TGF ;8 2を標的としたアルツハイマー病治療薬のスクリーニング法
技術分野
本発明は、 アルツハイマー病の予防薬又は治療薬をスクリーングする方法に関 する。 さらに具体的には、 アミロイ ド 前駆体タンパク質 (APP) を発現する神経 細胞上の APPと形質転換増殖因子 2 (TGF β 2) との結合阻害を指標とすることを 明
含む前記薬剤のスクリーニング方法に関する。 発明の背景 書 最も一般的な神経変性疾患であるアルツハイマー病(AD) .は、神経細胞の減少、 細胞内の神経原線維変化、 細胞外のアミロイド斑という 3つの主要な病理学的所 見により特徴付けられる。 細胞外アミロイ ド斑の主な成分は、 膜貫通型の前駆体 ΑΡΡから切り出されたアミロイド) 3 (λ β ) である (Nev et al ., 2000)。 A j3 の 産生と蓄積は AD発症に寄与すると推測されてきた (Citron et al., 1992; Cairns et al . , 1993; Hardyと Selkoe, 2002)。 in vitroでは、 多量の A ]3が蓄積すると 初代培養神経細胞およぴ数種の神経細胞株は細胞死に至る (Yankner et al . , 1989; Loo et al., 1993; Gschwind and Huber, 1995; Kaneko et al. , 1995; Pike et al . , 1996; Giovanni et al. , 1999; Sudo et al. , 2001)。 本発明者らは最近、 A j3が p75NTRおよび/または PLAIDDへ結合し、 Go/i、 J "皿、 NADPHォキシダーゼ、 カスパーゼ 3/関連カスパーゼを介する神経細胞死の経路を開始させることによ つて神経細胞死を誘導することを見出した (Tsukamoto et al. , 2003; Hashimoto et al., 2004) o .
早期に発症する家族性 AD (FAD) に関する遺伝学的研究により、 APP の構造上 の変化が ADと密接に関係することが示された。 FAD患者では A ]3 産生が増加して いる (Suzuki et al. , 1994; Tomita et al . , 1997)。 FAD遺伝子を過剰発現させ たトランスジェニックマウスと、 APP の生理的なプロモーターの制御を受けてい る 1 コピーの V642I - APP 遺伝子を持つノックインマウスにおいて、 A jS卜 42 や
A ^ 1-43 などの神経毒性を有する A j3 の産生が亢進していることが確認された (Borchelt et al. , 1996 ; Reaume et al., 1996 ; Citron et al. , 1997; Hock et al., 2001; Janus et al ., 2001; Abe et al., 2003; Kawasumi et al. , 2004)。 APP は構造的には細胞表面の受容体に類似している (Kang et al. , 1987)。 FAD に関連する APP変異体を過剰発現させると、 細胞内の細胞死シグナル伝達系が活 性化されて神経細胞死が誘導されることを複数のグループが見出した(Yamatsuj i et al. , 1996a, b ; Wolozin et al . , 1996; Zhao et al. , 1997; Luo et al. , 1999; Hashimoto et al.,. 2000)。 抗 APP抗体を APPに結合させると、 ヘテロ三量体 G タンパク質である Go、 JNK、 NADPHォキシダーゼ、 カスパーゼ 3/関連カスパーゼ をこの順番に介する神経細胞死が誘発される (Rohn et al. , 2000; Sudo et al. , 2001; Hashimoto et al. , 2003 a, b)。 本発明者らはさらに、 FADに関連する APP 変異体の種類により、 異なる複数の細胞内メカニズムが神経毒性の原因であるこ とも見出した (Hashimoto et al., 2000)。 APPリガンドの存在がこのシグナルを 調節することを示す直接的な証拠はまだ存在していないが、 これらの結果は APP が細胞死シグナルを伝える特定のリガンドに対する受容体である可能性を示して いる。
近年 ADの発症機序と治療法に関して研究が進み、 炎症反応が AD発症に寄与す ることが示された (McGeer et al. , 1996; Cooper et al. , 2000; Akiyama et al. , 2000; Jones et al . , 2001; Yagami et al . , 2001)。 この仮説は、 抗炎症薬が AD 病変のリスクを軽減する、 というヒ トと動物での研究結果により裏付けられた (Hull, M. et al . , 1999; Hal l iday et al . , 2000 ; Lim et al. , 2000)。 これに 関連して、 ィンターロイキン - 1 (IL- 1)、 IL-6、 TNF- α、 IL- 8、 形質転換増殖因子 β (TGF |3 )、 マクロファージ炎症性タンパク質- 1 (MIP-1) を含む、 AD 患者で検 討された実質上すベてのサイ トカインとケモカインは、 非痴呆のサンプルと比べ て AD患者で増加しているようである (Akiyama et al. , 2000)。
形質転換増殖因子 0 (TGF ^ ) は、 特定の組合せの標的遺伝子の発現を調節す ることによって、 細胞増殖、 細胞死、 細胞分化、 炎症、 免疫反応を含む幅広い生 物活性に関連すると考えられてきた (Massagug et al . , 1998 ; Massague et al . ,
2000)。 TGF j3には 3つのサブタイプ、 TGF 0 1、 TGF jS 2、 TGF /3 3が存在する。 これ
ら 3つのサブタイプはいずれも、タイプ Iとタイプ IIの TGFiS受容体に結合する。 これらの受容体は、 セリン/スレオニンキナーゼファミリ一に属し、 Smadフアミ リーの転写因子を介して標的遺伝子へのシグナル伝達系を活性化する。 一般的に は、 TGFj3フアミリーに属する増殖因子の機能は細胞の状態と細胞のタイプにより さまざまであろうと考えられてきた。 TGFjS lは通常、 細胞增殖を阻害し、 多種多 様な細胞でアポトーシスを誘導する。 TGFjS依存性アポトーシスは、 in vivoで損 傷を受けた細胞あるいは異常細胞を正常組織から排除する際に重要である。 しか しながら特別な条件では、 このサイ トカインにはさまざまな悪性の細胞と正常細 胞をアポトーシスから保護する能力がある (Akhurst et al. , 2001)。
神経組織では、 TGF 3は神経成長因子産生を増加させることにより、 神経栄養 因子作用を示す (Chalazonitis et al, , 1992)。 この結果と一致して、 TGF j3は in vitroで神経細胞の生存を延長させる(Martinou et al., 1990; Poulson et al. , 1994; Kriegstein et al. , 1995; Kriegstein et al. , 2000)。 さらに、 虚血†生脳 疾患では TGF ]31の発現量が増加していることも示された (Klempt et aL, 1992; Lindholm et a丄., 1992; Logan et al., 1992; Wang et al., 1995; Lehrman et al., 1995; Hill et al. , 1999; Boche et al., 2003)。 TGFjS lは、 低酸素障害による 神経の変性からも脳を保護している可能性がある。 TGFj31の神経栄養因子的な活 性に加えて、 ADにおける TGF|31の神経毒性についても示唆されている。 アミ口 ィ ド原性 APP変異体を過剰発現させたトランスジヱニックマウスでは、 TGF 1が Α/3の産生を亢進させた (Wyss- Coray et al. , 1997; Lesne et al., 2003)。
FADの脳で TGF]32発現量が増加していることが報告された (Flanders et al. , 1995; Lippa et al. , 1998; Peressと Perillo, 1995) 力 その生物学的意義は いまだ不明である。 Flanders らは、 前頭皮質のグリア細胞における TGFj32発現 量の著しい増加、' TGF 2で著しく染色される神経原線維変化、 TGF ]32で強く染色 されるアミロイ ド斑周囲のグリア細胞を報告した (Flanders et al. , 1995; Pratt と McPherson, 1997)。 また彼らは、 ELISA法で測定すると ADの脳では対照と比較 して TGF/32量が 3倍多いことも見出した。 Bodmerらは、 TGF ]32が APPの細胞外 ドメインに結合することを最初に報告した (Bodmer et al., 1"0)。
発明の概要
本発明者らは今回、 低レベルの野生型 APP (wtAPP) あるいは V642I- APPが異所 性に発現している場合、 TGF i3 2が APPの細胞外ドメインに結合し、神経細胞死が 誘発されること、 その一方で TGF j3 1 と TGF |8 3にはそのような作用がないことを 見出した。 このことは、 TGF ]3 2が細胞死を誘導する APPのリガンドであることを 示す。 また、 TGF ]3 2誘導性神経細胞死は、 APP、 PTX感受性へテロ三量体タンパク 質である Go、 JNK、 NADPHォキシダーゼ、 カスパーゼ 3/関連カスパーゼから成る 経路を介することを見出した。 この細胞死は、 野生型 APPを発現している神経細 胞よりも V642I - APPを発現している神経細胞で起こりやすい。 さらに、 神経細胞 とダリァ細胞のいずれにおいても、 TGF i3 2発現は毒性を有する A 3 1- 42によって のみ誘導され、 毒性が弱い A j3卜 40によっては誘導されないことを見出した。 これらの知見から、 AD患者では毒性を有する の増加によって TGF j3 2の発 現量が増加し、 他に異常な細胞条件が存在すると、 この TGF 2発現量の増加が APPへの結合を介して神経細胞死の発生と進行の原因となることが推定された。 したがって、 本発明は以下のように要約される。
本発明は、 第 1の態様において、 候補薬剤と、 形質転換増殖因子 j3 2 (TGF ^ 2) と、 アミロイド j3前駆体タンパク質 (APP) を発現する神経細胞、 その株化細胞又 はその神経系ハイプリッド細胞とを含む培地中で、 TGF i3 2と APPとの結合阻害を 指標としてアルツハイマー病の予防薬又は治療薬をスクリーングすることを含む、 薬剤のスクリーユング方法を提供する。
本発明の実施形態において、 前記細胞は APPを過剰発現しているものである。 本発明の別の実施形態において、 前記 APPは野生型又は変異体である。 前記変 異体の例は、 V642I-APP (野生型ヒ ト APPのァミノ酸配列中 642位のパリンがィソ ロイシンに置換された APP変異体 (Yamatsuj i T et al. , ΕΜΒΟ J 15: 498-509) である。
本発明の別の実施形態において、 前記結合阻害が前記細胞の細胞死の抑制と相 関する。
本発明の別の実施形態において、 前記結合阻害が前記細胞の生細胞数の測定に よって行われる。
本発明の別の実施形態において、 前記候補薬剤が小分子、 ペプチド、 ポリぺプ チド、 タンパク質、 ヌクレオチド、 ポリヌクレオチド又は核酸である。
本発明の別の実施形態において、 前記神経細胞がヒト又はマウス由来である。 本発明の別の実施形態において、 前記神経細胞が脳由来、 例えばヒ ト又はマウ ス脳由来である。
. 本発明は、 第 2の態様において、 候補薬剤と、 TGF 0 2を発現する神経細胞、 グ リァ細胞又はそれらの株化細胞とを含む培地中で、 TGF j8 2発現の低減を指標とし てアルツハイマー病の予防薬又は治療薬をスクリーングすることを含む、 薬剤の スクリ一ユング方法を提供する。
本発明の別の実施形態において、 前記別のスクリーニングがアミロイ ド - 42 の存在下で行われる。
本発明の別の実施形態において、 前記候補薬剤は小分子、 ペプチド、 ポリぺプ チド、 タンパク質、 ヌクレオチド、 ポリヌクレオチド又は核酸である。
本発明は、 第 3の態様において、 TGF 2に対する抗体、 その断片又はその誘導 体、或いは TGF 2の拮抗剤を有効成分として含む、アルツハイマー病の予防又は 治療用の医薬組成物を提供する。
本発明の別の実施形態において、 前記誘導体がぺグ化誘導体である。 ここで、 ぺグ化とは、 少なくとも 1つのポリェチエチレンダリコール分子をタンパク質の 例えばリシンの ε -アミノ基及び/又はアミノ末端に共有結合することをいう。 本明細書中で使用する略号は以下の意味を有する。 これらの略号は、 本明細書 中で正式名称の意味をもって互換的に使用される。
アミロイ ド 0前駆体タンパク質、 ΑΡΡ;
アルツハイマー病、 AD;
家族性アルツハイマー病、 FAD ;
アミロイ ド J3ぺプチド、 Α β ;
百日咳毒素、 ΡΤΧ ;
野生型 APP、 wtAPP;
グノレタチ才ンェチノレエステル、 GEE ;
Acetvl-L-Aspartyl-L-Glutarainyl-L-Valyl-L-Aspart-1-al , Ac-DEVD- CH0 ある
いは DEVD ;
ゥシ胎児血清、 FBS;
APPの His657 - Lys676 ドメイン、 ドメイン 20;
APPの Met677- Asn695 ドメイン、 ドメイン 19 ;
His657- Lys676欠失 APP695、 wtAPP A 20 ;
Met677-Asn695欠失 APP695、 wtAPP Δ 19。 図面の簡単な説明
図 1は、 wtAPPを過剰発現している神経系ハイプリッド細胞 F11で TGF j3 2が誘 発する細胞死 (上図) 及ぴグラフに示した実験での wtAPPあるいは wtAPLP2の免 疫ブロット解析 (下図) を示す。 6ゥヱルプレートに F11細胞を 7 X 104個/ゥ mル で播き、 pcDNA3-wtAPPあるいは pcDNA3. 1GS - mouse APLP2をトランスフエク トし て、 100 pM、 1 nM、 10 nM、 100 nMの TGF /3 1、 TGF j3 2、 TGF ^ 3 TGF α のいずれ かで処理した。 死細胞数は、 TGF j3 あるいは TGFひ での処理開始から 48時間後に トリパンブルー排除試験で計測した。 すべての値は、 少なくとも独立した 3つの サンプルの平均値士標準偏差を表す。 (A)レーン 1、 トランスフエクシヨンなし; レーン 2、 空の pcDNA3ベクター ; レーン 3、 wtAPP; レーン 4、 wtAPP +100 pM TGF β 1 ; レーン 5、 wtAPP+1 nM TGF j8 1 ; レーン 6、 wtAPP+10 nM TGF ]3 1 ; レーン 7、 tAPP+100 nM TGF jS 1 ; レーン 8、 wtAPP+100 pM TGF j3 2 ; レー 9、 wtAPP+1 nM TGF β 2 ; レーン 10、 wtAPP+10 nM TGF ^ 2 ; レーン 11、 wtAPP+100 nM TGF j3 2。 (B) レーン 1、 トランスフエクションなし ; レーン 2、 空の pcDNA3ベクター ; レーン
3、 wtAPP, レーン 4、 wtAPP+100 pM TGF β 3 ; レーン 5、 wtAPP+1 nM TGF jS 3 ; レ ーン 6、 wtAPP+10 nM TGF jS 3; レーン 7、 wtAPP トランスフエクシヨン +100 nM TGF j3 3; レーン 8、 wtAPP トランスフエクション +100 pM TGF o! ; レーン 9、 wtAPP+1 nM
TGF a ; レーン 10、 wtAPP+10 nM TGF a ; レーン 11、 wtAPP+100 nM TGF a 。 (C) レーン 1、 トランスフエクションなし ; レーン 2、 空の pcDNA3べクター ; レーン
3、 APLP2、 レーン 4、 APLP2+100 nM TGF j3 1 ; レーン 5、 APLP2+100 nM TGF ]3 2 ; レ ーン 6、 APLP2+100 nM TGF /3 3 ; レーン 7、 APLP2+100 nM TGF c¾。
図 2は、 TGF i3 2が誘導する細胞死が、 V642I-APPを異所発現している F11細胞
でより起こりやすいことを示す。 (A) 6ゥエルプレートに 7 X 104個/ゥエルで播ぃ て pINDitAPPあるいは pIND- V642I - APPをトランスフエクトした Fl 1/ECR細胞を、
20 nM TGF /3 2の存在下あるいは非存在下で、 1 μ Μ ェクジソン (EcD) または 5 μ Μ
EcD、 あるいは同容量のエタノール (EtOH) で処理したときの死細胞。 /0を示す。 死 細胞数は、 EcDでの処理開始から 72時間後にトリパンブルー排除試験で計測した。 すべての値は、 少なくとも独立した 3つのサンプルの平均値土標準偏差を表す。
(B) グラフに示した実験で EcDが誘導した wtAPPあるいは V642 I- APPの免疫ブロ ット解析を示す。 ライセート (各レーン 20 /z g) を、 SDS- PAGEと、 APP検出のた めの 22C11とローディングコントロールとしての内在性ァクチン検出のための抗 ァクチン抗体を使った免疫プロットでの解析に供した。
図 3は、 TGF i3 2仲介の細胞死の特徴を示す。 6ゥエルプレートに F11細胞を 7
X 104個/ゥエルで播いて pcDNA3- wtAPP を トランスフエタ トし、 100 ^ M
Ac-DEVD-CHO (DEVD) あるいは 1 mM GEEの存在下あるいは非存在下で (A)、 ある いは、 1 i g/ml PTX、 1 Z M SP600125 (SP) , 50 μ M PD98059 (PD)ヽ 20 M SB203580
(SB)、 300 μ Μ アポシニン (AP0)、 100 μ Μ ォキシプリノール (0ΧΥ)、 1 raM L— ΝΜΜΑ のいずれかの存在下あるいは非存在下で (B)、 20 nM TGF j3 2で処理した。 死細胞 数は、 TGF J8 2と DEVD、 あるいは TGF 0 2と GEEでの処理開始から 48時間後に、 ト リパンブルー排除試験で計測した (上図)。 すべての値は、 少なくとも独立した 3 つのサンプルの平均値土標準偏差を表す。下図は、グラフに示した実験での wtAPP の免疫プロット角析を示す。 ライセート (各レーン 20 / g) を、 SDS PAGEと、 APP 検出のための 22C11を使った免疫プロットでの解析に供した。 (A)レーン 1、 トラ ンスフェクションなし; レーン 2、 空の pcDNA3ベクター; レーン 3、 wtAPP, レー ン 4、 wtAPP+20 nM TGF i3 2 ; レーン 5、 wtAPP+20 nM TGF β 2+100 μ Μ Ac-DEVD-CHO; レーン 6、 wtAPP+20 nM TGF β 2+1 mM GEE 。 (B)レーン 1、 トランスフエクシヨン なし; レーン 2、 空の pcDNA3ベクター; レーン 3、 wtAPP レーン 4、 wtAPP+20 nM
TGF |S 2 ; レーン 5、 wtAPP+20 nM TGF β 2+1 μ g/ml PTX; レーン 6、 wtAPP+20 nM
TGF β 2+1 SP600125 ; レーン 7、 wtAPP+20 nM TGF ]3 2+50 μ Μ PD98059; レー ン 8、 wtAPP+20 nM TGF ]3 2+20 μ Μ SB203580; レーン 9、 wtAPP+20 nM TGF ]3 2+300 μ Μ アポシニン ; レーン 10、 wtAPP +20 nM TGF ^ 2+100 μ Μ ォキシプリノーノレ ;
レーン 11、 wtAPP+20 nM TGF β 2+1 mM L -匪 MA。 (C) 6 ゥエルプレートに F11細胞 を 7X104個/ゥエルで播いて、 pc進 3-wtAPP、 pcDNA3 - wtAPP Δ 20、 pcDNA3-wtAPP
Δ19のいずれかをトランスフエタトし、 20nMTGF/32で処理し、 あるいは無処理 とした。 死細胞数は、 TGFj82と DEVD、 あるいは TGFj82と GEEでの処理開始から
48時間後に、 トリパンブルー排除試験 (左図) と WST- 8アツセィ (右図) で計測 した。 すべての値は、 少なくとも独立した 3つのサンプルの、 トリパンプル一陽 性細胞の%、 あるいは吸光度 (450 nm) 士標準偏差を示す。 図 3C の下図は、 グ ラフに示した実験での wtAPPの免疫プロット解析を示す。 (レーン 1、 トランスフ ェクシヨンなし ; レーン 2、 空の pcDNA3ベクター ; レーン 3、 wtAPP、 レーン 4、 wtAPP+20 nM TGF β 2; レーン 5、 wtAPPA20 ; レーン 6、 wtAPP Δ 20+20 nM TGF 2; レーン 7、 wtAPP Δ 19; レーン 8、 wtAPPA 19+20 nM TGFj32)。
図 4は、 TGFjS 2力 S APPの細胞外ドメインに結合して細胞死を誘導することを示 す。 (A) 過剰量の TGFjS l (200 pmol) 存在下あるいは非存在下で、 APP- Fcタンパ クを固定化した Protein G Sepharose ビーズで組換え TGF jS 2 (20 pmol) を共免 疫沈降させた。 免疫沈降物中の TGF ]32は抗 TGF ;82抗体で特異的に検出し、 免疫 沈降物中の APP- Fcタンパクは抗 APP - ECD抗体である 22C11で検出した。 (B) TGF βが誘導する F11細胞死に対する TGF]31の作用を示す。 6ゥエルプレートに F11 細胞を 7X104個/ゥエルで播いて pcDNA3- wtAPP をトランスフエク トし、 200 nM
TGFi31の存在下あるいは非存在下で 20 nM TGFj32で処理した。 死細胞数と生細 胞数は、 TGF^32および Zまたは TGF^S lでの処理開始から 48時間後に、 トリパン ブルー排除試験 (左図) と. WST- 8アツセィ (右図) でそれぞれ計測した。 すべて の値は、 少なくとも独立した 3つのサンプルの、 トリパンブルー陽性細胞の0 /0、 あるいは吸光度 (450 nm) 土標準偏差を示す。 図 4B の下図は、 グラフに示した 実験での wtAPPの免疫プロッ ト解析を示す。 ライセート (各レーン 20 jug) を、
SDS-PAGEと、 APP検出のための 22C11を使った免疫ブロットでの解析に供した。 レーン 1、 トランスフエクションなし ; レーン 2、 空の pcDNA3ベクター ; レーン
3、 wtAPP; レーン 4、 wtAPP+20 nM TGF /32; レーン 5、 wtAPP +200 nM TGF /31 ; レ ーン 6、 wtAPP+20 nM TGF;82+200 nM TGFjS 1。 (C) TGF^ 2は、 EGFR- ED+TM/APP - CD を介した、 20 nM EGF処理で誘導される Fll細胞の細胞死を促進しないことを示
す。 6 ゥエルプ レー トに F11 細胞を 7 X 104 個/ゥエルで播いて、 pcDNA3-EGFR-ED+TM/APP-CDあるいは pcDNA3. 1ベクタ一骨格をトランスフエタト し、 20 nM TGF 2の存在下あるいは非存在下に、 I nM EGFで処理した。 ライセー ト (各レーン 20 ju g) を、 SDS-PAGEと、 EGFRに対する抗体を使った免疫プロッ トでの解析に供した (図 4 C の下図)。 レーン 1、 空の pcDNA3ベクタートランス フエクション; レーン 2、 空の pcDNA3ベクタートランスフエクション +lnMEGF ; レーン 3、 空の pcDNA3ベクタートランスフエクション +20nMTGF j3 2; レーン 4、 空 の pcDNA3 ベクター ト ランスフエクショ ン +lnMEGF+20nMTGF β 2 ; レーン 5 EpcDNA3- EGFR- ED+TM/APP - CD ト ラ ン ス フ エ ク シ ョ ン ; レ ー ン 6 、 EpcDNA3-EGFR-ED+TM/APP-CD ト ラ ンスフエク ショ ン +lnMEGF ; レーン 7、 EpcDNA3 - EGFR— ED+TM/APP— CD トランスフエクシヨ ン +20nMTGF β 2 ; レーン 8、 EpcDNA3-EGFR-ED+TM/APP-CD トランスフヱクシヨ ン +lnMEGF+20nMTGF β 2。 (D) TGF β 2/wtAPP が誘導する F11 細胞の細胞死に対する、 抗 TGF 2 中和抗体、 D-Serl4-HNの作用を示す。 6 ゥエルプレートに F11細胞を 7 X 104個/ゥエルで播 いて、 pcDNA3 - wtAPPをトランスフエタ トし、 10 μ g/ml抗 TGF /3 2中和抗体、 ある レ、は 10 nM D-Serl4-HNの存在下あるいは非存在下に、 20 nM TGF ]3 2で処理した。 死細胞数は、 TGF' i3 1あるいは TGF ]3 2での処理開始から 48時間後にトリパンブル 一排除試験で計測した。 すべての値は、 少なくとも独立した 3つのサンプルの平 均値土標準偏差を示す。 図 4 D の下図は、 グラフに示した実験での APPの免疫 ブロッ ト解析を示す。レーン 1、 トランスフエクションなし;レーン 2、空の pcDNA3 ベクター ; レーン 3、 wtAPP; レーン 4、 tAPP+20 nM TGF /3 2; レーン 5、 tAPP+20 nM TGF ]3 2+10 μ g/ml 抗 TGF j3 2 中和抗体; レーン 6、 wtAPP+20 nM TGF j3 2+10 nM D - Serl4_HN。
図 5は、 TGF ]3 2は、 wtAPPを過剰発現させた大脳皮質初代培養神経細胞で細胞 死を引き起こすことを示す。 ポリ- L-リジンコートした 96ゥエルプレートにマウ ス E14 PCNを 5 X 104個/ゥエルで播いた。 培養開始後 (DIV) 3日目に、 lacZある いは wtAPPをコードするアデノウィルスを 5M0Iで PCNに感染させた。培養開始後
4日目に、 PCNを 200 nM TGF β 1 , TGF /3 2、 TGF 3のいずれかで処理した。 TGF 0 での処理開始から 72時間後に、材料と方法に記載した方法で、 生細胞数を WST - 8
アツセィ (A) と力ルセインを用いたアツセィ (B) で計測した。 値は、 独立した 3つのサンプルの吸光度(450 nm) あるいは蛍光強度土標準偏差を示す。 (C)は グ ラフに示した実験における、 アデノウィルスを使って過剰発現させた wtAPPの免 疫プロット解析を示す。 PCNのライセートを、 SDS- PAGEと、 APP検出のための 22C11 とローディングコントロールとしての内在性ァクチン検出のための抗ァクチン抗 体を使った免疫ブロットでの解析に供した。 レ^ "ン 1、感染なし; レーン 2、感染 なし +100 nM TGF j8 1; レーン 3、感染なし +100 nM TGF j3 2; レーン 4、 感染なし +100 nM TGF j3 3、 レーン 5、 lacZ感染;レーン 6、 lacZ 感染 +100 nM TGF j3 1; レーン 7、 lacZ ig¾+100 nM.TGF i3 2; レーン 8、 lacZ感染 +100 nM TGF /3 3 ; レーン 9、 wtAPP 感染; レーン 10、 wtAPP感染 +100 nM TGF ]3 1 ; レーン 11、 wtAPP感染 +100 nM TGF β 2; レーン 12、 wtAPP感染 +100 nM TGF jS 3 ; レーン 13、 V642I— APP感染; レー ン 14、 V642I-APP感染 +100 nM TGF jS l ; レーン 15、 V642I - APP感染 +100 nM TGF β 2; レーン 16、 V642I- APP感染 +100 nM TGF j3 3 。 図 5 Dは、 カルセィン染色し た PCNの蛍光顕微鏡写真を示す。 (A) で示した実験に対応している。 独立した 3 つの実験での代表的な結果を示す。
図 6は、 TGF 2は、 FAD関連 V642I- APPが誘導した大脳皮質初代培養神経細胞 の細胞死を促進することを示す。 ポリ- L-リジンコートした 96ゥヱルプレートに マウス E14 PCNを 5 X 104個/ゥヱルで播いた。 培養開始後 3.日目に、 lacZ (A)、 wtAPP (B)、 V642I-APP (C) をコードするアデノウイルスをさまざまな MOIで PCN に感染させた。 培養開始後 4 日目に、 アデノウイルスに感染した PCN を 20 nM TGF iS l、 TGF /3 2、 TGF 3のいずれかで処理した。 インキュベーション 72時間後 に、 材料と方法(後述の実施例)に記載した方法で、 生細胞数を力ルセイン蛍光ァ ッセィにより計測した。 すべての値は、 少なくとも独立した 3つのサンプルの平 均値士標準偏差を示す。 (D)は、 グラフに示した実験における、 さまざまな M0I でアデノウィルスを使って過剰発現させた wtAPPの免疫プロット解析を示す。 PCN のライセートを、 SDS- PAGEと、 APP検出のための 22C11とローデイングコント口 ールとしての内在性ァクチン検出のための抗ァクチン抗体を使った免疫プロット での解析に供した。
図 7は、 神経細胞とグリア細胞における、 A 卜 42ペプチド処理による TGF ]3 2
の mRNAとタンパクの誘導を示す。 (A)〜(D)_:すべての実験は 3回行った。 (A)、
(C) : 6ゥエルプレートにヒ ト神経膠芽腫の細胞株 Bul7 (A)、 あるいはヒト神経芽 細胞腫の細胞株 SHSY- 5Y (C) を 1X105個/ゥエルで播いて、 10% FBSを含む DMEM 培地で培養し、 その後、 細胞を ΙΟ ηΜ Α (1-40) あるいは lO nMAjS (1-42) で 処理し、 または無処理とした。 (B) 、 (D) :ポリ- L-リジンコートした 6ゥエルプ レートにマウス E14 PCNを 1X106個/ゥエルで播いて、 Neuron培地 (住友ベータ ライ ト) で培養した。 培養開始後 3 日目に、 N2添加物 (ギブコ) を含む DNEMに 培地を交換した。培養開始後 4日目に、 10 nMA^S (1-40) あるいは 10ηΜΑ;3 (1-42) で処理し、 または無処理とした。 (A〜C)、 指定されたインキュベーション時間に
IS0GENを使って細胞を回収し、メーカーの説明書に従ってトータル RNAを調製し た。 各インキュベーション時点で、 TGF/31、 TGF β 2, TGFj33 mRNA の発現量を、 内部コントロールとしての G3PDHniRNAの発現量でまず補正した。次に、各時点で、
Ai3で処理した細胞中での TGFi32、 TGF ]33 mRNAの発現量を、 非処理細胞 中での発現量の平均によってさらに捕正した。 各図の水平バーの数値は、 各時点 での、 TGF|31、 TGFj32、 TGF^ 3 mRNA の補正済み発現量の非処理細胞中での発現 量に対する比を表す。 すべての値は、 少なくとも独立した 3つのサンプルの平均 値土標準偏差を示す。 (D) TGF 2発現量を PCN調製後 144時間までモニターした。 各インキュベーション時点で、 TGFi32 mRNA の発現量を、 内部コントロールとし ての G3PDH mRNAの発現量でまず補正した。 次に、 非処理細胞 (白いカラム) ある いは A 1 - 42で処理した細胞 (黒いカラム) 中での TGFj32 mRNA発現量を、 0時 間 (インキュベーションなし) の時点で回収した細胞中での発現量の平均によつ てさらに補正した。 水平バーの数値は、 TGF02mRNA発現量の、 0時間の時点で回 収した細胞中での平均に対する比を表す。 すべての値は、 少なくとも独立した 3 つのサンプルの平均値土標準偏差を示す。 (E) Aj31-42で処理した細胞で TGF/32 タンパク発現が増加する。 6ゥエルプレートに Bul7細胞を IX 105個/ゥエルで播 いて、 10% FBSを含む丽 EM培地で培養し、 その後、 細胞を lO nM AjS (1-42) で 処理した。 指定された時間の後、 細胞を PBSで 2回洗浄し、 細胞溶解用バッファ
[10 mM Tris-HCI (ρΗ7·5)、 1 mM EDTA、 1% Triton X- 100] で溶解させた。 細胞 のライセート (20 ^§/レーン) を、 抗 TGFj82ポリクローナル抗体 (500倍希釈、
Santa Cruz Biotechnology社) を使ってウェスタンブロットでの解析に供した。 図 8は、 TGF j3 l、 TGF i3 2、 TGF j3 3の Tg2576マウス脳での発現を示す。 18力月 齢の Tg2576雌性マウス (2、 4、 6、 8) と同腹仔の野生型雌性マウス (1、 3、 5、 7) の大脳皮質と海馬の矢状断切片を、 TGF i3 2 (1、 2、 3、 4、 5、 6) と TGF ]3 1 (7、 8) に対する抗体で免疫染色した結果を示す (A)。対物レンズの倍率は図の右側に示す。 スケールバーの数字は、 実際のサイズを表す ( ί ΐη)。 (1、 2) 抗 TGF j3 2抗体によ る大脳皮質 Mlの免疫染色の比較。 (3、 4) 抗 TGF J3 2抗体による海馬の免疫染色。 (5、 6) 8A 図の(3)と(4)で示した海馬の網状 ·分子層(ボックスで囲った部分)の 抗 TGF ]3 2抗体による免疫染色。 (7、 8) 抗 TGF ]3 1抗体による海馬の網状 ·分子層 の免疫染色。矢印は、抗 TGF ]3 1抗体により染色されたアミロイド斑を示す。(8) に 示した脳の切 は、切片 (6) の次に薄切された。 したがって、 これらは隣接切片 であった。 (B) 18力月齢の Tg2576雄性マウスとその同腹仔マウス由来の大脳皮 質と海馬のホモジネート (各レーン 20 M g) を、 SDS - PAGEと TGF /3 2に対する抗 体を使った免疫プロットに供した。
以下、 本発明を詳細に説明する。 本願は、 2004年 7月 2日に出願された米国仮 特許出願 6( /584, 482号の優先権を主張するものであり、該特許出願の明細書及び /又は図面に記載される内容を包含する。 発明の詳細な説明
本発明は、 候補薬剤と、 形質転換増殖因子 2 (TGF /3 2) と、 アミロイ ド /3前 駆体タンパク質 (APP) を発現する神経細胞、その株化細胞又はその神経系ハイプ リッド細胞とを含む培地中で、 TGF i3 2と APPとの結合阻害を指標としてアルッハ イマ一病の予防薬又は治療薬をスクリーングすることを含む、 薬剤のスクリー二 ング方法を提供する。 '
本発明のスクリーニング法は、 APP を発現する前記細胞を準備し、 これを適す る培地及び培養条件にて培養する工程、前記細胞の培地に TGF iS 2と候補薬剤を加 えて所定時間の間インキュベーションを行う工程、 TGF j3 2と APPとの結合阻害を 指標として該阻害の程度を測定する工程、 阻害活性を有する候補薬剤を選択する 工程を含む。
本発明の方法で使用可能な神経細胞、 その株化細胞又はその神経系ハイプリッ ド細胞は、 APPを発現する細胞である。 APPを過剰発現している細胞が好ましい。 神経細胞は、哺乳類、特にヒト又はマウス由来のものが好ましく、その具体例は、 マウス初代脳皮質神経細胞、 マウス脊髄神経、 ヒ ト神経芽腫細胞などである。 ま た、 前記神経細胞から継代された株化細胞の具体例は、 SK - SH5Y細胞, PC12細胞 などである。
本発明の方法では、 細胞として神経系ハイプリッド細胞の使用も可能である。 神経系ハイプリッド細胞は 2種類の神経細胞を融合させて株化した細胞であり、 APPが過剰発現可能である。 細胞の具体例は、 F11細胞 (Platika D et al . (1985) Proc. Natl . Acad Sci USA 82: 34499-3503)、 Fl l/EcD細胞 (Hashimoto Y et al. (2000) J Biol Chem 275: 34541-34551) などである。
APP は、 野生型でもよいし、 或いは変異体 (スプライス変異体を含む) でもよ い(例えば、 Tang, K et al. (2003) Eur. J. Neurosci. 18 : 102 - 108 ; Rang, J et al. (1987) Nature 325 : 733-736; Yaraada, T et al. (1987) Biochem. Biophys. Res.
Commun. 149 : 665- 671など)。 変異体は TGF 2 との結合能を有しているべきであ り、好ましい変異体の例は、 V642I- APPである。他の具体例は、 A617G, E618Q, E618G:
D619N, T639A, T639I, V640M, V640A, I641V, I641T, V642L, V642F, V642G, L648P などである。 このような変異体をコードする核酸は、 野生型 APPのヌクレオチド 配列において部位特異的突然変異誘発法、 PCR を利用した部位特異的突然変異誘 発法などの公知の手法を用いて作製可能である (Sambrook et al. (1989)
Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press;
Ausbel, FM et al . (1995) Short Protocols in Molecular Biology, John Wi ley
& Sons, Inc. ) 0 プラスミ ド、 ウィルスなどのベクターに該核酸を挿入し、 目的の 神経細胞宿主に形質転換又はトランスフエクションする (Sambrook et al . (1989) 上記; Ausbel, FM et al . (1995)上記)。 APPが過剰発現するために、 宿主一発現 系において、例えば SV40プロモーター、 CAGプロモーター, Sralfaプロモーター,
EFlalfa プロモーターなどの強力プロモーターや誘導剤などを使用して転写活性 を増強することによって達成可能である。
本発明の方法で使用可能な TGF 0 2には、 天然型又は組換え型のヒ ト TGF j3 2及
ぴマウス TGF ]3 2、 並びにヒト TGF j3 2のァミノ酸配列と好ましくは 90%以上、 さ らに好ましくは 95%以上の同一性を有し、かつ APPとの結合活性を有する同族体 或いは類似体が含まれる(例えば、 Twardzik, DR et al. (1988) DNA 7 : 1-8 ; Marquardt, H et al. (1987) J. Biol. Chem. 262 : 12127— 12131など)。 同族体に は例えばラット TGF ]3 2 が含まれる(Konrad, L et al. (2000) Endocrinology 141 : 3679-3686)。 TGF 0 2は、 上記文献記載の配列情報に基づいて c DNAクロー二 ングを行ったのち、 プラスミ ド、 ウィルスなどの発現ベクターに TGF j3 2 c DNA を組み込み、得られたベクターで原核細胞(細菌など)又は真核細胞(酵母、昆虫、 鳥類、 哺乳類細胞など) を形質転換又はトンスフ タトし、 細胞を培養すること を含む公知の手順で作製することができる (Sambrook et al.上記)。 なお、 組換 ぇ型ヒ ト TGF ]3 2は、 市販されているため、 容易に入手可能である。
細胞の培養は、 例えば、 DMEM+ 10°/。ゥシ胎児血清、 Ham' s F12+ 18%ゥシ胎児血 清などの培地中、 37°C、 C02濃度 5 %、 細胞密度 1〜 2割で培養を開始し、 通常 48時間で培地交換するなどの条件で行うことができる。
前記培地に加える TGF i3 2及び候補薬剤の量は 200 ηΜ (2 x 10"7 Μ) 程度でよい。 前記インキュベーションは、 温度 37°C、 C02濃度 5 %で行うことができる。 前記結合阻害の程度は、前記細胞の生細胞数を測定することにとって決定できる。 これは、結合阻害が前記細胞の細胞死の抑制と相関するからである。対照として、 TGF /3 2が含有しない系を使用し、そのときの生細胞数に対する測定生細胞数のパ 一セントを求める。 TGF j3 2及ぴ候補薬剤の存在下での測定における生細胞数のパ 一セントが高いほど、 候捕薬剤がアルツハイマー病の予防又は治療に有効である ことを示す。 必要ならば、 TGF 2の存在及び候捕薬剤の不在下での対照値も決定 する。
本発明における候補薬剤には、 例えば小分子、 ペプチド、 ポリペプチド、 タン パク質、 ヌクレオチド、 ポリヌクレオチド、 核酸などが含まれるが、 これらに限 定されないものとする。
本明細書で使用する 「小分子」 という用語は、 非ペプチド性又は非ヌクレオチ ド性の任意の有機化合物又は天然物を指し、 既知及び新規の化合物のいずれも包 含するものとする。小分子の例は、脂肪族化合物、芳香族化合物、脂環式化合物、
複素環式化合物、 ヘテロ芳香族化合物、 多環式化合物、 合成ポリマーなどの化合 物を含む。
ペプチド、 ポリペプチド及ぴタンパク質は、 アミ ド結合によるアミノ酸の連鎖 であり、 アルキル化、 ァシル化、 ぺグ化、 リン酸化、 硫酸化、 グリコシル化、 ADP リボシル化などの化学修飾誘導体も含む。
ヌクレオチド、 ポリヌクレオチド及ぴ核酸は、 DNA、 c DNA、 RNA (例えばアン チセンス RNA、 miRNA、 リボザィムなど) などを含む。
本発明はさらに、 候補薬剤と、 TGF ]3 2を発現する神経細胞、. グリア細胞又はそ れらの株化細胞とを含む培地中で、 TGF β 2発現の低減を指標としてアルッハイマ 一病の予防薬又は治療薬をスクリーングすることを含む、 薬剤のスクリ一ユング 方法を提供する。
神経細胞及ぴその株化細胞として、 上で例示したものをここで使用できる。 グ リァ細胞の具体例は、 Bul7神経膠芽腫などである。
本発明の測定系に、アミロイド j3 1-42 (A jS 1-42)を存在させるときには、 TGF 2 の発現が誘導される。 それゆえ、 本発明の方法では、 候補薬剤とともに Α ΐ - 42 が測定系に存在することが好ましい。
候補薬剤を加えたときに、 TGF j3 2の発現が低減又は抑制又は阻害されるならば、 この候補薬剤はアルツハイマー病の予防又は治療薬となり うる。
本発明で使用可能な候補薬剤の例は、 上記と同様の、 小分子、 ペプチド、 ポリ ペプチド、 タンパク質、 ヌクレオチド、 ポリヌクレオチド、 核酸などを含むが、 これらに限定されない。
そのような候補薬剤として、 TGF ]3 2の転写、 翻訳を抑制するような薬剤、 例え ば TGF 3 2 mRNAを切断する miRNA (又は siRNA) などが例示される。 文献記載の ターゲット部位の選択法 (Dykxhoorn, DM et al. (2003) Nature Rev. Mol . Cell
Biol. 77 : 7174 - 7181など) を利用して siRNA配列を予測することができる。 公知 のヘアピン型又はタンデム型の siRNA発現系を作製し、 本発明のスクリ一二ング 法に用いることができる(Brummelkamp, TR et al. (2002) Science 296 : 550- 553 など)。 或いは、 リボザィムゃアンチセンス RNAもまた、候補薬剤として試験に供 することができる。 リポザィムは、 mRNAの GUX (Xは任意のヌクレオチド) 部位
を切断する作用を有するため、 タンパク質合成を阻害することができる RNAであ り、 ハンマーへッド型及びヘアピン型リボザィムが知られている。 また、 アンチ センス RNAは、 niRNAに相補的な配列を有するために、 タンパク質への翻訳を抑 制することができる。
TGF /3 2の発現レベルは、 回収した細胞中の TGF j8 2タンパク質又は niRNAの存 在又は量をそれぞれ抗 TGF 2抗体又は核酸プローブ (TGF j8 2 mRNAに相補的な 約 30〜100塩基からなる配列) を用いて測定することができる。 検出法には、 蛍 光抗体法、 ELISA、 ウェスタンプロット、ハイプリダイゼーシヨンなどの公知の方 法が含まれる。
本発明はさらに、 上記 2つのスクリーニング方法を組み合わせることを含む。 この組み合わせによって、 前記 TGF ]3 2と APPとの結合を阻害する及び/又は前記 TGF 2発現を低減する候補薬剤を選択することができる。 あるいは、 それぞれの 方法でスクリ一ユングされた異なる候補薬剤の組み合わせを決定することもでき る。
本発明はさらに、 TGF i3 2に対する抗体、 その断片又はその誘導体、 或いは TGF β 2 の拮抗剤を有効成分として含む、 アルツハイマー病の予防又は治療用の医薬 組成物を提供する。
TGF j3 2 に対する抗体は、 TGF j3 2 を特異的に中和するいずれの抗体も含むが、 ヒトへの使用を目的とするときには、 ヒト化抗体、 ヒ ト抗体、 それらの断片、 又 はそれらの誘導体 (例えばぺグ化誘導体) などが好ましく使用される。 抗 TGF j3 2 抗体が TGF 2 と結合することによって、 TGF j8 2 と細胞上の APPとの結合が阻害 される。 TGF |3ファミ リーには TGF j8 1や TGF /3 2や TGF j3 3が含まれるため、 たと え TGF iS 2の作用が阻害されたとしても、 TGF 1や TGF 3が TGF 3 2の他の生理 機能をカバーすると考えられる。 一方、 抗 ΑΡΡ抗体の使用も考えられるが、 その 副作用のために、 本発明では好ましい薬剤ではない。
ヒト化抗体及ぴヒト抗体の作製は、 例えばファージディスプレイ法、 人工染色 体を利用する方法などによって行うことができる (例えば、 W0 91/10741、 W0
93/12227、W0 95/15982 , W0 97/13844, WO 97/07671 , Nature 148、 1547- 1553 (1994)、 再表 02/092812、 特表 11-510375、 特表 2003-527832など)。
ファ一ジディスプレイ法は、 M13 などの繊維状ファージのコートタンパク質 (g3Pなど)に外来遺伝子を融合タンパクとして発現させる方法である。 Marks らは、 1991年に、 ファージ上に抗体の可変領域が機能的に提示され、 スクリーニングに よって特異抗体が分離できることを報告し、 その後、 この方法は in vitroでの完 全ヒ ト抗体の作製法として利用されるようになっている(Marks, JD et al. (1991) J. Mol . Biol. 222 : 581-597)。 ヒ ト抗体ライプラリーには、 例えば正常なヒ トが 保有する VH及ぴ VL遺伝子を RT-PCRにより分離し、 ランダムに組合わせた ScFv や Fabとして抗体可変領域を提示したコンビナトリアルライブラリー、 ヒ ト B細 胞内で実際の抗体産生に使用される機能的な V 遺伝子断片と相補的決定領域 (CDR) 3に相当する領域に適当な長さのランダムなアミノ酸配列が組み込まれる ような合成オリゴ DNAを用いて抗体可変領域遺伝子を構築し、 抗体の多様性を人 ェ的に創出したライブラリーなどが含まれる(Barabas III, CF et al. (2001) harge Display A Laboratory Manual in Cold Spring Harbor Laboratory Press; McCaff erty, J et al. (1996) "Antibody Engineering - A Practical Approach" IRL Press, Oxford)。 抗体ライブラリーからの特異抗体の分離は、 精 製抗原を用いてスクリーニングする方法などによって行うことができる(Zhuang, G et al. (2001) J. Biosci. Bioeng. 91 : 474)。
ヒ ト免疫グロプリン遺伝子をコードする トランスジーンを保持し、 内在性の免 疫グロプリン遺伝子が不活性化されたトランスジエニック非ヒ ト動物(例えばマ ウス、 ゥシなど)からも、 ヒ ト抗体 は産生できる。 この方法では、 例えばヒ ト抗 体遺伝子座をもつヒ ト染色体断片を含む人工染色体を作製し、 ミクロセル融合を 介して ES細胞に人工染色体を移入するか、或いは核移植法によつて人工染色体を 卵子に導入することによって、 ヒ ト抗体を産生可能なトランスジヱニック非ヒ ト 動物を作製することができる。 トランスジヱニック非ヒ ト動物は、 内在性免疫グ 口プリン遺伝子を発現することなく、 免疫グロプリン成分の配列を機能的に再配 列し、 ヒ ト免疫グロプリン遺伝子によってコードされている種々のアイソタイプ の抗体を発現できる。 ヒ ト抗体は、 この非ヒ ト動物を、 目的の抗原で免疫するこ とによって得られる。
或いは、 複数のヒ ト免疫グロブリン遺伝子をゲノムに含むトランスジエニック
非ヒ ト動物のリンパ球細胞から、 ヒ ト抗体 鎖をコードする核酸の集団を単離し、 核酸をディスプレイベクターに導入し、 ディスプレイパッケージのライブラリー を得る。 ライブラリ一は抗体鎖をコードする核酸を含んでおり、 その抗体鎖がパ ッケージから提示される。 スクリ一二ングによって目的のヒ ト抗体を発現するク ローンを選択する。
本発明で使用される抗体は、 ポリクローナル抗体及ぴモノクローナル抗体、 好 ましくはモノクローナル抗体である。 モノクローナル抗体は、 例えば、 ヒ ト抗体 を産生するマウスを TGF jS S その断片又はその誘導体、 或いは TGF 2受容体の 細胞外ドメィンのぺプチド断片などで免疫し、 その B細胞又は脾臓細胞とミエ口 一マ細胞株との融合、 HAT培地での選択などを含む公知の手法によって作製する ことができる。
モノクローナル抗体は、 KShler-Milstein手法(Nature (1975) 256 : 495)を用い て、 非ヒ ト動物の B細胞をミエローマ細胞株と融合させることによって作製され る(岩崎辰夫ら著、 単クローン抗体、 ハイプリ ドーマと ELISA (1987) 講談社サイ ェンティブイク、東京、日本)。ハイプリ ドーマ作製の方法は、免疫した動物から、 脾臓等の抗体産生細胞を含む器官を切除しリンパ球を分離する。 分離したリンパ 球とミエローマ細胞(例えば P3細胞)との細胞融合を、例えば RPMI - 1640培地中、 50%PEG溶液の存在下で行う。 ハイプリ ドーマの HAT (ヒポキサンチン一アミノブ テリンーチミジン) 選択を行って、 融合細胞を選択し、 クローンの選択後、 ハイ プリ ドーマをクローニングする。 目的の抗体の検出は、 蛍光抗体法、 酵素抗体法 などの公知の方法で行うことができる (例えば、 Ed Harlow と David Lane, Antibodies A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988) )。 抗体の種類は、 IgG、 IgM、 IgA、 IgD及ぴ IgEのいずれのクラスでもよいが、 好ま しくは IgGである。 また、 サブクラスはいずれの種類でもよく、 例えば IgGの場 合、 IgGl、 IgG2、 IgG3、 IgG4であり、 IgAの場合、 IgAl、 IgA2である。 さらにま た、 抗体断片の例は、 Fab、 F (ab' ) 2、 Fv、 ScFv (単鎖可変領域抗体断片)などであ る。
抗体タンパク質のぺグ化は、 分子量約 5000 以上の高分子量ポリエチレンダリ コールをタンパク質のァミノ末端及び/又はリシン残基の εアミノ基に化学的に
結合することによって行うことができる。
TGF;6 2の拮抗剤(又はアンタゴニスト)は、上記抗体以外の化合物であって、 APP との結合に対して TGF |3 2と拮抗する化合物である。拮抗剤の例は、 APP以外の TGF β 2 受容体の細胞外ドメイン又はそのペプチド断片 (Fahao Zhang et al. Nude Mice Cl inical Cancer Research Vol . 11, 4512-452)、 或いは TGF |3 2前駆体由来 の小ペプチド、 例えば Latency- associated peptide, TGF j3 2及ぴ j3 3型受容体ェ クトドメイン (ED)、 了6? /3 2受容体£0/?0キメラなどでぁる (De Crescenzo, G et al. (2001) J Biol Chem. 10 : 276 (32) : 29632- 43)。 これらの拮抗剤は、 TGF j3 2と 結合してその活性を抑制することができる。
本発明の医薬組成物の有効成分は、 直接的にせよ或いは間接的にせよ、 患者の 脳内に薬剤投与されねばならない。 アミロイドベータ (A i3 ) に対する中和抗体は アルツハイマー病の治療薬として脳内 A j3の沈着を抑制することが知られている 、 2000年前後にヒ ト患者での治験が始まり 5 %の頻度で脳炎を副作用として引 き起すことが分かり治験が中止されたにも関わらず、 その有効性が期待されてい て副作用を緩和する研究が続けられている。 この事実は、 静脈投与によっても中 和抗体が脳内移行するあるいは間接的に脳内の A 3濃度を低下させることができ ることを示している。 これと同じ論理が TGF j3 2抗体にも通用する可能性、すなわ ち脳内へ移行する高い可能性を示している (Gel inas, DS et al . (2004)
Immunotherapy ior Alzheimer s disease , Proc Natl Acad Sci USA, 101 Supp丄 2: 14657-14662) o
本発明の医薬組成物の有効成分には、 本発明の上記方法によってスクリーング された薬剤も包含される。
本発明の医薬組成物は、 製薬業界で公知の種々の方法にて各種製剤形態に製造 'し、 医薬品として提供することができる。
本発明の医薬組成物を経口投与する場合は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、 丸剤、 内用水剤、 懸濁剤、 溶液剤、 乳剤、 シロップ剤等に製剤化するか、'使用す る際に再構成させることができる乾燥形態にしてもよい。 また、 本発明の医薬組 成物を非経口投与する場合は、 静脈内注射剤、 筋肉内注射剤、 腹腔内注射剤、 皮 下注射剤などの注射剤、 坐剤などに製剤化し、 注射用製剤の場合は単位投与量ァ
ンプル又は多投与量容器の状態で提供される。 さらに、 血液脳関門を通過しうる ように製剤化 (例えばリボソームへの封入) されてもよいし、 脊髄や脳室内に投 与できるように製剤化されてもよい。
これらの各種製剤は、 薬学的に許容される賦形剤、 増量剤、 結合剤、 湿潤剤、 崩壌剤、 滑沢剤、 界面活性剤、 分散剤、 緩衝剤、 保存剤、 溶解補助剤、 防腐剤、 矯味矯臭剤、 無痛化剤、 安定化剤、 等張化剤等などを適宜選択し、 常法により製 造することができる。 また、 医薬組成物中、 有効成分の含有量は、例えば約 0. 001 〜約 10重量%であるが、 これに限定されない。 あるいは、該組成物中の有効成分 の用量は、 例えば成人体重 (kg) あたり約 l ;z g〜約 10m gであるが、 これに限 定されない。 このような用量を単回又は分割投与することができる。
本発明の医薬組成物の有効成分がポリヌクレオチド又は核酸である場合、 対応 の DNAを発現可能に組み込んだベクターの形態にすることができる。 ベクターの 例としては、 プラスミ ド、 アデノウィルスベクター、 アデノ随伴ウィルスベクタ 一、 へノレぺスウイノレスベクター、 ヮクシニアウイノレスベタター、 レ トロウイノレス ベクター等が挙げられる。 ウィルスベクターを用いて生体に感染させることによ り、 治療剤を in vivoで発現させることができる。 あるいは、 上記ベクター又は DNA をリボソーム (正電荷リボソーム、 正電荷コレステロールなど) に導入する こともできる。
上記のベクターやリボソームの投与形態としては、 大腿四頭筋、 大臀筋などの 筋肉、 脳室、 脊髄等への局所投与、 あるいは、 通常の静脈内、 動脈内等の全身投 与のいずれでもよいが、 局所投与が好ましい。 さらに、 カテーテル技術、 外科的 手術等と組み合わせた投与形態を採用することもできる。
以下の実施例において、図面を参照しながら本発明をさらに具体的に説明する。 しかし、 本発明はこれらの具体例によって制限されないものとする。 実施例
材料と方法
細胞株、遺伝子、組み換えタンパク、抗体。神経系ハイプリッ ド細胞 Fll、Fll/EcR 細胞、 pcDNA3ベクターと pINDベクター中の wtAPP cDNA、 pcDNA3ベクター中の wt APP
厶 19 cDNAと wtAPP Δ 20 cDNA、 pcDNA3ベクターと plNDベクター中の V642I- APP GDNA についてはいずれも文献記載のものを使用した (Hashimoto et al., 2000, 2001, 2003a, b ; Terashita et al. , 2003)。
カルボキシル末端に V5タグを付けたマウス APLP2 cDNAは、 pcDNA3. 1/GSべク ターに組み込まれている。 1〜590番目のアミノ酸に対応するマウス APP695の細 胞外ドメイン (APP - ED) のほとんどをコードしている cDNA断片を、 ヒ ト IgGの Fc 領域をコードする cDNA にインフレームで融合させ (Lyman et al . , 1993)、 pEF - BOSプラスミ ドに組み込んで (Mizushima et al ., 1990) pEF- APP- ED/Fc と命 名した。 マウス APPの細胞内ドメインと融合させた、 EGFR細胞外ドメインと膜貫 通ドメインをコー ドするべクターについては文献記載に従って構築した (Hashimoto et al ., 2003b)。
ェクジソン (EcD) として用いたボナステロン A は、 インビトロジェン社 (力 ールズバッド、 力リフォルニァ州、 米国) から購入した。 Ham ' s F12、 ダルべッ コ改変イーグル培地 (DMEM)、 4_ヒ ドロキシ- 3-メ トキシァセトフエノン (アポシ ニン)、ォキシプリノールは、 シグマ社(セントルイス、 ミズーリ州、米国) から、 ゥシ胎児血清 (FBS) はハイクローン社 (ローガン、 ユタ州、 米国) から、 リボフ エタ トァミン、 N2添加物、 プラス試薬は、 Gibco BRL社 (ゲイサーズバーグ、 メ リーランド州、米国)から、組み換えヒ ト TGF ^ 1、 TGF β 2、 TGF β 3は、 R&D Systems 社 (ミネアポリス、 ミネソタ州、 米国) と PeproTech EC社 (ロンドン、 英国) か ら、 組み換えヒ ト TGF aは R&D Systems社から、 免疫染色用の抗 TGF 3 1、 抗 TGF β 2、 抗 TGF ]3 3ポリクローナル抗体は、 Santa Cruz Bi otechnology社 (サンタク ルーズ、 カリフォルニア州、 米国) から、 抗 TGF j8 2中和ポリ クローナル抗体は、
R&D Systems社から、 抗 APP抗体として用いた 22C 11 と、 ホースラデイシュペル ォキシダーゼ標識抗 V5抗体は、 それぞれケミコン社 (テメキユラ、 カリフオル- ァ州、 米国) とインビトロジェン社から、 プロテイン G セファロース 4Bは、 ァ マシャムファルマシアバイォテク社 (ウプサラ、 スウェーデン) から、 NG -モノメ チル- L-アルギニンモノァセテ一ト(L- NMMA)、百日咳毒素(PTX)、SP600125、PD98059
SB203580は、カルビオケムノババイオケム社(サンディエゴ、カリフォルニァ州、 米国) からそれぞれ購入した。 他の材料はすべて市販のものを使用した。
トランスフエクション法、 細胞死、 生細胞数計測
一過性トランスフエクション法については次のように行った。
6ゥエルプレートに F11細胞を 7X104個/ゥエルで播き、 Ham, s F-12 + 18% FBS で 12〜: 16時間培養した。 無血清で 3時間、 (6ゥ: ^ルプレート 1 ゥヱルあたり、 プラスミ ド DNA: プラス試薬: リポフエク トァミン = 1 μ§:4 μ Ι:2 μ ΐ とレヽぅ 一定の比率で) 細胞に pcDNA3 プラスミ ドをトランスフエクトした。 次に Ham' s F-12 + 18% FBSで 2時間ィンキュベートした後、 細胞を Ham, s F- 12 + 10% FBS で培養した。 トランスフエクションの 24時間後、 N2添加物を含む無血清 Ham' s F - 12中の細胞を組み換え TGFjS 1、 TGF02、 TGFjS3、 TGF α のいずれかで処理し、 または無処理とした。 このプロトコールでのトランスフエクシヨン効率は、 通常 約 70%であった。 pINDプラスミ ドを一過性にトランスフヱクトするため、 6 ゥヱ ルプレートに Fll/EcR細胞を 7X104個/ゥエルで播いて Ham' s F-12 + 18% FBS で 12〜16時間培養し、 無血清で 3時間、 (6ゥヱルプレート 1 ゥエルあたり、 プ ラスミ ド DNA: プラス試薬: リポフエク トァミン = 1 μ§:4 1:2 μ ΐ とレヽう一 定の比率で) EcD誘導性 pINDプラスミ ドをトランスフエク トした。次に Ham's F- 12 + 18% FBSで 16時間ィンキュベートした後、 N2添加物を含む無血清 Ham' s F-12 中の細胞を組み換え TGF01、 TGFj32、 TGF|33、 TGF のい れかで処理し、 また は無処理とし、その後 EcDを培地に添加した。トランスフエクションの 72時間後、 細胞死をアツセィするため、 トリパンブルー排除試験を既報に従って行った。 生 細胞数計測として、 WST- 8 アツセィを既報に従って行った (Hashimoto et al., 2000)。
アデノウィルスの調製とアデノウィルスベクターを用いた発現
非増殖性のアデノウィルスベクター系は、宝酒造(滋賀、 日本) から購入した。 系の詳細は既に報告されている (Tsuji et al. , 2002; Niikura et al., 2004)。 wtAPPに用いたコスミ ドは、完全長 wtAPPを pAxCAwtの Swalサイトに揷入するこ とにより構築した。 V642I-APP をコードするアデノウイルスは、 既報に従って調 製した (Niikura et al., 200 。 すべてのウィルスは HEK293細胞で増殖させ、 塩化セシウム密度勾配超遠心法(2回法)によって精製した。 ウィルスの力価は、
2 つの別個の方法で調べた。 既述の通り、 血清を含む培地に組み換えアデノウィ
•ルスを添加することにより感染させた。 特記のない限り、 指定された感染多重度
(M0I) のウィルスを含む培地で 6 ゥェルプレートに播いた細胞 (5 X 104個) を 37°C、 60分間インキュベートした。
大脳皮質初代培養神経細胞と生細胞数計測
大脳皮質初代培養神経細胞 (PCN) は、 既報に従い、 Neuron培地を用いて調製 しポリ - L-リジンコートした 96'ゥェルプレート (住友べ一クライ ト、秋田、 日本) に播いた。 培養開始後 (DIV) 3日目に、 wtAPPあるいは V642I - APPをコードする アデノウィルスを指定された M0Iで PCNに感染させた。培養開始後 4日目に 20 nM あるいは 200 nMの TGF ]3 1、 TGF j3 2、 TGF j3 3のいずれかを添加し、 処理開始から 72時間後に既報に従って WST- 8アツセィと力ルセインの蛍光強度アツセィの両方 で生細胞数を計測した (Hashimoto et al. , 2001, 2003a, 2004)。
プノレダウンアツセィ
F11細胞を播き、 無血清で 3時間、 (6ゥェルプレート 1ゥ ルあたり、 プラス ミ ド DNA: プラス試薬: リポフエク トァミン = 1 M g : 4 μ 1 : 2 μ 1 とレ、う一定の 比率で) pEF-APP - ED/Fcプラスミ ドをトランスフエタトした。 次に Ham' s F- 12 +
18% FBSで 2時間ィンキュベーションした後、 細胞を Ham, s F-12 + 10% FBSで 培養した。 トランスフエクションの 24時間後、 N2添加物を含む無血清 Ham' s F - 12 で細胞を培養した。 トランスフエクシヨン開始から 72時間後に、培養に用いた培 地を回収した。 22C11を用いた免疫プロットで、 分泌された APP - ED/Fcタンパク を確認した後、 培養に用いた培地 500 1、 競合物質としての 200 pmol TGF ^ l の存在下あるいは非存在下で 20 pmol TGF j3 2、 20 μ 1 プロテイン Gセファロー ス 4Bを混合し、 4°Cでー晚撹拌した。 PBSでビーズを 3回洗浄した。 その後、 ビ ーズに 20 1の SDS- PAGE用サンプルバッファを加え、 3分間ボイルした。 上清 を SDS-PAGEにかけ、 分離されたタンパクを PVDFメンプレン上に転写した。 10% スキムミルクを含む PBST (137 mM NaCl、 2. 7 mM KC1、 4· 3 mM Na2HP04 · 7H20、 1. 4 mM KH2P04に 0· 1% Tween 20を含む) でブロッキングした後、 ブロットを抗体で処 理した。 一次抗体として TGF ;3 2については抗 TGF i3 2ポリクローナル抗体 (1 n g/ml、 R&D Systems社)、 あるいは APP- ED/Fcについては 22C11 (2. 5 g/ml、 ケ ミコン社) を用い、 それぞれの二次抗体として 5, 000倍希釈、 ホースラデイシュ
ペルォキシダーゼ標識抗ゥサギ IgG抗体、 あるいはホースラディシュペルォキシ ダーゼ標識抗マウス IgG抗体 (バイオラッド社、 ハーキュリーズ、 カリフォルニ ァ州、 米国) を用いた。 その後、 免疫反応のバンドを ECL (アマシャムフアルマ シァバイオテク社、 ウプサラ、 スウェーデン) で発色させた。
リアルタイム PCR
A jSで処理したヒ ト神経膠芽腫の細胞株 Bul7、 ヒ ト神経芽細胞腫の細胞株 SHSY_5Y、マウス E14 PCNからのトータル RNAはメーカーの説明書に従って IS0GEN で調製した(二ツボンジーン、東京、 日本)。 ファース トス トランド cDNAは 0. 5 μ gのトータル RNAから Sensi script逆転写酵素 (QIAGEN GmbH、 ドイツ) を用いて 合成した。 QuantiTect SYBR Green PCRキット (QIAGEN) を用い、 ABI PRISM7700
(Appl ied Biosystems) でリアルタイム PCRを行った。
ヒ ト TGF /3 1 用のセンスプライマとアンチセンスプライマはそれぞれ、 5, -GAGGTCACCCGCGTGCTAATG-3 ' (配列番号 1 ) と 5, - GAGCCTCAGCAGACGCAGCTC - 3 ' (配 列番号 2 )である。 ヒ ト TGF i3 2用のセンスプライマとアンチセンスプライマはそ れぞれ 、 5 ' -GGAGGTTTACAAAATAGACATGCC-3 ' (配列番号 3 ) と 5 ' -AAGACTCTGAACTCTGCTTTCACC-3 ' (配列番号 4 ) である。 ヒ ト TGF 3 3用のセンスプ ライマとアンチセンスプライマはそれぞれ、 5' -ATTCGACATGATCCAGGGGCTGGC-3 '
(配列番号 5 ) と 5, - CGAAAGACCCGGAATTCTGCTCGG- 3, (配列番号 6 ) である。 マ ウス TGF j3 1 用のセンスプライマとアンチセンスプライマはそれぞれ、 5 ' - ACGCCTGAGTGGCTGTCTTTTGAC- 3 ' ( 配 列 番 号 7 ) と 5 ' - GGGCTGATCCCGTTGATTTCCACG- 3, (配列番号 8 ) である。 マウス TGF j3 2用のセンス プライマとアンチセンスプライマはそれぞれ、 5 ' -GGATGGAAATGGATCCATGAACCC-3 '
(配列番号 9 ) と 5 ' -TGTTGTACAGGCTGAGGACTTTGG-3 ' (配列番号 10) である。 マ ウス TGF β 3 用のセンスプライマとアンチセンスプライマはそれぞれ、 5 '
-CGTTTCAATGTGTCCTCAGTGGAG-3 ' ( 配 列 番 号 11 ) と 5 '
-AAGAGCTCAATTCTCTGCTCTGTG-3 ' (配列番号 12) である。 ヒ トおよびマウス G3PDH 用 のセ ンス プラ イ マ と ア ンチセ ン ス プラ イ マ はそれぞれ、 5 '
-TCCACCACCCTGTTGCTGTA-3 ' (配列番号 13) と 5 ' - ACCACAGTCCATGCCATCAC- 3 ' (配 列番号 14)である。データ解析は、 Sequence Detect ion System ver. 1. 9. 1 (Appl ied
Biosystems) のソフトウェアを用いて行った。 指定されたインキュベーション時 間に IS0GENを使って細胞を回収し、メーカーの説明書に従ってトータル RNAを調 製した。 ファース トストランド cDNAは Sensiscript逆転写酵素 (QIAGEN) を用い て合成し、 QuantiTect SYBR Green PCRキット (QIAGEN) を用いて ABI PRISM7700 (Appl ied Biosystems) でリアルタイム PCR解析を行った。 TGF j3 1、 TGF j3 2、 TGF j3 3 mRNAの発現量は、 各インキュベーション時点で、 内部コントロールとしての G3PDH mRNAの発現量で補正した。次に、図面の簡単な説明で記載しているように、 A で処理した細胞中での補正済み TGF ]3 1、 TGF j3 2、 TGF j3 3 raRNA発現量を、 コン トロールの細胞中での発現量の平均によってさらに補正した。 例えば、 この補正 によって、 その発現量がコントロールの細胞での発現量に等しいならば、 発現率 は 1である。 すべての値は、 少なくとも独立した 3つのサンプルの平均値土標準 偏差を示す。
ウェスタンプロット法
異所発現させた APP と内因性の細胞内 TGF |3 2の免疫プロットでの解析を、 既 報に従って行った (Hashimoto et al. , 2000)。 内因性 TGF 2の発現を解析する ために、 Bul7細胞を 6 ゥエルプレートに播き、 10 nMの A j3 (1-40) あるいは A β (1-42) で 48、 72、 96時間処理した。 これらの時間の後、 細胞を PBSで 2回洗 浄し、細胞溶解用バッファ [10 mM Tris-HCI (ρΗ7· 5)、 1 mM EDTA、 1% Triton X- 100] で溶解させた。 細胞のライセート (20 / g/レーン) を SDS - PAGEにかけ、 分離さ れたタンパクを PVDFメンブレンに転写した。 10%スキムミルクを含む PBSTでブ口 ッキングした後、プロットを抗体で処理した。一次抗体として抗 TGF j3 2ポリク口 ーナル抗体 (500倍希釈、 Santa Cruz Biotechnology社) を、 二次抗体として HRP 標識抗ゥサギ IgG抗体 (5, 000倍希釈、 バイオラッド社) を用い、 その後、 免疫 反応のバンドを ECLで発色させた。 18力月齢の Tg2576雄性マウスと同腹仔の正 常マウスの脳から調製した大脳皮質と海馬をプロテアーゼ阻害剤 rCompleteJ
(Roche Diagnostics GmbH, マンハイム、 ドイツ) を含む細胞溶解用バッファ中 でポリ ト口ンホモジナイザ(KINEMATlCA GnibH、スイス)を使ってホモジナイズし、 その後、 抗 TGF /3 2抗体で免疫プロットを行った。
動物 (Tg2576 トランスジエニックマウス)
ハムスターの強力なプリオ.ンタンパクプロモーター (Hsiao et al. , 1996) の 制御下でヒ ト ΑΡΡ のスウェーデン型変異体 (ΑΡΡ770 のナンバリングでは K595N/M596L ; K670N/M671L)を発現している Tg2576トランスジエニックマウスは、 Jackson Laboratories |± (ノ一/ヽーノ一、 メイン'州) 力 ら入手した。 こ lらのマ ウスは C57BL/SJマウス (日本クレア) と交配して、 へミ接合体として維持した。 動物は、 12 時間の明暗サイクル (7 : 00 AM〜7 : 00 PM) で、 特別な無菌動物施設
(23± 1°C、湿度 50± 5%)内で飼育した。マウスには、 γ線照射した PicolabRodent Diet 20 (PMI Feeds Inc.、 セントルイス、 ミズーリ州、 米国) と、 次亜塩素酸ナ トリウム (5 ppm) を添加した滅菌脱イオン蒸留水を自由に摂取させた。 この研究 は、 北米神経科学学会の神経科学研究における動物と人の使用に関する指針、 お よび慶応義塾大学医学部(東京、 日本)の実験動物の管理と使用に関する指針に従 つて実施された。すべての実験手順は、慶応大学実験動物委員会の承認を受けた。 免疫組織化学
18力月齢の雌性 Tg2576 トランスジエニックマウスとその同腹仔マウスを、 ジ ェチルエーテルで深麻酔した。脳を生理食塩水で権流して 5%酢酸を含むエタノー ルで固定した後、パラフィン包埋して 10 / mの厚さに薄切した。マウスの脳の矢 状断切片を、 New- Si laneスライドグラス (武藤化学、東京、 日本)上に作製した。 その後、サンプルをキシレンで脱パラフィンし、 100%エタノール、 90%エタノール、 70°/。ェタノール、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の中で順に洗浄した。切片を 3% H202 で 10分間処理して内在性ペルォキシダーゼを失活させた。 PBSで洗った後、切片 を一次抗体と共に室温で 1時間インキュベートした。 一次抗体とのインキュベー ションの後、切片を PBSで洗って、 HRP (西洋ヮサビペルォキシダーゼ)標識ャギ抗 ゥサギ IgG抗体 (バイオラッド社、 ハーキュリーズ、 カリフォルニァ州; 1 : 100) と共に室温で 1時間インキュベートした。 免疫反応を視覚化するために、 発色基 質としてのジァミノべンジジン (0. 2 mg/ml、 和光純薬、 大阪、 日本) で切片を処 理し、 その結果、 茶色の反応生成物が生じた。 用いた抗体は、 ゥサギ抗 TGF /3 1 ポリクローナル抗体 (Santa Cruz 社、 ハイデルベルク、 ドイツ; 1 : 15)、 ゥサギ 抗 TGF jS 2ポリクローナル抗体 (Santa Cruz社、 ハイデルベルク、 ドイツ; 1: 20) である。
結果
TGF )3 2は、 wtAPPを渦剰発現した神経系ハイプリッド細胞 F11の細胞死を誘導す ^_
本発明者らは、 リポフエクシヨン法を応用したトランスフエクションによって、 神経系ハイプリッド細胞株 F11 で wtAPPを異所発現させた (Hashimoto et al . , 2000) 0以前の研究で示したように、この方法による F11細胞へのトランスフエク シヨン効率は約 70〜80%であった (Hashimoto et al . , 2000a)。 このプロトコ一 ルで F11細胞に wtAPPを過剰発現させただけでは神経細胞死は誘導されなかった (図 1A)。 F11細胞に wtAPP cDNAをトランスフエクトし、 その後 100 pM、 1 nM、 10 nM、 100 nMの TGF 3 1、 TGF j3 2、 TGF ]3 3、 TGFひのいずれかで処理したところ、 TGF j3 2 存在下でのみ用量依存的に細胞死が誘導され、 TGF j3 1、 TGF j3 3、 TGF a存 在下では誘導されなかった(図 1A、 1B)。図 1Cに示したように、 TGF jS 1、 TGF ]3 2、 TGF j3 3、 TGF のいずれも、 アミロイド前駆体様タンパク質 - 2 (APLP2) を過剰発 現させた F11の細胞死は促進しなかった。 TGF ^ 2で処理しても、 APP発現量に変 化はなかったので、 TGF 2力 wtAPP発現量を増加させることにより細胞死を誘導 した可能性は除外される。
TGF j3 2で処理すると、 V642I - APPを非常に低レベルで発現している神経系ハイブ リッド細胞 F11の細胞死が促進される
ェクジソン (EcD) による誘導で厳密に制御された発現系を用いて、 本発明者 らは次のことを報告した。 FAD関,連 APPである V642I - APPを内因性 wtAPPの 2〜2. 5 倍に相当する低レベルで発現させると、 細胞死が誘導される。 その一方、 wtAPP を低レベルで発現させても F11細胞での細胞死は誘導されない(Hashimoto et al .,
2000)。本発明者らは、 FAD関連 APP変異体と APP発現量の視点から、 TGF 2が誘 導する神経細胞死をこの系を用いてさらに検討した。図 2Βに示したように、 1 μ
M EcDでの処理により内因性 wtAPPの約半分、 5 μ Μ EcD での処理により内因性 wtAPPとほぼ同量に相当する、 wtAPPと V642I - APPの非常に低レベルな異所発現が
F11 細胞で誘導された (図 2B)。 本発明者らの以前の結果と合致するのだが
(Hashimoto et al . , 2000)、 F11細胞では V642I- APPのみの発現により軽度の細 胞死が用量依存的に誘導されたが、 wtAPP のみの発現によっては誘導されなかつ
た。 TGF i3 2で処理すると、 発現量依存的に、 wtAPPを異所発現している F11で細 胞死が誘導され V642I - APP発現 F11細胞で細胞死が促進された。 TGF i3 2で処理す ると、 V642I- APP発現 F11細胞では、 明らかに wtAPP発現 F11細胞よりも重度な 細胞死が引き起こされた。 これらの結果は、 FAD関連 APPを有する神経細胞では 正常 APPを有する神経細胞よりも TGF ;8 2によって容易に細胞死が誘導されること を示しに。
TGF 2が誘導する神経細胞死の特徴付け
TGF 2 が誘導する細胞死について実際の細胞内伝達物質に関する情報を得る ため、細胞透過性カスパーゼ 3/関連カスパーゼ阻害剤 Ac- DEVD-CH0 (DEVD) と一 般的に使われている細胞透過性抗酸化剤ダルタチオンェチルエステル(GEE) を用 いて薬理学的分析を行った。 両者は TGF /3 2 が誘導する細胞死を完全に阻害した (図 3A)。 これは、この神経細胞死にカスパーゼ 3Z関連カスパーゼと活性酸素種 (R0S) 原因酵素が関与することを示す。 wtAPPの単純な過剰発現によって誘導さ れる神経細胞死では DEVDや GEEに非感受性の細胞死が起こり、 TGF )3 2が誘導し た細胞死とは全く異なっていることに注目すべきである (Hashimoto et al. , 2000) ο
本発明者らはさらに、 TGF jS 2が誘導した細胞死の薬理学的特性を明らかにした。 百日咳毒素(PTX) を用いて PTX感受性へテロ三量体 Gタンパク質の関与を明らか にし、また MAPKフアミリー阻害剤として】1¾特異的阻害剤3?600125 (3?)、1338 ¾^?]( 特異的阻害剤 SB203580 (SB)、 MEK/ MAPK阻害剤 PD98059 (PD) を用いた (図 3B)。 さらに、 細胞死シグナル伝達系の進行に関与する活性酸素種産生の原因酵素を特 定するために、 本発明者らは NADPHォキシダーゼ阻害剤アポシニン (AP0)、 キサ ンチンォキシダーゼ阻害剤ォキシプリノール (0XY)、 一酸化窒素合成酵素 (N0S) 阻害剤 L- ΝΜΜΑ、 という特異的阻害剤を用いて薬理試験を行った (図 3Β)。 図 3Β に示したように、 DEVD、 GEE、 PTX、 SP、 APOで処理すると、 TGF j3 2が誘導した細 胞死が阻害される。 これは、 TGF j3 2が誘導した細胞死が PTX感受性へテロ三量体 Gタンパク質、 JNK、 NADPHォキシダーゼ、 カスパーゼ 3/関連カスパーゼを介す ることを示している。
Goと相互作用する APPのドメインは TGF 2/APPが誘導する細胞死に関与する
このタイプの細胞死に関与する百日咳毒素感受性へテロ三量体 Gタンパク質を 特定するために、本発明者らは TGF i3 2が細胞死を誘導するために必須な APPのド メインを同定した (図 3C)。 本発明者らは、 完全長 wtAPP、 ドメイン 20を欠失し た wtAPP (wtAPP Δ 20) Λ ドメイン 19を欠失した wtAPP (wtAPP Δ 19) のいずれかを F11細胞にトランスフエクトし (Hashimoto et al . , 2000)、 20 ηΜ TGF β 2で処理 して、 トリパンプル一排除試験で死細胞数計測 (左図) と WST- 8アツセィで生細 胞数計測 (右図) を行い、 Hi s 657- Lys676領域に相当するドメイン 20力 S TGF i3 2 による細胞死誘導に必須であることを明らかにした。 これは、 Go はドメイン 20 と結合することが既に示されているので、 Goがシグナル伝達物質であり 3つの Gi タンパクはいずれもシグナル伝達物質ではないことを強く示唆するものである
(Ni shimoto et al . , 1993; Hashimoto et al ., 2000)。
TGF jg 2は APPの細胞外ドメインに結合し、 神経細胞死を誘導する
本発明者らは、 APP あるいは細胞膜表面にあるその関連タンパク質に結合する ことで TGF jS 2が細胞死を直接的に誘導することを証明するために、 APPの細胞外 ドメイン(APP - ED) と TGF i3 2が直接的あるいはほぼ直接的に会合しているかどう かを、 まず共免疫沈降法によって検討した。 予想した通り、 F11細胞に APP- ED/Fc をコードするプラスミ ドをトランスフヱク トし、その後 TGF J3 2を添加したときの み、 APP- ED/Fcの免疫沈降体に TGF 2が含まれていた (図 4A、左から 4番目のレ 一ン)。 これとは対照的に、 F1 1細胞に APP - ED/Fcをコードするプラスミ ドをトラ ンスフヱク トし、 TGF j3 1 を添加したときは、 APP - ED/Fc の免疫沈降体に TGF jS l は含まれなかった (左から 3番目のレーン)。 10倍量の TGF iS 1を TGF j3 2 と共に 添加しても、 APP- ED/Fcと TGF ]3 2の会合は阻止されなかった (左から 5番目のレ 一ン)。これは、 TGF j3 2と APP-EDの間に特異的な結合が存在することを意味する。 これと合致して、 200 μ Μ TGF ]3 1は TGF j3 2による細胞死誘導に影響を及ぼさな かった (図 4B)。
TGF j3 2が APPに無関連な細胞膜上の他の分子に結合することで APPを介する細 胞死を促進している可能性を除外するために、 本発明者らは APPを介する細胞死 に対する TGF 2処理の効果を検討した。 この実験では、上皮細胞増殖因子受容体 の細胞外ドメインと膜貫通ドメイン、 TGF i3 2が結合するドメインである APPの細
胞外ドメインを欠失している APP の細胞内ドメインから成る組み換え体 (EGFR-ED+TM/APP-CD のハイブリッド) (Hashimoto et al., 2003b) を発現させ る系を用いた。 EGFR - ED/APP-CDを F11細胞で異所発現させた後、 TGF jS 2と共に、 あるいは TGF jS 2なしで EGFを添加した。 EGFで処理すると、 Go、 JNK、 NADPHォキ シダーゼ、 カスパーゼ 3ダ関連カスパーゼを介する細胞死が誘導された (図 4C)
(Hashimoto et al. , 2003b)。 図 4Cに示したように、 20 nM TGF j3 2を添加して も EGFを介する細胞死には全く変化がなかった。 これは、 TGF j3 2が F11細胞上の 他の受容体に結合することで APPを介する細胞死を促進しているのではないこと を示す。 TGF β 2の細胞死における関与をさらに裏付けるため、本発明者らは抗 TGF β 2抗体を用いて中和実験を行った。中和活性を有する抗 TGF;8 2抗体を多量に添 加すると、 TGF ]3 2が誘導する神経細胞死が完全に阻害された (図 4D)。 これらの 結果は、 TGF;8 2は APPあるいはその関連タンパク質に特異的に結合して APPを介 する細胞死シグナルを誘発することを強力に裏付けるものである。
最近、 本発明者らはヒユーマニン (腿) ペプチドを同定した。 これは、 ADに関 連する損傷が引き起こす神経細胞死に対する保護因子である (Hashimoto et al., 2001)。図 4Cに示したように、 より強力な誘導体の 1つである D-Serl4- HNぺプチ ド (Terashita et al., 2003) は、 TGF |3 2/APPが誘導する F11細胞の細胞死を抑 制する。
TGF j3 2は、 アデノウィルスを使って wtAPP、 V642I - APPを発現させた初代培養神 経細胞で細胞死を誘導する
本発明者らは、 TGF j3 2がマウス E14大脳皮質初代培養神経細胞 (PCN) の細胞 死を誘導するか否かを検討した。 wtAPP遺伝子をこの細胞に十分に導入するため、 アデノウイルスベクターによる遺伝子発現系を用いた。 感染多重度 (M0I) 5 で wtAPPウィルスと V642I - APPウィルスを感染させた 24時間後に、 200 nMの TGF jS
1、 TGF j3 2、 TGF /3 3いずれかで細胞を処理した。 感染 72時間後に WST- 8アツセィ
(図 5A) と力ルセインを用いたアツセィ (図 5B)で細胞の生存能力を検討し、 200 nM TGF jS 2はアデノウィルスを使って wtAPPあるいは V642I - APPを発現させた PCN の生細胞数を減少させるが、 TGF jS 1および TGF jS 3は減少させないことを見出し た。 図 5Cに示したように、 5M0Iで wtAPP ウィルスを感染させると内因性 wtAPP
と比較して約 1〜2倍の wtAPP発現が誘導された。アデノウィルス感染による APP 発現は、 TGF j8 1、 TGF j3 2、 TGF /3 3のいずれの処理でも変化はなかった。 V642I- APP を異所発現している PCNでは、 wtAPPを異所発現している PCNよりもより重度な 細胞死が誘導されたことに注目すべきである。 力ルセイン- AM染色した生存 PCN の代表的な写真を図 5Dに示す。
TGF 3 2は、 wtAPP発現 PCNよりも V642I-APP発現 PCNでより効率的に細胞死を誘 導する
本発明者らはさらに、 PCNの TGF 2'誘導細胞死に対する FAD関連 V642I-APP異 所発現による影響を、 wtAPP異所発現による影響と比較した。 相違を明確にする ため、 添加した TGF jS濃度を 20 nMと低く保ち、 感染させたウィルスの M0Iを 0 から 25まで変化させた (図 6A)。 細胞の生死は、 力ルセインの蛍光強度測定で評 価した。 本発明者らの以前の研究で述べたように (Ni ikura et al., 2004)、 アデ ノウィルスを用いた V642I- APPの過剰発現で、 何か他に毒性因子を追加しなくて も PCNの細胞死が引き起こされた。 アデノウィルスを用いた wtAPPの過剰発現が PCNに細胞死を引き起こすことも報告された(Nishimura et al., 1998; Bursztajn et al., 1998)。
ネガティブコントロールとして PCNに lacZを導入したアデノウィルスを 1、2. 5 5、 10、 25M0Iで感染させ、 その後 20 nM TGF i3 1、 TGF j3 2、 TGF j3 3で処理すると、 細胞死は全く起こらなかった (図 6A)。 図 6Bに示したように、 アデノウイルスを 用いた wtAPPの過剰発現のみで、 wtAPP発現量に依存した軽度な細胞死が誘導さ れる。 20 nM TGF j3 2で処理すると wtAPP発現量依存的に PCNの生細胞数減少が促 進され、 25M0Iの感染で蛍光強度は 62. 5%に減少した。 これとは対照的に、 TGF j3 1 あるいは TGF 3で処理しても、無処理群と比較して生細胞数減少は全く促進され ていなかった。 これと同様に、 しかしさらに顕著に、 アデノウイルスを用いた V642I-APPの発現のみで用量依存的に PCNの細胞死が誘導された(図 6C)。 TGF ^ 2 処理により細胞死が促進されたが、 TGF |3 1あるいは TGF i3 3処理では促進されな かった。 25M0Iで感染させ TGF /3 2で処理すると、 蛍光強度は 32. 5%に減少した。 同じ M0Iでウィルスを感染させると、 wtAPPと V642IAPPタンパク発現は同様に誘 導されていた (図 6D)。
λβ 卜42による TGFi¾2発現のアップレギュレーションと、 A 3 1 - 40による TGF β 1 mRNA, TGF β 3 mRNAの一過性のアップレギュレーション
上で示したように TGFj32が wtAPP と V642I - APPを介する細胞死を著しく促進 することと、 TGF;32発現が AD の脳で増加している場合があると報告されたこと 力 ら考えて (Flanders et al. , 1995; Lippa et al. , 1998; Peress and Perillo, 1995)、 TGFi32が ADでの神経細胞死の発症と進行に関与している症例がある、 と いう仮定を本発明者らは立てた。この仮説を立証するため、本発明者らはまず TGF β 2発現がどのようにして' ADの脳で促進されるのかを明らかにする必要があった。 本発明者らは が TGF/32発現を促進すると想定していた。これを検証するため、 グリア細胞と神経細胞の両方において、 Α|3処理により TGF 31、 TGF ]32、 TGFj33 の mRNA発現が誘導されるか否かを検討した。 ヒ ト神経膠芽腫の細胞株 Bul7、 ヒ ト神経芽細胞腫の細胞株 SHSY-5Yとマウス E14 PCNを、 アミロイド産生型 A で 毒性の弱い A 1-40あるいは λβ 1-42存在下で 144時間まで培養し、 リアルタイ ム PCR法を用いて Α/3添加後の各時点で TGF31、 TGF β 2, TGF j33mRNA発現を検討 した。
図 7Aに示したように、 Bul7細胞を 6、 48、 96時間、 10 nM Α|3 (1-40) で処理 すると、 TGF 1と TGFi33の mRNA発現量は 48時間後に 3〜4倍に増加し、 96時間 後にはベースレベルに戻った。 しかし、 TGFiS 2の mRNA発現量は 96時間まで変化 がなかった。 一方、 Bul7細胞を 10 nM Α]3 1-42 で処理すると、 TGFj32 の mRNA 発現量はインキュベーション時間依存的に徐々に増加し、 96時間後には 3倍多い 発現量に達した。 し力、し、 TGFJ31 と TGF03の mRNA発現量は 96時間までベース レベルのままであった。 TGFj81、 TGF/32、 TGF 3 mRNA発現の A 3 によるこのよ うな誘導パターンは、 基本的に神経細胞でも同様である。 マウス E14 PCNあるい は SHSY-5Y神経芽細胞腫細胞を 10 nM Aj3 1-40で 6、 48、 96時間処理すると、 6 時間処理後には、 TGFjS l と TGFiS 3の mRNA発現量は 3〜4倍まで増加し、 その後
96時間までに徐々にベースレべ こ戻った。 一方、 TGF;32 の mRNA発現量は 96 時間までベースレベルのままであった (図 7B、.7C)。図 7Bと 7Cに示したように、
PCNあるいは SHSY-5Y細胞を 10 nM A ]31-42で処理すると、 TGF 2の mRNA発現量 はインキュベーション時間依存的に増加し、 96時間後には 3倍に達した。 一方、
TGF i3 1 と TGF ]3 3の mRNA発現量は 96時間までベースレベルのままであった。 本 発明者らはさらに、 PCNを用いて、 TGF ;8 2の mRNA発現を 10 ηΜ Α ;3 1 - 42添加の 144時間後まで検討した (図 7D)。 TGF 2の mRNA発現は、 A β 1-42添加の 120時 間後には最大に達したが、 144時間後でも依然として促進されていた。
これと一致して、 Bul7細胞では Α |3 1- 42での処理によって 72時間後と 96時間 後に TGF )8 2タンパクの発現が促進されていたが、 A ]3 1-40では促進されなかった (図 7E)。 これは、 TGF |3 2発現が細胞毒性を有する A ΐ - 42によって誘導される ことを裏付けるものである。
in vivoでは、 TGF j8 2の発現は Tg2576マウスの脳のいくつかの領域でァップレギ ュレートしている
本発明者らは、 TGF j3 2発現が A /3により in vivoでアップレギュレートするか 否かを検討した。 この疑問に取り組むため、 ハムスターの強力なプリオンタンパ クプロモーターの制御下でヒ ト APPのスウェーデン型変異体(APP770のナンバリ ングでは K595N/M596L; K670N/M671L) を発現している 18力月齢の Tg2576 トラン スジエニックマウスの脳について検討した (Hsiao et al., 1996)。 Tg2576 マウ スの脳の皮質と海馬で、 典型的なアミロイ ド斑が観察されたことが報告されてい る。 Tg2576 雌性マウスと同腹仔の正常雌性マウスの脳の矢状断切片を、 TGF J3 1 と TGF jS 2に対する抗体で免疫染色した (図 8Aの 1〜8)。 Tg2576マウスの脳の皮 質細胞に含まれる TGF 0 2 は、 同腹仔のマウスと比較して軽度増加していた (図
8Aの 1,2)。 この傾向は、 15力月齢の雌性マウスの脳でも確認した。 さらに、 18 力月齢の Tg2576マウスの海馬の網状.分子層 (図 8Aの 3, 4, 5, 6) と大脳皮質 (デ ータ示さず) のアミロイ ド斑周辺で、 TGF jS 2により中程度に免疫染色された一群 の細胞が存在する。アミロイ ド斑周辺にある TGF ;3 2が增加した細胞のほとんどは、 グリア細胞であると推定される。 これらの結果は、 FAD 患者の脳でアミロイ ド斑 周辺のグリア細胞に強い染色が認められる、 というこれまでの報告結果と一致す る (Flanders et al., 1995; Prattと McPherson, 1997)。 以前にも報告されたよ うに (van der al et al. , 1993)、 アミロイ ド斑の中央部分は TGF /3 1で強く染 色された (図 8Aの 7, 8)。 一方、 皮質とアミロイ ド斑周辺の局所的な領域以外の 部位では、 TGF i3 2タンパクの著しい増加は認められなかった。
これと一致して、 同腹仔の雄性マウスと比べると 18力月齢の Tg2576雄性マウ スの皮質で TGF i3 2タンパク発現が中程度に增加していることが抗 TGF /3 2免疫プ ロット法で確認されたが、 海馬では確認されなかった (図 8B)。
考察
本発明者らはここで、 TGF i3 2が APPリガンドとして作用して神経細胞死を誘導 する証拠を提示する。 wtAPPおよび V642I- APPをごく軽度に過剰発現させた PCN と同様、 F11細胞でも、 TGF ]3 2によって細胞死が顕著に誘導された。 TGF 3 2によ り活性化される細胞死の経路は、 PTXおよび GEE感受性である。 実際に TGF ]3.2に より活性化される細胞死シグナル伝達系は、 APP、 Go、 JNK、 NADPHォキシダーゼ、 カスパーゼ 3/関連カスパーゼの経路を介して伝えられる。 APPが介するこの種の シグナル伝達については、 厳密に制御された発現系を用いた研究の中で本発明者 らも以前に報告した。 APPを人為的に二量体化して抗 APP抗体を加えることによ つて活性化される細胞死シグナル伝達系も、 APP、 Go、 JNK、 NADPHォキシダーゼ、 カスパーゼ 3 関連カスパーゼを介して伝えられる (Hashimoto et al. , 2000, 2003a, b ; Rohn, et al. , 2000)。 in vitroで FAD遺伝子と wtAPPのタンパク質 発現を厳密に制御するこの系を用いることにより、 FAD 関連細胞死には複数の経 路があることを本発明者らは明らかにした (Hashimoto et al., 2000)。 低レベル から中レベルの wtAPP発現では、 神経細胞死は起こらない。 一方、 wtAPPを高レ ベルに発現させると、 DEVDと GEEに非感受性の細胞死が起こった。 以上のことか ら、 wtAPP を低レベルに発現した F11細胞における TGF jS 2 を介する細胞死は、 wtAPPを高レベルに過剰発現させることで誘導される細胞死とは完全に異なる。 FADに関連する V642I- APPを発現している神経細胞では、 同レベルの wtAPPを発 現している神経細胞と比べ、より重度な細胞死が TGF 2によって誘導されたこと が報告されている。 この結果は、 同じ濃度の TGF 2存在下で、 V642I - APPを有す る神経細胞は wtAPPを有する神経細胞よりも細胞死を起こしゃすいことを示す。 したがって、 FADに関連するさまざまな点突然変異は、 TGF 2が引き起こす細胞 死経路に対する APPの感受性を増すことにより AD発症に一部寄与していると考え りれる。
TGF iSファミリーに属するサイ トカインは、 非神経細胞に対してだけではなく
神経細胞に対しても多くの機能を有する。 非神経細胞に対する TGF の機能とは 対照的に、神経細胞に対する TGF j3の機能の特徴はあまり明らかにされていない。 これまでに報告された複数の論文で、虚血による神経細胞死に対して TGF j3 1が拮 抗的に働くことが示されている (Klempt et al., 1992; Lindholm et al. , 1992; Logan et al., 1992 ; Wang et al. , 1995 ; Lehrman et al. , 1995)。 一方、 TGF ;8 2 と TGF jS 3に関する研究の数は非常に限られている。 本研究は、 TGF i3 2が AD の脳での神経細胞死の開始を促進することを示し、 以前の研究で観察された FAD の脳での TGF jS 2発現増加(Flanders et al. , 1995 ; Peressと Perillo, 1995; Lippa et al. , 1998) が生物学的に重要である可能性を示唆した最初の研究である。 こ れと一致して、 AD患者の血清と脳脊髄液中で TGF j3濃度が上昇していた (Chao et al. , 1994)。 しかしながら、 本発明者らは最新の研究において神経細胞死を in vitroで誘導するために、 TGF jS 2を 10〜200 nM添加する必要があった。 これは、 AD 患者の血清と脳脊髄液中で観察されたものよりもはるかに高濃度であると考 えられる。 この点に関して本発明者らは、 TGF;8 2はグリア細胞だけではなく神経 細胞自体でも産生されるため (図 7) 神経細胞周辺の体液中の TGF J3 2濃度が in ' vivoで十分なレベルまで局所的に高まっていると推測している。
次に、 問題点としての、 wtAPPあるいは V642I - APPの発現が異所的に誘導され た場合にのみ TGF iS 2が神経細胞死誘導活性を有することについて議論する。 200 nM TGF 2による PCNへの祌経毒性誘導には約 2倍量の wtAPP発現が必要である
(図 5) 、 20 nM TGF ;3 2による PCNへの神経毒性誘導には約 5倍量の wtAPP発 現が必要である (図 6)。 し力 しながら、 TGF j8 2での処理により、 wtAPPを発現し ている神経細胞よりも少量の V642I- APPしか発現していない神経細胞で細胞死が 誘導されることは注目に値する (図 2、 6)。 したがって、 生理的なプロモーター の制御を受ける V642I- APP遺伝子の対立遺伝子を 1本有する FADの最適なモデル であると考えられるマウス、 「ヘテロ V642I - APPノックインマウス」 から調製した PCN に TGF 2 での処理によって細胞死を誘導できたと本発明者らは推測する
(Kawasumi et al. , 2004)。 最近、 TGF j3 1が APP mRNA発現と A ;S産生を促進する ことを複数のグループが報告した (Burton et al., 2002; Lesne et al., 2003)。 本発明者らは現時点では、 APP発現あるいは FAD関連 APP変異体の発現が AD患者
の脳で増加していることを裏付ける証拠も否定する証拠も持たない。 しかしなが ら、 この点と関連して、 ADの罹患率が高いダウン症患者で APPが過剰発現してい ることはよく知られている。
本発明者らは、 A i3 1- 42は 10 nMで TGF /3 2発現を誘導し、 Α ΐ- 40は 10 nMで TGF ^ 1 と TGF j3 3の発現を一過性に誘導することを in vitroで証明した (図 7)。 脳内の可溶性 の局所濃度を推定することは非常に困難である。 しかしながら、 0. 1〜1 nMレベルの A j3がラットと健常志願者の脳脊髄液中に存在すると推定され ること (Seubert P et al., 1992)、 Tg2576 マウス由来神経細胞で細胞毒性を有 する A 産生が著しく増加すること (Hsiao et al. , 1996) を考えると、 神経細 胞とダリァ細胞周辺での毒性を有する Α β濃度は Tg2576マウスの脳で 10 を上 回るレベルに達していると推測される。これと一致して、同腹仔マウスと比べて、 Tg2576マウス脳の皮質細胞では TGF i3 2タンパクの発現が軽度増加していること を本発明者らは確認した。 Tg2576マウスの脳でのみ観察される特徴的な他の組織 学的所見として、 TGF J3 2発現が増加した一群の細胞がアミロイ ド斑周辺で認めら れることが以前の研究 (Flanders et al. , 1995; Prattと McPherson, 1997) で 報告されている。 この特徴的な所見の原因の 1つとして、 毒性を有する Α ]3の濃 度がアミロイ ド斑周辺では他の部位よりも高いことが考えられる。 他の原因とし ては、アミロイ ド斑周辺での炎症反応が細胞の TGF j3 2増加を促進することが考え られる。 しかしながら一般的には、 毒性を有する A ]3 1 - 42 による TGF 3 2発現の in vitroでの増加と比較すると、 特に皮質以外の部位では、 Tg 2576マウスでの TGF |3 2タンパク発現の in vivoでの増加は比較的小さいようである (図 7、 8)。 この差異は、 毒性を有する 濃度の上昇は in vitro実験では短時間だけ人工的 に引き起こされるが in vivoでは徐々に誘導されて生涯継続する、 という事実を 反映している可能性がある。何らかの防御システムが、 A jSが誘導するマウスでの TGF β 2増加を抑制している可能性がある。
ADに関する研究で最も重要な問題の 1つは、 Tg2576マウスのような FAD遺伝 子を過剰発現しているマウスの脳で、 多数のアミロイ ド斑が存在しても神経細胞 の減少が起こらないことである (Hsiao et al., 1996)。 TUNEL反応を用いた組織 学的検査では、 TGF i3 2濃度が高いと推測されるアミロイ ド斑周辺の神経細胞で軽
度な細胞死さえ起こっていないことが示された (データは示さず)。 家族性 ADの トランス遺伝子を発現しているマウスで神経細胞の実質的な減少が認められない 理由については、 これまでにいくつかの説明がなされてきた。 その中には、 動物 種による神経細胞の脆弱性の違い、 ヒ トのタウ分子がこれらのマウスには存在し ないこと、 ヒ トでの炎症の伝達物質 (例えば、 ある種のサイ ト力イン) に相当す る要素が完全には備わっていないこと、 A への曝露が比較的短時間であったこと などが含まれる (Hardy and Selkoe, 2002)。 さらに、 FAD遺伝子を先天的に持つ
FAD 患者で中年期以降に神経細胞死が起こり始めることを考えると、 神経細胞死 に対する防御システムが本来備わっており、 この防御システムの中年期以降の機 能不全が神経細胞死の開始の一因であると推測されるのも当然である。 この仮定 に基づくと、 マウスは比較的短い寿命の間ずつとその防御システムを維持できる が、 寿命の長いヒ トは中年期以降にはこの防御システムを維持できなくなる傾向 があると推測される。 TGF j3 2タンパクの発現増加が Tg2576マウスでは比較的小 さいと推定されることから、毒性を有する が誘導する TGF 2タンパクの発現 增加を軽減するメカニズムが防御システムの 1つとして考えられる。その他には、 何種かの神経栄養因子が介する神経保護作用が考えられる。 '
本発明者らは、 24 アミ ノ酸から成る神経保護作用を'有するペプチド、
MAPRGFSCLLLLTSEIDLPVKRRA (配列番号 15) を同定し、 ヒユーマニン (蘭) と命名 した。 このペプチドは、 FAD遺伝子の異所発現や などの ADに関連するさまざ まな傷害による神経毒性を阻害する (Hashimoto et al. , 2001, Nishimoto et al. ,
2004)。 HNは、 AD患者の後頭葉由来の mRNAを用いて構築した cDNAライブラリー からクローニングされた。 HNは、 正常なヒ ト脳のグリア細胞と精巣や結腸など他 のいくつかの組織で発現している (Taj ima et al. , 2001)。 ADの脳では、 HNは神 経細胞と小円形のグリア細胞で高発現している。簡は防御因子であると考えられ る。 本研究で本発明者らは、 TGF 2/APP が誘導する神経細胞死はより強力な HN 誘導体である D - Serl4 HN 10 nMによって抑制されること(Terashita et al. , 2002) を示している力 、これは冊および/または冊誘導体が ADの治療薬として有用で あるという考えを裏付けるものである。 HNは、 細胞表面の仮想受容体に結合して 特定のチロシンキナーゼに関連する細胞内シグナル伝達経路を活性化することで、
AD に関連する傷害による神経毒性に対する保護作用を示す (Hashimoto et al. , 2003b) 0 本研究で示された結果から、 抗 TGFj32中和抗体などの TGFJ32/APPが誘 導する細胞死経路の阻害因子は、 HNとは異なるメカニズムで ADを抑える有効な AD治療薬となると考えられる。 このように、 本明細書で述べた本発明者らの知見 は、 ADの詳細なメカニズムをさらに解明するためだけでなく有効な抗 AD薬の開 発にも役立つものである。
本明細書で引用したすべての刊行物、 特許及ぴ特許出願をそのまま参考として 本明細書に取り入れるものとする。 産業上の利用可能性
本発明により、 アルツハイマー病 (AD) の予防又は治療に有用な薬剤をスクリ 一二ングすることが可能になった。 その結果、本発明は、有効な抗 AD薬の開発に 役立つことが期待される。 ' 参考文献
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