明 細 書
共振現象を利用した超音波探査方法
技術分野
[0001] この発明は、ステンレス、インコネル(inconel、クロムと鉄を含むニッケル基の而食 耐熱合金)、铸鉄などの金属や原子炉配管、タービンブレード等の内部キズ、建築、 土木等の鋼構物の溶接部のキズの有無、キズのサイジングを広帯域超音波を用いて 探査、探傷するような共振現象を利用した超音波探査方法に関する。
背景技術
[0002] 図 15に示したような原子炉配管系に、従来の超音波探査方法を適用しょうとする際 に生じる課題としては、以下の 2つの課題を挙げることができる。
1)図 15に示したように、原子炉格納容器内には、 1次配管系の配管が設置され、タ 一ビン建屋内には、 2次配管系の配管が設置されている。このようにいずれの配管系 についても多数の原子炉配管が設置され、その総延長も長大であるといえる。
これに対して、従来の超音波探査方法は、極所的探査の繰り返しにより行われる方 法であるため、探査作業の工数が極めて膨大になるという課題を有する。
2)従来の超音波探査方法では、分析の際に求められる技術的な判断基準が計測分 析者によって異なることから微細キズの経年変化による進展評価に誤差が生じるお それがあると!/ヽぅ課題を有する。
[0003] このような上記(1) , (2)の課題に対して本願出願人は、「共振現象を利用した超音 波探査方法およびその装置」の発明について、(PCTZJP2004Z16982)におい て既に特許出願をしている。
[0004] 本願出願人による上記先行発明は、板厚 Wに基づいた共振振動数 f =V Z2W
1 P 、 及び、 f = y -f ( y は、横波と縦波の音速比)を用いて、 n'f 及び n'f (nは、 1以
S1 1 1 1 1 S1 上の整数)なる振動数で広帯域受信波より、狭帯域成分波を抽出する超音波探査方 法であった。
[0005] 具体的には、発信探触子と受信探触子とからなる一対の探触子の間隔 aを結ぶ線 分上直下の肉厚内のキズの存在の有無を探査するために、探触子移動の方法の一
つとして、前記一対の探触子の間隔を一定に保ったまま、該一対の探触子を結ぶ線 分の直角方向へ定められた間隔へ移動する都度、発信探触子より広帯域超音波を 被探知体に入力し、受信探触子で広帯域超音波を受信し、得られる多測点での広 帯域受信波 G (t) (jは、測点 No)より前記 n'f 及び n'f なる振動数で狭帯域の成分
j 1 si
波 GA (t)をサイジング係数 n 下で抽出し、成分波 GA (t)をサイジング係数 η , n
] s4 ] si s2
, n のもとで比較表示し、比較表示された成分波 GA (t)の起生の状況により、各 j毎 s3 j
に一対の探触子を結ぶ線分上直下のいずれかにキズが存在する力否力を探査する 方法であった。
[0006] このように、本願出願人による上記先行発明によれば、発信探触子と受信探触子と のそれぞれの中心を結ぶ線分に対して直角方向へ所定量毎並行移動させて、線分 直下の被探知体内のキズの探査を一挙に行なうことができる。このため、従来の超音 波探査方法と比較して、数十倍から数百倍と!、う計測点の数を減らして探査作業の 工数の大幅な削減を図ることができ、上記(1)の課題の解決に貢献することができる
[0007] しかし、上述したような超音波探査方法を採用しても、未だ以下の課題を有している
3)探触子の配置及び移動の多様性により計測の自動化を図ると!、う観点力 すれば 、まだまだ難点を有している。
[0008] また、本願出願人による上記先行発明によれば、測定者が異なる場合にぉ 、ても、 探査を高精度化するためのサイジング係数を同一条件のもとで分析を行うことにより 、測定者の能力によるサイジング結果の差異を排除し、微細キズの経年による進展 が評価可能となり、上記(2)の課題の解決に貢献することができる。
[0009] しかし、上述したような超音波探査方法を採用しても、未だ以下の課題を有している
4)評価の前提として必要となる受信波 G (t)の取得を前回の計測と全く同一位置で 行う必要があるが、やはり計測にあたっての探触子の配置及び移動には多様性を伴 うため、探触子を前回の計測と同様に配置して移動させるには困難性を伴うという課 題を有している。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 本発明は、上記(1)から (4)の課題に対してなされた発明であり、すなわち、従来の 超音波探査法では、配管の設置状況によって計測箇所が制限されるが、このような 計測が困難な箇所にキズが存在しても確実に計測することができるとともに、計測の 際の一対の探触子の配置、及び、移動の多様性に関わらず、計測の自動化を図るこ とことができ、さらに、被検知体が大口径配管の場合であっても、計測時間の膨大な 短縮を図ることのできる共振現象を利用した超音波探査方法の提供を目的とする。 課題を解決するための手段
[0011] この発明による超音波探査方法は、発信探触子から広帯域超音波を連続して発信 させ、被探知体力 の広帯域超音波を受信探触子にて受信する共振現象を利用し た超音波探査方法であって、円管管軸方向と直交する断面上の管表面に発信探触 子と受信探触子を配置する計測で、前記一対の探触子の中心点を結ぶ曲線の長さ を aとし、この曲線が前記直交断面の円弧と一致する様にし、前記発信探触子より広 帯域超音波を外部から指定する回数 (n )、円管断面中心点に向けて発信し、この発
B
信の都度、前記受信探触子で広帯域受信波を受信し、その受信位置で指定回数に 応じて得られる n個の前記広帯域受信波 G (t)を時刻領域で加算平均して取得す
B 1
る第 1の工程を実行し、前記一対の探触子を前記 aの間隔を保持したまま、予め定め られた又は、外部から与えられる所定値 A Lずつ管軸方向へ平行移動する都度、前 記第 1の工程を実行し、この第 1の工程の回数を外部力 与えられる所定の回数 n
A
行い、全ての広帯域受信波 G (t) (j = l〜n )を得る第 2の工程を実行し、被探知体
j A
の肉厚 W (mm)、及び、縦波音速 V (mmZ 秒)、並びに、横波と縦波の音速比を γ
Ρ
として、肉厚に関する縦波 1次共振振動数 f を
モード変換で生じる横波の 1次共振振動数 f を
[数 17]
L =Ύν ί で算定する第 3の工程を実行し、被探知体のキズの有無、及び、キズの経年による進 展を高精度に探査するためのサイジング係数 η , η , η , η を用いて、以下に示 si s2 s3 s4
す (工程 4)、(工程 5)、(工程 6)の連続した分析を行い、得られる上記成分波 GA (t )の比較表示で前記発信探触子と受信探触子を配置する円管管軸方向直交断面内 でのキズの有無及びキズの円周上の位置を分析する超音波探査方法であることを特 徴とする。
(工程 4)
G (t)をフーリエ変換し、 F (f)を求めて、 nを 1以上の整数として、 f =n-f 又は f = j j ST 1 ST n-f を求め f=0〜f を増加関数、 f≥f で 1.0、f=f 〜2f を減少関数、 f=2f
SI ST ST ST ST s を 0.0とする周波数関数 S (f)を作成し、サイジング係数 n を用いて FA (t)関数を
T s4 j
[数 8]
FAj(f) = S(f)n-'Fj(f) で求めて対応する成分波 GA (t)を
[数 9]
GAJ(t)= }(FAj(f)-eimt)df で求める工程。
(工程 5)
(工程 4)で得る成分波 GA (t) (j = l〜n )において、成分波 GA (t)の各々の最大 j A j
振幅を求め Aとし、 Aの中での最大値を A とし、 A≥(lZn )A となる成分波 G
] ] max ] si max
A(t)を (A ZA)GA(t)と置き換え、
j max j j
[数 6] (ι/ (ί)
により計算される G〜A (t)波を作成し、
成分波 GA (t)を G〜A (t)と置き換える工程 (なお、 G〜は数式において Gの上に"〜"
] ]
を付された符号を表す。以下同じ。 ) o
(工程 6)
サイジング係数 η , n を用いて、 n 'GAns2 (t)波を作成し、 GA (t)波を n -GAns2 s2 s3 s3 j j s3 j
(t)波と置き換える工程。
[0012] 上述した計測方法によれば、一対の探触子を所定間隔に保持したまま、配管の管 軸方向のみへ順次移動する計測を行えばよぐ断面円周方向へも順次移動して計 測する必要がないため、殊に大口径を有する配管においては、計測時間、或いは、 計測作業を大幅に削減することができる。
[0013] また、配管の設置状況に左右されず、配管の断面円周方向における、一対の探触 子の配置位置を反対側の位置に有するキズであっても探査することができる。
[0014] さらに、配管表面に保護材が被覆されていた場合であっても、配管の断面円周方 向における一対の探触子を配置する領域のみ保護材を除去して計測することができ る。
[0015] このため、計測部位全体の保護材の除去、及び、除去後の配管表面研磨というよう な工程を省くことができる。
[0016] さらにまた、計測の自動化において必要となる制御用係数の数は、従来の超音波 法に比し、極端に少なくなり、探触子移動制御の自動化と対応する分析処理が容易 となると 、つた効果も奏することができる。
[0017] また、この発明による超音波探査方法は、発信探触子から広帯域超音波を連続し て発信させ、被探知体からの広帯域超音波を受信探触子にて受信する共振現象を 利用した超音波探査方法であって、円管管軸方向と直交する断面上の管表面に発 信探触子と受信探触子を配置する計測で、前記一対の探触子の中心点を結ぶ線分 の長さを aとし、この線分の方向が円管管軸方向と一致する様にし、前記発信探触子 より広帯域超音波を外部力 指定する回数 (n )、円管断面中心点に向けて発信し、
B
この発信の都度、前記受信探触子で広帯域受信波を受信し、その受信位置で指定 回数に応じて得られる n個の前記広帯域受信波 G (t)を時刻領域で加算平均して
取得する第 1の工程を実行し、前記一対の探触子を前記 aの間隔を保持したまま、予 め定められた又は、外部から与えられる所定値 A Lずつ、管軸と直行する断面上の 管表面上で、前記一対の探触子を結ぶ線分を管軸に対して平行移動する都度、前 記第 1の工程を実行し、この第 1の工程の回数を外部力 与えられる所定の回数 n
A
行い、全ての広帯域受信波 G (t) (j = l〜n )を得る第 2の工程を実行し、被探知体 j A
の肉厚 W (mm)、及び、縦波音速 V (mmZ 秒)、並びに、横波と縦波の音速比を γ
Ρ
として、肉厚に関する縦波 1次共振振動数 f を
モード変換で生じる横波の 1次共振振動数 f
S1を
[数 17]
で算定する第 3の工程を実行し、被探知体のキズの有無、及び、キズの経年による進 展を高精度に探査するためのサイジング係数 η , η , η , η を用いて、以下に示 si s2 s3 s4
す (工程 4)、(工程 5)、(工程 6)の連続した分析を行い、得られる上記成分波 GA (t )の比較表示で前記発信探触子と受信探触子の中心点を結ぶ線分延長線上で、管 断面中心方向の肉厚内のキズの有無及びキズの管軸方向位置を分析する超音波 探査方法であることを特徴とする。
(工程 4)
G (t)をフーリエ変換し、 F (f)を求めて、 nを 1以上の整数として、 f =n-f 又は f = j j ST 1 ST n-f を求め f=0〜f を増加関数、 f≥f で 1. 0、 f二 f 〜2f を減少関数、 f≥2f
SI ST ST ST ST s を 0. 0とする周波数関数 S (f)を作成し、サイジング係数 n を用いて FA (t)関数を
T s4 j
[数 8]
で求めて対応する成分波 GA (t)を
で求める。
(工程 5)
(工程 4)で得る成分波 GA (t) (j = l〜n )において、成分波 GA (t)の各々の最大 j A j
振幅を求め Aとし、 Aの中での最大値を A とし、 A≥(lZn )A となる成分波 G
] ] max ] si max
A(t)を (A ZA)GA(t)と置き換え、
j max j j
[数 6]
成分波 GA (t)を G〜A (t)と置き換える。
(工程 6)
サイジング係数 η , n を用いて、 n 'GAns2(t)波を作成し、 GA (t)波を n -GAns2 s2 s3 s3 j j s3 j
(t)波と置き換える工程。
[0018] 上述した計測方法によれば、一対の探触子を所定間隔に保持したまま、配管の断 面円周方向のみへ順次移動して計測することができる。
[0019] このため、例えば、配管の設置状況により配管の管軸方向に一対の探触子を移動 させることができないなどの制約がある場合に本発明の計測方法は殊に有効である。
[0020] また、本発明によれば、前記(工程 4)の処理を、 G (t)をフーリエ変換し、 F (f)を求 め、 nを 1以上の整数として、 f =n'f 又は f =n-f を求めて所定値 Δί (予め定め
ST 1 ST S1
られた又は、外部力 与えられる値)を用いて、
0≤f<f Δίで 0.0
ST
f -Af≤f≤f +Δίで 1.0
ST ST
f +Af<fで 0.0
ST
とする周波数関数を S (f)を作成し、サイジング係数 n を用いて FA (f)関数を
[数 9]
で求める処理で行う超音波探査方法であることを特徴とする。
[0021] さらにまた、本発明によれば、外部からの指示で、 Δί (0以上の実数)を与え、前記
0
f の初期値を f Δίとし、 Δί (予め与えられた又は、外部から指示する 0.
ST ST ST 0 ST
0以上の実数)を用いて、
f — f + Δί
ST ST ST
の処理を行う都度、(工程 3)、(工程 4)、(工程 5)の分析を連続して行い、得られた G A j(t)波の比較表示を行い、外部からの指示で (工程 3)、(工程 4)、(工程 5)の分析 を停止することができる工程を有する超音波探査方法であることを特徴とする。
図面の簡単な説明
[0022] [図 1]本発明の超音波探査方法に用いる超音波探査装置のブロック図。
[図 2]発信探触子のブロック図。
[図 3]ステップ型電圧発生器のブロック図。
[図 4]受信探触子のブロック図。
[図 5]配管モデルの説明図。
[図 6]探触子定位置管軸方向移動計測の説明図。
[図 7]受信波 G (t)の側点ごとの比較図。
[図 8]配管端部を展開して示した説明図。
[図 9]狭帯域スペクトルの切り出しを示す説明図。
[図 10]成分波比較図。
[図 11]成分波比較図。
[図 12]縦波の起生時刻を示す比較図。
[図 13]探触子定位置管軸方向移動計測の説明図。
[図 14]探触子定位置管軸直角方向移動計測の説明図。
[図 15]1次配管系及び 2次配管系の説明図。
符号の説明
[0023] 30 被探知体
31 発信探触子
32 受信探触子
40 CPU (逆変換部)
41 表示装置 (比較表示部、判断部)
47 振動子
Z キズ
Y 保護材
発明を実施するための最良の形態
[0024] この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図面は超音波探査方法、及び、その装置を示すが、まず図 1を参照して、この方法 に用いる超音波探査装置の構成について説明する。
[0025] 被探知体 30の表面に接触配置する発信探触子 31と受信探触子 32とを設けている 上述の発信探触子 31は広帯域超音波 (例えば 0〜2. OMHz)を発信するものであ り、上述の受信探触子 32は広帯域超音波を受信するものである。
[0026] 上述の発信探触子 31には超音波発信装置の電流供給回路 33から電流が供給さ れ、この発信探触子 31から超音波が発信して被探知体 30内に入射する。
[0027] また受信探触子 32が受信した超音波信号は解析装置 34に入力されて解析される この解析装置 34においては、受信探触子 32の受信信号が増幅回路 35により増幅 された後、フィルタ回路 36でフィルタリングを受けた信号が AD変換回路 37 (アナログ •デジタル変換回路)によってデジタル信号に変換され、ゲートアレイ 38を介して CP
U40に入力される。
[0028] ハードディスク 39には解析処理アプリケーションソフトウェアと、 CPU40により演算 処理された時系列データが保存される。ここで、上述の CPU40は後述する成分波 G
A (t)をフーリエ変換で求める逆変換部である。
[0029] また、上述の解析結果は表示装置 41にも入力されて表示される。この表示装置 41 は後述する狭帯域スペクトル FA (f)の表示や成分波 GA (t)の比較表示に用いられ る比較表示部である。
[0030] さらに、必要な情報が入力手段としてのキーボード 42から CPU40に入力されるよう に構成している。メモリ 43は CPU40が演算する際にデータを一時的に格納するため に用いられる。また、 CPU40からコントロール回路 44に制御信号が出力され、コント ロール回路 44は増幅回路 35、フィルタ回路 36、 AD変換回路 37、ゲートアレイ 38、 及び、電流供給回路 33に作動指令信号を出力する。
[0031] 電流供給回路 33は同軸ケーブル 45を介して発信探触子 31に接続されており、発 信探触子 31には図 2に示すように、基盤ィ匕されたステップ型電圧発生器 46と直径が φ = 10mmの振動子 47とが内蔵されている。
[0032] ステップ型電圧発生器 46には、図 3に示すようにステップ電圧駆動回路 47とステツ プ電圧発生回路 48とが設けられており、ステップ電圧駆動回路 47で発生するステツ プ関数型電圧を振動子 47に印加する。
[0033] 広帯域超音波を被探知体 30に入力する都度、受信探触子 32で受信波を得る。
この受信波は同軸ケーブル 49を介して、解析装置 34の増幅回路 35へ電圧の時 間変動データとして送られる。増幅回路 35へ送られた時間変動データは、フィルタ 回路 36を介して AD変換回路 37に達し、この電圧のアナログ量が該 AD変換回路 3 7によりデジタル量に変換され、ゲートアレイ 38を介して CPU40に転送され、電圧デ ジタル値の時刻歴が表示装置 41に表示される。
[0034] 自動的に、またはキーボード 42を用いた外部力もの指示で、電圧の増幅または減 幅、及び、ローパス Zハイパスフィルタ処理の指令が CPU40に伝達され、 CPU40 はコントロール回路 44を介して増幅回路 35、及び、フィルタ回路 36を制御する。
[0035] 図 4に示すように、受信探触子 32には 100KHz〜300KHzの範囲の特性の振動
数における漸減型ハイパスフィルタ回路 50、増幅回路 51、及び、直径が φ = 10mm の振動子 52が内蔵されている。
[0036] 電流供給回路 33はコントロール回路 44により制御されて、所定の時間間隔で動作 する。
[0037] これにより、発信探触子 31に内蔵された振動子 47 (図 2参照)から、所定の時間間 隔で超音波が被探知体 30に入射される。
[0038] 受信探触子 32に内蔵された振動子 52 (図 4参照)は超音波が入力する都度、被探 知体 30の音圧変化にともなって振動が励起する。この振動励起で振動子 52に生じ る電圧の時間変化が、受信探触子 32内のフィルタ回路 50、及び、増幅回路 51で 1 次処理される。
[0039] 図 1の増幅回路 35、及び、フィルタ回路 36の制御が終了した段階で、 CPU40の 指示でコントロール回路 44が動作し、ゲートアレイ 38に受信波の加算処理を命令す る。
[0040] ゲートアレイ 38は、 AD変換回路 37で得られる電圧に関する時刻歴デジタル量を、 上記時刻歴を得る都度、指定回数加算する。そして、 CPU40のコントロール下にて 加算平均時刻歴を作成し、表示装置 41にその時刻歴をリアルタイム表示する。
[0041] フィルタ回路 50, 36、及び、増幅回路 51, 35は受信探触子 32と解析装置 34との 双方にそれぞれ内蔵されている。受信探触子 32に内蔵されているハイパスフィルタ 回路 50、及び、増幅回路 51は受信波に対して 1次処理を行なうものであり、解析装 置 34に内蔵されている増幅回路 35とフィルタ回路 36は、 1次処理された受信波に対 し、 CPU40のコントロール下にて微調整するものである。この微調整は装置機能の 高度化のために必要なものであるから、これら増幅回路 35、フィルタ回路 36は省略 してちよい。
[0042] 次に、本実施例の超音波探査方法による計測の被探知体 30となる配管のモデル について図 5 (a) , (b)を用いて説明する。
なお、図 5 (a)は、配管の外観図を示し、図 5 (b)は、配管の軸方向におけるキズ位 置での断面図を示す。
[0043] 上記配管モデルは、 SUS配管モデルであり、管外径 D = 557mm、管長 L= 1000
mm、肉厚 W= 11mmの管モデルに一方の管端部から 1= 250mm位置で管軸方向 に長さ 20mm、幅 0. 2mm、深さ 1. 6mmの微細なキズ Zを模似したモデルである。
[0044] このような配管モデルに対して設置する発信探触子 31及び受信探触子 32を結ぶ 線分を、図 6 (a) , (b)に示したように、管軸直交断面上の管表面とし、その周方向に おいて長い円弧側の一対の探触子間距離 aを a = 1500mmとし、短い円弧側の一 対の探触子間距離 aを a = 250mmとする。
2 2
[0045] 一対の探触子 31, 32を、同一の間隔 aに保持したまま、図 6 (a)に示したように矢
2
印 C方向へ A L = 5mmづっ移動する都度、発信探触子 31より広帯域縦波超音波を 管軸直交断面の中心方向に向けて、 n回連続発信し、その発信の都度得る広帯域
B
受信波 G (t) (j = l〜nは測点の数、 kは l〜nのいずれかの値)を取得し前記連続 jk A B
発信終了後、分析で用いる広帯域受信波を [数 1]で評価する。
[数 1]
図 7に受信波 G (t) (j = l〜25)の比較波形を示す。
[0046] ところで、図 6は、キズ位置と一対の探触子 31, 32位置との関係を図示している。こ れより、発信探触子 31位置と受信探触子 32位置の中心と、キズ位置との円弧上長さ bを
2
[数 2]
b, = jr x 5bん 5mm/ 4 = 4 7.5mm とした計測で、前記受信波 G (t)を求めている。
j
[0047] また、キズ位置が管端部から 250mmと短いことより、受信波 G (t)に管端部からの 反射波が多量に含まれることが予想される。本計測にように、キズ Zの有無の探査の 場合、この管端部反射波は大きな振幅を持つ探査妨害波となる。
[0048] このため、図 8の管端部展開図に示す様に管端部を直径 100mmの円弧で連続的 に切り欠き、管端部で生じる探査妨害波を散乱させて前記受信波 G (t)を求めている
[0049] 次に、本実施例における超音波探査方法で用いる関係式について説明しておく。 上述したように、配管表面より管断面中心に向けて広帯域縦波超音波を入力して得 る広帯域受信波を G (t)と表現する。このとき、受信波 G (t)の j毎の波のスペクトル F
(f)は、配管肉厚に関する共振スペクトル群 (次数を持つ)より構成される。
[0050] このスペクトルの振動数は次数を持ち、配管材の縦波音速を V mm/ μ secとした
P
時、縦波スペクトルの各共振振動数は次の [数 3]で示される。
[数 3]
一方、縦波入力後被探知体内で自然発生する横波はその共振振動数が [数 4]で示 されるものがある。但し、配管材の横波音速を V mmZ w secとする。
S
= 3
発信探触子 31による配管への広帯域超音波入力は、配管表面より管断面中心に 向けた縦波でなされている。このため、 [数 3]で示す共振振動数の縦波についてのス ベクトル成分が受信波に含まれるのは当然である。しかしながら、 [数 4]で示す共振 振動数のスペクトル成分 (横波)も受信波に含まれる。その理由は、超音波のモード 変換と 、う物理現象が存在するためである。
[0051] 超音波が反射源に達すると、ここで反射、屈折そして散乱現象が生じ、前記超音波 が縦波の場合、反射源で縦波のみならず横波が生じる。これと同様に、前記超音波
が横波の場合、反射源で横波のみならず縦波が生じることとなる。これがモード変換 なる現象である。
[0052] 既出の特許出願 (PCTZJP2004Z16982)では、以下に詳説するとおり、 [数 4] で示した関係が成立する物理現象として、以下の [数 5]の存在を仮定して ヽる。
[数 5] —
一方、既存の普遍的な超音波理論では、上述したモード変換 (縦波が横波に、又 は、横波が縦波に変化する現象)の時、超音波の速度が変化するが振動数は不変 であるとしている。この従来理論によれば [数 4] , [数 5]の存在は否定されることにな る。
[0053] 本実施例の超音波探査方法は、以下に詳説するとおり、 [数 4] , [数 5]で示した物 理現象、及び、前記「モード変換時、変換前の波と変換後の波の音速が変化し、振 動数は不変である」とする従来の超音波理論の相方を真理として採用した分析方法 である。
[0054] このような分析方法にっ 、て以下で説明する。
[0055] 本分析方法では、探査対象キズ Zのサイズを高精度にするために用いるサイジング 係数(η , η , η , η )なる係数を用いている。
sl s2 s3 s4
ここで、 n , n は 1. 0以上の実数、 n , n は 1以上の整数である。
sl s3 s2 s4
[0056] 具体的に、サイジング係数 n について、
sl
分析用対象波 (成分波のこと)を上述したように、 GA (t) (但し、 jは測定番号)と表 j
現し、成分波 GA (t)は、後述する「n の説明」で記述する [数 8] , [数 9]を用いて作
] s4
成される。さらに、この成分波 GA (t)は、 j = l〜n (nは測定の数)で比較表示した j A A
時、成分波 GA (t)それぞれでの最大振幅を Aとし、 Aの中での最大値を A とし、 n
] ] ] max slになるサイジング係数を定義する。
[0057] このサイジング係数 n を用いて A≥(lZn )A となる GA (t)を (A /A ) GA sl j sl max ] max ] ]
(t)の値に置き換えて次の [数 6]で計算される G〜A (t)波を作成する (なお、 G〜は数 式において Gの上に"〜"を付された符号を表す。以下同じ。 ) o
[数 6] ) この後、 [数 7]に示すように、 GA (t)波を G〜A (t)波に置き換える。
[数 7]
GA (i) ^- A.(i) サイジング係数 n は上述の処理のための係数である。
si
[0058] サイジング係数 n について、
s2
成分波 GA (t)の比較表示において、 n なる係数を定義し、 GAns2 (t)の比較表示を j s2 j 行なうと、成分波 GA (t)の j = l〜nでの振幅の相違が明確となる。サイジング係数 n j A
s2は振幅の相違を明確ィ匕するための係数である。
[0059] サイジング係数 n について、
s3
上述の GAns2 (t)の比較表示において、 n なる係数を定義し、 GA (t)波の j = l〜n j s3 j A での振幅の相違を明確にするため、 n 'GAns2 (t)を比較表示する。サイジング係数 s3 j
n はこの比較化のための係数である。
s3
[0060] サイジング係数 n について、
s4
受信元波(いわゆる受信波) G (t)をフーリエ変換すると、図 9 (a)に示すようなスぺク トル F (f)を求めることができる。横軸 f位置 (但し、 f はスペクトル抽出用の中心周波 j 0 0
数)のスペクトルを切り出す方法の一つとして図 9 (a)に示す任意関数 S (f)を関数 F ( f)に乗じて次の [数 8]、及び、図 9 (b)に示すような狭帯域スペクトル FA (f)を得るこ とがでさる。
[数 8]
この時、サイジング係数 n を 1以上の整数とする。 n の値を大きくすると、 [数 8]の s4 s4
演算で得る FA (f)スペクトル (狭帯域スペクトル)の帯域幅を小さくすることができる。
[0061] なお、 S (f)なる関数は、
f =0〜fを増加関数
0
f = fで 1. 0
o
f=f 〜2fを減少関数
0 0
f≥2fで 0. 0
o
とする振動数関数である。
[0062] 本分析は、前記サイジング係数 n を用いて [数 8]で得られる狭帯域スペクトル FA ( s4 ] f)のフーリエの逆変換( [数 9] )で得る成分波 GA (t)を前記サイジング係数 n を用 j si いて、 n の説明で示すように修正し([数 6]、 [数 7])、修正された成分波 GA (t)より si j
、サイジング係数 n , n を用いて n 'GAns2 (t)を作成し、 j = l〜nを横軸 (又は縦 s2 s3 s3 j A
軸)とし、 tを縦軸 (又は横軸)として比較表示し、各測点での管軸直交断面内のキズ zの存在に相関する波の起生の有無を確認する方法である。
実施例 1
続いて、上述した関係式をもとに以下の分析を進める。本 SUS材の縦波音速は後 述する受信波 G (t)の分析で 5mmZ secと求められている。
配管の肉厚 11mmに依存する縦波の共振振動数 f は [数 3]により、
[数 10] f、 = 107(2xll ÷ 5) = 22つ KHz となる。
[0064] また、 [数 5]の仮定のもとで生じる f に対応する横波の共振振動数 f は [数 4]に S
1 S1
US材の横波と縦波の音速比 γ =0. 54を適用して求めることができる。
[数 11] fsl = 0.54/, = 0.54x 227 = \22.5 KHz サイジング係数の値を n = 1, n =4, n = 9, n = 200として、求めた分析結果
の一例を図 10に示す。図 10の分析波の抽出の具体的方法を以下に示す。
[0065] 前記肉厚に関する横波 1次共振振動数 f = 122. 5KHzを f とし、 Δ ί = 2. 5ΚΗ
SI 0 0
zを外部力 の指示で適切な値として定義し、極狭帯域波の抽出振動数の初期値 f
ST
を f =f — Δ ί = 120ΚΗζとして、受信波 G (t)に対応するスペクトル F (f)を用いて
ST 0 0 j j 定義される [数 8]を用いて挟帯域スペクトル FA (f)を計算する。
[0066] ここで、 S (f)なる関数は、 [数 8]の直後に詳述したとおりであるが、再度、説明する と S (f)は、
f=0〜f を増加関数
ST
f = f で 1· 0
ST
f=f 〜2f を減少関数
ST ST
f≥2f で 0. 0
ST
とする振動数関数である。本分析では、前記増加関数、及び、減少関数を正余弦関 数とした。
[0067] 挟帯域スペクトル FA (f)に対応する時系列波 (成分波) GA (t)を [数 9]のフーリエ の逆変換を用いて計算し、成分波 GA (t)各々で、その最大振幅を Aとし、 Aの中で の最大値を A とした時、 A≥(lZn )A となる成分波 GA (t)を (A /A) GA max ] si max ] max ] ]
(t)と置き換え、 [数 6]で計算される G〜A (t)波を作成する。
[0068] この後、 [数 7]式に示す様に成分波 GA (t)を G〜A (t)波と置き換える。
[0069] η , n を用いて、 n 'GAns2 (t)を計算し、比較表示して図 10の分析結果を得て s2 s3 s3 j
いる。図 10中の領域 Aの波が図 6の一対の探触子 31, 32の間隔 aで肉厚内を伝達
2
する波であり、領域 Bの波がキズ Zの存在に相関して生じる肉厚内を伝達する波であ る。また、領域 Cの波は微細に生じた探査妨害波である。
[0070] 図 10は、極狭帯域成分波の抽出振動数の初期値を f = 120KHzとして行ってい
ST
る。図 10中の領域 Cにおける探査妨害波の起生を極力低減する方法の一つとしてこ の f を順次変化させて、前記と同様の処理を繰り返し行い、キズ Zの存在と相関する
ST
図 10中の領域 Bの波をより明解に抽出することができる。
[0071] Δ ί =0. 5ΚΗζ (外部から指定する力、予め定められた定数としてもよい)として、
ST
[数 12]式の処理の都度、 [数 8]式と [数 9]式を連続して用いて前記成分波 GA (t) を計算し直しサイジング係数 n の説明で記述した方法で([数 6] , [数 7]を用いて)、 si
成分波 GA (t)を修正し、 n *GAns2 (t)を比較表示していくと、より明確に図 10中の j s3 j
領域 Bの波の起生を視認することができる。
[0072] 図 11は、この視認の経緯の中で f = 122KHzの時に、得た分析結果である。図 1
ST
1では、領域 Cの妨害波の起生が縮小され、キズ Zの存在と相関する領域 Bの波の起 生が明確に確認できる。図 11を得たサジング係数は n = 1, n =4, n = 5, n = si s2 s3 s4
50である。
[0073] ところで、前記分析(図 10、及び、図 11の比較図の取得)は、本配管の縦波音速 V を 5mmZ μ secとして行っている。鋼材の一般的縦波音速は 5. 9mm/ μ sec、 S
P
US材の一般的縦波音速は 5. 7mmZ w secといわれている。
[0074] 本分析では、一般的に知られて 、る SUS材音速ではなぐ本配管モデルでの受信 波 G (t)を分析して、求めている。
[0075] 自然発生する振幅の微小な円周方向縦波でも、その起生時刻を正確に求めること ができる。図 12は、前記 f を 500KHzとし、 n = 3として [数 8] , [数 9]で求めた成分
ST s4
波 GA (t)をサイジング係数 n = 1, n = 1, n = 50として比較表示したものである j si s2 s3
。 n = 50として、振幅を 50倍表示していることより、一対の探触子 31, 32の間隔 a s3 2 を円弧で伝達する微弱な縦波の起生位置が図 12中カーソル 111 (48. 0 sec)で 特定される。
[0076] 縦波音速 V 1S 振動子径を上述したように、 φ = 10mmとして、
P
[数 13]
V
p = (a, - φ)/48.0 = (250mm - 10mm)/48.0 =
sec と計算される。
[0077] 図 11の分析結果を考察してみると、最初に生じている波の起生時刻がカーソル 10
1 (約 50 sec)で示されている。また、キズ Zの存在に相関する波が測点 10〜14 (長 さ 4 X A L=4 X 5mm= 20mm)に生じている(領域 B参照)。起生時刻がカーソル 1 02 (約 174. 8 sec)で示されている。
[0078] 縦波音速 V = 5mmZ w secを用いて、一対の探触子 31, 32の間隔 a値、及び、
P 2 キズ zの測定位置からの路程 bを算定すると、
2
1)探触子間距離 a
2
[数 14]
(3, = 50^secx 5mm / μ sec = 250mm 、夹'値 250mm)
2)キズ位置
カーソル 102より生じた波が図 6に示すキズ Zからの反射波 ^と想定すると、
[数 15] b2 = (Ι74.8,α secx 5mm / sec )/2 = 437mm (実値 437.5mm) となる。
[0079] 本分析で生じた重要な現象について説明する。図 10、及び、図 11の比較図は [数
4]、及び、 [数 5]の存在を仮定して求めたものであった。
[0080] 管肉厚 Wに関する横波共振振動数 f (= (V /V ) -f )を用いて、 nを 1として振
SI S P 1 C
動数 n -f の極狭帯域成分波をサイジング係数 n〜n を用いて示したものであつ
C SI si s4
た。横波共振振動数での成分波抽出であれば、抽出波は横波のはずである。しかし ながら、 [数 14]で示される探触子間距離 a、及び、 [数 15]で示されるキズ位置を示
2
す b値は、縦波音速 V = 5mmZ ;z secで、その値が正確に特定されている。
2 P
[0081] これより、図 10、及び、図 11の抽出波は縦波と断定せざるを得ない。結論から示す
。図 10、及び、図 11の抽出波は縦波である。
[0082] この理由を以降、説明する。
[0083] 超音波の反射,屈折,モード変換なる物理現象に 2つの真理があることは、上述し たとおりである。すなわち、
1つ目の真理として、
従来の超音波理論では反射、屈折に伴うモード変換時、変換前の波と変換後の波の
音速は変化するが、振動数は不変である (真理(1) )。
2つ目の真理として、
縦波が横波にモード変換する又は逆に横波が縦波にモード変換する時、モード変換 で生じる波として、真理(1)の振動数をモード変換前のそれと同一とする波以外に [ 数 5]で定義される振動数の波がある (真理 (2) )。
[0084] 図 10、及び、図 11の抽出波が縦波となる理由は、この 2つの真理が相互に関連す ることで生じたちのである。
[0085] 円管表面より管断面の中心方向へ入力される縦波は、管肉厚での重複反射の都 度、モード変換を真理(2)の [数 5]の関係のもと繰り返す。この時、モード変換で生じ た横波が更に縦波に変換する時、 [数 5]に基づいた変換以外に真理(1)の振動数を 不変とする変換 (従来の超音波理論)も存在することになる。
[0086] これより、 [数 5]で得られる横波の f 振動数を持つ縦波が出現する。
S1
以上が図 10、及び、図 11の領域 B内でキズ Zに相関する波が縦波で生じた理由で ある。
[0087] また、図 10,図 11の分析結果は、 [数 8]で用いた周波数関数 S (f)を用いて得たも のである。ところで、この S (f)を予め定められた、又は、外部力も与えられる Δ ί値 (0 以上の実数)を用いて、
0≤f≤f Δ ίで 0. 0
ST
f - A f≤f≤f + Δ ίで 1. 0
ST ST
f + A f<fで 0. 0
ST
なる関数に置き換えても、 Δ ίの設定値を図 10,図 11を得た分析で用いた S (f)ns4'F (f)の帯域幅(図 9 (b)参照)の 1Z2程度の値とすれば、図 10,図 11と殆ど同一の分 析結果 (図示せず)を得ることができる。
[0088] 上述のとおり、実施例 1の超音波探査方法により探査を行うことにより、以下のような 様々な効果を得ることができる。
例えば、被探知体 30として外周に保護材が卷きつけられた配管を計測対象とする 場合、図 13 (a) , (b)の配管のように、配管の周方向の一部位に幅 aを有する探触子 s
配置領域を管軸方向へ設定してやれば、上述した計測方法で計測を進めることがで
きる。
[0089] すなわち、図 13 (a) , (b)に示す発信探触子 31、及び、受信探触子 32の配置は、 保護材 Yの無い位置とし、発信探触子 31、及び、受信探触子 32を結ぶ線分を管軸 直交断面上の管表面とし、その間隔を aとして管軸方向へ前記一対の探触子を間隔 aを保持したまま A Lづっ移動する毎に、広帯域受信波を取得し、これを G (t) (j = l 〜n : nは、測点の数)として以下、上述と同様に計測を進めることができる。このよう
A A
に、配管に保護材 Yが巻かれている場合や、配管の設置状況によって、従来超音波 法では図 13 (a)で示す B位置での計測が難しい、若しくは出来ない場合であっても、 上述した計測方法によれば、この部分のキズの探査も反対側の位置での計測で可 能となる。
[0090] また、従来の超音波法によれば、前記一対の探触子 31, 32を間隔 aに保持したま ま、管軸 (C方向)方向のみならず断面円周方向(D方向)へも順次移動する計測を行 わねばならず、この様な計測は、大口径配管の場合、困難な計測作業及び多大な時 間を必要とし、上述したように配管表面によってはその表面に図示する様な保護材 Y が撒かれているものは、従来超音波法による計測の場合、この保護材を除去し、配 管表面を研磨する必要があった。
[0091] ところが、図 13に示す新規の探触子定位置管軸方向移動計測によれば、予め管 軸方向へ幅 aの探触子配置領域を設定しておき、この部分へは前記保護材 Yを巻き
S
つけない様にしておけば、計測時間の膨大なる縮小を可能とするば力りではなぐ従 来超音波法の様に前記保護材の除去及び除去後の配管表面研磨という様な工程は 不要となる。
[0092] また、計測の自動化にぉ 、て必要となる制御用係数の数は、従来の超音波法に比 し、極端に少なくなり、探触子移動制御の自動化と対応する分析処理が容易となる。
[0093] すなわち、自動化のための主な制御用係数は、
i) 探触子間隔 a
ii) 探触子配置初期位置
iii) 管軸に沿った探触子移動方向 C
iv) 離散化移動値 A L
v) 計測範囲 n - A L
A
となる。
実施例 2
[0094] 以上、円管管軸方向と直交する断面の肉厚内のキズ Zの探査例を示した。ところで 、実施例 2における分析法は、一対の探触子 31, 32の配置法及び移動法を図 6 (a) , (b)、或いは、図 13 (a) , (b)から図 14 (a) , (b)の様に変更した分析法である。 なお、図 14 (a)は、実施例 2の分析法の説明図であり、図 14 (b)は、図 14 (a)に示 す配管の A— A断面図である。
[0095] すなわち、一対の探触子の中心を結ぶ線分が管軸と平行になる様にして、探触子 間距離を aに保持したまま、管軸直交断面の管表面上で探触子位置を A Lずつ周方 向へ移動(図 10の D方向)する毎に G (t)波 (j = l〜n )を収録し、この G (t)波を実
j A j
施例 1で示した分析法で分析する方法である。
[0096] このような分析法で分析すれば、管軸方向の管肉厚内のキズ Zの有無、その位置 の探査を行うことができる。具体的分析例は、実施例 1と全く同様となる故、特に示さ ない。
[0097] また、上述の実施形態と、この発明の構成との対応において、この実施形態の 1以 上の整数 nは、この発明の 1以上の整数 nに対応するも、この発明は、上述の実施形 態の構成のみに限定されるものではなぐ上述したように多くの実施の形態を得ること ができる。
産業上の利用可能性
[0098] この発明は、ステンレス、インコネル、铸鉄などの金属性配管や建築、土木等の鋼 構物といった被探知体の内部キズの探傷に利用することができる。