本発明の態様に係る基板支持装置、露光装置、および、パターニング装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
図1は、ロール・ツー・ロール方式の基板処理装置(パターン露光装置)の全体的な構成を示す図である。図1の基板処理装置による処理は、チャンバーCBで囲まれた露光部本体(露光装置、描画装置)EX内で、電子デバイスのパターンをシート基板P(以下単に基板Pと呼ぶこともある)の表面のレジスト層や感光性シランカップリング層、或いは紫外線硬化樹脂の膜等の感光層(感光性機能層)に露光することである。図1において、基板処理装置の全体が設置される工場の床面と平行な面を直交座標系XYZのXY面とし、XY面と垂直なZ方向を重力方向とする。感光層が塗布されてプリベイクされた長尺のフレキシブルなシート基板Pは、供給ロールFRに巻かれた状態で、供給ロール装着部EPC1から−Y方向に突出した回転軸に装着される。供給ロール装着部EPC1は、巻出し/巻取り部10の−X側の側面に設けられ、全体として±Y方向に微動できるように構成される。供給ロールFRから引き出されたシート基板Pは、巻出し/巻取り部10のXZ平面と平行な側面に取付けられたエッジセンサーEps1、Y軸と平行な回転軸を有する複数のローラ、および、テンション付与とテンション計測を行うテンションローラRT1を介して、+X方向に隣り合ったクリーナー部11に取付けられたクリーニングローラCUR1に送られる。クリーニングローラCUR1は、外周面が粘着性を持つように加工されて、シート基板Pの表面と裏面との各々と接触して回転することで、シート基板Pの表裏面に付着した微粒子や異物を除去する2本のローラで構成される。
クリーナー部11のクリーニングローラCUR1を通ったシート基板Pは、張力調整部12のXZ面から−Y方向に突出して設けられるニップローラNR1と、テンションローラRT2とを介して、露光部本体EXのチャンバーCBの側壁にY方向にスロット状に延びて形成された開口部CP1を通って、露光部本体EX内に搬入される。シート基板Pの感光層が形成された面は、開口部CP1を通る際に上向き(+Z方向)になっている。露光部本体EX内で露光処理されたシート基板Pは、開口部CP1の−Z側であって、チャンバーCBの側壁にY方向にスロット状に延びて形成された開口部CP2を通って搬出される。その際、シート基板Pの感光層が形成された面は、下向きになっている。開口部CP2を通って搬出されるシート基板Pは、張力調整部12のXZ面から−Y方向に突出して設けられるテンションローラRT3とニップローラNR2とを介して、−X方向に隣り合ったクリーナー部11のクリーニングローラCUR2に送られる。クリーニングローラCUR2は、クリーニングローラCUR1と同様に構成される。
クリーナー部11のクリーニングローラCUR2を通ったシート基板Pは、巻出し/巻取り部10のXZ面と平行な側面の下段部に取付けられたテンションローラRT4、エッジセンサーEps2、および、Y軸と平行な回転軸を有する複数のローラを介して、回収ロールRRで巻き取られる。回収ロールRRは、巻出し/巻取り部10の−X側の側面の下部に設けられ、全体として±Y方向に微動できるように構成される回収ロール装着部EPC2の回転軸に装着される。回収ロールRRは、シート基板Pの感光層が外周面側に向くようにシート基板Pを巻き上げる。このように、図1の基板処理装置では、供給ロールFRから引き出されて回収ロールRRで巻き取られるまで、シート基板Pの表面(被処理面)の幅方向(長尺方向と直交した短尺方向)が常にY方向になるような状態でシート基板Pを長尺方向に搬送している。さらに、図1の基板処理装置の構成においては、供給ロールFRと回収ロールRRとを巻出し/巻取り部10にZ方向に並べて配置したので、ロール交換の作業が簡便になる。
本実施の形態では、基板処理装置の単体がロール・ツー・ロール方式でシート基板Pに露光処理を施す構成とするが、シート基板Pの表面に感光層を塗布する塗布部と乾燥部とを、供給ロールFRと露光部本体EXとの間に設けたり、露光処理後のシート基板Pに現像処理やメッキ処理等の湿式処理を施す湿式処理部と乾燥部とを、露光部本体EXと回収ロールRRの間に設けたりしてもよい。なお、供給ロール装着部EPC1と回収ロール装着部EPC2の各々には、シート基板Pの被処理面を保護するための保護シートが巻かれたロールを装着するための回転軸が、供給ロールFRや回収ロールRRの回転軸と平行に設置されている。
供給ロール装着部EPC1は、供給ロールFRに所定の回転トルクを与えるサーボモータやギアボックス(減速器)を備えており、そのサーボモータは、テンションローラRT1で計測されるテンション量に基づいて搬送機構の制御ユニットによってサーボ制御される。同様に回収ロール装着部EPC2は、回収ロールRRに所定の回転トルクを与えるサーボモータやギアボックス(減速器)を備えており、そのサーボモータはテンションローラRT4で計測されるテンション量に基づいて搬送機構の制御ユニットによってサーボ制御される。さらに、シート基板Pの一方の端部(エッジ部)のY方向の変位を計測するエッジセンサーEps1からの計測情報は、供給ロール装着部EPC1(および供給ロールFR)を±Y方向に移動させるサーボモータの駆動制御部に送られ、エッジセンサーEps1を通って露光部本体EXに向かうシート基板PのY方向の位置ずれを常に所定の許容範囲内に抑える。同様に、シート基板Pの一方の端部(エッジ部)のY方向の変位を計測するエッジセンサーEps2からの計測情報は、回収ロール装着部EPC2(および回収ロールRR)を±Y方向に移動させるサーボモータの駆動制御部に送られ、エッジセンサーEps2を通るシート基板PのY方向の位置ずれに応じて回収ロールRRをY方向に移動させることで、シート基板Pの巻きムラを抑えている。
図1に示した搬送機構を構成する巻出し/巻取り部10、クリーナー部11、張力調整部12の各々の−Y方向側には、X方向に延びて工場床面に設置される段部13が設けられる。この段部13は、その上に操作者が上がって調整作業や保守作業を行えるように、Y方向に数十cmの幅を持たせてある。また、段部13の内部には、各種の電気配線、空調気体用の配管、冷却液体用の配管等の付帯設備が収納されている。段部13の−Y方向側には、電源ユニット14と、露光用ビームを発生するレーザ光源LSA(LSB)を制御するレーザ制御ユニット15と、レーザ光源LSA(LSB)、偏向器(図5に示すポリゴンミラーPM)、および、光学変調器等の発熱部を冷却するための冷却液(クーラント)を循環させるチラーユニット16と、露光部本体EXのチャンバーCB内に温調された気体を供給する空調ユニット17等とが配置される。
以上の構成において、張力調整部12に取付けられたニップローラNR1とテンションローラRT2によって、露光部本体EXの上流側のシート基板Pには、長尺方向(搬送方向)に略一定のテンションが付与される。テンションローラRT2は、テンション計測部(センサー)を備え、計測したテンション量が指令された値になるように、サーボモータによって図1中で±Z方向に移動可能となっている。ニップローラNR1は、2本の平行なローラを一定の押圧力で対峙させ、その間でシート基板Pを挟持しつつ、一方のローラをサーボモータで回転駆動させることで、ニップローラNR1の上流側と下流側とでシート基板Pに付与されるテンションを分断することができる。ニップローラNR1の一方のローラのサーボモータによる回転駆動により、シート基板Pの搬送速度をアクティブに制御することができ、例えば、ニップローラNR1のサーボモータの回転を停止状態(速度ゼロ)にサーボロックすると、シート基板PをニップローラNR1の位置に係止(係留)することができる。
同様に、張力調整部12に取付けられたニップローラNR2とテンションローラRT3によって、露光部本体EXの下流側のシート基板Pには、長尺方向(搬送方向)に略一定のテンションが付与される。テンションローラRT3は、テンション計測部(センサー)を備え、計測したテンション量が指令された値になるように、サーボモータによって図1中で±Z方向に移動可能となっている。ニップローラNR2は、ニップローラNR1と同様にサーボモータによってアクティブに回転制御されるため、ニップローラNR2の上流側と下流側とでシート基板Pに付与されるテンションを分断することができる。ニップローラNR2のサーボモータの回転を停止状態(速度ゼロ)にサーボロックすることで、シート基板PはニップローラNR2の位置に係止(係留)されることになる。
さらに本実施の形態では、供給ロールFRを回転駆動するサーボモータと、ニップローラNR1を回転駆動するサーボモータとを、テンションローラRT1で計測されるテンション量に応じて同期制御することで、供給ロールFRからニップローラNR1までの搬送経路において、シート基板Pに所定のテンションが与えられる。同様に、回収ロールRRを回転駆動するサーボモータと、ニップローラNR2を回転駆動するサーボモータとを、テンションローラRT4で計測されるテンション量に応じて同期制御することで、ニップローラNR2から回収ロールRRからまでの搬送経路において、シート基板Pに所定のテンションが与えられる。
図2は、図1に示した露光部本体EXの詳細構成を示す図である。この露光部本体EXは、ポリゴンミラーPMとfθレンズFTとによってシート基板P上でビームLBのスポット光を一次元走査する直描型の描画ヘッド(露光ヘッド、パターン形成ヘッド)として、6つの描画ユニットUn(U1〜U6)と、2つのレーザ光源LSA、LSBの各々からの露光用のビーム(紫外波長域のパルスビーム)LBを6つのビームLBn(LB1〜LB6)に時分割で分配して、6つの描画ユニットUn(U1〜U6)の各々に供給するビーム分配ユニットBDUと、シート基板P上に形成されたアライメント用のマークMKm(図6参照)を検出する複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)と、を備える直描型のパターン描画装置である。このようなパターン描画装置は、例えば、国際公開第WO2015/166910号パンフレットに開示されているので、レーザ光源LSA、LSBから各描画ユニットU1〜U6までの構成についての詳細説明は省略する。なお、ビーム分配ユニットBDUは、レーザ光源LSAのからのビームLBnが入射する描画ユニットUnを、例えば、U1→U3→U5、の順番で切り換えることで、レーザ光源LSAのからのビームLBnを描画ユニットU1、U3、U5に時分割で振り分ける。同様に、ビーム分配ユニットBDUは、レーザ光源LSBのからのビームLB(LBn)が入射する描画ユニットUnを、例えば、U2→U4→U6、の順番で切り換えることで、レーザ光源LSBのからのビームLBnを描画ユニットU2、U4、U6に時分割で振り分ける。
本実施の形態では、張力調整部12のニップローラNR1を介して開口部CP1から搬入されるシート基板Pが、ガイドローラR1、R2、回転ドラムDR、ガイドローラR3、R4、R5の順に掛け渡され、露光部本体EXの開口部CP2から退出してニップローラNR2に向かう。回転ドラムDRは、Y軸と平行な回転中心軸(回転中心線)AXoから一定半径の円筒状の外周面を有し、その外周面の+Z方向の約半周分でシート基板Pを密着支持する。回転ドラムDRは、シート基板Pにパターンを露光する際に、シート基板Pの表面を安定した面(円筒面)になるように支持する支持部材として機能するとともに、モータ等を含む回転駆動機構DV1による回転駆動により、シート基板Pの表面を長尺方向に制御された速度で送る可動ステージ部材としても機能する。この回転駆動機構DV1は、主制御ユニット(制御装置)MCUによって制御される。
回転ドラムDRの外周面の周方向の移動量は、回転ドラムDRの−Y方向の端部側に回転中心軸(中心軸)AXoと同軸に取付けられたスケール円盤SDaの外周面のスケール部(格子状の目盛線)SGp(図3参照)を、複数のエンコーダヘッドEC(EC0、EC1、EC2、EC3)の各々によって検出するエンコーダシステムによって、サブミクロンの分解能で求められる。計測時のアッベ誤差を低減するため、スケール円盤SDaの外周面(スケール面)の半径と回転ドラムDRの外周面の半径とを略一致させるのがよいが、半径の差が±数mm程度までなら許容される。また、スケール円盤SDaのスケール部SGpの周長方向の1ヶ所には、エンコーダヘッドEC0、EC1、EC2、EC3の各々によって検出可能な原点マークZpmが形成されている。
エンコーダヘッドEC0〜EC3の配置関係は、前述の国際公開第WO2015/166910号パンフレットに説明されているが、さらには国際公開第WO2013/146184号パンフレットにも説明されている。本実施の形態では、図3に示すように、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の各々で走査されたビームLB1、LB3、LB5によってシート基板P上に形成されるスポット光SPの走査軌跡である描画ライン(走査線)SL1、SL3、SL5は、回転中心軸AXoと平行になるとともにY方向に一定の間隔を空けて一列に配置される。同様に、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6の各々で走査されたビームLB2、LB4、LB6によってシート基板P上に形成されるスポット光SPの走査軌跡である描画ライン(走査線)SL2、SL4、SL6も、回転中心軸AXoと平行になるとともにY方向に一定の間隔を空けて一列に配置される。なお、図3に示すように、回転ドラムDRの+Y方向の端部側には、スケール円盤SDaと同じ構成のスケール円盤SDbがシャフトSftと同軸に取付けられている。
図3に示すように、回転中心軸AXoから見て、回転ドラムDRの周方向における奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5の方位と、スケール円盤SDa、SDbの周方向におけるエンコーダヘッドEC1(EC1a、EC1b)の設置方位とは、計測時のアッベ誤差を小さくするために、極力一致するように設定される。同様に、回転中心軸AXoから見て、回転ドラムDRの周方向における偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6の方位と、スケール円盤SDa、SDbの周方向におけるエンコーダヘッドEC2(EC2a、EC2b)の設置方位とは、計測時のアッベ誤差を小さくするために極力一致するように設定される。奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5と偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6とは、回転ドラムDRの周方向に所定の角度分だけ離れており、6つの描画ラインSL1〜SL6の各々によって描画されるパターンは、シート基板P上のY方向(幅方向)で継ぎ合わされる。6つの描画ラインSL1〜SL6で囲まれる領域がビームLBn(LB1〜LB6)の被投射領域となる。なお、エンコーダヘッドEC1a、EC2aは、スケール円盤SDaと対向するように配置され、エンコーダヘッドEC1b、EC2bは、スケール円盤SDbと対向するように配置されている。
図3では省略したが、図2に示したスケール円盤SDaと対向するエンコーダヘッドEC0a、および、スケール円盤SDbと対向するエンコーダヘッドEC0bからなるエンコーダヘッドEC0の周方向における設置方位は、回転中心軸AXoから見て回転ドラムDRの周方向におけるアライメント顕微鏡AM1m(Y方向に並ぶ4つの顕微鏡対物レンズを含む4つのアライメント顕微鏡AM11〜AM14)の各々のマーク検出領域(観察視野領域)Vw1m(Vw11〜Vw14)(図6参照)の方位と極力一致するように設定される。同様に、図3では省略したが、図2に示したスケール円盤SDaと対向するエンコーダヘッドEC3a、および、スケール円盤SDbと対向するエンコーダヘッドEC3bからなるエンコーダヘッドEC3は、シート基板Pの搬送方向に関して被投射領域(描画ラインSL1〜SL6)の下流側に位置するアライメント顕微鏡AM2m(Y方向に並ぶ4つの顕微鏡対物レンズを含む4つのアライメント顕微鏡AM21〜AM24)の各々のマーク検出領域(観察視野領域)Vw2m(Vw21〜Vw24)(図6参照)の周方向の方位と同じ方位に設置される。
スケール円盤SDa、SDbのスケール部SGp(目盛線)の周方向の位置変化に応じて、エンコーダヘッドEC0a、EC0b、EC1a、EC1b、EC2a、EC2b、EC3a、EC3bの各々から出力される計測信号(位相差90度の2相信号等)、および原点マークZpmを検出した瞬間に出力される原点信号(パルス)は、カウンタ部ECNTに送られる。カウンタ部ECNTは、エンコーダヘッドEC0〜EC3の各々からの計測信号に基づいて、スケール部SGp(目盛線)の周方向の位置変化をサブミクロンの分解能で計数する複数のデジタルカウンタ回路(図示略)を含み、各デジタルカウンタ回路の計数値は、対応するエンコーダヘッドECからの原点信号に応答してゼロ(または既定値)にリセットされる。各デジタルカウンタ回路で計数される計数値は、回転ドラムDRの外周面の原点マークZpmからの周方向の距離または移動量に対応したものであり、それらの計数値は、回転ドラムDRの回転駆動機構DV1による回転速度の制御、パターン描画の際のシート基板Pの副走査方向(回転ドラムDRの外周面の周方向)の位置モニター、回転ドラムDRを特定の角度位置に停止させる場合の位置決め制御等に使われる。このカウンタ部ECNTの複数のデジタルカウンタ回路の各々が計数した計数値は、主制御ユニットMCUに送られる。
図4はレーザ光源LSA、LSBの構成を示す図である。2つのレーザ光源LSA、LSBは同じ構成であるので、代表してレーザ光源LSAの構成について説明する。ファイバーレーザ装置としてのレーザ光源LSAは、光源部200S、202S、偏光ビームスプリッタ204、描画用光変調器としての電気光学素子206、この電気光学素子206の駆動回路206a、偏光ビームスプリッタ208、吸収体210、ファイバー光増幅部216、波長変換光学素子218、220、クロック発生器222aを含む制御回路222、レンズGL1〜GL3、GLa〜GLe、および、反射ミラーMC1、MC2を少なくとも備える。
光源部200Sは、所定周波数(発振周波数、発光周波数)Fsでパルス状の赤外波長域の種光(レーザ光)を発生する半導体レーザ素子200と、半導体レーザ素子200からの種光(パルス光)の発光時間をピコ秒オーダに短縮してピーク強度が高く俊鋭若しくは尖鋭なパルス状の種光S1にする光学的な機能部材(図示は省略するがQスイッチ等)とを有する。その光学的な機能部材は半導体レーザ素子200の駆動方式によっては不要になる。光源部202Sは、所定周波数Fsでピーク強度が低く緩慢(時間的にブロード)なパルス状の赤外波長域の種光(レーザ光)S2を発生する半導体レーザ素子202を有する。光源部200Sが射出する種光S1と、光源部202Sが射出する種光S2とは、1パルス当りのエネルギーは略同一ではあるが、偏光状態が互いに異なり、ピーク強度は種光S1の方が高い。本実施の形態では、種光S1、S2ともに直線偏光の光とし、種光S1の偏向方向をS偏光とし、種光S2の偏光方向をP偏光と直交するS偏光とする。この半導体レーザ素子200、202は、制御回路222の電気的な制御によって、クロック発生器222aで生成されるクロック信号LTC(所定周波数Fs)に応答して発光するように制御される。この制御回路222は、主制御ユニットMCUによって制御される。なお、この所定周波数Fsは、主制御ユニットMCUから送られてきた倍率補正情報CMgに応じて決定される。
光源部200Sから発散しながら射出した種光S1は、レンズGL1によって平行光束にされた後、偏光ビームスプリッタ204に入射する。レンズGL1の前側焦点は、光源部200Sの射出端に設定されている。光源部202Sから発散しながら射出した種光S2は、レンズGL2によって平行光束にされた後、偏光ビームスプリッタ204に入射する。レンズGL2の前側焦点も、光源部200Sの射出端に設定されている。偏光ビームスプリッタ204は、S偏光の種光S1を透過することで電気光学素子206に導き、P偏光の種光S2を反射することで電気光学素子206に導く。
電気光学素子206は、種光S1、S2に対して透過性を有するものであり、例えば、電気光学変調器(EOM:Electro-Optic Modulator)が用いられる。電気光学素子206は、ビームLB(LBn)が入射する描画ユニットUnに応じたパターンデータのOn/Off状態(ハイ/ロー)に応答して、偏光ビームスプリッタ204を通ってきた種光S1、S2の偏光状態を駆動回路206aによって切り換えるものである。DFB半導体レーザ素子200、DFB半導体レーザ素子202の各々からの種光S1、S2は波長域が800nm以上と長いため、電気光学素子206として、偏光状態の切り換え応答性がGHz程度のものを使うことができる。この電気光学素子206を透過した種光S1、S2は、偏光ビームスプリッタ208に入射する。
ここで、パターンデータについて簡単に説明する。パターンデータ(描画データ)は、描画ユニットUn(U1〜U6)毎に設けられ、主制御ユニットMCUに記憶されている。各描画ユニットUn(U1〜U6)に応じたパターンデータは、各描画ユニットUn(U1〜U6)によって描画されるパターンを、シート基板Pに投射されるビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPのサイズに応じて設定される寸法の画素によって分割し、複数の画素の各々を前記パターンに応じた論理情報(画素データ)で表したものである。つまり、このパターンデータは、スポット光SPの主走査方向(Y方向)に沿った方向を行方向とし、シート基板Pの副走査方向(搬送方向、X方向)に沿った方向を列方向とするように2次元に分解された複数の画素の論理情報で構成されているビットマップデータである。この画素の論理情報は、「0」または「1」の1ビットのデータである。「0」の論理情報は、シート基板Pに投射するスポット光SPの強度を低レベル(非描画)にすることを意味し、「1」の論理情報は、シート基板Pに投射するスポット光SPの強度を高レベル(描画)にすることを意味する。
パターンデータの1列分の画素の論理情報は、1本分の描画ラインSLn(SL1〜SL6)に対応するものである。したがって、1列分の画素の数は、シート基板Pの被照射面上での画素の寸法と描画ラインSLn(SL1〜SL6)の長さとに応じて決まる。1列分の画素の論理情報に応じて1本の描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿ってシート基板Pに投射されるビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPの強度が変調される。この1列分の画素の論理情報をシリアルデータDLnと呼ぶ。つまり、パターンデータは、シリアルデータDLnが列方向に並んだビットマップデータである。描画ユニットU1に対応したシリアルデータDLnをDL1とし、同様に、描画ユニットU2〜U6に対応したシリアルデータDLnをDL2〜DL6とする。
例えば、レーザ光源LSAのからのビームLB(LBn)が入射する描画ユニットUnが、例えば、U1→U3→U5、の順番で切り換わる場合は、それに同期して主制御ユニットMCUは、レーザ光源LSAの駆動回路206aに出力するシリアルデータDLnを、DL1→DL3→DL5、順番で出力する。同様に、例えば、レーザ光源LSBのからのビームLB(LBn)が入射する描画ユニットUnが、例えば、U2→U4→U6、の順番で切り換わる場合は、それに同期して主制御ユニットMCUは、レーザ光源LSBの駆動回路206aに出力するシリアルデータDLnを、DL2→DL4→DL6、順番で出力する。
駆動回路206aに入力された画素の論理情報が「0」のときは、電気光学素子206は、入射した種光S1、S2の偏光状態を変えずにそのまま偏光ビームスプリッタ208に導く。一方、駆動回路206aに入力された画素の論理情報が「1」のときは、電気光学素子206は、入射した種光S1、S2の偏光状態を変えて(偏向方向を90度変えて)偏光ビームスプリッタ208に導く。したがって、画素の論理情報が「1」の場合は、S偏光の種光S1はP偏光に変換され、P偏光の種光S2はS偏光に変換される。
偏光ビームスプリッタ208は、P偏光の光を透過してレンズGL3を介してファイバー光増幅部216の入射側端部216aに導き、S偏光の光を反射して吸収体210に導く。したがって、偏光ビームスプリッタ208は、入射した種光S1、S2のうち、いずれか一方のみを入射側端部216aに導く。偏光ビームスプリッタ208を透過した種光を以下、Lseとする。この吸収体210は、種光S1(S2)の外部への漏れを抑制するために種光S1(S2)を吸収する光トラップである。このレンズGL3によって、種光Lseは、所定のNA(開口数)で収斂して入射側端部216aに入射する。この所定のNAは、シート基板P上に投射されるスポット光SPの径にもよるが、本実施の形態では、0.04〜0.08程度とする。
ファイバー光増幅部216は、ファイバー光増幅器213A、213Bが直列に接続された2段構成となっている。そのため、ファイバー光増幅器213A、213Bの各々に対応して、ポンプ光源(励起光源)212A、212Bおよびコンバイナー214A、214Bがそれぞれ設けられている。ファイバー光増幅部216の入射側端部216aに入射した種光Lseは、最初にコンバイナー214Aに導かれる。コンバイナー214Aは、入射側端部216aに入射した種光Lseとポンプ光源212Aが発生した励起光を合成して、1段目のファイバー光増幅器(プリアンプ部)213Aに出力する。ファイバー光増幅器213Aには、励起光によって励起されるレーザ媒質がドープされている。したがって、合成された種光Lseおよび励起光を伝送するファイバー光増幅器213A内では、励起光によってレーザ媒質が励起されることにより種光Lseが増幅される。ファイバー光増幅器213A内にドープされるレーザ媒質としては、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ツリウム(Tm)等の希土類元素が用いられる。
この1段目のファイバー光増幅器213Aで増幅された種光Lseは、コンバイナー214Bに導かれる。コンバイナー214Bは、ファイバー光増幅器213Aで増幅された種光Lseとポンプ光源212Bが発生した励起光を合成して、2段目のファイバー光増幅器(メインアンプ部)213Bに出力する。ファイバー光増幅器213Bには、励起光によって励起されるレーザ媒質がドープされている。したがって、合成された種光Lseおよび励起光が伝送するファイバー光増幅器213B内では、励起光によってレーザ媒質が励起されることにより種光Lseがさらに増幅される。ファイバー光増幅器213Bに増幅された種光Lseは、ファイバー光増幅部216の射出側端部216bから射出され、反射ミラーMC1、MC2によってその光路が折り返されて1段目の波長変換光学素子218に入射する。以下、射出側端部216bから射出した種光Lseを、ビームLBsと呼ぶ。
射出側端部216bとミラーMC1との間にレンズGLaが設けられており、レンズGLaは、射出側端部216bから所定の開口数(NA)で発散しながら射出したビームLBsを平行光束にする。ミラーMC1とミラーMC2との間に設けられたレンズGLbは、平行光束のビームLBsを1段目の波長変換光学素子218の中心部で収斂する。波長変換光学素子218は、入射したビームLBsの波長を変換するものであり、入射したビームLBsに対して3倍の波数を有する高調波のビームLBsに変換する。波長変換光学素子218によって波長変換されたビームLBsは、レンズGLc、GLdを通って2段目の波長変換光学素子220に入射する。レンズGLcは、発散しながら入射したビームLBsを平行光束し、レンズGLdは、平行光束にされたビームLBsを2段目の波長変換光学素子220の中心部で収斂する。波長変換光学素子220は、入射したビームLBsの波長を変換するものであり、入射したビームLBsに対して2倍の波数を有する高調波のビームLBsに変換する。波長変換光学素子220によって波長変換されたビームLBsは、発散しながらレンズGLeに入射するが、このレンズGLeによって平行光束にされる。この平行光束にされたビームLBsが、紫外波長域のビーム(例えば、波長が355nmのビーム)LBとなってレーザ光源LSAから射出される。
図4の構成で、ファイバー光増幅部216の射出側端部216bと波長変換光学素子218の中心部とは、レンズGLa、GLbによって光学的に共役関係に設定され、波長変換光学素子218の中心部と波長変換光学素子220の中心部とは、レンズGLc、GLdによって光学的に共役関係に設定される。さらに、波長変換光学素子218、220の各中心部において、入射したビームLBsはビームウェストとなって集光し、そのビームウェストの位置は、各描画ユニットU1〜U6から投射されるビームLB1〜LB6がスポット光SPとして集光するシート基板Pの面とも共役関係に設定される。また、レンズGLeの後側焦点位置は、レーザ光源LSAのビームLBの射出窓の位置に設定される。レンズGLeの後側焦点位置(レーザ光源LSAの射出窓)は、ポリゴンミラーPMの反射面RPが位置するfθレンズFTの入射瞳位置とも共役関係になるように、ビーム分配ユニットBDU内の光学部材(レンズやミラー等)と各描画ユニットU1〜U6内の光学部材(レンズやミラー等)とが配置されている。
以上の構成を有するレーザ光源LSAにおいて、駆動回路206aに印加される画素の論理情報が「0」の場合は、偏光ビームスプリッタ208から出力される種光Lseは、種光S2となり、種光S2がファイバー光増幅部216に入射する。この種光S2は、パルスのピーク強度が低く、時間的にブロードな鈍った特性を有し、ファイバー光増幅部216は、そのようにピーク強度が低い種光S2に対する増幅効率が低い。そのため、レーザ光源LSAから出力されるビームLBは露光に必要なエネルギーまで増幅されない光となる。したがって、この場合は、露光という観点から見れば、実質的にレーザ光源LSAはビームLBを射出していないのと同じ結果となる。つまり、シート基板Pに投射されるスポット光SPの強度は極めて低レベルとなる。但し、各描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿ってパターン描画が行われない期間(非投射期間、非露光期間)では、種光S2由来の紫外域のビームLBが僅かな強度であっても放射され続けるので、描画ラインSLn(SL1〜SL6)が、長時間、シート基板P上の同じ位置にある状態が続く状況、例えば、搬送系のトラブルによるシート基板Pの緊急停止等)に至るときは、レーザ光源LSA(LSB)の射出窓から各描画ユニットU1〜U6までのビームLBの光路中にビーム遮蔽用の可動シャッターを設けて、種光S2由来の紫外域のビームLB(低強度)がシート基板Pに達することを防止するとよい。
一方で、駆動回路206aに印加される画素の論理情報が「1」の場合は、偏光ビームスプリッタ208から出力される種光Lseは、種光S1となり、種光S1がファイバー光増幅部216に入射する。この種光S1は、俊鋭若しくは尖鋭のパルス光であって、ピーク強度が高いので、ファイバー光増幅部216によって効率的に増幅される。シート基板Pの露光に必要なエネルギーを持つビームLBがレーザ光源LSAから出力される。これにより、シート基板Pに投射されるスポットの強度は高レベルとなる。
ここで、描画ユニットUnの描画ラインSLnは、描画ユニットUnがビームLBnのスポット光SPを走査することができる最大描画長の範囲内で設定されている。しかしながら、画素の論理情報が駆動回路206aに印加されていない間も、低レベルのビームがレーザ光源LSAから射出されてしまうので、描画ラインSLnより長い最大描画長の全範囲に亘ってビームLBnのスポット光SPが投射されてしまう。なお、描画ラインSLn以外の位置に投射されるビームLB1の強度が低レベルである。したがって、本実施の形態でいうところの描画ラインSLn(SL1〜SL6)とは、シリアルデータDLn(DL1〜DL6)によってスポットの強度が変調される、つまり、描画される走査線のことをいう。したがって、描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの走査期間と、シリアルデータDLnの各画素の論理情報が駆動回路206aに出力される期間とは略同一である。
次に、図5を用いて描画ユニット(走査ユニット、ビーム走査装置)Unの構成について説明する。なお、各描画ユニットUn(U1〜U6)は、同一の構成を有することから、描画ユニットU1についてのみ説明し、他の描画ユニットUnについてはその説明を省略する。
なお、描画ユニットUnは、回転ドラムDRの回転中心軸AXoに向かってビームLBnが進むように、ビームLBnをシート基板Pに向けて照射する。つまり、描画ユニットUnからシート基板Pに向けて進むビームLBnは、XZ平面に関して、シート基板Pの法線と平行している。また、各描画ユニットUn(U1〜U6)は、描画ラインSLn(SL1〜SL6)に照射するビームLBnが、YZ平面と平行な面内ではシート基板Pの被照射面に対して垂直となるように、ビームLBnをシート基板Pに向けて照射する。すなわち、被照射面でのスポット光SPの主走査方向に関して、シート基板Pに投射されるビームLBn(LB1〜LB6)はテレセントリックな状態で走査される。各描画ユニットUn(U1〜U6)によって規定される所定の描画ラインSLn(SL1〜SL6)の各中点を通ってシート基板Pの被照射面と垂直な線(または光軸とも呼ぶ)を、照射中心軸Len(Le1〜Le6)と呼ぶ。奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の各々の照射中心軸Le1、Le3、Le5は、XZ平面において同じ方向となっており、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6の各々の照射中心軸Le2、Le4、Le6は、XZ平面において同じ方向となっている(図2参照)。
また、図5においては、照射中心軸Len(Le1)と平行する方向をZt方向とし、Zt方向と直交する平面上にあって、回転ドラムDRによってシート基板Pが搬送される方向をXt方向とし、Zt方向と直交する平面上であって、Xt方向と直交する方向をYt方向とする。つまり、図5のXt、Yt、Ztの3次元座標は、図2のX、Y、Zの3次元座標を、Y軸を中心にZ軸方向が照射中心軸Len(Le1)と平行となるように傾けた3次元の直交座標系である。
図5に示すように、描画ユニットU1内には、ビームLB1の入射位置からシート基板Pの被照射面までのビームLB1の進行方向に沿って、反射ミラーM10、ビームエキスパンダーBE、反射ミラーM11、偏光ビームスプリッタPBS1、反射ミラーM12、シフト光学部材(平行平板)SR、偏向調整光学部材(プリズム)DP、フィールドアパーチャFA、反射ミラーM13、λ/4波長板QW、シリンドリカルレンズCYa、反射ミラーM14、ポリゴンミラーPM、fθレンズFT、反射ミラーM15、シリンドリカルレンズCYbが設けられる。さらに、描画ユニットU1内には、描画ユニットU1の描画開始可能タイミングを検出する原点センサ(原点検出器)OP1と、被照射面(シート基板P)からの反射光を、偏光ビームスプリッタPBS1を介して検出するための光学レンズ系G10および光検出器DTとが設けられる。
描画ユニットU1に入射するビームLB1は、−Zt方向に向けて進み、XtYt平面に対して45°傾いた反射ミラーM10に入射する。この描画ユニットU1に入射するビームLB1の軸線は、照射中心軸Le1と同軸になるように反射ミラーM10に入射する。反射ミラーM10は、ビームLB1を描画ユニットU1に入射させる入射光学部材として機能し、入射したビームLB1を、Xt軸と平行に設定される光軸AXaに沿って、反射ミラーM10から−Xt方向に離れた反射ミラーM11に向けて−Xt方向に反射する。したがって、光軸AXaはXtZt平面と平行な面内で照射中心軸Le1と直交する。反射ミラーM10で反射したビームLB1は、光軸AXaに沿って配置されるビームエキスパンダーBEを透過して反射ミラーM11に入射する。ビームエキスパンダーBEは、透過するビームLB1の径を拡大させる。ビームエキスパンダーBEは、集光レンズBe1と、集光レンズBe1によって収斂された後に発散するビームLB1を平行光にするコリメートレンズBe2とを有する。
反射ミラーM11は、YtZt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1(光軸AXa)を偏光ビームスプリッタPBS1に向けて−Yt方向に反射する。反射ミラーM11に対して−Yt方向に離れて設置されている偏光ビームスプリッタPBS1の偏光分離面は、YtZt平面に対して45°傾いて配置され、P偏光のビームを反射し、P偏光と直交する方向に偏光した直線偏光(S偏光)のビームを透過するものである。描画ユニットU1に入射するビームLB1は、P偏光のビームなので、偏光ビームスプリッタPBS1は、反射ミラーM11からのビームLB1を−Xt方向に反射して反射ミラーM12側に導く。
反射ミラーM12は、XtYt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を、反射ミラーM12から−Zt方向に離れた反射ミラーM13に向けて−Zt方向に反射する。反射ミラーM12で反射されたビームLB1は、Zt軸と平行な光軸AXcに沿ってシフト光学部材SR、偏向調整光学部材DP、およびフィールドアパーチャ(視野絞り)FAを通過して、反射ミラーM13に入射する。シフト光学部材SRは、ビームLB1の進行方向(光軸AXc)と直交する平面(XtYt平面)内において、ビームLB1の断面内の中心位置を2次元的に調整する。シフト光学部材SRは、光軸AXcに沿って配置される2枚の石英の平行平板Sr1、Sr2で構成され、平行平板Sr1は、Xt軸回りに傾斜可能であり、平行平板Sr2は、Yt軸回りに傾斜可能である。この平行平板Sr1、Sr2がそれぞれ、Xt軸、Yt軸回りに傾斜することで、ビームLB1の進行方向と直交するXtYt平面において、ビームLB1の中心の位置を2次元に微小量シフトする。この平行平板Sr1、Sr2は、主制御ユニットMCUの制御の下、図示しないアクチュエータ(駆動部)によって駆動する。
偏向調整光学部材DPは、反射ミラーM12で反射されてシフト光学部材SRを通ってきたビームLB1の光軸AXcに対する傾きを微調整するものである。偏向調整光学部材DPは、光軸AXcに沿って配置される2つの楔状のプリズムDp1、Dp2で構成され、プリズムDp1、Dp2の各々は独立して光軸AXcを中心に360°回転可能に設けられている。2つのプリズムDp1、Dp2の回転角度位置を調整することによって、反射ミラーM13に達するビームLB1の軸線と光軸AXcとの平行出し、または、シート基板Pの被照射面に達するビームLB1の軸線と照射中心軸Le1との平行出しが行われる。なお、2つのプリズムDp1、Dp2によって偏向調整された後のビームLB1は、ビームLB1の断面と平行な面内で横シフトしている場合があり、その横シフトは先のシフト光学部材SRによって元に戻すことができる。このプリズムDp1、Dp2は、主制御ユニットMCUの制御の下、図示しないアクチュエータ(駆動部)によって駆動する。
このように、シフト光学部材SRと偏向調整光学部材DPとを通ったビームLB1は、フィールドアパーチャFAの円形開口を透過して反射ミラーM13に達する。フィールドアパーチャFAの円形開口は、ビームエキスパンダーBEで拡大されたビームLB1の断面内の強度分布の裾野部分で、ピーク強度の1/e2の強度以下の部分をカットする絞りである。フィールドアパーチャFAの円形開口を口径が調整可能な可変虹彩絞りにすると、スポット光SPの強度(輝度)を調整することができる。
反射ミラーM13は、XtYt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を反射ミラーM14に向けて+Xt方向に反射する。反射ミラーM13で反射したビームLB1は、λ/4波長板QWおよびシリンドリカルレンズCYaを介して反射ミラーM14に入射する。反射ミラーM14は、入射したビームLB1をポリゴンミラー(回転多面鏡、走査用偏向部材)PMに向けて反射する。ポリゴンミラーPMは、入射したビームLB1を、Xt軸と平行な光軸AXfを有するfθレンズFTに向けて+Xt方向側に反射する。ポリゴンミラーPMは、ビームLB1のスポット光SPをシート基板Pの被照射面上で走査するために、入射したビームLB1をXtYt平面と平行な面内で1次元に偏向(反射)する。具体的には、ポリゴンミラーPMは、Zt軸方向に延びる回転軸AXpと、回転軸AXpの周りに形成された複数の反射面RP(本実施の形態では反射面RPの数Npを8とする)とを有する。回転軸AXpを中心にこのポリゴンミラーPMを所定の回転方向に回転させることで反射面RPに照射されるパルス状のビームLB1の反射角を連続的に変化させることができる。これにより、1つの反射面RPによってビームLB1の反射方向が偏向され、シート基板Pの被照射面上に照射されるビームLB1のスポット光SPを主走査方向(シート基板Pの幅方向、Yt方向)に沿って走査することができる。
つまり、1つの反射面RPによって、ビームLB1のスポット光SPを主走査方向に沿って走査することができる。このため、ポリゴンミラーPMの1回転で、シート基板Pの被照射面上にスポット光SPが描画ラインSL1に沿って走査される回数は、最大で反射面RPの数と同じ8回となる。ポリゴンミラーPMは、主制御ユニットMCUの制御の下、回転駆動源(例えば、回転速度を微調整可能なデジタル・モータ等)RMによって一定の速度で回転する。描画ラインSL1の実効的な描画長(例えば、30〜50mm)は、このポリゴンミラーPMによってスポット光SPを走査することができる最大走査長(例えば、実効的な描画長に対して1mm程度長い31〜51mm)以下の長さに設定されており、初期設定(設計上)では、最大走査長の中央に描画ラインSL1の中心点(照射中心軸Le1が通る点)が設定されている。なお、通常の描画は、実効的な描画長の範囲内で行われるが、最大走査長の範囲内であれば、必要に応じてスポット光SPによる描画が可能となっている。
シリンドリカルレンズCYaは、ポリゴンミラーPMによる主走査方向(回転方向)と直交する非走査方向(Zt方向)に関して、入射したビームLB1をポリゴンミラーPMの反射面RP上に収斂する。つまり、シリンドリカルレンズCYaは、ビームLB1を反射面RP上でXtYt平面と平行な方向に延びたスリット状(長楕円状)に収斂する。母線がYt方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYaと、後述のシリンドリカルレンズCYbとによって、反射面RPがZt方向に対して傾いている場合(XtYt平面の法線に対する反射面RPの傾き)があっても、その影響を抑制することができる。例えば、シート基板Pの被照射面上に照射されるビームLB1(描画ラインSL1)の照射位置が、ポリゴンミラーPMの各反射面RP毎の僅かな傾き誤差によってXt方向にずれることを抑制することができる。
Xt軸方向に延びる光軸AXfを有するfθレンズFTは、ポリゴンミラーPMによって反射されたビームLB1を、XtYt平面において、光軸AXfと平行となるように反射ミラーM15に投射するテレセントリック系のスキャンレンズである。ビームLB1のfθレンズFTへの入射角θは、ポリゴンミラーPMの回転角(θ/2)に応じて変わる。fθレンズFTは、反射ミラーM15およびシリンドリカルレンズCYbを介して、その入射角θに比例したシート基板Pの被照射面上の像高位置にビームLB1を投射する。焦点距離をfoとし、像高位置をyとすると、fθレンズFTは、y=fo×θ、の関係(歪曲収差)を満たすように設計されている。したがって、このfθレンズFTによって、ビームLB1をYt方向(Y方向)に正確に等速で走査することが可能になる。fθレンズFTへの入射角θが0度のときに、fθレンズFTに入射したビームLB1は、光軸AXf上に沿って進む。
反射ミラーM15は、fθレンズFTからのビームLB1を、シリンドリカルレンズCYbを介してシート基板Pに向けて−Zt方向に反射する。fθレンズFTおよび母線がYt方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYbによって、シート基板Pに投射されるビームLB1がシート基板Pの被照射面上で直径数μm程度(例えば、3μm)の微小なスポット光SPに収斂される。また、シート基板Pの被照射面上に投射されるスポット光SPは、ポリゴンミラーPMによって、Yt方向に延びる描画ラインSL1によって1次元走査される。なお、fθレンズFTの光軸AXfと照射中心軸Le1とは、同一の平面上にあり、その平面はXtZt平面と平行である。したがって、光軸AXf上に進んだビームLB1は、反射ミラーM15によって−Zt方向に反射し、照射中心軸Le1と同軸になってシート基板Pに投射される。本第1の実施の形態において、少なくともfθレンズFTは、ポリゴンミラーPMによって偏向されたビームLB1をシート基板Pの被照射面に投射する投射光学系として機能する。また、少なくとも反射部材(反射ミラーM11〜M15)および偏光ビームスプリッタPBS1は、反射ミラーM10からシート基板PまでのビームLB1の光路を折り曲げる光路偏向部材として機能する。この光路偏向部材によって、反射ミラーM10に入射するビームLB1の入射軸と照射中心軸Le1とを略同軸にすることができる。XtZt平面に関して、描画ユニットU1内を通るビームLB1は、略U字状またはコ字状の光路を通った後、−Zt方向に進んでシート基板Pに投射される。
このように、シート基板PがX方向(回転ドラムDRの外周面の周方向)に搬送されている状態で、各描画ユニットUn(U1〜U6)によって、ビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPを主走査方向(Y方向)に一次元に走査することで、スポット光SPをシート基板Pの被照射面に相対的に2次元走査することができる。
なお、一例として、描画ラインSLn(SL1〜SL6)の実効的な長さを30mmとし、実効的なサイズφが3μmのスポット光SPの1/2ずつ、つまり、1.5μmずつ、オーバーラップさせながらスポット光SPを描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿ってシート基板Pの被照射面上に照射する場合は、スポット光SPは、1.5μmの間隔でパルス発光される。したがって、1回の走査で照射されるスポット光SPの数(発光パルス数)は、20000(=30〔mm〕/1.5〔μm〕)となる。また、シート基板Pの副走査方向の送り速度(搬送速度)Vtを2.419mm/secとし、副走査方向についてもスポット光SPの走査が1.5μmの間隔で行われるものとすると、描画ラインSLnに沿った1回の走査開始(描画開始)時点と次の走査開始時点との時間差Tpxは、約620μsec(=1.5〔μm〕/2.419〔mm/sec〕)となる。この時間差Tpxは、8反射面RPのポリゴンミラーPMが1面分(45度=360度/8)だけ回転する時間である。この場合、ポリゴンミラーPMの1回転の時間が、約4.96msec(=8×620〔μsec〕)となるように設定される必要があるので、ポリゴンミラーPMの回転速度Vpは、毎秒約201.613回転(=1/4.96〔msec〕)、すなわち、約12096.8rpmに設定される。
一方、ポリゴンミラーPMの1反射面RPで反射したビームLB1が有効にfθレンズFTに入射する最大入射角度(スポット光SPの最大描画長に対応)は、fθレンズFTの焦点距離と最大描画長によっておおよそ決まってしまう。一例として、8つの反射面RPを有するポリゴンミラーPMの場合は、1反射面RP分の回転角度45度のうちで実走査に寄与する回転角度αの比率(走査効率)は、α/45度で表される。本第1の実施の形態では、実走査に寄与する回転角度αを15度とするので、走査効率は1/3(=15度/45度)となり、fθレンズFTの最大入射角は30度(光軸AXfを中心として±15度)となる。そのため、描画ラインSLnの最大描画長(例えば、31mm)分だけスポット光SPを走査するのに必要な時間Tsは、Ts=Tpx×走査効率、となり、先の数値例の場合は、時間Ts、約206.666・・・μsec(=620〔μsec〕/3)、となる。本第1の実施の形態における描画ラインSLn(SL1〜SL6)の実効的な描画長を30mmとするので、この描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの1走査の走査時間Tspは、約200μsec(=206.666・・・〔μsec〕×30〔mm〕/31〔mm〕)、となる。したがって、この時間Tspの間に、20000のスポット光SP(パルス光)を照射する必要があるので、レーザ光源LSA(LSB)からのビームLBの発光周波数(発振周波数)Fsは、Fs≒20000回/200μsec=100MHzとなる。そこで、一例として100MHzを、発振周波数Fsの基準周波数とする。
図5に示す原点センサOP1は、ポリゴンミラーPMの反射面RPの回転位置が、反射面RPによるスポット光SPの走査が開始可能な所定位置にくるとパルス状の原点信号SZ1を発生する。言い換えるならば、原点センサOP1は、これからスポット光SPの走査を行う反射面RPの角度が所定の角度位置になったときに原点信号SZ1を発生する。ポリゴンミラーPMは、8つの反射面RPを有するので、原点センサOP1は、ポリゴンミラーPMが1回転する期間で、8回原点信号SZ1を出力することになる。この原点センサOP1が発生した原点信号SZ1は、主制御ユニットMCUに送られる。原点センサOP1が原点信号SZ1を発生してから、遅延時間Tdy1経過後にスポット光SPの描画ラインSL1に沿った走査が開始される。つまり、この原点信号SZ1は、描画ユニットU1によるスポット光SPの描画開始タイミング(走査開始タイミング)を示す情報となっている。
原点センサOP1は、シート基板Pの感光性機能層に対して非感光性の波長域のレーザビームBga(連続発光)を反射面RPに対して射出するビーム送光系opaと、反射面RPで反射したレーザビームBgaの反射ビームBgbを受光して原点信号SZ1を発生するビーム受光系opbとを有する。ビーム送光系opaは、図示しないが、レーザビームBgaを射出する光源と、光源が発光したレーザビームBgaを反射面RPに投射する光学部材(反射ミラーやレンズ等)とを有する。ビーム受光系opbは、図示しないが、受光した反射ビームBgbを受光して電気信号に変換する光電変換素子を含む受光部と、反射面RPで反射した反射ビームBgbを前記受光部に導く光学部材(反射ミラーやレンズ等)を有する。ビーム送光系opaとビーム受光系opbとは、ポリゴンミラーPMの回転位置が、反射面RPによるスポット光SPの走査が開始される直前の所定位置にきたときに、ビーム送光系opaが射出したレーザビームBgaの反射ビームBgbをビーム受光系opbが受光することができる位置に設けられている。なお、描画ユニットU2〜U6に設けられている原点センサOPnをOP2〜OP6で表し、原点センサOP2〜OP6で発生するパルス状の原点信号SZnをSZ2〜SZ6で表す。主制御ユニットMCUは、この原点信号SZn(SZ1〜SZ6)に基づいて、どの描画ユニットUnがこれからスポット光SPの走査を行うことができるかを管理している。また、原点信号SZ2〜SZ6が発生してから、描画ユニットU2〜U6による描画ラインSL2〜SL6に沿ったスポット光SPの走査を開始するまでの遅延時間TdynをTdy2〜Tdy6で表す場合がある。
図5に示す光検出器DTは、入射した光を光電変換する光電変換素子を有する。回転ドラムDRの表面には、予め決められた基準マークおよび基準パターン(図13参照)が形成されている。この回転ドラムDRのうち、基準マークおよび基準パターンが形成された領域と、基準マークおよび基準パターンが形成されていない領域とでは、ビームLB1の波長に対する反射率が異なるように設定されている。例えば、基準マークおよび基準パターンが形成されている領域は、ビームLB1の波長域に対して低めの反射率(10〜50%)の素材で構成され、基準マークおよび基準パターンが形成されていない領域は、反射率が10%以下の材料または光を吸収する材料で構成される。そのため、シート基板Pが巻き付けられていない状態、またはシート基板Pの透明部(例えば、図6に示す余白部BLS)を通した状態で、回転ドラムDRの基準マーク、基準パターンが形成された領域に描画ユニットU1からビームLB1のスポット光SPを照射すると、その反射光が、シリンドリカルレンズCYb、反射ミラーM15、fθレンズFT、ポリゴンミラーPM、反射ミラーM14、シリンドリカルレンズCYa、λ/4波長板QW、反射ミラーM13、フィールドアパーチャFA、偏向調整光学部材DP、シフト光学部材SR、および、反射ミラーM12を通過して偏光ビームスプリッタPBS1に入射する。ここで、偏光ビームスプリッタPBS1とシート基板Pとの間、具体的には、反射ミラーM13とシリンドリカルレンズCYaとの間には、λ/4波長板QWが設けられている。これにより、シート基板Pに照射されるビームLB1は、このλ/4波長板QWによってP偏光から円偏光のビームLB1に変換され、回転ドラムDRの基準マーク、基準パターン(或いはシート基板P)から偏光ビームスプリッタPBS1に戻ってくる反射光(正規反射光)は、このλ/4波長板QWによって、円偏光からS偏光に変換される。したがって、回転ドラムDRの基準マーク、基準パターン(或いはシート基板P)からの正規反射光は偏光ビームスプリッタPBS1を透過し、光学レンズ系G10を介して光検出器DTに入射する。
このとき、回転ドラムDRを回転して描画ユニットU1がスポット光SPを走査することで、回転ドラムDRの外周面には、スポット光SP(その強度は高レベル)が2次元的に照射される。したがって、光検出器DTからの光電信号の強度変化をデジタルサンプリングすることで、回転ドラムDRに形成された基準マークおよび基準パターンの画像情報を取得することができる。
具体的には、光検出器DTから出力される光電信号の強度変化を、ビームLB1(スポット光SP)のパルス発光のためのクロック信号LTC(レーザ光源LSA、LSBで作られる)に応答して、デジタルサンプリングすることでYt方向の1次元の画像データとして取得する。さらに、描画ラインSL1上における回転ドラムDRの回転角度位置を計測するエンコーダヘッドEC0a、EC0bの計測値に応答して、副走査方向の一定距離(例えば、スポット光SPのサイズφの1/2)ごとにYt方向の1次元の画像データをXt方向に並べることにより、回転ドラムDRの表面の2次元の画像情報を所得する。主制御ユニットMCUは、この取得した回転ドラムDRの基準マークおよび基準パターンの2次元の画像情報に基づいて、描画ユニットU1の描画ラインSL1の傾きを計測する。この描画ラインSL1の傾きとは、各描画ユニットUn(U1〜U6)間における相対的な傾きであってもよく、回転ドラムDRの回転中心軸AXoに対する傾き(絶対的な傾き)であってもよい。なお、同様にして、各描画ラインSL2〜SL6の傾きも計測することができることはいうまでもない。
なお、複数の描画ユニットUn(U1〜U6)は、複数の描画ユニットUn(U1〜U6)の各々が照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動(回転)することができるように、図示しない本体フレームに保持されている。この各描画ユニットUn(U1〜U6)が、照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動すると、各描画ラインSLn(SL1〜SL6)も、シート基板Pの被照射面上で照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動する。したがって、各描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、Y方向に対して傾くことになる。各描画ユニットUn(U1〜U6)が照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動した場合であっても、各描画ユニットUn(U1〜U6)内を通過するビームLBn(LB1〜LB6)と各描画ユニットUn(U1〜U6)内の光学的な部材との相対的な位置関係は変わらない。したがって、各描画ユニットUn(U1〜U6)は、シート基板Pの被照射面上で回動した描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿ってスポット光SPを走査することができる。この各描画ユニットUn(U1〜U6)の照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りの回動は、主制御ユニットMCUの制御の下、図示しないアクチュエータによって行われる。
そのため、主制御ユニットMCUは、計測した各描画ラインSLnの傾きに応じて、描画ユニットUn(U1〜U6)の各々を照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動させることで、複数の描画ラインSLn(SL1〜SL6)の平行状態を保つことができる。また、アライメント顕微鏡AM1m、AM2mを用いて検出したマークMKmの位置に基づいて、シート基板Pや露光領域Wが歪んでいる(変形している)と計測された場合は、それに応じて描画するパターンも歪ませる必要性がある。そのため、主制御ユニットMCUは、シート基板Pや露光領域Wが歪んでいる(変形している)と判断した場合は、描画ユニットUn(U1〜U6)を照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動させることで、シート基板Pや露光領域Wの歪み(変形)に応じて各描画ラインSLnをY方向に対して微少に傾斜させる。その際、本実施の形態においては、各描画ラインSLnに沿って描画されるパターンを、指定された倍率(例えば、ppmオーダー)に応じて伸縮させるような制御、或いは、各描画ラインSLnを個別に主走査方向(図5中のYt方向)に微少にシフトさせる制御が可能となっている。その場合、Y方向に関して互いに隣接する描画ラインSLn(SL1〜SL6)の各々で描画されるパターン同士が良好な精度で継ぎ合わされる条件も考慮した制御が行われる。
この描画ラインSLnの倍率は、発振周波数Fsを基準周波数(例えば、100MHz)からずらすことで、描画ラインSLnの倍率を変える、つまり、描画ラインSLnを伸縮することができる。例えば、発振周波数Fsを基準周波数より高くすることで描画ラインSLnを縮小することができ、発振周波数Fsを基準周波数より低くすることで描画ラインSLnを伸長することができる。この発振周波数Fsは、倍率補正情報CMgに応じて決定されるので、主制御ユニットMCUがレーザ光源LSA、LSBの制御回路222に倍率補正情報CMgを出力することで、描画ラインSLnの倍率を変えることができる。また、主制御ユニットMCUは、遅延時間Tdyn(Tdy1〜Tdy6)を変えることで描画ラインSLn(SL1〜SL6)を主走査方向に沿ってシフトすることができる。例えば、描画ラインSLnの中点が最大描画長の中点となるように設定された遅延時間Tdynを基準遅延時間とし、遅延時間Tdynを基準遅延時間より短くすることで、描画ラインSLnを主走査方向と反対側の方向側にシフトすることができる。また、遅延時間Tdynを基準遅延時間より長くすることで、描画ラインSLnを主走査方向側にシフトすることができる。主制御ユニットMCUは、原点センサOPnが原点信号SZnを発生してから遅延時間Tdyn経過すると、シリアルデータDLnをレーザ光源LSA(LSB)の駆動回路206aにシリアルデータDLnを出力する。これにより、ビームLBnのスポット光SPの走査が開始される。
なお、描画ユニットUnの照射中心軸Lenと、描画ユニットUnが実際に回動する軸(回動中心軸)とが完全に一致していなくても、所定の許容範囲内で両者が同軸であればよい。この所定の許容範囲は、描画ユニットUnを角度θsmだけ回動させたときの実際の描画ラインSLnの描画開始点(または描画終了点)と、照射中心軸Lenと回動中心軸とが完全に一致すると仮定したときに描画ユニットUnを所定の角度θsmだけ回動させたときの設計上の描画ラインSLnの描画開始点(または描画終了点)との差分量が、スポット光SPの主走査方向に関して、所定の距離(例えば、スポット光SPのサイズφ)以内となるように設定されている。また、描画ユニットUnに実際に入射するビームLBnの光軸が、描画ユニットUnの回動中心軸と完全に一致してなくても、前記した所定の許容範囲内で同軸であればよい。
図6は、シート基板Pに形成されたアライメント用のマークMKm、シート基板P上におけるアライメント顕微鏡AM1m、AM2mのマーク検出領域Vw1m、Vw2m、および、シート基板P上に形成された描画ラインSLnを示す図である。複数のマークMKm(MK1〜MK4)は、シート基板Pの被照射面上の露光領域Wに描画される所定のパターンとシート基板Pとを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)は、回転ドラムDRの外周面(円周面)で支持されているシート基板P上で、複数のマークMKm(MK1〜MK4)を検出する。複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)は、複数の描画ユニットUn(U1〜U6)から照射されるビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPのシート基板P上における被投射領域(描画ラインSL1〜SL6で囲まれた領域)よりもシート基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。また、複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)は、複数の描画ユニットUn(U1〜U6)から照射されるビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPのシート基板P上における被照射領域(描画ラインSL1〜SL6で囲まれた領域)よりもシート基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられている。
アライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)は、アライメント用の照明光をシート基板Pに投射する光源と、シート基板Pの表面のマークMKmを含む局所領域(観察視野領域)Vw1m(Vw11〜Vw14)、Vw2m(Vw21〜Vw24)の拡大像を得る観察光学系(対物レンズを含む)と、その拡大像をシート基板Pが搬送方向に移動している間に、シート基板Pの搬送速度Vtに応じた高速シャッタで撮像するCCD、CMOS等の撮像素子とを有する。複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)の各々が撮像した撮像信号(画像データ)は主制御ユニットMCUに送られる。主制御ユニットMCUは、この送られてきた複数の撮像信号の画像解析を行うことで、シート基板P上のマークMKm(MK1〜MK4)の位置(マーク位置情報)を検出する。なお、アライメント用の照明光は、シート基板P上の感光性機能層に対してほとんど感度を持たない波長域(非感光波長域)の光、例えば、波長500〜800nm程度の光である。アライメント用の照明光は、非感光波長域の間の1つの波長にピークを有する単色光や複数の波長にピークを有する多色光、或いは非感光波長域の間でブロードな強度分布を有するブロードバンド光のいずれであってもよい。
複数のマークMK1〜MK4は、各露光領域Wの周りに設けられている。マークMK1、MK4は、露光領域Wのシート基板Pの幅方向の両側に、シート基板Pの長尺方向に沿って一定の間隔Dhで複数形成されている。マークMK1は、シート基板Pの幅方向の−Y方向側に、マークMK4は、シート基板Pの幅方向の+Y方向側にそれぞれ形成されている。このようなマークMK1、MK4は、シート基板Pが大きなテンションを受けたり、熱プロセスを受けたりして変形していない状態では、シート基板Pの長尺方向(X方向)に関して同一位置になるように配置される。さらに、マークMK2、MK3は、マークMK1とマークMK4の間であって、露光領域Wの+X方向側と−X方向側との余白部BLSにシート基板Pの幅方向(短尺方向)に沿って形成されている。マークMK2は、シート基板Pの幅方向の−Y方向側に、マークMK3は、シート基板Pの+Y方向側に形成されている。
さらに、シート基板Pの−Y方向側の端部に配列されるマークMK1と余白部BLSのマークMK2とのY方向の間隔、余白部BLSのマークMK2とマークMK3のY方向の間隔、および、シート基板Pの+Y方向側の端部に配列されるマークMK4と余白部BLSのマークMK3とのY方向の間隔は、いずれも同じ距離に設定されている。これらのマークMKm(MK1〜MK4)は、第1層のパターン層の形成の際に一緒に形成されてもよい。例えば、第1層のパターンを露光する際に、パターンが露光される露光領域Wの周りにマーク用のパターンも一緒に露光してもよい。なお、マークMKmは、露光領域W内に形成されてもよい。例えば、露光領域W内であって、露光領域Wの輪郭に沿って形成されてもよい。また、露光領域W内に形成される電子デバイスのパターン中の特定位置のパターン部分、或いは特定形状の部分をマークMKmとして利用してもよい。
アライメント顕微鏡AM11、AM21は、図6に示すように、対物レンズによる観察視野領域(検出領域)Vw11、Vw21内に存在するマークMK1を撮像するように配置される。同様に、アライメント顕微鏡AM12〜AM14、AM22〜AM24は、対物レンズによる観察視野領域Vw12〜Vw14、Vw22〜Vw24内に存在するマークMK2〜MK4を撮像するように配置される。したがって、複数のアライメント顕微鏡AM11〜AM14、AM21〜AM24は、複数のマークMK1〜MK4の位置に対応して、シート基板Pの−Y方向側からAM11〜AM14、AM21〜AM24、の順でシート基板Pの幅方向に沿って設けられている。
複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)は、X方向に関して、露光位置(描画ラインSL1〜SL6)と観察視野領域Vw1m(Vw11〜Vw14)との距離が、露光領域WのX方向の長さよりも短くなるように設けられている。複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)も同様に、X方向に関して、露光位置(描画ラインSL1〜SL6)と観察視野領域Vw2m(Vw21〜Vw24)との距離が、露光領域WのX方向の長さよりも短くなるように設けられている。なお、Y方向に設けられるアライメント顕微鏡AM1m、AM2mの数は、シート基板Pの幅方向に形成されるマークMKmの数に応じて変更可能である。また、各観察視野領域Vw1m(Vw11〜Vw14)、Vw2m(Vw21〜Vw24)のシート基板Pの被照射面上の大きさは、マークMK1〜MK4の大きさやアライメント精度(位置計測精度)に応じて設定されるが、100〜500μm角程度の大きさである。
この複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM1〜AM4)、AM2m(AM21〜AM24)、スケール円盤SDa、SDb、および、複数のエンコーダヘッドEC0〜EN3から構成されるアライメント系を用いることで、シート基板Pの搬送状態(歪んでいるか否か)、露光領域Wの位置、描画ラインSL1〜SL6のシート基板P上における位置等を高精度に把握することができる。
次に、本実施の形態の回転ドラム(基板支持装置)DRについて詳しく説明する。回転ドラムDRの内部には、複数の描画ラインSLn(SL1〜SL6)の各々の位置に対応して、図11に示すようなセンサ部SEn(SE1〜SE6)が設けられている。このセンサ部SEn(SE1〜SE6)の各々は、描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿って走査されたビームLBnを検出するための3つの光電センサPDi(i=1、2、3)を有する。描画ラインSLnがシート基板Pの余白部BLS上に位置している状態で、描画ユニットUnによってビームLBnのスポット光SPが描画ラインSLnによって走査されると、余白部BLSを透過したビームLBnがセンサ部SEnの光電センサPDi(PD1〜PD3)に入射する。なお、シート基板Pの余白部BLSは透明領域であるとする。つまり、シート基板Pは、透明な材料で形成されており、その透明な材料のシート基板Pの露光領域Wに電子デバイスの回路および配線等にパターン層が形成される。
図7は、回転ドラムDRの外観図を示す図である。回転ドラムDRは、回転中心軸AXoから一定の半径を有する円筒体(円筒管)50と、円筒体50の外周面の全体に巻き付けられて接着された厚さ1mm以下の湾曲可能な薄板状のシートガラスCGと、円筒体50の側面に設けられ、シャフトSftを有する側壁部52とを有する。円筒体50と側壁部52は、溶接によって接合されている。シートガラス(カバー部材、カバーガラス)CGは円筒体50の外周面の直径よりも小さい直径まで湾曲可能であり、例えば、厚さが200μm以下のガラスである。このとき、シートガラスCGは、円筒体50の外周面の半径と同じ半径、若しくは、円筒体50の外周面の半径よりも若干大きい半径の円筒面状となるように、円筒体50の外周面に巻き付けられている。円筒体50の外周面のうち、シートガラスCGが巻き付けられる領域に、シートガラスCGの厚さ程度の凹部を形成することで、円筒体50に巻き付けられたシートガラスCGの回転中心軸AXoからの半径を、円筒体50の外周面の回転中心軸AXoからの半径と一致若しくは所定の許容範囲内で一致させてもよい。円筒体50に巻き付けられるシートガラスCGの周方向の長さが円筒体50の外周の長さより若干短くなるようにシートガラスCGを形成する。そのため、円筒体50にシートガラスCGを巻き付けた際に、シートガラスCGの両端部が隣接せず、所定の隙間Gpが空くが、樹脂や接着剤等でこの隙間Gpが埋められる。なお、円筒体50に巻き付けられるシートガラスCGの周方向の長さを円筒体50の外周の長さと同じとなるようにシートガラスCGを形成すれば、隙間Gpが生じることはないが、そのようにシートガラスCGを高精度に製造すると、コスト増になることもある。
円筒体50には、複数の描画ラインSLnの各々に対応したY方向の位置に、複数の開口部50n(501〜506)が設けられている。つまり、複数の開口部50n(501〜506)は、描画ラインSLn(SL1〜SL6)に対応して、回転ドラムDRの周方向に沿って2列に千鳥配列で形成されている。この開口部50nの開口領域のY方向の寸法は、描画ラインSLnを含むように設定され、X方向(周方向)の寸法は光電センサPDi(PD1〜PD3)を収容可能な大きさに設定される。この複数の開口部50n(501〜506)の各々は、円筒体50の周方向に180度離れた2ヶ所にそれぞれ形成されている。この複数の開口部50n(501〜506)の各々に、上述した3つの光電センサPDi(PD1〜PD3)を有するセンサ部SEnが設けられる。つまり、開口部501にセンサ部SE1が設けられ、同様に、開口部502〜506にセンサ部SE2〜SE6が設けられる。このように、円筒体50には複数の開口部50n(501〜506)が形成されているために、シートガラスCGによって、円筒体50の外周面を全体的に覆っている。これによって、シート基板Pは、複数の開口部50n(501〜506)の上でも、円筒面状に湾曲したシートガラスCGの表面に安定に密着支持されるので、シート基板Pが開口部50n(501〜506)に対応した領域で著しく変形することが防止される。
なお、この複数の開口部50n(501〜506)を、円筒体50の周方向の180度離れた2ヶ所に設置する場合は、露光領域Wと露光領域Wとの余白部BLSを少なくとも回転ドラムDRの半周分の距離以上にする必要がある。また、複数の開口部50n(501〜506)を、円筒体50の周方向の90度離れた4ヶ所に設置する場合は、露光領域Wと露光領域Wとの余白部BLSを少なくとも回転ドラムDRの全周の1/4分の距離以上にする必要がある。但し、露光領域Wと露光領域Wとの間の余白部BLSの全てについて、周方向(長尺方向)の長さを回転ドラムDRの外周面の全周長の1/2以上、または1/4以上に設定する必要はない。全周長の1/2以上、または1/4以上の長さに設定する余白部BLSは、例えば露光領域Wの数個〜数十個ごとにし、その数個〜数十個の露光領域Wの間の余白部BLSは全周長の1/4以下の長さとしてもよい。
シートガラスCGの表面には、後述するように、クロム等による遮光性の基準マークおよび基準パターンが形成されている。この基準マークおよび基準パターンは、複数の開口部50n(501〜506)の各々に配置されたセンサ部SEnの3つの光電センサPDi(PD1〜PD3)に対応して設けられた3つのマーク形成領域RMi(i=1、2、3)内に形成されている。描画ラインSLnに沿って走査されたビームLBnのスポット光SPがマーク形成領域RMiを横切ると、光電センサ(光電検出器)PDiは、遮光性の基準マークおよび基準パターンによって遮られずにシートガラスCGを透過したビームLBnを受光する。光電センサPD1は、シートガラスCG上のマーク形成領域RM1を透過したビームLBnを検出する。同様に、光電センサPD2、PD3は、シートガラスCG上のマーク形成領域RM2、RM3を透過したビームLBnを検出する。基準マークおよび基準パターンは、シートガラスCGの表面に遮光性のクロム層を蒸着した後、レジストを塗布してシートガラスCGを平坦に保持した状態でフォトリソグラフィ露光機によってパターンを露光してエッチングすることで形成される。そして、基準マークおよび基準パターンが形成されたシートガラスCGを、円筒体50の表面に巻き付ける際には、予め回転ドラムDRの外周面に刻印された合せマーク(図示略)と、シートガラスCGの周辺部等に形成された合せマーク(図示略)とを用いて、XY方向の位置ずれ誤差と傾き誤差とが極力小さくなるように位置合せして、シートガラスCGを円筒体50の表面に巻き付ける(貼り合わせる)。
図8は、円筒体50と側壁部52とが溶接によって接合される前の図7に示す回転ドラムDRの状態を示す図であり、図8も用いてさらに詳しく説明する。側壁部52には、センサ回路基板60(図7、図9参照)を設置するための窓部52A、52Bと、台座部54A、54Bとが設けられている。この窓部52Aの回転中心軸AXo側の内壁面と台座部54Aのセンサ回路基板(電気回路部)60の設置面とは同一平面となっており、窓部52Bの回転中心軸AXo側の内壁面と台座部54Bのセンサ回路基板60の設置面とは同一平面となっている。センサ部SEnは、このセンサ回路基板60に接続される。
窓部52Aおよび台座部54Aと、窓部52Bおよび台座部54Bとは、回転中心軸AXoを中心に対称的に設けられている。このとき、回転中心軸AXoからみた窓部52Aおよび台座部54Aの周方向の中心位置の方位と、回転中心軸AXoからみた奇数番の開口部501、503、505(または描画ラインSL1、SL3、SL5)と、偶数番の開口部502、504、506(または描画ラインSL2、SL4、SL6)と、の周方向の中心位置の方位とが、同じ方位となるように円筒体50と側壁部52とは溶接される。なお、円筒体50の内周面50Jの回転中心軸AXoからの半径と、側壁部52の外周面52Cの回転中心軸AXoからの半径とは略一致する。
円筒体50の+Y方向側の側面にも、−Y方向の側面に設けられた側壁部52と同一構成の側壁部52が設けられている。−Y方向側の側壁部52に設けられた台座部54A、54Bには、描画ラインSL1〜SL3に対応した3つの開口部501〜503の各々に設けられる3つのセンサ部SE1〜SE3と接続されるセンサ回路基板60が設置される。同様に、+Y方向側の側壁部52の台座部54A、54Bには、描画ラインSL4〜SL6に対応した3つの開口部504〜506の各々に設けられるセンサ部SE4〜SE6と接続されるセンサ回路基板60が設置される。円筒体50の+Y方向側の側面と−Y方向の側面の各々に側壁部52を取り付けて溶接する際、Y方向の両側に突出するシャフトSftが回転中心軸AXoに関して偏心しないように位置合せされる。溶接された円筒体50と側壁部52とは、図9のような状態となるが、シャフトSft(回転中心軸AXo)と円筒体50の外周面との偏心誤差、および円筒体50の外周面の真円からの誤差を許容範囲内に抑えるため、旋盤によって円筒体50の外周面を研削した後、その表面を所定の粗さ(Ra値)になるように研磨する。研磨後の円筒体50の外周面(および開口部50nの断面部)には、描画用のビームLBnの波長域で所定の反射率(例えば10%以下)となるような反射防止膜が蒸着される。
ところで、回転ドラムDRのY方向の両端に突出するシャフトSftは、ベアリングを介して露光部本体EXの支持フレームに固定されるため、シャフトSft自体の同軸性(直線性)や真円度も数μm以下の精度であることが望ましい。そこで、図8の構成を図10のような構造に変更して、円筒体50、側壁部52、および、シャフトSftを溶接にて組み立ててもよい。図10は、YZ面と平行で回転中心軸AXoを含む平面で、回転ドラムDRを破断した状態を示し、シャフトSftは回転ドラムDRのY方向の両側に所定の長さ分だけ飛び出すような長さの単一の丸棒材で構成される。シャフトSftは、予め精密な旋盤によって軸ぶれ(直線性)誤差や真円度誤差が数μm以下となるように加工されている。円筒体50のY方向の両側の各々に嵌め込まれる側壁部52の中心には、シャフトSftを貫通可能な丸孔が形成され、図10のように円筒体50、側壁部52、シャフトSftを組み合わせた後、円筒体50の内周面50JのY方向の端部と側壁部52の外周面52Cとが密接する部分mpと、側壁部52の中心の丸孔部とシャフトSftとが密接する部分mpとを溶接する。溶接後の円筒体50の外周面は、シャフトSft(単一の丸棒材)を基準として研削加工、研磨加工される。
図9は、センサ回路基板(電気回路部)60の回転ドラムDRへの設置方法を説明するための図である。円筒体50と側壁部52とを溶接によって接合し、円筒体50の外周面を研削、研磨して反射防止膜を蒸着した後(シートガラスCGが巻き付けられていない状態)、窓部52A、52Bの各々からセンサ回路基板60を挿入して、台座部54A、54B上にセンサ回路基板60を設置する。このセンサ回路基板60は、接着剤等によって台座部54A、54Bに固定される。1つのセンサ回路基板60には、3つのセンサ部SEnと電気的に接続するための3つのコネクタ部CNTn(n=1、2、3)が設けられている。−Y方向側の側壁部52の窓部52A、52Bの各々から挿入されるセンサ回路基板60には、開口部501〜503に設けられるセンサ部SE1〜SE3と接続するための3つのコネクタ部CNT1〜CNT3が設けられている。同様に、+Y方向側の側壁部52の窓部52A、52Bの各々から挿入されるセンサ回路基板60には、開口部504〜506に設けられるセンサ部SE4〜SE6と接続するための3つのコネクタ部CNT4〜CNT6が設けられている(図示略)。センサ回路基板60上には、図15を用いて後述するが、無線電力供給部108、二次電池(充電可能な電池)110、無線通信ユニット106、および、マイコンユニット104等が搭載されている。
図11は、センサ部SEn(n=1〜6)の構成を示す図である。なお、各センサ部SE1〜SE6は、互いに同一の構成を有するものとする。センサ部SEnは、3つのセンサユニットSUi(SU1〜SU3)と、3つのセンサユニットSUi(SU1〜SU3)を支持するXY平面と平行な平面状のボードBDaと、ボードBDaに接続されたYZ平面と平行な平面状のボード(回路基板)BDbとを有する。なお、このセンサ部SEnは、回転ドラムDR(円筒体50)内に取付けられて回転するため、直交座標系XYZにおいて図11に示すような状態で位置するのは、回転ドラムDRが特定の回転角度位置になったときだけであるが、そのときの配置状態で説明する。センサユニットSUi(SU1〜SU3)は、光電センサPDi(PD1〜PD3)と集光レンズLGとを有する。センサユニットSU1が有する光電センサPDiをPD1とし、同様に、センサユニットSU2、SU3が有する光電センサPDiをPD2、PD3とする。センサユニットSUiの集光レンズLGは、Z軸と平行な光軸AXgを有し、入射したビームLBnを光電センサPDiの受光面上に集光する凸レンズで構成される。この集光レンズLGによって、ビームLBnの走査軌跡である描画ラインSLn中の一定範囲(集光レンズLGの口径寸法)に渡って、ビームLBnを光電センサPDiに導くことができる。3つのセンサユニットSUi(SU1〜SU3)は、集光レンズLGの各光軸AXgが一定の距離DHsだけY方向に離れるように、等間隔にボードBDaの設置面上でY方向に沿って直線上に配置されている。具体的には、センサユニットSU1とセンサユニットSU3との間に、センサユニットSU2が位置し、センサユニットSU1の中心位置とセンサユニットSU2の中心位置との距離と、センサユニットSU2の中心位置とセンサユニットSU3の中心位置との距離はともに距離DHsである。なお、光電センサPDiは、センサユニットSUnの中心位置(集光レンズLGの光軸AXg)と光電センサPDiの中心位置とが一致するように、センサユニットSUn内に設けられている。
平面状のボードBDbは、ボードBDaの設置面と直交するようにボードBDaの−Z方向側に取り付けられている。ボードBDbの+X方向側の面には、光電センサPDiで検出されたアナログの電気信号を増幅するアンプAmpn(Amp1〜Amp3)が取り付けられている。アンプAmp1は、光電センサPD1が検出したアナログの電気信号を増幅する。同様に、アンプAmp2、Amp3は、光電センサPD2、PD3が検出したアナログの電気信号を増幅する。ボードBDbの+X方向側の面には、複数の光電センサPDi(PD1〜PD3)が検出した電気信号を出力するために、リボンワイヤLWが接続され、リボンワイヤLWの先端には、センサ回路基板60のコネクタ部CNTn(図9)と接続するためのソケットPLGnが設けられている。センサ部SE1のソケットPLG1は、コネクタ部CNT1と接続され、同様に、センサ部SE2〜SE6のソケットPLG2〜PLG6は、コネクタ部CNT2〜CNT6と接続される。以上のように、センサ部SE1〜SE3と接続されるセンサ回路基板60は、回転ドラムDR(円筒体50)内の−Y方向側の台座部54Aに取付けられ、センサ部SE4〜SE6と接続されるセンサ回路基板60は、回転ドラムDR(円筒体50)内の+Y方向側の台座部54Aに取付けられる。さらに、回転ドラムDRの外周面を180°回転させた反対側にも6つの開口部50n(501〜506)が設けられている場合は、同様に、6つのセンサ部SEnの各々と接続される2つのセンサ回路基板60が、回転ドラムDR(円筒体50)内の+Y方向側と−Y方向側の台座部54Bに取付けられる。
次に、図12を用いて、センサ部SEnの開口部50nへの取付け方法について説明する。図12では、センサ部SE1の開口部501への取付けを例に挙げて図示しているが、他のセンサ部SE2〜SE6の開口部502〜506への取付けも同様である。円筒体50の内周側の開口部501付近には、センサ部SE1のボードBDaを所定の高さ位置(径方向の位置)で支持するための支持部材50Mが設けられている。この支持部材50Mは、側壁部52を円筒体50に溶接する前に、円筒体50の内周面50Jに取り付けられている。センサ回路基板60を台座部54A(54B)に固定した後、センサ部SE1のソケットPLG1およびリボンワイヤLWを開口部501に通し、ソケットPLG1を専用のペンチ等の工具で保持した状態でコネクタ部CNT1に差し込んで接続する。そのため、リボンワイヤLWは十分なたるみが生じるような長さに設定されている。その後、センサ部SE1のボードBDaを支持部材50Mに固定する。これにより、センサ部SE1は、開口部501内に設けられていることになる。このとき、各センサユニットSUi(SU1〜SU3)の集光レンズLGの光軸AXgの延長線が、回転中心軸AXoを通るように設定される。
このようにして、各開口部50n(501〜506)に、センサ部SEn(SE1〜SE6)を取り付けた後、複数のセンサ部SEn(SE1〜SE6)の各々の各センサユニットSUi(SU1〜SU3)の集光レンズLGの光軸AXgの位置に対応する位置に、基準マークおよび基準パターンが形成されたマーク形成領域RMi(RM1〜RM3)がくるように、シートガラスCGを円筒体50の外周面に密着させて貼り付ける。シートガラスCGの表面には、例えば、国際公開第2014/034161号パンフレットに開示されているような条件で反射率/透過率を調整する多層膜を蒸着しておいてもよい。この場合は、シートガラスCGの集光レンズLGの直上部分(マーク形成領域RMi)の透過率が露光用のビームLBnの波長域で高くなるように設定されるとよい。
図13は、マーク形成領域RMiおよびセンサユニットSUiと描画ラインSLnとの位置関係の一例を示す図である。マーク形成領域RM1およびセンサユニットSU1と、マーク形成領域RM3およびセンサユニットSU3とは、Y方向に関して、スポット光SPの最大描画長(例えば31mm)の描画ラインSLnの両端部側に位置し、マーク形成領域RM2およびセンサユニットSU2は、描画ラインSLnの中央に位置する。XY平面に関して、マーク形成領域RMi(RM1〜RM3)の中心位置とセンサユニットSUi(SU1〜SU3)の中心位置とは一致する。したがって、3つのマーク形成領域RMi(RM1〜RM3)は、一定の距離DHsを離して等間隔にY方向に沿って直線上に配置されている。描画ラインSLnに沿って走査されるビームLBnのスポット光SPが複数のマーク形成領域RMi(RM1〜RM3)上を走査したときに、センサユニットSUi(SU1〜SU3)の各々から出力される電気信号(検出信号)の時間間隔および信号波形の形状を比較することで、描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの等速性、描画ラインSLnの歪み、描画ラインSLnの両端部側と中央とにおけるスポット光SPの直径の変化(球面収差)等を計測することができる。これらの計測は、主制御ユニットMCUによって行われる。つまり、センサ回路基板60は、主制御ユニットMCUと通信可能であり、センサ回路基板60は、各センサユニットSUi(SU1〜SU6)から出力された信号を主制御ユニットMCUに出力する。なお、センサ回路基板60が各センサユニットSUi(SU1〜SU6)から出力された信号を自律的に演算処理して計測値を求める構成としてもよい。
図14は、マーク形成領域RMiに形成された基準マークMPg1〜MPg3、MPx、MPyおよび基準パターンMPC1、MPC2の一例を示す図である。Y方向に離散的に並んでシートガラスCG上に形成された3つの基準マークMPg1〜MPg3の各々は、X方向(回転ドラムDRの周方向)に延びたラインパターン(遮光性)をY方向に一定のピッチで配列したラインアンドスペースパターンである。複数の基準マークMPg1〜MPg3の各々は、互いに、ラインアンドスペースの線幅とピッチとが異なるようにシートガラスCG上に形成されていてもよい。基準マークMPxは、Y方向に延びるライン状のパターン(遮光性)であり、基準マークMPyは、X方向に延びるライン状のパターン(遮光性)である。この2つの基準マークMPx、MPyは、十字状にクロスしている。このとき、基準マークMPxの中心位置と、基準マークMPyの中心位置とがクロスするように、基準マークMPx、MPyとがシートガラスCG上に形成されている。基準パターンMPC1、MPC2は、スポット光SPの主走査方向(Y方向)に対して±45度傾いた方向に延びたラインパターン(遮光性)をY方向に一定のピッチで配列したラインアンドスペースである。
3つの基準マークMPg1〜MPg3の中心位置と2つの基準マークMPx、MPyの中心位置とがX方向に関して距離DXaだけ離れ、且つ、2つの基準マークMPx、MPyの中心位置と2つの基準パターンMPC1、MPC2の中心位置とがX方向に関して距離DXbだけ離れるように、基準マークMPg1〜MPg3、MPx、MPyおよび基準パターンMCP1、MPC2がシートガラスCG上に形成されている。3つの基準マークMPg1〜MPg3は、マーク形成領域RMi(RM1〜RM3)の+X方向側に形成され、2つの基準パターンMPC1、MPC2は、マーク形成領域RMi(RM1〜RM3)の−X方向側に形成されている。そして、基準マークMPx、MPyは、X方向に関して、基準マークMPg1〜MPg3と2つの基準パターンMPC1、MPC2との間に形成されている。
回転ドラムDRは、+X方向に一定速度で回転しているので、ビームLBnのスポット光SPが走査される描画ラインSLnの回転ドラムDR上(シートガラスCG上、或いはシート基板P上)の位置は、所定の間隔で−X方向にずれていく。基準マークMPg1〜MPG3および基準パターンMPC1、MPC2は、Y方向に沿ってシートガラスCG上に形成されているので、Y方向に延びる描画ラインSLnが基準マークMPg1〜MPg3上に位置する場合は、ビームLBnのスポット光SPは、複数の基準マークMPg1〜MPg3の各々をY方向に横切るように走査される。この描画ラインSLnのX方向の位置は、カウンタ部ECNTの計数値に基づいて確認することができる。また、これらの基準マークMPg1〜MPg3、MPx、MPyおよび基準パターンMPC1、MPC2は、アライメント顕微鏡AM1m、AM2mによっても検出可能である。この場合は、これらの基準マークMPg1〜MPg3、MPx、MPyおよび基準パターンMPC1、MPC2の少なくとも1つを検出できるY方向の位置に、1以上のアライメント顕微鏡を配置する必要がある。
図15は、図9に示したセンサ回路基板(電気回路部)60の回路構成と、図11に示した光電センサPDi(PD1〜PD3)を備える3つのセンサ部SEn(SE1〜SE3)の概略的な回路構成とをまとめて示す回路ブロック図である。3つのセンサ部SEn(SE1〜SE3)の各々は、図11、図15で示すように、光電センサ(PINフォトダイオード等)PD1〜PD3の各々の受光光量に応じた起電流を電圧値に変換する増幅アンプAmp1〜Amp3と、増幅アンプAmp1〜Amp3の各々からの出力電圧を加算する加算回路SUMとを備える。センサ部SEn(SE1〜SE3)の各々の加算回路SUMからの出力信号をSA1、SA2、SA3とすると、センサ部SE1からの出力信号SA1は、ソケットPLG1とコネクタ部CNT1とを介してセンサ回路基板(電気回路部)60内の信号選択回路100に送られる。同様に、センサ部SE2からの出力信号SA2は、ソケットPLG2とコネクタ部CNT2とを介してセンサ回路基板(電気回路部)60内の信号選択回路100に送られ、センサ部SE3からの出力信号SA3は、ソケットPLG3とコネクタ部CNT3とを介してセンサ回路基板(電気回路部)60内の信号選択回路100に送られる。
1つのセンサ部SEn内の3つの光電センサPD1〜PD3は、1つの描画ラインSLn(例えば、SL1)上の異なる位置に配置されているので、スポット光SPがマーク形成領域RMiを走査したときに増幅アンプAmp1〜Amp3の各々から発生する信号波形は、時間的にずれたものとなる。したがって、各加算回路SUMから出力される信号SA1〜SA3の各々は、スポット光SPの1回の走査中に、3ヶ所のマーク形成領域RMiの各々の基準マークや基準パターンに対応した特徴的な波形を3ヶ所で生成する。信号選択回路100は、PIC(Peripheral Interface Controller)等のCPUを含む小型のマイコンユニット104から送出される制御信号104Bに応答して、信号SA1〜SA3のいずれか1つを信号SAmとして出力する。信号SAmは、マイコンユニット104から送出されるサンプリングパルス信号DTCに応答して信号SAmの電圧値をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換回路(ADC)102に印加される。変換されたデジタル信号102Aは、マイコンユニット104のメモリ部に逐次記憶される。
マイコンユニット(制御部)104は、サンプリングパルス信号DTCを生成するサンプリング信号生成部104Aを含み、信号選択回路100の信号選択を制御する制御信号104B、アナログ/デジタル変換回路(ADC)102の動作を制御する制御信号104C、および、センサ部SEnの増幅アンプAmp1〜Amp3や加算回路SUM等のゲインを制御するための制御信号104D等を出力する。光電センサPD1〜PD3の各々の感度にバラツキがある場合、マイコンユニット104からの制御信号104Dは、ソケットPLGnとコネクタ部CNTnを介して、増幅アンプAmp1〜Amp3の各々の増幅率(ゲイン)を微調整したり、或いは加算回路SUMの各入力信号の電圧値を微調整する指令値としてセンサ部SEnに印加される。
無線通信ユニット106は、主制御ユニットMCUと無線通信して、センサ回路基板60による計測開始や終了のコマンド、図4に示したレーザ光源LSA(LSB)からのビーム発生用のクロック信号LTC等を主制御ユニットMCUから受信するとともに、マイコンユニット104のメモリ部に一時的に記憶された信号SAmの波形のデジタル信号(デジタルデータ)102Aを主制御ユニットMCUに送信する。
無線電力供給部108は、回転ドラムDRの窓部52A、52Bの近くに配置された受電コイルを含み、外部の交流磁界発生部からの磁束を受けて磁気誘導によって発生する電流を整流して、各部に供給する直流の電源電圧Vccを、二次電池(リチウムイオン電池、ニッケル/水素電池等)110に充電する。二次電池110は、無線電力供給部108から供給される電力を入力して二次電池セルを充電する充電回路を含み、二次電池110と無線電力供給部108は、マイコンユニット104との間でステータスやコマンド等の情報をやり取りする。二次電池110からの電源電圧Vccは、図12に示したソケットPLGnとコネクタ部CNTnを介してセンサ部SE1〜SE3の各々に給電されるとともに、センサ回路基板60内の各回路部にも給電される。
光電センサPDi(PD1〜PD3)は、図4に示したレーザ光源LSA(LSB)からのビームLBから作られる強度変調されたビーム(描画ビーム)LBn(LB1〜LB6)がマーク形成領域RM1〜3を透過したときに受光される光量を検出している。したがって、光電センサPDiがPINフォトダイオード等のような高速応答タイプの場合、光電センサPDi(PD1〜PD3)からの信号、すなわち、信号選択回路100からの信号SAm(信号SA1〜SA3のいずれか1つ)も、レーザ光源LSA(LSB)からのビームLBのパルス発振(発振周波数Fs)のクロック信号LTCと同じ周波数でパルス状に変化する波形となる。本実施の形態では、無線通信によって、レーザ光源LSA(LSB)からのクロック信号LTCを受信して、ADC102のサンプリングタイミングを決定しているが、無線通信の場合は多かれ少なかれ、信号遅延が発生し得る。クロック信号LTCの発振周波数Fsは、数100MHz程度に設定することが可能であり、その場合、クロック信号の1クロックの周期は、10n秒以下となり、無線通信時の信号遅延が僅かに数十n秒生じただけで、ビームLBnのパルス光の数パルス分のずれ(サンプリングタイミングのずれ)が生じる。例えば、クロック信号LTCの発振周波数Fsを400MHz(周期2.5n秒)、スポット光SPの直径を3μmとし、ビームLBnがシート基板上で主走査方向に1.5μmだけ走査される度にビームLBnがパルス発光するものとした場合、無線通信の信号遅延が20n秒のときは、主走査方向に12μm(=1.5×20/2.5)の位置誤差を持って、信号SAmの波形がサンプリングされることになる。
図16は、そのような無線通信時の信号遅延を考慮したサンプリングの様子を模式的に説明するタイムチャート図である。図16では、レーザ光源LSA(LSB)からのビームLBを受けて、描画ユニットU1から投射されるビームLB1の発光タイミングと、信号SAmの発生タイミング、ADC102によるサンプリングタイミングの関係を示す。図15に示したように、無線通信ユニット106からマイコンユニット104に入力するクロック信号LTCは、一定時間の遅延を受けたクロック信号LTC’になるものとする。図16のように、クロック信号LTCの各クロックパルスに応答して、ビームLB1もパルス発光し、対応する光電センサPDiで検出され、信号選択回路100から出力される光量に応じた信号SAmも、ビームLB1のパルス発光に応答したパルス状の波形となる。図16において、クロック信号LTCのクロックパルス7〜13の間では、種光S1に変わって種光S2がファイバー光増幅部216に入射したものとする。遅延したクロック信号LTC’は一定の時間ΔTckだけ遅れるため、クロック信号LTC’に応答してADC102のサンプリング動作を行うと、スポット光SPの1パルスの走査位置と、それに対応した信号SAmのパルス状波形の位置とがずれたものとなる。さらに、時間ΔTckによっては、ADC102のサンプリングのタイミングが信号SAmのパルス状の波形のピーク位置付近から大きくずれて、ボトム付近になる場合もある。
そこで、図15中のサンプリング信号生成部104Aによって、クロック信号LTC’に適当な遅延を与えたサンプリングパルス信号DTC(元のクロック信号LTCからは時間ΔTdだけ遅延)を生成し、ADC102での信号SAmのサンプリングタイミングが信号波形のピーク付近となるように設定する。すなわち、サンプリング信号生成部104Aは、クロック信号LTC’を、時間(ΔTd−ΔTck)だけ遅延させたサンプリングパルス信号DTCを生成する。なお、ADC102のサンプリングは、サンプリングパルス信号DTCの立下りタイミングで行われるものとする。さらに、マイコンユニット104(或いは主制御ユニットMCU)は、時間ΔTdに対応したクロック信号LTCのクロックパルス数を記憶しており、その記憶したクロックパルス数に基づいて、ADC102によってサンプリングされた信号SAmの1つのパルス状波形の位置と、スポット光SPの1パルスの投射位置との対応関係を正しい関係に再現することができる。その再現のためには、記憶したクロックパルス数に応じた主走査方向の位置誤差量ΔOfy(μm)をオフセット値として管理するだけでよい。したがって、センサユニットSUnからの信号に基づいて、基準マークMPg1〜MPg3、MPx、MPyや基準パターンMPC1、MPC2の主走査方向(Y方向)の位置を計測する際は、オフセット値ΔOfyだけずれた位置が真の位置であるように補正すればよい。
なお、図16では、クロック信号LTCのクロックパルス7〜13の間では、露光用のビームLBnの回転ドラムDRへの照射が行われないものとしたが、少なくともビームLBnがマーク形成領域RM1〜3を走査する期間は、レーザ光源LSA(LSB)が種光S1をファイバー光増幅部216に入射し続けるように制御される。また、マーク形成領域RM1〜3内の基準マークMPg1〜MPg3、MPx、MPy、基準パターンMPC1、MPC2の遮光部分上をスポット光SPが走査している間は、図16のようにビームLB1(LBn)はパルス状に投射されるものの、信号選択回路100から出力される光量に応じた信号SAmのパルス状の波形のピークは略零になる。
図17は、ハの字形(シェブロン形)の斜め45°の基準パターンMPC1、MPC2をスポット光SPで走査して計測された副走査方向の送り量ΔXD(エンコーダヘッドEC1a、EC2a等によってサブミクロンオーダーで計測される)と、主走査方向の走査位置(ΔYDa、ΔYDb)との関係を示す図である。信号SAm1は、スポット光SPが基準パターンMPC1、MPC2の上方部(+X方向側)を走査したときに得られる波形であり、信号SAm2は、スポット光SPが基準パターンMPC1、MPC2の下方部(−X方向側)を走査したときに得られる波形である。なお、図17中の信号SAm1、SAm2は、パルス状ではなく連続した波形として示すが、これは、先の図16で示した信号SAmのパルス状の各波形のピーク値をエンベロープとするような波形に変換するピークホールド回路等で成形したものである。描画ラインSLnのX方向の位置が基準パターンMPC1、MPC2上で相対的にΔXDだけ移動した場合、信号SAm1と信号SAm2とで得られる波形の位置的(或いは時間的)な差ΔYDa、ΔYDbは、何ら誤差が無い場合は、ΔYDa=ΔYDb=ΔXDとなる。ΔYDa≒ΔYDbであって、ΔXDがΔYDa、ΔYDbと大きく異なっていた場合は、回転ドラムDRの回転速度の誤差や速度ムラ等が発生している可能性がある。ΔYDaとΔYDbとに有意差、例えば描画データ上の1画素サイズ(3×3μm)以上の差がある場合は、描画ラインSLnがY軸と平行な状態から傾いている可能性がある。
以上の実施の形態では、図12のように、光電センサPDiからの光電信号を処理する回路の全体(図15の回路ブロック全体)を回転ドラムDR内に設置するようにしたが、光電センサPDiの微弱な光電流を増幅する増幅アンプAmpn(Amp1〜Amp3)のみを回転ドラムDR内に配置し、増幅アンプAmpnで増幅された信号は、後の変形例(図22)で説明する有線方式で回転ドラムDR外に配置された処理回路に伝送するようにしてもよい。
〔変形例〕
上記実施の形態は、以下のような変形も可能である。
(変形例1)図18は、変形例1における光電センサPDiの配置例を示す図である。図18は、回転ドラムDRの回転中心軸AXoと3つの光電センサPDi(PD1〜PD3)とを通る平面での回転ドラムDRの一部断面図である。このとき、3つの光電センサPDi(PD1〜PD3)は、描画ラインSL1上に位置するものとする。なお、上記実施の形態で説明した構成と同様の構成については同一の符号を付す。上記実施の形態では、1つの描画ラインSLnに対応して1つの開口部50nを設けたが、本変形例1では、1つの描画ラインSLnに対して、3つの窪み部(凹部)50Rを設け、この3つの窪み部50Rの各々に1つの光電センサPDiを配置している。この3つの光電センサPDi(PD1〜PD3)の配置位置は、上記実施の形態と同様に、Y方向に関して、1つの描画ラインSLnの両端部側の位置と、描画ラインSLnの中央の位置とである。また、本実施の形態では、光電センサPDiに入射するビームLBnを、光電センサPDiの受光面上で集光する集光レンズLGは設けられていない。そのため、より広範囲にビームLBnを受光することができるように、本変形例1の光電センサPDi(PD1〜PD3)は、上記実施の形態の光電センサPDi(PD1〜PD3)に比べ、受光面積を広くしている。なお、窪み部50Rを例に挙げて説明したが、窪み部50Rに代えて開口部を採用してもよい。また、窪み部50Rに上記実施の形態で説明した集光レンズLGを配置してもよい。
(変形例2)図19は、変形例2におけるシートガラスCG´を示す図である。光電センサPDiの配置例は、図18に示したものと同一であるが、シートガラスCG´のみが、図18に示したものと異なる。図19に示すように、シートガラスCG´は、円筒体50の外周面の全体に巻き付けられるものではなく、窪み部50Rに設けられている。このシートガラスCG´のマーク形成領域RM1(RMi)には、上記実施の形態で説明した基準マークMPg1〜MPg3、MPx、MPyおよび基準パターンMPC1、MPC2が形成されている。シートガラスCG´の表面と、円筒体50の外周面との段差が所定値以下(略フラッシュサーフェス状態)となるように、シートガラスCG´は円筒体50に設けられている。そのため、窪み部50Rには、シートガラスCG´を配置するための第1凹部50Raと、第1凹部50Raより内側(回転中心軸AXo側)に設けられ、第1凹部50Raより開口領域が狭い第2凹部50Rbとを有する。この第2凹部50Rbに光電センサPD1(PDi)が配置される。なお、本変形例2は、変形例1の変形例として説明したが、上記実施の形態で説明した開口部50nにこのシートガラスCG´を配置してもよい。なお、窪み部50Rを例に挙げて説明したが、窪み部50Rに代えて開口部を採用してもよい。また、窪み部50Rに上記実施の形態で説明した集光レンズLGを配置してもよい。
なお、本変形例のような構成の回転ドラムDRを、例えば、国際公開第2013/094286号パンフレットに開示されているように、円筒マスクに形成されたマスクパターンを等倍の投影光学系(露光ヘッド、或いはパターン形成ヘッドに相当する)を介してシート基板P上に投影露光する装置に組み込み、シート基板Pを回転ドラムDRで支持する場合、一般に投影光学系の焦点深度(DOF:Depth of Focus)は基板Pの厚さ(30〜100μm)と同程度、若しくは基板Pの厚さ以下となることがある。その為、シートガラスCG´の表面と円筒体50の外周面との段差量は、投影光学系のDOFよりも十分に小さくしておく必要がある。そこで、基準マークMPg1〜MPg3、MPx、MPyや基準パターンMPC1、MPC2が形成されていないシートガラスCG´を窪み部50Rに嵌め込んで固定した後、シートガラスCG´の表面と円筒体50の外周面とを共に光学研磨(ラッピング)して、数μm以下の段差量に仕上げた後、シートガラスCG´の表面に、高解像の精密なレーザ加工機によって基準マークMPg1〜MPg3、MPx、MPyや基準パターンMPC1、MPC2を微細な凹部として刻設しても良い。
(変形例3)図20は、変形例3における光電センサPD´の配置例を示す図である。図20は、回転ドラムDRの回転中心軸AXoと3つの開口部50Hとを通る平面での回転ドラムDRの一部断面図である。このとき、3つの開口部50Hは、描画ラインSL1上に位置するものとする。なお、上記実施の形態で説明した構成と同様の構成については同一の符号を付す。上記実施の形態では、1つの描画ラインSLnに対応して1つの開口部50nを設けたが、本変形例3では、1つの描画ラインSLnに対して、3つの開口部50Hを設ける。そして、この3つの開口部50Hの各々に3つの光ファイバー束(バンドル)FB1〜FB3の入射端Pb1を配置し、光ファイバー束FB1〜FB3の射出端Pb2から射出されたビームLBnを1つの光電センサPD´で受光する。この3つの光ファイバー束FB1〜FB3の各入射端Pb1は複数本の光ファイバーを密に束ねて所定の断面積(例えばマーク形成領域RMiの大きさをカバーする面積)を持つように設定され、各入射端Pb1の配置位置は、Y方向に関して、1つの描画ラインSLnの両端部側の位置と、描画ラインSLnの中央の位置とに設定される。つまり、上記実施の形態で説明した3つの光電センサPDi(PD1〜PD3)が配置されたY方向の位置に、3つの光ファイバー束FB1〜FB3の入射端Pb1を配置している。ビームLBnのスポット光SPは、描画ラインSLnに沿って主走査方向(Y方向)に走査されているので、複数の光ファイバー束FB1〜FB3の各々にビームLBnが入射する入射タイミングはずれる。したがって、3つの光ファイバー束FB1〜FB3の各々によって伝送されたビームLBnを1つの光電センサPD´で受光することができる。なお、開口部50Hに上記実施の形態で説明した集光レンズLGを配置してもよい。また、シートガラスCGに代えて、開口部50Hに、上記変形例2で説明したシートガラスCG´を設けてもよい。また、この3つの光ファイバー束FB1〜FB3の入射端Pb1が設けられる3つの開口部50Hを、上記実施の形態で説明した1つの開口部50nにしてもよい。つまり、3つの光ファイバー束FB1〜FB3の入射端Pb1を開口部50nに設けてもよい。
(変形例4)変形例4は、光電センサPDiに代えて、ビームプロファイラ90A、90Bを円筒体50内に設けるというものである。図21は、変形例4における円筒体50内にビームプロファイラ90A、90Bを設けた回転ドラムDRの構成を示す図である。なお、図21では、側壁部52およびシャフトSftの図示を省略している。ビームプロファイラとは、レーザビームのスポット光の形状や直径、スポット光の強度分布等のビーム品質を計測するもので、例えば、米国のDataRay社のカメラタイプのビームプロファイラまたはスリットスキャン方式のビームプロファイラを採用することができる。ビームプロファイラを用いると、スポット光SPに収斂するビームLBnの球面収差を計測することもできる。
円筒体50には、ビームLBn(LB1〜LB6)を円筒体50内に入射させるための複数の開口部50Pn(50P1〜50P6)が形成されている。この開口部50Pn(50P1〜50P6)は、Y方向に関して、描画ラインSLn(SL1〜SL6)の−Y方向側の端部側に形成されている。本変形例4では、この開口部50Pn(50P1〜50P6)の開口径φを数mm程度、望ましくは2mm程度としているので、シートガラスCGを円筒体50に巻き付けずに、円筒体50の外周面で直接基板Pを支持しても開口部50Pnの部分で基板Pを変形させる可能性は少ない。しかしながら、基板Pの厚みが50μm以下に薄くなってくると、基板Pが変形する怖れもあるので、シートガラスCGを巻き付けてもよい。
開口部50P1を透過したビームLB1は、XZ平面と平行な平面内で、照射中心軸Le1、Le3、Le5(図1参照)と平行する光軸上に設けられたレンズ80Aをストレートに透過した後、反射ミラーM81Aに入射する。反射ミラーM81Aで+Y方向側に反射されたビームLB1は、ビームスプリッタ82A、82Bをストレートに透過した後、反射ミラーM81Bに入射する。反射ミラーM81Bは、入射したビームLB1をビームプロファイラ90Aに向けて−Z方向側に反射する。開口部50P3を透過したビームLB3は、XZ平面と平行な平面内で、照射中心軸Le1、Le3、Le5と平行する光軸上に設けられたレンズ80Bをストレートに透過した後、ビームスプリッタ82Aに入射する。ビームスプリッタ82Aで+Y方向に反射されたビームLB3は、ビームスプリッタ82Bをストレートに透過して反射ミラーM81Bに入射する。反射ミラーM81Bは、入射したビームLB3をビームプロファイラ90Aに向けて−Z方向側に反射する。開口部50P5を透過したビームLB5は、XZ平面と平行な平面内で、照射中心軸Le1、Le3、Le5と平行する光軸上に設けられたレンズ80Cをストレートに透過した後、ビームスプリッタ82Bに入射する。ビームスプリッタ82Bで+Y方向に反射されたビームLB5は、反射ミラーM81Bによって−Z方向側に反射されてビームプロファイラ90Aに導かれる。なお、ビームLB1、LB3は、2つのビームスプリッタ82A、82Bを介してビームプロファイラ90Aに入射するので、その光量は1/4(=1/2×1/2)に減衰される。また、ビームLB5は、1つのビームスプリッタ82Bを介してビームプロファイラ90Aに入射するので、その光量は1/2に減衰される。
偶数番の描画ユニットU2、U4、U6から射出して開口部50P2、50P4、50P 6に入射したビームLB2、LB4、LB6も同様にしてビームプロファイラ90Bに導かれる。簡単に説明すると、開口部50P6に入射したビームLB6は、ビームLB1と同様な経路を通ってビームプロファイラ90Bに入射し、開口部50P4に入射したビームLB4は、ビームLB3と同様な経路を通ってビームプロファイラ90Bに入射する。そして、開口部50P2に入射したビームLB2は、ビームLB5と同様な経路を通ってビームプロファイラ90Bに入射する。したがって、ビームプロファイラ90Bに入射するビームLB6、LB4は、2つのビームスプリッタによってその光量が1/4に減衰され、ビームプロファイラ90Bに入射するビームLB2は、1つのビームスプリッタによってその光量が1/2に減衰される。なお、ビームプロファイラ90Aが回転ドラムDRの+Y方向側に設けられているのに対して、ビームプロファイラ90Bは、回転ドラムDRの−Y方向側に設けられている。そのため、ビームLB2、LB4、LB6は、−Y方向側に進んでビームプロファイラ90Bに導かれる。
このビームプロファイラ90A、90Bとして、例えば、米国のDataRay社のカメラタイプのビームプロファイラを採用した場合は、計測可能なビームスポットの径の最小値が数十μmと大きいため、レンズ80A〜80Cとして、ビーム径を拡大するレンズ系を採用することができる。このビームプロファイラ90A、90Bは、ビームLBnのスポット光SPの形状、強度(強度変化も含む)、または、スポット光SPの強度分布(3次元)を計測する。
また、本変形例4においては、回転ドラムDRを回転中心軸AXoに沿ってY方向にシフトすることができ、そのためのリニアモータ等の駆動部(図示略)が露光部本体EXに設けられている。主制御ユニットMCUは、基板Pが回転ドラムDRに巻き付けられていない状態で、その駆動部を制御することで、回転ドラムDRをY方向にシフトする。したがって、ビームプロファイラ90A、90Bは各描画ラインSLn(SL1〜SL6)上の任意の位置で、ビームLBnのスポット光SPを計測することができる。
ビームプロファイラ90A、90BによってビームLBnを計測する場合は、主制御ユニットMCUは、開口部50Pn(50P1〜50P6)が描画ラインSLn(SL1〜SL6)上の位置するような回転ドラムDRの回転角度位置で、回転ドラムDRを停止させる。このとき、主制御ユニットMCUは、カウンタ部ECNTの計数値に基づいて回転ドラムDRを停止させる回転角度位置を決定し、その位置が維持されるようにサーボ制御する。また、主制御ユニットMCUは、各描画ユニットUn(U1〜U6)からのビームLB1が開口部50Pn(50P1〜50P6)に向かうように、各描画ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転角度を所定の角度位置で静止させる。このとき、主制御ユニットMCUは、各描画ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMを駆動させる回転駆動源に設けられたエンコーダから出力信号に基づいて、ポリゴンミラーPMを停止させる。
(変形例5)図22は、変形例5における電力供給および信号伝達(通信)の構成を示す図である。図22は、回転ドラムDRの回転中心軸AXoを通り、YZ平面と平行は平面における、回転ドラムDRの断面図である。回転ドラムDRの−Y方向側のシャフトSftが挿入された環状の絶縁円管ICPには、その外周面に複数の環状の電極Eが形成されている。この複数の環状の電極Eは、回転ドラムDRの回転中心軸AXo方向に沿って所定の間隔を空けて形成されている。この複数の環状の電極Eの各々に個別に接触する複数の導電性のブラシBSは、ブラシ支持部材BSSによって支持されており、このブラシ支持部材BSSは、露光部本体EXの図示しない支持装置によって固定されている。この複数のブラシBSの各々は、信号線SWを介して主制御ユニットMCUに接続されている。また、複数の環状の電極Eに接続された複数のワイヤPSWは、スケール円盤SDaをシャフトSftに固定するための支持リング体53に設けられた開口53Aと側壁部52に設けられた開口52Dを通って−Y方向側に設けられたセンサ回路基板60と接続されている。複数の電極Eと複数の電極Eに接触する複数の導電性のブラシBSとによって、主制御ユニットMCUからセンサ回路基板60への電力供給が可能になるとともに、主制御ユニットMCUとセンサ回路基板60との通信が可能となる。なお、図示はしていないが、回転ドラムDRの+Y方向のシャフトSftにも、同様に、外周面に環状の電極Eが複数形成された絶縁円管ICPおよび複数のブラシBSが設けられており、主制御ユニットMCUと+Y方向側に設けられたセンサ回路基板60とが複数の信号線SWおよび複数のワイヤPSWを介して接続されている。なお、シャフトSftが、シャフトSftの中心部に回転中心軸AXoに沿って空洞CAが形成された中空部材となっている場合は、複数のワイヤPSWは、そのシャフトSftの空洞CAを通って複数の電極Eに接続されてもよい。
図22のように、センサ回路基板60が、露光部本体EX側の主制御ユニットMCUと複数の信号線SWを介して有線接続される場合は、図15に示したセンサ回路基板60に搭載される無線通信ユニット106、無線電力供給部108等は省略してもよい。また、信号線SWを介した有線接続の場合でも、先の図16で説明したような遅延時間ΔTckが生じる可能性もあるため、図15に示したサンプリング信号生成部104Aによって、信号線SWを介して有線で送られてくるクロック信号LTC(LTC’)に適当な遅延を与えたサンプリングパルス信号DTCを生成するとよい。
(変形例6)図23は、変形例6における電力供給および信号伝達(通信)の構成を示す図である。回転ドラムDRのシャフトSftは、回転中心軸AXo方向に沿って空洞CA1が形成された中空部材となっており、その空洞CA1内に、第1のファイバーバンドルFIB1を通している。この第1のファイバーバンドルFIB1は、入射端および射出端が1mm程度の直径となるように、複数本の光ファイバーが束ねられたものである。第1のファイバーバンドルFIB1の入射端には、光カップリング部LCPを構成する第1部材Lcp1が設けられ、この第1部材Lcp1は、シャフトSftの先端側に設けられた支持部材80によって固定されている。また、主制御ユニットMCUの制御によって光を発光する図示しない発光部からの光を伝送する第2のファイバーバンドルFIB2の射出端には、光カップリング部LCPを構成する第2部材Lcp2が設けられている。この第2のファイバーバンドルFIB2も、第1のファイバーバンドルFIB1と同様に、複数本の光ファイバーが束ねられたものである。この第2部材Lcp2は、露光部本体EXの図示しない支持装置によって支持されたカップリング支持部材CSMによって固定されている。カップリング支持部材CSMは、X方向およびZ方向に微小に移動できるように、バネ板等の弾性部材を介して露光部本体EXの前記支持装置に支持されている。カップリング支持部材CSMは、ベアリングBRを介して支持部材80と同軸上になるように支持される。これにより、カップリング支持部材CSMは、支持部材80および第1部材Lcp1と相対回転可能に支持される。また、光カップリング部LCPを構成する第1部材Lcp1および第2部材Lcp2は、ともに回転ドラムDRの回転中心軸AXo上に設けられており、互いにY方向に一定の間隔(例えば、数mm以下)を維持するようにベアリングBRによって拘束されている。第1のファイバーバンドルFIB1は、側壁部52を貫通して回転ドラムDRの内側まで延びており、第1のファイバーバンドルFIB1の射出端は、回転ドラムDR内に設けられた送受光部LRDまで延びている。
主制御ユニットMCUの制御によって露光部本体EX側に設けられた発光部は、異なる波長の光を少なくとも2つ発光する。この発光部は、互いに波長が異なる電力供給用の光と、信号伝達用の光(パルス光)とを発光する。電力供給用の光は、送受光部LRD内に設けた太陽電池が良好に発電することができる波長域に設定される。信号伝達用の光(光通信のための変調光)と電力供給用の光は、第2のファイバーバンドルFIB2、光カップリング部LCP、および、第1のファイバーバンドルFIB1を通って、送受光部LRDに入射する。送受光部LRDは、図示しないが、第1のファイバーバンドルFIB1の射出端から射出した光を、電力供給用の波長域の光と光通信用の波長域の光とに分離するダイクロイックミラーと、電力供給用の波長域の光を受光する太陽電池と、光通信用の波長域の光を光電変換するフォトセンサーと、フォトセンサーによって光電変換された信号をデジタルデータに変換するデジタル変換器とを少なくとも有する。この太陽電池で発電された電力が、図15に示したセンサ回路基板60の二次電池110に供給されるとともに、デジタル変換器で変換されたデジタルデータは、センサ回路基板60のマイコンユニット104に送られる。また、送受光部LRDは、センサ回路基板60のマイコンユニット104の制御にしたがって、マイコンユニット104で生成される各種のデータを光通信用の波長域の変調光に変換するための発光部を備える。このような構成を有することによって、主制御ユニットMCUからのセンサ回路基板60への電力供給が可能になるとともに、主制御ユニットMCUとセンサ回路基板60との間で双方向の光通信が行われる。
(変形例7)図24は、先の図6を用いて説明した基板P上の露光領域Wと余白部BLSの配置関係の変形例を説明する図であり、ここでは、基板PをXY面と平行に平面に広げた状態で示す。回転ドラムDRの外周面(シートガラスCGの外周面、または円筒体50の外周面)の回転中心軸AXoからの半径をRsとすると、先の図8で説明したように、円筒体50の外周面に、周方向に180°の間隔で複数の開口部50nを形成する場合、基板P上に形成される余白部BLSの長尺方向(X方向)の距離LSgは、180°離れた開口部50nが形成される領域MEと領域ME’の周方向(長尺方向)の距離Ldr(=π・Rs)と、各領域ME、ME’の周方向(長尺方向)の距離Adtとの和以上に設定される。
このように、距離LSgをLSg≧(Ldr+Adt)の関係にした余白部BLSを、シート基板Pの長尺方向の任意の部分に形成すると、基板Pを回転ドラムDRに巻き付けて連続搬送している間、余白部BLSは回転ドラムDR上の開口部50nが形成される領域MEと領域ME’のうちの少なくとも一方の上に必ず位置することができる。したがって、シート基板P上の搬送方向に関して、余白部BLSが始まる長尺方向の位置をXsp、余白部BLSが終わる長尺方向の位置をXepとすると、少なくとも位置Xsp〜位置Xepの間では、シート基板Pが透明な状態を保つように、各種の処理工程を制御するのがよい。例えば、基板Pの母材を透明な樹脂フィルム(ポリエチレン系、ポリエステル系、ポリイミド系等)や極薄ガラスシートとし、最初の処理工程として、シート基板Pの母材の表面全体に銅やアルミ等の不透明な金属層を成膜する場合、シート基板Pの適当な処理長(例えば20m程度)ごとに、距離LSgの間だけ金属層の成膜を中断するようにすればよい。
半径Rsが15cm程度の場合、6つの開口部50n(501〜506)を含む領域ME、または領域ME’の距離Adtは、奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5と偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6との周方向の間隔(または図2中に示した奇数番の照射中心軸Lenと偶数番の照射中心軸Lenとが成す開き角度η)に応じて大よそ定まる。開き角度ηがYZ面と平行な回転中心軸AXoを含む平面に対して±10°(η=20°)程度の場合、開口部50nの1つの周方向の長さLxcを2cmとすると、距離Adtは、2・π・Rs×η/360°+Lxcより、約7.2cmとなる。したがって、余白部BLSの距離LSgは、Ldr=π・RS≒47.1cmより、少なくとも55cm(正確には54.3cm以上)取ればよいことになる。
(変形例8)図25は、変形例8による透過型の円筒マスクDMを使った露光装置の一部分の構成を示す図である。円筒体50には、シートガラスCGの表面に形成されたマーク形成領域RMnを含むような口径で開口部50Sが形成され、開口部50Sには、対物レンズ(結像用レンズ)OBLが組み込まれる。対物レンズOBLは、シートガラスCGのマーク形成領域RMnの基準マークや基準パターンの拡大像を撮像素子ISUの撮像面に結像するように設定されている。円筒マスクDMの回転中心軸と回転ドラムDRの回転中心軸AXoとは互いに平行に設置されるとともに、円筒マスクDMの外周面に形成されるパターン面と回転ドラムDRに支持されたシート基板Pの表面とが一定のギャップ(例えば、数十μm)を維持するように構成される。円筒マスクDMの内部には、Y方向にスリット状に延びた照明光IL(露光用ビーム)を円筒マスクDMの外側の回転ドラムDRに向けて投射する照明系IMUが設けられており、照明光ILを照射しつつ、円筒マスクDMと回転ドラムDRとを所定の速度で回転させることによって、円筒マスクDMの外周面のパターンが、シート基板Pの表面の感光層に連続して露光される。
シート基板Pの余白部BLSが開口部50S(マーク形成領域RMi)と重なるような状態のときに、シートガラスCGのマーク形成領域RMnが照明光ILによって照射領域内に位置決めされるように、回転ドラムDRの回転を一時停止する。円筒マスクDMの外周面の一部には、Y方向の位置がマーク形成領域RMnと同じ位置になるように配置されたマスクマークMMnが形成されている。そこで、静止しているシートガラスCGのマーク形成領域RMnとマスクマークMMnとが撮像素子ISUによって同時に検出されるまで円筒マスクDMを回転させて停止する。そして、図2に示したような主制御ユニットMCUによって、撮像素子ISUからの画像信号を解析してマーク形成領域RMn中の基準マークとマスクマークMMnとの相対的な位置ずれ量を計測するとともに、その時の回転ドラムDRの回転角度位置をカウンタ部ECNTから読み取って記憶する。円筒マスクDMについても、同様のエンコーダ計測システムが設けられており、停止している円筒マスクDMの回転角度位置をカウンタ部から読み取って記憶する。
以上のようにして計測された相対的な位置ずれ量、および、記憶された回転ドラムDRと円筒マスクDMの各々の回転角度位置に基づいて、円筒マスクDMの回転位置と回転ドラムDRの回転位置との周方向の相対的な位置ずれ誤差を確認し、その位置ずれ誤差が許容範囲以上である場合は、その位置ずれ誤差が許容範囲になるように円筒マスクDMの回転角度位置を微調整(キャリブレーション)した後、回転ドラムDRの回転と円筒マスクDMの回転とを同期制御すればよい。以上のように、回転する円筒マスクDMと回転ドラムDRとを一定のギャップで対向させて走査露光を行うプロキシミティ方式のパターン露光装置であっても、回転ドラムDRに露光用の照明光ILを受光可能な光電センサとしての撮像素子ISUを設けたので、円筒マスクDMと回転ドラムDRの回転方向の相対的な位置ずれ誤差が累積して大きくなる前に、簡単にキャリブレーションを行うことができる。
(変形例9)露光部本体EXは、ラスタースキャン方式で露光したが、国際公開第2006/080285号パンフレットに開示されているようにデジタルマイクロミラーデバイス(DMD:Digital Micromirror Device)を用いた露光方式であってもよい。また、国際公開第2013/108560号パンフレットに開示されているように、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)デバイスを用いて所定のパターンを露光する露光方式であってもよい。さらに、露光部本体EXは、マスクを用いた露光方式であってもよい。マスクを用いる露光方式としては、例えば、国際公開第2013/146184号パンフレットに開示されているように、円筒状の透過型または反射型の円筒マスク(回転マスク)の外周面に形成されたマスクパターンを、投影光学系を介して基板Pに投影する投影式の露光方式であってもよい。また、図25に示した変形例のように、透過型の円筒マスクの外周面とシート基板Pとを一定のギャップで近接させた近接(プロキシミティ)露光方式であってもよい。さらに、反射型の円筒面状の回転マスクや部分球面状の回転マスクを用いる場合は、例えば、国際公開第2014/010274号パンフレットや国際公開第2013/133321号パンフレットに開示された投影式の露光方式であってもよい。なお、マスクは以上のような回転マスクに限られず、石英の平行平板状の基板上に遮光層や反射層でパターンを形成した平面マスクであってもよい。また、回転ドラムDRによって湾曲に支持されたシート基板Pに対して露光を行ったが、国際公開第2013/179977号パンフレットまたは特開2016−4100号公報に開示されているようにシート基板Pを平面状に支持し、平面状に支持されたシート基板Pに対して露光を行ってもよい。このような投影露光装置、又は近接露光装置では、回転ドラムDRに設けられた光電センサPDiによって、マスクパターンの一部として設けられるマスクマークの影像を受光することにより、回転ドラムDRの回転角度位置(基板Pの位置)とマスクパターンとの相対的な位置ズレ(同期誤差)等が計測できる。
(変形例10)上記した変形例1〜変形例9は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせてもよい。例えば、図21(変形例4)のように、回転ドラムDR内にビームプロファイラ90A、90Bを組み込む場合、ビームプロファイラ90A、90Bへの給電は図22(変形例5)のように電極Eと導電性のブラシBSとによる有線方式とし、ビームプロファイラ90A、90Bで計測される計測信号(画像信号)の伝送は図15のような無線方式、または図23(変形例6)のような光通信方式としてもよい。このような場合、ビームプロファイラ90A、90Bからの計測信号(画像信号)を無線送信、または光通信するための回路基板には、電極Eと導電性のブラシBSとによる有線方式で給電することができる。このことは、図15に示したセンサ回路基板60においても同様であり、図15中の無線電力供給部108、二次電池110等を省略して、センサ回路基板60への給電を図22のように有線方式とすることができる。
このように、上記実施の形態または変形例1〜9で説明した回転ドラム(基板支持装置)DRは、可撓性を有する長尺のシート基板Pの一部分を、円筒状の外周面の周方向に沿って巻き付けて支持するものである。そして、回転ドラムDRは、回転中心軸AXoから一定の半径の円筒状の外周面を有する円筒体50と、円筒体50の外周面に向けて投射されて、円筒体50の外周面の一部に形成された開口部50n(または50H、50S)または窪み部50Rに入射したビームLBの強度に対応した信号を出力する光電センサ(PDi、PD’、ISU)と、回転ドラムDRは、ビームLBを透過する材料で構成され、開口部50n(または50H、50S)または窪み部50Rを少なくとも覆うカバー部材であるシートガラスCG(またはCG´)と、光電センサ(PDi、PD’、ISU)からの信号を入力して、ビームLBの強度変化、或いはビーム位置(マスクマークMMnの露光位置)を計測するための信号処理を行うセンサ回路基板(電気回路部)60と、を備える。これにより、ビームLBの強度変化或いはビーム位置をリアルタイムに計測することができる。
シートガラスCG(CG´)には、基準マークMPg1〜MPg3、MPx、MPyおよび基準パターンMPC1、MPC2の少なくとも一方が形成されたマーク形成領域RMiを有し、光電センサ(PDi、PD’)は、マーク形成領域RMiを透過した前記ビーム(露光用の照明光)を受光する。これにより、描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの強度ムラ、等速性、描画ラインSLnの歪み、および、描画ラインSLnの傾き等をリアルタイムに計測することができる。また、回転ドラムDRの回転速度の誤差や速度ムラをリアルタイムに計測することができる。また、シートガラスCG(またはCG´)を設けたことにより、開口部50n(または50H)または窪み部50Rによって、シート基板Pが歪んだり、シート基板Pの被照射面が回転ドラムDRの径方向にずれたりすることを防止することができる。特に、シート基板Pの厚みが50μm以下で、剛性が低下する樹脂製のフィルム等に対して有効である。
シートガラスCG´は、その表面と円筒体50の表面との差が所定値以下となるように、開口部50n(または50H)または窪み部50Rに設けられている。したがって、開口部50n(または50H)または窪み部50Rに設けられたシートガラスCG´の表面と円筒体50の表面とをフラッシュサーフェス状にすることができ、シートガラスCG´の表面と円筒体50の表面とによって生じる段差を抑えることができる。これにより、シート基板Pが歪んだり、シート基板Pの被照射面が回転ドラムDRの径方向にずれたりすることを防止することができる。
レーザ光源LSA(LSB)からのビームLBをシート基板P上で収斂しつつ、主走査方向に沿って走査する描画ユニット(ビーム走査装置)Unによって走査されるビームLB(LBn)の描画ラインSLnに対応した円筒体50上の位置に、開口部50n(または50H)または窪み部50Rが複数形成されている。これにより、描画ユニットUnの各々から照射されたビームLBnの相対的な強度変化或いはビーム位置を計測することができる。
光電センサPDiは、主走査方向(Y方向)に沿って複数設けられていてもよい。また、ビームLBを伝送する複数の光ファイバーFBの入射端Pb1が主走査方向に沿って設けられ、複数の光ファイバーFBの射出端Pb2から射出されたビームLBが1つの光電センサPDiに入射してもよい。これにより、描画ラインSLnの両端部側と中央とにおけるスポット光SPの直径や形状の変化(球面収差)等をリアルタイムに計測することができる。
センサ回路基板60は、光電センサPDiで検出された信号SAm(信号SA1〜SA3のいずれか1つ)をサンプリングパルスに応じてデジタル信号に変換するADC(AD変換部)102と、ADC102によって変換されたデジタル信号に基づいて、ビームLBの強度変化或いはビーム位置を計測するための信号処理を行うマイコンユニット(制御部)104とを備える。そして、マイコンユニット104は、パルス状のビームLBの発光タイミングを決定するクロック信号LTCをレーザ光源LSA(LSB)から取得し、クロック信号LTC’を一定時間ΔTdだけ遅延させて、サンプリングパルス信号DTCを生成する。これにより、取得したクロック信号LTC’がクロック信号LTCに対して遅延した場合であっても、信号SAmを正確にデジタル値にサンプリングすることができ、信号SAmによる高精度な位置計測が可能となる。
〔第2の実施の形態〕
次に、図26、図27を参照して、第2の実施の形態によるパターン描画装置(露光装置)の構成を説明する。本実施の形態では、図26に示すように、長尺のシート基板Pは回転ドラムDRの外周面に円筒面状に湾曲させて支持され、回転ドラムDRの回転により長尺方向に所定の速度で搬送される。先の図2の構成と同様に、回転ドラムDRの上流側にはガイドローラR1、R2が設けられ、回転ドラムDRの下流側には、回転中心軸AXoを含みYZ面と平行な中心面Pccに関して、ガイドローラR1、R2と対称的に配置されるガイドローラR1’、R2’が設けられる。ガイドローラR1、R1’のそれぞれは、基板Pの感光層が形成されている表面が+Z方向に向くように、基板Pの裏面に接触して基板Pを−Z方向に折り返すように案内する。その他、図26に示す描画ヘッドとしての描画ユニットU1〜U6、アライメント顕微鏡AM11〜AM14、AM21〜AM24は、それぞれ図2と同様に設けられる。さらに、図26の回転ドラムDR内にも、先の第1の実施の形態、又はその変形例1〜9と同様に、光電センサPDi、PD’、ビームプロファイラ90A、90B、撮像素子ISUのいずれかが設けられている。
本実施の形態では、デバイス製造用の基板Pがパターン描画装置(露光部本体EX)に装填されている状態で、回転ドラムDRの上流側のガイドローラR1の位置から回転ドラムの下流側のガイドローラR1’の位置までの搬送路に沿って、テスト露光用の長尺のシート基板Pt(第2の基板)を基板P(第1の基板)に重ね合せて搬送する機構(テスト用基板の搬送装置)が設けられる。シート基板Ptは、回転ドラムDRの外周面で基板P上に重なった状態で支持され、回転ドラムDRの回転により基板Pと共に長尺方向に搬送される。テスト露光用のシート基板Ptの表面には予め感光性機能層(フォトレジスト等)が形成されており、基板Pと共に搬送されるシート基板Ptの感光性機能層には、描画ユニットU1〜U6の各々によって各種のテストパターン(解像力チャート、重ね誤差計測用のパターン、フォーカス確認用のパターン、継ぎ誤差確認用のパターン等)が描画される。テストパターンが露光されたシート基板Ptは、ガイドローラR1’の位置で回収され、パターン描画装置(露光部本体EX)から取り出されて現像装置に装着され、現像処理、洗浄処理、乾燥処理が施され、必要であれば、さらにエッチング処理が施される。これにより、シート基板Pt上には感光性機能層(フォトレジスト)によるテストパターンの転写像、又はエッチングされた下地層(銅やアルミニウムの層)による転写像が形成されるので、別途に設置されている検査装置にシート基板Ptを装着することにより、テストパターンの転写像の観察、寸法計測、誤差計測等が可能となり、パターン描画時のパターニング誤差の程度を計測することができる。
図26において、テスト露光用のシート基板Ptは、基板PのY方向の幅と同じ幅、若しくは基板Pの幅よりも数%程度小さい幅を有し、その表面には感光性機能層(液体レジストを塗布して乾燥させたレジスト層、又はラミネーターによって貼り合されたドライフィルムレジスト層等)が形成され、例えば数回分のテスト露光に必要な長さに渡ってロール300に巻かれている。シート基板Ptのロール300は、円筒状のロールケース302内に回転可能に軸支され、シート基板Ptの先端部は、ロールケース302の外周部にY方向にスリット状に延びて形成される開口部302Aを介して外部に取り出される。開口部302Aから取り出されるシート基板Ptの先端部は、ロールケース302の一部として設けられ、シート基板Pの幅と同程度の長さでY方向に延在する板状(又は棒状)のパッド部材302Bに、弱い粘着力で仮留めされる。このロールケース302(及びロール300)は、移動機構(ガイド機構等)303によって、図26のようにガイドローラR1の直上の位置Haと、ガイドローラR1から上方に一定距離だけ退避した位置Hbとの間で移動するように構成される。また、ロールケース302(ロール300)が、位置Haに移動したとき、パッド部材302BはガイドローラR1で支持されている基板Pと対向するように位置決めされる。さらに、ロールケース302(ロール300)が位置Hbに移動したとき、パッド部材302Bは位置Haでの姿勢に対して時計回りに約90°回転した姿勢となるように、ロールケース302はロール300の回転軸回りに約90°回転して位置決めされる。従って、移動機構303には、ロールケース302を回転させる回動機構も設けられている。以上のロールケース302(ロール300)、パッド部材302B、移動機構(回動機構)303によって、テスト露光用のシート基板Ptの供給装置が構成される。なお、ロール300の回転軸には、シート基板Ptが引っ張り出されるときに、ロール300の回転に調整された負荷を与える摩擦クラッチ(摺動部材)が内蔵され、引っ張り出されるシート基板Ptに適度のテンションが付与される。
一方、下流側のガイドローラR1’の上方には、基板Pと重ね合わされて搬送されるテスト露光用のシート基板Ptの回収装置として、サクション(吸引)ローラ310と、サクションローラ310を回転自在に軸支する軸受機構312と、サクションローラ310に真空圧(負圧)を供給する真空供給チューブ314と、軸受機構312(及びサクションローラ310)をZ方向に移動させる移動機構316とが設けられる。サクションローラ310は、例えば特開2006−036451号公報、特許公表2010−536683号公報に開示されているように、ローラの外周面に、中空内部空間と連通した複数の吸引孔(若しくは多孔質部材)が形成され、中空内部空間に真空圧(負圧)を供給することで、可撓性を有するシート、ウェブ等を吸引保持しつつ回転するように構成される。
ここで図27を参照して、この回収装置をXY面内で見た構成を説明する。サクションローラ310は、Y軸と平行な回転中心線AXsから一定半径で円筒状に形成された外周筒310aと、その内部の中空部310bと、−Y方向の端部に形成されたエアシールド方式の軸部310cと、+Y方向の端部に形成されたピボット軸310dと、中心線AXsと同軸に外周筒310aの外周面の半径よりも小さい半径で軸部310cの一部に形成された平歯車310eとを有する。軸受機構312は、XY面内では全体的にコの字状に形成され、Y方向に延びた第1部材312aと、第1部材312aの−Y方向側の端部に取付けられて、軸部310cを回転可能に軸支すると共に、真空供給チューブ314からの負圧を、軸部310cの中心に形成された貫通孔を介してサクションローラ310の中空部310bに供給するエアシールド方式の軸受部312bと、第1部材312aの+Y方向側の端部に取付けられて、サクションローラ310のピボット軸310dを軸支するベアリング部312dが形成された第2部材312cとで構成される。第2部材312cは、Z軸と平行な軸線の回りに回転可能なヒンジ部312eを介して第1部材312aに結合されており、図27に示すように、XY面内で回転可能に構成される。これにより、サクションローラ310の軸受機構312への装着、軸受機構312からの取外しが可能となる。
第2部材312cは第1部材312aに対して90°程度回転可能に設けられる。ベアリング部312dがサクションローラ310のピボット軸310dを正常に軸支した状態(第1部材312aと第2部材312cが直交した状態)になると、第2部材312cのヒンジ部312eの回りの回転が係止されるようなロック機構が第1部材312aに設けられている。従って、ロック機構を解除して、第2部材312cを約90°回転させることにより、サクションローラ310を−Y方向に移動できるので、サクションローラ310の軸部310cを軸受部312bから−Y方向に引き出すことができる。また、図26では図示を省略したが、サクションローラ310に回転駆動力を与える為のモータ319Aとギアトレイン(減速器)319Bとが第1部材312aの一部に取付けられる。モータ319Aの回転トルクは、ギアトレイン(減速器)319Bを介してサクションローラ310の軸部310cに形成された平歯車310eに伝達され、サクションローラ310は、図26中では反時計回りに回転する。モータ319Aは、図2に示した回転ドラムDRの回転駆動機構DV1を制御する主制御ユニットMCUによって同期制御され、基板Pと共に搬送されるシート基板Ptの搬送速度に対応して、シート基板Ptを弛みなく巻き取るような回転速度(回転トルク)でサクションローラ310を回転させる。
以上の装置構成により、シート基板Pt上にテスト露光を行うテスト運転の際、デバイス製造用の基板Pの表面には感光層が形成されているので、基板P上の感光層への不要な露光を防ぐ為に、シート基板Ptの母材は、露光用の描画ビームLBnの波長における透過率が1%以下、望ましくは0.2%以下となるような素材にするのが良い。そのような素材の1つとして、例えば厚さ100μm以下に圧延した極薄のステンレスシートがある。しかしながら金属製の極薄のシート材は、複数のローラを用いた搬送中に細かい凹凸の座屈痕が発生することがあり、回転ドラムDR上に適当なテンションを持って支持されたとしても、その座屈痕が解消されず、局所的なフラットネス特性を悪化させることがある。従って、金属製のシート材をシート基板Ptの母材とする際は、座屈痕が生じない程度の厚みが必要となる。このように、母材自体の遮光性が高い素材でシート基板Ptを作成すると、一般的には厚みが大きくなる為、例え図26のようなパターン描画装置の搬送機構で搬送可能であっても、描画ユニットU1〜U6に対して設定されているベストフォーカス位置から、シート基板Ptの表面が大きくデフォーカスしてしまい、正確なテスト露光が困難になることがある。そこで、シート基板Ptの母材は、厚みが充分に小さく安価なPETやPEN等の樹脂シート材(例えば、50μm以下の厚み)とし、その樹脂シート材の表面に紫外波長域の光の遮光性が高い塗料(例えばエナメル系樹脂)を均一な厚みで塗布して乾燥させた後、その塗料による膜(遮光膜)の表面に感光性機能層を積層することにより、テスト露光用のシート基板Ptを作成することができる。或いは、PETやPEN等の樹脂シート材の表面に、メッキ法や蒸着法によって銅やアルミニウムなどの柔らかい金属による層を積層し、その金属層の表面に感光性機能層を積層することにより、テスト露光用のシート基板Ptを作成しても良い。
以上のようにして作成されたシート基板Ptはロール300として巻かれて、図26中の位置Hbでロールケース302内に装填される。位置Hbにおいて、ロール300から引き出されたシート基板Ptの先端部は、パッド部材302Bに弱い粘着力(接着力)で仮り留めされる。デバイス製造用の基板Pを搬送して、基板Pに対してデバイス用のパターンを露光するデバイス露光モードのとき、ロールケース302(ロール300)は位置Hbで待機し、回収装置としてのサクションローラ310は、ガイドローラR1’の上方空間で待機している。なお、シート基板Ptの遮光性の金属層に、図6で示したようなアライメント用のマークMK1〜MK4をエッチング等で形成しておいても良い。そのようなマークMK1〜MK4付のシート基板Ptを用いてテスト露光を行う場合、図26のアライメント顕微鏡AM11〜AM14の各々で検出されるマークMK1〜MK4の配置状態を基準にしてテストパターンを位置決めして露光することができ、テスト露光後に、シート基板Pt上のマークMK1〜MK4とテストパターンの像との相対的な位置関係(位置誤差)を検査装置で計測することにより、重ね合せ精度が確認できる。
シート基板Ptに対してテストパターンを露光するテスト露光モードに切り替える場合、基板Pの搬送は、テンションを付与したまま回転ドラムDRの回転速度を減速させて一時的に停止される。その際、基板Pの停止位置は、例えば、先の図6又は図24に示した基板P上の余白部BLSが、図26のガイドローラR1上になるように設定される。その位置決めは、図6に示した余白部BLSに形成されるマークMK2、MK3がアライメント顕微鏡AM12、AM13によって検出されたときの基板Pの長尺方向(X方向)の位置を基準位置(回転ドラムDRの回転角度位置)とすることで容易に実行できる。基準位置が判ると、その基準位置から次の余白部BLS、さらにはその先の余白部BLSまでの基板Pの長さが判明する。従って、ガイドローラR1からアライメント顕微鏡AM12、AM13までの基板Pの搬送長が装置上の既定値であることから、ガイドローラR1上に次の余白部BLS又はその先の余白部BLSを位置決めさせる為に必要な基準位置からの基板Pの搬送量(回転ドラムDRの回転角度量)が求められる。このようにして、基板Pが位置決めされて一時停止した状態で、オペレータは位置Hbに設定されているロールケース302にアクセスし、パッド部材302Bに仮り留めされているシート基板Ptの先端部の裏面側(パッド部材302Bに接触している面と反対側の面)に、剥がせる粘着剤の塗布、又は剥がせる粘着リボンの貼付けを行う。
その後、移動機構303を操作して、ロールケース302を位置Haに移動させてパッド部材302BをガイドローラR1の直上に位置決めし、さらに移動機構303によって、パッド部材302Bに仮り留めされているシート基板Ptの先端部の粘着剤又は粘着リボンが形成されている面を、ガイドローラR1上の基板Pに押し付けるように、ロールケース302を−Z方向に付勢する。その後、パッド部材302Bが+Z方向に一定距離だけ離れるように、移動機構303によってロールケース302を上昇させる。これにより、基板Pの余白部BLSにシート基板Ptの先端部が貼り付けられる。従って、余白部BLSの長尺方向(X方向)の幅は、シート基板Ptの先端部の粘着剤又は粘着リボンの付設幅よりも十分に広くすること、例えば2倍以上にすることが望ましい。
次に、回転ドラムDRを低速回転させて基板Pの搬送を開始する。シート基板Ptは、基板Pの搬送に伴って、ロールケース302から弱いテンションを付与された状態で引き出され、基板Pの上面に重なった状態でガイドローラR2、回転ドラムDR、ガイドローラR2’の順に通される。シート基板Ptの先端部がガイドローラR1’の上方位置に達すると、回転ドラムDRの回転が停止され、基板Pの搬送が一時停止される。その後、サクションローラ310の外周面が基板P上に重なったシート基板Ptの先端部に当接するように、軸受機構312が移動機構316によって−Z方向に移動され、チューブ314を介して負圧(真空圧)がサクションローラ310に供給される。これにより、シート基板Ptの先端部は、サクションローラ310の外周面に吸着される。その吸着力は、シート基板Ptの先端部に付設された粘着剤又は粘着リボンの粘着力よりも大きくなるように設定されている。サクションローラ310によるシート基板Ptの吸着を維持した状態で、移動機構316によって軸受機構312(及びサクションローラ310)を+Z方向に一定距離だけ持ち上げることにより、シート基板Ptの先端部は基板Pの余白部BLSから剥がされる。
以上の操作により、テスト露光用のシート基板Ptがデバイス製造用の基板Pの上に重ね合わされて装填される。その後、回転ドラムDRを回転させて基板Pの搬送を開始すると共に、図27に示したモータ319Aの駆動によりサクションローラ310を回転させ、シート基板Ptをサクションローラ310で巻き取る。重なった基板Pとシート基板Ptとが、テスト露光の際に設定される所定の搬送速度に達したら、描画ユニットU1〜U6によって各種のテストパターンをシート基板Pの感光性機能層に順次露光する。この種の紫外波長のスポット光SPによる直描型の露光装置では、スポット光SPとなるビームLBnの開口数(NA)が比較的に小さく、焦点深度(DOF:Depth of Focus)は±50〜100μm程度得られる。その為、シート基板Ptの厚さが数十μm程度であれば、ほとんどフォーカス調整をすることなく、テスト露光ができる。しかしながら、テスト露光時にも、シート基板Ptの表面をビームLBnのベストフォーカス位置(ビームウェストの最も細くなる位置)に合わせる場合は、図5に示した描画ユニットUn内のビームエキスパンダーBEを構成する集光レンズBe1とコリメートレンズBe2とのいずれか一方の位置を光軸AXaの方向に微動させるフォーカス調整機構を設け、テスト露光用のシート基板Ptの厚さに応じてフォーカス調整機構で補正を行えばよい。
この場合、6つの描画ユニットU1〜U6の各々に設けられるフォーカス調整機構を作動させることになるが、例えば、図2、図4に示した光源装置LSA、LSBの各々から射出するビームLB(平行光束)の径を縮小して平行光束に変換する縮小リレー系を設け、その縮小リレー系を構成するレンズの一部を光軸方向に微動させる機構を、フォーカス調整機構として用いても良い。その場合、6つの描画ユニットU1〜U6の各々に入射する描画用のビームLBn(図5の反射ミラーM10に入射するビーム)は、本来は平行光束の状態であったものが、僅かに収斂した状態、或いは僅かに発散した状態に補正される。その為、図5に示したfθレンズFTとシリンドリカルレンズCYbを介してシート基板Pt上に投射されるビームLBnのスポット光SPのフォーカス位置が調整(補正)される。
一連のテスト露光が完了したら、再び回転ドラムDRの回転を停止して、基板Pとシート基板Ptの搬送を一時停止すると共に、サクションローラ310の回転によるシート基板Ptの巻取動作を中止する。その後、移動機構303を操作してロールケース302(ロール300)を図26中の位置Hbに移動させる。位置Hbでは、ロールケース302が時計回りに約90°回転する為、ロール300から引き出されているシート基板Ptは、パッド部材302BとガイドローラR1上の基板Pの上面との2ヶ所に接触した状態で停止している。オペレータは、位置Hbのロールケース302にアクセスして、パッド部材302Bに接触して弱く接着されているシート基板Ptを、パッド部材302Bの先端付近でカッター等によって切断する。その後、回転ドラムDRの回転とサクションローラ310の回転とを同期させて、重なった状態の基板Pとシート基板Ptとをほぼ同じ速度で長尺方向に搬送する。シート基板Ptの切断された終端部が、ガイドローラR2’を通ってサクションローラ310に巻き取られると、サクションローラ310がガイドローラR1’に対して更に退避するように、移動機構316によって軸受機構312が+Z方向に移動される。一方、デバイス製造用の基板Pは、回転ドラムDRや前後の搬送機構(ニップローラ等)を逆回転させることで、テスト露光用のシート基板Ptを貼り付けた位置(基準位置)まで巻き戻すことができる。デバイス製造用の基板Pに下地層(ファーストパターン層等)が形成されておらず、テスト露光中に搬送した基板Pの搬送長分のコストを無視しても良い場合は、巻き戻しせずにデバイス露光モードに切り替えることができる。
テスト露光済みのシート基板Ptを巻き付けたサクションローラ310は、負圧(真空圧)供給の停止後に、図27に示したように、ピボット軸310dを軸支する第2部材312cを開いて、軸受機構312(軸受部312b)から取り外され、現像装置に装填される。現像装置で現像されたシート基板Ptには、露光された各種のテストパターンのレジスト層による像が出現する。さらに、必要であれば現像後のシート基板Ptをエッチング装置に送り、レジスト層の下地である金属層(銅又はアルミニウム)をエッチングして、露光された各種のテストパターンの金属層による像を出現させる。現像後、又はエッチング後のシート基板Ptは、乾燥工程の後、検査装置に装填され、各種のテストパターンの像が光学顕微鏡等により検査される。この検査によって、パターン描画装置(露光部本体EX)によるパターン描画時(露光時)の実際の特性や精度の最終確認ができる。
以上のようなテスト露光(テスト運転)は、パターン描画装置(露光部本体EX)の各機構系を微調整したり、様々な設定パラメータを変更したりするキャリブレーション動作の後に実行されるが、本実施の形態では、回転ドラムDR内に光電センサPDi、PD’、ビームプロファイラ90A、90B、撮像素子ISUのいずれかが設けられ、ビームLBnの走査に伴う各種の特性(誤差傾向)が簡単に計測でき、その計測値に基づいて迅速なキャリブレーションが可能となる。さらに本実施の形態では、キャリブレーションされた直後のパターン描画装置による実際のパターン描画特性を確認するテスト露光を、デバイス製造用の基板Pが装着されている状態であっても直ちに実施できる。そのため、デバイス製造用の基板Pを装置から外して、テスト露光用のシート基板Ptに掛け替える等の手間が不要となり、装置のダウンタイムを大幅に短縮することができる。
図26、図27に示したテスト露光用のシート基板Ptの供給装置(ロール300、ロールケース302等)と回収装置(サクションローラ310、軸受機構312等)は、平面状又は円筒状の原版上に固定的に形成されたマスクパターン、或いは多数のマイクロミラーによって動的に変更される可変マスクパターンを、等倍、又は拡大倍率の投影光学系を介して、回転ドラムDRに支持される基板P(又はシート基板Pt)上に投影する投影露光装置にも同様に設けることができる。さらに、テスト露光用のシート基板Ptの供給装置と回収装置は、先の図25に示したように、円筒マスクDMのマスク面と回転ドラムDRで支持される基板P(又はシート基板Pt)の表面とを一定のプロキシミティ・ギャップで対向させて走査露光するプロキシミティ露光装置、又は、円筒マスクDMのマスク面と回転ドラムDRで支持される基板P(又はシート基板Pt)の表面とを接触させるコンタクト露光装置のいずれにおいても同様に設けることができる。これらの露光装置のうち、特に投影露光装置とプロキシミティ露光装置では、投影光学系のDOFがシート基板Ptの厚みよりも小さくなったり、プロキシミティ・ギャップがシート基板Ptの厚みとほぼ同じになったりすることがある。その為、テスト露光時には、投影光学系に設けられているフォーカス調整用の光学部材(レンズ等)を微動させたり、プロキシミティ・ギャップを維持するように円筒マスクDMと回転ドラムDRとの間隔を機械的に微調整する微動機構を設けたりする必要がある。
また、以上の実施の形態では、テスト露光用のシート基板Ptをデバイス製造用の基板P上に直接重ね合せて一体的に搬送するようにしたが、基板Pの表面に下地層が形成されている場合、シート基板Ptの裏面と基板Pの表面との間に擦れが生じて、基板Pの下地層を傷付ける可能性もある。そこで、シート基板Ptを基板P上に重ね合せる際、その間に薄い保護シートを挟み込むようにしても良い。本実施の形態では、供給装置のロールケース302に設けられたパッド部材302Bとシート基板Ptとの接着力をAd1、シート基板Ptの先端部に付設される粘着剤又は粘着リボンによるシート基板Ptと基板Pとの接着力をAd2、負圧(真空圧)供給によるサクションローラ310とシート基板Ptとの接着力(吸引力)をAd3としたとき、Ad1<Ad2<Ad3となるように設定される。このような関係に設定できるのであれば、真空圧を用いるサクションローラ310を静電吸着方式のローラに替えても良い。さらに、サクションローラ310を通常のローラに替えて、そのローラにシート基板Ptの先端部を巻き付ける際は、速乾性の接着剤をローラの外周面の下方(−Z方向)の一部にY方向にライン状に塗布して、シート基板Ptの先端部をローラに強固に接着するような構成にしても良い。この場合、そのローラは再利用も可能であるが、安価なプラスチック製にすれば資源廃棄物として処分することもできる。
〔第3の実施の形態〕
フレキシブルな長尺の基板Pに電子デバイス用のパターン(配線層、電極層、薄膜トランジスタの半導体層、表示用の画素等)を形成するパターニング装置としては、以上で説明した露光装置の他に、金属ナノ粒子や半導体ナノ粒子を含有したインクを多数の微細なノズルから液滴として選択的に基板P上に噴射するインクジェット方式の印刷装置(プリンタ)も使われる。インクジェット方式のプリンタでは、基板Pを長尺方向(副走査方向)に一定速度で移動させつつ、多数のノズルが形成されたノズルヘッドを基板Pの幅方向(主走査方向)に一次元に往復移動させ、その往復移動の間に、描画すべきパターンの形状に応じてノズルヘッド中のノズルを選択して液滴を基板Pに噴射している。その為、インクジェット方式のプリンタは、定期的又は非定期にノズルヘッドをクリーニングするメンテナンスが必要とされる。そしてクリーニングの後には、ノズルヘッドが正常にパターン描画するか否かを確認するテスト印刷(テスト描画、テスト運転)を行うことがある。枚葉方式のプリンタであれば、テスト用の基板を手差し等で装填して直ちにテスト印刷可能である。しかしながら、図1に示したロールツーロール(R2R)方式で長尺の基板Pに連続してパターンを形成するパターニング装置として、インクジェット方式のプリンタを設ける場合も、供給ロールFRから回収ロールRRまでつながっている基板Pを、回転ドラムDR(及びその前後のローラ)のところだけ部分的に取り外して、テスト印刷(テスト描画)用の別のシート基板を回転ドラムDR等に装着することが困難であった。
図26、図27に示したテスト用のシート基板Ptの供給装置(ロール300、ロールケース302等)と回収装置(サクションローラ310、軸受機構312等)とを設けることにより、デバイス製造用の基板Pが装置内に装着された状態であっても、インクジェット方式のプリンタでのテスト印刷(テスト描画)が、別のシート基板Ptを用いて簡単に実行でき、テスト印刷の結果をオフラインの検査装置で直ちに確認できる。なお、インクジェット方式のプリンタでは、図26に示した描画ユニットU1〜U6の位置にノズルヘッドが設けられ、アライメント顕微鏡AM11〜AM14、AM21〜AM24は、ノズルヘッドに対して上流側と下流側の各々に同様に設けられる。インクジェット方式のプリンタの場合、パターン(テストパターン)の描画がインクで行われるため、下流側のアライメント顕微鏡AM21〜AM24を利用して、描画されたパターンを直ちに確認することもできる。但し、アライメント顕微鏡AM21〜AM24の各々は、図6に示したように、基板P上の予め決められた位置に形成されるマークMK1〜MK4を検出するように、その検出領域(観察視野領域)Vw21〜Vw24が設定されている。
そこで、シート基板Pt上にテスト印刷されたテストパターンを、シート基板Ptが回転ドラムDRで支持されている間に観察する為に、下流側のアライメント顕微鏡AM21〜AM24の更に下流側に、シート基板Pt(又は基板P)に形成されたパターンを、シート基板Pt(又は基板P)の幅方向(Y方向)の任意の位置で観察できるように、Y方向に一次元移動できる観察用顕微鏡を、1つ又は複数設けると良い。この観察用顕微鏡は、拡大倍率が切換えられる対物レンズと、CCDやCMOS等の撮像素子とを備え、Y方向の任意の位置でシート基板Pt上に形成されたテストパターンの拡大像の観察、撮像素子からの画像情報に基づくテストパターンの寸法や位置ずれ等の計測の為に使われる。
このように、図26に示した描画ユニットU1〜U6をインクジェット方式のノズルヘッドに置き換えたパターニング装置では、パターン描画が光で行われない為、先の図12、図18〜21、図25で示した光電センサPDi、PD’、ビームプロファイラ90A、90B、撮像素子ISU等の光電検出器を使うことはない。しかしながら、高解像の精密なパターンを、最小線幅の数分の一以下の精度で基板P上の下地層パターンに重ね合せて描画する場合、ノズルヘッドの位置をサブミクロンの精度で精密に制御する必要がある。その精度を維持する為に、図12、図18〜20で示したような光電センサPDi、PD’と、図14に例示した基準マークMPg1〜MPg3又は基準パターンMPC1、MPC2が形成されたシートガラスCG(カバー部材)とを回転ドラムDRに設け、ノズルヘッド側には位置較正、或いはパターニング誤差計測の際の基準となるスポット光を回転ドラムDRのシートガラスCG上に投射するビーム投光器を設ける。
図28は、第3の実施の形態によるインクジェット方式のパターン描画装置(パターニング装置)における回転ドラムDRとノズルヘッドNZHa、NZHbとの配置関係をXY面内で見た図であり、本実施の形態では、Y方向に走査移動する2つのノズルヘッドNZHa、NZHbが、基板P又はシート基板Ptの幅方向の半分程度の領域に分担してパターンを描画する。図28において、回転ドラムDRの+Z方向の上方空間には、Y方向に延設された2本の直線ガイド部材400A、400Bが、X方向に一定の間隔で平行に並べられる。直線ガイド部材400Aには、ノズルヘッドNZHa、NZHbをY方向に一次元駆動させる為のリニアモータの固定子402が並置され、直線ガイド部材400Bには、ノズルヘッドNZHa、NZHbのY方向の移動位置をサブミクロンの分解能で精密に計測するエンコーダ計測系のリニアスケール部材404が並置される。第1のノズルヘッドNZHaは、2本の直線ガイド部材400A、400BでガイドされてY方向に移動する第1の可動ステージ部材406Aの下側(−Z方向側)に取付けられる。その際、ノズルヘッドNZHaの液滴を吐出するノズル面が基板P(又はシート基板Pt)の表面と所定のギャップ(例えば1mm程度)になるように設置される。可動ステージ部材406Aの+X方向側には、リニアモータの固定子402と対峙してY方向の推力を発生する可動子が取り付けられ、可動ステージ部材406Aの−X方向側には、エンコーダ計測系のリニアスケール部材404と対峙するように配置され、リニアスケール部材404に刻設された目盛(例えば20μmピッチの格子パターン)のY方向の位置変化を光電的に読み取るエンコーダヘッド408Aが取り付けられている。
同様に、第2のノズルヘッドNZHbは、直線ガイド部材400A、400BでガイドされてY方向に移動する第2の可動ステージ部材406Bの下側(−Z方向側)に取付けられ、液滴を吐出するノズルヘッドNZHbのノズル面と基板P(又はシート基板Pt)の表面とは所定のギャップ(例えば1mm程度)に設置される。可動ステージ部材406Bの+X方向側には、リニアモータの固定子402と対峙してY方向の推力を発生する可動子が取り付けられ、可動ステージ部材406Bの−X方向側には、エンコーダ計測系のリニアスケール部材404と対峙するように配置され、リニアスケール部材404に刻設された目盛のY方向の位置変化を光電的に読み取るエンコーダヘッド408Bが取り付けられている。
そして、可動ステージ部材406Aには、XY面内でノズルヘッドNZHaを囲むような3ヶ所の各々に、回転ドラムDRの外周面(シートガラスCG)上に直径数μm程度のスポット光を投射するビーム投光器LPA1、LPA2、LPA3が、ノズルヘッドNZHaに対して規定の位置関係で固定されている。ビーム投光器LPA1〜LPA3の各々は、可視域又は赤外域の波長のビームを発生する高輝度LED光源と、そのビームをスポット光に集光する集光レンズ系とを備える。ビーム投光器LPA1からのスポット光は、XY面内では回転ドラムDRの回転中心軸AXo上であって、ノズルヘッドNZHaの−Y方向側に位置するように設定され、ビーム投光器LPA2、LPA3の各々からのスポット光は、XY面内では回転中心軸AXoを挟んでX方向に対称的に位置すると共に、ノズルヘッドNZHaの+Y方向側に位置するように設定される。同様に、可動ステージ部材406Bには、ノズルヘッドNZHbを囲むような3ヶ所の各々にビーム投光器LPB1、LPB2、LPB3が固定されている。ビーム投光器LPB1からのスポット光は、XY面内では回転中心軸AXo上であってノズルヘッドNZHbの+Y方向側に位置するように設定され、ビーム投光器LPB2、LPB3の各々からのスポット光は、XY面内では回転中心軸AXoを挟んでX方向に対称的に位置すると共に、ノズルヘッドNZHbの−Y方向側に位置するように設定される。
本実施の形態では、テスト印刷(テスト描画、テスト運転)時に使用するシート基板Ptを光透過性の母材にしても、その下に位置するデバイス製造用の基板P上にはテストパターン等が形成されることが無い。そこで、デバイス製造用の基板Pには、先の図24に示したように、回転ドラムDRの外周面の半周分の周長距離Ldr以上の距離LSgの余白部BLS(光透過部)を形成し、その余白部BLSが回転ドラムDRに巻き付き始めるときに、テスト印刷用の透明なシート基板Ptが回転ドラムDR上で基板Pと重なって搬送されるように、図26の供給装置(ロール300、ロールケース302等)と回収装置(サクションローラ310、軸受機構312等)を作動させる。その後、回転ドラムDRを低速で回転させて、回転ドラムDRの外周面のシートガラスCG上に形成された基準マークMPg1〜MPg3又は基準パターンMPC1、MPC2を、可動ステージ部材406A(又は406B)をY方向に移動させたときに生じるビーム投光器LPAn(又はLPBn)からのビームによるスポット光の走査軌跡上に位置決めする。ビーム投光器LPAn(又はLPBn)からのビームは、透明なシート基板Ptと基板Pの透明な余白部BLSとを介して、シートガラスCG上にスポット光として集光され、そのスポット光は可動ステージ部材406A(又は406B)のY方向移動によって基準マークMPg1〜MPg3又は基準パターンMPC1、MPC2を横切るように走査され、基準マークMPg1〜MPg3又は基準パターンMPC1、MPC2の遮光部で遮光されなかったビームが光電センサPDi(又はPD’)で光電検出される。
テスト印刷を行う場合、スポット光が基準マークMPg1〜MPg3又は基準パターンMPC1、MPC2を横切るときの可動ステージ部材406A(又は406B)のY方向位置は、スケール部404とエンコーダヘッド408A(408B)によるエンコーダ計測系によって精密に計測されるので、その横切った位置を基準に、ノズルヘッドNZHa(NZHb)によるテストパターンの描画を行う。回転ドラムDR上のシートガラスCGに形成される複数の基準マークMPg1〜MPg3又は基準パターンMPC1、MPC2の配列状態(Y方向又はX方向の間隔)が予め正確に計測されている既知の装置定数だとすると、シート基板Pt上に描画されたテストパターンのY方向の長寸法や間隔寸法等を、オフラインの検査装置で計測することにより、ノズルヘッドNZHa(NZHb)の応答特性、可動ステージ部材406A(又は406B)の移動速度の変動(速度ムラ)、或いは、エンコーダ計測系のスケール部404の目盛のピッチ誤差等に起因したパターニング誤差(描画すべきパターンの設計上の位置からのシフト誤差、傾き誤差、或いは下地パターンに対する重ね合せ誤差等)を、先の図15に示したセンサ回路基板60の回路構成と同様の電気回路部と、図2に示した主制御ユニットMCU等を用いることで、容易に確認することができる。なお、ノズルヘッドNZHa(NZHb)の直下に、デバイス製造用の基板Pと重なってテスト印刷用のシート基板Ptが搬入されるので、シート基板Ptの表面とノズルヘッドNZHa(NZHb)のノズル面とのギャップを所定距離(例えば、1mm)に保つように、ノズルヘッドNZHa(NZHb)のZ方向の位置(フォーカス方向の位置)を微調するピエゾモータ等の微動機構を設けると良い。
また、デバイス製造用の基板Pのみが回転ドラムDRに巻き付けられている状態でも、図24に示したような基板Pの余白部BLSを介して、ビーム投光器LPAn(又はLPBn)からのビーム(スポット光)を基準マークMPg1〜MPg3又は基準パターンMPC1、MPC2上でY方向に走査して、基準マークMPg1〜MPg3又は基準パターンMPC1、MPC2を透過してきたビームを光電センサPDi、PD’で検出し、その検出信号の発生位置をエンコーダ計測系の計測値に基づいて特定することにより、可動ステージ部材406A(又は406B)のヨーイング特性(XY面内での僅かな傾き誤差)や速度特性を求め、キャリブレーションを行うことが可能である。ヨーイング特性や速度特性の悪化は、結果的に基板P上にパターンを描画する際のパターニング誤差の発生につながるので、ヨーイング特性や速度特性の程度や傾向の計測は、結果的にパターニング誤差を計測したことになる。
以上、第3の実施の形態によれば、可撓性を有する長尺の基板P(第1の基板)を、回転中心軸AXoの回りに回転する回転ドラムDRの外周面で支持して周方向に搬送させつつ、回転ドラムDRで支持されている基板Pの表面に電子デバイス用のパターンを描画する為のノズルヘッドNZHa、NZHb(描画ヘッド)を備えたインクジェットプリンタ(パターニング装置)であって、回転ドラムDRの外周面の一部に形成された開口部(50、50H)または窪み部(50R)に設けられ、回転ドラムDRの外周面に向けてノズルヘッドNZHa、NZHb(描画ヘッド)側からビーム投光器LPAn、LPBnによって投射されるビームの強度に対応した信号を出力する光電センサPDi、PD’(光電検出器)と、ビーム投光器LPAn、LPBnからのビームを透過する材料で構成され、少なくとも開口部(50、50H)または窪み部(50R)を覆うシートガラスCG(カバー部材)と、光電センサPDi、PD’(光電検出器)からの信号に基づいて、ノズルヘッドNZHa、NZHb(描画ヘッド)によるパターン描画時に発生するパターニング誤差を計測する計測部(センサ回路基板60と主制御ユニットMCU)と、を備えたパターニング装置が得られる。
第3の実施の形態のように、回転ドラムDRの外周面の一部に形成された開口部(50、50H)または窪み部(50R)に設けられた光電センサPDi、PD’(或いは撮像素子ISU)からの信号を用いることにより、先の第1の実施の形態、並びにその変形例1〜9、さらには第2の実施の形態においても、センサ回路基板60と主制御ユニットMCU等による計測部を利用して、パターン描画時に発生し得るパターニング誤差が同様に計測できることは言うまでもない。