JP2000125403A - 集電舟体 - Google Patents

集電舟体

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JP2000125403A
JP2000125403A JP10295783A JP29578398A JP2000125403A JP 2000125403 A JP2000125403 A JP 2000125403A JP 10295783 A JP10295783 A JP 10295783A JP 29578398 A JP29578398 A JP 29578398A JP 2000125403 A JP2000125403 A JP 2000125403A
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秀樹 高瀬
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 集電舟体に対して迎角を持つ空気流が作用す
る場合において、押上げ力を小さくするとともに空力騒
音を低減することができる集電舟体を提供する。 【解決手段】 集電舟体2は、長手方向に対して垂直な
断面形状が、縦寸法がhでかつ横寸法がdの長方形であ
る舟体本体4を有しており、舟体本体4における縦寸法
hと横寸法dとの比nは2.2以上でかつ2.7以下の
範囲の値に設定されている。これによって集電舟体2に
迎角αをなす方向12から空気流が作用したとき、空気
流による押上げ力FYを小さくすることができる。また
集電舟体2は舟体本体4に設けられた縁体14を有して
いる。このような集電舟体2においては、迎角αを有す
る空気流が作用したとき、空気流による押上げ力FY
小さくなるとともに空力騒音が小さくなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄道車両などの屋
根に設置されるパンタグラフにおいて、架線に接触して
電力を取込むための集電舟体に関する。
【0002】
【従来の技術】電力を動力とする電動機によって駆動さ
れる車両として、たとえば電気鉄道車両がある。電気鉄
道車両は、軌道の上方に所定の高さ位置に支持された架
線に、車両の屋根に設置される集電装置であるパンタグ
ラフが備える集電舟体を所定の押上げ力で接触させ、車
両を駆動するための電力を取込む方式を採用している。
【0003】このような電気鉄道車両は、パンタグラフ
の集電舟体が備える摺板を架線に摺動させながら電力を
取込み、走行している。集電舟体は、車両の進行方向お
よび上下方向に対して垂直な車両の幅方向に延びて細長
く形成されている。この集電舟体には、空気流によって
揚力および抗力が発生し、押上げ力変化が起こる。集電
舟体に働く全押上げ力が大きくなると、摺板と架線との
摩擦力が大きくなるとともに、集電舟体が架線を持上げ
る結果となって、架線を破損したりする。また集電舟体
の形状によっては、集電舟体に空気流による負の押上げ
力、すなわち架線から集電舟体を離反させる力が働く。
このような場合、集電舟体と架線とが非接触状態になる
などして、集電舟体は適切に電力を取込むことができな
くなるという問題を生じる。
【0004】また車両には走行速度を高くする高速化が
望まれているけれども、車両が高速度で走行する場合、
車両に設けられたパンタグラフの集電舟体に空気流が作
用することによって、集電舟体の風切り音、エオルス音
などの空力騒音が大きくなる。このような空力騒音の音
圧レベルは、集電舟体に作用する空気流の速度の6乗に
比例する。車両の高速化を図るためには、車両がより高
速度で走行する場合においても、騒音の環境基準を満足
する限界の速度に制限される。このため高速化を図る以
前の最高速度での空力騒音の音圧レベルと、高速化を図
った後の最高速度での空力騒音の音圧レベルとを同程度
とすることができるように、走行速度に対して発生する
空力騒音の音圧レベルを低減する必要がある。
【0005】これらの問題を解決する目的で、空気流に
よる揚力特性を改善し、空力騒音を低減することができ
る集電舟体が、たとえば特開平6−189408号公報
に開示されている。この集電舟体は、長手方向に垂直な
断面形状が楕円形である舟体本体と、舟体本体の上面側
に設けられ、前記断面形状が略台形状の摺板と、舟体本
体の下面側に設けられ、前記断面形状が略台形状の集電
舟体フレームとから構成されている。この集電舟体は、
集電舟体の進行方向と平行な方向に集電舟体に空気流が
作用する条件の下に、摺板および集電舟体フレームの前
記断面形状が決定され、空気流による押上げ力が所定範
囲内となるように、適切な揚力特性を得ている。したが
って集電舟体は、走行中にも適切な押上げ力で架線に接
触され、電力を取込むことができる。また集電舟体の舟
体本体の断面形状は楕円形であるので、舟体本体に作用
する空気流の乱れが小さくなる。これによって、車両が
高速走行するときの集電舟体の風切り音なとを小さくす
ることができ、空力騒音を低減することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、特開
平6−189408号公報に開示される集電舟体は、進
行方向と平行な方向の空気流に対しては適切な押上げ力
を得ることができる。しかしながら、車両がたとえば山
岳地帯などの空気流が複雑な流れを有する場所を走行す
るとき、パンタグラフの集電舟体には進行方向に対して
迎角を持つ空気流が作用する。また車両がトンネルに進
入し、もしくはトンネルから退出する場合、または車両
の屋根に設けられた機器類が影響する場合など、車両の
パンタグラフ付近の空気流が複雑な流れとなる場合にお
いても、パンタグラフの集電舟体には迎角を持つ空気流
が作用する。このように空気流が迎角を有する場合に
は、迎角の影響を受けて所定範囲外の空気流による押上
げ力が働くので、集電舟体と架線とが適切に接触する全
押上げ力を得られないという問題があった。
【0007】本発明の目的は、集電舟体に対して仰角を
持つ空気流が作用する場合において、空気流による押上
げ力の影響を小さくすることができる集電舟体を提供す
ることである。
【0008】本発明の他の目的は、空力騒音を低減する
ことができる集電舟体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、進行方向に対
して垂直な方向に延び、長手方向に対して垂直な断面形
状が、進行方向に垂直な高さ方向の縦寸法をhとしかつ
進行方向に平行な幅方向の横寸法をdとする長方形状で
ある舟体本体を有し、縦寸法hと横寸法dとの比n=d
/hが2.2以上でかつ2.7以下の範囲内の値に設定
されることを特徴とする集電舟体である。
【0010】本発明に従えば、舟体本体の長手方向に垂
直な断面形状は長方形であり、前記断面形状の縦寸法h
と横寸法dとの比n=d/hは2.2以上でかつ2.7
以下の範囲内の値に設定されている。このような寸法比
nが2.2以上でかつ2.7以下の範囲内である舟体本
体を備える集電舟体は、迎角を有する空気流が集電舟体
に作用する場合において、集電舟体に作用する空気流に
よる押上げ力の絶対値が小さくなり、押上げ力の影響を
小さくすることができる。逆に寸法比nが2.2未満ま
たは2.7を超える場合、集電舟体における空気流によ
る押上げ力FYの影響が大きくなる。したがって、寸法
比nが2.2以上でかつ2.7以下の範囲内である集電
舟体を車両のパンタグラフに用いることによって、車両
のパンタグラフ付近の空気流が複雑な流れとなる場合に
おいても、集電舟体は適切な力で架線に接触し、パンタ
グラフは集電舟体を介して所要の通りに電力を取込むこ
とができる。
【0011】また本発明は、舟体本体の幅方向両側部に
は、舟体本体の長手方向に延びる縁体がそれぞれ設けら
れ、各縁体は、舟体本体の高さ方向両端部間の中間部か
ら先細状に突出することを特徴とする。
【0012】本発明に従えば、集電舟体の舟体本体の幅
方向両側部には、進行方向に先細状に突出する縁体がそ
れぞれ設けられている。このような縁体が設けられた集
電舟体に空気流が作用するとき、空気流が一方の縁体に
よって上下にかきわけられて、滑らかに案内されるとと
もに、他方の縁体によって円滑に合流され、集電舟体ま
わりの空気流の乱れが少なくなる。これによって空気流
の乱れに伴う空力騒音の発生を低減することができる。
このような縁体が設けられた集電舟体を車両のパンタグ
ラフに用いることによって、車両が走行する際に集電舟
体における空力騒音の発生が低減される。
【0013】また各縁体は舟体本体の高さ方向両端部間
の中間部にそれぞれ設けられているので、長手方向に垂
直な断面形状が長方形である舟体本体の各角部分がそれ
ぞれ露出し、すなわち縁体の上下には、舟体本体の進行
方向に垂直な幅方向の両側面から成る平坦面が形成され
る。これによって舟体本体に縁体を設けた場合において
も、舟体本体の前記断面形状が所定の長方形状であるこ
とによる集電舟体における揚力特性が変化し、集電舟体
に働く押上げ力が変化することが阻止される。したがっ
て集電舟体において、集電舟体に働く空気流による押上
げ力を少なくするとともに、空力騒音を低減することが
できる。
【0014】また本発明は、縁体は、略三角柱状であ
り、その軸線に平行な一側部で、舟体本体の幅方向両側
部に固定されることを特徴とする。
【0015】本発明に従えば、縁体は略三角柱状である
ので、このような縁体が集電舟体の幅方向両側部にそれ
ぞれ設けられることによって、集電舟体は略流線形とな
る。このような集電舟体に空気流が作用するとき、集電
舟体周りの空気流の乱れが小さくなり、この空気流の乱
れに伴う空力騒音の発生を低減することができる。
【0016】また本発明は、縁体の先端部の外表面は、
前記幅方向に凸となる丸みを有していることを特徴とす
る。
【0017】本発明に従えば、縁体の先端部の外表面
は、丸みを有しているので、集電舟体の揚力傾斜が低く
でき、低騒音化を図ることができる。
【0018】また本発明は、縁体は、先端部よりの部分
に、縁体の長手方向に複数の凹所が形成されることを特
徴とする。
【0019】本発明に従えば、集電舟体に設けられた縁
体には複数の凹所が形成されている。空気流が集電舟体
に作用するとき、集電舟体に沿って流れる空気にカルマ
ン渦が生じる。集電舟体の断面形状が長手方向に一様で
あると、カルマン渦の発生も一様となり、特定の周波数
の成分が強調されてエオルス音という空力騒音が発生し
やすい。したがって縁体に複数の凹所が形成されること
によって、集電舟体の長手方向に一様なカルマン渦が発
生することが抑制され、空力騒音を低減することができ
る。
【0020】また本発明は、舟体本体の上部に設けら
れ、架線に接触される摺板を有し、各縁体の先端部を含
む仮想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面との中央位
置よりも下方に位置することを特徴とする。
【0021】本発明に従えば、各縁体の先端部を含む仮
想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面との中央位置よ
りも下方に位置する。このような集電舟体に空気流が作
用したとき、集電舟体の上面側の空気流の速度は、下面
側の空気流の速度より大きくなり、上面側の圧力が下面
側より小さくなるので、空気流がどのような仰角を有し
ていても集電舟体には上向きの揚力が生じる。言い換え
ると、空気流が作用したとき、集電舟体は、空気流の仰
角に関係なく、空気流の押上げ力に応じた正の押上げ力
を得ることができる。したがって、集電舟体における前
記仮想平面の位置を適切に設定することによって、架線
に対する集電舟体の全押上げ力を任意の範囲内に設定す
ることができる。
【0022】また本発明は、舟体本体の上部に設けら
れ、架線に接触される摺板を有し、各縁体の先端部を含
む仮想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面との中央位
置よりも上方に位置することを特徴とする。
【0023】本発明に従えば、各縁体の先端部を含む仮
想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面との中央位置よ
りも上方に位置する。このような集電舟体に空気流が作
用するとき、集電舟体の下面側の空気流の速度は上面側
の空気流の速度より大きくなり、下面側の圧力が上面側
より小さくなるので、空気流がどのような仰角を有して
いても集電舟体には下向きの揚力が生じる。言い換える
と、空気流が作用するとき、集電舟体は、空気流の仰角
に関係なく、空気流の速度に応じた負の押上げ力を得る
ことができる。したがって、集電舟体における前記仮想
平面の位置を適切に設定することによって、架線に対す
る集電舟体の全押上げ力を任意の範囲内に設定すること
ができる。
【0024】さらに本発明は、舟体本体の上部に設けら
れ、架線に接触される摺板を有し、摺板の進行方向と平
行な幅方向寸法は、舟体本体の横寸法dより小さく設定
され、幅方向両側の表面は、幅方向に対して垂直に形成
され、または舟体本体から離反するにつれて幅方向内方
に向かうように、幅方向に対して45°以上90°未満
の角度をなして傾斜して形成されることを特徴とする。
【0025】本発明に従えば、摺板の進行方向と平行な
幅方向寸法は、舟体本体の横寸法dより小さく設定さ
れ、幅方向両側の表面は、幅方向に対して垂直に形成さ
れ、または舟体本体から離反するにつれて幅方向内方に
向かうように、幅方向に対して45°以上90°未満の
角度をなして傾斜して形成される。このように摺板は形
成されているので、摺板を集電舟体に設けることによっ
て集電舟体の揚力特性が変化することが少ない。したが
って舟体本体を所定の長方形断面形状とすることによっ
て、集電舟体に働く押上げ力の絶対値を小さくする効果
に影響を及ぼすことが少なく、摺板を舟体本体に設ける
ことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施の一形態であ
る集電舟体2を示す斜視図であり、図2は集電舟体2を
示す平面図であり、図3は図2における切断面線III
−III線から見た集電舟体2の断面図である。電気鉄
道車両などの電動機によって駆動される車両の屋根に
は、集電装置であるパンタグラフが設置される。パンタ
グラフは、上枠および下枠を有する上下に伸縮自在な枠
組みを備え、上枠に舟体支持手段を介して支持される集
電舟体2を備えている。集電舟体2は、枠組の伸縮動作
によって上下に変位され、少なくとも車両が走行すると
きには、車両が走行する軌道上方の所定の高さ位置に支
持された架線に、押付けられて接触される。車両は、こ
のようにパンタグラフの集電舟体2を架線に接触させ、
架線から電力を取込むことによって、電動機によって駆
動されて走行する。このとき集電舟体2は、好適に電力
を取込むために、所定の押付け力FPで架線に押付けら
れる。この押付け力FPは、たとえば5.5kgfに設
定される。
【0027】集電舟体2は、舟体本体4と、舟体本体4
の上部に設けられ架線に接触する摺板6とを有する。舟
体本体4は、たとえば耐食性アルミニウム合金から成
り、車両の進行方向である集電舟体2の進行方向8に対
して垂直に延びて細長く形成されている。摺板6は、た
とえば銅系または鉄系の焼結合金板から成り、舟体本体
4の長手方向に延びる長尺の板状に形成されて、部分的
に取替え可能なように短冊のタイル張り状に構成されて
いる。摺板6の端面には、架線が滑らかに摺板6上に乗
移れるように傾斜がつけられている。このような摺板6
は、舟体本体4の上部に固定されて設けられ、架線と摺
動することによって車両に電力が取込まれる。摺板6が
舟体本体4に対して弾性体によって支持され、架線に対
して付勢されることもある。また集電舟体2の長手方向
の両端部2aには、ホーン10がそれぞれ設けられてい
る。各ホーン10は、舟体本体4から集電舟体2の長手
方向、すなわち集電舟体2の進行方向8に対して垂直に
延び、先端部10aが下方に向けて湾曲している。この
ような各ホーン10によって、集電舟体2の長手方向両
端部2aより外側に位置する架線を,滑らかに集電舟体
2へ導くことができる。
【0028】図4は、集電舟体2における舟体本体4
に、空気流が作用することによって舟体本体4に働く力
を、舟体本体4の長手方向に対して垂直な面において示
す図である。舟体本体4の長手方向に垂直な面内におい
て、進行方向8に対して迎角αを成す方向12の空気流
が速度Vで作用するとき、舟体本体4には、空気流が作
用する方向12に対して垂直、かつ舟体本体4の長手方
向に垂直な揚力FLと、空気流が作用する方向に対して
平行、かつ舟体本体4の長手方向に垂直な抗力FDとが
働く。言い換えるならば、舟体本体4には揚力FLと抗
力FDとの合力ΣFが働く。この合力ΣFは、舟体本体
4の進行方向8に対して平行、かつ舟体本体4の長手方
向に垂直な抵抗力FXと、舟体本体4の進行方向8に対
して垂直かつ舟体本体4の長手方向に垂直な押上げ力F
Yとに分解することができる。言い換えれば、舟体本体
4には、空気流によって抵抗力FXおよび押上げ力FY
が働いている。空気流による押上げ力FYが舟体本体4
に作用するとき、舟体本体4を有する集電舟体2に働く
全押上げ力Pは、枠組などによって予め集電舟体2に加
えられる所定の押付け力FPと、空気流による押上げ力
Yとの和P=FP+FYとなる。
【0029】迎角αは、任意の基準位置Oに関して、こ
の基準位置Oから進行方向8に移動した位置、すなわち
図4において左側の位置をMとし、基準位置Oから空気
流の流れ方向12と逆方向に移動した位置、すなわち図
4において左斜め下方側の位置をNとしたときの角MO
Nの成す角度である。この迎角αは、各位置M,Oを含
む直線よりも位置Nが下方にあるような、集電舟体2に
対して下方から、すなわち摺板6と反対側から空気流が
作用するときを、正の迎角とし、逆に各位置M,Oを含
む直線よりも位置Nが上方にあるような、集電舟体2に
対して上方から、すなわち摺板6側から空気流が作用す
るときを負の迎角とする。集電舟体2における押上げ力
Yは、上方向すなわち集電舟体2を架線に押付ける方
向の力を正の押上げ力とし、下方向すなわち集電舟体2
を架線から離反させる方向の力であるときを負の押上げ
力とする。また集電舟体2に設けられたホーン10は、
集電舟体2に比較して充分に細く、円柱と見なすことが
できるので、ホーン10に作用する空気流による力は無
視することができる。
【0030】上述した集電舟体2は、図1〜図3から容
易に理解されるように、車両に設けられたとき、車両の
前後軸方向に対称となる形状を有している。したがって
車両が前後方向一方および他方のどちらの方向に走行す
る場合においても、集電舟体2における空気流による押
上げFYは上述したようにして説明することができる。
【0031】集電舟体2の舟体本体4において、進行方
向8に対して垂直な長手方向の長さをwとし、長手方向
に対して垂直な長方形状の断面形状の進行方向8に垂直
な縦寸法をh、進行方向8に平行な横寸法をdとし、こ
のときの舟体本体4の進行方向8および長手方向に平行
な表面の面積をA=d×wとする。このような舟体本体
4に、進行方向8に対して、迎角αを有する密度ρの空
気の空気流が速度Vで作用したときに、この空気流によ
って舟体本体4に働く押上げ力FYを風洞試験などによ
って既知量として予め求める。この押上げ力FYから舟
体本体4の押上げ力係数CYを、次式(1)
【0032】
【数1】
【0033】によって算出する。ただし、押上げ力FY
の単位は〔kgf〕とし、空気の密度ρの単位は〔kg
f・s2/m4〕とし、空気流の速度Vの単位は〔m/
s〕とし、面積Aの単位は〔m2〕とする。
【0034】この押上げ力係数CYは、押上げ力FYと、
空気の密度ρおよび空気流の速度Vと、舟体本体4の進
行方向8および長手方向に平行であり、空気流が作用す
る舟体本体4の表面の面積Aとで表される無次元数であ
る。押上げ力FYの値は、空気の密度ρ、空気流の速度
Vの2乗および面積Aの値の変化に比例して変化する。
たとえば、空気の密度ρが2倍になったとき、押上げ力
Yの値は2倍となり、空気流の速度Vが2倍になった
とき押上げ力FYの値は4倍となり、面積Aが2倍にな
ったとき押上げ力FYの値は2倍となる。したがって、
集電舟体2の長手方向に対して垂直な長方形断面の縦寸
法hと横寸法dとの比をn=d/hとするとき、この比
nと、集電舟体2に作用する空気流が有する迎角αが一
定であれば、密度ρ、速度Vおよび面積Aの値に関係な
く押上げ力係数CYは常に一定の値となる。
【0035】図5は、縦寸法hと横寸法dとの比n=d
/hが2である舟体本体4において、空気流の迎角αと
押上げ力係数CYとの関係を示すグラフであり、横軸は
迎角αを示し縦軸は押上げ力係数CYを示す。寸法比n
=2で一定である舟体本体4を用い風洞試験などによっ
て、舟体本体4に作用する空気流の迎角αを変化させた
ときの空気流による押上げ力FYを計測し、この押上げ
力FYから上記式(1)によって押上げ力係数CYを算出
することによって、迎角αと押上げ力CYとの関係が求
められる。押上げ力係数CYが負の値であるとき、空気
流による押上げ力FYは負の値であり、すなわち舟体本
体4には押下げようとする力が働く。図5に示すよう
に、寸法比n=2である場合、舟体本体4に作用する空
気流の迎角αが、ほぼ±6°の範囲にあるとき、押上げ
力係数CYは迎角αの増加に対して減少する。
【0036】図6は、縦寸法hと横寸法dとの比n=d
/hが4である舟体本体4において、図5と同様に、空
気流の迎角αに対する押上げ力係数CYの関係を示すグ
ラフであり、横軸は迎角αを示し縦軸は押上げ力係数C
Yを示す。寸法比n=4で一定である舟体本体4におい
て、空気流の迎角αを変化させたとき、計測される押上
げ力FYの値から押上げ力係数CYを算出することによっ
て迎角αと押上げ力CYとの関係が求められる。図6に
示すように、寸法比n=4である場合、迎角αがほぼ±
6°の範囲にあるとき、押上げ力係数CYは迎角αの増
加に対して増加する。
【0037】このように、舟体本体4に作用する空気流
の迎角αと押上げ力係数CYとの関係は、舟体本体4の
長手方向に垂直な長方形断面形状の縦寸法hと横寸法d
との比n=d/hについてそれぞれ求めることができ
る。
【0038】図7は、空気流の迎角αが3°、−3°、
6°または−6°であるときの縦寸法hと横寸法dとの
比n=d/hに対する押上げ力係数CYの関係を示すグ
ラフであり、横軸は縦寸法hと横寸法dとの比nを示
し、縦軸は押上げ力係数CYを示す。実線20は、舟体
本体4に作用する空気流の迎角αが3°であるときの寸
法比nと押上げ力係数CYとの関係を示し、実線22
は、舟体本体4に作用する空気流の迎角αが−3°であ
るときの寸法比nと押上げ係数CYとの関係を示す。破
線24は、迎角αが6°であるときの寸法比nと押上げ
力係数CYとの関係を示し、破線26は、迎角αが−6
°であるときの寸法比nと押上げ力係数CYとの関係を
示している。
【0039】図7のグラフに示されるそれぞれの寸法比
nと押上げ係数CYとの関係は、図5および図6におい
て示されるように、寸法比nが一定であるときの舟体本
体4に作用する空気流の迎角αに対する押上げ力係数C
Yの関係を基に求めることができる。図7のグラフは、
縦寸法hと横寸法dとの比nが1、2、3、4または5
であるときの迎角αに対する押上げ力係数CYの関係を
基に作成されているが、寸法比nの値を細かく分けるこ
とによって、迎角αに対する押上げ力係数CYの関係を
詳細に求めることができる。また図7のグラフにおい
て、nとCYの関係は1≦n≦5範囲で示されている。
【0040】風洞試験などにおいて計測される空気流に
よる舟体本体4の押上げ力FYは、集電舟体2の表面粗
さなどによって少しの誤差を含んでいるが、ある迎角α
における縦寸法hと横寸法dとの比nに対する押上げ力
係数CYの関係は、ほぼ図7に示すように表され、押上
げ力係数CYの値は寸法比n=2.5付近で正負が入換
わる特性を持っている。
【0041】図7のグラフに示されるように、舟体本体
4の長方形断面形状の縦寸法hと横寸法dとの比nが
2.5付近であるとき、押上げ力係数CYの値は0に近
い値となる。式(1)から理解されるように、押上げ力
係数CYの絶対値が小さくなるにつれて、舟体本体4に
作用する空気流による押上げ力FYの絶対値が小さくな
る。したがって舟体本体4の縦寸法hと横寸法dとの比
nを2.5付近に設定することによって、舟体本体4に
作用する空気流が迎角を有する場合においても、舟体本
体4に働く空気流による押上げ力FYの影響を小さくす
ることができる。
【0042】パンタグラフの設置する場所の空気流に特
定の迎角を持つような癖がある場合には、その癖を織込
んで考えることもできるが、本実施の形態では理解を容
易にするために、パンタグラフが設置される場所の空気
流が迎角を持つなどの癖がないと仮定して説明する。
【0043】また、双方向性のパンタグラフでは双方向
ともで充分なる集電性能を出す必要がある。さらに空気
流が迎角を持つ場合についても、正および負の迎角によ
って特性が大きく異なっては、使用上問題がある。これ
らをふまえて集電舟体2は上述したような構成を有す
る。
【0044】図7から明らかなように、寸法比nが2.
5付近、本実施の形態において具体的には、2.2以上
でかつ2.7以下の範囲内の値に設定された舟体本体4
を有する集電舟体2においては、迎角を有する空気流に
よる押上げ力係数CYの絶対値が小さくなるので、押上
げ力FYの影響を小さくすることができる。逆に舟体本
体の寸法比nが2.2未満または2.7を超える場合、
押上げ力係数CYの値が大きくなり、集電舟体2におけ
る空気流による押上げ力FYの影響が大きくなる。した
がって、寸法比nが2.2以上でかつ2.7以下の範囲
内である舟体本体4を有する集電舟体2を車両のパンタ
グラフに用いることによって、車両のパンタグラフ付近
の空気流が複雑な流れとなり、集電舟体2に迎角を有す
る空気流が作用する場合においても、集電舟体2は適切
な力で架線に接触し、パンタグラフは集電舟体2を介し
て所要の通りに電力を取込むことができる。
【0045】再び図1〜図3を参照して、集電舟体2に
おいて舟体本体4の幅方向両側部における進行方向8に
垂直な各面には、舟体本体4の長手方向に延び、舟体本
体4から先細状に突出する縁体14がそれぞれ設けられ
ている。各縁体14は略三角柱状であり、その軸線方向
に平行な一側部で、舟体本体4の進行方向8に垂直な各
面に固定される。縁体14において、舟体本体4から離
反する側に形成される先端部28の外表面は鋭角で形成
されている。このような縁体14は、長手方向に垂直な
断面形状が台形状の基部15と、この基部15から進行
方向8に平行な方向に突出する突部17とを有する。突
部17は四角錐状の形状を有し、集電舟体2の長手方向
に連続的に形成されている。したがって縁体14には、
突端部28よりの部分に縁体の長手方向に沿って複数の
凹所18が形成される。
【0046】縁体14が舟体本体4に設けられることに
よって、集電舟体2全体の形状は略流線形状となる。し
たがって集電舟体2に空気流が作用したとき、空気流は
縁体14の先端部28で分離され、上下にかきわけられ
る。空気流は一方の縁体14によって滑らかに案内され
集電舟体2の表面に沿って流れ、他方の縁体14によっ
て円滑に合流される。これによって集電舟体2まわりの
空気流の乱れが小さくなり、この空気流の乱れに伴う空
力騒音の発生を低減することができる。このような縁体
14が設けられた集電舟体2を車両のパンタグラフに用
いることによって、車両が走行する際に集電舟体2にお
ける空力騒音の発生が低減される。またこのように車両
の走行時の空力騒音が抑制されることによって、車両が
高速化を図る以前の最高速度での空力騒音の音圧レベル
と、高速化を図った後での最高速度での空力騒音の音圧
レベルとを同程度とすることができる。これによって、
車両の高速化を図った後においても、騒音の環境基準を
満足することができる。空力騒音の音圧レベルの範囲内
で車両をさらに高速で走行させることができる。
【0047】また空気流が集電舟体2に作用するとき、
集電舟体2に沿って流れる空気にカルマン渦が生じる。
集電舟体2の断面形状が長手方向に一様であるとカルマ
ン渦の発生も一様となり、特定の周波数の成分が強調さ
れてエオルス音という空力騒音が発生しやすくなる。し
たがって縁体14に複数の凹所18が形成されることに
よって、集電舟体2の長手方向に一様にカルマン渦が発
生することが抑制され、空力騒音であるエオルス音が低
減される。
【0048】この実施の形態においては、縁体14を三
角柱状としているが、集電舟体2全体の形状を略流線形
状とするものであれば、縁体14を任意の形状とするこ
とができる。また縁体14の基部15から突出する突部
17の形状を四角錐状としているが、これに代えて、任
意の形状で突部17を形成することもでき、たとえば先
端部が縁体14の長手方向に延びる稜線に向かって先細
となるくさび状とすることができる。さらに舟体本体4
の進行方向8に垂直な各面にそれぞれ設けられた各縁体
14における突部17を、一方の縁体14の突部17に
対して他方の縁体14の突部17を長手方向にずらして
形成することもできる。
【0049】集電舟体2において、各縁体14は、舟体
本体4の高さ方向両端部間の中間部に設けられている。
このように縁体14が舟体本体4に設けられた状態で
は、縁体14の舟体本体4に取付けられる側の一側部の
上端は、舟体本体4の上面より僅かに下方となり、縁体
14の舟体本体4に取付けられる側の一側部の下端は、
舟体本体4の下面より僅かに上方となる。
【0050】このような集電舟体2においては、縁体1
4の上方および下方に舟体本体4の長方形断面における
各角部19がそれぞれ露出し、すなわち縁体14の上下
には舟体本体4の進行方向8に垂直な幅方向の両側面か
ら成る平坦面21が形成される。これによって空力騒音
を低減するために舟体本体4の縁体14が設けられた場
合においても、集電舟体2は縁体14を設けない場合と
ほぼ同様の揚力特性を示す。これによって集電舟体2
は、空気流による押上げ力FYの絶対値が小さくなる特
性を維持することができる。したがって集電舟体2にお
いて、空気流による押上げ力FYの影響を小さくすると
ともに空力騒音を低減することができる。
【0051】舟体本体4の上面に設けられた摺板6は、
進行方向8と平行な幅方向寸法が舟体本体4の横寸法d
より小さく設定されている。また摺板6の幅方向両側の
表面は、幅方向に対して垂直に形成され、または舟体本
体4から離反するにつれて幅方向内方に向かうように、
幅方向に対して45°以上90°未満の角度をなして傾
斜して形成される。摺板を舟体本体4の上面に設けた場
合、集電舟体2において上面の空気流の流れ方向の長さ
が下面の長さより大きくなる。これによって空気流が作
用したときに集電舟体2の上面における空気流の流速が
大きくなり、集電舟体2に上向きの揚力が発生する。摺
板6は上述したように形成されているので、集電舟体2
に空気流が作用したとき、摺板6の角で再度剥離して、
摺板6の表面において空気流が滑らかに流れないので、
集電舟体2の上面において空気流の流速が大きくなるこ
とがない。これによって集電舟体2に上向きの揚力が発
生することが阻止される。したがって、舟体本体4を所
定の長方形断面形状とすることによって得られる集電舟
体2に作用する押上げ力FYの絶対値を小さくする効果
に影響を及ぼすことなく、摺板6を舟体本体4に設ける
ことができる。
【0052】図3において、集電舟体2の舟体本体4の
進行方向8に垂直な各面にそれぞれ設けられた各縁体1
4の先端部28を含む仮想平面30の上下方向の位置が
実線で示され、集電舟体2の上下幅の中央位置32が進
行方向8に平行な幅Bにわたって一点鎖線で示されてい
る。このような集電舟体2において、各縁体14の先端
部28を含む仮想平面30は、前記中央位置32となる
舟体本体4の下面と摺板6の上面との中央位置32とな
るように位置しており、舟体本体4の下面と仮想平面3
0および中央位置32との距離h1と、摺板6の上面と
仮想平面30および中央位置32との距離h2とがh1
=h2となる。したがって集電舟体2に迎角αが0であ
り、進行方向8に平行な空気流が作用する場合、集電舟
体2の上側および下側における空気流の速度が同じにな
るので、集電舟体2に揚力が働かない。すなわち集電舟
体2には空気流による押上げ力FYが働かないので、空
気流による押上げ力FYは常に0となる。
【0053】図8は、集電舟体2に空気流が作用したと
きの空気流の迎角αと、空気流の速度Vと、集電舟体2
に働く全押上げ力Pとの関係を示すグラフである。図8
において、x軸は空気流の迎角αを示し、y軸は空気流
の速度Vを示し、z軸は集電舟体2に働く全押上げ力P
を示す。図8は、集電舟体2に働く全押上げ力Pを空気
流の仰角αが±3゜の範囲で、かつ空気流の速度Vが0
m/s≦V≦100m/sの範囲において示す。また集
電舟体2が図8に示すような特性を示すとき、空気流の
空気の密度ρは0.125kgf・s2/m4であり、集
電舟体2の舟体本体4において進行方向8および長手方
向に平行な表面に面積Aは0.08m2である。
【0054】全押上げ力Pは、パンタグラフによって集
電舟体2が予め架線に押付けられる力であり、標準押上
げ力などと呼ばれる押付け力FPと、空気流による集電
舟体2の押上げ力FYとの和であり、P=FP+FYで表
される。また空気流の速度Vは、近似的に集電舟体2を
有するパンタグラフを備えた車両の走行速度とすること
ができる。
【0055】集電舟体2は、上述するように、迎角αを
有する空気流が作用した場合において、空気流による押
上げ力FYの絶対値が小さくなるような形状を有してい
るが、僅かに発生する押上げ力FYは仰角αの影響を受
ける。この実施の形態における集電舟体2は、空気流に
よって僅かに発生する押上げ力FYが、迎角αの増加に
対して増加する特性を有するように、舟体本体4の長方
形断面形状の縦寸法hと横寸法dとの比nが、たとえば
n=2.7に設定されている。したがって空気流の速度
Vが0でないとき、図8に実線35で表される面によっ
て示すように迎角αが増加するにつれて集電舟体2の全
押上げ力Pは増加し、迎角αが減少するにつれて全押上
げ力Pは減少する。
【0056】集電舟体2に空気流が作用していないと
き、すなわち空気流の速度Vが0であるとき空気流によ
る押上げ力FYは0であり、集電舟体2に働く全押上げ
力Pは押付け力FPとなる。押付け力FPは、通常5.5
kgfに設定される。また集電舟体2が正常に電力を取
込むことができる全押上げ力Pの許容範囲は、2kgf
≦P≦15.5kgfとされる。したがって空気流によ
る押上げ力FPの上限値FYmaxは10kgfとなり、下
限値FYminは−3.5kgfとなる。
【0057】また集電舟体2において、縁体14の先端
部28を含む仮想平面30は、舟体本体4の下面と摺板
6の上面との中央位置32になるように位置している。
これによって、集電舟体2に迎角αが0である進行方向
8に平行な空気流が作用するとき、集電舟体2には揚力
が働かないので、空気流の速度Vが大きくなっても空気
流による押上げ力FYの値は常に0となる。
【0058】空気流の迎角αが正の値であるとき、空気
流の速度Vの増加につれて押上げ力FYが大きくなり、
集電舟体2の全押上げ力Pが増加する。このような集電
舟体2の空気流に対する特性は、図8において実線35
で表される面のうち、仰角αの値が正であるときの斜線
で表される部分の面S1によって示される。たとえば面
S1における点Q1で示すように、迎角αが3°である
空気流が集電舟体2に作用したとき、空気流の速度Vが
V1=100m/sであれば、このときの空気流による
押上げ力FY1は5.5kgfとなり、全押上げ力P1
=FP+FY1は11kgfとなる。このとき、全押上げ
力P1は許容範囲内であり、集電舟体2は正常に架線か
ら電力を取込むことができる。
【0059】空気流の迎角αが負の値であるとき、空気
流の速度Vの増加につれて押上げ力FYが小さくなり、
集電舟体2の全押上げ力Pは減少する。このような集電
舟体2の空気流に対する特性は、図8において仰角αの
値が負であるときの斜線で表される部分の面S2によっ
て示される。たとえば面S2における点Q2で示すよう
に、迎角αは−3°である空気流が集電舟体2に作用し
たとき、空気流の速度VがV1=100m/sであれ
ば、空気流による押上げ力FY2は−5.5kgfとな
り、全押上げ力P2=FP+FY2は0となる。このとき
集電舟体2における全押上げP2は、許容範囲より小さ
くなり、集電舟体2は車両の振動、架線の位置のずれな
どの影響によって、集電するための架線との接触力が不
足し、実質上架線と非接触状態になる。
【0060】このような特性に基づいて、集電舟体2
は、架線に対する全押上げ力Pが許容範囲内となるよう
な状況において使用される。たとえば集電舟体2に作用
する空気流が±3゜の範囲で変動する場合、空気流の速
度V、すなわち集電舟体2が設けられた車両の速度は8
0m/s以下に制限される。また集電舟体2における全
押上げ力Pが許容範囲外となる場合においても、予め集
電舟体2に加えられる押付け力FPを適切な値に設定す
ることによって、集電舟体2を適切な力で架線と接触さ
せることができる。
【0061】またこの実施の形態においては、集電舟体
2は空気流による押上げ力FYが迎角αの増加に対して
増加する特性を有するように舟体本体4の縦寸法hと横
寸法dとの比nがたとえばn=2.7に設定されている
が、他の実施の形態として集電舟体2は押上げ力FY
迎角αの増加に対して減少する特性を有するように舟体
本体の縦寸法hと横寸法dとの比nが設定されていても
よい。この場合、寸法比nは、たとえばn=2.2に設
定され、空気流の迎角αが増加するにつれて集電舟体の
全押上げ力Pが減少し、迎角αが減少するにつれて全押
上げ力Pが増加する。このような集電舟体の空気流に対
する特性は、図8において破線36で表される面S5に
よって示される。このような特性を考慮した上で集電舟
体が使用される。
【0062】図9は、本発明の実施のさらに他の形態で
ある集電舟体52を示す断面図である。この実施の形態
は上述した実施の形態に類似しており、対応する部分に
は同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明
し、同様の構成については説明を省略する。集電舟体5
2における舟体本体4の進行方向8に垂直な各面には、
空力騒音を低減するための縁体54がそれぞれ設けられ
ている。各縁体54は、長手方向に垂直な断面形状が台
形状の基部15と、基部15から進行方向8に平行な方
向に突出する四角錐状の突部17とを有する。したがっ
て各縁体14には、縁体14の長手方向に沿って複数の
凹所18が形成されている。図9において、各縁体54
の先端部28を含む仮想平面56の上下方向の位置が実
線で示され、集電舟体52の上下幅の中央位置58が進
行方向8に平行な幅Bにわたって一点鎖線で示されてい
る。集電舟体52においては、舟体本体4の下面と中央
位置58との距離h3と、摺板6の上面と中央位置58
との距離h4とがh3=h4となる。各縁体54の先端
部28を含む仮想平面56は、前記中央位置58となる
舟体本体4の下面と摺板6の上面との中央位置より下方
に位置しており、仮想平面56と中央位置58との距離
はΔGに設定されている。このような集電舟体52にお
いては、空気流が作用したとき、集電舟体52の上面側
の空気流の速度は、下面側の空気流の速度より大きくな
り、上面側の圧力が下面側より小さくなる。したがって
集電舟体52には上向きの揚力が生じるので、仰角αの
値に関係なく、空気流の速度Vに応じた正の押上げ力F
vが働く。したがって集電舟体52における距離ΔGの
値を任意に設定することによって、集電舟体2に作用す
る空気流の仰角αの値に関係なく、集電舟体2に働く空
気流による押上げ力Fvを設定することができる。集電
舟体52において、舟体本体4の縦寸法hと距離ΔGと
の比m=ΔG/hは、たとえばm=1/3に設定されて
いる。
【0063】このような形状を有する集電舟体52を翼
体とみなすとき、各縁体54の先端部28同士を結ぶ線
を翼弦線とし、集電舟体52の上下幅の中央位置58を
示す線を中心線とすることかできる。このとき翼弦線と
中心線との距離であるキャンバはΔGとなるので、集電
舟体52はキャンバがΔGである翼体とみなすことがで
きる。このようなキャンバΔGを有する集電舟体52に
進行方向8に対して平行な空気流が作用する場合、集電
舟体52は迎角βを有する空気流が作用したときと同様
の押上げ力FVが得られる。
【0064】通常の翼体においては、翼弦線の長さをB
とするとき、上記迎角βの値はβ=δ/B×100
[°]によって求められる。しかしながら集電舟体52
は、特異な特性を有しているので、先端部28同士を結
ぶ線の長さを翼弦線の長さBとして上述の式によって迎
角βの値を求めることができない。したがって集電舟体
52においては、ΔGの値を変化させて風洞試験、また
は車両に設置した状態で走行試験を行うことによって適
切なΔGの値を設定する。これによって集電舟体52
は、進行方向8に平行な空気流が作用した場合におい
て、迎角βを有する空気流が作用したときと同様の押上
げ力をFVを得ることができる。ΔGの値を変化させて
得た集電舟体52の特徴は、双方向共に同じ様相を示す
ことにある。すなわち、集電舟体52が進行方向8およ
び進行方向8と逆方向に進行する場合のどちらの場合に
おいても、空気流に対して同じ特性を示す。
【0065】図10は、図9の集電舟体52に空気流が
作用したときの空気流の迎角αと、空気流の速度Vと、
集電舟体52に働く全押上げ力Pとの関係を示すグラフ
である。図10において、x軸は空気流の迎角αを示
し、y軸は空気流の速度Vを示し、Z軸は集電舟体52
に働く全押上げ力Pを示す。図10は、集電舟体2の全
押上げ力Pを空気流の仰角αが±3゜の範囲で、かつ空
気流の速度Vが0m/s≦V≦100m/sの範囲にお
いて示す。また集電舟体52が図10に示すような特性
を示すとき、空気流の密度ρは0.125kgf・s2
/m4であり、集電舟体52の舟体本体4において進行
方向8および長手方向に平行な表面の面積Aは0.08
2である。
【0066】集電舟体52は、空気流によって僅かに発
生する押上げ力FYが仰角αに影響し、迎角αの増加に
対して押上げ力FYが増加する特性を有するように、舟
体本体4の長方形断面形状の縦寸法hと横寸法dとの比
nが、たとえばn=2.7に設定されている。したがっ
て空気流の速度Vが0でないとき、図10に実線60で
表される面によって示すように、迎角αが増加するにつ
れて集電舟体52の全押上げ力Pは増加し、迎角αが減
少するにつれて全押上げ力Pは減少する。
【0067】また上述した実施形態と同様に、集電舟体
52の押付け力FPは5.5kgfであり、全押上げ力
Pの許容範囲は2kgf≦P≦15.5kgfとされ
る。したがって空気流による押上げ力FYの上限値F
Ymaxは10kgfとなり、下限値FYminは−3.5kg
fとなる。空気流の速度Vは、近似的に集電舟体52を
有する車両の速度とすることができる。空気流の速度V
が0であるとき、集電舟体52における空気流による押
上げ力FYは0であり、全押上げ力Pは押付け力FPとな
る。
【0068】集電舟体52において、空気流が作用する
とき上向きの揚力が働くので、正の押上げ力Fvが働
く。これによって集電舟体52に迎角が0である進行方
向8に平行な空気流が作用するとき、空気流の速度Vが
大きくなるとともに空気流による押上げ力Fvは大きく
なり、たとえば点Q3で示すように空気流の速度VがV
2=100m/sであるときの押上げ力FVは3kgf
となる。また集電舟体52はキャンバΔGを有するの
で、押上げ力FVは、集電舟体52に迎角βを有する速
度V2の空気流が作用したときと同様の押上げ力とな
る。したがって、点Q4で示すように、空気流の速度が
V2であるとき、集電舟体52において押上げ力FY
0となる場合の迎角α1はほぼ−β°となる。この押上
げ力FVの値はキャンバΔGの値によって任意に設定す
ることができる。
【0069】空気流の迎角αが正の値であるとき、空気
流の速度Vの増加につれて押上げ力FYが大きくなり、
集電舟体52の全押上げ力Pが増加する。このような集
電舟体52の特性は、実線60で表される面のうち、仰
角αが正の値であるときの斜線で表される部分の面S3
によって示される。たとえば面S3における点Q5で示
すように、迎角αが3°である空気流が集電舟体52に
作用したとき、空気流の速度がV2=100m/sであ
れば、空気流による押上げ力FY3は5.5kgfとな
り、全押上げ力P3=FP+FY3+Fvは14kgfと
なる。このとき全押上げ力P3は許容範囲内であり、集
電舟体52は正常に架線から電力を取込むことができ
る。
【0070】空気流の迎角αが負の値であるとき、空気
流の速度Vの増加につれて押上げ力FYが小さくなり、
集電舟体52の全押上げ力Pは減少する。このような集
電舟体52の特性は、仰角αの値が負であるときの斜線
で表される部分の面S4によって示される。たとえば面
S4における点Q6で示すように、迎角αが−3°であ
る空気流が集電舟体52に作用したとき、空気流の速度
VがV2=100m/sであれば、空気流による押上げ
力FY4は−5.5kgfとなり、全押上げ力P4=FP
+FY4+Fvは3kgfとなる。このとき、全押上げ力
P4は許容範囲内であり、集電舟体52は正常に架線か
ら電力を取込むことができる。
【0071】このように集電舟体52は、先端部28を
含む仮想平面56が、舟体本体4の下面と摺板6の上面
との中央位置58より下方にΔGの距離に位置している
ので、集電舟体52に空気流が作用するとき、集電舟体
52には上向きの揚力が働き正の押上げ力をFvを得る
ことができる。これによって図10に示すように、空気
流の仰角αが±3°の範囲であり、かつ空気流の速度V
が0m/s≦V≦100m/sの範囲であるとき、集電
舟体2に働く全押上げ力Pを許容範囲内にすることがで
きる。したがって、集電舟体52におけるキャンバΔG
の値を適切に設定することにいよって、集電舟体2に働
く全押上げ力Pを任意の範囲内にすることができる。
【0072】この実施の形態においては、先端部28を
含む仮想平面56は、舟体本体4の下面と摺板6の上面
との中央位置58より下方になるように位置している
が、仮想平面56を中央位置58より上方になるように
位置させることもでき、このときキャンバΔGの値は負
となる。この場合、空気流が作用したとき、集電舟体5
2の下面側の空気流の速度は、上面側の空気流の速度よ
り大きくなり、下面側の圧力が上面側より小さくなる。
したがって集電舟体52には架線から離反する方向に下
向きの揚力が働き、仰角αの値に関係なく、空気流の速
度Vに応じた負の押上げ力Fvが得られる。したがって
このような特性を利用して、全押上げ力Pを任意の範囲
内に設定することができる。
【0073】またこの実施の形態においては、集電舟体
52は空気流による押上げ力FYが迎角αの増加に対し
て増加する特性を有するように舟体本体4の寸法比nが
設定されているが、実施のさらに他の形態として、集電
舟体は押上げ力FYが迎角αの増加に対して減少する特
性を有するように舟体本体4の寸法比nが設定されてい
てもよい。この場合、迎角αが増加するにつれて集電舟
体52の全押上げ力Pが減少し、迎角αが減少するにつ
れて全押上げ力Pが増加する。このような集電舟体の空
気流に対する特性は、図8において破線36で表された
面S5に類似して示される。したがってこのような特性
を考慮して、集電舟体のキャンバΔGの値を設定するこ
とによって、集電舟体に働く空気流による押上げ力FY
を調整し、全押上げ力Pを任意の範囲内に設定すること
ができる。
【0074】図11は本発明の実施のさらに他の形態で
ある集電舟体102の一部を示す断面図であり、進行方
向8に平行な幅方向における一側部のみを示す。この実
施の形態は上述した実施の形態に類似しており、対応す
る部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだ
け説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0075】集電舟体102において、舟体本体4の進
行方向8に対して垂直な各面には各縁体14がそれぞれ
設けられている。進行方向8に臨む側、すなわち図11
において左側に設けられた一方の各縁体14の先端部1
04の外表面は、進行方向8に平行であり、進行方向8
に臨む側となる舟体本体4の幅方向一方に凸となる丸み
を有しており、すなわち先端部104はR付けされてい
る。このような先端部104のRは、たとえば5〜6m
m程度に選ばれる。図11においては一方の縁体14の
みが示されているが、進行方向8と逆方向に臨む側、す
なわち図11において右側に設けられた他方の縁体14
においても同様に、先端部104の外表面は、進行方向
8と逆方向に臨む側となる前記幅方向他方に凸となる丸
みを有している。このような縁体14を有する集電舟体
102は、揚力傾斜が低くでき、低騒音化を図ることが
できる。揚力傾斜が低くできるということは、すなわち
集電舟体102に作用する空気流による押上げ力Fy
小さくすることができる。
【0076】図12は、本発明に従う集電舟体におい
て、集電舟体に作用する空気流の速度Vを60m/sと
して風洞試験を行ったときに得られた迎角αと押上げ力
Yとの関係の一例を示すグラフであり、横軸は迎角α
を示し、縦軸は押上げ力FYを示す。図12に示すよう
に、迎角αを有する空気流が作用したときの集電舟体の
押上げ力FYは、迎角αの値が−1°において最も低い
−1.25kgfの値をとり、迎角αが−1°から増加
し、または減少するにつれて押上げ力FYは増加する。
また図12に示す仰角が±3°以内の範囲においては、
押上げ力FYは上限値FYmax=10kgfと下限値F
Ymin=−3.5kgfとの間となるので、全押上げ力P
は2kgf≦P≦15.5kgfである許容範囲内とな
る。したがってこのような押上げ力特性を有する集電舟
体は、適当な力で押上げられて架線と接触することによ
って、正常に電力を取込むことができる。
【0077】図12に示すような特性を有する集電舟体
は、たとえば集電舟体に作用する空気流の空気の密度ρ
が0.125kgf・s2/m4、舟体本体の進行方向お
よび長手方向に平行な面積Aが0.08m2であると
き、舟体本体の長方形断面形状の縦寸法hと横寸法dと
の比nがn=2.5、キャンバΔGと縦寸法hとの比m
がm=1/3に設定されることによって得ることができ
る。
【0078】上述した種々の実施の形態において、集電
舟体は進行方向8に対して前後に対称な形状を有してい
る。したがってこれらの集電舟体を備えるパンタグラフ
は、双方向性パンタグラフとして機能することができ
る。電気鉄道車両である車両に集電装置としてこのよう
なパンタグラフを設けることによって、車両が上り線ま
たは下り線のどちらを走行する場合においても、集電舟
体は適切な押上げ力で架線と接触し、パンタグラフは正
常に電力を取込むことができる。
【0079】また上述した種々の実施形態においては、
摺板が舟体本体の上面に固定されて設けられているが、
これに代えて、摺板がばねなどによって三次元系の変位
が許容された状態で支持される構成としてもよい。この
場合、上述の支持状態を配慮した上で集電舟体の形状が
設定される。
【0080】
【発明の効果】請求項1の本発明によれば、舟体本体の
長手方向に垂直な断面形状は長方形であり、前記断面形
状の縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hは2.2以上
でかつ2.7以下の範囲内の値に設定されている。この
ような寸法比nが2.2以上でかつ2.7以下の範囲内
である舟体本体を備える集電舟体は、迎角を有する空気
流が集電舟体に作用する場合において、集電舟体に作用
する空気流による押上げ力の絶対値が小さくなり、押上
げ力の影響を小さくすることができる。逆に寸法比nが
2.2未満または2.7を超える場合、集電舟体におけ
る空気流による押上げ力FYの影響が大きくなる。した
がって、寸法比nが2.2以上でかつ2.7以下の範囲
内である集電舟体を車両のパンタグラフに用いることに
よって、車両のパンタグラフ付近の空気流が複雑な流れ
となる場合においても、集電舟体は適切な力で架線に接
触し、パンタグラフは集電舟体を介して所要の通りに電
力を取込むことができる。
【0081】また請求項2の本発明によれば、集電舟体
の舟体本体の幅方向両側部には、進行方向に先細状に突
出する縁体がそれぞれ設けられている。このような縁体
が設けられた集電舟体に空気流が作用するとき、空気流
が一方の縁体によって上下にかきわけられて、滑らかに
案内されるとともに、他方の縁体によって円滑に合流さ
れ、集電舟体まわりの空気流の乱れが少なくなる。これ
によって空気流の乱れに伴う空力騒音の発生を低減する
ことができる。このような縁体が設けられた集電舟体を
車両のパンタグラフに用いることによって、車両が走行
する際に集電舟体における空力騒音の発生が低減され
る。
【0082】また各縁体は舟体本体の高さ方向両端部間
の中間部にそれぞれ設けられているので、長手方向に垂
直な断面形状が長方形である舟体本体の各角部分がそれ
ぞれ露出し、すなわち縁体の上下には、舟体本体の進行
方向に垂直な幅方向の両側面から成る平坦面が形成され
る。これによって舟体本体に縁体を設けた場合において
も、舟体本体の前記断面形状が所定の長方形状であるこ
とによる集電舟体における揚力特性が変化し、集電舟体
に働く押上げ力が変化することが阻止される。したがっ
て集電舟体において、集電舟体に働く空気流による押上
げ力を少なくするとともに、空力騒音を低減することが
できる。
【0083】また請求項3の本発明によれば、縁体は略
三角柱状であるので、このような縁体が集電舟体の幅方
向両側部にそれぞれ設けられることによって、集電舟体
は略流線形となる。このような集電舟体に空気流が作用
するとき、集電舟体周りの空気流の乱れが小さくなり、
この空気流の乱れに伴う空力騒音の発生を低減すること
ができる。
【0084】また請求項4の本発明によれば、縁体の先
端部の外表面は、丸みを有しているので、集電舟体の揚
力傾斜が低くでき、低騒音化を図ることができる。
【0085】また請求項5の本発明によれば、集電舟体
に設けられた縁体には複数の凹所が形成されている。空
気流が集電舟体に作用するとき、集電舟体に沿って流れ
る空気にカルマン渦が生じる。集電舟体の断面形状が長
手方向に一様であると、カルマン渦の発生も一様とな
り、特定の周波数の成分が強調されてエオルス音という
空力騒音が発生しやすい。したがって縁体に複数の凹所
が形成されることによって、集電舟体の長手方向に一様
なカルマン渦が発生することが抑制され、空力騒音を低
減することができる。
【0086】また請求項6の本発明によれば、各縁体の
先端部を含む仮想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面
との中央位置よりも下方に位置する。このような集電舟
体に空気流が作用したとき、集電舟体の上面側の空気流
の速度は、下面側の空気流の速度より大きくなり、上面
側の圧力が下面側より小さくなるので、空気流がどのよ
うな仰角を有していても集電舟体には上向きの揚力が生
じる。言い換えると、空気流が作用したとき、集電舟体
は、空気流の仰角に関係なく、空気流の押上げ力に応じ
た正の押上げ力を得ることができる。したがって、集電
舟体における前記仮想平面の位置を適切に設定すること
によって、架線に対する集電舟体の全押上げ力を任意の
範囲内に設定することができる。
【0087】また請求項7の本発明によれば、各縁体の
先端部を含む仮想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面
との中央位置よりも上方に位置する。このような集電舟
体に空気流が作用するとき、集電舟体の下面側の空気流
の速度は上面側の空気流の速度より大きくなり、下面側
の圧力が上面側より小さくなるので、空気流がどのよう
な仰角を有していても集電舟体には下向きの揚力が生じ
る。言い換えると、空気流が作用するとき、集電舟体
は、空気流の仰角に関係なく、空気流の速度に応じた負
の押上げ力を得ることができる。したがって、集電舟体
における前記仮想平面の位置を適切に設定することによ
って、架線に対する集電舟体の全押上げ力を任意の範囲
内に設定することができる。
【0088】さらに請求項8の本発明によれば、摺板の
進行方向と平行な幅方向寸法は、舟体本体の横寸法dよ
り小さく設定され、幅方向両側の表面は、幅方向に対し
て垂直に形成され、または舟体本体から離反するにつれ
て幅方向内方に向かうように、幅方向に対して45°以
上90°未満の角度をなして傾斜して形成される。この
ように摺板は形成されているので、摺板を集電舟体に設
けることによって集電舟体の揚力特性が変化することが
少ない。したがって舟体本体を所定の長方形断面形状と
することによって、集電舟体に働く押上げ力の絶対値を
小さくする効果に影響を及ぼすことが少なく、摺板を舟
体本体に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う実施の一形態である集電舟体2を
示す斜視図である。
【図2】集電舟体2を示す平面図である。
【図3】図2における切断面線III−III線から見
た集電舟体2の断面図である。
【図4】集電舟体2に空気流が作用することによって集
電舟体2に働く力を、集電舟体2の長手方向に対して垂
直な断面において示す図である。
【図5】縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hが2であ
る舟体本体4において、空気流の迎角αと押上げ力係数
Yとの関係を示すグラフである。
【図6】縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hが4であ
る舟体本体4において、空気流の迎角αと押上げ力係数
Yとの関係を示すグラフである。
【図7】空気流の迎角αが3°、−3°、6°または−
6°であるときの縦寸法hと横寸法dとの比n=d/h
に対する押上げ力係数CYの関係を示すグラフである。
【図8】集電舟体2に空気流が作用したときの空気流の
迎角αと、空気流の速度Vと、集電舟体2に働く全押上
げ力Pとの関係を示すグラフである。
【図9】本発明に従う実施のさらに他の形態である集電
舟体52を示す断面図である。
【図10】集電舟体52に空気流が作用したときの空気
流の迎角αと、空気流の速度Vと、集電舟体52に働く
全押上げ力Pとの関係を示すグラフである。
【図11】本発明に従う実施のさらに他の形態である集
電舟体102の一部を示す断面図である。
【図12】本発明に従う集電舟体において迎角αと押上
げ力FYとの関係の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
2,52,102 集電舟体 4 舟体本体 6 摺板 8 進行方向 10 ホーン 12 空気流の方向 14 縁体 18 凹所 FY 押上げ力 d 横寸法 h 縦寸法 w 長さ寸法
フロントページの続き (72)発明者 高瀬 秀樹 兵庫県神戸市兵庫区和田山通2丁目1番18 号 川崎重工業株式会社兵庫工場内 (72)発明者 小林 昇 兵庫県神戸市兵庫区和田山通2丁目12番14 号 川重車両エンジニアリング株式会社内 Fターム(参考) 5H105 AA06 AA14 BA02 BB01 CC02 CC12 DD04 DD29 EE06 EE13

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 進行方向に対して垂直な方向に延び、長
    手方向に対して垂直な断面形状が、進行方向に垂直な高
    さ方向の縦寸法をhとしかつ進行方向に平行な幅方向の
    横寸法をdとする長方形状である舟体本体を有し、 縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hが2.2以上でか
    つ2.7以下の範囲内の値に設定されることを特徴とす
    る集電舟体。
  2. 【請求項2】 舟体本体の幅方向両側部には、舟体本体
    の長手方向に延びる縁体がそれぞれ設けられ、各縁体
    は、舟体本体の高さ方向両端部間の中間部から先細状に
    突出することを特徴とする請求項1記載の集電舟体。
  3. 【請求項3】 縁体は、略三角柱状であり、その軸線に
    平行な一側部で、舟体本体の幅方向両側部に固定される
    ことを特徴とする請求項2記載の集電舟体。
  4. 【請求項4】 縁体の先端部の外表面は、前記幅方向に
    凸となる丸みを有していることを特徴とする請求項2ま
    たは3記載の集電舟体。
  5. 【請求項5】 縁体は、先端部よりの部分に、縁体の長
    手方向に複数の凹所が形成されることを特徴とする請求
    項2〜4のいずれかに記載の集電舟体。
  6. 【請求項6】 舟体本体の上部に設けられ、架線に接触
    される摺板を有し、 各縁体の先端部を含む仮想平面は、舟体本体の下面と摺
    板の上面との中央位置よりも下方に位置することを特徴
    とする請求項2〜5のいずれかに記載の集電舟体。
  7. 【請求項7】 舟体本体の上部に設けられ、架線に接触
    される摺板を有し、 各縁体の先端部を含む仮想平面は、舟体本体の下面と摺
    板の上面との中央位置よりも上方に位置することを特徴
    とする請求項2〜5のいずれかに記載の集電舟体。
  8. 【請求項8】 舟体本体の上部に設けられ、架線に接触
    される摺板を有し、 摺板の進行方向と平行な幅方向寸法は、舟体本体の横寸
    法dより小さく設定され、幅方向両側の表面は、幅方向
    に対して垂直に形成され、または舟体本体から離反する
    につれて幅方向内方に向かうように、幅方向に対して4
    5°以上90°未満の角度をなして傾斜して形成される
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の集電
    舟体。
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