなく、本来、
鋼が持っている物性を損ない、例えば情報機器用の玉軸
受にあっては耐衝撃性が低下する。従って、信頼性を考
慮すると、化合物層厚さは3μm以上2%Da以下とす
るのが好ましい。 [玉軸受を構成する軌道輪の材料について]前記玉軸受
を構成する軸受鋼とは、JIS G 4805記載のS
UJ2はもちろんのこと、SUS440Cや0.7C−
13Crステンレス、或いはM50や浸炭鋼等、軸受に
使用される一般的な鋼を示す。しかし、玉軸受はハウジ
ング又は軸に接着剤で固定されることが多く、防錆油が
付着していると接着強度が低下したり、防錆油がこれと
反応して錆びの原因となったり、更にはアウトガスが発
生して、これが例えばハードディスク表面に付着してH
DD装置の信頼性を低下させるなどの問題もあるため、
完全脱脂されることが多く、機器の信頼性の点でステン
レス鋼の方が好ましい。但し、従来のSUS440Cの
ような高炭素マルテンサイト系ステンレスの場合には粗
大な共晶炭化物を多数含有するため、軸受の静粛性の点
でSUJ2に劣る。そこで、軌道輪には静粛性、耐食性
に優れる下記の諸元を満たす材料を使用することが望ま
しい。
【0017】Cは、基地をマルテンサイト化することに
より焼入・焼戻し後の硬さを向上させて強度を増加させ
る元素であるが、耐食性の面からは少ないほどよい。多
量に加えると製鋼時にCrが粗大な共晶炭化物を形成
し、その結果、基地中のCr濃度が不足して十分な耐食
性が得られなくなるだけでなく、転動寿命、静粛性を低
下させる。従って、炭素含有量は0.5重量%以下とす
る。
【0018】また、NはCと同様にマルテンサイトを強
化して耐孔食性を向上させる作用があり、更に粗大な1
次共晶炭化物の形成を抑制するため、0.05重量%以
上好ましくは0.08重量%以上添加される。しかし、
多量の窒素を添加しようとすると、大気圧下では、凝固
過程で気泡が生じてインゴットに多量の気孔が導入さ
れ、素材の健全性を損なうため、Nの含有量は0.2重
量%未満、好ましくは0.18重量%以下とした。
【0019】また、十分な焼入・焼戻し後の硬さ(HR
C58以上)を確保し、疲労や磨耗に対する損傷を避け
るためには、C+Nの総含有量が0.45重量%以上必
要である。また、Mnは製鋼時の脱酸剤として必要な元
素で0.1重量%以上添加されるが、多量に添加すると
鍛造性、被削性を低下させるだけでなく、焼入れ後に多
量の残留オーステナイトが生成して衝撃荷重によって静
粛性が劣化し易くなる。そのため、Mnは1.0重量%
以下、好ましくは0.5重量%以下とした。
【0020】また、SiはMnと同じく製鋼時の脱酸剤
として0.1重量%以上必要である。更に、焼戻し軟化
抵抗性を高め、転動疲労寿命を向上させるのに有効な元
素であるが、多量に添加すると靱性、加工性等を低下さ
せるため、上限を1.0重量%以下とした。また、Cr
は鋼に耐食性を与える最も必要な元素であるが、10.
0重量%に満たないと良好な耐食性が得られない。ま
た、Cr含有量が増加すると、耐食性は向上するが、必
要以上に添加すると、δフェライトが生成して脆化した
り、Ms(マルテンサイト変態開始温度)が低下し、多
量の残留オーステナイトが生成して硬さが低下したりす
ることがあるので、16.0重量%以下とした。但し、
好ましくは11.5重量%以上13.5重量%以下とす
る。更に、C含有量との関係がC%≦−0.05Cr%
+1.41を満足しなければ、粗大な共晶炭化物が生成
して、静粛性、耐食性を共に低下させる。
【0021】また、残留オーステナイトは軟質で降伏応
力が低く、軸受が損耗したり、僅かな衝撃荷重を受けた
場合には転動体との接触部位に極めて小さな永久変形が
生じて音響劣化の原因となるため、4%以下、好ましく
は2%以下とする。 [玉軸受の転動体について]前記玉軸受に使用される転
動体は、グリースや潤滑油等に保護されて耐食性が問題
になることは殆どないため、耐フレッチング性等の耐久
性を向上させるべく、表面にHv900以上の窒化層を
付与する。これにより、表面磨耗を抑え、耐久性が飛躍
的に向上する。また窒化層を付与したことによって、自
体の損傷だけでなく、接触する相手部材の損傷をも抑制
する傾向にあり、耐フレッチング性を著しく高めること
ができる。また、転動体に窒化層を付与することによっ
て、組立時のボールキズが極端に減少し、不良率低減に
も効果がある。
【0022】一般に窒化処理は400℃〜600℃、好
ましくは400℃〜480℃の範囲で実施されるが、窒
化処理した後には芯部は焼戻し作用によって軟化し、硬
度が著しく低下する場合がある。通常、窒化処理後に
は、表面に化合物層が形成され、それよりも深いところ
では、窒素の拡散による拡散硬化層を有する。窒化処理
は、この拡散硬化層を有するため、皮膜と母材との密着
性が強く、剥離し難い。しかし、軸受が作動したとき
に、窒化層よりも深い最大剪断応力位置で大きな剪断力
を受けると、その部分に十分な強度がない場合には、塑
性変形を伴って表面硬化層の破損を招く恐れがある。従
って、転動体に使用される材料には、窒化処理後でも剪
断応力に耐えられるだけの十分な硬度を有する材料であ
ることが必要である。具体的にはマルテンサイト系ステ
ンレス鋼、高速度工具鋼或いは合金工具鋼等を使用し、
表面から2%Da深さまではHRC58以上とするか、
もしくは芯部硬さを窒化処理後にHRC58以上とす
る。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。まず、図1に示す二円筒摩耗試験により、
表1に示す供試材の摩耗試験を行う。
【0024】
【表1】
【0025】この二円筒摩耗試験は、上下に対向する一
対の円筒10に供試材を装着し、上から荷重Pを負荷し
ながら互いに接触状態で、逆方向に低速で回転させ、上
下の円筒試験片の摩耗量を求めた。また、試験片作製に
あたっては、まず所定の形状に加工した後、焼入硬化
し、研削仕上加工を施した。更に引き続き、下記の何れ
かの条件で窒化処理を施した。 条件1: 300〜380℃×1時間フッ化処理(90%N2 −1
0%NF3 混合ガス)後、400〜480℃×24〜4
8時間窒化処理(50%N2 −50%NH3 混合ガス) 条件2: 480〜560℃×3〜8時間窒化処理(50%N2
50%NH3 混合ガス) 条件3: 480〜560℃×3〜8時間軟窒化処理(シアン酸塩
(KCNO及びNaCNO)を主成分とする塩浴窒化) このうち、条件1は前処理としてフッ化処理を施した場
合の例であり、フッ素系ガスのクリーニング作用によっ
て、窒化を阻害する表面酸化層が除去されるため、より
低温で均一な窒化層を形成させることができ、高合金系
では特に有効な手法である。また、条件2は従来のガス
窒化、条件3は軟窒化(タフトライド)の例である。試
験は、窒化処理のまま(黒皮)のもの及び仕上加工を施
したものについて実施した。完成品品質及び試験結果を
下記表2に示す。なお、表2中には、上下に対向させた
一対の円筒試験片の摩耗量の平均値を示す。また、表面
硬さは、荷重100gでサンプル数n=10回測定した
平均値を用いた。また、化合物層厚さは、ピクラール又
は塩化第二鉄塩酸溶液でエッチングした後、光学顕微鏡
によりサンプル数n=10回観察し、明瞭に観察される
表面窒化層と下地との境界から化合物層の厚さを求め、
その平均値を記載した。
【0026】摩耗試験条件は以下の通りである。 (二円筒摩耗試験) 荷重 :50kgf 回転数 :10rpm すべり率:10% 潤滑 :鉱油 試験時間:100時間 試験温度:常温
【0027】
【表2】
【0028】表2からも明らかなように、本発明の前記
諸条件を満足する各実施例A−1〜A−8は、比較例A
−9〜A−13に比較して、非常に良好な耐摩耗性を有
する。これに対して、比較例A−9はSUJ2に窒化処
理を施した場合の例であり、窒化処理していない比較例
A−13と比較するとやや耐摩耗性は向上しているが、
表面硬さも表面粗さも前記諸条件を満足しておらず、各
実施例に比較すると、効果が小さいことが分かる。ま
た、比較例A−10及びA−11はSUJ2を窒化処理
後、仕上加工を施した場合の例であるが、化合物層が僅
かしか生成されないため、表面仕上げの際に、化合物層
が全て除去されてしまい、表面硬さ及び化合物層厚さの
点で前記諸条件を満足せず、前記比較例A−9と比較し
てやや劣る結果となった。但し、拡散層は存在している
ので、前記比較例A−13と比較すると、幾分耐摩耗性
に効果が確認される。また、窒化処理の違い、つまり前
記窒化処理条件の違いによる差はあまり認められない。
【0029】次に、図2に示すボールロッド寿命試験機
により寿命試験を行った。一般に、市場での軸受寿命
は、潤滑不良などが原因となって表面から材料が損傷
し、破壊に至る場合が多い。そこで、潤滑油には低粘度
油であるS10(40℃−10cst)を用い、更に転
動体はSUJ2製のボールをバレル加工によって粗さ
0.27μmRaとしたものを使用し、下記1式で表さ
れる油膜パラメータΛが1以下になるようにして、つま
り境界潤滑状態として、試験を実施した。作製した試験
片の完成品品質及び評価結果を下記表3に示す。なお、
表3の2%Da深さにおける硬さは、荷重500gでビ
ッカース硬度をサンプル数n=10回測定し、その平均
値を記載した。
【0030】 Λ=hm/(σ1 2+σ2 21/2 ……… (1) hm:最小油膜厚さ σ1 :ボール表面粗さ σ2 :ロッド表面粗さ (ボールロッド寿命試験) 試験片 :φ26mm×80mm、27/32インチボ
ール 回転速度:7800rpm 面圧 :45kgf/mm2 潤滑油 :S10
【0031】
【表3】
【0032】表3より、前記諸条件を満足する実施例B
−1〜B−5は、何れも比較例B−6〜B−11と比較
して長寿命であることが分かる。これに対して、比較例
B−6、B−8はSUJ2の表面に窒化層を形成した場
合の例であるが、何れも表面硬さが前記諸条件を満足せ
ず、比較例B−8は黒皮のままで表面粗さも前記諸条件
を満足しないことから、各実施例に比較して表面損傷が
著しく、合わせて2%Da深さにおける硬さも十分でな
いため、短寿命である。また、比較例B−7は表面損傷
は軽微であるが、2%Da深さにおける硬さが十分でな
いため、結果として短寿命である。また、比較例B−9
は窒化処理後に仕上加工を施しておらず、表面状態が悪
く、表面を起点とした剥離が生じた結果、短寿命となっ
た。また、比較例B−10はSUJ2の例であるが、窒
化処理しておらず、表面損傷が著しくて短寿命である。
また、比較例B−11はSUS302を窒化処理した場
合の例であるが、表面損傷は軽微であるものの,2%D
a深さの硬さが十分でないため、短寿命となった。以上
のように、表面硬さ及び2%Da深さの硬さが前記諸条
件を満足する実施例は転がり疲労の点で優れている。
【0033】また、表4には耐焼付性を評価した結果を
示す。評価は図3に示す4球式焼付限界試験により行
い、固定側にはSUJ2球を使用し、油浴潤滑下(ジェ
ットオイルII)、回転数6000rpm一定で、荷重を
変化させ、焼付限界荷重、つまりPV値を求めた。表4
より、前記諸条件を全て満足する実施例C−1〜C−5
は各比較例と比較して耐焼付性に優れる。一方、表面硬
さが不十分で且つ黒皮のままで表面粗さの大きな比較例
C−8、黒皮のままで表面粗さの大きな比較例C−9、
窒化処理を施しておらず、表面硬さも不十分な比較例C
−10は何れも耐摩耗性が各実施例に劣る。
【0034】
【表4】
【0035】次に、情報機器用の玉軸受を例に評価した
結果を以下に示す。なお、評価は玉軸受695(JIS
呼び番号)で行い、コストを考慮して、転動体表面にの
み窒化層を付与した。軌道輪には、SUJ2を使用し、
焼入後、220〜240℃で2時間焼戻し、残留オース
テナイトを4%以下とした。保持器にはプラスチック製
保持器を、軸受の潤滑については鉱油系グリースを使用
した。
【0036】まず、前記表1に記載した材料を用いて粗
球を成形した後、焼入硬化し、目標寸法まで研削してか
ら、窒化処理を施し、更にラップ仕上げを行って、φ2
mmの転動体を、JIS B 1501記載の等級3
(G3)以上の高精度に仕上加工した。なお、窒化処理
前に高精度に仕上加工しておくと、窒化処理による粗さ
や形状の崩れが少なく、ややラップ仕上げの取り代を少
なくして製造することが可能となるが、窒化処理前の精
度がG100程度であっても、例えば真球度2.5μ
m、表面粗さ0.125Raという高精度に仕上る場合
のラップ仕上げの取り代は数μm〜十数μmと十分であ
ることから、どちらを先に行ってもよい。つまり、窒化
層厚さが十分でない場合には前者が、窒化層厚さが十分
である場合には後者が好ましいことになる。
【0037】この方法により作成した転動体の完成品品
質を表5に示す。このうち、表面硬さは、表面下5μm
位置の硬さを荷重50gでサンプル数n=10回測定し
た平均値を用いた。また、化合物層厚さは、ピクラール
又は塩化第二鉄塩酸溶液でエッチングした後、光学顕微
鏡によりサンプル数n=10回観察し、明瞭に観察され
る表面窒化層と下地との境界から化合物層の厚さを求
め、その平均値を記載した。また、2%Da深さにおけ
る硬さは荷重50gでビッカース硬度をサンプル数n=
10回測定し、その平均値を記載した。また、表面粗さ
については、テーラーホブソン社製のタリサーフ6型ボ
ールユニットを用い、サンプル数n=10回測定してそ
の平均値を記載した。
【0038】軸受の機能評価については、初期音評価、
音響耐久性評価、フレッチング耐久性評価、及び耐衝撃
性評価を実施した。評価結果を前記表5に合わせて示
す。初期音評価は前記玉軸受を予圧1.2kgf、回転
数1800rpmで作動させたときの音圧測定を行うこ
とで行い、表中にはサンプル数n=10回測定した平均
値を求め、SUJ2製軸受である比較例D−12の測定
平均値を1としたときの比で示した。
【0039】また、音響耐久性評価は、予圧1.2kg
f、回転数7200rpm、温度70℃で500時間回
転作動させた後、再度、予圧1.2kgf、回転数18
00rpmで音圧測定を行うことで評価し、同様にサン
プル数n=10回測定した平均値を求め、SUJ2製軸
受である比較例D−12の測定平均値を1としたときの
比で示した。
【0040】また、フレッチング耐久性評価は、下記の
条件でサンプル数n=10回測定し、再度、予圧1.2
kgf、回転数1800rpmで音圧測定を行い、サン
プル数n=10回測定した平均値を求め、SUJ2製軸
受である比較例D−12の測定平均値を1としたときの
比で示した。また、耐衝撃性評価は、玉軸受に1.2k
gf、5kgf、それ以後は0.5kgf毎の順にアキ
シャル荷重を負荷し、試験前に比較して音圧が30mG
上昇したところを耐衝撃荷重とし、SUJ2製軸受であ
る比較例D−12の耐衝撃荷重を0として、それより低
下した荷重を記載した。 (フレッチング耐久性評価) 予圧 :1.2kgf 揺動条件:2°、27Hz 揺動回数:30万回
【0041】
【表5】
【0042】表5からも明らかなように、前記諸条件を
満足する各実施例D−1〜D−8は全て表面にHv90
0以上の窒化層を有しており、諸特性において格段に優
れている。これに対して、比較例D−9及びD−10
は、転動体表面に形成された窒化層が非常に厚く、その
厚さが2%Daよりも大きいため、本来、鋼が備えてい
る物性を損ない、耐衝撃性が各実施例に比較して劣る結
果が得られた。また、比較例D−11は、SUJ2に窒
化処理を施した場合の例であるが、表面硬さが前記諸条
件に比較して低く、化合物層も殆どないため、諸機能に
おいて各実施例に劣っている。また、比較例D−12
は、従来のSUJ2鋼球の場合の例であるが、前述のよ
うに音響耐久性、フレッチング耐久性の点で不十分であ
る。また、比較例D−13及びD−14は窒化処理した
ままのボールを組み込んだ場合の例であるが、表面粗さ
が低く、直径相互差等が大きいため、初期音が非常に大
きく、その後の評価を省略した。また、比較例D−15
は参考用としてセラミックス球(Si3 4 )を使用し
たハイブリッド軸受の例を示したが、音響耐久性、フレ
ッチング耐久性については非常に優れているものの、耐
衝撃性の点では非常に劣っている。
【0043】次に、前記実施例D−5及び比較例D−1
2、D−15の線膨張係数の違いによる予圧に及ぼす影
響を、母材の線膨張係数を用いて計算により求めた結果
を表6に示す。なお、ハブの材質はフェライト系ステン
レス鋼(10.4×10-6/℃)と仮定し、20℃にお
ける予圧0.8kgf、残留ラジアル隙間は16.5μ
mとして、0℃〜70℃の範囲で計算した。
【0044】
【表6】
【0045】表6から明らかなように、母材に鋼を使用
し、表面のみ改質を図った実施例では、予圧荷重に及ぼ
す温度の影響が小さく、予圧抜けによる剛性低下の点で
も,SUJ2製軸受の比較例D−12同様、非常に優れ
ている。これに対して、セラミックス球(Si3 4
を使用したハイブリッド軸受である比較例D−15で
は、やはり70℃で完全に予圧抜けが生じる結果となっ
た。
【0046】次に、直動部品であるボールねじで、その
耐久性を評価した結果を以下に示す。評価は、ねじ軸2
0mm、リード4mmのボールねじ装置を用いて摩耗試
験を行った。また、この場合もコストを考慮して転動体
にのみ窒化層を付与したもので評価した。また、転動体
には前記表4に記載した転動体C−1〜C10を用い、
ねじ軸及びナットには,JIS鋼種SCM420Hを焼
入・焼戻処理したものを使用した。試験条件は以下の通
りである。 (ボールねじ耐久試験) 初期予圧荷重:490N(外部荷重は無負荷) 回転数用 :1rpm(超低速) 潤滑剤 :鉱油系グリース(40℃での基油粘度3
7cst) なお、評価としては、前期試験条件にて走行距離2.5
kmの耐久試験を行い、試験前に対する試験後の予圧動
トルク残存率(初期予圧時のトルクを100%としたと
きの、摩耗による予圧の変動で低下したトルクの割合
%)の比較により、摩耗の進行度合いを比較することで
実施した。試験結果を表7に示す。
【0047】
【表7】
【0048】表7から明らかなように、実施例E−1か
らE−5は何れも、相手材との凝着摩耗が生じにくくな
ったため、非常に良好な耐摩耗性を示す。これに対し、
比較例E−8及びE−9は表面粗さが非常に大きく、ア
ブレッシブ摩耗により、比較的早期に予圧抜けが生じ
た。また、比較例E−10は,SUJ2鋼球を組み込ん
だ場合の例であるが、窒化層がないため、摩耗の進行が
早く、予圧動トルク残存率が最も小さい結果となった。
【0049】次に、軸受軌道輪の熱処理品質を変えた場
合の品質及びフレッチング耐久性と耐衝撃性の評価結果
を表8に示す。なお、転動体には、前記表5に示すD−
5を使用した。また、軌道輪はSUJ2製とし、軌道輪
の硬さ及び残留オーステナイト(γR)量は、熱処理温
度を830〜870℃に30分保持した後、焼入し、1
80〜240℃で焼戻を行うことにより、種々調整し
た。また、表中の実施例F−1〜F−3はサブゼロ処理
を実施した場合であり、表中比較例であるF−6〜F−
8はサブゼロ処理を実施しなかった場合の例である。ま
た、表中のF−1は、前記表5に記載したD−5と同一
である。耐衝撃試験は、前記条件と同一条件で実施し、
実施例F−1の音圧が試験前に比較して10mG上昇し
たところの荷重で、夫々の音圧を測定し、実施例F−1
の音圧の比(F−1を1.0として)で示した。また、
フレッチング耐久試験は、前記条件と同一条件及び評価
方法で実施し、実施例F−1を1.0としたときの比で
示した。
【0050】
【表8】
【0051】表8から明らかなように、残留オーステナ
イト量が多いものほど、耐衝撃性の低下が認められる。
特に、残留オーステナイト量が4%を超えたものでそれ
が顕著であり、実施例の耐衝撃性が優れていることが確
認できる。但し、残留オーステナイト量を低減したもの
は硬さが低くなる傾向にあり、フレッチング耐久性にお
いては、やや劣る傾向にある。そこで、表中には、SU
J2にMoを1%添加することで焼戻抵抗性を高め、残
留オーステナイト量を4%以下とした材料“X”で軌道
輪を構成し、それを実施例F−4、F−5として示し
た。なお、熱処理は実施例F−1〜F−3と同一条件で
実施した。表から明らかなように、実施例F−4、F−
5は硬さが大きく、残留オーステナイト量が少ないた
め、良好な耐衝撃性とフレッチング耐久性とを共有して
いる。
【0052】以上の結果より、これらの諸特性を両立さ
せるためには、硬さが大きく(フレッチング耐久性)、
残留オーステナイト量が少ない(耐衝撃性)方がよいこ
とは明らかである。また、好ましくは、硬さをHv75
0以上確保し、残留オーステナイト量を4%以下、好ま
しくは完全に0にするとよい。なお、ここでは、Moを
1%合金化したものを例示したが、例えば、Si或いは
Cr等により焼戻軟化抵抗性を高めてもよい。
【0053】次に、本発明の玉軸受の実施の形態につい
て説明する。実施形態として作成された実施例と比較例
との軸受の静粛性及び耐久性評価はすべて玉軸受695
(JIS呼び番号)で行った。
【0054】
【表9】
【0055】表9に、軌道輪に使用した材料の化学成分
を示す。表中、No.1が前記玉軸受の諸条件を全て満
足するものであり、No.2〜No.4は従来品であ
る。No.2は従来の13Crマルテンサイト系ステン
レス鋼、No.3はSUS440Cであり、No.4は
SUJ2である。全ての材料を旋削加工した後、後述の
熱処理を行い、研削仕上げ加工して軌道輪を作成した。
No.1については980℃〜1020℃、No.2及
びNo.3については1020℃〜1060℃に30分
間保持した後、焼入れし、−75℃〜−95℃で1時間
サブゼロ処理し、引き続き150℃〜170℃で1.5
時間焼戻しを行った。また、No.4については830
℃〜870℃に30分間保持した後、焼入れし、−80
℃〜−120℃で1時間サブゼロ処理し、引き続き22
0℃〜240℃で1時間焼戻しを行った。
【0056】また、窒化処理に供した転動体には、前記
表9に記載するNo.1及びNo.4の材料を使用し、
粗球を成形した後、焼入・焼戻し、荒研削を行った。更
に引き続き410℃〜530℃で24時間〜48時間の
ガス窒化処理を行い、最終的にJIS B 1501記
載の等級3以上の精度に仕上げ加工した。次に、前記軌
道輪と転動体とを組立てて軸受として各種評価を実施し
た。なお、保持器にはプラスチック保持器を、軸受の潤
滑については鉱油系グリースを使用した。軌道輪及び転
動体の完成品品質を表10に示す。軌道輪については、
A−1〜A−3が残留オーステナイト4%以下、好まし
くは2%以下の実施例であり、その他のB−1〜B−6
が比較例になる。転動体についても、A−1〜1−3が
表面硬さHv900以上の窒化層を有する実施例であ
り、その他のB−1〜B−6が比較例になる。
【0057】
【表10】
【0058】次に、表11には、前記実施例及び比較例
の玉軸受各500個を音響検査したときの玉キズに起因
する音響不良率(H.B.アンデロン値4.0以上)を
示す。本発明の実施例の玉軸受では、比較例に比べて不
良率がよくなっていることが確認できる。
【0059】
【表11】
【0060】次に、軸受の機能評価については、静粛性
評価とフレッチング耐久性評価及び外輪単体での耐食性
評価等を実施した。評価結果を表12に示す。静粛性評
価は前記実施例及び比較例の玉軸受をサンプリング数n
=20個についてアンデロンメータでM.B値,H.B
値を測定し、その平均値を求め、前記表9に示す材料S
UJ2の玉軸受の平均値を1としたときの夫々の平均値
の比を示す。また、フレッチング耐久性評価は後述の条
件でサンプリング数n=4個について実施し、試験後の
アンデロン値を測定して平均値を算出し、試験前のSU
J−2(B−5,B−6)を1としたときの比で示す。
また、耐食性評価は、軸受の外輪を完全にアセトン脱脂
した後、JIS規格Z2371に準拠して、35℃、5
%NaCl水溶液を用いた塩水噴霧試験を2時間行い、
発錆なしをA、一部発錆をB、著しい発錆をCとして3
段階評価した。
【0061】(フレッチング試験) 与圧:1.5kgf 外輪揺動条件:8deg,30Hz(内輪は固定) 揺動回数:10万回 鉱油系グリース封入
【0062】
【表12】
【0063】表12中の内輪、外輪、転動体は全て前記
諸条件を満足する材料で構成した場合の例であり、B−
5に示すSUJ2と同等以上の静粛性を有しているが、
A−1〜A−3に示す本発明の実施例に比較して耐フレ
ッチング性において劣っている。また、B−2はSUJ
2を窒化処理した転動体を使用した例であるが、ステン
レスに比べて窒化後の硬さが低く、耐フレッチング性が
本発明の実施例に比較して劣っている。また、B−3は
従来用いられている13Cr系ステンレスのものである
が、3〜5μm程度のやや粗大な炭化物が存在するた
め、B−5に示すSUJ2製の軸受や本発明の実施例よ
り静粛性において劣っていり、十分な耐フレッチング性
も得られない。また、B−4はSUS440Cの例であ
るが、前記B−3より炭化物が大きく、最大で30μm
程度の炭化物も含有しているため、静粛性において最も
劣っている。また、B−5に示すSUJ2の例では、静
粛性は良好であるものの、十分な耐食性、耐フレッチン
グ性が得られない。本発明の実施例は静粛性において
は、軌道輪、転動体を全てSUJ2で構成したB−5と
同等であり、耐フレッチング性については著しく良好で
ある。また、前記諸条件を全て満足する材料からなるA
−1とSUJ2からなるA−3を比較すると、耐食性、
耐フレッチング性共にA−1の方が良好な結果となって
おり、少なくとも軌道輪には前記No.4記載のSUJ
2よりはむしろ、No.1記載のものを使用することが
好ましい。
【0064】また、転動体にセラミックスを使用した場
合と本発明の実施例との耐衝撃性比較を行った。耐衝撃
性は前記軸受に5kgfから35kgfまでの5kgf
毎のアキシャル荷重を負荷した後、アンデロン値を測定
し、前記B−5の初期アンデロン値を1としたときの比
で評価した。なお、比較例には軌道輪、転動体を全てS
UJ2で構成したB−5及び軌道輪はSUJ2で構成
し、転動体のみSi3N4を使用したB−7を使用し
た。試験結果を図4に示す。本発明の実施例では、B−
5とほぼ同等の耐衝撃性を有しており、耐衝撃性が良好
であることが分かるが、転動体にセラミックスボールを
使用したB−7では耐衝撃荷重は低い結果となった。
【0065】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の転動装置
によれば、表面に高硬度な窒化層を付与し、同時に転動
面の粗さを小さくしたことにより、輸送時の振動或いは
作動時のフレッチング耐久性を向上でき、同時にハイブ
リッド軸受で問題視される耐衝撃性の低下を抑制し、予
圧抜けなどの問題も解消できる。また、その用途は情報
機器、ファンモータ等にとどまらず、耐摩耗性、耐焼付
性の求められるボールねじ、リニアガイド等の直動部
品、工作機械などにも好適に使用できるという多大な効
果を奏する。また、玉軸受では、生産上問題となる玉キ
ズに起因する不良率も低減できるなど、多大の効果を奏
する。
【図面の簡単な説明】
【図1】二円筒摩耗試験の説明図である。
【図2】ボールロッド寿命試験の説明図である。
【図3】4球式焼付限界試験の説明図である。
【図4】玉軸受の耐衝撃性を示す説明図である。
【符号の説明】
10は円筒試験片

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外方部材と内方部材との間に転動体を配
    設し、当該転動体は外方部材及び内方部材に接触しなが
    ら転動する転動装置において、前記外方部材及び内方部
    材及び転動体の少なくとも一つが軸受用鋼で構成され、
    且つその完成品表面にHv800以上の窒化層を有し、
    且つその少なくとも転動面表面は表面粗さ0.1μmR
    a以下に仕上加工されていることを特徴とする転動装
    置。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002206617A (ja) * 2000-11-07 2002-07-26 Nsk Ltd ボールねじ
JP2004197806A (ja) * 2002-12-17 2004-07-15 Nsk Ltd ボールねじ装置
DE102006020078A1 (de) * 2006-04-29 2007-10-31 Schaeffler Kg Wälzlager für trockenlaufende oder mediengeschmierte Anwendungen
JP2014020490A (ja) * 2012-07-19 2014-02-03 Nsk Ltd 転がり軸受及び液化ガス用ポンプ装置

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