JPWO2017164249A1 - カーボンナノチューブ複合体及びカーボンナノチューブ線材 - Google Patents

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Abstract

従来のカーボンナノチューブ複合体と比較して更なる低抵抗化を実現すると共に、銅やアルミニウムと同等の抵抗率を実現することができ、高温環境下においても電気的特性を大幅に向上させることができるカーボンナノチューブ複合体を提供する。CNT複合体(11)は、2層の層構造を有する複数のCNT(11a),(11a),・・・が束ねられてなるCNT束(11A)と、上記複数のCNT(11a),(11a),・・・間の空隙部(11B)に整列して導入された異種元素群(12)とを備える。

Description

本発明は、複数のカーボンナノチューブを束ねてなるカーボンナノチューブ束に異種元素がドープされたカーボンナノチューブ複合体、及び該カーボンナノチューブ複合体を束ねてなるカーボンナノチューブ線材に関する。
従来、自動車や産業機器などの様々な分野における電力線や信号線として、一又は複数の線材からなる芯線と、該芯線を被覆する絶縁被覆とからなる電線が用いられている。芯線を構成する線材の材料としては、通常、電気特性の観点から銅又は銅合金が使用されるが、近年、軽量化の観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が提案されている。例えば、アルミニウムの比重は銅の比重の約1/3、アルミニウムの導電率は銅の導電率の約2/3(純銅を100%IACSの基準とした場合、純アルミニウムは約66%IACS)であり、アルミニウム線材に、銅線材と同じ電流を流すためには、アルミニウム線材の断面積を、銅の線材の断面積の約1.5倍と大きくする必要があるが、そのように断面積を大きくしたアルミニウム線材を用いたとしても、アルミニウム線材の質量は、純銅の線材の質量の半分程度であることから、アルミニウム線材を使用することは、軽量化の観点から有利である。
上記のような背景のもと、昨今では、自動車、産業機器等の高性能化・高機能化が進められており、これに伴い、各種電気機器、制御機器などの配設数が増加するとともに、これら機器に使用される電気配線体の配線数も増加する傾向にある。また、その一方で、環境対応のために自動車等の移動体の燃費を向上させるため、線材の軽量化が強く望まれている。
こうした更なる軽量化を達成するための新たな手段の一つとして、カーボンナノチューブを線材として活用する技術が新たに提案されている。カーボンナノチューブは、六角形格子の網目構造を有する筒状体の単層、あるいは略同軸で配された多層で構成される3次元網目構造体であり、軽量であると共に、導電性、電流容量、弾性、機械的強度等の特性に優れるため、電力線や信号線に使用されている金属に代替する材料として注目されている。
カーボンナノチューブの比重は、銅の比重の約1/5(アルミニウムの約1/2)であり、また、カーボンナノチューブ単体は、銅(抵抗率1.68×10−6Ω・cm)よりも高導電性を示す。したがって理論的には、複数のカーボンナノチューブを撚り合わせてカーボンナノチューブ集合体を形成すれば、更なる軽量化、高導電率の実現が可能となる。しかしながら、nm単位のカーボンナノチューブを撚り合わせて、μm〜mm単位のカーボンナノチューブ集合体を作製した場合、カーボンナノチューブ間の接触抵抗や内部欠陥形成が要因となり、線材全体の抵抗値が増大してしまうという問題があることから、カーボンナノチューブをそのまま線材として使用することが困難であった。
そこで、カーボンナノチューブ集合体の導電性を向上させる方法の一つとして、構成単位であるカーボンナノチューブの網目構造(カイラリティ)を制御し、カーボンナノチューブにドーピング処理を施す方法が提案されている。
例えば、2層及び多層のカーボンナノチューブに、少なくとも1種のドーパントを用いてドーピング処理を施す方法がある。本方法では、カーボンナノチューブを形成する際、或いはカーボンナノチューブ線材を形成した後に、スパッタリング、噴霧、浸漬あるいは気相導入によりドーピング処理を施し、ヨウ素、銀、塩素、臭素、フッ素、金、銅、アルミニウム、ナトリウム、鉄、アンチモン、ヒ素、あるいはこれらの組み合わせを含むドーパントを有するカーボンナノチューブ線材を作製する。これにより、高い比導電率、低い抵抗率、高い導体許容電流、および熱安定性などの電気的特性を得ることができるとされている(例えば、特許文献1)。
特表2014−517797号公報
ここで、銅やアルミニウムなどの金属材料は、温度上昇により格子振動が大きくなり、電気抵抗が増大することが知られている。例えば電気自動車などの車両のハブと同軸で取り付けられるインホイールモータの巻線材料は、約110℃(383.15K)の温度環境下で使用されるが、車両室内と同等の温度環境下で使用される場合と比較して、約33%もの電気エネルギーを損失している。よって、エネルギー効率の向上並びに車両の高性能化の観点から、高温環境下で線材として使用される際の電気エネルギー損失を低減可能な代替材料が求められている。
しかしながら、上記特許文献においては、2層のカーボンナノチューブにヨウ素をドーピングしたカーボンナノチューブ集合体で抵抗率1.55×10−5Ω・cmが得られることが開示されているにとどまる。すなわち、銅の抵抗率1.68×10−6Ω・cmやアルミニウムの抵抗率2.65×10−6Ω・cmと比較すると、上記カーボンナノチューブ集合体の抵抗率は一桁以上も高く、銅やアルミニウムに代替する線材として十分とは言えない。また、各産業分野における高性能化・高機能化が急速且つ飛躍的に進歩することが予測されることから、更なる低抵抗率の実現が求められている。
また、上記特許文献では、200K〜400Kの間までの温度範囲において、ヨウ素をドープした銅線材の相対抵抗((R−R’)/R’、R’は室温抵抗)が43%であるのに対し、ヨウ素をドープした2層のカーボンナノチューブファイバーの相対抵抗は9%でることが開示されているにとどまる。すなわち、ヨウ素ドープされたカーボンナノチューブファイバーの温度による抵抗変化率が、ヨウ素ドープされた銅線材の抵抗変化率よりも小さいことを開示する程度であり、カーボンナノチューブファイバーにおけるドーパントの配置位置はもとより、上記ドーパントの配置位置とカーボンナノチューブファイバーの抵抗率との関係も開示されていない。
本発明の目的は、従来のカーボンナノチューブ複合体と比較して更なる低抵抗化を実現すると共に、銅やアルミニウムと同等の抵抗率を実現することができ、高温環境下においても電気的特性を大幅に向上させることができるカーボンナノチューブ複合体及びカーボンナノチューブ線材を提供することにある。
すなわち、上記課題は以下の発明により達成される。
(1)1層以上の層構造を有する複数のカーボンナノチューブが束ねられてなるカーボンナノチューブ束と、
前記複数のカーボンナノチューブ間の空隙部に整列して導入された異種元素群と、を備えることを特徴とする、カーボンナノチューブ複合体。
(2)前記異種元素群を構成する異種元素結合体が、前記カーボンナノチューブの長手方向に沿って並んで配置されることを特徴とする、上記(1)記載のカーボンナノチューブ複合体。
(3)前記異種元素結合体を構成する複数の異種元素が、それぞれ前記カーボンナノチューブの径方向断面における中心から一定距離で配置されることを特徴とする、上記(2)記載のカーボンナノチューブ複合体。
(4)前記異種元素の含有量が、1原子%以上であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合体。
(5)前記異種元素が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、バリウム、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択された1つ以上の元素であることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合体。
(6)前記複数の異種元素がヨウ素であり、前記異種元素結合体における隣接するヨウ素間距離が、2.6オングストローム〜3.0オングストロームであることを特徴とする、上記(5)記載のカーボンナノチューブ複合体。
(7)前記複数の異種元素がヨウ素であり、ラマン分光法におけるラマンスペクトルにおいて、前記カーボンナノチューブに由来するGバンドのピークに対する、ポリヨウ素に由来するピークの比であるpI/Gが、0.2以上であることを特徴とする、上記(5)又は(6)記載のカーボンナノチューブ複合体。
(8)前記カーボンナノチューブが、2層又は3層の層構造を有することを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合体。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合体を複数束ねてなるカーボンナノチューブ線材。
本発明によれば、カーボンナノチューブ束を構成する複数のカーボンナノチューブ間の空隙部に異種元素群が導入されているため、カーボンナノチューブの最外層上、もしくは最外層から1層目又は数層目の内層上に、多くのキャリアを生成することができ、導電性に寄与するキャリアを増大させることができるので、当該カーボンナノチューブの導電性が向上し、従来のドープ処理が施されたカーボンナノチューブ複合体よりも高導電化を実現することができ、電気的特性を大幅に向上させたカーボンナノチューブ複合体及びカーボンナノチューブ線材を提供することが可能となる。また、カーボンナノチューブ束の空隙部に導入された異種元素群により、温度上昇に伴うカーボンナノチューブの格子振動の増大が抑制され、優れた抵抗温度係数を有するカーボンナノチューブ複合体を提供することができ、高温環境下においても電気的特性を大幅に向上させることができる。
また、カーボンナノチューブ束が、ドーピング処理の効果を最大限に引き出すことができる層数(2層又は3層)を有するCNTを有することにより、従来のカーボンナノチューブ線材と比較して、更なる低抵抗化を実現し、銅の抵抗率1.68×10−6Ω・cmやアルミニウムの抵抗率2.65×10−6Ω・cmとほぼ同等の抵抗率を実現することができる。
本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の構成を概略的に示す図であり、(a)及び(b)は、カーボンナノチューブ線材の斜視図と電子顕微鏡画像、(c)及び(d)は、カーボンナノチューブ複合体の斜視図とその電子顕微鏡画像、(e)及び(f)は、カーボンナノチューブ複合体を構成するカーボンナノチューブの斜視図とその電子顕微鏡画像を示す。 図1(c)のカーボンナノチューブ複合体の詳細構成を示す模式図である。 ドープされた異種元素群を構成する構成単位の配置例を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。 ドープされた異種元素群を構成する構成単位の配置例を示す側面図である。 異種元素群を構成する複数の構成単位が、カーボンナノチューブ束の空隙部に充填された状態の一例を示す正面図である。 浮遊触媒気相成長法によりカーボンナノチューブを製造する製造装置の一例を示す図である。 本実施例におけるカーボンナノチューブ複合体の断面を示す電子顕微鏡画像である。 図7の電子顕微鏡画像における異種元素群の構成単位の輝度と当該構成単位の配向との関係を説明する図である。 ラマンスペクトル分光法におけるCNT及びポリヨウ素由来のラマンスペクトルを示すグラフであり、(a)は実施例におけるカーボンナノチューブ複合体の測定結果、(b)は比較例におけるカーボンナノチューブ複合体の測定結果を示す。 本発明のCNT複合体と銅線についての、室温での抵抗率に対する温度毎の抵抗率の比を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)〜(f)は、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の構成を概略的に示す図である。なお、図1におけるカーボンナノチューブ線材は、その一例を示すものであり、本発明に係る各構成の形状、寸法等は、図1のものに限られないものとする。
<カーボンナノチューブ線材の構成>
本実施形態に係るカーボンナノチューブ線材1(以下、CNT線材という)は、図1(a)及び(b)に示すように、1層以上の層構造を有するカーボンナノチューブの束に異種元素がドープされてなるカーボンナノチューブ複合体11,11,・・・(以下、CNT複合体という)の複数を束ねて構成されている。CNT線材1の外径は、0.01〜10mm、より好ましくは0.01〜1mmである。
CNT複合体11では、図1(c)及び(d)に示すように、複数のカーボンナノチューブ11a,11a,・・・(以下、CNTという)が纏められた束状体となっており、これら複数のCNTの軸方向がほぼ揃って配されている。また、CNT束には異種元素がドープされている。本実施形態では、CNT束11Aに異種元素をドープさせたものをCNT複合体と称する。
CNT11aは、単層構造又は複層構造を有する筒状体であり、それぞれSWNT(single-walled nanotube)、MWNT(multi-walled nanotube)と呼ばれる。図1(c)〜(f)では便宜上、2層構造を有するCNTのみを記載しているが、実際には、3層構造を有するCNTが存在する。単層構造又は4層以上の層構造を有するCNTはCNT束11Aに含まれてもよいが、2層又は3層構造を有するCNTに比べて少量である。
<CNT複合体の構成>
図2は、図1(c)に示すCNT複合体11の詳細構成を示す模式図である。説明の便宜上、図2における各構成要素は、実際とは異なる寸法、形状等で記載されており、本発明におけるCNT複合体の各構成要素は、図2のものに限られない。
同図に示すように、CNT複合体11は、2層の層構造を有する複数のCNT11a,11a,・・・が束ねられてなるCNT束11Aと、複数のCNT11a,11a,・・・間の空隙部11Bに整列して導入された異種元素群12とを備える。本実施形態では、複数のCNT11a,11a,・・の最外層間に複数の空隙部11Bが形成されており、この複数の空隙部11Bにそれぞれ複数の異種元素12a,12a,・・・が配置される。空隙部11Bは、CNT束11Aの長手方向に沿って形成されており、当該空隙部に配置された複数の異種元素12aもCNT束11Aの長手方向、換言すればCNT11aの長手方向に沿って並んで配置されている。異種元素群12を構成する複数の異種元素12aは、空隙部11Bに充填されているのが好ましい。
(CNTの構成)
CNT束11Aを構成するCNT11aは、六角形格子の網目構造を有する2つの筒状体T1,T2が略同軸で配された3次元網目構造体となっており(図2(a))、DWNT(Double-walled nanotube)と呼ばれる。構成単位である六角形格子は、その頂点に炭素原子11a−1(図3参照)が配された六員環であり、他の六員環と隣接してこれらが連続的に結合している。
CNT11aの性質は、上記のような筒状体のカイラリティ(chirality)に依存する。カイラリティは、アームチェア型、ジグザグ型、及びそれ以外のカイラル型に大別され、アームチェア型は金属性、カイラル型は半導体性、ジグザグ型はその中間の挙動を示す。よってCNTの導電性はいずれのカイラリティを有するかによって大きく異なり、CNT集合体の導電性を向上させるには、金属性の挙動を示すアームチェア型のCNTの割合を増大させることが重要とされてきた。一方、半導体性を有するカイラル型のCNTに電子供与性もしくは電子受容性を持つ物質(異種元素)をドープすることにより、金属的挙動を示すことが分かっている。また、一般的な金属では、異種元素をドープすることによって金属内部での伝導電子の散乱が起こって導電性が低下するが、これと同様に、金属性CNTに異種元素をドープした場合には、導電性の低下を引き起こす。
このように、金属性CNT及び半導体性CNTへのドーピング効果は、導電性の観点からはトレードオフの関係にあると言えることから、理論的には金属性CNTと半導体性CNTとを別個に作製し、半導体性CNTにのみドーピング処理を施した後、これらを組み合わせることが望ましい。しかし、現状の製法技術では金属性CNTと半導体性CNTとを選択的に作り分けることは困難であり、金属性CNTと半導体性CNTが混在した状態で作製される。このため、金属性CNTと半導体性CNTの混合物からなるCNT線材の導電性を向上させるには、異種元素・分子によるドーピング処理が効果的となるCNT構造を選択することが好ましい。
複数のCNT11a,11a,・・・の集合体で構成されるCNT束11Aにおいて、複数のCNT11a,11a,・・・の個数に対する、2層構造又は3層構造を有するCNTの個数の和の比率が50%以上であるのが好ましく、75%以上であるのがより好ましい。すなわち、一のCNT束を構成する全CNTの総数をNTOTAL、上記全CNTのうち2層構造を有するCNT(2)の数の和をNCNT(2)、上記全CNTのうち3層構造を有するCNT(3)の数の和をNCNT(3)としたとき、下記式(1)で表すことができる。
(NCNT(2)+NCNT(3))/NTOTAL×100(%)≧50(%) ・・・(1)
2層構造又は3層構造のような層数が少ないCNTは、それより層数の多いCNTよりも比較的導電性が高い。また、ドーパントは、CNTの最内層の内部、もしくは複数のCNTで形成されるCNT間の隙間に導入される。CNTの層間距離はグラファイトの層間距離である0.335nmと同等であり、多層CNTの場合その層間にドーパントが入り込むことはサイズ的に困難である。このことからドーピング効果はCNTの内部および外部にドーパントが導入されることで発現するが、多層CNTの場合は最外層および最内層に接していない内部に位置するチューブのドープ効果が発現しにくくなる。以上のような理由により、複層構造のCNTにそれぞれドーピング処理を施した際には、2層構造又は3層構造を有するCNTでのドーピング効果が最も高い。また、ドーパントは、強い求電子性もしくは求核性を示す、反応性の高い試薬であることが多い。単層構造のCNTは多層よりも剛性が弱く、耐薬品性に劣るためにドーピング処理を施すと、CNT自体の構造が破壊されてしまうことがある。よって本発明ではCNT集合体に含まれる2層構造又は3層構造を有するCNTの個数に着目する。また、2層又は3層構造のCNTの個数の和の比率が50%未満であると、単層構造或いは4層以上の複層構造を有するCNTの比率が高くなり、CNT集合体全体としてドーピング効果が小さくなり、高導電率が得にくくなる。よって、2層又は3層構造のCNTの個数の和の比率を上記範囲内の値とする。
また、CNT束11Aを構成するCNTの最外層の外径は5.0nm以下であるのが好ましい。CNT束11Aを構成するCNTの最外層の外径が5.0nmを超えると、CNT間および最内層の隙間に起因する空孔率が大きくなり、導電性が低下してしまうため、好ましくない。
また、CNT束11Aを構成するCNTには、欠陥が無い方が好ましいが、欠陥が在っても良い。欠陥が在るCNTに異種元素をドープした場合、欠陥が無いCNTに同一の異種元素をドープした場合と比較して、欠陥が在るCNTを用いたCNT複合体の吸着性が向上するため、欠陥にドーパントを吸着させることで、ドーパントの安定性をより向上することができると推察される。
(CNT複合体における異種元素の配置)
図3はドープされた異種元素群12を構成する構成単位の配置例を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、図4は、その側面図である。図3及び図4では、異種元素群12がポリヨウ素群であり、該ポリヨウ素群の構成単位が、直鎖状に連なった複数のヨウ素からなるヨウ素結合体である場合を例に挙げて説明する。
図3(a)に示すように、ヨウ素結合体12A−1(異種元素結合体)を構成する複数のヨウ素(異種元素)12a−1,12a−1,・・・は、CNT11aの長手方向Xに沿って並んで配置されている。ヨウ素結合体12A−1が、例えばポリヨウ素(I)からなる場合、3つのヨウ素が、CNT11aの長手方向Xに沿って並んで配置されている。また、ヨウ素結合体12A−1における隣接するヨウ素12a−1,12a−1間の距離L1は、2.6オングストローム〜3.0オングストローム(Å)である。ポリヨウ素(I)を上記のように配置することにより、CNT11aの最外層(T2)上に多くのキャリアを生成することができ、CNT11aの導電性が向上すると推察される。
ポリヨウ素(I)をドーパントとして使用すると、主にポリヨウ素イオン(I )として存在し、このポリヨウ素イオンがCNTから電子を受け取る。そのため、CNT11aにヨウ素12a−1をドープすることにより、CNT束11Aの導電性が向上すると推察される。ヨウ素結合体12A−1が他のポリヨウ素、例えばポリヨウ素(I)からなる場合も同様に、5つのヨウ素からなるポリヨウ素あるいはポリヨウ素イオン(I )が、CNT11aの長手方向Xに沿って並んで配置されると推察される。これにより、温度上昇によるCNT11aの格子振動が抑制されると推察される。
異種元素結合体を構成する複数の異種元素12a,12a,・・・は、それぞれCNT11aの径方向断面における中心から一定距離で配置されるのが好ましい。異種元素結合体がポリヨウ素(I)からなる場合、ヨウ素結合体12A−1において、3つのヨウ素12a−1が、それぞれCNT11aの径方向断面における中心Pから一定距離L2で配置される(図3(b)及び図4)。このようなポリヨウ素の配向により、CNT11aの最外層(T2)とヨウ素結合体における各要素との間隔のばらつきを防止することができ、温度上昇によるCNTの格子振動を更に抑制することが可能となる。
(異種元素の種類及び含有量)
図3及び図4では、異種元素群12を構成する異種元素結合体がポリヨウ素である場合を挙げたが、他の異種元素からなるものであってもよい。すなわち、ヨウ素を含む第17族元素に代表されるp型ドーパントのみならず、リチウムを含む第1族元素やストロンチウムを含む第2族元素に代表されるn型ドーパントを用いることができる。具体的には、上記異種元素が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素からなる群から選択された少なくとも1つの元素であるのが好ましい。また、上記群から選択された少なくとも1つの異種元素は、原子或いは分子、又はイオンの状態で存在し得る。これにより、ドーパントの安定性が良好となり、CNT11a上に安定なドーパントが位置することで、良好な温度特性を安定して発揮することができる。
CNT複合体11における異種元素12aの含有量は、原子組成百分率で1原子%(0.71質量%)以上であるのが好ましい。特に、異種元素12aがヨウ素である場合、ヨウ素の含有量は、原子組成百分率で1原子%以上2.5原子%以下であるのがより好ましい。異種元素群12を構成する複数の異種元素12a,12a、・・・が、CNT11aの長手方向に沿って並んで配置され、且つ上記範囲内の値でドープされることで、図5の正面図に示すように、異種元素12aがCNT束11Aの空隙部11Bに整列して充填される。これにより、空隙部11Bにおける異種元素の充填率が増大し、CNT11aの最外層(T2)上のキャリアがより増大すると共に、温度上昇によるCNTの格子振動が更に抑制される。
<前記カーボンナノチューブに由来するGバンドのピークに対する、ポリヨウ素に由来するピークの比であるpI/Gが、0.2以上であること>
ラマン分光法を用いて炭素系の物質を解析すると、ラマンシフト1590cm−1付近に、Gバンドと呼ばれる、六員環の面内振動に由来するスペクトルのピークが検出される。また、CNTでは、その形状が円筒状であるためにGバンドが2つに***し、G+バンドとG−バンドの2つのスペクトルのピークが現れる。G+バンドはCNT軸方向の縦波(LO)モード、G−バンドは軸方向に垂直な横波(TO)モードにそれぞれ対応しており、G+バンドのピークは、CNTの外径に因らず1590cm−1付近に現れるのに対し、G−バンドのピークは、CNTの外径の2乗に反比例してG+バンドからシフトして現れる。
また、金属性CNTのGバンドは、上述のようにG+バンドとG−バンドに***して現れるが、そのピークは小さく、特にG+バンドのピークが小さい。一方、半導体性CNTもG+バンドとG−バンドに***するが、そのG+バンドのピークは、金属性CNTのG+バンドと比較して非常に大きい。よって、GバンドにおけるG+バンドの比率が高い場合、CNTが半導体性の挙動を示すと推察され、CNT集合体においても同様に推察することができる。
上記のようなスペクトルピークの特性を前提として、本実施形態のCNT複合体11では、例えば異種元素がポリヨウ素である場合、ラマン分光法におけるラマンスペクトルにおいて、CNTに由来するGバンドのピークに対する、ポリヨウ素に由来するピークの比であるpI/Gが、0.2以上であり、好ましくは0.3以上である。このとき、波長532nmのレーザを用い、ラマンシフト150〜180cm−1に現れるポリヨウ素由来のピークと、1590cm−1付近に現れるCNT由来のGバンドのピークとの比を算出する。pI/Gが、0.2未満であると、空隙部への充填が不十分となり、電荷移動が十分には起こらず、格子振動を抑える効果も小さくなるため、温度特性の改善度合も悪くなる。よってpI/Gを上記範囲内の値とする。
<カーボンナノチューブ複合体の製造方法>
本実施形態のCNT複合体は、以下の方法で製造される。先ず、浮遊触媒気相成長(CCVD)法により、炭素源に触媒及び反応促進剤を含む混合物を供給して、複数のCNTを生成する。このとき、炭素源には六員環を有する飽和炭化水素、触媒には鉄などの金属触媒、反応促進剤には硫黄化合物をそれぞれ用いることができる。また本実施形態では、キャリアガス流量の増加に伴ってSWNTの割合が減少する点を考慮し、原料組成及び噴霧条件を調整して2層又は3層構造を有するCNTの比率を高める。
また、CNTの最外層の外径が5.0nm以下となるように触媒である鉄の大きさを調整するため、原料は噴霧によりミスト粒径が20μm前後となるよう反応炉に供給を行う。その後、複数のCNT束を撚り合わせて、CNT集合体を作製する。
その後、CNT集合体に酸処理を施すことで、残留した鉄触媒を除去する。CCVDによって得られるCNT集合体中には、触媒やアモルファスカーボンなどが多量に含まれており、これらを除去する高純度化プロセスによってCNT集合体の本来の特性を得ることができる。本実施形態では、上記工程にて得られたCNTを大気下、所定温度で加熱し、加熱後のCNTを強酸にて高純度化する。
次いで、酸処理後のCNT束にドーピング処理を施し、CNT束の空隙部に異種元素がドープされたCNT複合体11及びCNT線材1を作製する。ドーピング処理では、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素からなる群から選択される1つ以上の異種元素がドープされるのが好ましい。ドーパントは外周側からCNTに注入されるため、CNTが複層(MWNT)である場合には、より外周側に位置する層が優先的にドープされ、内部の層はドープされ難い。そこで本実施形態では、1層〜3層のドーピング量が多く、4層目以降ではドーピング量が少なくなるとの推察に基づき、2層又は3層構造を有するCNTの個数比率が75%以上とすることにより、CNT束全体へのドーピング量を増大させることができ、優れたドーピング効果が得られる。また本実施形態では、CNT束の空隙部に異種元素を整列して導入するために、250℃〜500℃の雰囲気において1〜24時間焼成する。
上述したように、本実施形態によれば、CNT束11Aを構成する複数のCNT11a,11a,・・・間の空隙部11Bに異種元素群12が整列して導入されているため、CNT11aの最外層(T2)上、もしくは最外層から1層目又は数層目の内層上に、多くのキャリアを生成することができ、導電性に寄与するキャリアを増大させることができるので、当該CNTの導電性が向上し、従来のドープ処理が施されたCNT複合体よりも高導電化を実現することでき、電気的特性を大幅に向上させたCNT複合体11及びCNT線材1を提供することが可能となる。また、CNT束11Aの空隙部11Bに導入された異種元素群12により、温度上昇に伴うCNTの格子振動の増大が抑制され、優れた抵抗温度係数を有するCNT複合体11を提供することができ、高温環境下においても電気的特性を大幅に向上させることができる。
また、CNT束11Aが、ドーピング処理の効果を最大限に引き出すことができる層数(2層又は3層)を有するCNT11aを有することにより、従来のCNT線材と比較して、更なる低抵抗化を実現し、また、銅の抵抗率1.68×10−6Ω・cmやアルミニウムの抵抗率2.65×10−6Ω・cmとほぼ同等の抵抗率を実現することができる。
以上、本発明の実施形態に係るCNT複合体及びCNT線材について述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、上記実施形態のCNT複合体が束ねられてなる線材と、該線材の外周を被覆する被覆層とを備えるCNT被覆電線を構成してもよい。特に、本実施形態のCNT複合体及びCNT線材は、電力や信号を伝送するための電線用線材の材料として好適であり、四輪自動車などの移動体に搭載される電線用線材としてより好適である。金属電線よりも軽量になり燃費の向上が期待されるためである。
また、上記カーボンナノチューブ被覆電線を少なくとも1つを有するワイヤハーネスを構成してもよい。
以下、本発明の実施例を説明する。なお本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
浮遊触媒気相成長(CCVD)法を用い、図6に示すようなCNT製造装置にて、電気炉21によって1300℃に加熱された、内径φ60mm、長さ1600mmのアルミナ管22内部に、炭素源であるデカヒドロナフタレン、触媒であるフェロセン、及び反応促進剤であるチオフェンを含む原料溶液Lqを、スプレー噴霧により供給した。キャリアガスGsは、水素を9.5L/minで供給した。得られたCNTを回収機23にてシート状に回収し、これを巻いて撚りをかけることによりCNT束を製造した。次に、得られたCNT束を、大気下において500℃に加熱し、さらに酸処理を施すことによって高純度化を行った。その後、高純度化したCNT束にヨウ素を250℃〜500℃の雰囲気において1〜24時間焼成してドーピング処理を施し、ヨウ素がドープされたCNT複合体を得た。
(実施例2)
ドーパントとしてヨウ素に代えて臭素を用いてドーピング処理を施したこと以外は、実施例1と同様の方法にてCNT複合体を作製し、臭素がドープされたCNT複合体を得た。
(実施例3)
ドーパントとしてヨウ素を用い、実施例1よりヨウ素のドープ量を多くした以外は、実施例1と同様の方法にてCNT複合体を作製し、臭素がドープされたCNT複合体を得た。
(実施例4)
ドーパントとしてヨウ素を用い、実施例1よりヨウ素のドープ量を多くし、更に焼成温度を400〜600℃にした以外は、実施例1と同様の方法にてCNT複合体を作製し、臭素がドープされたCNT複合体を得た。
(実施例5)
ドーパントとして臭素を用い、実施例2より臭素のドープ量を多くした以外は、実施例1と同様の方法にてCNT複合体を作製し、臭素がドープされたCNT複合体を得た。
(実施例6)
ドーパントとして臭素を用い、実施例2より臭素のドープ量を多くし、更に焼成温度を400〜600℃にした以外は、実施例1と同様の方法にてCNT複合体を作製し、臭素がドープされたCNT複合体を得た。
(比較例1)
比較例1について、1層構造で、ヨウ素がドープされたCNT複合体を得た。得られたCNT複合体における抵抗率、ドープ量及びpI/G比を、実施例と同様方法にて測定した。
(比較例2)
ドーピング処理を施さないこと以外は、実施例1と同様の方法にてCNT束を作製した。得られたCNT複合体における抵抗率、ドープ量及びpI/G比を、実施例と同様方法にて測定した。
(比較例3)
特表2014−517797号公報の実施例6に基づいて、2層CNT束をヨウ素の蒸気の中に200℃で10時間に亘って置き、ヨウ素をドープしたCNT束を作製した。得られたCNT複合体における抵抗率、ドープ量及びpI/G比を、実施例と同様方法にて測定した。
次に、下記の方法にてCNT複合体の構造、特性を測定、評価した。
(a)ドーパントの配置(配向性)の評価
上記条件により生成したCNT複合体の断面を、図7に示すように透過型電子顕微鏡で観察及び解析し、ドープされた元素(図7ではポリヨウ素)の明るさに基づいて、空隙部に充填されているドープされた元素の配向性を目視により判定した。具体的には、図8(a)に示すように、CNT複合体の上記断面において、発光強度が相対的に強い部分では、ポリヨウ素(I)を構成する3つのヨウ素12a−1,12a−1,12a−1が光軸方向に並んで配向していると判断することができ、また、光軸方向とCNTの軸方向がほぼ平行であることから、当該3つのヨウ素12a−1,12a−1,12a−1がCNTの軸方向に沿って並んで配置された状態(良好「〇」)であると判断した。一方、発光強度が相対的に弱い部分では(図8(b))、ポリヨウ素(I)を構成する3つのヨウ素が光軸方向と略平行に配向しておらず、1つのヨウ素12a−1が位置している状態、又は2つのヨウ素が位置している状態(不良「×」)であると判断した。
(b)CNT複合体におけるドープ量の測定
上記条件により生成したCNT複合体において、該CNT複合体にドープされたヨウ素のドープ量(含有量)を燃焼イオンクロマトグラフィー(Combustion-Ion Chromatography,CIC、Thermo Fisher Scientific社製、装置名「ICS−3000」)により測定した。
(c)CNT複合体におけるpI/G比の測定
ラマン分光装置(Thermo Fisher Scientific社製、装置名「ALMEGA XR」により、励起レーザ:532nm、レーザ強度:10%に減光、対物レンズ:50倍、露光時間:1秒×60回の条件にて測定し、ラマンスペクトルを得た。次に日本分光社製のスペクトル解析ソフトSpectra Managerにより、ラマンスペクトルの100〜2000cm-1のデータを切り出し、この範囲で検出されるピーク群をCurve Fittingにより分離解析を行った。尚、ベースラインは100cm-1と2000cm-1での検出強度を結んだ線とする。CNT由来及びポリヨウ素由来のラマンスペクトルを示すグラフを図9に示す。なお、Gバンドのうち、1590cm-1付近に検出される最も大きい強度で検出されるピークがG+バンド、これよりも低波数側で1550〜1590cm-1付近に観測されるピークがG−バンドである。また、Dバンドは、CNTの欠陥(結晶性)に由来するピークである。pI/G比については、上記と同様に切り出したラマンスペクトルから、Gバンドとヨウ素に起因するスペクトルのそれぞれのピークトップ高さ(ピークトップからベースラインの値を差し引いた検出強度)から算出した。
(d)CNT複合体の抵抗率測定
抵抗測定機(ケースレー社製、装置名「DMM2000」)にCNT複合体を接続し、4端子法により抵抗測定を実施した。抵抗率は、r=RA/L(R:抵抗、A:CNT複合体の断面積、L:測定長さ)の計算式に基づいて抵抗率を算出した。
上記実施例1〜6及び比較例1〜3の測定結果を、表1に示す。
Figure 2017164249
実施例1〜6では、1000〜2000cm−1付近に明瞭なGバンドとDバンドに由来するスペクトルピークが観測され、また、実施例1,3,4では150〜180cm−1にポリヨウ素に由来するスペクトルピークが観測された。そして、実施例1では、ヨウ素のドープ量が1.3原子%(12質量%)であり、pI/G比が0.40(図9(a))、このときの抵抗率が8.5×10−6Ω・cmであった。実施例2では、臭素のドープ量が1.4原子%(8.5質量%)であり、このときの抵抗率が1.2×10−5Ω・cmであった。実施例3では、ヨウ素のドープ量が2.1原子%(19質量%)であり、pI/G比が7.7、このときの抵抗率が9.6×10−6Ω・cmであった。実施例4では、ヨウ素のドープ量が5.3原子%(49質量%)であり、pI/G比が19.6、このときの抵抗率が1.1×10−5Ω・cmであった。実施例5では、臭素のドープ量が1.9原子%(12質量%)であり、このときの抵抗率が2.0×10−5Ω・cmであった。実施例6では、臭素のドープ量が4.8原子%(29質量%)であり、このときの抵抗率が2.2×10−5Ω・cmであった。
一方、比較例1では、ヨウ素のドープ量が0.24原子%(2.2質量%)、pI/G比が0.070であり(図9(b))、抵抗率が3.4×10−5Ω・cmであり、ドープ量が1原子%未満、及びpI/G比が0.2未満となり、実施例1〜6に対して抵抗率が劣った。
また、ドーピング処理を施さなかった比較例2では、抵抗率が7.8×10−5Ω・cmとなり、実施例1〜6に対して抵抗率が劣った。
また、比較例3のヨウ素ドープしたCNT複合体では、抵抗率が2.5×10−5Ω・cmとなり、実施例1〜6に対して抵抗率が劣った。
よって、CNT束の空隙部にドーパントであるヨウ素を充填してヨウ素群を形成し、該ヨウ素群を構成するポリヨウ素をCNTの長手方向に沿って並べて配置し、とりわけ上記ヨウ素のドープ量が1.3原子%以上であると、従来のCNT複合体と比較して、低抵抗化及び高導電化を実現できることが分かった。
(e)温度環境の影響
また、実施例1のCNT束及び銅線(copper)の抵抗率に対する温度の影響を比較した。抵抗測定機(ケースレー社製、装置名「DMM2000」)にCNT複合体または銅線を接続し、4端子法により抵抗測定を実施した。抵抗率は、r=RA/L(R:抵抗、A:線材の断面積、L:測定長さ)の計算式に基づいて抵抗率を算出し、室温の抵抗率に対する温度毎の抵抗率の比を算出した。結果を図10のグラフに示す。この比較結果より、本発明のCNT複合体は、銅線に比して温度上昇に伴う抵抗率の増加割合が緩やかであり、CNT複合体の方が銅線より高温環境下での高導電性に優れることが分かった。
1 カーボンナノチューブ線材(CNT線材)
11 カーボンナノチューブ複合体(CNT複合材)
11A カーボンナノチューブ束(CNT束)
11a カーボンナノチューブ(CNT)
11B 空隙部
12 異種元素群
12A−1 ヨウ素結合体
12a 異種元素
12a−1 ヨウ素
21 電気炉
22 アルミナ管
23 回収機
P 中心
T1 筒状体
T2 筒状体
L1 距離
L2 一定距離

Claims (9)

  1. 1層以上の層構造を有する複数のカーボンナノチューブが束ねられてなるカーボンナノチューブ束と、
    前記複数のカーボンナノチューブ間の空隙部に整列して導入された異種元素群と、を備えることを特徴とする、カーボンナノチューブ複合体。
  2. 前記異種元素群を構成する異種元素結合体が、前記カーボンナノチューブの長手方向に沿って並んで配置されることを特徴とする、請求項1記載のカーボンナノチューブ複合体。
  3. 前記異種元素結合体を構成する複数の異種元素が、それぞれ前記カーボンナノチューブの径方向断面における中心から一定距離で配置されることを特徴とする、請求項2記載のカーボンナノチューブ複合体。
  4. 前記異種元素の含有量が、1原子%以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ複合体。
  5. 前記異種元素が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、バリウム、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択された1つ以上の元素であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ複合体。
  6. 前記複数の異種元素がヨウ素からなり、
    前記異種元素結合体における隣接するヨウ素間距離が、2.6オングストローム〜3.0オングストロームであることを特徴とする、請求項5記載のカーボンナノチューブ複合体。
  7. 前記複数の異種元素がヨウ素からなり、
    ラマン分光法におけるラマンスペクトルにおいて、前記カーボンナノチューブに由来するGバンドのピークに対する、ポリヨウ素に由来するピークの比であるpI/Gが、0.2以上であることを特徴とする、請求項5又は6記載のカーボンナノチューブ複合体。
  8. 前記カーボンナノチューブが、2層又は3層の層構造を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ複合体。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ複合体を複数束ねてなるカーボンナノチューブ線材。
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