以下、本発明における加熱調理器の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、細かい構造および重複または類似する説明については、適宜簡略化または省略している。また、各実施の形態におけるフローチャートは制御の一例であり、加熱調理器および成分検知装置の制御を限定するものではない。
実施の形態1.
(加熱調理器の構成)
まず、本発明の実施の形態1における加熱調理器100の構成について説明する。本実施の形態では、加熱調理器100は誘導加熱調理器であり、成分検知装置1は加熱調理器100と別体で設けた差し込み型成分検知装置であるが、加熱調理器100および成分検知装置1はこれに限定されるものではない。図1は、本発明の実施の形態1における加熱調理器100の概略斜視図である。図1に示すように、加熱調理器100は、本体110と、本体110の上面に配置されたトッププレート120とを備えている。本体110には、魚等の調理物の調理を行うためのグリル130が収容されている。グリル130の内部には、グリル130に載置された調理物を加熱するための熱源となるグリルヒータ(図示せず)が設けられている。また、グリル130に隣接して、前面操作部140が設けられている。前面操作部140には、電源スイッチ142および複数の操作ダイヤル144が配置されている。電源スイッチ142は、加熱調理器100の電源をON/OFFするために操作されるものである。操作ダイヤル144は、例えばグリル130の火力を調整するために操作されるものである。前面操作部140を介して入力される操作信号は、制御部300(図2)に送信される。
トッププレート120は、例えば、耐熱性のガラス板と金属の枠体とにより構成される。トッププレート120の上面には、印刷等により加熱領域を示す複数の(本実施の形態では3個の)円形の加熱口150が設けられている。各加熱口150には、鍋またはフライパン等の容器400(図2)が載置される。
トッププレート120の手前側には、加熱口150の火力を調整するために操作される上面操作部160が設けられている。上面操作部160は、火力を調節するために操作される火力操作部162と、火力の大きさを表す火力表示部164と、音声出力部165とを有する。本実施の形態では、各加熱口150に対応して、複数の火力操作部162および火力表示部164が設けられている。
火力操作部162は、例えば静電容量式のタッチセンサで構成される。火力操作部162を介して入力される操作指示は、制御部300へ出力される。火力表示部164は、例えば複数の発光ダイオード(LED)で構成され、制御部300の制御の下、火力の大きさに応じた数の発光ダイオードが点灯される。音声出力部165は、加熱調理器100の状態または警告音などを音声出力するスピーカである。
また、トッププレート120の手前側中央には、操作表示部180が設けられている。操作表示部180は、例えばタッチパネルで構成され、加熱調理器100に関する情報が表示されるとともに、加熱調理器100または成分検知装置1に対する操作が入力される。操作表示部180に表示される情報には、加熱調理器100の設定情報、調理モードの選択表示、自動調理の進行状況、後述する成分検知処理に関する各種画面、および警告情報の表示等が含まれる。操作表示部180の表示内容は、制御部300によって制御される。また、操作表示部180を介して入力される操作信号は、制御部300に送信される。なお、操作表示部180は、タッチパネルに限定されるものではなく、操作部と表示部とが別々に設けられる構成としてもよい。操作表示部180が本発明の「表示部」に相当する。
また、トッププレート120の奥側には、複数の排気口170が設けられている。排気口170は、本体110の内部と連通するように配置される。本体110の内部に取り込まれた空気は、排気口170から排気される。排気口170の上部には、本体110の内部への埃その他の異物が侵入するのを防止する通気性を有するカバー(図示せず)を設けてもよい。
また、排気口170の手前には、成分検知装置1との間で、無線通信を行うための通信ポート190が設けられている。通信ポート190は、例えばガラス繊維強化プラスチック(GFRP)樹脂等の電波透過性の高い材質で構成される。図1では、通信ポート190は、トッププレート120の上面に載置される容器400によって無線電波が遮蔽されないように、加熱口150と排気口170との間に配置されている。しかしながら、通信ポート190の位置はこれに限定されるものではなく、例えば、各加熱口150との距離が均等となる位置に配置されてもよい。または、通信ポート190を操作表示部180の一部として設けてもよい。
図2は、本実施の形態における加熱調理器100の主要部の構成および機能を説明する図である。なお、図2では、1つの加熱口150に対応する構成のみを図示しており、また、例えば水および食材等の調理物450が収容される容器400と、容器400に取り付けられた成分検知装置1とを併せて図示している。なお、本実施の形態の成分検知装置1は、加熱調理器100とは別体に設けられ、容器400に収容された調理物450の成分を検知し、検知した成分情報を加熱調理器100へ送信するものである。成分検知装置1の詳細については後述する。
図2に示すように、トッププレート120の下方には、各加熱口150に対応して加熱コイル200が配置される。本実施の形態では、加熱コイル200は、略環状の内側加熱コイルと、その外側に設けられた略環状の外側加熱コイルとを備えた二重環形状である。なお、加熱コイル200が本発明の「加熱部」に相当する。
また、トッププレート120の下方には、赤外線温度センサ210が配置されている。赤外線温度センサ210は、加熱コイル200上のトッププレート120に載置された容器400の底部から放射される赤外線を検知する。なお、赤外線温度センサ210の直上部は、赤外線が遮蔽されない構造(例えば空洞または透過素材)とすることが望ましい。また、トッププレート120の裏面の加熱コイル200と対向する面には、サーミスタなどの接触式温度センサ220がトッププレート120の裏面に接触するように配置されている。接触式温度センサ220は、容器400からトッププレート120へ伝わる熱を検知する。赤外線温度センサ210および接触式温度センサ220によって検知された信号は、温度検知部230へ出力される。温度検知部230は、赤外線温度センサ210および接触式温度センサ220による検知信号をA/D変換し、温度に換算する。温度検知部230によって換算された温度情報は、制御部300へ送信される。
また、本体110の内部には、加熱調理器100の各部を制御する制御部300と、成分検知装置1と通信ポート190を介して通信する通信部310と、加熱調理器100の各部への電力供給を行う電源部320と、加熱コイル200に高周波電流を供給する高周波インバータ330とが設けられている。
通信部310は、成分検知装置1から成分情報を受信するとともに、制御部300にて生成される成分検知装置1に対する指令(制御信号)を成分検知装置1に送信する。成分検知装置1に対する指令は、例えば、成分検知の開始を指示する開始指令および成分検知を停止する停止指令などが含まれる。
本実施の形態の通信部310は、無線通信モジュールを用いて構成され、成分検知装置1との間で無線通信を行う。成分検知装置1との間の無線通信は、金属帯が伝送経路に介在すると電波が遮蔽されてしまうため、電波透過性が高い通信ポート190を介して行われる。なお、通信部310は、成分検知装置1と有線通信を行うものであってもよい。
電源部320は、電源スイッチ142からの電源供給の開始または停止信号に基づいて、加熱調理器100の各部への電力の供給を開始または停止するものである。
高周波インバータ330は、制御部300からの制御信号に基づいて、電源部320から供給される直流電流を変換し、加熱コイル200と共振コンデンサ(図示せず)とを接続した回路に、高周波電流を供給するものである。また、高周波インバータ330は、制御部300からの制御信号に基づいて、グリル130の内部に収容されたグリルヒータ(図示せず)に高周波電流を供給してもよい。
制御部300は、加熱調理器100各部の動作制御を行うとともに、成分検知装置1に指令を送信し、成分検知装置1の制御を行う。また、制御部300は成分検知装置1から受信した調理物の成分情報と、予め使用者により設定され記憶部305に記憶された管理情報との比較情報を生成して出力する。制御部300は、その機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアを用いて構成されるか、またはマイコンもしくはCPU等の演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとで構成される。
図3は、本実施の形態における加熱調理器100の制御部300の機能ブロック図である。図3に示すように、制御部300は、操作制御部301と、報知部302と、加熱制御部303と、成分管理部304と、記憶部305とを有する。上記各部は、ソフトウェアで実現される機能部として制御部300が備えるCPU(図示せず)によって、メモリまたはCD−ROMなどの記録媒体(図示せず)に記憶されるプログラムを実行することで実現される。または、上記各部は、ASIC(Application Specific IC)またはPLD(Programmable Logic Device)などの電子回路で実現されてもよい。
操作制御部301は、操作ダイヤル144、火力操作部162または操作表示部180からの操作信号を受信し、操作信号に応じた処理を行う。具体的には、操作制御部301は、火力操作部162を介して火力を調節する操作がなされた場合、操作内容に応じた制御信号を生成し、加熱制御部303へ送信する。また、操作制御部301は、操作表示部180を介して、成分検知装置1の成分検知処理に関する操作がなされた場合、操作内容に応じた制御信号を生成し、成分管理部304に送信する。
報知部302は、加熱調理器100の動作状態および設定、ならびに成分検知装置1によって取得された成分情報などを使用者に報知するために、火力表示部164、操作表示部180および音声出力部165を制御する。例えば、報知部302は、加熱調理器100の加熱調理に関する設定情報または成分検知装置1によって取得された成分情報および後述する比較情報を操作表示部180に表示する。なお、報知部302は、成分検知装置1によって取得された成分情報および後述する比較情報を、操作表示部180での表示に替えて、または加えて音声出力部165から音声出力してもよい。なお、通信部310、操作表示部180、または音声出力部165の少なくとも何れか一つが本発明の「出力部」に相当する。
加熱制御部303は、操作制御部301からの制御信号および、温度検知部230からの温度情報を用いて、加熱コイル200を駆動する信号を高周波インバータ330に送信する。また、加熱制御部303は、操作制御部301からの制御信号に基づき、グリル130の内部に収容されたグリルヒータ(図示せず)を駆動する信号を高周波インバータ330に送信してもよい。
成分管理部304は、操作制御部301からの制御信号に基づいて、成分検知装置1への指令を生成し、通信部310を介して成分検知装置1へ送信する。また、成分管理部304は、成分検知装置1から取得した成分情報と記憶部305に記憶される管理情報とに基づき比較情報を生成し、報知部302に出力する。これにより、操作表示部180または音声出力部165から、成分情報と管理情報との比較結果が使用者に対して出力される。
記憶部305は、不揮発性のメモリなどからなり、加熱調理器100の表示および制御などに用いられる各種データおよびプログラムを記憶する。具体的には、記憶部305には、操作表示部180に表示する表示データ、成分検知装置1から受信した成分情報、該成分情報を取得したときの火力、調理モード等の加熱制御情報、および成分管理部304によって生成される比較情報などが記憶される。さらに、記憶部305には、調理物の成分に関して使用者により設定された管理情報が記憶される。管理情報は、使用者が管理を所望する成分種、および該成分種の濃度またはpH値などを含む。
(成分検知装置の構成)
次に、成分検知装置1の構成について説明する。図4は、本実施の形態の成分検知装置1の正面斜視図であり、図5は、本実施の形態の成分検知装置1の背面斜視図である。また、図6は、本実施の形態の成分検知装置1の内部構成を示す図である。本実施の形態の成分検知装置1は、加熱調理器100で加熱される調理物の成分情報等を加熱調理器100との間で無線通信可能に構成されたものである。
図4および図5に示すように、成分検知装置1は、略直方体形状の筐体10を備える。筐体10は、多様なpH条件下(例えば、酸性条件下、アルカリ性条件下)での使用に長期間耐えうる耐食性を有し、耐水性および耐熱性の高い材質で形成される。例えば、筐体10は、シリコーン樹脂、耐熱性および強度の高いプラスチック樹脂であるポリフェニレンスルファイド(PPS)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)等のエンジニアリングプラスチック樹脂製とすることができる。または、筐体10は、ステンレスまたはアルミ等の金属製とすること、もしくは樹脂および金属を組み合わせたものとしてもよい。
筐体10の正面の上部には、円形状の表示窓21が設けられている。表示窓21は、円形状の開口部が光透過性のフィルムまたはシート等の光透過性部材で覆われた構造となっており、開口部にはLED等の発光素子(表示ランプ)からなる表示部20が設けられている。円形状の開口部と光透過性部材との間の隙間部分は、水分等の液体成分が筐体10の内部に浸入しないように、例えば耐熱性の高い接着剤等で閉塞(密封)される。
筐体10の正面の下部には、成分検知部51が設けられている。成分検知部51は、筐体10の正面の下部に形成された矩形状の開口部内に配置される。矩形状の開口部と成分検知部51との間の隙間部分は、水分等の液体成分が筐体10の内部に浸入しないように、例えばゴムパッキン等(図示せず)で密封される。
筐体10の背面の中央部には、筐体10の側面側から見てL字状となるかぎ型(フック)の支持部30が設けられる。本実施の形態では、容器400の縁に支持部30が引っかけられることで、成分検知装置1が容器400に取り付けられる(図2)。なお、支持部30の形状は、L字状に限定されるものではなく、取り付ける対象物の構造等によって任意の形状にすることができる。また、支持部30の位置は、検知部50が検知する調理物の位置、筐体10の長手方向の寸法、および成分検知装置1を取り付ける鍋またはフライパン等の容器400の構造等によって、任意に設定される。なお、成分検知装置1は、支持部30が取り付けられる位置を基準として、下方の重量が上方の重量よりも大きくなるように構成される。すなわち、成分検知装置1は、支持部30の取り付け位置より下方に比重があるように構成されている。これにより、成分検知装置1を安定して容器400に取り付けることができる。
支持部30は、筐体10と同様に耐食性、耐水性、および耐熱性が高い材質で形成される。例えば、支持部30は、シリコーン樹脂製、耐熱性および強度の高いプラスチック樹脂であるポリフェニレンスルファイド(PPS)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)等のエンジニアリングプラスチック樹脂製、ステンレスまたはアルミ等の金属製、もしくは樹脂および金属の組み合わせで形成される。また、支持部30は、筐体10と同一の材料で構成されてもよく、別の材料で構成されてもよい。例えば、成分検知装置1は、金属製の筐体10に樹脂製の支持部30を配置して構成したものとしてもよい。
筐体10の背面の支持部30の上方には、成分検知装置1の電源部60の電源として用いられる電池61を挿入するための電池挿入部62が形成される。電池挿入部62の形状は、電池61の種類に応じて任意の形状とすることができる。例えば、ボタン型電池を電池61として採用する場合は、図5に示すように円柱形の挿入部とすることができる。電池挿入部62の内縁面には、パッキン63が配置され、筐体10の内部への液体の浸入を防いでいる。パッキン63の材料は、防水性(止水性)のある材質であればよく、例えばシリコーンゴム製にできる。電池挿入部62は着脱可能に取り付けられる電池カバー64で密閉される。電池カバー64により、電池挿入部62への液体の浸入が防止され、電池挿入部62に汚れが付着することが抑制される。なお、電池61は一次電池または二次電池(充電池)の何れであってもよい。
また、図5に示すように、筐体10の上面には、加熱調理器100と無線通信を行うための通信ポート41が配置される。通信ポート41は、加熱調理器100と安定した通信を行うことが可能な、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)樹脂等の電波透過性の高い材質で構成される。
以上に説明したとおり、成分検知装置1の筐体10、ならびに筐体10に配置される各構成要素は、全て防水性のある材質で構成される。そのため、成分検知装置1を調理物に投入した後で、調理物による汚れを除去するために洗浄することが可能となる。
次に、図6を参照して成分検知装置1の内部構成について説明する。図6に示すように、成分検知装置1は、表示部20と、通信部40と、検知部50と、電源部60と、制御部70と、を備える。
検知部50は、調理物の成分を検知する成分検知部51と、調理物の温度を検知する温度検知部52とを備え、調理物の成分およびその含有量、ならびに成分検知時の温度等を検知する。図4に示すように、成分検知部51は、筐体10の正面下部に設けられた矩形状の開口部に装着されている。成分検知部51は、調理物の成分を検知するための様々な検知手段を備える。例えば、成分検知部51は、調理物の塩分濃度を、ナトリウムイオン電極法を用いて測定するためのガラス電極および比較電極を備えてもよい。または、成分検知部51は、調理物の塩分濃度を測定するために、液体の電気伝導度(導電率)を検知するセンサ、もしくは液体の屈折率から塩分濃度を光学的に検知するセンサなどを備えることができる。
また、成分検知部51は、調理物の糖度をbrix糖度(屈折率糖度)として検知するための光センサ、または糖による光の吸収を検知する光センサを備えることができる。なお、brix糖度を検知する光センサは、糖による光の屈折率を利用したものである。また、糖による光の吸収を検知できる光センサは、赤外線分光分析法または散乱光路長補正吸収方式(TFDRS)を利用したものである。これによって、調理物中の糖分の指標となるデータを成分検知部51で測定することができる。
また、成分検知部51は、ガラス電極法を用いて、調理物の酸味を表す指標であるpH値を測定してもよい。これにより、調理物中のpH値の指標となる調理物中の電位差が測定される。なお、pH値の測定には、小型化(微小化)が可能で割れにくい半導体センサであるpHセンサを用いてもよい。
また、成分検知部51は、調理物の旨味成分を検知するための作用電極と参照電極とを備えてもよい。ここで、「旨味成分」とは、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸成分、イノシン酸、グアニル酸、キサンチル酸等の核酸構成物質のヌクレオチド成分、若しくはコハク酸等の有機酸成分、またはそれらの酸の塩化合物のことである。例えば、グルタミン酸は、生体内におけるアミノ酸の分解又は窒素の代謝に関与し、哺乳動物の神経系における神経伝達物質の1つとして学習又は記憶に関与する重要なアミノ酸である。また、グルタミン酸は、近年では、自閉症、アルツハイマー病等の疾患の関連性も指摘されている。グルタミン酸の電気分解の際に流れる電流は、グルタミン酸の濃度の指標となる。したがって、作用電極および参照電極に電圧を印加して電気分解を行うことにより、グルタミン酸の濃度の指標となる電流を検知することができる。
温度検知部52は、成分検知装置1の筐体10に接触する調理物の温度を、筐体10を介在して間接的に測定するものである。すなわち、温度検知部52は、筐体10の内表面(図示せず)に接触させることにより、調理物が接触する筐体10の温度を測定するものである。温度検知部52は、例えばサーミスタ等の半導体温度センサである。
また、調理物が接触し、かつ、温度検知部52が接触する筐体10の部分(例えば、図6における筐体10の正面に設けられた矩形状の開口部の上方部分)を、熱伝導率の高い金属製としてもよい。これにより、温度検知部52が検知する温度と、調理物の温度との温度差を小さくでき、検知精度を向上させることができる。具体的には、温度検知部52が接触する筐体10の部分は、ステンレスまたはアルミ等の耐食性の高い金属製としてもよい。また、温度検知部52が接触する筐体10の部分に表面処理をしてもよいし、フッ素等で塗膜処理をしてもよい。表面処理又は塗膜処理によって、調理物に対する耐食性に加え、撥水性が向上するため、調理物による汚れの清掃が容易となる。
本実施の形態では、図2に示すように、成分検知部51が下方となるように成分検知装置1が容器400に取り付けられ、成分検知部51および温度検知部52が調理物450に浸かった状態で、成分検知が行われる。成分検知部51および温度検知部52による検知結果は、制御部70に送信される。
通信部40は、通信ポート41を介して、加熱調理器100と双方向で情報通信を行うものである。詳しくは、通信部40は、検知部50で検知した成分情報を加熱調理器100に送信する。また、通信部40は、加熱調理器100からの成分検知の開始および停止指令などの指令信号(制御信号)を加熱調理器100から受信し、制御部70に送信する。
本実施の形態の通信部40は、成分検知装置1の操作性を向上させるために、無線通信モジュールを用いて構成され、加熱調理器100との間で無線通信を行う。本実施の形態においては、加熱調理器100との間の無線通信は、金属帯が伝送経路に介在すると電波が遮蔽されてしまうため、電波透過性が高い通信ポート41を介して行われる。なお、通信部40は、加熱調理器100と有線通信を行うものであってもよい。
なお、通信部40は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等の加熱調理器100以外の外部機器と双方向で無線通信できるように構成してもよい。例えば、通信部40の使用周波数帯をWi−Fiモジュールと無線通信可能な周波数帯とすることにより、外部機器との通信の拡張性を向上させることができる。
電源部60は、加熱調理器100から独立して、成分検知装置1に電力を供給するものであり、ボタン電池または乾電池等の電池61を電源とするものである。電源部60は、制御部70による制御の下、成分検知装置1の各部に電力を供給する。なお、電源部60の電源は、電池61に限定されるものではなく、加熱調理器100または家庭用電源等への有線接続、または非接触給電を用いてもよい。
表示部20は、成分検知装置1の給電状態、加熱調理器100との通信状態等の成分検知装置1の動作状態(使用状況)を発光等により報知するものである。表示部20は、例えばLEDで構成され、成分検知装置1が電源ONの場合に点灯するよう制御部70によって制御される。表示部20の発光が、筐体10の正面に設けられた表示窓21を通して使用者に視認されることで、使用者の利便性を向上させることができる。なお、表示部20は必須ではなく、省略してもよい。
制御部70は、成分検知装置1の各部を制御するものであり、機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアを用いて構成されるか、またはマイコンもしくはCPU等の演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとで構成される。図6に示すように、制御部70は、指令制御部71と、成分分析部72とを有する。指令制御部71および成分分析部72は、ソフトウェアで実現される機能部として制御部70が備えるCPU(図示せず)によって、メモリに記憶されるプログラムを実行することで実現される。または、上記各部は、ASIC(Application Specific IC)またはPLD(Programmable Logic Device)などの電子回路で実現されてもよい。
指令制御部71は、通信部40を介して加熱調理器100から受信する指令に応じて、成分検知装置1の各部を制御する。具体的には、指令制御部71は、加熱調理器100から、成分検知の開始指令を受信した場合、電源部60を制御して、成分検知装置1の各部への通電を開始するとともに、表示部20を点灯する。そして、指令制御部71は、検知結果を加熱調理器100へ送信する。また、指令制御部71は、加熱調理器100から、成分検知の停止指令を受信した場合、検知部50による成分検知および検知結果の送信を停止する。
成分分析部72は、成分検知部51および温度検知部52の検知結果に基づき、成分情報を生成する。成分情報は、調理物の温度、調理物に含まれる成分種、該成分種の量を示す成分値、および成分情報の検知日時の少なくとも何れか一つを含む。成分分析部72は、成分検知部51が検知した成分の実測値を、温度検知部52が検知した温度を用いて補正することで、調理物の成分値を算出する。成分検知部51で検知される実測値は、調理物の検知対象成分又はその成分の検知方法によっては、調理物の温度によって影響を受ける場合がある。例えば、汁物の成分等の液体中の塩分を、電気伝導度を検知するセンサ(導電率方式)で検知する場合、温度上昇に伴い溶液中のイオン運動が活性化し導電率が高くなる。導電率方式では、溶液の導電率を比較することで塩分値が算出されるため、同一温度での検知値の比較が検知値の精度向上の観点から要求される。
したがって、成分分析部72においては、例えば、2つの検知値を測定した時点での温度が互いに異なっている場合、成分検知部51による検知値は、温度検知部52で検知された温度情報を用いて、同一温度(例えば25℃)における導電率に換算される。その後、成分分析部72においては、同一温度溶液の導電率を比較することにより塩分値が算出される。
また、塩分の算出のために、ナトリウムイオン電極法を用いて起電力を検知する場合も、溶液中のイオン運動の活性化により、溶液中の温度に依存して起電力が変化する。したがって、ナトリウムイオン電極法を用いた場合、成分分析部72においては、成分検知部51が検知した検知値である起電力の値は、温度検知部52が検知した温度情報で補正されて、塩分値として算出される。
なお、他の方法での塩分の検知、またはグルタミン酸等の他の成分の検知においても、成分分析部72によって、温度検知部52が検知した温度情報で、成分検知部51が検知した検知値を補正して成分値として算出できる。成分分析部72によって算出された成分値は、成分情報として、通信部40を介して加熱調理器100に送信される。なお、加熱調理器100の制御部300に成分分析部72を備える構成とし、成分検知部51および温度検知部52が検知した実測データを、成分情報として加熱調理器100に送信してもよい。
(加熱調理器および成分検知装置の動作)
次に、本実施の形態における加熱調理器100および成分検知装置1の動作について説明する。図7は、本実施の形態における加熱調理器100および成分検知装置1の成分検知処理を示すフローチャートである。図7において、実線は加熱調理器100および成分検知装置1における制御の流れを示し、破線は加熱調理器100と成分検知装置1との間の信号の流れを示す。本実施の形態では、加熱調理器100において予め設定された間隔(T1)で、成分検知装置1が自動的に成分検知を行う、自動検知処理が実施される。
本処理の開始前に、加熱調理器100の何れかの加熱口150の上に、調理物が収容された容器400が載置され、容器400に成分検知装置1が取り付けられる。そして、加熱調理器100による加熱が開始される。まず、使用者によって加熱調理器100の操作表示部180が操作され、メニュー画面180Aが表示される(S1)。図8は、加熱調理器100の操作表示部180に表示されるメニュー画面180Aの一例である。メニュー画面180Aは、加熱調理器100で実施される「煮物」、「揚げ物」、「成分管理」などの複数のメニュー項目181を含んでいる。なお、図8は一例であり、表示方法および表示内容については、任意に変更可能である。
図7に戻って、ステップS2では、メニュー画面180Aにおいて「成分管理」が選択されたか否かが操作制御部301によって判断される(S2)。ここで、「成分管理」が選択されない場合(S2:NO)、選択された項目にしたがって、通常の加熱調理動作が継続される(S19)。
「成分管理」が選択された場合(S2:YES)、操作表示部180に、管理情報の設定を行うための設定画面180Bが表示される(S3)。図9は、加熱調理器100の操作表示部180に表示される設定画面180Bの一例である。設定画面180Bは、管理情報を設定するための管理情報設定部182と、管理情報を決定する「決定」ボタン183とを含む。管理情報は、使用者が成分管理の対象とすることを所望する成分種(以下、「管理成分」という)、および該管理成分の設定値(以下、「管理値」という)を含む。管理成分は、塩分、糖分および酸味などを含む。また、管理値は管理成分の量を表すものであり、例えば管理成分が塩分または糖分の場合は濃度であり、酸味の場合はpH値である。
また、管理成分は、調理物の温度、もしくは導電率または起電力などの電気的測定値であってもよく、管理値は重さまたは体積など、管理成分の物理量であってもよい。使用者は、操作表示部180を操作して、管理成分と管理値を任意に設定する。図9の例では、管理成分として「塩分」が設定され、管理値として「0.6%」が設定される。この場合の管理値は、管理成分である塩分の濃度を示す。操作表示部180を介して入力された管理情報は、記憶部305に記憶される(S4)。なお、以降のフローにおいては、1つの管理成分Aに対して、1つの管理値Sが設定された場合について説明する。
続いて、成分検知の開始指示がなされたか否かが判断される(S5)。図10は、加熱調理器100の操作表示部180に表示される開始画面180Cの一例である。開始画面180Cは、設定画面180Bにおいて、「決定」ボタン183が押されることにより表示される。図10に示すように、開始画面180Cは、「START」ボタン184と「CANCEL」ボタン185とを含む。なお、図10は一例であり、表示方法および表示内容については、任意に変更可能である。
図7に戻って、成分検知の開始指示がなされていない場合(S5:NO)、すなわち「CANCEL」ボタン185が押された場合は、ステップS16へ移行する。一方、成分検知の開始指示がなされた場合(S5:YES)、すなわち「START」ボタン184が押された場合、成分管理部304によって、管理成分Aの測定を開始する開始指令が生成され、通信部310から成分検知装置1に送信される(S6)。
加熱調理器100から送信された開始指令は、成分検知装置1の通信部40によって受信される(S7)。そして、成分検知装置1の指令制御部71によって、成分検知部51および温度検知部52に成分検知指令が送られ、成分検知部51および温度検知部52による調理物の成分検知および温度検知が行われる(S8)。そして、成分検知装置1の成分分析部72において、成分検知部51および温度検知部52によって検知されたデータから、調理物の成分分析が行われる(S9)。このとき、分析される成分情報は、検出される成分種とその量を示す成分値である。なお、ここで検知および分析される成分種は、ステップS4で記憶された管理成分Aのみとしてもよいし、その他の複数の成分種を検知および分析してもよい。成分分析部72による成分分析が完了すると、成分分析結果が成分情報として成分検知装置1の通信部40から加熱調理器100に送信される(S10)。
成分検知装置1から送信された成分情報は、加熱調理器100の通信部310によって受信される(S11)。次に、成分管理部304によって、記憶部305に記憶された管理値Sと、成分検知装置1から受信した成分値Mとから比較情報が生成される(S12)。そして、生成された比較情報が、報知部302に送信され、操作表示部180から出力される(S13)。
図11は、加熱調理器100の操作表示部180に表示される検知結果画面180Dの一例である。図11に示すように、検知結果画面180Dは、生成された比較情報186と、成分検知の停止を指示するための「STOP」ボタン187とを含む。本実施の形態では、比較情報186は、記憶部305に記憶される管理成分Aおよび管理値Sと、成分検知装置1から受信した成分値Mとを含む。なお、図11は一例であり、表示方法および表示内容については、任意に変更可能である。例えば、「STOP」ボタン187は、比較情報186とは別の画面に表示されてもよい。また、比較情報は、加熱調理器100の音声出力部165から音声出力されてもよい。
図7に戻って、加熱調理器100において、待機時間T1が経過したか否かが判断される(S14)。待機時間T1は、成分情報の検知間隔として予め設定された時間であり、加熱調理器100の記憶部305に記憶される。そして、待機時間T1が経過していない場合は(S14:NO)、成分検知を停止するか否かが判断される(S15)。ここでは、使用者によって操作表示部180に表示された検知結果画面180Dにおける「STOP」ボタン187が押された場合に、成分検知を停止すると判断される。そして、成分検知を停止しない場合は(S15:NO)、ステップS14に戻る。
「STOP」ボタン185が押されないまま、待機時間T1が経過した場合は(S14:YES)、ステップS6に戻って、加熱調理器100の通信部310から成分検知装置1に開始指令が送信される(S6)。これにより、「STOP」ボタン187が押されるまで、予め設定された時間(待機時間T1)間隔で自動的に成分検知が行われ、加熱調理器100の操作表示部180に比較情報が表示される。
一方、「STOP」ボタン185が押され、成分検知を停止する場合(S15:YES)、加熱調理器100の成分管理部304によって成分検知を停止するための停止指令が生成され、通信部310から成分検知装置1に送信される(S16)。その後、加熱調理器100は、通常動作に戻る(S19)。加熱調理器100から送信された停止指令は、成分検知装置1の通信部40によって受信される(S17)。そして、成分検知装置1の指令制御部71によって、電源部60が制御され、成分検知装置1内の各部への通電が停止される(S18)。
以上のように、本実施の形態によれば、比較情報として、成分検知装置1によって取得された成分値Mとともに管理値Sを表示することで、使用者は、調理物の状態を把握できるとともに、当該調理物の状態が使用者の所望の状態とどのくらい相違しているかについても判別することができる。これにより、火力の調整または成分の追加など、所望の状態とするために必要な作業を的確に実施することができ、調理物の完成度が向上する。
次に、実施の形態1の変形例について説明する。
(変形例1−1)
まず、操作表示部180に表示される比較情報は、図11の例に限定されるものではない。図12は、変形例1−1における検知結果画面180Daの一例である。図12に示すように、検知結果画面180Daは、比較情報186aとして、記憶部305に記憶される管理成分Aと、成分検知装置1から受信した成分値Mと、記憶部305に記憶される管理値Sと成分値Mとの差と、を含む。なお、管理値Sと成分値Mとの差は、数値で表わされる。これにより、使用者は、管理値Sと成分値Mとの差を明確に認識することができる。
(変形例1−2)
また、図13は、変形例1−2における検知結果画面180Dbの一例である。図13に示すように、検知結果画面180Dbは、比較情報186bとして、記憶部305に記憶される管理成分Aと、記憶部305に記憶される管理値Sと成分検知装置1から受信した成分値Mとの差を示す画像とを含む。詳しくは、比較情報186bは、管理値Sを100%とした場合の成分値Mの割合を示すグラフを含む。また、図13に示すグラフ以外にも、管理値Sに対する成分値Mの割合を色の濃淡で示す画像を比較情報として表示してもよい。これにより、使用者は、管理値Sと成分値Mとの差を視覚によって感覚的に認識することができる。
また、成分管理部304は、比較情報に加えて、成分値Mを管理値Sと比較した場合の大小関係、管理値Sに未到達であることまたは到達したこと、などを文字で表示または音声出力してもよい。さらに、成分管理部304は、管理値Sと成分値Mとの差が大きい場合には、成分または水を追加すること、もしくは火力を調節することなど、調理のアドバイスなどを比較情報とともに表示または音声出力してもよい。
(変形例1−3)
さらに、比較情報として、管理成分Aの成分値Mが管理値Sに到達するまでの時間を出力してもよい。図14は、変形例1−3における成分検知処理を示すフローチャートである。図14において、図7に示す動作と同じ動作については、同じ符号を付す。また、本変形例の成分検知処理では、ステップS12における比較情報の生成の流れが図7のフローチャートと相違する。詳しくは、本変形例では、成分検知装置1から、成分情報を受信すると(S11)、受信した成分情報が記憶部305に記憶される(S120)。そして、成分管理部304によって、今回が1回目の成分情報の受信であるか否かが判断される(S121)。成分情報の受信が1回目である場合は(S121:YES)、ステップS14へ移行する。
一方、成分情報の受信が1回目でない場合(S121:NO)、成分管理部304によって、記憶部305に記憶された前回の成分情報の成分値M1と今回受信した成分情報の成分値M2との差である変化量ΔMが算出される(S122)。変化量ΔMは、時間当り(すなわち待機時間T1当り)の成分値Mの変化量である。そして、算出された変化量ΔMに基づいて、下記の式(1)から、管理値Sに到達するまでの到達時間Tが推定される(S123)。
到達時間T=(管理値S−成分値M2)/変化量ΔM×T1・・・(1)
推定された到達時間Tは、比較情報として操作表示部180または音声出力部165から出力される(S13)。
図15は、本変形例における到達時間Tの推定を説明する図である。図15に示すように、測定回数n−1回目の成分値M1およびn−2回目の成分値M2から、成分値Mの時間変化量ΔMが求められる。また、図15に示す時間の変化量Δtは、待機時間T1である。そして、算出された変化量ΔMから上記式(1)を用いて到達時間Tが推定される。
以上のように、本変形例によれば、使用者は管理成分の成分値(例えば濃度)が管理値Sに到達するまでの時間Tを容易に把握することができる。これにより、到達時間となるまで、調理状態を意識する必要がなく、到達時間までの時間を有効に活用できる。
なお、変化量ΔMに替えて、記憶部305に記憶される前回の成分値M1と今回受信した成分情報の成分値M2との比率である変化率を用いてもよい。さらに、変化量または変化率を、一つ前の成分値Mと比較することに限らず、初回または数回前の成分値Mと比較してもよい。
また、処理中に火力が変更された場合は、変化量または変化率、および到達時間Tを再計算してもよい。また、上記では、成分濃度である成分値Mの変化量を用いたが、調理物の温度の変化量を用いて到達時間Tを推定してもよい。
さらに、到達時間Tを別の方法で推定してもよい。図16は、別の方法による到達時間Tの推定を説明する図である。図16に示すように、加熱調理器100の成分管理部304は、加熱調理器100の加熱コイル200に供給される電力量の積算値に応じて、到達時間Tを推定してもよい。この場合、加熱調理器100において、受信した成分情報と投入電力とを記憶部305に随時記憶する。そして、積算電力量ΣW’と、成分値Mの時間変化量ΔM(すなわち成分値M1とM2との差)とに基づいて、下記の式(2)から管理値Sに到達するまでの必要電力量ΣW”が求められる。そして、式(3)を用いて、必要電力量ΣW”と現行の単位時間当たりの投入電力Wから到達時間Tが推定される。
必要電力量ΣW”= 積算電力ΣW’×((管理値S−成分値M2)/変化量ΔM)・・(2)
到達時間T= 必要電力量ΣW”/現行の投入電力W・・・(3)
このように到達時間Tの推定手段として、積算電力量と成分情報の時間変化量を用いることで、調理途中に火力を変更した場合にも、正しい到達時間Tを推定することができる。
(変形例1−4)
また、図7のステップS3およびステップS4では、管理情報として、一つの管理成分Aおよび一つの管理値Sを設定し、記憶部305に記憶する構成としたが、複数の管理成分および管理値を設定し、記憶してもよい。図17は、変形例1−4における記憶部305に記憶される管理情報の一例を示す図である。図17に示すように、本変形例では、管理情報として調理メニュー毎に管理成分および管理値が設定され、記憶される。図17に示す例では、調理メニューである「味噌汁」、「煮物」、「シチュー」、「つくだ煮」、「おでん」のそれぞれに対し、管理成分および管理値が設定される。この場合は、調理メニューの何れかが選択されることにより、当該調理メニューに対応する管理成分および管理値に基づいて、比較情報の生成および出力が行われる。例えば、図17の場合は、調理メニューとして「味噌汁」が選択されると、「塩分」が管理成分に設定され、「0.6%」が管理値に設定される。
また、図18は、本変形例における記憶部305に記憶される管理情報の別の例を示す図である。図18に示すように、管理対象者毎に管理成分および管理値を設定し、記憶してもよい。図18に示す例では、管理対象者として「父」、「母」、「祖母」、「長女」、「長男」のそれぞれに対し、管理成分および管理値が設定される。この場合は、管理情報の設定時に、管理対象者が選択される。例えば、図18の例の場合、管理対象者として「父」が選択されると、「塩分」および「糖分」がそれぞれ管理成分に設定され、「0.8%」および「2.0%」がそれぞれ管理値に設定される。そして、設定された管理値と、成分検知装置1による成分値Mとに基づいて、比較情報の生成および出力が行われる。
また、図19は、本変形例における記憶部305に記憶される管理情報のさらに別の例を示す図である。図19に示すように、管理対象者および調理メニューの両方に対して、管理成分および管理値を設定し、記憶してもよい。この場合は、管理情報を設定する際に、調理メニューおよび管理対象者が選択される。例えば、図19の例の場合、調理メニューとして「味噌汁」が選択され、管理対象者として「父」が選択されると、「塩分」が管理成分に設定され、「0.8%」が管理値に設定される。そして、設定された管理値と、成分検知装置1による成分値Mとに基づいて、比較情報の生成および出力が行われる。
さらに、図17〜図19に示される管理情報を記憶部305に全て記憶し、管理情報の設定の際に、管理成分および管理値、調理メニュー、管理対象者、または調理メニューおよび管理対象者の何れに基づいて管理情報を設定するかを任意に選択できる構成としてもよい。本変形例では、このような構成とすることで、成分検知を行う度に管理情報を設定する必要がなく、使用者の利便性が向上する。また、調理メニュー毎、または管理対象者毎に成分管理を行うことで、健康管理のアシストを行うことができる。
(変形例1−5)
また、同一の管理成分に対して複数の管理値を設定し、比較情報の生成に用いる管理値を順次変更してもよい。例えば、図18に示すように、同一の管理成分に対して管理対象者毎に管理値が設定されている場合、調理の進行に応じて管理値を順次変更してもよい。図20は、変形例1−5における成分検知処理を示すフローチャートである。図20において、図7に示す動作と同じ動作については、同じ符号を付す。本変形例では、図18に示す管理情報が記憶されている状態において、管理成分として「塩分」が設定された場合を例に説明する。この場合、まず記憶される「塩分」の「管理値」のうち、最も低い値である「0.8%」が管理値Sの初期値として設定される(S150)。そして、成分検知の開始指示がなされ(S5:YES)、開始指令が成分検知装置1に送信される(S6)。
そして、成分検知装置1から送信された成分情報を受信し(S11)、管理値Sと、成分検知装置1から受信した成分情報の成分値Mとから比較情報が生成される(S12)。そして、生成された比較情報が、報知部302に送信され、操作表示部180または音声出力部165から出力される(S13)。そして、管理値Sを変更するか否かが判断される(S151)。ここで、管理値Sを変更するか否かは、使用者によって、例えば管理値変更ボタン(図示せず)が操作されることによって任意に選択される。使用者は、操作表示部180に表示される比較情報を確認し、成分検知装置1によって検知される成分値Mが管理値Sに達した場合には、管理値変更ボタンを操作して、管理値を変更することができる。
そして、管理値Sを変更する場合(S151:YES)、記憶される管理値のうち、次に小さい管理値が管理値Sに設定される(S152)。図18に示す例の場合は、「1%」が管理値Sに設定される。一方、管理値をS変更しない場合(S151:NO)、ステップS14へ移行する。その後、待機時間T1が経過したか否かが判断され(S14)、以降の処理が実施される。これにより、使用者による任意のタイミングで、管理値Sが低い順から変更され、変更後の管理値に基づく比較情報が出力される。
このような構成とすることで、管理対象者毎の成分管理を連続して行うことができる。また、管理対象者に応じて、調理途中に調理物を取り分けることができ、好みに合わせた料理を提供することできる。具体的には、使用者は、調理中に操作表示部180に表示される比較情報から、塩分が管理値(0.8%)に到達したことを把握し、管理対象者分の取り分けを行う。そして、その後管理値を1%へ変更し、調理を継続する。なお、このとき、塩分を追加するなど、成分を調整してもよい。また、このような調理を行う場合において、管理値の再設定は不要であり、使用者の利便性が向上する。また、濃度超過による再調理も不要となる。
また、管理値の変更のタイミングは、使用者による手動でのタイミングだけでなく、成分管理部304によって、成分値Mが管理値Sに到達したことを判断し、自動的に変更してもよい。また、管理値の変更は、管理対象者毎に行うものに限定されるものではなく、任意の値に変更してもよい。
(変形例1−6)
また、管理値Sの変更に応じて、加熱コイル200の加熱制御を行ってもよい。図21は、変形例1−6における管理値Sおよび投入電力の時系列の変化を示す図である。図21に示すように、例えば成分検知装置1によって取得された調理物の成分値(濃度)が管理値S1に達した場合、加熱制御部303は、予め設定された時間t1の間、調理物の濃度が管理値S1を維持するように加熱制御を行う。具体的には、加熱制御部303は、調理物の濃度が管理値S1を維持するように、加熱コイル200への電力の投入および停止を繰り返す。
ここで、調理物の濃度は、温度とは異なり、電力を停止しても低下せず、水分の蒸発によってわずかに上昇していく傾向にある。そのため、ここで言う濃度の維持とは、成分値Mを(S1+α)≧M≧(S1−α)の範囲内にとどまらせておくことである。また、許容範囲αは、加熱調理器100で自動設定してもよく、使用者に設定させてもよい。なお、濃度を維持するために電力を停止したままにすると、濃度を維持できる時間は長くなるものの、調理物の温度が下がってしまう。この場合、次の管理値に移行して成分管理を再開する際に、調理物の温度を復帰させるために余分な時間と電力が必要になる。そこで、小電力の投入と停止とを繰り返すことで、調理物の温度低下を抑制し、余分な消費電力を低減することができる。
そして、予め設定された時間t1が経過した場合、成分管理部304は、管理値Sを管理値S1よりも大きい管理値S2に変更する。そして、加熱制御部303は、調理物の濃度が管理値S2となるように加熱制御を行う。そして、調理物の濃度が管理値S2に達した場合は、加熱制御303部は予め設定された時間t2の間、調理物の濃度が管理値S2を維持するように加熱制御を行い、予め設定された時間t2が経過した場合、成分管理部304は、管理値SをSnに変更する。そして、加熱制御部303は、調理物の濃度が管理値S3となるように加熱制御を行う。
このような構成とすることで、予め設定された時間、設定された管理値Sの濃度を維持できるとともに、自動的に次の管理値に移行することができる。これにより、味をしみこませる、柔らかくする等、調理の出来上がりを向上させることができる。なお、複数の管理成分が設定された場合は、その中から優先成分を設定可能とし、上記の加熱制御を行ってもよい。
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、比較情報を外部機器に出力する点において、実施の形態1と相違する。加熱調理器100および成分検知装置1のその他の構成については、実施の形態1と同様である。
図22は、実施の形態2における加熱調理器100を含む通信ネットワークの概略構成を示す図である。図22に示すように、本実施の形態の通信ネットワークは、宅内に設置される加熱調理器100と、家電制御装置500と、家電機器501〜504とを含む。家電制御装置500は、例えばHEMS(Home Energy Management System)コントローラであり、加熱調理器100および家電機器501〜504と通信可能に接続される。家電機器501〜503は、リビング、寝室および浴室に設置されたテレビ受像機であり、家電機器504は、書斎に設置されたパーソナルコンピュータである。通信ネットワークに含まれる家電機器は、これらに限定されるものではなく、空気調和機および冷蔵庫など様々な宅内機器を含むことができる。
また、家電制御装置500は、インターネット600に接続され、インターネット600を介して、通信端末601および602、ならびにサーバ装置603と通信可能に接続される。通信端末601は、携帯電話端末であり、通信端末602は、スマートフォンまたはタブレット型端末である。サーバ装置603は、例えば病院等に設置される患者情報を管理するためのサーバである。
本実施の形態における加熱調理器100の通信部310は、家電制御装置500の通信部(図示せず)との間で、双方向に情報通信を行う。これにより、加熱調理器100は、家電制御装置500を介して、家電機器501〜504、通信端末601および602、ならびにサーバ装置603と双方向に情報通信を行うことができる。なお、以下の説明において、家電制御装置500、家電機器501〜504、通信端末601および602、ならびにサーバ装置603の何れか、またはこれらをまとめて「外部機器」と称する。
本実施の形態では、通信部310は、成分管理部304によって生成される比較情報を、外部機器に無線通信にて送信する。なお、通信部310において、使用周波数帯をWi−Fiモジュールと無線通信可能な周波数帯とすることにより、外部機器との通信の拡張性を向上させることができる。なお、通信部310は、家電制御装置500と有線通信を行うものであってもよい。
また、加熱調理器100と外部機器との通信ネットワークは、図22に記載されるものに限定されない。図23は、別の例における加熱調理器100を含む通信ネットワークの概略構成を示す図である。図23に示すように、加熱調理器100の通信部310と、通信端末601および602、またはその他の外部機器とが、家電制御装置500を介さずに直接情報通信を行う構成としてもよい。
次に、本実施の形態における加熱調理器100と成分検知装置1との成分検知処理について説明する。本実施の形態における成分検知処理の流れは、図7と同じである。ただし、本実施の形態では、図7のステップS3およびS4において、管理情報とともに比較情報の送信先が設定される。図24は、本実施の形態における操作表示部180に表示される設定画面180Baの一例である。図24に示すように、設定画面180Baは、管理情報を設定するための管理情報設定部182と、管理情報を決定する「決定」ボタン183と、比較情報の送信先を設定するための送信先設定部182aとを含む。送信先設定部182aには、家電制御装置500を経由して加熱調理器100に接続されている外部機器名またはアドレスが表示される。使用者は、操作表示部180を操作して、比較情報の送信先を選択する。選択される送信先は一つであっても複数であってもよい。操作表示部180を介して設定された管理情報および送信先は、記憶部305に記憶される。
そして、成分検知装置1から送信された成分情報および記憶部305に記憶された管理情報から比較情報が生成される(S12)と、生成された比較情報が、通信部310から、送信先として設定された外部機器へ出力される(S13)。比較情報を受信した外部機器は、受信した比較情報を自機器の備える表示部(図示せず)または音声出力部(図示せず)からに表示または音声出力する。例えば、送信先としてテレビ受像機である家電機器501が選択された場合は、テレビ画面に比較情報が表示される。
この場合の表示は、実施の形態1と同様に、管理成分Aと、管理値Sと、成分検知装置1から受信した成分値Mとをそのまま数値で表すもの、管理値Sと成分値Mとの差を数値で表わすもの、当該差を画像で表すもの、または成分値Mが管理値Sに到達するまでの時間で表すものの何れか、またはこれらの組み合わせとしてもよい。その後、成分検知処理の停止が指示されるまで、待機時間T1間隔で自動的に成分検知が行われ、比較情報が外部機器にリアルタイムで出力される。
以上のように、本実施の形態によれば、調理状態がリアルタイムで外部機器に送信されることで、使用者は、加熱調理器100から離れた場所から、現状の調理状態と所望の調理状態との差を容易に把握することができる。これにより、現状の調理状態が所望の調理状態に近づいた時に、調理に戻ることが可能となり、調理の仕上がりの安定性が向上し、使用者の満足感を向上させることができる。
次に、実施の形態2の変形例について説明する。
(変形例2−1)
まず、外部機器への通信条件を使用者が任意に設定できる構成としてもよい。本変形例の場合は、図7のS3において、管理情報とともに外部通信条件が設定される。外部通信条件は、送信先、送信間隔、または送信内容の少なくとも何れか一つを含む。図25は、変形例2−1における操作表示部180に表示される設定画面180Bbの一例である。図25に示すように、設定画面180Bbは、管理情報を設定するための管理情報設定部182と、管理情報を決定する「決定」ボタン183と、外部通信条件として、比較情報の送信先を設定するための送信先設定部182aと、比較情報の送信間隔を設定するための間隔設定部182bと、送信内容を設定するための内容設定部182cとを含む。
使用者は、操作表示部180を操作して、比較情報の送信先、送信間隔、送信内容を設定する。間隔設定部182bにおいて送信間隔を設定することで、成分検知装置1の成分検知間隔(T1)とは異なる間隔で、比較情報を外部機器へ送信することができる。また、内容設定部182cにおいて、比較情報だけでなく、調理物の温度、成分検知時の火力などを外部機器へ送信することができる。操作表示部180を介して設定された管理情報および外部通信条件は、記憶部305に記憶される。そして、記憶部305に記憶された外部通信条件にしたがって、外部機器への出力が行われる。
図26は、本変形例における成分検知処理を示すフローチャートである。図26において、図7に示す動作と同じ動作については、同じ符号を付す。本変形例においては、ステップS3において、管理情報および比較情報の送信先の設定とともに、比較情報の送信間隔として待機時間T2が設定され、送信内容として比較情報および温度が設定される場合を例に説明する。比較情報の送信間隔である待機時間T2は、成分検知の待機時間T1よりも長い時間が設定される。
本変形例の成分検知処理におけるステップS1〜S10は、図7に示すフローチャートと同様である。そして、加熱調理器100の通信部310によって成分情報が受信されると(S11)、成分管理部304によって、記憶部305に記憶された管理値Sと、成分検知装置1から受信した成分値Mとが比較され、比較情報が生成される(S12)。そして、成分管理部304によって待機時間T2が経過したか否かが判断される(S210)。待機時間T2は、比較情報の送信間隔として記憶部305に記憶された時間である。そして、待機時間T2が経過していない場合は(S210:NO)、比較情報および温度が送信データとして記憶部305に記憶される(S211)。一方、待機時間T2が経過した場合(S210:YES)、記憶部305に記憶される送信データ(比較情報および温度)が、通信部310を介して送信先の外部機器へ送信される(S212)。ここで、外部機器へ送信されるデータは、記憶部305に記憶された最新のデータとしてもよいし、前回送信時からの平均値としてもよい。
以上のように、本変形例によれば、使用者は自分の好みのタイミングで調理状態を把握することができるため、情報通信による煩わしさを低減することができる。また、不要なデータ送信による加熱調理器100および家電制御装置500などの負荷を低減できる。
なお、管理情報または外部通信条件の少なくとも何れか一方を外部機器において設定し、加熱調理器100に送信してもよい。この場合、加熱調理器100は、受信した管理情報および外部通信条件を記憶部305に記憶して、成分検知処理に用いる。また、図25に示す外部通信条件は一例であり、任意に変更可能である。例えば外部通信条件として、送信手段(有線、無線LAN、赤外線など)、送信する情報の形式(数値、画像など)、および送信先の優先順位などを設定可能としてもよい。
(変形例2−2)
また、成分検知処理中にリアルタイムで比較情報を出力するだけでなく、比較情報を含む送信データをデータベースにまとめて一括で外部機器に送信してもよい。図27および図28は、変形例2−2において設定される外部通信条件の一例である。図27および図28に示すように、本変形例の外部通信条件は、送信方法設定部182dを含む。使用者は、操作表示部180を操作して、「リアルタイム」送信または「一括」送信の何れかを選択することができる。図27は、「リアルタイム」送信が選択された場合の外部通信条件を示し、図28は、「一括」送信が選択された場合の外部通信条件を示す。
図27に示すように、「リアルタイム」送信が選択される場合は、間隔設定部182bにおいて送信間隔が設定される。一方、図28に示すように、「一括」送信が設定される場合は、送信時設定部182eにおいて、一括送信を行うタイミングが設定される。一括送信を行うタイミングとしては、成分検知処理の終了時、または使用者の指示による任意のタイミングなどがある。操作表示部180を介して設定された管理情報および外部通信条件は、記憶部305に記憶される。そして、記憶部305に記憶された外部通信条件にしたがって、外部機器への出力が行われる。
図29は、本変形例における成分検知処理を示すフローチャートである。図29において、図7に示す動作と同じ動作については、同じ符号を付す。また、本変形例の成分検知処理におけるステップS1〜S10は、図7に示すフローチャートと同様である。ただし、本変形例においては、ステップS3において、管理情報および送信方法を含む外部通信条件が設定され、記憶部305に記憶される(S4)。送信方法は、リアルタイム送信または一括送信の何れかである。
加熱調理器100の通信部310によって成分情報を受信すると(S11)、成分管理部304によって、記憶部305に記憶された管理値Sと、成分検知装置1から受信した濃度の成分値Mとに基づいて比較情報が生成される(S12)。そして、成分管理部304によって、送信方法として一括送信が選択されたか否かが判断される(S220)。ここで、一括送信が選択されていない場合、すなわちリアルタイム送信が選択された場合は(S220:NO)、待機時間T2が経過したか否かが判断される(S221)。待機時間T2は、比較情報の送信間隔として記憶部305に記憶された時間である。そして、待機時間T2が経過していない場合は(S221:NO)、記憶部305に外部通信条件で設定された送信データが記憶される(S222)。一方、待機時間T2が経過した場合(S221:YES)、記憶部305に記憶される送信データが、通信部310を介して送信先の外部機器へ送信される(S223)。
一方、一括送信が選択された場合(S220:YES)、記憶部305に外部通信条件として設定された送信データが記憶される(S222)。そして、待機時間T1が経過したか否かが判断され(S14)、待機時間T1が経過していない場合は(S14:NO)、成分検知を停止するか否かが判断される(S15)。成分検知を停止しない場合は(S15:NO)、ステップS14に戻る。待機時間T1が経過した場合(S14:YES)、ステップS6に戻って、加熱調理器100の通信部310から成分検知装置1に開始指令が送信される(S6)。これにより、成分検知装置1は、「STOP」ボタン185が押されるまで、予め設定された時間(待機時間T1)間隔で自動的に成分検知を行い、加熱調理器100に成分情報を送信する。
一方、成分検知を停止する場合(S15:YES)、加熱調理器100の成分管理部304によって成分検知を停止するための停止指令が生成され、通信部310から成分検知装置1に送信される(S16)。その後、成分管理部304によって、送信方法として一括送信が選択され、且つ一括送信のタイミングとして成分検知終了後が選択されたか否かが判断される(S225)。ここで、一括送信が選択されていない場合、すなわちリアルタイム送信が選択された場合、または任意のタイミングでの一括送信が選択されている場合は(S225:NO)、ステップS19に進み、通常処理が行われる。一方、成分検知終了後の一括送信が選択された場合(S225:YES)、記憶部305に記憶される送信データが読み出され、データベースとして通信部310を介して送信先の外部機器へ送信される(S226)。
図30は、一括送信の際に送信されるデータベースの一例を示す図である。図30の例では、一括送信されるデータベースは、データ番号、成分検知の開始時刻、管理情報、ならびに各検知時刻における火力、温度、成分値および比較情報を含む。外部機器は、受信したデータベースを表示部に表示してもよいし、記憶部(図示せず)に記憶してもよい。
また、任意のタイミングでの一括送信が選択されている場合は、例えば、一括送信ボタンを操作表示部180に表示させ、当該ボタンが操作された場合に、一括送信を行う構成としてもよい。図31は、本変形例における操作表示部180に表示される開始画面180Caの一例である。開始画面180Caは、「START」ボタン184と「CANCEL」ボタン185とに加え、「データ送信」ボタン188を含む。そして、「データ送信」ボタン188が押されることにより、記憶部305に記憶される送信データが読み出され、データベースとして通信部310から送信先の外部機器へ送信される。なお、「データ送信」ボタン188は、開始画面180Ca以外の画面、または複数の画面に表示される構成としてもよい。
以上のように、本変形例によれば、加熱調理器100の成分件処理に関する情報を任意のタイミングで外部機器に送信できる。リアルタイム送信の場合は、調理中の調理物の状態をリアルタイムに把握でき、調理に反映させることができる。一方、一括送信の場合は、調理の工程、調理状態、成分検知結果を後から確認することができ、次回の調理の参考とできる。また、外部機器に送信した送信データのデータベースを、再度加熱調理器100に読み込ませる、または一部を修正して読み込ませることで、調理工程、調理状態の再現が可能となり、味の仕上がりが安定するとともに、使用者の所望の味により近い味の再現のアシストが可能になる。
(変形例2−3)
また、上記変形例2−2では、成分検知処理の開始から終了までの情報を一括送信する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、一括送信する情報を使用者が任意に選択できる構成としてもよい。図32は、変形例2−3における送信データの選択処理の流れを示すフローチャートである。本処理は、使用者の任意のタイミングで、例えば、操作表示部180に表示される「データ送信」ボタン188が押されることにより開始される。使用者により「データ送信」ボタン188が押されると、操作表示部180に記録データ画面180fが表示される(S230)。
図33は、本変形例の操作表示部180に表示される記録データ画面180fの一例である。図33に示すように、記録データ画面180fは、データ番号189a、成分検知の開始時刻189b、およびデータ処理内容189c、ならびにデータ処理の「実行」ボタン189dを含む。データ番号は、成分検知開始時刻等の複数のデータが区別できるものであればよい。使用者は、表示された記録データの処理(送信、削除)を選択し、「実行」ボタン189dを押すことで、データ処理の内容に応じた処理が実行される。図33に示す例において「実行」ボタン189dが押されると、データD1が送信され、データD3が削除される。そして、送信されたデータD1に対しては、送信済みと表示される。
以上のように、本実施の形態によれば、加熱調理器100の記憶部305に記憶される送信データのうち、所望のデータのみを任意に外部機器に送信できるため、情報通信による煩わしさを低減することができる。また、不要なデータ送信による加熱調理器100および家電制御装置500などの負荷を低減できる。なお、記録データ画面180fを外部機器に表示させ、外部機器上で送信データのデータ処理を実行してもよい。
また、例えば、一括送信する情報を調理メニュー毎、または管理対象者毎に選択してもよい。この場合、例えば、記録データ画面180fに、送信するデータの抽出条件を入力するボタンを設け、抽出条件に応じたデータを抽出して送信または削除してもよい。
例えば、調理メニューである「味噌汁」のデータを抽出して、一括して管理することで、調理メニューを再現することができる。また、特定の管理対象者のデータを抽出して、病院に設置されたサーバ装置603に送信することで、医療関係者または管理栄養士による健康管理の指導をアシストすることができる。
(変形例2−4)
また、上記変形例2−3では、全ての成分情報および比較情報を記憶する構成としたが、これに限定されるものではなく、必要な情報のみを記憶する構成としてもよい。例えば、比較情報の生成後、生成した比較情報を加熱調理器100の操作表示部180または外部機器の表示部に表示させ、記憶するか否かを使用者に選択させてもよい。図34は、変形例2−4における操作表示部180に表示される検知結果画面180Dcの一例である。図34に示すように、検知結果画面180Dcは、比較情報186と、「STOP」ボタン187と、「記録」ボタン187aとを含む。そして「記録」ボタン187aが押された場合に、比較情報186およびその他の送信データを記憶部305に記憶してもよい。
以上のように、本変形例によれば、使用者が記録したい情報のみを記録できることで、使用者の記録データ活用時の利便性が向上するとともに、不要なメモリの使用を低減できる。例えば、管理対象者の中に、健康管理上、成分(例えば、塩分)管理が必要な人が含まれていた場合における成分管理では、調理中の成分検知に関する情報を記録する必要はない。この場合は、調理物が仕上がった時点、調理中に取り分けた時点、または食器に移した時点などの実際に食する調理物に近い比較情報を継続して記録しておくことが重要である。このような場合に、記録したい情報のみを記録し、外部機器に一括送信できることで、自己管理のアシストができる。また、医療関係者または管理栄養士に容易に提示することも可能となる。
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3は、生成した比較情報を外部機器および加熱調理器100の両方に出力する点において実施の形態1および実施の形態2と相違する。加熱調理器100および成分検知装置1のその他の構成については、実施の形態1および実施の形態2と同様である。
図35は、実施の形態3における成分検知処理を示すフローチャートである。図35において、図7および図29に示す動作と同じ動作については、同じ符号を付す。本実施の形態では、比較情報が生成された(S12)後に、操作表示部180または音声出力部165に比較情報を出力するステップ(S300)を含む点において図29に示す成分検知処理と異なる。
すなわち、本実施の形態においては、加熱調理器100の操作表示部180または音声出力部165からリアルタイムで比較情報が出力されるとともに、使用者が所望する任意のタイミングで外部機器に送信データを出力することができる。これにより、加熱調理器100の側にいる使用者が、調理物の状態が使用者の所望の状態とどのくらい相違しているかについて判別できるとともに、離れた場所の使用者も調理状況を確認することができ、利便性が向上する。なお、外部機器に一括送信する送信データを加熱調理器100の操作表示部180に表示してもよい。
(変形例3−1)
なお、外部機器および加熱調理器100への比較情報の出力は、任意に切り替え可能である。例えば、生成した比較情報に応じて、比較情報の出力先を外部機器または加熱調理器100に切り換えてもよい。図36は、変形例3−1における成分検知処理を示すフローチャートである。図36において、図7に示す動作と同じ動作については、同じ符号を付す。また、本変形例の成分検知処理におけるステップS1〜S10は、図7に示すフローチャートと同様である。ただし、記憶部305には、管理情報と比較情報の送信先が記憶されているものとする。
加熱調理器100の通信部310によって成分情報を受信すると(S11)、成分管理部304によって、成分検知装置1から受信した成分情報の成分値Mが、記憶部305に記憶された管理値Sよりも小さいか否かが判断される(S310)。そして、成分値Mが管理値Sよりも小さい場合(S310:YES)、比較情報が生成される(S311)。そして、生成された比較情報が、通信部310から外部機器へ送信される(S312)。その後は、ステップS14へ移行し、以降の処理が行われる。
一方、成分検知装置1から受信した成分情報の成分値Mが、記憶部305に記憶された管理値S以上となった場合(S310:NO)、比較情報が生成され(S313)、操作表示部180または音声出力部165から出力される(S314)。その後は、ステップS14へ移行し、以降の処理が行われる。
以上のように、本変形例によれば、調理状態がリアルタイムで外部機器に送信されることで、使用者は、加熱調理器100から離れた場所から、現状の調理状態と所望の調理状態との差分を容易に把握することができる。これにより、現状の調理状態が所望の調理状態に近づいた時に、調理に戻ることが可能となり、調理の仕上がりの安定性が向上し、使用者の満足感を向上させることができる。また、現状の調理状態が所望の調理状態に到達した場合には、加熱調理器100の操作表示部180または音声出力部165から比較情報を出力することで、調理に戻った使用者に対しても引き続き調理状態を報知することができる。
なお、本変形例のステップS310では、成分値Mと管理値Sとを直接比較したが、これに限定されるものではなく、(S+α)≧M≧(S−α)のように、管理値Sに許容範囲αを持たせてもよい。また、許容範囲αは、加熱調理器100で自動設定してもよく、使用者に設定させてもよい。
また、比較情報に応じて、出力先を変更する別の例として、成分検知装置1から受信した成分情報の成分値Mが、記憶部305に記憶された管理値Sよりも小さい場合は、比較情報を操作表示部180または外部機器の表示部に表示させ、成分値Mが、管理値Sに到達した場合は、外部機器が備える音声出力部または加熱調理器100の音声出力部165から音声出力させてもよい。これにより、調理状態が所望の調理状態に到達した場合には、使用者が表示部を見ていない場合でも注意喚起することができる。
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態4は、加熱調理器100Aに成分検知手段1Aが内蔵される点において実施の形態1と相違する。図37は、本実施の形態における加熱調理器100Aの概略図である。図37に示すように、本実施の形態の加熱調理器100Aは、調理容器701と、調理容器701を内部に装填して加熱する本体702とからなる炊飯器または圧力鍋である。また、本実施の形態の加熱調理器100Aは、調理容器701の内側に成分検知手段1Aを備える。成分検知手段1Aの構成および機能は、実施の形態1における成分検知装置1と同様である。また、成分検知手段1Aは、調理容器701の内側の側面に配置される。これにより、調理容器701の底面が加熱される場合に、成分検知手段1Aにおける底面の温度変化の影響が小さく、検知精度が向上する。
図38は、本実施の形態における加熱調理器100Aの主要部の構成を説明する図である。図38に示すように、本体702の内部には、実施の形態1と略同様の加熱コイル200、制御部300、通信部310、電源部320、および高周波インバータ330が設けられている。また、成分検知手段1Aは、調理容器701の内側側面において、加熱コイル200の直上とならない位置に配置される。加熱コイル200の直上は、最も温度変化が大きいため、成分検知手段1Aを加熱コイル200の直上を避けて配置することにより、検知精度が向上する。
本実施の形態における加熱調理器100Aおよび成分検知手段1Aの成分検知処理の流れについては、実施の形態1〜3と同様である。成分検知手段1Aは、調理容器701内に収容される調理物の成分を測定し、本体702の通信部310に送信する。本体702の制御部300は、受信した成分情報に基づいて、比較情報を生成し、本体702に設けられた表示部、音声出力部、または外部機器の少なくとも何れか一つに比較情報を出力する。
(変形例4−1)
なお、成分検知手段の配置は、上記に限定されるものではない。図39は、変形例4−1における加熱調理器100Bの概略図である。図39に示すように、成分検知手段1Bを加熱調理器100Bの蓋に配置してもよい。成分検知手段1Bは、加熱調理器100Bの内蓋の中央から下方に延びるように配置される。このように構成することにより、成分検知手段1Bの成分検知部51を加熱調理器100Bの中央に配置することができる。これにより、調理容器701のどこから加熱された場合でも、精度よく成分を検知することができる。
以上が本発明の実施の形態の説明であるが、本発明は、上記実施の形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形または組み合わせが可能である。
(変形例5)
例えば、加熱調理器100または外部機器において、外部通信条件以外にも、「成分検知設定」または「外部受信設定」などを別々に設定可能としてもよい。また、上記実施の形態では、各種設定条件を一覧表示としているが、操作性を考慮し、設定項目ごとに画面遷移させ、最後に一覧を確認表示させてもよい。
図40は、変形例5における成分検知処理を示すフローチャートである。図40において、図7に示す動作と同じ動作については、同じ符号を付す。図40に示すように、成分管理が選択された場合(S2:YES)、操作表示部180に条件設定選択画面が表示される(S500)。条件設定選択画面は、例えば成分検知設定、管理情報、外部通信条件または外部受信設定などの項目を含む。そして、条件設定選択画面の何れかの項目が選択されると、選択された項目に対する設定が行われ、設定された条件が記憶部305に記憶される(S501)。その後、条件設定を終了するか否かが判断され(S502)、条件設定を終了しない場合は(S502:NO)、ステップS500に戻り、次の項目が選択される。一方、条件設定が全て終了した場合(S502:YES)、記憶部305に記憶される設定条件が一覧で表示される(S503)。その後は、ステップS5移行し、記憶部305に記憶された各種設定条件に基づいて、成分検知処理が行われる。
また、上記実施の形態および変形例では、加熱調理器100が操作表示部180を備える構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、操作表示部180は、加熱調理器100と連動する別体に設けられる構成、もしくは加熱調理器100と連動し、加熱調理器100の本体110または別体に設けられた投影手段によって加熱調理器100の周囲に投影される構成としてもよい。この場合、投影された画像への接触または別途設けられた加熱調理器100と連動する撮影手段を用いて使用者の動作を認識し、操作信号を生成してもよい。さらに、家電機器501〜504または通信端末601および602などの外部機器の表示部を、操作表示部180として用いてもよい。
また、上記の加熱調理器100および成分検知装置1の成分検知処理に関する設定および制御は、加熱調理器100、成分検知装置1、または通信端末601および602などの外部機器の何れで行ってもよい。例えば、加熱調理器100における設定は、操作表示部180ではなく加熱調理器100のその他の操作部(上面操作部160または前面操作部140)、または通信端末601および602などの外部機器で行ってもよい。また、成分検知装置1の成分分析を加熱調理器100で行ってもよく、比較情報の生成を外部機器で行ってもよい。また、加熱調理器100の通信部310にて、外部機器から比較情報などを取得して出力してもよい。
さらに、加熱調理器100は、比較情報に応じて加熱制御を行う構成としてもよい。例えば、成分検知装置1から受信した成分情報の成分値Mが、記憶部305に記憶された管理値Sに到達した場合には、操作表示部180または音声出力部165からその旨を報知し、自動的に火力を停止させてもよい。
また、上記実施の形態および変形例において、成分値Mと管理値Sとの比較情報を生成する際には、管理値Sに許容範囲αを持たせ、成分値Mと管理値S±αとを比較してもよい。許容範囲αは、加熱調理器100で自動設定してもよく、使用者に設定させてもよい。
本発明に係る加熱調理器は、調理物を加熱する加熱部と、調理物の成分に関して設定された管理情報を記憶する記憶部と、調理物の成分情報を取得し、管理情報と成分情報との差を示す比較情報を生成する制御部と、比較情報を出力する出力部と、を備え、比較情報は、成分情報および管理情報を含み、出力部は、比較情報を表示する表示部、比較情報を音声出力する音声出力部、または比較情報を外部機器へ送信する通信部の少なくとも何れか一つである。