WO2019039201A1

WO2019039201A1 - 車両用表示装置

Info

Publication number: WO2019039201A1
Application number: PCT/JP2018/028473
Authority: WO
Inventors: 勇希舛屋
Original assignee: 日本精機株式会社
Priority date: 2017-08-23
Filing date: 2018-07-30
Publication date: 2019-02-28

Abstract

対象物に重畳して虚像を表示する時に、対象物が暗視範囲にある場合においても、安全運転を確保しつつ、適切な情報の提供を行える車両用表示装置を提供する。　注意喚起対象としての対象物を検出する対象物検出部３１２と、対象物の明暗判定部３２０と、表示制御部３４０と、を有し、表示制御部３４０は、対象物が暗視野にある時は、ヘッドアップディスプレイ（ＨＵＤ）装置１００による虚像ＰＨ１の重畳表示を行わせない、又は、併せて、他の領域あるいは他の表示器１３において注意喚起のための表示を行わせる、又は、対象物の動きに基づいて対象物の危険性が高いと判定される時には、重畳表示を実行させる、といった表示制御を実行する。

Description

車両用表示装置

　本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される車両用表示装置に関する。

　例えば特許文献１は、注意喚起対象物である歩行者等の存在を運転者に知らせるために、強調表示（歩行者等を囲む枠等）を、歩行者等に重畳して表示する機能を備えるヘッドアップディスプレイ装置（以下、ＨＵＤ装置という）を開示している。

特開２０１５－４９８４２号公報

　対象物に強調表示を重畳させる時、その対象物が明視範囲（例えば、昼間において対象物を正確に視認できる範囲）にある場合は問題ないが、その対象物が暗視範囲（例えば、夜間において前照灯の光が届かない暗い範囲）にある場合には、視認が困難な対象物に強調表示が重ねられることになり、よって、安全運転上、問題が生じる可能性があることを、本発明者らは認識した。

　言い換えれば、対象物が暗視範囲にある時には、運転者は、その強調表示が、正しい情報を表示するものであるか否かを瞬時には判断できず、不安を覚えることがあり、また、運転者が対象物を視認しようとするあまり、視線が対象物付近に集中してしまい、かえって前方不注意の状態を招く、といった不都合が生じ得る。

　特許文献１には、上記の点については、何ら言及されておらず、その対策についても開示も示唆もされていない。

　本発明の１つの目的は、対象物に重畳して虚像を表示する時に、対象物が暗視野（暗視範囲）にある場合においても、安全運転を確保しつつ、適切な情報の提供を行える車両用表示装置を提供することである。本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。

　以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。

　第１の態様において、
　車両に搭載され、画像を、前記車両に備わる被投影部材に投影することで、運転者に前記画像の虚像を視認させると共に、前記虚像には、前記車両の周囲の実景に重畳される重畳画像の虚像が含まれるヘッドアップディスプレイ（ＨＵＤ）装置を少なくとも有する車両用表示装置は、
　前記車両の周囲の前記実景に含まれる、注意喚起対象としての対象物を検出する対象物検出部と、
　検出された対象物が、前記車両の運転者から見て、明るく見える範囲である明視野にあるか、暗く見える範囲である暗視野にあるか、を判定する対象物の明暗判定部と、
前記車両用表示装置における表示を制御する表示制御部と、
　を備え、
　前記表示制御部は、
　前記対象物の明暗判定部によって、前記対象物が明視野にあると判定された時には、前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記対象物への重畳を行わせ、
　前記対象物の明暗判定部によって、前記対象物が暗視野にあると判定された時には、
　前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記対象物への重畳を行わせない、
　又は、
　前記ヘッドアップディスプレイ装置における前記虚像を表示可能な虚像表示領域が、前記重畳画像の虚像を表示する第１の虚像表示領域と、対象物への重畳を前提としない非重畳画像の虚像を表示する第２の虚像表示領域と、を含む時に、
　前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記第１の虚像表示領域における前記対象物への重畳を行わせず、かつ、前記第２の虚像表示領域における虚像の表示によって、前記運転者に、前記暗視野にある前記対象物への注意を喚起させる、
　又は、
　前記ヘッドアップディスプレイ装置とは別に、表示部が設けられる時に、
　前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記対象物への重畳を行わせず、かつ、前記表示部による表示によって、前記運転者に、前記暗視野にある前記対象物への注意を喚起させる、
　又は、
　前記対象物検出部によって検出される前記対象物に関する情報に基づいて、前記対象物の危険性の高低が判定され、
　危険性が低いと判定される時は、前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記対象物への重畳を行わせず、危険性が高いと判定される時は、前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記対象物への重畳を行わせる。

　第１の態様では、対象物の明暗判定部によって、注意喚起対象としての対象物が、車両の運転者から見て、暗く見える範囲である暗視野にあると判定された時（言い換えれば、「暗視野対象物」であると判定された時）には、表示制御部は、原則として、ヘッドアップディスプレイ（ＨＵＤ）装置における、その対象物に虚像を重畳させる表示（言い換えれば重畳表示）を行わせない。

　また、ＨＵＤ装置における虚像を表示可能な虚像表示領域が、第１の虚像表示領域（重畳画像の虚像を表示する領域、言い換えれば、重畳表示が行われる領域）と、第２の虚像表示領域（対象物への重畳を前提としない非重畳画像の虚像を表示する領域、例えば、車速表示等を行う領域）とを含む時に、表示制御部は、第２の虚像表示領域に虚像を表示して、運転者に、暗視野にある対象物に対する注意を喚起させてもよい。

　また、ＨＵＤ装置とは別の表示部が設けられる時（言い換えれば、ＨＵＤ装置とは別の表示器が存在する時）に、表示制御部は、表示部（表示器）に虚像を表示して、運転者に、暗視野にある対象物に対する注意を喚起させてもよい。

　暗視野にある対象物に対しては重畳表示を行わないため、運転者に不安感を与えることがなくなり、また、ＨＵＤ装置における他の虚像表示領域や他の表示部（表示器）に、注意喚起を促す表示をなすことで、間接的に、暗視野に、注意を要する対象物があることを運転者に報知することができる。よって、対象物が暗視野（暗視範囲）にある時においても、安全運転を確保しつつ、適切な情報の提供を行える車両用表示装置を実現することができる。

　また、表示制御部が対象物に関する情報に基づいて（例えば、対象物の動き方、移動の仕方等に基づいて）、対象物の危険性の高低を判定し、危険性が高いと判定される時（例えば、対象物である人が道路へと進入する、あるいは、斜め前方を走る自転車が、少しずつセンターライン側に移動している、といった、車両との衝突、接触の可能性がある時）には、例外的に、暗視野にある対象物に対しても、虚像の重畳（重畳表示）を行わせてもよい。

　このような場合には、他の虚像表示領域や他の表示部（表示器）の表示による間接的な報知では間に合わないおそれがあることから、暗視野にある対象物に対して、例えば、見易いように調整された強調表示（例えば色を付した囲み枠、ロゴ、注意喚起マーク、文字による警告など）等を重畳させ、暗視野に危険性の高い対象物があることを直接的、かつ積極的に表示してもよい。これによって、運転者に、例えば、危険を回避するための迅速な行動を促すことができる。

　第２の態様において、
　車両に搭載され、画像を、前記車両に備わる被投影部材に投影することで、運転者に前記画像の虚像を視認させると共に、前記虚像には、前記車両の周囲の実景に重畳される重畳画像の虚像が含まれるヘッドアップディスプレイ（ＨＵＤ）装置を少なくとも有する車両用表示装置は、
　前記車両の周囲の前記実景に含まれる、注意喚起対象としての対象物を検出する対象物検出部と、
　検出された対象物が、前記車両の運転者から見て、明るく見える範囲である明視野にあるか、暗く見える範囲にあるか、を判定する対象物の明暗判定部と、
　前記車両用表示装置における表示を制御する表示制御部と、
　を備え、
　前記表示制御部は、
　前記対象物の明暗判定部によって、前記対象物が明視野にあると判定された時には、前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記対象物への重畳を行わせ、
　前記対象物の明暗判定部によって、前記対象物が暗視野にあると判定された時には、
　前記車両に備わる照明を制御する第１の照明制御部、又は前記車両の外部の照明システムを制御する第２の照明制御部を介して、前記照明又は前記照明システムから前記暗視野にある対象物に照明光を照射させ、これにより、暗視野にあった対象物を明視野にある対象物とし、明視野にある対象物に対して前記重畳画像の虚像を重畳させる。

　第２の態様では、表示制御部は、自車両の照明を制御する第１の照明制御部を介して、あるいは、外部の照明システムを制御する第２の照明制御部を介して、運転者から見て暗視野にある対象物に対して照明光を照射させる。言い換えれば、暗視野にある対象物（暗視野対象物）を、明視野にある対象物（明視野対象物）に転換し、転換された明視野対象物に重畳画像の虚像を重畳させる、という制御を行う。

　自車両の照明（例えば、前照灯を含む照明部、照明システム）や、外部の照明システム（例えば、車両の周辺の環境に設置されている道路灯（道路照明器具）、屋外用スポットライト、防犯灯、街路灯等）を用いて対象物を照明し、暗視野にあって視認が困難な対象物を、明視野にあって視認可能な対象物とし、これに重畳表示を行うことで、運転者は、重畳表示によって示される対象物を、瞬時に視認することが可能である。よって、不安感が生じず、有用な情報提供が可能となる。

　第１又は第２の態様に従属する第３の態様において、
　前記表示制御部は、前記対象物検出部によって検出される前記対象物に関する情報に基づいて、前記対象物の危険性の高低を判定し、危険性が高いと判定される時に、前記暗視野にある対象物に照明光を照射させてもよい。

　第３の態様では、表示制御部は、対象物に関する情報に基づいて、対象物の危険性の高低を判定し、危険性が高いと判定される時に、照明態様の変更（例えば、前照灯のロービームをハイビームに切り換える）を行わせる。照明態様の変更を行わせる時、機器の処理負担がかなり重くなることが想定され、また、運転者にとっても、照明状態の強制的な変更によって違和感を覚えることも有り得ることから、慎重に判断し、危険性が大きいと判定される時にのみ、照明態様の変更を行うこととするものである。なお、照明態様を変更する前に、運転者に、表示や音声等によって、そのことを報知して、違和感を軽減するようにしてもよい。

　第１乃至第３の何れか１つの態様に従属する第４の態様において、
　前記対象物の明暗判定部は、
　外光センサから得られる外光強度情報、及び前記車両情報取得部が取得した、前記車両に備わる照明の動作状況を示す情報の少なくとも一方に基づいて、前記車両の周辺における前記明視野の範囲を判定する明視範囲判定部を有し、
　前記明視範囲判定部によって判定された明視野の範囲と、前記対象物検出部によって検出された前記対象物の位置情報と、に基づいて、前記対象物が明視野にあるか、暗視野にあるかを判定してもよい。

　第４の態様では、対象物の明暗を判定するに際し、外光強度や、自車両の照明の動作状況に基づいて、車両の周辺における明視野の範囲（言い換えれば、光の分布状況）を判定し、その明視野の範囲と、検出された対象物の位置情報と、を、例えば突き合わせる（両者の対応関係を調べる、具体的には、例えば、対象物の少なくとも一部が明視野範囲に含まれるか否かを検出する）ことによって、対象物の明暗を判定する。

　これによって、夜間であっても、車両の周辺の明るさの分布を考慮して、対象物の明暗を、精度よく判定することができる。例えば、昼間は、前照灯の点灯状態にかかわらず、周囲の対象物は明るい範囲にあるものと判定し得る。言い換えれば、前照灯を点灯していても、例えば、外光センサによって周囲が明るい（昼間）と判定されれば、前照灯の照明範囲に関係なく、対象物は明視野の範囲にある対象物であると判定できる。また、外光センサによって周囲が暗い、言い換えれば、夜間（薄明視環境も含まれる）であると判定される時は、前照灯等による照明の範囲を考慮して、対象物の明暗を判定される。

　当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。

図１（Ａ）は、本発明の車両用表示装置の、昼間における、前方の実景に含まれる対象物への重畳表示の例を示し、図１（Ｂ）は、夜間における、前方の実景に含まれる対象物への重畳表示の例を示す図（及び、夜間における重畳表示の課題を説明するための説明図）である。図２（Ａ）、図２（Ｂ）は、本発明の車両用表示装置の、夜間における、前方の実景に含まれる対象物への重畳表示の他の例を示す図である。図３（Ａ）は、夜間において、対象物である人が道路に進入する方向へと歩いている状況を示し、図３（Ｂ）は、本発明の車両用表示装置の、夜間における、前方の実景に含まれる対象物への重畳表示の、さらに他の例を示す。図４（Ａ）は、虚像表示面として複数の面（３面）を設定可能なＨＵＤ装置における、虚像表示面の設定例を示し、図４（Ｂ）は、ＨＵＤ装置の要部の構成例を示す。図５は、図４（Ａ）及び図４（Ｂ）に示されるＨＵＤ装置を少なくとも含む、本発明の車両用表示装置の全体構成の一例を示す。図５に示される車両用表示装置の、主要な動作手順の一例を示すフローチャートである。

　以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。

　本発明の車両用表示装置は、画像（言い換えれば、画像を表示する表示光）を、車両に備わる被投影部材（透光部材）に投影（投射）することで、運転者に画像の虚像を視認させると共に、虚像には、車両の周囲の実景に重畳される重畳画像の虚像が含まれるヘッドアップディスプレイ（ＨＵＤ）装置（図１では不図示、図４（Ａ）、図５における参照符号１００）を少なくとも有している。

　まず、図１を参照する。図１（Ａ）は、本発明の車両用表示装置の、昼間における、前方の実景に含まれる対象物への重畳表示の例を示し、図１（Ｂ）は、夜間における、前方の実景に含まれる対象物への重畳表示の例を示す図（及び、夜間における重畳表示の課題を説明するための図）である。図１（Ａ）の例では、車両１のウインドシールド（フロントガラス）３が被投影部材（透光部材）として機能する。運転者（図１では不図示）は、ウインドシールド３を介して、車両１の前方に実景を視認することができる。

　また、車両１に備わるＨＵＤ装置１００（図４（Ａ）、図５参照）は、実景に含まれる、注意喚起対象としての対象物（ここでは「人Ｅ１」とする）に、「対象物を強調する画像」の虚像（強調表示）を重畳することができる。ここでは、「対象物を囲む枠等からなる、対象物を強調する画像」が、上記の「重畳画像」となる。この重畳画像は、ＨＵＤ装置１００に備わる画像生成部等で生成されるものである（後述）。

　また、図１（Ａ）の例では、車両１には、ＨＵＤ装置１００の他に、液晶表示装置等で構成される表示部（表示器）１３が設けられている。表示部（表示器）１３は、フロントパネル１１の中央に設けられている。

　また、車両１のハンドル（例えばステアリングホイール）７には、モード選択スイッチ（操作部）９が設けられており、運転者は、モード選択スイッチ（操作部）９の操作によって、ＨＵＤ装置１００のオン／オフ、重畳表示のオン／オフ等を切り換える（選択する）ことができる。

　運転者は、ウインドシールド３を介して、ＨＵＤ装置１００が形成する画像の虚像を、車両１の前方にて視認する。図１（Ａ）の例では、ウインドシールド３の面において、矩形の虚像表示領域５（破線で示されている）が設定され、この虚像表示領域５の内側において虚像の表示が可能である。言い換えれば、運転者から見ると、重畳画像の虚像は、この虚像表示領域５内において、注意喚起対象である対象物に重畳されることになる。

　また、図１（Ａ）の例では、虚像表示領域５には、「重畳画像」の虚像を表示する第１の虚像表示領域ＰＬ１と、対象物への重畳を前提としない「非重畳画像（図１の例では、「６０ｋｍ／ｈ」という車速表示ＳＰとする）の虚像を表示する第２の虚像表示領域ＰＬ２とが含まれる。第２の虚像表示領域ＰＬ２は、例えば、位置が固定されている領域であり、車速表示の他、エンジンの回転数等の車両情報や、エンジンオイルの状況等を示す警告等を表示（虚像によって表示）することができる。

　図１（Ａ）の例では、車両１は、昼間において、直線状の道路を走行している。車両１の周囲（特に前方）の実景に含まれる、注意喚起対象の候補となる対象物としては、「人Ｅ１」、「電柱Ｅ２」、」「樹木Ｅ３」、ならびに、「センターライン等の白線Ｅ４」があるが、ここでは、動きのある対象物である「人Ｅ１」が、注意喚起対象として検出され、この「人Ｅ１」に対して、強調表示としての枠（強調表示枠）ＰＨ１が重畳される。

　図１（Ａ）の例では、昼間における走行であることから、運転者は、「人Ｅ１」を視認することができる。車両１の運転者から見て、明るく見える範囲を明視野とし、暗く見える範囲を暗視野と設定する時、図１（Ａ）における「人Ｅ１」は、明視野にある対象物（言い換えれば、明視野対象物）である。この時は、強調表示枠ＰＨ１が「人Ｅ１」に重畳されると、運転者は、「人Ｅ１」を瞬時に視認することができることから、その強調表示枠ＰＨ１の表示が、正しく、注意喚起対象としての対象物である「人Ｅ１」を示していることを認識することができ、運転者は、必要な注意行動を、迅速にとることができる。

　次に、図１（Ｂ）を参照する。図１（Ｂ）の例では、車両１は、夜間（ここでは、薄明視の環境を含むものとする）において、道路を走行している。車両１の前照灯（ヘッドライト）はロービームとなっている。前照灯によって明るく照らされる範囲（言い換えれば、前照灯の照明範囲）８は、車両１から比較的近い範囲であり、遠方までは光が届かない状況である。

　図１（Ｂ）における、車両１の周囲の状況は、図１（Ａ）と同じであるが、注意喚起対象としての「人Ｅ１」は、車両１の運転者から見て、暗く見える範囲である暗視野にある対象物（暗視野対象物）であり、運転者は、暗視野対象物である「人Ｅ１」を、はっきりと視認することが困難である。図１（Ｂ）では、図１（Ａ）と同様に、「人Ｅ１」に、強調表示としての枠（強調表示枠）ＰＨ１が重畳されている。この強調表示枠ＰＨ１は、正確に対象物である「人Ｅ１」に重畳されており、これ自体は有用な表示となり得るが、一方、運転者は、「人Ｅ１」を視認できないことから、強調表示枠ＰＨ１が、正しく対象物に対して重畳されているか否か（言い換えれば、表示によって提示される情報の信頼性や正確性）を瞬時には判断できない。よって、運転者が不安を覚えることがあり得る。また、運転者が対象物である「人Ｅ１」を視認しようとするあまり、視線が「人Ｅ１」の付近に集中してしまい、かえって前方不注意の状態を招く、といった不都合が生じることも否定できない。

　言い換えれば、ＨＵＤ装置１００の性能が向上して、重畳表示の精度が高まれば、運転者の、ＨＵＤ装置１００に対する信頼が向上し、ゆえに、運転者は、ＨＵＤ装置１００によって重畳表示がなされると、その重畳表示が示す対象物の存在を確認しようと努めることになるが、図１（Ｂ）のような時は、かえって、そのような運転者の動作が、安全運転上の問題となる可能性がある、ということである。

　この対策としては、図１（Ｂ）のような時は、原則として、強調表示枠ＰＨ１の重畳表示を行わない、ということが考えられる。ここで、図２（Ａ）、図２（Ｂ）を参照する。図２（Ａ）、図２（Ｂ）は、本発明の車両用表示装置の、夜間における、前方の実景に含まれる対象物への重畳表示の他の例を示す図である。図２（Ａ）、図２（Ｂ）において、図１（Ａ）、図１（Ｂ）と共通する部分には同じ参照符号を付している。なお、この点は、図３（Ａ）、図３（Ｂ）においても同様である。

　図２（Ａ）では、暗視野対象物である「人Ｅ１」については、重畳表示としての強調表示枠ＰＨ１の表示（重畳表示）を行っておらず、その代わりに、虚像表示領域５内の、第２の虚像表示領域ＰＬ２、及び、表示部（表示器）１３の少なくとも一方において、「右前方に人」という、対象物である「人Ｅ１」への注意喚起を促す表示ＱＰ１、ＱＰ２がなされている。

　この時、暗視野にある対象物に対しては重畳表示を行わないため、運転者に不安感を与えることがなく、また、ＨＵＤ装置１００における他の虚像表示領域（第２の虚像表示領域ＰＬ２）や他の表示部（表示器）１３に、注意喚起を促す表示をなすことで、間接的に、注意を要する対象物が暗視野にあることを運転者に報知することができる。よって、対象物（例えば「人Ｅ１」）が暗視野（暗視範囲）にある時においても、安全運転を確保しつつ、適切な情報の提供を行える車両用表示装置が実現される。

　次に、図２（Ｂ）を参照する。図２（Ｂ）の例では、夜間において、「人Ｅ５」が道路を横切ろうとしているが、この「人Ｅ５」の少なくとも足元付近は、前照灯が明るく照らす範囲（前照灯の照明範囲）８内に入っており、運転者は、「人Ｅ５」を視認可能である。よって、図１（Ａ）の時と同様に、「人Ｅ５」を囲むように強調表示枠ＰＨ２が表示（重畳表示）される。これにより、運転者は、「人Ｅ５」が道路に進入していることを、確実に知ることができる。

　次に、図３（Ａ）、図３（Ｂ）を参照する。図３（Ａ）は、夜間において、対象物である人が道路に進入する方向へと歩いている状況を示し、図３（Ｂ）は、本発明の車両用表示装置の、夜間における、前方の実景に含まれる対象物への重畳表示の、さらに他の例を示す。図３（Ａ）における車両１の周辺の状況は、ほぼ図２（Ａ）と同じであるが、図３（Ａ）の時、対象物である「人Ｅ１」が、かなりの速さで（言い換えれば、早足で、あるいは走って）道路に進入しようとしている。言い換えれば、道路への進入が確実視される状況であり、車両１の走行速度が「６０ｋｍ／ｈ」とかなり高速であることを考慮すると、車両１との衝突や接触が懸念される事態であり、よって、図３（Ａ）の例における「人Ｅ１」は、危険性が高い対象物と判定され得る。

　このような時に有効な対策の１つとしては、図３（Ｂ）のように、車両１に備わる照明（前照灯等）を制御し、あるいは、外部の照明システム（外部照明５００）を制御して、「人Ｅ１」に対して、照明光を照射させることが考えられる。図３（Ｂ）の例では、車両１に備わる前照灯が、ロービームからハイビームに切り替えられ、これによって、「人Ｅ１」にまで照明光が届いており、「人Ｅ１」は、暗視野対象物から明視野対象物に転換されている。また、図３（Ｂ）の例では、外部照明５００としての道路用（屋外用）スポットライトが、例えば、車両１からの無線通信による遠隔操作によって動作して、照明光を「人Ｅ１」に対して照射している。

　これによって、暗視野にあって視認が困難な対象物（暗視野対象物）である「人Ｅ１」は、明視野にあって視認可能な対象物（明視野対象物）に転換され、そして、その転換された「人Ｅ１」に重畳表示（強調表示枠ＰＨ１の重畳）を行うことで、運転者は、重畳表示によって示される対象物（「人Ｅ１」）を、瞬時に視認することが可能である。よって、不安感が生じず、有用な情報提供が可能となる。

　利用可能な自車両の照明としては、例えば、前照灯を含む照明部、その他の補助的な照明システムが考えられる。また、外部の照明システムとしては、例えば、車両の周辺の環境に設置されており、かつ、通行中の車両から無線通信等を用いて照明状況を制御可能な道路灯（道路照明器具）、屋外用スポットライト、防犯灯、街路灯等が考えられる。また、他の車両の照明を用いることも考えられる。

　上記の説明では、対象物の危険性が高いと判定された時に、照明態様の変更による対象物への照明光の照射を行わせているが、これに限定されるものではなく、特に危険性の判定は行わず、図２（Ｂ）の例のように、暗視野の範囲に、注意喚起対象としての対象物が検出された時に、無条件で照明態様の変更が行われるようにしてもよい。なお、照明態様の強制的な変更が行われる時は、運転者に唐突感（違和感）を与えないように、例えば、表示器１３による表示や音声によって、そのことを報知するようにしてもよい。

　以上の説明では、暗視野にある対象物に対しては原則的に重畳表示を行わない、とする時の例について説明している。但し、例外的に、暗視野にある対象物に対しても、重畳表示を行う時も想定され得る。例えば、図３（Ａ）の例のように、対象物の危険性が高いと判定される時等には、重畳表示を行うことが有効な場合もあると考えられる。

　言い換えれば、例えば、対象物の動き方、移動の仕方等に基づいて、対象物の危険性の高低を判定し、危険性が高いと判定される時（例えば、対象物である人が道路へと進入する、あるいは、斜め前方を走る自転車が、少しずつセンターライン側に移動している、といった、車両との衝突、接触の可能性がある時）には、例外的に、暗視野にある対象物に対しても、虚像の重畳（重畳表示）を行わせてもよい。このような時は、図２（Ａ）、図２（Ｂ）に示したような、他の虚像表示領域（第２の虚像表示領域ＰＬ２）や他の表示部（表示器）１３の表示による間接的な報知では間に合わないおそれがあることから、暗視野にある対象物に対して、例えば、見易いように調整された強調表示（例えば色を付した囲み枠、ロゴ、注意喚起マーク、文字による警告など）等を重畳させ、暗視野に危険性の高い対象物があることを直接的、かつ積極的に表示してもよい。これによって、運転者に、例えば、危険を回避するための迅速な行動を促すことができる。

　ここで、再び、図１（Ｂ）を参照する。図１（Ｂ）では、「人Ｅ１」に対して強調表示枠ＰＨ１が重畳されているが、ここで、この「人Ｅ１」が、図３（Ａ）の例のように、危険性が高いと判定される対象物であるとする。「人Ｅ１」は、暗視野の範囲にあるため、現在の状況では、運転者は、「人Ｅ１」を視認できないが、車両１は、６０ｋｍ／ｈという、かなりの高速度で走行していることから、時間経過と共に、車両１は「人Ｅ１」に接近し、やがて、「人Ｅ１」は前照灯が明るく照らす範囲（照明範囲）８に入ることになるため、その時点で、運転者は、重畳表示がなされている対象物である「人Ｅ１」を、はっきりと視認できる。この場合、対象物である「人Ｅ１」が暗視野の範囲にあるときから、早めに強調表示枠ＰＨ１を表示していることから、運転者は、予め、危険性のある「人Ｅ１」の存在を察することができ、よって、例えば、「人Ｅ１」が照明範囲に入って視認可能となった時点で、すぐに急ブレーキをかける、といった衝突回避の動作が可能である。このように、暗視野にある対象物に対して重畳表示を行うことで、安全運転上の効果が期待できる場合も想定され得る。

　なお、上記の説明では、危険性が高いと判定される対象物について重畳表示を行う場合がある、としているが、必ず、危険性の判定が行われなくてはならない、というものではなく、他の条件による判定であってもよく、また、そのような条件判定がなされなくても、例えば、運転者が、暗視野にある対象物に対して重畳表示がなされることに対して、十分に慣れており、特に、安全運転上の問題がない場合には、暗視野の範囲にある対象物に対して、特に危険性の程度の判定を行うことなく、重畳表示を行うようにしてもよい。

　次に、図４を参照して、ＨＵＤ装置の構成例について説明する。図４（Ａ）は、虚像表示面として複数の面を設定可能なＨＵＤ装置における、虚像表示面の設定例を示し、図４（Ｂ）は、ＨＵＤ装置の要部の構成例を示す。なお、図４（Ａ）、図４（Ｂ）において、前掲の図面と同じ箇所には同じ参照符号を付している。

　図４（Ａ）の例では、ＨＵＤ装置１００は、３面の虚像表示面を使用可能な３面（３レイヤー）ＨＵＤ装置である。ＨＵＤ装置１００は、例えば、車両のダッシュボード等の内部に設置され、下側から上側に画像を表示する表示光Ｋ１、Ｋ２を照射することで、画像を被投影部材（透光部材）としてのウインドシールド３に投影する。なお、被投影部材（透光部材）３は、ウインドシールドに限定されるものではなく、コンバイナー等の他の部材であってもよい。

　図４（Ａ）の例では、虚像表示面として、運転者１５から見て、遠い位置（虚像表示距離Ｌ１００）の虚像表示面ＰＳ１（ａ）と、より近い位置（虚像表示距離Ｌ１０１、Ｌ１０１＜Ｌ１００）の虚像表示面ＰＳ１（ｂ）と、最も近い位置（虚像表示距離Ｌ１０２、Ｌ１０２＜Ｌ１０１＜Ｌ１００）の虚像表示面ＰＳ２の３面を使用することができる。虚像表示面ＰＳ２は、車速表示ＳＰ等が表示される面であり、虚像表示距離Ｌ１０２は固定されている。虚像表示面ＰＳ１（ａ）、（ｂ）は、重畳表示（先に示した強調表示枠ＰＨ１等）が表示される面であり、重畳対象である対象物の距離が、車両１から遠いか近いかに応じて、ＰＳ１（ａ）、ＰＳ（ｂ）が選択的に切り換えられるようになっている。対象物までの距離に応じて、２面を選択的に切り換えることで、奥行き感を損なうことなく、３次元的に、精度よく、重畳表示（強調表示枠等）を対象物に重畳させることができる。なお、虚像表示面ＰＳ１（ａ）、ＰＳ１（ｂ）、ＰＳ２は、路面２に対して直交して立設されているが、路面２に対して所定の角度で傾斜する、あるいは、路面２に重畳されるように傾斜するものであってもよい。

　次に、図４（ｂ）を参照する。図４（ｂ）に示されるように、ＨＵＤ装置１００は、光源部３１（画像生成部３３と、レーザー光を２分割して２つのビームを生成して出力する投光制御部３５と、を含む）と、ミラー３９と、レンズ４４と、画像表示部としてのスクリーン４６ａ、４６ｂ（画像表示面４７を備え、画像表示面４７上に画像Ｍａ、Ｍｂが形成される）と、虚像表示距離制御部２４（レンズ駆動部５１と、スクリーン駆動部５３とを含む）と、ミラー７１と、反射鏡（凹面鏡）７２と、筐体８１と、光出射窓８３と、を有する。図４（Ｂ）では、光源部３１から出力される光を処理する光学系の全体（楕円の破線で囲まれる領域）を、投射光学系３７と称するものとする。

　スクリーン４６ａの画像表示面４７に表示される画像Ｍａの出射光によって表示光Ｋ１が生成され、スクリーン４６ｂの画像表示面４７に表示される画像Ｍｂの出射光によって表示光Ｋ２が生成される。虚像表示距離制御部２４（レンズ駆動部５１、スクリーン駆動部５３）によって、レンズ４４及びスクリーン４６ａの位置が、光路に沿って、言い換えれば、レンズ４４（及びスクリーン４６ａ）の光軸に沿う方向に移動することで、虚像表示面ＰＳ１（ａ）、ＰＳ１（ｂ）を適宜、切り換えることができる。なお、スクリーン４６ｂは位置が固定であり、表示光Ｋ２は、車速表示ＳＰ等を表示するために使用される。

　次に、図５を参照する。図５は、図４（Ａ）及び図４（Ｂ）に示されるＨＵＤ装置を少なくとも含む、本発明の車両用表示装置の全体構成の一例を示す図である。図５において、前掲の実施形態と同じ部分には同じ参照符号を付している。

　車両１には、少なくとも１台のカメラ（典型的には、赤外線カメラ２００）が設けられる。赤外線カメラ２００によって、昼／夜にかかわらず、車両１の周囲（例えば前方）の実景を撮像することができる。また、一対の赤外線カメラ２００（ステレオカメラ）を設ける場合は、各カメラの視差画像から対象物までの奥行き情報（対象物までの距離）を求めることもできる。また、車両１には、外光強度を測定する外光センサ（照度センサ）２０２が設けられている。

　また、車両１に備わる前照灯（ヘッドライト）２０４の照明動作は、前照灯制御部２０３によって制御される。また、必要に応じてレーダー部２０６が設けられる。レーダー部２０６によって、例えば、前方を走る先行車両までの距離や、車両１の周囲（前方等）に存在する対象物までの距離（奥行き情報）を測定できる。

　また、ＨＵＤ装置１００は、ダッシュボード４の内部に収容されている。ＨＵＤ装置１００は、先に説明したように、画像生成部３３と、投光制御部３５と、投射光学系３７と、虚像表示距離制御部２４と、を有する。ＨＵＤ装置１００は、画像の表示光Ｋ１、Ｋ２を、被投影部材としてのウインドシールド（フロントガラス）３に投射する（言い換えれば、画像を投影する）。投射された光の一部は、運転者の目（視点）Ａに向かい、その結果、図４（Ａ）で示したように、虚像表示面ＰＳ１（ａ）、ＰＳ１（ｂ）、ＰＳ２に、強調表示としての強調表示枠ＰＨ１や車速表示ＳＰ等が表示される。なお、強調表示枠ＰＨ１は、正確には、対象物に重畳される画像（重畳画像：例えば、画像生成部３３にて生成される）の虚像である。先に説明したように、車両用表示装置は、少なくともＨＵＤ装置１００を含むものである。図５の例では、液晶等を用いた表示部（表示器）１３も設けられている。

　また、車両１には、車両１の動作を統括的に制御する電子制御ユニット（ＥＣＵ）３００と、外部の運転支援システム４００や外部の照明システムとしての外部照明５００と無線通信を行って、データや制御信号等の送受信を行うことができる無線通信部３０２と、ＥＣＵ３００と内部バスＢＵＳ１を経由して接続され、ＥＣＵ３００から車両１の運行状態等に関する情報（車両情報）を取得する車両情報取得部３０４と、前照灯制御部２０３からの制御信号に基づいて、前照灯（ヘッドライト）２０４のオン／オフを検出し、かつ前照灯２０４がハイビームであるかロービームであるかを検出するハイビーム／ロービーム検出部３０６と、外光センサ（照度センサ）)２０２からの外光強度情報に基づいて、昼であるか夜であるかを判定する昼夜判定部３０７と、明視範囲判定部３０８と、対象物情報取得部３１０と、対象物の明暗判定部３２０と、対象物の危険性の程度を判定する危険度判定部３３０と、車両用表示装置の表示動作を統括的に制御する表示制御部３４０と、表示部（表示器）１３の表示動作を制御する表示器制御部３５２と、表示部（表示器）１３に表示させる画像の画像データを生成する画像生成部３５０と、照明制御部３６０と、を有する。

　なお、表示制御部３４０は、ＣＰＵ、ＭＰＵ等で構成することができる。表示制御部３４０は、内部バスＢＵＳ２を介して、画像生成部３５０、ならびに、ＨＵＤ装置１００の画像生成部３３及び虚像表示距離制御部２４と通信を行い、データや制御信号の授受を行うことができる。

　また、明視範囲判定部３０８は、昼夜判定部３０７による判定結果、及びハイビーム／ロービーム検出部３０６の検出結果を参照して、車両１の周囲における明視範囲を判定する。例えば、昼の場合は、原則として、周囲はすべて明視野の範囲（明視範囲）であると判定できる。また、夜の場合、例えば、前照灯２０４のハイビーム／ロービームによる照明範囲（空間における照明光の分布：既知）に基づいて、明視範囲を判定できる。

　対象物情報取得部３１０は、赤外線カメラ２００の撮像画像を解析し、パターンマッチングや特徴量の抽出等の手法を用いて、注意喚起対象である対象物を検出する対象物検出部３１２と、撮像画像を解析し、対象物の位置情報（例えば、前車両１の左右方向に対応する方向をｘ方向とし、上下方向に対応する方向をｙ方向とし、車両１の前方に対応する方向をｚ方向とするとき、各座標軸の座標情報）を取得する位置情報取得部３１４と、対象物までの距離（ｚ軸方向における距離）の情報を取得する奥行き情報取得部３１６と、対象物の動き検出部３１８と、を有する。

　奥行き情報取得部３１６は、例えば、レーダー部２０６の測定結果を利用して奥行き情報を取得してもよく、また、一対の赤外線カメラ２００の視差画像に基づく演算により算出してもよい。また、動き検出部３１８は、例えば、所定の時間間隔で測定された複数枚の撮像画像の差分に基づいて動きベクトルを検出してもよい。この場合、動きベクトルの方向と大きさから、対象物の動きの態様を検出することができる。

　また、対象物の明暗判定部は、明視範囲判定部３０８によって特定された明視野の範囲（明視範囲）と、対象物取得部３１０が取得した対象物についての位置情報（座標情報を含み、その他、種々の情報を参照することもできる）と、の少なくとも一方に基づいて、例えば、両者を突き合わせて対応付けすることによって、対象物が、運転者からみて明るい範囲である明視野の範囲（明視範囲）にあるか（言い換えれば、明視野対象物であるか）、暗い範囲である暗視野の範囲（暗視範囲）にあるか（言い換えれば、暗視野対象物であるか）を判定する。

　言い換えれば、対象物の明暗を判定するに際し、外光強度、及び自車両の照明の動作状況等の少なくとも一方に基づいて、車両の周辺における明視野の範囲（言い換えれば、光の分布状況）を判定し、その明視野の範囲（明視範囲）と、検出された対象物の位置情報と、を例えば突き合わせる（両者の対応関係を調べる、具体的には、例えば、対象物の少なくとも一部が明視範囲に含まれるか否かを検出する）ことによって、対象物の明暗を判定するものである。

　これによって、夜間であっても、車両の周辺の明るさの分布を考慮して、対象物の明暗を、精度よく判定することができる。例えば、昼間は、前照灯２０４の点灯状態にかかわらず、周囲の対象物は明るい範囲にあるものと判定し得る。言い換えれば、前照灯２０４を点灯していても、例えば、外光センサ２０２によって周囲が明るい（昼間）と判定されれば、前照灯２０４の照明範囲に関係なく、対象物は明視野の範囲（明視範囲）にある対象物であると判定できる。

　また、外光センサ２０２によって周囲が暗い、言い換えれば、夜間（薄明視環境も含まれる）であると判定される時は、前照灯２０４等による照明の範囲を考慮して、対象物の明暗を判定する。なお、赤外線カメラ２００とは別のカメラを用意して、そのカメラで撮像した画像の輝度分布を調べて、対象物の明暗を判定する時も想定され得るが、この場合も、実質的に、対象物の位置と、その位置における輝度情報と、を対応付けして対象物の明暗を判定していることになり、上記の技術範囲に含まれる。

　また、危険度判定部３３０は、対象物の動きに関する情報に基づいて、対象物の危険性（危険度）を判定する。例えば、先に図３（Ａ）で説明したように、人が、早足で道路に進入しようとしている時等には、対象物であるその人は、危険性（危険度）が高いと判定される。

　また、表示制御部３４０は、対象物の明暗判定部３２０の判定結果等に基づいて、重畳表示を行うか否かを判定する重畳表示要否判定部３４２と、運転者に報知するための画像の表示を、ＨＵＤ装置１００を用いて行うか、表示部（表示器）１３を用いて行うか（あるいは、それらの双方に行うか）を判定するＨＵＤ表示／表示器表示の判定部３４４と、重畳表示や報知のための表示の態様や形式（例えば、重畳表示として枠表示を用いる、注意喚起マークを用いる、あるいは、報知のための表示として、ロゴマークを用いる、文字情報を用いる、あるいは、図３（Ｂ）の例のように、暗視野にある対象物に照明光を照射して重畳表示を行う、といったこと）を決定する報知形式／表示形式の決定部３４６と、を有する。

　また、照明制御部３６０は、報知形式／表示形式の決定部３４６によって、暗視野にある対象物に照明光を照射して重畳表示を行うことが決定された時は、例えば、前照灯制御部２０３に指示して、前照灯２０４の照明方向の変更（ロービームからハイビームへの切り換え等）を行わせ、あるいは、ＥＣＵ３００に指示して、無線通信部３０２から制御信号を外部照明５００に送信させ、これによって、外部照明５００から照明光を対象物に照射させる。

　このように、車両用表示装置は、ＨＵＤ装置１００を少なくとも有し、車両１の周囲の前実景に含まれる、注意喚起対象としての対象物を検出する対象物検出部３１２と、検出された対象物が、車両１の運転者から見て、明るく見える範囲である明視野にあるか、暗く見える範囲である暗視野にあるか、を判定する対象物の明暗判定部３２０と、車両用表示装置における表示を制御する表示制御部３４０と、を有する。

　そして、表示制御部３４０は、先に、図１（Ａ）、図１（Ｂ）、図２（Ａ）、図２（Ｂ）を用いて説明したように、対象物の明暗判定部３２０によって、対象物が明視野にあると判定された時には、ＨＵＤ装置１００における、重畳画像の虚像の、前記対象物への重畳を行わせる（図１（Ａ））。

　一方、対象物の明暗判定部３２０によって、対象物が暗視野にあると判定された時には、車両制御部３４０は、例えば、ＨＵＤ装置１００における、重畳画像の虚像（強調表示枠等）の、対象物への重畳を行わせず（図２（Ａ））、又は、ＨＵＤ装置１００における、重畳画像の虚像（強調表示枠等）の、第１の虚像表示領域ＰＬ１における対象物への重畳を行わせず、その代わりに第２の虚像表示領域ＰＬ２における虚像の表示によって、運転者に、暗視野にある対象物への注意を喚起させ（図２（Ａ））、又は、ＨＵＤ装置１００における、重畳画像の虚像の、対象物への重畳を行わせず、その代わりに表示部（表示器）１３による表示によって、運転者に、暗視野にある対象物への注意を喚起させ（図２（Ａ））、又は、対象物検出部３１２によって検出される対象物に関する情報（例えば、動き方や移動の仕方）に基づいて、危険度判定部３３０が対象物の危険性の高低を判定し、危険性が低いと判定される時は、ＨＵＤ装置１００における、重畳画像の虚像の、対象物への重畳を行わせず、危険性が高いと判定される時は、例外的に、ＨＵＤ装置１００における、重畳画像の虚像の、対象物への重畳を行わせる（図１（Ｂ））、といった種々の表示態様によって、運転者に、対象物の存在を報知する。

　暗視野にある対象物に対しては重畳表示を行わないため、運転者に不安感を与えることがなくなり、また、ＨＵＤ装置１００における他の虚像表示領域（第２の虚像表示領域ＰＬ２）や他の表示部（表示器）１３に、注意喚起を促す表示をなすことで、間接的に、暗視野に、注意を要する対象物があることを運転者に報知することができる。よって、対象物が暗視野（暗視範囲）にある時においても、安全運転を確保しつつ、適切な情報の提供を行える車両用表示装置を実現することができる。

　また、表示制御部３４０が対象物に関する情報に基づいて（例えば、対象物の動き方、移動の仕方等に基づいて）、対象物の危険性の高低を判定し、危険性が高いと判定される時（例えば、対象物である人が道路へと進入する、あるいは、斜め前方を走る自転車が、少しずつセンターライン側に移動している、といった、車両との衝突、接触の可能性がある時）には、例外的に、暗視野にある対象物に対しても、虚像の重畳（重畳表示）を行わせることができる。このような場合は、他の虚像表示領域（第２の虚像表示領域ＰＬ２）や他の表示部（表示器）１３の表示による間接的な報知では間に合わないおそれがあることから、暗視野にある対象物に対して、例えば、見易いように調整された強調表示（例えば色を付した囲み枠、ロゴ、注意喚起マーク、文字による警告など）等を重畳させ、暗視野に危険性の高い対象物があることを直接的、かつ積極的に表示するものである。これによって、運転者に、例えば、危険を回避するための迅速な行動を促すことができる。

　また、表示制御部３４０は、対象物の明暗判定部３２０によって、対象物が暗視野にあると判定された時には、あるいは、さらに、危険度判定部３３０によって対象物の危険性が高いと判定された時（２重に条件を満たす時）には、車両に備わる照明を制御する、第１の照明制御部としての前照灯制御部２０３を介して、又は、車両１の外部の照明システムを制御する第２の照明制御部（ここでは、ＥＣＵ３００及び無線通信部３０２がこれに該当する）を介して、照明（前照灯２０４）又は照明システムとしての外部照明５００から、暗視野にある対象物に照明光を照射させ、これにより、暗視野にあった対象物を明視野にある対象物とし、明視野にある対象物に対して重畳画像の虚像を重畳させてもよい（図３（Ｂ）の例）。

　言い換えれば、暗視野にある対象物（暗視野対象物）に対して強制的に照明光を照射させ、これによって、暗視野対象物を、明視野にある対象物（明視野対象物）に転換し、転換された明視野対象物に重畳画像の虚像を重畳させる、という制御が行われる。自車両の照明（例えば、前照灯を含む照明部、照明システム）や、外部の照明システム（例えば、車両の周辺の環境に設置されている道路灯（道路照明器具）、屋外用スポットライト、防犯灯、街路灯等）を用いて対象物を照明し、暗視野にあって視認が困難な対象物を、明視野にあって視認可能な対象物とし、これに重畳表示を行うことで、運転者は、重畳表示によって示される対象物を、瞬時に視認することが可能である。よって、不安感が生じず、有用な情報提供が可能となる。

　なお、図３（Ｂ）で説明したように、前照灯（ヘッドライト）２０４の照明態様の変更の具体例としては、前照灯のロービームをハイビームに切り換えることがあげられる。但し、強制的な照明態様の変更を行う場合、機器の処理負担がかなり重くなることが想定され、また、運転者にとっても、照明状態の強制的な変更によって違和感を覚えることも有り得ることから、慎重に判断し、危険性が大きいと判定される場合にのみ、照明態様の変更を行うとった配慮がなされることが望ましい。なお、照明態様を変更する前に、運転者に、表示や音声等によって、そのことを報知して、違和感を軽減するようにしてもよい。

　次に、図６を参照する。図６は、図５に示される車両用表示装置の、主要な動作手順の一例を示すフローチャートである。まず、昼夜判定を行う（ステップＳ１）。ステップＳ１において夜と判定される場合は、次に、ハイビーム／ロービームに関する情報を入力する（ステップＳ２）。また、ステップＳ１において昼と判定される場合は、ステップＳ３に移行する。ステップＳ３では、明視範囲（明視野の範囲、あるいは運転者から見て明るく見える範囲）の判定を行う。これと併行して、対象物情報（位置情報、奥行き情報、動き等情報）の取得を行う（ステップＳ４）。

　次に、ステップＳ３、Ｓ４の各判定結果に基づいて、対象物の明暗判定を行い（ステップＳ５）、明視範囲（明視野の範囲）にある対象物（明視野対象物）である時には、ステップ１０に移行して、その対象物に対して重畳表示（対象物に重畳される枠、注意喚起マーク、ロゴ等の表示）を行う。

　ステップＳ６で、暗視範囲（暗視野の範囲）にある対象物（暗視野対象物）であると判定された時（ステップＳ６でＹの時）には、原則的には重畳表示は行わず、ステップＳ１１に移行して、ＨＵＤ装置の第２の虚像表示領域や他の表示部（表示器）を用いた、非重畳表示による運転者への報知を行う。

　但し、必要に応じて、対象物の動き等に基づく危険度（危険性）の高低の判定が行われ（ステップＳ７）、危険度大と判定される時は、例えば、例外的に、ステップＳ１０に移行して重畳表示を行なってもよく、また、例えば、ステップＳ１１に移行して、非重畳表示による運転者への報知を行ってもよく、また、ステップＳ９に移行して、照明変更（照明態様の強制的な変更）によって対象物を照明してもよい。

　また、ステップＳ７に続いてステップＳ８にて、照明変更（照明態様の強制的な変更）の要否を判定してもよく、照明変更要と判定された時は、ステップＳ９にて、照明変更（照明態様の強制的な変更）によって対象物を照明し、次に、ステップＳ１０に移行して、明視野の範囲にある対象物に対して重畳表示を行ってもよい。

　以上、本発明を、いくつかの実施形態を用いて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、種々、変形、応用が可能である。例えば、検出対象となる対象物は、人や自転車等の動きのあるものの他、道路標識、目的地に到達するのに役立つ目印となるランドマーク等であってもよい。また、照明態様の変更は、前照灯のみならず、バックライトやその他の予備的な照明灯などを対象として行ってもよい。また、上記の実施形態では、重畳表示として強調表示枠を例にとって説明しているが、例えば、対象物を指し示す矢印、ロゴ等も重畳表示に含めてもよい。また、対象物の危険性（危険度）が高い時には、ＨＵＤ装置や他の表示部（表示器）における表示において、通常の表示態様とは異なる態様での表示を行ってもよい。例えば、文字、対象物の危険度や種別を示すアイコン等による報知を行ってもよい。

　本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。

　１・・・車両、２・・・路面、３・・・被投影部材（ウインドシールド等）、４・・・ダッシュボード、５・・・ウインドシールド上の虚像表示領域、７・・・ハンドル（ステアリングホイール）、８・・・前照灯による照明範囲、９・・・モード切替スイッチ（操作部）、１３・・・液晶等による表示部（表示器）、１００・・・ＨＵＤ装置、２００・・・赤外線カメラ、２０２・・・外光センサ（照度センサ）、２０３・・・前照灯制御部、２０４・・・前照灯、２０６・・・レーダー部、３００・・・ＥＣＵ、３０２・・・無線通信部、３０４・・・車両情報取得部、３０６・・・ハイビーム／ロービーム検出部、３０７・・・昼夜判定部、３０８・・・明視範囲判定部、３１０・・・対象物情報取得部、３２０・・・対象物の明暗判定部、３４０・・・表示制御部、４００・・・運転支援システム、５００・・・外部照明、ＰＬ１，ＰＬ２・・・第１、第２の虚像表示領域、ＰＳ１（ａ）、ＰＳ１（ｂ）、ＰＳ２・・・虚像表示面、Ｋ１、Ｋ２・・・画像の表示光、Ｅ１～Ｅ５・・・対象物（あるいは対象物の候補）、ＰＨ１、ＰＨ２・・・強調表示としての枠（強調表示枠）。

Claims

　車両に搭載され、画像を、前記車両に備わる被投影部材に投影することで運転者に前記画像の虚像を視認させると共に、前記虚像には、前記車両の周囲の実景に重畳される重畳画像の虚像が含まれるヘッドアップディスプレイ（ＨＵＤ）装置を少なくとも有する車両用表示装置であって、該車両用表示装置は、
　前記車両の周囲の前記実景に含まれる、注意喚起対象としての対象物を検出する対象物検出部と、
　検出された対象物が、前記車両の運転者から見て、明るく見える範囲である明視野にあるか、暗く見える範囲である暗視野にあるか、を判定する対象物の明暗判定部と、
　前記車両用表示装置における表示を制御する表示制御部と、
　を備え、
　前記表示制御部は、
　前記対象物の明暗判定部によって、前記対象物が明視野にあると判定された時には、（ａ）前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記対象物への重畳を行わせ、
　前記対象物の明暗判定部によって、前記対象物が暗視野にあると判定された時には、　（ｂ－１）前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記対象物への重畳を行わせない、
　又は、
　（ｂ－２）前記ヘッドアップディスプレイ装置における前記虚像を表示可能な虚像表示領域が、前記重畳画像の虚像を表示する第１の虚像表示領域と、対象物への重畳を前提としない非重畳画像の虚像を表示する第２の虚像表示領域と、を含む時に、
　前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記第１の虚像表示領域における前記対象物への重畳を行わせず、かつ、前記第２の虚像表示領域における虚像の表示によって、前記運転者に、前記暗視野にある前記対象物への注意を喚起させる、
　又は、
　（ｂ－３）前記ヘッドアップディスプレイ装置とは別に、表示部が設けられる時に、
　前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記対象物への重畳を行わせず、かつ、前記表示部による表示によって、前記運転者に、前記暗視野にある前記対象物への注意を喚起させる、
　又は、
　（ｂ－４）前記対象物検出部によって検出される前記対象物に関する情報に基づいて、前記対象物の危険性の高低が判定され、
　危険性が低いと判定される時は、（ｂ－４α）前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記対象物への重畳を行わせず、危険性が高いと判定される時は、（ｂ－４β）前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記対象物への重畳を行わせる、
　ことを特徴とする車両用表示装置。
　車両に搭載され、画像を、前記車両に備わる被投影部材に投影することで、運転者に前記画像の虚像を視認させると共に、前記虚像には、前記車両の周囲の実景に重畳される重畳画像の虚像が含まれるヘッドアップディスプレイ（ＨＵＤ）装置を少なくとも有する車両用表示装置であって、該車両用表示装置は、
　前記車両の周囲の前記実景に含まれる、注意喚起対象としての対象物を検出する対象物検出部と、
　検出された対象物が、前記車両の運転者から見て、明るく見える範囲である明視野にあるか、暗く見える範囲にあるか、を判定する対象物の明暗判定部と、
　前記車両用表示装置における表示を制御する表示制御部と、
　を備え、
　前記表示制御部は、
　前記対象物の明暗判定部によって、前記対象物が明視野にあると判定された時には、前記ヘッドアップディスプレイ装置における、前記重畳画像の虚像の、前記対象物への重畳を行わせ、
　前記対象物の明暗判定部によって、前記対象物が暗視野にあると判定された時には、
　前記車両に備わる照明を制御する第１の照明制御部、又は前記車両の外部の照明システムを制御する第２の照明制御部を介して、前記照明又は前記照明システムから前記暗視野にある対象物に照明光を照射させ、これにより、暗視野にあった対象物を明視野にある対象物とし、明視野にある対象物に対して前記重畳画像の虚像を重畳させる、
　ことを特徴とする車両用表示装置。
　前記表示制御部は、前記対象物検出部によって検出される前記対象物に関する情報に基づいて、前記対象物の危険性の高低を判定し、危険性が高いと判定される時に、前記暗視野にある対象物に照明光を照射させることを特徴とする請求項１又は２に記載の車両用表示装置。
　前記対象物の明暗判定部は、
　外光センサから得られる外光強度情報、及び前記車両情報取得部が取得した、前記車両に備わる照明の動作状況を示す情報の少なくとも一方に基づいて、前記車両の周辺における前記明視野の範囲を判定する明視範囲判定部を有し、
　前記明視範囲判定部によって判定された明視野の範囲と、前記対象物検出部によって検出された前記対象物の位置情報と、に基づいて、前記対象物が明視野にあるか、暗視野にあるかを判定することを特徴とする請求項１乃至３の何れか１項に記載の車両用表示装置。