JPWO2011070612A1 - コンタクトレンズパッケージの製造方法 - Google Patents

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Abstract

シリコーンハイドロゲル製のソフトコンタクトレンズにおいて、優れた形状安定性(寸法安定性)をもって市場に保存密封状態で提供することのできる、新規なコンタクトレンズパッケージおよびその製造方法を提供する。ソフトコンタクトレンズ12としてシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを用いると共に、リン酸を含んで構成した保存液14とシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ12とをコンタクトレンズパッケージ10の収容領域22内に封入して、高圧蒸気滅菌処理を行うようにした。

Description

本発明は、コンタクトレンズと保存液が密閉状態で収容されたコンタクトレンズパッケージおよびその製造方法に関する。また、コンタクトレンズ等のシリコーンハイドロゲル成型品を安定化する方法に関する。
近年、コンタクトレンズの材料として、シリコーンハイドロゲルが提案されている。シリコーンハイドロゲルは、従来のハイドロゲルに比して酸素透過性に優れていることから、ソフトコンタクトレンズへの適用が検討されている。
ところで、ソフトコンタクトレンズは、保存液に浸漬状態でコンタクトレンズパッケージ内に封入されて市場に出荷され、ユーザーへと供給されている。その際、コンタクトレンズパッケージがメーカーにより市場に提供されてから、ユーザーが装用する迄の期間は、数週間〜数年もの長期に及ぶ。そのような長期間に亘って、ソフトコンタクトレンズは、物性や形状を安定して保たれる必要がある。特に、製品規格を満足するというだけでなく、形状の変化はユーザーの装用感や光学特性の変化をもたらすことから、高精度に保たれる必要がある。そこで、ソフトコンタクトレンズの保存方法として、例えば、特許文献1(特表2004−517163号公報)や特許文献2(特表2000−513665号公報)に記載の方法等が考えられている。
ところが、シリコーンハイドロゲルのソフトコンタクトレンズについて、本発明者が確認したところ、レンズ直径(DIA)等の寸法精度を充分に確保することが難しいことが判った。この寸法精度の問題に対して、当初は成形精度の向上に努めたが、それでは満足できる結果を得ることが困難であった。そこで、本発明者が更に検討したところ、シリコーンハイドロゲルのソフトコンタクトレンズにおいて特有の問題であり、コンタクトレンズを製造後に密封保存した状態下で、レンズ形状(寸法)が変化してしまう事実を新たに知見した。
特表2004−517163号公報 特表2000−513665号公報
本発明は、上述の事情を背景として為されたものであり、シリコーンハイドロゲル製のソフトコンタクトレンズにおいて、優れた形状安定性(寸法安定性)をもって市場に保存密封状態で提供することのできる、新規なコンタクトレンズパッケージおよびその製造方法を提供することにある。
さらに、本発明は、コンタクトレンズ等のシリコーンハイドロゲル成型品を安定化させ、優れた形状安定性を備えさせ得る新規な方法を提供することをも、目的とする。
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
すなわち、コンタクトレンズパッケージの製造方法に関する本発明の第一の態様は、ソフトコンタクトレンズと保存液を収容領域内に密封したコンタクトレンズパッケージの製造方法であって、前記ソフトコンタクトレンズとしてシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを用いると共に、前記保存液をリン酸を含んで構成する一方、該リン酸を含んで構成された該保存液と共に該シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを前記収容領域内に封入して高圧蒸気滅菌処理を行うことを、特徴とする。
本態様に従いコンタクトレンズパッケージを製造すれば、高圧蒸気滅菌処理(オートクレーブ)後の保存期間が長期に亘る場合であっても、内部に封入されたコンタクトレンズの直径(DIA)等の増大等を防ぎ、コンタクトレンズの形状を一定に保つことができる。その結果、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズにおける高圧蒸気滅菌後のコンタクトレンズの経時的形状変化や寸法変化に起因する、光学特性の変化や装用感の低下等の現象を抑えることができるのである。
リン酸を含む保存液にシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを浸漬した状態で高圧蒸気滅菌処理を行うことで、その後のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの形状安定性(寸法安定性)が何故良好となるのかは未だ明らかではないが、従来は高圧蒸気滅菌処理後に徐々に進行していたシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの形状変化(例えば、拡径)が、リン酸存在下での高圧蒸気滅菌処理によって、極めて短時間に惹起されることに起因するものと推測される。これにより、従来、高圧蒸気滅菌処理後に発生していた出荷後のコンタクトレンズの形状変化を防ぐことができ、市場に提供されたコンタクトレンズパッケージがその後ユーザーに使用されるまでに長期間が経過した場合でも、コンタクトレンズの出荷当時の形状を安定して保持することが可能となったのである。
また、コンタクトレンズは、一般に、各ユーザーの視力や角膜形状のばらつき等に適切に合致したレンズを提供するために、レンズ直径(DIA)の他にも、度数(パワー)やベースカーブの形状(BC)等、様々なレンズ寸法等の規格が厳密に定められている。本発明に従えば、出荷後のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの形状及び寸法が長期間良好に保たれることにより、出荷後の形状変化に伴ってレンズの度数や各寸法値がコンタクトレンズの製品規格に定められた許容範囲の数値から逸脱してしまうことを防止できる。具体的には、例えば、レンズ直径(DIA)が14.00mmのレンズ規格の場合、許容される誤差は±0.20mmのごく狭い範囲であるが、本発明方法に従い製造されたコンタクトレンズパッケージでは、保存開始後9ヶ月間が経過してもレンズ直径(DIA)は約±0.05mm程度しか変動しないため、充分にこの規格を満たすことができる。
コンタクトレンズパッケージの製造方法に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るコンタクトレンズパッケージの製造方法において、前記保存液において前記リン酸の濃度が0.01〜1.0重量%であることを、特徴とする。
本態様によれば、高圧蒸気滅菌処理後におけるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの形状安定化作用を有効に発揮させることができる。なお、リン酸の濃度が0.01重量%よりも低いとリン酸による高圧蒸気滅菌処理後の形状安定化が充分に達成され難い。一方、リン酸の濃度が1.0重量%よりも高いと、ユーザーがコンタクトレンズを装用する際に眼に刺激等を感じるおそれがある。
コンタクトレンズパッケージの製造方法に関する本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係るコンタクトレンズパッケージの製造方法において、前記保存液のpHが7.2〜8であることを、特徴とする。
本態様に従う製造方法によれば、リン酸の形状安定化効果を充分に発揮させることができ、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを安定的に長期間保存できる。また、高圧蒸気滅菌処理によるシリコーンハイドロゲルの劣化も抑制できることから、コンタクトレンズの強度も良好に維持できる。
また、コンタクトレンズパッケージに関する本発明の第一の態様は、ソフトコンタクトレンズと保存液を収容領域内に密封したコンタクトレンズパッケージであって、前記ソフトコンタクトレンズとしてシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを用いると共に、前記保存液がリン酸を含んで構成されている一方、該リン酸を含んで構成された該保存液と共に該シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが前記収容領域内に封入されて高圧蒸気滅菌処理されていると共にそのまま密封されていることを、特徴とする。
本態様によれば、出荷後における保存期間が長期に及んでも、コンタクトレンズパッケージ内のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの形状を安定して保つことができる。
コンタクトレンズパッケージに関する本発明の二の態様は、前記保存液の液量が0.15〜4mLであることを、特徴とする。
本態様によれば、収容領域内に充分な保存液の液量が確保されていることにより、リン酸による形状安定化効果を有効に発揮させることができる。
また、シリコーンハイドロゲル成型品を安定化させる方法に関する本発明の第一の態様は、パッケージ内に保存液と共に密封したシリコーンハイドロゲル成型品を安定化させる方法であって、前記保存液をリン酸を含んで構成する一方、該リン酸を含んで構成された該保存液と共に該シリコーンハイドロゲル成型品を前記パッケージ内に封入して高圧蒸気滅菌処理を行うことを、特徴とする。
本態様によれば、シリコーンハイドロゲルからなる成型品を長期間安定的に保存することが可能である。即ち、シリコーンハイドロゲル成型品の寸法変化や形状変化を防ぐことができると共に、強度の低下等も抑制できる。
コンタクトレンズパッケージの製造方法に関する本発明によれば、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズをリン酸を含む保存液に浸漬した状態で高圧蒸気滅菌処理を行うことにより、高圧蒸気滅菌処理後におけるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの形状やレンズ寸法の変化を防ぐことができる。その結果、出荷後、コンタクトレンズがユーザーに使用されるまでに長時間が経過していても、コンタクトレンズが出荷当時の形状を安定して保持することができ、良好な装用性や視認性を発揮できるのである。
また、コンタクトレンズパッケージに関する本発明によれば、コンタクトパッケージ内のコンタクトレンズの形状が長期間に亘って一定に保つことができ、ユーザーに初期の形状が高度に維持されたコンタクトレンズを提供することが可能である。
さらに、シリコーンハイドロゲル成型品を安定化させる方法に関する本発明によれば、パッケージ内に収容されたシリコーンハイドロゲル成型品を安定的に保存できる。
コンタクトレンズパッケージの製造方法に関する本発明の一実施形態に従って製造されたコンタクトレンズパッケージの一具体例を示す説明図。 コンタクトレンズパッケージの製造方法に関する本発明の一実施形態の比較例の保存結果を示すグラフ。 コンタクトレンズパッケージの製造方法に関する本発明の一実施形態の実施例の保存結果を示すグラフ。 コンタクトレンズパッケージの製造方法に関する本発明の一実施形態の別の比較例の保存結果を示すグラフ。 コンタクトレンズパッケージの製造方法に関する本発明の一実施形態における高圧蒸気滅菌処理の影響を示したグラフ。
以下に、コンタクトレンズパッケージとその製造方法、及び、シリコーンハイドロゲル成型品を安定化する方法に関する本発明を更に具体的に明らかにするために、これらの発明の一実施形態について、説明する。
先ず、図1には、コンタクトレンズパッケージの製造方法に関する本発明の一実施形態に従って製造されるコンタクトレンズパッケージ10の一例が示されている。即ち、本実施形態では、パッケージ本体11にコンタクトレンズ12と保存液14を収容して、このパッケージ本体11をパッケージ蓋体15で密封封止した後、これに高圧蒸気滅菌処理を施すことによって、コンタクトレンズパッケージ10が製造されて、市場に出荷されるようになっている。
より詳細には、本実施形態におけるコンタクトレンズ12は、含水性のソフトコンタクトレンズであって、シリコーンハイドロゲルからなるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズである。
なお、このコンタクトレンズ12の具体的な材質としては、公知のシリコーンハイドロゲルが何れも採用され得、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、親水性モノマーと共重合されたシリコーンモノマーを含むポリマー等が採用され得る。また、このようなシリコーンハイドロゲルを作製するための材料としては、アクアフィルコンA(acquafilcon A),アスモフィルコンA(asmofilcon A),バラフィルコンA(balafilcon A),コムフィルコンA(comfilcon A),エンフィルコンA(enfilcon A),ガリフィルコンA(galyfilcon A),レネフィルコンA(lenefilcon A),ロトラフィルコンA(lotorafilco A),ロトラフィルコンB(lotorafilco B),セノフィルコンA(senofilcon A)等が挙げられる。
シリコーンハイドロゲルに含まれ得る代表的なシリコーンモノマーとしては、公知ものが特に限定されることなく採用され得るが、具体的な例としては、例えば3−メタアクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、モノメタアクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)、ポリジメチルシロキサン、3−メタアクリルオキシプロピル−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン等が挙げられる。
シリコーンハイドロゲルに含まれ得る親水性モノマーは、公知ものが特に限定されることなく採用され得るが、具体的な例としては、例えばメタアクリル酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸、2−ヒドキシエチルメタアクリレート、2−ヒドキシエチルアクリレート等のアクリル置換されたアルコール、N−ビニルピロリドン等のビニルラクタム、メタアクリルアミドとN,N−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド等が挙げられる。
また、このようなシリコーンハイドロゲルを用いてコンタクトレンズ12を製造する際には、後述するように、リン酸を含む保存液14中での高圧蒸気滅菌処理に伴って起きる寸法及び形状の変化分を見越した設計が為されていることが望ましい。これにより、高圧蒸気滅菌処理後の出荷時点におけるコンタクトレンズ12のレンズ直径(DIA)等の各寸法値が最適な状態とされて、その出荷時の状態を維持したコンタクトレンズ12をユーザーに提供することができる。
コンタクトレンズ12を収容するコンタクトレンズパッケージ10としては、公知のコンタクトレンズパッケージが何れも採用可能である。コンタクトレンズパッケージ10は、例えば図1に示されているように、略半球殻形状の収容凹部20を備えた合成樹脂製のパッケージ本体11に対して、フィルム状のパッケージ蓋体15が重ね合わされて収容凹部20を覆蓋した構造とされる。パッケージ本体11の収容凹部20によって収容領域22が形成されており、この収容領域22にコンタクトレンズ12が収容されると共に、保存液14が注入されて、コンタクトレンズ12が保存液14への浸漬状態で保存されるようになっている。
そして、コンタクトレンズ12を収容した収容領域22に所定量の保存液14を保留させた状態で、パッケージ蓋体15を重ねて、収容領域22の開口周縁部において、パッケージ蓋体15をパッケージ本体11に対して接着や溶着等で剥離可能に固着する。これにより、収容領域22を密封して、そこにコンタクトレンズ12と保存液14を封止する。好適には、図1に示されているように、パッケージ本体11において、収容凹部20の開口周縁部からフランジ状に外方に広がるプレート形状の把持板部26が一体形成される。そして、この把持板部26まで覆うように被せられたパッケージ蓋体15の端縁部がパッケージ本体11の把持板部26と非接着とされることで摘み部28が形成される。これにより、ユーザーが摘み部28を始点としてパッケージ蓋体15をパッケージ本体11から剥離して、コンタクトレンズパッケージ10を容易に開封できるようになっている。
なお、採用するパッケージ本体11は、収容するコンタクトレンズ12の大きさや形状および保存液14の量等に応じて、適当な形状および材質のものが採用される。また、採用するパッケージ蓋体15としても、パッケージ本体11の材質や固着手段等に応じて、適当な構造および材質のものが採用される。具体的には、パッケージ本体11としてポリプロピレン等の合成樹脂材料からなるものが好適に採用されると共に、パッケージ蓋体15としてアルミニウムとポリプロピレン等からなる積層フィルムからなるものが好適に採用される。なお、パッケージ本体11およびパッケージ蓋体15は、何れも、後述する高圧蒸気滅菌処理に耐え得るものが、その条件に応じて採用される。
そして、本実施形態では、保存液14がリン酸を含んで構成される。具体的には、保存液14は、溶媒としての精製水に対して、好ましくは0.01〜1.0重量%、さらに好ましくは0.2〜0.4重量%のリン酸が含まれていることが望ましい。蓋し、リン酸の濃度が0.01重量%以下では、目的とする高圧蒸気滅菌処理後の形状安定性が充分に発揮できず、また、1.0重量%以上では、コンタクトレンズを装用した際にユーザーの眼への影響が問題となるおそれがある。そして、このように保存液14にリン酸が含まれることにより、後述する高圧蒸気滅菌処理後において、コンタクトレンズ12の形状変化や寸法変化を防ぎ、コンタクトレンズ12の安定性を向上させることができるのである。
なお、リン酸は、より具体的には、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・2水和物、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム・12水和物、リン酸三ナトリウム、リン酸三ナトリウム・12水和物、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム・10水和物、ピロリン酸二水素二ナトリウム、リン酸二カリウム・3水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸一カルシウム・水和物、リン酸二カルシウム・2水和物等の形態で保存液14に添加することができる。なお、上述の望ましいリン酸濃度の数値は、これらの物質の水和水の重量を除いた重量%濃度を示したものである。即ち、本実施形態における保存液14に含まれる好ましいリン酸の濃度の計算方法としては、保存液14に配合されるこれらの物質の重量のうち、各物質中に含まれる正味の化合物濃度が好ましくは0.01〜1.0重量%、さらに好ましくは0.2〜0.4重量%とされる。
なお、保存液14の溶媒としての水は、純水の他、精製水や蒸留水、濾過水等も採用可能である。
また、保存液14にリン酸の他に添加される物質としては、リン酸の高圧蒸気滅菌処理後の形状安定化効果を損なわない限りにおいて、公知のコンタクトレンズ保存液に用いられる組成配合が任意に採用され得る。具体的には、キレート剤、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤(保存剤)、湿潤剤等が任意に保存液14に配合され得る。これらの各添加剤は各1種類の物質のみを採用してもよいし、2種以上を組み合わせて採用してもよい。
なお、本発明において必須とされるリン酸、及びリン酸を含む物質は、本発明が目的とする高圧蒸気滅菌処理後の形状安定化作用の他に、例えばpH調整剤や緩衝剤等としても作用し得る。それ故、保存液14のpH調整剤や緩衝剤等をリン酸及びリン酸を含む物質だけで構成してもよいし、その他のpH調整剤や緩衝剤等を組み合わせて加えてもよい。
キレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその水和物、エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム(EDTA・2Na)及びその水和物、エチレンジアミン四酢酸・3ナトリウム(EDTA・3Na)及びその水和物、エチレンジアミン四酢酸・4ナトリウム(EDTA・4Na)及びその水和物、フィチン酸、クエン酸等が挙げられる。
等張化剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば塩酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
緩衝剤としては、例えばホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパン(AMP)緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)緩衝液、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンエチレンジアミン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン水素添加ステロール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリソルベート等が挙げられる。
増粘剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド等や、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体や、スターチ誘導体、合成有機高分子化合物等が挙げられる。
防腐剤(保存剤)としては、例えばソルビン酸、ソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられる。
湿潤剤としては、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カチオンセルロースポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。
保存液14のpHは、好ましくは6.0〜8.0の範囲内に調整され、更に好ましくは、pHは7.2〜8.0の範囲に調整される。pHがこのような好適な範囲であれば、高圧蒸気滅菌処理によるシリコーンハイドロゲルの劣化を防ぎ、コンタクトレンズの強度を充分に維持することができる。一方、pHが6.0を下回る、又は、8.0を上回ると、コンタクトレンズ12使用時においてユーザーの眼への影響等が懸念されるほか、コンタクトレンズ12等の物性等への影響も懸念される。なお、保存液14のpHは、リン酸及びその他の緩衝剤の作用により、後述する高圧蒸気滅菌処理後においてもこのような好適な範囲に保たれることが望ましい。これにより、リン酸存在下での高圧蒸気滅菌処理後におけるコンタクトレンズ12の形状安定化作用が有効に発揮される。
保存液14の浸透圧は、175〜455mOsmの範囲内に調整されており、対生理食塩水浸透圧比では約0.60〜1.55に調整されていることが望ましい。浸透圧がこのような範囲を超えると、ユーザーの眼に刺激等の影響が生じたり、コンタクトレンズ12等の変形等の不具合が生じるおそれがある。
保存液14は、コンタクトレンズパッケージ10の収容領域22内に0.15〜4mLが封入されることが望ましい。これにより、後述する高圧蒸気滅菌処理及びその後の保存期間において、リン酸による安定化効果を有効に発揮させることができる。
コンタクトレンズパッケージ10の製造は、次のような工程で行われる。先ず、図1に示されるように、所定量の保存液14とコンタクトレンズ12がパッケージ本体11の収容領域22に収容される。そして、収容領域22の開口部に対してパッケージ蓋体15が封止されることにより、パッケージ本体11が密封されて、コンタクトレンズパッケージ10が作製される。即ち、コンタクトレンズ12はリン酸を含む保存液14に浸漬された状態でコンタクトレンズパッケージ10の収容領域22に封入される。
さらに、コンタクトレンズパッケージ10に対して、高圧蒸気滅菌処理が施される。高圧蒸気滅菌処理の具体的な条件は、コンタクトレンズパッケージ10を充分に無菌化でき、且つ、コンタクトレンズパッケージ10やコンタクトレンズ12、保存液14等の物性やリン酸の形状安定化効果に望ましくない影響を与えない範囲であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは、115〜130℃、2.0〜2.8気圧で15〜60分とされる。
そして、本実施形態では、高圧蒸気滅菌処理時において、シリコーンハイドロゲルからなるコンタクトレンズ12が浸漬された保存液14にリン酸が含まれていることにより、高圧蒸気滅菌処理後におけるコンタクトレンズ12の形状変化を抑制することができる。このような効果が何故現れるのかは未だ明らかではないが、一つの推測としては、通常、時間経過と共に大きく進行するシリコーンハイドロゲルからなるコンタクトレンズ12の形状変化(拡径等)が、このリン酸存在下での高圧蒸気滅菌処理によって短時間で一気に進行し、その結果、高圧蒸気滅菌処理後は形状変化がそれ以上進行しなくなるのではないかと考えられる。
なお、このようなリン酸存在下での高圧蒸気滅菌処理では、略一定幅のレンズ直径(DIA)の増大など、コンタクトレンズ12に略一定の形状変化が引き起こされることが分かっている。そのため、コンタクトレンズ12の設計にあたっては、リン酸存在下での高圧蒸気滅菌処理による拡径等の形状変化を予め見越しておくことが望ましい。高圧蒸気滅菌処理による形状変化が完了した状態を想定して各寸法を設計しておくことにより、高圧蒸気滅菌処理後に所期の寸法のコンタクトレンズ12が完成して出荷されることとなる。そして、本実施形態に従えば、出荷後においてもコンタクトレンズ12がこの長期間出荷当時の形状を極めてよく保持した状態に維持されるのである。
高圧蒸気滅菌処理が終了すると、完成したコンタクトレンズパッケージ10は密封状態を保って市場に向けて出荷され、販売店等を介してユーザーに提供されることとなる。
ここにおいて、本実施形態では、コンタクトレンズパッケージ10に封入されたコンタクトレンズ12が、リン酸を含む保存液14に浸漬されて高圧蒸気滅菌処理されていることにより、ユーザーによって使用されるまで、長期に亘ってコンタクトレンズ12の形状変化を抑えることができ、出荷当時の形状を良好に維持できる。なお、コンタクトレンズパッケージ10が製造されてからユーザーへと提供されて実際に使用されるまでには、場合によっては数ヶ月から数年以上が経過する場合もある。しかし、本実施形態に従えば、保存期間が数ヶ月から数年以上に及ぶ場合であっても、コンタクトレンズ12の形状変化や寸法変化を抑えることができ、出荷当時の形状を維持できることから、ユーザーはコンタクトレンズ12を製造者らが意図した設計に基づく良好な状態で装用することができるのである。
すなわち、従来の技術により製造されたコンタクトレンズパッケージでは、シリコーンハイドロゲルからなるソフトコンタクトレンズであるコンタクトレンズが製造後に形状変化を起こすことにより、レンズの寸法精度を充分に確保することが難しいことが本発明者らの研究によって判明している。より具体的には、例えば、製造後の時間経過に伴ってレンズ直径(DIA)が徐々に増大する(拡径する)ことが解明されており、このようなDIAの増大は、装用感の低下等の問題を引き起こすおそれがあることが分かっている。
しかし、本実施形態に従い製造されたコンタクトレンズパッケージ10では、コンタクトレンズ12の形状変化を長期間有効に抑えることが可能であり、DIA等の製造規格を充分に維持した状態でコンタクトレンズ12を保存できるのである。具体的には、例えば、保存開始後15ヶ月間が経過してもDIAの変動幅を約±0.05mmのみに抑えることができる。そして、このようにレンズの形状変化(寸法変化)を有効に抑えられる結果、コンタクトレンズ12のDIA増大に伴う装用感の低下や、度数(パワー)のずれによる視力調整能力の低下等を防止することができるのである。
しかも、このような形状安定化効果が、リン酸という人体にとって極めて安全性の高い物質によってもたらされていることから、コンタクトレンズ12の使用時における眼への影響も防がれている。
また、上述の如き方法に従えば、シリコーンハイドロゲルからなるコンタクトレンズ12以外にも、シリコーンハイドロゲルからなるその他の成型品、又は、シリコーンハイドロゲルを含んで構成された成型品等の形状等を安定化させることもできる。即ち、シリコーンハイドロゲル成型品を安定化させる方法に関する本発明の一実施形態としては、上述のコンタクトレンズパッケージの製造方法に関する本発明の実施形態におけるコンタクトレンズ12に換えて、シリコーンハイドロゲル成型品として、例えばシリコーンハイドロゲルを用いて製造された眼内レンズ、人工軟骨、カテーテル等を、上述の実施形態と同様のリン酸を含む保存液14中に浸漬させて、図示しないパッケージ内に密封封入し、上述の実施形態と同様の条件で高圧蒸気滅菌処理を施すことで、シリコーンハイドロゲルを安定化させることができる。即ち、本実施形態に従えば、パッケージに封入されたシリコーンハイドロゲルにおける形状変化や寸法変化、強度の劣化等を長期間防止できるため、シリコーンハイドロゲル成型品を安定して保管することができるのである。なお、保存液14の具体的な組成は、リン酸の安定化作用を損なわない限りにおいて特に限定されるものではなく、安定化させる対象の成型品の物性や使用用途等に合わせて、適宜変更され得る。
以上、本発明の好適な実施態様を具体的に例示しつつ、本発明について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、上述の具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
以下に、コンタクトレンズパッケージの製造方法及びコンタクトレンズパッケージに関する本発明について、その技術的意義を一層明確にするため行った試験結果を示す。
先ず、リン酸を含む保存液と、リン酸を含まない保存液とを用いて、シリコーンハイドロゲル製のソフトコンタクトレンズ、及び、ハイドロゲル製のコンタクトレンズの保存試験を行った結果を以下に示す。
本試験では、条件を異ならせたA群、B群、C群の3つのグループについて試験を行った。即ち、リン酸を含まない保存液Aとシリコーンハイドロゲル製のコンタクトレンズを用いたA群(比較例1)と、リン酸を含む保存液Bとシリコーンハイドロゲル製のコンタクトレンズを用いたB群(実施例1)と、リン酸を含まない保存液Aとハイドロゲル製のコンタクトレンズとを用いたC群(比較例2)である。また、A群、B群、C群のそれぞれで、度数を異ならせた2以上の規格のレンズを用意し、各規格でそれぞれ6枚ずつ、又は、15枚ずつを試験した。A群、B群、C群それぞれのコンタクトレンズの詳細と、使用した保存液とを併せて以下の表1に示す。なお、表1のレンズ規格におけるBCはベースカーブ、Pは度数(パワー)、DIAはレンズ直径を示す。また、BC、DIAの単位はmmであり、Pの単位はディオプタ(D)である。
Figure 2011070612
使用した保存液の詳細は、以下の表2に示すとおりである。即ち、使用した保存液は、リン酸を含まない保存液Aと、リン酸を含む保存液Bの2種類であって、保存液Bにおいては、リン酸水素二ナトリウム・12水和物が0.6重量%と、リン酸二水素ナトリウム・2水和物0.04重量%が配合されている。その結果、水和水の重量を除くと、保存液Bには合計で0.27重量%のリン酸成分が含まれている。
Figure 2011070612
上記のコンタクトレンズ及び保存液を用いて、以下の手順で保存試験を行った。先ず、ドライ状態の各コンタクトレンズを必要枚数用意して、各保存液に12時間以上浸し、水和させた。次に、各コンタクトレンズを4mLの保存液と共にバイアル瓶に封入した後、高圧蒸気滅菌器(三洋電機株式会社製、MLS−3020)にて120℃、20分間の高圧蒸気滅菌処理を施した。この高圧蒸気滅菌処理後のバイアル瓶を、A群及びB群は45℃、C群は40℃にて、それぞれ9ヶ月〜24ヶ月保存した。
そして、高圧蒸気滅菌処理後の各時点において、コンタクトレンズと保存液を20℃に状態調節し、倍率を10倍とした投影機(株式会社ニコン製、V12A)を用いてコンタクトレンズの直径を測定した。なお、この直径の測定方法は「ISO18369-3(2006):Ophthalmic optics-Contact lenses Part 3:Measurement methods, 4
Methods of measurement for contact lens, 4.3 Diameters and widths 」に記載の方法に基づく一般的な測定方法である。
上記の方法により測定されたA群、B群、C群それぞれにおけるレンズ直径の値を、以下の表3〜5に示す。また、高圧蒸気滅菌処理後の初期値からの変化の様子を図2〜4のグラフに示す。なお、各表及びグラフの数値は、各レンズ度数(P)ごとの6枚又は15枚の平均値である。
Figure 2011070612
Figure 2011070612
Figure 2011070612
図2及び表3に示す結果からも明らかなように、リン酸を含まない保存液Aを用いたA群(比較例1)では、保存期間中、時間の経過と共にレンズ直径が増大している。このようなレンズの拡径は、度数(P)がプラス(+7.00D)、マイナス(−3.00D)何れの規格のレンズでも同様に見られ、高圧蒸気滅菌処理から15ヶ月後には、それぞれ約0.12mmずつレンズ直径が大きくなっている。
一方、図3及び表4に示す結果からも明らかなように、リン酸を含む保存液Bを用いたB群(実施例1)では、高圧蒸気滅菌処理後、9ヶ月が経過してもレンズ直径の増大はほとんど見られない。このような形状安定性は、度数(P)がプラス(+6.00D)、マイナス(−3.00D,−8.00D)何れのレンズでも同様に現れており、高圧蒸気滅菌処理から9ヶ月間で、何れも最大0.04mm程度しかレンズ直径が変動していない。
なお、参考として図4及び表5に示した結果からも明らかなように、ハイドロゲルコンタクトレンズを用いたC群(比較例2)では、リン酸を含まない保存液Aであっても、保存期間中のレンズ直径の増大はほとんど発生しない。これは、ハイドロゲルで構成されたソフトコンタクトレンズは元々シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズよりも安定性が高いためである。この結果をシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを用いたA群の結果と比較すれば、長期保存におけるレンズの拡径等の形状変化の問題が、シリコーンハイドロゲルに特有の現象であることが容易に理解できる。
以上、これらA群、B群、C群の結果の比較すれば、通常のハイドロゲルソフトコンタクトレンズよりも安定性の低いシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズで問題となる、レンズ直径(DIA)の増大等の形状変化という特有の現象を、本実施形態に従いリン酸を含む保存液を用いて高圧蒸気滅菌処理を行うことによって、有効に抑制できることがわかる。
なお、コンタクトレンズの製品規格においては、レンズ直径(DIA)についての基準値(本実施例では何れも14.00mm)からの誤差の許容範囲は±0.20mmのみとされている。リン酸を含まない保存液Aを用いたA群では、15ヶ月間で初期値から最大0.12mmもの増加が生じており、長期の保存において製品規格を維持することが難しいことが分かる。一方、リン酸を含む保存液Bを用いたB群では、初期値からの変動幅は最大でも±0.04mm程度に止まっており、製品規格を高い水準で満たし得ることが分かる。
なお、上述の試験では従来の寸法設計に基づくコンタクトレンズを使用したが、このような製品規格との適合にあたっては、リン酸を含む保存液中での高圧蒸気滅菌処理時において発生する形状変化及び寸法変化を、レンズ設計時に予め見越しておくことが望ましい。このように、高圧蒸気滅菌処理が完了した状態においてコンタクトレンズが最適の形状(寸法)となるよう設計しておくことにより、レンズの形状を最適な状態で出荷し、その後長期間に亘って初期の形状でコンタクトレンズを維持できるからである。
次に、参考として、このようなリン酸を含む保存液中での高圧蒸気滅菌処理時における形状変化(寸法変化)について調べた試験結果を示す。
本試験では、高圧蒸気滅菌処理前後でのレンズ直径(DIA)の変化を調べた。なお、コンタクトレンズは、上記B群で用いた表1に示すレンズのうち、度数(P)が−3.00D及び−8.00Dの2種の規格のレンズを、各5枚ずつ使用した。使用した保存液Bの組成は上述の試験で用いた表2に示すものと同じである。
これら計10枚のコンタクトレンズについて、先の保存試験と同様の方法で、高圧蒸気滅菌処理前と、高圧蒸気滅菌処理後のレンズの直径を測定した。
レンズ直径の測定結果を、以下の表6及び図5(a),(b)のグラフに示す。また、使用した2種のコンタクトレンズのレンズ直径(DIA)の製品規格上の基準値は、上記表2にも示したように、度数が−3.00D,−8.00Dの何れの度数のレンズでも14.00mmとなっている。
Figure 2011070612
表6及び図5に示す結果からも明らかなように、度数が−3.00D,−8.00Dの両規格のどのコンタクトレンズでも、略一様に約0.18mm程度レンズ直径が増大していることがわかる。
このように、本実施形態に従いリン酸を含む保存液と共に密封した状態でシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズに対して高圧蒸気滅菌処理を行うことにより、コンタクトレンズに略一定の形状変化が短時間のうちに引き起こされる。そして、上述した保存試験で明らかとなったように、本実施形態に従えば、高圧蒸気滅菌処理後には、高圧蒸気滅菌処理直後のレンズ形状が、数ヶ月以上の長期に亘って良好に保持されるのである。
また、高圧蒸気滅菌処理前の時点で、各レンズの直径はわずかに誤差を生じているが、そのばらつきの幅は0.05〜0.07mm程度であり、比較的小さい。なお、このような高圧蒸気滅菌処理前の時点におけるばらつきは、コンタクトレンズの成型時に発生する微細な寸法差が一因であると考えられる。一方、先述のリン酸を含まない保存液を用いて行った保存試験(A群)の結果によれば、15ヶ月間で発生するレンズ直径の変化は、約0.12mmに及ぶ。即ち、本試験結果によれば、出荷後に発生するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの寸法変化という問題は、コンタクトレンズの成型時等において生じる寸法のばらつきよりも更に大きな影響を及ぼしていることがわかる。そして、本実施形態に従えば、リン酸を含む保存液を用いて高圧蒸気滅菌処理を行うことにより、このような長期保存時におけるコンタクトレンズの寸法変化という大きな課題を、極めて有効に解決しできるのである。
さらに、このような本実施形態に従うリン酸を含む保存液を用いた高圧蒸気滅菌処理後における、シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズの強度を確認するため、強度測定試験を行った。
すなわち、本試験では、上述の保存試験と同様に、表2に示すリン酸を含まない保存液Aと、リン酸を含む保存液Bとを用いてシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズにそれぞれ高圧蒸気滅菌処理を実施した。また、使用したシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、表1に示したAsmofilconAであり、保存液A,Bについて各20枚を用いた。なお、高圧蒸気滅菌処理の条件は上述の各試験と同様である。なお、保存液AのpHは7.0とし、保存液BのpHは7.5とした。
そして、高圧蒸気滅菌処理後の各コンタクトレンズのヤング率を測定し、強度を確認した。測定方法は、JIS K7113−1995及びJIS K7127−1999(第3部)に従う一般的な測定方法である。具体的には、先ず、高圧蒸気滅菌処理後の各コンタクトレンズから、上記のJIS規格を参考にダンベル形状の試験片を作製した。これを、上述の各試験におけるレンズ直径測定時と同様に恒温水槽を用いて状態調節し、20℃の生理食塩水中で、万能材料試験機(インストロンジャパンカンパニイリミテッド製、4301)にて試験片を引っ張り、ヤング率を測定した。
その結果、リン酸を含まないpH7.0の保存液Aを用いた場合のヤング率は、1.05MPaであった(S.D.=0.17,n=15)。一方、リン酸を含むpH7.5の保存液Bを用いた場合のヤング率は、1.02MPaであった(S.D.=0.09,n=18)。
従って、本実施形態に従いpH7.5とした保存液を用いても、シリコーンハイドロゲルの劣化によるヤング率の増大は生じていないことがわかる。よって、本実施形態によれば、pHが7.2以上の比較的高い値であっても、高圧蒸気滅菌処理後もヤング率は増大せず、シリコーンハイドロゲルの物性が良好に保たれることがわかる。このように、本実施形態に従えば、シリコーンハイドロゲルの寸法変化を防ぐと共に、強度の低下等の物性の劣化も良好に抑制でき、シリコーンハイドロゲルからなるコンタクトレンズを安定的に保存することが可能である。
10:コンタクトレンズパッケージ、11:パッケージ本体、12:コンタクトレンズ、14:保存液、22:収容領域
すなわち、コンタクトレンズパッケージの製造方法に関する本発明の第一の態様は、ソフトコンタクトレンズと保存液を収容領域内に密封したコンタクトレンズパッケージの製造方法であって、前記ソフトコンタクトレンズとしてシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを用いると共に、該シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの直径を、リン酸存在下での高圧蒸気滅菌処理による拡径変化を予め見越して設計し、前記保存液をリン酸を含んで構成する一方、該リン酸を含んで構成された該保存液と共に該シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを前記収容領域内に封入して高圧蒸気滅菌処理を行うと共に、該高圧蒸気滅菌処理により該シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの直径を所期の値に増大させることを、特徴とする。
また、コンタクトレンズパッケージに関する本発明の第一の態様は、ソフトコンタクトレンズと保存液を収容領域内に密封したコンタクトレンズパッケージであって、前記ソフトコンタクトレンズとしてシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを用いると共に、該シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの直径が、リン酸存在下での高圧蒸気滅菌処理による拡径変化を予め見越して設計されており、前記保存液がリン酸を含んで構成されている一方、該リン酸を含んで構成された該保存液と共に該シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが前記収容領域内に封入されて高圧蒸気滅菌処理されており、該高圧蒸気滅菌処理により該シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの直径が所期の値に増大されてそのまま密封されていることを、特徴とする。
また、シリコーンハイドロゲル成型品を安定化させる方法に関する本発明の第一の態様は、コンタクトレンズパッケージ内に保存液と共に密封したシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを安定化させる方法であって、前記シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの直径を、リン酸存在下での高圧蒸気滅菌処理による拡径変化を予め見越して設計し、前記保存液をリン酸を含んで構成する一方、該リン酸を含んで構成された該保存液と共に該シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを前記コンタクトレンズパッケージ内に封入して高圧蒸気滅菌処理を行い、該高圧蒸気滅菌処理により該シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの直径を所期の値に増大させることを、特徴とする。

Claims (6)

  1. ソフトコンタクトレンズと保存液を収容領域内に密封したコンタクトレンズパッケージの製造方法であって、
    前記ソフトコンタクトレンズとしてシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを用いると共に、前記保存液をリン酸を含んで構成する一方、該リン酸を含んで構成された該保存液と共に該シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを前記収容領域内に封入して高圧蒸気滅菌処理を行うことを特徴とするコンタクトレンズパッケージの製造方法。
  2. 前記保存液において前記リン酸の濃度が0.01〜1.0重量%である請求項1に記載のコンタクトレンズパッケージの製造方法。
  3. 前記保存液のpHが7.2〜8である請求項1又は2に記載のコンタクトレンズパッケージの製造方法。
  4. ソフトコンタクトレンズと保存液を収容領域内に密封したコンタクトレンズパッケージであって、
    前記ソフトコンタクトレンズとしてシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを用いると共に、前記保存液がリン酸を含んで構成されている一方、該リン酸を含んで構成された該保存液と共に該シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが前記収容領域内に封入されて高圧蒸気滅菌処理されていると共にそのまま密封されていることを特徴とするコンタクトレンズパッケージ。
  5. 前記保存液の液量が0.15〜4mLである請求項4に記載のコンタクトレンズパッケージ。
  6. パッケージ内に保存液と共に密封したシリコーンハイドロゲル成型品を安定化させる方法であって、
    前記保存液をリン酸を含んで構成する一方、該リン酸を含んで構成された該保存液と共に該シリコーンハイドロゲル成型品を前記パッケージ内に封入して高圧蒸気滅菌処理を行うことを特徴とするシリコーンハイドロゲル成型品を安定化させる方法。
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