JPWO2019131862A1 - リチウムイオン二次電池用負極材 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献2の発明は特許文献1に比べると許容できるSi結晶子サイズが大きすぎ、膨張抑制につながらない可能性がある。また、Siの結晶子サイズが特許文献1と同じ30nm以下であるとしても、Si単体で負極材を形成している点や、Si粒径が0.1μm以上である点は、負極の膨張抑制、電池寿命改善の手法としては不利である。
本発明の課題は、使用に伴う電極膨張率が小さく寿命が長いリチウムイオン二次電池のための負極材を提供することにある。
[1]一次粒子の平均粒子径dAVが5nm以上95nm以下であるSiを含む粒子(A1)と、黒鉛を含む物質からなる粒子(A2)と、炭素質材料(A3)とを含む複合体(A)を含むリチウムイオン二次電池用負極材であって、前記複合体(A)のX線回折測定における前記粒子(A1)の(111)面回折ピークの半値幅に対する(220)面回折ピークの半値幅の比、及び(111)面回折ピークの半値幅に対する(311)面回折ピークの半値幅の比が、共に1.40以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材。
[2]粒子(A1)を被覆する厚さ1nm以上20nm以下の非晶質炭素被覆層(A1C)を含む前項1に記載のリチウムイオンで二次電池用負極材。
[3]前記粒子(A2)は、体積基準累積粒度分布における50%粒子径DV50が2.0μm以上20.0μm以下であり、BET比表面積(SBET)が1.0m2/g以上10.0m2/g以下である前項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
[4]前記粒子(A2)は、粉末X線回折法による黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I110と(004)面のピーク強度I004の比I110/I004が0.10以上0.35以下であり、粉末X線回折法による(002)面の平均面間隔d002が0.3360nm以下であり、窒素ガス吸着法によって測定される直径0.4μm以下の細孔の全細孔容積が5.0μL/g以上40.0μL/g以下である黒鉛粒子である前項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次イオン電池用負極材。
[5]前記複合体(A)中の前記粒子(A1)の含有率が10質量%以上70質量%以下である前項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
[6]シート状集電体及び該集電体を被覆する負極層を有し、前記負極層はバインダー、導電助剤及び前項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材を含む負極シート。
[7]前項6に記載の負極シートを有するリチウムイオン二次電池。
本発明の一実施形態に用いられる粒子(A1)は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なSiを主成分とする。Siの含有率は好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。粒子(A1)はSi単体またはSi元素を含む化合物、混合体、共融体または固溶体からなるものでもよい。また、粒子(A2)及び炭素質材料(A3)との複合化前の粒子(A1)は複数の微粒子が凝集したもの、すなわち二次粒子化したものでもよい。粒子(A1)の形状としては、塊状、鱗片状、球状、繊維状などを挙げることができる。これらのうち、球状または塊状が好ましい。
Li以外の元素である元素Mの具体例としては、B、C、N、O、S、P、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ru、Rh、Pd、Pt、Be、Nb、Nd、Ce、W、Ta、Ag、Au、Cd、Ga、In、Sb、Baなどを挙げることができる。式中、mは好ましくは0.01以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.30以上である。
平均粒子径dAV[nm]は、
dAV[nm]=6×103/(ρ×SBET)
により定義される。ここでρ[g/cm3]はSi粒子の真密度であり、理論値の2.3[g/cm3]を採用した。SBET[m2/g]はN2ガスを吸着ガスとするBET法により測定した比表面積である。
装置:日立製作所製 H9500、
加速電圧:300kV。
サンプル作製:エタノール中に試料を少量採取し超音波照射により分散させた後、マイクログリッド観察用メッシュ(支持膜無し)に載せて観察用試料とする。
観察倍率:5万倍(粒子形状観察時)及び40万倍(非晶質炭素層の厚さ観察時)
本発明の好ましい実施態様における粒子(A2)に含まれる黒鉛粒子は人造黒鉛粒子であることが好ましい。光学組織の大きさ及び形状が特定の範囲にあり、適切な黒鉛化度を有する人造黒鉛粒子により、つぶれ特性と電池特性が共に優れた電極材料を得ることができる。
人造黒鉛粒子の結晶子のC軸方向の厚みLcとしては50nm以上1000nm以下が、質量エネルギー密度やつぶれ性の観点から好ましい。
ラマンスペクトルは、例えばレーザラマン分光光度計(日本分光株式会社製、NRS−5100)を用いて、付属の顕微鏡で観察することによって測定することができる。
本発明の一実施形態に係る粒子(A2)に含まれる黒鉛粒子は、熱履歴が1000℃以下のコークスを粉砕した粒子を加熱することにより製造することができる。
コークスの原料としては、例えば、石油ピッチ、石炭ピッチ、石炭ピッチコークス、石油コークス及びこれらの混合物を用いることができる。すなわち、粒子(A2)に含まれる黒鉛粒子としては、石油系コークス及び/または石炭系コークス由来の物質を用いることが好ましい。これらの中でも、特定の条件下でディレイドコーキングを行ったものが望ましい。
乾式で粉砕を行う場合、粉砕時にコークスに水が含まれていると粉砕性が著しく低下するので、100〜1000℃程度で予め乾燥させることが好ましい。より好ましくは100〜500℃である。コークスが高い熱履歴を有していると圧砕強度が強くなり粉砕性が悪くなり、また結晶の異方性が発達してしまうので劈開性が強くなり鱗片状の粉末になり易くなる。粉砕する手法に特に制限はなく、公知のジェットミル、ハンマーミル、ローラーミル、ピンミル、振動ミル等が用いて行うことができる。
粉砕は、DV50が2.0μm以上20.0μm以下となるように行うことが好ましく、5.0μm以上18.0μm以下がより好ましい。
黒鉛粒子を活物質として用いて電極を作製すると、電極圧縮時に電極内部で活物質が均一に分布しやすくなり、また隣接する粒子との接触も安定し、よって繰り返し充放電に一層優れた電池とすることができる。
本発明の好ましい実施態様における炭素質材料(A3)は、粒子(A2)とは異なるものであって、炭素原子により形成される結晶の発達が低い炭素材料であり、ラマン散乱分光法によるラマンスペクトルにおいて1360cm-1近傍にピークを持つ。また、炭素質材料(A3)は非晶質炭素被覆層(A1C)と同一であっても良い。
炭素質材料(A3)は、例えば、炭素前駆体を炭素化することによって製造することができる。前記炭素前駆体は、特に限定されないが、熱重質油、熱分解油、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、エチレン製造時に副生するタールまたは石油ピッチなどの石油由来物質、石炭乾留時に生成するコールタール、コールタールの低沸点成分を蒸留除去した重質成分、コールタールピッチ(石炭ピッチ)などの石炭由来物質が好ましく、特に石油系ピッチまたは石炭系ピッチが好ましい。ピッチは複数の多環芳香族化合物の混合物である。ピッチを用いると、高い炭素化率で、不純物の少ない炭素質材料(A3)を製造できる。ピッチは酸素含有率が少ないので、粒子(A1)を炭素質材料で被覆する際に、粒子(A1)が酸化されにくい。
残炭率は以下の方法で決定される。固体状のピッチを乳鉢等で粉砕し、粉砕物を窒素ガス流通下で質量熱分析する。1100℃における質量の仕込み質量に対する割合を残炭率と定義する。
炭素質材料(A3)の割合が2質量%以上であれば、粒子(A1)と粒子(A2)の十分な結合が得られ、また、粒子(A1)の表面を炭素質材料(A3)で覆うことが可能となるため、粒子(A1)に導電性が付与され易くなり、粒子(A1)の表面反応性を抑制する効果や膨張収縮を緩和する効果が得られ、良好なサイクル特性が得られる。一方、炭素質材料(A3)の割合が40質量%以下であれば、炭素質材料(A3)の割合が高くても初期効率が低くなることはない。
本発明の一実施形態に係る複合体(A)は、粒子(A1)または構造体(α)(粒子(A1)が非晶質炭素被覆層(A1C)で被覆されている場合)と、粒子(A2)と、炭素質材料(A3)とを含み、粒子(A1)または構造体(α)と粒子(A2)と炭素質材料(A3)とは少なくともその一部が互いに複合化していることが好ましい。複合化とは、例えば、粒子(A1)または構造体(α)と粒子(A2)とが炭素質材料(A3)により固定されて結合している状態、あるいは粒子(A1)または構造体(α)及び/または粒子(A2)が炭素質材料(A3)により被覆されている状態を挙げることができる。本発明においては粒子(A1)または構造体(α)が炭素質材料(A3)によって完全に被覆され、粒子(A1)または構造体(α)の表面が露出していない状態となっていることが好ましく、その中でも粒子(A1)または構造体(α)と、粒子(A2)とが炭素質材料(A3)を介して連結し、その全体が炭素質材料(A3)により被覆されている状態、及び構造体(α)と粒子(A2)とが直接接触し、その全体が炭素質材料(A3)により被覆されている状態が好ましい。
負極材として電池に用いた際に、粒子(A1)または構造体(α)の表面が露出しないことにより電解液分解反応が抑制されクーロン効率を高く維持することができ、炭素質材料(A3)を介して、粒子(A2)、及び粒子(A1)または構造体(α)が連結することによりそれぞれの間の導電性を高めることができ、粒子(A1)または構造体(α)が炭素質材料(A3)により被覆されることによりその膨張及び収縮に伴う体積変化を緩衝することができる。
本発明の一実施形態に係る複合体(A)は、公知の方法に従って製造することができる。
例えば、粒子(A1)または構造体(α)と、粒子(A2)と、炭素質材料(A3)の前駆体とを混ぜ合わせ、得られた混合物を熱処理して前記前駆体を炭素質材料(A3)とすることを含む方法によって複合体(A)を得ることができる。
粒子(A1)または構造体(α)と、粒子(A2)と、炭素質材料(A3)の前駆体との混合物は、例えば、炭素質材料(A3)前駆体の一つであるピッチを溶融させ、該溶融ピッチと、粒子(A1)または構造体(α)とを不活性雰囲気にて混合し、該混合物を固化させた後に粉砕し、該粉砕物を粒子(A2)と混合することによって;粒子(A1)または構造体(α)と、粒子(A2)とを混合し、次いで、粒子(A1)または構造体(α)、及び粒子(A2)の混合物と炭素質材料(A3)前駆体とを混合してメカノケミカル処理を行うことによって;または炭素質材料(A3)前駆体を溶媒に溶解し、該前駆体溶液に粒子(A1)または構造体(α)と、粒子(A2)とを添加混合し、溶媒を除去して得られた固形物を粉砕することによって;得ることができる。メカノケミカル処理は、例えば、ハイブリダイザー(登録商標、株式会社奈良機械製作所製)などの公知の装置を用いることができる。
リチウムイオン二次電池用負極材として、電池性能を向上する目的やリチウムイオン二次電池用負極材の容量を調節する目的で、複合体(A)と炭素とを含む材料を混合してもよい。混合する炭素を含む材料は複数種類用いてもよい。炭素を含む材料としては容量の高い黒鉛が好ましい。黒鉛としては天然黒鉛、人造黒鉛から選択して用いることができる。この際、複合体(A)は比較的高容量(700mAh/g以上)である複合体を用いた方がリチウムイオン二次電池用負極材のコストが低減できるため好ましい。この容量調整用の炭素を含む材料は、予め複合体(A)と混合しておき、これにバインダー、溶剤、導電助剤等の添加剤を加えて負極用ペーストを作製してもよい。また、複合体(A)、炭素を含む材料、バインダー、溶剤、導電助剤等の添加剤を同時に混合して負極用ペーストを作製してもよい。混合の順序や方法は粉体のハンドリング等を考慮して適宜決めればよい。
本発明の一実施形態に係る負極用ペーストは、前記負極材とバインダーと溶媒と必要に応じて導電助剤などの添加剤を含む。この負極用ペーストは、例えば、前記負極材とバインダーと溶媒と必要に応じて導電助剤などを混練することによって得ることができる。負極用ペーストは、シート状、ペレット状などの形状に成形することができる。
本発明の一実施形態に係る負極シートは、集電体と集電体を被覆する電極層とを有する。
集電体としては、例えば、ニッケル箔、銅箔、ニッケルメッシュまたは銅メッシュなどシート状のものが挙げられる。
電極層は、バインダーと前記の負極材とを含有する。電極層は、例えば、前記のペーストを集電体上に塗布し乾燥させることによって得ることができる。ペーストの塗布方法は特に制限されない。電極層の厚さは、好ましくは50〜200μmである。電極層が厚くなりすぎると、規格化された電池容器に負極シートを収容できなくなることがある。電極層の厚さは、ペーストの塗布量によって調整できる。また、ペーストを乾燥させた後、加圧成形することによっても調整することができる。加圧成形法としては、ロール加圧、プレス加圧などの成形法が挙げられる。プレス成形するときの圧力は、好ましくは100〜500MPa程度である。
負極シートの電極密度は次のようにして計算することができる。すなわち、プレス後の負極シートを直径16mmの円形状に打ち抜き、その質量と厚みを測定する。そこから別途測定しておいた集電体箔(直径16mmの円形状に打ち抜いたもの)の質量と厚みを差し引いて電極層の質量と厚みを求め、その値を元に電極密度を計算する。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、非水系電解液及び非水系ポリマー電解質からなる群から選ばれる少なくとも一つ、正極シート、及び前記負極シートを有する。
正極シートとしては、リチウムイオン二次電池に従来から使われていたもの、具体的には正極活物質を含んでなるシートを用いることができる。正極活物質としては、LiNiO2、LiCoO2、LiMn2O4、LiNi0.34Mn0.33Co0.33O2、LiFePO4などが挙げられる。
炭素粉末試料をガラス製試料板(試料板窓18×20mm、深さ0.2mm)に充填し、以下の条件で測定を行った。
X線回折装置:リガク製SmartLab(登録商標)、
X線種:Cu−Kα線、
Kβ線除去方法:Niフィルター、
X線出力:45kV、200mA、
測定範囲:5.0〜10.0deg、
スキャンスピード:10.0deg/min。
得られた波形に対し、平滑化、バックグラウンド除去、Kα2除去を行い、プロファイルフィッティングを行った。その結果得られた(004)面のピーク強度I004と(110)面のピーク強度I110から配向性の指標となる強度比I110/I004を算出した。なお、各面のピークは以下の範囲のうち最大の強度のものをそれぞれのピークとして選択した。
(004)面:54.0〜55.0deg、
(110)面:76.5〜78.0deg。
粉体を極小型スパーテル2杯分、及び非イオン性界面活性剤(TRITON(登録商標)−X;Roche Applied Science製)2滴を水50mlに添加し、3分間超音波分散させた。この分散液をレーザー回折式粒度分布測定器(LMS−2000e、株式会社セイシン企業製)に投入し、体積基準累積粒度分布を測定して50%粒子径Dv50(μm)を求めた。
比表面積/細孔分布測定装置(カンタムクローム・インスツルメンツ社製、NOVA 4200e)を用い、窒素ガスをプローブとして相対圧0.1、0.2、及び0.3のBET多点法によりBET比表面積SBET(m2/g)を測定した。
炭素材料約5gをガラス製セルに秤量し、1kPa以下の減圧下300℃で約3時間乾燥して、水分等の吸着成分を除去した後、炭素材料の質量を測定した。その後、液体窒素冷却下における乾燥後の炭素材料の窒素ガスの吸着等温線をカンタクローム(Quantachrome)社製Autosorb−1で測定した。得られた吸着等温線のP/P0=0.992〜0.995での測定点における窒素吸着量と乾燥後の炭素材料の質量から直径0.4μm以下の全細孔容積(μL/g)を求めた。
炭素粉末試料をガラス製試料板(試料板窓18×20mm、深さ0.2mm)に充填し、以下の条件で測定を行った。
X線回折装置:リガク製SmartLab(登録商標)、
X線種:Cu−Kα線、
Kβ線除去方法:Niフィルター、
X線出力:45kV、200mA、
測定範囲:5.0〜80.0deg、
スキャンスピード:10.0deg/min。
得られた波形に対し、平滑化、バックグラウンド除去、Kα2除去を行い、プロファイルフィッティングを行った。その結果得られた(220)面及び(311)面回折ピークから半値幅を算出した。
LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2を192g、導電助剤としてカーボンブラック4g、及び結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)4gにN−メチルピロリドンを適宜加えながら撹拌・混合し、スラリー状の正極用ペーストを得た。
前記の正極用ペーストを厚さ20μmのアルミ箔上にロールコーターにより塗布し、乾燥させて正極用シートを得た。乾燥した電極はロールプレスにより密度を3.6g/cm3とし、電池評価用正極シートを得た。
バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(CMC;株式会社ダイセル製、CMC1300)を用いた。具体的には、固形分比2%のCMC粉末を溶解した水溶液を得た。
導電助剤としてカーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、及び気相成長法炭素繊維(VGCF(登録商標)−H,昭和電工株式会社製)を用意し、それぞれ3:1:1(質量比)で混合したものを混合導電助剤とした。
後述の実施例及び比較例で製造した複合体(A)と、容量を調節する目的の炭素を含む材料としての黒鉛の混合物を90質量部、混合導電助剤2質量部、CMC固形分8質量部となるようにCMC水溶液を混合し、自転・公転ミキサーにて混練し負極用ペーストを得た。
または、実施例及び比較例で製造した複合体(A)を90質量部、混合導電助剤2質量部、CMC固形分8質量部となるようにCMC水溶液を混合し、自転・公転ミキサーにて混練し負極用ペーストを得た。
前記の負極用ペーストを厚み20μmの銅箔上に300μmギャップのドクターブレードを用いて均一に塗布し、ホットプレートにて乾燥後、真空乾燥させて負極シートを得た。乾燥した電極は300MPaの圧力にて一軸プレス機によりプレスして電池評価用負極シートを得た。
正極シートと負極シートを対向させてリチウムイオン電池を作製する際、両者の容量バランスを考慮する必要がある。すなわち、リチウムイオンを受け入れる側の負極の容量が少な過ぎると過剰なLiが負極側に析出してサイクル劣化の原因となり、逆に負極の容量が多過ぎるとサイクル特性は向上するものの負荷の小さい状態での充放電となるためエネルギー密度は低下する。これを防ぐために、正極シートは同一のものを使用しつつ、負極シートは対極Liのハーフセルにて事前に活物質質量当たりの放電量を評価しておき、正極シートの容量(QC)に対する負極シートの容量(QA)の比が1.2で一定値となるよう負極シートの容量を微調整した。
露点−80℃以下の乾燥アルゴンガス雰囲気に保ったグローブボックス内で下記の操作を実施した。
上記負極シート及び正極シートを打ち抜いて面積20cm2の負極片及び正極片を得た。正極片のAl箔にAlタブを、負極片のCu箔にNiタブをそれぞれ取り付けた。ポリプロピレン製フィルム微多孔膜を負極片と正極片との間に挟み入れ、その状態でアルミラミネート包材でパックし電解液を700μL注液した。その後、開口部を熱融着によって封止して評価用の電池を作製した。なお、電解液は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネートが体積比で3:5:2の割合で混合した溶媒にビニレンカーボネート(VC)を1質量%、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を10質量%混合し、さらにこれに電解質LiPF6を1mol/Lの濃度になるように溶解させた液である。
充電とはセルに対して電圧を付与することであり、放電とはセルの電圧を消費する操作である。二極式ラミネート型フルセルの場合、対極はLi金属でなく、上記負極シートよりも高い酸化還元電位を有する材料を適用する。そのため、負極シートは負極として扱われる。従って、二極式ラミネート型フルセルにおいて、充電とは上記負極シートに対してLiを挿入する操作を意味し、放電とは上記負極操作からLiを放出する操作を意味する。
二極式ラミネート型フルセルを用いたサイクル試験では、エージングは5サイクル実施した。エージングの内1サイクル目は、レストポテンシャルから0.025Cの電流値で6時間45分間CCモードにて充電し、12時間の休止を導入した。その後さらに4.2Vまで0.05CでCC充電を実施した。放電は、0.05Cの電流値にて2.7VまでCCモードで放電した。エージングの2サイクル目、5サイクル目は同一の条件であり、充電は、4.3Vまで電流値0.1CでCC充電したあと、4.3VでCV充電に切り替え、カットオフ電流値を0.025Cで充電を行った。放電は、0.1Cの電流値にて2.7VまでCCモードで実施した。エージングの3サイクル目、4サイクル目は同一の条件であり、エージング2サイクル目、5サイクル目の電流値を0.1Cから0.2Cに置き換えた。
充電は、電流値1CのCCモードで4.3Vまで行った後、CVモードの放電に切り替え、カットオフ電流値を0.05Cにして実施した。
放電は、電流値1CのCCモードで3.0Vまで行った。
この充放電操作を1サイクルとして20サイクル行い、21サイクル目に上記充放電の1Cを0.1Cに置き換えた低レート試験を行った。この21サイクル試験を24回繰り返し、計504サイクルの試験とした。
Nサイクル目の放電容量維持率を次式で定義して計算した。
(Nサイクル後放電容量維持率(%))=
{(Nサイクル時放電容量)/(初回放電容量)}×100
この式における初回放電容量とはエージング終了後の1サイクル目を意味する。
二極式ラミネート型フルセルを用いた504サイクルのサイクル試験後、放電状態(3.0〜3.4V範囲内の電圧を有する)のフルセルをAr不活性雰囲気で解体し、負極電極を抜き取った。抜き取った電極は同雰囲気中でエチルメチルカーボネート(EMC)により洗浄、乾燥した後、ダイアルゲージ(株式会社ミツトヨ製;高精度タイプ[最小表示量0.001mm])により負極電極の厚みを測定した。負極電極厚みは負極電極全体をランダムに20点測定して平均化した厚みを採用した。この負極電極厚みから、集電体の銅箔厚みを差し引いた値を「504サイクル試験後の負極電極合剤層厚み」とした。
504サイクル試験後の負極電極合剤層膨張率を計算するにあたり、基準とする負極電極合剤層の厚みは、プレス直後の負極電極をダイアルゲージで20点測定した値の平均値から、銅箔集電体の厚みを差し引いて「プレス直後負極電極合剤層厚み」とした。
従って、「504サイクル試験後の負極電極合剤層膨張率」は次式により計算した。
(504サイクル試験後の負極電極合剤層膨張率(%))=
{(504サイクル試験後の負極電極合剤層厚み)
/(プレス直後負極電極合剤層厚み)}×100
(1)ケイ素含有粒子(Si微粒子)
実施例及び比較例で、粒子(A1)に使用したSi粒子、Si(1)〜Si(3)の物性を表1に示す。
一次粒子の平均粒子径dAVは前述の通り、dAV[nm]=6×103/(ρ×SBET)である。ここで、ρはSi粒子の真密度(理論値としての2.3[g/cm3])であり、SBETはBET法により測定した比表面積[m2/g]である。
Si微粒子Si(1)〜Si(3)をCVD法で作製後、Si(1)及びSi(2)については連続してアセチレンガスを原料に用いてCVD法で厚さ2nmの炭素被覆層(カーボンコート)を形成させることにより表1にカーボンコート層の厚みを示す構造体(α)−1及び構造体(α)−2を得た(表1)。なお、Si微粒子Si(3)については、構造体(α)の作製は行わなかった。
石油ピッチ(軟化点220℃)を使用した。この石油ピッチについて、窒素ガス流通下の熱分析により1100℃における残炭率を測定したところ、52質量%であった。
また、JIS K2425に記載されている方法またはそれに準じた方法で測定した石油ピッチのQI含量は0.62質量%、TI含量は48.9質量%であった。
実施例及び比較例で、粒子(A2)と共に、容量調節の目的で炭素を含む材料として使用した黒鉛粒子の物性を表2に示す。
石油系コークスをバンタムミル(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕した後、さらにジェットミル(株式会社セイシン企業製)で粉砕し、これをアチソン炉にて3000℃で熱処理して、DV50が7.5μm、BET比表面積が4.9m2/gの人造黒鉛粒子(A2)−aを得た。
次に、構造体(α)−1 16.4質量部と炭素質材料(A3)の前駆体である前記の石油ピッチ15.4質量部(石油ピッチを炭化した後の質量として)とをセパラブルフラスコに投入した。窒素ガスを流通させて不活性雰囲気を保ち、250℃まで昇温した。ミキサーを500rpmで回転させて撹拌し、ピッチとケイ素含有粒子とを均一に混合させた。これを冷却し固化させて混合物を得た。
この混合物に、粒子(A2)−aである前記の人造黒鉛粒子68.2質量部を加え、ロータリーカッターミルに投入し、窒素ガスを流通させて不活性雰囲気を保ちつつ25000rpmで高速撹拌し混合させた。
これを焼成炉に入れ、窒素ガス流通下で、150℃/hで1100℃まで昇温し、1100℃にて1時間保持し、(A3)前駆体を(A3)に変換した。室温まで冷やし焼成炉から取り出しロータリーカッターミルで解砕後、45μm目開きの篩にて篩分した篩下を複合体(A)−aとして得た。
上記とは別に、石油系コークスをバンタムミル(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕し、これをアチソン炉にて3000℃で熱処理して、DV50が12.1μmでBET比表面積が2.5m2/gである黒鉛(1)を得た。また、石油系コークスをバンタムミル(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕した後、さらにジェットミル(株式会社セイシン企業製)で粉砕し、これをアチソン炉にて3000℃で熱処理して、DV50が6.7μmでBET比表面積が6.1m2/gの黒鉛(2)を得た。
構造体(α)−1を表1の構造体(α)−2に替えた以外は、実施例1と同じ方法で複合体(A)−bを得た。この複合体(A)−bについてX線回折測定を行った。得られた回折ピークの半値幅比を表3に示す。
構造体(α)−1を表1のSi(3)に替えた以外は、実施例1と同じ方法で複合体(A)−cを得た。この複合体(A)−cについてX線回折測定を行って得られた回折ピークの半値幅比を表3に示す。
特許文献2の発明は特許文献1に比べると許容できるSi結晶子サイズが大きすぎ、膨張抑制につながらない可能性がある。また、Siの結晶子サイズが特許文献1と同じ30nm以下であるとしても、Si単体で負極材を形成している点や、Si粒径が0.1μm以上である点は、負極の膨張抑制、電池寿命改善の手法としては不利である。
本発明の課題は、使用に伴う電極膨張率が小さく寿命が長いリチウムイオン二次電池のための負極材を提供することにある。
[1]一次粒子の平均粒子径dAVが5nm以上95nm以下であるSiを含む粒子(A1)と、黒鉛を含む物質からなる粒子(A2)と、炭素質材料(A3)とを含む複合体(A)を含むリチウムイオン二次電池用負極材であって、前記複合体(A)のX線回折測定における前記粒子(A1)の(111)面回折ピークの半値幅に対する(220)面回折ピークの半値幅の比、及び(111)面回折ピークの半値幅に対する(311)面回折ピークの半値幅の比が、共に1.40以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材。
[2]粒子(A1)を被覆する厚さ1nm以上20nm以下の非晶質炭素被覆層(A1C)を含む前項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
[3]前記粒子(A2)は、体積基準累積粒度分布における50%粒子径DV50が2.0μm以上20.0μm以下であり、BET比表面積(SBET)が1.0m2/g以上10.0m2/g以下である前項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
[4]前記粒子(A2)は、粉末X線回折法による黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I110と(004)面のピーク強度I004の比I110/I004が0.10以上0.35以下であり、粉末X線回折法による(002)面の平均面間隔d002が0.3360nm以下であり、窒素ガス吸着法によって測定される直径0.4μm以下の細孔の全細孔容積が5.0μL/g以上40.0μL/g以下である黒鉛粒子である前項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
[5]前記複合体(A)中の前記粒子(A1)の含有率が10質量%以上70質量%以下である前項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
[6]シート状集電体及び該集電体を被覆する負極層を有し、前記負極層はバインダー、導電助剤及び前項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材を含む負極シート。
[7]前項6に記載の負極シートを有するリチウムイオン二次電池。
粉末試料をガラス製試料板(試料板窓18×20mm、深さ0.2mm)に充填し、以下の条件で測定を行った。
X線回折装置:リガク製SmartLab(登録商標)、
X線種:Cu−Kα線、
Kβ線除去方法:Niフィルター、
X線出力:45kV、200mA、
測定範囲:5.0〜80.0deg、
スキャンスピード:10.0deg/min。
得られた波形に対し、平滑化、バックグラウンド除去、Kα2除去を行い、プロファイルフィッティングを行った。その結果得られた(220)面及び(311)面回折ピークから半値幅を算出した。
Claims (7)
- 一次粒子の平均粒子径dAVが5nm以上95nm以下であるSiを含む粒子(A1)と、黒鉛を含む物質からなる粒子(A2)と、炭素質材料(A3)とを含む複合体(A)を含むリチウムイオン二次電池用負極材であって、前記複合体(A)のX線回折測定における前記粒子(A1)の(111)面回折ピークの半値幅に対する(220)面回折ピークの半値幅の比、及び(111)面回折ピークの半値幅に対する(311)面回折ピークの半値幅の比が、共に1.40以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材。
- 粒子(A1)を被覆する厚さ1nm以上20nm以下の非晶質炭素被覆層(A1C)を含む請求項1に記載のリチウムイオンで二次電池用負極材。
- 前記粒子(A2)は、体積基準累積粒度分布における50%粒子径DV50が2.0μm以上20.0μm以下であり、BET比表面積(SBET)が1.0m2/g以上10.0m2/g以下である請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
- 前記粒子(A2)は、粉末X線回折法による黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I110と(004)面のピーク強度I004の比I110/I004が0.10以上0.35以下であり、粉末X線回折法による(002)面の平均面間隔d002が0.3360nm以下であり、窒素ガス吸着法によって測定される直径0.4μm以下の細孔の全細孔容積が5.0μL/g以上40.0μL/g以下である黒鉛粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次イオン電池用負極材。
- 前記複合体(A)中の前記粒子(A1)の含有率が10質量%以上70質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
- シート状集電体及び該集電体を被覆する負極層を有し、前記負極層はバインダー、導電助剤及び請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材を含む負極シート。
- 請求項6に記載の負極シートを有するリチウムイオン二次電池。
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