JPWO2014156195A1 - 二次電池電極用バインダー組成物及びその製造方法、二次電池電極用スラリー組成物、二次電池用電極、並びに、二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、近年では、二次電池の更なる性能向上を達成すべく、これら電池部材の形成に用いられるバインダー組成物やスラリー組成物の改良が試みられている。
また、本発明は、当該二次電池用電極を用いた、高温保存特性及び高温サイクル特性に優れると共に、ガス発生が低減された二次電池を提供することを目的とする。
また、上述した残留モノマーの問題に対し、重合体を一度調製した後に過硫酸塩などの重合開始剤を更に添加して重合反応を更に進める(即ち、残留モノマーを重合させる)ことで、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む残留モノマーの量を低減することも考えられる。しかし、本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、重合開始剤を更に添加して重合反応を進めた場合には、過硫酸塩などの重合開始剤の残渣が大量にバインダー組成物や二次電池中に含まれることとなり、二次電池の電気的特性が低下する虞があることが明らかとなった。
また、本発明によれば、当該二次電池用電極を用いた、高温保存特性及び高温サイクル特性に優れると共に、ガス発生が低減された二次電池を提供することができる。
ここで、本発明の二次電池電極用バインダー組成物は、二次電池の電極を形成する際に用いられる。そして、本発明の二次電池電極用スラリー組成物は、本発明の二次電池電極用バインダー組成物及び電極活物質を含んで調製される。また、本発明の二次電池電極用バインダー組成物の製造方法は、本発明の二次電池電極用バインダー組成物を製造する際に用いることができる。
さらに、本発明の二次電池用電極は、本発明の二次電池電極用スラリー組成物を用いて製造することができ、本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の二次電池用電極を用いたことを特徴とする。
本発明の二次電池電極用バインダー組成物は、水を分散媒とした水系バインダー組成物であり、粒子状重合体及びレダクトン類化合物およびその酸化体の少なくとも一方を含む。ここで、粒子状重合体は沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体混合物を重合して生成された粒子状重合体である。さらに、本発明の二次電池電極用バインダー組成物は、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有割合が、粒子状重合体100質量部に対して1×10-6質量部以上1500×10-6質量部以下であることを特徴とする。ここで、本発明のバインダー組成物に含まれる沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体は、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体混合物を重合させて粒子状重合体を生成させた後に、重合していない、単量体のままの状態(いわゆる、遊離状態)で残った(メタ)アクリル酸エステル単量体である。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを指す。
粒子状重合体は、本発明の二次電池電極用バインダー組成物を用いて電極を形成した際に、製造した電極において、電極合材層に含まれる成分(例えば、電極活物質)が電極から脱離しないように保持しうる成分である。
バインダー組成物に配合する粒子状重合体としては、以下に説明する沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体混合物を重合して生成される粒子状重合体を用いることができる。
なお、本発明のバインダー組成物を負極の形成に用いる場合(二次電池負極用バインダー組成物)、粒子状重合体は、架橋性単量体を更に含む単量体混合物を重合して生成されることが好ましく、スチレンなどの芳香族ビニル単量体や、酸性基を含有する単量体を更に含む単量体混合物を重合して生成されることが更に好ましい。
また、本発明のバインダー組成物を正極の形成に用いる場合(二次電池正極用バインダー組成物)、粒子状重合体は、(メタ)アクリロニトリル単量体などのα,β−不飽和ニトリル単量体を更に含む単量体混合物を重合して生成されることが好ましく、酸性基を含有する単量体を更に含む単量体混合物を重合して生成されることが更に好ましい。なお、本発明において、「(メタ)アクリロニトリル」とは、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを指す。
以下、本発明における粒子状重合体を生成するための単量体混合物に配合されうる各単量体について詳述する。
粒子状重合体を重合する際に使用する単量体混合物は、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有する。沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有することで、単量体混合物を重合して得られる粒子状重合体の電気化学的安定性及び柔軟性を高めることができる。そして、バインダー組成物を用いた電極合材層の密着強度を高めて電極のピール強度を向上させることができると共に、二次電池の電池特性を向上させることができる。
ここで、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、式(I):CH2=CR1−COOR2で表される化合物が挙げられる。式(I)において、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はアルキル基またはシクロアルキル基、或いは、それらの一部を置換した官能基を表す。
そして、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体の例を挙げると、n−ブチルアクリレート(BA)、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−2−エトキシエチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、ベンジルアクリレートなどのアクリレート;メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、ベンジルメタクリレートなどのメタアクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、アクリレートが好ましく、2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートが、二次電池用電極のピール強度を向上できる点で好ましく、さらに、2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。2−エチルヘキシルアクリレートは側鎖が長く、2−エチルヘキシルアクリレート由来の単量体単位を有する重合体のTgを低減させて柔軟性を向上させると共に、電気化学的安定性を向上させるため、かかる重合体を配合した二次電池電極用バインダー組成物を用いて得た電極合材層の集電体に対する密着強度を向上し、ひいては、かかる電極合材層を有する電極を用いた二次電池の電池特性を向上できるからである。
ここで、(メタ)アクリル酸エステル単量体の沸点は、JIS K2254に従って測定することができる。
以下、バインダー組成物を負極の形成に用いる場合に、粒子状重合体の重合に使用する単量体混合物に好適に配合されうる、架橋性単量体、芳香族ビニル単量体、および酸性基を含有する単量体について詳述する。
バインダー組成物を負極の形成に用いる場合、粒子状重合体を重合する際に使用する単量体混合物は、架橋性単量体を更に含むことが好ましい。かかる粒子状重合体を含むバインダー組成物を用いて製造したリチウムイオン二次電池の高温保存特性や高温サイクル特性を向上させることができるからである。
架橋性基としては、通常は熱により架橋反応を生じる熱架橋性基を用いる。架橋性基の例を挙げると、エポキシ基、N−メチロールアミド基、オキサゾリン基、アリル基などが挙げられ、なかでも架橋および架橋密度の調節が容易であるので、架橋性基としては、N−メチロールアミド基、エポキシ基、アリル基が好ましい。架橋密度が高いほど、粒子状重合体の電解液に対する膨潤度が低くなるため、架橋密度を調節することにより、粒子状重合体の膨潤度を制御することが可能である。なお、架橋性基の種類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
架橋性単量体は、前述した(メタ)アクリル酸エステル単量体には含まれないものとする。
エポキシ基を含有する単量体としては、例えば、炭素−炭素二重結合およびエポキシ基を含有する単量体、ハロゲン原子およびエポキシ基を含有する単量体、などが挙げられる。
炭素−炭素二重結合およびエポキシ基を含有する単量体としては、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテル等の不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン等のジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセン等のアルケニルエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル等の不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;などが挙げられる。
ハロゲン原子およびエポキシ基を有する単量体としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリン;p−クロロスチレンオキシド;ジブロモフェニルグリシジルエーテル;などが挙げられる。
N−メチロールアミド基を含有する単量体としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロール基を有する(メタ)アクリルアミド類などが挙げられる。
オキサゾリン基を含有する単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
アリル基を含有する単量体としては、例えば、アリルアクリレート、アリルメタクリレートなどが挙げられる。
バインダー組成物を負極の形成に用いる場合、粒子状重合体を重合する際に使用する単量体混合物は、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系単量体を更に含むことが好ましい。中でも、芳香族ビニル単量体として、スチレンを使用することが好ましい。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
スチレン系単量体のような芳香族ビニル単量体の使用により、芳香族ビニル単量体由来の単量体単位を有する重合体のTgを高め、粒子状重合体のポリマー強度を強くし、ひいては負極合材層のピール強度を向上させることができるからである。さらに、スチレン系単量体のような芳香族ビニル単量体の使用により、バインダー組成物に含有される粒子状重合体に導入された芳香族環のπ電子と、炭素系負極活物質の芳香族環のπ電子との相互作用により、導電材の分散性を向上させることができるからである。
ここで、スチレン系単量体のような芳香族ビニル単量体の配合量は、単量体混合物中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。芳香族ビニル単量体の配合量を20質量%以上とすることで、上述したような負極合材層のピール強度の向上や、導電材の分散性の向上といった効果を得ることができ、配合量を80質量%以下とすることで、負極合材層の柔軟性を維持することができるからである。
粒子状重合体を重合する際に使用する単量体混合物は、酸性基を含有する単量体(以下、「酸性基含有単量体」と称することがある)を更に含むことが好ましい。酸性基を含有する単量体を含む単量体混合物を重合することで、酸性基を含有する単量体単位(以下、「酸性基含有単量体単位」と称することがある)を粒子状重合体に導入することができる。酸性基としては、例えば、カルボン酸基(−COOH)、スルホン酸基(−SO3H)、リン酸基(−PO3H2)などが挙げられる。ただし、酸性基含有単量体が有する酸性基は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。また、酸性基を含有する単量体が有する酸性基の数は、1つでもよく、2つ以上でもよい。
不飽和カルボン酸単量体の例としては、不飽和モノカルボン酸及びその誘導体;不飽和ジカルボン酸及びその酸無水物並びにそれらの誘導体;などが挙げられる。
不飽和モノカルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸等の、エチレン性不飽和モノカルボン酸が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸の誘導体の例としては、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α−アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸、及びβ−ジアミノアクリル酸等の、エチレン性不飽和モノカルボン酸の誘導体が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸等の、エチレン性不飽和ジカルボン酸が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸の酸無水物の例としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、及びジメチル無水マレイン酸等の、エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸の誘導体の例としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸等のマレイン酸メチルアリル;並びにマレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキル等のマレイン酸エステルが挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アリル」とは、アリルおよび/またはメタアリルを意味する。
さらに、バインダー組成物を負極の形成に用いる場合、本発明における粒子状重合体を重合する際に使用する単量体混合物は、本発明を著しく損なわない限り、上述したもの以外に任意の単量体を含んでいてもよい。これらの任意の単量体は、上述した単量体と共重合可能な単量体である。上述した単量体と共重合可能な単量体の例を挙げると、アクリルアミドなどのアミド系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレートなどの沸点145℃未満の(メタ)アクリル酸エステル単量体;後述するα,β−不飽和ニトリル単量体などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
以下、バインダー組成物を正極の形成に用いる場合に、粒子状重合体の重合に使用する単量体混合物に好適に配合されうる、α,β−不飽和ニトリル単量体および酸性基含有単量体について詳述する。
バインダー組成物を正極の形成に用いる場合、粒子状重合体を重合する際に使用する単量体混合物は、(メタ)アクリロニトリル単量体などのα,β−不飽和ニトリル単量体を更に含むことが好ましい。(メタ)アクリロニトリル単量体などのα,β−不飽和ニトリル単量体の使用により、バインダー組成物の結着力を高めて正極の強度を顕著に向上させることができるからである。
α,β−不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられる。これらの中でも、機械的強度および結着性向上の観点からは、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルが特に好ましい。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、(メタ)アクリロニトリル単量体などのα,β−不飽和ニトリル単量体の配合量は、単量体混合物中、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜35質量%である。(メタ)アクリロニトリル単量体などのα,β−不飽和ニトリル単量体の含有量が1質量%未満の場合、粒子状重合体のTgが低くなり、かかる粒子状重合体を含有するバインダー組成物を用いて形成した正極合材層のピール強度が低下する虞がある。さらにこの場合、粒子状重合体が電解液に対して過剰に膨潤し易くなり、このことによってもピール強度が低下する虞がある。他方、(メタ)アクリロニトリル単量体などのα,β−不飽和ニトリル単量体の含有量が50質量%超の場合、粒子状重合体のTgが高くなり、かかる粒子状重合体を含有するバインダー組成物を用いて形成した正極合材層の柔軟性が低下する虞がある。さらにこの場合、粒子状重合体が電解液に対してより膨潤しにくくなり、かかる正極合材層を用いて製造した電極の抵抗が上昇する虞がある。すなわち、アクリロニトリル単量体の単量体混合物中の含有量を、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜35質量%とすることで、かかる単量体混合物を重合して得た粒子状重合体を含有するバインダー組成物を用いて製造した正極のピール強度を向上させると共に、粒子状重合体の電解液に対する膨潤度を適切な値として、かかるバインダー組成物を用いて製造した二次電池の内部抵抗の増加を抑制することができる。
バインダー組成物を正極の形成に用いる場合、粒子状重合体を重合する際に使用する単量体混合物は、酸性基含有単量体を更に含むことが好ましい。ここで、酸性基含有単量体は、「負極用バインダー組成物中の粒子状重合体の重合に用いる単量体」の項で上述したものを用いることができ、好適な例および好適な単量体混合物中の配合量も同様である。
さらに、バインダー組成物を正極の形成に用いる場合、本発明における粒子状重合体を重合する際に使用する単量体混合物は、本発明を著しく損なわない限り、上述したもの以外に任意の単量体を含んでいてもよい。これらの任意の単量体は、上述した単量体と共重合可能な単量体である。上述した単量体と共重合可能な単量体の例を挙げると、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系単量体;アクリルアミドなどのアミド系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレートなどの沸点145℃未満の(メタ)アクリル酸エステル単量体;上述した架橋性単量体などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
バインダー組成物を負極の形成に用いる場合、粒子状重合体は、架橋構造を有していることが好ましい。架橋構造は、上述したように、架橋性単量体により粒子状重合体中に導入することにより形成することができる。
そして、バインダー組成物を正極の形成に用いる場合も、粒子状重合体は、架橋構造を有していてもよい。架橋構造を導入する方法としては、例えば、重合体を、上述の架橋性単量体を含む単量体組成物から重合することで架橋性基を含有させる方法、重合体と架橋剤とを組み合わせて用いる方法が挙げられる。この場合、加熱又はエネルギー線を照射することにより、重合体を架橋させることができる。架橋度は、加熱又はエネルギー線の照射の強度により調節しうる。架橋度が高いほど膨潤度が小さくなるので、架橋度を調整することにより、粒子状重合体の膨潤度を制御することが可能である。
また、粒子状重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−45℃以上、特に好ましくは−40℃以上であり、好ましくは25℃以下、より好ましくは15℃以下、特に好ましくは5℃以下である。粒子状重合体のガラス転移温度が上記範囲にあることにより、優れた強度と柔軟性を有する二次電池用電極を得ることができ、出力特性の高い二次電池を得ることができる。なお、粒子状重合体のガラス転移温度は、様々な単量体を組み合わせることによって調整可能である。
粒子状重合体の体積平均粒子径は、通常は0.001μm以上、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下である。バインダー組成物に含有される粒子状重合体の体積平均粒子径がこの範囲であることにより、かかるバインダー組成物は、少量の使用でも優れた結着力を発現しうる。ここで、体積平均粒子径は、光散乱粒子径測定器を用いて測定したものである。粒子の形状は、球形及び異形のどちらでもかまわない。
また、粒子状重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
バインダー組成物の固形分における、粒子状重合体の割合は、通常50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上である。
本発明の二次電池電極用バインダー組成物に含有される「レダクトン類化合物」とは、R3C(OH)=C(OH)C(=O)R4構造を有する化合物及びその塩を指す。ただし、R3及びR4は、それぞれ独立の任意の有機基であってもよいし、共に環構造を形成していても良い。R3C(OH)=C(OH)C(=O)R4構造を有する化合物としては、例えば、グルシン酸とその誘導体、レダクチン酸とその誘導体、アスコルビン酸とその異性体、誘導体等が挙げられる。また、前記レダクトン類化合物は、酸化体(脱プロトン化レダクトン;R3C(=O)C(=O)C(=O)R4構造を有する化合物及びその塩)の形態で含まれていてもよい。これらの中でも、コスト、毒性及び環境負荷が低く、さらに人体安全性が高いため、アスコルビン酸とその異性体、誘導体及びそれらの塩並びにそれらの酸化体から選択される少なくとも1種が好ましい。
なかでも、レダクトン類化合物およびその酸化体の少なくとも一方が、(イソ)アスコルビン酸及びその塩、並びに、それらの酸化体から選択される少なくとも1種であることが好ましい。(イソ)アスコルビン酸の塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。必要に応じてこれらのレダクトン類化合物の混合物を用いることができる。
バインダー組成物は、上述した成分に加え、バインダー組成物に配合し得る既知の任意成分を含有していても良い。また、粒子状重合体の重合に使用した重合開始剤などの残渣を含んでいてもよい。
本発明のバインダー組成物の製造方法は、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体混合物を重合転化率が90質量%以上となるまで水中で重合し、重合体と未反応の単量体とを含む混合物を得る工程(1)と、工程(1)の後、混合物にレダクトン類化合物および過酸化物を添加して未反応の単量体を重合し、前記沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有割合を、重合体100質量部に対して1×10-6質量部以上1500×10-6質量部以下にする工程(2)を含む。すなわち、本発明のバインダー組成物の製造方法は、単量体混合物の大部分を重合させる工程と、残留した未反応の残留モノマーを更に重合させて残留モノマー量を減少させる工程との少なくとも2段階の重合により粒子状重合体を重合する工程を含む。さらに、本発明のバインダー組成物の製造方法では、工程(1)において、単量体混合物を予めエマルジョン化した後、反応器に添加して重合することが好ましい。
工程(1)では、上述した粒子状重合体の製造に使用し得る、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体混合物を水中で重合する。そして、工程(1)では、重合転化率(=(得られた重合体量/単量体混合物の量)×100%)が90質量%以上、好ましくは95質量%以上になるまで単量体混合物を重合する。ここで、工程(1)における重合は、1段階で行っても良いし、多段階に分けて行っても良い。
なお、重合転化率は、反応温度や反応時間等を調整することにより制御することができる。そして、工程(1)の重合転化率を90質量%以上、好ましくは95質量%以上としたのは、所望の性状を有する粒子状重合体を得るためである。このように、工程(1)における重合転化率を90質量%以上、好ましくは95質量%以上とすることで、工程(2)においてレドックス重合で新たに生成されうる、既に工程(1)で生成されている粒子状重合体とは性状の異なる粒子状重合体の量を低減することができる。
なお、乳化重合法は、常法に従って実施し得る(例えば、「実験化学講座」第28巻(発行元:丸善(株)、日本化学会編)参照)。すなわち、攪拌機及び加熱装置付きの密閉容器に、水と、分散剤、乳化剤、架橋剤などの添加剤と、重合開始剤と、上述した単量体混合物とを所定の組成になるように加え、容器中の組成物を攪拌して単量体等を水に乳化させ、攪拌しながら温度を上昇させて重合を開始する方法を用いうる。あるいは、上記組成物を乳化させた後に密閉容器に入れ、同様に反応を開始させる方法を用いうる。
さらに、工程(1)の反応温度は、通常0℃以上、好ましくは40℃以上、通常150℃以下、好ましくは95℃以下である。また、重合時間は通常1時間以上、20時間以下である。重合温度が低すぎると反応速度が遅すぎ効率が悪く、重合温度が高すぎると水性媒体が蒸発しやすいため重合が困難になる。反応の圧力は常圧でもよい。反応は空気中でも可能であるが、窒素、アルゴン等の不活性ガスの存在下が好ましい。
ここで、上述した工程(1)では、重合転化率を100質量%とすることは困難であり、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む未反応の単量体が残留する。
そこで、工程(2)では、レダクトン類化合物および過酸化物を併用するレドックス系開始剤を用いて工程(1)の後に残った未反応の単量体(残留モノマー)を重合させ、バインダー組成物中の残留モノマー量を低減させる。具体的には、工程(2)では、工程(1)を経て得られた、重合体と未反応の単量体との混合物を含む重合系に対し、レダクトン類化合物および過酸化物を添加して、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有割合が重合体100質量部に対して1×10-6質量部以上1500×10-6質量部以下になるまでレドックス重合を行う。
なお、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有割合は、工程(2)で使用するレダクトン類化合物および過酸化物の量や、レドックス重合条件を変更することにより調整することができる。
なお、工程(2)では、上述の反応温度で、好ましくは1時間以上、6時間以下レドックス重合を実施した後に、重合系の温度をレドックス重合時の重合温度より高い温度(例えば、80℃超)として、過酸化物を除去又は分解させることが好ましい。これにより、得られたバインダー組成物中において、過酸化物の含有量が低減され、かかるバインダー組成物を用いて二次電池を製造した場合に、二次電池の電池性能や安全性を向上させることができる。
また、工程(2)における反応の圧力は常圧でもよい。反応は空気中でも可能であるが、窒素、アルゴン等の不活性ガスの存在下が好ましい。レダクトン類化合物の使用量は過酸化物の種類に応じて適宜変更するが、好ましくは、工程(1)で使用した単量体混合物の量に対して、通常0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、通常5質量%以下、好ましくは1質量%以下である。なお、残留モノマーの含有率によってレダクトン類化合物の使用量を調整してもよい。レダクトン類化合物の使用量が多すぎると、バインダー組成物中で大量に残留するため、当該バインダー組成物を用いた二次電池のガス発生量が増加して、初期容量に影響する。レダクトン類化合物の使用量が少なすぎると、レドックス重合が十分に進行せず、残留モノマーの低減効果が不十分となる虞がある。レダクトン類化合物は一括添加しても分割添加してもよいが、残留モノマー低減効率を向上するという観点では、分割添加が好ましい。
なお、工程(2)でレドックス重合を実施することにより、他の重合方法を採用して残留モノマーの低減を図った場合よりも重合開始剤の配合量を低減し、バインダー組成物中に重合開始剤の残渣が大量に残留するのを防止することができる。
なお、上述した工程(1)及び工程(2)の間に、例えば、蒸留工程などの追加工程を実施することも可能である。
本発明の二次電池電極用スラリー組成物は、上述のバインダー組成物及び電極活物質(正極活物質又は負極活物質)を含むことを特徴とする。このような二次電池電極用スラリー組成物を用いれば、得られる二次電池において残留モノマーに起因したガスの発生が抑制され、良好な高温保存特性及び高温サイクル特性を有する二次電池を提供することができる。
なお、本発明の二次電池電極用スラリー組成物は、バインダー組成物及び電極活物質に加え、導電材、粘度調整剤、界面活性剤、分散剤などを含んでいても良い。
本発明のスラリー組成物が含有するバインダー組成物の割合は、得られる電池の性能が良好に発現されるよう適宜調整することができる。例えば、電極活物質100質量部に対するバインダー組成物固形分の割合として、通常0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上であり、通常50質量部以下、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、特に好ましくは3質量部以下とすることができる。バインダー組成物の量をこの範囲にすることにより、密着性を充分に確保でき、二次電池の容量を高くでき、且つ、二次電池用電極の内部抵抗を低くすることができる。
スラリー組成物を負極の形成に用いる場合、電極活物質として負極活物質を用いる。負極活物質は、負極において用いられる電極活物質であり、二次電池の負極において電子の受け渡しをする物質である。例えば、本発明の二次電池がリチウムイオン二次電池である場合、負極活物質としては、通常、リチウムを吸蔵および放出し得る物質が用いられる。リチウムを吸蔵および放出し得る物質としては、例えば、炭素系負極活物質、金属系負極活物質、およびこれらを組み合わせた負極活物質などが挙げられる。
炭素質材料は、炭素前駆体を2000℃以下で熱処理して炭素化させることによって得られる、黒鉛化度の低い(即ち、結晶性の低い)材料である。なお、炭素化させる際の熱処理温度の下限は特に限定されないが、例えば500℃以上とすることができる。
そして、炭素質材料としては、例えば、熱処理温度によって炭素の構造を容易に変える易黒鉛性炭素や、ガラス状炭素に代表される非晶質構造に近い構造を持つ難黒鉛性炭素などが挙げられる。
ここで、易黒鉛性炭素としては、例えば、石油または石炭から得られるタールピッチを原料とした炭素材料が挙げられる。具体例を挙げると、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維などが挙げられる。
また、難黒鉛性炭素としては、例えば、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体(PFA)、ハードカーボンなどが挙げられる。
そして、黒鉛質材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。
ここで、人造黒鉛としては、例えば、易黒鉛性炭素を含んだ炭素を主に2800℃以上で熱処理した人造黒鉛、MCMBを2000℃以上で熱処理した黒鉛化MCMB、メソフェーズピッチ系炭素繊維を2000℃以上で熱処理した黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維などが挙げられる。
スラリー組成物を正極の形成に用いる場合、電極活物質として正極活物質を用いる。正極活物質は、正極において用いられる電極活物質であり、二次電池の正極において電子の受け渡しをする物質である。例えば、本発明の二次電池がリチウムイオン二次電池である場合、正極活物質としては、通常、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質が用いられる。このような正極活物質は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
なお、本明細書において、「平均酸化状態」とは、前記「1種類以上の遷移金属」の平均の酸化状態を示し、遷移金属のモル量と原子価とから算出される。例えば、「1種類以上の遷移金属」が、50mol%のNi2+と50mol%のMn4+から構成される場合には、「1種類以上の遷移金属」の平均酸化状態は、(0.5)×(2+)+(0.5)×(4+)=3+となる。
ここで、正極活物質の表面状態は、正極活物質と溶媒との接触角を測ることにより求めることができる。例えば、正極活物質のみを加圧成型してペレットを作製し、極性溶媒(例えば、N−メチルピロリドン)に対する前記ペレットの接触角を求めることで、確認できる。接触角が低いほど、その正極活物質は親水性であることを示す。
スラリー組成物を正極の形成に用いる場合、当該スラリー組成物は導電材を含むことが好ましい。導電材としては、例えば、導電性を有する、炭素の同素体からなる粒子が挙げられる。導電材を用いることにより、正極活物質同士の電気的接触を向上させることができ、特にリチウムイオン二次電池に用いる場合に放電負荷特性を改善することができる。
導電材の具体例を挙げると、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、カーボンナノチューブ等の導電性カーボンが挙げられる。また、例えば、黒鉛等の炭素粉末、各種金属のファイバー及び箔なども挙げられる。ここで、導電材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、正極活物質同士の電気的接触を向上させ、スラリー組成物を用いて形成した正極を使用した二次電池の電気的特性を向上させる観点からは、導電材として、アセチレンブラックを用いることが好ましい。
導電材の量は、正極活物質100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは1質量部以上であり、通常20質量部以下、好ましくは10質量部以下である。導電材の量がこの範囲にあることにより、二次電池の容量を高くでき、また、高い負荷特性を示すことができる。導電材の配合量が少なすぎると、正極活物質同士の電気的接触により形成される導電パスが不十分となり、二次電池の出力が低下する虞がある。一方、導電材の配合量が多すぎると、スラリー組成物の安定性が低下すると共に正極中の正極合材層の密度が低下し、リチウムイオン二次電池を十分に高容量化することができない。
粘度調整剤は、スラリー組成物の粘度を調整し、集電体上へのスラリー組成物の塗布を容易にするためのものである。そして、粘度調整剤としては、例えば水溶性高分子を用いることができる。具体的には、粘度調整剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、並びに、これらのセルロース系ポリマーのアンモニウム塩およびアルカリ金属塩;変性または未変性のポリ(メタ)アクリル酸、並びに、これらのポリ(メタ)アクリル酸のアンモニウム塩およびアルカリ金属塩;変性または未変性のポリビニルアルコール、アクリル酸またはアクリル酸塩とビニルアルコールとの共重合体、無水マレイン酸、マレイン酸またはフマル酸とビニルアルコールとの共重合体などのポリビニルアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、変性ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体水素化物などを用いることができる。さらに、粘度調整剤として、水溶性で、末端にチオール基を有する任意の高分子(末端にチオール基を有する水溶性高分子)を用いることができる。
本発明のスラリー組成物は、更に界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、スラリー組成物を集電体に塗工する時に発生するはじきを防止し、電極の平滑性を向上させるために有効である。界面活性剤としては、例えば、アルキル系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤の配合量は、電極活物質100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜10質量部である。界面活性剤が上記範囲であることにより電極作製時の生産性、平滑性が良好になり、二次電池の電池特性が優れたものになる。
本発明のスラリー組成物は、更に分散剤を含有してもよい。分散剤としては、例えば、アニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子化合物などが例示される。具体的な分散剤は、用いる電極活物質及び導電材に応じて選択される。分散剤を用いることにより、スラリー組成物の安定性が向上し、平滑な電極が得られるので、二次電池の電池容量を高めることができる。
分散剤の配合量は、電極活物質100質量部に対して、通常は0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上であり、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。
本発明のスラリー組成物は、上記成分の他に、例えば、補強材、酸化防止剤、電解液の分解を抑制する機能を有する電解液添加剤などの成分を含有していてもよい。これらの他の成分は、公知のものを使用することができ、例えば国際公開第2012/115096号、国際公開第2012/036260号、特開2012−204303号公報に記載のものを使用することができる。
本発明のスラリー組成物は、上記各成分を分散媒としての水系媒体中に分散させることにより調製することができる。具体的には、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの混合機を用いて上記各成分と水系媒体とを混合することにより、スラリー組成物を調製することができる。
なお、水系媒体としては、通常は水を用いるが、任意の化合物の水溶液や、少量の有機媒体と水との混合溶液などを用いてもよい。また、スラリー組成物の固形分濃度は、各成分を均一に分散させることができる濃度、例えば、10〜80質量%とすることができる。更に、上記各成分と水系媒体との混合は、通常、室温〜80℃の範囲で、10分〜数時間行うことができる。
スラリー組成物のpHを調整する方法としては、例えば、スラリー組成物の調製前に正極活物質を洗浄してスラリー組成物のpHを調整する方法、作製したスラリー組成物に炭酸ガスをバブリングしてpHを調整する方法、pH調整剤を使って調整する方法などが挙げられる。なかでも、pH調整剤を用いることが好ましい。pH調整剤の種類は特に限定されないが、酸性を示す水溶性物質であることが好ましい。強酸及び弱酸のいずれを使用してもよい。弱酸性を示す水溶性物質の例としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基など酸基を有する有機化合物が挙げられる。これらの中でも、特にカルボン酸基を有する有機化合物が好ましく用いられる。カルボン酸基を有する化合物の具体例としては、コハク酸、フタル酸、マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸などが挙げられる。こられの化合物は、乾燥することにより二次電池内において影響が少ない酸無水物にすることができる。また、強酸性を示す水溶性物質の例としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸などが挙げられる。
本発明の二次電池用電極は、集電体上に、上述のようにして得られた二次電池電極用スラリー組成物を塗布し、集電体上に塗布された二次電池電極用スラリー組成物を乾燥して得られることを特徴とする。
そして、本発明の二次電池用電極は、集電体と、集電体上に形成された電極合材層とを備え、電極合材層には、少なくとも、電極活物質と、粒子状重合体とが含まれている。なお、電極合材層中に含まれている電極活物質などの各成分は、本発明のスラリー組成物中に含まれていたものであり、それら各成分の好適な存在比は、本発明のスラリー組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
上記二次電池電極用スラリー組成物を集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。この際、スラリー組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる電極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
また、集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001mm〜0.5mm程度のシート状のものが好ましい。さらに、集電体は、電極合材層の接着強度を高めるため、表面に予め粗面化処理して使用することが好ましい。粗面化方法としては、例えば、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、通常、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリーバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、電極合材層の接着強度や導電性を高めるために、集電体の表面に中間層を形成してもよい。
集電体上のスラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上のスラリー組成物を乾燥することで、集電体上に電極合材層を形成し、集電体と電極合材層とを備えるリチウムイオン二次電池用電極を得ることができる。
また、電極合材層における水分量は、1000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましい。電極合材層の水分量を上記範囲内とすることにより、耐久性に優れる二次電池用電極を実現できる。水分量は、カールフィッシャー法等の既知の方法により測定しうる。
本発明の二次電池は、正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備え、正極および負極の少なくとも一方として、本発明の二次電池用電極を用いたものである。本発明の二次電池は、高温保存特性及び高温サイクル特性に優れると共に、ガス発生が抑制されている。
本発明の二次電池は、上述のように、正極および負極の少なくとも一方が、本発明の二次電池用電極であればよい。すなわち、正極および負極の何れか一方として、既知の電極を用いてもよい。
リチウムイオン二次電池用の電解液としては、例えば、非水溶媒に支持電解質を溶解した非水電解液が用いられる。支持電解質としては、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C4F9SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。解離度の高い支持電解質を用いるほど、リチウムイオン伝導度が高くなるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や、芳香族ポリアミド樹脂を含んでなる微孔膜または不織布;無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート;などを用いてもよい。具体例を挙げると、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)、及びこれらの混合物あるいは共重合体等の樹脂からなる微多孔膜;ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂からなる微多孔膜;ポリオレフィン系の繊維を織ったもの又はその不織布;絶縁性物質粒子の集合体等が挙げられる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くし二次電池内の活物質比率を上げて体積あたりの容量を上げることができるため、ポリオレフィン系の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
二次電池の具体的な製造方法としては、例えば、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。さらに、必要に応じてエキスパンドメタル;ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子;リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電を防止してもよい。二次電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
実施例および比較例において、バインダー組成物の経時安定性、並びに、二次電池におけるガス発生量、高温保存特性、高温サイクル特性、及びピール強度は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。さらに、残留モノマー量、体積平均粒子径は以下の方法により測定した。
調製したバインダー組成物を40℃で3ヶ月保存した後、200メッシュのスクリーンを通過させた。そして、スクリーンを通過せずにスクリーン上に残る残渣の固形分の質量を測定し、かかる質量がバインダー組成物の全固形分量に対して占める比率を算出し、以下の基準にて評価した。値が小さいほど、バインダー組成物が経時安定性に富むことを意味する。
A:残渣の比率が100質量ppm未満
B:残渣の比率が100質量ppm以上500質量ppm未満
C:残渣の比率が500質量ppm以上
作製したラミネートセル型のリチウムイオン二次電池について、25℃環境下で、0.1Cの定電流法によって4.3Vまで充電した後、80℃で50時間保存した。ラミネートセル型リチウムイオンニ次電池のセルをガラス板にて挟み、マイクロゲージにてセルの厚さを計測した。80℃保存前のセルの厚さをa、80℃で50時間保存後のセルの厚さをbとし、80℃保存前後の厚さの比(b/a)を求め、以下の基準により判定した。算出した比(b/a)が小さいほど、ガス発生量が少なく、ガス発生抑制効果に優れることを示す。
A:比(b/a)が1.00倍以上1.05倍以下
B:比(b/a)が1.05倍超1.10倍以下
C:比(b/a)が1.10倍超1.15倍以下
D:比(b/a)が1.15倍超1.20倍以下
E:比(b/a)が1.20倍超
作製したラミネートセル型のリチウムイオン二次電池について、25℃環境下で、0.1Cの定電流法によって4.3Vまで充電した後、80℃で100時間保存した。80℃保存開始前の開路電圧(Open circuit voltage,以下、「OCV」と表記する。)と80℃で100時間保存後のセルのOCVを測定し、80℃保存開始前のOCVに対する80℃で100時間保存後のOCVの比をOCV維持率とし、以下の基準により判定する。OCV維持率が大きいほど、高温保存特性に優れる、すなわち寿命特性に優れることを示す。
A:OCV維持率が99.0%以上
B:OCV維持率が98.8%以上99.0%未満
C:OCV維持率が98.6%以上98.8%未満
D:OCV維持率が98.4%以上98.6%未満
E:OCV維持率が98.2%以上98.4%未満
F:OCV維持率が98.0%以上98.2%未満
G:OCV維持率が98.0%未満
作製したラミネートセル型のリチウムイオン二次電池またはフルコインセル型のリチウムイオン二次電池について、それぞれ60℃環境下で、0.2Cの定電流で4.3Vまで充電し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電する充放電サイクルを行った。充放電サイクルは100サイクルまで行い、初期放電容量(1サイクル目の放電容量)に対する100サイクル目の放電容量の比を容量維持率とし、下記の基準で判定した。容量維持率が大きいほど繰り返し充放電による容量減が少なく、高温サイクル特性に優れていることを示す。
A:容量維持率が90%以上
B:容量維持率が85%以上90%未満
C:容量維持率が80%以上85%未満
D:容量維持率が75%以上80%未満
E:容量維持率が70%以上75%未満
F:容量維持率が70%未満
作製した二次電池用負極を長さ100mm、幅10mmの長方形状に切り出して試験片とし、負極合材層を有する面を下にし、負極合材層表面にセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を貼り付け、集電体の一端を垂直方向に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した(なお、セロハンテープは試験台に固定されている)。測定を3回行い、その平均値を求めてこれを剥離ピール強度とし、以下の基準により評価した。剥離ピール強度の値が大きいほど、負極合材層と集電体との密着性に優れることを示す。
A:剥離ピール強度が30N/m以上
B:剥離ピール強度が25N/m以上30N/m未満
C:剥離ピール強度が20N/m以上25N/m未満
D:剥離ピール強度が20N/m未満
バインダー組成物中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(残留モノマー)量は、ガスクロマトグラフィーにて測定した。具体的には、まず、バインダー組成物中の粒子状重合体の固形分濃度が1質量%になるよう、アセトンで希釈し、5Cろ紙を用いて濾過して測定用サンプルを準備した。そして、準備したサンプルについて、以下の条件でガスクロマトグラフィーを実施した。
装置:Agilent 6850A(アジレント・テクノロジー株式会社製)
カラム:HP−1
平均線速度:15cm/s
注入量:1ml
注入口温度:250℃
スプリット比: 20:1
検出器:水素炎イオン化型検出器(FID:Flame Ionization Detector)
検出器温度:280℃
オーブン:40℃で3分保持した後、10℃/分で加熱し、280℃で5分間保持
粒子状重合体の体積平均粒子径は、光散乱粒子径測定器(コールター社製、コールターLS230)を用いて測定した。
まず、本発明のバインダー組成物を負極の形成に使用した。
<バインダー組成物の製造>
[重合工程1]
攪拌機付き重合缶Aに、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体として2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)20部、芳香族ビニル単量体としてスチレン37.6部、分散剤としてラウリル硫酸ナトリウム(LAS)1.2部、イオン交換水320部を加えた。この重合缶Aに、さらに重合開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)1.0部及びイオン交換水40部を加え、70℃に加温し、90分攪拌した。
また、別の重合缶Bに、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体として2−エチルヘキシルアクリレート(沸点215℃)180部、芳香族ビニル単量体としてスチレン150.4部、酸性基含有単量体としてイタコン酸(IA)8.0部、分散剤としてラウリル硫酸ナトリウム4.8部及びイオン交換水192部を加えて攪拌して、エマルジョンを作製した。このエマルジョンを、約180分かけて重合缶Bから重合缶Aに逐次添加した。その後、約120分攪拌して、重合転化率(モノマー消費量)が93%になったところで、40℃に冷却した。
工程1で得られた粒子状重合体を含有する水分散液に対して、レダクトン類化合物としてアスコルビン酸ナトリウム1.2部と、過酸化物としてtert−ブチルヒドロペルオキシド (t-BuOOH)1.2部とを添加して、更に40℃で4時間反応させた。その後、かかる水分散液に対して5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整し、所望の粒子状重合体を含む水分散液(バインダー組成物)を得た。得られたバインダー組成物について、経時安定性を評価した。結果を表1に示す。
負極活物質として体積平均粒子径20μm、比表面積4.2m2/gのグラファイト98部と、結着剤として上述のバインダー組成物を固形分相当量で1.2部と、CMCを固形分相当量で0.8部とを混合し、更に水を加えてプラネタリーミキサーで混合して負極用スラリー組成物を調製した。
この負極用スラリー組成物を厚さ10μmの銅箔の片面に塗布し、110℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして厚さ60μmの負極合材層を有する負極を得た。
得られた負極について、ピール強度を測定した。結果を表1に示す。
正極活物質としてCo−Ni−Mnのリチウム複合酸化物系の活物質(製品名:セルシードNMC613、日本化学工業社製。以下、「NMC」と記載することがある。)100部、導電材としてアセチレンブラック2部、及び粘度調整剤としてカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMC)水溶液を固形分相当量で0.8部となる量を加え、60分混合した。更に水を加えて希釈した後に、BM-610Bバインダー(固形分濃度40%)を粒子状重合体として1.0部となるように添加し、10分混合した。これを脱泡処理して艶のある流動性の良い正極用スラリー組成物を得た。
得られた正極用スラリー組成物を厚さ18μmのアルミニウム箔に塗布し、120℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして厚さ50μmの正極合材層を有する正極を得た。
アルミニウムシートと、その両面を被覆するポリプロピレン樹脂とからなるラミネートフィルムを用いて電池容器を作成した。次いで、上記で得た正極および負極それぞれの端部から合材層を除去し、銅箔又はアルミニウム箔が露出した箇所を形成した。正極のアルミニウム箔が露出した箇所にはNiタブを、負極の銅箔が露出した箇所にはCuタブを溶接した。得られたタブ付きの正極及びタブ付きの負極を、ポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータを挟んで重ねた。電極の面の向きは、正極の合材層側の面と負極の合材層側の面とが対向する向きとした。重ねた電極及びセパレータを、捲回して上記の電池容器に収納した。続いてここに、電解液(EC/DEC=1/2、1M LiPF6)を注入した。電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを25℃の下、体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPF6を1モル/Lの濃度になるように溶解させて調製したものを用いた。
次いで、ラミネートフィルムを封止させて本発明のリチウムイオン二次電池であるラミネートセル型リチウムイオン二次電池を作製した。得られたラミネートセル型リチウムイオン二次電池のガス発生量、高温保存特性及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体である2−エチルヘキシルアクリレートの配合量、芳香族ビニル単量体であるスチレンの配合量、及び工程(1)における重合転化率をそれぞれ表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。なお、各成分の配合量を変更した場合であっても、重合缶A及びBに含まれる各成分の配合量間の比率は実施例1と同様にした。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、ラミネートセル型リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、高温保存特性、及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
芳香族ビニル単量体であるスチレンの配合量及び工程(1)における重合転化率を表1に示す通りに変更し、架橋性単量体であるアリルメタクリレートを配合しなかった以外は実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。なお、各成分の配合量を変更した場合であっても、重合缶A及びBに含まれる各成分の配合量間の比率は実施例1と同様にした。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、ラミネートセル型リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、及び高温保存特性、並びに高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体である2−エチルヘキシルアクリレートの配合量、芳香族ビニル単量体であるスチレンの配合量、及び工程(1)における重合転化率をそれぞれ表1に示す通りに変更し、さらに、その他の単量体としてブタジエンを20部配合した以外は実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。なお、各成分の配合量を変更した場合であっても、重合缶A及びBに含まれる各成分の配合量間の比率は実施例1と同様にした。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、ラミネートセル型リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、高温保存特性、及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体である2−エチルヘキシルアクリレートの配合量、芳香族ビニル単量体であるスチレンの配合量、及び重合工程1における重合転化率をそれぞれ表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。なお、各成分の配合量を変更した場合であっても、重合缶A及びBに含まれる各成分の配合量間の比率は実施例1と同様にした。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、ラミネートセル型リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、高温保存特性、及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体として、2−エチルヘキシルアクリレートに代えて、ブチルアクリレートを使用した以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。なお、各成分の配合量を変更した場合であっても、重合缶A及びBに含まれる各成分の配合量間の比率は実施例1と同様にした。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、ラミネートセル型リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、高温保存特性、及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
レダクトン類化合物であるアスコルビン酸ナトリウムを、表1に示すレダクトン類化合物にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、高温保存特性、及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
レダクトン類化合物であるアスコルビン酸ナトリウムの配合割合をそれぞれ表1に示す通りに変更し、また、過酸化物であるtert−ブチルヒドロペルオキシドの配合割合を表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル電池型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、ラミネートセル型リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、高温保存特性、及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
過酸化物であるtert−ブチルヒドロペルオキシドを過酸化ベンゾイル(BPO)に変更した以外は実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、ラミネートセル型リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、高温保存特性、及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
レダクトン類化合物であるアスコルビン酸ナトリウムを配合せず、工程(2)において、40℃で2時間反応させた後、80℃で2時間反応させた以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、ラミネートセル型リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、高温保存特性、及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体である2−エチルヘキシルアクリレートに代えて、沸点が100℃のエチルアクリレート(EA)を使用した以外は実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、ラミネートセル型リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、高温保存特性、及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
<バインダー組成物の製造>
攪拌機付き重合缶Aに、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体として2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)20部、芳香族ビニル単量体としてスチレン37.6部、分散剤としてラウリル硫酸ナトリウム(LAS)1.2部、イオン交換水320部を加えた。この重合缶Aに、さらに重合開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)1.0部及びイオン交換水40部を加え、70℃に加温し、90分攪拌した。
また、別の重合缶Bに、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体として2−エチルヘキシルアクリレート(沸点215℃)180部、芳香族ビニル単量体としてスチレン150.4部、酸性基含有単量体としてイタコン酸(IA)8.0部、分散剤としてラウリル硫酸ナトリウム4.8部及びイオン交換水192部を加えて攪拌して、エマルジョンを作製した。このエマルジョンを、約180分かけて重合缶Bから重合缶Aに逐次添加した。
その後、約120分攪拌して、重合転化率(モノマー消費量)が93%になったところで、エバポレータを用い、80℃、100hPa(0.1気圧)の条件で8時間かけて減圧蒸留を行った。その後冷却し、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整し、所望の粒子状重合体を含む水分散液(バインダー組成物)を得た。得られたバインダー組成物について、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、高温保存特性、及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
レダクトン類化合物であるアスコルビン酸ナトリウムに代えてコハク酸を配合した以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、ラミネートセル型リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、高温保存特性、及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
工程(2)の実施タイミングを、工程(1)における重合転化率が81%のときとした以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、ラミネートセル型リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、高温保存特性、及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
比較例6では、工程(2)を実施しなかった。工程(1)の重合転化率が93%となったところで40℃に冷却して、過酸化物である過硫酸アンモニウム(APS)0.3質量%を添加して更に4時間反応させた。その後、かかる水分散液に対して5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整し、所望の粒子状重合体を含む水分散液(バインダー組成物)を得た。得られたバインダー組成物について、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例1と同様にして負極及びかかる負極を有するラミネートセル型リチウムイオン二次電池を製造した。負極についてはピール強度を評価し、ラミネートセル型リチウムイオン二次電池については、ガス発生量、高温保存特性、及び高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
<バインダー組成物の製造>
[重合工程1]
重合缶Aに、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体として2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)43部、α,β−不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリル(AN)5部、分散剤としてラウリル硫酸ナトリウム(LAS)1.2部、イオン交換水320部を加えた。この重合缶Aに、さらに重合開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)1.0部及びイオン交換水40部を加え、70℃に加温し、90分攪拌した。
また、別の重合缶Bに、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体として2−エチルヘキシルアクリレート(沸点215℃)268.6部、α,β−不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリル74.4部、酸性基含有単量体としてイタコン酸(IA)8.0部、分散剤としてラウリル硫酸ナトリウム4.8部及びイオン交換水192部を加えて攪拌して、エマルジョンを作製した。このエマルジョンを、約180分かけて重合缶Bから重合缶Aに逐次添加した。その後、約120分攪拌して、重合転化率(モノマー消費量)が95%になったところで、40℃に冷却した。
工程1で得られた粒子状重合体を含有する水分散液に対して、レダクトン類化合物としてアスコルビン酸ナトリウム1.2部と、過酸化物としてtert−ブチルヒドロペルオキシド (t-BuOOH)1.2部とを添加して、更に40℃で4時間反応させた。その後、かかる水分散液に対して5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整し、所望の粒子状重合体を含む水分散液(バインダー組成物)を得た。得られたバインダー組成物について、経時安定性を評価した。結果を表2に示す。
正極活物質としてCo−Ni−Mnのリチウム複合酸化物系の活物質(製品名:セルシードNMC613、日本化学工業社製。以下、「NMC」と記載することがある。)100部、導電材としてアセチレンブラック2部、及び粘度調整剤としてカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMC)水溶液を固形分相当量で0.8部となる量を加え、60分混合した。更に水を加えて希釈した後に、前記のバインダー組成物(固形分濃度40%)を粒子状重合体として1.0部となるように添加し、10分混合した。これを脱泡処理して艶のある流動性の良い正極用スラリー組成物を得た。
上記正極用スラリー組成物を厚さ18μmのアルミニウム箔に塗布し、120℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして厚さ50μmの正極合材層を有する正極を得た。
負極活物質として体積平均粒子径20μm、比表面積4.2m2/gのグラファイト98部と、結着剤として日本ゼオン(株)製の負極用バインダーBM−400B(スチレン−ブタジエン共重合体の40質量%水性分散液)を固形分相当で1.0部と、CMCを固形分相当で0.8部とを混合し、更に水を加えてプラネタリーミキサーで混合して負極用スラリー組成物を調製した。この負極用スラリー組成物を厚さ10μmの銅箔の片面に塗布し、110℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして厚さ60μmの負極合材層を有する負極を得た。
アルミニウムシートと、その両面を被覆するポリプロピレン樹脂とからなるラミネートフィルムを用いて電池容器を作成した。次いで、上記で得た正極および負極それぞれの端部から合材層を除去し、銅箔又はアルミニウム箔が露出した箇所を形成した。正極のアルミニウム箔が露出した箇所にはNiタブを、負極の銅箔が露出した箇所にはCuタブを溶接した。得られたタブ付きの正極及びタブ付きの負極を、ポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータを挟んで重ねた。電極の面の向きは、正極の合材層側の面と負極の合材層側の面とが対向する向きとした。重ねた電極及びセパレータを、捲回して上記の電池容器に収納した。続いてここに、電解液(EC/DEC=1/2、1M LiPF6)を注入した。電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを25℃の下、体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPF6を1モル/Lの濃度になるように溶解させて調製したものを用いた。
次いで、ラミネートフィルムを封止させて本発明のリチウムイオン二次電池であるラミネートセル型リチウムイオン二次電池を作製した。得られたラミネートセル型リチウムイオン二次電池のガス発生量、及び高温保存特性を評価した。結果を表2に示す。
上記で得られた正極を直径13mmの円形に切り抜いた。上記で得られた負極を直径14mmの円形に切り抜いた。厚さ25μmの乾式法により製造された単層のポリプロピレン製セパレータ(気孔率55%)を直径18mmの円形に切り抜いた。これらを、ポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。外装容器内の円形の電極及びセパレータの配置は、下記の通りとした。円形の正極は、そのアルミニウム箔が外装容器底面に接触するよう配置した。円形のセパレータは、円形の正極と円形の負極との間に介在するよう配置した。円形の負極は、その負極合材層側の面が、円形のセパレータを介して円形の正極の正極合材層側の面に対向するよう配置した。更に負極の上にエキスパンドメタルを載置し、この容器中に電解液(EC/DEC=1/2、1M LiPF6)を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、外装容器を封止して、直径20mm、厚さ約3.2mmの本発明のリチウムイオン二次電池であるフルコインセル型リチウムイオン二次電池(コインセルCR2032)を作製した。得られたフルコインセル型リチウムイオン二次電池について高温サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体である2−エチルヘキシルアクリレートの配合量及びα,β−不飽和ニトリル単量体であるアクリロニトリルの配合量をそれぞれ表2に示す通りに変更した以外は実施例16と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。なお、各成分の配合量を変更した場合であっても、重合缶A及びBに含まれる各成分の配合量間の比率は実施例16と同様にした。そして、得られた粒子状重合体の体積平均粒子径は、実施例16と同様に0.11μmであった。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例16と同様にしてラミネートセル型リチウムイオン二次電池及びフルコインセル型リチウムイオン二次電池を製造して、それぞれ、ガス発生量、及び高温保存特性、並びに高温サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体としてn−ブチルアクリレート(沸点148℃)を使用した以外は実施例16と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例16と同様にしてラミネートセル型リチウムイオン二次電池及びフルコインセル型リチウムイオン二次電池を製造して、それぞれ、ガス発生量、及び高温保存特性、並びに高温サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
レダクトン類化合物であるアスコルビン酸ナトリウムを、表2に示すレダクトン類化合物にそれぞれ変更した以外は実施例16と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例16と同様にしてラミネートセル型リチウムイオン二次電池及びフルコインセル型リチウムイオン二次電池を製造して、それぞれ、ガス発生量、及び高温保存特性、並びに高温サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
レダクトン類化合物であるアスコルビン酸ナトリウムの配合割合をそれぞれ表2に示す通りに変更し、また、過酸化物であるtert−ブチルヒドロペルオキシドの配合割合を表2に示す通りに変更した以外は実施例16と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例16と同様にしてラミネートセル電池型リチウムイオン二次及びフルコインセル型リチウムイオン二次電池を製造して、それぞれ、ガス発生量、及び高温保存特性、並びに高温サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
過酸化物であるtert−ブチルヒドロペルオキシドを過酸化ベンゾイル(BPO)に変更した以外は実施例16と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例16と同様にしてラミネートセル型リチウムイオン二次電池及びフルコインセル型リチウムイオン二次電池を製造して、それぞれ、ガス発生量、及び高温保存特性、並びに高温サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
レダクトン類化合物であるアスコルビン酸ナトリウムを配合せず、工程(2)において、40℃で2時間反応させた後、80℃で2時間反応させた以外は、実施例16と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例16と同様にしてラミネートセル型リチウムイオン二次電池及びフルコインセル型リチウムイオン二次電池を製造して、それぞれ、ガス発生量、及び高温保存特性、並びに高温サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
(メタ)アクリル酸エステル単量体である2−エチルヘキシルアクリレートに代えて、沸点が100℃のエチルアクリレート(EA)を使用した以外は実施例16と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例16と同様にしてラミネートセル型リチウムイオン二次電池及びフルコインセル型リチウムイオン二次電池を製造して、それぞれ、ガス発生量、及び高温保存特性、並びに高温サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
<バインダー組成物の製造>
重合缶Aに、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体として2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)43部、α,β−不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリル(AN)5部、分散剤としてラウリル硫酸ナトリウム(LAS)1.2部、イオン交換水320部を加えた。この重合缶Aに、さらに重合開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)1.0部及びイオン交換水40部を加え、70℃に加温し、90分攪拌した。
また、別の重合缶Bに、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体として2−エチルヘキシルアクリレート(沸点215℃)268.6部、α,β−不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリル74.4部、酸性基含有単量体としてイタコン酸(IA)8.0部、分散剤としてラウリル硫酸ナトリウム4.8部及びイオン交換水192部を加えて攪拌して、エマルジョンを作製した。このエマルジョンを、約180分かけて重合缶Bから重合缶Aに逐次添加した。その後、約120分攪拌し、重合転化率(モノマー消費量)が95%になったところで、エバポレータを用い、80℃、100hPa(0.1気圧)の条件で8時間かけて減圧蒸留を行った。その後冷却し、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整し、所望の粒子状重合体を含む水分散液(バインダー組成物)を得た。得られたバインダー組成物について、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例16と同様にしてラミネートセル型リチウムイオン二次電池及びフルコインセル型リチウムイオン二次電池を製造して、それぞれ、ガス発生量、及び高温保存特性、並びに高温サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
レダクトン類化合物であるアスコルビン酸ナトリウムに代えてコハク酸を配合した以外は、実施例16と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例16と同様にしてラミネートセル型リチウムイオン二次電池及びフルコインセル型リチウムイオン二次電池を製造して、それぞれ、ガス発生量、及び高温保存特性、並びに高温サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
工程(2)の実施タイミングを、工程(1)における重合転化率が80%のときとした以外は、実施例16と同様にしてバインダー組成物を調製し、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例16と同様にしてラミネートセル型リチウムイオン二次電池及びフルコインセル型リチウムイオン二次電池を製造して、それぞれ、ガス発生量、及び高温保存特性、並びに高温サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
比較例12では、工程(2)を実施しなかった。工程(1)の重合転化率が95%となったところで40℃に冷却して、過酸化物である過硫酸アンモニウム(APS)0.3質量%を添加して更に4時間反応させた。その後、かかる水分散液に対して5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整し、所望の粒子状重合体を含む水分散液(バインダー組成物)を得た。得られたバインダー組成物について、経時安定性を評価した。また、調製したバインダー組成物を用いて、実施例16と同様にしてラミネートセル型リチウムイオン二次電池及びフルコインセル型リチウムイオン二次電池を製造して、それぞれ、ガス発生量、及び高温保存特性、並びに高温サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
また、本発明によれば、当該二次電池用電極を用いた、残留モノマーに起因したガスの発生が抑制され、良好な高温保存特性及び高温サイクル特性を有する二次電池を提供することができる。
Claims (10)
- 粒子状重合体、レダクトン類化合物およびその酸化体の少なくとも一方、及び水を含み、
前記粒子状重合体は、沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体混合物を重合してなり、
前記沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有割合は、前記粒子状重合体100質量部に対して1×10-6質量部以上1500×10-6質量部以下である、二次電池電極用バインダー組成物。 - 前記レダクトン類化合物およびその酸化体の少なくとも一方が、(イソ)アスコルビン酸及びその塩、並びに、それらの酸化体から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の二次電池電極用バインダー組成物。
- 前記レダクトン類化合物およびその酸化体の少なくとも一方の含有割合が、前記粒子状重合体100質量部あたり、0.05質量部以上5質量部以下である、請求項1又は2に記載の二次電池電極用バインダー組成物。
- 前記単量体混合物は、さらに架橋性単量体を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次電池電極用バインダー組成物。
- 前記単量体混合物は、さらに(メタ)アクリロニトリル単量体を5〜35質量%含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次電池電極用バインダー組成物。
- 前記沸点が145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体が、2−エチルヘキシルアクリレートである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二次電池電極用バインダー組成物。
- 沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体混合物を重合転化率が90質量%以上となるまで水中で重合し、重合体と未反応の単量体とを含む混合物を得る工程(1)と、
前記工程(1)の後、前記混合物にレダクトン類化合物および過酸化物を添加して前記未反応の単量体を重合し、前記沸点145℃以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有割合を、重合体100質量部に対して1×10-6質量部以上1500×10-6質量部以下にする工程(2)とを含む、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の二次電池電極用バインダー組成物の製造方法。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の二次電池電極用バインダー組成物及び電極活物質を含む、二次電池電極用スラリー組成物。
- 集電体上に、請求項8に記載の二次電池電極用スラリー組成物を塗布し、前記集電体上に塗布された二次電池電極用スラリー組成物を乾燥して得られる、二次電池用電極。
- 正極、負極、電解液及びセパレータを備え、前記正極および前記負極の少なくとも一方が、請求項9に記載の二次電池用電極である、二次電池。
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