JPWO2013065450A1 - 微細孔を備えた基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このため、従来方法では走査速度を低めに抑えて基板を念入りに改質することが行われていた。例えば、非特許文献1の製法では、走査速度が0.03mm/s(繰返し周波数=100kHz、パルスピッチ=0.0003μm)であり、非特許文献2の製法では、走査速度が0.1mm/s(繰返し周波数=250kHz、パルスピッチ=0.0004μm)である。これらの走査速度で例えば5mm長の改質部を形成する場合、それぞれ約167秒、50秒を要する。この所要時間は、エッチング工程に要する時間(数時間)に比べると短時間であるが、エッチング工程は、大型のエッチング槽を用いるなどして多数の基板を一括して処理できるため、基板1枚当たりに要する加工時間は少なくて済む。一方、レーザー照射装置は高価であるため、レーザー照射装置の台数を増やして大量生産を行うことはコスト的に見合わない。また、1台のレーザー照射装置を用いて複数の基板を同時並行で加工することも困難である。また、高精度加工を行うためのレーザー照射装置は、その光源や加工ステージを低速に動作させるものが主流であり、仮に高速動作させるような装置構成にしたとしても、高精度な加工が困難となる。したがって、微細孔を備えた基板を製造する場合においては、従来、レーザー照射工程の効率を向上させることが難しく、レーザー照射工程が製造工程全体の効率の律速になってしまうという問題があった。したがって、微細孔を備えた基板を製造する場合においては、レーザー照射工程が製造工程全体の効率の律速になる問題があった。
また、上記のようにレーザー照射の走査速度を低めに抑えて、単位面積あたりの積算の照射エネルギーを増やす従来方法は、加工スループットに劣るだけでなく、電力消費、設備投資の増大などの観点からも問題があった。
10ピコ秒未満のパルス時間幅を有するパルス状のレーザー光の焦点が移動する際の、基板に対する前記焦点の相対速度として定義される、前記レーザー光の走査速度(μm/sec)を
1×103μm/sec〜4000×103μm/secに設定し、
下記式(1)で表されるパルスピッチ(μm)が0.08μm〜0.8μmとなるように、前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)を調整し、
前記基板に、前記レーザー光を照射して、前記レーザー光が集光した焦点を前記基板の内部で、1パスル毎の前記焦点が重なるようにシフトさせながら一定の速度で走査し、前記焦点が通過した領域及びその近傍域にエッチング耐性が低下した改質部を形成し、
前記改質部をエッチング処理で除去することにより、前記基板に微細孔を形成することを特徴とする。
式(1)・・・パルスピッチ(μm)=
{前記レーザー光の走査速度(μm/sec)}/{前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)}
第一態様のレーザー走査速度は従来よりも高速である。さらに、レーザー光の繰り返し周波数を調整することによって、従来よりも広いパルスピッチで改質部を形成することができる。このような加工条件で形成された改質部は、従来と同等以上の速度でエッチングされる。換言すれば、従来と同等以上のエッチング速度で除去することができる改質部を、従来よりも短い時間(改質工程に要する時間)で形成することができる。したがって、改質工程とエッチング工程とを合わせた工程全体の時間を短縮することができ、微細孔を備えた基板の製造方法の製造効率を従来よりも向上させることができる。
第二態様の製造方法によれば、レーザー光を1回だけ走査することによって、複数の改質部を光軸方向に並列させて形成できるので、製造効率をより高められる。
さらに、形成した複数の改質部の離間距離を、従来よりも短く(狭く)できる。つまり、従来よりもファインピッチで光軸方向に複数の改質部を並列させて、且つ、光軸方向とは異なる方向(長手方向)に長くされた(延設された)複数の改質部を形成できる。一方、従来方法によって複数の改質部を形成する場合、個々の改質部を順に形成していたので、形成する順番が後の改質部をレーザー光で形成する際、先に形成した改質部を避けるようにレーザー光を照射することが困難であった。例えば、先に形成した改質部に対して、レーザー光を照射した場合、先の改質部の改質の程度が変化して、エッチング速度が遅くなる場合があった。
この製造方法によれば、複数の微細孔を光軸方向に並列させて形成できる。さらに、複数の微細孔の光軸方向の離間距離を、従来よりもファインピッチにできる。
この製造方法によれば、上記レーザー走査速度において、エッチング耐性が充分に低下した改質部をより容易に形成できる。
したがって、改質工程とエッチング工程とを合わせた工程全体の時間が短縮化されるので、微細孔を備えた基板の製造方法の製造効率を従来よりも向上させることができる。
本発明の製造方法の第1実施形態は、基板の内部に、ピコ秒オーダー以下(例えば10ピコ秒未満)のパルス時間幅を有するレーザー光を照射して、前記レーザー光が集光した焦点を走査し、前記焦点が通過した近傍域(周囲)にエッチング耐性が低下した改質部を形成する改質工程と、前記改質部をエッチング処理によって基板から除去することにより、前記基板に微細孔を形成するエッチング工程とを含む。さらに、前記改質工程において、前記基板内部を前記レーザー光の焦点が移動する際の、前記基板に対する前記焦点の相対速度として定義される、前記レーザー光の走査速度(μm/sec)を1×103μm/sec〜4000×103μm/secに設定し、下記式(1)で表されるパルスピッチ(μm)が0.08μm〜0.8μmとなるように、前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)を調整する方法である。
式(1);パルスピッチ(μm)=
{前記レーザー光の走査速度(μm/sec)}/前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)}
図1に、改質工程の概念図を示す。基板1の第一の面1a側から、レーザー光Lを照射して、基板1の内部で、焦点Fを一定の速度で走査する。このレーザー光Lは、連続光ではなく、一定の繰り返し周波数と一定のパルス時間幅で出射するパルス状のレーザー光である。焦点Fが通過した領域及びその近傍域(周囲)に、エッチング耐性が低下した改質部2を形成できる。図中の矢印は、レーザー光Lの走査方向を表す。図中、レーザー光Lを集光させるレンズは省略して描いていない。図1では、焦点Fの走査方向を第一の面1aと平行にしているが、走査方向はこれに制限されず、所望の向きに設定することができる。
前記ガラス基板としては、例えば、石英で構成されるガラス基板、珪酸塩を主成分とするガラス又はホウ珪酸ガラスで構成されるガラス基板、無アルカリガラス、バイコールガラス、マイクロシートガラス、パイレックス(登録商標)、ソーダライムガラス、ネオセラム等の公知のガラス基板が適用できる。これらの中でも、加工性に優れる石英ガラスがより好ましい。なお、基板の形状は平板に限らず、例えば球形であってもよい。この場合、前記基板を基材と呼ぶこともできる。
尚、感光性ガラスは反応メカニズムが異なるため、本発明に適用することはできない。ここで、「感光性ガラス」とは、紫外線照射及び焼成処理によりガラス内に金属コロイドが発生し、さらに結晶が析出するガラスをいう。結晶が生じた領域のHFに対する耐性が低下するため、当該領域をエッチングして除去することができる。前記感光性ガラスとしては、CeO2が含有されたガラスが挙げられる。一般に、CeO2を含むガラスに紫外線照射及び焼成処理することにより、ガラス内に含有される金、銀、銅などが金属コロイドになり、さらにメタケイ酸リチウムの結晶が析出すると考えられている。HFにより、メタケイ酸リチウムの結晶を含む領域が選択的に(優先的に)エッチングされる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において「ピコ秒オーダー以下」とは、「10ピコ秒未満」を意味する。
前記パルス幅を有するレーザー光を照射する装置としては、例えばチタンサファイアレーザー、ファイバーレーザー等が用いられる。また、本発明の製造方法で使用するレーザー装置は、レーザー光の繰り返し周波数を調整できる機構が備わっている装置が好ましい。
一方、ピコ秒オーダーを超えるパルスレーザー、例えば10ピコ秒以上のパルス時間幅を有するレーザー光を用いた場合では、基板(基材)の電子温度とイオン温度とが平衡状態になる熱的加工が支配的である。熱的加工においては熱拡散長が大きいため、ナノからマイクロオーダースケールの加工を行うことが困難である。
このように、パルス時間幅が約1〜10ピコ秒付近を境にして、全く異なる反応メカニズムとなる。
しかし、より微細な微細孔を形成する場合は、レーザー光の偏波方向とレーザー光の焦点の走査方向との関係を考慮することが好ましい。高いアスペクト比の微細孔を形成するためには、改質部と非改質部との間のエッチング速度の差(エッチング選択性)を大きくすれば良い。エッチング選択性は、(1)照射するレーザー光が直線偏波であり、偏波方向と走査方向とが垂直、(2)照射するレーザー光が円偏波、(3)照射するレーザー光が直線偏波であり、偏波方向と走査方向とが平行、の順に高いエッチング選択性が得られる。
前記下限値近傍のピーク強度で照射すれば、前述したレーザー光の偏波方向がエッチング選択性に与える影響(依存性)が大きくなる。一方、前記下限値よりも十分に大きいピーク強度、例えばピーク強度が40TW/cm2以上の場合には、前述したレーザー光の偏波方向がエッチング選択性に与える影響(依存性)が殆どなくなる。
本発明において、レーザー光の走査速度とは「基板内部をレーザー光の焦点が移動する際の、前記基板に対する前記焦点の相対速度」を意味する。基板及びレーザー照射装置の両方を動かして、レーザー光の焦点を走査する場合、前記レーザー光の走査速度は、レーザー照射装置と基板との相対的な速度である。
式(1);パルスピッチ(μm)=
{レーザー光の走査速度(μm/sec)}/{レーザー光の繰り返し周波数(Hz)}
この式(1)によれば、パルスピッチは、レーザー光の焦点の走査方向において、先発のパルスと後発のパルスとの距離を意味する。
図2において、レーザー光の焦点の軌跡L1上に、順に形成されたドット2a〜2eが並んでいる。基本的には、互いに隣接する各ドットの中心の距離(中心間距離)は、互いに隣接する箇所に照射された個々のレーザーパルスのパルスピッチ(先発のパルスと後発のパルスのパルスピッチ)に相当する。ただし、後述するように、先発のパルスによって形成されたドットに後発のパルスが閉じ込められる現象が起きる場合がある。この場合には中心間距離がパルスピッチに対応するとは限らない。互いに隣接する各ドットの端(縁)と端(縁)との距離(隣接距離)が短い場合には、後段のエッチング処理において、互いに隣接する各ドットが連結するようにエッチングが進行して、軌跡L1に相当する1本に連結した微細孔が形成される。
レーザー光のピーク強度の上限は、基板が破壊されるような極端に高い強度でない限り特に制限されず、例えば700TW/cm2が挙げられる。
本発明の第1実施形態において使用するレーザー光のパルス時間幅は特に制限されないが、例えば1fs以上、10ps未満が好ましく、1fs以上、3ps未満がより好ましく、1fs以上、2ps未満が更に好ましい。
前記集光部(焦点)の繰り返しの数は、レンズの開口数(N.A.)やパルスのピーク強度を調整することによって制御できる。
レーザー照射後に形成される改質部の長手方向に直交する断面の形状は、おおよそ円又は楕円に近似できる形状である。本明細書で例示した改質部の径は、近似される円の直径又は近似される楕円の長径である。
改質部をエッチングすることにより微細孔を形成する方法は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、公知の方法が適用できる。
例えば、基板の内部に形成した改質部の端部が基板の表面に露出する状態で、前記基板をエッチング液(エッチャント)に浸漬することによって、改質部を基板内部から除去し、微細孔を形成できる。前記エッチング液としては、例えばフッ酸(HF)や水酸化カリウム(KOH)の水溶液が用いられる。
エッチング後に形成される微細孔の孔径の形状は、円又は楕円に近似できる形状となる。本明細書で例示した微細孔の孔径は、特に明示しない限り、近似される円の直径又は近似される楕円の長径である。
本発明にかかる微細孔を備えた基板の製造方法に適した、製造装置の実施形態を以下に説明する。
前記製造装置の第1実施形態は、レーザー光源、光学系、加工ステージ、及び制御系を少なくとも備える。前記制御系は、レーザー光源の繰り返し周波数(kHz)とレーザー光の焦点の走査速度(mm/sec)との関係が、図15のグラフにおける斜線の範囲に含まれるように、レーザー光源、光学系又は加工ステージを制御することができる。
式(a1);y=0.8x
式(a2);y=0.08x
式(a3);x=1000
製造装置Aは、レーザー光源、加工ステージ、及び前記制御系として演算部を備える。演算部としては公知の情報処理機器が適用できる。
所望の走査速度若しくは繰り返し周波数の数値、及び所望のパルスピッチをそれぞれ演算部に入力し、演算部において前記式(1)に基づいて、入力値に対応する繰り返し周波数又は走査速度を得る。次に、演算部で求められた走査速度及び繰り返し周波数で動作させるための出力信号を、それぞれ加工ステージ及びレーザー光源へ出力する。この結果、前記グラフの斜線の範囲で示された条件で、レーザー光の焦点を加工ステージ上に載せた基板内において走査し、改質部を形成することができる。
加工ステージの実際の走査速度、及びレーザー光源の実際の繰り返し周波数は、演算部によってモニターされても構わない。
製造装置Bは、レーザー光源、加工ステージ、光学系、及び前記制御系として演算部を備える。光学系を有すること以外は、製造装置Aと同様である。
製造装置Bにおいては、レーザー光源が所定の繰り返し周波数に達するまで、光学系に設けられたシャッターにより、レーザー光が加工ステージ上の基板へ照射されることが防がれている。これに代わる方法として、シャッターで遮光する代わりに、レーザー強度を充分に下げることによって、レーザー光が基板へ照射されても、当該基板が加工されない(改質されない)ように制御しても構わない。
レーザー光を遮光又は減光している間に加工ステージ及び基板を移動させても構わない。レーザー加工が行われない状態で、加工ステージを加速又は減速し、移動方向を変更しても構わない。加工ステージの移動に伴うレーザー焦点の軌跡の移動を演算部で算出しても構わない。
レーザー光を遮光又は減光している間にレーザー光源の繰り返し周波数を調整しても構わない。レーザー加工が行われない状態で、加工ステージを加速又は減速し、移動方向を変更しても構わない。加工ステージの移動に伴うレーザー焦点の軌跡の移動を演算部で算出しても構わない。
図28のブロック図は、前記製造装置の第1実施形態において、レーザー光源、演算部及び加工ステージが相互に動作信号又は数値を送受信する処理を示す。さらに、演算部が光学系に信号を送信する処理を示す。図示しないが、光学系から演算部へ信号を送信し、演算部と光学系が相互に信号を送受信しても構わない。
10ピコ秒未満のパルス時間幅を有するレーザー光を発生する第一のユニットと、
基板内の所望の領域に対して前記レーザー光の焦点を走査する第二のユニットと、
を少なくとも備え、前記製造方法における前記改質工程に用いる装置、が挙げられる。
前記第一のユニットとして、例えば前記レーザー光源が挙げられる。
前記第二のユニットとして、例えば前記加工ステージが挙げられる。
前記基板の支持ユニットと、前記レーザー光の照射ユニットと、前記焦点を走査する移動ユニットと、前記繰り返し周波数および前記走査速度を制御する制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、前記走査速度が1×103μm/sec〜4000×103μm/secとなるように前記移動ユニットを制御し、且つ、前記式(1)に基づいて、パルスピッチが0.08μm〜0.8μmとなるように前記照射ユニットの前記レーザー光の繰返し周波数を制御する装置、が挙げられる。
前記支持ユニットとしては、例えば前記加工ステージが挙げられる。前記照射ユニットとしては、例えば前記レーザー光源が挙げられる。前記移動ユニットとしては、例えば前記加工ステージを動かす駆動部が挙げられる。前記制御ユニットとしては、例えば前記演算部が挙げられる。
基板に、10ピコ秒未満のパルス時間幅を有するレーザー光を照射して、前記レーザー光が集光した焦点を前記基板の内部で走査し、前記焦点が通過した領域及びその近傍域(周囲)にエッチング耐性が低下した改質部を形成する装置であって、
前記基板の支持ユニットと、
前記レーザー光を所定の繰り返し周波数(Hz)で照射する照射ユニットと、
前記支持ユニット又は前記レーザー照射ユニットを移動させることにより、前記基板内部を前記レーザー光の焦点が移動する際の、前記基板に対する前記焦点の相対速度として定義される前記レーザー光の走査速度(μm/sec)で、前記焦点を走査する移動ユニットと、
前記繰り返し周波数および前記走査速度を制御する制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、前記走査速度が1×103μm/sec〜4000×103μm/secとなるように前記移動ユニットを制御し、且つ、前記式(1)に基づいて、パルスピッチが0.08μm〜0.8μmとなるように前記照射ユニットの前記レーザー光の繰返し周波数を制御する装置、が挙げられる。
前記支持ユニットとしては、例えば前記加工ステージが挙げられる。前記照射ユニットとしては、例えば前記レーザー光源が挙げられる。前記移動ユニットとしては、例えば前記加工ステージを動かす駆動部が挙げられる。前記制御ユニットとしては、例えば前記演算部が挙げられる。
前記制御ユニットは、前記グラフの斜線で囲まれた領域に含まれる、前記繰り返し周波数および前記走査速度の組み合わせによって、前記レーザー照射ユニットおよび前記移動ユニットを制御することが好ましい。
チタンサファイアレーザーを用いて、以下の照射条件によって、図1に示した様に、石英ガラス基板1の第一の面1aに平行な改質部1を形成した。形成した改質部1の長手方向の長さは20mmであり、改質部の径は最大で5μm程度であった。
・波長=800nm、スペクトル幅=10nm、パルス時間幅=〜220fs、対物レンズの開口数(N.A.)=0.5、偏波=円偏波、光軸と走査方向とのなす角度=90度、ピーク強度(1パルス当りのレーザーフルエンス/パルス時間幅)=50TW/cm2
・走査速度(μm/sec)および繰り返し周波数(kHz)は、所定のパルスピッチとなる様に、500μm/sec〜20×103μm/secおよび10kHz〜200kHzの範囲で調整した。
・1パルス毎の前記焦点が重なるようにシフトさせながら一定の速度で走査した。
この結果から、本発明にかかる「□」で示されたプロット群は、パルスピッチが0.1μm〜0.5μmの範囲において、従来方法にかかる「○」で示されたプロット群と同等のエッチング速度を達成していることがわかる。
なお、「□」で示されたプロット群においては、いずれのパルスピッチの場合も、第一の改質部および第二の改質部、並びにそれに対応する2つの微細孔が形成された。第一の改質部の断面は楕円形に近似した場合、前記楕円の長径=2.5μm、前記楕円の短径=2μmであった。また、第一の改質部に対応する微細孔の断面は楕円形であり、前記楕円の長径=3.7μm、前記楕円の短径=3.2μmであった。
レーザー光のピーク強度を70TW/cm2に変更した以外は、試験例1と同様に試験例2を行った。その結果を図7に示す。ただし、図7において、「○」で示されたプロット群は走査速度=500μm/secであり、「△」で示されたプロット群は走査速度=3000μm/secであり、「□」で示されたプロット群は走査速度=20000μm/secである。
この結果から、本発明にかかる「□」で示されたプロット群は、パルスピッチが0.08μm〜0.8μmの範囲において、従来方法にかかる「○」で示されたプロット群と同等のエッチング速度を達成していることがわかる。
なお、「□」で示されたプロット群においては、いずれのパルスピッチの場合も、第一の改質部および第二の改質部、並びにそれに対応する2つの微細孔が形成された。第一の改質部の断面は楕円形に近似した場合、前記楕円の長径=2.5μm、前記楕円の短径=2μmであった。また、第一の改質部に対応する微細孔の断面は楕円形であり、前記楕円の長径=3.7μm、前記楕円の短径=3.2μmであった。
上記「△」で示されたプロット群のうち、パルスピッチを0.06μmにして形成した改質部の、長手方向に直交する断面のSEM像及び長手方向の断面のSEM像を、それぞれ図13B及び図14Bに示す。
上記「□」で示されたプロット群のうち、パルスピッチを0.3μmにして形成した改質部の、長手方向に直交する断面のSEM像及び長手方向の断面のSEM像を、それぞれ図13C及び図14Cに示す。
図14A〜図14Cにおいて、左の断面(改質部の直径に相当する断面)に示した横線の位置は、右の断面(改質部の長手方向の断面)の位置を表す。
この範囲のパルスピッチで形成されたドット状の改質部内には、エッチング耐性が特に低くなったナノ構造(SEM像において改質部内の黒色の箇所)が形成されている。エッチング工程で、このナノ構造が選択的にエッチングされて、連続的に形成された互いに隣接するドット状の改質部が容易に繋がるため、改質部の長手方向(レーザーの走査方向)にエッチングが進行し易いと考えられる。
なお、前記SEM像からナノ構造の微細な部分を明確に読み取ることは難しいが、より高解像度のSEM像を観察した場合、ナノ構造と呼ぶことができる微細構造が観察される。
まず、(1)レーザーの集光部に発生するプラズマ波又はプラズモンが、周期的なナノ構造を形成して、さらに、その周期の僅かなズレによってモアレ状のパターンが形成された事、或いは、複数発のレーザーパルスが相互作用した事が要因(原因)になり、最初のドットを形成する。(2)次に、レーザー光の集光部が走査方向へ少し移動するが、後発のレーザーパルスが発生するプラズマ波又はプラズモンが、既に形成されたドットに引き戻されて、そのドットに閉じ込められ、既に形成されたドットの改質の程度を大きくする。また、さらに集光部が移動すると、レーザー光の集光が既に形成されたドットによって妨げられ、改質部が形成されない場合もあると考えられる。(3)その後、レーザー光の集光部が走査方向へさらに大きく移動することによって、後発のレーザーパルスが前記閉じ込めから開放され、既に形成されたドットに隣接する新たな位置にレーザーパルスが集光される。この結果、先に(既に)形成されたドットに隣接する位置において、新たなドットが形成される。以上の(1)〜(3)が繰り返されることにより。複数のドットが互いに間隔を空けて、連なって形成されると考えられる。
このように単位面積あたりの積算のレーザー照射エネルギーを減らすことによって、いわゆるフォトンコストを削減(低減)することができる。フォトンコストの削減は、加工スループットの向上、省電力、省設備投資などの観点から極めて有用である。
これらの条件においてもフィラメンテーションが起きている可能性はあるが、下側の改質部は何らかの理由によって消失してしまっているか、或いは十分なエッチング選択性を有さないため、微細孔を形成することが可能な改質部として形成されないと考えられる。このメカニズムは明確ではないが、改質部の単位長さ当りにおけるレーザーのパルス発数が増えると、上側の改質部がフィラメンテーションを阻害して、レーザー光を乱し、その乱れたレーザー光が下側に一時的に形成された改質部を消失させる事、或いは前記乱れたレーザー光は十分なエッチング選択性を有する改質部を形成できない事、が考えられる。
ピーク強度を20,50,70,90TW/cm2とした以外は、試験例1と同様に試験例3を行った。その結果を図8に示す。ただし、図8において、「×」で示されたプロット群(20TW/cm2)、「□」で示されたプロット群(50TW/cm2)、「△」で示されたプロット群(70TW/cm2)、「○」で示されたプロット群(90TW/cm2)の全てにおいて、走査速度=20mm/sである。
この結果から、パルスピッチが0.08μm〜0.8μmの範囲において、エッチング速度はピーク強度に依らないこと、及びパルスピッチが0.25μm前後(0.20〜0.30μm)において、エッチング速度は特に速くなることがわかる。また、ピーク強度が大きくなるにつれて、エッチング速度が特に速くなる領域が、パルスピッチの大きい側に拡大していることがわかる。
「×」で示されたプロット群において、第一の改質部の断面は楕円形であると近似した場合、前記楕円の長径=2.5μm、前記楕円の短径=2μmであった。また、第一の改質部に対応する微細孔の断面は楕円形であり、前記楕円の長径=3.7μm、前記楕円の短径=3.2μmであった。
「□」で示されたプロット群において、第一の改質部の断面は楕円形であると近似した場合、前記楕円の長径=2.5μm、前記楕円の短径=2μmであった。また、第一の改質部に対応する微細孔の断面は楕円形であり、前記楕円の長径=3.7μm、前記楕円の短径=3.2μmであった。
「△」で示されたプロット群において、第一の改質部の断面は楕円形であると近似した場合、前記楕円の長径=2.5μm、前記楕円の短径=2μmであった。また、第一の改質部に対応する微細孔の断面は楕円形であり、前記楕円の長径=3.7μm、前記楕円の短径=3.2μmであった。
「○」で示されたプロット群において、第一の改質部の断面は楕円形であると近似した場合、前記楕円の長径=5.4μm、前記楕円の短径=3.3μmであった。また、第一の改質部に対応する微細孔の断面は楕円形であり、前記楕円の長径=6.4μm、前記楕円の短径=4.5μmであった。
レンズの開口数(N.A.)を0.25に変更した以外は、試験例3と同様に試験例4を行った。その結果を図9に示す。ただし、図9において、「□」で示されたプロット群(50TW/cm2)、「△」で示されたプロット群(70TW/cm2)の全てにおいて、走査速度=20mm/sである。
本試験例においては、対物レンズの開口径よりもレーザーのビーム径が小さいため、実際のレーザービームの開口数(N.A.)は、より小さくなると考えられる。したがって、実際のピーク強度も表記よりさらに小さいと考えられる。
50TW/cm2の条件においては、第一の改質部及びそれに対応する1つの微細孔のみが形成され、70TW/cm2の条件においては、第一の改質部および第二の改質部、並びにそれに対応する2つの微細孔が形成された。
レンズの開口数(N.A.)を0.8に変更した以外は、試験例3と試験例5を同様に行った。その結果を図10に示す。ただし、図10において、「×」で示されたプロット群(20TW/cm2)、「□」で示されたプロット群(50TW/cm2)、「△」で示されたプロット群(70TW/cm2)の全てにおいて、走査速度=20mm/sである。
20TW/cm2及び50TW/cm2のピーク強度の条件においては、第一の改質部および第二の改質部並びに、各改質部に対応する微細孔が形成された。70TW/cm2のピーク強度の条件においては、第一の改質部、第二の改質部、及び第三の改質部がレーザー光の光軸方向に並んで形成され、更に各改質部に対応する微細孔が形成された。
レーザーの偏波を直線偏波に変更し、偏波の電場方向をレーザーの走査方向に対して直交する向きに設定した以外は、試験例1と同様に試験例6を行った。その結果を「□」で示されたプロット群で表すとともに、試験例1の結果を「◇」で示されたプロット群で表して、図11に示す。
この結果から、レーザーは直線偏波であっても良いし、円偏波であっても良いことがわかる。いずれのレーザー偏波の場合も、第一の改質部および第二の改質部、並びにそれに対応する2つの微細孔が形成された。
レーザーの偏波を直線偏波又は円偏波に設定して、偏波の電場方向をレーザーの走査方向に対して直交する向きに設定して、さらにピーク強度を70TW/cm2に設定した以外は、試験例1と同様に試験例7を行った。その結果を「□」で示されたプロット群(直線偏波)および「◇」で示されたプロット群(円偏波)で表して、図12に示す。
この結果から、レーザーは直線偏波であっても良いし、円偏波であっても良いことがわかる。
照射条件を次のように変更した以外は、試験例1と同様に改質部を形成した。ピーク強度を50TW/cm2に設定し、走査速度を0.5mm/s又は20mm/sに設定し、パルスレーザー光の繰り返し周波数を30kHz、50kHz又は100kHzに設定した。改質部の形成後、試験例1と同様にKOH水溶液でエッチングし、そのエッチングレート(μm/h)を求めた。その結果を図16に示す。
なお、焦点の走査速度が0.5mm/sの場合のデータは、いずれもパルスピッチが0.08μm未満であることから本発明には含まれない。
ピーク強度を70TW/cm2に変更した以外は、試験例8と同様に行い、そのエッチングレート(μm/h)を求めた。その結果を図17に示す。
なお、焦点の走査速度が0.5mm/sの場合のデータは、いずれもパルスピッチが0.08μm未満であることから本発明には含まれない。
Claims (4)
- 微細孔を備えた基板の製造方法であって、
10ピコ秒未満のパルス時間幅を有するパルス状のレーザー光の焦点が移動する際の、基板に対する前記焦点の相対速度として定義される、前記レーザー光の走査速度(μm/sec)を
1×103μm/sec〜4000×103μm/secに設定し、
下記式(1)で表されるパルスピッチ(μm)が0.08μm〜0.8μmとなるように、前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)を調整し、
前記基板に、前記レーザー光を照射して、前記レーザー光が集光した焦点を前記基板の内部で、1パスル毎の前記焦点が重なるようにシフトさせながら一定の速度で走査し、前記焦点が通過した領域及びその近傍域にエッチング耐性が低下した改質部を形成し、
前記改質部をエッチング処理で除去することにより、前記基板に微細孔を形成することを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法。
式(1)・・・パルスピッチ(μm)=
{前記レーザー光の走査速度(μm/sec)}/{前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)} - 請求項1に記載の微細孔を備えた基板の製造方法であって、
前記レーザー光の1回の走査によって、前記レーザーの光軸方向に複数の改質部を形成することを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法。 - 請求項2に記載の微細孔を備えた基板の製造方法であって、
前記複数の改質部をエッチングすることにより、複数の微細孔を形成することを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の微細孔を備えた基板の製造方法であって、
前記レーザー光の1パルスのピーク強度を7TW/cm2以上に設定することを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法。
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