本発明は、電子的に画像を記録可能なカメラシステムに関する。より具体的には、本発明は、撮像素子から得られる特定帯域の映像信号のコントラストをオートフォーカスの評価値として利用し、コントラストが最大となる位置すなわちコントラストピーク位置を合焦位置としてオートフォーカス動作を行うコントラスト方式オートフォーカス機能を備え、かつレンズ交換可能としているオートフォーカス機能を有する交換レンズカメラシステムに関する。
従来から、オートフォーカス(以下「AF」と記述する。)の一方式としてコントラスト方式が知られている。コントラスト方式は、特に民生用ビデオカメラ用途及びコンパクトデジタルスチルカメラ用途においてレンズ交換の出来ないカメラに多く採用されている。その理由は、コントラスト方式は、メカ調整精度の誤差(残存メカ誤差)に起因するAFズレが原理的に発生しないためである。なお、従来の一眼レフ交換レンズカメラにて多く使われている位相差方式ではメカ精度或いはメカ調整精度の誤差(残存誤差)に起因するAFズレが発生し得る。
カメラボディの撮像素子画素数がカメラユニット仕様によって異なると、AF評価周波数もカメラユニット毎に異なる。コントラスト方式AFの問題点として、レンズユニットの光学性能において球面収差がある程度存在している場合、空間周波数が異なるとピーク位置が異なる位置になるという現象が知られている。すなわちAF評価周波数と球面収差量の組み合わせが変わるとAF位置と最良合焦位置の関係が変わってしまい、AF性能が保証されにくくなる。この理由から、交換レンズカメラシステムにおいてはコントラス方式AFの採用率は低かった。
このような状況において、特許文献1は、ビデオカメラ用途に関する交換レンズカメラシステム対応のコントラスト方式AFシステムの技術を提案している。特許文献1は、レンズユニットとカメラボディをデータ通信させることによってピント情報とピント位置情報をカメラボディからレンズユニットに送信を行い、レンズユニット側でAF制御を行う技術を開示している。
特開2004−258088号公報
コントラスト方式AFでは、唯一、レンズユニットに球面収差が残存している場合、AF評価周波数の高低によってコントラストピーク位置が異なってしまうという現象が存在する。すなわち同じレンズユニットであってもカメラボディが異なってAF評価周波数が異なる状態でコントラスト方式AFを行った場合、AF結果としてのピント位置が異なってしまうという問題が存在する。特許文献1の技術では、この問題は依然残されている。
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、コントラスト方式AF交換レンズシステムカメラにおいて、レンズの残存球面収差量の異なる複数種類の交換レンズ群と、AF評価周波数の異なる複数種類のカメラ群をどのように組み合わせても、最良合焦位置での撮影を可能とするAF性能を実現することにある。
本発明によるカメラシステムは、互いに着脱可能なレンズユニットおよびカメラボディを有する。前記レンズユニットは、被写体像を結像させる光学系と、前記光学系の少なくとも一部を連続的に駆動して被写体距離を変化させることにより、フォーカシング動作を行うフォーカシング機構と、前記フォーカシング動作に応じて撮影パラメータを取得する第1演算部と、映像のコントラストに基づいて焦点位置を補正する際に用いられる基準データを記憶した記憶部であって、前記基準データは、コントラスト測定に利用される2以上のAF想定周波数の各々と複数の撮影パラメータとの組み合わせに応じて規定されている、記憶部とを備えている。前記カメラボディは、前記被写体像を受けて、前記被写体像に対応する映像の信号を出力する撮像素子と、前記フォーカシング動作中に、予め定められた固有のAF評価周波数に基づいて前記映像のコントラストを測定し、前記コントラストが最大になったときにおける撮影パラメータおよび前記基準データに基づいて、補正値を算出する第2演算部とを備えている。前記フォーカシング機構は前記補正値に応じて、前記焦点位置を変化させる。
前記基準データは、前記映像に対して定められる複数の領域の各々と、前記2以上のAF想定周波数の各々と、前記複数の撮影パラメータとの組み合わせによって規定されていてもよい。
前記基準データは、前記映像の中央部の領域を少なくとも含む複数の領域の各々と、前記2以上のAF想定周波数の各々と、前記複数の撮影パラメータとの組み合わせによって規定されていてもよい。
前記カメラボディ固有のAF評価周波数が、前記基準データに規定された前記2以上のAF想定周波数のいずれとも異なるときは、前記第2演算部は、予め定められた固有のAF評価周波数に基づいて前記映像のコントラストを測定し、前記2以上のAF想定周波数のうちから前記カメラボディ固有のAF評価周波数に最も近いAF想定周波数を特定し、前記基準データのうち、特定された前記AF想定周波数に対応する基準データを用いて補正値を算出してもよい。
前記カメラボディ固有のAF評価周波数が、前記基準データに規定された前記2以上のAF想定周波数のいずれとも異なるときは、前記第2演算部は、予め定められた固有のAF評価周波数に基づいて前記映像のコントラストを測定し、前記2以上のAF想定周波数の少なくとも2つのAF想定周波数を特定し、前記基準データのうち、特定された前記少なくとも2つのAF想定周波数に対応する基準データを用いて補間演算を行って補正値を算出してもよい。
前記基準データは、前記フォーカシング動作が行われるときのF値を前記撮影パラメータとして、前記2以上のAF想定周波数の各々と複数の撮影パラメータとの組み合わせが、F値毎に2個以上規定されていてもよい。
前記基準データは、開放F値に対応して規定されており、前記フォーカシング動作が行われるときのF値が開放F値ではないときは、前記第2演算部は、前記F値と、予め特定されている補正値が0のときのF値と、開放F値におけるコントラストが最大になった位置と最良合焦位置との差に対応するデータとに基づいて、前記F値におけるコントラストが最大になった位置と最良合焦位置との差を補正するための補正値を算出してもよい。
前記フォーカシング動作が行われるときのF値が所定値よりも大きいときは、前記第2演算部は、補正量0に対応する補正値を算出してもよい。
前記基準データは、少なくとも2.5本/mm、10本/mmおよび40本/mmのAF想定周波数の各々と複数の撮影パラメータとの組み合わせに応じて規定されていてもよい。
前記光学系はレンズを含んでおり、前記フォーカシング機構は、駆動パルスの数に応じた距離だけ前記レンズの位置を移動させ、前記基準データおよび前記補正値は、前記駆動パルスの数で特定されてもよい。
前記基準データは、コントラストが最大になった位置と最良合焦位置との差に対応するデータであってもよい。
本発明によれば、フォーカシング動作中に、予め定められた固有のAF評価周波数に基づいて映像のコントラストを測定し、コントラストが最大になったときにおける撮影パラメータおよび基準データに基づいて、補正値を算出する。基準データは、映像のコントラストに基づいて焦点位置を補正する際に用いられるものであり、コントラスト測定に利用される複数種類のAF想定周波数の各々と複数の撮影パラメータとの組み合わせに応じて規定されており、かつ、コントラストが最大になった位置と最良合焦位置との差に対応するデータである。これにより、コントラスト方式のAF交換レンズカメラシステムにおいて、レンズユニットとカメラボディとを種々組み合わせても、最良合焦位置で撮影を行うことができる。たとえば、基準データとして、種々の撮影パラメータ(複数の焦点距離、複数の被写体距離)ごとの補正量を設けることにより、レンズの残存球面収差量の異なる複数種類の交換レンズ群と、AF評価周波数の異なる複数種類のカメラ群をどのように組み合わせても、最良合焦位置で撮影を行うことができる。
本発明の実施形態による交換レンズカメラシステム100の構成を示す図である。
液晶モニタ121に表示された5つのAF枠31、32a、32b、33a、33bを示す図である。
カメラボディ1固有のAF評価周波数を説明する図である。
AF評価周波数を20本/mmとしたときの、AF枠の位置に応じたコントラストのピーク位置P20aおよびP20bと、最良合焦位置Pfocusとの関係を示す図である。
(a)および(b)は、3種類のAF評価周波数に対応するコントラストの各ピーク位置と球面収差との関係を示す図である。
データ仕様の一例として、F3.5、焦点距離f14〜50mmについてのAF補正用データフォーマットの一例を示す図である。
4種類のAF想定周波数毎のコントラスト曲線を示す図である。
本実施形態によるカメラシステム100のAF処理の手順を示すフローチャートである。
距離領域データの一例を示す図である。
符号の説明
1 カメラボディ
2 レンズユニット
100 カメラシステム
101 撮像素子
102 信号処理回路
103 演算回路
105 シャッター
110 光学ファインダー装置
124、221 メモリ
120 システム制御用マイコン
121 液晶モニタ
122 リーダ/ライタ
123 操作部
130 カメラボディ側連結装置
140 カメラボディ側通信用接点
201 フォーカシング用レンズ群
202 フォーカシング機構+アクチュエータ
205 絞り装置
210 ズーム用レンズ群
211 ズームエンコーダ
220 レンズ制御用マイコン
230 レンズユニット側連結装置
240 レンズユニット側通信用接点
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態による交換レンズカメラシステム100の構成を示す。
図1に示す交換レンズカメラシステム100(以下、「カメラシステム100」と記述する。)は、互いに着脱自在に連結されるカメラボディ1およびレンズユニット2によって構成されている。カメラボディ1およびレンズユニット2は、各々に備えられている連結装置130および230にて着脱自在に連結される。連結時には、カメラボディ1の通信用接点140とレンズユニット2の通信用接点240とが接触して、カメラボディ1およびレンズユニット2が通信可能な状態になる。
カメラボディ1は、撮像素子101と、信号処理回路102と、演算回路103と、シャッター105と、光学ファインダー装置110と、システム制御用マイコン120と、液晶モニタ121と、メモリカードリーダ/ライタ122と、操作部123と、メモリ124とを備えている。
撮像素子101は、レンズユニット2によって光学的に結像された被写体像を受けて、電気信号を出力する。電気信号は、被写体像を構成する赤(R)、緑(G)および青(B)の色成分の量に応じた信号(色信号)である。信号処理回路102は、撮像素子101によって変換された電気信号をデジタル信号に変換し、更に階調変換処理、ホワイトバランス処理などの画像信号処理を行う。
演算回路103は、後に詳述するコントラスト方式のAF制御のための演算を行う。
シャッター105は、閉じられるまでの時間に応じて撮像素子101に入射する光3の量を調整する。
光学ファインダー装置110は、撮影前に使用者が構図を決定するために利用する。
メモリ124は、システム制御用マイコン120から送られたデータを記憶し、システム制御用マイコン120から要求されたデータを出力する。
システム制御用マイコン120は、カメラボディ1内の各構成要素を含む、レンズユニット2も加えたカメラシステム100全体の動作を制御する。システム制御用マイコン120は、メモリ124に記憶された制御用データを読み出すことができる。また、システム制御用マイコン120および後述するレンズ制御用マイコン220は、互いに通信するための通信機能を有している。システム制御用マイコン120はレンズ制御用マイコン220からAF補正用データ(図6)および距離領域データ(図9)を受け取り、メモリ124に格納する。
液晶モニタ121は、カメラシステム100の各種設定値や、撮影前の画像および/または撮影された画像を表示する液晶表示装置である。メモリカードリーダ/ライタ122(以下「リーダ/ライタ122」と記述する。)は、処理が終了した後の画像データをメモリカードに格納し、メモリカードに格納された画像データを読み出すことができる。なお、記録媒体として、カメラボディ1から取り外し可能な、フラッシュROMを備えた半導体メモリカードを想定しているが、これは一例である。他の例として記録媒体は光ディスク、磁気ディスク、磁気テープであってもよい。または、カメラボディ1に内蔵された半導体メモリ(たとえばフラッシュROM)であってもよい。
レンズユニット2は、光学的結像のためのレンズ光学系およびそれらを制御するための機構を備えている。具体的には、レンズユニット2は、フォーカシング用レンズ群201と、フォーカシング機構+アクチュエータ202と、絞り205と、ズーム用レンズ群210と、ズームエンコーダ211と、レンズ制御用マイコン220と、メモリ221とを備えている。
フォーカシング用レンズ群201は、光軸に平行な方向に移動してフォーカシングを行う。フォーカシング機構+アクチュエータ202は、フォーカシング用レンズ群201の位置を読み取り、その位置を目的位置へ移動させる。絞り205は、光量を開口によって調整する。
ズーム用レンズ群210は、光軸に平行な方向に移動して被写体像の拡大および縮小(ズーミング)を行う。ズームエンコーダ211はズーム状態を読み取る。
レンズ制御用マイコン220は、メモリ221から必要なデータを読み出して前述各装置を含めてレンズユニット2全体を制御する。メモリ221は、レンズ制御用マイコン220がレンズユニット2全体の動作を制御するための制御用データに加えて、後に詳述するAF補正用データ(図6)および距離領域データ(図9)を記憶している。
上述のカメラシステム100はカメラボディ側の操作部123を介して行われる使用者の操作に応じて動作する。
次に、カメラシステム100において行われるコントラスト方式のAF制御を説明する。
図2は、液晶モニタ121に表示された5つのAF枠31、32a、32b、33a、33bを示している。本明細書においては、5つのAF枠の位置関係に鑑みて、AF枠31を「AF中央枠」、AF枠32aおよび32bを「AF上下枠」、AF枠33aおよび33bを「AF左右枠」と呼ぶ。なお、AF枠の数および配置は一例であり、適宜変更してもよい。また、AF枠は液晶モニタ121上に設定されているとしたが、これは理解の便宜のための一例である。液晶モニタ121上に表示されることは必須ではない。たとえば液晶モニタ121の表示領域に対応する画像領域において、AF枠を規定すればよい。
本実施形態によるカメラボディ1の演算回路103は、AF動作時、図2に示す各AF枠のコントラストを計測する。そして、たとえばAF中央枠(AF枠31)において、コントラストが最大になった位置、換言すれば、測定されたコントラスト曲線がピークになった位置を特定する。なお、従来のカメラシステムでは、このピーク位置を最良合焦位置として撮影を行っているが、本実施形態においては、その位置を補正することにより、画面中央部についても画面周辺部についても最適なコントラストを得られる位置を最良合焦位置としている。本実施形態による補正処理は後に詳述する。
次に、図3を参照しながら、コントラストの測定について説明する。
図3は、カメラボディ1固有のAF評価周波数を説明する図である。
コントラストの測定は、フォーカシング用レンズ群201が駆動されることにより、焦点位置が連続的に変化している間に行われる。たとえば演算回路103は、焦点位置が連続的に変化している間、AF中央枠(AF枠31)の画像からAF評価周波数帯域の値を次々と求める。この値は、AF評価値または検波値とも呼ばれ、いわゆるコントラスト値に相当する。それらのうちの最大値をコントラストのピークとして特定する。
なお、コントラスト値は以下の式によって求められる。
コントラスト値=(最大光度−最小光度)/(最大光度+最小光度)
ここで、「AF評価周波数」とは、カメラボディ1固有の値であり、コントラスト計測のために使用される周波数帯域を代表する重心周波数である。AF評価周波数n本/mmとは、1mm幅の範囲内に黒および白のラインがn組現れることを意味する。これは、たとえば黒ラインが1mm幅の範囲内にn本現れると言い換えることもできる。カメラボディ1に応じてnの値が定められている。
図3(a)に示すとおり、AF評価周波数が1本/mmのときは、1mm幅の範囲内に黒ラインb1が1本現れている。一方、図3(b)に示すようにAF評価周波数が2本/mmのときは、1mm幅の範囲内には2本の黒ラインb1およびb2が現れている。そして図3(c)に示すようにAF評価周波数が10本/mmのときは、1mm幅の範囲内には10本の黒ラインb1〜b10が現れている。AF評価周波数を低くすればAF評価周波数帯域の値は大きくなるため、コントラストのピークは高くなる。一方、AF評価周波数を高くすればAF評価周波数帯域の値は小さくなるため、コントラストのピークは低くなる。
コントラストのピークは、どの位置のAF枠を用いるかによって変化する。図4は、AF評価周波数を20本/mmとしたときの、AF枠の位置に応じたコントラストのピーク位置P20aおよびP20bと、最良合焦位置Pfocusとの関係を示す。
「画面中央」として、AF中央枠(AF枠31)を用いて検出したコントラスト曲線を示し、「画面周辺」として、AF上下枠(AF枠32aおよび32b)またはAF左右枠(AF枠33aおよび33b)を用いて検出したコントラスト曲線を示す。図から明らかなように、ピーク位置P20aおよびP20bは一致していない。そして、ピーク位置P20aおよびP20bはいずれも、最良合焦位置Pfocusとは異なっている。なお、「画面周辺」とは、例えば0.7像高の位置でありAF上限枠位置や左右枠位置のピーク(P20b)とは異なっている点に留意されたい。
なお、「最良合焦位置Pfocus」とは、AF評価周波数を20本/mmとしたときに、画面中央部についても画面周辺部についてもバランスよくコントラストを得られる位置、換言すれば画面中央(P20a)および画面周辺(P20b)のどちらにも必要十分なレベルで合焦しているとみなせる位置として本実施形態において定義したものである。
最良合焦位置の定義については、上述した位置の他にも種々考えられる。たとえば、画面中央部のAF評価周波数のピーク位置、画面周辺部の像面湾曲を考慮して画面全体が最適となるように前述画面中央部のAF評価周波数のピーク位置から特定量だけシフトした位置である。
なお、コントラストのピークは、レンズユニット2のレンズに存在する球面収差によっても変化する。図5(a)および(b)は、3種類のAF評価周波数に対応するコントラストの各ピーク位置と球面収差との関係を示す。図5(b)に示すような球面収差(アンダー補正)を持つレンズの周波数依存コントラストピーク位置は図5(a)に示すような傾向があることが知られている。なお、レンズに球面収差が存在しない場合、すなわち図5(b)の球面収差を示す形状がy軸に平行な直線として表される場合には、コントラストピーク位置はAF評価周波数に依存せず、どのAF評価周波数であってもコントラストピーク位置は一致する。
再び図4を参照する。本実施形態によるカメラシステム100は、最良合焦位置Pfocusに焦点が来るようフォーカシング用レンズ群201の駆動量を補正する。そのため、まずフォーカシング用レンズ群201を駆動して、あるAF枠についてコントラストが最大となった位置(たとえば図4のピーク位置P20a、P20b)を求め、その後、フォーカシング用レンズ群201の駆動量を補正する。
たとえば、AF中央枠(AF枠31)を用いてコントラストのピークを検出した場合には、検出されたピーク位置P20aがPfocusの位置に来るよう、フォーカシング用レンズ群201の駆動量を補正する。または、AF上下枠(AF枠32aおよび32b)またはAF左右枠(AF枠33aおよび33b)を用いて検出したコントラストのピークを検出した場合には、検出されたピーク位置P20bがPfocusの位置に来るよう、フォーカシング用レンズ群201の駆動量を補正する。
駆動量をどの程度補正すべきかは、コントラストのピークが検出されたAF枠、AF評価周波数、焦点距離f、被写体までの距離等に応じて変動する。しかしながら、それらのすべての組み合わせを規定した補正用データを用意することは現実的ではない。
そこで、本実施形態においては、AF枠、焦点距離、AF評価周波数、被写体までの距離のそれぞれについて、複数の代表値の組み合わせを規定した補正の基準となるデータ(以下「AF補正用データ」と称する。)を設けることとした。
図6は、データ仕様の一例として、F3.5、焦点距離f14〜50mmについてのAF補正用データフォーマットの一例を示す。最至近距離は500mmとしている。このAF補正用データはレンズユニット2固有の値として、メモリ221(図1)に記憶されている。なお先に説明した「AF評価周波数」という語はカメラボディ1に応じて定まる値であるため、混乱を避ける目的で図6では「AF想定周波数」と呼んでいる。
図6に示すAF補正用データは、AF想定周波数として40本/mm、10本/mm、2.5本/mmの3種類の周波数に対応している。そしてそのAF想定周波数の各々が、さらに複数の撮影パラメータで分類され、その撮影パラメータごとに値が記述されている。焦点距離すなわちズーム状態はf14、f25、f50の3種類、被写体距離については、3m、1m、0.6mの3種類、AF枠については、AF中央枠、AF上下枠およびAF左右枠、の3箇所に分類されている。その結果、AF補正用データは合計81個のデータから構成されている。
なお、F値に対応するデータを加えることも可能であるが、本明細書では加えていない。例えば絞りの開口が小さくなるほどAF補正用データ値は小さくなり、AF補正しなくても良くなることが知られている。そこで、本実施形態においてはF8においてレンズユニット2におけるAF補正用データ値が0になることが予め分かっているとする。いま、開放F値とF8との間のF値に対応するAF補正用データを後述する内挿補間演算により算出する方法を採るとする。すると、データ値「0」は記憶する必要はないため、開放F値のAF補正用データのみ記憶すれば十分であり、F値に対応するデータは特に必要ではない。
AF補正用データに記述されている値a−z、A−Z、aa−az、aA−aCは、フォーカシング用レンズ群201の少なくとも一部のレンズを駆動するための、フォーカシング機構+アクチュエータ202(特にアクチュエータ)に印加されるパルス数(またはパルス値)にて表されている。このパルス数を用いてフォーカシング用レンズ群201を駆動すれば、AF想定周波数にてコントラストピークを検出した場合のピーク位置から実際の最良合焦位置Pfocusまでの距離だけ、焦点位置を移動させることができる。それにより、最良合焦位置Pfocusに一致するように焦点位置を移動させることができる。すなわちこのパルス数は、AF動作によるピーク検出後に実際に駆動する位置への焦点シフト量に対応するデータである。以下、図7を参照しながらより詳しく説明する。
図7は、4種類のAF想定周波数毎のコントラスト曲線を示す。このうち、AF想定周波数40本/mm、10本/mm、2.5本/mmの3種類が、図6のAF補正用データとして採用されている。
図7に示すデータは、AF中央枠(AF枠31)において測定したものであり、そのときの焦点距離fは14mm、被写体までの距離は3mである。図7にはまた、最良合焦位置Pfocusの位置も示されている。なお、図7では、AF想定周波数に対応するコントラストピーク位置は、AF想定周波数に対応する添え字を用いて表している。たとえばAF想定周波数40本/mmに対応するコントラストピーク位置は「P40」と表す。
各AF想定周波数のコントラストピーク位置に着目する。最良合焦位置Pfocusを基準とすると、P2.5は左方向にacずれており、P20は右方向にB、P40は右方向にaだけずれている。したがって、このずれ量を解消する方向および距離だけ、それぞれのピーク位置からフォーカシング用レンズ群201を駆動させれば、焦点位置を最良合焦位置Pfocusに移動させることができる。AF枠、焦点距離f、AF想定周波数などを組み合わせた上述の条件下で焦点位置を最良合焦位置Pfocusに移動させるために必要な駆動パルスに対応する値が、図6に記載されている。
上述のとおり、レンズユニット2と組み合わされるカメラボディ1は、固有のAF評価周波数を有している。そのため、そのAF評価周波数が図6に記述されたAF想定周波数とは異なる場合がある。また、撮影条件によっては、焦点距離および被写体までの距離も異なる。そこで本実施形態においては、レンズユニット2の演算回路103は、AF補正用データを内挿補間演算により算出する。これにより、各カメラボディの、各撮影条件に適合するAF補正用データを算出することができ、それにより、焦点位置を最良合焦位置Pfocusに移動させることができる。
次に、図8を参照しながら、カメラシステム100において行われるAF動作を説明する。
図8は、本実施形態によるカメラシステム100のAF処理の手順を示す。本実施形態においては、図4に示す処理は、レンズユニット2のレンズ制御用マイコン220およびカメラボディ1のシステム制御用マイコン120が連携して行うとして説明する。
まず、レンズユニット2の仕様(1)、カメラボディ1の仕様(2)およびレンズ状態条件(3)は以下のとおりとし、当該条件下でシャッターが切られて撮影が行われたとする。
(1)レンズユニット2の仕様:F3.5、焦点距離f14〜50mm、最至近距離500mm、フォーカスストロークの遠側端から最至近側端までの対応パルスは1300パルス
(2)カメラボディ1の仕様:撮像素子101の画素数3136×2352=7375872画素、画素ピッチ5.6μm、撮像サイズ17.5616mm×13.1712mm、対角21.952mm、AF評価周波数5本/mm、映像信号からAF評価周波数の帯域を抽出してコントラストのピーク検出を行う。
(3)レンズ状態条件:F3.5(開放)、ズーム状態(焦点距離)f14mm、被写体までの撮影距離3m
撮影前において、レンズユニット2とカメラボディ1が連結され、カメラボディ1がパワーオンされたときには、システム制御用マイコン120およびレンズ制御用マイコン220は、レンズユニット側通信用接点240およびカメラボディ側通信用接点140を介して互いに通信し、初期処理を行っているとする。初期処理として、たとえばレンズ制御用マイコン220は、メモリ221内に記憶されている図6に示すAF補正用データおよび後述する図9に記載された距離領域データを一括して、カメラボディ1内のシステム制御用マイコン120に送信する。システム制御用マイコン120は受け取ったデータを、メモリ124に格納する。その後、シャッター半押しが行われると、ステップS11からの処理、すなわちAF動作が開始される。
ステップS11において、レンズユニット2のフォーカシング機構+アクチュエータ202は、フォーカシング動作を行う。この動作は、カメラボディ1のシステム制御用マイコン120からレンズユニット2に対して与えられた、ピーク検出のためのフォーカスレンズスキャン駆動指示に基づいている。フォーカシング機構+アクチュエータ202はフォーカシング用レンズ群201の位置パルスデータを読み取り、レンズ制御マイコンを介してカメラボディ1内のシステム制御マイコンに転送しながらフォーカシング用レンズ群201のスキャン駆動を行う。
ステップS12において、演算回路103は、フォーカシング動作の結果得られたパラメータ、ここではコントラストのピーク値を検出したAF枠、ピーク値になるまでにフォーカシング動作に要したパルス値および焦点距離fを特定する。
たとえば、画面中央に位置する中央枠31内にてピーク値が検出されたとする。レンズ制御用マイコン220は、そのピーク値が検出されるまでにフォーカシング動作に要したパルス値(たとえば370パルス)を把握しており、そのパルス値の情報をシステム制御用マイコン120に送る。すると演算回路103はシステム制御用マイコン120を介してパルス値の情報を受け取る。焦点距離fについても、レンズ制御用マイコン220は、ズーム用レンズ群210の状態に基づいて14mmであることを特定することができる。よって、焦点距離fの情報もまた、そのまま演算回路103に送られる。
次に、ステップS13において、演算回路103は、特定されたパルス値、焦点距離fおよび予め設けられた距離領域データに基づいて被写体までの距離を特定する。
図9は、距離領域データの一例を示す。図9によれば、演算回路103は、図7に示す被写体距離3m、1m、0.6mの各々に対応するフォーカスパルス範囲のデータを算出することができる。たとえば焦点距離f14mmにおいて、演算回路103は、無限位置パルス(240パルス)から1.5m位置パルス(500パルス)までを、3mデータに対応するパルス範囲であるとして認識し、1.5m位置パルス(500パルス)から0.75m位置パルス(950パルス)までを1mデータに対応するパルス範囲であるとして認識し、0.75m位置パルス(950パルス)から最至近距離パルス(1200パルス)までを0.6mデータに対応するパルス範囲として認識する。なお、本実施形態においては、遠側端〜最至近側端フォーカス駆動量に対応するパルスは1300であるとする。すなわち遠側端を0パルス、最至近側端を1300パルスとしている。
上述のとおり、本実施形態では、焦点距離f14mm、フォーカシング動作に要したパルス値が370パルスであるとしている。370パルスは無限位置パルス240パルスと1.5m位置パルス500パルスとの間であるため、演算回路103は、その被写体は3m距離領域に存在していたと認識する。
ピーク位置パルスが検出されるとシステム制御用マイコン120はレンズ制御用マイコン220に指示してスキャン動作を中止させ、スキャン駆動をスタートした側へヒステリシスよりも大きい量だけフォーカシング用レンズ群201を一旦戻して停止させる。
再び図8を参照する。ステップS14において、演算回路103は、コントラストのピーク値を検出したAF枠、焦点距離f、カメラボディのAF評価周波数、被写体までの距離および予め設けられたAF補正用データを用いて補間演算を行い、補正パルス値を算出する。
カメラボディ1の仕様(2)において示したように、カメラボディ1のAF評価周波数は5本/mmである。一方、AF補正用データ(図6)にはAF想定周波数として5本/mmは規定されていない。そこで、演算回路103は、5本/mmを間に含むAF想定周波数2.5本/mmおよび10本/mmのデータを利用して補間演算を行うことにより、AF想定周波数5本/mmのデータを求める。
これまでに特定されたコントラストのピーク値を検出したAF枠がAF中央枠であること、焦点距離f14mmおよび被写体までの距離3mによれば、必要とされるAF補正用データは、AF想定周波数10本/mm、被写体距離3m、AF中央枠、焦点距離f14のデータ値Bと、AF想定周波数2.5本/mm、被写体距離3m、AF中央枠、焦点距離f14のデータ値acの2つである。この2つのデータを利用して内挿補間近似演算を行う。たとえば直線補間を行うとすると、2点(x,y)=(2.5,ac)および(10,B)を結ぶ直線上の、x=5におけるy座標値を求めればよく、(B−ac)(5−2.5)/7.5+acとして算出することができる。
なお内挿補間として、一次関数による補間(直線補間)のほか、最小2乗近似による補間、3次補間、ラグランジュ補間、スプライン補間、Sinc関数による補間、Lanczos補間(ランツォシュ補間)などを行ってもよい。
上述の処理の結果、必要なAF想定周波数5本/mm、被写体距離3m、焦点距離f14mmのパルス値(「補正パルス値」と呼ぶ。)が算出される。
なお、撮影条件によっては、レンズユニット2の焦点距離がf14、f25、f50の間に位置し、データが存在しないこともある。そのときは、演算回路103は、レンズユニット2からのズーム位置情報によって存在しているデータを利用して内挿補間近似演算を行い、補正パルス値を算出すればよい。
次に、ステップS15において、演算回路103が、算出した補正パルス値およびコントラストのピーク値に対応するパルス値をシステム制御用マイコン120に送ると、システム制御用マイコン120はそれらをレンズ制御用マイコン220に送る。フォーカシング機構+アクチュエータ202は、それらの値に基づいてフォーカシング用レンズ群201を駆動し、フォーカシング動作を行う。フォーカシング動作の結果、焦点は最良合焦位置Pfocusに移動する。そしてAF動作が終了する。
以上のように、本実施形態によれば、コントラスト方式AF交換レンズカメラシステム100において、レンズの残存球面収差量の異なる複数種類の交換レンズ群と、AF評価周波数の異なる複数種類のカメラ群とをどのように組み合わせても、最良合焦位置におけるAFが可能になる。
なお、上述の説明においては、図9に示す距離領域データは、図6に示すAF補正値と同様に一括してシステム制御用マイコン120に送られるとしたが、一括して送られなくてもよい。たとえばレンズユニット2内の演算回路103またはシステム制御用マイコン120において内挿補間近似演算を行わせた後、現在のズームポジションにおける、無限位置パルス、1.5m位置パルス、0.75m位置パルス、最至近距離パルス、の4個のデータのみを送信してもよい。
また、上述の説明においては、図9に示す距離領域データによって決定されるパルス範囲内であれば、フォーカシング動作に要したパルス値がその範囲内のどの値であっても、図6に示される1個の値を適用していた。しかしながら、領域の中央をそれぞれ3mパルス位置、1mパルス位置、0.6mパルス位置として、その位置に図6のデータを対応させ、その間は内挿補間演算を行ってAF補正値を算出してもよい。この方法によれば、距離依存AF補正値の精度の向上を図ることができる。
ここで、フォーカシング用レンズ群201およびズーム用レンズ群210を含むレンズ光学系は、本発明の光学系の一例である。フォーカシング用レンズ群201、フォーカシング用レンズ群201の位置読取と目的位置への移動を行うフォーカシング機構+アクチュエータ202は、本発明のフォーカシング機構の1例である。
マイコン120および220は、AF用補正データを演算する演算部の一例である。さらに、システム制御用マイコン120において、信号処理回路102および演算回路103の処理を行わせることもできる。システム制御用マイコン120、信号処理回路102および補正演算回路103は、1つの演算回路として実装することが可能であり、この演算回路もまた演算部の一例である。連結装置230は、本発明の連結手段の1例である。記憶手段に記憶される2以上のAF想定周波数に対応するコントラストピーク位置と実際の最良合焦位置との距離についてのデータ群は、即値であってもよいし、再現可能なデータ変換を施したデータであってもよい。
AF枠対応については、画面中央部対応のAF中央枠のみであってもよい。2以上の想定AF評価周波数に対応するコントラストピーク位置と実際の最良合焦位置との距離についてのデータ群を利用する演算算出は2以上のデータの内、カメラボディ固有のAF評価周波数に最も近いAF想定周波数に対応するデータを選択決定するようにしてもよい。2以上の想定AF評価周波数に対応するコントラストピーク位置と実際の最良合焦位置との距離についてのデータ群は、AFを実施する場合のF値に対応するようにF値毎に2個以上設けてもよい。
また、フォーカシング動作が行われるときのF値が所定値よりも大きいときは、演算回路103は、補正を行わないよう、補正量0に対応する補正値を算出してもよい。
本実施形態においては、内挿補間演算によって補正パルス値を求めた。しかしながら、内挿補間演算は補間演算の一例であり、外挿補間演算を行ってもよい。AF想定周波数または焦点距離fを求めようとするとき、それぞれについて少なくとも2つのAF補正用データを予め設けておけば、内挿補間演算および外挿補間演算を組み合わせて目的とするデータを得ることが可能である。
一方、補間演算を行わない方法も考えられる。たとえば演算回路103は、AF評価周波数に最も近い想定AF周波数を特定し、特定したAF想定周波数に対応するAF補正用データを採用して補正パルス値を求めてもよい。
また、図8に示すカメラシステム100の処理のうち、カメラボディ1の処理は、主として演算回路103およびシステム制御用マイコン120が連携して動作することによって実現されるとして説明した。しかしながら、システム制御用マイコン120または演算回路103のいずれか一方のみが当該処理を行ってもよい。たとえばシステム制御用マイコン120が処理を行う場合には、メモリ124に予め格納されていたソフトウェアをシステム制御用マイコン120が実行するよう構成してもよい。この構成によれば、図8の処理に対応するレンズユニット2と接続可能なカメラボディであれば、後にソフトウェア更新が行われることにより、上述した図8の処理をレンズユニット2とともに実現できるようになる。
本発明は、レンズの残存球面収差量の異なる複数種類の交換レンズ群と、AF評価周波数の異なる複数種類のカメラ群からなるコントラスト方式AF交換レンズカメラシステムにおいて、適用が可能であり、ライブビューモードを備えたデジタル一眼レフカメラシステムに特に適している。
本発明は、電子的に画像を記録可能なカメラシステムに関する。より具体的には、本発明は、撮像素子から得られる特定帯域の映像信号のコントラストをオートフォーカスの評価値として利用し、コントラストが最大となる位置すなわちコントラストピーク位置を合焦位置としてオートフォーカス動作を行うコントラスト方式オートフォーカス機能を備え、かつレンズ交換可能としているオートフォーカス機能を有する交換レンズカメラシステムに関する。
従来から、オートフォーカス(以下「AF」と記述する。)の一方式としてコントラスト方式が知られている。コントラスト方式は、特に民生用ビデオカメラ用途及びコンパクトデジタルスチルカメラ用途においてレンズ交換の出来ないカメラに多く採用されている。その理由は、コントラスト方式は、メカ調整精度の誤差(残存メカ誤差)に起因するAFズレが原理的に発生しないためである。なお、従来の一眼レフ交換レンズカメラにて多く使われている位相差方式ではメカ精度或いはメカ調整精度の誤差(残存誤差)に起因するAFズレが発生し得る。
カメラボディの撮像素子画素数がカメラユニット仕様によって異なると、AF評価周波数もカメラユニット毎に異なる。コントラスト方式AFの問題点として、レンズユニットの光学性能において球面収差がある程度存在している場合、空間周波数が異なるとピーク位置が異なる位置になるという現象が知られている。すなわちAF評価周波数と球面収差量の組み合わせが変わるとAF位置と最良合焦位置の関係が変わってしまい、AF性能が保証されにくくなる。この理由から、交換レンズカメラシステムにおいてはコントラス方式AFの採用率は低かった。
このような状況において、特許文献1は、ビデオカメラ用途に関する交換レンズカメラシステム対応のコントラスト方式AFシステムの技術を提案している。特許文献1は、レンズユニットとカメラボディをデータ通信させることによってピント情報とピント位置情報をカメラボディからレンズユニットに送信を行い、レンズユニット側でAF制御を行う技術を開示している。
特開2004−258088号公報
コントラスト方式AFでは、唯一、レンズユニットに球面収差が残存している場合、AF評価周波数の高低によってコントラストピーク位置が異なってしまうという現象が存在する。すなわち同じレンズユニットであってもカメラボディが異なってAF評価周波数が異なる状態でコントラスト方式AFを行った場合、AF結果としてのピント位置が異なってしまうという問題が存在する。特許文献1の技術では、この問題は依然残されている。
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、コントラスト方式AF交換レンズシステムカメラにおいて、レンズの残存球面収差量の異なる複数種類の交換レンズ群と、AF評価周波数の異なる複数種類のカメラ群をどのように組み合わせても、最良合焦位置での撮影を可能とするAF性能を実現することにある。
本発明によるカメラシステムは、互いに着脱可能なレンズユニットおよびカメラボディを有する。前記レンズユニットは、被写体像を結像させる光学系と、前記光学系の少なくとも一部を連続的に駆動して被写体距離を変化させることにより、フォーカシング動作を行うフォーカシング機構と、前記フォーカシング動作に応じて撮影パラメータを取得する第1演算部と、映像のコントラストに基づいて焦点位置を補正する際に用いられる基準データを記憶した記憶部であって、前記基準データは、コントラスト測定に利用される2以上のAF想定周波数の各々と複数の撮影パラメータとの組み合わせに応じて規定されている、記憶部とを備えている。前記カメラボディは、前記被写体像を受けて、前記被写体像に対応する映像の信号を出力する撮像素子と、前記フォーカシング動作中に、予め定められた固有のAF評価周波数に基づいて前記映像のコントラストを測定し、前記コントラストが最大になったときにおける撮影パラメータおよび前記基準データに基づいて、補正値を算出する第2演算部とを備えている。前記フォーカシング機構は前記補正値に応じて、前記焦点位置を変化させる。
前記基準データは、前記映像に対して定められる複数の領域の各々と、前記2以上のAF想定周波数の各々と、前記複数の撮影パラメータとの組み合わせによって規定されていてもよい。
前記基準データは、前記映像の中央部の領域を少なくとも含む複数の領域の各々と、前記2以上のAF想定周波数の各々と、前記複数の撮影パラメータとの組み合わせによって規定されていてもよい。
前記カメラボディ固有のAF評価周波数が、前記基準データに規定された前記2以上のAF想定周波数のいずれとも異なるときは、前記第2演算部は、予め定められた固有のAF評価周波数に基づいて前記映像のコントラストを測定し、前記2以上のAF想定周波数のうちから前記カメラボディ固有のAF評価周波数に最も近いAF想定周波数を特定し、前記基準データのうち、特定された前記AF想定周波数に対応する基準データを用いて補正値を算出してもよい。
前記カメラボディ固有のAF評価周波数が、前記基準データに規定された前記2以上のAF想定周波数のいずれとも異なるときは、前記第2演算部は、予め定められた固有のAF評価周波数に基づいて前記映像のコントラストを測定し、前記2以上のAF想定周波数の少なくとも2つのAF想定周波数を特定し、前記基準データのうち、特定された前記少なくとも2つのAF想定周波数に対応する基準データを用いて補間演算を行って補正値を算出してもよい。
前記基準データは、前記フォーカシング動作が行われるときのF値を前記撮影パラメータとして、前記2以上のAF想定周波数の各々と複数の撮影パラメータとの組み合わせが、F値毎に2個以上規定されていてもよい。
前記基準データは、開放F値に対応して規定されており、前記フォーカシング動作が行われるときのF値が開放F値ではないときは、前記第2演算部は、前記F値と、予め特定されている補正値が0のときのF値と、開放F値におけるコントラストが最大になった位置と最良合焦位置との差に対応するデータとに基づいて、前記F値におけるコントラストが最大になった位置と最良合焦位置との差を補正するための補正値を算出してもよい。
前記フォーカシング動作が行われるときのF値が所定値よりも大きいときは、前記第2演算部は、補正量0に対応する補正値を算出してもよい。
前記基準データは、少なくとも2.5本/mm、10本/mmおよび40本/mmのAF想定周波数の各々と複数の撮影パラメータとの組み合わせに応じて規定されていてもよい。
前記光学系はレンズを含んでおり、前記フォーカシング機構は、駆動パルスの数に応じた距離だけ前記レンズの位置を移動させ、前記基準データおよび前記補正値は、前記駆動パルスの数で特定されてもよい。
前記基準データは、コントラストが最大になった位置と最良合焦位置との差に対応するデータであってもよい。
本発明によれば、フォーカシング動作中に、予め定められた固有のAF評価周波数に基づいて映像のコントラストを測定し、コントラストが最大になったときにおける撮影パラメータおよび基準データに基づいて、補正値を算出する。基準データは、映像のコントラストに基づいて焦点位置を補正する際に用いられるものであり、コントラスト測定に利用される複数種類のAF想定周波数の各々と複数の撮影パラメータとの組み合わせに応じて規定されており、かつ、コントラストが最大になった位置と最良合焦位置との差に対応するデータである。これにより、コントラスト方式のAF交換レンズカメラシステムにおいて、レンズユニットとカメラボディとを種々組み合わせても、最良合焦位置で撮影を行うことができる。たとえば、基準データとして、種々の撮影パラメータ(複数の焦点距離、複数の被写体距離)ごとの補正量を設けることにより、レンズの残存球面収差量の異なる複数種類の交換レンズ群と、AF評価周波数の異なる複数種類のカメラ群をどのように組み合わせても、最良合焦位置で撮影を行うことができる。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態による交換レンズカメラシステム100の構成を示す。
図1に示す交換レンズカメラシステム100(以下、「カメラシステム100」と記述する。)は、互いに着脱自在に連結されるカメラボディ1およびレンズユニット2によって構成されている。カメラボディ1およびレンズユニット2は、各々に備えられている連結装置130および230にて着脱自在に連結される。連結時には、カメラボディ1の通信用接点140とレンズユニット2の通信用接点240とが接触して、カメラボディ1およびレンズユニット2が通信可能な状態になる。
カメラボディ1は、撮像素子101と、信号処理回路102と、演算回路103と、シャッター105と、光学ファインダー装置110と、システム制御用マイコン120と、液晶モニタ121と、メモリカードリーダ/ライタ122と、操作部123と、メモリ124とを備えている。
撮像素子101は、レンズユニット2によって光学的に結像された被写体像を受けて、電気信号を出力する。電気信号は、被写体像を構成する赤(R)、緑(G)および青(B)の色成分の量に応じた信号(色信号)である。信号処理回路102は、撮像素子101によって変換された電気信号をデジタル信号に変換し、更に階調変換処理、ホワイトバランス処理などの画像信号処理を行う。
演算回路103は、後に詳述するコントラスト方式のAF制御のための演算を行う。
シャッター105は、閉じられるまでの時間に応じて撮像素子101に入射する光3の量を調整する。
光学ファインダー装置110は、撮影前に使用者が構図を決定するために利用する。
メモリ124は、システム制御用マイコン120から送られたデータを記憶し、システム制御用マイコン120から要求されたデータを出力する。
システム制御用マイコン120は、カメラボディ1内の各構成要素を含む、レンズユニット2も加えたカメラシステム100全体の動作を制御する。システム制御用マイコン120は、メモリ124に記憶された制御用データを読み出すことができる。また、システム制御用マイコン120および後述するレンズ制御用マイコン220は、互いに通信するための通信機能を有している。システム制御用マイコン120はレンズ制御用マイコン220からAF補正用データ(図6)および距離領域データ(図9)を受け取り、メモリ124に格納する。
液晶モニタ121は、カメラシステム100の各種設定値や、撮影前の画像および/または撮影された画像を表示する液晶表示装置である。メモリカードリーダ/ライタ122(以下「リーダ/ライタ122」と記述する。)は、処理が終了した後の画像データをメモリカードに格納し、メモリカードに格納された画像データを読み出すことができる。なお、記録媒体として、カメラボディ1から取り外し可能な、フラッシュROMを備えた半導体メモリカードを想定しているが、これは一例である。他の例として記録媒体は光ディスク、磁気ディスク、磁気テープであってもよい。または、カメラボディ1に内蔵された半導体メモリ(たとえばフラッシュROM)であってもよい。
レンズユニット2は、光学的結像のためのレンズ光学系およびそれらを制御するための機構を備えている。具体的には、レンズユニット2は、フォーカシング用レンズ群201と、フォーカシング機構+アクチュエータ202と、絞り205と、ズーム用レンズ群210と、ズームエンコーダ211と、レンズ制御用マイコン220と、メモリ221とを備えている。
フォーカシング用レンズ群201は、光軸に平行な方向に移動してフォーカシングを行う。フォーカシング機構+アクチュエータ202は、フォーカシング用レンズ群201の位置を読み取り、その位置を目的位置へ移動させる。絞り205は、光量を開口によって調整する。
ズーム用レンズ群210は、光軸に平行な方向に移動して被写体像の拡大および縮小(ズーミング)を行う。ズームエンコーダ211はズーム状態を読み取る。
レンズ制御用マイコン220は、メモリ221から必要なデータを読み出して前述各装置を含めてレンズユニット2全体を制御する。メモリ221は、レンズ制御用マイコン220がレンズユニット2全体の動作を制御するための制御用データに加えて、後に詳述するAF補正用データ(図6)および距離領域データ(図9)を記憶している。
上述のカメラシステム100はカメラボディ側の操作部123を介して行われる使用者の操作に応じて動作する。
次に、カメラシステム100において行われるコントラスト方式のAF制御を説明する。
図2は、液晶モニタ121に表示された5つのAF枠31、32a、32b、33a、33bを示している。本明細書においては、5つのAF枠の位置関係に鑑みて、AF枠31を「AF中央枠」、AF枠32aおよび32bを「AF上下枠」、AF枠33aおよび33bを「AF左右枠」と呼ぶ。なお、AF枠の数および配置は一例であり、適宜変更してもよい。また、AF枠は液晶モニタ121上に設定されているとしたが、これは理解の便宜のための一例である。液晶モニタ121上に表示されることは必須ではない。たとえば液晶モニタ121の表示領域に対応する画像領域において、AF枠を規定すればよい。
本実施形態によるカメラボディ1の演算回路103は、AF動作時、図2に示す各AF枠のコントラストを計測する。そして、たとえばAF中央枠(AF枠31)において、コントラストが最大になった位置、換言すれば、測定されたコントラスト曲線がピークになった位置を特定する。なお、従来のカメラシステムでは、このピーク位置を最良合焦位置として撮影を行っているが、本実施形態においては、その位置を補正することにより、画面中央部についても画面周辺部についても最適なコントラストを得られる位置を最良合焦位置としている。本実施形態による補正処理は後に詳述する。
次に、図3を参照しながら、コントラストの測定について説明する。
図3は、カメラボディ1固有のAF評価周波数を説明する図である。
コントラストの測定は、フォーカシング用レンズ群201が駆動されることにより、焦点位置が連続的に変化している間に行われる。たとえば演算回路103は、焦点位置が連続的に変化している間、AF中央枠(AF枠31)の画像からAF評価周波数帯域の値を次々と求める。この値は、AF評価値または検波値とも呼ばれ、いわゆるコントラスト値に相当する。それらのうちの最大値をコントラストのピークとして特定する。
なお、コントラスト値は以下の式によって求められる。
コントラスト値=(最大光度−最小光度)/(最大光度+最小光度)
ここで、「AF評価周波数」とは、カメラボディ1固有の値であり、コントラスト計測のために使用される周波数帯域を代表する重心周波数である。AF評価周波数n本/mmとは、1mm幅の範囲内に黒および白のラインがn組現れることを意味する。これは、たとえば黒ラインが1mm幅の範囲内にn本現れると言い換えることもできる。カメラボディ1に応じてnの値が定められている。
図3(a)に示すとおり、AF評価周波数が1本/mmのときは、1mm幅の範囲内に黒ラインb1が1本現れている。一方、図3(b)に示すようにAF評価周波数が2本/mmのときは、1mm幅の範囲内には2本の黒ラインb1およびb2が現れている。そして図3(c)に示すようにAF評価周波数が10本/mmのときは、1mm幅の範囲内には10本の黒ラインb1〜b10が現れている。AF評価周波数を低くすればAF評価周波数帯域の値は大きくなるため、コントラストのピークは高くなる。一方、AF評価周波数を高くすればAF評価周波数帯域の値は小さくなるため、コントラストのピークは低くなる。
コントラストのピークは、どの位置のAF枠を用いるかによって変化する。図4は、AF評価周波数を20本/mmとしたときの、AF枠の位置に応じたコントラストのピーク位置P20aおよびP20bと、最良合焦位置Pfocusとの関係を示す。
「画面中央」として、AF中央枠(AF枠31)を用いて検出したコントラスト曲線を示し、「画面周辺」として、AF上下枠(AF枠32aおよび32b)またはAF左右枠(AF枠33aおよび33b)を用いて検出したコントラスト曲線を示す。図から明らかなように、ピーク位置P20aおよびP20bは一致していない。そして、ピーク位置P20aおよびP20bはいずれも、最良合焦位置Pfocusとは異なっている。なお、「画面周辺」とは、例えば0.7像高の位置でありAF上限枠位置や左右枠位置のピーク(P20b)とは異なっている点に留意されたい。
なお、「最良合焦位置Pfocus」とは、AF評価周波数を20本/mmとしたときに、画面中央部についても画面周辺部についてもバランスよくコントラストを得られる位置、換言すれば画面中央(P20a)および画面周辺(P20b)のどちらにも必要十分なレベルで合焦しているとみなせる位置として本実施形態において定義したものである。
最良合焦位置の定義については、上述した位置の他にも種々考えられる。たとえば、画面中央部のAF評価周波数のピーク位置、画面周辺部の像面湾曲を考慮して画面全体が最適となるように前述画面中央部のAF評価周波数のピーク位置から特定量だけシフトした位置である。
なお、コントラストのピークは、レンズユニット2のレンズに存在する球面収差によっても変化する。図5(a)および(b)は、3種類のAF評価周波数に対応するコントラストの各ピーク位置と球面収差との関係を示す。図5(b)に示すような球面収差(アンダー補正)を持つレンズの周波数依存コントラストピーク位置は図5(a)に示すような傾向があることが知られている。なお、レンズに球面収差が存在しない場合、すなわち図5(b)の球面収差を示す形状がy軸に平行な直線として表される場合には、コントラストピーク位置はAF評価周波数に依存せず、どのAF評価周波数であってもコントラストピーク位置は一致する。
再び図4を参照する。本実施形態によるカメラシステム100は、最良合焦位置Pfocusに焦点が来るようフォーカシング用レンズ群201の駆動量を補正する。そのため、まずフォーカシング用レンズ群201を駆動して、あるAF枠についてコントラストが最大となった位置(たとえば図4のピーク位置P20a、P20b)を求め、その後、フォーカシング用レンズ群201の駆動量を補正する。
たとえば、AF中央枠(AF枠31)を用いてコントラストのピークを検出した場合には、検出されたピーク位置P20aがPfocusの位置に来るよう、フォーカシング用レンズ群201の駆動量を補正する。または、AF上下枠(AF枠32aおよび32b)またはAF左右枠(AF枠33aおよび33b)を用いて検出したコントラストのピークを検出した場合には、検出されたピーク位置P20bがPfocusの位置に来るよう、フォーカシング用レンズ群201の駆動量を補正する。
駆動量をどの程度補正すべきかは、コントラストのピークが検出されたAF枠、AF評価周波数、焦点距離f、被写体までの距離等に応じて変動する。しかしながら、それらのすべての組み合わせを規定した補正用データを用意することは現実的ではない。
そこで、本実施形態においては、AF枠、焦点距離、AF評価周波数、被写体までの距離のそれぞれについて、複数の代表値の組み合わせを規定した補正の基準となるデータ(以下「AF補正用データ」と称する。)を設けることとした。
図6は、データ仕様の一例として、F3.5、焦点距離f14〜50mmについてのAF補正用データフォーマットの一例を示す。最至近距離は500mmとしている。このAF補正用データはレンズユニット2固有の値として、メモリ221(図1)に記憶されている。なお先に説明した「AF評価周波数」という語はカメラボディ1に応じて定まる値であるため、混乱を避ける目的で図6では「AF想定周波数」と呼んでいる。
図6に示すAF補正用データは、AF想定周波数として40本/mm、10本/mm、2.5本/mmの3種類の周波数に対応している。そしてそのAF想定周波数の各々が、さらに複数の撮影パラメータで分類され、その撮影パラメータごとに値が記述されている。焦点距離すなわちズーム状態はf14、f25、f50の3種類、被写体距離については、3m、1m、0.6mの3種類、AF枠については、AF中央枠、AF上下枠およびAF左右枠、の3箇所に分類されている。その結果、AF補正用データは合計81個のデータから構成されている。
なお、F値に対応するデータを加えることも可能であるが、本明細書では加えていない。例えば絞りの開口が小さくなるほどAF補正用データ値は小さくなり、AF補正しなくても良くなることが知られている。そこで、本実施形態においてはF8においてレンズユニット2におけるAF補正用データ値が0になることが予め分かっているとする。いま、開放F値とF8との間のF値に対応するAF補正用データを後述する内挿補間演算により算出する方法を採るとする。すると、データ値「0」は記憶する必要はないため、開放F値のAF補正用データのみ記憶すれば十分であり、F値に対応するデータは特に必要ではない。
AF補正用データに記述されている値a−z、A−Z、aa−az、aA−aCは、フォーカシング用レンズ群201の少なくとも一部のレンズを駆動するための、フォーカシング機構+アクチュエータ202(特にアクチュエータ)に印加されるパルス数(またはパルス値)にて表されている。このパルス数を用いてフォーカシング用レンズ群201を駆動すれば、AF想定周波数にてコントラストピークを検出した場合のピーク位置から実際の最良合焦位置Pfocusまでの距離だけ、焦点位置を移動させることができる。それにより、最良合焦位置Pfocusに一致するように焦点位置を移動させることができる。すなわちこのパルス数は、AF動作によるピーク検出後に実際に駆動する位置への焦点シフト量に対応するデータである。以下、図7を参照しながらより詳しく説明する。
図7は、4種類のAF想定周波数毎のコントラスト曲線を示す。このうち、AF想定周波数40本/mm、10本/mm、2.5本/mmの3種類が、図6のAF補正用データとして採用されている。
図7に示すデータは、AF中央枠(AF枠31)において測定したものであり、そのときの焦点距離fは14mm、被写体までの距離は3mである。図7にはまた、最良合焦位置Pfocusの位置も示されている。なお、図7では、AF想定周波数に対応するコントラストピーク位置は、AF想定周波数に対応する添え字を用いて表している。たとえばAF想定周波数40本/mmに対応するコントラストピーク位置は「P40」と表す。
各AF想定周波数のコントラストピーク位置に着目する。最良合焦位置Pfocusを基準とすると、P2.5は左方向にacずれており、P20は右方向にB、P40は右方向にaだけずれている。したがって、このずれ量を解消する方向および距離だけ、それぞれのピーク位置からフォーカシング用レンズ群201を駆動させれば、焦点位置を最良合焦位置Pfocusに移動させることができる。AF枠、焦点距離f、AF想定周波数などを組み合わせた上述の条件下で焦点位置を最良合焦位置Pfocusに移動させるために必要な駆動パルスに対応する値が、図6に記載されている。
上述のとおり、レンズユニット2と組み合わされるカメラボディ1は、固有のAF評価周波数を有している。そのため、そのAF評価周波数が図6に記述されたAF想定周波数とは異なる場合がある。また、撮影条件によっては、焦点距離および被写体までの距離も異なる。そこで本実施形態においては、レンズユニット2の演算回路103は、AF補正用データを内挿補間演算により算出する。これにより、各カメラボディの、各撮影条件に適合するAF補正用データを算出することができ、それにより、焦点位置を最良合焦位置Pfocusに移動させることができる。
次に、図8を参照しながら、カメラシステム100において行われるAF動作を説明する。
図8は、本実施形態によるカメラシステム100のAF処理の手順を示す。本実施形態においては、図4に示す処理は、レンズユニット2のレンズ制御用マイコン220およびカメラボディ1のシステム制御用マイコン120が連携して行うとして説明する。
まず、レンズユニット2の仕様(1)、カメラボディ1の仕様(2)およびレンズ状態条件(3)は以下のとおりとし、当該条件下でシャッターが切られて撮影が行われたとする。
(1)レンズユニット2の仕様:F3.5、焦点距離f14〜50mm、最至近距離500mm、フォーカスストロークの遠側端から最至近側端までの対応パルスは1300パルス
(2)カメラボディ1の仕様:撮像素子101の画素数3136×2352=7375872画素、画素ピッチ5.6μm、撮像サイズ17.5616mm×13.1712mm、対角21.952mm、AF評価周波数5本/mm、映像信号からAF評価周波数の帯域を抽出してコントラストのピーク検出を行う。
(3)レンズ状態条件:F3.5(開放)、ズーム状態(焦点距離)f14mm、被写体までの撮影距離3m
撮影前において、レンズユニット2とカメラボディ1が連結され、カメラボディ1がパワーオンされたときには、システム制御用マイコン120およびレンズ制御用マイコン220は、レンズユニット側通信用接点240およびカメラボディ側通信用接点140を介して互いに通信し、初期処理を行っているとする。初期処理として、たとえばレンズ制御用マイコン220は、メモリ221内に記憶されている図6に示すAF補正用データおよび後述する図9に記載された距離領域データを一括して、カメラボディ1内のシステム制御用マイコン120に送信する。システム制御用マイコン120は受け取ったデータを、メモリ124に格納する。その後、シャッター半押しが行われると、ステップS11からの処理、すなわちAF動作が開始される。
ステップS11において、レンズユニット2のフォーカシング機構+アクチュエータ202は、フォーカシング動作を行う。この動作は、カメラボディ1のシステム制御用マイコン120からレンズユニット2に対して与えられた、ピーク検出のためのフォーカスレンズスキャン駆動指示に基づいている。フォーカシング機構+アクチュエータ202はフォーカシング用レンズ群201の位置パルスデータを読み取り、レンズ制御マイコンを介してカメラボディ1内のシステム制御マイコンに転送しながらフォーカシング用レンズ群201のスキャン駆動を行う。
ステップS12において、演算回路103は、フォーカシング動作の結果得られたパラメータ、ここではコントラストのピーク値を検出したAF枠、ピーク値になるまでにフォーカシング動作に要したパルス値および焦点距離fを特定する。
たとえば、画面中央に位置する中央枠31内にてピーク値が検出されたとする。レンズ制御用マイコン220は、そのピーク値が検出されるまでにフォーカシング動作に要したパルス値(たとえば370パルス)を把握しており、そのパルス値の情報をシステム制御用マイコン120に送る。すると演算回路103はシステム制御用マイコン120を介してパルス値の情報を受け取る。焦点距離fについても、レンズ制御用マイコン220は、ズーム用レンズ群210の状態に基づいて14mmであることを特定することができる。よって、焦点距離fの情報もまた、そのまま演算回路103に送られる。
次に、ステップS13において、演算回路103は、特定されたパルス値、焦点距離fおよび予め設けられた距離領域データに基づいて被写体までの距離を特定する。
図9は、距離領域データの一例を示す。図9によれば、演算回路103は、図7に示す被写体距離3m、1m、0.6mの各々に対応するフォーカスパルス範囲のデータを算出することができる。たとえば焦点距離f14mmにおいて、演算回路103は、無限位置パルス(240パルス)から1.5m位置パルス(500パルス)までを、3mデータに対応するパルス範囲であるとして認識し、1.5m位置パルス(500パルス)から0.75m位置パルス(950パルス)までを1mデータに対応するパルス範囲であるとして認識し、0.75m位置パルス(950パルス)から最至近距離パルス(1200パルス)までを0.6mデータに対応するパルス範囲として認識する。なお、本実施形態においては、遠側端〜最至近側端フォーカス駆動量に対応するパルスは1300であるとする。すなわち遠側端を0パルス、最至近側端を1300パルスとしている。
上述のとおり、本実施形態では、焦点距離f14mm、フォーカシング動作に要したパルス値が370パルスであるとしている。370パルスは無限位置パルス240パルスと1.5m位置パルス500パルスとの間であるため、演算回路103は、その被写体は3m距離領域に存在していたと認識する。
ピーク位置パルスが検出されるとシステム制御用マイコン120はレンズ制御用マイコン220に指示してスキャン動作を中止させ、スキャン駆動をスタートした側へヒステリシスよりも大きい量だけフォーカシング用レンズ群201を一旦戻して停止させる。
再び図8を参照する。ステップS14において、演算回路103は、コントラストのピーク値を検出したAF枠、焦点距離f、カメラボディのAF評価周波数、被写体までの距離および予め設けられたAF補正用データを用いて補間演算を行い、補正パルス値を算出する。
カメラボディ1の仕様(2)において示したように、カメラボディ1のAF評価周波数は5本/mmである。一方、AF補正用データ(図6)にはAF想定周波数として5本/mmは規定されていない。そこで、演算回路103は、5本/mmを間に含むAF想定周波数2.5本/mmおよび10本/mmのデータを利用して補間演算を行うことにより、AF想定周波数5本/mmのデータを求める。
これまでに特定されたコントラストのピーク値を検出したAF枠がAF中央枠であること、焦点距離f14mmおよび被写体までの距離3mによれば、必要とされるAF補正用データは、AF想定周波数10本/mm、被写体距離3m、AF中央枠、焦点距離f14のデータ値Bと、AF想定周波数2.5本/mm、被写体距離3m、AF中央枠、焦点距離f14のデータ値acの2つである。この2つのデータを利用して内挿補間近似演算を行う。たとえば直線補間を行うとすると、2点(x,y)=(2.5,ac)および(10,B)を結ぶ直線上の、x=5におけるy座標値を求めればよく、(B−ac)(5−2.5)/7.5+acとして算出することができる。
なお内挿補間として、一次関数による補間(直線補間)のほか、最小2乗近似による補間、3次補間、ラグランジュ補間、スプライン補間、Sinc関数による補間、Lanczos補間(ランツォシュ補間)などを行ってもよい。
上述の処理の結果、必要なAF想定周波数5本/mm、被写体距離3m、焦点距離f14mmのパルス値(「補正パルス値」と呼ぶ。)が算出される。
なお、撮影条件によっては、レンズユニット2の焦点距離がf14、f25、f50の間に位置し、データが存在しないこともある。そのときは、演算回路103は、レンズユニット2からのズーム位置情報によって存在しているデータを利用して内挿補間近似演算を行い、補正パルス値を算出すればよい。
次に、ステップS15において、演算回路103が、算出した補正パルス値およびコントラストのピーク値に対応するパルス値をシステム制御用マイコン120に送ると、システム制御用マイコン120はそれらをレンズ制御用マイコン220に送る。フォーカシング機構+アクチュエータ202は、それらの値に基づいてフォーカシング用レンズ群201を駆動し、フォーカシング動作を行う。フォーカシング動作の結果、焦点は最良合焦位置Pfocusに移動する。そしてAF動作が終了する。
以上のように、本実施形態によれば、コントラスト方式AF交換レンズカメラシステム100において、レンズの残存球面収差量の異なる複数種類の交換レンズ群と、AF評価周波数の異なる複数種類のカメラ群とをどのように組み合わせても、最良合焦位置におけるAFが可能になる。
なお、上述の説明においては、図9に示す距離領域データは、図6に示すAF補正値と同様に一括してシステム制御用マイコン120に送られるとしたが、一括して送られなくてもよい。たとえばレンズユニット2内の演算回路103またはシステム制御用マイコン120において内挿補間近似演算を行わせた後、現在のズームポジションにおける、無限位置パルス、1.5m位置パルス、0.75m位置パルス、最至近距離パルス、の4個のデータのみを送信してもよい。
また、上述の説明においては、図9に示す距離領域データによって決定されるパルス範囲内であれば、フォーカシング動作に要したパルス値がその範囲内のどの値であっても、図6に示される1個の値を適用していた。しかしながら、領域の中央をそれぞれ3mパルス位置、1mパルス位置、0.6mパルス位置として、その位置に図6のデータを対応させ、その間は内挿補間演算を行ってAF補正値を算出してもよい。この方法によれば、距離依存AF補正値の精度の向上を図ることができる。
ここで、フォーカシング用レンズ群201およびズーム用レンズ群210を含むレンズ光学系は、本発明の光学系の一例である。フォーカシング用レンズ群201、フォーカシング用レンズ群201の位置読取と目的位置への移動を行うフォーカシング機構+アクチュエータ202は、本発明のフォーカシング機構の1例である。
マイコン120および220は、AF用補正データを演算する演算部の一例である。さらに、システム制御用マイコン120において、信号処理回路102および演算回路103の処理を行わせることもできる。システム制御用マイコン120、信号処理回路102および補正演算回路103は、1つの演算回路として実装することが可能であり、この演算回路もまた演算部の一例である。連結装置230は、本発明の連結手段の1例である。記憶手段に記憶される2以上のAF想定周波数に対応するコントラストピーク位置と実際の最良合焦位置との距離についてのデータ群は、即値であってもよいし、再現可能なデータ変換を施したデータであってもよい。
AF枠対応については、画面中央部対応のAF中央枠のみであってもよい。2以上の想定AF評価周波数に対応するコントラストピーク位置と実際の最良合焦位置との距離についてのデータ群を利用する演算算出は2以上のデータの内、カメラボディ固有のAF評価周波数に最も近いAF想定周波数に対応するデータを選択決定するようにしてもよい。2以上の想定AF評価周波数に対応するコントラストピーク位置と実際の最良合焦位置との距離についてのデータ群は、AFを実施する場合のF値に対応するようにF値毎に2個以上設けてもよい。
また、フォーカシング動作が行われるときのF値が所定値よりも大きいときは、演算回路103は、補正を行わないよう、補正量0に対応する補正値を算出してもよい。
本実施形態においては、内挿補間演算によって補正パルス値を求めた。しかしながら、内挿補間演算は補間演算の一例であり、外挿補間演算を行ってもよい。AF想定周波数または焦点距離fを求めようとするとき、それぞれについて少なくとも2つのAF補正用データを予め設けておけば、内挿補間演算および外挿補間演算を組み合わせて目的とするデータを得ることが可能である。
一方、補間演算を行わない方法も考えられる。たとえば演算回路103は、AF評価周波数に最も近い想定AF周波数を特定し、特定したAF想定周波数に対応するAF補正用データを採用して補正パルス値を求めてもよい。
また、図8に示すカメラシステム100の処理のうち、カメラボディ1の処理は、主として演算回路103およびシステム制御用マイコン120が連携して動作することによって実現されるとして説明した。しかしながら、システム制御用マイコン120または演算回路103のいずれか一方のみが当該処理を行ってもよい。たとえばシステム制御用マイコン120が処理を行う場合には、メモリ124に予め格納されていたソフトウェアをシステム制御用マイコン120が実行するよう構成してもよい。この構成によれば、図8の処理に対応するレンズユニット2と接続可能なカメラボディであれば、後にソフトウェア更新が行われることにより、上述した図8の処理をレンズユニット2とともに実現できるようになる。
本発明は、レンズの残存球面収差量の異なる複数種類の交換レンズ群と、AF評価周波数の異なる複数種類のカメラ群からなるコントラスト方式AF交換レンズカメラシステムにおいて、適用が可能であり、ライブビューモードを備えたデジタル一眼レフカメラシステムに特に適している。
本発明の実施形態による交換レンズカメラシステム100の構成を示す図である。
液晶モニタ121に表示された5つのAF枠31、32a、32b、33a、33bを示す図である。
カメラボディ1固有のAF評価周波数を説明する図である。
AF評価周波数を20本/mmとしたときの、AF枠の位置に応じたコントラストのピーク位置P20aおよびP20bと、最良合焦位置Pfocusとの関係を示す図である。
(a)および(b)は、3種類のAF評価周波数に対応するコントラストの各ピーク位置と球面収差との関係を示す図である。
データ仕様の一例として、F3.5、焦点距離f14〜50mmについてのAF補正用データフォーマットの一例を示す図である。
4種類のAF想定周波数毎のコントラスト曲線を示す図である。
本実施形態によるカメラシステム100のAF処理の手順を示すフローチャートである。
距離領域データの一例を示す図である。
1 カメラボディ
2 レンズユニット
100 カメラシステム
101 撮像素子
102 信号処理回路
103 演算回路
105 シャッター
110 光学ファインダー装置
124、221 メモリ
120 システム制御用マイコン
121 液晶モニタ
122 リーダ/ライタ
123 操作部
130 カメラボディ側連結装置
140 カメラボディ側通信用接点
201 フォーカシング用レンズ群
202 フォーカシング機構+アクチュエータ
205 絞り装置
210 ズーム用レンズ群
211 ズームエンコーダ
220 レンズ制御用マイコン
230 レンズユニット側連結装置
240 レンズユニット側通信用接点