JPWO2012111772A1 - ポリペプチド、単離された核酸、組み換えベクター、遺伝子導入キット、形質転換体、および細胞内カルシウムシグナルの調節方法 - Google Patents

ポリペプチド、単離された核酸、組み換えベクター、遺伝子導入キット、形質転換体、および細胞内カルシウムシグナルの調節方法 Download PDF

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Abstract

カルシウムシグナルの空間的な制御および操作が容易な、カルシウムシグナルを光制御するポリペプチドを提供すること。配列番号1または配列番号1と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるLOV2領域と、配列番号2、配列番号3、またはLOV2−Jαの光スイッチとしての機能を維持し、かつ配列番号2もしくは3のアミノ酸配列において、所定の変異を有するアミノ酸配列からなるJα領域と、配列番号4、またはカルシウムチャネルOrai1を活性化でき、かつ、配列番号4のアミノ酸配列において、所定の変異を有するCAD領域と、を含むアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、LOV2領域、Jα領域およびCAD領域は、N末端からC末端に向かって、LOV2領域、Jα領域およびCAD領域の順で配置され、Jα領域のC末端とCAD領域のN末端との間にアミノ酸配列が介在していないポリペプチドを使用する。

Description

本発明は、カルシウムシグナルを光制御するポリペプチド、単離された核酸、組み換えベクター、遺伝子導入キット、形質転換体、および細胞内カルシウムシグナルの調節方法に関する。
近年、基礎医学研究において、細胞内シグナルの機能等の解明のために、光刺激によって細胞内シグナルを制御するシステムが使用されてきている(非特許文献1;非特許文献2)。例えば、神経機能研究の分野においては、このようなシステムとして、光刺激によって神経細胞の膜電位を変化させることができるチャネルロドプシン2(バクテリア由来の光受容イオンチャネル)が使用されている。
また、光刺激によって細胞内シグナルを制御するシステムとして、目的の細胞シグナルタンパク質の機能ドメインと、植物等に由来するタンパク質に含まれる光感受性領域とを融合することによって作製されたポリペプチドも使用される。このようなポリペプチドの具体的な例として、オートムギの光受容体タンパク質であるフォトトロピン1由来の光感受性領域LOV2−Jαと、動物の細胞骨格制御タンパク質Rac1との融合タンパク質が挙げられる。当該融合タンパク質は、光の照射によって局所的に細胞の形態を変化させることができる(非特許文献3)。
細胞内シグナルの中でも、カルシウムシグナルは、カルシウムチャネルを介して、受精、細胞増殖、発生、学習と記憶、筋収縮および分泌等の様々な細胞機能において重要な作用を有することが知られており、生体内のほぼ全ての細胞において重要な機能を有する(非特許文献4)。そのため、カルシウムシグナルを光刺激によって制御できるシステムの確立が熱望されており(非特許文献5)、このようなシステムの確立のために様々な試みがなされてきた。
光刺激によってカルシウムシグナルを制御する従来のシステムとしては、ケージドカルシウムを使用したシステムが挙げられる(非特許文献1;非特許文献2)。ケージドカルシウム等のケージド化合物は、光刺激によって分解される有機合成分子である。
Kramer,R.H.,Fortin,D.L.&Trauner,D. New photochemical tools for controlling neuronal activity.Curr.Opin.Neurobiol.19,544−552(2009) Rana,A.&Dolmetsch,R.E.Using light to control signaling cascades in live neurons.Curr.Opin.Neurobiol.20,617−622(2010) Wu,Y.I.ら A genetically encoded photoactivatable Rac controls the motility of living cells.Nature 461,104−108(2009) Berridge,M.J.,Lipp,P.&Bootman,M.D.The versatility and universality of calcium signalling.Nat.Rev.Mol.CellBiol.1,11−21(2000) Liu,X.&Tonegawa,S. Optogenetics 3.0. Cell 141,22−24(2010)
ケージドカルシウムを使用したシステムによれば、カルシウムシグナルを迅速に活性化させることができるものの、ケージドカルシウムは低分子であるために拡散しやすく、カルシウムシグナルの空間的な制御が容易ではない。また、ケージドカルシウムを使用したシステムにおける、ケージドカルシウムを細胞外から導入する工程は操作が難しく、特に動物等への応用において限界があった。
本発明は、上記現状に鑑み、カルシウムシグナルを容易に光制御できるポリペプチド、単離された核酸、組み換えベクター、遺伝子導入キット、形質転換体、および細胞内カルシウムシグナルの調節方法の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、オートムギ由来の光感受性タンパク質であるフォトトロピンのLOV2−Jα領域のアミノ酸配列の所定部分と、カルシウムチャネルOrai1の制御タンパク質であるSTIM1のCAD領域のアミノ酸配列の所定部分とを組み合わせたポリペプチドにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、
配列番号1または配列番号1と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるLOV2領域と、
配列番号2、配列番号3、またはLOV2−Jαの光スイッチとしての機能を維持し、かつ配列番号2もしくは3のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるJα領域と、
配列番号4からなるCAD領域と、またはカルシウムチャネルOrai1を活性化でき、かつ配列番号4のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加されたアミノ酸配列からなるCAD領域と、を含むアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、
上記LOV2領域、上記Jα領域および上記CAD領域は、N末端からC末端に向かって、上記LOV2領域、上記Jα領域および上記CAD領域の順で配置され、
上記Jα領域のC末端と上記CAD領域のN末端との間にアミノ酸配列が介在していないポリペプチド(BACCS)を提供する。
また、本発明者らは、カルシウムチャネルOrai1のアミノ酸配列と、BACCSとを組み合わせたポリペプチドによっても上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、
配列番号5、またはカルシウムチャネルとして機能でき、かつ、配列番号5のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加されたアミノ酸配列からなるOrai1領域と、
第1のBACCS領域と、
第2のBACCS領域と、を含むアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、
上記Orai1領域、上記第1のBACCS領域および上記第2のBACCS領域は、N末端からC末端に向かって、上記Orai1領域、上記第1のBACCS領域および上記第2のBACCS領域の順で配置されるポリペプチド(Orai1−BACCS)も提供する。
Orai1−BACCSにおける上記Orai1領域のC末端と上記第1のBACCS領域のN末端の間には第1のリンカーが介在してもよい。
Orai1−BACCSにおける上記第1のBACCS領域のC末端と上記第2のBACCS領域のN末端の間には第2のリンカーが介在してもよい。
また、本発明者らは、BACCSをタンデムに2つつなげたポリペプチドによっても上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、
第1のBACCS領域と、
第2のBACCS領域と、を含み、かつ、
配列番号5またはカルシウムチャネルとして機能でき、かつ、配列番号5のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加されたアミノ酸配列からなるOrai1領域を含まないアミノ酸配列からなるポリペプチド(BACCS×2)も提供する。
BACCS×2における上記第1のBACCS領域のC末端と上記第2のBACCS領域のN末端の間にはリンカーが介在してもよい。
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードする単離された核酸も提供する。
本発明はまた、上記核酸を含む組み換えベクターも提供する。
本発明はまた、上記組み換えベクターを含む遺伝子導入キットも提供する。
本発明はまた、上記組み換えベクターを含み、単離された細胞または非ヒト動物である形質転換体も提供する。
本発明はまた、上記形質転換体に照射する光の強度を操作することによって、上記形質転換体の細胞内カルシウムシグナルを調節する細胞内カルシウムシグナルの調節方法も提供する。
本発明はまた、上記ポリペプチドが、BACCSであり、かつ、上記細胞がOrai1を発現している細胞内カルシウムシグナルの調節方法も提供する。
本発明はまた、上記ポリペプチドがOrai1−BACCSである細胞内カルシウムシグナルの調節方法も提供する。
本発明によれば、カルシウムシグナルを容易に光制御できるポリペプチドが提供される。
(A)は、「BACCS」の模式図を示し、(B)は、「Orai1−BACCS」の模式図を示す。 様々な動物種におけるOrai1、Orai2およびOrai3のアミノ酸配列の比較を示す。 様々な動物種におけるSTIM1のCAD領域のアミノ酸配列の比較を示す。 様々な植物種におけるLOV2−JαにおけるJα領域のアミノ酸配列の比較を示す。 (A)は、LOV2−Jαの明変異体にCAD領域を融合したタンパク質(LOV lit−CAD)の模式図を示す。(B)は、黄色蛍光タンパク質を組み込まれたOrai1(Orai1−YFP)のHEK293細胞中の局在のイメージング(左図)、赤色蛍光タンパク質を組み込まれたLOV lit−CAD(tdTomato−LOV−CAD)のHEK293細胞中の局在のイメージング(中央図)、およびこれらの2つの結果をマージした結果(右図)を示す。(C)は、CAD領域のN末端側を様々に欠損させたことによる、LOV lit−CADの細胞膜への移行の有無についての結果を示す。 (A)は、LOV2−Jαの暗変異体にCAD領域を融合したタンパク質(LOV dark−CAD)の模式図を示す。(B)は、黄色蛍光タンパク質を組み込まれたOrai1(Orai1−YFP)のHEK293細胞中の局在のイメージング(左図)、赤色蛍光タンパク質を組み込まれたLOV dark−CAD(tdTomato−LOV dark−CAD)のHEK293細胞中の局在のイメージング(中央図)、およびこれらの2つの結果をマージした結果(右図)を示す。(C)は、LOV2−Jαの暗変異体によるCAD領域の機能の阻害を妨げない(すなわち、LOV dark−CADを細胞膜へ局在させない)Jα領域のアミノ酸配列についての4つの候補(膜への局在化が「なし」であるもの)の同定結果を示す。 (A)は、ポリペプチド(tdTomato−LOV(404−538)−CAD(347−448))、Orai1およびNFAT−GFPを共発現させたHEK293細胞中における、光を遮断した場合のポリペプチドの局在のイメージング(上図)、および470nmの光(青色光)を20分照射した場合のポリペプチドの局在のイメージング(下図)を示す。(B)は、LOV2領域のアミノ酸配列、様々なJα領域のアミノ酸配列、およびCAD領域のアミノ酸配列を結合させたポリペプチド(LOV−CAD)による、NFAT転写因子の核移行の有無、およびLOV−CADの細胞膜への移行の有無の結果を示す。 (A)は、赤色蛍光タンパク質、BACCS、2AペプチドおよびOrai1を順にN末端からC末端へ融合させたポリペプチド(mCherry−BACCS−2A−Orai1)をHEK293細胞中で発現させ、470nmの光(青色光)を試験期間中継続して照射した後の、カルシウム蛍光プローブであるFluo−4を使用したカルシウムイメージング結果を示す。左図はmCherryの蛍光による、ポリペプチド発現細胞の同定結果を示す。中央図および右図は、それぞれ、光刺激前および光刺激後のカルシウムイメージング結果を示す。(B)は、8つの細胞におけるカルシウム濃度の経時変化を示す。 (A)は、赤色蛍光タンパク質を組み込まれたOrai1−BACCS(Orai1−mCherry−BACCS×2)をHEK293細胞中で発現させ、470nmの光(青色光)を試験期間中継続して照射した後の、カルシウム蛍光プローブであるFluo−4を使用したカルシウムイメージング結果を示す。左図はmCherryの蛍光による、ポリペプチド発現細胞の同定結果を示す。中央図および右図は、それぞれ、光刺激前および光刺激後のカルシウムイメージング結果を示す。(B)は、HAタグおよび/または蛍光物質を組み込まれたOrai1−BACCSを発現したHEK293細胞におけるカルシウム濃度の経時変化を示す。(C)は、HAタグおよび蛍光物質を組み込まれたOrai1−BACCS(Orai1−HA−BACCS×2−IRES−YFP)をHEK293細胞に発現させ、光の照射および光の遮断を3回行った際の、赤色蛍光カルシウムセンサーであるRhod−3を用いたカルシウムイメージングによって観察された細胞内カルシウム濃度の経時変化を示す。 (A)は、Orai1にBACCSを1つだけ融合させ、赤色蛍光タンパク質を組み込んだポリペプチド(Orai1−tdTomato−BACCS×1)および転写因子NFATに黄色蛍光タンパク質を組み込んだポリペプチド(NFAT−YFP)をHEK293細胞中で共発現させ、470nmの光(青色光)を20分間照射した後の結果を示す。(B)は、対照実験として、BACCSを2つタンデムにつなげ、赤色蛍光タンパク質を組み込んだOrai1−tdTomato−BACCS×2、NFAT−GFPをHEK293細胞中で共発現させ、470nmの光(青色光)を20分間照射した後の結果を示す。 (A)は、Orai1−BACCSに、Orai1の変異(Orai1(L273D))を組み込んだOrai1(L273D)−BACCS×2の模式図を示す。(B)は、HAタグおよび蛍光物質を組み込まれたOrai1(L273D)−BACCS(Orai1(L273D)−HA−BACCS×2−igY)を発現するHEK293細胞に、470nmの光(青色光)を照射する前、および10分間照射した後の、赤色蛍光カルシウムセンサーであるRhod−3を使用したカルシウムイメージングを示す。 (A)は、STIM1のCDI(Calcium dependent inactivation)領域を含むようにCAD領域のC末端を伸長したポリペプチド(Orai1−BACCS(347−630)×2)の模式図を示す(斜線部がCDI領域を示す)。(B)は、HAタグおよび蛍光物質を組み込まれたOrai1−BACCS(Orai1−HA−BACCS×2−igY)およびOrai1−BACCS(347−630)(Orai1−HA−BACCS(347−630)×2−igY)を発現した細胞について、赤色蛍光カルシウムセンサーであるRhod−3を使用したカルシウムイメージング結果を示す。 (A)は、「BACCS×2」の模式図を示す。(B)は、BACCS×2−igY(B×2)およびOrai1−HA−BACCS×2−igY(OB×2)を発現した細胞それぞれについてのカルシウムイメージング結果を示す。 BACCS×2−igY(B×2)およびYFP−BACCS×2(YB×2)を発現した細胞についてのカルシウムイメージング結果を示す。
(BACCS)
本発明は、オートムギの光受容体タンパク質であるフォトトロピン1の光感受性領域であるLOV2−Jα領域のアミノ酸配列と、カルシウムチャネルOrai1の制御タンパク質であるSTIM1のCAD領域のアミノ酸配列と、を含むポリペプチド(Blue light−activated Calcium Channel Switch、以下「BACCS」と呼ぶ)を提供する。BACCSを発現させた細胞においては、細胞中の内在性のOrai1、または細胞に遺伝子導入することによってBACCSと共に発現させたOrai1を、青色光の照射によって開くことができる。青色光の照射によって活性化されたOrai1は、青色光を遮断することで不活性の状態に戻る。また、BACCSは、本発明の属する技術分野において公知の遺伝子組み換え技術によって容易に細胞特異的に発現させることができるため、Orai1の活性を局所的に制御できる。従って、BACCSによれば、カルシウムシグナルの空間的な制御を容易に行うことができる。また、BACCSは、照射する光の強度の操作のみによってその機能を制御できるため、容易な操作によってカルシウムシグナルを制御することができる。
(LOV2−Jα)
オートムギ由来のフォトトロピン1の光感受性は、フォトトロピン1中のアミノ酸404−543位の領域に依存しており、当該領域はLOV2−Jαと呼ばれる(Harperら、2003)。LOV2−Jαは、青色領域である447nmの吸収極大波長を有するため(Salomonら、2000)、青色光の照射によって構造が変化する。具体的には、光が遮断されている状態では、LOV2領域およびJα領域が疎水結合によって結合している。一方、光が照射されている状態では、LOV2領域およびJα領域の疎水結合が外れる。これを「明状態」と呼ぶ。LOV2−Jαにシグナルタンパク質が融合した状態では、光が遮断されている状態において、LOV2−Jαがシグナルタンパク質の立体障害として機能する。一方、光が照射されている状態では、LOV2−Jαの構造が変化し、シグナルタンパク質の立体障害が解消される。その結果、所望の細胞内シグナルを生じさせることができる。
LOV2−Jαを明状態にするための光は、青色領域の波長(510nm以下)であればよい。例えば、市販の青色LEDを使用することによってLOV2−Jαの構造を容易に変化させることができる。また、光の照射時間は特に限定されないが、ミリ秒単位の照射によって、LOV2−Jαを効率よく明状態にすることができる(Nakasoneら、2008)。
また、LOV2−Jαの明状態を解除するためには、照射する光の波長を510nmよりも長波長にするか、光を遮断すればよい。
[LOV2領域]
本発明のポリペプチドを構成するLOV2−Jαのうち、LOV2領域は、オートムギ由来のフォトトロピンのアミノ酸配列の404−522位に対応する。
LOV2領域は、多くの植物間で保存されており、例えば、オートムギのLOV2領域のアミノ酸配列との相同性は、アジアイネのフォトトロピン1;81%、シロイヌナズナのフォトトロピン1;87%、シロイヌナズナのフォトトロピン2;83%、エンドウマメのフォトトロピン1;87%、ソラマメのフォトトロピン1;トウモロコシのフォトトロピン1;95%、トマトのフォトトロピン1;87%である。
LOV2領域が機能的である植物種のLOV2領域は、オートムギのアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有している。このようなアミノ酸配列を用いることによって、BACCSが光感受性作用を発揮できると考えられる。アミノ酸配列にLOV2領域の機能に関わる領域が含まれているかどうかは、例えば、得られるポリペプチドに対して青色光を照射または遮断し、円偏光二色性スペクトルを観察することによって特定できる。従って、オートムギのLOV2領域を様々な植物種由来の配列または合成配列に置き換えることも可能である。例えば、本発明のポリペプチドを構成するLOV2領域に相当するアミノ酸配列として、オートムギ由来のフォトトロピンのアミノ酸配列の404−522位と、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を使用することができる。
[Jα領域]
本発明のポリペプチドを構成するLOV2−Jαのうち、Jα領域は、オートムギ由来のフォトトロピンのアミノ酸配列の523−535位または523−538位に対応する。
Jα領域は、BACCSが、光の照射によってOrai1を開き、光の遮断によってOrai1を閉じるという所望の反応(以下、このような反応を「光スイッチ」と呼ぶ)をするために重要な領域である。なぜならば、BACCSにおけるJα領域のアミノ酸配列は、Orai1の制御タンパク質であるCAD領域のアミノ酸配列との間にアミノ酸配列を介在させずに直接結合しているため、この結合部位の構造によっては、光の遮断状態においてシグナルタンパク質であるCAD領域の立体障害が解消されてしまう。その結果、光の遮断状態においてもCAD領域がOrai1に結合し、Orai1が活性化されることになり、Orai1の制御タンパク質としてのCAD領域の機能が阻害されないからである。例えば、これまで、LOV2−Jαの404−546位(Wuら、2009)および404−543位(Sticklandら、2008)を使用した光感受性ポリペプチドが作製されてきたものの、光を遮断した際にも光スイッチが完全には切れず、シグナルが遮断されない等の問題があった。これは、LOV2領域の存在によって生じる、シグナルタンパク質のシグナル機能部位における立体障害が不十分であることによるものと考えられる。
Jα領域としてフォトトロピンのアミノ酸配列523−535位または523−538位を有するBACCSは、光に対する所望の反応を示す。これらの配列を有するBACCSは、細胞において、青色光の照射によって、カルシウムシグナルを調節することができるため好ましい。Jα領域としてフォトトロピンのアミノ酸配列523−538位を有するBACCSは、光に応答してカルシウムシグナルを強く調節できるため特に好ましい。Jα領域としてフォトトロピンのアミノ酸配列523−535位を有するBACCSも、光を遮断した状態でカルシウムシグナルを誘導してしまうものの、光の照射によってシグナルの強さを調節することができる。
また、LOV2−Jαが機能するためにはJα領域のI532、A536、I539のアミノ酸が疎水性である必要があることが報告されている(Harperら、2004)。そのため、BACCSを作製する際には、Jα領域におけるこれらの部位が疎水性アミノ酸になるようにする必要がある。例えば、BACCSを構成するアミノ酸配列においては、LOV2−Jα(404−538)とCAD領域のつなぎ目に位置する、疎水性アミノ酸である「L(ロイシン)」が、LOV2−Jαの光スイッチとしての機能に重要な役割を果たしている。つまり「L」はCAD領域に由来するが、同時に、LOV2−Jαの539番目のアミノ酸としても機能している。この「L」は、Jα領域と直接結合しているCAD領域がOrai1を活性化させる場合においても重要である。このため、光を遮断した状態においては、Jα領域のこの「L」は、LOV2領域との疎水結合に利用され、その結果、CAD領域がOrai1と相互作用することが阻害されることになる。
本発明者らが鋭意検討した結果、フォトトロピンのアミノ酸配列の523−535位または523−538位に対応するJα領域を有するBACCSであれば、照射する光の強度の操作に応じてOrai1の活性化を制御できることを見出した。ただし、上記Jα領域のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列であって、LOV2−Jαの光スイッチとしての機能を維持するアミノ酸配列を有するBACCSについても、照射する光の強度の操作に応じてCAD領域の機能を発揮させ、または阻害することで、同様に所望の反応を生じさせることができるため、本発明の範囲に含まれる。ここで、「1もしくは複数のアミノ酸配列が置換されたアミノ酸配列」とは、本発明のポリペプチドを構成するJα領域である、オートムギ由来のフォトトロピンのアミノ酸配列の523−535位または523−538位と、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を指す。アミノ酸配列にLOV2−Jαの光スイッチとしての機能を維持するアミノ酸配列が含まれているかどうかは、例えば、得られるポリペプチドについて、円偏光二色性スペクトル等を観察することによって特定できる。
(CAD領域)
本発明のポリペプチドを構成するCAD領域は、ヒトSTIM1のCAD領域のアミノ酸配列の347−448位に対応する。当該CAD領域は、単独でカルシウムチャネルOrai1の活性を制御できる。BACCS中のLOV2−Jαが光の照射によって明状態になると、CAD領域が活性化し、Orai1と結合し、その結果Orai1を活性化させる。
ただし、カルシウムチャネルOrai1を活性化でき、かつ上記CAD領域のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加されたアミノ酸配列を有するBACCSについても、カルシウムチャネルOrai1の活性を制御できるため、本発明の範囲に含まれる。ここで、「1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加されたアミノ酸配列」とは、本発明のポリペプチドを構成するCAD領域である、ヒトSTIM1のCAD領域のアミノ酸配列の347−448位と、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列のことをいう。アミノ酸配列にカルシウムチャネルOrai1を活性化するアミノ酸配列が含まれているかどうかは、例えば、当該アミノ酸配列をOrai1領域と共発現させ、カルシウムイオンの流入があるかどうかを、NFATの局在を観察することによって特定できる。
(Orai1−BACCS)
また、本発明は、BACCSを、カルシウムチャネルOrai1のアミノ酸配列のC末端にタンデムに2つつなげたタンパク質(以下、「Orai1−BACCS」と呼ぶ)も提供する。
BACCSは、内在性のOrai1が発現した場合、または細胞内でOrai1遺伝子と共発現した場合等に、カルシウムイオンチャネルであるOrai1を光依存的に開閉することができる。そのため、Orai1とBACCSを結合させ、単一のポリペプチドとして発現させることによって、Orai1とBACCSとの空間的距離を近づけることができ、BACCSのみからなるポリペプチドと比較して、さらに効率の良い光活性化カルシウムチャネルとして機能する。
Orai1とCAD領域が1:2の比で存在する場合に、Orai1を効率的に活性化させることができ、さらに、Orai1のC末端にCAD領域をタンデムに2つつなげた場合にOrai1が構成的に活性化されることが報告されている(Liら、2010)。そこで、本発明者らは、Orai1のC末端にBACCSをタンデムに2つつなげた構造を有するOrai1−BACCSを作製した。
(Orai1)
カルシウムチャネルOrai1は、細胞膜上に局在し、ストア作動性カルシウム流入に関与するストア作動性カルシウムチャネルである。Orai1の活性は、小胞体に局在する小胞体タンパク質STIM1のCAD領域によって制御される(Hoganら、2010)。Orai1は特に免疫細胞において重要な作用を有する。
Orai1を活性化するヒトSTIM1内の領域として、CAD(アミノ酸342−448位;Parkら、2009)、SOAR(アミノ酸344−442位;Yuanら、2009)、OASF(アミノ酸233−450位または474位;Muikら、2009)、CCB9(アミノ酸339−444位;Kawasakiら、2009)が同定されている。なお、ヒトSTIM1内のアミノ酸342−440位の領域は、Orai1を活性化することができない(Parkら、2009)。
本発明のポリペプチドを構成するOrai1は、ヒトOrai1のアミノ酸配列の1−301位に対応する。
Orai1は、Orai2およびOrai3との配列類似性が高いだけでなく、線虫、ヒト等の様々な種間で保存されている(Hoganら、2010)。そのため、Orai1−BACCSを構成するOrai1の配列は、ヒト由来のものだけではなく、様々な種のホモログであっても、カルシウムチャネルとして機能する可能性が極めて高い。従って、本発明のポリペプチドを構成するOrai1としてこれらのホモログを代用できる。また、ヒトOrai1がカルシウムチャネルとして機能するための領域が保存されているのであれば、ヒトOrai1のアミノ酸配列の1−301位において1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加されていても、本発明のポリペプチドを構成するOrai1として使用することができる。ここで、「1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加」とは、本発明のポリペプチドを構成するOrai1である、ヒトOrai1のアミノ酸配列の1−301位と、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を指す。アミノ酸配列にOrai1がカルシウムチャネルとして機能するための領域が含まれているかどうかは、例えば、当該アミノ酸配列をCAD領域と共発現させ、カルシウムイオンの流入があるかどうかを、NFATの局在を観察することによって特定できる。
(リンカー)
Orai1−BACCSを構成する、Orai1のC末端と第1のBACCSのN末端との間、および第1のBACCSのC末端と第2のBACCSのN末端との間にはそれぞれ、アミノ酸配列の小断片(以下、「リンカー」と呼ぶ)が介在してもよい。当該リンカーは、蛍光タンパク質(mCherry、YFP等)等であってもよい。Orai1−BACCSにこのようなリンカーが含まれることにより、細胞内のOrai1−BACCSの発現を容易に検出することができる。
Orai1のC末端と第1のBACCSのN末端との間に介在するリンカーは、立体障害を回避する観点から、20残基以上のアミノ酸配列からなるリンカーであってもよい。
第1のBACCSのC末端と第2のBACCSのN末端との間に介在するリンカーは、立体障害を回避する観点から、25残基以上のアミノ酸配列からなるリンカーであってもよい。
(BACCS×2)
また、本発明は、BACCSをタンデムに2つつなげたタンパク質(以下、「BACCS×2」と呼ぶ)も提供する。
CADは2量体の形態で1つのOrai1と相互作用し、Orai1を効率的に活性化させることができることが報告されている(Liら、2010)。そのため、タンデムに2つつながれたBACCS(すなわち、BACCS×2)によれば、効率よくCADを2量体様の構造にすることができるため、内因性Orai1を効率的に活性化できる。
BACCS×2を構成する、第1のBACCS領域のC末端と、第2のBACCS領域のN末端との間には、リンカーが介在してもよい。BACCS×2において、リンカーは、第1のBACCS領域のN末端や、第2のBACCS領域のC末端に付加されてもよい。例えば、第1のBACCS領域のN末端のリンカーとしては蛍光タンパク質(mCherry、YFP等)等が挙げられる。第2のBACCS領域のC末端のリンカーとしては2Aペプチド等が挙げられる。BACCS×2にこのようなリンカーが含まれることにより、細胞内のBACCS×2の発現を容易に検出することができる。
BACCS×2に含まれるリンカーは、立体障害を回避する観点から、25残基以上のアミノ酸配列からなるリンカーであってもよい。
(製法)
本発明のポリペプチドは、本発明の属する技術分野において公知の遺伝子組み換え技術によって作製できる。例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸をベクターに組み込み、当該ベクターを大腸菌や細胞(ヒト腎臓由来のHEK293細胞等)等に導入することによって、ポリペプチドとして大量に発現させることができる。
(核酸)
本発明のポリペプチドをコードする単離された核酸は、本発明の属する技術分野において公知の遺伝子組み換え技術によって作製できる。例えば、アミノ酸配列情報からプライマーを作成し、PCR等によってクローニングしたLOV2−Jα領域をコードする核酸や、CAD領域をコードする核酸を、ライゲーション反応等によってつなげることにより本発明のポリペプチドをコードする核酸を単離することができる。
本願明細書で使用される用語「核酸」には、DNA、RNA等が含まれる。
(組み換えベクター)
本発明のポリペプチドをコードする単離された核酸を含む組み換えベクターは、本発明の属する技術分野において公知の遺伝子組み換え技術によって作製できる。例えば、任意のプラスミドを、任意の制限酵素(BglII、SalI等)で切断し、その切断部位に、本発明のポリペプチドをコードする単離された核酸をリガーゼで結合させることによって作製できる。
本願明細書で使用される用語「組み換えベクター」は、組み換えDNA実験等において異種DNAの運搬に使用されるDNAを指す。本発明の組み換えベクターとしては、例えば、本発明のポリペプチドを発現するDNA断片、任意の制限酵素認識部位、任意の複製開始点等を有するクローニングベクターや、本発明のポリペプチドを発現するDNA断片、転写開始点等を有する発現ベクター等が挙げられる。
また、本発明の範囲には、このような組み換えベクターを含む遺伝子導入キットも含まれる。当該キットを使用して遺伝子導入を行うことで、本発明のポリペプチドを容易に発現させることができる。当該キットには、例えば、本発明の組み換えベクター、形質転換用試薬、取扱説明書等が含まれるが、これに限定されない。
(形質転換体)
上記の組み換えベクターを含む形質転換体は、本発明の属する技術分野において公知の遺伝子組み換え技術によって作製できる。本願明細書で使用される用語「形質転換体」は、単離された細胞または非ヒト動物である。細胞としては特に限定されず、任意の細胞株(例えば、ヒト腎臓由来のHEK293細胞、HEK293T細胞等)を使用できる。また、非ヒト動物としては特に限定されず、大腸菌、哺乳類(マウス、ラット等)、モデル動物等を使用できる。
本発明の形質転換体は、例えば、単離された細胞に、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、ウイルス等によって組み換えベクターを導入することによって、単離された細胞の形質転換体が得られる。また、非ヒト動物の受精卵前核中へDNA顕微注入、ES細胞への相同組み換え、組み換えウイルスによる感染等を行うことによって非ヒト動物の形質転換体が得られる。本発明のポリペプチドは、上記のような公知の技術によって容易に細胞特異的に発現させることができるだけでなく、追加の薬剤等を使用することなく、照射する光の強度の操作のみによってその機能を発揮させることができるため、特に、非ヒト動物に対して容易かつ安全に応用できる。
(本発明のポリペプチドを使用した応用)
さらに、本発明によれば、上記形質転換体に照射する光の強度を操作することによって、上記形質転換体の細胞内カルシウムシグナルを調節することができる。光の強度の操作とは、上記形質転換体に照射される光の波長、光の照射時間、および光の照射量等の調節を指す。例えば、上記形質転換体に対する青色領域の波長の光の照射によって細胞内カルシウムシグナルを活性化することができる。また、上記形質転換体に対する510nm以下の波長の光の遮断によって細胞内カルシウムシグナルを不活性化することができる。
例えば、BACCSを使用すれば、Orai1を発現している細胞における細胞内カルシウムシグナルを調節できる。また、Orai1−BACCSを使用すれば、Orai1を発現している細胞だけではなく、Orai1を発現していない細胞における細胞内カルシウムシグナルを調節できる。
Orai1とCAD領域が1:2の比で存在する場合に、Orai1を効率的に活性化させることができ、細胞内カルシウムシグナルの応答性が上昇することが知られている(Liら、2010)。これを踏まえると、Orai1に対するBACCSの発現量比がOrai1:BACCS=1:2以下となると、細胞内カルシウムシグナルの応答性が低下すると考えられる。Orai1を発現している細胞においては、内因性Orai1に対するBACCSの割合がOrai1:BACCS=1:2以下となりにくくするために、内因性Orai1の量に応じて、BACCS×2(BACCSのみをタンデムに2つ発現させたもの)、BACCS×2−2A−Orai1(Orai1:BACCS=1:2)やBACCS×2−IRES−Orai1(Orai1:BACCS=1:4〜1:10)等を好適に使用できる。なお、IRES(internal ribosome entry site)とは、メッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列である。IRES依存的な翻訳は、多くの場合、5’キャップ依存的な翻訳の20〜50%の効率であることが報告されている(Mizoguchiら、2000)。つまり、例えばBACCS×2−IRES−Orai1においては、IRES依存的なOrai1の翻訳は、5’キャップ依存的なBACCSの翻訳に対して20〜50%の効率であると予測されるため、IRESを含む組み換え体によれば、Orai1とBACCSとの発現量比を効率的に調整できる。一方、Orai1を発現していない細胞においては、内因性Orai1が存在しないため、Orai1とBACCS×2の融合蛋白(Orai1−BACCS×2)を好適に使用できる。
このように、本発明によれば、照射する光の強度を操作することによって形質転換体の細胞内のカルシウムチャネルの活性化を制御することにより、細胞内カルシウムイオンの流入の調節ができるため、細胞内カルシウムイオン濃度やカルシウムイオンによって活性化される細胞内の生理現象(例えば、筋収縮、シナプス伝達、分泌、細胞分化等)を調節できる。
本発明のポリペプチドは、カルシウムシグナルに関連する基礎医学または生命科学分野の研究や医薬品の開発において有利に使用することができる。本発明のポリペプチドを使用する基礎医学または生命科学の分野としては特に限定されず、筋収縮の制御、神経伝達シグナル、免疫応答、発生、および分泌制御等の分野の研究において使用できる。また、研究手法としては、in vitro、in situ、またはin vivo等の系において使用できる。
本発明のポリペプチドは、医薬品の開発においても使用でき、例えば、糖尿病、高血圧等の疾病における創薬ターゲットの評価、新薬候補化合物のスクリーニング等に使用できる。
以下の実施例に基づき、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施例においては、オートムギのフォトトロピン1のLOV2−Jα領域、ヒトのOrai1、およびヒトのSTIM1のCAD領域を使用した。
(実施例1:LOV2−JαとCADの結合部位の最適化に関する検討)
LOV2−JαとCADの結合部位の配列に関して最適な組み合わせを特定するため、LOV2−Jαと、CADとを結合させたポリペプチド(以下、「LOV−CAD」と呼ぶ)を作製し、光刺激によってOrai1を活性化できるLOV−CADをスクリーニングした。なお、LOV2−Jαの構造は、Jα領域のC末端側に結合する領域を制御すると考えられるため、ポリペプチドの作製時には、LOV2−Jαの塩基配列のC末端側と、CADの塩基配列N末端側とを結合させる必要がある。
(1)LOV−CADを発現する組み換えベクターの作製
以下に、LOV2−Jα(404−538)およびCAD(347−448)の塩基配列を組み込んだプラスミドの作製例を示す。他のポリペプチドを発現するプラスミドも同様にして作製した。なお、フォトトロピン1 LOV2−Jα(ID 22024,PA−Rac1)、Orai1−YFP(ID 19756)、STIM1−CFP(ID 19755)およびNFAT−GFP(ID 11107)のプラスミドは、Addgene社より購入した。
LOV−CADを、制限酵素(BglII)認識配列が組み込まれたLOV2のPCR断片と、制限酵素(SalI)認識配列が組み込まれたCAD領域のPCR断片との、リコンビナントPCRによる融合遺伝子として得て、これをPCRサーマルサイクラーによって増幅した。使用したプライマーと鋳型を以下に示す。
得られたPCR産物を、BglIIとSalIを使用して制限酵素処理した。次いで、制限酵素処理されたPCR産物を、赤色蛍光タンパク質レポーターベクターであるptdTomato−C1ベクターのBglII−SalIサイトにライゲーションし、ポリペプチドtdTomato−LOV(404−538)−CAD(347−448)の組み換えベクター(以下、「ptdTomato−BACCS」と呼ぶ)を作製した。なお、ptdTomato−C1ベクターは、pEGFP−C1(クロンテック社製)のGFP配列をtdTomatoで置換したものである。さらに、当該組み換えベクターから転写されるmRNAの安定性を高め、導入遺伝子の発現を増強することができる、ウッドチャック肝炎ウイルス由来の転写後制御エレメントWPREを3’非翻訳領域に挿入した組み換えベクター(以下、「ptdTomato−BACCS−WPRE」と呼ぶ)を作製した。
(2)CAD領域のN末端配列に関する検討
LOV2−Jαの塩基配列に結合するCAD領域の塩基配列のN末端配列について、Orai1の活性化に必要な最小領域を検討した。
検討のために、LOV2領域の光照射条件下における構造を模倣した変異体(以下、「明変異体」と呼ぶ)およびLOV2領域の光遮断条件下における構造を模倣した変異体(以下、「暗変異体」と呼ぶ)を作製した。例えば、Jα領域のアミノ酸配列は、I532E、A536E、I539E、D540Rの変異によって明変異体になることが知られている(Harperら、2004)。本実施例では、明変異体として、Jα領域に、リコンビナントPCRによりI539E変異(I539E)を導入した。また、暗変異体として、LOV2領域に、リコンビナントPCRによってC450A変異(C450A)を導入した。以下、当該明変異体であるLOV2−Jαを、「LOV lit」、当該暗変異体であるLOV2−Jαを「LOV dark」と呼ぶ。LOV litおよびLOV darkは、それぞれ、光の照射の有無に関わらず、光が照射された状態の構造、および光が遮断された状態の構造を有している。
まず、LOV lit(404−546)に、N末端を様々に欠損させたCAD領域(342−448から350−448)を融合したタンパク質(以下、「LOV lit−CAD」と呼ぶ)を作製した(図4A)。LOV lit−CADを、Orai1と共にHEK293細胞中で共発現させ、以下の手順でLOV lit−CADの細胞内局在を観察した。
赤色蛍光タンパク質であるtdTomatoを、LOV lit−CADのN末端側に融合したポリペプチドとして発現するように、組み換えベクター「ptdTomato−LOV lit−CAD−WPRE」を作製した。また、同様に、黄色蛍光タンパク質をC末端側に組み込んだOrai1を発現するように、組み換えベクター「Orai1−YFP」も作製した。ptdTomato−LOV lit−CAD−WPREおよびOrai1−YFPを、Lipofectamine 2000(インビトロジェン社製)を使用して、HEK293細胞に遺伝子導入し、当該細胞を10% 仔ウシ血清(Gibco社製)入りMEM(ナカライテスク株式会社製)(以下、「MEM+10%FBS」と呼ぶ)培地中で培養した。遺伝子導入の24〜48時間後に、暗室において、細胞を4% パラホルムアルデヒドで固定し、tdTomatoの蛍光の局在をコンフォーカル顕微鏡(商品名;Zeiss LSM510、カールツァイス社製)で観察した。
Orai1は細胞膜上に発現するため、Orai1と結合したLOV lit−CADは、細胞膜に局在する(図4B)。なお、Jα領域の546番目のアミノ酸とCAD領域の347番目のアミノ酸はともに「L」であるため、LOV lit(404−546)−CAD(348−448)はLOV lit(404−545)−CAD(347−448)とも解釈できる点に注意されたい。Orai1を活性化する領域としては、CAD(347−448)がN末端に関して最小領域であることが分かった。(図4C)。
(3)LOV2−JαのC末端配列に関する検討
CAD領域(347−448)を含むように、LOV darkのC末端の長さを様々に変えてポリペプチド(以下、「LOV dark−CAD」と呼ぶ)を作製した(図5A)。LOV dark−CADは、Orai1を活性化させるのに十分なCAD領域を含むため、LOV darkのタンパク質構造による立体障害がない場合は、Orai1と結合できる。本項では、LOV darkが立体障害となりOrai1と結合できないポリペプチドを探索する。Orai1と結合できないLOV dark−CADは、細胞質に分布するポリペプチドとして認められた(図5B)。
LOV2−JαのC末端側の、CAD領域とのつなぎ目に関しては、上記「(2)CAD領域のN末端配列に関する検討」で説明した重要な疎水性アミノ酸(I532,A536,I539)の配列を変化させないようにアミノ酸配列のつなげ方を工夫した。当該疎水性アミノ酸配列を変化させる場合においても、LOV2−Jα領域に結合したCAD領域の配列によってLOV2−Jα領域のアミノ酸の特性が変化しないように(すなわち、Jα領域中の532番目、536番目、539番目のアミノ酸が疎水性アミノ酸になるように)アミノ酸配列のつなげ方を工夫した。
図5Cに示す15種類のポリペプチドおよびOrai1を、HEK293細胞中で共発現させたところ、LOV dark(404−542)、LOV dark(404−539)、LOV dark(404−538)、およびLOV dark(404−535)は、細胞膜への局在化が阻害された。
(4)光によるOrail1の活性化についてのNFATを使用した検証
本発明のポリペプチドが、光の照射によってOrail1を活性化できるかどうかについて、カルシウムシグナルにより核に移行することが知られる転写因子NFATを使用して検証した。
まず、4つの候補の野生型LOV(404−542、404−539、404−538、404−535)にCAD(347−448)を融合したタンパク質を、Orai1、および核移行シグナルを検出するためのレポーター遺伝子NFAT−GFPと共にHEK293細胞中で共発現させた。
具体的には、3つのプラスミド、ptdTomato−LOV−CAD−WPRE、Orai1(Orai1−YFP(Addgene社製)からYFPを除去して作製した)およびNFAT−GFPを、HEK293細胞に遺伝子導入し、当該細胞をMEM+10%FBS培地中で培養した。遺伝子導入から24〜48時間後、暗室にて、4% パラホルムアルデヒドで細胞を固定した。これを暗条件における試料とし、図6に「暗」として示した。また、遺伝子導入から24〜48時間後、培地をMEM+10%FBS培地からLeibovitz’s培地に変え、470nmの光を20分照射した後に4% パラホルムアルデヒドで細胞を固定した。これを明条件における試料とし、図6に「明」として示した。
それぞれのサンプルについて、光を遮断した場合と、470nmの光を照射した場合におけるNFATの局在を観察した。NFATの細胞内局在をコンフォーカル顕微鏡(商品名;Zeiss LSM510、カールツァイス社製)で観察した結果を図6Aに示す。
LOV(404−542)−CAD(347−448)およびLOV(404−539)−CAD(347−448)を導入した細胞においては、光を照射してもNFATの核への局在化の効率が悪かった。また、LOV(404−535)−CAD(347−448)を導入した細胞においては、光の照射によってNFATが効率よく核へ局在化したものの、光を遮断した状態においてもNFATの核への局在化が見られた(図6B)。
一方、LOV(404−538)−CAD(347−448)を導入した細胞においては、光を遮断した状態ではNFATが細胞質中で認められ、光を照射した状態では、NFATが核で認められた(図6AおよびB)。
以上の結果を踏まえ、LOV(404−538)−CAD(347−448)を、Orai1を光制御できるポリペプチドの候補とした。当該ポリペプチドを以下、BACCS(Blue light−activated Calcium Channel Switch)と呼ぶ。BACCSのアミノ酸配列では、LOV2−JαとCAD領域のつなぎ目に位置する「L」が重要な役割を果たしていると思われる。LOV2−Jαが光スイッチとして機能するためにはこの部位のアミノ酸が疎水性である必要がある(Harperら、2004)。つまり、この「L」が、光を遮断した状態において、LOV2領域およびJα領域の構造を安定化させていると考えられている。一方、この「L」は、CAD領域がOrai1を活性化させる場合においても重要であるため、光照射によりJα領域がLOV2領域から離れて「L」が融合タンパク質の表面に露出したときにのみOrai1を活性化することができると推測される。
(5)カルシウムイメージングによる検証
BACCSによって活性化された細胞内カルシウムシグナルを直接的に観察するために、カルシウムセンサーを使用して以下の手順でカルシウムイメージングを行った。
蛍光タンパク質を組み込まれたBACCSの組み換えベクター(ptdTomato−BACCS−WPREまたはpmCherry−BACCS−WPRE)、およびBACCSと共にOrai1を同時に発現させる組み換えベクター(ptdTomato−BACCS−2A−Orai1−WPRE)を作製した。ptdTomato−BACCS−2A−Orai1−WPREは、Thosea asigna virus由来の2Aペプチド(Felipeら、2006)の22アミノ酸およびOrai1をtdTomato−BACCSのC末端に融合させた構成となっている。タンパク質への翻訳の際に、2Aペプチド配列が存在していると、その2Aペプチドを挟む前後のポリペプチドがつながらずに、2つのポリペプチドとして発現する。すなわち、ptdTomato−BACCS−2A−Orai1−WPREは1回の翻訳によって、2つの分離したポリペプチド(tdTomato−BACCSおよびOrai1)として発現する。
このように、BACCSと共にOrai1を同時に発現できる組み換えベクターによれば、2つのタンパク質の発現を同時に制御できるため、タンパク質発現細胞において発現するBACCSおよびOrai1の比を一定にすることができる。
まず、Orai1−YFPプラスミドから、組み換えベクターOrai1−stop codon−SalI(以下、「pOrai1−SalI」と呼ぶ)を作製した。
実施例1で作製したptdTomato−BACCS−WPRE中の、制限酵素認識部位であるBspEI−SalIサイトで挟まれたBACCSを、pOrai1−SalIを制限酵素(BspEIおよびSalI)で処理した断片と置き換えて、ptdTomato−BspEI−Orai1−WPREを作製した。
ptdTomato−BspEI−Orai1−WPRE中のBspEIサイトに、BACCSおよび2Aペプチドを融合させたBspEI−LOV(404−538)−CAD(347−448)−2A−BspEIを挿入し、ptdTomato−BACCS−2A−Orai1−WPREを作製した。このプラスミド中のtdTomatoを制限酵素(AgeIおよびBglII)で処理して得られた断片を、赤色蛍光タンパク質レポーターベクターであるpmCherry−C1ベクターを制限酵素(AgeIおよびBglII)処理した断片と置き換えることで、組み換えベクターpCherry−BACCS−2A−Orai1−WPREを作製した。
当該組み換えベクターをHEK293細胞に遺伝子導入し、MEM+10%FBS培地中でBACCSとOrai1を同時発現させた。遺伝子導入から24〜36時間後に、青色光(470nm)で発現細胞を刺激し、カルシウムイオン蛍光インジケーターであるFluo−4またはRhod−3(インビトロジェン社製)を添加し、カルシウム濃度の変化を観察した(図7A)。観察は5秒間毎のタイムラプスで、コンフォーカル顕微鏡(商品名;BioRad MRC1024、バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社製)で行った。それぞれの細胞について、ΔF(蛍光変化量)/F0(光刺激前の蛍光強度)を算出し、観察終了時点の値が1になるようにΔFを基準化し、縦軸にプロットし、横軸に時間(秒)を示した結果を図7Bに示す。図7Bに示される通り、BACCS−2A−Orai1発現細胞において、光の照射によるカルシウム濃度の上昇が認められた。
各組み換えベクターを作製するために使用したプライマーおよび鋳型を以下に示す。
(実施例2:Orai1とBACCSとのポリペプチドの作製)
BACCSは、内在性のOrai1が発現した場合、またはOrai1遺伝子と共発現した場合等に、カルシウムイオンチャネルOrai1を光依存的に開閉することができる。そこで、Orai1とBACCSを結合させ、単一のポリペプチドとして発現させることによって、カルシウム流入を制御できるポリペプチドを作製した。Orai1とCADは1:2の比で存在する場合に最も効率よくOrai1を活性化させることができ、Orai1のC末端にCADをタンデムに2つつなげた場合にOrai1が構成的に活性化されることが報告されている(Liら、2010)。そこで、Orai1のC末端にBACCSを2つタンデムにつなげた組み換えベクターを以下の手順で作製した。
(1)pOrai1−tdTomato−BACCS×2−WPREの作製
翻訳効率を上げるためにOrai1−YFPの開始コドンの5’末端側にkozak様配列(CCACC)を挿入した。具体的には、当該プラスミド中のOrai1−YFP中の制限酵素認識部位であるBglII−BspEIサイトに、制限酵素(XhoI)認識部位およびKozak配列(以下、「KZK」と略す)を有する下記のリンカーを挿入した。
また、並行して、実施例1と同様に、組み換えベクターptdTomato−BACCS−WPREを作製し、その制限酵素認識部位であるNheI−AgeIサイトに、制限酵素(XhoI)認識部位を有する下記のリンカーを挿入し、組み換えベクター(pXhoI−AgeI−tdTomato−BACCS−WPRE)を作製した。
pKZK−Orai1−YFPを制限酵素(XhoIおよびAgeI)によって処理し、得られたDNA断片を、pXhoI−AgeI−tdTomato−BACCS−WPRE中のXhoI−AgeIサイトに挿入し、組み換えベクター(pKZK−Orai1−tdTomato−BACCS−WPRE)を作製した。
当該組み換えベクター中のOrai1とtdTomatoとの間には、Orai1−YFPに由来する、制限酵素認識部位であるEcoRI−AgeIサイトを有するリンカーが含まれるが、当該制限酵素認識部位を除去する目的で、このEcoRI−AgeIサイトを下記の配列に置き換えた。得られた組み換えベクター(pKZK−Orai1−linker2−tdTomato−BACCS−WPRE)のアミノ酸配列は変化していない。
下記のプライマーおよび鋳型を使用して、PCRサーマルサイクラーによって増幅した。得られたPCR産物(BglII−BamHI断片)を、pKZK−Orai1−linker2−tdTomato−BACCS−WPRE中のtdTomatoとBACCSの間の制限酵素認識部位であるBglIIサイトに挿入し、組み換えベクター(pKZK−Orai1−linker2−tdTomato−BACCS−L1−BACCS−WPRE、以下「pOrai1−tdTomato−BACCS×2−WPRE」と呼ぶ)を作製した。「L1」はLiら(2010)が作製したOrai1−L2−CAD(336−485)−L1−CAD(336−485)中の「L1」のアミノ酸配列を参考にした。
(2)pOrai1−Cherry−BACCS×2−WPRE、pOrai1−YFP−BACCS×2−WPREおよびpOrai1−BACCS×2−WPREの作製
pOrai1−tdTomato−BACCS×2−WPREを制限酵素(AgeIおよびBglII)で処理して得られたtdTomato部分を、蛍光タンパク質融合発現ベクターpmCherry−C1を制限酵素(AgeIおよびBglII)で処理して得られた断片と置き換えて、組み換えベクター(pOrai1−Cherry−BACCS×2−WPRE)を作製した。また、pOrai1−tdTomato−BACCS×2−WPRE中のtdTomato(AgeI−BglII断片)を、黄色蛍光タンパク質発現ベクターpEYFP−C1のAgeI−BglIIと置き換えて、組み換えベクター(pOrai1−YFP−BACCS×2−WPRE)を作製した。また、pOrai1−tdTomato−BACCS×2−WPRE中のtdTomato(AgeI−BglII断片)を、下記リンカーと置き換えて、組み換えベクター(pOrai1−BACCS×2−WPRE)を作製した。
(3)pOrai1−HA−BACCS×2−WPREの作製
下記のプライマーおよび鋳型を使用して、PCRサーマルサイクラーによって増幅した。得られたPCR産物(3xHAタグ配列)を、pOrai1−BACCS×2−WPRE中の制限酵素認識部位であるAgeIサイトに挿入し、組み換えベクター(pOrai1−HA−BACCS×2−WPRE)を作製した。
(4)pOrai1−HA−BACCS×2−igY−WPRE、およびpOrai1−HA−BACCS×2−imTm−WPREの作製
pOrai1−HA−BACCS×2−WPRE発現細胞を蛍光により可視化するために、IRES−gapYFP(Imaiら、2006;以下、「igY」と略す)またはIRES−membrane−tdTomato−myc(Muzumdarら、2007;以下、「imTm」と略す)を、pOrai1−HA−BACCS×2−WPREの3’非翻訳領域の制限酵素認識部位であるSalIサイトに挿入し、組み換えベクター(それぞれ、pOrai1−HA−BACCS×2−igY−WPRE、pOrai1−HA−BACCS×2−imTm−WPRE)を作製した。なお、IRES(internal ribosome entry site)配列は、メッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列である。例えば、Orai1−HA−BACCS×2−igYのメッセンジャーRNAからは、Orai1−HA−BACCS×2とgapYFPという、2つのポリペプチドが翻訳される。
上記組み換えベクターによる発現産物は、Orai1とBACCSの間に、21アミノ酸リンカー(Orai1−BACCS×2)、57アミノ酸リンカー(Orai1−HA−BACCS×2)、258アミノ酸リンカー(Orai1−mCherry−BACCS2)、498アミノ酸リンカー(Orai1−tdTomato−BACCS×2)、261アミノ酸リンカー(Orai1−YFP−BACCS×2)のいずれかが挿入されたコンストラクトとなる。
いずれにおいても、470nmの光(青色光)の照射によって、効率よくカルシウム濃度が上昇した(図8B、略記はそれぞれ、Che;Orai1−mCherry−BACCS×2、T;Orai1−tdTomato−BACCS×2、HA;Orai1−HA−BACCS×2−imTm、を示す)。なお、カルシウム濃度の変化は実施例1と同様に算出した。また、Orai1−mCherry−BACCS×2をHEK293細胞中で発現させ、470nmの光(青色光)を試験期間中継続して照射した後の、カルシウム蛍光プローブであるFluo−4を使用したカルシウムイメージング結果を図8Aに示す。
Orai1とBACCSの間のリンカーの長さに関して、本実験により、最短で21アミノ酸で機能することが確認された。さらに、光の照射および遮断を繰り返すことで、カルシウムチャネルの開閉を制御できることを確認した(図8C)。
(実施例3:Orai1に結合させるBACCSの数の検討)
Orai1とCADは1:2の比で存在する場合にOrai1を効率よく活性化させることができるという報告がある(Liら、2010)。そこで、Orai1とCADの比がOrai1−BACCSの作用に与える影響を検証すべく、Orai1にBACCSを1つだけ結合したポリペプチドを作製し、実施例1(4)同様に、NFATを使用した核移行アッセイを行った。
実施例2(1)の中で作製したpKZK−Orai1−tdTomato−BACCS×1−WPREを、Orai1にBACCSを1つだけ結合したポリペプチド(Orai1−tdTomato−BACCS×1)として使用した。
核移行シグナルを検出するためのレポーター遺伝子NFAT−GFPから、制限酵素(AgeIおよびSacI)でNFATを切り出し、これを蛍光タンパク質発現ベクターpEYFP−N1の制限酵素認識部位であるAgeI−SacIサイトに挿入し、組み換えベクター(NFAT−YFP)を作製した。
Orai1−tdTomato−BACCS×1およびNFAT−YFPを、HEK293細胞中で共発現させ、470nmの光(青色光)を20分間照射した。その結果、NFAT−YFPの蛍光(図9A中「NFAT−YFP」)は細胞質中にのみ認められ、核において観察されず、NFATの核移行が認められなかった。つまり、Orai1にBACCSを1つしか結合していないポリペプチドによるOrai1の活性化は困難であることが示された。
対照実験として、Orai1−tdTomato−BACCS×2、NFAT−GFPをHEK293細胞中で共発現させた。470nmの光を20分間照射することでNFATは核に移行した(図9B中「NFAT−GFP」)。
(実施例4:Orai1の変異体を使用したBACCSの光応答の検討)
CAD領域によるOrai1の活性化が抑制されるOrai1の変異(Orai1(L273D))を、Orai1−CAD−CAD(Orai1のC末端にCADをタンデムに2つつなげたコンストラクトによって構成的に活性化されている)に導入すると、構成的なカルシウムの流入は観察されない(Liら、2010)。
そこで、Orai1に不活性型変異L273DをリコンビナントPCRによって導入し、さらにHAタグおよび蛍光物質を組んだ組み換えベクター(Orai1(L273D)−HA−BACCS×2−igY)を作製した(図10A)。これをHEK293細胞に導入してカルシウムシグナルを観察した。
Orai1(L273D)−HA−BACCS×2に470nmの光(青色光)を照射する前、および10分間照射した後の、赤色蛍光カルシウムセンサーであるRhod−3によるカルシウムイメージング結果を、図10Bに示す。図10Bに示される通り、光の照射の前後で細胞内カルシウム濃度に変化は認められなかった。
また、BACCSのLOV2−Jαを暗変異体にしたポリペプチド(Orai1−HA−BACCS(dark)×2)を作製した。Orai1−HA−BACCS(dark)×2を発現するHEK293細胞に470nmの光(青色光)を照射しても、細胞内のカルシウム濃度の上昇は認められなかった(データは示していない)。
以上から、BACCSが光に応答してOrai1に作用し、Orai1を活性化させることが示された。
(実施例5:CDI領域を含むOrai1−BACCSについての検討)
STIM1のCDI(Calcium dependent inactivation)(アミノ酸470−491位)領域は、Orai1を素早く不活性化するのに必要な領域を含む(Mullinsら、2009)。そのため、Orai1−BACCSにCDI領域を組み込むことによって、一旦活性化されたOrai1をすぐに不活性化できるカルシウムチャネルが得られる可能性がある。
そこで、CDI領域を含むようにOrai1−BACCSにおけるCAD領域のC末端を伸長し(伸長されたCAD領域を「CAD(347−630)」と示す)、これにHAタグおよび蛍光物質が組み込まれた組み換えベクター(Orai1−HA−BACCS(347−630)×2−igY;図11A)を作製した。CAD(347−630)のDNA断片は、プラスミドSTIM1−CFPからPCRによって増幅し、上記実施例1と同様の手順でBACCS(347−630)を作製した。
これらの組み換えベクターをHEK293細胞中で発現させ、当該細胞に470nmの光(青色光)を照射し、赤色蛍光カルシウムセンサーであるRhod−3を使用したカルシウムイメージングを行った。測定開始50秒後から10分間470nmの光(青色光)を照射し、その後15分間、暗条件で観察した。
その結果、Orai1−HA−BACCS(347−630)×2−igYにおいては光の照射によって細胞内カルシウムの濃度が上昇した。しかし、その後、予想に反してカルシウムの濃度の減少(すなわち、Orai1の不活性化)がすぐに認められることはなく、光を遮断しても、細胞内カルシウム濃度が低下しなかった(図11B、略記はそれぞれ、WT;CDI領域を含まないOrai1−BACCS、CDI;CDI領域を含むOrai1−BACCS、を示す)。なお、カルシウム濃度の変化は実施例1と同様に算出した。この結果は、Orai1−BACCSにCDI領域を導入することは適切ではなく、また、Orai1−BACCSを構成するCAD領域のC末端側の配列の長さがOrai1−BACCSの作用において重要であることを示唆している。
LOV2−Jα内のG528A変異およびN538E変異の2重変異(GVMLIKKTAENからAVMLIKKTAEE)によって、LOV2の光スイッチとしてのダイナミックレンジが大きくなることが報告されている(Stricklandら、2010)。このような2重変異をNFATアッセイに使用した4つの野生型LOV(404−542、404−539、404−538、404−535)に導入し、470nmの光を照射した。その結果、いずれのコンストラクトにおいてもNFATが核へ移行せず、光スイッチがオンにならなかった(データは示していない)。
(実施例6:BACCS×2の作製)
Orai1発現ベクターを使用せずに、BACCS×2が単独でどの程度Orai1を活性化できるかを調べるために、BACCSを2つタンデムにつなげた組み換えベクターを以下の手順で作製した。本例では、HEK293Tで発現している内在性のOrai1に対してBACCS×2が及ぼす影響を検討した。
(1)pBACCS×2−WPREの作製
下記のプライマーおよび鋳型を使用して、PCRサーマルサイクラーによって増幅した。得られたPCR産物(AgeI−BamHI断片とBamHI−SalI断片)を、pOrai1−HA−BACCS×2−WPRE改変ベクター(インサートの開始コドン近傍の配列を、下記リンカーでNheI−XhoI−KZK−開始コドン−AgeIに改変したもの)のAgeI−SalI断片を除いたベクターに挿入し、組み換えベクター(pBACCS×2−WPRE)を作製した(図12A)。
上記組み換えベクターによる発現産物は、実施例2におけるpOrai1−HA−BACCS×2−WPRE発現産物中のBACCS×2の領域と同一のアミノ酸配列を有し、かつ、N末端に10アミノ酸(MGPVGGSGGS)、C末端に9アミノ酸(GGSGGSGLV)が付加されている。これらは融合タンパク質を作製する際にリンカーとして利用できるように付加したものである。
(2)pBACCS×2−igY−WPREの作製
上記で得られたpBACCS×2−WPRE発現細胞を蛍光により可視化するために、実施例2と同様に、igYを、pBACCS×2−WPREの3’非翻訳領域の制限酵素認識部位であるSalIサイトに挿入し、組み換えベクター(pBACCS×2−igY−WPRE)を作製した。
BACCS×2−igYを発現するHEK293T細胞に対してカルシウムイメージングを行った。カルシウム蛍光プローブとしてRhod−3(赤色蛍光カルシウムセンサー)を用いた。観察開始50秒後から、コンフォーカル顕微鏡の442nmの波長のレーザーを5秒毎に照射して細胞を刺激した後、それぞれの細胞について、蛍光強度変化を検討した。各時点での蛍光強度として、ΔF(蛍光変化量)/F0(光刺激前の蛍光強度)を算出した。ΔF/F0の値を縦軸にプロットし、横軸に時間(秒)を示した結果を図12Bに示す。比較試験としてOrai1−HA−BACCS×2−igYを発現するHEK293T細胞で同様にカルシウムイメージングを行った。なお、図中のB×2はBACCS×2−igY(解析細胞数n=45)を、OB×2はOrai1−HA−BACCS×2−igY(解析細胞数n=35)を示す。各時点のΔF/F0は、各細胞についての平均値として標準誤差と共に示した。青色光照射開始時に認められる、わずかな蛍光強度の上昇は、測定機器によるノイズである。
図12Bに示される通り、BACCS×2はOrai1発現ベクターを使用しなくとも内在性のOrai1を活性化でき、Orai1−HA−BACCS×2よりも効率よくカルシウム濃度を上昇させることが認められた。
(3)pYFP−BACCS×2−WPREの作製
BACCS×2のN末端に蛍光タンパク質を融合できることを確認するために、下記のプライマーおよび鋳型を使用して、PCRサーマルサイクラーによって増幅した。得られたPCR産物(NheI−AgeI断片)をpBACCS×2−WPREのNheI−AgeIサイトに挿入し、組み換えベクター(pYFP−BACCS×2−WPRE)を作製した。YFP−BACCS×2を発現するHEK293T細胞に対してカルシウムイメージングを行った。併せて、BACCS×2−igYを発現するHEK293T細胞に対してもカルシウムイメージングを行った。カルシウム蛍光プローブとしてRhod−3(赤色蛍光カルシウムセンサー)を用いた。観察開始50秒後から、470nm波長のLEDランプを継続的に照射して細胞を刺激した。それぞれの細胞について、上記同様にΔF/F0を算出して縦軸にプロットし、横軸に時間(秒)を示した結果を図13に示す。なお、図中のB×2はBACCS×2−igY(解析細胞数n=5)を、YB×2はYFP−BACCS×2(解析細胞数n=5)を示す。各時点のΔF/F0は、各細胞についての平均値として標準誤差と共に示した。
図13に示される通り、N末端へタンパク質を融合しても、BACCS×2は内在性のOrai1を活性化でき、効率よくカルシウム濃度を上昇できることが認められた。
STIM1はSTIM2との配列類似性が高く、線虫、ヒト等の様々な種間で保存されている(図2B;Yuanら、2009より改変)。図2Bの略記はそれぞれ、H.sap;ヒト、B.tau;ウシ、P.tro;チンパンジー、E.cab;ウマ、G.gal;ニワトリ、M.mus;マウス、R.nor;ラット、S.scr;ブタ、X.lae;アフリカツメガエル、D.rer;ゼブラフィッシュ、D.mel;ショウジョウバエ、A.gam;蚊、N.vit;宝石バチ、C.ele;線虫、を示す。
同様に、Orai1はOrai2およびOrai3との配列類似性が高く、線虫、ヒト等の様々な種間で保存されている(図2A)。図2Aの略記はそれぞれ、h;ヒト、m;マウス、z;ゼブラフィッシュ、x;アフリカツメガエル、d;ショウジョウバエ、ce;線虫、を示す。
また、Jα領域も、様々な植物種で高度に保存されている(図3)。図3の略記はそれぞれ、Os;イネ フォトトロピン1、Zm;トウモロコシ フォトトロピン1、At;シロイヌナズナ フォトトロピン1およびフォトトロピン2、Ps;エンドウマメ フォトトロピン1、Vf;ソラマメ フォトトロピン1、Ac;ホウライシダ フィトクロム3、As;オートムギ フォトトロピン1、を示す(Harperら、2004より引用)。
さらに、LOV2領域も、前述のように多くの植物間で保存されており、例えば、オートムギのLOV2領域のアミノ酸配列との相同性は、アジアイネのフォトトロピン1;81%、シロイヌナズナのフォトトロピン1;87%、シロイヌナズナのフォトトロピン2;83%、エンドウマメのフォトトロピン1;87%、ソラマメのフォトトロピン1;トウモロコシのフォトトロピン1;95%、トマトのフォトトロピン1;87%である。
これらのことから、各領域は、様々な種のホモログで代用できる可能性がある。
以下に、本実施例で使用したプラスミドのコンストラクトを示す。
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Claims (13)

  1. 配列番号1または配列番号1と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるLOV2領域と、
    配列番号2、配列番号3、またはLOV2−Jαの光スイッチとしての機能を維持し、かつ配列番号2もしくは3のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるJα領域と、
    配列番号4、またはカルシウムチャネルOrai1を活性化でき、かつ配列番号4のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加されたアミノ酸配列からなるCAD領域と、を含むアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、
    前記LOV2領域、前記Jα領域および前記CAD領域は、N末端からC末端に向かって、前記LOV2領域、前記Jα領域および前記CAD領域の順で配置され、
    前記Jα領域のC末端と前記CAD領域のN末端との間にアミノ酸配列が介在していないポリペプチド。
  2. 配列番号5またはカルシウムチャネルとして機能でき、かつ、配列番号5のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加されたアミノ酸配列からなるOrai1領域と、
    請求項1記載のポリペプチドからなる第1のBACCS領域と、
    請求項1記載のポリペプチドからなる第2のBACCS領域と、を含むアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、
    前記Orai1領域、前記第1のBACCS領域および前記第2のBACCS領域は、N末端からC末端に向かって、前記Orai1領域、前記第1のBACCS領域および前記第2のBACCS領域の順で配置されるポリペプチド。
  3. 前記Orai1領域のC末端と前記第1のBACCS領域のN末端の間に第1のリンカーが介在する請求項2記載のポリペプチド。
  4. 前記第1のBACCS領域のC末端と前記第2のBACCS領域のN末端の間に第2のリンカーが介在する請求項2または3に記載のポリペプチド。
  5. 請求項1記載のポリペプチドからなる第1のBACCS領域と、
    請求項1記載のポリペプチドからなる第2のBACCS領域と、を含み、かつ、
    配列番号5またはカルシウムチャネルとして機能でき、かつ、配列番号5のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、付加されたアミノ酸配列からなるOrai1領域を含まないアミノ酸配列からなるポリペプチド。
  6. 前記第1のBACCS領域のC末端と前記第2のBACCS領域のN末端の間にリンカーが介在する請求項5に記載のポリペプチド。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする単離された核酸。
  8. 請求項7に記載の核酸を含む組み換えベクター。
  9. 請求項8に記載の組み換えベクターを含む遺伝子導入キット。
  10. 請求項8に記載の組み換えベクターを含み、単離された細胞または非ヒト動物である形質転換体。
  11. 請求項10記載の形質転換体に照射する光の強度を操作することによって、前記形質転換体の細胞内カルシウムシグナルを調節する細胞内カルシウムシグナルの調節方法。
  12. 前記ポリペプチドは、請求項1、5または6のいずれか1項に記載のポリペプチドであり、かつ、前記細胞はOrai1を発現している請求項11に記載の細胞内カルシウムシグナルの調節方法。
  13. 前記ポリペプチドは、請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドである請求項9に記載の細胞内カルシウムシグナルの調節方法。
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JPN6012016636; Cell Res., (2011, published online 2010.09.14), 21, [2], p.305-315 *
JPN6015051429; Cell, (2009), 136, [5], p.876-890 *

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