WO2023090462A1

WO2023090462A1 - 針先プロテクタ

Info

Publication number: WO2023090462A1
Application number: PCT/JP2022/043255
Authority: WO
Inventors: 慎吾阪本
Original assignee: ニプロ株式会社
Priority date: 2021-11-22
Filing date: 2022-11-22
Publication date: 2023-05-25

Abstract

【課題】穿刺針に対する側方への位置ずれを有効に抑えることができる、新規な構造の針先プロテクタを提供する。【解決手段】穿刺針２６に装着されて針先３０側に移動することで針先３０の露出を防ぐ針先プロテクタ１０であって、穿刺針２６の針元側に位置する底部４０からそれぞれ穿刺針２６の針先３０側に延びる第１側板部４２および第２側板部４４が、穿刺針２６を両側から挟んで相互に対向して設けられていると共に、第１側板部４２および第２側板部４４には、板幅方向で互いに反対側となる各一方の幅方向端縁部において対向方向の内方に向かって突出する側方カバー片６２，８０が形成されており、穿刺針２６への装着状態で第１側板部４２と第２側板部４４の各側方カバー片６２，８０の間に穿刺針２６が位置するようになっている。

Description

針先プロテクタ

　本発明は、使用後の穿刺針の針先を保護する針先プロテクタに関するものである。

　従来から、穿刺針に装着されて針先側への移動により使用後の穿刺針の針先を保護する針先プロテクタが知られている。かかる針先プロテクタは、例えば、米国特許第４９２９２４１号明細書（特許文献１）に示されているように、穿刺針の挿通孔が設けられた底部から針先側に延びる一組の側板部を備えており、それら一組の側板部の先端部分が相互に接近することで、針先を覆う針先覆い部が構成されるようになっている。

米国特許第４９２９２４１号明細書

　ところで、針先プロテクタでは、穿刺針に対する側方への位置ずれを抑えることが必要になる。例えば穿刺針への装着状態や穿刺針の引抜操作時には、針先プロテクタの穿刺針に対する側方への位置ずれを抑えることで、針先プロテクタの一組の側板部が穿刺針と略平行に延びる状態を保持して穿刺針の引抜操作の安定化が図られ得る。また、穿刺針の引抜後には、針先プロテクタの穿刺針に対する側方への位置ずれを抑えることで、針先プロテクタに収容された穿刺針の針先の再露出が防止され得る。

　穿刺針の引抜後における針先プロテクタの穿刺針に対する側方への位置ずれを抑えるためには、針先プロテクタにおける一方の側板部において、幅方向の両側端縁に一対の側壁を設け、かかる一対の側壁部間に穿刺針を収容することが考えられる。しかし、穿刺針の外径は様々であり、穿刺針が細くなると穿刺針と側壁とが離れてしまい、ガタツキが生じることで針先が外部に露出してしまう事態が懸念される。

　また、従来構造の針先プロテクタでは、例えば、針先が一方の側板部側の針先カバー部で覆われた状態において針先が針先カバー部に沿って他方の側板部側へ移動しようとする場合に、針先が他方の側板部を押し開いて露出してしまうおそれがあった。

　本発明の解決課題は、穿刺針に対する側方への位置ずれと針先による押し開きとの少なくとも一方を防ぐことによって針先の再露出を防ぐことができる、新規な構造の針先プロテクタを提供することにある。

　以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識および採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。

　第１の態様は、穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部と第２側板部が、該穿刺針を両側から挟んで相互に対向して設けられていると共に、該第１側板部および該第２側板部には、板幅方向で互いに反対側となる各一方の幅方向端縁部において対向方向の内方に向かって突出する側方カバー片が形成されており、該穿刺針への装着状態で該第１側板部と該第２側板部の各該側方カバー片の間に該穿刺針が位置するようになっているものである。

　本態様に従う構造とされた針先プロテクタは、第１側板部および第２側板部に各１つの側方カバー片が形成されており、それら側方カバー片が側板部の板幅方向で互いに反対側となる各一方の幅方向端縁部に設けられている。それゆえ、２つの側方カバー片の距離を小さく設定して、針先の移動を抑えることで針先保護の安定化を図りつつ、各一方の側方カバー片を有する第１，第２側板部を容易に形成することができる。

　第２の態様は、第１の態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記第１側板部および前記第２側板部における各板幅方向の中心が相互に各前記側方カバー片とは反対側にずれているものである。

　本態様に従う構造とされた針先プロテクタによれば、第１，第２側板部における各板幅方向の中心を側方カバー片と反対側にずらせて設定したことで、第１，第２側板部の板幅寸法ひいては強度等を確保しつつ、側方カバー片を穿刺針へ十分に近づけて形成することができる。その結果、例えば穿刺針の接触によって作用する外力に対する針先プロテクタの変形が抑えられると共に、両方の側方カバー片間で穿刺針の側方への移動が確実に規制されて、針先保護状態の安定性および信頼性の向上が達成される。

　第３の態様は、第１又は第２の態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記第１側板部と前記第２側板部には、前記側方カバー片と板幅方向で反対側に位置する各一方の幅方向端縁部において対向方向の内方に向かって突出する突出片が形成されており、該突出片が該側方カバー片の外方に位置しているものである。

　第１及び第２側板部において側方カバー片とは反対側の幅方向端縁部が平板状に広がっていると、そこを手指等で押すことで針先の保護状態が容易に解除されるおそれがある。本態様に従う構造とされた針先プロテクタによれば、第１，第２側板部における側方カバー片とは反対側の幅方向端縁部に突出片が形成されていることにより、第１，第２側板部の幅方向端縁部を手指等で押し難くなっており、針先の保護状態が解除されるリスクを低減することができる。

　第４の態様は、第１～第３の何れか１つの態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記底部が前記穿刺針の挿通孔を有する平板形状とされて、該底部の両側辺部から立ち上がるようにして前記第１側板部と前記第２側板部が一体形成されていると共に、前記側方カバー片が該第１側板部と該第２側板部における基端側から２．５ｍｍ以上離れて形成されていることにより、該底部上には、該第１側板部と該第２側板部の基端部分の対向面間において板幅方向両側に開放された成形用スペースが設けられているものである。

　本態様に従う構造とされた針先プロテクタによれば、成形用スペースを設けたことにより、成形用スペースに挿入される治具（金型）によって底部を支持して、第１側板部と第２側板部の立ち上げなどのプレス加工を効率良く行うことが可能になり、針先プロテクタの生産性の向上等が図られ得る。

　第５の態様は、第１～第４の何れか１つの態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記第１側板部と前記第２側板部が相互に接近して前記針先の露出が防がれた針先保護状態において、該第１側板部と該第２側板部の各前記側方カバー片の突出先端が該第１側板部と該第２側板部の各一方に押し当てられているものである。

　本態様に従う構造とされた針先プロテクタによれば、第１側板部と第２側板部が相互に接近した針先保護状態において、第１側板部と第２側板部を相互に離隔する方向へ変位させるために必要な力がより大きくなることから、針先保護状態が解除され難くなる。

　第６の態様は、穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部と第２側板部が、該穿刺針を両側から挟んで相互に対向して設けられていると共に、該第１側板部と該第２側板部の少なくとも一方は、板幅方向の中央が該穿刺針の針軸に対して板幅方向にずれており、該穿刺針への接近側の幅方向端縁部において該第１側板部と該第２側板部との対向方向の内方に向かって突出する側方カバー片を備えているものである。

　本態様に従う構造とされた針先プロテクタによれば、第１側板部及び／又は第２側板部の板幅寸法を確保しながら、側方カバー片を穿刺針の側方に接近して位置させることができて、針先プロテクタの変形剛性の確保と、側方カバー片による穿刺針の針先の変位規制とが、両立して実現される。

　第７の態様は、穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部および第２側板部を備えており、該第１側板部と該第２側板部の少なくとも一方は、板幅方向の側端部に開口する切欠き状の凹状部を有すると共に、該凹状部において該第１側板部と該第２側板部との対向方向の内方に向かって突出する側方カバー片を備えているものである。

　本態様に従う構造とされた針先プロテクタによれば、第１，第２側板部の少なくとも一方の側端部に形成された凹状部に側方カバー片が設けられていることにより、側方カバー片を側板部の板幅方向の中央に近い位置に設けることができて、側方カバー片を穿刺針に接近させて配置し易くなる。それゆえ、穿刺針に対する針先プロテクタの側方への位置ずれが、側方カバー片によって効果的に防止される。

　凹状部よりも先端側では、針先プロテクタの幅寸法が大きく確保可能とされることから、先端側において針先プロテクタに必要な変形剛性等が確保されて、例えば針先保護状態が容易に解除され難くなることで、穿刺針の針先保護が安定して実現される。

　幅寸法が小さくなる凹状部の形成部分は、側方カバー片が設けられていることによって、側方カバー片による補強効果が発揮されて、針先プロテクタの強度の局所的な低下を抑制することができる。

　第８の態様は、穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部および第２側板部を備えており、該第１側板部と該第２側板部の少なくとも一方の先端側には、該穿刺針へ向けて突出する針先カバー部が設けられており、該針先カバー部の突出先端部には該針元側へ突出する針先制止部が設けられているものである。

　従来構造の針先プロテクタでは、例えば、針先が一方の側板部側の針先カバー部で覆われた状態において針先が針先カバー部に沿って他方の側板部側へ移動しようとする場合に、針先が他方の側板部を押し開いて露出してしまうおそれがあった。本態様に従う構造とされた針先プロテクタでは、針先が上記の如く他方の側板部側へ移動しようとする場合に、一方の側板部側の針先カバー部に設けられた針先制止部に針先が引っ掛かって、他方の側板部側への移動を制限されることから、針先が針先カバー部を外れて露出するのを防ぐことができる。

　第９の態様は、穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部と第２側板部が、該穿刺針を両側から挟んで相互に対向して設けられており、該第１側板部と該第２側板部の対向間に延び出した側方規制片が設けられており、該側方規制片には該穿刺針に向けて突出する規制突部が設けられているものである。

　本態様の針先プロテクタによれば、側方規制片の規制突部が穿刺針の側面に当接することによって、穿刺針の傾動が制限されて、針先が針先保護部を外れた側方に露出するのを防ぐことができる。特に、規制突部が、第１側板部と第２側板部の対向間に位置する側方規制片から穿刺針に接近する方向へ向けて突出して設けられていることにより、規制突部の突出先端を穿刺針に近づけることができて、穿刺針の傾動を小さな傾斜角度の段階で速やかに規制することができる。

　第１０の態様は、第９の態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記規制突部が前記側方規制片における前記針先側の端部に設けられているものである。

　本態様の針先プロテクタによれば、規制突部が針先の外部への露出を防ぐ壁として機能しやすく、針先が外部に露出する事態を低減することができる。また、穿刺針の傾動に際して側方への移動量が大きくなる針先に近い位置で規制突部が穿刺針に当接することから、穿刺針の傾斜角度が小さい傾動初期段階において穿刺針の傾動を防ぐことができる。

　第１１の態様は、第９又は第１０の態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記側方規制片が前記第１側板部又は前記第２側板部からそれら第１側板部と第２側板部との対向方向の内方に向かって突出しているものである。

　本態様の針先プロテクタによれば、例えば底部から側方規制片を延び出させる場合に比して、側方規制片を比較的に小さい延出長さで針先により近い位置まで延び出させることができ、製造を簡易化することができると共に、不良品が生じる率を低くすることが可能となる。

　第１２の態様は、穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐプレス成形品の針先プロテクタであって、前記穿刺針の針元側に位置する底部から曲げ加工により曲げられた第１側板部と第２側板部がそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びて対向して設けられており、該底部が該穿刺針の挿通孔を有する板形状とされて、該第１側板部と該第２側板部が該底部の両側辺部から立ち上がるように一体形成されており、該底部には該第１側板部及び該第２側板部の板幅方向で外方へ向けて突出する凸部が形成されているものである。

　本態様の針先プロテクタによれば、金属素板からプレスで切り出して針先プロテクタを形成する場合に、凸部以外の部分の切断面をバリ等が抑えられたスムーズな形状とすることができる。即ち、凸部以外の部分を切断した状態で第１，第２側板部や側方カバー片等を形成する曲げ加工を行った後、凸部を切断して針先プロテクタを得ることにより、曲げ加工による歪み等の影響が凸部以外の切断面に及びにくくすることができる。その結果、凸部以外の切断面の形状、寸法精度を上げることできる。また、バリ等が抑えられたスムーズな形状とすることができ、その後のバリ取りの工程を簡易化することができる。また、寸法や形状の精度が高い凸部以外の切断面を治具等で把持すれば、高精度な位置決めが可能になり、位置決め状態での加工精度の向上などが図られる。

　また、例えば、針先プロテクタの基端部が針先プロテクタを収容する針ハブの内周面と接触する際に、外周へ突出した凸部が針ハブに接触し易いことから、面取り等の後加工を凸部だけに施すことで、針先プロテクタの基部が接触することによる針ハブ内周面の損傷等を防ぐことができる。それゆえ、面取り等の後加工を底部の幅方向端面全体に施す場合に比して、後加工の作業を容易にすることができる。

　第１３の態様は、穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部と第２側板部が、該穿刺針を両側から挟んで相互に対向して設けられて、該第１側板部と該第２側板部の各先端部分は、相対的に接近することで該針先を覆う針先覆い部を構成するようになっており、該針先覆い部が該穿刺針の針元側となる基端部において外方へ突出しており、該針先覆い部の基端部には板幅方向の両側において切欠き状の逃し部が形成されているものである。

　本態様の針先プロテクタによれば、針先覆い部の基端部における軸方向視の外形が逃し部の形成によって曲線となることから、針先プロテクタを針ハブ等の内周へ基端側から挿入する際に、針先プロテクタの先端部分である針先覆い部の基端部が針ハブ等の内面を傷つけるのを抑制することができる。即ち、穿刺針を引き抜く際に、針先覆い部の基端部が針ハブ等の内面と当接することで針先プロテクタと穿刺針との相対移動が実現されるが、針先覆い部の基端部における軸方向投影視の外形ラインが鋭利な角をなす場合に、針先覆い部の基端部が針ハブの内面を削ってしまうおそれがある。そこで、針先覆い部の基端部に切欠き状の逃し部を設けて、当該部分を軸方向投影視において曲線形状とすることにより、針ハブへの接触時に針ハブの内面を削ってしまうおそれを低減することができる。

　第１４の態様は、穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部と第２側板部が対向して設けられており、該底部が該穿刺針の挿通孔を有する板形状とされて、該第１側板部と該第２側板部が該底部の両側辺部から立ち上がるように一体形成されており、該底部には薄肉の応力伝達抑制部が該挿通孔の周囲を囲んで形成されているものである。

　底部に形成される挿通孔は、例えば、穿刺針の針先付近に形成された部分的な大径部と係合するように高い寸法精度が要求されるが、例えば針先プロテクタに対する曲げ加工時の入力によって挿通孔が変形するおそれがある。そこで、本態様では、挿通孔の周囲を囲む薄肉部が設けられていることによって、薄肉部よりも外周側から内周側へ向けて作用する力が、薄肉部の変形によって吸収されて、薄肉部よりも内周側に位置する挿通孔の周囲に伝達され難くなっている。それゆえ、外力の作用による挿通孔の変形が生じ難く、挿通孔の寸法や形状を高精度に設定することができる。

　本発明によれば、針先プロテクタにおいて、穿刺針に対する側方への位置ずれと針先による押し開きとの少なくとも一方が防止されることによって、針先の再露出を防ぐことができる。

本発明の第１実施形態としての針先プロテクタを備えた針組立体の右側面図図１のＩＩ－ＩＩ断面図図２のＩＩＩ－ＩＩＩ断面図図２のＩＶ－ＩＶ断面を拡大して示す図図１の針組立体を構成する針先プロテクタを拡大して示す斜視図図５に示す針先プロテクタを別の角度で示す斜視図図５に示す針先プロテクタの平面図図５に示す針先プロテクタの底面図図５に示す針先プロテクタの右側面図図５に示す針先プロテクタの左側面図図５に示す針先プロテクタの正面図図１１のＸＩＩ－ＸＩＩ断面図図５の針先プロテクタの内針への装着状態を示す斜視図図５の針先プロテクタによる針先保護状態を示す針先部分の斜視図図１４の針先部分を別の角度で示す斜視図図１４に示す針先部分の縦断面図であって、図１７のＸＶＩ－ＸＶＩ断面に相当する図図１６のＸＶＩＩ－ＸＶＩＩ断面図図１４に示した針先保護状態の針先プロテクタを拡大して示す平面図図１４に示した針先保護状態の針先プロテクタを示す底面図本発明の第２実施形態としての針先プロテクタを備えた針組立体の断面図図２０の針組立体を構成する針先プロテクタの斜視図図２１の針先プロテクタを別の角度で示す斜視図図２０に示す針先プロテクタの断面図であって、図２４のＸＸＩＩＩ－ＸＸＩＩＩ断面に相当する図図２３のＸＸＩＶ－ＸＸＩＶ断面図図２１の針先プロテクタによる針先保護状態を示す針先部分の断面図図２５の針先保護状態において針先が第２針先カバー部から外れた状態を示す針先部分の断面図本発明の第３実施形態としての針先プロテクタを備えた針組立体の一部を示す断面図図２７の針組立体を構成する針先プロテクタの斜視図図２８の針先プロテクタを別の角度で示す斜視図図２８に示す針先プロテクタの左側面図図２８に示す針先プロテクタの平面図図２８に示す針先プロテクタの正面図図２８に示す針先プロテクタの背面図図２８の針先プロテクタによる針先保護状態を示す針先部分の断面図であって、図３５のＸＸＸＩＶ－ＸＸＸＩＶ断面に相当する図図３３のＸＸＸＶ－ＸＸＸＶ断面図

　以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。

　図１～図４には、本発明の第１実施形態としての針先プロテクタ１０を備えた針組立体１２が示されている。針組立体１２は、外針ユニット１４と内針ユニット１６が組み合わされて構成されている。以下の説明において、原則として、前後方向とは針軸方向である図１中の左右方向を、上下方向とは図１中の上下方向を、左右方向とは図２中の上下方向を、それぞれ言う。また、原則として、後述する針先３０側である図１中の左方を先端、図１中の右方を基端とする。

　外針ユニット１４は、外針１８の基端部分に外針ハブ２０が固定された構造を有している。外針１８は、合成樹脂等で形成されたチューブ状の部材であって、先端部分の外径寸法が先端へ向けて小さくなっている。外針１８の基端部分は、筒状とされた外針ハブ２０の先端部分に挿入されており、外針１８の基端部分および外針ハブ２０の先端部分へ圧入されるかしめピン２２によって、外針ハブ２０に固定されている。

　外針ハブ２０は、硬質の合成樹脂で形成された全体として略円筒形状の部材であって、内周面には基端側へ向けて大径となるルアーテーパーが設定されている。そして、外針ハブ２０の内腔に対して、図示しないシリンジチップやコネクタが嵌合されることによって、シリンジや輸液ライン等の外部回路が外針ハブ２０の内腔に接続可能とされている。また、外針ハブ２０の基端部には、外周へ突出するねじ部２３が形成されており、ねじ部２３が図示しないロック部に螺合されることで、シリンジや輸液ライン等の外部回路が意図せずに外針ハブ２０から抜けるのを防ぐことができる。

　外針ハブ２０の内周面には、係止段差部２４が形成されている。係止段差部２４は、外針ハブ２０の内腔を先端側よりも基端側において狭窄させるように設けられた段差であって、本実施形態の係止段差部２４は、図３に拡大して示すように、外針ハブ２０の内周面に開口して周方向に環状に延びる凹溝の基端側の側壁面によって構成されており、全周にわたって連続して設けられている。

　内針ユニット１６は、穿刺針としての内針２６の基端部分に内針ハブ２８が取り付けられた構造を有している。内針２６は、ステンレス等の医療用金属によって形成された中空針であって、先端には鋭利な針先３０が設けられている。針先３０は、内針２６の先端部分が針軸に対して傾斜して広がる刃面３２を有することによって形成されている。内針２６の基端部分は、筒状とされた内針ハブ２８の先端部分に挿入されており、それら内針２６と内針ハブ２８が接着等の手段で固定されている。

　内針ハブ２８は、硬質の合成樹脂で形成された略円筒形状の部材とされている。内針ハブ２８の先端部には、外針ハブ２０の基端開口部に嵌合可能とされた円筒状の接続部３４が設けられている。内針ハブ２８の基端開口部には、フィルタキャップ３６が嵌合されている。

　外針ユニット１４と内針ユニット１６は、内針ハブ２８の接続部３４が外針ハブ２０の基端開口部分へ嵌入されて、外針１８および外針ハブ２０に対して内針２６が挿通された状態で相互に組み合わされることにより、針組立体１２を構成する。外針ユニット１４と内針ユニット１６は、外針ユニット１４に対して基端側へ向けた引張力が内針ユニット１６に作用することで、接続部３４の外針ハブ２０への嵌合が解除されて、相互に分離可能とされている。

　内針２６には、針先プロテクタ１０が装着されている。針先プロテクタ１０は、例えば医療用ステンレス等の金属材によって形成されている。本実施形態では、針先プロテクタ１０を構成する後述する各部が一体形成されており、例えば、金属素板のプレス加工によって針先プロテクタ１０を容易に製造することができる。

　針先プロテクタ１０は、図５～図１２に示すように、内針２６の針元側（針先３０と反対側）に位置する底部４０の両端縁から第１側板部４２と第２側板部４４とが針先３０側へ向けて延び出した構造を有している。なお、図５～図１２では、見易さのために、針先プロテクタ１０が作動前（針先保護前）の状態で示されているが、針先プロテクタ１０は、作動後（針先保護状態）の形態で形成されて、内針２６への装着によって図５～図１２に示す作動前の状態とされてもよい。

　底部４０は、図６に示すように、略矩形平板形状とされており、板厚方向に貫通する挿通孔４６を備えている。底部４０の対向する一対の辺において第１側板部４２と第２側板部４４とが一体形成されて、底部４０の板厚方向の一方側へ延び出している。本実施形態の第１側板部４２と第２側板部４４は、内針２６を両側から挟んで相互に対向して配されており、交差状には延びていない。

　第１側板部４２は、全体として略矩形板状とされており、底部４０からの延出方向である長さ方向（図７中の左右方向）において長手とされている。第１側板部４２は、底部４０から延び出す第１本体部４８と、第１本体部４８よりも先端側に位置する第１針先保護部５０とを備えている。第１側板部４２は、好適には１～５ｍｍの板幅寸法を有している。これにより、第１側板部４２において十分な変形剛性が確保されて、内針２６の引抜きを案内したり、内針２６の針先３０を保護するといった機能が有効に発揮されると共に、後述する第１側板部４２のプレス成型に際して、金属素板を曲げるための金型（後述する押え治具）が過度に細長くなるのを防いで、金型の耐久性が確保される。なお、以下の針先プロテクタ１０の説明において、原則として、長さ方向とは第１，第２側板部４２，４４の底部４０からの延出方向である図７中の上下方向を、幅方向とは第１，第２側板部４２，４４の板幅方向である図９中の上下方向を言う。

　第１針先保護部５０は、第２側板部４４側へ傾斜しながら先端側へ突出する第１先端保護片５２を備えている。第１先端保護片５２の先端側には、底部４０へ向けて傾斜しながら第２側板部４４側へ突出する第１返り片５４が設けられている。また、第１先端保護片５２の先端部分の幅方向両側には、幅方向に対して略直交して広がって、第１返り片５４と略同じ方向へ突出する一対の側方覆い片５６，５６が設けられている。第１先端保護片５２の基端部は、第２側板部４４へ向けて外方へ突出する第１段差状部５８を備えており、第１段差状部５８が第１本体部４８の先端に一体的に連続している。換言すれば、第１先端保護片５２の基端は、第１段差状部５８によって第１本体部４８の先端に対して、第２側板部４４と反対側にずれて位置している。

　第１返り片５４における第１先端保護片５２からの突出先端縁部には、第１切欠き６０が形成されている。第１切欠き６０は、図１１に示すように、第１返り片５４の幅方向の中央部分に設けられており、第１返り片５４の肉厚寸法（軸方向寸法）に比して幅方向の寸法が大きくされて、第１返り片５４の幅寸法よりは短い長さで、幅方向に延びている。第１切欠き６０の内面は、内針２６の外周面よりも曲率の小さい略円弧状の湾曲面とされており、第１切欠き６０の深さ寸法は、幅方向の中央に向けて大きくなっている。なお、第１切欠き６０の内面は、半周に満たない円弧状とされており、第１切欠き６０の幅方向での長さ寸法は、内針２６の直径よりも大きくされている。

　第１本体部４８には、側方カバー片としての第１側方カバー片６２が設けられている。第１側方カバー片６２は、図７，図９に示すように、第１本体部４８の幅方向の一方の端縁部から第２側板部４４へ向けて延び出しており、第１本体部４８の長さ方向の中間位置で先端側に偏倚して設けられている。

　すなわち、第１本体部４８の幅方向一方の端縁部には第１凹状部６４が開口しており、第１凹状部６４の形成部分において第１本体部４８が幅狭とされている。第１凹状部６４は、図９に示すように、第１本体部４８を板厚方向に貫通する切欠き状とされており、第１本体部４８の前後方向の中間部分に設けられて、第１本体部４８の前後方向の両端までは達していない。従って、第１本体部４８は、第１凹状部６４の形成部分において、第１凹状部６４よりも前後両外側よりも幅狭となっている。第１凹状部６４は、前後両端部分において、上下方向の深さ寸法が前後方向の各外側へ向けて小さくなっている。換言すれば、第１凹状部６４は、前後方向の長さ寸法が、側方への開口側に向けて大きくなっている。なお、第１凹状部６４の深さ寸法は、第１側方カバー片６２の前後方向の両側において最大となっている。

　第１側方カバー片６２は、第１凹状部６４の底において左右方向の内方へ突出して設けられており、第１凹状部６４の開口端を含む第１本体部４８の幅方向外端に対して、幅方向の内側に位置している。第１側方カバー片６２は、底部４０に近い基端部分において、第１側板部４２からの突出高さが略一定とされていると共に、第１針先保護部５０に近い先端部分において、先端へ向けて突出高さが次第に小さくなっている。第１側方カバー片６２は、好適には、長さ寸法が１～５ｍｍ、第１本体部４８からの最大突出高さ寸法が１～３ｍｍとされている。これにより、例えば、後述する針先３０の保護状態において、第１側方カバー片６２が内針２６の側方を確実に覆うように配されると共に、第１側方カバー片６２の突出先端と第２側板部４４との接触による作動不良等が回避される。

　第１本体部４８には、突出片としての第１突出片６６が設けられている。第１突出片６６は、図８に示すように、第１本体部４８の幅方向他方の端縁部から第２側板部４４へ向けて延び出しており、第１本体部４８の長さ方向の中間位置で先端側に偏倚して設けられている。第１突出片６６は、第１本体部４８における第１側方カバー片６２と反対側の端縁部に設けられており、第１側方カバー片６２に対して幅方向で相互に離隔対向して配されている。本実施形態において第１側方カバー片６２と第１突出片６６とは、相互に略平行に広がっている。第１突出片６６は、図７に示すように、第１側方カバー片６２よりも長さ寸法（図７中の上下寸法）が大きくされており、第１側方カバー片６２に対して長さ方向の両外側まで延び出している。第１突出片６６の第１本体部４８からの突出高さは、第１側方カバー片６２と略同じとされている。第１突出片６６は、第１側方カバー片６２と同様に、長さ方向の基端部分において略一定の突出高さとされていると共に、長さ方向の先端部分では突出高さが先端へ向けて小さくなっている。

　図９中に一点鎖線で示した第１側方カバー片６２と第１突出片６６との対向方向（幅方向）での中央位置は、図９中に二点鎖線で示した底部４０の幅方向での中央位置に対して、幅方向で第１突出片６６側にずれている。換言すれば、第１本体部４８における第１側方カバー片６２および第１突出片６６の形成部分では、第１凹状部６４が形成されていることによって、第１本体部４８の板幅方向の中心（図９中の一点鎖線）が、底部４０の同方向の中心（図９中の二点鎖線）に対して、幅方向で第１側方カバー片６２と反対側（第１突出片６６側）にずれている。なお、底部４０の中央位置は、挿通孔４６の中心軸と略一致しており、挿通孔４６に挿通される内針２６の針軸と略一致することから、図９中の二点鎖線は、内針２６の針軸の幅方向位置を示す。

　一方、第２側板部４４は、全体として略矩形板状とされており、底部４０からの延出長さ方向（図７中の上下方向）において長手とされている。第２側板部４４は、底部４０から延び出す第２本体部６８と、第２本体部６８よりも先端側に位置する第２針先保護部７０とを備えている。第２側板部４４は、好適には１～５ｍｍの板幅寸法を有している。

　第２針先保護部７０は、先端側へ向けて第１側板部４２側へ傾斜する第２先端保護片７２を備えていると共に、第２先端保護片７２の先端側には底部４０へ向けて傾斜しながら第１側板部４２側へ突出する第２返り片７４が設けられている。第２先端保護片７２の基端部は、第１側板部４２へ向けて外方へ突出する第２段差状部７６を備えており、第２段差状部７６が第２側板部４４の第２本体部６８の先端に一体的に連続している。換言すれば、第２先端保護片７２の基端は、第２段差状部７６によって第２本体部６８の先端に対して、第１側板部４２と反対側にずれて位置している。第２針先保護部７０には、第１針先保護部５０の側方覆い片５６，５６に相当する側方覆い片は設けられておらず、第２針先保護部７０の側方が覆われることなく開放されている。要するに、板幅方向両側の一対の側方覆い片５６，５６は、何れも第１針先保護部５０に設けられている。

　第２返り片７４における第２先端保護片７２からの突出先端縁部には、第２切欠き７８が形成されている。第２切欠き７８は、図１１に示すように、第２返り片７４の幅方向の中央部分に設けられており、第２返り片７４の肉厚寸法（軸方向寸法）に比して幅方向の寸法が大きくされて、第２返り片７４の幅寸法よりは短い長さで、幅方向に延びている。第２切欠き７８の内面は、内針２６の外周面よりも曲率の小さい略円弧状の湾曲面とされており、第２切欠き７８の深さ寸法は、幅方向の中央に向けて大きくなっている。なお、第２切欠き７８の内面は、半周に満たない円弧状とされており、第２切欠き７８の幅方向での長さ寸法は、内針２６の直径よりも大きくされている。

　第２本体部６８には、側方カバー片としての第２側方カバー片８０が設けられている。第２側方カバー片８０は、図８，図１０に示すように、第２本体部６８の幅方向の一方の端縁部から第１側板部４２へ向けて延び出しており、第２本体部６８の長さ方向の中間位置で先端側に偏倚して設けられている。

　すなわち、第２本体部６８の一方の側端部には第２凹状部８２が開口しており、第２凹状部８２において第２本体部６８が幅狭とされている。第２凹状部８２は、図１０に示すように、第２本体部６８を板厚方向に貫通する切欠き状とされており、第２本体部６８の前後方向の中間部分に設けられて、第２本体部６８の前後方向の両端までは達していない。従って、第２本体部６８は、第２凹状部８２の形成部分において、第２凹状部８２よりも前後両外側よりも幅狭となっている。第２凹状部８２は、前後両端部分において、上下方向の深さ寸法が前後方向の各外側へ向けて小さくなっている。換言すれば、第２凹状部８２は、前後方向の長さ寸法が、側方への開口側に向けて大きくなっている。なお、第２凹状部８２の深さ寸法は、第２側方カバー片８０の前後方向の両側において最大となっている。

　第２側方カバー片８０は、第２凹状部８２の底において左右方向の内方へ突出して設けられており、第２凹状部８２の開口端を含む第２本体部６８の幅方向外端に対して、幅方向の内側に位置している。第２側方カバー片８０は、底部４０に近い基端部分において、第２側板部４４からの突出高さが略一定とされていると共に、第２針先保護部７０に近い先端部分において、先端へ向けて突出高さが次第に小さくなっている。第２側方カバー片８０は、好適には、長さ寸法が１～５ｍｍ、第２本体部６８からの最大突出高さ寸法が１～３ｍｍとされている。

　第２本体部６８には、突出片としての第２突出片８４が設けられている。第２突出片８４は、図７に示すように、第２本体部６８の幅方向他方の端縁部から第１側板部４２へ向けて延び出しており、第２本体部６８の長さ方向の中間位置で先端側に偏倚して設けられている。第２突出片８４は、第２本体部６８における第２側方カバー片８０と反対側の端縁部に設けられて、第２側方カバー片８０に対して幅方向で相互に離隔対向して配されている。本実施形態において、第２側方カバー片８０と第２突出片８４とは、相互に略平行に広がっている。第２突出片８４は、図８に示すように、第２側方カバー片８０よりも長さ寸法（図８中の上下寸法）が大きくされており、第２側方カバー片８０に対して長さ方向の両外側まで延び出している。第２突出片８４の第２本体部６８からの突出高さは、第２側方カバー片８０と略同じとされている。第２突出片８４は、第２側方カバー片８０と同様に、長さ方向の基端部分において略一定の突出高さとされていると共に、長さ方向の先端部分において突出高さが先端へ向けて小さくなっている。

　図１０に一点鎖線で示した第２側方カバー片８０と第２突出片８４との対向方向（幅方向）での中央位置は、図１０中に二点鎖線で示した底部４０の幅方向での中央位置に対して、幅方向で第２突出片８４側にずれている。換言すれば、第２本体部６８における第２側方カバー片８０および第２突出片８４の形成部分では、第２本体部６８の板幅方向の中心（図１０中の一点鎖線）が、底部４０の同方向の中心（図１０中の二点鎖線）に対して、幅方向で第２側方カバー片８０と反対側（第２突出片８４側）にずれている。従って、第１本体部４８における第１側方カバー片６２および第１突出片６６の形成部分の板幅方向の中心（図９中の一点鎖線）と、第２本体部６８における第２側方カバー片８０および第２突出片８４の形成部分の板幅方向の中心（図１０中の一点鎖線）とは、各側方カバー片６２，８０と反対側へ相互にずれている。なお、図９中の二点鎖線と同様に、図１０中の二点鎖線も内針２６の針軸の幅方向位置と略一致する。

　第１側方カバー片６２と第２突出片８４は、第１側板部４２と第２側板部４４において幅方向の同じ側の端縁部に設けられており、針先保護前の内針２６への装着状態において幅方向で相互に重なり合っている。図１２に示すように、第１側方カバー片６２は、第２突出片８４に対して幅方向の内側に離れて位置している。第１側方カバー片６２が第２側板部４４までは達しない突出高さとされていると共に、第２突出片８４が第１側板部４２までは達しない突出高さとされており、それら第１側方カバー片６２と第２突出片８４とが部分的に重なり合っている。また、図７に示すように、第２突出片８４は、第１側方カバー片６２に対して長さ方向の両外側まで延び出している。第２突出片８４の長さ方向の中央位置は、第１側方カバー片６２の長さ方向の中央位置に対して、底部４０と反対側（先端側）に偏倚している。

　また、第２側方カバー片８０と第１突出片６６は、第１側板部４２と第２側板部４４において幅方向の同じ側の端縁部に設けられており、針先保護前の内針２６への装着状態において幅方向で相互に重なり合っている。図１２に示すように、第２側方カバー片８０は、第１突出片６６に対して幅方向の内側に離れて位置している。第２側方カバー片８０が第１側板部４２までは達しない突出高さとされていると共に、第１突出片６６が第２側板部４４までは達しない突出高さとされており、それら第２側方カバー片８０と第１突出片６６とが部分的に重なり合っている。また、図８に示すように、第１突出片６６は、第２側方カバー片８０に対して長さ方向の両外側まで延び出している。第１突出片６６の長さ方向の中央位置は、第２側方カバー片８０の長さ方向の中央位置に対して、底部４０側に偏倚している。

　第１側方カバー片６２と第２側方カバー片８０とは、幅方向において互いに反対側に設けられており、幅方向で相互に離隔して対向している。また、第１突出片６６と第２突出片８４は、幅方向において互いに反対側に設けられて、幅方向で相互に離隔して対向しており、第１，第２側方カバー片６２，８０に対して幅方向の両外側に位置している。

　なお、本実施形態において、第１側方カバー片６２は、第２側方カバー片８０よりも長さ寸法が大きくされており、先端位置が第２側方カバー片８０と略同じとされていると共に、基端位置が第２側方カバー片８０よりも底部４０に近い位置とされている。また、第１突出片６６と第２突出片８４は、長さ寸法が略同じとされていると共に、第１突出片６６が第２突出片８４よりも底部４０側にずれて配置されている。

　図７，図８に示すように、第１，第２側方カバー片６２，８０と第１，第２突出片６６，８４とは、何れも底部４０から先端側に長さ方向で離隔しており、第１，第２側方カバー片６２，８０および第１，第２突出片６６，８４と底部４０との間には、第１，第２側板部４２，４４の対向面間において幅方向に貫通して幅方向の両側に開放された成形用スペース８６が形成されている。第１，第２側方カバー片６２，８０と第１，第２突出片６６，８４は、第１，第２側板部４２，４４における基端側（底部４０の先端面）から２．５ｍｍ以上離れて形成されていることが望ましく、より好適には３．５ｍｍ以上離れて形成されている。要するに、成形用スペース８６の長さ方向の寸法は、好適には２．５ｍｍ以上、より好適には３．５ｍｍ以上とされている。また、成形用スペース８６の長さ方向の寸法は、好適には７ｍｍ以下、より好適には５ｍｍ以下とされている。これにより、成形用スペース８６に挿入される金型（後述する押え治具）が長さ方向で過度に薄肉となるのを防いで、金型の強度や耐久性を確保することができると共に、針先プロテクタ１０の長さ寸法を抑えて、針先プロテクタ１０を収容する外針ハブ２０の小型化なども図られる。

　針先プロテクタ１０は、例えば、所定の形状に打ち抜かれた金属素板をプレス加工（順送プレス）によって折り曲げることによって形成されるが、プレス加工に際して、成形用スペース８６を利用して底部４０を押えながら加工することが可能とされている。即ち、プレス加工に際して、底部４０に相当する部分が、一方の面を支持する図示しない支持治具と、他方の面を支持する図示しない押え治具とによって、板厚方向で挟持される。押え治具は、成形用スペース８６に挿通可能な形状とされて、底部４０に対して第１，第２側板部４２，４４の立ち上げ側に重ね合わされることにより、プレス加工の開始から終了まで底部４０を挟持状態に保持することができて、針先プロテクタ１０の成形が容易になる。なお、押え治具は、底部４０に対して第１，第２側板部４２，４４を折り曲げて成形する際の金型としても機能する。順送プレスによって針先プロテクタ１０に加工される金属素板は、例えば医療用のステンレスやチタンによって形成されており、好適には０．１～０．３ｍｍの厚さを有する板材とされている。このような厚さ範囲の金属素板を採用することにより、内針２６に対する摺動抵抗が十分に小さく、且つ針先保護形態を安定して保持し得る変形剛性を備えた針先プロテクタ１０を得ることができると共に、プレス加工時の損傷等も問題になり難い。針先プロテクタ１０は、全体が略一定の厚さ寸法とされていてもよいし、部分的に厚肉の部分及び／又は薄肉の部分があってもよい。

　かくの如き構造とされた針先プロテクタ１０は、図１３に示すように、内針２６に装着される。即ち、内針２６は、針先プロテクタ１０の底部４０に形成された挿通孔４６に挿通されると共に、第１針先保護部５０の第１返り片５４と、第２針先保護部７０の第２返り片７４との間に挿通される。これにより、内針２６が針先プロテクタ１０の第１側板部４２と第２側板部４４との対向間を貫通して配されて、針先プロテクタ１０が内針２６に対して外挿状態で装着される。内針２６は、針先プロテクタ１０の第１側方カバー片６２と第２側方カバー片８０との対向間に位置しており、針軸方向の一部において周囲を第１，第２側板部４２，４４と第１，第２側方カバー片６２，８０とによって囲まれている。
なお、図１３では、見易さのために、針先プロテクタ１０が内針ハブ２８に対して針先３０側へ離れた位置に配されているが、図２，図３に示すように、針先プロテクタ１０は、底部４０が内針ハブ２８の先端に接する或いは近接する位置に配され得る。

　針先プロテクタ１０の内針２６への装着状態において、内針２６は、図２，図４に示すように、第１返り片５４の第１切欠き６０と、第２返り片７４の第２切欠き７８とに入り込んでおり、第１，第２切欠き６０，７８の内面が内針２６の外周面に接している。第１，第２返り片５４，７４が第１，第２切欠き６０，７８において内針２６に接することにより、第１，第２側板部４２，４４が弾性変形しており、第１，第２側板部４２，４４の弾性的な復元力によって、第１，第２返り片５４，７４が内針２６に押し当てられている。第１，第２切欠き６０，７８の内面は、内針２６の外周面よりも曲率が小さくされていることから、内針２６と第１，第２切欠き６０，７８における第１，第２返り片５４，７４との接触面積が小さくされている。

　また、針先プロテクタ１０の内針２６への装着状態において、内針２６の針軸は、針先プロテクタ１０における第１側板部４２の板幅方向の中央に対して、第１側板部４２の板幅方向で第１側方カバー片６２への接近側にずれている。また、内針２６の針軸は、針先プロテクタ１０における第２側板部４４の板幅方向の中央に対して、第２側板部４４の板幅方向で第２側方カバー片８０への接近側にずれている。換言すれば、内針２６の針軸に対して板幅方向にずれて配された第１，第２側板部４２，４４において、内針２６に対する接近側の幅方向端縁部に第１，第２側方カバー片６２，８０が設けられている。

　針先プロテクタ１０は、図２～図４に示すように、外針ハブ２０の内腔に収容されている。針先プロテクタ１０の先端部分は、第１，第２先端保護片５２，７２が先端へ向けて相互に接近する傾斜形状とされていることによって、先細形状とされており、針先プロテクタ１０の外針ハブ２０への挿入に際して、針先プロテクタ１０の意図しない引っ掛かりによって外針ハブ２０の内周面が損傷する等の事態を防ぐことができる。針先プロテクタ１０の第１，第２段差状部５８，７６は、幅方向の両端部分が、外針ハブ２０の内周面に設けられた係止段差部２４に対して軸方向で係止されており、外針ハブ２０に対する基端側への移動が制限されている。なお、かくの如き針先プロテクタ１０の装着状態下では、内針２６に対する針先プロテクタ１０の不必要なガタツキを抑えるために、例えば底部４０や針先覆い部５０，７０の最外周の四角部が、外針ハブ２０の内周面に近接又は接触した状態で配され得る。また、かかる装着状態下における針先プロテクタ１０の内針２６回りでの自由な回転を抑えるために、外針ハブ２０に挿入された内針ハブ２８の接続部３４を周方向で部分的に先端側へ突出させて（図３，１３参照）、当該突出部分を針先プロテクタ１０の底部４０の外周辺の外側へ入り込ませても良い。

　このような針先プロテクタ１０を備えた針組立体１２は、例えば、内針２６と外針１８が患者の血管等へ穿刺される。血管への穿刺に際して、内針２６の内腔を通じて内針ハブ２８の内腔へ血液が流入することから、例えば内針ハブ２８を透明又は半透明として内部を視認可能とすることにより、血液の内針ハブ２８への流入によって、内針２６の血管への穿刺を確認することができる。また、内針ハブ２８に装着されたフィルタキャップ３６のフィルタ３８によって、内針ハブ２８の内腔へ流入した血液が基端側の開口から外部へ漏出するのを防ぐことができる。

　内針２６と外針１８の血管への穿刺後に、外針ユニット１４を穿刺位置に保持しながら、内針ユニット１６を基端側へ引くことにより、内針２６を外針１８から基端側へ引き抜くことができる。この際に、内針ハブ２８と外針ハブ２０の連結が解除されて、内針ユニット１６の全体が外針ユニット１４から分離される。

　内針２６の基端側への引抜きに際して、針先プロテクタ１０の第１，第２返り片５４，７４の端縁部が内針２６の外周面に摺接する。第１，第２返り片５４，７４は、内針２６へ向けて基端側へ傾斜していることから、内針２６の引抜きに際して、第１，第２返り片５４，７４の端縁部が内針２６の外周面の微細な凹凸に引っ掛かり難く、摺動抵抗が抑えられて、内針２６の基端側へのスムーズな引抜きが実現される。

　内針２６を基端側へ引き抜く際に、内針２６は、針先プロテクタ１０の第１，第２返り片５４，７４に設けられた第１，第２切欠き６０，７８によって軸方向に案内されて、内針２６の基端側へのスムーズな引抜きが補助される。第１，第２切欠き６０，７８は、幅方向（図４中の左右方向）での長さ寸法が、内針２６の直径よりも大きくされていることから、内針２６が幅方向に多少移動したとしても、第１，第２切欠き６０，７８から外れ難く、第１，第２切欠き６０，７８による内針２６のガイド機能が有効に発揮される。

　第１，第２切欠き６０，７８は、第１，第２返り片５４，７４の幅方向に延びて形成されていることから、内針２６と第１，第２返り片５４，７４とが針軸方向の狭い範囲で接触しており、例えば、接触部分の表面粗さによる摺動抵抗が低減されて、内針２６の引抜き操作が容易とされている。なお、第１，第２返り片５４，７４の部材厚さ寸法は、内針２６の外径に比して充分に小さく、特に本実施形態では第１，第２切欠き６０，７８を含めて第１，第２返り片５４，７４の先端面が、板面に対して略垂直とされていることから、図２に示す装着状態において内針２６と第１，第２返り片５４，７４とが略線接触又は点接触とされている。

　また、第１，第２切欠き６０，７８の内面の曲率が、内針２６の外周面の曲率よりも小さくされており、第１，第２返り片５４，７４と内針２６の周方向での接触範囲が狭くされていることによっても、引抜時の抵抗が低減されている。このように、本実施形態では、内針２６と第１，第２返り片５４，７４とが、各一か所における略点当たり状態で接触しており、接触による摺動抵抗が十分に小さくされている。

　内針ユニット１６から分離した外針ユニット１４は、留置針として血管への穿刺状態で留置されて、外針ハブ２０の基端側に図示しない外部回路が接続されることにより、血管へのアクセスポートとして機能し、例えば、輸液や薬液の投与口、人工透析の脱血口又は返血口等として利用される。

　内針２６が外針１８から引き抜かれる際に、内針２６の針先３０は、図１４～図１７に示すように、内針２６に対して針先３０側へ移動した針先プロテクタ１０によって覆われる。即ち、外針ハブ２０によって基端側への移動を制限された針先プロテクタ１０に対して内針２６が基端側へ移動すると、内針２６の外周面と第１，第２返り片５４，７４との当接が解除されて、第１，第２側板部４２，４４が弾性的に形状復元する。これにより、第１，第２側板部４２，４４が先端へ向けて相互に接近するように傾斜し、第１針先保護部５０と第２針先保護部７０が何れも内針２６の先端側を覆う位置まで変位することにより、針先３０を覆う針先覆い部が第１，第２針先保護部５０，７０によって構成される。これにより、内針２６の針先３０が先端側へ露出せず、また、内針２６の先端側への移動が第１，第２針先保護部５０，７０との当接によって制限されることから、内針２６の露出による誤穿刺の危険が回避される。

　上述のような針先プロテクタ１０の針先保護状態では、第１，第２針先保護部５０，７０の第１，第２返り片５４，７４が針先３０の先端側において相互に重なっており、内針２６の先端側が第１，第２針先保護部５０，７０で二重に覆われることによって、高い安全性が確保されている。

　第１針先保護部５０に設けられた一対の側方覆い片５６，５６によって、針先３０が外部から視認され難いように覆われている。また、仮に針先３０が先端側へ移動したとしても、一対の側方覆い片５６，５６によって、針先３０が第１，第２針先保護部５０，７０を幅方向（図１７中の上下方向）に外れて外部へ露出することが防止される。

　さらに、一対の側方覆い片５６，５６は、図１６に示すように、針先保護状態において第２先端保護片７２及び第２返り片７４の側方に位置している。これにより、第１針先保護部５０と第２針先保護部７０の側方（図１６の紙面直交方向）への相対変位が、側方覆い片５６と第２先端保護片７２及び第２返り片７４との当接によって制限されている。それ故、第１，第２針先保護部５０，７０の意図しない側方への相対変位による針先３０の再露出が防止される。

　針先保護状態では、図１８，図１９に示すように、第１，第２側板部４２，４４の第１，第２本体部４８，６８が先端へ向けて相互に接近しており、図１６に示すように、第１，第２本体部４８，６８の先端部分が内針２６に対して左右方向で近接している。これにより、第１，第２本体部４８，６８の対向方向（左右方向）において、内針２６の変位量（振れ）が制限されており、左右方向の変位による針先３０の露出等が防止される。

　針先保護状態では、図１７に示すように、第１，第２側板部４２，４４に設けられた第１，第２側方カバー片６２，８０が、内針２６の先端部分に対して上下方向で近接している。これにより、第１，第２側方カバー片６２，８０の対向方向（上下方向）において、内針２６の変位量（振れ）が制限されており、上下方向の変位による針先３０の露出等が防止される。

　第１側方カバー片６２が第１側板部４２に設けられていると共に、第２側方カバー片８０が第２側板部４４に設けられていることにより、第１側方カバー片６２と第２側方カバー片８０の対向間距離を小さく設定しても、針先プロテクタ１０のプレス加工等による成形を容易に行うことができる。それゆえ、例えば１６～２４Ｇ程度の医療用の細い内針２６に対して、第１，第２側方カバー片６２，８０の両方を十分に近い位置に配することができて、内針２６の上下方向の変位を有効に制限することができる。なお、内針２６の太さ（ゲージ数）に応じて、第１側板部４２と第２側板部４４の板幅方向の各中心のずれ量を適宜に設定することにより、例えば２４Ｇ等の細い内針２６に用いられる場合であっても、針先プロテクタ１０の部材強度を確保しながら、第１，第２側方カバー片６２，８０の両方を内針２６に対して十分に接近して配することができる。

　本実施形態では、第１側方カバー片６２が第１側板部４２の第１凹状部６４において上下方向の内方へ突出して設けられていると共に、第２側方カバー片８０が第２側板部４４の第２凹状部８２において上下方向の内方へ突出して設けられており、それらによって、第１，第２側方カバー片６２，８０が内針２６にそれぞれ近接して配置可能とされている。

　第１側板部４２は、第１凹状部６４を前後方向に外れた両側において幅広とされており、変形剛性が確保されている。また、第１側板部４２は、幅狭となる第１凹状部６４の形成部分において、内方へ突出する第１側方カバー片６２が一体的に設けられていることから、第１側方カバー片６２による補強作用によって、変形剛性の確保が図られている。なお、第２側板部４４においても、第１側板部４２と同様に、第２凹状部８２の形成部分とその前後両側とのそれぞれにおいて、変形剛性の確保が図られている。

　第１，第２側方カバー片６２，８０は、第１，第２側板部４２，４４からの突出先端が、針先保護状態を考慮した傾斜形状を有していることから、第１，第２側板部４２，４４が傾斜した針先保護状態において、第１，第２側板部４２，４４に干渉しない。それゆえ、第１，第２側板部４２，４４の変形（形状復元）が、第１，第２側方カバー片６２，８０によって妨げられることなく確実に生じて、針先プロテクタ１０が目的とする針先保護形態へ安定して移行する。

　第１側板部４２は、第２側方カバー片８０よりも幅方向外側まで突出していることによって、幅方向寸法が確保されて、変形剛性等の強度が確保されている。このように第１側板部４２が第２側方カバー片８０よりも幅方向外側まで突出していると、当該突出部分を手で押す等した場合に、針先プロテクタ１０による針先３０の保護状態が解除されてしまうおそれがある。そこで、当該突出部分に第１突出片６６を設けることにより、当該突出部分を押し難くなっており、針先プロテクタ１０の針先保護状態が安定して維持される。第１突出片６６は、針先保護状態において、図１９に示すように、第２側板部４４の側方を覆う位置まで達しており、第１突出片６６を手指で押してしまったとしても、第２側板部４４に手指が引っ掛かって大きく押し込まれ難くなっていることから、針先保護状態が解除され難い。

　同様に、第２側板部４４に設けられた第２突出片８４は、針先保護状態において、第２側板部４４における第１側方カバー片６２よりも幅方向外側への突出部分が押され難くしており、それによって針先保護状態の解除が回避される。なお、第２突出片８４は、図１８に示すように、第１側板部４２までは僅かに達しない突出高さで設けられているが、突出先端が第１側板部４２に近接していることから、第１突出片６６と同様に、手指等が第１側板部４２に引っ掛かることで押し込まれ難くなっている。

　ところで、外針ハブ２０に収容された状態で内針２６の針先３０を保護した針先プロテクタ１０は、内針２６の基端側への引抜きに伴って、外針ハブ２０から分離して基端側へ離脱する。即ち、針先保護状態の針先プロテクタ１０は、第１，第２側板部４２，４４が先端へ向けて相互に接近するように変形することから、第１，第２段差状部５８，７６と外針ハブ２０の係止段差部２４との軸方向での係止が解除されて、針先プロテクタ１０の外針ハブ２０に対する基端側への移動が許容される。

　また、内針２６の先端付近には、図１２や図１６，図１７に示すように、部分的に外径寸法が大きくされた大径部８８が設けられており、当該大径部８８の外径寸法が針先プロテクタ１０の底部４０に形成された挿通孔４６の内径寸法よりも大きくされている。これにより、針先保護状態の内針２６が更に基端側へ引かれると、内針２６の大径部８８が針先プロテクタ１０の底部４０に針軸方向で係止されて、針先プロテクタ１０が内針２６と共に基端側へ移動する。従って、針先プロテクタ１０は、内針２６の針先３０を保護した状態で、血管への穿刺状態で留置される外針ハブ２０から分離する。このように、内針ユニット１６が外針ユニット１４から分離された状態において、内針２６の針先３０が針先プロテクタ１０によって覆われていることから、分離後の内針ユニット１６を取り扱う際に、内針２６の針先３０に誤って触れるのを防ぐことができて、安全性の確保が図られる。

　図２０には、本発明の第２実施形態としての針先プロテクタ９０を備えた針組立体９２が示されている。針先プロテクタ９０は、図２１～図２４に示されており、底部４０から針先３０側（図２３中、左側）へ延び出す第１側板部９４と第２側板部９６とを備えている。以下の説明において、第１実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。

　本実施形態の底部４０は、略四角環状に延びる応力伝達抑制部としての薄肉部９７が挿通孔４６の周囲を取り囲むように設けられている。底部４０は、薄肉部９７において表裏両面において溝状に凹んだ形状とされており、薄肉部９７が設けられていることによって、例えば、薄肉部９７よりも外周側から作用する外力が内周側へ伝達され難くなっている。これにより、外力の作用による底部４０の内周部分の変形やそれに伴う挿通孔４６の変形等が防止されている。薄肉部９７は、例えば、後述する薄肉部１１０と同様のコイニングによって形成される。底部４０の挿通孔４６の直径は、内針２６の外径に応じて設定されており、本実施形態では、第１実施形態よりも細い内針２６に対応して小径とされている。

　第１側板部９４は、第１実施形態の第１側板部４２と全体として同じ構造とされている。第１側板部９４は、第１本体部４８の先端側に針先覆い部としての第１針先保護部９８が一体形成された構造を有している。第１針先保護部９８は、第１段差状部５８の突出先端から延び出す第１針先カバー部１００を備えている。第１針先カバー部１００は、第１段差状部５８と連続して設けられた第１先端保護片５２と、第１先端保護片５２の先端から突出する第１返り片５４とによって構成されている。本実施形態の第１返り片５４は、第１先端保護片５２の間に成す角が、第１実施形態よりも大きくされており、９０°よりも大きい鈍角とされている。

　第１返り片５４の突出先端には、第１針先制止部１０２が設けられている。第１針先制止部１０２は、矩形板状とされており、第１返り片５４から針元側である図２４中の右方へ向けて突出している。第１針先制止部１０２は、折曲げによって形成されており、第１返り片５４と一体的に連続して設けられている。

　第１針先保護部９８の側方には、第１先端保護片５２から延び出した側方覆い片５６，５６が設けられている。本実施形態の側方覆い片５６は、第１針先制止部１０２に達する長さで設けられており、第１実施形態に比して左右方向の幅寸法が大きくされている。このように、側方覆い片５６が第１針先制止部１０２に達する長さで幅広に設けられていることによって、針先３０の側方への露出が生じ難くなっている。

　第２側板部９６は、第１実施形態の第２側板部４４と全体として同じ構造とされている。第２側板部９６は、第２本体部６８の先端側に針先覆い部としての第２針先保護部１０４が一体形成された構造を有している。第２針先保護部１０４は、第２段差状部７６の突出先端から延び出す第２針先カバー部１０６を備えている。第２針先カバー部１０６は、第２段差状部７６と連続して設けられた第２先端保護片７２と、第２先端保護片７２の先端から突出する第２返り片７４とによって構成されている。本実施形態の第２返り片７４は、第２先端保護片７２の間に成す角が、前記第１実施形態よりも大きくされており、９０°よりも大きい鈍角とされている。

　第２返り片７４の突出先端には、第２針先制止部１０８が設けられている。第２針先制止部１０８は、矩形板状とされており、第２返り片７４から針元側である図２４中の右方へ向けて突出している。第２針先制止部１０８は、折曲げによって形成されており、第２返り片７４と一体的に連続して設けられている。

　内針２６に装着された針先プロテクタ９０の形状を示す図２４において、第１針先制止部１０２の突出先端（針元側の端部）は、第２針先保護部１０４よりも先端側に位置している。また、第１針先制止部１０２の長さ寸法は、第２針先制止部１０８の長さ寸法よりも長くされている。第１針先制止部１０２と第２針先保護部１０４との軸方向距離は、第１針先制止部１０２の長さ寸法よりも小さいことが望ましい。

　本実施形態において、第１側板部９４の第１本体部４８と第２側板部９６の第２本体部６８とは、前後方向に直線的に延びる薄肉部１１０をそれぞれ備えている。薄肉部１１０は、コイニング（型の押付けによる軽度の鍛造）によって形成されており、薄肉部１１０によって第１，第２本体部４８，６８の変形剛性の向上が図られて、後述する針先３０の保護状態において第１，第２側板部９４，９６の意図しない開きが防止される。

　針先プロテクタ９０は、図２０に示すように、内針２６に装着されている。内針２６は第１側板部９４と第２側板部９６の間に挿通されており、第１，第２返り片５４，７４及び第１，第２針先制止部１０２，１０８が、内針２６の外周面に接している。これにより、第１側板部９４と第２側板部９６が左右方向で相互に離隔する側へ変位した状態とされており、第１側板部９４と第２側板部９６には相互に接近する方向の付勢力が作用している。図２３に示すように、本実施形態の第１，第２側方カバー片６２，８０は、第１実施形態に比して、対向面間距離が短く内針２６に接近した位置に配されており、上下方向における内針２６の移動許容量がより小さくされている。

　内針２６が外針１８から引き抜かれると、図２５に示すように、内針２６の針先３０が針先３０側へ移動した針先プロテクタ９０によって覆われて保護される。即ち、第１，第２返り片５４，７４及び第１，第２針先制止部１０２，１０８の内針２６への当接が解除されることにより、第１，第２針先保護部９８，１０４が相互に接近するように変位して、第１，第２針先カバー部１００，１０６が内針２６の針先３０側の延長上へ移動する。これにより、針先３０の先端側が第１，第２針先カバー部１００，１０６で覆われて、内針２６の針先３０が針先プロテクタ９０による針先保護状態とされる。なお、第１針先制止部１０２は、第２針先カバー部１０６に引っ掛かることなく先端側に位置することから、第１，第２側板部９４，９６の接近変位の妨げにならない。

　図２５に示すように、針先プロテクタ９０による針先３０の保護状態において、第２側方カバー片８０の突出先端は、第１側板部９４の第１本体部４８に押し当てられている。同様に、第１側方カバー片６２の突出先端は、第２側板部９６の第２本体部６８に押し当てられている。これにより、第１側板部９４と第２側板部９６の相互接近方向の付勢力がより大きく設定されており、外力の作用による第１側板部９４と第２側板部９６の相互離隔方向への変位が生じ難くなっている。

　また、針先プロテクタ９０による針先３０の保護状態において、第２返り片７４と第２針先制止部１０８の接続部分が、第１先端保護片５２に押し当てられている。これにより、第１，第２針先保護部９８，１０４の相対的な接近変位量が規定されており、例えば、第１，第２段差状部５８，７６と内針２６との間に隙間が確保されることで、内針２６による第１，第２針先保護部９８，１０４の押し開きが発生し難くなっている。

　図２５に示す針先３０の保護状態において、側方覆い片５６，５６は、第２針先カバー部１０６よりも基端側まで延び出している。これにより、第２針先カバー部１０６で覆われた針先３０は、側方覆い片５６，５６の対向面間に位置しており、外部への露出が防止されている。特に、側方覆い片５６，５６が第２返り片７４と第２針先制止部１０８との接続部分まで覆うように設けられていることから、針先３０が第２返り片７４に沿って第２針先制止部１０８に当接するまで移動したとしても、針先３０が側方に露出することなく側方覆い片５６，５６で覆われた状態に保持される。

　ところで、針先プロテクタ９０による針先３０の保護状態において、内針２６が針先プロテクタ９０に対して相対的に移動することによって、図２６に示すように、針先３０が第２針先カバー部１０６から外れて、第１針先カバー部１００に突き当てられた状態となることも考えられる。この状態において、針先３０が第１返り片５４に沿って第２側板部９６側（図２６中、上方）へ移動すると、針先３０が第２側板部９６を押し退けながら第１返り片５４の突出先端側へ外れてしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、第１返り片５４の突出先端部に第１針先制止部１０２が設けられており、第１返り片５４に沿って移動した針先３０が第１針先制止部１０２に係止されることで、針先３０が第１返り片５４の突出先端側へ外れないようにされている。これにより、針先３０が第１針先カバー部１００で覆われた保護状態に保持されて、誤穿刺の発生などを防ぐことができる。

　また、本実施形態では、第２返り片７４の突出先端部に第２針先制止部１０８が設けられており、針先３０が第２針先カバー部１０６から第２返り片７４の突出先端側へ外れ難くなっている。それ故、内針２６の針先３０が針先プロテクタ９０に対して左右方向に移動しても、針先３０の保護状態が維持される。

　第２針先制止部１０８の突出寸法は、第１針先制止部１０２の突出寸法よりも小さくされている。これにより、図２５に示す針先３０の保護状態において、第２針先制止部１０８と第１先端保護片５２との間に針先３０が入り難く、第２針先制止部１０８と第１先端保護片５２との間に針先３０が入ったとしても、内針２６が第２針先制止部１０８を押すことによる図２６の状態への移行が生じ難くなっている。

　なお、本実施形態の図２４を第１実施形態の図２と対比して判るように、内針２６への外挿装着状態において針先覆い部９８，１０４（５０，７０）の内針２６への当接部分における当接角度が第１実施形態と異なっている。第１実施形態では、内針２６への当接部分が、内針２６に向けて斜め方向から傾斜接近する返り片５４，７４の先端面とされている。一方、本実施形態では、針先覆い部９８，１０４の先端に設けられた針先制止部１０２，１０８が内針２６と略平行に延びており、かかる針先制止部１０２，１０８の各表面が、内針２６への当接部分とされている。そして、本実施形態の図２５を第１実施形態の図１６と対比して判るように、針先プロテクタ９０（１０）による針先３０の保護状態において、第１実施形態では、針先覆い部５０，７０の最先端に位置する返り片５４，７４が針ハブ側に傾斜しているものの針先の露出移動方向（針先覆い部５０では図１６中の左方向、針先覆い部７０では図１６中の右方向）に向かっているために有効な返し部分となっていないが、一方、本実施形態では、針先覆い部９８，１０４の最先端に位置する針先制止部１０２，１０８が針先の露出移動方向（針先覆い部９８では図２５中の左方向、針先覆い部１０４では図２５中の右方向）とは逆向きに突出して有効な返し部分とされている。

　図２７には、本発明の第３実施形態としての針先プロテクタ１２０を備えた針組立体１２２の一部が示されている。針先プロテクタ１２０は、図２８～図３３にも示すように、内針２６の針元側（図３０中、左側）に位置する底部１２４と、底部１２４から針先３０側（図３０中、右側）へ延び出す第１側板部９４及び第２側板部９６とを備えている。なお、本実施形態の針先プロテクタ１２０は、図２７に示す外針ハブ１３８（後述）への収容状態において、第１，第２実施形態に比して中心軸（針軸）回りで９０°だけ回転した向きで収容されている。それゆえ、以下の説明において、針先プロテクタ１２０の上下方向が針先プロテクタ９０の左右方向に相当すると共に、針先プロテクタ１２０の左右方向が第２実施形態の針先プロテクタ９０の上下方向に相当する。

　底部１２４は、全体として第２実施形態の底部４０と同様の略矩形平板形状とされており、上下の対辺部分から針先３０側（前側）へ立ち上がるように第１側板部９４と第２側板部９６とが一体形成されている。底部１２４には、中央部分を板厚方向に貫通する挿通孔４６が形成されている。底部１２４には、左右両側の対辺部分から左方又は右方へ突出する凸部１２６が形成されている。凸部１２６は、底部１２４の左右対辺部分において上下方向で相互に離隔した位置に２つが形成されており、左右両側に合計４つが形成されている。凸部１２６は、左右対辺部分にそれぞれ設けられていればよく、各左右対辺部分における形成数や配置は特に限定されない。

　針先プロテクタ１２０は、プレス成形品とされており、金属素板のプレス加工によって製造される際に、先ず、４つの凸部１２６，１２６，１２６，１２６以外の部分において金属素板から切り離される。この各凸部１２６を外れた位置での金属素板からの切り離し（プレスカット）は、曲げ等の応力が加えられる前の平板状の金属素板からの切断であることから、バリや歪を生じることなく、高精度な切断が可能とされる。次に、各凸部１２６において金属素板との連続性を維持しながら、曲げ加工によって針先プロテクタ１２０の各部が形成される。その後、各凸部１２６が切断されることで、針先プロテクタ１２０が製造される。凸部１２６の切断よりも前に曲げ加工が行われることから、凸部１２６の切断部分は曲げ加工前に切断された他の切断部分よりも切断時のバリが発生し易く、形状及び寸法精度が低くなり易い。要するに、本実施形態では、金属素板からの切り離しに際してのバリの発生部分や加工精度の低い部分が、凸部１２６に限定されており、凸部１２６を外れた切断部分でのバリの防止や加工精度の向上が図られている。なお、加工精度の低い部分が凸部１２６に限定されていることから、必要に応じて凸部１２６に面取りや研磨などの後処理を行うことによって、後処理の手間を少なくしながら切断部分全体にわたって寸法及び形状の高い精度を実現することもできる。

　このような針先プロテクタ１２０の製造において、各凸部１２６以外の部分が金属素板から切り離された状態で、底部１２４を上下中央に向けて前方へ凸となる弓形に湾曲させながら第１，第２側板部９４，９６等のプレス曲げ加工による形成を行うことが望ましい。これによれば、各凸部１２６を金属素板から切り離して底部１２４の湾曲変形を解除することによって、金属素板に対する第１，第２側板部９４，９６曲げ角度を大きくすることなく、第１，第２側板部９４，９６の底部１２４に対する傾斜角度を９０°よりも小さく設定することができる。それゆえ、針先プロテクタ１２０の後述する針先保護状態での形状を容易に実現することができる。本実施形態では、凸部１２６が左右方向の両端部分に形成されていることから、左右両側の凸部１２６，１２６間において、底部１２４を弓形に撓ませ易くなっている。なお、底部１２４は、上記のように弓形に湾曲させながらプレス曲げ加工を行った結果として僅かに湾曲していたとしても、実質的に平板形状と捉えることができる。また、底部１２４は、曲げ加工等によって積極的に湾曲等した板形状とされていてもよい。

　第１針先保護部９８の基端部分である第１先端保護片５２と第１段差状部５８との連続部分には、図２８～図３０に示すように、第１側板部９４の板幅方向である左右方向の両端部分にそれぞれ逃し部としての第１逃し部１２８が形成されている。第１逃し部１２８は、左右方向の外方に向けて開口する切欠き状（本実施形態では湾曲した凹形の切欠き状）とされており、左右方向の外方に向けて前後方向の幅寸法が大きくなる拡開形状とされている。このような第１逃し部１２８が形成されていることにより、図３２に示すように、第１針先保護部９８において最外周に位置する角部である第１先端保護片５２と第１段差状部５８との連続部分の左右両端部分は、針軸方向の投影視において、二点鎖線で仮想的に示した第１逃し部１２８がない場合に比して、外形線が曲線となっている。要するに、第１針先保護部９８における第１先端保護片５２と第１段差状部５８との連続部分がくびれ状とされて、左右方向で幅狭となっている。これにより、第１先端保護片５２と第１段差状部５８との連続部分が外針ハブ１３８の内周面と接触（干渉）しても、外針ハブ１３８の内周面における干渉部分が針先プロテクタ１２０によって削られ難くなる。第１針先保護部９８が外針ハブ１３８の内周面に第１逃し部１２８の形成部分で接したとしても、当接部分が湾曲形状とされた第１逃し部１２８の形成によって針軸方向視で面取り状とされていることから、接触面を広く確保することができて、外針ハブ１３８の内周面に引っ掻き傷等の損傷が生じ難い。

　同様に、第２針先保護部１０４の基端部分である第２先端保護片７２と第２段差状部７６との連続部分には、逃し部としての第２逃し部１３０が左右方向の両端部分にそれぞれ形成されており、第２針先保護部１０４の基端部分が切欠き状の第２逃し部１３０の形成によってくびれ状に幅狭となっている。これにより、第２逃し部１３０を備えた第２先端保護片７２と第２段差状部７６との連続部分においても、第１逃し部１２８を備えた第１先端保護片５２と第１段差状部５８との連続部分と同様の効果が発揮される。第１逃し部１２８と第２逃し部１３０は、互いに略同じ形状及び大きさであってもよいが、互いに異なる形状や大きさとされていてもよく、例えば、短尺の第２側板部９６側に設けられる第２逃し部１３０が、長尺の第１側板部９４側に設けられる第１逃し部１２８よりも小さくされ得る。

　本実施形態の針先プロテクタ１２０において、第２側板部９６の第２針先保護部１０４には、第１側板部９４の側方覆い片５６と同様に、第２針先保護部１０４の左右側方を覆う側方覆い片１３２が設けられている。側方覆い片１３２は、図２８，図３１に示すように、第２針先保護部１０４における第２返り片７４から延び出している。なお、本実施形態の第２針先保護部１０４は、第２実施形態に比して、第２先端保護片７２の長さが短く、第２返り片７４の長さが長くされている。

　第１側板部９４から第１側板部９４と第２側板部９６の対向間へ延び出す側方規制片としての第１突出片６６には、規制突部としての第１規制突部１３４が形成されている。第１規制突部１３４は、図２８～図３１に示すように、第１突出片６６の前側において内針２６側へ向けて左右方向の内側へ突出している。本実施形態の第１規制突部１３４は、第１突出片６６の前端部分が左右方向の内側へ曲げられて延び出していることによって、第１突出片６６の前側の端部に一体形成されている。第１規制突部１３４は、左右方向内側の突出先端が、内針２６の外周面に対して、左右方向で離隔して近接位置している。

　第２側板部９６から第１側板部９４と第２側板部９６の対向間へ延び出す側方規制片としての第２突出片８４には、内針２６側へ向けて突出する規制突部としての第２規制突部１３６が形成されている。第２規制突部１３６は、第１規制突部１３４との違いとして、第２突出片８４の前側の端部に一体形成されており、突出方向が左右逆向きとされている。第１規制突部１３４と第２規制突部１３６は、図２８～図３３に示す針先プロテクタ１２０の針先保護作動前の状態において、左右方向で相互に離れた位置にある。なお、第１，第２規制突部１３４，１３６は、本実施形態のように曲げ加工によって一体形成されることが望ましいが、例えば、第１，第２突出片６６，８４の先端部分が肉盛り等によって部分的に厚肉とされることで設けられていてもよいし、第１，第２突出片６６，８４の先端部分に別部品として取り付けられていてもよい。また、このような第１及び第２の規制突部（１３４，１３６）は、内針２６への当接による位置規制効果を考慮すると、一方のみが設けられていても良いし、各突出片８４の先端である必要もなく、更に、第１及び第２の側板部９４，９６の対向間に延びだして当該突出片８４が設けられる側方規制片の具体的な形成位置や形状などは限定されない。

　針先プロテクタ１２０は、図２７に示すように、外針ハブ１３８の内周に収容されており、内針２６に対して外挿状態で装着されている。針先プロテクタ１２０は、第２実施形態と同様に、内針２６が第１，第２針先保護部９８，１０４の間に挿通されることによって、第１，第２側板部９４，９６が対向方向で離隔しており、第１，第２針先保護部９８，１０４が第１，第２側板部９４，９６及び底部１２４の弾性によって内針２６に押し当てられている。後述する図３４，図３５にも示されているように、本実施形態では、内針２６の刃面３２に対する針先プロテクタ１２０の周方向の向きが、前記第１，第２実施形態に対して９０°回転した異なる向きとされており、刃面３２が第２側板部９６側に向いている。内針２６に対する針先プロテクタ１２０の周方向での向きは、特に限定されない。

　本実施形態の外針ハブ１３８は、内周に部分的に大径とされた拡径収容部１４０を備えており、内針２６への外挿装着によって相互に離隔した第１，第２針先保護部９８，１０４が拡径収容部１４０に収容されている。拡径収容部１４０の形成部分における外針ハブ１３８の最大内径寸法は、内針２６に装着された針先プロテクタ１２０の第１，第２針先保護部９８，１０４における最大外径寸法よりも大きくされている。拡径収容部１４０は、軸方向の中間において内径寸法が最大となっている。拡径収容部１４０の内周面は、最大内径部分から軸方向で離れるに従って内周へ傾斜するテーパ面で構成されており、本実施形態では内周へ開口する凹状湾曲面とされている。特に、拡径収容部１４０の内周面は、最大内径部分よりも軸方向基端側のテーパ面の傾斜角度が、充分に小さくされており、最大内径部分よりも軸方向先端側のテーパ面の傾斜角度に比して小さくされている。これにより、外針ハブ１３８の内周面を成形する成形用金型を外針ハブ１３８から取り外す際に、後述する係止突部１４２を乗り越えた基端側への脱型が容易とされている。

　外針ハブ１３８における拡径収容部１４０の基端側（後方）には、内周面に突出する係止突部１４２が形成されている。係止突部１４２は、周方向の全周に亘って連続して設けられた環状であってもよいし、周方向で部分的に設けられていてもよく、周方向に複数を設けることもできる。係止突部１４２は、周方向で略一定の断面形状であってもよいし、周方向で断面形状が変化していてもよい。係止突部１４２の形成部分における外針ハブ１３８の最小内径寸法は、内針２６に装着された針先プロテクタ１２０の第１，第２針先保護部９８，１０４が通過可能な径寸法よりも小さくされている。これにより、内針２６を基端側へ引き抜く際に、第１，第２針先保護部９８，１０４において係止突部１４２に係止された針先プロテクタ１２０が内針２６に対して針先３０側へ相対移動するようになっている。また、後述する針先保護状態の針先プロテクタ１２０は、第１，第２針先保護部９８，１０４が相互に接近していることから、係止突部１４２の内周を通過可能となる。なお、針先プロテクタ１２０を外針ハブ１３８の内周へ挿入する際には、第２針先制止部１０８を刃面３２上に位置させて、第１，第２針先保護部９８，１０４を上下方向で相互に接近させた状態で挿入することにより、内針２６に装着された針先プロテクタ１２０の第１，第２針先保護部９８，１０４を係止突部１４２よりも先端側へ挿入することが可能となる。

　針先プロテクタ１２０の第１，第２針先保護部９８，１０４は、第１，第２逃し部１２８，１３０が形成されていることによって、最大外径寸法が小さくされていることから、外針ハブ１３８に挿入し易くなっている。また、針先プロテクタ１２０を外針ハブ１３８に挿入する際に、第１，第２針先保護部９８，１０４が第１，第２逃し部１２８，１３０の形成部分において外針ハブ１３８の内周面に接触したとしても、第１，第２針先保護部９８，１０４の最大外径部分が第１，第２逃し部１２８，１３０の形成によって面取り形状とされていることから、接触圧が低減されて、外針ハブ１３８の内周面の損傷が防止される。

　針先プロテクタ１２０の底部１２４は、凸部１２６の形成部分において左右方向で最も外側に突出していることから、凸部１２６において外針ハブ１３８の内周に接触し易い。そこで、凸部１２６に面取り等の後処理を行うことにより、底部１２４の左右縁部の全体に後処理を行う場合よりも簡単に、底部１２４の接触による外針ハブ１３８の損傷を防止することも可能である。

　そして、内針２６が外針ハブ１３８に対して基端側へ引き抜かれる際に、図３４，図３５に示すように、内針２６の針先３０側へ移動した針先プロテクタ１２０が、内針２６の針先３０を収容して保護するようになっている。これにより、使用後の内針２６の針先３０が露出せず、針先３０に誤って触れるのを防いで、安全性を確保することができる。なお、針先プロテクタ１２０が針先３０を保護する際の作動や保護態様については、第２実施形態と略同様の点に関する説明を省略する。

　本実施形態の針先プロテクタ１２０は、第１針先保護部９８に側方覆い片５６が設けられているだけでなく、第２針先保護部１０４にも側方覆い片１３２が設けられている。それゆえ、仮に第１針先保護部９８の側方覆い片５６が第２針先保護部１０４の上下側方から離れた位置に移動したとしても、針先３０が第２針先保護部１０４から左右側方へ露出し難く、針先３０のより確実な保護が実現される。

　針先プロテクタ１２０が針先３０を保護した状態では、第１，第２側板部９４，９６が相互に接近することから、図３５に示すように、第１，第２突出片６６，８４に設けられた第１，第２規制突部１３４，１３６が内針２６の左右両側に所定の距離を隔てて近接位置している。これにより、仮に内針２６が第１，第２側方カバー片６２，８０から上下外方に外れた位置に移動したとしても、内針２６の左右方向への傾動が第１，第２規制突部１３４，１３６への当接によって傾斜角度が小さい傾動初期段階で速やかに規制される。それゆえ、針先３０の左右側方への露出がより確実に防止される。

　以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、第１，第２突出片６６，８４は必須ではなく、何れか一方だけが設けられていてもよいし、何れも設けられていなくてもよい。また、第１，第２突出片６６，８４は、例えば第１，第２側板部４２，４４の幅方向端部が押されて針先保護状態が無理やり解除されてしまうことを有効に防ぐためには、長さ寸法が大きいことが望ましいが、第１，第２突出片６６，８４の長さ寸法は、第１，第２側方カバー片６２，８０よりも小さくされ得る。

　第１，第２針先保護部５０，７０の具体的な構造は、特に限定されない。即ち、前記実施形態の第１針先保護部５０では、それぞれ傾斜形状とされた第１先端保護片５２と第１返り片５４とを有する構造を例示したが、例えば、第１本体部４８の先端において針軸方向と略直交して内針２６へ向けて突出する板状の第１針先保護部を設けることもできる。この場合には、針先プロテクタの内針２６への装着状態において第１針先保護部の突出先端が内針２６の外周面に当接すると共に、内針２６の引抜きによって第１針先保護部が内針２６の先端側を覆うことで針先３０が保護される。なお、第２針先保護部についても、同様の構造を採用することができる。

　第１側方カバー片６２と第１突出片６６の形成部分における第１側板部４２の板幅方向の中心と、第２側方カバー片８０と第２突出片８４の形成部分における第２側板部４４の板幅方向の中心とが、相互に各側方カバー片６２，８０と反対側へ偏倚していることが望ましいが、それら第１側板部４２の板幅方向の中心と第２側板部４４の板幅方向の中心は、幅方向で互いに略一致する位置に設定されていてもよい。

　前記第１実施形態では、第１，第２側方カバー片６２，８０が第１，第２側板部４２，４４の板幅方向の側端部に開口する切欠き状の第１，第２凹状部６４，８２内に設けられていたが、第１，第２凹状部６４，８２は必須ではない、なお、前記第６の態様に係る実施形態では、第１，第２凹状部６４，８２の少なくとも一方が設けられて、第１，第２側方カバー片６２，８０の少なくとも一方が第１，第２凹状部６４，８２において突出している。

　第１，第２切欠き６０，７８の内面形状は、好適には、前記第１実施形態に示すような幅方向中央部分が最深部となる湾曲面とされるが、例えば、略一定の深さ寸法で幅方向に延びていてもよいし、深さ寸法が略一定の変化率で幅方向両側から幅方向中央に向けて大きくなる直線的な形状であってもよい。

　前記第１実施形態では、第１，第２側板部４２，４４の両方に切欠き（第１，第２切欠き６０，７８）が形成されている例を示したが、第１，第２側板部４２，４４の何れか一方だけに切欠きを設けることもできるし、第１，第２側板部４２，４４の両方において切欠きが設けられていない場合もある。

　前記第１実施形態では、内針２６の外針１８からの引抜きに際して、針先プロテクタ１０の第１，第２側板部４２，４４（第１，第２返り片５４，７４）と内針２６との当接が解除されることによって、第１，第２側板部４２，４４が弾性的な復元力（ばね力）によって針先保護状態へ移行する例を示した。しかしながら、針先プロテクタ１０の針先保護状態への移行は、必ずしも針先プロテクタ１０の弾性的な復元力に基づく変形に限定されない。具体的には、例えば、外針ハブ２０の内周において針先プロテクタ１０よりも基端側にリング部材を配して、針先プロテクタ１０が、内針２６の大径部８８への係止によって基端側へ移動して、リング部材に挿入されることで、第１，第２側板部４２，４４がリング部材によって相互に接近せしめられて、針先プロテクタが針先保護状態に移行するようにしてもよい。この場合に、リング部材は、針先プロテクタ１０への外挿状態で外針ハブ２０から離脱可能とされて、針先プロテクタ１０を針先保護状態に保持する。

　前記第５の態様又は前記第６の態様に係る実施形態において、側方カバー片は、穿刺針に対する板幅方向の一方側だけに設けられていてもよい。また、前記第５の態様又は前記第６の態様に係る実施形態において、例えば、一対の側方カバー片は、第１側板部と第２側板部の何れか一方における板幅方向の両端縁部に設けることもできる。

　前記第２実施形態では、第１針先カバー部１００と第２針先カバー部１０６との両方に針先制止部がそれぞれ設けられた例を示したが、針先制止部は、第１針先カバー部１００と第２針先カバー部１０６との何れか一方だけに設けられていてもよい。

　なお、本発明は、穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部および第２側板部を備えており、該第１側板部と該第２側板部の各先端部分が相対的に接近することで該針先を覆う針先覆い部が構成されるようになっていると共に、該第１側板部と該第２側板部の少なくとも一方の先端縁部には板幅方向に延びる切欠きが設けられており、該穿刺針への装着状態で該穿刺針が該切欠きに入り込んで位置するようになっている第１３の態様を含む。

　すなわち、上述の特許文献１に記載された針先プロテクタでは、穿刺針への装着状態や穿刺針の引抜操作時における穿刺針に対する側方への位置ずれを抑えるために、針軸方向に延びる凹溝を形成し、かかる凹溝の底部へ穿刺針が当接状態で入り込む構造となっている。そのために、穿刺針に対する針先プロテクタの当接力や拘束力が大きくなり過ぎ、特に穿刺針の引抜操作時には摩擦抵抗や引っ掛かりによって操作感が阻害されるおそれもあった。

　そこで、第１３の態様に従う構造とされた針先プロテクタによれば、第１側板部と第２側板部の少なくとも一方の先端縁部に板幅方向に延びる切欠きを設けたことで、穿刺針への装着状態において針先プロテクタのぐらつき等が抑えられて、針先側への移動に際してもガイド作用による安定性の向上が図られ得る。特に、特許文献１に記載の如き針軸方向に延びる溝では、穿刺針の移動時における摩擦抵抗の問題や、穿刺針への傾動時における引っ掛かりなども懸念されるが、側板部の板幅方向に延びる切欠きとしたことによって、そのような問題も回避される。

　前記第１～第１３の態様に記載された各構造は、適宜に選択された２つ以上を組み合わせて採用することもできる。

　本発明に係る針先プロテクタは、穿刺針の抜針後に外針ハブの内腔が止血弁によって遮断される止血弁付き針組立体に適用することもできる。

１０　針先プロテクタ（第１実施形態）
１２　針組立体
１４　外針ユニット
１６　内針ユニット
１８　外針
２０　外針ハブ
２２　かしめピン
２３　ねじ部
２４　係止段差部
２６　内針（穿刺針）
２８　内針ハブ
３０　針先
３２　刃面
３４　接続部
３６　フィルタキャップ
３８　フィルタ
４０　底部
４２　第１側板部
４４　第２側板部
４６　挿通孔
４８　第１本体部
５０　第１針先保護部（針先覆い部）
５２　第１先端保護片
５４　第１返り片
５６　側方覆い片
５８　第１段差状部
６０　第１切欠き（切欠き）
６２　第１側方カバー片（側方カバー片）
６４　第１凹状部（凹状部）
６６　第１突出片（突出片）
６８　第２本体部
７０　第２針先保護部（針先覆い部）
７２　第２先端保護片
７４　第２返り片
７６　第２段差状部
７８　第２切欠き（切欠き）
８０　第２側方カバー片（側方カバー片）
８２　第２凹状部（凹状部）
８４　第２突出片（突出片）
８６　成形用スペース
８８　大径部
９０　針先プロテクタ（第２実施形態）
９２　針組立体
９４　第１側板部
９６　第２側板部
９７　薄肉部（応力伝達抑制部）
９８　第１針先保護部（針先覆い部）
１００　第１針先カバー部（針先カバー部）
１０２　第１針先制止部（針先制止部）
１０４　第２針先保護部（針先覆い部）
１０６　第２針先カバー部（針先カバー部）
１０８　第２針先制止部（針先制止部）
１１０　薄肉部
１２０　針先プロテクタ（第３実施形態）
１２２　針組立体
１２４　底部
１２６　凸部
１２８　第１逃し部（逃し部）
１３０　第２逃し部（逃し部）
１３２　側方覆い片
１３４　第１規制突部（規制突部）
１３６　第２規制突部（規制突部）
１３８　外針ハブ
１４０　拡径収容部
１４２　係止突部

Claims

　穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、
　前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部と第２側板部が、該穿刺針を両側から挟んで相互に対向して設けられていると共に、
　該第１側板部および該第２側板部には、板幅方向で互いに反対側となる各一方の幅方向端縁部において対向方向の内方に向かって突出する側方カバー片が形成されており、該穿刺針への装着状態で該第１側板部と該第２側板部の各該側方カバー片の間に該穿刺針が位置するようになっている針先プロテクタ。
　前記第１側板部および前記第２側板部における各板幅方向の中心が相互に各前記側方カバー片とは反対側にずれている請求項１に記載の針先プロテクタ。
　前記第１側板部と前記第２側板部には、前記側方カバー片と板幅方向で反対側に位置する各一方の幅方向端縁部において対向方向の内方に向かって突出する突出片が形成されており、
　該突出片が該側方カバー片の外方に位置している請求項１又は２に記載の針先プロテクタ。
　前記底部が前記穿刺針の挿通孔を有する板形状とされて、該底部の両側辺部から立ち上がるようにして前記第１側板部と前記第２側板部が一体形成されていると共に、
　前記側方カバー片が該第１側板部と該第２側板部における基端側から２．５ｍｍ以上離れて形成されていることにより、
　該底部上には、該第１側板部と該第２側板部の基端部分の対向面間において板幅方向両側に開放された成形用スペースが設けられている請求項１～３の何れか一項に記載の針先プロテクタ。
　前記第１側板部と前記第２側板部が相互に接近して前記針先の露出が防がれた針先保護状態において、該第１側板部と該第２側板部の各前記側方カバー片の突出先端が該第１側板部と該第２側板部の各一方に押し当てられている請求項１又は２に記載の針先プロテクタ。
　穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、
　前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部と第２側板部が、該穿刺針を両側から挟んで相互に対向して設けられていると共に、
　該第１側板部と該第２側板部の少なくとも一方は、板幅方向の中央が該穿刺針の針軸に対して板幅方向にずれており、該穿刺針への接近側の幅方向端縁部において該第１側板部と該第２側板部との対向方向の内方に向かって突出する側方カバー片を備えている針先プロテクタ。
　穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、
　前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部および第２側板部を備えており、
　該第１側板部と該第２側板部の少なくとも一方は、板幅方向の側端部に開口する切欠き状の凹状部を有すると共に、該凹状部において内方に突出して該穿刺針の側方に位置する側方カバー片を備えている針先プロテクタ。
　穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、
　前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部および第２側板部を備えており、
　該第１側板部と該第２側板部の少なくとも一方の先端部分には、該穿刺針へ向けて突出する針先カバー部が設けられており、
　該針先カバー部の突出先端部には該針元側へ突出する針先制止部が設けられている針先プロテクタ。
　穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、
　前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部と第２側板部が、該穿刺針を両側から挟んで相互に対向して設けられており、
　該第１側板部と該第２側板部の対向間に延び出した側方規制片が設けられており、
　該側方規制片には該穿刺針に向けて突出する規制突部が設けられている針先プロテクタ。
　前記規制突部が前記側方規制片における前記針先側の端部に設けられている請求項９に記載の針先プロテクタ。
　前記側方規制片が前記第１側板部又は前記第２側板部からそれら第１側板部と第２側板部との対向方向の内方に向かって突出している請求項９又は１０に記載の針先プロテクタ。
　穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐプレス成形品の針先プロテクタであって、
　前記穿刺針の針元側に位置する底部から曲げ加工により曲げられた第１側板部と第２側板部がそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びて対向して設けられており、
　該底部が該穿刺針の挿通孔を有する板形状とされて、該第１側板部と該第２側板部が該底部の両側辺部から立ち上がるように一体形成されており、
　該底部には該第１側板部及び該第２側板部の板幅方向で外方へ向けて突出する凸部が形成されている針先プロテクタ。
　穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、
　前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部と第２側板部が、該穿刺針を両側から挟んで相互に対向して設けられて、該第１側板部と該第２側板部の各先端部分は、相対的に接近することで該針先を覆う針先覆い部を構成するようになっており、
　該針先覆い部が該穿刺針の針元側となる基端部において外方へ突出しており、
　該針先覆い部の基端部には板幅方向の両側において切欠き状の逃し部が形成されている針先プロテクタ。
　穿刺針に装着されて針先側に移動することで該針先の露出を防ぐ針先プロテクタであって、
　前記穿刺針の針元側に位置する底部からそれぞれ該穿刺針の前記針先側に延びる第１側板部と第２側板部が対向して設けられており、
　該底部が該穿刺針の挿通孔を有する板形状とされて、該第１側板部と該第２側板部が該底部の両側辺部から立ち上がるように一体形成されており、
　該底部には薄肉の応力伝達抑制部が該挿通孔の周囲を囲んで形成されている針先プロテクタ。