JPWO2014104076A1 - 形質転換ユーグレナ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

目的外来遺伝子を発現可能に保持しているユーグレナを提供する。薬剤耐性遺伝子及び目的外来遺伝子を、発現可能に保持しているユーグレナ。

Description

本発明は、形質転換ユーグレナ及びその製造方法に関する。
ユーグレナは、葉緑体において光合成を行うことで独立栄養的に生育できる能力を有すると同時に、鞭毛による運動能力を有するため、動物界及び植物界の双方に分類される原生動物である。ユーグレナは、細胞構造中に細胞壁を有しないが、ペクリルと呼ばれるタンパク質を主成分とする柔らかい組織に覆われているのが特徴である。
ユーグレナは高い二酸化炭素吸収能を持ち、40%という非常に高い濃度の二酸化炭素存在下においても光合成を行うことで良好な生育を示す。ユーグレナは、嫌気状態において、貯蔵多糖であるβ1,3-グルカンのパラミロンから、ワックスエステルを醗酵、産生する。このワックスエステルは、容易にバイオディーゼルに変換可能である。つまり、ユーグレナは二酸化炭素の低減と並行した燃料生産が可能な生物であるといえる。
他の様々な分野においても、ユーグレナの産業利用が提案されている。
これまでに、ユーグレナに対して核酸を導入しようとする様々な試みがなされてきた。
例えば、ユーグレナに対してエレクトロポレーションにより二本鎖RNAを導入し、RNAiにより特定のmRNAを消失させることに成功したという例が報告されている(非特許文献1及び2)。また、ユーグレナを形質転換しようとする様々な試みがなされてきた。
Iseki, M.ら、「A blue−light−activated adenylyl cyclase mediates photoavoidance in Euglena gracilis」、「Nature」、2002年、415 Ishikawa, T.ら、「Euglena fracilis ascorbate peroxidase forms an intramolecular dimeric structure: its unique molecular characterization」、「BiochemicalJournal」、426、pp.125−134
本発明は、ユーグレナを形質転換することを課題とする。具体的には、形質転換されたユーグレナを提供すること、及びユーグレナを形質転換する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、従来試みられてきたユーグレナにおける形質転換方法においては、導入した遺伝子が安定して保持されないという問題があることを見出した。そこで、本発明者らは、この問題を解決するため鋭意検討を行った。まず、本発明者らは、二本鎖RNAをユーグレナに導入し、RNAiを誘導した報告例に基づき、同様の手法により形質転換を行うことができないか検討した。具体的には、エレクトロポレーション法により遺伝子を導入することを試みた。しかしながら、導入された遺伝子を発現可能に保持しているユーグレナを取得することはできなかった。
そこで、本発明者らは、全く異なる手法としてアグロバクテリウム法を利用してユーグレナを形質転換することを着想し、実際にこれにより、導入された遺伝子を発現可能に保持しているユーグレナを取得できることを明らかにした。
本発明は、本発明者らが上記知見に基づいてさらに鋭意検討を加えることにより完成されたものであり、以下に示す通りである。
1.本発明のユーグレナ
[1−1]
薬剤耐性遺伝子及び目的外来遺伝子を、発現可能に保持しているユーグレナ。
[1−2]
前記薬剤の非存在下における継代培養において、少なくとも10代目まで前記薬剤耐性遺伝子及び前記目的外来遺伝子を発現可能に保持している、[1−1]に記載のユーグレナ。
[1−3]
前記薬剤が、ゼオシン、ハイグロマイシン又はG418である、[1−1]又は[1−2]に記載のユーグレナ。
[1−4]
前記薬剤耐性遺伝子及び前記目的外来遺伝子が、少なくともユーグレナ内在性プロモーターの制御下にある、[1−1]〜[1−3]のいずれか一項に記載のユーグレナ。
[1−5]
前記薬剤耐性遺伝子及び前記目的外来遺伝子が、ゲノムに組み込まれている、[1−1]〜[1−4]のいずれか一項に記載のユーグレナ。
[1−6]
(1)前記薬剤耐性遺伝子及び前記目的外来遺伝子をアグロバクテリウム法によりユーグレナに導入する工程
を含む方法により得られうる、項[1−1]〜[1−5]のいずれか一項に記載のユーグレナ。
[1−7]
さらに、
(2)前記工程(1)で得られたユーグレナを、前記薬剤の存在下で培養する工程
を含む方法により得られうる、[1−6]に記載のユーグレナ。
[1−8]
前記培養を、pH6〜8で行う、[1−7]に記載のユーグレナ。
2.本発明のユーグレナ製造方法
[2−1]
薬剤耐性遺伝子及び目的外来遺伝子を、発現可能に保持しているユーグレナの製造方法であって:
(1)前記薬剤耐性遺伝子及び前記目的外来遺伝子をアグロバクテリウム法によりユーグレナに導入する工程
を含む方法。
[2−2]
さらに、
(2)前記工程(1)で得られたユーグレナを、前記薬剤の存在下で培養する工程
を含む[2−1]に記載の方法。
[2−3]
前記薬剤が、ゼオシン、ハイグロマイシン又はG418である、[2−1]又は[2−2]に記載の方法。
[2−4]
前記培養を、pH6〜8で行う、[2−3]に記載の方法。
[2−5]
前記薬剤耐性遺伝子及び前記目的外来遺伝子が、少なくともユーグレナ内在性プロモーターの制御下にある、[2−1]〜[2−4]のいずれか一項に記載の方法。
[2−6]
前記ユーグレナが、前記薬剤耐性遺伝子及び前記目的外来遺伝子が、相同組替えにより染色体ゲノムに組み込まれているユーグレナである、[2−1]〜[2−5]のいずれか一項に記載の方法。
本発明によれば、目的遺伝子により形質転換されたユーグレナを提供できる。また、ユーグレナを目的遺伝子により形質転換する方法を提供できる。本発明では導入形質を長期に保持することができるので、例えば物質生産により適している。
pCMV/Zeoのプラスミドマップである。 pGLuc-Basicのプラスミドマップである。 pBIG2RHPH2のプラスミドマップと、pBIG2R/pCMV/Zeo、pBIG2R/pNOR/Zeo用の挿入遺伝子である。 実施例で行ったPCR条件を示す図面である。 ユーグレナ野生株の液体培地における生育(ゼオシンは100μg/ml)を示すグラフである。 ユーグレナ野生株の平板培地における生育を示す、図面に代わる写真である。 KH培地におけるpHごとのユーグレナ野生株の生育差を示すグラフである。 ユーグレナ野生株に対するセフォタキシムの効果を示すグラフである。 ユーグレナ野生株に対するG418の効果を示すグラフである。 ユーグレナ野生株に対するハイグロマイシンの効果を示すグラフである。 ユーグレナ形質転換体の生育(ゼオシンの濃度はμg/ml)を示すグラフである。 PCRによるユーグレナ形質転換体DNAからの導入遺伝子検出結果を示す、図面に代わる写真である。 RT-PCRを用いた転写産物の検出結果を示す、図面に代わる写真である。 ユーグレナ形質転換体の導入形質(薬剤耐性)安定性を示すグラフである。 ユーグレナ形質転換体の導入形質安定性を示すグラフである。 ネオマイシン耐性遺伝子導入形質転換体における薬剤耐性遺伝子DNAの検出結果を示す写真である。 ネオマイシン耐性遺伝子導入形質転換体における薬剤耐性遺伝子転写産物の検出結果を示す写真である。 ハイグロマイシン耐性遺伝子導入形質転換体における薬剤耐性遺伝子DNAの検出結果を示す写真である。 ハイグロマイシン耐性遺伝子導入形質転換体における薬剤耐性遺伝子転写産物の検出結果を示す写真である。
1.本発明のユーグレナ
本発明のユーグレナは、薬剤耐性遺伝子及び目的外来遺伝子を、発現可能に保持しているユーグレナである。
本発明においてユーグレナは、一般に分類上ユーグレナ属に属するものであればよく、特に限定されない。その種は特に制限されないが、例えば、ユーグレナ グラシリス(Euglena gracilis)、ユーグレナ グラシリス バシラリス(Euglena gracilis var. bacillaris)、ユーグレナ ビリデディス(Euglena viridis)及びアスタシア ロンガ(Astasia longa)等が挙げられる。
本発明においてユーグレナとしては、(i)無菌株が容易に取得できること、並びに(ii)従属栄養及び独立栄養のどちらの生育環境にも適応可能であること等の点で、ユーグレナ グラシリスを用いることが特に好ましい。
薬剤耐性遺伝子は、ユーグレナに有効な薬剤選択マーカーとなりうるものであればよく特に限定されないが、例えば、ゼオシン、ハイグロマイシン及びG418等に対する耐性遺伝子が挙げられる。薬剤耐性遺伝子は、好ましくはゼオシンに対する耐性遺伝子である。
ゼオシン耐性遺伝子としては、例えば、配列番号1に示す塩基配列からなる遺伝子(Streptoalloteichus hindustanus bleomycin resistance gene (Sh ble))が挙げられるが、これと同等の機能をもつ遺伝子ならばよく、特にこれに限定されない。
ハイグロマイシン耐性遺伝子としては、例えば、配列番号2又は配列番号7に示す塩基配列からなる遺伝子が挙げられるが、これと同等の機能をもつ遺伝子ならばよく、特にこれに限定されない。
G418耐性遺伝子としては、例えば、配列番号3又は配列番号8に示す塩基配列からなる遺伝子が挙げられるが、これと同等の機能をもつ遺伝子ならばよく、特にこれに限定されない。
さらに、本発明のユーグレナは、薬剤耐性遺伝子を有しているので、野生株ユーグレナが混在する場合や、万が一導入した遺伝子が脱落した非形質転換体が発生した場合にも、形質転換体のみを選択的に育てることができるという利点を有している。
目的外来遺伝子は、特に限定されない。各目的に応じて、所望の外来遺伝子を選択できる。例えば、ユーグレナの細胞増殖又はワックスエステル発酵を増強することを目的として、ピルビン酸:NADP+酸化還元酵素を選択できる。ピルビン酸:NADP+酸化還元酵素の発現量を向上させることにより、ミトコンドリア内のアセチル-CoA量を増加させることができる。
また、ユーグレナの産生するワックスエステルを均質化することを目的として、3-ケトアシルCoAチオラーゼを選択できる。3-ケトアシルCoAチオラーゼの発現量を向上させることにより、反応可能な最長のアシル-CoAの蓄積量を増加させることができる。
また、ユーグレナのTCA回路への炭素流入量を制御することを目的として、クエン酸シンターゼを選択できる。クエン酸シンターゼの発現量を向上させることにより、ワックスエステルの細胞内での原料となる貯蔵多糖量を増加させることができる。
さらに、ユーグレナのTCA回路における炭素代謝を円滑にすることを目的として、TCA回路唯一の不可逆反応である2−オキソグルタル酸デカルボキシラーゼの発現量を向上させることにより、細胞の生育を促進させることができる。
また、目的外来遺伝子として、ヒトインターフェロン等、有用物質の合成系遺伝子を用いることにより、本発明のユーグレナを、それら有用物質を生産する系として利用できる。
さらに、目的外来遺伝子として、選択マーカーを使用することもできる。この選択マーカーも上記薬剤耐性遺伝子と同様の目的で使用することができる。すなわち、この選択マーカーを利用することにより、野生株ユーグレナが混在する場合や、万が一導入した遺伝子が脱落した非形質転換体が発生した場合にも、形質転換体のみを選択的に育てることができるという利点が得られる。
本発明において、「遺伝子を発現可能に保持している」とは、特に限定されないが、例えば、導入する薬剤耐性遺伝子が耐性を示す薬剤の非存在下における継代培養において、少なくとも10代目まで前記薬剤耐性遺伝子及び前記目的外来遺伝子を発現可能に保持していることを指す。左記において、継代培養の代数は、より好ましくは、15代目であり、さらに好ましくは20代目である。発現可能に保持しているか否かは、ユーグレナから抽出したmRNAに対して、当該遺伝子を増幅しうるプライマーを用いたRT−PCRを行うことにより、確認することができる。
本発明において、薬剤耐性遺伝子及び目的外来遺伝子が、少なくともユーグレナ内在性プロモーターの制御下にあれば好ましい。ユーグレナ内在性プロモーターとしては、特に限定されないが、ピルビン酸:NADP+ 酸化還元酵素、グリセルアルデヒド-3-リン酸 デヒドロゲナーゼ、カーボニックアンヒドラーゼ、二機能型グリオキシル酸経路酵素及びα-チューブリン等が挙げられる。特にピルビン酸:NADP+ 酸化還元酵素が好ましい。
本発明において、薬剤耐性遺伝子及び目的外来遺伝子が、ゲノムに組み込まれていれば好ましい。特に限定されないが、相同組換えによりゲノムに取り込まれていれば好ましい。ゲノムに取り込まれているか否かは、サザンブロット法により確認することができるが、導入した遺伝子のコピー数が十分に高くなく、サザンブロット法では明瞭なシグナルが得られない場合がある。そのような場合には、導入した薬剤耐性遺伝子が耐性を示す薬剤の非存在下において20代目まで継代培養を続けたユーグレナから抽出したmRNAに対して、導入した遺伝子を増幅しうるプライマーを用いたRT−PCRを行い、目的配列が増幅された場合に、当該遺伝子がゲノムに取り込まれていると判断できる。すなわち、選択圧の存在しない状態で継代し続けた細胞から導入遺伝子がRT−PCRによって検出されるということは、導入遺伝子がゲノムに取り込まれている蓋然性が高いと判断できるためである。
2.本発明のユーグレナ製造方法
本発明のユーグレナ製造方法は、薬剤耐性遺伝子及び目的外来遺伝子を、発現可能に保持しているユーグレナの製造方法であって:
(1)前記薬剤耐性遺伝子及び前記目的外来遺伝子をアグロバクテリウム法によりユーグレナに導入する工程
を含む方法である。
薬剤耐性遺伝子及び目的外来遺伝子、並びにユーグレナについては、上記1.で説明した通りである。
アグロバクテリウム法は、本来植物に対する形質転換法として利用されてきた。アグロバクテリウム法は、植物におけるクラウンゴールと呼ばれる腫瘍の原因細菌であるグラム陰性の土壌細菌であるAgrobacterium tumefaciens(以下アグロバクテリウム)を利用する方法である。アグロバクテリウムが保有するTi(Tumor-Inducing)プラスミドと呼ばれる巨大なプラスミドの一部である、T-DNA(Transferred-DNA)と呼ばれる遺伝子領域が切り出され、タイプIV系分泌によって植物細胞内へと侵入し、相同組換えによって核ゲノム内に導入されることが、腫瘍形成の引き金となる。この、T-DNAの切り出しには、vir(virulence)領域と呼ばれる遺伝子群が必要である。Tiプラスミド上にはこの両者の配列が存在するが、これらは同一のプラスミド上に無くても互いに機能し合うことが知られている。
アグロバクテリウム法としては、バイナリーベクター法が好ましい。バイナリーベクター法は、上記のアグロバクテリウムの性質を利用して開発された、2つの異なるプラスミドを用いる方法である。バイナリーベクター法では、本来同じプラスミド上に存在するvir領域とT-DNA領域を、異なるプラスミドに乗せ、それらを同時に使用する。すなわち、vir領域のみを持つプラスミド(ヘルパープラスミド)と、T-DNA領域のみを持つプラスミド(バイナリーベクター)の両方を保持させたアグロバクテリウムを用いる。手順としては、まず、宿主とする生物に導入したい遺伝子を、バイナリーベクター上のT-DNA領域に挿入し、このプラスミドを、ヘルパープラスミドを保持しているアグロバクテリウムに対して導入する。こうして二種類のプラスミドを保持したアグロバクテリウムを、宿主生物と共存培養することで、宿主に対し、所望の遺伝子が導入される。アグロバクテリウム感染のための共培養の方法については、固体培地を用いた方法、及び液体培地を用いた方法のどちらも用いることができるが、液体培地を用いた方法がより好ましい。また、共培養時にアグロバクテリウムの感染誘導物質としてフェノール化合物を添加することが望ましい。感染誘導物質としてのフェノール化合物としては、アセトシリンゴンがもっとも望ましい。
本発明のユーグレナ製造方法は、さらに、
(2)前記工程(1)で得られたユーグレナを、導入した薬剤耐性遺伝子が耐性を示す薬剤の存在下で培養する工程
を含んでいてもよい。
この培養の条件は、特に限定されないが、薬剤としてゼオシン及びハイグロマイシンを用いる場合には、培養をpH6〜8で行うことが好ましい。また、薬剤としてG418を用いる場合には、培養をpH5〜8で行うことが好ましい。通常、ユーグレナの生育にとってはpH5.0付近が有利であるとされるが、この条件で培養すると、上記薬剤がより安定に保たれ、薬剤耐性遺伝子及び目的外来遺伝子を発現可能に保持しているユーグレナをより効率的に得られるため、有利である。
薬剤として酸や塩基に対して安定な薬剤を用いる場合は、特にpH条件には影響されずに培養条件を設定することができる。
上記工程(2)における培養条件としては、特に限定されないが、例えば次の条件等が挙げられる。KH平板選択培地で培養する。培地中の薬剤濃度としては、特に限定されないが、ゼオシン耐性遺伝子を導入する場合、ゼオシン20〜100μg/ml等が挙げられる。さらに、必要に応じて別の薬剤をさらに培地中に配合してもよい。特に限定されないが、ゼオシン耐性遺伝子を導入する場合、例えば、さらにセフォタキシム50〜200μg/mlを培地中に配合していてもよい。これにより、感染成立後にアグロバクテリウムが単独でコロニーを形成することを防ぐことができ、有利である。
ハイグロマイシン耐性遺伝子を導入する場合、5〜100μg/ml等が挙げられる。さらにセフォタキシム50〜200μg/mlを培地中に配合していてもよい。これにより、感染成立後にアグロバクテリウムが単独でコロニーを形成することを防ぐことができ、有利である。
G418耐性遺伝子を導入する場合、5〜100μg/ml等が挙げられる。さらにセフォタキシム50〜200μg/mlを培地中に配合していてもよい。これにより、感染成立後にアグロバクテリウムが単独でコロニーを形成することを防ぐことができ、有利である。
培養開始時の細胞数は、特に限定されないが、例えば1×10〜1×10cells等が挙げられる。
培養期間は、特に限定されないが、例えば2〜7日等が挙げられる。
工程(2)は一度のみ行ってもよいし、必要に応じて二回以上繰り返し行ってもよい。
二回以上繰り返す場合は、特に限定されないが、培養開始時の細胞数を、必要に応じて段階的に減らしてもよい。特に限定されないが、前の段階の5分の1〜2分の1程度に減らしてもよい。
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
1.ユーグレナ
実施例において、用いたユーグレナは以下の通りである。
葉緑体を有する、Euglena gracilis Klebs Z株(以下ユーグレナ野生株)を使用した。
バイナリーベクター法に必須であるヘルパープラスミドを保持しており、リファンピシン耐性株である、Agrobacterium tumefaciens C58C1株(Brad, G.ら、「Genome sequence of the plant pathogen and biotechnology agent Agrobacterium tumefaciens C58.」、Science、2001年、294 : 2323)(以下アグロバクテリウム)を使用した。
また、構築したプラスミドを増幅する宿主にはEscherichia coli DH5α株を使用した。
2.ユーグレナの培養方法
実施例において、ユーグレナの培養方法は以下の通りとした。
従属栄養培地としてKoren-Hutner培地(KH培地)を用いた(表1)。500 ml容坂口フラスコに、pHを6.8に調整した150 mlのKH培地を分注し、121℃、15分間のオートクレーブにより滅菌した。この培地に、4〜7日間程度の培養で定常期に達したユーグレナ(10〜15×106cells/ml)を1 ml接種し、24時間の連続光照射条件下、27℃で振盪培養した。また、平板培地は1.0%(w/v)の寒天粉末を添加して作製した。
Figure 2014104076
3.薬剤耐性遺伝子導入用プラスミドDNA
薬剤耐性遺伝子導入用プラスミドDNAを次のようにして作成した。
T-DNA領域に挿入した薬剤耐性遺伝子bleのカセットは以下のように作製した。まず、pCMV/Zeo(Invitrogen, 図1)のble遺伝子5’末端にエピトープタグである3×FLAGを挿入した。さらに、Blunting High(TOYOBO)を用いてEcoR IサイトとBamH Iサイトを平滑化処理により破壊した。このプラスミドをNot IとXba Iで切断し、pGLuc-Basic(New England Biolab,図2)に挿入した。このプラスミドをEcoR IとXba Iで切断したものをbleカセットとした。pBIN19(Frish, D. A.ら、「Complete sequence of the binary vector Bin19.」、Plant Molecular Biology、1995年、27(2)、pp. 405-409)由来の、アグロバクテリウムの認識配列であるLeft Border(LB)とRight Border(RB)を有し、バイナリーベクターの作製に使用可能なシャトルベクターであるpBIG2RHPH2(図3)(Tsuji, G.ら、「Agrobacterium tumefaciens-mediated transformation for random insertional mutagenesis in Colletotrichum lagenarium.」、Journal of General Plant Pathology、2003年、69、pp. 230-239)のT-DNA領域に対し、このbleカセットを挿入したものを使用した(図3)。ライゲーション反応には全てLigation High(TOYOBO)を用い、16℃で反応させた。プロモーター部位に外来のCMVプロモーター(pCMV)とEM7プロモーター(pEM7)が連結したものをpBIG2R/pCMV/Zeoとした。また、pCMVからpEM7までの領域を、ユーグレナ内在性のプロモーターであるPNOR 5’UTR(pNOR)に置き換えたものをpBIG2R/pNOR/Zeoとした。各プラスミドはシークエンスを確認後、アグロバクテリウムに形質転換した。
4. アグロバクテリウムの培養方法
LB液体培地を使用して培養し、グリセロールストックからの起菌と、形質転換体の選択の際には、1.5%(w/v)の寒天粉末を含む平板培地を用いた。培地の態様を問わず、以下の文中のLB培地はすべて終濃度50μg/mlのリファンピシンを添加して使用した。また、アグロバクテリウム形質転換体の培養には、リファンピシンだけでなく、カナマイシンを終濃度100 μg/mlで添加したLB培地を用いた。
5. アグロバクテリウムの形質転換
5.1 アグロバクテリウムコンピテントセルの作製
Cold Spring Harborの方法(Detlef, W.ら、「Transformation of Agrobacterium Using Electroporation.」、2006年、Cold Spring Harbor Protocols.)にしたがって行った。グリセロールストックより、LB平板培地にアグロバクテリウムをストリークし、静置培養(28℃)した。2〜3日後に現れたシングルコロニーを3 mlのLB培地で培養した。定常期に達した培養液2 mlを200 mlのLB培地に加え、180 rpmで振盪培養した。OD550が0.5 〜 1.0になった培養液を遠心分離し(4000×g, 4 ℃, 10 min)、滅菌水で沈殿を3回洗浄した。滅菌水の量は、一回目が200 ml、二回目と三回目が100 mlとした。洗浄した沈殿を、2 mlの10%グリセロールで懸濁し、50 μlずつマイクロ遠心チューブに分注後、液体窒素で凍結し、これをアグロバクテリウムコンピテントセルとして−80℃で保存した。
5.2 エレクトロポレーション法によるアグロバクテリウム形質転換
コンピテントセルに対し、0.5 μgのDNAを加え、キュベット(2 mm gap)に入れた。その後、以下の条件でエレクトロポレーションを行った。
装置:BTM Electro Cell Manipulator ECM600
電圧:2.4 kV
抵抗:129 Ω
電気容量:50 μF
プラスミドDNA量:1 μg
パルス後の細胞を回収し、LB液体培地を加え、2〜4 h, 28 ℃で振盪培養後、LB選択平板培地(100 μg/ml カナマイシン, 50 μg/ml リファンピシン)にスプレッドし、28 ℃で静置培養した。3〜5日後に現れたシングルコロニーを、アグロバクテリウム形質転換体として使用した。
5.3 ユーグレナの形質転換(共培養)
KH培地(pH 6.8)で4〜5日培養したユーグレナを、細胞数計測後、IM液体培地で懸濁し、5.0×106cells/mlとした。
LB培地で前培養したアグロバクテリウム形質転換体をIM培地(pH 5.3)(表2〜4)に植菌し、10〜15時間程度培養した。培養した菌体を遠心分離で回収(7700×g, 20℃, 1 min)し、OD660= 0.6になるように、IM液体培地で懸濁した。
液体培地で懸濁したユーグレナとアグロバクテリウム形質転換体、それぞれ1 mlを混合し(計2 mlの培養液となる)、終濃度100 μMでアセトシリンゴンを添加し、ローテーターで緩やかに回転撹拌しながら48時間共培養した(2.5×106cells/ml, OD660 = 0.3)。培養終了後、培養液200 μl(0.5×106 cells)、または培養液の10倍希釈液200 μl(0.50×106cells)を、KH平板選択培地(ゼオシン25 μg/ml, セフォタキシム100 μg/ml)で培養した。
Figure 2014104076
Figure 2014104076
Figure 2014104076
5.4 ユーグレナ形質転換体の回収および継代
薬剤選択を行った細胞の回収は以下のように行った。平板選択培地上において、27℃で2週間程度培養し、プレート上でlawn状になった細胞を、5 mlの滅菌水に懸濁することで回収した。細胞懸濁液中の細胞数を計測し、0.5×106cellsの細胞を再度平板選択培地(ゼオシン25 μg/mlまたは50 μg/ml, セフォタキシム100 μg/ml)で培養した。細胞は増殖後懸濁し、再び選択平板培地で培養した。培養時の初期細胞数は、0.5×106cellsから、継代ごとに段階的に減らした。数回継代した後、平板選択培地上に形成されたシングルコロニーを回収し、3 mlの液体選択培地(ゼオシン50 μg/ml, セフォタキシム50 μg/ml)で培養し、良好な生育が見られたものを単離ユーグレナ形質転換体とした。
5.5 ユーグレナ形質転換体における導入形質安定性の検討
50 μg/mlのゼオシンを添加したKH液体培地で培養と継代を繰り返した細胞を、ゼオシンを添加していないKH液体培地で図14、図15に示した回数、培養と継代を繰り返した。継代は1週間ごとに150分の1量の細胞を、新たなKH液体培地に移すことで行った。
これによって一定期間薬剤にさらされなくなった細胞を、再びゼオシン50 μg/mlのKH液体培地で培養し、生育を調べた。
また、一定期間ゼオシン非存在下において培養を続けた細胞は、以下のDNAやRNAの解析にも用いた。
5.6 導入遺伝子の検出
5.6.1 ユーグレナ形質転換体からのtotal DNA抽出
ゼオシンを添加した培地、あるいはしていない培地において4〜5日間培養したユーグレナ形質転換体を、遠心分離により回収した後、PBS(−)(10×PBS(−)の組成を表5に示す)で2回洗浄した。細胞体積に対して3〜4倍量のNTES(表6)で懸濁し、65℃で10分間加熱した。さらに同量のPCIを加えた後、激しく撹拌し、遠心分離(17400×g, 4℃, 5 min)した。ここから回収した上清に対し、等量のPCIを添加し、攪拌後、再度遠心分離した。回収した上清に対して、1/10量の3M NaOAcを添加し、数回反転後、2.5倍量の100%エタノールを加え、混合した。室温で15分間静置し、遠心分離(11100×g, 4℃, 5 min)した。上清を完全に除去し、1 mlの70%エタノールで沈殿を洗浄した。沈殿を室温で風乾した後、20 μg/mlの RNase Aを含むTE bufferで沈殿を溶解し、37℃で一晩RNA分解したものをtotal DNA溶液とした。
Figure 2014104076
Figure 2014104076
5.6.2 total DNAを用いたPCR
下記の条件でPCRを行った。プライマーは、ゼオシン耐性遺伝子領域を増幅するように設計した。PCR 反応系を表7、PCR 反応条件を図4にそれぞれ示す。
Figure 2014104076
PCR Primerは次に示すものを用いた。
Forward Primer: 5’- ACCAGTGCCGTTCCGGTGCTCAC -3’ (配列番号4)
Reverse Primer: 5’- TGCTCGCCGATCTCGGTCATGG -3’ (配列番号5)
5.6.3 アガロースゲル電気泳動
TAE buffer(表8)に対して1.5%濃度になるようにアガロースを溶解し、0.1 μg/mlとなるようにエチジウムブロマイドを添加してゲルを作製した。PCR終了後の反応液5 μlをウェルにアプライし、100 Vで泳動した後、AE-6905(ATTO)を用い、UV照射によるDNA検出を行った。
Figure 2014104076
5.7 転写産物の解析
5.7.1 ユーグレナ形質転換体からのtotal RNA抽出
RNAの抽出にはISOGEN II(NIPPON GENE)を用いた。試薬は、原則としてRNase freeのものを用い、水はDEPC処理したものを使用した。
体積にして100 μl程度のユーグレナ細胞を回収し、1 mlのISOGEN IIを加えて懸濁した。400 μlのDEPC水を加え、15秒間激しく攪拌し、室温で15分静置した。遠心分離(17400×g, 4℃, 10 min)を行った後、沈殿付近を取らないように上清画分から1 ml回収した。これに1 mlイソプロパノールを添加し、転倒混和後、室温で10分静置した。遠心分離(17400×g, 4℃, 15 min)後、上清を捨て、沈殿に対して500 μlの75%エタノールを加え、遠心分離した(17400×g, 4℃, 10 min)。75%エタノールで再度沈殿を洗浄し、遠心分離した(17400×g, 4℃, 5 min)。上清を完全に取り除き、20 μlのDEPC水で溶解した。RNA濃度は分光光度計によって、A260値を測定することで求めた。
5.7.2 RT-PCR
逆転写反応にはSuperScript II Reverse Transcriptase(Invitrogen)を使用した。total RNA 5 μg分を用いてRT-PCRを行った。
逆転写反応液1として表9に示す組成のものを用いた。
Figure 2014104076
(dT)17-APプライマーは、以下のものを用いた。
(dT)17-APプライマー: 3’-GGCCACGCGTCGACTAGTACTTTTTTTTTTTTTTTTT -5’(配列番号6)
上記の反応液1を65℃で5分間インキュベートし、氷上で急冷した。
逆転写反応液2として表10に示す組成のものを用いた。
Figure 2014104076
上記の反応液2を42℃で2分間インキュベートし、SuperScript II RTを1 μl(200 units)添加して逆転写反応を開始した。これによってcDNAを得た。
逆転写反応の条件は表11の通りとした。
Figure 2014104076
合成したcDNAを鋳型として、薬剤耐性遺伝子bleを検出するように設計したプライマーを用いてPCRを行った。
結果は次に説明するとおりであった。
6.1 pH 6.8のKH培地におけるユーグレナ野生株へのゼオシンの効果
6.1.1 ユーグレナ野生株に対するゼオシンの最小生育阻止濃度
pH 6.8の培地におけるユーグレナ野生株に対するゼオシンの最小生育阻止濃度を確認した。その結果、液体培地は50 μg/mlで完全に、平板培地では25 μg/mlで概ね生育を阻害できることが分かった。この生育阻害は、培養開始時の細胞数が比較的多い場合(液体培地では2.0×106cells/ml, 平板培地では2.0×106 cells/plate)においても確認できた。100 μg/mlのゼオシンを含む培地では、液体培地(図5)、平板培地(図6)のどちらにおいてもユーグレナ野生株の生育がほぼ完全に抑制できた。
KH培地におけるpHごとのユーグレナ野生株の生育差を図7に示す。
6.1.2 ユーグレナ野生株の各種薬剤への感受性
アグロバクテリウム法による形質転換において、アグロバクテリウムの除去のために用いられるセフォタキシムが、ユーグレナの生育に及ぼす影響について調べた。その結果、少なくともセフォタキシムは500 μg/mlまでユーグレナ野生株の生育に影響を与えないことが分かった(図8)。そのため、選択培地にはセフォタキシムを添加して使用した。
また、G418とハイグロマイシンは、濃度の上昇に伴ってユーグレナ野生株の生育を阻害した(図9、10)。このことから、ゼオシンに加え、これらの薬剤をユーグレナ形質転換体の選択マーカーとして使用することができるという可能性が示唆された。
6.1.3 共培養条件の検討
共培養の方法は、5.3に示した方法で行った。共培養に用いた液体培地はKH培地とIM培地である。IM培地はアグロバクテリウム法による形質転換を行う際に頻用される培地である。本実験で用いたものはpHが5.3であり、vir遺伝子群の誘導物質であるアセトシリンゴンが100 μMの濃度で含まれており、誘導因子の一つであるグルコースが10 mMの濃度で含まれているなどの特徴を持つ。これらの培地を用いて共培養を行った結果、ユーグレナ形質転換体が選択培地上においてより良好な生育を見せたのはIM培地を用いたものであった。また、導入遺伝子のプロモーターに外来性のpCMVを用いた系と、内在性のpNORを用いた系で比較した場合は、pNOR系の方が良好な生育を示すという傾向が見られた。
6.1.4 選択培地条件の検討
共培養終了後にセフォタキシム(セフォタキシムナトリウム 500 μg/ml)で培養液を洗浄した。そして選択培地のゼオシン濃度を25 μg/mlに、セフォタキシム濃度を100 μg/mlとした。そして形質転換体の単離を行う際に、ゼオシン濃度を段階的に上げていくことにより形質転換体を効果的に得ることができた。
6.2 ユーグレナ形質転換体の薬剤耐性
単離したユーグレナ形質転換体の薬剤耐性について観測した。ユーグレナ形質転換体をKH培地および、選択液体培地(いずれもpH 6.8)で培養した。その結果、形質転換体細胞は比較的良好な生育を示したが、薬剤を含まない条件における生育との差は大きかった(図11)。6.1.1の結果より、pH 6.8の選択液体培地では、形質転換体以外の細胞はほぼ増殖しないと考えられため、薬剤による形質転換体の単離は十分であると考えられる。つまり、形質転換体が十分に薬剤耐性を示せていない原因が、細胞株の単離の不完全さによるものではない可能性が示唆された。薬剤耐性が十分でない要因の一つに、導入遺伝子の発現量の問題が挙げられ、今回使用したプロモーターでは十分な発現量が得られていない可能性が考えられる。また、アグロバクテリウム法では、導入遺伝子がゲノムに挿入されるが、その部位はランダムである。導入遺伝子の発現量は挿入箇所に依存する傾向があるとされるため、挿入部位によっては十分な発現レベルに達していない可能性が考えられる。
6.3 ユーグレナ形質転換体からの導入遺伝子の検出
ユーグレナ形質転換体から抽出したtotal DNAを鋳型としてPCRによる解析を行ったところ、ゼオシン耐性遺伝子領域に相当する断片を増幅することに成功した(図12)。
6.4 導入遺伝子由来転写産物の解析
ユーグレナ形質転換体から抽出したtotal RNAを鋳型として合成したcDNAを鋳型とし、ゼオシン耐性遺伝子の検出を試みたところ、これに相当する断片が得られた(図13)。
6.5 導入遺伝子の安定性について
ゼオシンを含まない条件で継代を続けた形質転換体と、それを再びゼオシンを含む培地に継代して培養した細胞で生育を比較したところ、どちらにおいても十分な生育が確認できた(図14)。このことから、薬剤非存在下でしばらくの間培養しても、薬剤耐性は十分に維持されることが示された。また、培養開始時からの***回数で比較した場合、両者でほとんど差はみられず、形質転換によって獲得された形質は、安定に維持されているものと考えられた(図15)。
7. G418を用いた形質転換体の選択と解析
G418耐性を担うネオマイシン耐性遺伝子の導入実験を行った。用いたネオマイシン耐性遺伝子は配列番号7に示した。実験方法は、ゼオシンでの選択と同様に行った。G418濃度は10 μg/mlで行った。得られたG418耐性形質転換体からは図16、図17に示すようにネオマイシン耐性遺伝子のDNAおよび転写産物が検出された。
8. ハイグロマイシンを用いた形質転換体の選択と解析
ハイグロマイシン耐性遺伝子の導入実験を行った。用いたハイグロマイシン耐性遺伝子は配列番号8に示した。実験方法は、ゼオシンでの選択と同様に行った。ハイグロマイシン濃度は10 μg/mlで行った。得られたハイグロマイシン耐性形質転換体からは図18、図19に示すようにハイグロマイシン耐性遺伝子のDNAおよび転写産物が検出された。

Claims (8)

  1. 薬剤耐性遺伝子及び目的外来遺伝子を、発現可能に保持しているユーグレナ。
  2. 前記薬剤の非存在下における継代培養において、少なくとも10代目まで前記薬剤耐性遺伝子及び前記目的外来遺伝子を発現可能に保持している、請求項1に記載のユーグレナ。
  3. 前記薬剤が、ゼオシン、ハイグロマイシン又はG418である、請求項1又は2に記載のユーグレナ。
  4. (1)薬剤耐性遺伝子及び目的外来遺伝子をアグロバクテリウム法によりユーグレナに導入する工程
    を含む方法により得られうる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のユーグレナ。
  5. 薬剤耐性遺伝子及び目的外来遺伝子を、発現可能に保持しているユーグレナの製造方法であって:
    (1)薬剤耐性遺伝子及び目的外来遺伝子をアグロバクテリウム法によりユーグレナに導入する工程
    を含む方法。
  6. さらに、
    (2)前記工程(1)で得られたユーグレナを、前記薬剤の存在下で培養する工程
    を含む請求項5に記載の方法。
  7. 前記薬剤が、ゼオシン、ハイグロマイシン又はG418である、請求項5又は6に記載の方法。
  8. 前記培養を、pH6〜8で行う、請求項7に記載の方法。
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