JPWO2018016155A1 - 金属酸化物触媒の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明が解決しようとする課題は、優れた触媒性能を有する金属酸化物触媒を、再現性良く製造することである。本発明の金属酸化物触媒の製造方法は、焼成を2段階で行い、1段目の焼成で得られる物質が下記分析値Aおよび下記分析値Bのうち少なくとも1つの分析値に含まれる。組成式:MoViTejAkOy分析値A:下記式1で定義される質量変化率の値が1.2〜4.0%である。質量変化率(%)=[(加熱前の質量−加熱後の質量)/加熱前の質量]×100(式1)分析値B:燃焼法による炭素、水素および窒素の元素分析における窒素含有量が0.8〜1.5質量%である。

Description

本発明は、プロパンの気相接触酸化によるアクリル酸の製造およびプロパンのアンモ酸化によるアクリロニトリルの製造に好適に使用される金属酸化物触媒の製造方法に関する。
アクリル酸は、触媒の存在下でプロピレンと酸素とを接触反応させてアクロレインを製造し、得られたアクロレインを、さらに酸素と接触反応させる二段階の酸化反応により製造されている。
一方、プロパンとプロピレンとの価格差、および二段階の酸化に伴う工程の複雑さ等の問題を解消する目的で、プロパンを出発原料として一段階でアクリル酸を製造する方法が検討されており、その際に使用される触媒に関する提案も多数なされている。その代表例として〔V、P、Te〕系、〔Mo、Te、V、Nb〕系および〔Mo、Sb、V、Nb〕系等の複合金属酸化物からなる触媒が挙げられる。
さらに、上記の金属酸化物触媒の改良に関する発明が数多く特許出願されていて、例えば、金属テルルを原料に用いるスラリー法による金属酸化物触媒の製造方法(特許文献1)、水熱合成法において超音波処理を施す金属酸化物触媒の製造方法(特許文献2)などが提案されている。
スラリー法や水熱合成法で得られる金属酸化物混合物は、乾燥および焼成を経て触媒性能を有する結晶構造に変換される。該焼成は、一般的に2工程以上に分割され、例えば、1段目は酸素存在下で250℃〜380℃の温度範囲で2〜20時間処理され、2段目は酸素不存在下で500℃〜660℃の温度範囲で0.5〜6時間処理される方法などが挙げられる。
また、焼成方法に関して、2段目の焼成工程に還元率という指標を導入して、1段目の酸素存在下での焼成工程を調整する方法が提案されている(特許文献3)。
特開2004−313956号公報 特開2007−044668号公報 特開2003−170044号公報
しかしながら、再現性良く優れた性能を有する金属酸化物触媒を製造するためには、上記焼成工程における1段目、2段目およびそれ以降の焼成において、バラツキを抑えて安定した製造を行うことが重要であるが、途中の焼成状態を把握する簡易な手段がなく、また、特許文献3のようにリアルタイムで焼成状態を監視するという方法では、1時間以上の作業が必要であり、生産効率が悪いという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、特定な組成式で表される金属酸化物触媒の焼成工程において、簡易な方法で、触媒性能のバラツキを抑制する焼成条件を把握することにより、優れた触媒性能を有する金属酸化物触媒を、再現性良く製造することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討した結果、特定な組成式の金属酸化物触媒を製造する方法において、焼成を2段階で行い、1段目の焼成で得られる物質が特定な分析値の範囲に含まれていると、触媒性能のバラツキが抑制された金属酸化物触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1発明は、還元剤と水または有機溶剤との存在下で、Te4+化合物またはTe6+化合物を還元して金属テルルを含む還元物を得る工程、前記還元物から未反応の還元剤を除去する工程、Mo、V、A元素および水の存在下で、前記未反応の還元剤を除去した金属テルルを含む還元物を反応させ反応物を得る工程、ならびに、得られた反応物を乾燥および焼成し下記組成式で表される金属酸化物触媒を得る工程を含み、前記焼成を2段階で行い、1段目の焼成で得られる物質が下記分析値Aおよび下記分析値Bのうち少なくとも1つの分析値に含まれる金属酸化物触媒の製造方法である。
組成式:MoVTe
式中、Aは、Nb、Ta、W、Ti、Zr、Re、Fe、Ni、Co、Sn、Tl、Cu、希土類元素およびアルカリ金属元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、iおよびjは、各々0.01〜1.5で、かつj/i=0.3〜1.0であり、kは0.001〜3.0であり、yは他の元素の酸化状態によって決定される数である。
分析値A:下記式1で定義される質量変化率の値が1.2〜4.0%である。
質量変化率(%)=[(加熱前の質量−加熱後の質量)/加熱前の質量]×100(式1)
分析値B:燃焼法による炭素、水素および窒素の元素分析における窒素含有量が0.8〜1.5質量%である。
本発明の第2発明は、前記反応物を得る工程が、Mo、Vおよび水の存在下で、前記未反応の還元剤を除去した金属テルルを含む還元物を反応させ、その後、A元素を含有する化合物と混合して反応させ反応物を得る工程である第1発明に記載の金属酸化物触媒の製造方法である。
また、本発明の第3発明は、さらに1段目の焼成で得られる物質が下記分析値Cに含まれる第1発明または第2発明に記載の金属酸化物触媒の製造方法である。
分析値C:試料を硫酸水溶液に分散した溶液を、加熱下で、酸化剤を用いて酸化還元滴定して得られる試料1g当たりの消費される酸素モル数が3.4〜5.5mmolである。
本発明の第4発明は、2段目の焼成を、酸素不存在下で、500℃〜660℃の温度範囲で行う第1発明〜第3発明のいずれか1つに記載の金属酸化物触媒の製造方法である。
本発明の第5発明は、第1発明〜第4発明のいずれか1つの方法で得られた金属酸化物触媒を用いて、プロパンを気相接触反応により酸化するアクリル酸の製造方法である。
本発明における金属酸化物触媒の製造方法によれば、熱質量分析または元素分析の検査方法により短時間で1段目の焼成状態を把握することができるため、触媒活性のバラツキが少ない高活性な金属酸化物触媒が製造できる。
1段目の焼成における加熱時間と質量変化率の関係を示すグラフである。 1段目の焼成における加熱時間と窒素含有量の関係を示すグラフである。 1段目の焼成における加熱時間と酸化還元滴定の関係を示すグラフである。 1段目の焼成条件による触媒性能の相違を示すグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における金属酸化物触媒は、下記の組成式で表される金属酸化物である。
組成式:MoVTe
(式中、Aは、Nb、Ta、W、Ti、Zr、Re、Fe、Ni、Co、Sn、Tl、Cu、希土類元素およびアルカリ金属元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、iおよびjは、各々0.01〜1.5で、かつj/i=0.3〜1.0であり、kは0.001〜3.0であり、yは他の元素の酸化状態によって決定される数である。)
また、上記金属酸化物は、Te4+化合物またはTe6+化合物(テルルの原子価が4または6である化合物)を水または有機溶剤の存在下に還元剤で還元することにより金属テルルを含む還元物を得た後、この還元物から未反応の還元剤を除去し、次いで、Mo、V、A元素および水の存在下で、前記未反応の還元剤を除去した金属テルルを含む還元物を反応させた後、乾燥および焼成して製造する。
さらに、上記焼成を2段階で行い、1段目の焼成で得られる物質が前記分析値Aおよび前記分析値Bのうち少なくとも1つの分析値に含まれることが必要である。
以下、具体的な製造方法について、工程(1)〜(5)に分けて説明する。なお、製造方法に関して、触媒技術分野における公知な技術である加熱処理、共沈、乾燥および焼成を経由する方法や水熱合成を利用する結晶形成などの方法が制限なく使用できる。
工程(1)
本発明の金属酸化物触媒の製造方法は、還元剤と水または有機溶剤との存在下で、Te4+化合物またはTe6+化合物を還元して金属テルルを含む還元物を得る工程(工程(1))を含む。
この工程では、還元剤と水または有機溶剤の存在下で、Te4+化合物またはTe6+化合物を還元し、触媒の原料成分である金属テルルを含む還元物を得る。
原料に使用するTe4+化合物およびTe6+化合物は特に限定がなく使用可能であり、具体的には、二酸化テルル、三酸化テルル、四塩化テルル、オルトテルル酸、メタテルル酸、ポリメタテルル酸、テルル酸アンモニウム、テルル酸アルカリ金属、テルル酸亜鉛、テルル酸カルシウム、テルル酸銀、テルル酸タリウム、テルル酸銅およびテルル酸マグネシウムなどが挙げられ、これらの中でも二酸化テルルまたはオルトテルル酸が好ましい。
還元剤としては、標準電極に対する酸化還元電位が0.53V以下(二酸化テルルの電位は0.53V付近)の還元性物質(他の分子に電子を与えやすい性質をもつ原子、分子、イオンである)が使用でき、還元反応の円滑性や水と作用しないことから、ヒドラジン、ヒドラジニウム塩、ヒドロキシルアミン等が好ましい。
具体的には、ヒドラジン酢酸塩、ヒドラジン二臭化水素酸塩、ヒドラジン二酸化塩、ヒドラジン一塩酸塩、ヒドラジン一水和物、硫酸ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、塩化ヒドロキシルアンモニウムおよび硫酸ヒドロキシルアンモニウムなどが挙げられる。
還元剤の使用量は、還元剤の種類や反応条件により異なるが、例えば、ヒドラジンを用いる場合、ヒドラジンとテルルのモル比で0.5〜4.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましい。ヒドラジンの使用量が0.5以上であると、二酸化テルルの残存量が少なく、使用量が4.0以下であると、使用量を増やす利点が十分得られ、未反応ヒドラジンの除去に余分な手間や洗浄液が不要または必要になる量が少なくすむ。ヒドラジン以外の還元剤の場合も同様である。
還元反応は、水や有機溶剤などの液体中で行い、有機溶剤としてはアルコール類、炭化水素類などが好ましい。液体の存在によりテルル化合物が分散され、還元反応が進行しやすくなるため、得られる金属テルルの粒子が均一になる。
テルル化合物の還元条件は、使用するテルル化合物の水または有機溶剤に対する溶解性や還元剤の反応性を考慮して適宜選択できる。例えば、水溶性のテルル酸を原料とし、ヒドラジンを還元剤として用いる場合、テルル酸の水溶液にヒドラジンを添加するだけで還元反応が進行し、金属テルルの粒子が水中に形成される。
有機溶剤に対する溶解性が乏しいテルル化合物である二酸化テルルを原料にして、ヒドラジンを還元剤に用いる場合は、還元反応の進行速度は遅い。この場合は、時間をかけて撹拌し、加熱することにより反応を促進させる必要がある。具体的には、40℃〜100℃の温度、100〜500回/分の撹拌速度で1〜20時間反応させるのが好ましい。
また、還元反応を促進させる方法として、加熱、撹拌の代わりに、テルル化合物、還元剤、水または有機溶剤の共存下で湿式粉砕する方法がある。湿式粉砕をすることにより、還元反応と粉砕とが同時に進行し、さらに粒子の金属テルルが得られ、その結果、得られる触媒性能に好ましい影響を与える。
粉砕する際に使用する有機溶剤としては特に制限はないが、常温で液体であり、且つ後工程で容易に除去できる有機溶剤が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素が好ましい。粉砕時において、水や有機溶剤を共存させることにより、粉砕に伴う表面エネルギーの増大が緩和され、粉砕効率が高まる。
粉砕時のテルル化合物と水または有機溶剤との混合割合は、テルル化合物100質量部当たり、水または有機溶剤が10〜1,000質量部であることが好ましく、30〜300質量部がより好ましい。水または有機溶剤が10質量部以上であると、粉砕物が粉砕容器に付着することが少なく、粉砕が容易であり、1,000質量部以下であると、水または有機溶剤が粉砕の際の衝撃を吸収することを抑制し、粉砕効率に優れる。
粉砕機としては、被粉砕物を収容した容器自体を駆動させて粉砕する形式のものが好ましい。具体的にはボールミル、振動ミルおよび遊星ボールミル等が挙げられる。粉砕時間は0.5〜24時間が好ましい。
上記の還元反応により得られる金属テルルを含む還元物を乾燥して得られる粉末を粉末X線回折分析すると、二酸化テルルの結晶相は認められず、純粋な六方晶系金属テルルの結晶相に帰属される。
また、上記還元物の乾燥粉末を電子顕微鏡で観察すると、一次粒子の外観は還元方法の違いに応じて球状と針状のものが観察されるが、いずれの一次粒子も粒径分布は非常に狭い。また、観察試料によっては、一次粒子の凝集が見られるものもあるが、これは試料の乾燥時に生じる現象であり、触媒の製造および得られる触媒の性能には影響がない。
上記還元反応により得られる金属テルルの一次粒子の大きさは、少なくとも一方向で好ましくは4.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下の範囲である。一次粒子の大きさの下限は特にないが、操作のしやすさの観点から10nm以上が好ましい。一次粒子の大きさが4.0μm以下であると、水または有機溶剤中の金属テルル粒子の分散性に優れる。
工程(2)
本発明の金属酸化物触媒の製造方法は、前記還元物から未反応の還元剤を除去する工程(工程(2))を含む。
工程(2)は、工程(1)で得られる金属テルルを含む還元物に残存する未反応の還元剤を除去し、さらに還元反応の媒体に有機溶剤を用いている場合は、その溶剤を水で置き換えて還元物の水性分散液を得る工程であることが好ましい。未反応の還元剤および有機溶剤を除去し、あるいは還元剤および有機溶剤を還元物分散液から減圧下で留去する方法や、遠心分離やろ過操作により還元剤および有機溶剤を分離除去した後、還元物を水に再分散させる方法が例示できる。
上記の操作により、未反応の還元剤および有機溶剤を除去した金属テルルを含む還元物の水性分散液を得る。置き換えに必要な水量は、還元物分散液に対して体積比で1.0〜8.0倍が好ましく、2.0〜4.0倍がより好ましい。
水量が1.0倍以上であると、未反応の還元剤が残存し難く、次の工程で残存する還元剤が還元作用を引き起こすことを抑制できる。
工程(3)
本発明の金属酸化物触媒の製造方法は、Mo、V、A元素および水の存在下で、前記未反応の還元剤を除去した金属テルルを含む還元物を反応させ反応物を得る工程(工程(3)および工程(4))を含む。
工程(3)は、上記工程(2)で得られる金属テルルを含む還元物の水性分散液と、Mo6+化合物およびV5+化合物とを混合し、40℃以上の温度で1時間以上反応させる工程である。水性分散液には、操作性を改良するために更に水を加えて希釈しても良い。
反応温度は40℃〜100℃であることが好ましく、反応時間は1〜10時間が好ましく、2〜5時間であることがより好ましい。
Mo6+化合物としては、モリブデン酸アンモニウム、酸化モリブデンおよびモリブデン酸等を例示できる。これらの中でも水溶性である点でモリブデン酸アンモニウムが好ましい。
また、V5+化合物としては、メタバナジン酸アンモニウムおよび五酸化バナジウムなどが好ましい。
Mo6+化合物およびV5+化合物の添加量は、Moを基準にしてこれに対するVおよびTeの原子比(iおよびj)が各々0.01〜1.5であり、かつVに対するTeの原子比(j/i)が0.3〜1.0である。
Mo6+化合物およびV5+化合物と金属Teの粒子とを水に分散させた状態で加熱することにより、粒径が100nm以下のTe粒子が安定に水に分散した濃青色の反応液が得られる。
加熱温度または加熱時間が上記範囲であると、金属Teの粒子が過剰反応することを抑制できる。過剰反応の例としては、不溶性の二酸化テルルが生成し、その結果、得られる金属酸化物触媒の性能に影響を与える場合がある。
工程(4)
工程(4)では、上記工程(3)で得られた反応液と金属元素Aを含有する化合物(以下、A含有化合物という)とを混合する。A含有化合物は水溶液または水分散液の状態で混合することが好ましい。この混合操作により、反応液中に微細な沈殿が生成する。反応温度に特に制限はないが、室温(10℃〜35℃)で混合することが好ましい。
なお、工程(4)は前記工程(3)と同時に行うことが出来る。すなわち、工程(3)において、A含有化合物も同時に存在させることが可能である。
金属元素Aは、Nb、Ta、W、Ti、Zr、Re、Fe、Ni、Co、Sn、Tl、Cu、希土類元素およびアルカリ金属元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、A含有化合物としては、これらの酸化物、硝酸塩、カルボン酸塩、オキソ酸塩およびシュウ酸塩などが挙げられる。
A含有化合物が不溶性である場合は水に分散させて混合しても良いが、シュウ酸等を併用することにより水に溶解させることができる。
A含有化合物の混合量は、得られる金属酸化物触媒中における金属の原子比で、Moを1としたとき、金属元素Aが0.001〜3.0である。金属元素Aの割合が0.001未満の場合は、得られる触媒の劣化が起こる恐れがあり、3.0を超える場合は触媒の活性が低くなる恐れがある。
工程(4)において、上記工程(3)で得られた反応液とA含有化合物とを混合して沈殿を生成した混合液に、硝酸または硝酸アンモニウムを添加しても良く、得られる金属酸化物触媒の性能向上や物理的強度の向上が期待できる。
硝酸または硝酸アンモニウムの好ましい添加量は、金属Teに対してモル比で0.7〜2.1であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.7である。
また、工程(4)において、上記工程(3)で得られた反応液と金属元素Aを含有する化合物との混合は、15分以下で行うことが好ましく、10分以下で行うことがより好ましく、5分以下で行うことが更に好ましく、1分以下で行うことが特に好ましい。上記範囲であると、得られる金属酸化物触媒を用いてプロパンの酸化によりアクリル酸を製造した場合におけるアクリル酸選択性およびアクリル酸収率に優れる。
工程(5)
本発明の金属酸化物触媒の製造方法は、得られた反応物を乾燥および焼成し上記組成式で表される金属酸化物触媒を得る工程(工程(5))を含む。
工程(5)では、上記工程(4)を経由して得られる混合液(スラリー)を蒸発乾固させ、得られた乾固物を乾燥した後、焼成を行うことが好ましい。上記混合液は多量に水を含むが、この水を除去する方法としては、公知の蒸発乾固、噴霧乾燥などが利用できる。
蒸発乾固させる場合、混合液を単に加熱して水分を蒸発させても良いが、蒸発乾固中に窒素や空気などの不活性ガスを吹き付けることにより効率的に乾固できる。蒸発乾固の温度は、50℃〜130℃であることが好ましい。
次に、上記操作によって得られる乾固物を2段階で焼成を行う。1段目の焼成は、回転炉、具体的には、好ましくはバッチ式または連続式のロータリキルンを用いて、酸素存在下で温度250℃〜380℃で行うことが好ましく、さらに好ましくは280℃〜330℃である。焼成時間は5分〜20時間が好ましく、さらに好ましくは10分〜3時間である。
上記1段目の焼成で得られる物質が、下記分析値Aおよび下記分析値Bのうち少なくとも1つの分析値の範囲に含まれていることが必要である。
次いで、2段目の焼成条件として、焼成温度が酸素不存在の状態で500℃〜660℃であることが好ましく、さらに好ましくは570℃〜640℃である。焼成時間は0.5〜6時間であることが好ましく、さらに好ましくは1〜3時間である。
また、2段目の焼成は、マッフル炉により行われることが好ましい。
分析値A(質量変化率)
下記式1で定義される質量変化率の値が1.2〜4.0%である。
質量変化率(%)=[(加熱前の質量−加熱後の質量)/加熱前の質量]×100(式1)
質量変化率の測定方法は、1段目の焼成を終えた試料をサンプリングし、加熱前の質量を測定した後、マッフル炉にて大気下500℃〜650℃で10分〜90分加熱処理を行い、加熱後の質量を測定する。なお、マッフル炉内を窒素置換してからデータを取得できるが、置換時間のロス、炉内置換状態のバラツキが不安材料となるので、必要不可欠ではない。
質量変化率の測定方法の条件について、具体的に説明する。上記工程(1)〜工程(5)により得られた混合液の蒸発乾固品について、卓上ロータリーキルン(高砂工業株式会社製)を用いて、310℃で30分の条件で焼成した試料について、加熱温度および加熱時間と、質量変化率の関係を下記表1に示した。
表1によれば、420℃および700℃の加熱温度では、加熱時間10分から90分の間で重量変化率のバラツキがあるが、500℃から650℃の範囲ではほとんどバラツキがなく、加熱時間10分から90分の範囲ではほぼ一定であり、大気下500℃〜650℃で10分〜90分加熱処理する条件で質量変化率を測定することが好ましい。
次に、質量変化率により、1段目の焼成状態を把握できることについて、1例を挙げて説明する。上記1段目の焼成を、310℃で2分〜240分加熱して得られた物質について、焼成時間と質量変化率との関係を図1に示す。
図1によれば、焼成時間が長くなるほど焼成状態は進行して、質量変化率は焼成時間に相関して変化することがわかる。
分析値B(元素分析)
燃焼法による炭素、水素および窒素の元素分析における窒素含有量が0.8〜1.5質量%である。
元素分析としては、一般的な方法である燃焼法により、炭素、水素および窒素の元素分析を行う。上記分析値Aと同様な試料を用いて、卓上ロータリーキルン(高砂工業株式会社製)により、310℃で焼成した場合の焼成時間(2分〜240分)と元素分析による窒素含有量との関係を図2に示す。
図2によれば、焼成時間が長くなるほど焼成状態は進行して、窒素含有量は焼成時間に相関して変化することがわかる。
さらに、1段目の焼成で得られる物質が、下記分析値Cの範囲に含まれることが好ましい。
分析値C
試料を硫酸水溶液に分散した溶液を加熱下で、酸化剤を用いて酸化還元滴定して得られる試料1g当たりの消費される酸素モル数が3.4〜5.5mmolである。
酸化還元滴定は、硫酸水溶液に1段目の焼成を終えた試料を加えた分散液を40〜90℃、好ましくは50〜70℃で分析する。還元剤は特に限定しないが市販のN/40の過マンガン酸カリウム水溶液が好ましい。
上記分析値Aと同様な試料を用いて、卓上ロータリーキルン(高砂工業株式会社製)を用いて310℃で焼成した場合の焼成時間(2分〜90分)と1段目焼成品の酸化還元滴定量との関係を図3に示す。
図3によれば、各試料の酸化還元滴定量は、焼成時間に相関して変化することがわかる。
また、図4に、各種の条件で行った1段目の焼成物を、同一の条件で2段目の焼成を行い製造した金属酸化物触媒の性能を調べた結果を示す。横軸にプロパン転化率、縦軸にアクリル酸選択性を示し、アクリル酸収率を破線で示す。
図4に示すように、触媒性能のカーブはアクリル酸収率の極大点を持っており、1段目の焼成状態が大きく影響する。そのため、触媒性能のバラツキが少なくするためには、1段目の焼成状態を把握することが重要である。
前記のとおり、質量変化率、窒素含有量および酸化還元滴定の分析値は、1段目の焼成状態と相関して変化するため、1段目の焼成物を上記分析方法で分析することで1段目の焼成状態を判別することが可能である。
さらに、1段目焼成で得られた試料を用いて、酸素不存在下で2段目の焼成を行う。焼成装置としてはマッフル炉やロータリーキルン等が挙げられるがこれらに限定するものではない。
2段目の焼成温度は500℃〜660℃が好ましく、さらに好ましくは570℃〜640℃であり、焼成時間は、0.5〜6時間であることが好ましく、1〜3時間であることがより好ましい。
上記工程(1)〜(5)により得られる金属酸化物触媒は、そのままの形態で使用できるが、適当な粒度に粉砕して触媒の表面積を増大させて使用することが好ましい。粉砕方法としては、公知の乾式粉砕法および湿式粉砕法などが利用できる。
粉砕装置の具体例としては、乳鉢、ボールミル等が挙げられる。湿式粉砕の場合に、粉砕の助剤として使用する溶媒としては、水、アルコール類などが挙げられる。本触媒を粉砕する場合、その粒度は、20μm以下とすることが好ましく、5μm以下がより好ましい。
金属酸化物触媒は、無担体の状態でも使用できるが、適当な粒度を有するシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、シリコンカーバイド等の公知の担体に担持させて使用することもできる。担持量も特に制限が無く、従来の担持量に準じる。
上記方法により製造した金属酸化物触媒を用いて、アクリル酸を製造するプロパンの気相接触酸化の方法について説明する。
金属酸化物触媒を充填した反応器に、原料であるプロパンおよび酸素ガスを導入することで、プロパンは金属酸化物触媒により気相接触酸化されてアクリル酸が生成する。
プロパンおよび酸素ガスは、別々に反応器に導入して反応器内で両者を混合してもよく、また、予め両者を混合した状態で反応器に導入してもよい。
酸素ガスとしては、純酸素ガスおよび空気、これらを窒素、スチームおよび炭酸ガス等で希釈したガスが例示できる。
原料としてプロパンおよび空気を使用する場合、空気のプロパンに対する使用割合は、容積比率で30倍以下が好ましく、0.2〜20倍がより好ましい。
反応温度は300℃〜600℃であることが好ましく、350℃〜500℃がより好ましい。
原料ガスの空間速度(以下SVという)は1,000〜8,000hr−1が適当である。空間速度が1,000hr−1以上であると、目的化合物であるアクリル酸の収率が向上し、8,000hr−1以下であると、反応率が向上する。
反応器出口から排出される反応ガス中に存在する未反応の原料プロパンや、中間生成物のプロピレンはそのまま燃料とすることもできるが、反応ガス中の他の成分と分離してから反応器へ返送して再利用することもできる。
なお、本発明により製造される金属酸化物触媒は、プロパンのアンモ酸化にも適用でき、高収率でアクリロニトリルを製造することができる。アンモ酸化条件は、上記プロパンの気相接触酸化の条件に準じる。
以下、実施例、試験例および参考例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例、試験例および参考例において、得られる金属酸化物触媒を構成する各金属の割合が以下の値となるように、各原料を配合した。
Mo/V/Te/Nb=1.0/0.25/0.13/0.12(モル比)
各例におけるアクリル酸の製造試験は以下のとおりに実施した。
各例で得られた金属酸化物触媒1.1ml(1.0g)を10mmφの石英製の反応管に充填し、反応管を400℃に加熱し、反応管内にプロパン6.4容積%、酸素9.6容積%、窒素36.1容積%および水蒸気47.7容積%の混合ガスを3,924/hr−1の空間速度で供給することにより、アクリル酸を製造した。
反応生成物中の各生成成分の組成分析を行い、組成分析結果により、下式に示すプロパン転化率、アクリル酸選択性およびアクリル酸収率をモル基準で算出し、金属酸化物触媒の性能評価を表2〜表5に記載した。
プロパン転化率(%)=[(供給プロパン−未反応プロパン)/供給プロパン]×100(式2)
アクリル酸選択性(%)=[生成アクリル酸/(供給プロパン−未反応プロパン)]×100(式3)
アクリル酸収率(%)=(プロパン転化率×アクリル酸選択性)/100(式4)
<試験例1>
500mlのガラス製フラスコに、二酸化テルル3.64gおよび蒸留水60ml を加え、80℃で300回転/分の速度で撹拌しながら、ヒドラジン一水和物(ヒドラジンとして80質量%)2.8gを添加し、この条件で12時間維持した。時間経過に伴い最初の白色粉末は灰色を経て、最終的に黒色の懸濁物に変化し、その分散液が得られた。
濾紙を用いて、得られた分散液を黒色の固形物と透明無色の濾液とに濾別した。濾紙の上の固形物を200mlの蒸留水で洗浄した。蒸留水が濾紙を通過した後、濾紙に残っている固形物を蒸留水で薄めながら、サンプル瓶に集め、テルルの水性分散液を得た。
500mlのガラス製フラスコに、メタバナジン酸アンモニウム5.12g、モリブデン酸アンモニウム30.9g、および蒸留水100mlを加え、水の沸点温度下、撹拌しながら溶解させた。
得られた溶液に前記の金属テルルの水性分散液を加え、1時間加熱処理した後、氷水で30℃に冷却した。
一方、蓚酸8.82gおよびニオブ酸3.48gを140mlの蒸留水に溶解して常温の水溶液を調製した。この水溶液を前記反応液に10秒かけて添加した。
得られた混合液を10分間激しく撹拌した後、この混合液に硝酸アンモニウム5.0gを混合した。その後、加熱濃縮し、さらに120℃で蒸発乾固させた。
得られた蒸留乾固品を、バッチ式ロータリーキルン(装置名:デスクトップ型ロータリーキルン、高砂工業株式会社製)を用いて、大気下で、310℃で15分間焼成を行った。
得られた試料1.0gをルツボに秤量し、工程検査用の小型マッフル炉(装置名:ガス置換マッフル炉、アズワン株式会社製)にて、大気下、600℃で10分間加熱した後、デシケータ内で100℃以下に冷却して、再度秤量した。重量変化率は前記式1で計算して4.6%であった。
2段目の焼成は、マッフル炉において窒素ガスを流通させた不活性雰囲気中600℃で2時間行い、金属酸化物触媒を得た。
この触媒の成分の原子比は、蛍光X線分析による組成分析により、Mo/V/Te/Nb=1.0/0.25/0.13/0.12(モル比)であった。
得られた触媒を打錠成形し、成型物を16〜30メッシュに粉砕して、アクリル酸の製造反応に使用し、結果は表2に示したとおり、プロパン転化率69%、アクリル酸選択性64%、アクリル酸収率44%であり、図4に示すように、もう少し長く1段目の焼成を行うとアクリル酸選択性が向上すると予想される。
<実施例1>
試験例1で取得した蒸発乾固品を、バッチ式ロータリーキルンを用いて、大気下で、310℃で90分間焼成し、得られた試料1.0gをルツボに秤量し、試験例1と同じ工程検査用の小型マッフル炉にて、大気下、600℃で10分間加熱した後、デシケータ内で100℃以下に冷却し再度秤量した結果、重量変化率は2.1%であった。
2段目の焼成を試験例1と同様に行い、得られた触媒を打錠成形し、成型物を16〜30メッシュに粉砕して、アクリル酸の製造反応に使用した結果、プロパン転化率60%、アクリル酸選択性73%、アクリル酸収率44%であった。
1段目の焼成が適正な範囲であり、試験例1に比べてアクリル酸選択性が向上していることを確認できた。
<試験例2>
試験例1で取得した蒸発乾固品を、バッチ式ロータリーキルンを用いて、大気下で、330℃で90分間焼成し、得られた試料1.0gをルツボに秤量し、試験例1と同じ工程検査用の小型マッフル炉にて、大気下、600℃で10分間加熱した後、デシケータ内で100℃以下に冷却して、再度秤量した結果、重量変化率は1.1%であった。
2段目の焼成を試験例1と同様に行い、得られた触媒を打錠成形し、成型物を16〜30メッシュに粉砕して、アクリル酸の製造反応に使用した結果、プロパン転化率40%、アクリル酸選択性74%、アクリル酸収率30%であった。
図4に示すとおり、1段目の焼成が適正な範囲を外れ過剰焼成の領域に入ったので、プロパン転化率が低下した。この影響でアクリル酸収率が下がった。
<実施例2>
試験例1で取得した蒸発乾固品を、バッチ式ロータリーキルンを用いて、大気下、330℃で60分間焼成し、得られた試料1.0gをルツボに秤量し、試験例1と同じ工程検査用の小型マッフル炉にて、大気下で、600℃で10分間加熱した後、デシケータ内で100℃以下に冷却して、再度秤量した結果、重量変化率は1.9%であった。
2段目の焼成を試験例1と同様に行い、得られた触媒を打錠成形し、成型物を16〜30メッシュに粉砕して、アクリル酸の製造反応に使用した結果、プロパン転化率61%、アクリル酸選択性73%、アクリル酸収率44%であった。
試験例2と比較して、1段目の焼成が適正な範囲に入るように加熱時間を短くしたので、プロパン転化率は60%に上昇した。
<試験例3>
試験例1で取得した蒸発乾固品を、バッチ式ロータリーキルンを用いて、大気下、350℃で60分間焼成し、得られた試料1.0gをルツボに秤量し、試験例1と同じ工程検査用の小型マッフル炉にて、大気下、600℃で10分間加熱した後、デシケータ内で100℃以下に冷却して、再度秤量した結果、重量変化率は0.7%であった。
2段目の焼成を試験例1と同様に行い、得られた触媒を打錠成形し、成型物を16〜30メッシュに粉砕して、アクリル酸の製造反応に使用した結果、プロパン転化率13%、アクリル酸選択性62%、アクリル酸収率8%であった。
図4に示すように、1段目の焼成が適正な範囲を外れ、焼成過剰の領域に入ったので、これがプロパン転化率に影響してアクリル酸収率が下がった。
<実施例3>
試験例1で取得した蒸発乾固品を、バッチ式ロータリーキルンを用いて、大気下、350℃で30分間焼成し、得られた試料1.0gをルツボに秤量し、試験例1と同じ工程検査用の小型マッフル炉にて、大気下、600℃で10分間加熱した後、デシケータ内で100℃以下に冷却して、再度秤量した結果、重量変化率は1.4%であった。
2段目の焼成を試験例1と同様に行い、得られた触媒を打錠成形し、成型物を16〜30メッシュに粉砕して、アクリル酸の製造反応に使用したところ、プロパン転化率61%、アクリル酸選択性70%、アクリル酸収率42%であった。
試験例3の結果より、1段目の焼成が適正な範囲に入るように時間を短くしたので、プロパン転化率は61%まで回復した。
<試験例4>
試験例1と同様な蒸発乾固品を、バッチ式ロータリーキルンを用いて、大気下、310℃で15分間焼成した。得られた試料を元素分析装置にて、窒素含有量を測定した結果、1.6質量%であった。
次に、試験例1と同じ条件で2段目の焼成を行い、得られた触媒を打錠成形し、成型物を16〜30 メッシュに粉砕して、アクリル酸の製造反応に使用した結果、プロパン転化率69%、アクリル酸選択性64%、アクリル酸収率44%であった。
<実施例4〜6、試験例5>
試験例4に比較して、1段目の焼成時間を表3に記載の時間に変更した。
焼成時間を30分間とした実施例4は、窒素含有量は1.2質量%であり、試験例1と同じ条件で2段目の焼成を行い、得られた触媒を打錠成形し、成型物を16〜30メッシュに粉砕して、アクリル酸の製造反応に使用した結果、プロパン転化率66%、アクリル酸選択性71%、アクリル酸収率47%であり、触媒性能を改善できた。
実施例5は焼成時間を60分間に、実施例6は焼成時間を120分間にした以外は実施例4と同様に焼成を行った結果、窒素含有量はそれぞれ0.9質量%、0.8質量%であり、実施例4と同様にアクリル酸の製造反応に使用したところ、表3に記載のとおり高いアクリル酸選択性を示した。
一方、1段目の焼成時間を240分間にした試験例5は、窒素含有量が0.7質量%であり、アクリル酸の製造反応に使用したところ、アクリル酸収率が40%より低かった。
<比較参考例1>
試験例1と同じ蒸発乾固品を、バッチ式ロータリーキルンを用いて、大気下、310℃で5分間焼成し、得られた試料0.4gをスパーテルで粗粉砕した後、60℃に加熱した78%硫酸水/純水=10/50の入ったビーカーに加え、マグネティックスターラーで均一に分散した。加熱を継続しながら、酸化還元滴定装置(装置名:電位差自動滴定装置AT−510、京都電子工業株式会社製)で、還元剤として1/40規定の過マンガン酸カリウム水溶液を用いて、当量点に達するまでの滴定量を求めたところ、39ml(酸素モル数換算:6.1mmol/試料1g)であった。
試験例1と同様に2段目の焼成を行い、得られた触媒を打錠成形し、成型物を16〜30メッシュに粉砕して、アクリル酸の製造反応に使用した結果、表4に示すように、プロパン転化率45%、アクリル酸選択性45%、アクリル酸収率20%であった。
<参考例1>
比較参考例1に対して、1段目の焼成時間を90分間にした結果、酸化還元滴定量は22ml(酸素モル数換算:3.4mmol/試料1g)であった。試験例1と同様に2段目の焼成を行い、得られた触媒を打錠成形し、成型物を16〜30メッシュに粉砕して、アクリル酸の製造反応に使用した結果、表4に示すとおり、プロパン転化率60%、アクリル酸選択性73%、アクリル酸収率44%であった。
<参考例2、3、比較参考例2、3>
比較参考例1に対して、参考例2は1段目の焼成を330℃で60分間行い、参考例3は350℃で30分間行った結果、酸化還元滴定量はそれぞれ23ml(酸素モル数換算:3.6mmol/試料1g)、31ml(酸素モル数換算:4.8mmol/試料1g)であった。
試験例1と同様に2段目の焼成を行い、得られた触媒を打錠成形し、成型物を16〜30メッシュに粉砕して、アクリル酸の製造反応に使用した結果、表4に示すとおりであった。
また、比較参考例1に対して、1段目の焼成を330℃で90分間(比較参考例3)および350℃で60分間(比較参考例4)行った結果、酸化還元滴定量はそれぞれ21ml(酸素モル数換算:3.3mmol/試料1g)、18ml(酸素モル数換算:2.8mmol/試料1g)であった。
試験例1と同様に2段目の焼成を行い、得られた触媒を打錠成形し、成型物を16〜30メッシュに粉砕して、アクリル酸の製造反応に使用した結果、表4に示すとおりであった。
上記の各例では、1段目の焼成状態の調整について、焼成温度と焼成時間を変更したが、次に、焼成装置内の通気量を変更した実施例を記載する。
<比較例5>
試験例1と同じ蒸発乾固品を、卓上ロータリーキルンを用いて、大気下、310℃で90分間焼成する条件において、炉内にSV=692の大気を吹き込んだ。得られた試料の質量変化率と酸化還元滴定を行ったところ、重量変化率は1.2%、酸化還元滴定量は20ml(酸素モル数換算:3.1mmol/試料1g)であった。
試験例1と同様に2段目の焼成を行い、得られた触媒を打錠成形し、成型物を16〜30メッシュに粉砕して、アクリル酸の製造反応に使用した結果、プロパン転化率33%、アクリル酸選択性76%、アクリル酸収率25%であった。
<実施例7、8>
比較例5の重量変化率と酸化還元滴定量より、1段目の焼成が過剰に行われていたので、焼成温度と焼成時間は変えないで、実施例7は通気量をSV=30に、実施例8は通気量をSV=314に変更した結果、重量変化率と酸化還元滴定量は適正な範囲となり、触媒性能は、アクリル酸収率が40%台に回復しており、通気量による焼成状態の改善を確認できた。
<実施例9>
試験例1において、蓚酸ニオブの添加時間を10秒から3分に変え、スラリーを作製し、実施例1と同じ方法にて得られた乾固品を、焼成し、アクリル酸の製造反応に使用した。
<実施例10>
試験例1において、蓚酸ニオブの添加時間を10秒から6分に変え、スラリーを作製し、実施例1と同じ方法にて得られた乾固品を、焼成し、アクリル酸の製造反応に使用した。
<実施例11>
試験例1において、蓚酸ニオブと反応液を、工業用連続混合装置スタチックミキサーであるスタティックミキサーT4−21R(商品名、(株)ノリタケカンパニーリミテド製)を用いて混合し、スラリーを作製し、実施例1と同じ方法にて得られた乾固品を、焼成し、アクリル酸の製造反応に使用した。
<参考例4>
試験例1において、蓚酸ニオブの添加時間を10秒から20分に変え、スラリーを作製し、実施例1と同じ方法にて得られた乾固品を、焼成し、アクリル酸の製造反応に使用した。
本発明における金属酸化物触媒の製造方法によれば、熱質量分析または元素分析の検査方法により短時間で1段目の焼成状態を把握することができるため、触媒活性のバラツキが少ない高活性な金属酸化物触媒が製造できる。
製造された金属酸化物触媒は、プロパン転化率、アクリル酸選択率およびアクリル酸収率に優れた触媒活性を発現するため、プロパンの気相接触酸化によるアクリル酸の製造用の触媒として用いることができる。

Claims (5)

  1. 還元剤と水または有機溶剤との存在下で、Te4+化合物またはTe6+化合物を還元して金属テルルを含む還元物を得る工程、
    前記還元物から未反応の還元剤を除去する工程、
    Mo、V、A元素および水の存在下で、前記未反応の還元剤を除去した金属テルルを含む還元物を反応させ反応物を得る工程、ならびに、
    得られた反応物を乾燥および焼成し下記組成式で表される金属酸化物触媒を得る工程を含み、
    前記焼成を2段階で行い、
    1段目の焼成で得られる物質が下記分析値Aおよび下記分析値Bのうち少なくとも1つの分析値に含まれる
    金属酸化物触媒の製造方法。
    組成式:MoVTe
    式中、Aは、Nb、Ta、W、Ti、Zr、Re、Fe、Ni、Co、Sn、Tl、Cu、希土類元素およびアルカリ金属元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、iおよびjは、各々0.01〜1.5で、かつj/i=0.3〜1.0であり、kは0.001〜3.0であり、yは他の元素の酸化状態によって決定される数である。
    分析値A:下記式1で定義される質量変化率の値が1.2〜4.0%である。
    質量変化率(%)=[(加熱前の質量−加熱後の質量)/加熱前の質量]×100(式1)
    分析値B:燃焼法による炭素、水素および窒素の元素分析における窒素含有量が0.8〜1.5質量%である。
  2. 前記反応物を得る工程が、Mo、Vおよび水の存在下で、前記未反応の還元剤を除去した金属テルルを含む還元物を反応させ、その後、A元素を含有する化合物と混合して反応させ反応物を得る工程である請求項1に記載の金属酸化物触媒の製造方法。
  3. さらに1段目の焼成で得られる物質が下記分析値Cに含まれる請求項1または請求項2に記載の金属酸化物触媒の製造方法。
    分析値C:試料を硫酸水溶液に分散した溶液を、加熱下で、酸化剤を用いて酸化還元滴定して得られる試料1g当たりの消費される酸素モル数が3.4〜5.5mmolである。
  4. 2段目の焼成を、酸素不存在下で、500℃〜660℃の温度範囲で行う請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属酸化物触媒の製造方法。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法で得られた金属酸化物触媒を用いて、プロパンを気相接触反応により酸化するアクリル酸の製造方法。
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