以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。なお、いずれの図面も説明のために要部を強調して示したものであり、実際の寸法とは異なる場合がある。
図1は、本発明に係る内視鏡用外科手術装置の概略構成図である。図1に示すように内視鏡用外科手術装置10は、患者の体腔内を観察する内視鏡100と、患者の体腔内の患部を検査又は処置するための処置具200と、体壁に刺入されて内視鏡100及び処置具200を体腔内に案内する外套管300と、を備える。
内視鏡100は、例えば腹腔鏡などの硬性内視鏡であり、体腔内に挿入され、細長い硬性の管状部材により外周部が囲まれた挿入部102(以下、「内視鏡挿入部」という。)と、内視鏡挿入部102の基端側に連設され、細長い軟性の管状部材により外周部が囲まれたケーブル部104とを備える。
ケーブル部104は、内視鏡挿入部102の基端から延在するケーブルやライトガイドなどの線材を、例えばポリ塩化ビニルなどの軟性の絶縁性部材により被覆して内部に収容した軟性のケーブルの部分を示す。
このケーブル部104の延在先の端部には、不図示のコネクタが設けられており、そのコネクタを介してプロセッサ装置108と光源装置110の各々が着脱自在に接続される。また、プロセッサ装置108は、ケーブルを介してモニタ112に接続される。
図2に示すように、内視鏡挿入部102の先端面114には、観察窓116及び照明窓118、118が設けられる。
観察窓116は内視鏡100の観察部の構成要素であり、その観察窓116の後方には観察光学系の対物レンズや、この対物レンズの結像位置に配置されたCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子が配設されている。なお、本明細書では観察窓116もレンズの一種として後述のように観察窓116の洗浄をレンズ洗浄というものとする。この観察部の撮像素子に接続される不図示の信号ケーブルは図1の内視鏡挿入部102及びケーブル部104を挿通してコネクタ(不図示)まで延設され、プロセッサ装置108に接続される。観察窓116から取り込まれた観察像は、撮像素子の受光面に結像されて電気信号(撮像信号)に変換され、この電気信号が信号ケーブルを介してプロセッサ装置108に出力されて映像信号に変換される。そして、この映像信号はプロセッサ装置108に接続されたモニタ112に出力され、モニタ112の画面上に観察画像(内視鏡画像)が表示される。
図2の照明窓118、118の後方にはライトガイド(不図示)の出射端が配設されている。このライトガイドは、図1の内視鏡挿入部102及びケーブル部104を挿通してコネクタ(不図示)内に入射端が配設される。したがって、このコネクタを光源装置110に連結することによって、光源装置110から照射された照明光がライトガイドを介して照明窓118、118に伝送され、照明窓118、118から前方に照射される。なお、図2では、内視鏡挿入部102の先端面114には2つの照明窓118、118が配設されているが、照明窓118の数には限定はなく、その数は1つでもよいし3つ以上であってもよい。
図1に示すように、処置具200は、例えば鉗子からなり、体腔内に挿入される細長い挿入部202(以下、「処置具挿入部」という。)と、処置具挿入部202の基端側に設けられ、術者に把持される操作部204と、処置具挿入部202の先端側に設けられ、操作部204の操作によって動作可能な処置部206と、を備える。
処置具挿入部202は、筒状のシース208と、このシース208内に軸心方向に移動自在に挿通された操作軸(不図示)とが設けられている。さらに操作部204は、固定ハンドル210とこの固定ハンドル210に対して回動ピンを介して回動可能に連結された可動ハンドル214が設けられている。そして、可動ハンドル214に操作軸の基端部が連結されている。
処置部206には、開閉可能な一対の把持部材が設けられている。これらの把持部材は操作軸の先端部に図示しない駆動機構を介して連結されている。そして、操作部204の可動ハンドル214の回動操作に伴い操作軸及び駆動機構を介して処置部206の把持部材が開閉されるようになっている。
なお、処置具200としては、鉗子に限らず、例えば、レーザープローブ、縫合器、電気メス、持針器、超音波デバイス、吸引器などの他の処置具であってもよい。
図1に示すように、外套管300は、基端側から内部に挿入された内視鏡挿入部102と処置具挿入部202とを挿通させて先端側から繰り出す。この外套管300を体壁に刺入し、基端側を体外に、先端側を体腔内に配置することにより、1つの外套管300で内視鏡挿入部102と処置具挿入部202とを体腔内に案内することを可能にしている。また、外套管300は、詳細を後述するように内視鏡挿入部102と処置具挿入部202とを連動させて進退移動させる連動機能を備えており、例えば、処置具挿入部202のみの進退操作によって内視鏡挿入部102も進退移動させることができ、内視鏡挿入部102の進退操作を行うことなく適切な観察画像を得ることを可能にしている。
図3は、外套管300を示した外観斜視図である。
同図に示すように、外套管300は、全体が長細い円柱状の形状を有し、その中心軸を示す基準軸300a(長手軸)に平行して、内視鏡100の内視鏡挿入部102が進退自在に挿通される内視鏡挿通路306と処置具200の処置具挿入部202が進退自在に挿通される処置具挿通路308とを有する。
内視鏡挿通路306の中心軸を内視鏡挿通軸306aというものとし、処置具挿通路308の中心軸を処置具挿通軸308aというものとすると、内視鏡挿通軸306a及び処置具挿通軸308aは、互いに平行し、基準軸300aとも平行する。これらの内視鏡挿通軸306aと処置具挿通軸308aは、内視鏡挿通路306と処置具挿通路308の各々に挿通された内視鏡挿入部102と処置具挿入部202の中心軸の位置に相当する。また、本実施の形態では、基準軸300a、内視鏡挿通軸306a、及び処置具挿通軸308aは同一平面上に配置される。ただし、基準軸300a、内視鏡挿通軸306a、及び処置具挿通軸308aが同一平面上に配置された構成でなくてもよい。
なお、外套管300が配置された空間の位置や向きに関して、基準軸300aに沿った方向の基端面302から先端面304への向きを前、基準軸300aから内視鏡挿通軸306aへの向きを左として、前、後、左、右、上、下という用語を用いる。
外套管300の基端面302には、内視鏡挿入部102を内視鏡挿通路306に挿入する基端開口である内視鏡挿入口310と、処置具挿入部202を処置具挿通路308に挿入する基端開口である処置具挿入口314が設けられる。
外套管300の先端面304には、内視鏡挿通路306に挿入された内視鏡挿入部102を外部に繰り出す先端開口である内視鏡繰出口312と、処置具挿通路308に挿入された処置具挿入部202を外部に繰り出す先端開口である処置具繰出口316とが設けられる。
また、外套管300の基端面302には、洗浄用コネクタ318が設けられる。洗浄用コネクタ318(基端側接続口)には図1に示した送水チューブ122の一方の端部が接続され、他方の端部が流体供給吸引装置120(流体供給吸引手段)に接続される。詳細は後述するが、流体供給吸引装置120は、内視鏡挿入部102の先端面114に設けられた観察窓116を洗浄する後述のレンズ洗浄機能に用いられる装置であり、洗浄水(洗浄のための任意の液体)の供給と吸引とを行う機能を有する。
この流体供給吸引装置120から洗浄水を送水チューブ122の管路に供給すると、その洗浄水が洗浄用コネクタ318から外套管300の内部に形成された流体通路に送られ、その流体通路を通じて内視鏡挿通路306の先端側内部に開口した後述の流体給排口500から送出される。また、流体供給吸引装置120により送水チューブ122の管路を吸引すると、送水チューブ122及び外套管300内の流体通路が減圧され、流体給排口500からの流体(供給した洗浄水等)の吸引が行われる。
図4は、外套管300の内部構造を示した断面図であり、基準軸300aを含み、かつ、上下方向に直交する平面で切断した(基準軸300aに沿って左右方向に切断した)断面を示す。
同図に示すように、外套管300は、前後方向のほぼ全体を占める筒状体である外套管本体320と、外套管300の後端(基端)に取り付けられる基端キャップ340と、先端部に取り付けられる先端キャップ360と、外套管300の内部に配置されるスライダ400(連動部材)と、を有する。
外套管本体320は、硬質樹脂や金属等により基準軸300aを中心軸とする長細い円筒状に形成されており、外周を囲む外壁322と、外套管本体320の基端から先端まで貫通する空洞部324とを有する。
空洞部324は、内視鏡挿通路306と処置具挿通路308となる空間を内包し、スライダ400等を収容する。
基端キャップ340は、硬質樹脂や金属等により外套管本体320の外径よりも拡径された円柱状に形成され、その後側の端面が外套管300の基端面302を構成する。この基端キャップ340には、内視鏡挿通路306と処置具挿通路308の各々の一部を形成する貫通孔342と貫通孔344とが設けられる。基端面302において、貫通孔342の開口が上述の内視鏡挿入口310に相当し、貫通孔344の開口が上述の処置具挿入口314に相当する。
また、貫通孔342、344には、弁部材346、348が設けられる。これらの弁部材346、348は、例えば、内視鏡挿入部102や処置具挿入部202を挿通する場合にだけ開口して内視鏡挿入部102や処置具挿入部202の外周面(側面)にほぼ隙間なく密接する。これにより弁部材346、348よりも先端側の空間の気密性が確保され、体腔内に注入した気腹ガスの体外への漏れ等が軽減される。
更に、基端キャップ340には、図1に示した細長い円筒状の洗浄用コネクタ318の管路と連通し、基端面302から外套管本体320の空洞部324まで貫通する不図示の貫通孔が形成され、その貫通孔が後述のレンズ洗浄機能のために外套管300に設けられる流体通路の一部として用いられる。詳細は後述する。
先端キャップ360は、硬質樹脂や金属等により形成されており、その前側の端面が外套管300の先端面304を構成する。この先端キャップ360には、内視鏡挿通路306と処置具挿通路308の各々の一部を形成する貫通孔362と貫通孔364とが設けられる。先端面304において、貫通孔362の開口が上述の内視鏡繰出口312に相当し、貫通孔364の開口が処置具繰出口316に相当する。
また、先端キャップ360には、後述のレンズ洗浄機能のための流体給排口500(図4には不図示)が貫通孔362の内壁面に形成されると共に、外套管本体320の空洞部324から流体給排口500まで貫通する貫通孔が、レンズ洗浄機能のために外套管300に設けられる流体通路の一部として形成される。
以上の基端キャップ340及び先端キャップ360は、本発明の外套管本体の構成要素の一部であり、外套管本体320と別体で構成されてもよいし一体で構成されてもよい。
スライダ400は、外套管本体320内(空洞部324)に収容され、基準軸300a方向に進退移動可能に支持される。このスライダ400は、内視鏡挿通路306に挿通された内視鏡挿入部102と、処置具挿通路308に挿通された処置具挿入部202とに連結し、内視鏡挿入部102及び処置具挿入部202のうちのいずれか一方の前後方向(軸方向)への進退移動に対して他方が連動しない不感帯領域と、いずれか一方の進退移動に対して他方が連動する感帯領域とを有する連動部材である。即ち、内視鏡挿入部102は、スライダ400によって、処置具挿入部202の軸方向の進退移動に対して遊びを持って連動するようになっている。
図5は、図4においてスライダ400が配置されている部分を拡大して示した拡大断面図であり、内視鏡挿通路306及び処置具挿通路308の各々に内視鏡挿入部102及び処置具挿入部202を挿通させた状態を示す。図6は、図5における6−6矢視断面図である。
図5、図6に示すように、スライダ400は、スライダ400の構成部品を保持するスライダ本体402(スライダ部材)を有する。図6に示すように、スライダ本体402の平坦な上面404及び下面406には、基準軸300a方向(前後方向)に延在する凸条部408、410が形成される。
一方、外套管本体320内の上部及び下部の各々には、基端キャップ340と先端キャップ360との間に掛け渡された左右一対の長板状のガイド板374、374と、ガイド板376、376とが支持されており、ガイド板374、374との間の隙間とガイド板376、376との間の隙間によって、基端キャップ340から先端キャップ360まで基準軸300a方向に沿って延在するガイド溝370、372が形成される。
スライダ本体402の凸条部408、410の各々は、外套管本体320内において、ガイド溝370、372に嵌入し、上面404及び下面406の各々がガイド板374、374、376、376に接触又は近接した状態に配置される。
これにより、スライダ400は、外套管本体320内において前後方向に進退移動可能に支持され、かつ、上下左右方向への移動や全方向(前後、左右、上下の3軸周り方向)への回転が規制された状態(少なくとも基準軸300a周りの回転が不能な状態)で支持される。また、スライダ400は、基端キャップ340に当接する位置を後端、先端キャップ360に当接する位置を前端とする移動可能範囲内で進退移動する。
なお、ガイド溝370、372は、外套管本体320内に配置されたガイド板374、374、376、376によって形成されるものではなく、外套管本体320の外壁322に形成されたものであってもよいし、他の構成により形成されたものであってもよい。
また、スライダ400は、図4に示すように内視鏡挿入部102と連結(係合)する内視鏡連結部420と、処置具挿入部202と連結(係合)する処置具連結部422とを有する。
内視鏡連結部420は、スライダ本体402の左側に設けられており、外套管本体320内において内視鏡挿通路306となる空間を確保するとともに図5のようにして内視鏡挿入部102が挿通される貫通孔424(図6参照)と、貫通孔424に固定され、内視鏡挿通路306に挿通された内視鏡挿入部102の外周面(側面)に圧接する圧接部材426とを備える。圧接部材426は、図6に示すように弾性ゴムなどの弾性材により環状に形成されている。
これによって、内視鏡挿通路306に内視鏡挿入部102を挿通させたときには、図5のように内視鏡挿入部102が貫通孔424を挿通し、かつ、内視鏡挿入部102の外周面に圧接部材426が圧接(係合)し、内視鏡挿入部102の中心軸が内視鏡挿通軸306aと同軸上に配置される。
そして、内視鏡挿入部102とスライダ400(スライダ本体402)とが圧接部材426を介して連動可能に連結(係合)され、内視鏡挿入部102の前後方向(軸方向)への進退移動に連動してスライダ400(スライダ本体402)も一体的に進退移動する状態となる。
なお、ここでの連結は、圧接部材426の弾性力によるものなので、スライダ400(スライダ本体402)に対して連結される内視鏡挿入部102の係合位置(内視鏡挿入部102においてスライダ400が係合される位置)を任意に調整することができる。
処置具連結部422は、図4に示すようにスライダ本体402の右側に設けられており、図5に示すように処置具挿入部202に連結されるスリーブ440(スリーブ部材)と、スリーブ440を前後方向に進退移動可能にガイドするガイド部460とを備える。
スリーブ440は、図6に示すように円筒状に形成されたスリーブ本体(枠体)444と、スリーブ本体444の内側に固定される圧接部材446とを備える。圧接部材446は、弾性ゴムなどの弾性材により環状に形成されている。
これにより、処置具挿通路308に処置具挿入部202を挿通させたときには、図5のように処置具挿入部202が圧接部材446の内側(図6の貫通孔450)を挿通し、かつ、処置具挿入部202の外周面に圧接部材446が圧接(係合)し、処置具挿入部202の中心軸が処置具挿通軸308aと同軸上に配置される。
そして、処置具挿入部202とスリーブ440とが圧接部材446を介して連動可能に連結され、処置具挿入部202の前後方向(軸方向)への進退移動に連動してスリーブ440も一体的に進退移動する。
また、処置具挿入部202の軸周りの回転に連動してスリーブ440もスライダ本体402に対して回転する。
なお、ここでの処置具挿入部202とスリーブ440との連結は、圧接部材446の弾性力によるものなので、スリーブ440に対して連結される処置具挿入部202の係合位置(処置具挿入部202においてスリーブ440が係合される位置)を任意に調整することができる。
一方、処置具連結部422のガイド部460は、図6に示すように、外套管本体320の空洞部324内において基準軸300a方向に延びるスライダ本体402のガイド面462と、外套管本体320の内周面とで囲まれた空間により形成される。スリーブ440は、このガイド部460の空間に収容配置され、前後方向に移動可能に、かつ、軸周りに回転可能に支持され、上下左右方向への移動が規制された状態で支持される。
また、ガイド部460は、スライダ本体402の基端から先端までの範囲内となるように設けられ、図5に示すようにスライダ本体402の基端側と先端側の各々に、ガイド面462の端縁に沿ってガイド面462に直交する方向に突出形成された端縁部466、468を有する。
これらの端縁部466、468は、ガイド部460の空間に配置されたスリーブ440が前後方向に進退移動した際に、スリーブ440の端部に当接してスリーブ440の移動を規制する。
したがって、スリーブ440は、端縁部466に当接する位置を後端、端縁部468に当接する位置を前端とする移動可能範囲内で進退移動する。ただし、スリーブ440の移動可能範囲の後端と前端は、端縁部466と端縁部468によって規制されたものでなくてもよい。
以上のように構成されたスライダ400によれば、外套管300の内視鏡挿通路306に挿通された内視鏡挿入部102とスライダ本体402とが連結し、外套管300の処置具挿通路308に挿通された処置具挿入部202とスリーブ440とが連結する。
そして、図7に示すようにスリーブ440がスライダ本体402(ガイド部460)に対する移動可能範囲の後端及び前端に到達してない状態において、術者が処置具挿入部202を軸方向(前後方向)に進退移動させるための進退操作を行ったとする。
このとき、スリーブ440がスライダ本体402に対する移動可能範囲内で進退移動した場合には、処置具挿入部202の進退移動に対してスライダ本体402が移動しない。したがって、処置具挿入部202の進退移動に対して内視鏡挿入部102が連動しない不感帯領域での進退操作となる。
一方、図8に示すようにスリーブ440がスライダ本体402に対する移動可能範囲の前端に到達している状態において、処置具挿入部202を前進操作すると、処置具挿入部202とともにスリーブ440及びスライダ本体402が外套管本体320に対して前進する。これによって、内視鏡挿入部102が処置具挿入部202と連動して前進する感帯領域での進退操作となる。
同様に、図9に示すようにスリーブ440がスライダ本体402に対する移動可能範囲の後端に到達している状態において、処置具挿入部202を後退操作すると、処置具挿入部202とともにスリーブ440及びスライダ本体402が外套管本体320に対して後退する。これによって、内視鏡挿入部102が処置具挿入部202と連動して後退する感帯領域での進退操作となる。
したがって、上記のように処置具挿入部202を軸方向に大きく変位させた場合(大振幅の進退動作が行われた場合)には、処置具挿入部202と連動して内視鏡挿入部102が軸方向に変位し、処置具挿入部202の軸方向の変位が小さい場合(小振幅の進退動作が行われた場合)には内視鏡挿入部102が軸方向に変位しないようになっている。
これによって、術者が処置具挿入部202を軸方向に進退操作したとき、処置具挿入部202の軸方向への変位が大きい場合(大振幅の進退動作が行われた場合)には、前後上下左右に内視鏡挿入部102も連動して進退移動するので、術者の意図通りに内視鏡100の視野や向き等を変えることができる。また、視野は常に処置具先端を撮像することになり、処置するために最適な画像が自動で提供される。処置する箇所以外の部分を確認したい場合は、処置具挿入部202を動かすことにより確認ができ、術者が思い通りに操作できる。したがって、術者とは別に内視鏡100の操作を行う助手(スコピスト)を不要にすることができ、術者が助手に対して内視鏡の視野や向き等を逐次指示しなければならないという煩わしさも無くすことができる。
また、処置具挿入部202の軸方向への変位が小さい場合(小振幅の進退動作が行われた場合)には、内視鏡挿入部102が連動しないため、観察画像内における観察対象の大きさが不要に変動してしまうことを防止することができ、遠近感を適切に保ち、安定した観察画像を提供することができる。
図10、図11は、本実施の形態の内視鏡用外科手術装置10を使用して患者の体腔内の患部の処置を行う際の操作の様子を示した説明図であり、図10は、処置具200のみが進退移動するときの操作(不感帯領域での進退操作)の様子を示し、図11は、処置具200と連動して内視鏡100が進退移動するときの操作(感帯領域での進退操作)の様子を示す。
図10の(A)部に示すように、外套管300を患者の体壁に刺入し、体腔内に気腹ガスを注入した後、外套管300の内視鏡挿通路306と処置具挿通路308の各々に内視鏡100(内視鏡挿入部102)と、処置具200(処置具挿入部202)とを挿通させた状態にあるものとする。このとき、内視鏡100は、スライダ400のスライダ本体402に連結され、処置具200はスライダ400のスリーブ440に連結されており、スライダ本体402に対してスリーブ440が移動可能範囲内で移動することによって、処置具200の進退移動に対して内視鏡100が連動しない不感帯領域(遊び)を有して連動する状態となっている。
この状態において、術者が処置具200の操作部204を把持して、処置具200を微小に前進させると、スライダ400のスリーブ440が移動可能範囲の前端に当接するまでの不感帯領域での前進移動に対しては、図10の(B)部に示すように内視鏡100が静止した状態で処置具200のみが前進する。
同様に、術者が処置具200の操作部204を把持して、処置具200を微小に後退させると、スライダ400のスリーブ440が移動可能範囲の後端に当接するまでの不感帯領域での後進移動に対しては、図10の(C)部に示すように内視鏡100が静止した状態で処置具200のみが後退する。
したがって、これらの処置具200の微小な進退操作、即ち、不感帯領域での進退操作に対しては、内視鏡100が進退移動しないので、モニタ112に表示される観察画像の範囲は変化せず、処置具200の微小変位に応じて観察対象の大きさが変動してしまうのを防止することができ、遠近感を適切に保つことができ、安定した観察画像を得ることができる。
図11の(A)部は、外套管300、内視鏡100、及び処置具200が図10の(A)部と同じ状態であることを示す。
この状態において、術者が処置具200の操作部204を把持して、処置具200を大きく前進させると、スライダ400のスリーブ440が移動可能範囲の前端に当接するまでの不感帯領域での前進移動の後、図11の(B)部に示すようにスライダ400の連動機能により処置具200の前進移動と連動して内視鏡100が前進する。
同様に、術者が処置具200の操作部204を把持して、処置具200を大きく後退させると、スライダ400のスリーブ440が移動可能範囲の後端に当接するまでの不感帯領域での後退移動の後、図11の(C)部に示すようにスライダ400の連動機能により処置具200の後退移動と連動して内視鏡100が後退する。
したがって、これらの処置具200の大きな進退操作、即ち、感帯領域での進退操作に対しては、内視鏡100が進退移動するので、モニタ112に表示される観察画像の範囲が処置具200の進退移動に追従するように連続的に変更される。これにより、処置具200の操作に応じて観察対象の大きさが変化するので、術者が望む画像を簡単に得ることができる。
次に、上記内視鏡用外科手術装置10が備えるレンズ洗浄機能について説明する。
体壁に刺入した外套管300の内視鏡挿通路306に内視鏡挿入部102を挿通させ、内視鏡挿入部102の先端を体腔内に配置している際に、内視鏡挿入部102の先端面114における観察窓116の表面に異物(粘液、血液、油脂、組織片等)が付着する場合がある。このとき、内視鏡100の観察画像における処置対象物や処置具200の像が不鮮明となるため、従来の装置では、内視鏡挿入部102を外套管300の内視鏡挿通路306から一旦抜去して観察窓116の異物を拭き取ることが必要となる。このことは、手術時間の遅延や、治療部位を見失う要因となり、手術効率の低下の原因となっている。
一方、本実施の形態の内視鏡用外科手術装置10では、内視鏡挿入部102を外套管300の内視鏡挿通路306から抜去することなく、観察窓116を洗浄して観察窓116に付着した異物を取り除くレンズ洗浄機能を備えている。
図12は、外套管300の先端となる先端キャップ360(先端面304)を拡大して示した斜視図である。
同図において、上述したように、外套管300の先端の先端キャップ360には、内視鏡挿通路306の一部を形成する貫通孔362と処置具挿通路308の一部を形成する貫通孔364とが設けられており、先端面304における貫通孔362の開口が、内視鏡挿通路306を挿通した内視鏡挿入部102が繰り出される内視鏡繰出口312に相当し、先端面304における貫通孔364の開口が、処置具挿通路308を挿通した処置具挿入部202が繰り出される処置具繰出口316に相当する。
それらの貫通孔362、貫通孔364のうちの内視鏡挿通路306を形成する貫通孔362の内壁面362a(内視鏡挿通路306の内壁面362a)には、洗浄水を送出し、また、送出した洗浄水を吸引する流体給排口500が設けられる。
この流体給排口500は、後述のように外套管300の内部に設けられた流体通路を通じて図1に示した外套管300の基端面302に設けられた洗浄用コネクタ318に連通する。そして、洗浄用コネクタ318に送水チューブ122を介して接続された流体供給吸引装置120により流体給排口500からの洗浄水の供給(送出)や吸引が行われるようになっている。
一方、図13の内視鏡挿通路306の内視鏡繰出口312付近を拡大した斜視図に示すように、内視鏡挿通路306に挿入された内視鏡挿入部102は、後述の位置決め手段により、その先端面114が、内視鏡挿通路306の内部(貫通孔362の内部)に格納された位置であって、内視鏡挿通路306内の予め決められた前後方向(内視鏡挿通軸306a方向)の第1の位置としての位置決め位置に設定されるように位置決めすることができるようになっている。
図14は、内視鏡挿通軸306aを含む平面で内視鏡挿通路306の内視鏡繰出口312周辺を切断した断面を示した概略図である。同図に示すように、内視鏡挿入部102の先端面114の位置決め位置Pfは、先端面114を含む平面が少なくとも流体給排口500の領域(流体給排口500が形成される内壁面362aの領域)と交差する位置に設定される。本実施の形態における先端面114の位置決め位置Pfは、先端面114を含む平面が流体給排口500の略中心位置を通過する位置であり、流体給排口500の領域の前後方向の略中心位置に設定される。
また、内視鏡挿通路306である貫通孔362は、内視鏡挿入部102の外径に対して僅かに大きな直径であって、内視鏡挿入部102が内壁面362aに対して接触又は微小な隙間を有して通過する程度の直径を有する。
したがって、内視鏡挿入部102の先端面114を位置決め位置Pfに位置決めした際に、内視鏡挿通路306の内視鏡繰出口312付近には、内視鏡挿入部102の先端面114と、先端面114から内視鏡繰出口312までの範囲の内壁面362aとにより、液体(洗浄水)を貯留することができる凹状の洗浄貯留部502(凹部)が形成される。そして、洗浄貯留部502に連通する位置に流体給排口500が配置される。
以上の構成によれば、内視鏡挿通路306に挿通させた内視鏡挿入部102の先端面114の観察窓116に異物が付着した場合に、内視鏡挿入部102の先端面114を位置決め位置Pfに位置決めすることによって、観察窓116の前方に洗浄貯留部502が形成され、内視鏡挿入部102を内視鏡挿通路306から抜去することなく、観察窓116の洗浄が可能な状態に設定される。
そして、後述の流体供給吸引装置120により流体給排口500から洗浄水を供給すると、その洗浄水が洗浄貯留部502に貯留される。このとき、流体給排口500から吐出された洗浄水の観察窓116への衝突によって、または、洗浄貯留部502に貯留された洗浄水に生じる対流によって、観察窓116に付着した異物が観察窓116から除去される。
洗浄貯留部502に洗浄水が一定量以上貯留された後、流体供給吸引装置120により流体給排口500からの吸引を行うと、洗浄貯留部502に貯留された洗浄水が観察窓116から除去された異物と共に流体給排口500に吸い込まれ、流体給排口500から排出される。このときの洗浄貯留部502に生じる対流によっても観察窓116に付着した状態で残存していた異物が観察窓116から除去されて流体給排口500から排出される。また、洗浄貯留部502は小さい空間であるため、流体給排口500からの吸引力が洗浄貯留部502全体に働き、内視鏡挿入部102の先端面114における液滴の残存も生じず、観察窓116から除去された異物を含む洗浄水が洗浄貯留部502から完全に除去される。
以上により、内視鏡挿入部102を内視鏡挿通路306から抜去することなく、観察窓116の洗浄を行うことができる。
なお、本実施の形態では、先端面114と観察窓116の表面とは同一平面上に配置されているものとし、先端面114の前後方向の位置を基準に位置決め位置Pfを設定するものとしたが、それらが相違する場合も考慮して、先端面114の前後方向の位置を基準とする代わりに観察窓116の表面の前後方向の位置を基準に位置決め位置Pfを設定してもよい。即ち、内視鏡挿入部102の観察窓116を含む平面が少なくとも流体給排口500の領域と交差する位置を位置決め位置Pfとして設定するようにしてもよい。また、先端面114と観察窓116の表面のうち、前方に突出している面を基準にして位置決め位置Pfを設定してもよい。
続いて、外套管300に形成されるレンズ洗浄機能のための流体通路について説明する。
図15は、基準軸300aに沿って上下方向に外套管300を切断した外套管300の断面図である。
レンズ洗浄機能のための流体通路510は、図1、図3にも示した管状の外套管300の基端面302に設けられた洗浄用コネクタ318と、上記流体給排口500との間を外套管300の内部で連通させる管路であり、内視鏡挿通路306とは独立して設けられる。図15に示すように、その流体通路510は、基端キャップ340に形成される貫通孔512と、外套管本体320内(空洞部324)に挿通配置される送液管514の内部管路と、先端キャップ360に形成される貫通孔516と、から構成される。
基端キャップ340の貫通孔512は、基準軸300aの下側の位置において、基端面302から外套管300の空洞部324に面する内部端面350まで、基準軸300a方向に沿って貫通形成される。
貫通孔512の基端面302側の端部となる位置には、図1、図3にも示した管状の洗浄用コネクタ318が基端面302から突出して固設され、貫通孔512と洗浄用コネクタ318の管路とが連結される。
基端キャップ340の内部端面350には、外套管本体320内に挿通配置される送液管514の一方の端部(後側の端部)が固定され、貫通孔512と送液管514の内部管路とが連結される。
送液管514は、例えば、硬質材料により直線状に形成されており、図6にも示されているように、基準軸300a(外套管本体320の中心軸)の下側に存在する空洞部324内の何も配置されない空間に基準軸300a方向に沿って挿通配置される。
なお、本実施の形態のように外套管の中心軸に対して左右に2つの挿通路を設ける場合、中心軸に対して上側と下側には、有効に利用されない領域が生じやすいため、その領域を利用して流体通路を設けると、外套管の太径化を招くことなく、流体通路を設けることができる。本実施の形態において、送液管514を配置することによる外套管本体320の太径化は生じない。また、送液管514は軟性のチューブであってもよい。
送液管514の前側の端部は、先端キャップ360のうち内部端面366に固定され、送液管514の内部管路と先端キャップ360に形成された貫通孔516とが連結される。
貫通孔516は、図14に示されているように基準軸300a方向に沿って直線状に延びる基端部516aと、基端部516aの先端から略直角に屈曲する先端部516bとから形成される。
先端部516bは、内視鏡挿通路306の一部を構成する貫通孔362と交差する方向に向かって延びており、先端部516bが貫通孔362と交差して内壁面362aに流体給排口500を形成する(図14参照)。
また、先端部516bは、その軸線に直交する断面が円形であり、かつ、先端部516bの軸線が、内視鏡挿通軸306aと直角に交差する。したがって、流体給排口500は、内壁面362aの湾曲に起因する歪みを除けば略円形の開口となる。ただし、上述の内視鏡挿入部102の先端面114の位置決め位置Pfのばらつきを考慮して、流体給排口500は前後方向に長い形状(楕円等)としてもよく、先端部516bの軸線に直交する断面の形状を前後方向に長い形状(楕円等)としてもよい。
以上の外套管300の流体通路510によれば、外套管300の基端面302に設けられた洗浄用コネクタ318に図1のように送水チューブ122を介して流体供給吸引装置120を接続し、流体供給吸引装置120から送水チューブ122の管路に洗浄水を送出すると、その洗浄水は、送水チューブ122を介して洗浄用コネクタ318から外套管300の流体通路510に送り込まれる。流体通路510に送り込まれた洗浄水は、基端キャップ340の貫通孔512、外套管本体320の送液管514の内部管路、及び先端キャップ360の貫通孔516を順に流れて流体給排口500から吐出される。
上述のように内視鏡挿通路306に挿入した内視鏡挿入部102の先端面114を位置決め位置Pfに設定し、内視鏡挿通路306の先端に洗浄貯留部502を形成している場合には、流体給排口500からその洗浄貯留部502に洗浄水が供給されて洗浄水が貯留される。
また、流体供給吸引装置120により送水チューブ122の管路を吸引すると、基端キャップ340の貫通孔512、外套管本体320の送液管514の内部管路、及び先端キャップ360の貫通孔516を通じて流体給排口500からの吸引が行われる。内視鏡挿通路306の先端に洗浄貯留部502を形成し、その洗浄貯留部502に洗浄水を供給した場合には、この吸引により、洗浄貯留部502に貯留されている洗浄水(観察窓116から除去された異物等も含む、以下同様)が流体給排口500から排出される。
なお、上記流体通路510において外套管本体320における通路は、外套管本体320の空洞部324に配置された送液管514により形成したが、これに限らず、外套管本体320の外壁322に管路を形成し、その管路を流体通路510の外套管本体320における通路としてもよい。
次に、内視鏡挿入部102の先端面114の前後方向の位置が、予め決められた上述の位置決め位置Pf(本実施の形態では流体給排口500の中心位置)に一致するように内視鏡挿入部102を位置決めする位置決め手段について説明する。
まず、第1の実施の形態の位置決め手段としての位置決め機構について説明する。
図16は、第1の実施の形態の位置決め手段を備えた外套管300の断面図であり、内視鏡挿通路306に挿入された内視鏡挿入部102が位置決め手段により位置決めされた状態を示し、図17は、図16の基端キャップ340の一部を拡大して示した断面図である。なお、図16においてスライダ400については省略している。
これらの図に示すように、内視鏡挿通路306の一部である基端キャップ340の貫通孔342の内壁面342aには、係止手段としての位置決め部材550(突起)が設けられる。
位置決め部材550は、弾性ゴムなどの弾性部材(弾性体)により環状に形成されており、中央部に挿通孔550aを有する。そして、内壁面342aに固定されることにより、位置決め部材550は、内壁面342aから内側(内視鏡挿通軸306a側)に向かって突出するように、かつ、内壁面342aの周方向に沿って環状に配置される。この位置決め部材550の前端面550bには、内視鏡挿入部102に形成された段差部154(図17参照)が係合する。
ここで、図16に示すように、前端面550bから外套管300の先端の内視鏡繰出口312(即ち、先端面304)までの前後方向の長さをL1とする。また、前端面550bから内視鏡挿入部102の先端面114の位置決め位置Pf(本実施の形態では流体給排口500の中心位置)までの前後方向の長さをL1sとする。
このとき、少なくとも、
L1s<L1
の関係を満たす。
図18は、第1の実施の形態の位置決め手段に対応した内視鏡100の内視鏡挿入部102の平面図である。
同図に示すように内視鏡100の内視鏡挿入部102は、先端側の太径部150と、それよりも基端側(後側)の細径部152とを有し、太径部150と細径部152との境界に段差部154が形成される。
太径部150は、外套管300の内視鏡挿通路306を挿通可能であり、スライダ400(内視鏡連結部420)と連結可能な大きさの直径を有する。即ち、スライダ400の圧接部材426(図6等参照)の内径よりもわずかに太く、圧接部材426に摩擦係合により係合可能である。
また、太径部150は、内視鏡挿通路306の位置決め部材550の挿通孔550aの直径よりも大きな直径を有する。
細径部152は、少なくとも太径部150よりも細く、外套管300の内視鏡挿通路306を挿通可能である。ただし、細径部152がスライダ400と連結する位置まで内視鏡挿入部102を内視鏡挿通路306に挿入して使用することは略想定外であるため、細径部152はスライダ400と連結可能な大きさの直径であってもよいし、連結不能な大きさの直径であってもよい。
また、細径部152は、内視鏡挿通路306の位置決め部材550の挿通孔550aの直径よりも小さな直径、または、挿通孔550aの直径と略一致する直径を有する。
段差部154は、太径部150と細径部152との境界位置に形成され、軸方向に直交する環状の面であって、太径部150の外周面と細径部152の外周面とを連結する連結面を有する。
ここで、太径部150の長さ、即ち、段差部154から先端面114までの長さは、上述の長さL1sと一致する。
したがって、図16、図17のように、段差部154を内視鏡挿通路306の位置決め部材550の前端面550bに当接させた状態では、内視鏡挿入部102の先端面114が前端面550bから長さL1sだけ前方に位置する予め決められた位置決め位置Pf(流体給排口500の中心位置)に配置される。
以上、第1の実施の形態の位置決め手段としての位置決め機構によれば、内視鏡挿入部102を外套管300の内視鏡挿通路306に挿通させる場合には、内視鏡挿入部102の太径部150は、内視鏡挿通路306の位置決め部材550を弾性変形させて挿通孔550aを拡径させることによって挿通孔550aを挿通する。太径部150が位置決め部材550の挿通孔550aを通過した後、細径部160は、位置決め部材550をほとんど弾性変形させることなく、位置決め部材550の挿通孔550aを挿通する。
また、内視鏡繰出口312から内視鏡挿入部102が繰り出された状態においては、少なくとも細径部152が位置決め部材550の挿通孔550aを挿通している状態となる。
このように内視鏡繰出口312から内視鏡挿入部102を繰り出して使用している場合において、観察窓116に異物が付着したこと等により観察窓116の洗浄を行う際には、術者又は他の操作者は、内視鏡挿入部102を外套管300に対して後退させる。これによって、内視鏡挿入部102の段差部154が図16、図17のように位置決め部材550(前端面550b)に当接(係合)する。このとき、内視鏡挿入部102の後退操作に要する操作力が急激に変化する(大きくなる)ため、その操作力の変化を目安にして、内視鏡挿入部102の段差部154が位置決め部材550に当接したところで内視鏡挿入部102を静止させることができる。これによって、内視鏡挿入部102を位置決め部材550により特定位置に位置決めすることができる。
一方、内視鏡挿入部102を位置決め部材550により位置決めした場合には、図16に示したように、内視鏡挿入部102の先端面114が、前端面550bから長さL1sだけ前方に位置する予め決められた位置決め位置Pf(流体給排口500の中心位置)に配置される。
したがって、内視鏡挿入部102の先端面114の前後方向の位置が、予め決められた位置決め位置Pfに一致するように内視鏡挿入部102を位置決めすることができ、上述のように内視鏡挿通路306の先端に流体給排口500に連通する洗浄貯留部502を形成することができる。
なお、外套管300の内視鏡挿通路306から内視鏡挿入部102を抜去する場合には、術者又は他の操作者は、内視鏡挿入部102の段差部154が位置決め部材550に当接したことを感知してから更に内視鏡挿入部102の後退操作を行うことによって位置決め部材550を弾性変形させて太径部150を位置決め部材550の挿通孔550aを挿通させ、外套管300から抜去することができる。
また、位置決め部材550は、気密弁の機能を備えたものでもよく、また、内視鏡挿入口310付近に設けられている弁部材346を位置決め部材として兼用してもよい。
また、図18の内視鏡100は、内視鏡挿入部102の1つの段差部154を位置決め部材550に係合させて位置決めを行うものであるが、これに限らず、一定の直径の内視鏡挿入部102に周方向の溝を形成して、その溝を位置決め部材550に係合させて位置決めを行うものであってもよい。
次に、第2の実施の形態の位置決め手段としての位置決め機構について説明する。
図19は、第2の実施の形態の位置決め手段を備えた外套管300の断面図であり、内視鏡挿通路306に挿入された内視鏡挿入部102が位置決め手段により位置決めされた状態を示す。
同図において、スライダ400のスライダ本体402は、外套管本体320に対する移動可能範囲の後端に配置されている。即ち、内視鏡挿入部102は、後述のようにスライダ本体402が移動可能範囲の後端に到達したことによって位置決めされる。
この状態において、前後方向(基準軸300a方向)に関して、スライダ本体402の圧接部材426の後端426eの位置から外套管300の先端の内視鏡繰出口312(即ち、先端面304)までの前後方向の長さをL2とする。
また、圧接部材426の後端426eの位置から内視鏡挿入部102の先端面114の位置決め位置Pf(本実施の形態では流体給排口500の中心位置)までの前後方向の長さをL2sとする。
このとき、少なくとも、
L2s<L2
の関係を満たす。
一方、第2の実施の形態の位置決め手段に対応した内視鏡100の内視鏡挿入部102は図20の平面図に示すように構成される。
同図に示すように内視鏡100の内視鏡挿入部102は、先端側の細径部160と、それよりも基端側(後側)の太径部162とを有し、細径部160と太径部162との境界に段差部164が形成される。
細径部160は、外套管300の内視鏡挿通路306を挿通可能であり、かつ、スリーブ部材としてのスライダ本体402の圧接部材426(図6等参照)に圧接されてスライダ本体402(スライダ400)が連結する大きさの直径を有する。即ち、圧接部材426の内径よりもわずかに太く、圧接部材426に摩擦係合することによって係合可能である。
太径部162は、細径部160よりも太く、内視鏡挿通路306の内視鏡挿入口310の位置から圧接部材426の後端426eの位置までは内視鏡挿通路306に挿入可能であるが、圧接部材426の後端426eの位置よりも前側には挿入不能である。即ち、圧接部材426の内径よりも太く、圧接部材426に挿入不能な直径を有する。
段差部164は、細径部160と太径部162との境界位置に形成され、軸方向に直交する環状の面であって、細径部160の外周面と太径部162の外周面とを連結する連結面を有する。
また、段差部164は、圧接部材426の後端426eに当接することによって、後端426eの位置よりも前側への移動が規制される。
ここで、細径部160の長さ、即ち、段差部164から先端面114までの長さは、上述の長さL2sと一致する。
図21は、外套管300の一部を拡大して示した断面図であって、図20の内視鏡挿入部102をスライダ本体402に連結させた状態を示した断面図である。
外套管300の内視鏡挿通路306に内視鏡挿入部102を挿入して、スライダ本体402に対して内視鏡挿入部102を最大限に前進させると、同図に示すように、内視鏡挿入部102の段差部164がスライダ本体402の圧接部材426の後端426eに当接する位置まで進入する。
また、内視鏡挿入部102の細径部160は、スライダ本体402の圧接部材426の貫通孔432を挿通し、圧接部材426に圧接されて係合する。即ち、内視鏡挿入部102がスライダ本体402と連結する。
このとき、圧接部材426の後端426eの位置から内視鏡挿入部102の先端面114までの長さは、細径部160の長さに相当し、長さL2sとなる。
したがって、スライダ本体402を図19のように移動可能範囲の後端の位置に設定すると、内視鏡挿入部102の先端面114の前後方向の位置が、予め決められた位置決め位置Pf(流体給排口500の中心位置)に配置される。
以上の第2の実施の形態の位置決め手段としての位置決め機構によれば、内視鏡挿通路306に内視鏡挿入部102を挿通させ、内視鏡繰出口312から内視鏡挿入部102を繰り出して使用している場合において、観察窓116に異物が付着したこと等により観察窓116の洗浄を行う際には、術者又は他の操作者は、内視鏡挿入部102を外套管300に対して最大限に前進可能な位置まで前進操作する。これによって、内視鏡挿入部102の段差部164がスライダ本体402の圧接部材426の後端426eに当接する位置に設定される。
続いて、内視鏡挿入部102又は処置具挿通路308に挿通させた処置具挿入部202を後退操作し、スライダ本体402を移動可能範囲の後端の位置に移動させる。
これによって、内視鏡挿入部102の先端面114の前後方向の位置が、予め決められた位置決め位置Pf(流体給排口500の中心位置)に一致するように内視鏡挿入部102を位置決めすることができ、上述のように内視鏡挿通路306の先端に流体給排口500に連通する洗浄貯留部502を形成することができる。
なお、本第2の実施の形態では、内視鏡挿入部102の段差部164を圧接部材426の後端426eの位置に当接(係合)させるようにしたが、それ以外の部分、例えば、スライダ本体402の後端面402e(図21参照)の位置に当接(係合)させるようにしてもよい。その場合に、内視鏡挿入部102の細径部160の長さは、スライダ本体402を移動可能範囲の後端に設定した状態におけるその当接位置から位置決め位置Pf(流体給排口500の中心位置)までの前後方向の長さに一致させればよい。
次に、第3の実施の形態の位置決め手段について説明する。
図22は、第3の実施の形態の位置決め手段としての位置決め部を備えた内視鏡100(内視鏡挿入部102)及び外套管300の断面図であり、内視鏡挿通路306に挿入された内視鏡挿入部102が位置決め手段により位置決めされた状態を示す。
同図において、前後方向(基準軸300a方向)に関して、内視鏡挿通路306の内視鏡挿入口310の位置(外套管300の基端面302の位置)から外套管300の先端の内視鏡繰出口312(即ち、先端面304)の位置までの前後方向の長さをL3とする。
また、内視鏡挿通路306の内視鏡挿入口310の位置から内視鏡挿入部102の先端面114の位置決め位置Pf(本実施の形態では流体給排口500の中心位置)までの前後方向の長さをL3sとする。
このとき、少なくとも、
L3s<L3
の関係を満たす。
一方、第3の実施の形態の位置決め手段としての位置決め部を備えた内視鏡100の内視鏡挿入部102には、先端面114から基端側に向って距離L3s離れた位置を指し示す指標170が設けられる。指標170の形態としては、同図のように指標170として指し示す内視鏡挿入部102の位置の外周に一周にわたって描画されたラインであってもよいし、指標170として指し示す位置を認識できるものであればどのような形態であってもよい。
以上の第3の実施の形態の位置決め手段によれば、内視鏡挿通路306に内視鏡挿入部102を挿通させ、内視鏡繰出口312から内視鏡挿入部102を繰り出して使用している場合において、観察窓116に異物が付着したこと等により観察窓116の洗浄を行う際には、術者又は他の操作者は、内視鏡挿入部102又は処置具挿通路308に挿通させた処置具挿入部202を後退操作し、内視鏡挿入部102に設けられた指標170が指し示す位置を外套管300の基端の内視鏡挿入口310の位置に一致させる。
これによって、内視鏡挿入部102の先端面114の前後方向の位置が、予め決められた位置決め位置Pf(流体給排口500の中心位置)に一致するように内視鏡挿入部102を位置決めすることができ、上述のように内視鏡挿通路306の先端に流体給排口500に連通する洗浄貯留部502を形成することができる。
以上において、内視鏡挿通路306に挿入された内視鏡挿入部102の先端面114の位置決め位置Pfは、図13、図14等に示したように、先端面114を含む平面が流体給排口500の略中心位置を通過する位置としたが、少なくとも、内視鏡挿入部102の先端に相当する内視鏡挿入部102の先端面114が流体給排口500の先端側端部500a(図14参照)よりも基端側となる位置を位置決め位置Pfとした形態であってもよい。即ち、内視鏡挿入部102の先端面114と、先端面114から内視鏡繰出口312までの範囲の内壁面362aとにより形成される洗浄貯留部502への流体給排口500からの洗浄水の供給が可能であり、且つ、洗浄貯留部502に貯留された洗浄水を残りなく流体給排口500から吸引して排出することができればよい。
図29は、位置決め位置Pfを実際に変更して各位置決め位置Pfにおいて、洗浄貯留部502に貯留した洗浄水を残りなく流体給排口500から吸引(排出)できたか否かを判定し、これを所定回繰り返すことにより、洗浄水を残りなく吸引できた回数を吸引成功率として示した実験結果のグラフである。
同図において、横軸は、位置決め位置Pf(位置決め位置Pfに設定した先端面114)と流体給排口500の中心位置との距離を位置決め位置として示したものであり、右側ほど位置決め位置Pfが内視鏡挿通路306の基端側に設定されていることを示す。図中Pf1で示した位置決め位置は、流体給排口500の先端側端部500aと一致する位置を示し、図中Pf2で示した位置決め位置は、流体給排口500の基端側端部500b(図14参照)と一致する位置を示す。
グラフa、bは、流体給排口500から洗浄水を送水する角度(送水角度)を先端面114に対して0度とした場合と、10度とした場合とにおける吸引成功率を2次の近似曲線で表したものである。
同図から分かるように、グラフa、bのいずれにおいても、位置決め位置Pfが少なくとも流体給排口500の先端側端部500aから基端側端部500bまでの範囲内の位置(Pf1〜Pf2)であれば約80パーセント以上の良好な吸引成功率が得られる。また、位置決め位置Pfが流体給排口500の基端側端部500bの位置Pf2から基端側に流体給排口500の半径程度までの範囲内の位置であれば、約60パーセント以上の十分に良好な吸引成功率が得られる。更に、基端側端部500bの位置Pf2から基端側に流体給排口500の直径程度までの範囲内の位置であれば、約40パーセント以上の吸引成功率が得られる。
吸引成功率は、外套管300に接続する流体供給吸引装置120の吸引力等によって変動し、図29に示した吸引成功率よりも向上させることが十分に可能である。したがって、図29に示した吸引成功率の結果が必ずしも位置決め位置Pfとして設定可能な範囲を制限するものではないが、少なくとも、内視鏡挿入部102の先端面114の位置決め位置Pfは、先端面114を含む平面が流体給排口500と交差する位置に限定されないことがわかる。
また、上記実施の形態では、図14に示したように内視鏡挿入部102の先端部の先端キャップ360において、流体通路である貫通孔516の先端部516bであって流体給排口500が設けられる先端部516bは、その軸線(長手軸)が内視鏡挿通軸306aと直交するように設けられる。すなわち、流体給排口500からの洗浄水の送水角度が内視鏡挿入部102の先端面114に対して0度となる形態であり、図29のグラフaにより吸引成功率を示した形態に対応する。しかしながら、図29のグラフbにより示した吸引成功率が良好であることから分かるように、流体給排口500からの洗浄水の送水角度が内視鏡挿入部102の先端面114に対して0度でなくてもよい。
例えば、図30に示すように先端面114の位置決め位置Pfを流体給排口500の中心位置よりも基端側の位置とする場合には、先端部516bの長手軸は、位置決め位置Pfに位置決めされた先端面114を含む平面と交差する角度とし、流体給排口500からの洗浄水の送水角度を先端面114に対して0度よりも大きくすることが好ましい。
これによれば、洗浄水が流体給排口500から先端面114に向けた方向に吐出され、観察窓116に付着した異物が除去され易くなる。また、図29のグラフbに示すように位置決め位置Pfが基端側になるほど、洗浄貯留部502に貯留された洗浄水の吸引(排出)の際に洗浄貯留部502に洗浄水が残らないという点で送水角度を先端面114に対して0度とする場合に比べて優位となる。
次に、図1に示したように外套管300の洗浄用コネクタ318に送水チューブ122を介して接続される流体供給吸引装置120の実施の形態について説明する。流体供給吸引装置120は、上述のように内視鏡挿通路306に挿通させた内視鏡挿入部102の観察窓116を洗浄するため、内視鏡挿通路306の先端の流体給排口500から洗浄貯留部502への洗浄水の供給と吸引とを行う装置である。
なお、洗浄貯留部502は、上述のように位置決め手段により内視鏡挿通路306に挿入した内視鏡挿入部102の先端面114を予め決められた位置決め位置Pfに設定することによって形成されるが、以下において、洗浄貯留部502という場合には、内視鏡挿入部102の先端面114が位置決め位置Pfに設定されているものとする。
図23は、流体供給吸引装置120としてシリンジ装置600を用いた場合の外套管300とシリンジ装置600との接続の様子を示す。
同図に示すように、外套管300の洗浄用コネクタ318には、送水チューブ122の一方の端部が被嵌され、送水チューブ122の他方の端部がシリンジ装置600のノズル604に被嵌される。洗浄用コネクタ318は、上述のように外套管300のレンズ洗浄機能のための流体通路510(図15等参照)を介して内視鏡挿通路306の流体給排口500に連通している。
シリンジ装置600は、術者又はその他の操作者が片手操作でノズル604からの洗浄水の送出と吸引とを簡易に行うことができるように構成されており、2本の指(例えば人差し指と中指)をシリンジ本体602を挟むようにして先端側から指掛け部608に掛け、プランジャロッド660の基端の指当て部666を親指で押圧して押込み操作することにより、ノズル604から送水チューブ122の管路に洗浄水を送出することができる。これによって、ノズル604から送水チューブ122の管路に送出された洗浄水が外套管300の流体通路510を通じて内視鏡挿通路306の流体給排口500から洗浄貯留部502に供給される。
続いて、指当て部666から親指を離す(押圧を解除する)ことにより、自動的にプランジャロッド660が後退移動し、ノズル604から送水チューブ122の管路の洗浄水を吸引することができる。これによって、送水チューブ122の管路及び外套管300の流体通路510が減圧して、流体給排口500から洗浄貯留部502に供給された洗浄水が吸引される。
したがって、シリンジ装置600の操作者は、プランジャロッド660の指当て部666の押圧とその解除のみの操作によって内視鏡挿入部102の先端面114の観察窓116の洗浄を行うことができる。
このシリンジ装置600の構成について説明すると、シリンジ装置600は、ノズル604が先端部に形成されたシリンジ本体602と、シリンジ本体602の内部に挿入配備されるプランジャ本体620と、プランジャ本体620の内部に挿入配備されて基端部に指当て部666が形成されたプランジャロッド660とから構成される。
図24は、シリンジ装置600を中心軸600aに沿って切断した断面図である。
同図に示すように、シリンジ本体602は、中心軸600a方向に沿って延在する円筒形状に形成され、先端側が閉塞され、基端側に開口606を有する。
シリンジ本体602の内部には、洗浄水を貯留する第1空間部610が形成される。
第1空間部610は、シリンジ本体602により壁面の一部(円柱形状における側壁面及び先端側の壁面、即ち、基端側の壁面以外)が画定され、基端側の壁面がシリンジ本体602の開口606から内部に挿入配備されるプランジャ本体620の先端部により画定される。
また、プランジャ本体620の先端部の位置は可変であるため、その位置に応じて第1空間部610の容積が拡大、又は縮小される。
この第1空間部610は、シリンジ本体602の先端部に突出形成された先細りのノズル604の管路を介して外部空間と連通する。
したがって、ノズル604を図23に示したように送水チューブ122を介して外套管300の洗浄用コネクタ318に接続することで、第1空間部610が、外套管300の内視鏡挿通路306の流体給排口500、即ち、洗浄貯留部502に連通される。
また、シリンジ本体602の基端部には、シリンジ装置600の操作を行う際に、操作者がシリンジ本体602を挟んだ2本の指(例えば、人差し指と中指)を掛ける指掛け部608が形成される。指掛け部608は中心軸600aに対して直交方向に沿って突出する。
プランジャ本体620は、中心軸600a方向に沿って延在する円筒形状に形成され、その外径は、基端部のフランジ部630を除いてシリンジ本体602の内部に挿入可能な大きさを有し、シリンジ本体602の内部に挿入配備される。
プランジャ本体620の先端部の外壁面には、弾性材料で形成された2つのOリング622が設置される。これらのOリング622は、シリンジ本体602の内壁面に摺動可能に密着し、シリンジ本体602の内壁面とプランジャ本体620との間の隙間を閉塞する。
したがって、シリンジ本体602に対してプランジャ本体620を先端側に押し込むと(前進移動させると)、第1空間部610の容積が縮小すると共に、第1空間部610に貯留されていた洗浄水がノズル604から送出される。
なお、プランジャ本体620の先端のいずれかの部分がシリンジ本体602の内部のいずれかの部分に当接して、それ以上の押し込みが規制される位置をプランジャ本体620の最大押込位置とする。
一方、プランジャ本体620の内部には、洗浄水を貯留する第2空間部624が形成される。
第2空間部624は、プランジャ本体620により壁面の一部(円柱形状における側壁面及び先端側の壁面、即ち、基端側の壁面以外)が画定され、基端側の壁面がプランジャ本体620の基端側の開口628から内部に挿入配備されるプランジャロッド660の先端部により画定される。
また、プランジャロッド660の先端部の位置は可変であるため、その位置に応じて第2空間部624の容積が拡大、又は縮小される。
この第2空間部624は、プランジャ本体620の先端部に設けられたオリフィス付きの逆止弁部材632を介して上記の第1空間部610と連通する。
オリフィス付きの逆止弁部材632の構成については後述するが、プランジャ本体620の先端部には、第1空間部610と第2空間部624とを連通させる第1連通路と第2連通路とが設けられる。
第1連通路は、第1空間部610と第2空間部624との間の洗浄水の流れ(流量)を制限するオリフィスが設けられる連通路である。
第2連通路は、第2空間部624から第1空間部610への洗浄水の流れを許容し、第1空間部610から第2空間部624への流体の流れを規制する逆止弁が設けられる連通路である。
したがって、第2空間部624は、これらの第1連通路及び第2連通路を通じて第1空間部610と連通する。
また、プランジャ本体620の内部の基端側には、プランジャロッド660に固定されたコイルばね(圧縮コイルばね)を収容配置するためのコイルばね収容室626が形成される。このコイルばね収容室626は、プランジャ本体620の内部において第2空間部624が形成可能となる先端側の領域よりも拡径される。
更に、プランジャ本体620の基端部には、シリンジ本体602に対してプランジャ本体620を引き出す際(洗浄水を第1空間部610に充填する際など)に指を掛けるフランジ部630が形成される。フランジ部630は中心軸600aに対して直交方向に沿って突出する。
プランジャロッド660は、中心軸600a方向に沿って延在する円柱形状を有し、先端側に形成された細径部662と、基端側に形成された太径部663とを有する。また、プランジャロッド660の基端部には、シリンジ装置600の操作を行う際に、操作者が親指で押圧する指当て部666が設けられる。指当て部666は、中心軸600aに対して直交方向に沿って突出し、プランジャロッド660の基端に太径部663の直径よりも大きな円形の平坦面を形成する。
プランジャロッド660の細径部662は、プランジャ本体620の内部の先端まで挿入可能な外径を有し、その先端部の外周面には、弾性材料で形成された2つのOリング664が設置される。これらのOリング664は、プランジャ本体620の内壁面に摺動可能に密着し、プランジャ本体620の内壁面とプランジャロッド660との間の隙間を閉塞する。
したがって、プランジャ本体620に対してプランジャロッド660を先端側に押し込むと(前進移動させると)、第2空間部624の容積が縮小すると共に、第2空間部624に貯留されていた洗浄水が第1空間部610へと送出される。
なお、プランジャロッド660の先端のいずれかの部分がプランジャ本体620の内部のいずれかの部分に当接して、それ以上の押し込みが規制される位置をプランジャロッド660の最大押込位置とする。
プランジャロッド660の太径部663は、プランジャ本体620の内部のコイルばね収容室626に挿入可能な外径を有し、その外周面には、螺旋状のコイルばね668(圧縮コイルばね)の基端部が固定される。
コイルばね668は、プランジャロッド660の細径部662に及ぶ範囲に延在し、細径部662を囲むようにして太径部663に設置される。
このコイルばね668は、プランジャ本体620のコイルばね収容室626に収容配置され、コイルばね668の先端はコイルばね収容室626の前端部分に当接して位置が規制される。
したがって、プランジャ本体620に対してプランジャロッド660を一定量以上、先端側に押し込むと(前進移動させると)、コイルばね668が圧縮されてプランジャロッド660に後退移動させる方向への付勢力が働く。即ち、第2空間部624の容積を拡大する方向に付勢力が働く。そして、その状態でプランジャロッド660を解放すると、コイルばね668の付勢力によりプランジャロッド660が自動的に後退移動し、第2空間部624の容積が拡大される。
なお、プランジャロッド660を付勢する付勢手段としてコイルばね668以外の付勢手段を用いても良く、ゴム等の弾性部材を用いてもよい。
ここで、シリンジ本体602、プランジャ本体620、及びプランジャロッド660の一連の動作について説明すると、図24のように、プランジャ本体620がシリンジ本体602に対して最大押込位置よりも引き出された位置にあり、プランジャロッド660もプランジャ本体620に対して最大押込位置よりも引き出された位置にあるものとする。
このとき、シリンジ本体602の指掛け部608に人差し指と中指とを先端側から掛けて、プランジャロッド660の指当て部666を親指で押圧してプランジャロッド660の押込み操作を行うと、まず、コイルばね668の付勢力に抗してプランジャロッド660がプランジャ本体620に対して先端側に前進移動する。また、第2空間部624の容積が縮小していく。
このとき、プランジャ本体620はシリンジ本体602に対して静止している。即ち、コイルばね668により生じる付勢力は、少なくともプランジャ本体620がシリンジ本体602に対して前進移動するときに受ける抵抗力より小さくなるように設定されている。
プランジャロッド660の押込み操作を継続して、プランジャロッド660がプランジャ本体620に対して最大押込位置まで到達した後、さらにプランジャロッド660の押込み操作を継続すると、プランジャロッド660と共に、プランジャ本体620がシリンジ本体602に対して先端側に前進移動する。また、第1空間部610の容積が縮小していく。
そして、プランジャ本体620がシリンジ本体602に対して最大押込位置に到達した後、又は、到達する前の任意の位置でプランジャロッド660の押込み操作を停止し、プランジャロッド660の指当て部666から親指を離して押圧を解除すると、コイルばね668の付勢力により、プランジャロッド660がプランジャ本体620に対して自動的に後退移動し、第2空間部624の容積が拡大する。
即ち、プランジャロッド660がプランジャ本体620に対して最大押込位置に設定されているときのコイルばね668の付勢力は、少なくともプランジャロッド660のプランジャ本体620に対する軸方向の静止摩擦力(Oリング664の摩擦力)よりも大きくなるように設定されている。したがって、プランジャロッド660がプランジャ本体620に対して自動的に後退移動し、後退移動とともに徐々に低減するコイルばね668の付勢力の低下によって所定の位置で停止する。
以上のようなシリンジ本体602、プランジャ本体620、及びプランジャロッド660の一連の動作に対して、第1空間部610と第2空間部624とに洗浄水が充填されているとすると、プランジャロッド660の押込み操作によってプランジャロッド660がプランジャ本体620に対して前進移動している際には、第2空間部624の容積の縮小とともに第2空間部624に貯留されている洗浄水が第1空間部610に送出される。そして、それに伴う第1空間部610の圧力の上昇によって第1空間部610に貯留されている洗浄水がノズル604から送出される。
また、プランジャロッド660が最大押込位置に到達した後の押込み操作によってプランジャ本体620がシリンジ本体602に対して前進移動している際には、第1空間部610の容積の縮小とともに第1空間部610に貯留されている洗浄水がノズル604から送出される。
一方、プランジャロッド660の押込み操作の停止(押圧解除)によってプランジャロッド660がプランジャ本体620に対して後退移動している際には、第2空間部624の容積の拡大とともに第2空間部624の圧力が減少し、第1空間部610に貯留されている洗浄水が第2空間部624に吸引される。そして、それに伴う第1空間部610の圧力の減少によってノズル604から第1空間部610への吸引が行われる。
したがって、図1の流体供給吸引装置120としてシリンジ装置600を使用した場合、上述のように外套管300の内視鏡挿通路306に挿通させた内視鏡挿入部102の観察窓116の洗浄をシリンジ装置600の片手操作によって簡易に行うことができる。
具体的には、シリンジ装置600の第1空間部610と第2空間部624とに事前に洗浄水を充填しておく。洗浄水の充填は、プランジャロッド660の指当て部666を押圧してプランジャ本体620及びプランジャロッド660を各々、最大押込位置に押し込んだ状態で、所定の容器に貯留された洗浄水にノズル604を浸しながらプランジャロッド660の押圧を解除し、プランジャ本体620をシリンジ本体602に対して引き出すことで行うことができる。
そして、内視鏡挿入部102の観察窓116の洗浄を行う際に、又は、事前に、その洗浄水を充填したシリンジ装置600のノズル604を図23のように外套管300の洗浄用コネクタ318に送水チューブ122により接続する。
また、内視鏡挿入部102の観察窓116の洗浄を行う際には、外套管300の内視鏡挿通路306に挿通させた内視鏡挿入部102を図16〜図21等によって説明した位置決め手段により位置決めして内視鏡挿入部102の先端面114と内視鏡繰出口312との間に流体給排口500に連通する洗浄貯留部502(図13、図14等参照)を形成させる。
この状態において、術者又は他の操作者はシリンジ装置600のシリンジ本体602の指掛け部608に例えば人差し指と中指とを掛けて、親指によりプランジャロッド660の指当て部666を押圧して上記のようにプランジャロッド660の押込み操作を行う。これによって、上述のようにノズル604から送出された洗浄水が送水チューブ122及び外套管300の流体通路510を流れて流体給排口500から洗浄貯留部502へと供給される。そして、その洗浄水の観察窓116への衝突又は洗浄貯留部502に貯留された洗浄水の対流によって観察窓116に付着した異物が観察窓116から除去される。
続いて、洗浄貯留部502に洗浄水が一定量貯留された後、プランジャロッド660の指当て部666の押込み操作を停止して押圧を解除する(親指を指当て部666から離す)。これによって、上述のようにコイルばね668の付勢力によりプランジャロッド660が自動的に後退移動し、ノズル604からの吸引が行われる。そして、送水チューブ122及び外套管300の液体通路に貯留されている洗浄水がシリンジ装置600へと向かって流れ、これと共に洗浄貯留部502に貯留されている洗浄水が流体給排口500から吸引されて洗浄貯留部502から排出される。
なお、シリンジ装置600に貯留する洗浄水の容積は、少なくとも、送水チューブ122の管路の容積、外套管300の流体通路510の容積、及び洗浄貯留部502の容積の総和量よりも多くしておく。
次に、上記プランジャ本体620のオリフィス付きの逆止弁部材632について説明する。シリンジ装置600のノズル604を図23のように外套管300の洗浄用コネクタ318に送水チューブ122により接続し、シリンジ装置600により流体給排口500からの洗浄水の供給と吸引とを行う場合に、シリンジ装置600から内視鏡挿通路306の流体給排口500までの管路抵抗のために、シリンジ装置600の第1空間部610及び第2空間部624の容積変化に対する流体給排口500からの洗浄水の送水量及び吸引量は、遅れ系の応答をする。
そのため、プランジャロッド660の押込み操作後のコイルばね668によるプランジャロッド660の自動の後退移動が速すぎると、流体給排口500からの洗浄水の吸引が行われる前にプランジャロッド660の後退移動が停止することが生じ得る。
その場合、第1空間部610の圧力の減少が大きく、第1空間部610の容積を低減させるようにシリンジ本体602に対してプランジャ本体620が前進移動してしまい、その結果、流体給排口500からの吸引が正常に行われない可能性が生じる。
このような事態を防止するため、第1空間部610と第2空間部624とを連通させる連通路が形成されるプランジャ本体620の先端部には、オリフィス付きの逆止弁部材632が設けられ、その逆止弁部材632によって連通路にオリフィスが配置される。このオリフィスによって、第1空間部610から第2空間部624へと吸引される洗浄水の流量が制限される。したがって、コイルばね668によるプランジャロッド660の自動の後退移動の速度を抑制することができ、プランジャ本体620が前進移動しない適切な吸引速度にすることができる。
一方、第1空間部610と第2空間部624との連通路に単にオリフィスを設けるだけでは、プランジャロッド660(指当て部666)を押込み操作するときに必要となる操作力が増大し、また、前進移動の速度も遅くなるため、操作性が悪くなる。そこで、プランジャロッド660の押込み操作時には、オリフィスの影響を受けないように、かつ、コイルばね668によるプランジャロッド660の自動の後退移動時にはオリフィスが有効に作用するように、オリフィス付きの逆止弁部材632によってオリフィスが配置される連通路(第1連通路)とは別の連通路(第2連通路)が設けられ、その第2連通路に逆止弁が配置される。この逆止弁によって、第2空間部624から第1空間部610への洗浄水の大きな流量の流れが許容され、第1空間部610から第2空間部624への洗浄水の大きな流量の流れが規制される。したがって、プランジャロッド660を押込み操作するときの操作性の悪化を解消することができる。
図25は、オリフィス付きの逆止弁部材632が配置されるプランジャ本体620の先端部周辺を拡大して示した断面図である。同図に示すように逆止弁部材632は、弾性部材により一体形成されており、オリフィス702を有するオリフィス部634と逆止弁として作用する逆止弁部636とを有する。
オリフィス部634は、円筒状に形成されており、その基端部の外周面には、周方向に沿った環状の溝634aが形成される。その溝634aがプランジャ本体620の先端部の壁650に形成された孔650aに係合することによって逆止弁部材632全体がプランジャ本体620の先端部に固定される。
オリフィス部634の内部には、基端側に開口してプランジャ本体620の内部の第2空間部624に連通する管路700が形成される。その管路700の先端側、即ち、オリフィス部634の先端部には、管路700を閉鎖する先端壁704が形成され、その先端壁704に管路700からシリンジ本体602の内部の第1空間部610まで連通する小さな貫通孔であるオリフィス702が形成される。
これによって、第1空間部610と第2空間部624とを連通する連通路であって、オリフィスが配置された上述の第1連通路が逆止弁部材632のオリフィス部634の管路700とオリフィス702とにより形成される。そして、この第1連通路を流れる洗浄水の流量はオリフィス702により制限される。
逆止弁部636は、オリフィス部634の先端部から延設され、円錐台の側面に沿った形状を有する。即ち、先端側から基端側に向けて徐々に先細るテーパ形状に形成される。
一方、プランジャ本体620の先端部には、逆止弁部材632を取り外した状態において、プランジャ本体620の先端に開口して第1空間部610に連通する管路710が形成される。管路710の内径は、オリフィス部634の外径よりも大きく、また、管路710の先端部分の内壁面652が逆止弁部636のテーパ形状の外周面と略一致するテーパ形状に形成される。
また、管路710は、オリフィス部634の壁650に形成された不図示の貫通孔を介して第2空間部624に連通しており、逆止弁部材632を取り外した状態では、第1空間部610と第2空間部624とが管路710を介して連通する。
これに対して、逆止弁部材632をプランジャ本体620の先端部に設置すると、オリフィス部634の周囲に第2空間部624と連通する管路710が形成されるが、逆止弁部636の外周面と管路710の内壁面652とが面接触することによって管路710の先端側の開口が閉鎖され、第1空間部610と第2空間部624とが遮断される。
これによれば、第2空間部624から第1空間部610へと向う洗浄水の流れは、逆止弁部636の外周面を管路710の内壁面652から離間させる方向に作用し、逆止弁部636を変形させる。そして、逆止弁部636の外周面と管路710の内壁面652との間に隙間を生じさせる。したがって、その隙間によって第1空間部610と第2空間部624とが管路710を介して連通し、第2空間部624から第1空間部610への洗浄水の流れが許容される。
一方、第1空間部610から第2空間部624へと向う洗浄水の流れは、逆止弁部636の外周面を管路710の内壁面652に圧接させる方向に作用するため、管路710が閉鎖され、第1空間部610と第2空間部624とが遮断される。したがって、第1空間部610から第2空間部624への洗浄水の流れは規制される。
これによって、第1空間部610と第2空間部624とを連通する連通路であって、逆止弁が配置された上述の第2連通路が管路710と逆止弁部材632の逆止弁部636とによって形成される。そして、この第2連通路を流れる洗浄水は逆止弁部636によって第2空間部624から第1空間部610への流れのみが許容され、第1空間部610から第2空間部624への流れが規制される。
以上、図23の構成において、外套管300の流体通路510の直径を1mm、長さを150mm、送水チューブ122の管路の直径を2mm、長さを1500mm、内視鏡挿通路306の先端部に形成される洗浄貯留部502の直径(内視鏡挿通路306の直径)を0.6mm、長さを10mmとした場合に、シリンジ装置600の以下の各部の寸法に関して好ましい形態が実測値等に基づいて得られたので、それについて説明する。なお、送水チューブ122の長さは術者以外の操作者の使用も想定して1500mmとしている。
まず、シリンジ装置600のプランジャロッド660のコイルばね668による自動の後退移動の可動量(最大押込位置からの可変量)は操作性を考慮して20mm程度とすることが望ましい。
一方、プランジャ本体620の内径(第2空間部624の直径)は、プランジャロッド660の自動の後退移動によって形成される第2空間部624の容積(プランジャロッド660の自動の後退移動に伴う最大容積変化量)が、洗浄貯留部502の容積以上となるように設計することが好ましい。図26は、洗浄貯留部502に洗浄水を供給した後に洗浄貯留部502の貯留される洗浄水の量(液残り量)を測定したデータを示す。これに示されるように、洗浄貯留部502の容積を約15.0μLとすると、表面張力に起因して洗浄貯留部502の容積以上の液残り量が生じることが確認された。したがって、洗浄貯留部502に液残りが生じないように吸引するためには、少なくとも第2空間部624の容積(プランジャロッド660の自動の後退移動に伴う最大容積変化量)が洗浄貯留部502の容積以上であることが望ましい。例えば、第2空間部624の容積は0.5mL以上とすることがより好ましい。
また、シリンジ装置600のシリンジ本体602は市販のものを使用することができるが、容積の大きいものではプランジャロッド660の押込み操作に要する操作力(押込み力)が大きくなるため、操作性が良くない。例えば、図27に示すようにプランジャロッド660の押込み操作時(洗浄貯留部502への洗浄水の供給時)に要する押込み力を測定した結果、20mLシリンジでは最大30N程度であるのに対して、50mLシリンジでは最大50Nになる。したがって、シリンジ本体602として20mLシリンジを使用することが望ましい。
シリンジ装置600の逆止弁部材632におけるオリフィス702は直径(オリフィス径)1.0mm以下で、長さ1.5mmとすることが好ましい。より好ましくは、直径0.5mm、長さ1.5mmとするとよい。図28は、オリフィス702の断面積(直径)を変えてプランジャロッド660の自動の後退移動の速度を測定したデータを示す。これによれば、オリフィス702の断面積(直径)が小さい程、プランジャロッド660の後退移動の速度を遅くすることができ、直径1.0mm以下ではプランジャロッド660の自動の後退移動の速度が30mm/s以下であり、シリンジ本体602に対してプランジャ本体620が前進移動してしまう事態が生じないことが確認された。オリフィス702が直径0.5mm、長さ1.5mmのときは、プランジャロッド660の自動の後退移動の速度が10mm/s程度であり、シリンジ本体602に対してプランジャ本体620が前進移動してしまうという事態がより確実に防止される。
なお、流体供給吸引装置120は、必ずしも上述のシリンジ装置600のような装置でなくてもよく、洗浄水の供給と吸引とを行うことができる装置であればよい。
以上、上記実施の形態では、外套管300として内視鏡挿入部102を挿通する内視鏡挿通路306と、処置具挿入部202を挿通する処置具挿通路308とを有し、かつ、内視鏡挿入部102と処置具挿入部202とを連動させて進退移動させる連動機能(スライダ400)を有する外套管に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、連動機能を備えない外套管においても適用でき、また、内視鏡挿入部を挿通する内視鏡挿通路のみを備えた外套管であって連動機能を備えていない外套管であっても適用できる。
即ち、本発明は、先端と基端と長手軸とを有する筒状体と、筒状体の先端に設けられた先端開口と、筒状体の基端に設けられた基端開口と、筒状体の長手軸に沿って設けられ、先端開口と基端開口とを連結し、内視鏡挿入部が進退自在に挿通される内視鏡挿通路を有する任意の外套管に適用できる。
また、このような外套管において、連動機能(スライダ400)を備えない場合に、図19〜図21に示した第2の実施の形態の位置決め手段を適用するときには、スライダ400の圧接部材426に相当するスリーブ部材を内視鏡挿通路の内部に設ける。そのスリーブ部材は、内視鏡挿入部102の外周に被嵌され、かつ、内視鏡挿入部と一体的に進退移動する。そして、内視鏡挿入部102の先端面114(観察窓116)を予め決められた位置決め位置に位置決めする位置決め手段は、内視鏡挿入部が外套管(筒状体)に対して長手軸に沿って基端側に移動する際に、スリーブ部材を内視鏡挿通路に形成された突起に直接的又は間接的に突き当てることにより、内視鏡挿入部を筒状体に対して係止する係止手段を備えるものとする。
本発明の一態様に係る外套管において、係止手段は、内視鏡挿通路に設けられた突起を有し、内視鏡挿入部が筒状体の長手軸に沿って基端側に移動する際、内視鏡挿入部に設けられた段差を突起に突き当てることにより、内視鏡挿入部を筒状体に対して係止する態様が好ましい。