JP2000055776A - 構造物の曲げ剛性測定方法 - Google Patents

構造物の曲げ剛性測定方法

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JP2000055776A
JP2000055776A JP10222916A JP22291698A JP2000055776A JP 2000055776 A JP2000055776 A JP 2000055776A JP 10222916 A JP10222916 A JP 10222916A JP 22291698 A JP22291698 A JP 22291698A JP 2000055776 A JP2000055776 A JP 2000055776A
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phase difference
vibration
points
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JP10222916A
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Ichiro Yamagiwa
伊知郎 山極
Hideo Utsuno
秀夫 宇津野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 構造物10の支持状態を表す境界条件の影響
を受けず、既に構築された構造物10に対しても簡便に
曲げ剛性EIを測定する。 【解決手段】 構造物10を伝播する曲げ振動の伝播速
度が、構造物10の曲げ剛性EIに応じて決定される関
係を用いた曲げ剛性の測定方法。構造物10に衝撃を与
えて、この衝撃によって生じる曲げ振動の進行波を構造
物10上に配置された振動センサ21,22で検出し、
これを周波数分析して各周波数ごとに、2つのセンサ間
の位相差を得る。この位相差は、曲げ振動が2つのセン
サ間を伝播する時間、すなわち、曲げ振動の伝播速度に
対応している。そこで、こうして得られる位相差と、構
造物10の曲げ剛性EIとの間に成り立つ一定の関係か
ら、構造物10の曲げ剛性EIを算出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、橋梁ケーブル、張
弦梁等の建築構造物や、生産過程の線材、板材、電線
等、一次元はりで表される構造物の曲げ剛性測定方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、橋梁ケーブル等の構造物の曲げ剛
性を得る方法としては、 構造物に縦振動を励振し、この縦振動を検出するこ
とで系の固有振動数を求めて構造物のヤング率を算出し
(特開平7−5088号)、そのヤング率から曲げ剛性
を算出する方法や、 構造物に曲げ振動を励振し、この曲げ振動を検出し
て系の固有振動数を求め、これから構造物の曲げ剛性を
算出する方法(特開平9−101289号)等が知られ
ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記の縦振
動を用いる方法は、構造物に縦振動を励振するために構
造物の端面を加振することが必要であることから、既に
構築されている構造物に対して適用することが困難であ
るという問題があった。
【0004】また、前記の構造物の曲げ振動から固有
振動数を求めて曲げ剛性を算出する方法によると、構造
物に生じる固有振動数は構造物の支持状態に左右される
ため、固有振動数から曲げ剛性を算出するには、構造物
の支持状態を境界条件として表現する必要がある。とこ
ろが、実際の構造物の支持状態に対応する境界条件を正
確に表現することは困難であるため、この境界条件の表
現が不正確さに起因して、最終的に算出される曲げ剛性
に誤差が生じやすいという問題があった。
【0005】本発明は、上記課題に鑑みてなされたもの
であり、構造物の支持状態を表す境界条件の影響を受け
ることなく、構造物が構築された状態であっても簡便に
曲げ剛性を測定できる方法を提供することを目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明にかかる構造物の曲げ剛性の測定方法は、構
造物に衝撃を与え、この衝撃により生じる構造物の曲げ
振動が伝播する一方向上の互いに異なる2点における曲
げ振動をそれぞれ検出して、これら2点における曲げ振
動を周波数分析することにより、少なくとも1の周波数
成分についてのこれら2点間の位相差を得て、曲げ振動
の周波数およびその周波数における位相差と構造物の曲
げ剛性との間に成り立つ関係から、この構造物の曲げ剛
性を算出するものである(請求項1)。
【0007】曲げ剛性を有する構造物においては、その
曲げ剛性の大きさおよび曲げ振動の周波数に応じて、曲
げ振動の伝播速度が異なる。したがって、曲げ振動の所
定の周波数成分に着目すれば、曲げ振動の伝播速度は、
曲げ剛性の大きさに応じて決定されることとなる。一
方、曲げ振動の伝播速度は、構造物上の2点間を伝播す
るために要する時間として表すことができ、さらに、所
定の周波数成分の曲げ振動に着目すれば、上記伝播に要
する時間は、その時間分に相当する曲げ振動の位相差と
して表すことができる。すなわち、曲げ振動の所定の周
波数成分に着目すれば、構造物上の2点間の位相差は、
構造物の曲げ剛性の大きさに応じて決定されるといえ
る。このことは、曲げ振動の周波数およびその周波数に
おける位相差と構造物の曲げ剛性との間には、後に詳述
する一定の関係が成り立つことを意味している。
【0008】本発明にかかる曲げ剛性の測定方法は、こ
の関係を用いる方法であり、曲げ振動が伝播する一方向
上の互いに異なる2点の曲げ振動を検出して周波数分析
することでこの2点間の位相差を得て、この位相差を前
記関係に適用することにより、構造物の曲げ剛性が算出
される。そして、この曲げ剛性の算出に際しては、前記
2点間を伝播する曲げ振動のみを用いるため、構造物の
支持状態(境界条件)の影響を受けることなく、また既
に構築された構造物に対しても容易に適用することがで
きる。
【0009】なお、この曲げ剛性の算出には、1の周波
数についての位相差だけを用いてもよいが、検出される
位相差に含まれる測定誤差の影響を抑え、より高い精度
をもって曲げ剛性を算出するため、複数の周波数につい
ての位相差を用いることが望ましい。具体的には、前記
関係に最小2乗法等を適用して、複数の周波数における
位相差に対し、最も前記関係に適合する曲げ剛性を求め
る方法を挙げることができる。
【0010】この測定方法においては、曲げ剛性の算出
に用いる前記2点間の位相差として、構造物に衝撃を与
えてから所定時間が経過するまでの間に検出される曲げ
振動の位相差であって、その時間内には構造物端部から
の反射波の影響を受けない低周波成分の位相差を用いる
ことが望ましい(請求項2)。
【0011】このようにして構造物端部からの反射波の
影響を排除すれば、前記2点間を伝播する曲げ振動(進
行波)のみが検出されるため、曲げ振動の伝播速度に相
当する前記2点間の位相差を確実に得て、これにより構
造物の曲げ剛性を高い精度で算出することができる。
【0012】このように曲げ振動の低周波成分を用いれ
ば構造物端部からの反射波の影響を排除できるのは、構
造物に生じる曲げ振動は高周波成分ほど伝播速度が速い
ために、構造物に衝撃が与えられてから所定時間が経過
するまでの間についてみれば、所定周波数以下の低周波
成分は、前記2点に反射波が未だ到達していない状態と
なるためである。
【0013】このような構造物端部からの反射波の影響
を受けていない曲げ振動の低周波成分は、具体的には、
前記2点において検出される曲げ振動から、複数の周波
数成分についての前記2点間の位相差を得て、こうして
得られた複数の周波数と位相差との関係の変曲点を求
め、この変曲点より低周波側の周波数成分として求める
ことができる(請求項3)。
【0014】このような方法によって、構造物端部から
の反射波の影響を受けていない低周波成分が得られるの
は、次の理由による。すなわち、曲げ振動の周波数と位
相差との関係は、前記2点間を伝播する進行波のみによ
れば、滑らかな連続曲線をなす。ところが、このような
進行波に反射波が合成された部分は、前記進行波のみか
らなる滑らかな連続曲線とは曲線の傾きおよび曲率が異
なる。このため、曲げ振動の周波数と位相差との関係に
は、進行波のみの部分と進行波と反射波が合成された部
分との境界に、曲率の不連続な変曲点が形成される。一
方、このような反射波は、高周波成分ほど伝播速度が速
いために、所定の周波数以上の周波数成分についてのみ
含まれるものである。すなわち、上記変曲点は、進行波
のみの低周波成分と、進行波と反射波が合成された高周
波成分との境界となっている。したがって、この変曲点
より低周波側の周波数成分は、進行波のみの部分であっ
て、反射波の影響を受けていない低周波成分となってい
るからである。
【0015】さらに、前記2点において検出される曲げ
振動から複数の周波数成分についての前記2点間の位相
差を得て、こうして得られた複数の周波数成分について
の前記2点間の位相差を、曲げ剛性の算出に用いる前記
2点間の位相差として用い、曲げ振動の周波数およびそ
の周波数における位相差と構造物の曲げ剛性および張力
との間に成り立つ関係から、構造物に作用する張力とと
もに、構造物の曲げ剛性を算出することとしてもよい
(請求項4)。
【0016】このようにすれば、構造物に作用する張力
が未知である場合にも、この張力を同時に求めながら構
造物の曲げ剛性を算出することができる。
【0017】なお、曲げ振動の周波数およびその周波数
における位相差と構造物の曲げ剛性および張力との間に
成り立つ関係とは、曲げ振動の伝播速度が構造物の曲げ
剛性のみならず構造物に作用する張力に応じても変動す
ることを表現する関係である。この関係についても、後
に詳述する。
【0018】
【発明の実施の形態】図1は、橋梁に架けられたケーブ
ル10を測定対象の構造物として、本発明の測定方法を
採用する場合の装置システムの一実施形態を示す概念図
である。
【0019】このケーブル10上には、ケーブル10の
互いに異なる位置における曲げ振動を検出するため、2
つの振動センサ21,22が取り付けられている。これ
らのセンサ21,22によって検出された曲げ振動は、
アンプ30で増幅されて高速フーリエ変換器(FFT)
40に送られて周波数分析される。そして、この結果が
パソコン50に入力されて、曲げ振動の周波数ごとの位
相差が算出され、さらにこの位相差を用いてケーブル1
0の曲げ剛性が算出されるようになっている。
【0020】振動センサ21,22による曲げ振動の測
定は、このケーブル10上の2つの振動センサ21,2
2の外側、ここではセンサ21の外側をハンマー60等
で打撃することにより衝撃を与えてケーブル10に曲げ
振動を生じさせ、打撃点から振動センサ21、振動セン
サ22へと伝播する曲げ振動(曲げ波)を、振動センサ
21および振動センサ22で検出することによって行わ
れる。なお、これら振動センサ21,22が検出する振
動は、振動変位、振動速度、または振動加速度等のいず
れであってもよい。
【0021】図2に、振動センサ21,22によって測
定されたケーブル10の曲げ振動の波形の一例を示す。
図2(a)は、振動センサ21によって検出された振動
波形であり、打撃点に比較的近いため、インパルス状の
波形になっている。図2(b)は、振動センサ22によ
って検出された振動波形であり、打撃点から離れている
ため、周波数による振動伝播速度の違いによって振動波
形が崩れている。特に、図2(b)の後半部分(時刻
2.0×10-3秒以後)は、周期の短い振動、すなわ
ち、周波数の高い振動が見られ、この高周波の振動によ
って波形が乱れている。
【0022】これは、一般に、曲げ振動は高周波成分ほ
ど伝播速度が速いため、ハンマー60の打撃によって生
じた曲げ振動のうち、高周波成分がケーブル10端部で
はねかえり、打撃時(時刻0)から短時間の間に、セン
サ22の位置まで反射波として到達したことを示してい
る。すなわち、図2(b)の後半部分に見られる乱れ
は、ハンマー60の打撃による曲げ振動が直接進行して
きた進行波に、ケーブル10端部からはねかえってきた
反射波が重なり合うことによって生じたものであること
を示している。
【0023】図3に、これら振動センサ21,22で検
出された曲げ振動を周波数分析することによって得られ
た、各周波数成分ごとのこれら2点間の位相差を示す。
これは、ハンマー60による打撃から4.0×10-3
内に検出された曲げ振動を周波数分析した結果である。
【0024】この図における位相差は、±180度の範
囲で表現されているが、周波数による振動伝播速度の違
いを2点間の位相差として表現するためには、位相差を
連続した絶対量で表すことが必要である。
【0025】図4に、位相差をその絶対量で表した、曲
げ振動の周波数と位相差との関係を示す。
【0026】この図には、曲げ振動の高周波側ほど2点
間に大きな位相差が生じていることが示されている。し
かし、上述したように、曲げ振動の高周波成分は伝播速
度が速いため、ハンマー60による加振時から所定時間
内の曲げ振動を周波数分析したこの図3および図4に示
した結果における高周波部分には、ハンマー60から直
接に進行してきた進行波だけでなく、ケーブル10端部
からの反射波が混じっている。
【0027】したがって、進行波のみからなる曲げ振動
を表すのは、伝播速度が遅いために、この周波数分析の
対象とする所定時間内に反射波が到達していない低周波
成分であり、進行波のみを抽出するためには、反射波の
影響のない低周波成分を抽出することが必要である。
【0028】図5に、図4中に破線で囲んだ低周波部分
を拡大して示す。なお、この図においては、ここで行っ
た周波数分析の周波数分解能が250Hzであるため、
各プロット○が離散的なものとなっている。
【0029】曲げ振動の周波数とその周波数における2
点間の位相差の関係は、ハンマー60による打撃点から
直接に伝播する進行波のみによれば、滑らかに連続的な
変化を示す関係となるものである。ところが、この図に
示す低周波部分には、周波数とその周波数における2点
間の位相差の関係に、曲率が不連続に変化する変曲点C
が形成されている。すなわち、この変曲点Cは、進行波
のみからなる低周波領域Aと、進行波にケーブル10端
部からの反射波が混入した高周波領域Bとの境界をなす
ものであるといえる。
【0030】したがって、この変曲点Cより低周波側の
周波数成分を用いれば、ケーブル10端部からの反射波
の影響を受けていない、進行波のみからなる曲げ振動の
位相差を抽出することができる。
【0031】次に、このようにして得られた2点間の位
相差から、構造物の曲げ剛性EIを算出する過程につい
て説明する。この算出過程は、曲げ振動の所定の周波数
fおよびその周波数における位相差Gと、構造物の曲げ
剛性EIとの間に成り立つ関係を用いるものである。そ
こで、この関係を導出する過程から説明する。
【0032】図1におけるケーブル10のような1次元
はりで表される構造物におけるたわみwに関する運動方
程式は、一般に次式で表される。
【0033】
【数1】
【0034】ただし、wは構造物のたわみ変位、EIは
曲げ剛性、Tは張力(軸力)、ρは密度、Aは断面積を
表している。
【0035】この構造物のたわみ変位w(x,t)を、
次式で示すように、モードW(x)と時間の関数exp
(jωt)との積として考える。
【0036】
【数2】 w(x,t)=W(x)exp(jωt) …(2) この式(2)を式(1)に代入すれば、次式が得られ
る。
【0037】
【数3】
【0038】ここで、この式(3)の一般解を次のよう
に仮定する。
【0039】
【数4】W=C・exp(sx) …(4) この式(4)を式(3)に代入すれば、次の特性方程式
が得られる。
【0040】
【数5】EIs4−Ts2−ρAω2=0 …(5) そして、式(5)を解くことにより、以下の4つの解が
得られる。
【0041】
【数6】s=±jα,±β …(6) ただし、
【0042】
【数7】
【0043】
【数8】
【0044】以上から、ひずみモードWの一般解は次式
で表される。
【0045】
【数9】
【0046】ここで、この式(9)右辺の4項のうち、
第1項および第2項は、周期関数となっていることから
も分かるように、構造物に生じる曲げ振動の進行波の影
響を表すものであり、第3項および第4項は、非周期関
数であって構造物両端部分の支持状態(境界条件)の影
響を表すものとなっている。
【0047】そこで、進行波の影響を表す第1項および
第2項に着目すれば、これらの項はこの構造物がx方向
の距離2π/αごとに同じ振動状態をとることを示して
いる。すなわち、この距離2π/αは角振動数ωの曲げ
波の波長であって、この曲げ波は、この距離2π/αを
この波の周期2π/ωで進行(伝播)する。したがっ
て、この角振動数ωの曲げ波の伝播速度cは、次式で表
される。
【0048】
【数10】
【0049】振動センサ21,22のセンサ間距離をL
とすれば、伝播速度cの曲げ振動はこの距離Lを進行す
るために、伝播時間L/cを要する。一方、この伝播時
間L/cの間にこの曲げ波の位相は角振動数ωで進むた
め、振動センサ21,22によって検出されるこの角振
動数ωの曲げ振動の位相差G[rad]は、次式で表さ
れる。
【0050】
【数11】G=(L/c)・ω …(11) この式(11)に式(10)を代入してcを消去し、ω
=2πfの関係から角振動数ωを周波数fに変換するこ
とにより、周波数fおよび位相差Gと構造物の曲げ剛性
EIについて次式の関係式が得られる。
【0051】
【数12】
【0052】この関係式(12)は、曲げ振動の周波数
fの2乗値f2が、位相差Gの2乗値G2の2次関数とな
っているものとして見ることができる。このことは、上
述した曲げ振動の周波数fと位相差Gとの関係において
変曲点を見いだす際における、曲げ振動の進行波のみに
よれば、曲げ振動の周波数fと位相差Gとの関係が滑ら
かに連続したものとなることの根拠ともなっている。
【0053】また、変曲点を見いだす手段としては、こ
の関係式(12)の形に着目して、周波数fまたは位相
差Gの2乗値f2、G2を用いたグラフを用いてもよい。
【0054】図6に、縦軸に位相差Gの2乗値G2をと
って、曲げ振動の周波数fと位相差Gとの関係を表した
グラフを示す。
【0055】このグラフは、図5とは異なる条件のもと
に描かれたものであるが、このようなグラフからも、曲
げ振動の周波数fと位相差Gとの関係には明かな変曲点
Cを見いだすことができ、この変曲点Cを境にして進行
波のみの低周波領域Aと反射波の影響が含まれる高周波
領域Bとを見極めることができる。
【0056】さらに、縦軸および横軸に周波数fの2乗
値f2および位相差Gの2乗値G2をとって、進行波のみ
からなる低周波領域が2次曲線となるようなグラフを描
いて変曲点を見いだしてもよく、また当然に、このよう
な低周波領域Aの認定は、実際にグラフを描くことな
く、コンピュータ内の計算において行ってもよい。
【0057】本発明にかかる構造物の曲げ剛性測定方法
は、上記関係式(12)を用いて、振動センサ21,2
2位置の位相差Gから構造物の曲げ剛性EIを算出する
ものである。
【0058】ところが、この式(12)は、曲げ振動の
周波数f、位相差Gおよび構造物の曲げ剛性EIに加え
て、構造物に作用する張力(軸力)T、密度ρ、断面積
Aおよびセンサ間距離Lをもパラメータとする関係式と
なっている。これらのパラメータのうち、構造物の密度
ρ、断面積Aおよびセンサ間距離Lは、構造物の材質
や、外部からの測定によって比較的容易に得られるた
め、こうして得られる値を用いることができるが、構造
物に作用する張力(軸力)Tは必ずしも既知でない場合
がある。
【0059】そこで、以下においては、張力Tが既知で
ある場合、未知である場合に分けて、それぞれの場合の
具体的な算出手順を説明する。
【0060】 張力Tが既知の値である場合 張力Tが既知の値であれば、式(12)の未知数は曲げ
剛性EIの唯一つだけとなる。したがって、上述のよう
にして得られた2点間の進行波を表す周波数領域(図
5、図6のAの部分)のうちから、1つの周波数fとそ
の周波数における位相差Gを選び、この値を上記関係式
(12)に代入すれば、曲げ剛性EIを算出することが
できる。
【0061】しかし、上記位相差Gは測定値であり必然
的に誤差を含むものであるため、より高い精度をもって
構造物の曲げ剛性EIを得るには、進行波を表す低周波
領域Aのうちの、複数の周波数fとその周波数における
位相差Gを用いて、これらを上記関係式(12)に最も
適合させる曲げ剛性EIを求めることが望ましい。
【0062】具体的には、上記関係式(12)に最小2
乗法を適用すれば、複数の周波数fおよびその周波数に
おける位相差Gを用いて、構造物の曲げ剛性EIを高い
精度で算出することができる。
【0063】 張力が0と仮定できる場合 構造物に張力Tが作用していない場合、あるいは張力T
が非常に小さく0と仮定できる場合には、上記式(1
2)は、T=0を代入することにより、次式のように簡
単になる。
【0064】
【数13】
【0065】したがって、この場合には、2点間の進行
波を表す周波数領域のうち、1つの周波数fとその周波
数における位相差Gを上記式(13)に代入すれば、曲
げ剛性EIを算出することができる。また、より高い精
度をもって曲げ剛性EIを得るには、上述したの場合
と同様に、この式(13)に最小2乗法を適用して、複
数の周波数fおよびその周波数における位相差Gを用い
て曲げ剛性EIを求めればよい。
【0066】 張力が未知の値である場合 張力Tが未知の値である場合、関係式(12)は、曲げ
剛性EIと張力Tの2つが未知数となる。したがって、
この場合には、2点間の進行波を表す周波数領域のうち
の、複数の周波数fとその周波数における位相差Gが上
記関係式(12)に最も適合する曲げ剛性EIを張力T
とともに求めればよい。
【0067】具体的には、関係式(12)に最小2乗法
を適用し、複数の周波数fおよびその周波数における位
相差Gを用いることによって、構造物の曲げ剛性EI
を、張力Tとともに算出することができる。
【0068】
【実施例】次に、本発明にかかる測定方法の精度を実験
で検証する。
【0069】この実験には、測定対象の構造物として、
曲げ剛性EIの理論値が13.105Nm2である直径
6mmの丸棒材を用い、上記関係式(12)の各パラメ
ータのうち、センサ間距離L、張力(軸力)Tの異なる
3つの条件を設定して、これら異なる条件のもとでの算
出される曲げ剛性EIを、上記理論値と比較することに
より、本発明による曲げ剛性EIの測定精度について検
証した。
【0070】この測定においては、2つの振動センサに
よって検出された曲げ振動を周波数分析して、周波数と
位相差の関係における変曲点より低周波側の成分を進行
波のみからなる振動成分として抽出する上述した方法を
用いて、複数の周波数とその周波数における位相差を、
上記関係式(12)に最も適合させる構造物の曲げ剛性
EIを最小2乗法によって算出した。
【0071】表1に、これら3つの検証実験における測
定結果を、実験条件とともに示す。
【0072】
【表1】
【0073】この表1に示すように、本発明にかかる曲
げ剛性の測定方法によれば、種々の条件のもとで、構造
物の曲げ剛性EIが数%の誤差の範囲内でほぼ正確に測
定できており、本発明にかかる曲げ剛性の測定方法が高
い測定精度を備えていることが分かる。
【0074】
【発明の効果】以上のように、本発明にかかる構造物の
曲げ剛性の測定方法によれば、構造物上の2点間を伝播
する曲げ振動を検出して周波数分析を行い、これら2点
間を伝播する曲げ振動の位相差から構造物の曲げ剛性を
測定するものであるため、構造物の支持状態を表す境界
条件の影響を受けることなく、かつ、すでに構築された
構造物に対しても簡便にその曲げ剛性を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる測定方法を採用する装置システ
ムの一実施形態を示す概略図である。
【図2】振動センサ21,22によって検出された振動
波形の一例を示すグラフである。
【図3】2点間の位相差と周波数の関係を、位相差を±
180度の範囲で表したグラフである。
【図4】2点間の位相差と周波数の関係を、位相差を連
続的な絶対量で表したグラフである。
【図5】2点間の位相差と周波数の関係のうち、低周波
部分を拡大して示したグラフである。
【図6】2点間の位相差の2乗値と周波数の関係を示す
グラフである。
【符号の説明】
10 ケーブル 21,22 振動センサ 30 アンプ 40 高速フーリエ変換器(FFT) 50 パソコン

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 構造物に衝撃を与え、この衝撃により生
    じる構造物の曲げ振動をその曲げ振動が伝播する一方向
    上の互いに異なる2点で検出して、これら2点における
    曲げ振動を周波数分析することにより、少なくとも1の
    周波数成分についてのこれら2点間の位相差を得て、曲
    げ振動の周波数およびその周波数における位相差と構造
    物の曲げ剛性との間に成り立つ関係から、この構造物の
    曲げ剛性を算出することを特徴とする構造物の曲げ剛性
    測定方法。
  2. 【請求項2】 曲げ剛性の算出に用いる前記2点間の位
    相差として、構造物に衝撃を与えてから所定時間が経過
    するまでの間に検出される曲げ振動の位相差であって、
    その時間内には構造物端部からの反射波の影響を受けな
    い低周波成分の位相差を用いる請求項1記載の構造物の
    曲げ剛性測定方法。
  3. 【請求項3】 前記2点において検出される曲げ振動か
    ら、複数の周波数成分についての前記2点間の位相差を
    得て、こうして得られた複数の周波数とその周波数にお
    ける位相差との関係の変曲点を求め、この変曲点より低
    周波側の周波数成分を、前記低周波成分として用いる請
    求項2記載の構造物の曲げ剛性測定方法。
  4. 【請求項4】 前記2点において検出される曲げ振動か
    ら複数の周波数成分についての前記2点間の位相差を得
    て、こうして得られた複数の周波数成分についての前記
    2点間の位相差を、曲げ剛性の算出に用いる前記2点間
    の位相差として用い、曲げ振動の周波数およびその周波
    数における位相差と構造物の曲げ剛性および張力との間
    に成り立つ関係から、構造物に作用する張力とともに、
    構造物の曲げ剛性を算出する請求項1〜3のいずれかに
    記載の構造物の曲げ剛性測定方法。
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