WO2020241152A1

WO2020241152A1 - バルブステムシール

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Publication number: WO2020241152A1
Application number: PCT/JP2020/017989
Authority: WO
Inventors: 一寿平山
Original assignee: Nok株式会社
Priority date: 2019-05-27
Filing date: 2020-04-27
Publication date: 2020-12-03
Also published as: CN113840978A; JPWO2020241152A1; US20220307601A1; EP3978732A1

Abstract

【課題】バルブガイドからの抜けを効果的に抑制可能なバルブステムシールを提供する。【解決手段】バルブガイド２の端部２ａの外周面２ｂに取り付けられる、筒状部１１を備える金属環１０と、前記バルブガイド２を挿通するバルブステム５に密接するように、前記金属環１０に支持されて設けられるシールリップ２１を備えるリップ部材２０と、を備え、前記筒状部１１に切り欠き１４が設けられ、当該切り欠き１４内に、前記バルブガイド２の前記外周面２ｂに設けられた係合凹部３に向けて突出し、当該係合凹部３に対して前記バルブガイド２からの前記金属環１０の抜け方向Ｄに係合する、舌片状の係合片１５が設けられているバルブステムシール１であって、前記係合片１５は、当該係合片１５の始端１５ａから前記抜け方向Ｄに第１の長さＬ１だけ延出した部分において前記筒状部１１の径方向内側に向けて屈曲し、前記第１の長さＬ１は、屈曲した部分１５ｂから前記係合片１５の先端１５ｃまでの、前記筒状部１１の軸線Ｃ方向における長さＬ２よりも長くなるように形成されている、バルブステムシール１を提供する。

Description

バルブステムシール

　本発明は、バルブステムシールに関する。

　従来より、シリンダヘッドには、筒状のバルブガイドと、当該バルブガイドを挿通し、カムとシリンダの間で往復移動するバルブステムが設けられている。バルブステムとバルブガイドの摺動を円滑に行うために、バルブステムとバルブガイドの摺動面には、カム側から潤滑油が供給される。潤滑油の供給量、すなわち油漏れ量が多すぎると、潤滑油がシリンダ側の、給排気用のポートに漏出して燃焼し、白煙が発生することがある。また油漏れ量が少なすぎると、バルブステムとバルブガイドの間に焼き付きやかじりが生じることがある。油漏れ量を適正に調整し、上記のような白煙発生や焼き付き、かじり等を抑制するために、バルブガイドのカム側端部には、バルブステムシールが設けられている。バルブステムシールは、バルブステムによって挿通されて、バルブガイドのカム側端部を覆うように設けられている。バルブステムシールは、これに設けられたシールリップにより、油漏れ量を調整する。

　バルブステムシールには、バルブが設けられたシリンダ側から、排気ガスに基づく背圧が作用する。自動車や一般産業機械のエンジンにおいては、ダウンサイジング化の流れを受けターボチャージャー等の採用が進み、これに伴いポートからの背圧が高まっている。背圧が高いと、シールリップが開弁してガスがカム側へと漏れるので、バルブステムシールには、これを抑制するための背圧リップが設けられている。

　このように、バルブステムシールはシリンダ側からの背圧を受ける状態にあるため、バルブガイドからカム側へとバルブステムシールが抜けてしまう懸念がある。
　これに対し、特許文献１には、バルブガイドに外挿される筒状部を備える金属環と、金属環に保持されてバルブステムに密接するシールリップを備えるリップ部材とを有し、筒状部に切り欠きを設けて、切り欠き内に、バルブガイドの外径面に設けた係合凹部に対し金属環の抜け方向に係合する舌片状の係合片が設けられている、バルブステムシールが開示されている。

特許第６１８９１６８号公報

　上記のようなバルブステムシールは、係合片がバルブガイドの係合凹部に係合するため、バルブガイドからの抜けを抑制可能である。
　バルブガイドからの抜けを更に効果的に抑制可能なバルブステムシールが望まれている。

　本発明が解決しようとする課題は、バルブガイドからの抜けを効果的に抑制可能なバルブステムシールを提供することである。

　本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、バルブガイドの端部の外周面に取り付けられる、筒状部を備える金属環と、前記バルブガイドを挿通するバルブステムに密接するように、前記金属環に支持されて設けられるシールリップを備えるリップ部材と、を備え、前記筒状部に切り欠きが設けられ、当該切り欠き内に、前記バルブガイドの前記外周面に設けられた係合凹部に向けて突出し、当該係合凹部に対して前記バルブガイドからの前記金属環の抜け方向に係合する、舌片状の係合片が設けられているバルブステムシールであって、前記係合片は、当該係合片の始端から前記抜け方向に第１の長さだけ延出した部分において前記筒状部の径方向内側に向けて屈曲し、前記第１の長さは、屈曲した部分から前記係合片の先端までの、前記筒状部の軸線方向における第２の長さよりも長くなるように形成されている、バルブステムシールを提供する。
　上記のようなバルブステムシールは、係合片が、始端から筒状部の径方向内側に向けて屈曲した部分までの、金属環の抜け方向に延出した部分である延出支持部と、屈曲した部分から先端までの部分である係合部を備えた構成となっている。このようなバルブステムシールにおいては、バルブガイドに取り付ける際の、係合片が係合凹部に係合する前の取り付け中の段階では、係合片の係合部が、バルブガイドの外周面によって筒状部の径方向外方へ向けて押圧され、原形の位置から径方向外方へ大きく移動する。これに伴い、係合部の始端となる延出支持部の先端も径方向外方へ大きく移動するため、延出支持部は始端において変形し、始端を中心として径方向外方へ向けて回転移動する。ここで、延出支持部の長さである第１の長さ、すなわち回転移動における回転半径は、筒状部の軸線方向における係合部の長さである第２の長さよりも長いため、回転半径が第２の長さより短い場合に比べると、係合片の始端における回転移動の回転角は小さくなる。結果として、取り付け時の係合片の回転移動に起因する、係合片の始端における径方向外方への塑性変形が抑制され、係合片を係合凹部の深い位置で係合させることができる。したがって、バルブガイドからの抜けを効果的に抑制可能なバルブステムシールを提供可能である。

　また、本発明は、バルブガイドの端部の外周面に取り付けられる、筒状部を備える金属環と、前記バルブガイドを挿通するバルブステムに密接するように、前記金属環に支持されて設けられるシールリップを備えるリップ部材と、を備え、前記筒状部に切り欠きが設けられ、当該切り欠き内に、前記バルブガイドの前記外周面に設けられた係合凹部に向けて突出し、当該係合凹部に対して前記バルブガイドからの前記金属環の抜け方向に係合する、舌片状の係合片が設けられているバルブステムシールであって、前記筒状部は、第１筒状部と第２筒状部を備え、前記第１筒状部の内周面が、前記バルブガイドの前記外周面に近接または当接するように取り付けられ、前記第２筒状部の内周面は、前記第１筒状部の前記内周面よりも前記筒状部の軸線から離間して設けられ、前記係合片は、前記第２筒状部に設けられ、前記係合片の先端は、前記第１筒状部の前記内周面よりも前記軸線に近接して設けられている、バルブステムシールを提供する。
　上記のようなバルブステムシールにおいては、バルブガイドに取り付ける際の、係合片が係合凹部に係合する前の取り付け中の段階では、係合片の先端は、バルブガイドの外周面に近接または当接する第１筒状部の内周面よりも筒状部の軸線に近接して設けられているため、係合片の先端が、バルブガイドの外周面によって筒状部の径方向外方へ向けて押圧され、原形の位置から径方向外方へ大きく移動する。これに伴い、係合片は始端において変形し、始端を中心として径方向外方へ向けて回転移動する。
　ここで、筒状部は、第１筒状部と第２筒状部を備え、第１筒状部の内周面が、バルブガイドの外周面に近接または当接するように取り付けられ、第２筒状部の内周面は、第１筒状部の内周面よりも筒状部の軸線から離間して設けられ、係合片は、第２筒状部に設けられている。すなわち、係合片の始端は、バルブガイドの外周面から離間して位置せしめられた第２筒状部に設けられている。したがって、係合片の長さは、係合片の始端がバルブガイドの外周面近傍に設けられた場合に比べると、少なくともこの第２筒状部の内周面と第１筒状部の内周面との間の離間した距離の分は、長くなっている。このため、上記のような回転移動における回転半径が長くなり、係合片の始端における回転移動の回転角は小さくなる。結果として、取り付け時の係合片の回転移動に起因する、係合片の始端における径方向外方への塑性変形が抑制され、係合片を係合凹部の深い位置で係合させることができる。したがって、バルブガイドからの抜けを効果的に抑制可能なバルブステムシールを提供可能である。

　本発明によれば、バルブガイドからの抜けを効果的に抑制可能なバルブステムシールを提供することができる。

本発明の第１実施形態におけるバルブステムシールの、一部切り欠きした正面図である。上記第１実施形態におけるバルブステムシールの、バルブガイドへ取り付ける際の状態を示した説明図である。本発明の第２実施形態におけるバルブステムシールの、一部切り欠きした正面図である。上記第２実施形態におけるバルブステムシールの、バルブガイドへ取り付ける際の状態を示した説明図である。上記第２実施形態の変形例におけるバルブステムシールの説明図である。

　以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
［第１実施形態］
　図１は、本第１実施形態におけるバルブステムシール１の、一部切り欠きした正面図である。バルブステムシール１は、シリンダヘッド４に設けられている。より詳細には、シリンダヘッド４には、シリンダヘッド４のシリンダ側ＣＹとカム側ＣＡとを区画する壁部を挿通するように、筒状のバルブガイド２が設けられている。バルブガイド２の内側には、バルブガイド２を挿通するようにバルブステム５が設けられている。バルブステムシール１は、このように設けられたバルブガイド２の、カム側ＣＡ側の端部２ａの外周面２ｂに、この端部２ａを覆うように設けられている。

　バルブステムシール１は、環状に形成された金属環１０と、リップ部材２０を備えている。
　金属環１０は、筒状部１１、湾曲部１２、及びフランジ部１３を備えている。筒状部１１は、軸線Ｃを中心軸線として略円筒状に形成されている。湾曲部１２は、筒状部１１の軸線Ｃ方向における一方の端部１１ａに、筒状部１１が、軸線Ｃに直交して軸線Ｃへと向かう方向である径方向内方へ向けて弧を描いて湾曲するように設けられている。フランジ部１３は、湾曲部１２の内側端部１２ａからわずかに径方向内方に延びるように、軸線Ｃに対して略垂直に設けられている。このように、金属環１０は、軸線Ｃを含む仮想平面で断面視した際に、略Ｌ字状となるように形成されている。

　リップ部材２０は、金属環１０に支持されて設けられており、シールリップ２１と背圧リップ２２を備えている。
　シールリップ２１は、軸線Ｃ方向において、金属環１０のフランジ部１３から、筒状部１１とは反対側の方向に、かつ径方向内方に向かって斜めに延びるように設けられている。背圧リップ２２は、フランジ部１３から、軸線Ｃ方向において筒状部１１の方向に、かつ軸線Ｃに直交して軸線Ｃから離間する方向である径方向外方に向かって斜めに延びるように設けられている。
　リップ部材２０は、例えばフッ素ゴムやアクリルゴム等のゴム材である。リップ部材２０は、成形型を用いて加硫成形によって形成される。この際に、金属環１０のフランジ部１３の内側端部１３ａ近傍が成形型の中に設けられることにより、リップ部材２０が加硫接着によりフランジ部１３に接着されて、金属環１０と一体に形成される。

　バルブステムシール１は、上記のように、バルブガイド２の、カム側ＣＡ側の端部２ａに設けられる。より詳細には、バルブステムシール１は、軸線Ｃ方向において金属環１０のフランジ部１３とは反対側から、筒状部１１の内周面１１ｃとバルブガイド２の外周面２ｂとが対向して近接または当接するように、バルブガイド２を筒状部１１の内側に挿入させて、バルブガイド２に取り付けられる。バルブステムシール１が取り付けられた状態において、リップ部材２０は、背圧リップ２２の先端２２ａがバルブガイド２のカム側端面２ｃに当接されて押圧され、かつ、シールリップ２１の内側端部２１ａがバルブガイド２内に挿入されるバルブステム５の外周面５ｂに密接され、径方向外方へ向けて押圧されている。図１においては、シールリップ２１の、バルブステムシール１を取り付ける前の原形が二点鎖線で示されており、この部分がバルブステム５の外周面５ｂに押圧されて変形している。これにより、バルブステムシール１の外側の空間Ｓ１と、リップ部材２０よりも径方向において内側に位置する空間Ｓ２とが区画されている。

　上記のように取り付けられたバルブステムシール１の金属環１０が、バルブガイド２からカム側ＣＡに、抜け方向Ｄに向けて移動して抜け落ちるのを抑制するために、バルブガイド２の外周面２ｂに係合凹部３が形成され、金属環１０の筒状部１１には、これに対応して係合片１５が設けられている。
　より詳細には、筒状部１１に切り欠き１４が設けられ、この切り欠き１４内に、バルブガイド２の係合凹部３に向けて突出するように、舌片状の係合片１５が設けられている。

　切り欠き１４は、互いに連続する、端辺部１４ａと、２つの側辺部１４ｂを備えている。
　端辺部１４ａは、軸線Ｃに直交する平面内において筒状部１１の周方向に延びるように形成されている。側辺部１４ｂは、端辺部１４ａの両端部から、フランジ部１３とは反対側に向けて延びるように、軸線Ｃに略平行となるように形成されている。このように、切り欠き１４は略Ｕ形状に形成されており、各側辺部１４ｂの端辺部１４ａとは反対側の端部である２つの底辺部１４ｃ間の部分を除いて、切り欠き１４の内側の部分が、外側の部分から切り離されている。このように、切り欠き１４の内側の部分が切り離されることで、係合片１５が形成されている。
　このような切り欠き１４は、プレス機による抜き打ち加工により形成され得る。

　係合片１５は、上記のように、２つの底辺部１４ｃ間の部分である始端１５ａによって、切り欠き１４の外側と連続し、筒状部１１の一部として形成されている。係合片１５は、始端１５ａから金属環１０のフランジ部１３の側に向けて、抜け方向Ｄに延びるように、舌片状に形成されている。
　係合片１５は、延出支持部１６と係合部１７を備えている。延出支持部１６は、始端１５ａから抜け方向Ｄに延出するように設けられている。係合片１５は、延出支持部１６の抜け方向Ｄにおける先端１５ｂにおいて、筒状部１１の径方向内側に向けて屈曲している。係合部１７は、この屈曲部１５ｂから係合片１５の先端１５ｃまでの部分である。
　延出支持部１６の軸線Ｃ方向における長さ（第１の長さ）Ｌ１は、筒状部１１の軸線Ｃ方向における係合部１７の長さ（第２の長さ）Ｌ２よりも長くなるように、係合片１５は形成されている。
　切り欠き１４及び係合片１５は、筒状部１１上の周方向において１８０度離間した位置に一対が設けられている。なお、図１においては、一対の係合片１５は、図面及び説明を簡単にするために、周方向に９０度離間した位置に図示されている。

　バルブガイド２の係合凹部３は、バルブステムシール１をバルブガイド２に取り付けた際に、係合片１５に対応する位置に設けられている。係合凹部３は、底面３ａ、立ち上がり面３ｂ、及びテーパ面３ｃによって形成されている。底面３ａは、係合凹部３の径方向において最も内側の軸線Ｃに近い位置に設けられている。立ち上がり面３ｂは、底面３ａのカム側端面２ｃ側の端辺に、底面３ａから垂直に、径方向外方に向けて立ち上がってバルブガイド２の外周面２ｂへ垂直に接続するように形成されている。テーパ面３ｃは、底面３ａの立ち上がり面３ｂとは反対側の端辺に、底面３ａに対して鈍角を成して接続し、バルブガイド２の外周面２ｂへと向かうように形成されている。
　本実施形態においては、係合凹部３は、バルブガイド２の外周に、周方向に連続するように、環状に形成されている。しかし、これに限られず、係合片１５に対応する位置に部分的に、周方向に非連続に設けられていてもよい。

　バルブステムシール１の係合片１５は、バルブステムシール１がバルブガイド２に取り付けられた際には、係合凹部３内に収容される。ここで、バルブステムシール１がシリンダ側ＣＹから作用する背圧を受けた場合においては、バルブステムシール１が抜け方向Ｄに移動されるように力が作用する。このときに、係合部１７の先端１５ｃが係合凹部３の立ち上がり面３ｂに当接することにより、係合片１５が係合凹部３に対して抜け方向Ｄに係合し、これにより、バルブステムシール１のバルブガイド２からの抜けが抑制される。

　次に、図１、及び図２を用いて、上記のバルブステムシール１をバルブガイド２に取り付ける際の作用について説明する。図２は、バルブステムシール１の、バルブガイド２へ取り付ける際の状態を示した説明図である。

　上記のようなバルブステムシール１は、金属環１０をバルブガイド２の一端２ａから覆い被せつつ、係合片１５がバルブガイド２の係合凹部３に係合する位置まで移動させることにより、バルブガイド２に取り付けられる。この取り付け時の、係合片１５が係合凹部３に係合する前の取り付け中の段階においては、係合片１５の係合部１７が、バルブガイド２の外周面２ｂによって筒状部１１の径方向外方へ向けて、図２に方向Ｏとして示される方向に押圧され、原形の位置から径方向外方へと大きく移動する。これに伴い、係合部１７の始端となる延出支持部１６の先端すなわち屈曲部１５ｂも径方向外方へ大きく移動するため、延出支持部１６は始端１５ａにおいて変形し、始端１５ａを中心として径方向外方へ向けて、方向Ｒに回転移動する。
　この場合において、延出支持部１６の長さである第１の長さＬ１は、この回転移動における半径となる。したがって、第１の長さＬ１が短いと、この回転移動に要する、延出支持部１６の始端１５ａにおける延出支持部１６の回転角θが大きくなるため、係合片１５が始端１５ａにおいて大きく筒状部１１の径方向外方へ曲げられて塑性変形し、結果として、係合片１５と、係合凹部３との係合が浅くなる懸念がある。

　ここで、本実施形態のバルブステムシール１においては、延出支持部１６の長さである第１の長さＬ１、すなわち回転移動における回転半径は、筒状部１１の軸線Ｃ方向における係合部１７の長さである第２の長さＬ２よりも長いため、回転半径が第２の長さＬ２より短い場合に比べると、係合片１５の始端１５ａにおける回転移動の回転角θは小さくなる。結果として、取り付け時の係合片１５の回転移動に起因する、係合片１５の始端１５ａにおける径方向外方への塑性変形が抑制される。

　次に、上記のバルブステムシール１の効果について説明する。

　上記のようなバルブステムシール１は、バルブガイド２の端部２ａの外周面２ｂに取り付けられる、筒状部１１を備える金属環１０と、バルブガイド２を挿通するバルブステム５に密接するように、金属環１０に支持されて設けられるシールリップ２１を備えるリップ部材２０と、を備え、筒状部１１に切り欠き１４が設けられ、切り欠き１４内に、バルブガイド２の外周面２ｂに設けられた係合凹部３に向けて突出し、係合凹部３に対してバルブガイド２からの金属環１０の抜け方向Ｄに係合する、舌片状の係合片１５が設けられているバルブステムシール１であって、係合片１５は、係合片１５の始端１５ａから抜け方向Ｄに第１の長さＬ１だけ延出した部分において筒状部１１の径方向内方に向けて屈曲し、第１の長さＬ１は、屈曲部（屈曲した部分）１５ｂから係合片１５の先端１５ｃまでの、筒状部１１の軸線Ｃ方向における第２の長さＬ２よりも長くなるように形成されている。
　上記のような構成においては、上記のように作用として説明したように、取り付け時の係合片１５の回転移動に起因する、係合片１５の始端１５ａにおける径方向外方への塑性変形が抑制され、係合片１５を係合凹部３の深い位置で係合させることができる。したがって、バルブガイド２からの抜けを効果的に抑制可能なバルブステムシール１を提供可能である。

［第２実施形態］
　図３は、本第２実施形態におけるバルブステムシール４１の、一部切り欠きした正面図である。バルブステムシール４１は、シリンダヘッド４に設けられている。より詳細には、シリンダヘッド４には、シリンダヘッド４のシリンダ側ＣＹとカム側ＣＡとを区画する壁部を挿通するように、筒状のバルブガイド２が設けられている。バルブガイド２の内側には、バルブガイド２を挿通するようにバルブステム５が設けられている。バルブステムシール４１は、このように設けられたバルブガイド２の、カム側ＣＡ側の端部２ａの外周面２ｂに、この端部２ａを覆うように設けられている。

　バルブステムシール４１は、環状に形成された金属環５０と、リップ部材２０を備えている。
　金属環５０は、筒状部５１、湾曲部５５、及びフランジ部５６を備えている。
　筒状部５１は、第１筒状部５２と第２筒状部５４を備えている。第１筒状部５２は、軸線Ｃを中心軸線として略円筒状に形成されている。第１筒状部５２の一方の端部５２ｂは、軸線Ｃに直交して軸線Ｃから離間する方向である径方向外方へ向けて屈曲した後に、更に軸線Ｃ方向における第１筒状部５２とは反対側へと屈曲する段部５３となっている。第２筒状部５４は、段部５３の第１筒状部５２とは反対側に、段部５３と連続するように設けられている。第２筒状部５４は、第１筒状部５２と同一の軸線Ｃを中心軸線として略円筒状に形成されている。これにより、第２筒状部５４の内周面５４ｃは、第１筒状部５２の内周面５２ｃよりも、距離Ｇだけ軸線Ｃから離間して設けられている。
　湾曲部５５は、第１筒状部５２の軸線Ｃ方向における、第２筒状部５４とは反対側の端部５２ａに、筒状部５１が、軸線Ｃに直交して軸線Ｃへと向かう方向である径方向内方へ向けて弧を描いて湾曲するように設けられている。フランジ部５６は、湾曲部５５の内側端部５５ａからわずかに径方向内方に延びるように、軸線Ｃに対して略垂直に設けられている。

　リップ部材２０は、金属環５０に支持されて設けられており、シールリップ２１と背圧リップ２２を備えている。
　シールリップ２１は、軸線Ｃ方向において、金属環５０のフランジ部５６から、筒状部５１とは反対側の方向に、かつ径方向内方に向かって斜めに延びるように設けられている。背圧リップ２２は、フランジ部５６から、軸線Ｃ方向において筒状部５１の方向に、かつ径方向外方に向かって斜めに延びるように設けられている。
　リップ部材２０は、例えばフッ素ゴムやアクリルゴム等のゴム材である。リップ部材２０は、成形型を用いて加硫成形によって形成される。この際に、金属環５０のフランジ部５６の内側端部５６ａ近傍が成形型の中に設けられることにより、リップ部材２０が加硫接着によりフランジ部５６に接着されて、金属環５０と一体に形成される。

　バルブステムシール４１は、上記のように、バルブガイド２の、カム側ＣＡ側の端部２ａに設けられる。より詳細には、バルブステムシール４１は、軸線Ｃ方向において金属環５０のフランジ部５６とは反対側から、第１筒状部５２の内周面５２ｃとバルブガイド２の外周面２ｂとが対向して近接または当接するように、バルブガイド２を筒状部５１の内側に挿入させて、バルブガイド２に取り付けられる。バルブステムシール４１が取り付けられた状態において、リップ部材２０は、背圧リップ２２の先端２２ａがバルブガイド２のカム側端面２ｃに当接されて押圧され、かつ、シールリップ２１の内側端部２１ａがバルブガイド２内に挿入されるバルブステム５の外周面５ｂに密接され、径方向外方へ向けて押圧されている。図３においては、シールリップ２１の、バルブステムシール４１を取り付ける前の原形が二点鎖線で示されており、この部分がバルブステム５の外周面５ｂに押圧されて変形している。これにより、バルブステムシール４１の外側の空間Ｓ１と、リップ部材２０よりも径方向において内側に位置する空間Ｓ２とが区画されている。

　上記のように取り付けられたバルブステムシール４１の金属環５０が、バルブガイド２からカム側ＣＡに、抜け方向Ｄに向けて移動して抜け落ちるのを抑制するために、バルブガイド２の外周面２ｂに係合凹部３が形成され、金属環５０の筒状部５１の、特に第２筒状部５４には、これに対応して係合片６５が設けられている。
　より詳細には、第２筒状部５４に切り欠き６４が設けられ、この切り欠き６４内に、バルブガイド２の係合凹部３に向けて突出するように、舌片状の係合片６５が設けられている。

　切り欠き６４は、互いに連続する、端辺部６４ａと、２つの側辺部６４ｂを備えている。
　端辺部６４ａは、軸線Ｃに直交する平面内において筒状部５１の周方向に延びるように形成されている。側辺部６４ｂは、端辺部６４ａの両端部から、フランジ部５６とは反対側に向けて延びるように、軸線Ｃに略平行となるように形成されている。このように、切り欠き６４は略Ｕ形状に形成されており、各側辺部６４ｂの端辺部６４ａとは反対側の端部である２つの底辺部６４ｃ間の部分を除いて、切り欠き６４の内側の部分が、外側の部分から切り離されている。このように、切り欠き６４の内側の部分が切り離されることで、係合片６５が形成されている。
　このような切り欠き６４は、プレス機による抜き打ち加工により形成され得る。

　係合片６５は、上記のように、２つの底辺部６４ｃ間の部分である始端６５ａによって、切り欠き６４の外側と連続し、第２筒状部５４の一部として形成されている。係合片６５は、始端６５ａから金属環５０のフランジ部５６の側に向けて、抜け方向Ｄに延びるように、舌片状に形成されている。
　係合片６５は、始端６５ａから抜け方向Ｄにわずかに延出した部分６５ｂにおいて、第２筒状部５４の径方向内側に向けて屈曲している。係合片６５は、その先端６５ｃが、第１筒状部５２の内周面５２ｃよりも軸線Ｃに近接して設けられるように、形成されている。
　切り欠き６４及び係合片６５は、筒状部５１上の周方向において１８０度離間した位置に一対が設けられている。なお、図３においては、一対の係合片６５は、図面及び説明を簡単にするために、周方向に９０度離間した位置に図示されている。

　バルブガイド２の係合凹部３は、バルブステムシール４１をバルブガイド２に取り付けた際に、係合片６５に対応する位置に設けられている。係合凹部３は、底面３ａ、立ち上がり面３ｂ、及びテーパ面３ｃによって形成されている。底面３ａは、係合凹部３の径方向において最も内側の軸線Ｃに近い位置に設けられている。立ち上がり面３ｂは、底面３ａのカム側端面２ｃ側の端辺に、底面３ａから垂直に、径方向外方に向けて立ち上がってバルブガイド２の外周面２ｂへ垂直に接続するように形成されている。テーパ面３ｃは、底面３ａの立ち上がり面３ｂとは反対側の端辺に、底面３ａに対して鈍角を成して接続し、バルブガイド２の外周面２ｂへと向かうように形成されている。
　本実施形態においては、係合凹部３は、バルブガイド２の外周に、周方向に連続するように、環状に形成されている。しかし、これに限られず、係合片６５に対応する位置に部分的に、周方向に非連続に設けられていてもよい。

　バルブステムシール４１の係合片６５は、バルブステムシール４１がバルブガイド２に取り付けられた際には、係合凹部３内に収容される。ここで、バルブステムシール４１がシリンダ側ＣＹから作用する背圧を受けた場合においては、バルブステムシール４１が抜け方向Ｄに移動されるように力が作用する。このときに、係合片６５の先端６５ｃが係合凹部３の立ち上がり面３ｂに当接することにより、係合片６５が係合凹部３に対して抜け方向Ｄに係合し、これにより、バルブステムシール４１のバルブガイド２からの抜けが抑制される。

　次に、図３、及び図４を用いて、上記のバルブステムシール４１をバルブガイド２に取り付ける際の作用について説明する。図４は、バルブステムシール４１の、バルブガイド２へ取り付ける際の状態を示した説明図である。

　上記のようなバルブステムシール４１は、金属環５０をバルブガイド２の一端２ａから覆い被せつつ、係合片６５がバルブガイド２の係合凹部３に係合する位置まで移動させることにより、バルブガイド２に取り付けられる。この取り付け時の、係合片６５が係合凹部３に係合する前の取り付け中の段階においては、係合片６５の先端６５ｃは、バルブガイド２の外周面２ｂに近接または当接する第１筒状部５２の内周面５２ｃよりも筒状部５１の軸線Ｃに近接して設けられているため、係合片６５の先端６５ｃが、バルブガイド２の外周面２ｂによって筒状部５１の径方向外方へ向けて、図４に方向Ｏとして示される方向に押圧され、原形の位置から径方向外方へと大きく移動する。これに伴い、係合片６５は始端６５ａにおいて変形し、始端６５ａを中心として径方向外方へ向けて、方向Ｒに回転移動する。
　この場合において、係合片６５の長さは、この回転移動における半径となる。したがって、係合片６５の長さが短いと、この回転移動に要する、係合片６５の始端６５ａにおける係合片６５の回転角θが大きくなるため、係合片６５が始端６５ａにおいて大きく筒状部５１の径方向外方へ曲げられて塑性変形し、結果として、係合片６５と、係合凹部３との係合が浅くなる懸念がある。

　ここで、本実施形態のバルブステムシール４１においては、筒状部５１は、第１筒状部５２と第２筒状部５４を備え、第１筒状部５２の内周面５２ｃが、バルブガイド２の外周面２ｂに近接または当接するように取り付けられ、第２筒状部５４の内周面５４ｃは、第１筒状部５２の内周面５２ｃよりも距離Ｇだけ軸線Ｃから離間して設けられ、係合片６５は、第２筒状部５４に設けられている。すなわち、係合片６５の始端６５ａは、バルブガイド２の外周面２ｂから離間して位置せしめられた第２筒状部５４に設けられている。したがって、係合片６５の長さは、係合片６５の始端６５ａがバルブガイド２の外周面２ｂ近傍に設けられた場合に比べると、少なくともこの第２筒状部５４の内周面５４ｃと第１筒状部５２の内周面５２ｃとの間の離間した距離Ｇの分は、長くなっている。このため、上記のような回転移動における回転半径が長くなり、係合片６５の始端６５ａにおける回転移動の回転角θは小さくなる。結果として、取り付け時の係合片６５の回転移動に起因する、係合片６５の始端６５ａにおける径方向外方への塑性変形が抑制される。

　次に、上記のバルブステムシール４１の効果について説明する。

　上記のようなバルブステムシール４１は、バルブガイド２の端部２ａの外周面２ｂに取り付けられる、筒状部５１を備える金属環５０と、バルブガイド２を挿通するバルブステム５に密接するように、金属環５０に支持されて設けられるシールリップ２１を備えるリップ部材２０と、を備え、筒状部５１に切り欠き６４が設けられ、切り欠き６４内に、バルブガイド２の外周面２ｂに設けられた係合凹部３に向けて突出し、係合凹部３に対してバルブガイド２からの金属環５０の抜け方向Ｄに係合する、舌片状の係合片６５が設けられているバルブステムシール４１であって、筒状部５１は、第１筒状部５２と第２筒状部５４を備え、第１筒状部５２の内周面５２ｃが、バルブガイド２の外周面２ｂに近接または当接するように取り付けられ、第２筒状部５４の内周面５４ｃは、第１筒状部５２の内周面５２ｃよりも筒状部５１の径方向外方に設けられ、係合片６５は、第２筒状部５４に設けられ、係合片６５の先端６５ｃは、第１筒状部５２の内周面５２ｃよりも径方向における内方に位置している、バルブステムシール４１を提供する。
　上記のような構成においては、上記のように作用として説明したように、取り付け時の係合片６５の回転移動に起因する、係合片６５の始端６５ａにおける径方向外方への塑性変形が抑制され、係合片６５を係合凹部３の深い位置で係合させることができる。したがって、バルブガイド２からの抜けを効果的に抑制可能なバルブステムシール４１を提供可能である。

［第２実施形態の変形例］
　次に、図５を用いて、上記第２実施形態として示したバルブステムシール４１の変形例を説明する。図５は、本変形例におけるバルブステムシール７１の説明図である。本変形例におけるバルブステムシール７１は、上記第２実施形態のバルブステムシール４１とは、第１筒状部８２と第２筒状部８４の位置が異なっている。

　バルブステムシール７１の金属環８０における筒状部８１は、第２実施形態と同様に、第１筒状部８２と第２筒状部８４を備えている。第１筒状部８２は、軸線Ｃを中心軸線として略円筒状に形成されている。第１筒状部８２の一方の端部８２ｂは、径方向外方へ向けて屈曲した後に、更に軸線Ｃ方向における第１筒状部８２とは反対側へと屈曲する段部８３となっている。第２筒状部８４は、段部５３の第１筒状部８２とは反対側に、段部８３と連続するように設けられている。第２筒状部８４は、第１筒状部８２と同一の軸線Ｃを中心軸線として略円筒状に形成されている。これにより、第２筒状部８４の内周面８４ｃは、第１筒状部８２の内周面８２ｃよりも、距離Ｇだけ軸線Ｃから離間して設けられている。
　湾曲部８５は、第２筒状部８４の軸線Ｃ方向における、第１筒状部８２とは反対側の端部８４ａに、第２筒状部８４が径方向内方へ向けて弧を描いて湾曲するように設けられている。フランジ部８６は、湾曲部８５の内側端部８５ａから径方向内方に延びるように、軸線Ｃに対して略垂直に設けられている。
　第２実施形態と同様に、切り欠き９４と係合片９５は、第２筒状部８４に設けられている。

　本変形例が、既に説明した第２実施形態と同様な効果を奏することは言うまでもない。

　なお、本発明のバルブステムシールは、図面を参照して説明した上述の各実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。

　例えば、上記第２実施形態において、第１筒状部５２と第２筒状部５４は段部５３により連結されるように構成されていたが、これに限られない。例えば、第１筒状部が軸線Ｃに沿って緩やかに拡幅して第２筒状部に接続されていても良い。あるいは、第１筒状部５２と第２筒状部５４の内周面が径方向に異なる位置に形成される一方で、第１筒状部５２を第２筒状部５４よりも厚く形成することで、外周面を径方向に同一の位置に形成するようにしてもよい。

　これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記各実施形態及び各変形例で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
　例えば、バルブステムシールを、上記第１実施形態と第２実施形態を組み合わせた構成としてもよい。すなわち、バルブステムシールが、上記第２実施形態において説明した構成を有すると同時に、係合片は、係合片の始端から抜け方向に第１の長さだけ延出した部分において筒状部の径方向内側に向けて屈曲し、第１の長さは、屈曲した部分から係合片の先端までの、筒状部の軸線方向における第２の長さよりも長くなるように形成されていてもよい。
　このような構成によれば、第１実施形態及び第２実施形態の各々において説明したような作用効果が相乗し、更に効果的に、バルブガイドからの抜けを効果的に抑制可能なバルブステムシールを提供可能である。

１、４１、７１　バルブステムシール
２　バルブガイド
２ａ　端部
２ｂ　外周面
３　係合凹部
５　バルブステム
１０、５０、８０　金属環
１１、５１、８１　筒状部
１４、６４、９４　切り欠き
１５、６５、９５　係合片
１５ａ、６５ａ　始端
１５ｂ　屈曲部（屈曲した部分）
１５ｃ、６５ｃ　先端
１６　延出支持部
１７　係合部
２０　リップ部材
２１　シールリップ
２２　背圧リップ
５２、８２　第１筒状部
５２ｃ、８２ｃ　第１筒状部の内周面
５４、８４　第２筒状部
５４ｃ、８４ｃ　第２筒状部の内周面
Ｃ　軸線
Ｄ　抜け方向
Ｌ１　第１の長さ
Ｌ２　第２の長さ

Claims

　バルブガイドの端部の外周面に取り付けられる、筒状部を備える金属環と、前記バルブガイドを挿通するバルブステムに密接するように、前記金属環に支持されて設けられるシールリップを備えるリップ部材と、を備え、前記筒状部に切り欠きが設けられ、当該切り欠き内に、前記バルブガイドの前記外周面に設けられた係合凹部に向けて突出し、当該係合凹部に対して前記バルブガイドからの前記金属環の抜け方向に係合する、舌片状の係合片が設けられているバルブステムシールであって、
　前記係合片は、当該係合片の始端から前記抜け方向に第１の長さだけ延出した部分において前記筒状部の径方向内側に向けて屈曲し、前記第１の長さは、屈曲した部分から前記係合片の先端までの、前記筒状部の軸線方向における第２の長さよりも長くなるように形成されている、バルブステムシール。
　バルブガイドの端部の外周面に取り付けられる、筒状部を備える金属環と、前記バルブガイドを挿通するバルブステムに密接するように、前記金属環に支持されて設けられるシールリップを備えるリップ部材と、を備え、前記筒状部に切り欠きが設けられ、当該切り欠き内に、前記バルブガイドの前記外周面に設けられた係合凹部に向けて突出し、当該係合凹部に対して前記バルブガイドからの前記金属環の抜け方向に係合する、舌片状の係合片が設けられているバルブステムシールであって、
　前記筒状部は、第１筒状部と第２筒状部を備え、
　前記第１筒状部の内周面が、前記バルブガイドの前記外周面に近接または当接するように取り付けられ、
　前記第２筒状部の内周面は、前記第１筒状部の前記内周面よりも前記筒状部の軸線から離間して設けられ、
　前記係合片は、前記第２筒状部に設けられ、前記係合片の先端は、前記第１筒状部の前記内周面よりも前記軸線に近接して設けられている、バルブステムシール。