JP2000027776A - スクロ―ル型流体機械 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 スクロール型流体機械において、回転シャフ
トの回転数に関係なく、スラスト部に適量の潤滑油が供
給されるようにすることを課題とする。 【解決手段】 固定スクロールと互に噛み合わせられる
旋回スクロールを、フレームに形成されたスラスト部に
摺動可能に支持し、同旋回スクロールを駆動する回転シ
ャフトにその回転によって油溜り部から潤滑油を吸い上
げ吐出する油ポンプを備え、その吐出された潤滑油を上
記スラスト部に穿設された給油溝に供給し、余剰の潤滑
油を上記フレームに穿設された排油通路から排出して上
記油溜り部へ戻すスクロール型流体機械において、上記
排油通路に、弁体の上流側と下流側の圧力差が所定値を
上回った時開放される開閉弁装置を設けたことを特徴と
するスクロール型流体機械、等。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、圧縮機・膨張機等
として用いられるスクロール型流体機械に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】図５は従来のスクロール型流体機械の縦
断面図、図６は図５のＡ−Ａ断面の部分図である。図に
おいて、密閉ハウジング８の内部にはその上部にスクロ
ール型圧縮機構Ｃが、下部に電動モータＭが配設され、
これらは回転シャフト５を介して互いに連動連結されて
いる。電動モータＭはロータＭａとステータＭｂとから
なり、ロータＭａは回転シャフト５に固定され、ステー
タＭｂは密閉ハウジング８に固定されている。スクロー
ル型圧縮機構Ｃは固定スクロール１、旋回スクロール
２、旋回スクロール２の公転旋回運動を許容するが、そ
の自転を阻止するオルダムリンク等の自転阻止機構３、
固定スクロール１及び電動モータＭが締結されるフレー
ム６、回転シャフト５を軸支する上部軸受７１及び下部
軸受７２等からなる。

【０００３】固定スクロール１は端板１１とその内面に
立設された渦巻き状ラップ１２とを備え、この端板１１
の中央部には吐出ポート１３が設けられている。旋回ス
クロール２は端板２１とこの内面に立設された渦巻き状
ラップ２２とを備え、この端板２１の外面に立設された
ボス２３内にドライブブッシュ５４が旋回軸受７３を介
して回転自在に嵌装され、このドライブブッシュ５４に
穿設された孔５５内に回転シャフト５の上端から突出す
る偏心ピン５３が回転自在に嵌合されている。固定スク
ロール１と旋回スクロール２とを相互に所定距離だけ偏
心させ、かつ、１８０度だけ角度をずらせて噛み合わせ
ることによって複数個の密閉空間２４が形成されてい
る。

【０００４】フレーム６は密閉ハウジング８に固定され
ており、このフレーム６の上面に形成された円環状のス
ラスト部６５は旋回スクロール２の外面と摺接して旋回
スクロール２を支持している。このスラスト部６５には
図７に示すように放射状に伸びる２本の給油溝６６が穿
設されている。この図７の形の給油溝を第１の例とし後
述の他の形のものと区別する。回転シャフト５の内下部
には遠心式の油ポンプ５１が備えられており、回転シャ
フト５の回転数の増加に伴ってその吐出圧力が増大する
ようになっている。

【０００５】電動モータＭを駆動することによって回転
シャフト５、偏心ピン５３、ドライブブッシュ５４、ボ
ス２３等からなる公転旋回機構を介して旋回スクロール
２が駆動され、旋回スクロール２は自転阻止機構３によ
って自転を阻止されながら公転旋回半径の円軌道上を公
転旋回運動する。すると、ガスが吸入管８２を経て密閉
ハウジング８内に入り、このガスは通路８５を通り吸入
通路１５を経て密閉空間２４内に吸入される。そして、
旋回スクロール２の公転旋回運動により密閉空間２４の
容積が減少するのに伴って、圧縮されながら中央部に至
り、吐出ポート１３より逆止弁１７を押し開いて吐出キ
ャビティ１４内に入り、ここから吐出管８３を経て外部
に吐出される。

【０００６】これと同時に、密閉ハウジング８の内底部
の油溜り８１に貯留された潤滑油は油ポンプ５１によっ
て吸い上げられ、この回転シャフト５に穿設された給油
孔５２を通って上部軸受７１、偏心ピン５３、旋回軸受
７３に供給され、これらを潤滑する。偏心ピン５３及び
旋回軸受７３を潤滑し又は穴５５内を流過した潤滑油は
フレーム６の上面中央に形成されている室６１に入り、
一部の潤滑油は室６１からスラスト部６５に穿設された
給油溝６６内にその内側端から入り、この中を放射方向
に流れる過程で旋回スクロール２の公転旋回運動によ
り、スラスト部６５に引き出されてスラスト部６５を潤
滑する。そして、スラスト部６５を潤滑し又は給油溝６
６を流過した潤滑油はスラスト部６５の外周縁から流出
して自転阻止機構３を潤滑する。一方、室６１に入った
余剰の潤滑油は排油通路６２を通って排出され油溜り８
１に戻る。

【０００７】図７は図５のＡ−Ａ断面の第２の例の部分
図である。この例は放射状に伸びる給油溝６６が４本設
けられている例である。図８は図５のＡ−Ａ断面の第３
の例の部分図である。この例は円環状の給油溝６６Ｘが
穿設され、内周縁に位置する流入口６６ａと外周縁に位
置する排出口６６ｂにそれぞれ通じている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】上記従来のスクロール
型流体機械においては、インバータ等で電動モータＭを
介して回転シャフト５の回転速度を増減コントロールす
る場合、これに伴って油ポンプ５１の吐出出力が変動す
る。このため、回転シャフト５の低速回転時にスラスト
部６５に適量の潤滑油を供給できるようにこのスラスト
部６５や排油通路等６２の流路抵抗を設定しておくと、
高速回転時には油ポンプ５１の吐出圧力が上昇するため
スラスト部６５に潤滑油が過剰に供給され、この結果、
多量の潤滑油の飛沫が通路８５及び吸入通路１５を流れ
るガスに伴なわれて密閉空間２４に吸入され易く油上が
り量（吐出ガスに含まれる潤滑油の量をいう）が増大す
る不具合があった。

【０００９】一方、回転シャフト５の高速回転時に適量
給油できるようにスラスト部６５等の流路抵抗を設定し
ておくと、低速回転時にはスラスト部６５に十分な量の
潤滑油を供給できず潤滑不良を招く。

【００１０】本発明は上記従来技術の欠点を解消し、回
転シャフトの回転数に関係なく、スラスト部に適量の潤
滑油が供給されるようにしようとするものである。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
したものであって、固定スクロールと互に噛み合わせら
れる旋回スクロールを、フレームに形成されたスラスト
部に摺動可能に支持し、同旋回スクロールを駆動する回
転シャフトにその回転によって油溜り部から潤滑油を吸
い上げ吐出する油ポンプを備え、その吐出された潤滑油
を上記スラスト部に穿設された給油溝に供給し、余剰の
潤滑油を上記フレームに穿設された排油通路から排出し
て上記油溜り部へ戻すスクロール型流体機械において、
次の特徴を有するスクロール型流体機械に関するもので
ある。

【００１２】（１）上記排油通路に、弁体の上流側と下
流側の圧力差が所定値を上回った時開放される開閉弁装
置を設けたこと。 （２）上記スラスト部の給油溝は円環上に穿設されたも
のとし、上記排油通路に、弁体の上流側と下流側の圧力
差が所定値を上回った時開放される開閉弁装置を設け、
かつ、上記排油通路内の上記開閉弁装置の近傍上流側と
上記スラスト部の円環状の給油溝の流入口とを連通する
通孔を設けたこと。

【００１３】上記の（１）の開閉弁装置を設けたものに
ついては、回転シャフトが高速回転で駆動されて油ポン
プの吐出圧力が高く弁体の上流側と下流側との圧力差が
所定値を上回った場合には、開閉弁は排油通路を開放し
て潤滑油を排出し、これによりスラスト部への給油量を
低下させる。逆に、回転シャフトが低速回転で駆動され
て油ポンプの吐出圧力が低く弁体の上流側と下流側との
圧力差が所定値を下回った場合には、開閉弁は排油通路
を閉止し、これによりスラスト部への給油量を増加させ
る。

【００１４】また、上記の（２）の開閉弁装置と通孔を
設けたものについては、潤滑油は排油通路の開閉弁装置
の近傍上流側から通孔を通りスラスト部の円環状の給油
溝の流入口に供給される。回転シャフトが低速回転で駆
動されて油ポンプの吐出圧力が低く排油通路内が所定圧
力を下回っている間にあっては、開閉弁は閉止されてい
るため給油溝の流入口の圧力は排油通路内とほぼ同じ圧
力に維持される。回転数が増すにつれて圧力は所定圧力
まで上昇する。回転シャフトが高速回転で駆動されて油
ポンプの吐出圧力が高くなると、開閉弁が開放されて潤
滑油の一部が排出されることにより排油通路の圧力が所
定圧力まで降下する。このため、排油通路の開閉弁装置
の近傍上流側から通孔を通りその潤滑油が供給される給
油溝の流入口の圧力も所定圧力に維持される。

【００１５】

【発明の実施の形態】図１は本発明の実施の第１形態に
係るスクロール型流体機械の部分的縦断面図である。こ
れは従来技術の第２の例（図５，図７）を改良したもの
であり、従来技術と同じ部材には同じ符号が付してあ
る。図において、９０は排油通路６２の出口に取付けら
れている開閉弁装置である。これは次に述べる部材９１
〜９４からなっている。９１は取付用のボルト、９２は
同ボルトによってフレーム６に固定されているバネ受
け、９３は排油通路６２を開閉する弁体、９４はバネ受
け９２と弁体９３との間に介装され弁体９３を押圧する
コイルスプリングである。上記以外の部分は従来技術と
同じである。

【００１６】弁体９３には、同弁体の上流側すなわち室
６１内の圧力及び同弁体の下流側すなわち密閉ハウジン
グ８内の圧力との圧力差に基づく力と、コイルスプリン
グ９４に基づく力とによって荷重が負荷されるようにな
っている。そして、この開閉弁装置９０は弁体９３の上
流側の圧力と下流側の圧力との圧力差が所定値を上回っ
たとき排油通路６２を開放するとともにこの所定値を下
回ったとき排油通路６２を閉鎖するようにその作動条件
が設定されている。ここに、所定の圧力差とはスラスト
部６５に適量の潤滑油を供給するために必要な圧力差で
ある。

【００１７】本装置において、回転シャフト５が高速回
転で駆動されて油ポンプ５１の吐出圧力が高くなり弁体
の上流側と下流側との圧力差が所定値を上回った場合に
は、開閉弁装置９０は排油通路６２を開放して潤滑油を
排出し、これによりスラスト部６５への給油量を低下さ
せる。一方、回転シャフト５が低速回転で駆動されて油
ポンプ５１の吐出圧力が低くなり弁体の上流側と下流側
との圧力差が所定値を下回った場合には、開閉弁装置９
０は排油通路６２を閉止し、これによりスラスト部６５
への給油量を増加させる。

【００１８】本実施の第１形態によれば、回転シャフト
の回転数の変化に伴う油ポンプの吐出圧力の増減によっ
て、弁体の上流側と下流側との圧力差が所定値を上回っ
た場合、または下回った場合に開閉弁装置を介して排油
通路を開閉するようにしたので、回転シャフトの高速回
転時及び低速回転時にもスラスト部に適量の潤滑油を供
給することができ、この結果、スラスト部の潤滑不良を
回避できるとともに油上がり量を低減でき信頼性の高い
圧縮機を提供することができる。

【００１９】図２は本発明の実施の第２形態に係るスク
ロール型流体機械の部分的縦断面図、図３は同実施の形
態のスラスト部の平面図である。これは従来技術の第３
の例（図５，図８）を改良したものであり、従来技術と
同じ部材には同じ符号が付してある。図において、排油
通路６２の出口には前述の実施の第１形態におけるもの
と同一型式の開閉弁装置９０が取付けられている。すな
わち、開閉弁装置９０はフレーム６にボルト９１によっ
て固定されたバネ受け９２と排油通路６２を開閉する弁
体９３及びバネ受け９２と弁体９３との間に介装され弁
体９３を押圧するコイルスプリング９４とからなり、弁
体９３には、室６１内の圧力と密閉ハウジング８内空間
の圧力との差に基づく力と、コイルスプリング９４に基
づく力とによって荷重を負荷するようになっている。そ
して、弁体の上流側と下流側の圧力差が判定値を上回っ
たとき開放するとともに、所定値を下回ったとき閉止す
るように設定されている。

【００２０】また、スラスト部６５には円環状の給油溝
６６Ｘが穿設されている。この給油溝６６Ｘの流入口６
６ａはスラスト部６５内に位置し、フレーム６に穿設さ
れた通孔６７を介して排油通路６２に連通している。潤
滑油は排油通路６２から通孔６７を通って流入口６６ａ
より給油溝６６Ｘに供給されるようになっている。この
部分の構造は従来技術（図８）とは異っている。ここ
に、排油通路６２側の通孔６７の一端を開閉弁装置９０
の近傍上流側に配置し、流入口６６ａを極力開閉弁装置
９０に近づけることによって、流入口６６ａの圧力を開
閉弁装置９０の位置の圧力と同等にすることが望まし
い。他の構成は図５及び図８において示した従来のもの
と同様である。

【００２１】本装置において、スラスト部６５の流入口
６６ａの圧力Ｐは回転シャフト５の回転数Ｒに対して図
４に示すように変化する。即ち、回転シャフト５が低速
回転で駆動されて油ポンプ５１の吐出圧力が低く排油通
路６２内が所定圧力Ｐｏを下回っている間にあっては、
開閉弁装置９０は閉止されているため流入口６６ａの圧
力Ｐは排油通路６２内とほぼ同じ圧力に維持され、回転
数Ｒが増すにつれて所定圧力Ｐｏまで上昇する。そし
て、この低速回転時における流入口６６ａの圧力Ｐの下
でスラスト部６５に適量の潤滑油を供給できるようにこ
のスラスト部６５や排油通路６２等の流路抵抗を設定し
ておく。

【００２２】一方、回転シャフト５が高速回転で駆動さ
れて油ポンプ５１の吐出圧力が高くなり排油通路６２内
が所定圧力Ｐｏを上回ると、開閉弁装置９０が開放され
て潤滑油の一部が排出されることによりこの装置の圧力
が所定圧力Ｐｏまで降下する。このため、流入口６６ａ
の圧力Ｐはほぼ所定圧力Ｐｏに維持される。かくして、
回転シャフト５の回転数が変更されて油ポンプ５１の吐
出圧力が上昇し又は降下した場合にも流入口６６ａの圧
力Ｐは所定圧力Ｐｏ以下に維持調整される。従って、回
転シャフト５の低速回転時及び高速回転時においてもス
ラスト部６５の給油溝６６Ｘには適量の潤滑油が供給さ
れる。

【００２３】本実施の第２形態によれば、排油通路にこ
の排油通路内が所定圧力を上回ったとき開放する開閉弁
装置を設け、この開閉弁装置の近傍に位置した排油通路
とスラスト部内に位置した流入口とを連通する通孔を設
けたため、回転シャフトの回転数の変化に伴って油ポン
プの吐出圧力が上昇し又は降下した場合にもスラスト部
の流入口圧力を所定圧力以下に維持調整することができ
るので、回転シャフトの低速回転時及び高速回転時にお
いてもスラスト部に適量の潤滑油を供給することができ
る。この結果、潤滑不良を回避できるとともに油上がり
量を低減でき、信頼性の高い圧縮機を提供することがで
きる。

【００２４】

【発明の効果】本発明のスクロール型流体機械において
は、排油通路に、弁体の上流側と下流側の圧力差が所定
値を上回った時開放される開閉弁装置を設けてあり、あ
るいは排油通路に、弁体の上流側と下流側の圧力差が所
定値を上回った時開放される開閉弁装置を設けると共
に、上記排油通路内の上記開閉弁装置の近傍上流側とス
ラスト部の円環状の給油溝の流入口とを連通する通孔を
設けてあるので、回転シャフトの回転数に関係なく、ス
ラスト部に適量の潤滑油を供給することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の第１形態に係るスクロール型流
体機械の部分的縦断面図。

【図２】本発明の実施の第２形態に係るスクロール型流
体機械の部分的縦断面図。

【図３】実施の第２形態のスラスト部の平面図。

【図４】実施の第２形態の回転シャフトの回転数に対す
る圧力特性を示す図。

【図５】従来のスクロール型流体機械の縦断面図。

【図６】同流体機械のスラスト部の第１の例の平面図。

【図７】同流体機械のスラスト部の第２の例の平面図。

【図８】同流体機械のスラスト部の第３の例の平面図。

【符号の説明】

１ 固定スクロール ２ 旋回スクロール ５ 回転シャフト ６ フレーム ８ 密閉ハウジング ５１ 油ポンプ ５２ 給油孔 ６１ 室 ６２ 排油通路 ６５ スラスト部 ６６ 放射状の給油溝 ６６Ｘ 円環状の給油溝 ６６ａ 流入口 ６６ｂ 排出口 ６７ 通孔 ９０ 開閉弁装置 ９２ バネ受け ９３ 弁体 ９４ コイルスプリング

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 固定スクロールと互に噛み合わせられる
   旋回スクロールを、フレームに形成されたスラスト部に
   摺動可能に支持し、同旋回スクロールを駆動する回転シ
   ャフトにその回転によって油溜り部から潤滑油を吸い上
   げ吐出する油ポンプを備え、その吐出された潤滑油を上
   記スラスト部に穿設された給油溝に供給し、余剰の潤滑
   油を上記フレームに穿設された排油通路から排出して上
   記油溜り部へ戻すスクロール型流体機械において、上記
   排油通路に、弁体の上流側と下流側の圧力差が所定値を
   上回った時開放される開閉弁装置を設けたことを特徴と
   するスクロール型流体機械。
2. 【請求項２】 固定スクロールと互に噛み合わせられる
   旋回スクロールを、フレームに形成されたスラスト部に
   摺動可能に支持し、同旋回スクロールを駆動する回転シ
   ャフトにその回転によって油溜り部から潤滑油を吸い上
   げ吐出する油ポンプを備え、その吐出された潤滑油を上
   記スラスト部に穿設された円環状の給油溝に供給し、余
   剰の潤滑油を上記フレームに穿設された排油通路から排
   出して上記油溜り部へ戻すスクロール型流体機械におい
   て、上記排油通路に、弁体の上流側と下流側の圧力差が
   所定値を上回った時開放される開閉弁装置を設け、か
   つ、上記スラスト部の円環状の給油溝の流入口に開口
   し、上記排油通路内の上記開閉弁装置の上流側と上記円
   環状の給油溝とを連通する通孔を同開閉弁装置の近傍に
   位置して設けたことを特徴とするスクロール型流体機
   械。