明 細 書
動脈硬化性疾患関連遺伝子、およびその利用
技術分野
[0001] 本発明は、 AGTRL1遺伝子もしくは PRKCH遺伝子の発現、または多型変異を指 標とする動脈硬化性疾患のリスク素因の有無の検査方法、並びに、該遺伝子を利用 した動脈硬化性疾患治療薬のスクリーニング方法に関する。
背景技術
[0002] 1950〜1960年代に、わが国の脳卒中死亡率は世界で最も高かった。その後、 1970 年代前半力 その死亡率は着実に低下して、 1990年代に入り欧米諸国と肩を並べる に至って ヽる(非特許文献 1)。
[0003] し力し、現在でも脳卒中は日本人の死因の第三位を占める主な死因の一つである ことに変わりはない。またこの間、脳卒中の発生率も低下傾向にあつたが、近年その 低下傾向が鈍化し横ばい状態になりつつある(非特許文献 2)。ひとたび脳卒中が発 生すると、多くの場合に罹患者で身体障害や認知機能障害が残ることから、脳卒中 は公衆衛生上の深刻な問題である (非特許文献 3)。脳卒中発生率は加齢に伴って 直線的に増加するが、わが国では高齢人口が急速に増加しつつあることから、脳卒 中の一次予防は世界的に重要な社会的課題となっている。
[0004] 脳卒中は、脳梗塞、脳出血およびクモ膜下出血に大きく分けられる (非特許文献 4) 。このうち脳梗塞の頻度が最も高ぐ脳卒中全体の約 70%を占める(非特許文献 5)。 脳梗塞はさらに、責任血管の大きさや発生機序により、細い穿通動脈の動脈硬化に 起因するラクナ梗塞 (LA)、頭蓋外および主要な頭蓋内動脈が冒されるァテローム硬 化に起因するァテローム血栓性脳梗塞 (AT)、心腔内にできた血栓が脳に飛来して 発生する心原性脳塞栓性梗塞 (CE)のサブタイプに細分される。 LAおよび ATは主と して、脳を灌流する細 、動脈または太 、動脈におけるァテローム性動脈硬化が原因 となって起こる。(非特許文献 4)。
[0005] 脳卒中を初めとする多因子疾患は、環境要因とともに複数の遺伝子が関与する多 因子疾患であり患者数も多いことから、その遺伝因子を解明することは、その診断-
治療技術の発達や、疾患の予防に大きく貢献するとともに、医療経済に与える影響も 大きいと考えられている。これまでの疫学研究で、脳梗塞の危険因子は、高血圧、糖 尿病、脂質代謝異常および喫煙などが知られている (非特許文献 1、 6)。脳卒中の 家族歴も危険因子であり、脳卒中のリスクは一卵性双生児の方が二卵性双生児より も高い (非特許文献 7)。これら双生児研究および家族歴研究により、脳梗塞に関す る遺伝因子の存在は予想されるものの (非特許文献 7)、脳梗塞の遺伝的な決定要 因は未だにほとんど解明されて!、な!/、。
[0006] 遺伝病ではな!/、一般的な疾患(Common disease)の感受性を与える遺伝子を発見 することを目的として、いくつかの研究スタイルが提唱されている(非特許文献 8)。候 補遺伝子アプローチは広く用いられている力 結果に再現性がないことが問題となつ ている(非特許文献 9)。例えばこの手法を用いて脳梗塞の関連遺伝子が検討され、 ァテローム性動脈硬化に関係するいくつかの既知の候補遺伝子が報告されている。 しかし、それらは他の対象集団では必ずしも再現性が得られて!/ヽな!ヽ (非特許文献 1 0)。一方、近年、脳卒中のような複雑な発生機序を有する疾患の関連遺伝子を探索 するうえで、信頼性が高 、研究手法としてゲノムワイド研究が注目されて 、る (非特許 文献 14)。ゲノムワイド相関解析により、わが国では心筋梗塞 (非特許文献 11)、関節 リウマチ (非特許文献 12)、クローン病 (非特許文献 13)の関連遺伝子が同定され、 異なる集団においてその再現性が確認されている。また、アイスランド人の集団を対 象としたゲノムワイドの連鎖解析および相関解析により、ホスホジエステラーゼ 4D (PD E4D) (非特許文献 15)と 5-リポキシゲナーゼ活性ィ匕タンパク質 (ALOX5AP) (非特許 文献 16)が脳卒中の新規関連遺伝子として報告されている。しかし、このうち PDE4D については、その研究方法に重大な問題があるとの批判がある(非特許文献 17)。
[0007] なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
[0008] 特許文献 1 : WO/2004/022592
特許文献 2:米国特許第 6987110号
特許文献 3:米国特許第 6492324号
特許文献 4:特願 2003-518582号
非特許文献 l : Sacco Rし, et al" Stroke 1997; 28: 1507—1517.
非特許文献 2:Kubo, M. et al., Stroke 34, 2349-2354 (2003).
非特許文献 3:Kiyohara, Stroke.34, 2343-2348 (2003).
非特許文献 4:Whisnant JP, et al., Stroke 1990; 21: 637-676.
非特許文献 5:Hata J, et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry 2005; 76: 368-372. 非特許文献 6:Tanizaki Y, et al., Stroke 2000; 31: 2616-2622.
非特許文献 7:Flobmann E, et al., Stroke 2004; 35: 212-227.
非特許文献 8:Hirschhorn, JN. & Daly, MJ. Nat. Rev. Genet.6, 95-108 (2005). 非特許文献 9: Tabor, HK. et al., Nat. Rev. Genet.3, 1-7 (2003).
非特許文献 10: Hassan A, Markus HS. Brain 2000; 123: 1784-1812.
非特許文献 ll:Ozaki, K. et al" Nat. Genet.32, 650-654 (2002).
非特許文献 12:Tokuhiro, S. et al., Nat. Genet.35, 341-348 (2003).
非特許文献 13:Yamazaki, K. et al., Hum. Mol. Genet.14, 3499-3506 (2005). 非特許文献 14: Glazier AM, et al., Science 2002; 298: 2345-2349.
非特許文献 15:Gretarsdottir S, et al" Nat Genet 2003; 35: 131-138.
非特許文献 16:Helgadottir A, et al., Nat Genet 2004; 36: 233-239.
非特許文献 17:Funalot, B. et al., Nat. Genet.36, 3 (2004).
非特許文献 18: Bright R. et al., J Neurosci.2004 Aug 4;24(31):6880- 8.
非特許文献 19:Chintalgattu v. et al., J Pharmacol Exp Ther.2004 Nov;311(2):691-
9.
非特許文献 20:Hanlon PR. et al., FASEB J.2005 Aug;19(10):1323- 5.
非特許文献 21: Aronowski J. et al., J Cereb Blood Flow Metab.2000 Feb;20(2):343
-9.
非特許文献 22:Kleinz MJ, et al., Regul Pept 2005; 126: 233-240.
非特許文献 23:0, Carroll AM, et al., J Neuroendocrinol 2003; 15: 661-666.
非特許文献 24:Kagiyama S, et al., Regl Pept 2005; 125: 55-59.
非特許文献 25:Seyedabadi M, et al., Auton Neurosci.2002; 101: 32-38.
非特許文献 26:Katugampola SD, et al., Br J Pharmacol 2001; 132: 1255-1260. 非特許文献 27:Tatemoto K, et al., Regul Pept 2001; 99: 87-92.
非特許文献 28 :Masri B, et al., FASEB J 2004; 18: 1909-1911.
非特許文献 29 : Hashimoto Y, et al., Int J Mol Med 2005; 16: 787-792.
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0009] 過去に脳梗塞の関連遺伝子として報告されているものは、 CADASILにおける NOT CH3遺伝子の異常および MELASにおけるミトコンドリア DNAの遺伝子異常があるが、 これらは明らかな遺伝性脳梗塞の原因遺伝子であり、一般に認められる脳梗塞の関 連遺伝子ではない。一般的な脳梗塞の関連遺伝子としては、これまで主に脳梗塞の 発症機序から推測される遺伝子 (例えば凝固系遺伝子、 ACE遺伝子、 MTHFR遺伝 子など)の多型を用いた候補遺伝子研究が行われて 、るが一定の見解は得られて ヽ ない。従って、新たな脳梗塞の関連遺伝子を同定するにはヒトの全ゲノムを対象とし たゲノムワイド相関研究が必要である。これまでに脳卒中を対象としたゲノムワイド相 関研究の報告としては、アイスランドの deCODEグループから PDE4D遺伝子および A LOX5AP遺伝子が報告されて!、るのみである。 PDE4D遺伝子はァテローム血栓性脳 梗塞と心原性塞栓症を併せた解析のみで有意な関連が見られたことから、その結果 を疑問視する声があり、他集団での再現性の報告もない。 ALOX5AP遺伝子は複数 の集団で脳梗塞との関連が確認されているが、その関連はアイスランド以外の集団 では極めて弱い。
[0010] 本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、脳梗塞等の動脈硬化性疾 患に関連する遺伝子、および該遺伝子の特徴を利用する用途の提供を課題とする。 より具体的には本発明は、動脈硬化性疾患に関連する遺伝子、および該遺伝子上 の多型を利用した動脈硬化性疾患のリスク素因の有無の検査方法、並びに、動脈硬 化性疾患の治療のための薬剤のスクリーニング方法の提供を課題とする。
課題を解決するための手段
[0011] 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った。本発明者らは、脳梗 塞等の動脈硬化性疾患に対する遺伝的寄与に関して調べるために、遺伝子をべ一 スとする大規模 tag- SNPマーカーを用いてケースコントロール研究を行った。
[0012] 本発明者らは、プロテインキナーゼ C (PKC)ファミリー遺伝子である PRKCH力 ラタ
ナ梗塞およびァテローム血栓性の梗塞と高度の関連性 (p=4.7 X 10— 6)があることを 見出した。 14年間の前向き追跡研究において、 PRKCH中の SNP(1425G>A)は PKC 活性に影響を及ぼし、脳梗塞発生のリスクを増大させた (p = 0.043、相対リスク 2.58) 。本発明者らはまた、 PKC 7?がヒトのァテローム硬化病変の血管内皮細胞および泡 沫マクロファージで発現され、重症度と相関することも見出した。上記の結果は、 PRK CH中の SNPが、そのキナーゼ活性を変化させることにより、脳梗塞に関する新規な遺 伝的危険因子となることを示して 、る。
[0013] 今回、本発明者らは、脳梗塞症例 1,112例と年齢 ·性を対応させた同数の対照例を 用いた遺伝子ベースの大規模なケースコントロール研究を行 、、 PRKCHが脳梗塞に 関連する遺伝子であることを新たに見出した。 PRKCHのェクソン 9中の SNP(1425G> A)は、ラクナ梗塞群およびラクナ梗塞群とァテローム血栓性梗塞群とを併せた群と高 い関連性があった。 PKC 7?はァテローム硬化病変で発現されており、その発現レべ ルはァテローム硬化の重症度に伴って上昇した。機能解析により、このアミノ酸置換( V374I)は PKC活性を 1.6倍の高さに誘導することが判明した。さらに、前向き追跡研 究において、 AA遺伝子型を有する対象者では、 GA遺伝子型または GG遺伝子型を 有する対象者と比べて、脳梗塞の発生率が 2.58倍高力つた。これらの結果から、 PRK CHは脳梗塞に関与する遺伝子であり、特に PRKCH中の多型変異 (SNP) (1425G>A )がその責任部位であることが示された。
[0014] さらに発明者らは、 AGTRL1遺伝子中の SNPが脳梗塞と関連することを新たに見出 した。 AGTRL1遺伝子によってコードされる APJ受容体 (アンジォテンシン 1型受容体 と相同性のある受容体タンパク質)は、心血管系(非特許文献 22)および中枢神経系 (非特許文献 23)で発現され、これは血圧の調節 (非特許文献 24〜27)ならびに内 皮細胞の移動 (非特許文献 28)および増殖 (非特許文献 29)に働くことが示されて!/ヽ る。インビトロ機能解析により、本発明者らは、 Spl転写因子が AGTRL1のプロモータ 一およびイントロン中の SNPと結合し、 mRNAの発現レベルに影響を及ぼすことを見 出した。これらの結果は、 AGTRL1のハプロタイプ力 脳梗塞等の動脈硬化性疾患に 対する感受性にかかわる新規の遺伝的決定要因であること、およびァテローム性動 脈硬化の発症機序に関与して 、ることを示して 、る。
[0015] 今回見出された 2遺伝子のうち AGTRL1遺伝子は 7回膜貫通型 G蛋白共役受容体 である AGTRL1をコードする遺伝子であり、高血圧や動脈硬化と深!、関連を持つ Ang iotensin II receptor type 1と 30%のホモロジ一を有することが知られている。 AGTRL1 のリガンドとして Apelinが報告されており、これまでにラットの実験で Apelinが血圧調節 に関与することが報告されている。ヒトにおいては心不全患者で Apelinや AGTRL1の 発現が上昇して 、ることや Apelinの投与により静脈が収縮することが報告されて 、る 。従って、これまでの報告から AGTRL1は血圧調節に関与することが推測される力 ヒ トにおいてこれまで脳梗塞との関連を報告したものはない。一方、 PRKCH遺伝子は P KCファミリーに属する PKC- etaをコードする遺伝子であり、これまでの報告ではマウス の皮膚に発現が高く癌における細胞増殖やアポトーシスとの関連が示唆されている 力 ヒトにおける機能は全く不明であり PKC-etaの基質やシグナル伝達経路もほとん ど解明されていない。従って、 PKC- etaと脳梗塞との関連はこれまでの知見力もでは 全く示唆されない。
[0016] 上述の如く本発明者らは、脳梗塞等の動脈硬化性疾患に関連する 2遺伝子を同定 することに成功し、本発明を完成させた。
[0017] 本発明は、脳梗塞等の動脈硬化性疾患に関連する遺伝子、および該遺伝子上の 多型を利用した動脈硬化性疾患のリスク素因の有無の検査方法、並びに、動脈硬化 性疾患の治療のための薬剤のスクリーニング方法に関し、より具体的には、 〔1〕 被検者における AGTRL1遺伝子の発現を指標とすることを特徴とする、動脈 硬化性疾患のリスク素因を有する力否かの検査方法、
〔2〕 被検者について、 AGTRL1遺伝子における DNA変異を検出することを特徴と する、動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かの検査方法、
〔3〕 前記変異が、 Spl転写因子との結合を変化させる変異である、〔2〕に記載の検 查方法、
〔4〕 被検者における PRKCH遺伝子の発現を指標とすることを特徴とする、動脈硬 化性疾患のリスク素因を有する力否かの検査方法、
[5] 被検者について、 PRKCH遺伝子における DNA変異を検出することを特徴と する、動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かの検査方法、
〔6〕 変異が多型変異である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の検査方法、
[7] 被検者について、 AGTRLl遺伝子における多型部位の塩基種を決定すること を特徴とする、動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かの検査方法、
〔8〕 多型部位が、 AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基 酉己歹 IJにおける(la) 1位、(2a) 12541位、(3a) 21545位、(4a) 33051位、 (5a) 353
65位、(6a) 39268位、(7a) 39353位、(8a) 39370位、(9a) 39474位、 (10a) 39
553位、(11a) 39665位、(12a) 41786位、(13a) 42019位、(14a) 42509位、 (1
5a) 43029位、(16a) 43406位、(17a) 43663位、(18a) 46786位、(19a) 49764 位、(20a) 64276位、(21a) 74482位、(22a) 78162位、(23a) 93492位、または
(24a) 102938位の多型部位である、〔7〕に記載の検査方法、
〔9〕 〔8〕の(la)〜(24a)に記載の多型部位における塩基種力 それぞれ以下の(1 b)〜(24b)である場合に、被検者は動脈硬化性疾患のリスク素因を有するものと判 定される〔8〕に記載の検査方法、
(lb) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 1位に おける相補鎖の塩基種が T
(2b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 12541 位における相補鎖の塩基種が T
(3b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 21545 位における相補鎖の塩基種が A
(4b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 33051 位における相補鎖の塩基種が C
(5b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 35365 位における相補鎖の塩基種が T
(6b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39268 位における相補鎖の塩基種が A
(7b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39353 位における相補鎖の塩基種が G
(8b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39370
位における相補鎖の塩基種が c
(9b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39474 位における相補鎖の塩基種が T
(10b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 3955 3位における相補鎖の塩基種が T
(l ib) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 3966 5位が欠失
(12b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4178 6位における相補鎖の塩基種が A
(13b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4201 9位における相補鎖の塩基種が G
(14b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4250 9位における相補鎖の塩基種が G
(15b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4302 9位における相補鎖の塩基種が G
(16b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4340 6位における相補鎖の塩基種が C
(17b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4366 3位における相補鎖の塩基種が T
(18b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4678 6位における相補鎖の塩基種が C
(19b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4976 4位における相補鎖の塩基種が T
(20b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 6427 6位における相補鎖の塩基種が T
(21b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 7448 2位における相補鎖の塩基種が C
(22b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 7816
2位における相補鎖の塩基種が G
(23b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 9349 2位における相補鎖の塩基種が G
(24b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 1029 38位における相補鎖の塩基種が C
〔10〕 被検者について、動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かの検査方法で あって、以下に記載のハプロタイプを示す DNAブロックが検出された場合に動脈硬 化性疾患のリスク素因を有するものと判定される方法、
(A) AGTRLl遺伝子上の多型部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39
268位、 39353位、 41786位、 42019位、および 43406位の多型咅 M立におけるネ目 補鎖の塩基種が、それぞれ A、 G、 A、 Gおよび Cであるハプロタイプ
〔11〕 被検者について動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かの検査方法で あって、以下に記載のハプロタイプを示す DNAブロック内に存在し互いに連鎖するこ とを特徴とする多型部位の塩基種を決定する工程を含む検査方法、
(A) AGTRLl遺伝子上の多型部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39
268位、 39353位、 41786位、 42019位、および 43406位の多型咅 M立におけるネ目 補鎖の塩基種が、それぞれ A、 G、 A、 Gおよび Cであるハプロタイプ
〔12〕 以下の工程 (a)および (b)を含む、被検者について、動脈硬化性疾患のリスク 素因を有する力否かの検査方法、
(a) 被検者における AGTRLl遺伝子上の多型部位について、塩基種を決定する 工程
(b) (a)で決定された塩基種力 以下の (A)に記載のハプロタイプを示す AGTRLl 遺伝子における前記多型部位の塩基種と同一であった場合に、動脈硬化性疾患の リスク素因を有するものと判定する工程
(A) AGTRLl遺伝子上の多型部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39 268位、 39353位、 41786位、 42019位、および 43406位の多型咅 M立におけるネ目 補鎖の塩基種が、それぞれ A、 G、 A、 Gおよび Cであるハプロタイプ
〔13〕 前記 (a)の多型部位が、 AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に
記載の塩基酉己歹 IJにおける 1位、 12541位、 21545位、 33051位、 35365位、 3926 8位、 39353位、 39370位、 39474位、 39553位、 39665位、 41786位、 42019 位、 42509位、 43029位、 43406位、 43663位、 46786位、 49764位、 64276位 、 74482位、 78162位、 93492位、また ίま 102938位の!/ヽずれ力の多型咅 M立である 、〔12〕に記載の検査方法、
〔14〕 動脈硬化性疾患のリスク素因を有するか否かの検査方法であって、被検者に おける AGTRL1遺伝子の発現量が対照と比較して上昇している場合に、被検者は 動脈硬化性疾患のリスク素因を有するものと判定する方法、
[15] 被検者について、 PRKCH遺伝子における多型部位の塩基種を決定すること を特徴とする、動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かの検査方法、 〔16〕 多型部位が、 PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基 酉己歹 IJにおける(la) 1位、(2a) 16212位、(3a) 30981位、(4a) 32408位、 (5a) 334 63位、(6a) 34446位、(7a) 39322位、(8a) 39469位、(9a) 39471位、(10a) 49 248位、(l la) 49367位、または(12a) 52030位の多型部位である、〔15〕に記載 の検査方法、
〔17〕 〔16〕の(la)〜(12a)に記載の多型部位における塩基種力 それぞれ以下 の(lb)〜(12b)である場合に、被検者は動脈硬化性疾患のリスク素因を有するもの と判定される〔16〕に記載の検査方法、
(lb) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 1位の塩 基種が A
(2b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 16212 位の塩基種が G
(3b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 30981 位の塩基種が A
(4b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 32408 位の塩基種が G
(5b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 33463 位の塩基種が G
(6b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 34446 位の塩基種が T
(7b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 39322 位の塩基種が T
(8b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 39469 位の塩基種が A
(9b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 39471 位の塩基種が C
(10b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 49248 位の塩基種が C
(l ib) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 49367 位の塩基種が G
(12b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 52030 位の塩基種が A
〔18〕 動脈硬化性疾患のリスク素因を有するか否かの検査方法であって、被検者に おける PRKCHタンパク質の自己リン酸ィ匕活性またはキナーゼ活性が対照と比較し て上昇している場合に、被検者は動脈硬化性疾患のリスク素因を有するものと判定 する方法、
〔19〕 動脈硬化性疾患のリスク素因を有するか否かの検査方法であって、被検者に ついて、 PRKCHタンパク質のアミノ酸配列において 374位のパリンがイソロイシンへ 置換されたタンパク質変異体を有する場合に、被検者は動脈硬化性疾患のリスク素 因を有するものと判定する方法、
〔20〕 被検者由来の生体試料を被検試料として検査に供する、〔1〕〜〔19〕のいず れかに記載の検査方法、
〔21〕 〔8〕の(la)〜 (24a)に記載の多型部位、または、〔16〕の(la)〜(12a)に記 載の多型部位を含む DNAにハイブリダィズし、少なくとも 15ヌクレオチドの鎖長を有す るオリゴヌクレオチドを含む、動脈硬化性疾患のリスク素因を有するか否かを検査す るための試薬、
[22] 〔8〕の(la)〜 (24a)に記載の多型部位、または、〔16〕の(la)〜(12a)に記 載の多型部位を含む DNAとハイブリダィズするヌクレオチドプローブが固定された固 相からなる、動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かを検査するための試薬、 〔23〕 〔8〕の(la)〜 (24a)に記載の多型部位、または、〔16〕の(la)〜(12a)に記 載の多型部位を含む DNAを増幅するためのプライマーオリゴヌクレオチドを含む、動 脈硬化性疾患のリスク素因を有するカゝ否かを検査するための試薬、
〔24〕 以下の (a)または (b)を有効成分として含有する、動脈硬化性疾患のリスク素 因を有する力否かの検査用試薬、
(a) AGTRLlまたは PRKCH遺伝子の転写産物にハイブリダィズするオリゴヌクレオ チド
(b) AGTRLlまたは PRKCHタンパク質を認識する抗体
〔25〕 以下の(a)〜(c)の 、ずれかを有効成分として含有する、動脈硬化性疾患の 治療もしくは予防のための薬剤のスクリーニング用試薬、
(a) AGTRL1遺伝子の転写産物にハイブリダィズするオリゴヌクレオチド
(b) AGTRL1タンパク質を認識する抗体
(c) AGTRLl遺伝子上の塩基部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列におけ る 39353位または 42509位の部位を含む DNA領域からなるポリヌクレオチド
〔26〕 以下の(a)〜(c)の 、ずれかを有効成分として含有する、動脈硬化性疾患の 治療もしくは予防のための薬剤のスクリーニング用試薬、
(a) PRKCH遺伝子の転写産物にノ、イブリダィズするオリゴヌクレオチド
(b) PRKCHタンパク質を認識する抗体
(c) PRKCHタンパク質のアミノ酸配列において 374位のパリンがイソロイシンへ置換 されたアミノ酸配列を有する PRKCHタンパク質変異体
[27] AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現もしくは該遺伝子によってコードさ れるタンパク質の機能を抑制する物質を有効成分として含有する、動脈硬化性疾患 の治療もしくは予防のための薬剤、
〔28〕 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現抑制物質力 以下の(a)〜( から なる群より選択される化合物である、〔27〕に記載の動脈硬化性疾患の治療もしくは
予防のための薬剤、
(a) AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子の転写産物またはその一部に対するアンチセ ンス核酸
(b) AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子の転写産物を特異的に開裂するリボザィム活 性を有する核酸
(c) AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子の発現を RNAi効果による阻害作用を有する 核酸
〔29〕 AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質の機能抑制物質力 以下の(a)または( b)の化合物である、〔27〕に記載の動脈硬化性疾患の治療もしくは予防のための薬 剤、
(a) AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質に結合する抗体
(b) AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質に結合する低分子化合物
〔30〕 AGTRL1遺伝子上の塩基部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列に おける 39353位または 42509位の部位を含む DNA領域と、 Spl転写因子との結合 を阻害する物質を有効成分として含有する、動脈硬化性疾患の治療もしくは予防の ための薬剤、
〔31〕 PRKCHタンパク質の自己リン酸化活性を阻害する物質を有効成分として含 有する、動脈硬化性疾患の治療もしくは予防のための薬剤、
〔32〕 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現量または該遺伝子によってコードさ れるタンパク質の活性を低下させる化合物を選択することを特徴とする、動脈硬化性 疾患の治療もしくは予防のための薬剤のスクリーニング方法、
〔33〕 以下の (a)〜 (c)の工程を含む、動脈硬化性疾患の治療もしくは予防のため の薬剤のスクリーニング方法、
(a) AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子を発現する細胞に、被検化合物を接触させる 工程
(b)該 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現レベルを測定する工程
(c)被検化合物の非存在下にお ヽて測定した場合と比較して、該発現レベルを低下 させる化合物を選択する工程
〔34〕 以下の(a)〜(c)の工程を含む、動脈硬化性疾患の治療もしくは予防のため の薬剤のスクリーニング方法、
(a) AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子の転写調節領域とレポーター遺伝子とが機能 的に結合した構造を有する DNAを含む細胞または細胞抽出液と、被検化合物を接 触させる工程
(b)該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程
(c)被検化合物の非存在下にお ヽて測定した場合と比較して、該発現レベルを低下 させる化合物を選択する工程
〔35〕 AGTRLl遺伝子力 以下の(a)または(b)の発現が亢進した変異型 AGTRL 1遺伝子である、〔32〕〜〔34〕の 、ずれかに記載のスクリーニング方法、
(a) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 42509 位における相補鎖の塩基種力 である変異型 AGTRLl遺伝子
(b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39353 位における相補鎖の塩基種力 である変異型 AGTRLl遺伝子
〔36〕 以下の(a)〜(c)の工程を含む、動脈硬化性疾患の治療もしくは予防のため の薬剤のスクリーニング方法、
(a) AGTRLl遺伝子上の塩基部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列におけ る 39353位または 42509位の部位を含む DNA領域からなるポリヌクレオチド、およ び Spl転写因子と、被検化合物とを接触させる工程
(b)前記ポリヌクレオチドと Spl転写因子との結合活性を測定する工程
(c)被検化合物の非存在下にお!ヽて測定した場合と比較して、前記結合活性を低下 させる化合物を選択する工程
〔37〕 以下の (a)〜 (c)の工程を含む、動脈硬化性疾患の治療もしくは予防のため の薬剤のスクリーニング方法、
(a) PRKCHタンパク質と、被検化合物とを接触させる工程
(b) PRKCHタンパク質の自己リン酸ィ匕活性を測定する工程
(c)被検化合物の非存在下において測定した場合と比較して、自己リン酸ィ匕活性を 低下させる化合物を選択する工程
〔38〕 前記 PRKCHタンパク質力 PRKCHタンパク質のアミノ酸配列において 374 位のノ《リンカ Sイソロイシンへ置換されたタンパク質変異体である、〔37〕に記載のスクリ 一ユング方法、
〔39〕 以下の(a)〜(c)の工程を含む、動脈硬化性疾患の治療もしくは予防のため の薬剤のスクリーニング方法、
(a) PRKCHタンパク質と、被検化合物とを接触させる工程
(b) PRKCHタンパク質のプロテインキナーゼ活性を測定する工程
(c)被検化合物の非存在下にお 、て測定した場合と比較して、プロテインキナーゼ 活性を低下させる化合物を選択する工程
を、提供するものである。
さらに本発明は、以下を提供する。
〔40〕 下記 (a)〜(e)のいずれかに記載の物質の、動脈硬化性疾患のリスク素因を 有するか否かを検査するための試薬の製造における使用。
(a) 〔8〕の(la)〜(24a)に記載の多型部位、または、〔16〕の(la)〜(12a)に記載 の多型部位を含む DNAにハイブリダィズし、少なくとも 15ヌクレオチドの鎖長を有する オリゴヌクレオチド
(b) 〔8〕の(la)〜(24a)に記載の多型部位、または、〔16〕の(la)〜(12a)に記載 の多型部位を含む DNAとハイブリダィズするヌクレオチドプローブが固定された固相
(c) 〔8〕の(la)〜(24a)に記載の多型部位、または、〔16〕の(la)〜(12a)に記載 の多型部位を含む DNAを増幅するためのプライマーオリゴヌクレオチド
(d) AGTRL1または PRKCH遺伝子の転写産物にハイブリダィズするオリゴヌタレ ォチド
(e) AGTRL1または PRKCHタンパク質を認識する抗体
〔41〕 下記 (a)〜(f)のいずれかに記載の物質の、動脈硬化性疾患の治療もしくは 予防のための薬剤のスクリーニング用試薬の製造における使用。
(a) AGTRL1遺伝子の転写産物にハイブリダィズするオリゴヌクレオチド
(b) AGTRL1タンパク質を認識する抗体
(c) AGTRLl遺伝子上の塩基部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列におけ
る 39353位または 42509位の部位を含む DNA領域からなるポリヌクレオチド
(d) PRKCH遺伝子の転写産物にハイブリダィズするオリゴヌクレオチド
(e) PRKCHタンパク質を認識する抗体
(f) PRKCHタンパク質のアミノ酸配列において 374位のパリンがイソロイシンへ置換 されたアミノ酸配列を有する PRKCHタンパク質変異体
〔42〕 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現もしくは該遺伝子によってコードさ れるタンパク質の機能を抑制する物質の、動脈硬化性疾患の治療もしくは予防のた めの薬剤の製造における使用。
〔43〕 以下の(a)または (b)に記載の物質の、動脈硬化性疾患の治療もしくは予防 のための薬剤の製造における使用。
(a) AGTRL1遺伝子上の塩基部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列にお ける 39353位または 42509位の部位を含む DNA領域と、 Spl転写因子との結合を 阻害する物質
(b) PRKCHタンパク質の自己リン酸化活性を阻害する物質
〔44〕被検者 (ヒト、またはその他哺乳動物等、好ましくは、動脈硬化性疾患の患者等 )へ本発明の薬剤を投与する工程を含む、動脈硬化性疾患の治療もしくは予防方法
図面の簡単な説明
[図 1]PRKCHにおける遺伝子構造、症例-対照関連および連鎖不平衡を示す図であ る。 a. PRKCH周辺のゲノム構造。 b. PRKCHのェクソン-イントロン構造.ジエノタイピ ングがなされた PRKCH中の SNPは遺伝子の下に示されている(縦の線)。 cラクナ性 およびァテローム血栓性梗塞のケースコントロール相関解析。アレル頻度に関する- 対数変換された P値が y軸に対してプロットされている。 d. D' (左下)および Δ (右上) により計測した SNP間のペアワイズ連鎖不平衡。
[図 2]374Vおよび 3741の PKC活性の比較を示す図および写真である。 a. rs2230500 ( 1425G>A)および rsl7098388 (1427A>C)のシークェンシングの結果を示す図であ る。 b. PRKCHのドメイン構造.矢印は rs2230500の位置を示している。 cクーマシー ブリリアントブルー染色によるモッタ、 PRKCH-374Vおよび PRKCH-374Iの免疫沈降
物を示す写真である。 d.等量のモッタ、 PRKCH-374Vおよび PRKCH-374Iの免疫沈 降物を用いてウェスタンブロット法を行った結果を示す写真である。 e. PS ΙΟηΜおよ び PDBu 100 μ Μによる刺激後のモッタ、 PRKCH- 374Vおよび PRKCH- 3741の自己リ ン酸化アツセィを示す写真である。 f. PS ΙΟηΜおよび PDBu 100 Mによる 3分間の刺 激後の PRKCH- 374Vおよび PRKCH- 3741の PKC活性を示す図である。
[図 3]PRKCHのアミノ酸置換の位置を示す図である。 PRKCHのアミノ酸置換 (V374I) は、 PKCファミリーの保存された ATP結合部位の内部に位置する。星印は保存された ATP結合部位を示し、 #«V374Iのアミノ酸置換を示して 、る。
[図 4]種々のヒト組織における PRKCH mRNAの相対的発現を示す図である。相対的 mRNA発現は、リアルタイム PCRによって定量し、 ACTB発現により標準化した。
[図 5-1]ァテローム硬化性動脈における PKC 7?の発現を示す写真である。 a.冠動脈 ァテローム硬化 (AHAタイプ IV病変)を有する症例の低倍率像 (マッソントリクローム染 色)。 b. PKC η発現に関する低倍率像。 c. c-1および c-2は、パネル b中に枠で囲ん で示した領域からの、連続切片の対応病変である。各連続パネルは CD31 (c-l)およ び PKC η (c-2)に対する免疫反応性を示している。 CD31陽性内皮細胞は PKC ηに 対しても陽性であった。 d. d-1および d-2は、パネル b中に枠で囲んで示した領域から の、連続切片の対応病変である。各連続パネルは CD68 (d-l)および PKC 7? (d-2)に 対する免疫反応性を示している。 CD68陽性マクロファージの多くは PKC r?に対しても 陽性であった。 e. e-1および e-2は、パネル b中に枠で囲まれた領域からの、連続切 片の対応病変である。各連続パネルは a -SMA(e-l)および PKC η (e-2)に対する免 疫反応性を示している。 α -SMA陽性平滑筋細胞の一部は PKC r?に対しても陽性で あった。パネル bから eまでは、へマトキシリンにより対比染色されている。スケールバ ー:&ぉょび =500 111、 cから eまで = 50 πι。
[図 5-2]ΑΗΑ分類により定義されるァテローム硬化のグレードとァテローム硬化性内 膜の PKC η発現との関係を示した棒グラフを示す図である。各バーは各群で検討し た全切片における陽性面積の平均値士 s.e.m.を表している。 PKC η発現は冠動脈ァ テローム硬化の重症度に伴って直線的に増加した。
[図 6]久山町研究における 14年間の追跡による、 PKC η遺伝子型別にみた、年齢お
よび性別を調整した脳梗塞の発生率(1425G>Aはアミノ酸置換 V374Iに対応)を示 す図である。
[図 7]久山町研究における 14年間の追跡による、 PKC 7?遺伝子型別にみた、年齢お よび性別を調整した冠動脈疾患の発生率(1425G>Aはアミノ酸置換 V374Iに対応) を示す図である。
[図 8]AGTRL1遺伝子の周辺の相関解析を示す図である。 a.症例群において D' (左 下の三角印)および Δ 2 (右上の三角印)により評価した、 AGTRL1遺伝子の周辺の S NP間のペアワイズ連鎖非平衡 (LD)地図。 SNP6 (矢印)は 2回目のスクリーニングで検 出されたマーカー SNPである。 b. AGTRL1遺伝子の周辺での症例-対照プロット [-log (P値) ]。 LAおよび ATを有する被験症例 860例と対照被験者 860例とを比較した。 S
10
NP6 (矢印)は 2回目のスクリーニングで検出されたマーカー SNPである。 c AGTRL1 遺伝子における遺伝子構造および多型。 SNPの正確な位置は表 1 1〜表 1 6に 示されている。 ATG :開始コドン、 TAG:終止コドン、 IZD:挿入 Z欠失多型。
[図 9]AGTRL1多型における EMSAの結果を示す写真および図である。 a. 9種類の多 型の各アレルの周辺に 25bpプローブを用いた EMSA。 SBC-3細胞からの核抽出物を 用いた。 b. EMSAに用いたプローブの配列。大文字は多型を示す。 1 :リスクアレル、 2 :非リスクアレル。 c. MATCHプログラムによって推測した SNP4および SNP9の各アレル の周辺の DNA配列と Splとの結合親和性。配列中の大文字は多型を示す。 d. Spl抗 体による SNP4領域および SNP9領域のスーパーシフトアツセィ。 SBC-3の核抽出物を 用いた。矢印はプローブ- Spl複合体のバンドおよびスーパーシフトしたバンドを示し ている。 1 :リスクアレル、 2 :非リスクアレル、 C : Splコンセンサスオリゴヌクレオチド(Spl と結合した陽性対照)。
[図 10]Spl過剰発現細胞における AGTRL1 mRNAの RT-PCRの結果を示す写真およ び図である。 293T細胞に対して、モッタ pCAGGSベクターまたは pCAGGS-Splベクタ 一をトランスフエタトした。 AGTRL1 mRNAは Spl過剰発現により時間依存的に増加し た。 B2Mを内部対照用に用いた。 a.半定量的 RT_PCR。 b.定量的リアルタイム RT-P CR。
圆 11]SNPによる影響を受ける転写調節活性の結果を示す図である。 a. 5'隣接領域
における SNP4 (-279GZA)の各アレルの周辺の 44 bp断片が pGL3-basicベクターに 挿入されている。 -279Gおよび- 279Aはそれぞれ、 SNP4のリスクアレルおよび非リスク アレルを示している。 b. SNP4周辺の 44bp断片および SNP9 (+1355GZA)周辺の 53bp 断片が pGL3-basicに挿入されている。ルシフェラーゼアツセィを、モッタ pCAGGSおよ び pCAGGS-Splとの同時トランスフエクシヨン条件下で SBC-3細胞を用いて行った。 H apl、 Hap2および Hap3はそれぞれ、リスク型ハプロタイプ(- 279Gおよび +1355G)、非 リスク型ハプロタイプ(-279Gおよび +1355A)および中間型ハプロタイプ(-279Gおよ び +1355G)を示している。示されているデータは平均士 s.d.である(n=3、 * P< 0.05、 ** P< 0.01)。各サンプルの試験は 3回ずつ行った。
発明を実施するための最良の形態
[0020] 本発明者らは、脳梗塞等の動脈硬化性疾患と関連する遺伝子として、 AGTRL1遺 伝子および PRKCH遺伝子を同定し、さらに、該遺伝子の発現もしくは機能に関与す る多型変異 (SNP)を同定した。また、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現または該 遺伝子によってコードされるタンパク質の機能の亢進は動脈硬化性疾患の発症と深 く関連していることが見出された。被検者について、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子 の発現が亢進していれば、動脈硬化性疾患のリスク素因を有する(動脈硬化性疾患 に罹患しやすい体質である)ものと判定することが可能である。
[0021] 本発明において「動脈硬化性疾患」とは、通常、動脈硬化を起因とする疾患を指す 。具体的には、脳梗塞 (例えば、ラクナ梗塞、ァテローム性血栓性梗塞を含む)、心筋 梗塞、動脈硬化症 (例えば、ァテローム性動脈硬化症を含む)、閉塞性動脈硬化症、 大動脈瘤、腎動脈狭窄等を例示することができる。また、上記のラクナ梗塞は細動脈 硬化を起因とする疾患であり、例えば、脳血管性痴呆 (特にビンスワンガー病)、無症 候性脳梗塞、微小心筋梗塞等も、本発明の動脈硬化性疾患に含まれる。
[0022] AGTRL1遺伝子または PRKCH遺伝子上の多型変異または発現等を指標とすること により、動脈硬化症のリスク素因の有無の検査が可能であることが、本発明者らによ つて初めて見出された。
[0023] 本発明は、まず、被検者 (被検者由来の生体試料)における AGTRL1もしくは PRKC H遺伝子の発現を指標とすることを特徴とする、動脈硬化性疾患のリスク素因を有す
るか否かの検査方法を提供する。
[0024] 従って、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現、または該遺伝子によってコードさ れるタンパク質の活性 (機能)を指標とすることにより、被検者について、動脈硬化性 疾患のリスク素因を有する力否かを検査することができる。
[0025] 本発明における AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の塩基配列、およびそれら遺伝子 によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列に関する情報は、上記の GenBankのァ クセッション番号から、容易に取得することが可能である。また当業者においては、遺 伝子表記 (遺伝子名)を基に、公共の遺伝子データベースあるいは文献データべ一 ス等から遺伝子の塩基配列、および該遺伝子によってコードされるタンパク質のアミ ノ酸配列に関する情報を容易に入手することが可能である。
[0026] AGTRL1遺伝子および PRKCH遺伝子の、それぞれの塩基配列およびアミノ酸配列 に関する GenBank等の公共のデータベースのァクセッション番号および配列表にお ける配列番号を以下に示す。
AGTRLlmRNA:NM_005161(RelSeq) (配列番号: 3)、アミノ酸: NP— 005152 (配列番号: 4)
PRKCH mRNA:NM_006255(RelSeq) (配列番号: 5)、アミノ酸: NP_006246 (配列番号: 6)
[0027] なお、 AGTRL1遺伝子を含むゲノム DNA領域の塩基配列を、配列番号: 1に示す。
また、 PRKCH遺伝子を含むゲノム DNA領域の塩基配列を、配列番号: 2に示す。な お AGTRL1遺伝子および PRKCH遺伝子ともに、配列表はプラス鎖を掲載して 、る。
[0028] 本発明において「被検者」とは、通常ヒトであるが、本発明の検査方法は必ずしもヒ トのみを被検対象とする方法に限定されない。ヒト以外の生物 (好ましくは、脊椎動物 であり、より好ましくはマウス、ラット、サル、ィヌ、ネコ等の哺乳動物)を検査対象とす る場合は、被検対象とする生物が有する内在性の AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子に 相当する遺伝子について、その発現量を指標として検査を行う。従って本発明にお ける「AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子」には、例えば、配列番号: 1または 2に記載の 塩基配列からなる DNAに対応する他の生物における内在性の DNA (AGTRL1もしく は PRKCH遺伝子ホモログ等)が含まれる。
[0029] また、配列番号: 1もしくは 2に記載の塩基配列力 なる DNAに対応する他の生物の 内在性の DNAは、一般的に、配列番号: 1もしくは 2に記載の DNAと高い相同性を有 する。高い相同性とは、 50%以上、好ましくは 70%以上、さらに好ましくは 80%以上、 より好ましくは 90%以上 (例えば、 95%以上、さらには 96%、 97%、 98%または 99%以 上)の相同性を意味する。この相同性は、 mBLASTアルゴリズム (Altschul et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-8; Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Aca d. Sci. USA 90: 5873-7)によって決定することができる。また、該 DNAは、生体内から 単離した場合、配列番号: 1もしくは 2に記載の DNAとストリンジヱントな条件下でハイ ブリダィズすると考えられる。ここで「ストリンジェントな条件」としては、例えば「2 X SSC 、 0.1%SDSゝ 50。C」、「2 X SSC、 0.1%SDSゝ 42。C」、「1 X SSCゝ 0.1%SDSゝ 37°C」、より ストリンジェントな条件として「2 X SSC、 0.1%SDS、 65°C」、「0.5 X SSC、 0.1%SDS、 42 °C」および「0.2 X SSC、 0.1%SDS、 65°C」の条件を挙げることができる。当業者におい ては、他の生物〖こおける AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子に相当する内在性の遺伝子 を、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の塩基配列を基に適宜取得することが可能であ る。
[0030] また本発明は、被検者における AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現量が対照と 比較して上昇している場合に、被検者は動脈硬化性疾患のリスク素因を有するものと 判定される、動脈硬化性疾患のリスク素因の有無の検査方法を提供する。
[0031] 上記方法にぉ ヽては、通常、被検者由来の生体試料を被検試料とする。該被検試 料における AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現量の測定は、当業者においては 公知の技術を用いて適宜実施することが可能である。
[0032] なお、上記遺伝子の「発現」には、該遺伝子からの「転写」あるいはポリペプチドへ の「翻訳」が含まれる。
[0033] 遺伝子の発現量を、該遺伝子の翻訳産物 (タンパク質)の生成量を指標として測定 する場合、例えば、被検試料からタンパク質試料を調製し、該タンパク質試料に含ま れる AGTRL1もしくは PRKCHの量を測定する。このような方法としては、当業者に周 知の方法、例えば、酵素結合免疫測定法 (ELISA)、二重モノクローナル抗体サンドィ ツチィムノアッセィ法、モノクローナルポリクローナル抗体サンドイッチアツセィ法、免
疫蛍光法、ウェスタンブロッテイング法、ドットブロッテイング法、免疫沈降法、プロティ ンチップによる解析法 (蛋白質核酸酵素 Vol.47 No.5 (2002)、蛋白質核酸酵素 V 01.47 No.8 (2002) )、 2次元電気泳動法、 SDSポリアクリルアミド電気泳動法が挙げら れるが、これらに限定されない。
[0034] 遺伝子の発現量を、該遺伝子の転写産物 (mRNA)の生成量を指標として測定する 場合、例えば、被検試料から RNA試料を調製し、該 RNA試料に含まれる AGTRL1もし くは PRKCHをコードする RNAの量を測定する。また、被検試料から cDNA試料を調製 し、該 cDNA試料に含まれる AGTRL1もしくは PRKCHをコードする cDNAの量を測定 すること〖こよって、発現量を評価することも可能である。被検試料からの RNA試料や c DNA試料は、被検者由来の生体試料から、当業者に周知の方法で調製することがで きる。このような方法としては、当業者に周知の方法、例えばノーザンブロッテイング 法、 RT- PCR法、 DNAアレイ法等を挙げることができる。
[0035] なお、上記「対照」とは、通常、健常者由来の生体試料における AGTRL1もしくは PR KCH遺伝子の発現量を指す。なお、本発明における AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子 の発現とは、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子から転写される mRNAの発現、または AG TRL1もしくは PRKCH遺伝子によってコードされるタンパク質の発現の両方を意味す るものである。
[0036] また本発明は、被検者について、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子における変異を 検出することを特徴とする、動脈硬化性疾患のリスク素因を有するか否かの検査方法 を提供する。
[0037] 本発明において「動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かの検査」には、被検 者について動脈硬化性疾患の非リスク素因を有するか否かの検査、または、被検者 につ!/、て動脈硬化性疾患に罹患する可能性が高 、か低 、かを判定するための検査 が含まれる。本発明の方法においては、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子において変 異が検出された場合に、被検者は動脈硬化性疾患のリスク素因を有する、または、 動脈硬化性疾患の非リスク素因を有さな 、、あるいは動脈硬化性疾患に罹患しやす Vヽ体質を有すると判定される。
[0038] 一方、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子において変異が検出されない場合に、被検
者は動脈硬化性疾患の非リスク素因を有する、または動脈硬化性疾患のリスク素因 を有さない等と判定される。
[0039] また本発明の方法により、動脈硬化性疾患を罹患していない被検者であっても、動 脈硬化性疾患を罹患する可能性が高 、か低 ヽかを判定することができる。
[0040] なお、本明細書で用いられる「治療」とは、通常、薬理学的なおよび Zまたは生理 学的な効果を得ることを意味する。効果とは、疾患や症状を完全にあるいは部分的 に妨げる点で予防的であってもよぐ疾患の症状を完全にあるいは部分的に治療す る点で治療的であっても良い。本明細書における「治療」とは、哺乳類、特にヒトにお ける疾患の治療すベてを含んでいる。そしてさらに、疾患のリスク素因があるが未だ 発病して!/、ると診断されて 、な 、被検者の発病の予防、疾患の進行を抑制すること、 または疾患を軽減させること、発症を遅らせることなどもこの「治療」に含まれる。
[0041] 本発明の検査方法により、動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かを判定し、 動脈硬化性疾患のリスク素因を有するものと判定された患者は、発症する前に適切 な治療を選択し、動脈硬化性疾患の発症を事前に予防することができると考えられる
[0042] 本発明の AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の DNA配列としては、具体的には、それ ぞれ配列番号: 1または 2に記載の配列が挙げられる。
[0043] 上記本発明の検査方法における「変異」の位置は、通常、上記 AGTRL1もしくは PR KCH遺伝子の ORF中、あるいは上記遺伝子の発現を制御する領域 (例えば、プロモ 一ター領域、ェンノ、ンサ一領域、イントロン等)中などに存在するが、これらに限定さ れるものではない。また、この「変異」とは、通常、上記遺伝子の発現量を亢進させる 、 mRNAの安定性を向上させる、あるいは上記遺伝子によってコードされるタンパク質 の有する活性を上昇させるような変異であることが好ましい。本発明の変異の種類と しては、例えば、塩基の付加、欠失、置換、挿入変異等を挙げることができる。
[0044] AGTRL1遺伝子においては、 Spl転写因子の結合活性が変化するような「変異」で あることが好ましい。該変異の好ましい例としては、後述の実施例において示す SNP4 多型変異 (配列番号: 1に記載の塩基配列上にぉ 、て 42509位の多型部位の塩基種 力 (その相補鎖における塩基種が G)または SNP9多型変異 (配列番号: 1に記載の
塩基配列上にぉ 、て 39353位の多型部位の塩基種が C (その相補鎖における塩基種 が G)を挙げることができる。
また、 PRKCH遺伝子の場合には、好ましい態様として、該遺伝子によってコードさ れる PRKCHタンパク質のアミノ酸配列において、 374位のパリンがイソロイシンへ変 化させるような DNA変異を例示することができる。
[0045] 本発明者らは、被検者における AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子において、動脈硬 化性疾患に対して有意に関連する多型変異を見出すことに成功した。従って、 AGT RL1もしくは PRKCH遺伝子上の多型部位にっ 、て変異の有無を指標とする(塩基種 を決定する)ことにより、動脈硬化性疾患のリスク素因を有するか否かの検査を行なう ことが可能である。
[0046] 本発明の好ましい態様においては、本発明の AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子にお ける多型変異を検出することを特徴とする、動脈硬化性疾患のリスク素因を有するか 否かを検査する方法である。
[0047] 多型とは、遺伝学的には、人口中 1%以上の頻度で存在している 1遺伝子におけるあ る塩基の変化と一般的に定義されるが、本発明における「多型」は、この定義に制限 されない。本発明における多型の種類としては、例えば、一塩基多型、一から数十塩 基(時には数千塩基)が欠失あるいは挿入している多型等が挙げられる。さらに、多 型部位の数も、 1個に限定されず、複数個の多型であってもよい。
[0048] また本発明は、被検者について、本発明の AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子におけ る多型部位の塩基種を決定することを特徴とする、動脈硬化性疾患のリスク素因を有 するか否かを検査する方法を提供する。
[0049] 本発明の動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かを検査する方法における「 多型部位」は、本発明の AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子上、もしくはその周辺領域に 存在する多型であれば、特に制限されない。 AGTRL1上に見出される多型部位に関 する情報を表 1 1〜表 1 6、 PRKCH遺伝子上に見出される多型部位に関する情 報を表 2—1〜表 2— 6にそれぞれ示す。表中、「ストランド」の列における「 +」はブラ ス鎖を、「一」はマイナス鎖を表す。また、「多型の種類」の列における「snp」は一塩基 多型変異を、「in-del」は挿入 '欠失変異を表す。
[ΐ— ΐ挲] [oeoo].8S0/.00Zdf/X3d 93 εε 動 OAV
表 1—2は表 1—1の続きの表である。
[表 1-2]
chr11 56738608 19474 rs2156457 + G/T snp chr11 56738788 19654 rs2156458 + C/T snp chr11 56740224 21090 rs7101929 + O G snp chr11 56740679 21545 rsl 0896586 + C/T snp chr11 56740910 21776 rsl 1828733 + A/G snp chr11 56741024 21890 rsl 2099289 + A/G snp chr11 56741471 22337 rsl 2295604 + C/G snp chrl 1 56741508 22374 rsl 2807301 + A/G snp chr11 56742126 22992 rsl 1228952 + C/T snp chr11 56742382 23248 rs10160780 + C/T snp chr11 56742431 23297 rs7926117 + C/T snp chr11 56742777 23643 rsl 0896587 + A/G snp chr11 56742828 23694 rs4939113 + A/G snp chr11 56742979 23845 rsl 2286248 + C/T snp chr11 56743060 23926 rsl 0896588 + A/G snp chr11 56743194 24060 rsl 1228954 + C/T snp chr11 56744253 25119 rsl 1602646 + A/C snp chr11 56744582 25448 rsl 1228955 + C/G snp chr11 56744597 25463 rs957922 - A/G snp chr11 56744872 25738 rsl 0792077 + A/G snp chr11 56744928 25794 rs4939114 + A/G snp chr11 56745027 25893 rs4442567 + A/G snp chr11 56745093 25959 rsl 1228956 + C/T snp chr11 56745703 26569 rs 12290010 + C/T snp chr11 56745960 26826 rs4939115 + C/T snp chr11 56746204 27070 rsl 2288876 + A/G snp chr11 56746265 27131 rsl 0736681 + C/T snp chr11 56747026 27892 rsl 1228957 + C/G snp chr11 56747173 28039 rs 11604352 + C/T snp chr11 56747255 28121 rs 10605080 + -/GTTTGTTT in - del chr11 56747768 28634 rsl 0896593 + C/T snp chr11 56748250 29116 rsl 1228958 + A/G snp c r11 56748263 29129 rsl 0896594 + A/G snp chr11 56748324 29190 rs2510357 + C/T snp chr11 56748439 29305 rs7928962 + C/T snp c r11 56748523 29389 rsl 2802382 + G/T snp chr11 56748861 29727 rsl 2225016 + C/T snp chr11 56748988 29854 rs4939117 + A/G snp chr11 56749355 30221 rs4939118 + A/T snp chr11 56749423 30289 rsl 0652895 + -/AT in— del chr11 56749424 30290 rsl 0652894 + 一/ TA in - del chr11 56750418 31284 rsl 0431125 + A/T snp chr11 56750715 31581 rs9667550 + C/T snp chr11 56751156 32022 rsl 1422182 + —/A in - del chr11 56751611 32477 rs7130787 + C/T snp chr11 56751745 32611 rsl 7651297 + C/G snp chr11 56751841 32707 rsl 893676 + A/G snp chr11 56751910 32776 rsl 893677 + C/G snp chrl 1 56752185 33051 rsl 943482 + A/G snp chr11 56752529 33395 rsl 0792078 + A/C snp chr11 56752655 33521 rs17151761 + A/G snp chrll 56752790 33656 rs7926885 + A/G snp chr11 56752915 33781 rs7927969 + C/G snp chr11 56753784 34650 rs4938853 + C/T snp chr11 56754010 34876 rs4938854 + C/T snp chr11 56754225 35091 rs7109894 + C/T snp chr11 56754408 35274 rs721607 + C/T snp chrll 56754499 35365 rs721608 + A/G snp chr11 56755401 36267 rs17151767 + A/G snp chrl 1 56755459 36325 rs 1943483 + A/G snp
表 1 3は表: 2の続きの表である c
[表 1-3]
chr11 56755730 36596 rs 1943484 C/T snp chr11 56755753 36619 rs5792033 + -/TCTC in— del chr11 56755815 36681 rsl 1228960 + C/T snp chr11 56755816 36682 rsl 1228961 + C/T snp chr11 56755823 36689 rsl 1228962 + C/T snp chr11 56756234 37100 rsl 0543434 + -/ TC in-del chr11 56756244 37110 rs4939119 + -/C/CT/T mixed chr11 56756246 37112 rs4939120 + C/T snp chr11 56756253 37119 rs4939121 + C/T snp chr11 56756257 37123 rs4939122 + C/T snp chr11 56757293 38159 rsl 0667795 + -/TGGATGGA in-del chr11 56757711 38577 rs3177149 - C/T snp chr11 56758186 39052 rs 1044235 - A/C snp
SNPW chr" 56758402 39268 rs2282623 + C/T snp
SNP9 chrll 56758487 39353 rs2282624 + C/T snp
SNP8 chr11 56758504 39370 rs2282625 + A/G snp chrll 56758608 39474 rs746885 + A/G snp
SNP7 chr" 56758687 39553 rs 746886 + A/G snp chr11 56758727 39593 rs948846 + A/G snp chrll 56758823 39689 rs746887 + A/G snp chrll 56759081 39947 rsl 2270028 + A/C snp chrll 56760157 41023 rs7943508 + C/T snp
SNP6 chr" 56760920 41786 rs948847 + G/T snp SNP5 chrll 56761153 42019 rs 11544374 - A/G snp chrll 56761425 42291 rs2510358 + G/T snp
SNP4 chrll 56761643 42509 rs9943582 + C/T snp SNP3 chrll 56762163 43029 rsl 0501367 + C/T snp chrll 56762163 43029 SNP A— 1660323 + C/T snp chrll 56762184 43050 rs 11605847 + G/T snp
SNP2 chrll 56762540 43406 rs7119375 + A/G snp chrll 56762540 43406 SNP A— 1701491 + A/G snp SNP1 chrll 56762797 43663 rs4939123 + A/T snp chrll 56763122 43988 rs7120078 + A/G snp chrll 56763174 44040 rs10571462 + - /AAAA in-del chrll 56763177 44043 rs7120095 + A/T snp chrll 56763292 44158 rsl 2365036 + A/G snp chrll 56763489 44355 rsl 2365057 + A/G snp chrll 56763502 44368 rsl 2365058 + A/G snp chrll 56764233 45099 rsl 7651573 + A/G snp chrll 56764379 45245 rs7130847 + A/T snp chrll 56764758 45624 rs7128178 + A/G snp chrll 56765112 45978 rsl 0736682 + A/G snp chrll 56765920 46786 rs1893675 + G/T snp chrll 56766152 47018 rsl 2576521 + G/T snp chr11 56766174 47040 rs948844 + A/C snp chr11 56766220 47086 rsl 2576524 + A/G snp chr11 56766667 47533 rsl 1228966 + C/T snp chr11 56766678 47544 rsl 1228967 + A/G snp chrl 1 56766990 47856 rsl 0792079 + A/C snp chr11 56767735 48601 rs4939124 + G/T snp chr11 56768620 49486 rs17651610 + A/C snp chrll 56768746 49612 rs17151782 + A/C snp chrll 56768851 49717 rs7928905 + G/T snp chrll 56768898 49764 rs499318 + A/G snp chr11 56769089 49955 rs501160 + G/T snp chrll 56769318 50184 rsl 1606862 + A/G snp chr11 56769824 50690 rs599947 一 C/T snp chr11 56770404 51270 rs534130 + A/T snp chr11 56770411 51277 rs694902 - A/G snp chr11 56770479 51345 rsl 2280902 + C/T snp
Z.8S0/.00Zdf/X3d 83 εε 動 oz OAV
[s- ΐ挲]
2 、 挲 " [挲 ¾S " [挲 [¾00]Z.8S0/Z.00Zdf/X3d 63 εε 動 oz OAV
.8S0/.00Zdf/I3d OS εζΐΐΐι/ίοοζ OAV
下記表 2— 1〜表 2— 6にお 、て、網掛け領域が LDプロックを表す。
[表
表 2— 3は表 2— 2の続きの表である [表 2-3]
表 2— 4は表 2— 3の続きの表である
c [表 2- 4]
表 2— 5は表 2— 4の続きの表である [表 2-5]
表 2— 6は表 2— 5の続きの表である [表 2- 6]
即ち、本発明の好ましい態様においては、上記の表に記載された多型部位につい て塩基種を決定することを特徴とする方法である。
本発明の動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かの検査方法に利用可能な 多型部位としては、上記の多型部位の中でも、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子もしく は該遺伝子の周辺領域上の部位であることが好ましい。例えば、 AGTRL1遺伝子上 の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列における 1位、 296位、 824位、 932位 、 1042位、 1072位、 1666位、 1840位、 3096位、 3181位、 3225位、 3381位、 3416位、 37 78位、 3911位、 4243位、 4257位、 4665位、 5057位、 5179位、 5417位、 5448位、 5530 位、 6002位、 6401位、 6563位、 6878位、 6897位、 6961位、 7496位、 8690位、 9040位、 9159位、 9440位、 10350位、 10499位、 10535位、 11235位、 11290位、 12541位、 13104 位、 13735位、 13793位、 13855位、 14025位、 14955位、 15071位、 16909位、 18281位 、 19106位、 19474位、 19654位、 21090位、 21545位、 21776位、 21890位、 22337位、 2 2374位、 22992位、 23248位、 23297位、 23643位、 23694位、 23845位、 23926位、 2406 0位、 25119位、 25448位、 25463位、 25738位、 25794位、 25893位、 25959位、 26569位 、 26826位、 27070位、 27131位、 27892位、 28039位、 28121位、 28634位、 29116位、 2 9129位、 29190位、 29305位、 29389位、 29727位、 29854位、 30221位、 30289位、 3029 0位、 31284位、 31581位、 32022位、 32477位、 32611位、 32707位、 32776位、 33051位 、 33395位、 33521位、 33656位、 33781位、 34650位、 34876位、 35091位、 35274位、 3 5365位、 36267位、 36325位、 36596位、 36619位、 36681位、 36682位、 36689位、 3710 0位、 37110位、 37112位、 37119位、 37123位、 38159位、 38577位、 39052位、 39268位 、 39353位、 39370位、 39474位、 39553位、 39593位、 39689位、 39947位、 41023位、 4 1786位、 42019位、 42291位、 42509位、 43029位、 43050位、 43406位、 43663位、 4398 8位、 44040位、 44043位、 44158位、 44355位、 44368位、 45099位、 45245位、 45624位 、 45978位、 46786位、 47018位、 47040位、 47086位、 47533位、 47544位、 47856位、 4 8601位、 49486位、 49612位、 49717位、 49764位、 49955位、 50184位、 50690位、 5127 0位、 51277位、 51345位、 51927位、 52104位、 52105位、 52111位、 52199位、 52565位 、 52805位、 53178位、 53204位、 53294位、 53344位、 53374位、 53803位、 53950位、 5 3951位、 54173位、 54176位、 54503位、 54675位、 54759位、 54878位、 54999位、 5512
6位、 55741位、 55844位、 56311位、 56685位、 57034位、 57481位、 57532位、 57958位 、 58146位、 58306位、 58349位、 58819位、 58857位、 58897位、 58905位、 58922位、 5 9043位、 59241位、 59591位、 59839位、 59902位、 59985位、 60094位、 60414位、 6060 7位、 60787位、 61115位、 62272位、 63956位、 64000位、 64276位、 64346位、 64347位 、 64822位、 65200位、 65728位、 66097位、 67396位、 67439位、 67621位、 67686位、 6 7735位、 68077位、 68365位、 68404位、 68569位、 68708位、 69107位、 69600位、 7023 0位、 70323位、 70848位、 71415位、 71661位、 71905位、 72191位、 72470位、 73045位 、 73202位、 73320位、 73587位、 73796位、 73828位、 73880位、 73896位、 74007位、 7 4013位、 74072位、 74117位、 74146位、 74176位、 74203位、 74482位、 74690位、 7483 6位、 74894位、 75641位、 75692位、 75814位、 75855位、 76163位、 76390位、 76580位 、 76805位、 77111位、 77112位、 77277位、 77312位、 77831位、 78162位、 78588位、 7 8820位、 79154位、 79207位、 79365位、 79434位、 80159位、 80450位、 80452位、 8088 5位、 80988位、 83257位、 83725位、 83991位、 84278位、 84739位、 84837位、 85040位 、 85626位、 86221位、 86546位、 86668位、 86693位、 86853位、 87029位、 87233位、 8 7347位、 87395位、 88324位、 89226位、 89277位、 89449位、 89939位、 91547位、 9256 0位、 93492位、 93934位、 94294位、 94335位、 94472位、 95090位、 95492位、 95874位 、 95941位、 95991位、 96195位、 97257位、 97738位、 97753位、 97792位、 97812位、 9 8004位、 98851位、 98887位、 99073位、 99807位、 99951位、 100013位、 100179位、 10 1328位、 101571位、 102318位、 102423位、 102662位、または 102938位の多型部位が 好ましい。
また、 PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列における 1 位、 670位、 1055位、 1087位、 1494位、 1569位、 1636位、 1673位、 1967位、 1976位、 2 000位、 2135位、 2432位、 2531位、 2707位、 4528位、 5037位、 5356位、 5691位、 6055 位、 6420位、 7157位、 7421位、 7671位、 7997位、 8045位、 8197位、 8421位、 9171位、 9174位、 9193位、 9561位、 9990位、 10026位、 10028位、 10046位、 10048位、 10056位 、 10064位、 10081位、 10091位、 10275位、 10498位、 11304位、 11566位、 11727位、 1 2205位、 12208位、 12565位、 12756位、 12848位、 12939位、 13045位、 13186位、 1381 0位、 14069位、 14712位、 15222位、 15681位、 16212位、 16283位、 16556位、 17323位
、 17660位、 17662位、 17680位、 18386位、 18453位、 18769位、 19092位、 19612位、 2 0731位、 21172位、 21232位、 21524位、 21869位、 22215位、 22308位、 22447位、 2263 7位、 23306位、 23341位、 23523位、 23562位、 24341位、 24407位、 24573位、 24901位 、 25146位、 25484位、 26387位、 26538位、 26577位、 27368位、 27379位、 28687位、 3 0299位、 30379位、 30635位、 30981位、 31231位、 31400位、 31814位、 31848位、 3184 9位、 31850位、 31866位、 31878位、 32151位、 32408位、 33352位、 33463位、 34226位 、 34373位、 34446位、 34826位、 34932位、 35303位、 35431位、 35443位、 35552位、 3 5706位、 35940位、 36119位、 36475位、 36491位、 36572位、 36631位、 36635位、 3677 1位、 37157位、 37691位、 37707位、 38017位、 38079位、 38109位、 39236位、 39322位 、 39370位、 39445位、 39469位、 39471位、 39851位、 39965位、 40516位、 41394位、 4 1744位、 41765位、 42501位、 42815位、 42948位、 43148位、 43179位、 43210位、 4353 6位、 44467位、 44584位、 44761位、 45165位、 45767位、 45908位、 45959位、 46156位 、 46169位、 46382位、 46433位、 47238位、 48148位、 48524位、 48529位、 48707位、 4 8766位、 48821位、 49248位、 49367位、 49430位、 49721位、 50038位、 50612位、 5062 7位、 51150位、 51226位、 51404位、 51462位、 51545位、 51547位、 51773位、 51850位 、 51989位、または 52030位の多型部位が好ましい。(なお、本明細書においては、該 多型部位を単に『本発明の多型部位』と記載する場合がある)。
[0064] なお、当業者においては掲載された dbSNPデータベースの rs番号をもとに、当該部 位についての塩基種の情報を適宜取得することができる。また、 SNP IDの記載内容 は、先頭に rsが付くものは dbSNPデータベースの登録 IDのうち NCBIにより一配列に一 意に定まる IDを付与されたものである。また、 dbSNPデータベースはウェブサイト(http :〃 www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/index.html)に公開されており、 SNP IDに記載された 登録 ID番号を用いてウェブサイト上で検索することにより、塩基配列における SNPsの 詳細な情報 (例えば、染色体上の位置、多型部位の塩基の種類、前後の配列等)が 入手できる。これらの情報を用いた場合、当業者においては、本発明に記載する検 查を容易に行うことができる。
[0065] 当業者においては、通常、本明細書において開示された多型に付与された登録 ID 番号、例えば dbSNPデータベースにおける rs番号によって、本発明の多型部位の実
際のゲノム上の位置および前後の配列等を容易に知ることができる。これによつて、 知ることができない場合であっても、当業者においては、配列番号: 1で示される塩基 配列および多型部位等に関する情報から、適宜、該多型部位に相当する実際のゲノ ム上の位置を知ることは容易である。例えば、公開されているゲノムデータベース等と 照会することにより、本発明の多型部位のゲノム上の位置を知ることができる。即ち、 配列表に記載の塩基配列とゲノム上の実際の塩基配列との間に若干の塩基配列の 相違がみられた場合であっても、配列表に記載の塩基配列を基にゲノム配列と相同 性検索等を行うことにより、本発明の多型部位について、実際のゲノム上の位置を正 確に知ることが可能である。また、ゲノム上の位置が特定できない場合でも、本明細 書に記載の配列表および多型部位の情報力 本発明に記載する検査を行うことは 容易である。
[0066] また、ゲノム DNAは、通常、互いに相補的な二本鎖 DNA構造を有して 、る。従って 、本明細書においては、便宜的に一方の鎖における DNA配列を示した場合であって も、当然の如ぐ当該配列 (塩基)に相補的な配列も開示したものと解釈される。当業 者にとって、一方の DNA配列 (塩基)が判れば、該配列 (塩基)に相補的な配列 (塩 基)は自明である。なお、現在ヒトゲノム配列については、ほぼ最終版といわれている ヒトゲノム国際プロジェクト build35が発表されており、本明細書に記した配列等はヒト ゲノム国際プロジェクト build35の結果に基づ!/ヽて 、る。
[0067] 本発明の動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かの検査方法においては、以 下に記載の多型部位にっ 、て検査を行なうことが好ま 、。
[0068] また本発明のさらに好ましい態様においては、動脈硬化性疾患のリスク素因を有す る力否かの検査方法にぉ 、ては、以下の(la)の多型部位と(24a)の多型部位との 間の領域に含まれる多型部位、好ましくは、 AGTRL1遺伝子上の部位であって、配 列番号: 1に記載の塩基配列における(la) 1位、(2a) 12541位、(3a) 21545位、( 4a) 33051位、(5a) 35365位、(6a) 39268位、(7a) 39353位、(8a) 39370位、 ( 9a) 39474位、(10a) 39553位、(11a) 39665位、(12a) 41786位、(13a) 42019 位、(14a) 42509位、(15a) 43029位、(16a) 43406位、(17a) 43663位、 (18a) 46786位、(19a) 49764位、(20a) 64276位、(21a) 74482位、(22a) 78162位、
(23a) 93492位、また ίま(24a) 102938位の多型咅 M立【こつ ヽて検査を行う。
本発明の好ましい態様においては、上記(la)〜(24a)に記載の多型部位におけ る塩基種が、それぞれ以下の(lb)〜(24b)である場合に、被検者は動脈硬化性疾 患のリスク素因を有するものと判定される。被検者の動脈硬化性疾患の罹患の有無 に関係無ぐ動脈硬化性疾患のリスク素因の有無の判定を行うことができる。
(lb) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 1位に おける相補鎖の塩基種が T
(2b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 12541 位における相補鎖の塩基種が T
(3b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 21545 位における相補鎖の塩基種が A
(4b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 33051 位における相補鎖の塩基種が C
(5b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 35365 位における相補鎖の塩基種が T
(6b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39268 位における相補鎖の塩基種が A
(7b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39353 位における相補鎖の塩基種が G
(8b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39370 位における相補鎖の塩基種が C
(9b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39474 位における相補鎖の塩基種が T
(10b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 3955 3位における相補鎖の塩基種が T
(l ib) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 3966 5位が欠失
(12b) AGTRLl遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4178
6位における相補鎖の塩基種が A
(13b) AGTRL1遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4201 9位における相補鎖の塩基種が G
(14b) AGTRL1遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4250 9位における相補鎖の塩基種が G
(15b) AGTRL1遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4302 9位における相補鎖の塩基種が G
(16b) AGTRL1遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4340 6位における相補鎖の塩基種が C
(17b) AGTRL1遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4366 3位における相補鎖の塩基種が T
(18b) AGTRL1遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4678 6位における相補鎖の塩基種が C
(19b) AGTRL1遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 4976 4位における相補鎖の塩基種が T
(20b) AGTRL1遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 6427 6位における相補鎖の塩基種が T
(21b) AGTRL1遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 7448 2位における相補鎖の塩基種が C
(22b) AGTRL1遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 7816 2位における相補鎖の塩基種が G
(23b) AGTRL1遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 9349 2位における相補鎖の塩基種が G
(24b) AGTRL1遺伝子上の部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 1029 38位における相補鎖の塩基種が C
なお、上記の塩基種は、本発明の遺伝子の塩基配列の +鎖もしくは 鎖のいずれ 力の鎖における塩基種を表す。当業者であれば、本明細書に開示された情報を基に 、当該多型部位において検出すべき塩基の種類を適宜判断することができる。
[0071] また別の態様においては、また本発明のさらに好ましい態様においては、動脈硬化 性疾患のリスク素因を有するか否かの検査方法においては、以下の(la)の多型部 位と(12a)の多型部位との間の領域に含まれる多型部位、好ましくは PRKCH遺伝 子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列における(la) 1位、(2a) 1621 2位、(3a) 30981位、(4a) 32408位、(5a) 33463位、(6a) 34446位、 (7a) 3932 2位、(8a) 39469位、(9a) 39471位、(10a) 49248位、(l la) 49367位、または( 12a) 52030位の多型部位について検査を行う。
[0072] 本発明の好ましい態様においては、上記(la)〜(12a)に記載の多型部位におけ る塩基種が、以下の(lb)〜(12b)である場合に、被検者は動脈硬化性疾患のリスク 素因を有するものと判定される。被検者の動脈硬化性疾患の罹患の有無に関係無く 、動脈硬化性疾患のリスク素因の有無の判定を行うことができる。
(lb) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 1位の塩 基種が A
(2b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 16212 位の塩基種が G
(3b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 30981 位の塩基種が A
(4b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 32408 位の塩基種が G
(5b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 33463 位の塩基種が G
(6b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 34446 位の塩基種が T
(7b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 39322 位の塩基種が T
(8b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 39469 位の塩基種が A
(9b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 39471
位の塩基種が c
(10b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 49248 位の塩基種が C
( l ib) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 49367 位の塩基種が G
(12b) PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列の 52030 位の塩基種が A
[0073] 本発明の方法において、上述の多型変異は一方のゲノムについて (ヘテロで)検出 されればよいが、特に制限されないが、双方のゲノムにおいて (ホモで)検出されるこ とが好ましい。
[0074] 例えば、 PRKCH遺伝子上の部位であって、配列番号: 2に記載の塩基配列におけ る 39469位の遺伝子型が AA (ホモ)である場合に、被検者は動脈硬化性疾患のリス ク素因を有するものと好適に判定される。
[0075] 本発明にお 、ては、上記多型部位以外であっても、該多型部位とその周辺の DNA 領域は強く連鎖しているものと考えられることから、この強く連鎖している DNAブロック 上に存在する多型変異を検出することにより、本発明の検査方法を実施することも可 能である。
[0076] 例えば、 AGTRL1遺伝子については、多型部位の塩基種が上記(lb)〜(24b)の 塩基種であるような、動脈硬化性疾患の患者を含むヒトの小集団について、この「近 傍の多型部位」(例えば、上記表 1 1〜表 1 6に記載の多型部位)における塩基 種を予め決定する。
[0077] 次 、で、この「近傍の多型部位」につ 、て被検者における塩基種を決定し、予め決 定された前記塩基種と比較することにより、動脈硬化性疾患のリスク素因を有するか 否かの検査を行うことができる。予め決定された塩基種と同一の塩基種である場合に 、被検者は動脈硬化性疾患のリスク素因を有するものと判定される。本発明の検査方 法により、被検者の動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かを判定することがで き、治療方針の決定や薬剤投与量の決定等に利用することができる。
[0078] 例えば、 AGTRL1遺伝子上の配列番号: 1に記載の塩基配列における 39268位の
多型部位の塩基種力 である動脈硬化性疾患を罹患している人を含むヒトの小集団 について、近傍の多型部位、例えば 296位の多型部位の塩基種を決定する。この部 位の塩基種が上記の動脈硬化性疾患を罹患して!/ヽる人にぉ 、て Tである頻度力 上 記動脈硬化性疾患を発症して 、な 、人に比べ高力つた場合、被検者にっ 、て 1位 の多型部位の塩基種を調べ、この部位の塩基種が同様に Tであった場合には、被検 者は動脈硬化性疾患のリスク素因を有するものと判定される。
[0079] 以上のように、本発明により、動脈硬化性疾患に関連する遺伝子上の領域が明ら 力になったことにより、当業者に過度の負担を強いることなぐ上記動脈硬化性疾患 のリスク素因の有無にっ 、て検査を行うことができる。
[0080] また、ヒトゲノムの解析が進み全塩基配列や SNP、マイクロサテライト、 VNTR、 RFLPs などの多型情報も充実してきた。ゲノムの塩基配列について詳細が明らかになりつつ ある現在、最大の関心事は遺伝子あるいは特定の配列と機能 (疾患'疾患の進行性 などの表現型)との関連を解析することである。これを解決するための有力な手法の 一つがハプロタイプを用いた遺伝統計学的解析である。
[0081] ヒトの染色体は 2本 1組で存在し、それぞれ父親と母親から由来している。ハプロタ イブとは、その一方に関する個体の遺伝子型の組み合わせをいい、それぞれ父母由 来の 1本の染色体上に遺伝子座がどのように並んでいるかを示すものである。染色 体を父母から 1本ずつ受け継ぐので、配偶子形成の際に組み換えが起きないとすれ ば 1本の染色体上にのっている遺伝子は必ず一緒に子に伝えられる、すなわち連鎖 する事になる。しかし、実際は減数***の際に組み換えが起きるため、 1本の染色体 上にのっている遺伝子であっても必ずしも連鎖しているわけではない。しかし逆に、 遺伝的組み換えが起きた場合であっても同一染色体上の距離が近い遺伝子座は強 く連鎖する。
[0082] このような現象を集団において観察し、ァリルの非独立が認められる事を連鎖不平 衡という。例えば、 3つの遺伝子座を観察した場合、これらの間に連鎖不平衡がない とすると、存在するハプロタイプは 23通りと予測され、それぞれの頻度は各遺伝子座 の頻度力も予測される値となるが、連鎖不平衡がある場合には 23通りより少ないハプ 口タイプしか存在せず、その頻度も予測と異なる値を示す結果となる。
[0083] 近年、ハプロタイプが連鎖不平衡解析に有用である事が示されており(Genetic Epi demiology 23:221-233)研究が行われている力 ゲノム上には組換えが起きやすい部 位と起きにくい部位があり、 1つの領域として先祖力 子孫へと伝えられる部分 (ノ、プ 口タイプによって特定される領域)は人種を越えて共通性がある事が明らかになって いる(Science 226, 5576:2225-2229) 0即ち、強く連鎖する DNA領域が存在し、この領 域は一般的に DNAブロックと呼ばれる。本発明においては、本発明の多型部位を含 む DNAブロックの存在の有無を検出することによつても、動脈硬化性疾患のリスク素 因を有する力否かの検査を行うことができる。
[0084] 即ち本発明の好ましい態様においては、以下に記載のハプロタイプを示す DNAブ ロックの存在が検出された場合に、動脈硬化性疾患のリスク素因を有するものと判定 されることを特徴とする、動脈硬化性疾患のリスク素因を有するか否かを検査する方 法を提供する。
(A) AGTRL1遺伝子上の多型部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39 268位、 39353位、 41786位、 42019位、および 43406位の多型咅 M立におけるネ目 補鎖の塩基種が、それぞれ A、 G、 A、 Gおよび Cであるハプロタイプ
[0085] 本発明にお 、て、 DNAブロックとは、各遺伝子座間で強!、連鎖不平衡を示す部位 ( 領域)を指す。動脈硬化性疾患と関連する DNAブロックが見出されれば、該 DNAプロ ックを検出することにより、動脈硬化性疾患のリスク素因を有するか否かの検査が可 能となる。
[0086] 動脈硬化性疾患と関連するハプロタイプ (を示す DNAブロック)が見出されれば、該 ハプロタイプを検出することにより、動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かの 検査が可能となる。本発明者らは、鋭意研究により、動脈硬化性疾患に対する感受 性と関連するハプロタイプを見出すことに成功した。
[0087] 従って、本発明は AGTRL1遺伝子上に存在する、動脈硬化性疾患と関連するハプ 口タイプ (を示す DNAブロック)を検出することを特徴とする、動脈硬化性疾患のリスク 素因を有するか否かの検査方法を提供する。
[0088] 本方法にお!、ては、被検者にっ 、て「動脈硬化性疾患と関連するハプロタイプ」を 検出することで、動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かを判定することができ
る。これらの判定は例えば治療方針の決定等に利用することができる。
[0089] 上記「動脈硬化性疾患と関連するハプロタイプ (を示す DNAブロック)」とは、具体的 には以下のようなハプロタイプ(を示す DNAブロック)を挙げることができる。
(A) AGTRL1遺伝子上の多型部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39 268位、 39353位、 41786位、 42019位、および 43406位の多型咅 M立におけるネ目 補鎖の塩基種が、それぞれ A、 G、 A、 Gおよび Cであるハプロタイプ
[0090] 本発明の上記方法の好ま 、態様にぉ 、ては、被検者につ!、て動脈硬化性疾患 のリスク素因を有する力否かの検査方法であって、以下に記載のハプロタイプを示す DNAブロック内に存在し互いに連鎖することを特徴とする多型部位の塩基種を決定 する工程を含む検査方法である。
(A) AGTRL1遺伝子上の多型部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39 268位、 39353位、 41786位、 42019位、および 43406位の多型咅 M立におけるネ目 補鎖の塩基種が、それぞれ A、 G、 A、 Gおよび Cであるハプロタイプ
[0091] 即ち、本明細書において具体的に記載された部位以外の多型部位であっても、上 記 DNAブロック上に含まれる多型であって、本発明の多型部位と互いに連鎖してい る多型部位であれば、本発明の検査方法に利用することが可能である。
[0092] 上記方法の好ま 、態様にぉ 、ては、以下の工程 (a)および (b)を含む、被検者が 動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かの検査方法である。
(a) 被検者における AGTRL1遺伝子上の多型部位について、塩基種を決定するェ 程、
(b) (a)で決定された塩基種力 以下の (A)に記載のハプロタイプを示す AGTRL1遺 伝子における前記多型部位の塩基種と同一であった場合に、動脈硬化性疾患のリス ク素因を有するものと判定する工程
(A) AGTRL1遺伝子上の多型部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列の 39 268位、 39353位、 41786位、 42019位、および 43406位の多型咅 M立におけるネ目 補鎖の塩基種が、それぞれ A、 G、 A、 Gおよび Cであるハプロタイプ
[0093] なお、上記工程 (a)における多型部位としては、例えば、上記表 1 1〜1 6に記 載の各多型部位を挙げることができる力 好ましくは、 AGTRL1遺伝子上の部位で
あって、配列番号: 1に記載の塩基配列における 1位、 12541位、 21545位、 33051 位、 35365位、 39268位、 39353位、 39370位、 39474位、 39553位、 39665位 、 41786位、 42019位、 42509位、 43029位、 43406位、 43663位、 46786位、 4 9764位、 64276位、 74482位、 78162位、 93492位、または 102938位のいずれ かの多型部位を示すことができる。
[0094] 本発明の多型部位における塩基種の決定は、当業者においては種々の方法によ つて行うことができる。一例を示せば、本発明の多型部位を含む DNAの塩基配列を 直接決定することによって行うことができる。
[0095] 本発明の検査方法に供する被検試料は、通常、予め被検者から取得された生体試 料であることが好ましい。生体試料としては、例えば DNA試料を挙げることができる。 本発明において DNA試料は、例えば被検者の血液、皮膚、口腔粘膜、手術により採 取あるいは切除した組織または細胞、検査等の目的で採取された体液等から抽出し た染色体 DNA、ある 、は RNAを基に調製することができる。
[0096] 即ち本発明は、通常、被検者由来の生体試料 (予め被検者から取得された生体試 料)を被検試料として検査に供する方法である。
[0097] 当業者においては、公知の技術を用いて、適宜、生体試料の調製を行うことができ る。例えば、 DNA試料は、本発明の多型部位を含む DNAにハイブリダィズするプライ マーを用いて、染色体 DNA、あるいは RNAを铸型とした PCR等によって調製すること ができる。
[0098] 本方法にお!、ては、次 、で、単離した DNAの塩基配列を決定する。単離した DNA の塩基配列の決定は、当業者においては、 DNAシークェンサ一等を用いて容易に 実施することができる。
[0099] 本発明の多型部位は、通常、その部位の塩基種のノリエーシヨンが既に明らかに なって 、る。本発明における「塩基種の決定」とは、必ずしもその多型部位につ!、て A、 G、 T、 Cのいずれかの塩基種であるかを判別することを意味するものではない。 例えば、ある多型部位について塩基種のノリエーシヨンが Aまたは Gであることが判 明して 、る場合には、その部位の塩基種が「Aでな 、」もしくは「Gでな 、」ことが判明 すれば充分である。
[0100] 予め塩基のノ リエーシヨンが明らかにされている多型部位について、その塩基種を 決定するための様々な方法が公知である。本発明の塩基種の決定のための方法は
、特に限定されない。例えば、 PCR法を応用した解析方法として、 TaqMan PCR法、 A cycloPrime法、および MALDHTOF/MS法等が実用化されている。また PCRに依存し な!ヽ塩基種の決定法として Invader法や RC A法が知られて!/、る。更に DNAアレイを使 つて塩基種を決定することもできる。以下にこれらの方法について簡単に述べる。ここ に述べた方法は、 V、ずれも本発明における多型部位の塩基種の決定に応用できる。
[0101] [TaqMan PCR法]
TaqMan PCR法の原理は次のとおりである。 TaqMan PCR法は、ァリルを含む領域 を増幅することができるプライマーセットと、 TaqManプローブを利用した解析方法で ある。 TaqManプローブは、このプライマーセットによって増幅されるァリルを含む領域 にハイブリダィズするように設計される。
[0102] TaqManプローブの Tmに近!、条件で標的塩基配列にハイブリダィズさせれば、 1塩 基の相違によって TaqManプローブのハイブリダィズ効率は著しく低下する。 TaqMan プローブの存在下で PCR法を行うと、プライマーからの伸長反応は、いずれハイブリ ダイズした TaqManプローブに到達する。このとき DNAポリメラーゼの 5'- 3'ェキソヌクレ ァーゼ活性によって、 TaqManプローブはその 5'末端から分解される。 TaqManプロ一 ブをレポーター色素とクェンチヤ一で標識しておけば、 TaqManプローブの分解を、 蛍光シグナルの変化として追跡することができる。つまり、 TaqManプローブの分解が 起きれば、レポーター色素が遊離してクェンチヤ一との距離が離れることによって蛍 光シグナルが生成する。 1塩基の相違のために TaqManプローブのハイブリダィズが 低下すれば TaqManプローブの分解が進まず蛍光シグナルは生成されない。
[0103] 多型に対応する TaqManプローブをデザインし、更に各プローブの分解によって異 なるシグナルが生成されるようにすれば、同時に塩基種の判定を行うこともできる。例 えば、レポーター色素として、あるァリルのァリル Aの TaqManプローブに 6- carboxy- 11 uorescein(FAM)を、ァリル Bのプローブに VICを用いる。プローブが分解されない状 態では、クェンチヤ一によつてレポーター色素の蛍光シグナル生成は抑制されている 。各プローブが対応するァリルにハイブリダィズすれば、ハイブリダィズに応じた蛍光
シグナルが観察される。すなわち、 FAMまたは VICのいずれかのシグナルが他方より も強い場合には、ァリル Aまたはァリル Bのホモであることが判明する。他方、ァリルを ヘテロで有する場合には、両者のシグナルがほぼ同じレベルで検出されることになる 。 TaqMan PCR法の利用によって、ゲル上での分離のような時間の力かる工程無しで 、ゲノムを解析対象として PCRと塩基種の決定を同時に行うことができる。そのため、 T aqMan PCR法は、多くの被検者についての塩基種を決定できる方法として有用であ る。
[0104] [AcycloPrime法]
PCR法を利用した塩基種を決定する方法として、 AcycloPrime法も実用化されて ヽ る。 AcycloPrime法では、ゲノム増幅用のプライマー 1組と、多型検出用の 1つのプラ イマ一を用いる。まず、ゲノムの多型部位を含む領域を PCRで増幅する。この工程は 、通常のゲノム PCRと同じである。次に、得られた PCR産物に対して、 SNPs検出用の プライマーをァニールさせ、伸長反応を行う。 SNPs検出用のプライマーは、検出対象 となって!/、る多型部位に隣接する領域にァニールするようにデザインされて 、る。
[0105] このとき、伸長反応のためのヌクレオチド基質として、蛍光偏光色素でラベルし、か つ 3'-OHをブロックしたヌクレオチド誘導体 (ターミネータ)を用いる。その結果、多型 部位に相当する位置の塩基に相補的な塩基が 1塩基だけ取りこまれて伸長反応が 停止する。ヌクレオチド誘導体のプライマーへの取りこみは、分子量の増大による蛍 光偏光 (Fluorescence polarization;FP)の増加によって検出することができる。蛍光偏 光色素に波長の異なる 2種類のラベルを用いれば、特定の SNPsが 2種類の塩基のう ちの、、ずれであるのかを特定することができる。蛍光偏光のレベルは定量することが できるので、 1度の解析でァリルがホモかへテロかを判定することもできる。
[0106] [MALDI- TOF/MS法]
PCR産物を MALDI-TOF/MSで解析することによって塩基種の決定を行うこともでき る。 MALDI-TOF/MSは、分子量をきわめて正確に知ることができるため、タンパク質 のアミノ酸配列や、 DNAの塩基配列のわずかな相違を明瞭に識別することができる 解析手法として様々な分野で利用されて ヽる。 MALDI-TOF/MSによる塩基種の決 定のためには、まず解析対象であるァリルを含む領域を PCRで増幅する。次いで増
幅産物を単離して MALDI-TOF/MSによってその分子量を測定する。ァリルの塩基配 列は予めわ力つているので、分子量に基づいて増幅産物の塩基配列は一義的に決 定される。
[0107] MALDI-TOF/MSを利用した塩基種の決定には、 PCR産物の分離工程などが必要 となる。しかし標識プライマーや標識プローブを使わないで、正確な塩基種の決定が 期待できる。また複数の場所の多型の同時検出にも応用することができる。
[0108] [lis型制限酵素を利用した SNPs特異的な標識方法]
PCR法を利用した更に高速な塩基種の決定が可能な方法も報告されている。例え ば、 lis型制限酵素を利用して多型部位の塩基種の決定が行われている。この方法に おいては、 PCRにあたり、 lis型制限酵素の認識配列を有するプライマーが用いられる 。遺伝子組み換えに利用される一般的な制限酵素 (II型)は、特定の塩基配列を認識 して、その塩基配列中の特定部位を切断する。これに対して lis型の制限酵素は、特 定の塩基配列を認識して、認識塩基配列から離れた部位を切断する。酵素によって 、認識配列と切断個所の間の塩基数は決まっている。従って、この塩基数の分だけ 離れた位置に lis型制限酵素の認識配列を含むプライマーがァニールするようにすれ ば、 lis型制限酵素によってちようど多型部位で増幅産物を切断することができる。
[0109] lis型制限酵素で切断された増幅産物の末端には、 SNPsの塩基を含む付着末端 (c ohesive end)が形成される。ここで、増幅産物の付着末端に対応する塩基配列からな るアダプターをライゲーシヨンする。アダプタ一は、多型変異に対応する塩基を含む 異なる塩基配列力 なり、それぞれ異なる蛍光色素で標識しておくことができる。最 終的に、増幅産物は多型部位の塩基に対応する蛍光色素で標識される。
[0110] 前記 lis型制限酵素認識配列を含むプライマーに、捕捉プライマー (capture primer) を組み合せて PCR法を行えば、増幅産物は蛍光標識されるとともに、捕捉プライマー を利用して固相化することができる。例えばピオチン標識プライマーを捕捉プライマ 一として用いれば、増幅産物はアビジン結合ビーズに捕捉することができる。こうして 捕捉された増幅産物の蛍光色素を追跡することにより、塩基種を決定することができ る。
[0111] [磁気蛍光ビーズを使った多型部位における塩基種の決定]
複数のァリルを単一の反応系で並行して解析することができる技術も公知である。 複数のァリルを並行して解析することは、多重化と呼ばれている。一般に蛍光シグナ ルを利用したタイピング方法では、多重化のために異なる蛍光波長を有する蛍光成 分が必要である。し力 実際の解析に利用することができる蛍光成分は、それほど多 くない。これに対して、榭脂等に複数種の蛍光成分を混合した場合には、限られた種 類の蛍光成分であっても、相互に識別可能な多様な蛍光シグナルを得ることができ る。更に、榭脂中に磁気で吸着される成分を加えれば蛍光を発するとともに、磁気に よって分離可能なビーズとすることができる。このような磁気蛍光ビーズを利用した、 多重化多型タイピングが考え出された (バイオサイエンスとバイオインダストリ一, Vol.6 0 No.12, 821-824)。
[0112] 磁気蛍光ビーズを利用した多重化多型タイピングにおいては、各ァリルの多型部 位に相補的な塩基を末端に有するプローブが磁気蛍光ビーズに固定化される。各ァ リルにそれぞれ固有の蛍光シグナルを有する磁気蛍光ビーズが対応するように、両 者は組み合せられる。一方、磁気蛍光ビーズに固定されたプローブが相補配列にハ イブリダィズしたときに、当該ァリル上で隣接する領域に相補的な塩基配列を有する 蛍光標識オリゴ DNAを調製する。
[0113] ァリルを含む領域を非対称 PCRによって増幅し、上記の磁気蛍光ビーズ固定化プ ローブと蛍光標識オリゴ DNAをハイブリダィズさせ、更に両者をライゲーシヨンする。 磁気蛍光ビーズ固定ィ匕プローブの末端が、多型部位の塩基に相補的な塩基配列で あった場合には効率的にライゲーシヨンされる。逆にもしも多型のために末端の塩基 が異なれば、両者のライゲーシヨン効率は低下する。その結果、各磁気蛍光ビーズに は、試料が当該磁気蛍光ビーズに相補的な塩基種であった場合に限り、蛍光標識 オリゴ DNAが結合する。
[0114] 磁気によって磁気蛍光ビーズを回収し、更に各磁気蛍光ビーズ上の蛍光標識オリ ゴ DNAの存在を検出することにより、塩基種が決定される。磁気蛍光ビーズは、フロ 一サイトメーターでビーズ毎に蛍光シグナルを解析できるので、多種類の磁気蛍光ビ ーズが混合されていてもシグナルの分離は容易である。つまり、多種類の多型部位 につ ヽて、単一の反応容器で並行して解析する「多重化」が達成される。
[0115] [Invader法]
PCR法に依存しないジエノタイピングのための方法も実用化されている。例えば、 In vader法では、ァリルプローブ、インベーダープローブ、および FRETプローブの 3種 類のオリゴヌクレオチドと、 cleavaseと呼ばれる特殊なヌクレアーゼのみで、塩基種の 決定を実現している。これらのプローブのうち標識が必要なのは FRETプローブのみ である。
[0116] ァリルプローブは、検出すべきァリルに隣接する領域にハイブリダィズするようにデ ザインされる。ァリルプローブの 5'側には、ハイブリダィズに無関係な塩基配列からな るフラップが連結されて 、る。ァリルプローブは多型部位の 3'側にハイブリダィズし、 多型部位の上でフラップに連結する構造を有する。
[0117] 一方インベーダープローブは、多型部位の 5'側にハイブリダィズする塩基配列から なっている。インベーダープローブの塩基配列は、ハイブリダィズによって 3'末端が 多型部位に相当するようにデザインされている。インベーダープローブにおける多型 部位に相当する位置の塩基は任意で良い。つまり、多型部位を挟んでインベーダー プローブとァリルプローブとが隣接してハイブリダィズするように両者の塩基配列はデ ザインされている。
[0118] 多型部位がァリルプローブの塩基配列に相補的な塩基であった場合には、インべ ーダープローブとァリルプローブの両者がァリルにハイブリダィズすると、ァリルプロ 一ブの多型部位に相当する塩基にインベーダープローブが侵入 (invasion)した構造 が形成される。 cleavaseは、このようにして形成された侵入構造を形成したオリゴヌタレ ォチドのうち、侵入された側の鎖を切断する。切断は侵入構造の上で起きるので、結 果としてァリルプローブのフラップが切り離されることになる。一方、もしも多型部位の 塩基がァリルプローブの塩基に相補的でな力つた場合には、多型部位におけるイン ベーダープローブとァリルプローブの競合は無ぐ侵入構造は形成されない。したが つて cleavaseによるフラップの切断が起こらない。
[0119] FRETプローブは、こうして切り離されたフラップを検出するためのプローブである。
FRETプローブは 5'末端側に自己相補配列を有し、 3'末端側に 1本鎖部分が配置さ れたヘアピンループを構成して ヽる。 FRETプローブの 3'末端側に配置された 1本鎖
部分は、フラップに相補的な塩基配列力もなつていて、ここにフラップがハイブリダィ ズすることができる。フラップ力 SFRETプローブにハイブリダィズすると、 FRETプローブ の自己相補配列の 5'末端部分にフラップの 3'末端が侵入した構造が形成されるよう に両者の塩基配列がデザインされて 、る。 cleavaseは侵入構造を認識して切断する。
FRETプローブの cleavaseによって切断される部分を挟んで、 TaqMan PCRと同様のレ ポーター色素とクェンチヤ一で標識しておけば、 FRETプローブの切断を蛍光シグナ ルの変化として検知することができる。
[0120] なお、理論的には、フラップは切断されな 、状態でも FRETプローブにハイブリダィ ズするはずである。しかし実際には、切断されたフラップとァリルプローブの状態で存 在しているフラップとでは、 FRETに対する結合効率に大きな差が有る。そのため、 FR ETプローブを利用して、切断されたフラップを特異的に検出することは可能である。
[0121] Invader法に基づいて塩基種を決定するためには、ァリル Aとァリル Bのそれぞれに 相補的な塩基配列を含む、 2種類のァリルプローブを用意すれば良い。このとき両者 のフラップの塩基配列は異なる塩基配列とする。フラップを検出するための FRETプロ ーブも 2種類を用意し、それぞれのレポーター色素を識別可能なものとしておけば、 TacMan PCR法と同様の考え方によって、塩基種を決定することができる。
[0122] Invader法の利点は、標識の必要なオリゴヌクレオチドが FRETプローブのみであるこ とである。 FRETプローブは検出対象の塩基配列とは無関係に、同一のオリゴヌタレ ォチドを利用することができる。従って、大量生産が可能である。一方ァリルプローブ とインベーダープローブは標識する必要が無いので、結局、ジエノタイピングのため の試薬を安価に製造することができる。
[0123] [RCA法]
PCR法に依存しない塩基種の決定方法として、 RCA法を挙げることができる。鎖置 換作用を有する DNAポリメラーゼが、環状の 1本鎖 DNAを铸型として、長い相補鎖を 合成する反応に基づく DNAの増幅方法が、 Rolling Circle Amplification(RCA)法であ る (Lizardri PM et al., Nature Genetics 19, 225, 1998)。 RCA法においては、環状 DNA にァニールして相補鎖合成を開始するプライマーと、このプライマーによって生成す る長い相補鎖にァニールする第 2のプライマーを利用して、増幅反応を構成している
[0124] RCA法には、鎖置換作用を有する DNAポリメラーゼが利用されている。そのため、 相補鎖合成によって 2本鎖となった部分は、より 5'側にァニールした別のプライマー 力 開始した相補鎖合成反応によって置換される。例えば、環状 DNAを铸型とする 相補鎖合成反応は、 1周分では終了しない。先に合成した相補鎖を置換しながら相 補鎖合成は継続し、長い 1本鎖 DNAが生成される。一方、環状 DNAを铸型として生 成した長い 1本鎖 DNAには、第 2のプライマーがァニールして相補鎖合成が開始す る。 RCA法において生成される 1本鎖 DNAは、環状の DNAを铸型としていることから、 その塩基配列は同じ塩基配列の繰り返しである。従って、長い 1本鎖の連続的な生 成は、第 2のプライマーの連続的なァニールをもたらす。その結果、変性工程を経る ことなぐプライマーがァニールすることができる 1本鎖部分が連続的に生成される。 こうして、 DNAの増幅が達成される。
[0125] RCA法に必要な環状 1本鎖 DNAが多型部位の塩基種に応じて生成されれば、 RC A法を利用して塩基種の決定をすることができる。そのために、直鎖状で 1本鎖のパド ロックプローブが利用される。ノ ドロックプローブは、 5'末端と 3'末端に検出すべき多 型部位の両側に相補的な塩基配列を有している。これらの塩基配列は、バックボー ンと呼ばれる特殊な塩基配列からなる部分で連結されて!、る。多型部位がパドロック プローブの末端に相補的な塩基配列であれば、ァリルにハイブリダィズしたパドロック プローブの末端を DNAリガーゼによってライゲーシヨンすることができる。その結果、 直鎖状のパドロックプローブが環状ィ匕され、 RCA法の反応がトリガーされる。 DNAリガ ーゼの反応は、ライゲーシヨンすべき末端部分が完全に相補的でな 、場合には反応 効率が著しく低下する。従って、ライゲーシヨンの有無を RCA法で確認することによつ て、多型部位の塩基種の決定が可能である。
[0126] RCA法は、 DNAを増幅することはできる力 そのままではシグナルを生成しない。ま た増幅の有無のみを指標とするのでは、ァリル毎に反応を行わなければ、通常、塩 基種を決定することができない。これらの点を塩基種の決定のために改良した方法が 公知である。例えば、モレキュラービーコンを利用して、 RCA法に基づいて 1チューブ で塩基種の決定を行うことができる。モレキュラービーコンは、 TaqMan法と同様に、蛍
光色素とクェンチヤ一を利用したシグナル生成用プローブである。モレキュラービー コンの 5'末端と 3'末端は相補的な塩基配列で構成されており、単独ではヘアピン構 造を形成する。両端付近を蛍光色素とクェンチヤ一で標識しておけば、ヘアピン構 造を形成して 、る状態では蛍光シグナルが検出できな 、。モレキュラービーコンの一 部を、 RCA法の増幅産物に相補的な塩基配列としておけば、モレキュラービーコンは RCA法の増幅産物にノ、イブリダィズする。ハイブリダィズによってヘアピン構造が解 消されるため、蛍光シグナルが生成される。
[0127] モレキュラービーコンの利点は、パドロックプローブのバックボーン部分の塩基配列 を利用することによって、検出対象とは無関係にモレキュラービーコンの塩基配列を 共通にできる点である。ァリル毎にバックボーンの塩基配列を変え、蛍光波長が異な る 2種類のモレキュラービーコンを組み合わせれば、 1チューブで塩基種の決定が可 能である。蛍光標識プローブの合成コストは高いので、測定対象に関わらず共通の プローブを利用できることは、経済的なメリットである。
[0128] これらの方法は 、ずれも多量のサンプルを高速にジヱノタイピングするために開発 された方法である。 MALDHTOF/MSを除けば、通常、いずれの方法にも何らかの形 で標識プローブなどを用意する必要がある。これに対して、標識プローブなどに頼ら ない塩基種決定法も古くから行われている。このような方法の一つとして、例えば、制 限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length PolymorphismZRFLP)を利用した 方法や PCR-RFLP法等が挙げられる。
[0129] RFLPは、制限酵素の認識部位の変異、あるいは制限酵素処理によって生じる DNA 断片内における塩基の挿入または欠失が、制限酵素処理後に生じる断片の大きさの 変化として検出できることを利用している。検出対象となる多型を含む塩基配列を認 識する制限酵素が存在すれば、 RFLPの原理によって多型部位の塩基を知ることが できる。
[0130] 標識プローブを必要としない方法として、 DNAの二次構造の変化を指標として塩基 の違いを検出する方法も公知である。 PCR-SSCPでは、 1本鎖 DNAの二次構造がそ の塩基配列の相違を反映することを利用している (Cloning and polymerase chain reac tion— single— strand conformation polymorphism analysis of anonymous Alu repeats on
chromosome 11. Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139- 146.、 Detection of p53 gene mu tations in human brain tumors by single-strand conformation polymorphism analysis of polymerase chain reaction products. Oncogene. 1991 Aug 1; 6(8): 1313- 1318.、 M ultiple fluorescence-based PCR— SSCP analysis with postlabeling.、 PCR Methods Ap pi. 1995 Apr 1; 4(5): 275-282.)。 PCR- SSCP法は、 PCR産物を 1本鎖 DNAに解離させ 、非変性ゲル上で分離する工程により実施される。ゲル上の移動度は、 1本鎖 DNAの 二次構造によって変動するので、もしも多型部位における塩基の相違があれば、移 動度の違 、として検出することができる。
[0131] その他、標識プローブを必要としな 、方法として、例えば、変性剤濃度勾配ゲル (d enaturant gradient gel electrophoresis: DGGE法)等を例示することができる。 DGGE 法は、変性剤の濃度勾配のあるポリアクリルアミドゲル中で、 DNA断片の混合物を泳 動し、それぞれの不安定性の違いによって DNA断片を分離する方法である。ミスマツ チのある不安定な DNA断片が、ゲル中のある変性剤濃度の部分まで移動すると、ミス マッチ周辺の DNA配列はその不安定さのために、部分的に 1本鎖へと解離する。部 分的に解離した DNA断片の移動度は、非常に遅くなり、解離部分のない完全な二本 鎖 DNAの移動度と差がつくことから、両者を分離することができる。
[0132] 具体的には、まず PCR法等によって多型部位を含む領域を増幅する。増幅産物に 、塩基配列がわかっているプローブ DNAをハイブリダィズさせて 2本鎖とする。これを 尿素などの変性剤の濃度が移動するに従って徐々に高くなつているポリアクリルアミ ドゲル中で電気泳動し、対照と比較する。プローブ DNAとのハイブリダィズによってミ スマッチを生じた DNA断片では、より低 、変性剤濃度位置で DNA断片が一本鎖にな り、極端に移動速度が遅くなる。こうして生じた移動度の差を検出することによりミスマ ツチの有無を検出することができる。
[0133] 更に DNAアレイを使って塩基種を決定することもできる(細胞工学別冊「DNAマイク ロアレイと最新 PCR法」,秀潤社, 2000.4/20発行 ,pp97- 103「オリゴ DNAチップによる SN Pの解析」,梶江慎一)。 DNAアレイは、同一平面上に配置した多数のプローブに対し てサンプル DNA (あるいは RNA)をハイブリダィズさせ、当該平面をスキャンすることに よって、各プローブに対するハイブリダィズが検出される。多くのプローブに対する反
応を同時に観察することができることから、例えば、多数の多型部位について同時に 解析するには、 DNAアレイは有用である。
[0134] 一般に DNAアレイは、高密度に基板にプリントされた何千ものヌクレオチドで構成さ れている。通常これらの DNAは非透過性 (non- porous)の基板の表層にプリントされる 。基板の表層は、一般的にはガラスである力 透過性 (porous)の膜、例えば-トロセ ルロースメンブレムを使用することもできる。
[0135] 本発明において、ヌクレオチドの固定(アレイ)方法として、 Aifymetrix社開発による オリゴヌクレオチドを基本としたアレイが例示できる。オリゴヌクレオチドのアレイにお いて、オリゴヌクレオチドは通常インビトロ (in vitro)で合成される。例えば、 photolithog raphicの技術(Aifymetrix社)、および化学物質を固定させるためのインクジェット (Ros etta Inpharmatics社)技術等によるオリゴヌクレオチドのインサイチュ合成法が既に知 られており、いずれの技術も本発明の基板の作製に利用することができる。
[0136] オリゴヌクレオチドは、検出すべき SNPsを含む領域に相補的な塩基配列で構成さ れる。基板に結合させるヌクレオチドプローブの長さは、オリゴヌクレオチドを固定す る場合は、通常 10〜100ベースであり、好ましくは 10〜50ベースであり、さらに好ましく は 15〜25ベースである。更に、一般に DNAアレイ法においては、クロスハイブリダィゼ ーシヨン (非特異的ノ、イブリダィゼーシヨン)による誤差を避けるために、ミスマッチお M)プローブが用いられる。ミスマッチプローブは、標的塩基配列と完全に相補的な塩 基配列からなるオリゴヌクレオチドとのペアを構成して 、る。ミスマッチプローブに対し て、完全に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドはパーフェクトマッチ (PM)プ ローブと呼ばれる。データ解析の過程で、ミスマッチプローブで観察されたシグナル を消去することによって、クロスハイブリダィゼーシヨンの影響を小さくすることができる
[0137] DNAアレイ法によるジエノタイピングのための試料は、被検者から採取された生物 学的試料をもとに当業者に周知の方法で調製することができる。生物学的試料は特 に限定されない。例えば被検者の血液、末梢血白血球、皮膚、口腔粘膜等の組織ま たは細胞、涙、唾液、尿、糞便または毛髪力 抽出した染色体 DNAから、 DNA試料を 調製することができる。判定すべき多型部位を含む領域を増幅するためのプライマー
を用いて、染色体 DNAの特定の領域が増幅される。このとき、マルチプレックス PCR 法によって複数の領域を同時に増幅することができる。マルチプレックス PCR法とは、 複数組のプライマーセットを、同じ反応液中で用いる PCR法である。複数の多型部位 を解析するときには、マルチプレックス PCR法が有用である。
[0138] 一般に DNAアレイ法においては、 PCR法によって DNA試料を増幅するとともに、増 幅産物が標識される。増幅産物の標識には、標識を付したプライマーが利用される。 例えば、まず多型部位を含む領域に特異的なプライマーセットによる PCR法でゲノム DNAを増幅する。次に、ピオチンラベルしたプライマーを使ったラベリング PCR法によ つて、ピオチンラベルされた DNAを合成する。こうして合成されたピオチンラベル DNA を、チップ上のオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダィズさせる。ハイブリダィゼー シヨンの反応液および反応条件は、基板に固定するヌクレオチドプローブの長さや反 応温度等の条件に応じて、適宜調整することができる。当業者は、適切なハイブリダ ィゼーシヨンの条件をデザインすることができる。ハイブリダィズした DNAを検出する ために、蛍光色素で標識したアビジンが添加される。アレイをスキャナで解析し、蛍光 を指標としてハイブリダィズの有無を確認する。
[0139] 上記方法をより具体的に示せば、被検者力 調製した本発明の多型部位を含む D NA、およびヌクレオチドプローブが固定された固相、を取得した後、次いで、該 DNA と該固相を接触させる。さらに、固相に固定されたヌクレオチドプローブにハイブリダ ィズした DNAを検出することにより、本発明の多型部位の塩基種を決定する。
[0140] 本発明において「固相」とは、ヌクレオチドを固定することが可能な材料を意味する 。本発明の固相は、ヌクレオチドを固定することが可能であれば特に制限はないが、 具体的には、マイクロプレートウエル、プラスチックビーズ、磁性粒子、基板などを含 む固相等を例示することができる。本発明の「固相」としては、一般に DNAアレイ技術 で使用される基板を好適に用いることができる。本発明において「基板」とは、ヌクレ ォチドを固定することが可能な板状の材料を意味する。また、本発明においてヌクレ ォチドには、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが含まれる。
[0141] 上記の方法以外にも、特定部位の塩基を検出するために、ァリル特異的オリゴヌク レオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダィゼーシヨン法が利用でき
る。ァリル特異的オリゴヌクレオチド (ASO)は、検出すべき多型部位が存在する領域 にハイブリダィズする塩基配列で構成される。 ASOを試料 DNAにハイブリダィズさせ るとき、多型によって多型部位にミスマッチが生じるとハイブリッド形成の効率が低下 する。ミスマッチは、サザンブロット法や、特殊な蛍光試薬がハイブリッドのギャップに インターカレーションすることにより消光する性質を利用した方法等によって検出する ことができる。また、リボヌクレアーゼ Aミスマッチ切断法によって、ミスマッチを検出す ることちでさる。
[0142] 本発明の多型部位を含む DNAにハイブリダィズし、少なくとも 15ヌクレオチドの鎖長 を有するオリゴヌクレオチドは、動脈硬化性疾患のリスク素因を有する力否かを検査 するための試薬 (検査薬)として利用できる。これは遺伝子発現を指標とする検査、ま たは遺伝子多型を指標とする検査に使用される。
[0143] 該オリゴヌクレオチドは、本発明の多型部位を含む DNAに特異的にハイブリダィズ するものである。ここで「特異的にハイブリダィズする」とは、通常のハイブリダィゼー シヨン条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダィゼーシヨン条件下 (例えば、サ ムブノレックら, Molecularし loning'Cold bpnng Harbour Laboratory Press, New York, US A,第 2版 1989に記載の条件)において、他のタンパク質をコードする DNAとクロスハイ ブリダィゼーシヨンを有意に生じな 、ことを意味する。特異的なノ、イブリダィズが可能 であれば、該オリゴヌクレオチドは、検出する遺伝子もしくは該遺伝子の近傍 DNA領 域における本発明の多型部位を含む塩基配列に対し、完全に相補的である必要は ない。
[0144] 本発明においてハイブリダィゼーシヨンの条件としては、例えば「2 X SSC、 0.1 %SD S、 50。C」、「2 X SSC、 0.1%SDS、 42。C」、「1 X SSC、 0.1%SDS、 37°C」、よりストリンジェ ントな条件として「2 X SSC、 0.1%SDS、 65°C」、「0.5 X SSC、 0.1%SDS、 42°C」及び「0. 2 X SSC、 0.1%SDS、 65°C」等の条件を挙げることができる。より詳細には、 Rapid- hyb buffer (Amersham Life Science)を用いた方法として、 68°Cで 30分間以上プレハイブリ ダイゼーシヨンを行った後、プローブを添カ卩して 1時間以上 68°Cに保ってハイブリッド 形成させ、その後 2 X SSC、 0.1%SDS中、室温で 20分間の洗浄を 3回行い、続いて 1 X SSC、 0.1%SDS中、 37°Cで 20分間の洗浄を 3回行い、最後に 1 X SSC、 0.1%SDS中
、 50°Cで 20分間の洗浄を 2回行うことができる。その他、例えば Expresshyb Hybridizat ion Solution (CLONTECH)中、 55°Cで 30分間以上プレハイブリダィゼーシヨンを行つ た後、標識プローブを添カ卩して 37〜55°Cで 1時間以上インキュベートし、 2 X SSC、 0.1 %SDS中、室温で 20分間の洗浄を 3回、 1 X SSC、 0.1%SDS中、 37°Cで 20分間の洗浄 を 1回行うこともできる。ここで、例えば、プレハイブリダィゼーシヨン、ハイブリダィゼー シヨンや 2度目の洗浄の際の温度をより高く設定することにより、よりストリンジェントな 条件とすることができる。例えば、プレハイブリダィゼーシヨン及びハイブリダィゼーシ ヨンの温度を 60°C、さらにストリンジェントな条件としては 68°Cとすることができる。当業 者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、プローブ濃度 、プローブの長さ、プローブの塩基配列構成、反応時間等のその他の条件を加味し 、条件を設定することができる。
[0145] 該オリゴヌクレオチドは、上記本発明の検査方法におけるプローブやプライマーとし て用いることができる。該オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いる場合、その長さ は、通常 15bp〜100bpであり、好ましくは 17bp〜30bpである。プライマーは、本発明の 多型部位を含む DNAの少なくとも一部を増幅しうるものであれば、特に制限されな!、
[0146] 本発明は、本発明の多型部位を含む領域を増幅するためのプライマー、および多 型部位を含む DNA領域にノ、イブリダィズするプローブを提供する。
[0147] 本発明において、多型部位を含む領域を増幅するためのプライマーには、多型部 位を含む DNAを铸型として、多型部位に向力つて相補鎖合成を開始することができ るプライマーも含まれる。該プライマーは、多型部位を含む DNAにおける、多型部位 の 3'側に複製開始点を与えるためのプライマーと表現することもできる。プライマーが ノ、イブリダィズする領域と多型部位との間隔は任意である。両者の間隔は、多型部位 の塩基の解析手法に応じて、好適な塩基数を選択することができる。たとえば、 DNA チップによる解析のためのプライマーであれば、多型部位を含む領域として、 20〜5 00、通常 50〜200塩基の長さの増幅産物が得られるようにプライマーをデザインす ることができる。当業者においては、多型部位を含む周辺 DNA領域についての塩基 配列情報を基に、解析手法に応じたプライマーをデザインすることができる。本発明
のプライマーを構成する塩基配列は、ゲノムの塩基配列に対して完全に相補的な塩 基配列のみならず、適宜改変することができる。
[0148] 本発明のプライマーには、ゲノムの塩基配列に相補的な塩基配列に加え、任意の 塩基配列を付加することができる。例えば、 lis型の制限酵素を利用した多型の解析 方法のためのプライマーにお!、ては、 lis型制限酵素の認識配列を付加したプライマ 一が利用される。このような、塩基配列を修飾したプライマーは、本発明のプライマー に含まれる。更に、本発明のプライマーは、修飾することができる。例えば、蛍光物質 や、ピオチンまたはジゴキシンのような結合親和性物質で標識したプライマーが各種 のジエノタイピング方法にぉ 、て利用される。これらの修飾を有するプライマーも本発 明に含まれる。
[0149] 一方本発明にお 、て、多型部位を含む領域にハイブリダィズするプローブとは、多 型部位を含む領域の塩基配列を有するポリヌクレオチドとハイブリダィズすることがで きるプローブを言う。より具体的には、プローブの塩基配列中に多型部位を含むプロ 一ブは本発明のプローブとして好ましい。あるいは、多型部位における塩基の解析 方法によっては、プローブの末端が多型部位に隣接する塩基に対応するように、デ ザインされる場合もある。従って、プローブ自身の塩基配列には多型部位が含まれな いが、多型部位に隣接する領域に相補的な塩基配列を含むプローブも、本発明に おける望まし 、プローブとして示すことができる。
[0150] 言いかえれば、ゲノム DNA上の本発明の多型部位、または多型部位に隣接する部 位にハイブリダィズすることができるプローブは、本発明のプローブとして好まし!/、。 本発明のプローブには、プライマーと同様に、塩基配列の改変、塩基配列の付加、 あるいは修飾が許される。例えば、 Invader法に用いるプローブは、フラップを構成す るゲノムとは無関係な塩基配列が付加される。このようなプローブも、多型部位を含む 領域にハイブリダィズする限り、本発明のプローブに含まれる。本発明のプローブを 構成する塩基配列は、ゲノムにおける本発明の多型部位の周辺 DNA領域の塩基配 列をもとに、解析方法に応じてデザインすることができる。
[0151] 本発明のプライマーまたはプローブは、それを構成する塩基配列をもとに、任意の 方法によって合成することができる。本発明のプライマーまたはプローブの、ゲノム D
NAに相補的な塩基配列の長さは、通常 15〜100、一般に 15〜50、通常 15〜30で ある。与えられた塩基配列に基づいて、当該塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを 合成する手法は公知である。更に、オリゴヌクレオチドの合成において、蛍光色素や ピオチンなどで修飾されたヌクレオチド誘導体を利用して、オリゴヌクレオチドに任意 の修飾を導入することもできる。あるいは、合成されたオリゴヌクレオチドに、蛍光色素 などを結合する方法も公知である。
[0152] 本発明のオリゴヌクレオチドをプローブとして使用する場合には、適宜、放射性同 位体または非放射性ィ匕合物などで標識して用いられる。また、プライマーとして使用 する場合には、例えば、オリゴヌクレオチドの 3'末端側の領域を標的とする配列に対 して相補的にし、 5'末端側には制限酵素認識配列、タグ等を付加した形態に設計す ることができる。このような少なくとも連続した 15塩基を含む塩基配列力 なるポリヌク レオチドは、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の mRNAに対してハイブリダィズすること ができる。
[0153] 本発明のオリゴヌクレオチドは、天然以外の塩基、例えば、 4-ァセチルシチジン、 5- (カルボキシヒドロキシメチル)ゥリジン、 2,-0-メチルシチジン、 5-カルボキシメチルアミ ノメチル- 2-チォゥリジン、 5-カルボキシメチルアミノメチルゥリジン、ジヒドロウリジン、 2 ' -0-メチルプソィドウリジン、 j8 -D-ガラクトシルキユエォシン、 2,- 0-メチルグアノシ ン、イノシン、 N6-イソペンテ-ルアデノシン、 1-メチルアデノシン、 1-メチルプソィドウ リジン、 1-メチルグアノシン、 1-メチルイノシン、 2,2-ジメチルグアノシン、 2-メチルアデ ノシン、 2-メチルグアノシン、 3-メチルシチジン、 5-メチルシチジン、 N6-メチルアデノ シン、 7-メチルグアノシン、 5-メチルアミノメチルゥリジン、 5-メトキシァミノメチル -2-チ ォゥリジン、 13 -D-マンノシルキユエオシン、 5-メトキシカルボ-ルメチル- 2-チォゥリジ ン、 5-メトキシカルボ-ルメチルゥリジン、 5-メトキシゥリジン、 2-メチルチオ- N6-イソべ ンテュルアデノシン、 Ν-((9- β -D-リボフラノシル -2-メチルリオプリン- 6-ィル)力ルバ モイル)トレオ-ン、 Ν-((9- β -D-リボフラノシルプリン- 6-ィル) Ν-メチルカルバモイル) トレオニン、ゥリジン- 5-ォキシ酢酸-メチルエステル、ゥリジン- 5-ォキシ酢酸、ワイブト キソシン、プソィドウリジン、キュ ォシン、 2-チオシチジン、 5-メチル -2-チォゥリジン 、 2-チォゥリジン、 4-チォゥリジン、 5-メチルゥリジン、 Ν- ((9- j8 - D-リボフラノシルプリ
ン- 6-ィル)力ルバモイル)トレオ-ン、 2,- 0-メチル -5-メチルゥリジン、 2,- 0-メチルゥ リジン、ワイブトシン、 3-(3-ァミノ- 3-カルボキシプロピル)ゥリジン等を必要に応じて含 んでいてもよい。
[0154] 本発明はまた、動脈硬化性疾患のリスク素因の有無の検査方法に使用するための 試薬 (検査薬)を提供する。本発明の試薬は、前記本発明のプライマーおよび Zまた はプローブを含む。動脈硬化性疾患のリスク素因を有するか否かの検査においては
、本発明の多型部位を含む DNAを増幅するためのプライマーおよび Zまたはプロ一 ブを用いる。
[0155] 本発明の試薬には、塩基種の決定方法に応じて、各種の酵素、酵素基質、および 緩衝液などを組み合せることができる。酵素としては、 DNAポリメラーゼ、 DNAリガ一 ゼ、あるいは lis制限酵素などの、上記の塩基種決定方法として例示した各種の解析 方法に必要な酵素を示すことができる。緩衝液は、これらの解析に用いる酵素の活 性の維持に好適な緩衝液が、適宜選択される。更に、酵素基質としては、例えば、相 補鎖合成用の基質等が用いられる。
[0156] 更に本発明の試薬には、多型部位における塩基が明らかな対照を添付することが できる。対照は、予め多型部位の塩基種が明らかなゲノム、あるいはゲノムの断片を 用いることができる。ゲノムは、細胞力も抽出されたものでもよいし、細胞あるいは細 胞の分画を用いることもできる。細胞を対照として用いれば、対照の結果によってゲノ ム DNAの抽出操作が正しく行われたことを証明することができる。あるいは、多型部 位を含む塩基配列力もなる DNAを対照として用いることもできる。具体的には、本発 明の多型部位における塩基種が明らかにされたゲノム由来の DNAを含む YACベクタ 一や BACベクターは、対照として有用である。あるいは多型部位に相当する数百べ ースのみを切り出して挿入したベクターを対照として用いることもできる。
[0157] さらに、本発明における試薬の別の態様は、本発明の多型部位を含む DNAとハイ ブリダィズするヌクレオチドプローブが固定された固相からなる、動脈硬化性疾患のリ スク素因を有する力否かを検査するための試薬である。
[0158] これらは本発明の多型部位を指標とする検査に使用される。これらの調製方法に 関しては、上述の通りである。
[0159] また、本発明の好ましい態様においては、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写 産物または翻訳産物を検出する工程を含む、動脈硬化性疾患のリスク素因を有する か否かの検査方法に関する。
[0160] 従って、該検査方法において AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写産物の検出の 際にプローブとして利用可能な、例えば、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写産 物にハイブリダィズするオリゴヌクレオチドは、本発明の検査用試薬の一例である。
[0161] また、該検査方法において AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の翻訳産物の検出の際 に利用可能な、 AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質を認識する抗体 (抗 AGTRL1タン パク質抗体、もしくは抗 PRKCHタンパク質抗体)もまた、本発明の検査用試薬の好ま しい具体例である。
[0162] 本発明者らによって、 AGTRL1遺伝子の発現亢進が、動脈硬化性疾患と関連する ことが明ら力となった。また PRKCHタンパク質の自己リン酸ィ匕が脳梗塞等の動脈硬化 性疾患と関連することが示された。従って、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現、 または該遺伝子によってコードされるタンパク質の機能 (活性)を抑制する物質は、動 脈硬化性疾患の治療薬もしくは予防薬となるものと考えられる。
[0163] 本発明は、 AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質の発現、または、該遺伝子によって コードされるタンパク質 (AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質)の機能 (活性)を抑制す る物質を有効成分として含有する、動脈硬化性疾患治療薬を提供する。
[0164] 本発明の好ましい態様においては、まず、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現 の発現抑制物質を有効成分として含む、動脈硬化性疾患治療薬 (動脈硬化性疾患 治療もしくは予防のための薬剤 ·医薬組成物)を提供する。
[0165] 本発明において AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現抑制物質には、例えば、 A GTRLlもしくは PRKCHの転写もしくは該転写産物力 の翻訳を抑制する物質が含ま れる。本発明の上記発現抑制物質の好ましい態様として、例えば、以下の(a)〜(c) 力 なる群より選択される化合物 (核酸)を挙げることができる。
(a) AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写産物またはその一部に対するアンチセン ス核酸
(b) AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子の転写産物を特異的に開裂するリボザィム活性
を有する核酸
(c)AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子の発現を RNAi効果により抑制する作用を有する 核酸
[0166] 本発明における「核酸」とは RNAまたは DNAを意味する。また、所謂 PNA (peptide n ucleic acid)等の化学合成核酸アナログも、本発明の核酸に含まれる。 PNAは、核酸 の基本骨格構造である五単糖'リン酸骨格を、グリシンを単位とするポリアミド骨格に 置換したもので、核酸によく似た 3次元構造を有する。
[0167] 特定の内在性遺伝子の発現を抑制する方法としては、アンチセンス技術を利用す る方法が当業者によく知られている。アンチセンス核酸が標的遺伝子の発現を抑制 する作用としては、以下のような複数の要因が存在する。即ち、三重鎖形成による転 写開始阻害、 RNAポリメラーゼによって局部的に開状ループ構造が作られた部位と のハイブリッド形成による転写阻害、合成の進みつつある RNAとのハイブリッド形成に よる転写阻害、イントロンとエタソンとの接合点におけるハイブリッド形成によるスプラ イシング阻害、スプライソソーム形成部位とのノ、イブリツド形成によるスプライシング阻 害、 mRNAとのハイブリッド形成による核力 細胞質への移行阻害、キヤッビング部位 やポリ (A)付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング阻害、翻訳開始因子結 合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始阻害、開始コドン近傍のリボソーム結合 部位とのハイブリッド形成による翻訳阻害、 mRNAの翻訳領域やポリソーム結合部位 とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長阻害、および核酸とタンパク質との相互 作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現阻害などである。このようにアンチセ ンス核酸は、転写、スプライシングまたは翻訳など様々な過程を阻害することで、標 的遺伝子の発現を阻害する (平島および井上,新生化学実験講座 2核酸 IV遺伝子 の複製と発現, 日本生化学会編,東京化学同人, 1993, 319-347.)。
[0168] 本発明で用いられるアンチセンス核酸は、上記のいずれの作用により AGTRL1もし くは PRKCH遺伝子の発現を抑制してもよい。一つの態様としては、 AGTRL1もしくは P RKCH遺伝子の mRNAの 5'端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設 計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的と考えられる。また、コード領域もしくは 3'側 の非翻訳領域に相補的な配列も使用することができる。このように、 AGTRL1もしくは
PRKCH遺伝子の翻訳領域だけでなく非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含む 核酸も、本発明で利用されるアンチセンス核酸に含まれる。使用されるアンチセンス 核酸は、適当なプロモーターの下流に連結され、好ましくは 3'側に転写終結シグナ ルを含む配列が連結される。このようにして調製された核酸は、公知の方法を用いる ことで、所望の動物へ形質転換できる。アンチセンス核酸の配列は、形質転換される 動物が持つ内在性 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子またはその一部と相補的な配列 であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に抑制できる限りにおいて、完全に相 補的でなくてもよい。転写された RNAは、標的遺伝子の転写産物に対して好ましくは 90%以上、最も好ましくは 95%以上の相補性を有する。アンチセンス核酸を用いて標 的遺伝子 (AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子)の発現を効果的に抑制するには、アンチ センス核酸の長さは少なくとも 15塩基以上 25塩基未満であることが好ましいが、本発 明のアンチセンス核酸は、必ずしもこの長さに限定されない。
[0169] 本発明のアンチセンスは、特に制限されないが、例えば、配列番号: 1または 2に記 載の塩基配列を基に作成することができる。
[0170] また、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現の抑制は、リボザィム、またはリボザィ ムをコードする DNAを利用して行うことも可能である。リボザィムとは触媒活性を有す る RNA分子を指す。リボザィムには種々の活性を有するものが存在するが、中でも RN Aを切断する酵素としてのリボザィムに焦点を当てた研究により、 RNAを部位特異的 に切断するリボザィムの設計が可能となった。リボザィムには、グループ Iイントロン型 や RNase Pに含まれる Ml RNAのように 400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、 ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる 40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有する ものもある(小泉誠および大塚栄子,タンパク質核酸酵素, 1990, 35, 2191.)。
[0171] 例えば、ハンマーヘッド型リボザィムの自己切断ドメインは、 G13U14C15という配列 の C15の 3'側を切断する力 その活性には U14と A9との塩基対形成が重要とされ、 C1 5の代わりに A15または U15でも切断され得ることが示されている(Koizumi, M. et al., FEBS Lett, 1988, 228, 228.) 0基質結合部位が標的部位近傍の RNA配列と相補的 なリボザィムを設計すれば、標的 RNA中の UC、 UUまたは UAという配列を認識する制 限酵素的な RNA切断リボザィムを作出することができる(Koizumi, M. et al., FEBS Le
tt, 1988, 239, 285.、小泉誠および大塚栄子,タンパク質核酸酵素, 1990, 35, 2191. 、 Koizumi, M. et al, Nucl Acids Res, 1989, 17, 7059.)。
[0172] また、ヘアピン型リボザィムも本発明の目的に有用である。このリボザィムは、例え ばタバコリングスポットウィルスのサテライト RNAのマイナス鎖に見出される(Buzayan, JM., Nature, 1986, 323, 349.)。ヘアピン型リボザィムからも、標的特異的な RNA切断 リボザィムを作出できることが示されている(Kikuchi, Y. & Sasaki, N., Nucl Acids Re s, 1991, 19, 6751.、菊池洋,化学と生物, 1992, 30, 112.)。このように、リボザィムを 用いて本発明における AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写産物を特異的に切断 することで、該遺伝子の発現を抑制することができる。
[0173] 内在性遺伝子の発現の抑制は、さらに、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配 列を有する二本鎖 RNAを用いた RNA干渉(RNA interferance; RNAi)によっても行うこ とができる。本発明の RNAi効果による抑制作用を有する核酸は、一般的に siRNAとも 言われる。 RNAiは、標的遺伝子の mRNAと相同な配列力 なるセンス RNAとこれと相 補的な配列力 なるアンチセンス RNAとからなる二本鎖 RNAを細胞等に導入すること により、標的遺伝子 mRNAの破壊を誘導し、標的遺伝子の発現を抑制し得る現象で ある。このように RNAiは、標的遺伝子の発現を抑制し得ることから、従来の煩雑で効 率の低い相同組み換えによる遺伝子破壊方法に代わる簡易な遺伝子ノックアウト方 法として、または、遺伝子治療への応用可能な方法として注目を集めている。 RNAiに 用いる RNAは、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子もしくは該遺伝子の部分領域と必ず しも完全に同一である必要はないが、完全な相同性を有することが好ましい。
[0174] 本発明の上記 (c)の核酸の好ましい態様として、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子に 対して RNAi (RNA interference; RNA干渉)効果を有する二本鎖 RNA (siRNA)を挙げ ることができる。より具体的には、配列番号: 1に記載の塩基配列の部分配列に対す るセンス RNAおよびアンチセンス RNAからなる二本鎖 RNA(siRNA)を挙げることができ る。
[0175] RNAi機構の詳細については未だに不明な部分もある力 DICERといわれる酵素(R Nase III核酸分解酵素ファミリーの一種)が二本鎖 RNAと接触し、二本鎖 RNAが small i nterfering RNAまたは siRNAと呼ばれる小さな断片に分解されるものと考えられて!/、る
。本発明における RNAi効果を有する二本鎖 RNAには、このように DICERによって分 解される前の二本鎖 RNAも含まれる。即ち、そのままの長さでは RNAi効果を有さない ような長鎖の RNAであっても、細胞にお!、て RNAi効果を有する siRNAへ分解されるこ とが期待されるため、本発明における二本鎖 RNAの長さは、特に制限されない。
[0176] 例えば、本発明の AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の mRNAの全長もしくはほぼ全長 の領域に対応する長鎖二本鎖 RNAを、例えば、予め DICERで分解させ、その分解産 物を動脈硬化性疾患治療薬として利用することが可能である。この分解産物には、 R NAi効果を有する二本鎖 RNA分子 (siRNA)が含まれることが期待される。この方法によ れば、 RNAi効果を有することが期待される mRNA上の領域を、特に選択しなくともよ い。即ち、 RNAi効果を有する本発明の AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の mRNA上の 領域は、必ずしも正確に規定される必要はない。
[0177] なお、上記 RNA分子において一方の端が閉じた構造の分子、例えば、ヘアピン構 造を有する siRNA(shRNA)も本発明に含まれる。即ち、分子内において二本鎖 RNA構 造を形成し得る一本鎖 RNA分子もまた本発明に含まれる。
[0178] 本発明の上記「RNAi効果により抑制し得る二本鎖 RNA」は、当業者においては、該 二本鎖 RNAの標的となる本発明の AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の塩基配列を基 に、適宜作製することができる。一例を示せば、配列番号: 1もしくは 2に記載の塩基 配列をもとに、本発明の二本鎖 RNAを作製することができる。即ち、配列番号: 1もしく は 2に記載の塩基配列をもとに、該配列の転写産物である mRNAの任意の連続する R NA領域を選択し、この領域に対応する二本鎖 RNAを作製することは、当業者におい ては、通常の試行の範囲内において適宜行い得ることである。また、該配列の転写 産物である mRNA配列から、より強!、RNAi効果を有する siRNA配列を選択することも、 当業者においては、公知の方法によって適宜実施することが可能である。また、一方 の鎖 (例えば、配列番号: 1もしくは 2に記載の塩基配列)が判明していれば、当業者 においては容易に他方の鎖 (相補鎖)の塩基配列を知ることができる。 siRNAは、当 業者においては市販の核酸合成機を用いて適宜作製することが可能である。また、 所望の RNAの合成については、一般の合成受託サービスを利用することができる。
[0179] さらに、本発明の上記 RNAを発現し得る DNA (ベクター)もまた、本発明の AGTRL1
もしくは PRKCH遺伝子の発現を抑制し得る化合物の好ましい態様に含まれる。例え ば、本発明の上記二本鎖 RNAを発現し得る DNA (ベクター)は、該ニ本鎖 RNAの一 方の鎖をコードする DNA、および該ニ本鎖 RNAの他方の鎖をコードする DNA力 そ れぞれ発現し得るようにプロモーターと連結した構造を有する DNAである。本発明の 上記 DNAは、当業者においては、一般的な遺伝子工学技術により、適宜作製するこ とができる。より具体的には、本発明の RNAをコードする DNAを公知の種々の発現べ クタ一へ適宜挿入することによって、本発明の発現ベクターを作製することが可能で ある。
[0180] また、本発明の発現抑制物質には、例えば、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発 現調節領域 (例えば、プロモーター領域)と結合することにより、 AGTRL1もしくは PRK CH遺伝子の発現を抑制する化合物が含まれる。該化合物は、例えば、 AGTRL1もし くは PRKCH遺伝子のプロモーター DNA断片を用いて、該 DNA断片との結合活性を 指標とするスクリーニング方法により、取得することが可能である。また、当業者にお いては、所望の化合物について、本発明の AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現を 抑制する力否かの判定を、公知の方法、例えば、レポーターアツセィ法等により適宜 実施することができる。
[0181] また、本発明者らは、 AGTRL1遺伝子上に存在する多型変異「SNP4」、「SNP9」によ つて該 AGTRL1遺伝子の発現が亢進することを示した。
[0182] これら多型変異は転写調節因子である Splと結合する DNA領域中に存在する。これ らの多型変異によって、該 DNA領域に対する Spl転写因子の結合活性が変化し、 AG TRL1遺伝子の発現が亢進する。
[0183] 従って、上記多型を含む AGTRL1遺伝子の DNA領域と、 Spl転写因子との結合活 性を低下させる化合物は、 AGTRL1遺伝子の転写を抑制するものと考えられ、本発 明の上記発現抑制物質の好ましい態様の一つと言える。上記 DNA領域としては、例 えば、多型部位「SNP4」または「SNP9」を含む DNA領域を挙げることができる。
[0184] また、本発明の多型変異を有する DNA配列であって、 Spl転写因子との結合活性 が変化した DNA配列を含むポリヌクレオチドは、例えば、後述の動脈硬化性疾患の 治療もしくは予防のための薬剤のスクリーニング方法に、好適に用いることが可能で
あり有用である。例えば、以下の(a)または (b)のポリヌクレオチドは、動脈硬化性疾 患の治療薬のスクリーニングのための用途に利用できる。
(a)配列番号: 1に記載の DNA配列の部分断片ポリヌクレオチドであって、 42509位 、または 39353位の多型部位を含むポリヌクレオチド
(b)上記 (b)のポリヌクレオチド配列において 1もしくは複数の塩基が付加、欠失もしく は置換された塩基配列力 なるポリヌクレオチドであって、 Spl転写因子との結合能が 上昇して!/、ることを特徴とするポリヌクレオチド
[0185] さらに、本発明の多型変異を有する DNAによってコードされるタンパク質であって、 PRKCHタンパク質の自己リン酸ィ匕活性が亢進したタンパク質を含むポリペプチドは、 例えば、後述の動脈硬化性疾患の治療もしくは予防のための薬剤のスクリーニング 方法に好適に利用することができる。例えば、以下の(a)または (b)のポリペプチドは 、動脈硬化性疾患の治療薬のスクリーニングのための用途に利用可能である。
(a) PRKCHタンパク質の全長もしくは断片ポリペプチドであって、 PRKCHタンパク質 のアミノ酸配列において 374位のパリンがイソロイシンへ置換されたポリペプチド
(b)上記 (b)のポリペプチド配列にぉ 、て 1もしくは複数の塩基が付加、欠失もしくは 置換された塩基配列力 なるポリペプチドであって、自己リン酸ィ匕活性が上昇してい ることを特徴とするポリペプチド
[0186] また本発明は、 AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質の機能抑制物質を有効成分とし て含有する、動脈硬化性疾患治療薬を提供する。
[0187] 本発明における AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質の機能抑制物質としては、例え ば、以下の(a)または (b)の化合物を挙げることができる。
(a) AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質に結合する抗体
(b) AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質に結合する低分子化合物
[0188] 本発明者らによって、 PRKCHタンパク質の自己リン酸化活性の亢進と動脈硬化性 疾患との関連性が見出された。従って、本発明における上記機能抑制物質としては 、 PRKCHタンパク質の自己リン酸ィ匕活性の亢進を阻害する抗体もしくは低分子化合 物を好適に例示することができる。
[0189] AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質に結合する抗体 (抗 AGTRL1タンパク質抗体、も
しくは抗 PRKCHタンパク質抗体)は、当業者に公知の方法により調製することが可能 である。ポリクローナル抗体であれば、例えば、次のようにして得ることができる。天然 の AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質、あるいは GSTとの融合タンパク質として大腸菌 等の微生物において発現させたリコンビナント (組み換え) AGTRL1もしくは PRKCHタ ンパク質、またはその部分ペプチドをゥサギ等の小動物に免疫し血清を得る。これを 、例えば、硫安沈殿、プロテイン A、プロテイン Gカラム、 DEAEイオン交換クロマトダラ フィ一、 AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質や合成ペプチドをカップリングしたァフィ ユティーカラム等により精製することにより調製する。また、モノクローナル抗体であれ ば、例えば、 AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質若しくはその部分ペプチドをマウスな どの小動物に免疫を行い、同マウスより脾臓を摘出し、これをすりつぶして細胞を分 離し、該細胞とマウスミエローマ細胞とをポリエチレングリコール等の試薬を用いて融 合させ、これによりできた融合細胞 (ノヽイブリドーマ)の中から、 AGTRL1もしくは PRKC Hタンパク質に結合する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイ プリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウスより腹水を回収し、得られたモノクロ一 ナル抗体を、例えば、硫安沈殿、プロテイン A、プロテイン Gカラム、 DEAEイオン交換 クロマトグラフィー、 AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質や合成ペプチドをカップリング したァフィユティーカラム等により精製することで、調製することが可能である。
[0190] 本発明の抗体の形態には、特に制限はなぐ本発明の AGTRL1もしくは PRKCHタン ノ ク質に結合する限り、上記ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のほかに、ヒト 抗体、遺伝子組み換えによるヒト型化抗体、さらにその抗体断片や抗体修飾物も含ま れる。
[0191] 抗体取得の感作抗原として使用される本発明の AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質 は、その由来となる動物種について制限されないが、哺乳動物、例えばマウス、ヒト由 来のタンパク質が好ましぐ特にヒト由来のタンパク質が好ましい。ヒト由来のタンパク 質は、当業者においては、本明細書に開示される遺伝子配列又はアミノ酸配列を用 いて、適宜、取得することができる。
[0192] 本発明において、感作抗原として使用されるタンパク質は、完全なタンパク質あるい はタンパク質の部分ペプチドであってもよい。タンパク質の部分ペプチドとしては、例
えば、タンパク質のアミノ基 (N)末端断片やカルボキシ (C)末端断片あるいは中央部 のキナーゼ活性部位等が挙げられる。本明細書における「抗体」とはタンパク質の全 長又は断片に反応する抗体を意味する。
[0193] 本発明における抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、 一本鎖抗体 (scFv)(Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-83; Th e Pharmacology of Monoclonal Antibody, Vol. 113, Rosenburg and Moore ed., Sprin ger Verlag (1994) pp. 269-315)、ヒト化抗体、多特異性抗体 (LeDoussal et al. (1992) Int. J. Cancer Suppl. 7: 58-62; Paulus (1985) Behring Inst. Mitt. 78: 118-32; Millste in and Cuello (1983) Nature 305: 537-9; Zimmermann (1986) Rev. Physiol. Biochem. Pharmacol. 105: 176-260; VanDijk et al. (1989) Int. J. Cancer 43: 944-9)、並びに 、 Fab, Fa 、 F(ab')2、 Fc、 Fv等の抗体断片が含まれる。このような抗体は必要に応じ 、 PEG等により修飾されていてもよい。また、 /3 -ガラタトシダーゼ、マルトース結合タン パク質、 GST、緑色蛍光タンパク質 (GFP)等との融合タンパク質として製造して、二次 抗体を用いずに検出できるようにすることも可能である。また、ピオチン等により抗体 を標識することによりアビジン、ストレプトアビジン等を用いて抗体の検出、回収を行 V、得るように改変することちでさる。
[0194] また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイプリドーマを得る他に、ヒトリンパ球 、例えば EBウィルスに感染したヒトリンパ球を in vitroでタンパク質、タンパク質発現細 胞又はその溶解物で感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久***能を有するミエロー マ細胞、例えば U266と融合させ、タンパク質への結合活性を有する所望のヒト抗体を 産生するハイプリドーマを得ることもできる。
[0195] 本発明の AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質に対する抗体は、 AGTRL1もしくは PR KCHタンパク質と結合することにより、該タンパク質の機能を抑制し、例えば、脳梗塞 等の動脈硬化性疾患の治療や改善効果が期待される。得られた抗体を人体に投与 する目的 (抗体治療)で使用する場合には、免疫原性を低下させるため、ヒト抗体ゃヒ ト型抗体が好ましい。
[0196] さらに本発明は、 AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質の機能を抑制し得る物質とし て、 AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質に結合する低分子量物質 (低分子化合物)も
含有する。本発明の AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質に結合する低分子量物質は 、天然または人工の化合物であってもよい。通常、当業者に公知の方法を用いること によって製造または取得可能な化合物である。また本発明の化合物は、後述のスクリ 一二ング方法によって、取得することも可能である。
[0197] 上記 (b)の AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質に結合する低分子化合物には、例え ば、 AGTRL1もしくは PRKCHに対して親和性が高い化合物が含まれる。
[0198] さらに、本発明の AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質の機能を抑制し得る物質として 、 AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質に対してドミナントネガティブの性質を有する AG TRL1もしくは PRKCHタンパク質変異体を挙げることができる。「AGTRL1もしくは PRK CHタンパク質に対してドミナントネガティブの性質を有する該タンパク質変異体」とは 、該タンパク質をコードする遺伝子を発現させることによって、内在性の野生型タンパ ク質の活性を消失もしくは低下させる機能を有するタンパク質を指す。
[0199] また、既に AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質の機能を阻害することが知られている 物質 (化合物)は、本発明の上記「AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質の機能を抑制 し得る物質」の具体例として、好適に示すことができる。
[0200] また、本発明の機能抑制物質は、本発明の AGTRL1もしくは PRKCHの有する活性 を指標とするスクリーニング方法により、適宜、取得することができる。
[0201] また、 PRKCHタンパク質の自己リン酸ィ匕活性またはプロテインキナーゼ活性を阻害
(抑制)する物質もまた、本発明の動脈硬化性疾患治療薬として有用である。従って 本発明は、 PRKCHタンパク質の自己リン酸ィ匕活性またはプロテインキナーゼ活性を 阻害する物質を有効成分として含有する、動脈硬化性疾患治療薬を提供する。
[0202] また本発明は、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現量もしくは該遺伝子によって コードされるタンパク質の活性を低下させる化合物を選択することを特徴とする、動脈 硬化性疾患の治療もしくは予防のための薬剤 (候補化合物)のスクリーニング方法を 提供する。
[0203] 本発明のスクリーニング方法の一態様は、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現レ ベルを指標とする方法である。 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現レベルを低下 させる化合物は、動脈硬化性疾患治療もしくは予防のための薬剤となることが期待さ
れる。
[0204] 本発明の上記方法は、例えば、以下の(a)〜(c)の工程を含む、動脈硬化性疾患 の治療もしくは予防のための薬剤のスクリーニング方法である。
(a) AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子を発現する細胞に、被検化合物を接触させるェ 程
(b)該 AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子の発現レベルを測定する工程
(c)被検化合物の非存在下にお ヽて測定した場合と比較して、該発現レベルを低下 させる化合物を選択する工程
[0205] 本方法においては、まず AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子を発現する細胞に、被検 化合物を接触させる。用いられる「細胞」の由来としては、ヒト、マウス、ネコ、ィヌ、ゥ シ、ヒッジ、鳥など、ペット、家畜等に由来する細胞が挙げられるが、これら由来に制 限されない。「AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子を発現する細胞」としては、内因性の A GTRLlもしくは PRKCH遺伝子を発現して!/、る細胞、または外来性の AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子が導入され、該遺伝子が発現して!/ヽる細胞を利用することができる。 外来性の AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子が発現した細胞は、通常、 AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子が挿入された発現ベクターを宿主細胞へ導入することにより作製する ことができる。該発現べクタ一は、一般的な遺伝子工学技術によって作製することが できる。
[0206] 本方法に用いる被検化合物としては、特に制限はない。例えば、天然化合物、有 機化合物、無機化合物、タンパク質、ペプチドなどの単一化合物、並びに、化合物ラ イブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生 物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物等が挙げられるが、これらに限定されない
[0207] AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子を発現する細胞への被検化合物の「接触」は、通常 、 AGTRLlもしくは PRKCH遺伝子を発現する細胞の培養液に被検化合物を添加する ことによって行うが、この方法に限定されない。被検化合物がタンパク質等の場合に は、該タンパク質を発現する DNAベクターを、該細胞へ導入することにより、「接触」を 行うことができる。
[0208] 本方法にお!、ては、次!、で、該 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の発現レベルを測 定する。ここで「遺伝子の発現」には、転写および翻訳の双方が含まれる。遺伝子の 発現レベルの測定は、当業者に公知の方法によって行うことができる。例えば、 AGT RL1もしくは PRKCH遺伝子を発現する細胞力 mRNAを定法に従って抽出し、この m RNAを铸型としたノーザンハイブリダィゼーシヨン法または RT-PCR法を実施すること によって該遺伝子の転写レベルの測定を行うことができる。また、 AGTRL1もしくは PR KCH遺伝子を発現する細胞からタンパク質画分を回収し、 AGTRL1もしくは PRKCH タンパク質の発現を SDS-PAGE等の電気泳動法で検出することにより、遺伝子の翻 訳レベルの測定を行うこともできる。さら〖こ、 AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質に対 する抗体を用いて、ウェスタンブロッテイング法を実施することにより該タンパク質の発 現を検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うことも可能である。 AGTR L1もしくは PRKCHタンパク質の検出に用いる抗体としては、検出可能な抗体であれ ば、特に制限はないが、例えばモノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体の両 方を利用することができる。
[0209] 本方法にお!、ては、次 、で、被検化合物を接触させな 、場合 (対照)と比較して、 該発現レベルを低下させる化合物を選択する。低下させる化合物は、動脈硬化性疾 患の治療もしくは予防のための薬剤となる。
[0210] 本発明のスクリーニング方法の他の態様は、本発明の AGTRL1もしくは PRKCH遺 伝子の発現レベルを低下させる化合物を、レポーター遺伝子の発現を指標として同 定する方法である。
[0211] 本発明の上記方法は、例えば、以下の(a)〜(c)の工程を含む、動脈硬化性疾患 の治療もしくは予防のための薬剤のスクリーニング方法である。
(a) AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写調節領域とレポーター遺伝子とが機能的 に結合した構造を有する DNAを含む細胞と、被検化合物を接触させる工程
(b)該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程
(c)被検化合物の非存在下にお ヽて測定した場合と比較して、該発現レベルを低下 させる化合物を選択する工程
[0212] 本方法においては、まず、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写調節領域とレポ
一ター遺伝子とが機能的に結合した構造を有する DNAを含む細胞または細胞抽出 液と、被検化合物を接触させる。ここで「機能的に結合した」とは、 AGTRL1もしくは PR KCH遺伝子の転写調節領域に転写因子が結合することにより、レポーター遺伝子の 発現が誘導されるように、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写調節領域とレポータ 一遺伝子とが結合していることをいう。従って、レポーター遺伝子が他の遺伝子と結 合しており、他の遺伝子産物との融合タンパク質を形成する場合であっても、 AGTRL 1もしくは PRKCH遺伝子の転写調節領域に転写因子が結合することによって、該融 合タンパク質の発現が誘導されるものであれば、上記「機能的に結合した」の意に含 まれる。 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の cDNA塩基配列に基づいて、当業者にお いては、ゲノム中に存在する AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写調節領域を周知 の方法により取得することが可能である。
[0213] 本方法に用いるレポーター遺伝子としては、その発現が検出可能であれば特に制 限はなぐ例えば、 CAT遺伝子、 lacZ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、および GFP遺 伝子等が挙げられる。「AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写調節領域とレポーター 遺伝子とが機能的に結合した構造を有する DNAを含む細胞」として、例えば、このよ うな構造が挿入されたベクターを導入した細胞が挙げられる。このようなベクターは、 当業者に周知の方法により作製することができる。ベクターの細胞への導入は、一般 的な方法、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、電気パルス穿孔法、リボフヱクトァミン 法、マイクロインジェクション法等によって実施することができる。「AGTRL1もしくは PR KCH遺伝子の転写調節領域とレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有す る DNAを含む細胞」には、染色体に該構造が挿入された細胞も含まれる。染色体へ の DNA構造の挿入は、当業者に一般的に用いられる方法、例えば、相同組み換えを 利用した遺伝子導入法により行うことができる。
[0214] 「AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写調節領域とレポーター遺伝子とが機能的 に結合した構造を有する DNAを含む細胞抽出液」とは、例えば、市販の試験管内転 写翻訳キットに含まれる細胞抽出液に、 AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写調節 領域とレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有する DNAを添加したものを 挙げることができる。
[0215] 本方法における「接触」は、「AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写調節領域とレポ 一ター遺伝子とが機能的に結合した構造を有する DNAを含む細胞」の培養液に被 検化合物を添加する、または該 DNAを含む上記の市販された細胞抽出液に被検化 合物を添加することにより行うことができる。被検化合物がタンパク質の場合には、例 えば、該タンパク質を発現する DNAベクターを、該細胞へ導入することにより行うこと も可能である。
[0216] 本方法にお!、ては、次 、で、該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する。レポ 一ター遺伝子の発現レベルは、該レポーター遺伝子の種類に応じて、当業者に公知 の方法により測定することができる。例えば、レポーター遺伝子が CAT遺伝子である 場合には、該遺伝子産物によるクロラムフエ-コールのァセチルイ匕を検出することに よって、レポーター遺伝子の発現量を測定することができる。レポーター遺伝子が lac Z遺伝子である場合には、該遺伝子発現産物の触媒作用による色素化合物の発色 を検出することにより、また、ルシフェラーゼ遺伝子である場合には、該遺伝子発現 産物の触媒作用による蛍光化合物の蛍光を検出することにより、さらに、 GFP遺伝子 である場合には、 GFPタンパク質による蛍光を検出することにより、レポーター遺伝子 の発現量を測定することができる。
[0217] 本方法にお!、ては、次 、で、測定したレポーター遺伝子の発現レベルを、被検化 合物の非存在下において測定した場合と比較して、低下 (抑制)させる化合物を選択 する。低下 (抑制)させる化合物は、動脈硬化性疾患の治療もしくは予防のための薬 剤となる。
[0218] また、本発明の上記スクリーニング方法における AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子は 、通常、野生型の遺伝子を用いることができる力 本発明者らによって見出された発 現亢進に関与する多型変異(「SNP4」、「SNP9」 )を含む AGTRL1遺伝子 (変異型 AGT RL1遺伝子)を好適に使用することも可能である。
[0219] この変異型 AGTRL1遺伝子は、もともと遺伝子の発現が亢進していることから、該遺 伝子の発現を抑制する (低下させる)物質のスクリーニングに好適である。また、実際 の脳梗塞患者において見出された変異型 AGTRL1遺伝子について、その亢進され た遺伝子発現を抑制する (低下させる)物質は、格好の脳梗塞等の動脈硬化性疾患
の予防もしくは治療薬となることが期待される。
[0220] 本発明のスクリーニング方法の他の態様は、 AGTRL1遺伝子上の Spl転写因子との 結合 DNA領域と、 Spl転写因子との相互作用活性 (結合活性)を指標とする方法であ る。
[0221] 本発明の上記方法は、例えば、以下の(a)〜(c)の工程を含む、動脈硬化性疾患 の治療もしくは予防のための薬剤のスクリーニング方法である。
(a) AGTRLl遺伝子上の塩基部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列におけ る 42509位または 39353位の部位を含む DNA領域からなるポリヌクレオチド、および S pi転写因子と、被検化合物とを接触させる工程
(b)前記ポリヌクレオチドと Spl転写因子との結合活性を測定する工程
(c)被検化合物の非存在下にお!ヽて測定した場合と比較して、前記結合活性を低下 させる化合物を選択する工程
[0222] 本方法においては、まず、 AGTRL1遺伝子上の塩基部位であって、配列番号: 1に 記載の塩基配列における 42509位または 39353位の部位を含む DNA領域力 なるポ リヌクレオチド、および Spl転写因子と、被検化合物を接触させる。
[0223] 次 ヽで該ポリヌクレオチドと Spl転写因子の相互作用活性 (結合活性)を測定する。
この相互作用活性は、当業者においては公知の種々の方法を利用して、評価するこ とが可能である。
[0224] 一例を示せば、シフトアツセィにより相互作用活性を評価することができる。具体的 には、後述の実施例 9に記載の方法によって適宜実施することができる。
[0225] さらに、被検化合物の非存在下において測定した場合と比較して、相互作用活性 を低下 (抑制)させる化合物を選択する。低下 (抑制)させる化合物は動脈硬化性疾 患治療のための薬剤となる。
[0226] 本発明のスクリーニング方法のさらに他の態様は、 PRKCHタンパク質の自己リン酸 化活性もしくはプロテインキナーゼ活性を指標とする方法である。該活性を低下させ る化合物は、動脈硬化性疾患に対する治療効果が期待される。
[0227] 本発明の上記方法は、例えば、以下の(a)〜(c)の工程を含む、動脈硬化性疾患 の治療もしくは予防のための薬剤のスクリーニング方法である。
(a) PRKCHタンパク質と、被検化合物とを接触させる工程
(b) PRKCHタンパク質の自己リン酸ィ匕活性もしくはプロテインキナーゼ活性を測定す る工程
(c)被検化合物の非存在下にお!ヽて測定した場合と比較して、前記活性を低下させ る化合物を選択する工程
[0228] 本方法にお!、ては、まず、 PRKCHタンパク質と、被検化合物を接触させる。この「接 触」は、例えば、 PRKCHタンパク質を発現させた細胞と被検化合物を接触させること により実施することも可能である。
[0229] 次 、で PRKCHタンパク質の自己リン酸ィ匕活性もしくはプロテインキナーゼ活性を測 定する。上記方法において使用する PRKCHタンパク質は、好ましくは、自己リン酸ィ匕 活性が亢進した変異タンパク質であることが好ましい。該変異タンパク質としては、例 えば、 PRKCHタンパク質のアミノ酸配列において 374位のパリンがイソロイシンへ置換 されたタンパク質変異体を好適に示すことができる。また、変異を含まない野生型タ ンパク質を利用することも可能である。さらに、 PRKCHタンパク質においてリン酸ィ匕を 受ける部位を含む部分ポリペプチド、もしくは該部位を含む変異ポリペプチドであつ てもよい。
[0230] なお PRKCHタンパク質における自己リン酸ィ匕されるアミノ酸部位としては、例えば、 T510 (510番目のスレオ-ン)、 T650 (650番目のスレオ-ン)、 S672 (672番目のセリン )を挙げることができる。このうち 1箇所 (T510位)が PKD1でリン酸ィ匕され、残りの 2箇 所(T650位、 S672位)が自己リン酸化されることが知られている(B.D.Gomperts et al., 上代淑人監訳、「シグナル伝達」、メディカル'サイエンス 'インターナショナル社、 p2 06)。本発明のスクリーニング方法の好ましい態様においては、上記のアミノ酸部位 の自己リン酸ィ匕状態を指標とする方法である。
[0231] リン酸ィ匕活性の測定は当業者に公知の手法によって行うことができる力 例えば、リ ン酸ィ匕特異的抗体を用いたウェスタンプロット法等により測定することができる。より具 体的には、リン酸ィ匕活性の測定は、後述の実施例に記載の方法によって適宜実施 することができる。
[0232] 上記方法においてはさらに、被検化合物の非存在下において測定した場合と比較
して、前記リン酸ィ匕活性を低下させる化合物を選択する。このようにして選択されたィ匕 合物は、 PRKCHタンパク質の自己リン酸ィ匕活性もしくはプロテインキナーゼ活性を抑 制する結果、動脈硬化性疾患に対する治療もしくは予防効果を発揮するものと期待 される。
[0233] また、上記の各種スクリーニング方法において使用される化合物もまた、動脈硬化 性疾患の治療もしくは予防のための薬剤のスクリーニング用試薬として有用である。
[0234] 本発明の上記試薬の具体例としては、以下の(a)〜(d)のいずれかを有効成分とし て含有する、動脈硬化性疾患の治療もしくは予防のための薬剤のスクリーニング用 試薬を挙げることができる。
(a) AGTRL1もしくは PRKCH遺伝子の転写産物にハイブリダィズするオリゴヌクレオチ ド、
(b) AGTRL1もしくは PRKCHタンパク質を認識する抗体
(c) AGTRLl遺伝子上の塩基部位であって、配列番号: 1に記載の塩基配列におけ る 39353位または 42509位の部位を含む DNA領域からなるポリヌクレオチド
(d) PRKCHタンパク質のアミノ酸配列において 374位のパリンがイソロイシンへ置換 されたアミノ酸配列を有する PRKCHタンパク質変異体
[0235] さらに本発明は、本発明の検査方法またはスクリーニング方法を実施するために用 Vヽられる各種薬剤 ·試薬等を含むキットを提供する。
[0236] 本発明のキットは、例えば、本発明の上述の各種試薬の中から、実施する検査方 法あるいはスクリーニング方法に合わせて適宜選択することができる。例えば、本発 明のキットは、本発明の遺伝子、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体等を構成要素 とすることができる。より具体的には、(1)本発明のプライマーオリゴヌクレオチド、およ び PCR用反応試薬 (Taqポリメラーゼ、緩衝液等)、または(2)本発明のプローブオリ ゴヌクレオチド、およびノヽイブリダィゼーシヨン用緩衝液、(3)本発明の抗 AGTRL1タ ンパク質抗体もしくは抗 PRKCHタンパク質抗体、および ELISA用試薬、等を例示する ことができる。
さらに、本発明のキットには、対照サンプル、緩衝液、使用方法を記載した指示書 等を適宜含めることができる。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に 組み入れられる。
[0237] また本発明は、本発明の薬剤を被検者へ投与する工程を含む、動脈硬化性疾患 を治療もしくは予防する方法に関する。本発明の薬剤は、安全とされている投与量の 範囲内において、ヒトを含む哺乳動物に対して、必要量が投与される。本発明の薬剤 の投与量は、剤型の種類、投与方法、患者の年齢や体重、患者の症状等を考慮して 、最終的には医師または獣医師の判断により適宜決定することができる。
実施例
[0238] 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に 制限されるものではない。
[0239] < PRKCH遺伝子に関する各種実験の材料および手法等 >
被験奪闭
ゲノムワイド.ケースコントール研究に関しては、九州大学の 7つの関連病院からの 脳梗塞の症例を登録した。症例はすべて、脳卒中に熟練した内科医により、臨床情 報および脳画像検査を用いて診断 '分類された。脳梗塞のサブタイプは、米国国立 神経疾患 '脳卒中研究所によって提唱された脳血管疾患分類 Il Whisnant JP, et al. , Stroke; 21: 637-676 (1990).)、ならびに急性脳卒中治療における Org 10172の治 験(TOAST)試験(Adams, HP Jr.et al., Stroke 24, 35-41 (1993).)および脳塞栓症タ スクフォース(No authors listed Arch.Neurol. 43, 71-84 (1986).)の診断基準に基づ いて判定した。
[0240] 対照被験者は久山町研究の参加者力 組み入れた。久山町研究は、 1961年に設 定された地域集団を用いた心血管疾患に関する進行中の前向き疫学研究である。こ の研究の詳細は以前に記載されている(Kubo, M. et al., Stroke 34, 2349-2354 (200 3).、 Kiyohara, Stroke. 34, 2343-2348 (2003).)。 2002年から 2003年までの間に、本研 究のためのスクリーニング調査を行った。手短に述べると、 40歳以上の参加者計 3,32 8例 (参加率 78%)が健康状態の検査に参加することに同意し、包括的評価を受けた 。脳卒中または冠動脈疾患の既往のある被験者を除外した後に、本発明者らは年齢 (5歳以内)および性別を一致させた対照被験者を、乱数を用いて 1: 1に対応するよう
に選択した。
[0241] 脳梗塞の発生に関する rs2230500のリスクを検討するために、本発明者らは、 1988 年に設定された久山町研究のコホート集団を用いた(Kubo, M. et al., Stroke 34, 23 49-2354 (2003).) o手短に述べると、 1988年に 40歳以上の久山町住民 2,742人が健 康状態の検査に参加した (参加率 80.0%)。脳卒中または冠動脈疾患の既往のある 被験者を除外した後に、 2,637人の参加者を心血管疾患または死亡の発生に関して 連続的に追跡した。このコホート対象のうち、 2002年には 1,683人の対象が検査に参 加した。
[0242] 本発明者らは、すべての試験対象から、九州大学大学院医学研究院、東京大学医 科学研究所および各参加病院の倫理審査委員会によって承認された通りに署名に よるインフォームド 'コンセントを得た。
[0243] SNPジエノタイピング
ゲノム DNAは末梢血白血球力も標準的なプロトコールによって抽出した。 SNPのジ エノタイピングは、 PCRを用いる複合的インベーダーアツセィ(Third Wave Technologi es, Madison, Wis.)を Ohnishiらの記載の通り (Ohnishi Y, et al" J. Hum. Genet. 46,4 71-477 (2001).)に用いる力、または ABI3700キヤビラリ一式シークェンサ一(Applied Biosystems)を標準的なプロトコールに従って用いる PCR産物の直接シークェンシン グによって行った。
[0244] 細胞谘着、トランスフ クシヨンおよび免疫沈降
293T細胞は、 10%ゥシ胎仔血清および 1 %抗生物質をカ卩えた DMEM中において 3 7°C、 5%CO下で維持した。完全長 PKC 7? - 374Vを発現するプラスミドは、ヒト胸腺 cD
2
NAを p3xFLAG- CMV-14発現ベクター(Sigma)中にクローユングすることによって構 築した。完全長 PKC 7? -3741を発現するプラスミドは、 p3xFLAG-CMV-14-PKC η -37 4Vぺクター力ら、 QuikChange XL Site-Directed Mutagenesisゃット (Stratagene) 製 造元の指示に従って用いて構築した。一過性トランスフエクシヨンのためには、 293T 細胞を 15 cm培養皿にプレーティングしてほぼ集密化させた上で、 FuGENE6 (Roche) を製造元の指示に従って用いて p3xFLAG- CMV-14-PKC η -374Vおよび p3xFLAG- CMV-14-PKC η -3741をトランスフエタトした。 48時間後に細胞を収集し、 1% Nonidet
P- 40、 150 mM NaCl、 50 mM Tris- HC1、 pH 8.0、 1 mMフエ-ルメチルスルホ -ルフ ルオリド、 1 mMジチオトレイトール、 0.1 %プロテアーゼ阻害薬混合物セット III (Calbioc hem)を含むライシスバッファ一中にて 4°Cで溶解させた。氷上で 30分間インキュベー トした後に、溶解液を 15,000 rpm、 4°Cで 15分間遠心した。上清を、 rec-タンパク質 G- Sepharose 4B結合物(Zymed)およびマウス正常 IgGによる 30分間の前処理後に、抗 F lag M2ァフィ二ティーゲル(Sigma)とともに 4°Cで 3〜4時間インキュベートした。インキ ュベーシヨン後に、ゲルをライシスバッファーで 2回、 1 X TBSバッファーで 1回洗浄し、 3 X Flagペプチド(Sigma) 15 μ gを添加することによって Flag標識タンパク質を溶出さ せた。免疫沈降物の純度および量はクーマシーブリリアントブルー染色によって評価 した。タンパク質濃度は Bradford法によって測定した。
[0245] PKC活件および自己リン酸化アツセィ
PKC自己リン酸ィ匕活性およびキナーゼ活性は、 Ikutaらが記載した方法に従って測 定した(Ikuta, T. et al" Cell Growth Diff. 5, 943-947 (1994).)。 PKC自己リン酸化ァ ッセィに関しては、モッタ、 PKC 7? -374Vおよび PKC 7? -3741の免疫沈降物を、 20 mM Tris— HCl (pH 7.5)、 5 mM MgSO、 1 mM EGTAおよび 5 μ Ciの [ γ— 32P]ATPを 10 μ Μ
4
ホスファチジルセリン(PS、 Sigma)および 100 nMホルボール- 12, 13-ジブチレート(PD Bu、 Sigma)とともに含む合計容積 50 1の反応混合物中において指定の期間にわた り 30°Cでインキュベートした上で、 SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィ一に供した。 プロテインキナーゼ活性は、 [ Ί - 32Ρ]ΑΤΡからのミエリン塩基性タンパク質 (ΜΒΡ)ぺプ チド (Sigma)への32 Ρ取り込みによって測定した。インキュベーション混合物には、合計 容積 50 1中に、 20 mM Tris- HCl (pH 7.5)、 5 mM MgSO、 1 mM EGTAゝ 100 ^ M A
4
TP、 1 μ Ciの [ γ -32P]ATP、 10 g MBPペプチドおよび PKC η免疫沈降物を、 10 μ Μ PSおよび 100 nM PDBuとともに含めた。 30°Cでの 3分間のインキュベーションを行った 後に、 P81 phosphocellulose square (Upstate)に直接適用することによって反応を停 止させ、その後に 75 mMリン酸で洗浄した上で放射能をカウントした。活性 1単位は、 ATPから MBPへの放射性リン酸 1 nmolZ分の取り込みと定義した。
[0246] リアルタイム PCRを用いた PRKCH発現の定量
本発明者らは、 ABI 7700 (Applied Biosystems)を SYBR Premix ExTag (TaKaRa)とと
もに製造元の指示に従って用いて、リアルタイム定量的 PCRを行った。種々の組織由 来のヒト全 RNA (Clonetech)を購入し、オリゴ d (T) プライマーおよび Superscript III
12-18
逆転写酵素(Invitrogen)を用いて 1 μ gの全 RNAにより単鎖 cDNAを合成した。 PRKC H mRNAの相対的発現は、製造元により記載されている標準曲線法を用いることによ り、同じ cDNA中のベータァクチンの量に対して標準化した。
[0247] 冠動脈の免疫組織化学枪杳および形態 f 測解析
久山町の住民であった年齢 68〜91 (81.1 ±6.2)歳の日本人患者 16例から、死亡 16 時間以内に九州大学での剖検時に心臓を入手した (男性 8例および女性 8例)。冠動 脈に力-ユーレを揷入し、 0.1 mol/Lリン酸緩衝食塩水、 pH 7.4で洗浄した上で、 4% (wt/vol)パラホルムアルデヒド(0.1 mol/Lリン酸ナトリウム、 pH 7.4中) 1 Lを 100 mmH gで灌流した。続、て、心臓を 4%パラホルムアルデヒド中に 4°Cで少なくとも 24時間浸 潰した。右冠動脈および左前下行枝冠動脈を心臓の表面から切除し、長軸に対して 直交方向に 3 mm間隔で切断した上でパラフィン中に包埋した。 60個のブロックを入 手し、 3 m厚連続切片を直ちに作成した。各ブロック力もの切片に対して、へマトキ シリン.ェォジン染色、エラスチカ'ワンギーソン染色およびマッソントリクローム染色、 ならびに免疫組織化学検査を連続的に行った。 AHAの Committee on Vascular Lesi ons of the council on Arteriosclerosis【こよって ロ昌 れた定 ^ (Stary, Hし. et al., Ci rculation. 92, 1355-74 (1995).)に従い、各切片のァテローム硬化病変のタイプを慎 重に分類した。
[0248] 免疫組織化学検査は Nakanoらが記載した通りに行った(Nakano, T. et al., Hum Pa thol. 36, 330-40 (2005).)。手短に述べると、脱パラフィン処理した切片を 3%脱脂乳 とともにインキュベートした上で、ヒト PKC η (Santa Cruz)、内皮細胞(抗ヒト CD31、 Da ko)、単球 Zマクロファージ(抗ヒト CD68、 Dako)および平滑筋細胞(抗ヒト α - SMA、 Si gma)に対する一次抗体に続いて、ペルォキシダーゼ標識した二次抗体 (Dako)とィ ンキュペートした。このスライドを 3,3'-ジァミノべンジジン四塩酸(DAB)とともにインキ ュペートし、へマトキシリンで対比染色した。各アイソタイプの非免疫ゥサギ IgGまたは 非免疫マウス IgGも、それぞれの一次抗体の代わりに各陰性対照として用いた。ヒト乳 腺力も採取した組織ブロックを PKC- 7?に関する陽性対照として用いた (Masso-Welc
h, PA. et al., Breast Can. Res. Treat. 68, 211-223 (2001))。 PKC η陽性病変の定量 はァテローム硬化病変のタイプを知らされて 、な 、単一の観察者が行 、、ァテローム 硬化内膜における陽性領域を判定することによって分析した。すべての画像の取り 込みおよび解析は米国国立衛生研究所(National Institute of Health)の画像ソフト ウェアによって行った。
[0249] 統計分析
別記する場合を除き、データは平均士 sdとして提示した。関連性および Hardy-Wei nberg平衡に関する評価は、カイ二乗検定および Fisherの直接法によって行った。連 鎖不平衡指数、 Δ指数の算出および図 Idの描写は Tokuhiroらが記載した通りに行 つた(Tokuhiro, S. et al., Nat. Genet. 35, 341-348 (2003).)。多重検定の調整のため に、本発明者らは SAS9.12ソフトウェア中の MULTTEST法を用いて、ランダム並べ替 え検定を 10,000回繰り返し行った。 rs2230500遺伝子型による脳梗塞の 14年間の発 生率の差に関しては、年齢および性別に関する調整後に Cox比例ハザードモデルを 用いて評価した。臨床的危険因子の調整のためには、 SASソフトウェアにより、ケース コントロール研究に関してはロジスティック回帰モデルを用い、前向きコホート研究に 関しては Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。動脈ァテローム硬化のグレード間 での PKC η陽性面積の比較に関しては、 Bonferroni補正を伴う Spearmanの順位相関 法によって解析した。
[0250] 〔実施例 1〕 遺伝子ベースの SNPマーカーを用いた大規模ケースコントロール研究 脳梗塞に対する感受性と関連性のある遺伝子を同定するために、本発明者らは、 脳梗塞患者 1, 112例、ならびに年齢および性別が一致する対照被験者 1,112例を用 いて、大規模なゲノムワイドケースコントロール研究を実施した。本ケースコントロール 研究の被験集団の臨床的特徴を表 3に示す。
[0251] [表 3]
ケース コントロール P値
N 1112 1112
年齢 (歳) 70.2 ± 10.0 70.1土 10.1 0.87 男性 (%) 60.7 60.7
脳梗塞サブタイプ
ラクナ (LA) 491
ァテローム血栓性 (AT) 369
LA+AT合計 860
心原性脳塞栓 136
その他 116
高血圧 (%) 78.1 53.7 く 0.0001 高脂血症 (%) 48.3 41.8 0.0024 糖尿病 ( ) 30.4 21.1 く 0.0001
[0252] 本発明者らはまず、 JSNPデータベース(Tsunoda, T. et al., Hum. Mol. Genet. 13, 1623-1632 (2004).)力 選択した遺伝子ベースの 52,608箇所の tag-SNPを用いて、 脳梗塞を有する日本人症例 188例、ならびに年齢および性別が一致する対照例 188 例のジエノタイピングを行った。これらのうち、ジエノタイピングに成功した 48,083箇所 の SNP (全体的な成功率は 91.4%)のアレル頻度を比較し、症例と対照との間で p< 0. 01であった 1 , 098箇所の SNPを同定した。
[0253] 本発明者らは次に、 2回目のスクリーニングで、これらの SNPに関して残りの症例お よび対照のジエノタイピングを行った。被験者を脳梗塞サブタイプ毎に層別化したとこ ろ、ラクナ梗塞群とァテローム血栓性梗塞群とを合計した群と高度の相関性がある SN P力 ^、くつか同定された。これらのうち、染色体 14q22-23上にある PRKCHのイントロン 6中の SNP_15 (IMS-JST140193、 rs3783799)は、ラクナ梗塞(アレル頻度に関して p = 4.73 X 10"6)およびラクナ梗塞群とァテローム血栓性梗塞群とを合計した群 (優性モ デルにおいて p = 7.91 X 10— 6、表 5)と高度の相関性があった。 2回目のスクリーニング でジエノタイピングを行ったすべての SNPを用いた並べ替え検定の後にも、 SNP_15は 依然としてラクナ梗塞 (p = 0.0036)およびラクナ ·ァテローム血栓複合型梗塞 (p = 0.0 063)と関連性があった。このことから、本発明者らは、ラクナ梗塞およびァテローム血 栓性梗塞に対する感受性座位が SNP_15周辺に存在する可能性があると考えた。
[0254] 以下の表 4は、ジエノタイピングを行った PRKCH遺伝子中の SNPの位置(NCBIビル ド 35)を示す。
[0255] [表 4] snp名称 位置 jsnp_id dbSNP rs# ContigAcc ContigPos
SNP— 01 Intron 1 IMS-JST140210 rs3783814 NT_026437 .11 42799673
SNP— 02 Intron 1 IMS-JST140207 rs3783812 NT— 026437. .11 42812443
SNP— 03 Intron 1 IMS-JST140206 rs 1033910 NT— 026437. .11 42816593
SNP— 04 Intron 1 IMS-JST 140205 rs3783810 NT_026437 .11 42817442
SNP一 05 Exon 2 IMS-JST093801 rs3742633 NT— 026437. .1 1 42857722
SNP_06 Intron 2 IMS-JST140204 rs767757 NT-026437. .11 42874127
SNP_07 Intron 2 IMS-JST140203 rs767755 NT— 026437. .11 42874201
SNP— 08 Intron 2 IMS-JST140202 rs2209386 NT— 026437, .11 42884237
SNP— 09 Intron 2 IMS-JST140201 rs3783806 NT—026437. .11 42884263
SNP— 10 Intron 2 IMS-JST140198 rs3783803 NT-026437. .11 42884524
SNP— 11 Intron 2 IMS-JST140196 rs3783801 NT—026437. .11 42900735
SNP— 12 Intron 4 IMS-JST050416 rs2296273 NT—026437. .1 1 42915504
SNP— 13 Intron 5 IMS-JST050417 rs2296274 NT_026437. .11 42916931
SNP— 14 Intron 6 1MS-JST140194 rs3783800 NT—026437. .11 42917986
SNP— 15 Intron 6 IMS-JST140193 rs3783799 NT—026437. , 11 42918969
SNP J 6 Intron 8 IMS-JST050419 rs2296276 NT—026437. .11 42923845
SNP一 17 Exon 9 IMS-JST050420 rs2230500 NT—026437, , 11 42923992
SNP_18 Exon 9 na rs 17098388 NT—026437. .1 1 42923994
SNP— 19 Intron 9 IMS-JST140187 rs959728 NT—026437. .11 42933771
SNP_20 Intron 9 IMS-JST140186 rs3783792 NT—026437. .11 42933890
SNP一 21 Intron 9 IMS-JST140183 rs3783789 NT—026437. .11 42936553
SNP_22 Intron 9 IMS-JST140179 rs3783786 NT_026437. 11 42936977
SNP— 23 Intron 9 IMS-JST140178 rs3783785 NT_026437. 11 42937045
SNP— 24 Intron 9 IMS-JST140171 rs3783778 NT_026437. 1 1 42949333
SNP— 25 Intron 9 IMS-JST140170 rs3783777 NT—026437. 11 42949441
SNP— 26 Intron 9 IMS-JST 140169 rs3783776 NT—026437. 11 42949496
SNP-27 Intron 9 IMS-JST140168 rs912619 NT—026437. 11 42949686
SNP_28 Intron 9 IMS-JST140167 rs3783774 NT_026437. 11 42950854
SNP— 29 Intron 9 IMS-JST140166 rsl536015 NT—026437. 11 42951558
SNP— 30 Intron 10 IMS-JST140165 rs3783772 NT_026437. 11 42952680
SNP_31 Intron 10 IMS-JST140163 rs3783771 NT—026437. 11 42952898
SNP-32 Intron 10 IMS-JST140154 rs3783762 NT_026437. 11 42967956
SNP_33 Intron 10 IMS-JST 140153 rs2245448 NT一 026437. 11 42972568
SNP一 34 Intron 10 IMS- JST140152 rs3783760 NT—026437. 1 1 42972779
SNP— 35 Intron 10 IMS-JST103326 rs 1091680 NT—026437. 11 42983840
SNP— 36 Intron 10 IMS-JST103327 rs3751292 NT—026437. 11 42984053
SNP— 37 Intron 10 IMS-JST 103328 rs3751293 NT_026437. 11 42984152
SNP_38 Intron 10 IMS-JST 103329 rs2252267 NT—026437. 11 42984437
SNP— 39 Intron 10 IMS-JSTl 03330 rs3751295 NT_026437. 11 42984490
SNP_40 Intron 10 IMS-JST140150 rs3783758 NT—026437. 11 42993489
SNP— 41 Intron 10 IMS-JST093800 rs2463117 NT—026437. 11 42995426
SNP— 42 Intron 12 IMS-JST140146 rs3783755 NT—026437. 11 43006640
SNP_43 Intron 12 IMS-JST140145 rs3783754 NT_026437. 11 43009990
SNP_44 Intron 12 IMS-JST140144 rs3783753 NT—026437. 1 1 43010112
SNP一 45 Exon 14 IMS-JST173548 rs3813410 NT—026437. 11 43016888
[0256] 以下の表 5は、脳梗塞のサブタイプ別にみた、 PRKCH_SNP_15のケースコントロー ル相関解析の概要を示す。
[表 5]
P
ケース コン卜ロール 値 ォッズ比
(調整 _P) (95% c.i.) 表現型 11 12 22 合計 11 12 22 合計 1/2 11+12/22 1/2 11+12/22
5.25E-04 8.51E-04 1.29 1.34 脳梗塞 59 394 655 1108 41 336 731 1108
(0.34) (0.54) (1.12~ 1.49) (1.13 .59)
4.73E-06 2.10E-05 1.69 1.77 ラクナ梗塞群 28 178 282 488 11 131 345 487
(0.0036) (0.015) (1.35~2.12) (1.36~2.31) ァテ 0.134 0.0536 1.21 1.34 ローム血栓性梗塞群 15 136 217 368 17 109 243 369
(ND) (ND) (0.94 ~ 1.56) (1.00~ 1.81) ラクナ梗塞群と
ァテローム血栓性梗塞群 43 1.00E-O5 7.91E-06 1.46 1.57
314 499 856 28 240 588 856
とを合計した群 (0.0097) (0.0063) (1.23~ 1.73) (1.29~ 1.91)
[0257] 上記表 5中、アレル 1はリスクアレルとしている。 P値は、スクリーニングで検討したす ベての SNPに関して、 104回の並べ替え検定により調整した。 c丄は信頼区間を指す。
[0258] 次に本発明者らは、 45箇所の SNPを用いて PRKCHの高精度マッピングを行い、 SN P_15の LDの範囲を、ラクナ梗塞およびァテローム血栓性梗塞の症例、ならびに年齢 および性別が一致する対照を用いて評価した。これらの SNPのジエノタイピングを行 い、マイナーアレル頻度が 0.2を上回る 27種の SNPに関して D'および Δ指数を算出し た(図 ld)。 PRKCH中に 2つの LDブロックが同定され、 SNP_15はブロック 1内部に位置 づけられた(図 ld)。本発明者らはまた、症例と対照との間のアレル頻度も比較し、そ の関連性が PRKCHのブロック 1で最大であり、 5'領域および 3'領域では徐々に低下 することを見いだした。これらの結果から、本発明者らは、 PRKCHがラクナ性およびァ テローム血栓性の脳梗塞に対する感受性遺伝子であると結論づけた。
[0259] 続、て本発明者らは、症例 48例および対照 48例から、 5'および 3'非翻訳領域を含 む、 PRKCH中の全ェクソンのシークェンシングを行った結果、 4つの SNPが同定され た: rs3742633 (695A>G、ェクソン 2中)、 rs2230500 (1425G>A、ェクソン 9中)、 rsl70 98388 (1427A>C、ェクソン 9中)、 rsl088680 (1979C >T、ェクソン 12中)。これらのう ち、 rs3742633および rsl088680はブロック 1の外側に位置し、関連性を示さなかった。 rs2230500および rsl7098388は互いに 1塩基の隔たりがあり、ブロック 1に位置してい た。さらに、 rs2230500はパリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸置換を引き起こし たが(V374I、図 2a)、一方、 rsl7098388は同義 SNPであった。シークェンシングの結 果、これらの 2つの SNPは完全に連鎖していた。
[0260] 続いて本発明者らは、ラクナ性およびァテローム血栓性梗塞の全症例、ならびに年 齢および性別が一致する対照において、直接シークェンシングにより、 rs2230500の ジエノタイピングを行った。 lieへのアミノ酸変化を引き起こす rs2230500の Aアレルは症 例において高頻度に観察され、これはラクナ梗塞 (p = 9.84 X 10— 6、ォッズ比(OR) 1.6 6、 95 %信頼区間( i.) 1.33〜2.09、アレル頻度モデルの場合、表 7)およびラタナ梗 塞群とァテローム血栓性梗塞群とを合計した群 (p=4.92 X 10—5、 OR 1.42、 95 %c.i. 1.20〜1.68)のいずれとも高度の関連性があった。 PRKCHにおけるジエノタイピング を行った 45箇所の SNP間での並べ替え検定を適用したところ、ラクナ梗塞に関しては
p = 0.0004、ラクナ梗塞群とァテローム血栓性梗塞群とを合計した群に関しては p = 0. 0014が得られた。これらの結果はいずれも統計学的に有意であった。
[0261] 症例と対照との間の差の交絡的影響を明らかにするために、本発明者らは口ジステ イツク回帰モデルを用いて臨床的危険因子を調整した。脳梗塞に対する遺伝子型リ スクは、年齢、性別、高血圧、高脂血症および糖尿病に関する調整後も実質的に変 化しなかった(表 8)。このため、本発明者らは、 PRKCHにおける V374Iというアミノ酸 置換が PKC ηのシグナル伝達に影響を及ぼして脳梗塞の発生をもたらす可能性が あるという仮説を立てた。
[0262] 以下の表 6は、ラクナ梗塞群とァテローム血栓性梗塞群とを合計した群のサブダル ープに関する、 PRKCH遺伝子中の 45種の SNPのケースコントロール相関解析の結果 を示す。
[0263] [表 6]
MAF アレルモデル 優性モデル アレルモデル 優性モデル ケ一 コン卜
snp名称 ス ロール P値 調整—P P値 調整— P OR 95%C OR 95% CI
SNP一 01 0.452 0.462 0.562 1 0.467 1 1.04 {0.91 - 1.19) 1.09 (0.86- 1.38)
SNP.02 0.389 0.382 0.654 1 0.896 1 1.03 (0.90 1.18) 1.01 (0.83 1.23)
SNP一 03 0.448 0.449 0.958 1 0.765 1 1.00 (0.88 1.15) 0.97 (0.76- 1.22)
SNP_04 0.009 0.008 0.691 1 0.690 1 1.17 (0.54- 2.54) 1.17 (0.54 2.55)
SNP一 05 0.199 0.237 0.00608 0.16 0.0108 0.24915 1.26 (1.07- 1.48) 1.77 (1.14- 2.77)
SNP一 06 0.452 0.491 0.0234 0.46 0.0609 0.7696 1.17 (1.02 1.34) 1.24 (0.99 1.55)
SNP一 07 0.216 0.212 0.798 1 0.912 1 1.02 (0.87 1.20) 1.01 (0.83- 1.23)
SNP一 08 0.362 0.363 0.940 1 0.413 1 1.01 (0.87- 1.16) 1.12 (0.85 1.49)
SNP一 09 0.190 0.169 0.102 0.94 0.0734 0.85115 1.16 (0.97 1.38) 1.20 (0.98- 1.47)
SNP_10 0.138 0.107 0.00472 0.13 0.00400 0.1048 1.34 (1.09 1.65) 1.39 (U卜 1.75)
SNP一 11 0.141 0.102 0.000567 0.020 0.00100 0.03215 1.44 (1.17- 1.77) 1.47 (1.17 1.84)
SNP一 12 0.264 0.290 0.0891 0. 1 0.0530 0.72955 1.14 (0.98- 1.32) 1.41 (0.99- 1.99)
SNP一 13 0.480 0.437 0.0130 0.31 0.00691 0.1831 1.19 (1.04- 1.37) 1.33 (1.08- 1.64)
SNP— 14 0.024 0.027 0.595 1 0.157 0.99925 1.12 (0.74 1.71 ) 0.00
SNP— 15 0.234 0.173 1.00E-05 0.0002 7.90E-06 0.00015 1.46 (1.23 1.73) 1.57 (1.29- 1.91)
SNP_16 0.235 0.176 1.63E-05 0.00045 1.73E-05 0.00045 1.44 (1 -22 1.71) 1.54 (1.27- 1.88)
SNP一 17 0.228 0.173 4.92E-05 0.0016 4.12E-05 0.0014 1.42 (1 -20 1.68) 1.51 (1.24 1.85)
SNP一 18 0.228 0.173 4.92E-05 0.0016 4.12E-05 0.0014 1.42 (1 -20 1.68) 1.51 (1.24 1.85)
SNP一 19 0.266 0.219 0.00143 0.047 0.00303 0.087 1.29 (1 -10 1 -51 ) 1.34 (1.10 1.62)
SNP— 20 0.267 0.220 0.00127 0.042 0.00307 0.08775 1.29 (1.1卜 1.51) 1.34 (1,10 1.62)
SNP— 21 0.208 0.160 0.000272 0.0096 0.000645 0.01965 1.38 (1.16 1.64) 1.42 (1.16 ' 1.74)
SNP— 22 0.498 0.478 0.162 0.99 0.550 1 1.10 (0.96 1.26) 1.07 (0,86 1.32)
SNP一 23 0.438 0.459 0.233 1 0.361 1 1.09 (0.95 1.24) 1.11 (0.88 1.40)
SNP一 24 0.142 0.153 0.365 1 0.275 1 1.09 (0.90 1.32) 1.42 (0-76 2.66)
SNP-25 0.233 0.190 0.00210 0.063 0.00268 0.0755 1.29 (1.10- 1.53) 1.35 (U卜 1.64)
SNP一 26 0.233 0.190 0.00207 0.064 0.00267 0.0783 1.29 (1.10- 1.53) 1.35 (1.1卜 1.64)
SNP— 27 0.461 0.456 0.758 1 0.596 1 1.02 (0.89 1.17) 1.06 (0.86- 1.30)
SNP一 28 0.463 0.455 0.662 1 0.520 1 1.03 (0.90 1.18) 1.07 (0.87 1.32)
SNP一 29 0.142 0.152 0.425 1 0.358 1 1.08 (0.89- 1.30) 1.33 (0.72 2.48)
SNP— 30 0.141 0.152 0.363 1 0.275 1 1.09 (0-90 1.32) 1.42 (0.76 2—66)
SNP— 31 0.141 0.152 0.352 1 0.267 0.9997 1.09 (0.9ト 1.32) 1.43 (0.76 2.67)
SNP— 32 0.156 0.189 0.00952 0.24 0.323 1 1.26 (1.06 1.51) 1.39 (0.72 2.66)
SNP一 33 0.461 0.426 0.0392 0.66 0.0672 0.83935 1.15 (1.0卜 1.32) 1.21 (0.99 1.49)
SNP一 34 0.126 0.128 0.818 1 0.856 1 1.02 (0.84- 1.25) 1.07 (0.5ト 2.23)
SNP— 35 0.407 0.424 0.324 1 0.685 1 1.07 (0.93 1.23) 】-05 (0.82 1.35)
SNP— 36 0.124 0.094 0.00456 0.136 0.00857 0.22565 1.37 (1.10 1.70) 1.37 (1.08 1.74)
SNP一 37 0.170 0.148 0.0736 0.859 0.146 0.97665 1.18 (0.98 1.42) 1.17 (0.95 1.44)
SNP一 38 0.414 0.427 0.414 1 0.698 1 1.06 (0.92- 1.21) 1.05 (0.82 1.34)
SNP— 39 0.153 0.134 0.120 0.968 0.153 0.98655 1.16 (0.96- 1.41) 1.17 (0.94 1.45)
SNP— 40 0.089 0.079 0.272 1 0.299 1 1.14 (0.90 1.46) 1.15 (0.89 1.48)
SNP— 41 0.403 0.422 0.255 1 0.147 0.9751 1.08 (0.94- 1.24) 1.20 (0.94- 1.53)
SNP— 42 0.463 0.446 0.320 1 0.372 1 1.07 (0.94 1.22) 1.10 (0.89- 1.35)
SNP一 43 0.344 0.381 0.0219 0.449 0.0229 0.47195 1.18 (1.02- 1.35) 1.39 (1.05- 1 -84)
SNP一 44 0.143 0.126 0.150 0.987 0.135 0.9722 1.16 (0.95 1.41) 1.18 (0.95 1.47)
SNP— 45 0.131 0.123 0.464 1 0.358 1 1.08 (0.88- 1.32) 1.11 (0.89 1.39) 上記表 6において、 P値は、 PRKCH遺伝子検討したすべての SNPに関して、 10回 の並べ替え検定により調整した。 MAFはマイナーアレル頻度を示す。
マ レル
ケース コントローノレ イナ—ア P値 ォッズ比
(調整- P) (95% c.i.)
コン卜 AA+AG AA+AG '
AA AG GG 合計 AA AG GG 合計 ケース A vs. G A vs. G
ロール GG GG
9.84E-06 3.47E-05 1.66 1.75
ラクナ梗塞群 27 178 286 491 11 130 344 485 0.236 0.157
(0.0004) (0.0009) (1.33~2.09) (1.34—2.28)
ラクナ梗塞群と
4.92E-05 4.12E- 5 1.42 1.51
ァテローム 41 310 507 858 27 239 582 848 0,228 0.173
(0.00155) (0.0014) (1.20~ 1.68) (1.24〜1.85)
血栓性梗塞群
とを合計した群
。
[0267] 上記表 7において、 P値は、 PRKCH遺伝子中の検討したすべての SNPに関して、 10
4回の並べ替え検定により調整した。 c は信頼区間を指す。
[0268] 以下の表 8は、ラクナ梗塞群とァテローム血栓性梗塞群とを合計した群のサブダル ープにおける rs2230500 (1425G>A、 V374I)の多変量ロジスティック解析の結果を示 す。
[0269] [ 8] ο 99νν一 sooo ν+:..
[0270] 上記表 8において、多変量解析は年齢、性別、高血圧 (あり Zなし)、高脂血症 (あり
Zなし)および糖尿病(あり Zなし)に関して調整した。
[0271] 本発明者らは、 STRUCTUREおよび genomic controlを用いて、症例と対照との間の 集団階層化に関して調べたが、いずれの解析力 も本発明者らの被験者における有 意な集団階層化は示されな力つた。
[0272] 〔実施例 2〕 PKC 7?活性に対する V374Iの影響
PKC 7?における V374Iというアミノ酸置換は、 PKCファミリーにおいて保存されている ATP結合部位の内部に存在する(図 2b、図 3) (Osada, S. et al., Cell Growth Diff. 4, 167-175 (1993).) oそこで本発明者らは、 PKC ηキナーゼ活性に対する V374Iの影 響について調べた。本発明者らは Flag-PKC 7? -374Vおよび Flag-PKC η -3741の発 現ベクターを構築し、それらを 293Τ細胞に対してトランスフエタトした。一過性トランス フエクシヨン後に、両方のタンパク質を免疫沈降させ、抗 Flag M2ァガロースゲルを用 いることによって精製した。免疫沈降物の質および濃度はクーマシーブリリアントブル 一染色およびウェスタンブロット法によって評価した(図 2c、 d)。 PKC ηは自己リン酸 ィ匕により活性化されることが報告されているため(Nishizuka, Y. Science. 258, 607-61 4 (1992).)、本発明者らは各タンパク質のキナーゼ活性を自己リン酸ィ匕アツセィによ つて調べた。 10 nMホスファチジルセリン(PS)および 100 nMホルボール 12, 13-ジブチ レート(PDBu)による刺激後に、 PKC 7?の自己リン酸ィ匕が少なくとも 1分間にわたって 観察され、 自己リン酸ィ匕の程度は PKC 7? -3741の方が PKC 7? - 374Vよりも高力つた(図 2d)。これらの結果を確かめるために、ミエリン塩基性タンパク質を基質として用いるこ とによって PKC活性を検討したところ、 PKC 7? -3741における活性は、 PKC η -374Vの 1.6倍であった(ρ = 0.009、図 2e)。これらの結果は、 PKC における 374Vから 3741へ のアミノ酸変化が、刺激後のより高度の自己リン酸ィ匕およびキナーゼ活性を誘導し、 下流シグナル伝達経路の活性化をもたらす可能性を示唆する。
[0273] 〔実施例 3〕 ァテローム硬化における PKC 7?の発現
PKC ηはマウスでは、皮膚、消化管および気道を含む上皮組織で主に発現する(0 sada, S. et al" J Biol. Chem. 265, 22434-22440 (1990).)。ヒトにおける PKC ηの発現 パターンは未確定であり、マウスにおけるこの分布パターンからは PKC ηと脳梗塞と の間の関係を説明することができない。
[0274] ヒト組織における PKC ηの発現パターンを検討するために、本発明者らは種々の組 織においてヒト cDNAを用いる定量的リアルタイム PCRを行った。 PKC r?は種々のヒト 組織で普遍的に発現しており、胸腺および脾臓における発現が幾分高度であった( 図 4)。この結果および脳梗塞との関連性から、本発明者らはァテローム硬化病変に おける PKC ηの発現を調べた。剖検時に入手した冠動脈標本の免疫組織染色によ り、 PKC 7?は動脈内膜内の内皮細胞および一部の泡沫マクロファージ、ならびに動 脈内膜および中膜内の紡錘状平滑筋細胞において発現していることが示された(図 5— 1の b— e)。外膜では、 PKC 7?は一部の血管内皮細胞によって定常的に発現し ていた (非提示データ)。この発現は、免疫原性ペプチドまたは正常ゥサギ IgGを用い て前吸収を行った標本ではみられなカゝつた。
[0275] PKC 7?とァテローム硬化との関係についてさらに検討するために、剖検時に入手し た 60件の冠動脈標本を、ァテローム硬化病変のタイプ (AHA分類(Stary, HC. et al, Circulation. 92, 1355-74 (1995).) )別に慎重に分類した。 PKC 陽性細胞を NIH像 によって定量したところ、 PKC 7?の発現は冠動脈ァテローム硬化の重症度と合致して おり、進行した病変でより高頻度に観察された (p< 0.0001、図 5— 2の f)。これらの結 果は、 PKC 7? 1S ヒトにおけるァテローム硬化の発生および進行に密接に関係してい ることを示唆する。
[0276] 〔実施例 4〕 集団ベースの前向きコホートを用いた V374Iのバリデーシヨン試験
ケースコントロール研究には、被験者、特に対照例の選択バイアスが原因となって 偽陽性の結果が誘発される恐れがある。このため、 1件の相関解析で同定された候補 SNPを異なる集団でも検証すべきである。しかし、本発明者らの相関解析におけるマ 一力一 SNPとした SNP_15 (IMS- JST140193)のマイナーアレル頻度は、日本人群では 0.239、中国人群では 0.229、アフリカ人群では 0.022、欧州人群では 0.00であった。こ れらのデータは、 PRKCH中の候補 SNPはアジア系集団に特異的であり、白人では再 現性を得ることが難し ヽことを示唆する。
[0277] この問題を克服するために、本発明者らは、 1988年に構築した集団ベースの前向 きコホートにおいて rs2230500の関連性を検証した。 14年間の追跡調査の間に、ベー スライン検査時には脳卒中の病歴がな力つた被験者 1642例のうち 67例の被験者に
初めて脳梗塞が生じた。脳梗塞の発生率を rs2230500遺伝子型別に比較した結果、 本発明者らは、 GGカゝら GA、 AA遺伝子型の順 (これはアミノ酸置換 W、 VIから IIに対 応する)に発生率が直線的に増加することを見いだした(図 6)。年齢および性別で調 整した脳梗塞の発生率に関する相対リスクは、 GG遺伝子型と比較して、 GA遺伝子 型の場合は 1.31 (95 % i.、 0.78〜2.19)でぁり、 遺伝子型の場合は2.83 (95 %c.i. 、 1.11〜7.22)であった (表 9)。 AA遺伝子型の被験者における脳梗塞の発生に対す るリスクは、 GA遺伝子型または GG遺伝子型の被験者におけるものよりも有意に高か つた(p = 0.043、相対リスク 2.58、 95 %c丄、 1.03〜6.44)。この関係は、年齢、性別、 高血圧、糖尿病、血清コレステロール、喫煙および飲酒の習慣を含む、ベースライン の臨床的危険因子の調整後も実質的に変化しな力つた。同じコホート内の被験者 16 61例を用いた冠動脈疾患の発生に対する rs2230500のリスクも同様の結果を示した( 図 7)。これらの結果は、 PRKCH中の rs2230500が脳梗塞および心筋梗塞の発生にか かわる遺伝的危険因子であることを示している。この所見は他の前向き研究でも再現 される必要がある力 本発明者らは将来、 rs2230500によって脳梗塞のリスクが予測さ れる可能性があると考えて 、る。
[0278] 以下の表 9は、 14年間追跡した日本人一般集団 1,638人における、 rs2230500遺伝 子型別にみた、脳梗塞の発生に関する、年齢および性別を調整し、多変量解析に関 して調整した相対リスクを示す。
[0279] [表 9]
年齢および性別調整 多変量調整
遺伝子型 数 イベント HR (95 %c.i.) p値 HR (95 % c.i.) p値
GG 1063 39 1.00 1.00
AG 518 23 1.31 (0.78-2.19) 0.309 1.31 (0.78-2.20) 0.317
AA 61 5 2.83 (1.11-7.22) 0.030 2.91 (1.14-7.47) 0.026
GG+AG 1581 62 1.00 1.00
AA 61 5 2.58 (1.03-6.44) 0.043 2.66 (1.06-6.68) 0.038
[0280] 上記表 9中、 HRはハザード比、 dは信頼区間を指す。多変量解析に関する調整は 年齢、性別、高血圧、糖尿病、コレステロール、喫煙および飲酒に関して行った。
[0281] <AGTRL1遺伝子に関する各種実験の材料および手法等 >
被験奪闭
1961年以来、本発明者らは、福岡巿(日本)に隣接した近郊地域である久山町の住 民における心血管疾患に関して、地域集団を用いたコホート研究を行っている(Hata J, et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry 2005; 76: 368—372.、 Tanizaki Y, et al., Str oke 2000; 31: 2616-2622.) 0 2002〜2003年の間に、本発明者らは久山町の住民に おけるスクリーニング研究を実施し、年齢 40歳以上の 3,328人 (この年齢群の全人口 の 78 %)がこの研究に参カ卩した。彼らのうち 3,196人(96 %)力 自らの臨床情報およ び DNAサンプルを本研究に用いることに同意した。
[0282] 本発明者らは、九州大学病院および福岡都市部の 6つの協同施設病院 (独立行政 法人国立病院機構九州医療センター、独立行政法人国立病院機構福岡東医療セ ンター、福岡赤十字病院、白十字病院、今津赤十字病院、誠愛リハビリテーション病 院)からの脳梗塞患者を登録した。被験症例は全例、神経内科医により、コンビユー タ断層撮影法 (CT)および Zまたは磁気共鳴画像法 (MRI)を含む臨床情報および脳 画像検査を用いて脳卒中と診断され、 LA、 AT、 CEおよび他のサブタイプに細分され た。被験者はすべて日本人であり、研究への参加に関して文書によるインフォームド 'コンセントを得た。
[0283] 本研究は、九州大学大学院医学研究院、東京大学医科学研究所および各参加病 院の倫理委員会による承認を得て 、る。
[0284] 相瞧析
本発明者らは、ゲノムワイド相関解析を、 1回目および 2回目のスクリーニング力もな る段階的な様式で行った。 1回目のスクリーニングでは、脳梗塞に罹患した被験症例 188例を無作為に選択した。各症例に対して、脳卒中および冠動脈疾患に罹患した ことがない久山町住民から、年齢および性別が一致する対照被験者 1例を無作為に 選択した。
[0285] 2回目のスクリーニングでは、 LAおよび ATを有する被験症例 860例を対象として組
み入れた。 CEおよび脳梗塞の他のサブタイプは、 LAおよび ATとは異なる機序を有 するという理由から、 2回目のスクリーニングには含めな力つた。各被験症例に対して 、年齢および性別が一致する対照被験者 1例を久山町住民力 無作為に選択した。 両群とも平均年齢士 s.d.は 70± 10歳であり、被験者の 60.7 %が男性であった。
[0286] SNPジエノタイピング
ゲノム DNA試料は全血力も標準的な方法によって抽出した。各ポリメラーゼ連鎖反 応(PCR)を用いて多数のゲノム断片を増幅し、インベーダーアツセィによって SNPの ジエノタイピングを行った(Ohnishi Y, et al., J Hum Genet 2001; 46: 471- 477.、 Lyam ichev V, et al, Nat Biotech 1999; 17: 292-296.)。
[0287] 細朐焙着
ヒト胃腺癌 SBC-3細胞は、 10%ゥシ胎仔血清 (FBS)および 1%抗生物質 '抗真菌薬 溶液(SIGMA)を含む RPMI 1640培地中で増殖させた。ヒト胚性腎線維芽細胞 293T 細胞は、 10 %FBSおよび 1 %抗生物質 '抗真菌薬溶液 (SIGMA)を含むダルベッコ 変法イーグル培地中で増殖させた。いずれの細胞も、 5 %COを含む 37°Cの加湿空
2
気中でインキュベートした。
[0288] 雷気泳動移動度シフトアツセィ (EMSA)
EMSAに用いるプローブは、図 9aに示されているように、各多型の周辺の 25 bp二本 鎖オリゴヌクレオチドとして構築した。 Spl-コンセンサスオリゴヌクレオチド (SantaCruz, sc-2502)を、 Splの結合に関する陽性対照として用いた。各プローブを、 Tポリヌクレ
4 ォチドキナーゼ(TOYOBO)を用いて [ γ -32P]-ATP (Amersham)で標識した。 SBC-3 核抽出物 10 μ gを、 15 mM Tris- HCl (pH 7.5)、 6.5%グリセロール、 50 mM KC1、 0.7 mM EDTA(pH 8.0)、 0.2 mMジチオトレイトール、 1 mg/mlゥシ血清アルブミン、ポリ(d I-dC) 1 μ gおよびサケ*** DNA 0.1 μ gを含む反応混合物中において、プローブ(> 500000 cpm)とともに室温で 30分間インキュベートした。 Splスーパーシフトアツセィに 関しては、抗ヒト Splャギポリクローナル抗体(SantaCruz, sc- 59X) 2 gを添カ卩し、室 温でさらに 30分間インキュベートした。この混合物を、 0.5 X Tris-ホウ酸- EDTA緩衝 液を含む 4%ポリアクリルアミドゲル上での 120 V、 3時間の電気泳動にかけた。ゲルを 乾燥させた後に X線フィルムに対して露光させた。
[0289] SDIの渦剰発現および逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応 (RT-PCR)
完全長ヒト SplcDNAを pCAGGS発現ベクター中にサブクローユングした(pCAGGS- Spl)。 6ゥエル培養プレート内でほぼ集密化するまで増殖させた 293T細胞に対して、 1ゥエル当たり 3 μ 1の FuGENE6 (Roche)を用いて、 1 μ gの pCAGGS- Splまたはモッタ ρ CAGGSをトランスフエタトした。トランスフエクシヨンの前または後の種々の時点で全 R NAを収集し、 RNeasy Mini Kitおよび RNase- free DNase Set (QIAGEN)を用いて精製 した。 cDNAは Superscript II逆転写酵素(Invitrogen)により合成した。ヒト AGTRL1お よびハウスキーピング遺伝子 B2Mの発現レベルは半定量的 RT-PCRを用いて決定し 、リアルタイム RT-PCRによって定量的に確かめた。
[0290] 半定量的 RT-PCRに関しては、 ExTaq DNAポリメラーゼ(TaKaRa)および以下のプ ライマー対のそれぞれを用いて cDNAを増幅した; AGTRL1 (5,- CTGTGGGCTACCT ACACGTAC- 3'Z配列番号: 7および 5'- TAGGGGATGGATTTCTCGTG- 3'Z配列 番号: 8)ならびに B2M (5'- CACCCCCACTGAAAAAGATGA- 3'Z配列番号: 9およ び 5'- TACCTGTGGAGCAACCTGC- 3'Z配列番号: 10)。
[0291] リアルタイム PCRに関しては、 SYBR Premix ExTaq (TaKaRa)を用いて cDNAを増幅 し、 ABI PRISM 7700 (Applied Biosystems)および以下のプライマー対のそれぞれに よって分析した: AGTRL1 (5'- TGCCATCTACATGTTGGTCTTC- 3'Z配列番号: 11 および 5'- GTCACCACGAAGGTCAGGTC- 3'Z配列番号: 12)ならびに B2M (5'- TC TCTCTTTCTGGCCTGGAG- 3'Z配列番号: 13および 5'- AATGTCGGATGGATG AAACC- 3'Z配列番号: 14)。 mRNAの定量は、得られた PCR閾値サイクルを cDNA 標準曲線に対して関連づけることによって行った。標準化された AGTRL1発現量は、 AGTRL1値を B2M値によって除算することによって得た。
[0292] ルシフェラーゼアツセィ
SNP4 (rs9943582)のいずれかのアレルを含む AGTRL1の 5'隣接領域の nt-291力 - 248までに、および/または、 SNP9 (rs2282624)のいずれかのアレルを含むイントロン の nt+1329から +1381までに対応する DNA断片を合成し、 pGL3- basicレポータープラ スミド(Promega)のマルチクロー-ングサイトにクローユングした。 24ゥエル培養プレー ト内でほぼ集密化するまで増殖させた SBC-3細胞に対して、 1ゥエル当たり 0.6 1の F
uGENE6 (Roche)を用いて、各レポーター構築物 90 ng、トランスフエクシヨン効率に関 する内部対照とした pRL- CMVベクター 10 ng、および pCAGGS- Splまたはモッタ pCA GGSベクターのいずれ力 100 ngをそれぞれトランスフエタトした。 48時間後に細胞を収 集し、 Dual— Luciferase Reporter Assay System (Promega) 用いてノレンフエフ ~~ IT活 性を測定した。
[0293] 統計分析
相関解析および Hardy-Weinberg平衡に関する統計分析は、 Yamadaらが記載した 通りに行った(Yamada R, et al., Am J Hum Genet 2001; 68: 674-685.)。多重検定の 調整のために、本発明者らは SASソフトウェア(SAS Institute)の MULTITEST法を用 V、て 10,000回の並べ替え検定を行った。ハプロタイプ頻度および連鎖非平衡係数( D'および Δ 2)を、期待値最大化アルゴリズムを用いて評価した。相対的ルシフェラー ゼ活性は Studentの t検定によって比較した。
[0294] URL
JSNPデータベースは、 http:〃 snp.ims.u-tokyo.ac.jp/index.htmlにある。国際 HapM apプロジェクトのデータベースは、 http:〃 www.hapmap.orgにある。米国の国立バイオ テクノロジー研究センター(National Center of Biotechnology Information)によって提 供されている dbSNPデータベースは、 http:〃 www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/index.html にある。 GENSCANプログラムは、 http:〃 genes.mit.edu/GENSCAN.htmlにある。 MAT し Hプログフムは、 http://www.gene— regulation. com/〖こある。
[0295] 〔実施例 5〕 ゲノムワイド相関解析
本発明者らはゲノムワイド相関解析を段階的な様式で行った。 1回目のスクリーニン グに関しては、脳梗塞の日本人患者 188例ならびに年齢および性別が一致する対照 被験者 188例を用いて、ハイスループットの複合的 PCR-インベーダーアツセィ法(Oh nishi Y, et al., J Hum Genet 2001; 46: 471-477.)〖こより、遺伝子をベースとする 52, 60 8箇所の SNPを JSNPデータベース(Haga H, et al, J Hum Genet 2002; 47: 605-610. )から選択した。症例と対照との間で遺伝子型およびアレル頻度を比較し、 p値が 0.01 未満であることが示された 1098種の SNPを同定した。
[0296] 本発明者らは続いて、 2回目のスクリーニングを目的として、 LAまたは ATを有する
患者 860例ならびに年齢および性別が一致する対照被験者 860例を用いて、これら の 1098種の SNPのジエノタイピングを行った。本発明者らは、これらのうち、 AGTRLl 遺伝子中の SNP(SNP6、 rs948847)力 アレル頻度モデル(p = 0.000028)および劣性 モデル (p = 0.000057)において低い p値を示すことを見いだした。多重検定に関する 並べ替え検定を行った後の、劣性モデルにおける調整 p値は 0.0498であった。本発 明者らは、 SNP6が脳梗塞と関連性のあるマーカー SNPの候補であると考えた。
[0297] 〔実施例 6〕 マーカー SNP6周辺の高精度マッピング
SNP6が位置する染色体 llql2領域を検討するために、本発明者らは全被験者を用 いて、 AGTRLl周辺の 240 kb領域内部の 48種の SNPのジエノタイピングを行った。こ の領域は PRG2、 PRG3、 P2RX3、 SSRP1、 TNKS1BP1、 AGTRLlおよび LRRC55という 7 つの遺伝子をカバーしていた。これらのうち、 10種の SNPが AGTRLl中にあり、マイナ 一アレル頻度が 20 %を上回る他の 38種の SNPが、国際 HapMapプロジェクト(The Int ernational HapMap Consortium. Nature 2005; 437: 1299- 1320.)のデータベースお よび JSNPデータベース(Haga H, et al., J Hum Genet 2002; 47: 605- 610.)から選択 された。
[0298] 本発明者らは、この領域における連鎖不平衡 (LD)地図を構築した(図 8a)。これら の D'値により、マーカー SNP6が、 5つの遺伝子(P2RX3、 SSRP1、 TNKS1BP1、 AGTRL 1および LRRC55)によってカバーされる領域と関連づけられることが示された。その結 果、脳梗塞に関する単一の候補遺伝子を LDマッピングのみによって決定することは 困難であった。
[0299] 引き続いて、本発明者らは、この領域内での相関解析における P値を評価した(図 8 b)。最も有意な関連性がみられた SNPは TNKS1BP1遺伝子と AGTRLl遺伝子との間 に位置していた力 この領域には遺伝子も発現配列タグも報告されておらず、 GENS CANプログラムによってオープンリーディングフレームも推定されなかった。 P2RX3、 S SRP1、 TNKSBP1および LRRC55中の SNPは、 AGTRLl遺伝子中のマーカー SNP6より も関連性の有意さの程度が低力つた。さらに、 AGTRLlの産物である APJ受容体は、 心血管系(Kleinz MJ, et al., Regul Pept 2005; 126: 233- 240.)および中枢神経系(O ' Carroll AM, et al., J Neuroendocrinol 2003; 15: 661- 666.)で発現されること、なら
びに心血管系 (Kagiyama S, et al" Regl Pept 2005; 125: 55-59.、 Seyedabadi M, et a 1., Auton Neurosci. 2002; 101: 32-38.、 Katugampola SD, et al., Br J Pharmacol 200 1; 132: 1255— 1260.、 Tatemoto K, et al., Regul Pept 2001; 99: 87—92.、 Masri B, et a 1., FASEB J 2004; 18: 1909- 1911.、 Hashimoto Y, et al" Int J Mol Med 2005; 16: 78 7-792.)に関係する機能を有することが報告されていることから、本発明者らは AGTR L1を脳梗塞に関する候補遺伝子として選択した。
[0300] 〔実施例 7〕 AGTRL1遺伝子における SNP解析
AGTRL1遺伝子は、 2つのエタソンおよび 1つのイントロンからなる(図 8c)。タンパク 質コード領域はェクソン 1のみに存在する。以前の報告(Saito S, et al., J Hum Genet 2003; 48: 461-468.)における直接シークェンシングにより、 AGTRL1遺伝子における 遺伝的変異は転写開始部位の 2 kb上流力 最終エタソンまでの範囲にわたる領域 がスクリーニングされている。その報告では、 9つの SNP、 2つの単一反復多型および 1 つの挿入 Z欠失 (IZD)多型が発見されている。本発明者らは、以前の報告では発 見されて!ヽな 、が、 dbSNPデータベース中に rsl 1544374としてすでに登録されて!、た さらに 1つの SNP(SNP5)を、ェクソン 1の 5'非翻訳領域(UTR)で見いだした。本発明 者らは、 LAおよび ATを有する被験症例 860例ならびに対照被験者 860例を用いて、 これらの 10種の SNPのジエノタイピングを行った。イントロン中の I/D多型についても 直接シークェンシングによってジエノタイピングを行ったところ、これは SNP7および SN P10と絶対的連鎖があることが判明した。
[0301] このケースコントロール研究にぉ 、て脳梗塞と有意な関連性のある多型は 9つ(SNP 2、 3、 4、 5、 6、 7、 9、 10および IZD)であった(表 10)。
[0302] 以下の表 10は、 AGTRL1遺伝子のケースコントロール相関解析結果を示す。
[0304] 上記表 10中、 1はリスクアレル、 2は非リスクアレル、 ORはォッズ比、 CIは信頼区間 を指す。
[0305] さらに脳梗塞全体における相関解析の結果を以下の表 11 - 1および 11— 2に示 す。またラクナ群およびァテローム群における相関解析の結果を以下の表 12— 1お よび 12— 2に示す。
[0306] [表 11- 1]
^80s
患者群 :リスクァリル) 対照群 (1:リスクァリル) 2X3分割表(ジエノタイプ) (1/2) (11/12+22) (11+12/22) dbSNP ID 11 12 22合計 11 12 22合計 P値 Ρ値 P値 rs 1939489 458 340 56 854 384 379 9フ 860 5.59E- 05 1.19Ε-05 2.01 Ε-04 6.08E-04 rs4938861 459 339 58 856 384 379 9フ 860 8.68E-05 1.65Ε-05 2.02Ε-04 1.14E-03 rs1892964 462 338 56 856 381 382 96 859 2J6E-05 5.12Ε 06 6J9E-05 7.36E-04 rs1892963 461 339 56 856 385 378 9フ 860 4J1E-05 9.58Ε-06 1.67Ε-04 5.76E-04 rs7102963 458 339 57 854 381 380 96 857 6.31E-05 1.22Ε-05 1.48Ε-04 1.03E-03 rs499318 459 339 55 853 379 380 97 856 2.07E-05 4.19Ε-06 8.07Ε-05 3.91 E-04 rs1893675 417 364 75 856 340 412 108 860 2.31E-04 5.50Ε-05 1.28Ε-04 1.08E-02 rs4939123 4 105 745 854 1 81 778 860 6.11E-02 2.40Ε-02 1J7E-01 3.37E-02 rs7119375 450 347 59 856 373 391 91 855 2.42E-04 5.37Ε-05 2.14Ε - 04 6.09E-03 rs1O501367 451 345 59 855 373 391 91 855 1.95E-04 4.25Ε-05 1.6ΟΕ-04 6.23E-03 rs9943582 450 346 59 855 376 389 94 859 1.89E-04 4.01 Ε-05 2.42Ε-04 3.34E-03 rsl 1544374 495 314 47 856 427 362 69 858 1.84E-03 4.32Ε-04 8.18Ε-04 3.55E-02 rs948847 431 357 70 858 345 405 101 851 1.15E-04 2.80Ε-05 5J2E 05 1.06E-02 ss49849485
rS746886 159 398 299 856 110 412 337 859 3.29E-03 2.54Ε-03 1.02Ε-03 6.52E-02 rs746885 0 16 840 856 0 9 851 860 #DIV/0! 1.57Ε-01 #DIV/0! 1.55E-01 rs2282625 375 382 98 855 368 400 92 860 7.21E-01 9.25Ε-01 6.55E-01 6.14E-01 rs2282624 182 410 264 856 124 418 318 860 3.24E-04 1.17Ε - 04 2.13E-04 7.27E-03 rs2282623 160 399 300 859 112 411 331 854 6.23E-03 5.15Ε-03 1.80E-03 1.00E-01 rs721608 503 305 47 855 448 336 75 859 3.89E-03 9.17Ε-04 5.42E-03 9.22E-03 rs 1943482 218 417 220 855 176 422 262 860 1 JOE - 02 4.19Ε-03 1.33E-02 2.92E-02 rsl 0896586 151 412 293 856 121 398 341 860 2.77E-02 7.04Ε-03 4.29E-02 2.00E-02 rs2156456 171 395 288 854 117 391 347 855 4.04E-04 8.12Ε 05 4.64E-04 3.34E-03 rs717211 141 392 322 855 93 390 375 858 9J0E-04 3.77Ε-04 6.60E-04 1.09E-02
掣
表 12— 2は表 12— 1の続きの表である。
[表 12— 2]
アミノ酸の置換を引き起こす SNPはなかった。このことから、本発明者らは、これらの 多型のいくつかは AGTRLl遺伝子のプロモーター活性またはェンノヽンサ 活性を変 化させる可能性があると考えた。
[0311] 〔実施例 8〕 AGTRL1遺伝子におけるハプロタイプ解析
本発明者らは、 AGTRL1におけるハプロタイプのセットを構築した。脳梗塞と有意に 関連づけられた 9種の SNPのうち、 SNP2、 3および 4は完全連鎖している。同様に、 iZ D、 SNP7および 10も完全連鎖していた。これらの SNPを検討した上で、本発明者らは 5 種類のタグ SNP(SNP2、 SNP5、 SNP6、 SNP9および SNP10)をハプロタイプの推定のた めに用い、両群の被験者の 90 %超をカバーする高頻度のハプロタイプ 3種を見いだ した(表 13)。
[0312] 以下の表 13は、 AGTRL1遺伝子のハプロタイプ解析の結果を示す。
[0313] [表 13]
[0314] 上記表 13において、 5つの SNPs (SNP2, 5, 6, 9, 10)がハプロタイプの推定に利用 された。 ORはォッズ比、 CIは信頼区間を指す。
[0315] Haplにおける SNPはすべてリスクアレルであった。 Haplにおける脳梗塞のリスクは 他のハプロタイプよりも有意に高力つた (ォッズ比(OR) = 1.60, (95 %信頼区間(CI) 、 1.22〜2.09); p = 0.00058、劣性モデルにおける)。これに対して、 Hap3における SN Pはすべて非リスクアレルであり、 Hap3における脳梗塞のリスクは他のものよりも有意 に低かった(OR=0.76 (95%CI、 0.65〜0.88 ;p = 0.00032、アレル頻度モデルにおけ る)。その結果、 Hapl, Hap2および Hap3はそれぞれリスク型、中間型および非リスク 型のハプロタイプであると判断された。
[0316] 〔実施例 9〕 Spl転写因子は AGTRL1遺伝子の SNP4および SNP9のリスクアレルと結 合する
AGTRL1 mRNAを高発現する細胞系を選択するために、本発明者らは 89種の細胞 系からの cDNAを用いて RT- PCRを行った。その結果、 SBC- 3細胞が AGTRL1 mRNA を最も高度に発現した (非提示データ)。
[0317] SNP周辺の DNA配列と転写因子との間の結合を評価するために EMSAを行った。 9 つの多型候補の各アレルに対して、 32P標識した二本鎖 DNAプローブを構築し、 SBC -3細胞からの核抽出物とインキュベートした上で電気泳動を行った(図 9a)。本発明 者らは、 DNA-タンパク質結合力 SNP4のリスクアレル SNP4 (-279G)では検出される 1S 同じ結合が非リスクアレル (-279A)では検出されないことを見いだした。本発明者 らはまた、 DNA-タンパク質結合が SNP9のリスクアレル (+1355G)では検出されるが、 非リスクアレル (+1355A)では検出されないことも見いだした。 293T細胞からの核抽出 物を用いることによつても同様の結果が得られた (非提示データ)。このアツセィに用 いたプローブの配列は図 9bに示されている。これらの結果は、何らかの転写因子が アレル特異的な様式で結合して AGTRL1の発現をトランス活性ィ匕する可能性を示唆 している。
[0318] TRANSFACデータベースを利用した MATCHプログラムでは、転写因子 Splは SNP4 および SNP9のリスクアレル周辺の DNA配列と結合することが推測された(図 9c)。これ らの SNPと Splとの結合をインビトロで確かめるために、本発明者らは特異抗体を用い
る Splスーパーシフトアツセィを行った(図 9d)。 SNP4のリスクアレルにおける DNA-タ ンパク質複合体のバンドは、抗 Spl抗体の存在下では上方にスーパーシフトした。 SN P9のリスクアレルでも同様のスーパーシフトが検出された。
[0319] 以上より、本発明者らは、 Spl転写因子が SNP4および SNP9のリスクアレル周辺の D NA配列と結合すると結論づけた。本発明者らは、 Splとこれらの SNPとの間の相互作 用が AGTRL1遺伝子のプロモーター活性またはェンノヽンサ一活性に影響を与える可 能性があるとの仮説を立てた。
[0320] 〔実施例 10〕 Splは AGTRL1 mRNAの転写を誘導する
Splが AGTRL1遺伝子の転写に影響を及ぼすという仮説を確かめるために、本発明 者らは 293T細胞に対して、 pCAGGSモッタベクターまたは Spl-発現ベクター(pCAGG S-Spl)のいずれかをトランスフエタトし、種々の時点で半定量的 RT-PCRにより AGTR LI mRNAレベルを比較した(図 10a)。本発明者らは、内因性 293T細胞では AGTRL1 mRNAは検出されないが、 Splの過剰発現力AGTRL1 mRNAの転写を顕著に誘導す ることを見いだした。リアルタイム RT-PCRによっても同じ結果が定量的に確かめられ た(図 10b)。
[0321] 〔実施例 11〕 Splは SNP4のリスクアレルにおけるプロモーター機能を活性ィ匕する
SNP4におけるプロモーター活性を評価するために、本発明者らは、ルシフェラーゼ レポーターベクター(pGL3-basic)に、リスクアレルおよび非リスクアレルに相当する S NP4周囲の 44 bp断片を含めたもの(それぞれ- 279G-Lucおよび- 279A-Luc)を構築 した上で、それらをモッタ pCAGGSベクターまたは pCAGGS-Splベクターの!/、ずれか と同時トランスフエタトした SBC-3細胞を用いてルシフェラーゼアツセィを行った(図 11 a) 0モッタ pCAGGSをトランスフエタトした細胞では、ルシフェラーゼ活性が SNP4断片 によって上昇することはな力つた。 Splを過剰発現させた細胞では、ルシフェラーゼ活 性はリスクアレルの方が対照(pGL3-basic)よりも 2.3倍の高さであった。非リスクアレル では、活性は対照の 1.7倍の高さに過ぎな力つた。すなわち、 SNP4周辺のプロモータ 一機能は Spl転写因子の存在下では活性ィ匕され、リスクアレルは非リスクアレルよりも 有意に強 、活性を示した (p = 0.003)。
[0322] 〔実施例 12〕 SNP4および SNP9の組み合わせは AGTRL1の転写に影響を及ぼす
本発明者らは、ルシフェラーゼレポーターベクター(pGL3-basic)に、表 13で明らか にした 3つのハプロタイプ別に SNP4周囲の 44 bp断片および SNP9周囲の 53 bp断片を 含めたものを構築した上で、それらをモッタ pCAGGSベクターまたは pCAGGS-Splベ クタ一と同時トランスフエタトした SBC-3細胞を用いてルシフェラーゼアツセィを行った (図 l lb)。モッタ pCAGGSをトランスフエタトした細胞では、ルシフェラーゼ活性では H apl構築物(リスクハプロタイプ)で最も高ぐ Hap3構築物(非リスクハプロタイプ)で最 も低力つた。 Hap2構築物(中間型ハプロタイプ)は中間の活性を示した。その結果、 A GTRL1遺伝子のプロモーター活性を増強させるイントロン性ェンハンサ一は SNP9の リスクアレル(+1355G)周辺に存在した。これらのデータは、ハプロタイプ解析におけ るォッズ比の結果と整合する(表 11)。 Splを過剰発現させた細胞では、活性はさらに 増強された。
産業上の利用可能性
[0323] 本発明者らは、全ゲノムを対象とした SNPによるゲノムワイド相関研究を行い、脳梗 塞の関連遺伝子の同定を行った。患者群は九州大学大学院病態機能内科学および 関連施設に通院中の脳梗塞患者 1,112例であり、対照群は 2002年力 2003年に施行 した久山町住民健診受診者の中から患者群 1例に対し性別および年齢を対応させた 対照者を無作為に選出した。文部科学省 '厚生労働省'経済産業省共同の「ヒトゲノ ム '遺伝子解析研究に関する倫理指針」に基づき、説明者による説明後、書面による インフォームドコンセントを取得し、血液サンプルおよび臨床情報を得た。この患者群 1,112例および対照群 1,112例の中力 無作為に 188例ずつを選び、全ゲノムに分布 する 52,608ケ所の SNPを測定し、 1次スクリーニングを行った。 1次スクリーニングにお いて患者群と対照群の間に関連が認められた 1098ケ所の SNPについて全対象者を 用いた 2次スクリーニングを行い、脳梗塞に関連する遺伝子の同定を行った。全ゲノ ムにおける SNPの測定には、東京大学医科学研究所のインベーダー法を利用した大 量高速 SNPタイピングシステムを用いた。
[0324] その結果、 AGTRL1 (Angiotensin II receptor-like 1)遺伝子と PRKCH (Protein kina se C eta)遺伝子を脳梗塞の関連遺伝子として同定した。 AGTRL1遺伝子においては 、 5'側、遺伝子内および 3'側に存在する SNPのほとんどが患者群と対照群の間に p
< 1x10— 4の有意差を認めた。この関連は対象者を動脈硬化と関連する脳梗塞 (ラタナ 梗塞およびァテローム血栓性梗塞)患者に限った場合にも認められた。また、ルシフ エラーゼアツセィおよびゲルシフトアツセィにより AGTRL1遺伝子の SNP間で転写因子 の結合に差が見られ、 5 '側または 3 '側の SNPを含む領域への転写因子の結合の差 力 SAGTRL1遺伝子の mRNA発現量を変化させることが明らかとなった。従って、 AGTR L1遺伝子においては 5 'または 3 '側の SNPを含む領域への転写因子の結合の差によ り AGTRL1の発現量が変化し脳梗塞等の動脈硬化性疾患の発症に関与すると考え られた。
一方、 PRKCH遺伝子においては遺伝子内の中央部分 (イントロン 5-イントロン 10) の領域のみで動脈硬化と関連する脳梗塞患者群 (ラタナ梗塞群およびァテローム血 栓性梗塞群)の間に pく 1x10— 4の有意差を認めた。この領域のダイレクトシークェンス によりアレルが G力も Aに変わることにより 374番目のアミノ酸がパリン (Val)力 イソロイ シン(lie)に置換される SNP(rs2230500)を認め、 lie (Aアレル)をもつ人は脳梗塞患者 群に有意に多かった。 In vitro autophosphorylation assayを用いてこのアミノ酸置換 力 SPRKCHの遺伝子産物であるプロテインキナーゼ (Protein kinase C eta; PKC- eta )の活性に与える影響を検討したところ、 Valから lieへのアミノ酸置換は PKC- etaの自 己リン酸化反応を亢進させる事が明らかとなった。すなわち、 PKC- etaの 374番目の アミノ酸を Valから lieに置換する SNP (rs2230500)は PKC- etaの活性に影響しており、 この活性の差が脳梗塞と関連していると考えられた。また、 PKC- etaの巿販抗体 (ラビ ットポリクローナル抗体、 Santa Cruz)を用いてヒトの剖検例の冠状動脈の免疫組織染 色を行った所、 PKC-etaはヒト冠状動脈の内皮細胞および動脈硬化巣に発現してお り、その程度は動脈硬化の程度と強く相関していた。すなわち PKC- etaはヒトの動脈 硬化の発症 ·進展に深く関与していることが明ら力となった。さらに、 PKC-etaのァミノ 酸置換を伴う SNP (rs2230500)がヒトの動脈硬化性疾患の発症に関与するかどうかを 検討するために、 1988年に久山町一般住民健診を受けて長期観察中の久山町研究 の第 3集団のうち 2002年から 2003年にゲノム DNAを収集した 1,683例を用いて、脳梗 塞および心筋梗塞発症との関連を検討した。 14年間の追跡期間中 67例の脳梗塞発 症および 37例の心筋梗塞発症を認め、 rs2230500のアレルが GGである人と比べ、 AA
の人の脳梗塞のリスクは 2.83倍と有意に高かった。同様に心筋梗塞のリスクも GGの 人に比べ AAの人は 2.89倍上昇していた。以上の結果より、 PRKCH遺伝子のェクソン 9に存在する 374番目のアミノ酸を Valから lieへ置換する SNP (rs2230500)は、アミノ酸 置換により PKC-etaの活性が上昇し、種々のシグナル伝達を介してヒトにおける動脈 硬化を進行させ、最終的に一般住民における脳梗塞や心筋梗塞のリスクを上昇させ ていると考えられる。
[0326] 従来の高血圧、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、慢性関節リウマチなどの一般的な疾 患(common disease)におけるゲノムワイド相関研究を用いた候補遺伝子の探索にお V、ては、疾患群と対照群における SNPの頻度の差を比較し候補領域の絞込みを行う ケース'コントロール研究が用いられている。しかし、脳梗塞などの疾患は加齢ととも に発症率が上昇し、またその発症率に男女差があることもよく知られている。従って、 患者群と対照群の SNPの差を比べる際には、両群間の年齢、男女比を考慮する必要 がある。し力しながら、これまでの報告においては疾患群と対照群とを完全に一致さ せたものは見当たらない。その理由のひとつとして、患者群は病院に通院している患 者であるため比較的容易にサンプルの収集が可能であるが、対照群は病気を持たな い一般住民であるためサンプルの収集が困難であり、また性別や年齢を一致させる ためには患者群より数倍多いサンプルの収集が必要となることがある。久山町の疫学 集団は一般住民の健診受診者力もなる集団であるため、これまでの研究では収集が 困難である病気をもたない人を多数含んでおり、患者群の 1例ごとに性別'年齢を一 致させた対照群を設定することが可能であった。また、ケース'コントロール研究では 対照群の設定に偏りがあると疾患群,対照群の差が本来とは異なる結果を生じること が知られている(selection bias)。久山町の住民は、これまでの疫学調査の結果より、 性、年齢構成等が日本人の標準的構成であることから、日本人全体のサンプル集団 であると証明されており、その集団の中から無作為に設定された対照群には偏りがな いと考えられる。従って、今回の脳梗塞の関連遺伝子を探索する際に久山町集団を 対照群に設定したことにより従来の報告と比べ、より正確に高い精度で疾患と関連す る遺伝子を同定できていると考えられる。
[0327] 久山町住民を用いることによる最大の利点は、この集団が一般住民を対象とした長
期前向き追跡研究のための集団である点にある。ゲノムワイド相関研究で見つけ出さ れる疾患関連遺伝子やその遺伝子多型が真に疾患と関係しているかどうかを検証す るために、現時点では疾患関連遺伝子を選び出した集団とはまったく別の集団を用 V、てケース 'コントロール研究を行 、再現性が得られるかどうかを検討して 、る。しか しながら、ケース'コントロール研究は対象集団の選択による偏りの可能性が否定で きな 、ため別の集団を用いて再現性が得られても疑陽性の可能性が否定できな 、。 一般的に疾患と危険因子の関連を検討する場合、疾患を発症していない集団を長 期に追跡し、危険因子が疾患の発症に及ぼす影響を検討する前向き追跡研究 (コホ ート研究)の研究手法力 Sもっとも精度の高い方法と考えられているが、対象者の収集 及び追跡調査に莫大な時間 ·労力 ·費用が力かるためこれまでにこの方法を用いて 疾患と遺伝子多型の関連を検討した報告はない。久山コホートはこの目的のために 設定された集団であり、し力も以前の集団も追跡調査が継続されているため今回の P RKCH遺伝子のように遺伝子多型と脳梗塞との関連を 14年間にわたる長期前向き追 跡調査のデータを元に検証することが可能となった。今回の結果は一般住民レベル で遺伝子多型が疾患の発症と関連していることを証明した世界で始めてのケースで ある。また、久山コホートは、性、年齢構成等が日本人の標準的構成であることから、 日本人全体のサンプル集団であるということができ、今回の結果は久山町住民だけ でなく日本人全体に当てはまると考えられる。