JP2000144337A - 高耐食性および高強度を有する低C高Cr合金鋼及びその製造方法 - Google Patents
高耐食性および高強度を有する低C高Cr合金鋼及びその製造方法Info
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Abstract
耐応力腐食割れ性および靭性を同時に改善することによ
り、耐食性を維持しつつ、硫化水素を多く含む環境でも
応力腐食割れを生じることなく使用できる高強度の低C
高Cr合金鋼(マルテンサイト系ステンレス鋼)および
その製造方法を提供する。 【解決手段】重量%で、C:0.005〜0.05%
と、Cr:12〜16%と、Si:1%以下と、Mn:
0.05〜0.3%と、Ni:3.5〜6%と、Mo:
1.5〜2.5%と、V:0.01〜0.05%と、
N:0.02%以下とを含み、かつ下記(1)式を満足
し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴と
する。 705−25×Ni%+5×Cr%+25×Mo%≧680 …(1)
Description
優れた高強度マルテンサイト系ステンレス鋼およびその
製造方法に係わり、さらに詳しく言えば、例えば石油、
天然ガスの掘削、輸送における湿潤炭酸ガス、湿潤硫化
水素を含む環境で高い応力腐食割れ抵抗を有する高強度
低C高Cr合金鋼(高強度マルテンサイト系ステンレス
鋼)およびその製造方法に関する。
酸ガス、湿潤硫化水素を多量に含む場合が増加してお
り、その掘削、輸送においては従来の炭素鋼に替わって
13Cr系ステンレス鋼などのマルテンサイト系ステン
レス鋼が用いられてきている。しかし、従来のマルテン
サイト系ステンレス鋼は湿潤炭酸ガスに対する耐食性
(以下単に耐食性と呼ぶ)は優れているが湿潤硫化水素
に対する耐応力腐食割れ性(以下単に耐応力腐食割れ性
と呼ぶ)は十分ではなく、強度、靭性、耐食性を維持し
つつ耐応力腐食割れ性が向上したマルテンサイト系ステ
ンレス鋼が望まれていた。
の要求を満たすものとして、特公昭61−3391号公
報、特開昭58−199850号公報、特開昭61−2
07550号公報が開示されている。
る環境での耐応力腐食割れ性を改善したマルテンサイト
系ステンレス鋼も提案されており、例えば、特開昭60
−174859号公報、特開昭62−54063号公報
などが開示されている。
61−3391号公報、特開昭58−199850号公
報、特開昭61−207550号公報に記載の鋼は、硫
化水素を極微量しか含まない環境では耐応力腐食割れ性
を示すものの、硫化水素分圧が0.01気圧を超える環
境では応力腐食割れが生じるため、硫化水素を多く含む
環境では使用できないという問題があった。
特開昭62−54063号公報などに記載の鋼も硫化水
素による応力腐食割れを完全に防止できるものではな
い。
マルテンサイト系ステンレス鋼はいずれも高強度化を試
みると靭性および耐応力腐食割れ性が著しく劣化し、そ
のため、強度あるいは靭性と耐応力腐食割れ性の一方を
犠牲にせざるを得ないという問題もあった。そのため、
例えば、高強度、耐応力腐食割れ性、耐食性および靭性
が同時に要求される高深度の油井には適用できないとい
う難点があった。
問題点を解決すべく、従来のマルテンサイト系ステンレ
ス鋼の強度、耐応力腐食割れ性および靭性を同時に改善
することにより、耐食性を維持しつつ、硫化水素を多く
含む環境でも応力腐食割れを生じることなく使用できる
高強度の低C高Cr合金鋼(マルテンサイト系ステンレ
ス鋼)およびその製造方法を提供することにある。ここ
で、目標とする性能は、炭酸ガス、硫化水素を含む石
油、天然ガスの掘削、輸送用鋼管に要求される性能に鑑
み以下の如くとした。
以上、(2)靭性:−20℃でのシャルピー・フルサイ
ズ試験片での吸収エネルギー値(シャルピー衝撃値と呼
ぶ)が100J以上、(3)耐食性:5%NaCl溶
液、180℃、30気圧CO2の環境下で、腐食速度が
0.5mm/y以下、(4)耐応力腐食割れ性:0.1
気圧の硫化水素ガスを飽和させた5%NaCl溶液中で
試験片に0.2%耐力の80%の応力を負荷し、720
時間以上破断せずに持ちこたえること。
達成するために、本発明は以下に示す手段を用いてい
る。
0.005〜0.05%と、Cr:12〜16%と、S
i:1%以下と、Mn:0.05〜0.3%と、Ni:
3.5〜6%と、Mo:1.5〜2.5%と、V:0.
01〜0.05%と、N:0.02%以下とを含み、か
つ下記(1)式を満足し、残部Fe及び不可避的不純物
からなることを特徴とする、高耐食性および高強度を有
する低C高Cr合金鋼である。
らに、Nb:0.01〜0.1%、Ti:0.01〜
0.1%のうち1種以上を含むことを特徴とする、上記
(1)に記載の高耐食性および高強度を有する低C高C
r合金鋼である。
たは(2)に記載の組成を有する合金鋼を熱間加工した
後、Ac3 点〜980℃の温度に加熱してオーステナイ
ト化した後冷却し、次いで550℃〜Ac1 点の温度で
焼き戻しを行い、焼き戻し後の炭化物が粒内に均一に析
出し粒界に優先析出しないことを特徴とする、高耐食性
および高強度を有する低C高Cr合金鋼の製造方法であ
る。
出するとは、炭化物が粒界に不連続に析出するととも
に、粒内でも微細なものが分散して析出した状態をい
う。
すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得るに至っ
た。
上にはCrの増加が有効である。しかし、Crの増加は
一方ではδ−フェライト相を生成させ強度および靭性を
劣化させる。そこで、オーステナイト生成元素であるN
iを増加してδ−フェライト相の生成を抑制する方法が
あるが、Niの増加は焼き戻し温度の面から制約があ
る。Cの増加もδ−フェライト相の生成抑制に有効であ
るが、焼き戻し時に炭化物が析出しかえって耐食性およ
び耐応力腐食割れ性を劣化させるため、その含有量はむ
しろ制限されるべきである。
および耐応力腐食割れ性が劣化するが、Vを適量含有さ
せ、かつ熱処理により炭化物をこのステンレス鋼の基地
に微細な析出物として分散させることにより、これらを
劣化させることなく高強度化することができる。
出させるには、特に焼き戻し条件を制御することが必要
である。
のようなCrの増加による金属組織の制約を考慮しつ
つ、低C高Cr合金鋼にVを一定量含有させ、かつ熱処
理条件を一定範囲内に調整し、炭化物を粒内に均一に分
散析出させるようにして、従来のマルテンサイト系ステ
ンレス鋼では実現し得なかった高靭性、高強度で、耐応
力腐食割れ性に優れた新しいマルテンサイト系ステンレ
ス鋼(低C高Cr合金鋼)およびその製造方法を見出
し、本発明を完成させた。
条件を下記範囲に限定して、従来のマルテンサイト系ス
テンレス鋼の強度、耐応力腐食割れ性および靭性を同時
に改善することにより、耐食性を維持しつつ、硫化水素
を多く含む環境でも応力腐食割れを生じることなく使用
できる高強度の低C高Cr合金鋼を提供することができ
る。
由、及び製造条件の限定理由について、説明する。
度を得るためにも欠かせない元素である。しかし、焼き
戻し時にCrと結合して炭化物となって析出し耐食性、
耐応力腐食割れ性および靭性を劣化させる。Cの含有量
が0.005%未満では十分な強度が得られず、0.0
5%を超えると劣化が顕著になるため0.005〜0.
05%の含有量である。
な元素で、しかも耐食性を発現する重要な元素である
が、含有量が12%未満では十分な耐食性が得られず、
16%を超えると他の合金元素を如何に調整してもδ−
フェライト相の生成量が増し、強度および靭性が劣化す
るため12〜16%である。
イト生成元素でもあり、1%を超えて含有させるとδ−
フェライト相の生成を助長するため1%以下である。
ェライト相の出現を抑えるオーステナイト生成元素であ
る。しかし、Mnは耐応力腐食割れ性に対して有害であ
り、上限は0.3%である。また、0.05%未満では
脱酸が不十分となり介在物が増加するのでMnの含有量
は0.05〜0.3%である。
生成に極めて有効な元素であるが、3.5%未満ではそ
の効果が少なく、一方、含有量が増加すると変態点(A
c1 点)を下げて焼き戻し温度に制約を与えるため6%
が上限である。 Mo:1.5〜2.5% Moは特に耐応力腐食割れ性および耐食性に有効な元素
であるが、1.5%未満の含有量ではその効果が現れ
ず、また2.5%を超えると過剰なδ−フェライト相を
出現させるため上限は2.5%である。
ることにより結晶粒を微細化し、耐応力腐食割れ性を向
上させる。また、微細な炭化物の析出は強度向上にも寄
与する。しかし、フェライト生成元素でもあり、δ−フ
ェライト相を増加させる。含有量が0.01%未満では
耐応力腐食割れ性の向上効果が現れず、0.05%を超
えるとその効果は飽和し、かつ、δ−フェライト相が増
加するため、含有量は0.01〜0.05%である。
生成元素でもある。0.02%を超えて含有させると焼
き戻し時に窒化物となって析出し、耐食性、耐応力腐食
割れ性および靭性が劣化するため0.02%以下の含有
量である。
×Mo%≧680 これはAc1 点と主要添加元素(Ni,Cr,Mo)の
関係を与える式である。Ac1 点が低下すると、十分な
焼き戻しマルテンサイト組織を得ることが困難になり、
耐応力腐食割れ性が悪化する。そのため、705−25
×Ni%+5×Cr%+25×Mo%≧680を満たす
組成にする必要がある。
選択成分(Nb,Ti)のうちの1種以上を含有しても
よい。
析出させることにより結晶粒を微細化し、耐応力腐食割
れ性を向上させる。しかし、フェライト生成元素でもあ
り、δ−フェライト相を増加させる。含有量が0.01
%未満では耐応力腐食割れ性の向上効果が現れず、0.
1%を超えるとその効果は飽和し、かつ、δ−フェライ
ト相が増加するためNb、Tiともに含有量は0.01
〜0.1%である。
まれ、それらはいずれも鋼の熱間加工性および耐応力腐
食割れ性を劣化させる元素であり少ないほど好ましい。
しかし、Pにおいては0.04%以下、Sにおいては
0.01%以下であれば本発明の目的とする耐応力腐食
割れ性を確保でき、また熱間圧延鋼板あるいはシームレ
ス鋼管の製造に支障は現れない。
り、従来のマルテンサイト系ステンレス鋼の強度、耐応
力腐食割れ性および靭性を同時に改善して、耐食性を維
持しつつ、硫化水素を多く含む環境でも応力腐食割れを
生じることなく使用できる高強度の低C高Cr合金鋼
(マルテンサイト系ステンレス鋼)を得ることが可能と
なる。
り、製造することができる。
るいは電気炉にて溶製し、普通造塊法または連続鋳造法
により鋳片にする。それを熱間加工により継目無鋼管ま
たは鋼板に製造した後、Ac3 点〜980℃の温度に加
熱してオーステナイト化した後冷却し、次いで550℃
〜Ac1 点の温度で焼き戻しを行う。
焼入れの効果が得られないため、下限はAc3 点であ
る。一方、加熱温度が980℃を超えると、結晶粒が粗
大となり、十分な強度が得られないばかりでなく、靭性
が劣化するため、上限は980℃である。
一に分散析出させて、靭性及び耐応力腐食割れ性を劣化
させることなく、高強度化させるために必須である。し
かし、その温度が、Ac1 点を超えると、一部がオース
テナイト相に変態して冷却時に焼入れマルテンサイト相
となり、残りの焼き戻しマルテンサイト相との間の成分
及び強度に不均一が生じるため、上限はAc1 点であ
る。また、550℃未満では、十分な焼き戻し効果が得
られずに強度が高くなり、靭性及び耐応力腐食割れ性を
劣化させるため、下限は550℃である。
果を立証する。
比較鋼a〜fを試験鋼として溶製し、熱間圧延にて厚み
12mmの鋼板とした後熱処理を行い、以下具体的に述
べるような試験を行った。
a〜fの主要成分、選択成分、その他の成分を示す。こ
れらの鋼を950℃でオーステナイト化後空冷し、63
0℃で30分間焼き戻して機械的性質、耐食性および耐
応力腐食割れ性を試験した結果、各試験鋼のAc1 、A
c3 変態温度、及び炭化物析出状態を表2に示す。
は、いずれも0.2%耐力およびシャルピー衝撃値はす
べて目標値を上回った。また、耐食性および耐応力腐食
割れ性も目標をクリアした。
本発明の範囲を外れているため、試験結果も耐食性や耐
応力腐食割れ性が目標を達成し得ていない。
件を特定することにより、炭酸ガス腐食に対する耐食性
はもとより硫化水素を多量に含む環境での耐応力腐食割
れ性の良好な高強度低C高Cr合金鋼を提供することが
可能となった。
Claims (3)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.005〜0.05%
と、Cr:12〜16%と、Si:1%以下と、Mn:
0.05〜0.3%と、Ni:3.5〜6%と、Mo:
1.5〜2.5%と、V:0.01〜0.05%と、
N:0.02%以下とを含み、かつ下記(1)式を満足
し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴と
する、高耐食性および高強度を有する低C高Cr合金
鋼。 705−25×Ni%+5×Cr%+25×Mo%≧680 …(1) - 【請求項2】 合金鋼成分として、重量%でさらに、N
b:0.01〜0.1%、Ti:0.01〜0.1%の
うち1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載
の高耐食性および高強度を有する低C高Cr合金鋼。 - 【請求項3】 請求項1または2に記載の組成を有する
合金鋼を熱間加工した後、Ac3 点〜980℃の温度に
加熱してオーステナイト化した後冷却し、次いで550
℃〜Ac1 点の温度で焼き戻しを行い、焼き戻し後の炭
化物が粒内に均一に析出し粒界に優先析出しないことを
特徴とする、高耐食性および高強度を有する低C高Cr
合金鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP31334898A JP3536687B2 (ja) | 1998-11-04 | 1998-11-04 | 高耐食性および高強度を有する低C高Cr合金鋼及びその製造方法 |
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1998
- 1998-11-04 JP JP31334898A patent/JP3536687B2/ja not_active Expired - Lifetime
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