JPWO2011108255A1 - 固体電解コンデンサの製造方法及び固体電解コンデンサ - Google Patents

固体電解コンデンサの製造方法及び固体電解コンデンサ Download PDF

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Abstract

環境負荷が小さく、経済性に優れる上に、低下した誘電損失(tanδ)と等価直列抵抗(ESR)とを有する固体電解コンデンサを与える固体電解コンデンサの製造方法を提供する。
本発明では、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、この陽極上に設けられた導電性ポリマー層とを含む固体電解コンデンサを、界面活性剤を含まない水にπ−共役二重結合を有するモノマーを添加し、水とモノマーとが相分離している相分離液を得る添加工程、上記相分離液に超音波を照射することにより、水にモノマーが油滴として分散している分散液を得る分散工程、及び、上記分散液に陽極を導入して電解重合を行うことにより導電性ポリマー層を陽極上に形成する重合工程を含む製造方法により得る。ポリマー粒子が緻密に充填された導電性ポリマー層が得られ、固体電解コンデンサのtanδとESRが低下する。

Description

本発明は、環境負荷が小さく、経済性に優れる上に、低下した誘電損失(tanδ)と等価直列抵抗(ESR)とを有する固体電解コンデンサを与える固体電解コンデンサの製造方法、及びこの製造方法により得られた固体電解コンデンサに関する。
固体電解コンデンサは、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁金属箔の表面に誘電体としての酸化皮膜が設けられている陽極と、酸化皮膜と接しており、真の陰極として作用する導電性ポリマー層とを含んでおり、この導電性ポリマー層はπ−共役二重結合を有するモノマー(以下、π−共役二重結合を有するモノマーをしばしば単に「モノマー」と表す)の化学重合或いは電解重合により形成される。
例えば、特許文献1(特開昭61−239617号公報)は、導電性ポリマー層としてアルキル基又はアルコキシル基で置換されたアニリンの化学重合又は電解重合により得られた層を含む固体電解コンデンサを提案しているが、実施例では重合液の溶媒として水が使用されている。特許文献2(特開平2−15611号公報)は、導電性ポリマー層として3位と4位が置換されたチオフェンの化学重合により得られた層を含む固体電解コンデンサを開示しているが、実施例では重合液の溶媒としてアセトンとイソプロパノールの混合溶媒或いはイソプロパノールが使用されている。また、特許文献3(特開平3−18009号公報)は、無置換ピロールの電解重合により形成した導電性ポリマー層を含む固体電解コンデンサを開示しているが、実施例ではアセトニトリル又は水が重合液の溶媒として使用されている。
上記特許文献から理解されるように、電解重合用又は化学重合用の重合液の溶媒として、水と有機溶媒の両方が適宜選択されて使用されてきた。しかしながら、有機溶媒の使用は、水溶媒の使用に比較して、一般に環境負荷を増大させ、経済的にも不利である。さらに、有機溶媒の中には人体に有害なものも多く、可燃性溶媒を使用した電解重合の場合には電気火花による火災を防止する措置をとる必要がある。特許文献1及び特許文献3に示されているアニリン誘導体又は無置換ピロールは、水に対する溶解度が比較的高いため、重合液の溶媒として水を好適に使用することができるが、特許文献2に示されているチオフェン誘導体のように水に不溶又は難溶である化合物の重合においては、有機溶媒を使用せざるを得なかった。
そこで、水に不溶又は難溶であるモノマーの重合においても、環境負荷が小さく、経済性に優れた水を溶媒として使用する検討がなされており、これまでに、長鎖アルキル基を有するアニオン系界面活性剤或いは重合型アニオン系界面活性剤を使用する方法が提案されている。
特許文献4(特開平11−274006号公報)は、3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、3,4−エチレンジオキシチオフェンを「EDOT」と表し、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェンを「PEDOT」と表す)のようなチオフェン誘導体と、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアニオン系界面活性剤とを含むモノマー分散水媒体と、酸化剤を含む水溶液とに、固体電解コンデンサを構成する陽極を交互に浸漬する工程を多数回繰り返し、化学重合によりチオフェン誘導体のポリマーを陽極上に形成する方法を開示している。チオフェン誘導体が界面活性剤のミセル中に取り込まれ、重合反応がミセル中で速やかに進行し、界面活性剤のアニオンが支配的にドープされた導電性ポリマー層が陽極上に形成されている。そして、得られた導電性ポリマー層上にカーボン層と銀ペイント層が設けられ、固体電解コンデンサが構成されている。
特許文献5(特開2000−269087号公報)は、陽極の酸化皮膜上に化学重合等により導電層を形成した後、EDOTのようなチオフェン誘導体をアルキルナフタレンスルホン酸系界面活性剤により乳化した水媒体の電解液中にこの陽極を導入し、電解重合によりチオフェン誘導体のポリマーを陽極上に形成する方法を開示している。界面活性剤のミセル中にチオフェン誘導体が濃縮されているため、重合が速やかに進行し、界面活性剤のアニオンがドープされた導電性ポリマー層が陽極上に形成されている。そして、得られた導電性ポリマー層上にカーボン層と銀ペイント層が設けられ、固体電解コンデンサが構成されている。電解重合によりドーパントとしてポリマー層に取り込まれたアルキルナフタレンスルホン酸アニオンの嵩が大きいため、脱ドープが抑制され、高温・高湿中で安定な固体電解コンデンサが得られている。
特許文献6(特開2006−295184号公報)は、陽極の酸化皮膜上に化学重合等により導電層を形成した後、導電性ポリマー粒子と結合剤とを含む分散物を適用して導電層上に導電性ポリマー層を形成する方法を開示している。上記分散物として、重合型アニオン系界面活性剤として作用するポリスチレンスルホン酸を含む水溶液に、EDOTと硫酸鉄(III)と過硫酸ナトリウムとを添加し、反応させて水溶液中にPEDOT/ポリスチレンスルホネート粒子を形成させ、次いで結合剤等を添加したものが具体的に開示されている。そして、導電性ポリマー層上にカーボン層と銀ペースト層が設けられ、固体電解コンデンサが構成されている。
特開昭61−239617号公報 特開平2−15611号公報 特開平3−18009号公報 特開平11−274006号公報 特開2000−269087号公報 特開2006−295184号公報
特許文献4に開示された方法のように化学重合を多数回実施する方法は、特許文献5のような電解重合を行う方法に比較して、重合に長期間を要するため、固体電解コンデンサの製造時間が長くなり、導電性ポリマー層の機械的強度が十分でない。特許文献6のスルホン酸基を有する重合型アニオン系界面活性剤を用いた化学重合により得られたポリマー分散体を用いる方法によると、固体電解コンデンサの製造時間が短縮するものの、tanδとESRの両方が低下した固体電解コンデンサが得られない。また、特許文献5のスルホン酸塩基を有するアニオン系界面活性剤を含む重合液を用いた電解重合を利用する方法でも、やはりtanδとESRの両方が低下した固体電解コンデンサが得られない。この理由は、これらのアニオン系界面活性剤が導電性ポリマー層と陽極の誘電体との間の電気伝導を阻害するためであると思われる。さらに、界面活性剤の使用は、一般に、経済的に不利であり、環境負荷を増大させ、重合後に液を廃棄する際には界面活性剤を分離するための煩雑な工程を要するため好ましくない。
そこで、本発明の目的は、固体電解コンデンサの導電性ポリマー層を水溶媒を含む重合液から電解重合により製造する、環境負荷が小さく、経済性に優れる製造方法であって、水易溶性のモノマーに限定されず、水に不溶性又は難溶性のモノマーをも使用することができ、その上低下したtanδとESRとを有する固体電解コンデンサを与える製造方法を提供することである。本発明の目的はまた、上記製造方法により得られる、低下したtanδとESRとを有する固体電解コンデンサを提供することである。
発明者らは、鋭意検討した結果、界面活性剤を含まない水に油状のモノマーを飽和溶解量より多い量で添加し、次いで超音波を照射して水中にモノマーを分散させると、モノマーが油滴として水に安定に分散した重合液が得られ、この重合液を使用して電解重合を行うと、緻密で高電導度を有する導電性ポリマー層が陽極上に形成され、低下したtanδとESRとを有する固体電解コンデンサが得られることを発見した。固体電解コンデンサの低いESRは、コンデンサが高温を経験しても保たれる。
なお、電解重合用の重合液の調製に超音波照射を利用する方法自体は公知である。J.AM.CHEM.SOC.(2005),127(38),13160−13161には、支持電解質としてのLiClOを溶解させた水溶液に飽和溶解量より多い量のEDOTを添加し、周波数20kHz、出力22.6W/cmの超音波を60秒間照射し、モノマー油滴が水に分散している乳濁した重合液を得(この文献の図1参照)、この重合液を用いてPt電極上に電解重合層を形成した結果が報告されている。しかし、この文献には、表面に酸化皮膜を備えた弁金属箔からなる電極を使用した電解重合が記載されておらず、また、低下したtanδとESRとを有する固体電解コンデンサが得られることを示唆する記載も存在しない。
そこで、本発明における第1の固体電解コンデンサの製造方法は、界面活性剤を含まない水にπ−共役二重結合を有する少なくとも一種のモノマーを添加し、水と上記モノマーとが相分離している相分離液を得る添加工程、上記相分離液に超音波を照射することにより、水に上記モノマーが油滴として分散している分散液を得る分散工程、及び、上記分散液に、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極を導入し、電解重合を行うことにより、上記モノマーの重合により得られた導電性ポリマー層を上記陽極上に形成する重合工程を含むことを特徴とする。重合工程により得られた導電性ポリマー層上に導電層(見かけの陰極)が設けられ、固体電解コンデンサが構成される。
本発明における第2の固体電解コンデンサの製造方法は、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、上記陽極と上記陰極との間に配置されたセパレータとを含むコンデンサ素子を得る素子作成工程、界面活性剤を含まない水に、π−共役二重結合を有する少なくとも一種のモノマーを添加し、水と上記モノマーとが相分離している相分離液を得る添加工程、上記相分離液に超音波を照射することにより、水に上記モノマーが油滴として分散している分散液を得る分散工程、及び、上記分散液を上記コンデンサ素子に含浸させ、電解重合を行うことにより、上記モノマーの重合により得られた導電性ポリマー層を上記セパレータに保持させる重合工程を含むことを特徴とする。この方法により、巻回型或いは積層型の固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明に関する限り、「界面活性剤」とは、水にモノマーを可溶化或いは乳化させる作用を有するものを意味し、水とモノマーと化合物Xとを含む液を機械的に攪拌し、攪拌を停止した後、速やかにモノマーと水とが相分離する場合には、化合物Xは「界面活性剤」には含まれない。したがって、本発明では、一般的な界面活性剤の範囲に含まれない化合物は当然に「界面活性剤」の範囲に含まれないが、一般的な界面活性剤の範囲に含まれる化合物であっても、重合液中の含有量が微量であるために実質的な界面活性作用が得られず、攪拌を停止した後速やかにモノマーと水とが相分離する場合には、この微量な化合物も「界面活性剤」には含まれない。また、本発明に関する限り、「超音波」とは10kHz以上の周波数を有する音波を意味する。
本発明の固体電解コンデンサの製造方法において、上記重合工程における電解重合のために使用される重合液には飽和溶解量を超える量のモノマーが含まれており、溶解しきれないモノマーが重合液中に油滴として分散している。この重合液は、上記分散工程において飽和溶解量を超える量のモノマーを含む相分離液に超音波を照射し、モノマーを油滴として液に高分散させることにより得られるが、得られた重合液は解乳化が抑制された安定な液である。
固体電解コンデンサの陽極表面には微細なエッチングピットが存在する。重合液中の微小なモノマー油滴は、陽極のエッチングピット内に進入し、エッチングピット内でのモノマー油滴と陽極との間の電荷移動により導電性ポリマーが生成し、固体電解コンデンサのtanδとESRとを低下させる。したがって、エッチングピット内に侵入しやすい大きさの微小なモノマー油滴を多く含む重合液を電解重合のために使用するのが好ましく、モノマー油滴数の98%以上が360nmより小さい直径を有している乳濁した分散液を使用するのが好ましく、モノマー油滴数の90%以上の油滴が250nm以下の直径を有している透明である分散液を使用するのがより好ましく、モノマー油滴数の80%以上の油滴が100nm以下の直径を有している透明である分散液を使用するのが特に好ましい。なお、油滴のサイズは動的光散乱法により測定することができる。
一方、粗大なモノマー油滴は、陽極のエッチングピット内に進入することができず、油滴として電解重合に関与することが困難になり、重合液に溶解しているモノマーが専ら電解重合に関与するようになるが、重合によるモノマーの消費量に相当する量のモノマーを陽極近傍の油滴から補充して電解重合を迅速に進行させ、固体電解コンデンサのtanδとESRとを低下させる。特に、上記分散液におけるモノマーの含有量が上記分散液に対する飽和溶解量に40〜80ミリモルを加えた量であると、モノマー量の増加につれてESRが顕著に低下する。40ミリモル未満であると、油滴からのモノマーの補充速度が不十分であるためであると思われるが、ESRの低下効果が十分でなく、80ミリモルを超えると、ESRのさらなる低下がもはや期待されなくなるため経済的に不利であり、また重合液中のモノマー油滴の凝集が加速されるために重合液が不安定になる傾向がある。
重合工程の前には、通常、溶媒としての水とモノマーに加えて少なくとも一種の支持電解質が重合液に含まれる。しかしながら、陽極と陰極(対極)との間隔を互いの拡散層が重なる約100μm以下に接近させた条件で電解重合を行う場合には、重合液に支持電解質が含まれている必要は無い。
本発明では界面活性剤として作用しない支持電解質を使用することができるが、支持電解質がモノマーの油滴に溶解する油溶性の電解質であると、重合促進効果が認められるため好ましく、特に、ボロジサリチル酸、ボロジサリチル酸塩、式(I)又は式(II)
(式中、mが1〜4の整数、好ましくは2を意味し、nが1〜4の整数、好ましくは2を意味し、oが2又は3の整数を意味する)で表わされるスルホニルイミド酸及びこれらの塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物を支持電解質として使用すると、電解重合により得られる導電性ポリマーフィルムの耐熱性が向上し、したがって固体電解コンデンサの耐熱性が向上するため好ましい。但し、ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩に含まれるボロジサリチル酸イオンは、水中で水への溶解度が極めて小さいサリチル酸とホウ酸とに加水分解することがわかっている。そのため、ボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を支持電解質として使用すると、徐々に重合液中に沈殿が生じて使用に耐えなくなる。このことを回避するため、ボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を支持電解質として使用する場合には、この支持電解質を液に添加した後沈殿生成前に電解重合を行うか、或いは、p−ニトロフェノールと併用する。p−ニトロフェノールがボロジサリチル酸イオンの加水分解を抑制するためであると思われるが、p−ニトロフェノールとボロジサリチル酸イオンとを含む重合液からは沈殿が生成しない。
微小なモノマー油滴を含む透明である分散液(透明である重合液)を得るには、上記分散工程を、上記相分離液に超音波を照射することにより上記モノマーを油滴として分散させ、乳濁した乳濁分散液を得る第1分散工程、及び、上記乳濁分散液に上記第1分散工程における超音波の周波数より高い周波数の超音波を照射することにより上記モノマーの油滴のサイズを減少させ、透明である透明分散液を得る第2分散工程、により行うのが好ましい。本発明に関する限り、「透明である重合液」とは、重合液に分散しているモノマーのうち、全数の90%以上の油滴が250nm以下の直径を有している重合液を意味する。この重合液中にはこのような微小なモノマーの油滴が高分散状態で存在しており、油滴による光散乱が実質的に認められず、重合液全体が透明に見える。
この透明である重合液を使用して電解重合を行うと、微小なモノマーの油滴と陽極との間の電荷移動が円滑に進行し、極めて緻密で高電導度な導電性ポリマー層が得られ、特に低下したtanδとESRとを有する固体電解コンデンサが得られる。特に、重合液中に分散しているモノマー油滴のうち、全数の80%以上の油滴が100nm以下の直径を有するようになると、固体電解コンデンサは著しく低下したESRの値を示す。
透明である重合液を得るための第1分散工程は、15〜200kHzの周波数を有し、比較的高出力な、好適には4W/cm以上の出力を有する超音波を使用することにより、好適に実施することができ、第2分散工程は、1〜4MHzの周波数を有し、比較的高出力な、好適には5W/cm以上の出力を有する超音波を使用することにより、好適に実施することができる。第1分散工程における超音波の周波数が15kHzより小さいか、或いは、周波数が200kHzを超えると、また、第1分散工程における超音波の出力が4W/cmより小さいと、乳濁分散液を得るのに好適なキャビテーションが発生しにくくなる。また、第2分散工程における超音波の周波数が1MHzより小さいか、或いは、周波数が4MHzを超えると、また、第2分散工程における超音波の出力が5W/cmより小さいと、第1分散工程で生成したモノマー油滴の平均サイズを透明分散液が得られるようになるまで減少させるのに好適なキャビテーションが発生しにくくなる。
透明である重合液を得るための第1分散工程及び第2分散工程は、それぞれ1回、(例えば、第1分散工程を20kHzの周波数及び10W/cmの出力を有する超音波を使用して、第2分散工程を1MHzの周波数及び20W/cmの出力を有する超音波を使用して)行っても良いが、第1分散工程を異なる周波数及び/又は出力の超音波を使用して複数回(例えば、20kHzの周波数及び10W/cmの出力を有する超音波に続いて50kHzの周波数及び20W/cmの出力を有する超音波を使用して)行っても良く、及び/又は、第2分散工程を異なる周波数及び/又は出力の超音波を使用して複数回(例えば、1MHzの周波数及び20W/cmの出力を有する超音波に続いて2MHzの周波数及び10W/cmの出力を有する超音波を使用して)行っても良い。特に、第2分散工程は、回数が増加するほど超音波の周波数を増加させる条件で複数回行うのが好ましい。第2分散工程を複数回繰り返すことにより、モノマー油滴がさらに細分化し、モノマーの油滴数の80%以上が100nm以下の直径を有する特に好適な重合液を容易に得ることができる。そして、この重合液を用いた電解重合により得られる固体電解コンデンサのESRが著しく低下する。
透明である重合液を得るための第1分散工程及び第2分散工程の超音波照射時間は、約1分程度であっても、乳濁分散液又は透明分散液が得られるが、超音波照射時間が長くなると、モノマー油滴の凝集が阻害され、解乳化までの時間が長期化する傾向にあるため好ましい。第1分散工程における超音波照射時間は、2〜10分の範囲であるのが好ましく、第2分散工程における超音波照射時間は、2〜10分の範囲であるのが好ましい。各分散工程における超音波照射時間が10分以上では、油滴の凝集阻害効果が飽和する傾向が認められる。
支持電解質を含む透明である重合液を得る場合には、支持電解質の添加は、上記第1分散工程の前、上記第1分散工程と上記第2分散工程の間、又は、上記第2分散工程の後に行われる。支持電解質としてボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を使用する場合には、第2分散工程の後、好ましくは電解重合の直前に液に添加するか、或いは、p−ニトロフェノールと併用する。p−ニトロフェノールと併用する場合には、ボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩は第1分散工程の前或いは上記第1分散工程と上記第2分散工程の間に添加しても良いが、p−ニトロフェノールをボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩とほぼ同時に添加するか、或いは、p−ニトロフェノールをボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩より先に添加する。
また、重合液中のモノマーの含有量が多くなるにつれ、透明な分散液が得られにくくなる。モノマーの種類ばかりでなく、支持電解質の種類と量、超音波照射条件によっても変化するが、一般に、モノマーの含有量が上記分散液に対する飽和溶解量に約15ミリモルを加えた量に達すると、上述した第1分散工程とこれに続く第2分散工程を実施しても透明である分散液が得られにくくなる。しかしながら、重合液におけるモノマーの含有量を増加させた場合にも、上述した第1分散工程とこれに続く第2分散工程を実施すると、重合液中のモノマー油滴の安定性が増し、解乳化が阻害された安定な分散液が得られるため好ましい。特に、上記分散液におけるモノマーの含有量が上記分散液に対する飽和溶解量に40〜80ミリモルを加えた量であり、上記分散工程を、上記相分離液に超音波を照射することにより上記モノマーを油滴として分散させ、乳濁した乳濁分散液を得る第1分散工程、及び、上記乳濁分散液に上記第1分散工程における超音波の周波数より高い周波数の超音波を照射し、上記モノマーの油滴のサイズを減少させた別の乳濁分散液を得る第2分散工程により行うと、顕著に低下したESRを有する固体電解コンデンサを与える乳濁した重合液を得ることができる。
本発明において、陽極の酸化皮膜の漏れ電流を利用し、酸化皮膜上に直接導電性ポリマー層を形成しても良く、また、予め酸化皮膜上に導電性膜を設け、その上に導電性ポリマー層を形成しても良い。酸化皮膜の安定性、導電性ポリマーの重合効率を考慮すると、酸化皮膜上に上記モノマーの化学重合により得られた導電性膜を設け、その上に導電性ポリマー層を形成するのが好ましい。
本発明の固体電解コンデンサの製造方法では、導電性ポリマー層を形成するためのモノマーとして、π−共役二重結合を有するモノマーを特に限定無く使用することができ、水に易溶性のモノマーばかりでなく、水に不溶又は難溶であるモノマーであっても好適に使用することができる。特にモノマーがEDOTであると、極めて導電性が高く且つ環境安定性に優れた導電性ポリマー層が得られるため好ましい。
本発明の固体電解コンデンサの製造方法により、低下したtanδとESRとを有する固体電解コンデンサが得られる。したがって、本発明はまた、上述の第1の固体電解コンデンサの製造方法により得られる、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、該陽極上に設けられた導電性ポリマー層とを含む固体電解コンデンサ、及び、上述の第2の固体電解コンデンサの製造方法により得られる、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、上記陽極と上記陰極との間に配置された導電性ポリマー層を保持したセパレータとを含む固体電解コンデンサに関する。
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、導電性ポリマー層を得る電解重合のための重合液として、水を溶媒とし、界面活性剤を含まない重合液を使用するため、環境負荷が小さく、経済性に優れる製造方法である。また、界面活性剤を含まない導電性ポリマー層を有する本発明の固体電解コンデンサは、低下したtanδとESRとを有し、コンデンサが高温を経験しても低いESRが保たれるため、幅広い用途への応用が可能である。
水に分散したEDOT油滴のサイズを測定した結果を示す図である。 本発明の固体電解コンデンサにおける陽極の断面のSEM写真であり、エッチングピット内部を撮影した写真である。 従来の固体電解コンデンサにおける陽極の断面のSEM写真であり、エッチングピット内部を撮影した写真である。
本発明は、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、この陽極上に設けられた導電性ポリマー層とを含む第1の形態の固体電解コンデンサ、或いは、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、陽極と陰極との間に配置された導電性ポリマー層を保持したセパレータとを含む第2の形態の固体電解コンデンサの製造方法に関し、上記導電性ポリマー層を、溶媒としての水と、π−共役二重結合を有するモノマーとを必須成分として含み、モノマーを水に可溶化或いは乳化させるための界面活性剤を含まない重合液からの電解重合により形成することを特徴とする。上記重合液は、界面活性剤を含まない水にモノマーを添加し、水とモノマーとが相分離している相分離液を得る添加工程、及び、上記相分離液に超音波を照射することにより、水にモノマーが油滴として分散している分散液を得る分散工程により得ることができる。そして、第1の形態の固体電解コンデンサにおいては陽極を、第2の形態の固体電解コンデンサにおいては陽極、陰極、及び陽極と陰極との間に配置されたセパレータを含むコンデンサ素子を、それぞれ分散工程で得られた分散液に導入して電解重合を行う重合工程により、固体電解コンデンサを得る。以下、各工程について、詳細に説明する。
(1)添加工程
本発明では、環境負荷が小さく、経済的にも優れる水を溶媒とした重合液を使用し、この工程では水にπ−共役二重結合を有するモノマーを添加する。本発明では、π−共役二重結合を有するモノマーを特に限定無く使用することができ、水に易溶性のモノマーばかりでなく、水に不溶又は難溶であるモノマーであっても好適に使用することができる。モノマーとして、単独の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を混合して使用しても良い。
使用可能なモノマーの例としては、まず、チオフェン及びチオフェン誘導体、例えば、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェンなどの3−アルキルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジエチルチオフェンなどの3,4−ジアルキルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェンなどの3−アルコキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェンなどの3,4−ジアルコキシチオフェン、3,4−メチレンジオキシチオフェン、EDOT、3,4−(1,2−プロピレンジオキシ)チオフェンなどのアルキレンジオキシチオフェン、3,4−メチレンオキシチアチオフェン、3,4−エチレンオキシチアチオフェン、3,4−(1,2−プロピレンオキシチア)チオフェンなどのアルキレンオキシチアチオフェン、3,4−メチレンジチアチオフェン、3,4−エチレンジチアチオフェン、3,4−(1,2−プロピレンジチア)チオフェンなどのアルキレンジチアチオフェン、チエノ[3,4−b]チオフェン、イソプロピルチエノ[3,4−b]チオフェン、t−ブチル−チエノ[3,4−b]チオフェンなどのアルキルチエノ[3,4−b]チオフェン、を挙げることができる。
また、ピロール及びピロール誘導体、例えば、N−メチルピロール、N−エチルピロールなどのN−アルキルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロールなどの3−アルキルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロールなどの3−アルコキシピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジエチルピロールなどの3,4−ジアルキルピロール、3,4−ジメトキシピロール、3,4−ジエトキシピロールなどの3,4−ジアルコキシピロールを使用することができる。
また、アニリン及びアニリン誘導体、例えば、2,5−ジメチルアニリン、2−メチル−5−エチルアニリンなどの2,5−ジアルキルアニリン、2,5−ジメトキシアニリン、2−メトキシ−5−エトキシアニリンなどの2,5−ジアルコキシアニリン、2,3,5−トリメトキシアニリン、2,3,5−トリエトキシアニリンなどの2,3,5−トリアルコキシアニリン、2,3,5,6−テトラメトキシアニリン、2,3,5,6−テトラエトキシアニリンなどの2,3,5,6−テトラアルコキシアニリンを使用することができる。
また、フラン及びフラン誘導体、例えば、3−メチルフラン、3−エチルフランなどの3−アルキルフラン、3,4−ジメチルフラン、3,4−ジエチルフランなどの3,4−ジアルキルフラン、3−メトキシフラン、3−エトキシフランなどの3−アルコキシフラン、3,4−ジメトキシフラン、3,4−ジエトキシフランなどの3,4−ジアルコキシフランを使用することができる。
本発明はモノマーの水への溶解度に限定されないため、本発明は特に水に不溶又は難溶であるモノマーから導電性ポリマー層を形成するために有用であり、一般には水1リットルに対して0.1モル以下、好ましくは0.05モル以下、特に好ましくは0.02モル以下の溶解度を有するモノマーを使用するのが好ましい。特に3位と4位に置換基を有するチオフェン、中でもEDOTをモノマーとして用いると、極めて導電性が高く且つ環境安定性に優れた導電性ポリマー層が得られるため好ましい。
添加工程では、水にモノマーを添加するほか、必要に応じて支持電解質を添加することができる。陽極と陰極(対極)との間隔を互いの拡散層が重なる約100μm以下に接近させた条件で電解重合を行う場合には、重合液に支持電解質を添加する必要はない。
本発明では界面活性剤として作用しない支持電解質を使用することができ、例えば、ホウ酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、アスコット酸、酒石酸、スクアリン酸、ロジゾン酸、クロコン酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、1,2−ジヒドロキシ−3,5−ベンゼンジスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ボロジサリチル酸、ビスオキサレートボレート酸、また、式(I)又は式(II)
(式中、mが1〜4の整数を意味し、nが1〜4の整数を意味し、oが2又は3の整数を意味する)で表わされるスルホニルイミド酸などの有機酸、及び、これらの塩を使用することができる。塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ブチルアンモニウム塩などのアルキルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、ジブチルアンモニウム塩などのジアルキルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリブチルアンモニウム塩などのトリアルキルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩などのテトラアルキルアンモニウム塩を挙げることができる。ただし、添加工程においてボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を使用する場合には、p−ニトロフェノールと併用する。
支持電解質は、単独の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。支持電解質としては、水に分散しているモノマー油滴に溶解する油溶性を示すものが、重合促進効果があるため好ましく、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、ボロジサリチル酸及びその塩、式(I)又は式(II)で表わされるスルホニルイミド酸及びこれらの塩を好適に使用することができる。ボロジサリチル酸及びその塩、式(I)又は式(II)で表わされるスルホニルイミド酸及びこれらの塩は、耐熱性の高い導電性ポリマー層を与え、したがって耐熱性の高い固体電解コンデンサを与えるため特に好ましく、中でも、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸の塩、例えばカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩が極めて好ましい。
上記モノマーは、重合液に対して、飽和溶解量を超える量で、したがって、静置した状態で飽和溶解量を超えたモノマーが水から相分離する量で使用される。飽和溶解量を超えるモノマーの量は、超音波照射により解乳化が抑制され、目的の重合液が得られる量であれば良く、モノマーの種類ばかりでなく、支持電解質の種類と量、超音波照射条件によっても変化し、また、固体電解コンデンサに期待するtanδとESRの値によっても変化する。モノマーの使用量が少ないと、所望の厚さの導電性ポリマー層を得るまでの電解重合時間が長くなるため経済的に好ましくなく、モノマーの使用量が多いと、モノマー油滴の凝集が加速する傾向がある。モノマーとしてEDOTを使用する場合には、一般に、水1リットルに対して約20〜約30ミリモルのEDOTを水に添加すると、以下に示す第1分散工程とそれに続く第2分散工程を実施することにより、ESRとtanδの両方が低下した固体電解コンデンサを与える微小なモノマー油滴を含む透明分散液を好適に得ることができ、水1リットルに対して約60〜約100ミリモルのEDOTを使用すると、以下に示す第1分散工程とそれに続く第2分散工程を実施することにより、特に低下したESRを有する固体電解コンデンサを与える粗大なモノマー油滴を含む乳濁分散液を好適に得ることができる。
支持電解質は、支持電解質の種類に依存して、重合液に対する飽和溶解度以下の量で且つ電解重合のために充分な電流が得られる濃度、好ましくは水1リットルに対して10ミリモル以上の濃度で使用される。支持電解質が濃すぎると、モノマーが油滴として分散しにくくなり、以下に示す第1分散工程とそれに続く第2分散工程を実施しても、透明分散液が得られにくくなる。なお、支持電解質は、この添加工程において添加することもできるが、これに限定されず、後述する第1分散工程と第2分散工程の間、又は、第2分散工程の後に添加することもできる。
水と、モノマーと、場合により支持電解質とを含み、水とモノマーとが相分離した相分離液は、次に超音波処理に付される。本発明の重合液では、モノマーを水に可溶化或いは乳化させるために、環境負荷を増大させ、経済的にも不利である界面活性剤を使用しない。
(2)分散工程
本発明における固体電解コンデンサの導電性ポリマー層は、モノマーが界面活性剤を含まない水に油滴として分散している重合液を用いた電解重合により形成される。
モノマー油滴が水に安定に分散している液を超音波照射により得るためには、相分離しているモノマーを数μm以下の直径を有する油滴にする必要があり、そのためには、機械的作用が強い数百nm〜数μmのキャビテーションを発生させることができる超音波を相分離液に照射する分散工程(以下の第1分散工程)を少なくとも実施する必要がある。
また、モノマーが水に油滴として分散した透明な分散液、すなわち、重合液中に存在するモノマー油滴のうち、全数の90%以上の油滴が250nm以下の直径を有している分散液を電解重合のために用いると、tanδとESRの両方が特に低下した固体電解コンデンサが得られるが、このような微小な油滴を超音波照射により得るためには、少なくとも同等サイズ、好適には百nm以下のサイズのキャビテーションを発生させる必要がある。しかしながら、百nm以下のサイズのキャビテーションは、相分離している状態のモノマーを均一に分散させるためにはあまりにも小さく機械的作用も小さいため、実質上モノマーを分散させる作用を有しない。そこで、以下の第1分散工程とこれに続く第2分散工程とを実施することにより、このような微小なモノマー油滴を含む透明な分散液を好適に得ることができる。
したがって、分散工程では、第1分散工程のみが実施されるか、或いは、第1分散工程とこれに続く第2分散工程が実施される。
(a)第1分散工程
第1分散工程では、添加工程で得られた相分離液に超音波処理を施こすことによりモノマーを油滴として分散させ、乳濁した乳濁分散液を得る。乳濁分散液中では、数μm以下の直径を有するモノマーの油滴が水中に高分散状態で分散しているものの、全数の10%を超える油滴が250nmを超える直径を有しており、油滴による光散乱により液全体が乳濁して見える。分散液に含まれている前記モノマーの油滴のうち、全数の98%以上の油滴が360nmより小さい直径を有している、ESRとtanδの両方が低下した固体電解コンデンサを与える乳濁分散液は、第1分散工程の実施により得ることができる。
この工程に使用される超音波発振器としては、超音波洗浄機用、細胞粉砕機用等として従来から知られている超音波発振器を特に限定なく使用することができる。この工程では、機械的作用が強い数百nm〜数μmのキャビテーションを発生させることができる超音波を相分離液に照射する。超音波の周波数は、15〜200kHzの範囲であるのが好ましく、20〜100kHzの範囲であるのが特に好ましい。超音波の出力は、4W/cm以上であるのが好ましい。
この工程における超音波照射時間は、乳濁分散液が得られる時間であれば厳密な制限はないが、2〜10分の範囲であるのが好ましい。照射時間が長いほど、モノマー油滴の凝集が阻害され、解乳化までの時間が長期化する傾向にあるが、超音波照射時間が10分以上では、油滴の凝集阻害効果が飽和する傾向が認められる。また、超音波照射時の相分離液の温度は、液の組成変化が起こらず、安定な乳濁分散液が得られれば特に限定がないが、一般的には10〜60℃の範囲である。
本発明では、第1分散工程は、1回、例えば、20kHzの周波数及び10W/cmの出力を有する超音波を使用して1回行っても良いが、第1分散工程を異なる周波数及び/又は出力の超音波を使用して複数回(例えば、20kHzの周波数及び10W/cmの出力を有する超音波に続いて50kHzの周波数及び20W/cmの出力を有する超音波を使用して)行うこともできる。
(b)第2分散工程
第1分散工程に続いて、得られた乳濁分散液に第1分散工程における超音波の周波数より高い周波数の超音波を照射し、モノマー油滴の平均サイズを減少させることにより、透明な分散液、すなわち、モノマーの油滴数の90%以上の油滴が250nm以下の直径を有する重合液を得ることができる。支持電解質を使用するが、相分離液に添加しなかった場合には、第2分散工程の前に乳濁分散液に添加することもできる。但し、この段階でボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を使用する場合には、p−ニトロフェノールと併用する。
この工程に使用される超音波発振器としては、超音波洗浄機用、細胞粉砕機用等として従来から知られている超音波発振器を特に限定なく使用することができる。この工程では、乳濁分散液中のモノマー油滴のサイズを250nm以下のサイズに減少させるために、機械的作用が弱いものの、少なくとも同等サイズ、好適には百nm以下のキャビテーションを発生させることができる超音波が使用される。超音波の周波数は、1〜4MHzの範囲が好ましく、超音波の出力は、5W/cm以上であるのが好ましい。超音波の周波数が4MHzを超えると、もはやキャビテーションが発生しない。
この工程における超音波照射時間は、透明分散液が得られる時間であれば厳密な制限はないが、2〜10分の範囲であるのが好ましい。照射時間が長いほど、モノマー油滴の凝集が阻害され、解乳化までの時間が長期化する傾向にあるが、超音波照射時間が10分以上では、油滴の凝集阻害効果が飽和する傾向が認められる。また、超音波照射時の乳濁分散液の温度は、液の組成変化が起こらず、安定な透明分散液が得られれば特に限定がないが、一般的には10〜60℃の範囲である。
第2分散工程は、1回、例えば1MHzの周波数及び20W/cmの出力を有する超音波を使用して1回行っても良いが、第2分散工程を異なる周波数及び/又は出力の超音波を使用して複数回(例えば、1MHzの周波数及び20W/cmの出力を有する超音波に続いて2MHzの周波数及び10W/cmの出力を有する超音波を使用して)行うこともでき、回数が増加するほど超音波の周波数を増加させる条件で複数回行うのが好ましい。第2分散工程を複数回繰り返すと、モノマー油滴がさらに細分化し、モノマーの油滴数の80%以上が100nm以下の直径を有する特に好適な重合液を容易に得ることができる。
また、重合液中のモノマーの含有量が増加するにつれて、超音波照射によって微小なモノマー油滴を含む重合液が得られにくくなり、上述した第1分散工程とこれに続く第2分散工程を実施しても、透明である分散液が得られにくくなる。しかしながら、重合液におけるモノマーの含有量を増加させた場合にも、上述した第1分散工程とこれに続く第2分散工程を実施すると、重合液中のモノマー油滴の安定性が増し、解乳化が阻害された安定な分散液が得られるため好ましい。特に、モノマーの含有量が、上記分散液に対する飽和溶解量に40〜80ミリモルを加えた量であると、上述した第1分散工程とこれに続く第2分散工程とを実施することにより、顕著に低下したESRを有する固体電解コンデンサを与える乳濁した重合液を得ることができる。
(3)重合工程
本発明では、上述の第1分散工程により得られた乳濁分散液、又は、第1分散工程に続く第2分散工程により得られた透明分散液或いは乳濁分散液を重合液として、電解重合を行う。上述した支持電解質を使用するが、添加工程及び分散工程において使用しなかった場合には、電解重合の前に透明分散液或いは乳濁分散液に支持電解質を添加することができる。この段階でボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を使用する場合には、p−ニトロフェノールと併用する必要はない。以下、第1の形態の固体電解コンデンサ及び第2の形態の固体電解コンデンサについて、それぞれ電解重合工程を説明する。
(a)第1の形態の固体電解コンデンサ
表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、この陽極上に設けられた導電性ポリマー層とを含む、本発明の第1の形態の固体電解コンデンサの製造では、陽極として、アルミニウム箔、タンタル箔、ニオブ箔、チタン箔のような弁金属箔、好適にはアルミニウム箔、に化学的或いは電気化学的な手法によりエッチング処理を施して拡面し、さらに、アジピン酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液等を用いて化成処理し、弁金属箔の表面に酸化皮膜を形成したものが使用される。
導電性ポリマー層は、陽極の酸化皮膜の漏れ電流を利用して酸化皮膜上に直接形成しても良く、また、予め酸化皮膜上に導電性膜を設け、その上に形成しても良い。例えば、陽極の酸化皮膜をハロゲンガス等の腐食性気体又は酸水溶液等の腐食性液体に接触させて酸化皮膜中に電気的な微小欠陥を形成した後、導電性ポリマー層を形成しても良く、陽極の酸化皮膜を硝酸マンガン水溶液に浸漬した後300〜400℃で熱分解して酸化皮膜表面にマンガン酸化物層を形成した後、導電性ポリマー層を形成しても良いが、酸化皮膜の安定性、導電性ポリマーの重合効率を考慮すると、酸化皮膜上に上記モノマーの化学重合膜を設け、化学重合膜上に導電性ポリマー層を形成するのが好ましい。
化学重合膜の形成は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトニトリル等の溶媒にモノマーと酸化剤の両方を溶解させた液を用意し、この液を刷毛塗り、滴下塗布、浸漬塗布、スプレー塗布等により陽極の酸化皮膜上に適用し、乾燥する方法、又は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトニトリル等の溶媒にモノマーを溶解させた液と、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトニトリル等の溶媒に酸化剤を溶解させた液とを用意し、これらの液を交互に刷毛塗り、滴下塗布、浸漬塗布、スプレー塗布等により陽極の酸化皮膜上に適用し、乾燥する方法により行うことができる。酸化剤としては、パラトルエンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)、アントラキノンスルホン酸鉄(III)等の三価の鉄塩、若しくは、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、などを使用することができ、単独の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。
次いで、酸化皮膜に導電性を付与した陽極を、対極と共に、上述の第1分散工程により得られた乳濁分散液、又は、第1分散工程に続く第2分散工程により得られた透明分散液或いは乳濁分散液に導入し、電解重合を行う。電解重合のための対極としては、白金板、ニッケル板等を用いることができる。
電解重合は、定電位法、定電流法、電位掃引法のいずれかの方法により行われる。定電位法による場合には、モノマーの種類に依存するが、飽和カロメル電極に対して1.0〜1.5Vの電位が好適であり、定電流法による場合には、モノマーの種類に依存するが、1〜10000μA/cmの電流値が好適であり、電位掃引法による場合には、モノマーの種類に依存するが、飽和カロメル電極に対して0〜1.5Vの範囲を5〜200mV/秒の速度で掃引するのが好適である。重合温度には厳密な制限がないが、一般的には10〜60℃の範囲である。重合時間は、一般的には1分〜10時間の範囲である。
陽極上に形成された導電性ポリマー層を、水、エタノール等で洗浄し、乾燥した後、カーボンペースト、銀ペースト等により導電性ポリマー層上に導電層(見かけの陰極)を形成し、第1の形態の固体電解コンデンサを得る。
(b)第2の形態の固体電解コンデンサ
表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、陽極と陰極との間に配置された導電性ポリマー層を保持したセパレータとを含む第2の形態の固体電解コンデンサの製造では、電解重合に先立って、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、上記陽極と上記陰極との間に配置されたセパレータとを含むコンデンサ素子を得る素子作成工程を実施する。
陽極としては、第1の形態の固体電解コンデンサの陽極と同様に、アルミニウム箔、タンタル箔、ニオブ箔、チタン箔のような弁金属箔、好適にはアルミニウム箔、に化学的或いは電気化学的な手法によりエッチング処理を施して拡面し、さらに、アジピン酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液等を用いて化成処理し、弁金属箔の表面に酸化皮膜を形成したものが使用される。陰極としては、アルミニウム箔、タンタル箔、ニオブ箔、チタン箔のような弁金属箔、好適にはアルミニウム箔、に化学的或いは電気化学的な手法によりエッチング処理を施して拡面したものが使用される。セパレータとしては、マニラ紙、クラフト紙、合成繊維紙、ガラスペーパー、ガラスペーパーとマニラ紙、クラフト紙との混抄紙等を使用することができる。
陽極及び陰極を、セパレータを介して巻回或いは積層し、コンデンサ素子を得る。次いで、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトニトリル等の溶媒にモノマーと酸化剤の両方を溶解させた液を用意し、この液にコンデンサ素子を浸漬し、加熱乾燥することにより、陽極表面及び陰極表面に化学重合膜を形成する。酸化剤としては、パラトルエンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)、アントラキノンスルホン酸鉄(III)等の三価の鉄塩、若しくは、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、などを使用することができ、単独の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。
この素子を水、エタノール等で洗浄し、乾燥した後、上述の第1分散工程により得られた乳濁分散液、又は、第1分散工程に続く第2分散工程により得られた透明分散液或いは乳濁分散液に導入し、電解重合を行う。
電解重合は、定電位法、定電流法、電位掃引法のいずれかの方法により行われる。定電位法による場合には、モノマーの種類に依存するが、飽和カロメル電極に対して1.0〜1.5Vの電位が好適であり、定電流法による場合には、モノマーの種類に依存するが、1〜10000μA/cmの電流値が好適であり、電位掃引法による場合には、モノマーの種類に依存するが、飽和カロメル電極に対して0〜1.5Vの範囲を5〜200mV/秒の速度で掃引するのが好適である。重合温度には厳密な制限がないが、一般的には10〜60℃の範囲である。重合時間は、一般的には1分〜10時間の範囲である。
電解重合後、セパレータに保持された導電性ポリマー層を水、エタノール等で洗浄し、乾燥することにより、第2の形態の固体電解コンデンサを得る。
本発明における第1の形態の固体電解コンデンサ及び第2の形態の固体電解コンデンサは、従来の界面活性剤を含む導電性ポリマー層を有する固体電解コンデンサと比較して、tanδとESRの両方が低下しているという優れた特性を有する。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されない。
(1)油滴の安定性
水に分散したモノマー油滴の安定性を調査するため、以下の実験を行った。
実験1
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.14g(濃度0.02M)添加し、EDOTが水と相分離した液を得た。この液に、第1分散工程として、周波数20kHz、出力44W/cmの超音波を5分間照射し、乳濁分散液を得た。この乳濁分散液に、第2分散工程として、さらに周波数1.6MHz、出力16W/cmの超音波を5分間照射し、第1の透明分散液を得、次いでさらに周波数2.4MHz、出力7W/cmの超音波を5分間照射し、第2の透明分散液を得た。
乳濁分散液、第1の透明分散液、及び、第2の透明分散液のそれぞれについて、25℃で、動的光散乱法によりEDOT油滴のサイズ(直径)を測定し、電気泳動光散乱法によりゼータ電位を測定し、さらにpHを測定した。結果を表1に示す。第1分散工程に続いて第2分散工程を実施すると、油滴の平均サイズが大幅に減少し、pHが低下し、ゼータ電位の絶対値が大きくなった。また、第2分散工程を周波数及び出力が異なる超音波を使用して2回行うと、油滴の平均サイズがさらに減少し、pHがさらに低下し、ゼータ電位の絶対値がさらに大きくなった。ゼータ電位の絶対値が増加すれば、油滴の反発力が強くなり、したがって油滴の安定性が高くなるが、表1の結果より、第1分散工程に続いて第2分散工程を実施することにより、油滴の凝集が阻害された安定な分散液が得られ、第2分散工程を2回実施することにより、油滴の凝集がさらに阻害されたさらに安定な分散液が得られたことがわかる。重合液の透明性が長時間維持されるのは、このゼータ電位の絶対値の増加に起因していると考えられる。
実験2
0.14gのEDOTに代えて0.144gの3,4−ジメトキシチオフェン(濃度0.02M)を使用し、実験1の手順を繰り返した。乳濁分散液、第1の透明分散液、及び、第2の透明分散液のそれぞれについて測定した油滴の平均サイズ、ゼータ電位、及びpHの値を表2に示す。表2から、3,4−ジメトキシチオフェンを水に分散させた分散液においても、EDOTを水に分散させた分散液の場合と同様に、第1分散工程に続いて第2分散工程を実施することにより、油滴の凝集が阻害された安定な分散液が得られ、第2分散工程を2回実施することにより、油滴の凝集がさらに阻害されたさらに安定な分散液が得られたことがわかる。
(2)モノマー油滴の分散
固体電解コンデンサの製造に先立って、水に飽和溶解量を超える量のEDOTを分散させ、分散液の透明性を評価した。なお、EDOTの水に対する飽和溶解量は、水1リットルに対して0.113g(濃度0.016M)である。
液A
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.14g(濃度0.02M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数20kHz、出力22.6W/cmの超音波を5分間照射したところ、水にEDOTが油滴として分散した乳濁分散液が得られた。この乳濁分散液に、周波数1.6MHz、出力22W/cmの超音波を5分間、次いで周波数2.4MHz、出力7.1W/cmの超音波を5分間照射したところ、透明分散液が得られた。この液は、常温で2日間放置しても、透明な状態を保っていた。
液B
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.14g(濃度0.02M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数20kHz、出力22.6W/cmの超音波を5分間照射したところ、水にEDOTが油滴として分散した乳濁分散液が得られた。この乳濁分散液に、周波数1.6MHz、出力22W/cmの超音波を5分間照射したところ、透明分散液が得られた。この液は、常温で2日間放置しても、透明な状態を保っていた。
液C
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.14g(濃度0.02M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数15kHz、出力22.6W/cmの超音波を5分間照射したところ、水にEDOTが油滴として分散した乳濁分散液が得られた。この乳濁分散液に、周波数2.4MHz、出力22W/cmの超音波を5分間照射したところ、透明分散液が得られた。この液は、常温で2日間放置しても、透明な状態を保っていた。
液D
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.14g(濃度0.02M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数200kHz、出力50W/cmの超音波を30分間照射したところ、水にEDOTが油滴として分散した乳濁分散液が得られた。この乳濁分散液に、周波数2.4MHz、出力22W/cmの超音波を5分間照射したところ、透明分散液が得られた。この液は、常温で2日間放置しても、透明な状態を保っていた。
液E
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.14g(濃度0.02M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数20kHz、出力22.6W/cmの超音波を5分間照射したところ、水にEDOTが油滴として分散した乳濁分散液が得られた。この乳濁分散液に、周波数1.0MHz、出力22W/cmの超音波を5分間照射したところ、透明分散液が得られた。この液は、常温で2日間放置しても、透明な状態を保っていた。
液F
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.14g(濃度0.02M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数20kHz、出力22.6W/cmの超音波を5分間照射したところ、水にEDOTが油滴として分散した乳濁分散液が得られた。この乳濁分散液に、周波数4.0MHz、出力22W/cmの超音波を5分間照射したところ、透明分散液が得られた。この液は、常温で2日間放置しても、透明な状態を保っていた。
液G
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.14g(濃度0.02M)添加し、EDOTが水相から相分離した液を得た。この液に、周波数20kHz、出力22.6W/cmの超音波を5分間照射したところ、水にEDOTが油滴として分散した乳濁分散液が得られた。
液H
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.14g(濃度0.02M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数10kHz、出力8W/cmの超音波を5分間照射したが、EDOTの油滴が水中に高分散状態で存在している乳濁分散液が得られず、EDOTの一部が容器底部に残留していた。この液に、周波数2.4MHz、出力22W/cmの超音波を5分間照射したが、分散液は乳濁していた。
液I
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.14g(濃度0.02M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数250kHz、出力50W/cmの超音波を30分間照射したが、EDOTの油滴が水中に高分散状態で存在している乳濁分散液が得られず、EDOTの一部が容器底部に残留していた。この液に、周波数2.4MHz、出力22W/cmの超音波を5分間照射したが、分散液は乳濁していた。
液J
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.14g(濃度0.02M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数20kHz、出力22.6W/cmの超音波を5分間照射したところ、水にEDOTが油滴として分散した乳濁分散液が得られた。この乳濁分散液に、周波数800kHz、出力22W/cmの超音波を5分間照射したが、分散液は乳濁していた。
液K
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.14g(濃度0.02M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数20kHz、出力22.6W/cmの超音波を5分間照射したところ、水にEDOTが油滴として分散した乳濁分散液が得られた。この乳濁分散液に、周波数5MHz、出力22W/cmの超音波を5分間照射したが、分散液は乳濁していた。
液L
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.42g(濃度0.06M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数20kHz、出力22.6W/cmの超音波を5分間照射したところ、水にEDOTが油滴として分散した乳濁分散液が得られた。この乳濁分散液に、周波数1.6MHz、出力22W/cmの超音波を5分間、次いで周波数2.4MHz、出力7.1W/cmの超音波を5分間照射したが、分散液は乳濁していた。
液M
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.56g(濃度0.08M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数20kHz、出力22.6W/cmの超音波を5分間照射したところ、水にEDOTが油滴として分散した乳濁分散液が得られた。この乳濁分散液に、周波数1.6MHz、出力22W/cmの超音波を5分間、次いで周波数2.4MHz、出力7.1W/cmの超音波を5分間照射したが、分散液は乳濁していた。
液N
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOTを0.70g(濃度0.10M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数20kHz、出力22.6W/cmの超音波を5分間照射したところ、水にEDOTが油滴として分散した乳濁分散液が得られた。この乳濁分散液に、周波数1.6MHz、出力22W/cmの超音波を5分間、次いで周波数2.4MHz、出力7.1W/cmの超音波を5分間照射したが、分散液は乳濁していた。
液A、液B、及び液Gについて、超音波分散直後に、25℃で動的光散乱法によりEDOT油滴のサイズを測定した。図1に、油滴サイズの分布を示す。ライン1は液Aの測定結果を、ライン2は液Bの測定結果を、ライン3は液Gの測定結果をそれぞれ示す。いずれの液においても、油滴サイズの分布が狭く、EDOT油滴の平均サイズは、液Aにおいては52.2nm、液Bにおいては76.8nm、液Gにおいては214nmであった。また、液Aでは、全数の99.9%の油滴が250nm以下の直径を有しており、全数の95.2%が100nm以下の直径を有していた。液Bでは、全数の99.6%の油滴が250nm以下の直径を有しており、全数の89.1%が100nm以下の直径を有していた。これに対し、液Gでは、250nm以下の直径を有する油滴は全数の78.2%に過ぎなかったが、全ての油滴が360nm未満の直径を有していた。また、0.14gのEDOTに代えて0.144gの3,4−ジメトキシチオフェンを使用して液Aを得るための手順を繰り返したが、液Aと同様に透明な分散液が得られ、この液は、常温で2日間放置しても、透明な状態を保っていた。
(3)皮膜耐圧150Vの陽極を備えた固体電解コンデンサ
実施例1
エッチングを施したアルミニウム箔を皮膜耐圧150Vに化成した後、投影面積1×1cmの箔に打ち抜き、陽極とした。この陽極を、20質量%のEDOTを含むエタノール溶液に浸漬した後、室温で乾燥した。次いで、酸化剤であるパラトルエンスルホン酸鉄(III)を20質量%の濃度で含むエタノール溶液に浸漬し、室温で乾燥後、高温処理した。この化学酸化重合工程を繰り返し、陽極の酸化皮膜上にPEDOTの化学重合膜を形成した。
上述した液Aにパラトルエンスルホン酸ナトリウムを濃度0.1Mになるように添加し、機械的に撹拌した液を重合液として用いた。事前に、パラトルエンスルホン酸ナトリウムが界面活性剤として作用しうるかを以下の方法により確認した。水に0.02MのEDOTと0.1Mのパラトルエンスルホン酸ナトリウムを添加し、機械的に撹拌した後、静置したところ、速やかに水とEDOTが相分離した。したがって、パラトルエンスルホン酸ナトリウムが界面活性剤として作用していないことが確認された。
上述の重合液を用い、PEDOTの化学重合膜を備えた陽極を作用極とし、面積4cm×4cmのPt箔を対極とし、銀−塩化銀電極を参照電極として、0.5mA/cmの電流条件下で90分間定電流電解重合を行った。重合後の膜をエタノールで洗浄し、水洗し、乾燥した後、アジピン酸アンモニウム水溶液中で再化成処理を行った。最後に、PEDOTの電解重合層の上に、グラファイトペーストを塗布し、乾燥し、さらに銀ペーストを塗布し、乾燥して、皮膜耐圧150Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。
得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及びtanδ、100kHzにおけるESRの値を測定した。結果を表3に示す。
実施例2
液Aを基礎とした重合液の代わりに、上述した液Bにパラトルエンスルホン酸ナトリウムを濃度0.1Mになるように添加し、機械的に撹拌した液を重合液として使用し、実施例1の手順を繰り返した。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及びtanδ、100kHzにおけるESRの値を測定した。結果を表3に示す。
実施例3
液Aを基礎とした重合液の代わりに、上述した液Gにパラトルエンスルホン酸ナトリウムを濃度0.1Mになるように添加し、機械的に撹拌した液を重合液として使用し、実施例1の手順を繰り返した。90分間の重合では、PEDOT層が得られなかったため、電解重合時間を180分に延長した。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及びtanδ、100kHzにおけるESRの値を測定した。結果を表1に示す。
比較例1
重合液として、濃度0.1Mのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを溶解した水溶液50mLにEDOTを0.14g(濃度0.02M)添加し、機械的に攪拌した液を調製した。EDOTはすべて水に溶解し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの界面活性効果が確認された。この重合液を使用して、実施例1の手順を繰り返した。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及びtanδ、100kHzにおけるESRの値を測定した。結果を表3に示す。
比較例2
重合液として、濃度0.1Mのボロジサリチル酸テトラブチルアンモニウムを溶解したアセトニトリル50mLにEDOTを0.14g(濃度0.02M)溶解させた重合液を使用し、実施例1の手順を繰り返した。90分間の重合では、PEDOT層が得られなかったため、電解重合時間を180分に延長したが、やはりPEDOT層が得られなかった。
比較例3
エッチングを施したアルミニウム箔を皮膜耐圧150Vに化成した後、投影面積1×1cmの箔に打ち抜き、陽極とした。この陽極を、20質量%のEDOTを含むエタノール溶液に浸漬した後、室温で乾燥した。次いで、酸化剤であるパラトルエンスルホン酸鉄(III)を20質量%の濃度で含むエタノール溶液に浸漬し、室温での乾燥の後、高温処理した。この化学酸化重合工程を繰り返し、陽極の酸化皮膜上にPEDOTの化学重合膜を形成した。
得られたPEDOTの化学重合膜を有する陽極について、アジピン酸アンモニウム水溶液中で再化成処理を行い、水洗し、乾燥した後、化学重合膜上に別途調製したPEDOTとポリスチレンスルホン酸とが分散したスラリーを塗布し、乾燥した。最後に、ポリスチレンスルホン酸とPEDOTとが分散したスラリーから得られた層の上にグラファイトペーストを塗布し、乾燥し、次いで銀ペーストを塗布し、乾燥することにより、皮膜耐圧150Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。
得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及びtanδ、100kHzにおけるESRの値を測定した。結果を表3に示す。
表3から明らかなように、比較例1のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む水性重合液から得られた電解重合層を有する固体電解コンデンサ、及び、比較例3のポリスチレンスルホン酸とPEDOTとが分散したスラリーから得られた層を有する固体電解コンデンサは、tanδとESRの一方が高い値を示すが、実施例1〜3の固体電解コンデンサは、tanδとESRの両方が低いという優れたコンデンサ特性を有する。また、実施例1〜3の比較から、重合液に含まれるEDOT油滴のサイズが小さい透明分散液を電解重合に用いた実施例1,2では、tanδとESRの両方の値がさらに低下した好適な固体電解コンデンサが得られることがわかる。特に、第2分散工程を2回行うことにより、透明分散液中のEDOTの油滴数の95.2%が100nm以下の直径を有するようにした液を電解重合に用いた実施例1の固体電解コンデンサにおいて、著しいESRの低下が認められる。
(4)皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサ
実施例4
エッチングを施したアルミニウム箔を皮膜耐圧3Vに化成した後、投影面積1×1cmに打ち抜き、陽極とした。この陽極を、20質量%のEDOTを含むエタノール溶液に浸漬した後、室温で乾燥した。次いで、酸化剤であるパラトルエンスルホン酸鉄(III)を20質量%の濃度で含むエタノール溶液に浸漬し、室温での10分間の乾燥の後、高温処理した。この化学酸化重合工程を繰り返し、陽極の酸化皮膜上にPEDOTの化学重合膜を形成した。得られたPEDOTの化学重合膜を有する陽極について、アジピン酸アンモニウム水溶液中で再化成処理を行った後、水洗し、乾燥した。
上述した液Aにボロジサリチル酸アンモニウムを0.1Mの濃度で添加し、機械的に撹拌した液を、重合液として用いた。この重合液を用い、PEDOTの化学重合層を備えた陽極を作用極とし、面積4cm×4cmのPt箔を対極とし、銀−塩化銀電極を参照電極として、0.5mA/cmの電流条件下で60分間定電流電解重合を行った。重合後の膜をエタノールで洗浄し、水洗した後、乾燥した。最後に、PEDOTの電解重合層の上に、グラファイトペーストを塗布し、乾燥し、次いで銀ペーストを塗布し、乾燥して、皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。
実施例5
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、この液にEDOTを0.210g(濃度0.03M)添加し、EDOTが水と相分離している液を得た。この液に、周波数20kHz、出力22.6W/cmの超音波を5分間照射したところ、水にEDOTが油滴として分散した乳濁分散液が得られた。この乳濁分散液に、周波数1.6MHz、出力22W/cmの超音波を5分間、次いで周波数2.4MHz、出力7.1W/cmの超音波を5分間照射したところ、透明分散液が得られた。次いで、この液に、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸ナトリウムを0.08Mの濃度で溶解させ、重合液を得た。
この重合液を用いて、実施例4で用いたPEDOTの化学重合膜を備えた陽極を作用極とし、面積4cm×4cmのPt箔を対極とし、銀−塩化銀電極を参照電極として、0.5mA/cmの電流条件下で60分間定電流電解重合を行った。重合後の膜をエタノールで洗浄し、水洗した後、乾燥した。最後に、PEDOTの電解重合層の上に、グラファイトペーストを塗布し、乾燥し、次いで銀ペーストを塗布し、乾燥して、皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。
実施例6
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸ナトリウムの代わりに、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸カリウムを添加し、実施例5の手順を繰り返した。
実施例7
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸ナトリウムの代わりに、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸アンモニウムを添加し、実施例5の手順を繰り返した。
実施例8
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸ナトリウムの代わりに、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1,3−ジスルホニルイミド酸カリウムを使用し、実施例5の手順を繰り返した。
実施例9
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸ナトリウムの代わりに、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1,3−ジスルホニルイミド酸ナトリウムを使用し、実施例5の手順を繰り返した。
実施例10
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸ナトリウムの代わりに、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1,3−ジスルホニルイミド酸アンモニウムを使用し、実施例5の手順を繰り返した。
実施例4〜10の重合液で使用した支持電解質については、事前に界面活性剤として作用しうるかを以下の方法により確認した。水に各実施例で使用した量のEDOTと支持電解質とを添加し、機械的に撹拌した後、静置した。その結果、速やかに水とEDOTが相分離し、これらの支持電解質が界面活性剤として作用していないことが確認された。
実施例11
液Aの代わりに液Lを使用し、実施例4の手順を繰り返した。
実施例12
液Aの代わりに液Mを使用し、実施例4の手順を繰り返した。
実施例13
液Aの代わりに液Nを使用し、実施例4の手順を繰り返した。
比較例4
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にEDOT0.14g(濃度0.02M)とスルホン酸塩基を有するアニオン系界面活性剤であるブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム1.08g(濃度0.08M)とを添加し、25℃で60分間攪拌して重合液を得た。この重合液を用いて、実施例4で用いたPEDOTの化学重合膜を備えた陽極を作用極とし、面積4cm×4cmのPt箔を対極とし、銀−塩化銀電極を参照電極として、0.5mA/cmの電流条件下で60分間定電流電解重合を行った。重合後の膜をエタノールで洗浄し、水洗した後、乾燥した。最後に、PEDOTの電解重合層の上に、グラファイトペーストを塗布し、乾燥し、次いで銀ペーストを塗布し、乾燥して、皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。
比較例5
実施例4で用いたPEDOTの化学重合膜を備えた陽極を使用し、この陽極の化学重合膜上に別途調製したPEDOTとポリスチレンスルホン酸とが分散したスラリーを塗布し、乾燥した。最後に、PEDOTとポリスチレンスルホン酸とが分散したスラリーから得られた層の上に、グラファイトペーストを塗布し、乾燥し、次いで銀ペーストを塗布し、乾燥することにより、皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。
実施例4〜13及び比較例4,5の固体電解コンデンサについて、120HzにおけるReal−容量出現率及びtanδ、100kHzにおけるESRの値を測定した。結果を表4に示す。なお、「Real−容量出現率」とは、PEDOTの化学重合膜及び電解重合層を形成した後の酸化皮膜の容量を基準として算出した容量出現率を意味する。
さらに、実施例4〜10及び比較例4,5の固体電解コンデンサについて、大気中、150℃で熱エージングを行い,600時間後に、120HzにおけるReal−容量出現率及び100kHzにおけるESRの変化を評価した。結果を表5に示す。
表4から明らかなように、本発明の固体電解コンデンサは、比較例4のブチルスルホン酸ナトリウムを含む水性重合液から得られた電解重合層を有する固体電解コンデンサ、及び、比較例5のポリスチレンスルホン酸とPEDOTとが分散したスラリーから得られた層を有する固体電解コンデンサと比較して、Real−容量出現率が大きく、tanδとESRの両方が低いという優れたコンデンサ特性を有しており、特にESRの低下が著しかった。また、高濃度のEDOTを含む乳濁分散液を電解重合に用いた実施例11〜13のコンデンサにおいて、EDOTの含有量が増加するにつれてESRが低下していることがわかる。
また、表5から明らかなように、比較例4,5の固体電解コンデンサのESRは、150℃の高温を600時間経験した後にはそれぞれ初期値の16倍及び22倍にも達したが、実施例4〜10の固体電解コンデンサのESRは、150℃の高温を600時間経験した後にも、初期値の1.6〜6.6倍に維持された。また、実施例4〜10のコンデンサにおけるReal−容量出現率の変化は、比較例4,5のコンデンサにおける変化と同等であるかより小さかった。
従来、水難溶性のEDOTの水中濃度を高めるために、スルホン酸基又はスルホン酸塩基を有するアニオン系界面活性剤が支持電解質として多用されており、また、これらの界面活性剤のアニオンがドープされたPEDOT層を備えた固体電解コンデンサが、ドーパントの嵩高さにより脱ドープが抑制されるため、熱耐久性に優れることが報告されている(特許文献5参照)。しかしながら、実施例4〜10の固体電解コンデンサは、比較例4のコンデンサ(ドーパント;ブチルナフタレンスルホン酸イオン)及び比較例5のコンデンサ(ドーパント;ポリスチレンスルホン酸イオン)より、さらに優れた耐熱性を有していた。特に、支持電解質としてビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸ナトリウムを含む重合液から得られた実施例5の固体電解コンデンサは、極めて優れた熱安定性を示した。
実施例4のコンデンサと比較例5のコンデンサの陽極の断面について、熱エージングを行う前にSEM写真を撮影した。図2は、実施例4のコンデンサについての写真であり、図3は、比較例5のコンデンサについての写真である。いずれもエッチングピット内部を撮影しており、倍率はいずれも20000倍である。
図3において認められる薄く不均一に積層したポリマー層は、PEDOTの化学重合膜であり、PEDOTとポリスチレンスルホン酸とが分散したスラリーはエッチングピット内に進入していない。これに対し、本発明の固体電解コンデンサにおいては、図2から把握されるように、電解重合に用いた透明分散液がエッチングピット内部に侵入し、ピット内部にPEDOTの微粒子が形成されている。この微粒子状PEDOTは、薄く不均一に積層した化学重合膜に比較して、安定で低抵抗であると考えられる。したがって、本発明の固体電解コンデンサの著しく低下したESRと熱安定性は、この微粒子状PEDOTによってもたらされていると考えられる。
本発明の固体電解コンデンサは、低いtanδとESRとを有するため、幅広い用途のコンデンサとして好適である。
1 20kHz+1.6MHz+2.4MHzで分散した液
2 20kHz+1.6MHzで分散した液
3 20kHzで分散した液

Claims (16)

  1. 界面活性剤を含まない水にπ−共役二重結合を有する少なくとも一種のモノマーを添加し、水と前記モノマーとが相分離している相分離液を得る添加工程、
    前記相分離液に超音波を照射することにより、水に前記モノマーが油滴として分散している分散液を得る分散工程、及び、
    前記分散液に、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極を導入し、電解重合を行うことにより、前記モノマーの重合により得られた導電性ポリマー層を前記陽極上に形成する重合工程
    を含むことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置されたセパレータとを含むコンデンサ素子を得る素子作成工程、
    界面活性剤を含まない水に、π−共役二重結合を有する少なくとも一種のモノマーを添加し、水と前記モノマーとが相分離している相分離液を得る添加工程、
    前記相分離液に超音波を照射することにより、水に前記モノマーが油滴として分散している分散液を得る分散工程、及び、
    前記分散液を前記コンデンサ素子に含浸させ、電解重合を行うことにより、前記モノマーの重合により得られた導電性ポリマー層を前記セパレータに保持させる重合工程
    を含むことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
  3. 少なくとも一種の支持電解質を前記重合工程の前に添加する、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  4. 前記支持電解質がボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物である、請求項3に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  5. 前記支持電解質が、式(I)又は式(II)
    (式中、mが1〜4の整数を意味し、nが1〜4の整数を意味し、oが2又は3の整数を意味する)で表わされるスルホニルイミド酸及びこれらの塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物である、請求項3に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  6. 前記分散工程において得られる分散液に含まれている前記モノマーの油滴のうち、全数の98%以上の油滴が360nmより小さい直径を有している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  7. 前記分散工程において得られる分散液に含まれている前記モノマーの油滴のうち、全数の90%以上の油滴が250nm以下の直径を有しており、前記分散液が透明である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  8. 前記分散工程が、
    前記相分離液に超音波を照射することにより前記モノマーを油滴として分散させ、乳濁した乳濁分散液を得る第1分散工程、及び、
    前記乳濁分散液に前記第1分散工程における超音波の周波数より高い周波数の超音波を照射することにより前記モノマーの油滴のサイズを減少させ、透明である透明分散液を得る第2分散工程、
    を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  9. 前記第1分散工程における超音波が15〜200kHzの範囲の周波数及び4W/cm以上の出力を有する、請求項8に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  10. 前記第2分散工程における超音波が1〜4MHzの範囲の周波数及び5W/cm以上の出力を有する、請求項8又は9に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  11. 前記第1分散工程における超音波照射時間が2〜10分の範囲であり、前記第2分散工程における超音波照射時間が2〜10分の範囲である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  12. 前記分散液における前記モノマーの含有量が、前記分散液に対する飽和溶解量に40〜80ミリモルを加えた量であり、
    前記分散工程が、
    前記相分離液に超音波を照射することにより前記モノマーを油滴として分散させ、乳濁した乳濁分散液を得る第1分散工程、及び、
    前記乳濁分散液に前記第1分散工程における超音波の周波数より高い周波数の超音波を照射し、前記モノマーの油滴のサイズを減少させた別の乳濁分散液を得る第2分散工程、
    を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  13. 前記重合工程の前に、前記陽極の酸化皮膜上に前記モノマーの化学重合により導電性膜を設ける、請求項1〜12のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  14. 前記モノマーが、3,4−エチレンジオキシチオフェンである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  15. 請求項1、3〜14のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法により得られた、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、該陽極上に設けられた導電性ポリマー層と、を含む固体電解コンデンサ。
  16. 請求項2〜14のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法により得られた、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置された導電性ポリマー層を保持したセパレータと、を含む固体電解コンデンサ。
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