JPWO2008041772A1 - 籠状シルセスキオキサン化合物の粉体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、簡単な操作で、籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法を提供することを課題とする。本発明では、特定の構造を有する籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体とアルコキシシランの反応により籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液を得、更に薄膜蒸留機で処理することによって、高品質の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体が得られる。

Description

本発明は籠状シルセスキオキサン化合物の乾燥、粉体化方法に関するものである。更に詳しくは特定の構造を有する籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体とアルコキシシランの反応より、籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液より、溶媒留去と粉体化を同時に行い、簡単な操作で工業的に有用な籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する技術に関するものである。すなわち本発明により、簡単な操作で、残留溶剤が少なく、かつ、工業的に利用しやすい籠状シルセスキオキサン化合物の微粒子状粉体を得ることが可能となった。
籠状シルセスキオキサン化合物は、熱可塑性樹脂の改質用添加剤として極めて有用である。特にポリフェニレンエーテル系樹脂やポリカーボネート系樹脂と、籠状シルセスキオキサンからなる樹脂組成物において、溶融成型性の改善と、非ハロかつ非リン系添加剤による、難燃性改善を同時に実現することができる。
これらの樹脂組成物を溶融押し出しによって混練する際の籠状シルセスキオキサン化合物の添加方法としては、熱可塑性樹脂と籠状シルセスキオキサン化合物をプレミックスしてから押し出し混練する方法と、押し出し途中でサイドフィードより籠状シルセスキオキサンを添加する方法がある。
熱可塑性樹脂への籠状シルセスキオキサン添加方法は、プレミックスによる方法が望ましいが、籠状シルセスキオキサン化合物はワックス状のものや凝集し易いものが多く、熱可塑性樹脂とプレミックスする際に、籠状シルセスキオキサン化合物の固まりや粒径が大きい物をそのまま使用すると、押し出し混練されたペレットへの籠状シルセスキオキサン化合物の分散が不均一になる場合がある。従って均一に分散させるためには、籠状シルセスキオキサン化合物を粉砕等である程度の範囲の粒径にそろえる必要があった。
籠状シルセスキオキサン化合物の製造法としては、籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体であるトリシラノール化合物からのキャッピングすることで製造する方法が報告されており、例えば、トリシラノール化合物と、ニトロベンゼン溶液中でRSiClで表されるトリクロロシランの混合物に、ピリジンを加えることによって反応させ、結晶が析出することによって目的物を得ている(非特許文献1)。
また籠状シルセスキオキサンに官能基を導入する方法として、籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体にクロロシラン系化合物と反応化剤としてトリエチルアミンを用いた当量反応が報告されている(特許文献1、2)。
しかしながら上記の方法では、副生成物として塩であるトリエチルアンモニウムクロライドが多量に生成するため、当該副生成物の分離と目的物の精製に繁雑な操作と、多大なエネルギーを要する。
また別の方法として、トリシラノール化合物をアルコキシシランでキャッピングする方法が、報告されているが、いずれも精製段階は貧溶媒のアセトニトリル等での再沈によるため、収率が低いといった問題があった(特許文献3〜5)。
一方、本発明者は以前に籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体の末端シラノール基をアルコキシシランでキャッピングする方法を発明した。具体的には、アミノ基を含有するアルコキシシランを用いる場合、籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体と、アルコキシシランを接触させることによって、キャッピングする方法と、アミノ基を含有していないアルコキシシランを用いる場合、触媒としてルイス塩基を用いてキャッピングする方法を発明した(特許文献6、7)。
上記の方法は、溶剤を蒸留等の方法で取り除く際に触媒も蒸留で除去することができるので、高純度の籠状シルセスキオキサン化合物を簡単な操作で得ることができる。
しかしながら、いずれの方法も籠状シルセスキオキサン化合物の製造の際に、蒸留等の方法で溶剤を取り除くと、籠状シルセスキオキサン化合物は凝集しやすい場合が多い。さらに残留溶剤量を低減させるため、凝集した状態で長時間加熱した条件下で乾燥させると、製造した籠状シルセスキオキサン化合物の中には分解しやすいという問題もある。従って、溶剤をある程度、蒸留等で除去した後に凝集された化合物を粉砕等の工程を経て、粉体化させた後に乾燥させる必要があり、簡易に乾燥と同時に粉体化することが望まれていた。
Brown & Vogt, J.Amer.Chem.SOC.,(1965), 4313 米国特許第5484867号公報 国際公開第01/010871号パンフレット 国際公開第03/064490号パンフレット 国際公開第03/042223号パンフレット 国際公開第04/063207号パンフレット 特開2004−51847号公報 特開2004−51848号公報
本発明は、このような現状を鑑み、ポリマー添加剤として有用な、各種籠状シルセスキオキサン化合物を、簡単な操作で、残留溶剤量が少なく、高収率で取り扱いが容易な粉体を製造する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は上記目的を達成する方法を開発すべく鋭意研究を行った結果、特定の構造を有する籠状シルセスキオキサン化合物溶液から、薄膜蒸留によって、高品質の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を簡単かつ高収率で製造出来る方法を見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、
(1) 一般式(A)で表されるトリシラノール化合物と一般式(B)で表されるアルコキシシランを有機溶媒中、ルイス塩基存在下にて反応させ、籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液を得、次いで該溶液を薄膜蒸留機を用いて溶媒留去と粉体化を同時に実施する籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
(RSiO3/2(RSiOH) (A)
Si(OR4−m (B)
(一般式(A)において、Rは水素原子、炭素原子数1から10の置換又は非置換の炭化水素基又はケイ素原子数1から3のケイ素原子含有基から選ばれ、複数のRは同一でも異なっていても良い。nは2から10の整数である。一般式(B)において、RはRと同じ群から選ばれる基であり、複数のRは同じでも異なっていても良い。ORは炭素原子数1から6のアルコキシル基である。mは1から3の整数である。)
(2) 該一般式(B)で表されるアルコキシシランのRが置換基としてアミノ基を有する、(1)に記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
(3) 該ルイス塩基が該アミノ基含有アルコキシシランである、(2)に記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
(4) 該ルイス塩基が、炭素数1以上20以下のアミン化合物である(1)に記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
(5) 該籠状シルセスキオキサン化合物が、下記一般式(C)〜(E)のいずれかの構造で表される(1)に記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
(RSiO3/2n+3(RSiO3/2) (C)
(RSiO3/2n+h(RSiOH)3−h(R SiO(4−m)/2 (D)
(RSiO3/2n+3(R 2SiO)(R 2SiO3/2H) (E)
(n、RおよびRは上記請求項1に記載と同じである。m=2又は3であり、m=2の場合にはi=1、h=2であり、m=3の場合にはi=h=1から3の整数である。)
(6) 該一般式(A)で表されるトリシラノール化合物が、
(RSiO3/2(RSiOH)
であり、該一般式(B)で表されるアルコキシシランが
Si(OR
であり、該トリシラノール化合物と該アルコキシシランの反応で得られる籠状シルセスキオキサン化合物が
(RSiO3/2(RSiO3/2
(RおよびRは上記請求項1に記載と同じである。)
である(1)から(5)のいずれかに記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
(7) 該籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液の溶媒が炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、極性溶媒から選ばれる少なくとも1種以上の溶媒と、炭素数1から8のアルコール性溶媒からなる混合溶媒であり、かつ該混合溶媒100wt%に対し、該アルコール性溶媒が、1wt%以上、95wt%以下の範囲で含まれる、(1)から(6)のいずれかに記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
(8) 籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液の薄膜蒸留機で処理される際の粘度が、0.1cp以上1000cp以下の範囲である、(1)から(7)のいずれかに記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
(9) 薄膜蒸留機の内壁温度が、籠状シルセスキオキサンの融点又は軟化開始温度のいずれかの低い温度より10℃以上低い温度である、(1)から(8)のいずれかに記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
(10) 該籠状シルセスキオキサン化合物の融点又は軟化開始温度のいずれかの低い温度が50℃以上である、(1)から(9)のいずれかに記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
(11) 該籠状シルセスキオキサン化合物の粉体中に含まれる残留溶剤量が3wt%以内である、(1)から(10)のいずれかに記載された方法で製造された籠状シルセスキオキサン化合物の粉体。
(12) 一般式(A)で表されるトリシラノール化合物が、以下の工程で示されるアルカリ金属化合物の除去処理されたものである、(1)から(10)のいずれかに記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
(a)トリシラノール化合物を含む組成物を、20℃における水の溶解度が1.0重量%以下である疎水性有機溶媒と接触させて、疎水性有機溶媒に一般式(A)で表されるトリシラノール化合物を溶解させる
(b)該疎水性有機溶媒相から微粒子分散質を除去する
(13) 該微粒子分散質を除去する工程が、平均孔径0.005μm以上、100μm以下の疎水性フィルターによるろ過処理工程である、(12)に記載の籠状シルセスキオキサンの粉体を製造する方法。
に関するものである。
本発明の製造方法によれば、簡単な操作で、残留溶剤が少なく、かつ、工業的に利用しやすい籠状シルセスキオキサン化合物の微粒子状粉体を得ることが可能となる。
以下に本発明を詳細に説明する。
シルセスキオキサン化合物とは、シリカがSiOで表されるのに対し、[R’SiO3/2]で表される単位からなる化合物である。シルセスキオキサンは通常はR’SiX(R’=水素原子、有機基、シロキシ基、X=ハロゲン原子、アルコキシ基)型化合物の加水分解−重縮合で合成されるポリシロキサンであり、分子配列の形状として、代表的には無定形構造、ラダー状構造、籠状(完全縮合ケージ状)構造あるいはその部分開裂構造体(籠状構造からケイ素原子が一原子欠けた構造や籠状構造の一部ケイ素−酸素結合が切断された構造)等が知られている。
本発明で製造される籠状シルセスキオキサン化合物とは、籠状構造を有するシルセスキオキサン化合物である。具体的には籠状(完全縮合ケージ状)構造あるいは、その部分開裂構造体(籠状構造からケイ素原子が一原子欠けた構造や籠状構造の一部ケイ素−酸素結合が切断された構造)であり、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物と、一般式(B)で表されるアルコキシシランを反応させ、薄膜蒸留機によって粉体・乾燥化させて得られた縮合生成物である。
(RSiO3/2(RSiOH) (A)
Si(OR4−m (B)
先ず、本発明で用いられる下記の一般式(A)で表されるトリシラノール化合物について説明する。
(RSiO3/2(RSiOH) (A)
一般式(A)において、Rは水素原子、炭素原子数1から20の置換又は非置換の炭化水素基又はケイ素原子数1から10のケイ素原子含有基から選ばれ、複数のRは同一でも異なっていても良い。nは2から10の整数である。
本発明で用いられる一般式(A)で表されるトリシラノール化合物は、分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物である。その例としては[RSiO3/2[RSiOH]の化学式で表されるタイプ(下記一般式(1))、[RSiO3/2[RSiOH]の化学式で表されるタイプ(下記一般式(2))、[RSiO3/2[RSiOH]の化学式で表されるタイプ(例えば下記一般式(3))、[RSiO3/2[RSiOH]の化学式で表されるタイプ(例えば下記一般式(4))、[RSiO3/210[RSiOH]の化学式で表されるタイプ(例えば下記一般式(5))が挙げられる。
Figure 2008041772
Figure 2008041772
Figure 2008041772
Figure 2008041772
Figure 2008041772
本発明の一般式(A)[RSiO3/2[RSiOH]で表されるトリシラノール化合物におけるnの値としては、2から10の整数であり、好ましくは4,6あるいは8であり、より好ましくは、4、6または4,6の混合物あるいは4,6,8の混合物であり、特に好ましくは4である。
本発明で使用されるトリシラノール化合物の合成例としては、例えばBrown等により報告されているJ.Am.Chem.Soc.1965,87,4313に記載の方法などが挙げられる。より具体的には、例えばシクロヘキシルトリクロロシランを水/アセトンで処理することによって一般式(2)で示されるトリシラノール化合物を合成することができる。またLichtenhan等により報告されている国際公開第01/010871号パンフレットに記載の方法が挙げられる。より具体的には、イソブチルアルコキシシランをアセトン/メタノールの混合溶液中、水酸化リチウムと水を反応させ、塩酸等の酸で中和することにより得ることができる。
本発明に使用される一般式(A)で表される化合物におけるRの種類としては水素原子、炭素原子数1から10の置換又は非置換の炭化水素基、またはケイ素原子数1から3のケイ素原子含有基が挙げられる。
炭素数1から10までの炭化水素基の中でも、好ましくは脂肪族の炭素数1から6までの炭化水素基と、芳香族の炭素数6から10までの炭化水素基である。より好ましくは炭素数1から5の非環式の脂肪族炭化水素基並びに炭素数5または8の環式の脂肪族炭化水素基である
その具体例としては、例えば、メチル、エチル、n―プロピル、i-プロピル、ブチル(n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、sec-ブチル)、ペンチル(n―ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル等)、ヘキシル(シクロヘキシル等)等の非環式又は環式の脂肪族炭化水素基、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルエチル、ノルボルネニルエチル、ヘプテニル、オクテニル等の非環式及び環式アルケニル基、ベンジル、フェネチル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル等のアラルキル基、PhCH=CH−基のようなアラアルケニル基、フェニル基、トリル基あるいはキシリル基のようなアリール基、4−アミノフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ビニルフェニル基のような置換アリール基等が挙げられる。
又、本発明に使用されるRとしてはこれらの各種の炭化水素基の水素原子又は主鎖骨格の一部がエーテル結合、エステル基(結合)、水酸基、チオール基、チオエーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、カルボン酸無水物結合、チオール基、チオエーテル結合、スルホン基、アルデヒド基、エポキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アミド基(結合)、イミド基(結合)、イミノ基、ウレア基(結合)、ウレタン基(結合)、イソシアネート基、シアノ基等の極性基(極性結合)あるいはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等から選ばれる置換基で部分置換されたものでも良い。
Rとして採用されるケイ素原子数1〜3のケイ素原子含有基としては、広範な構造のものが採用されるが、例えば下記一般式(6)、あるいは一般式(7)の構造の基が挙げられる。ケイ素原子の数が大きくなりすぎると籠状シルセスキオキサン化合物は粘ちょうな液体となり、15℃から30℃の範囲で固体で存続しないため好ましくない。
Figure 2008041772
一般式(6)中のkは、1〜3の範囲の整数である。また、一般式(6)中の置換基R及びRは、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、塩素原子、又は炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基以外の有機基である。
当該アルコキシ基の例としてはメトキシ基、エトキシ基、ブチルオキシ基等が挙げられる。
当該炭素数1〜10のアルコキシ基以外の有機基の例としては、各種の置換又は非置換の炭化水素基が挙げられ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシル−エチル基等の脂肪族炭化水素基;ビニル基、エチニル基、アリル基、2−シクロヘキセニル−エチル基等の不飽和炭化水素結合含有基;フェニル基、ベンジル基やフェネチル基のような芳香族炭化水素基;3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基等の含フッ素アルキル基やCFCFCFOCHCHCH−基のような含フッ素エーテル基のようなフッ素原子含有基;アミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基、アミノエチルアミノフェネチル基、アクリロキシプロピル基、シアノプロピル等の極性置換基による部分置換炭化水素基が挙げられる。なお、一般式(6)において、同一のケイ素原子に2個以上の水素原子が同時に連結することはない。一般式(6)で表されるケイ素原子含有基の具体的例としては、例えばトリメチルシロキシ基(MeSi―)、ジメチルフェニルシロキシ基(MePhSiO―)、ジフェニルメチルシロキシ基、フェネチルジメチルシロキシ基、ジメチル−n−ヘキシルシロキシ基、ジメチルシクロヘキシルシロキシ基、ジメチルオクチルシロキシ基、(CHSiO[Si(CHO]−(l=1又は2)、2−フェニル−2,4,4,4−テトラメチルジシロキシ基(OSiPhMeOSiMe)、4,4−ジフェニル−2,2,4−トリメチルジシロキシ(OSiMeOSiMePh)、2,4−ジフェニル−2,4,4−トリメチルジシロキシ(OSiPhMeOSiPhMe)、ビニルジメチルシロキシ基、3−グリシジルプロピルジメチルシロキシ基、3−アミノプロピルジメチルシロキシ基(HNCHCHCHMeSiO−)、MeNCHCHCHMeSiO−、HNCHCHCHMe(HO)SiO−、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメチルシロキシ基(HNCHCHNHCHCHCHMeSiO−)、MeHNCHCHNHCHCHCHMeSiO−、HOCHCHHNCHCHNHCHCHCHMeSiO−、CHCOHNCHCHNHCHCHCHMeSiO−、HNCHCHNHCHCHCHMe(HO)SiO−等が挙げられる。
Figure 2008041772
一般式(7)において、Raは炭素数1〜4の2価の炭化水素基であり、炭素数としては、好ましくは2または3である。Raの具体例としては、例えば、−CHCH−、−CHCHCH−等のアルキレン基があげられる。
一般式(7)におけるR,R,Rの定義は、それぞれ一般式(6)中のR,R,Rと同じである。また、R,Rの定義は、R,Rと同じである。k は、0または1〜3の範囲の整数であるが、好ましくは0、1または2である。
本発明によって得られる籠状シルセスキオキサン化合物を電子材料用途に使用する場合は、籠状シルセスキオキサン化合物中のイオン性不純物、特にアルカリ金属イオンあるいはアルカリ金属塩などのアルカリ金属化合物の含有量を少なくすることが必要である。その場合は、出発物質の一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の段階でアルカリ金属化合物を取り除いたものを使用することが好ましい。
本発明に使用する一般式(A)で表されるトリシラノール化合物からアルカリ金属化合物を取り除く方法としては、
「(1)少なくとも一般式(A)で表されるトリシラノール化合物とアルカリ金属化合物の両方を含有する組成物を、20℃における水の溶解度が1.0重量%以下である疎水性有機溶媒と接触させて疎水性有機溶媒に一般式(A)で表されるトリシラノール化合物を溶解させるとともに、微粒子分散質を含む有機相を取得する工程と、(2)前工程で得られた一般式(A)で表されるトリシラノール化合物と微粒子分散質を含有する有機相から微粒子分散質を分離する工程とを含むことを特徴とする一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の精製方法」、
「前記の微粒子分散質を分離する工程(2)がろ過処理工程であることを特徴とする一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の精製方法」、および
「アルカリ金属化合物を含有する一般式(1)または(2)で表される一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の精製方法であって、(1’)少なくとも一般式(A)で表されるトリシラノール化合物とアルカリ金属化合物の両方を含有する組成物を、20℃における水の溶解度が1.0重量%以下である疎水性有機溶媒と接触させて疎水性有機溶媒に一般式(A)で表されるトリシラノール化合物を溶解する工程と、(2’)前工程で得られた有機相をろ過処理する工程とを含むことを特徴とする一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の精製方法」、が挙げられる。
本発明における微粒子分散質はアルカリ金属化合物を含む。
アルカリ金属化合物とは、アルカリ金属原子を有する化合物の総称である。アルカリ金属原子は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれる金属原子である。アルカリ金属化合物の例としては、アルカリ金属塩(有機酸塩、および無機酸塩)、塩基性アルカリ金属化合物(アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属アルコキシド等)等が挙げられる。
トリシラノール化合物中に、一種類のアルカリ金属化合物が含有されていてもよいし、複数の化合物が含まれていてもよい。
アルカリ金属塩を形成する有機酸塩の例としては、有機カルボン酸塩、有機スルホン酸塩、有機ホスホン酸塩等の広範な種類の有機酸塩が挙げられる。有機カルボン酸塩の例としては、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩等の飽和カルボン酸塩や、クロトン酸、アクリル酸塩等の不飽和カルボン酸塩、安息香酸塩等の芳香族カルボン酸塩、蓚酸塩、トリクロロ酢酸塩やトリフルオロ酢酸塩等のハロゲン原子含有カルボン酸塩が挙げられる。
本発明に使用されるアルカリ金属塩を形成する無機酸塩としては、広範な種類の無機酸塩が挙げられるが、無機酸塩の例としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、次亜燐酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ケイ酸塩、沃素酸塩、ハロゲン化水素酸塩(例えば、フッ酸化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、沃化水素酸塩)等である。
本発明におけるアルカリ金属化合物は、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の製造に使用した塩基性アルカリ金属化合物、それが合成反応中あるいはその後に変性したもの、あるいは一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の製造工程での酸処理によりアルカリ金属塩に変性したものでもよい。
本発明の精製に用いられる疎水性有機溶媒としては、20℃における水の溶解度が1.0重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下の有機溶媒が使用される。疎水性有機溶媒に対する水の溶解度が少ない有機溶媒ほど、アルカリ金属化合物を除去する精製操作が容易となるので好ましい。
本発明で使用される疎水性有機溶媒としては、精製の対象となる一般式(A)で表されるトリシラノール化合物を20℃において1重量%以上、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、最も好ましくは20重量%以上溶解する有機溶媒が使用される。
本発明に使用される疎水性有機溶媒の具体例としては、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ノナン、2,2,5−トリチルヘキサン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ビフェニル、スチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチル、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチル、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、塩化アリル、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル等の疎水性エーテル系溶媒等が挙げられる。
これらの各種の疎水性有機溶媒の中でも、脂肪族炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒が、操作性と精製効果の点でより好ましい。これらの疎水性有機溶媒は2種類以上の複数の溶媒を混合したものでもよい。
以下に、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の精製工程について説明する。
以下に上記精製方法の工程(1)、(1’)、(2)および(2’)について説明する。
b−1)一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の精製工程(1)および(1’)
本発明の工程(1)および(1’)に使用される「少なくとも一般式(A)で表されるトリシラノール化合物とアルカリ金属化合物の両方を含有する組成物」は、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物とアルカリ金属化合物を含んだものであればよく、それ以外に、各種の化合物、物質、溶媒等を含んでいてもよい。
例えば、当該組成物は、アルカリ金属化合物以外の各種の有機化合物、無機化合物、有機・無機複合化合物や塩類を含んでいてもよいし、シルセスキオキサンポリマーやケイ素原子含有オリゴマー等の一般式(A)で表されるトリシラノール化合物以外のケイ素化合物を含有してもよいし、ケイ素原子を含有しない各種のポリマーやオリゴマーを含んでもよいし、さらには水やそれ以外の溶媒を含んでいてもよい。したがって、本発明の工程(1)および(1’)に使用される「少なくとも一般式(A)で表されるトリシラノール化合物とアルカリ金属化合物の両方を含有する組成物」は、固体状でも、液体状でも、分散液状でもよい。
本発明の工程(1)および(1’)に使用される「少なくとも一般式(A)で表されるトリシラノール化合物とアルカリ金属化合物の両方を含有する組成物」の好ましい形態の一つは、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の含有量が80重量%以上の組成物である。この場合の工程(1)および(1’)に使用される組成物における一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の含有量は、当該工程の操作性および効率性の点から、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、最も好ましくは99重量%以上である。一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の含有量が低すぎると操作効率が低下する。
本発明の工程(1)および(1’)のもう一つの好ましい実施形態は、「工程(1)および(1’)が、少なくとも一般式(A)で表されるトリシラノール化合物とアルカリ金属化合物の両方を含有する水性分散液組成物を疎水性有機溶媒に接触させて疎水性有機溶媒に一般式(A)で表されるトリシラノール化合物を抽出させた後に相分離させて、疎水性有機溶媒に一般式(A)で表されるトリシラノール化合物を溶解させるとともに、微粒子分散質を含む有機相を取得する工程であることを特徴とする一般式(A)で表されるトリシラノール化合物精製方法」である。
上記の水性分散液組成物とは、水媒体あるいは少なくとも水を含む混合媒体中に、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物が分散し、アルカリ金属化合物が溶解および/または分散した組成物である。水性分散液組成物の具体例としては、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物を製造する工程で生じた「水含有媒体に一般式(A)で表されるトリシラノール化合物が分散し、かつ、アルカリ金属化合物が溶解あるいは懸濁した組成物」が挙げられるが、これに限定されるものではない。
水性分散液組成物を疎水性有機溶媒に接触させることにより、疎水性有機溶媒に一般式(A)で表されるトリシラノール化合物は抽出される。この操作の後、水相と疎水性有機溶媒相を相分離させて疎水性有機溶媒相を分離すると、疎水性有機溶媒に一般式(A)で表されるトリシラノール化合物が溶解し、かつ、微量の微粒子分散質を含んだ有機相が得られる。
上記の水性分散液組成物における水の含有量は、水性分散液組成物を疎水性有機溶媒と接触させた場合に、水相と有機相の二相系を形成するのに十分な水があればよい。しかしながら、実用的な操作性を得る為には、水性分散液組成物中の水の含有量の下限は、好ましくは1重量%、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは20重量%、最も好ましくは30重量%である。一方、水含有量の上限は、好ましくは99重量%、より好ましくは95重量%、さらに好ましくは90重量%、最も好ましくは85重量%である。水含有量が少なすぎると有機相と水相の二相系を形成しにくくなり、水含有量が多すぎると一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の生産効率が悪くなる。なお、水含有量が少なくて有機相と水相の二相系を形成しにくくなる場合でも、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物を溶解した均一溶液と、微粒子分散質あるいはそれ以外の不溶成分を分離することにより本発明の精製方法を遂行できる。
b−2)一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の精製工程(2)および(2’)
本発明の精製工程(2)における微粒子分散質と一般式(A)で表されるトリシラノール化合物との分離する方法としては、各種の分離法が採用可能である。その分離法の具体例としては、ろ過法、遠心分離法、吸着法(例えば、極性物質に対する吸着剤による処理)、カラム分離法等が挙げられるが、これらに限定されるものではないし、複数の方法を組み合わせてもよい。これらの分離法の中では、操作の簡便性と分離の効率性からろ過処理法が好ましい。
本発明の精製工程(2)および(2’)に用いられるろ過処理法としては、フィルターによるろ過がより好ましい。ろ過法と吸着法の組み合わせのように、ろ過処理方法とそれ以外の処理方法を組み合わせて実施してもよい。
ろ過に使用するフィルター材料としては、天然高分子、合成高分子、セラミックス、金属等の様々な材料が使用可能であり、その形態は、各種の多孔質膜状構造体(平膜状、プリーツ状膜や中空糸膜状等)、焼結体構造等の各種の多孔質構造体、布状や不織繊維状構造体あるいは微粒子状物質充填構造体が挙げられる。さらには、ろ過助剤を用いたフィルターによるろ過であってもよい。
多孔質フィルターの平均孔径は0.005μm以上、100μm以下が好ましいが、操作の簡便性から、より好ましくは0.01μm以上、10.0μm以下、さらに好ましくは0.01μm以上5.0μm以下、最も好ましくは0.01μm以上、3.0μm以下のものである。
フィルターの形状は、操作上の利便性からは、メンブレンフィルターが好ましい。メンブレンフィルターの形態は、平膜状、プリーツ状膜や中空糸膜状等の各種の形態をとりうる。これらのメンブレンフィルターの中でも操作性と精製効率の点からはメンブレンフィルターがより好ましい。
疎水性メンブレンフィルターの構成材料としては、25℃〜35℃における水との接触角が好ましくは40度以上、より好ましくは60度以上、さらに好ましくは70度、最も好ましくは85度以上の疎水性の材料が使用される。
疎水性メンブレンフィルターの具体例としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルホン等を材料としたメンブレンフィルターが挙げられる。その中でも、使用可能な溶剤の範囲の広さと精製効率の点から、PTFEからなる疎水性メンブレンフィルターが特に好ましく用いられる。
これらの疎水性メンブレンフィルターは、各種の形態で使用され、例えば、平膜状、プリーツ状膜、中空糸膜状等の各種の形態が挙げられる。
本発明の方法に使用される疎水性メンブレンフィルターの平均孔径は0.005μm以上、100μm以下が好ましく、より好ましくは孔径0.01μm以上、10.0μm以下、さらに好ましくは0.01μm以上5.0μm以下、最も好ましくは0.01μm以上、3.0μm以下である。
本発明において、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物からのアルカリ金属化合物の除去は、例えば、陰イオンまたは陽イオンによるイオンクロマトグラフィー、ICP(誘電結合プラズマ発光分析)、IR等を用いることによって容易に確認できるが、測定限界能の良さから、ICPが好ましい。
工程(2)あるいは(2’)で得られた一般式(A)で表されるトリシラノール化合物を含有する溶液から各種の方法で溶媒を除去すると、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物が得られるが、本発明の好ましい実施形態の一つは、「工程(2)あるいは(2’)で得られた一般式(A)で表されるトリシラノール化合物を含有する溶液に、更に一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の貧溶媒を添加することによって、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物を析出させる工程を付加することを特徴とする一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の精製方法」が挙げられる。
この方法の活用例を以下に説明する。例えば、塩基性アルカリ金属化合物を用いた一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の製造法においては、目的の一般式(A)で表されるトリシラノール化合物以外にオリゴマー状のシルセスキオキサン化合物が生成する場合がある。そのような場合でも、貧溶媒添加処理を施すと、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物のみが選択的に析出し、オリゴマー状のシルセスキオキサン化合物は溶液中に残存するので、この操作により簡単に一般式(A)で表されるトリシラノール化合物とオリゴマー状のシルセスキオキサン化合物が分離できる。
この操作に使用される貧溶媒は、上記工程に使用される疎水性有機溶媒に混和しうる溶媒であり、かつ、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の溶解度が低い溶媒であればよい。具体的には、貧溶媒としては、20℃における一般式(A)で表されるトリシラノール化合物の溶解度が好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満であるものが使用される。
貧溶媒の具体例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒が挙げられるが、それに限定されるものではない。
次に一般式(B)で表されるアルコキシシランについて説明する。
Si(OR4−m 一般式(B)
一般式(B)において、Rは一般式(A)におけるRと同じ基の群から選ばれ、複数のRは同じでも異なっていても構わない。また、ORは炭素数1から6のアルコキシル基である。当該アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ等が挙げられる。これらのアルコキシル基の中で好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、で、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。炭素数7以上のアルコキシル基は籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体であるトリシラノール化合物との反応性が低くなるので好ましくない。
一般式(B)で表されるアルコキシシランの中に、R中の置換基としてアミノ基を含有している場合、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物と一般式(B)で表されるアルコキシシラン化合物を溶媒中で、接触させると高収率で目的物が得られる。一般式(A)で表されるトリシラノール化合物と一般式(B)で表されるアミノ基又は置換アミノ基を有するアルコキシシランの反応は一般式(A)及び一般式(B)で表される2成分のみを必須成分とするものであり、それ以外の成分は特に必要でない。しかしながら、本反応系に、トリエチルアミン等の脂肪族アミン化合物、ピリジン等の複素環窒素原子含有化合物、あるいは、ジメチルピリジン等の芳香族アミン化合物のような各種のルイス塩基を添加した系であってもかまわない。
アミノ基、置換アミノ基の具体例としては、HN(CH−、HNCH−、HN(CH−、HN(CH−、HN(CHNH(CH−、HN(CHNHCH−、HN(CHNHCHCH(CH)CH−、HN(CHNH(CH−、MeHN(CH−、EtHN(CH−、MeN(CH−、EtN(CH−、MeNCH−、EtNCH−、MeHNCH−、EtHNCH−、HC=CHCHNH(CH−、HN(CHS(CH−、HN(C)−、HN(CHOC(Me)C=C−、Ph−NH(CH−、HOCHCHN(Me)(CH−、CN−CHCH−等が挙げられる。
また、一般式(B)で表されるアルコキシシランのRにアミノ基を含有していない場合、一般式(A)で表されるトリシラノール化合物と、一般式(B)で表されるアルコキシシラン化合物をルイス塩基存在下で反応を行うことにより、高収率で目的物が得られる。
その場合のルイス塩基としては、炭素数1以上20以下のアミン化合物が好ましく、例えば脂肪族アミン化合物、複素環窒素原子含有化合物、あるいは、芳香族アミン化合物のような各種のルイス塩基が挙げられる。脂肪族アミン化合物の具体例としては、例えばEtHN、n−PrHN、i−PrHN、n−BuHN、s−BuHN、t−BuHN、CyHN等の一級アミン化合物、EtHN、n−PrHN、i−PrHN、n−BuHN、s−BuHN、t−BuHN、CyHN等の二級アミン化合物、MeN、EtN、n−PrN、i−PrN、i−PrEtN、CyEtN等の3級アミン化合物が挙げられる。複素環窒素原子含有化合物の具体例としては、ピリジン、ピロール、イミダゾール等が挙げられる。芳香族アミン化合物の具体例としては、ジメチルピリジン、アニリン、ジメチルアニリン等が挙げられる。この中でも、3級アミン化合物や、複素環窒素原子化合物が好ましく、特に大気圧下での沸点が150℃以下、より好ましくは120℃以下の3級アミン化合物が、反応後蒸留による除去が容易であるので好ましい。
本発明の一般式(A)のトリシラノール化合物に対する、アミン化合物の量は特に制限しないが、下限は0.01mol%、より好ましくは0.1mol%、特に好ましくは1mol%である。上限は500mol%、より好ましくは300mol%、特に好ましくは100mol%、更に好ましくは50mol%である。アミン化合物が0.01mol%より少ない場合は、目的の反応が遅くなるため好ましくない。また500mol%より多い場合は、目的の反応の他に、無定形の籠状シルセスキオキサンが生成するなど、収率が下がるため好ましくない。
本発明の反応に使用される有機溶媒は炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、極性溶媒から選ばれる少なくとも1種以上の溶媒と、炭素数1から8のアルコール性溶媒からなる混合溶媒が好ましい。これらの炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、極性溶媒から選ばれる溶媒はアルコール性溶媒との混合溶媒であれば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、極性溶媒から選ばれる溶媒は1種類でも、2種類以上の複数の溶媒を用いても良い。炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、極性溶媒から選ばれる少なくとも1種以上の溶媒と、炭素数1から8のアルコール性溶媒からなる混合溶媒は、特に反応選択率に優れ、また籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液を薄膜蒸留機に導入して溶媒留去と粉体化する際に、籠状シルセスキオキサン化合物が凝集しにくくなるため好ましい。
炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、極性溶媒の具体例としては、ヘキサン、シクロヘキサンや、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒や、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の各種のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド等の極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、大気圧下での沸点が150℃以下、さらには120℃以下の溶媒が反応後の蒸留による除去が容易であり好ましい。
アルコール溶媒としては、炭素数1から8のアルコール性溶媒が好ましい。より好ましくは炭素数1から6のアルコール性溶媒で、特に好ましくは炭素数1から4のアルコール性溶媒である。本発明の反応に使用されるアルコール性溶媒としては炭素数9以上のアルコール性溶媒は、沸点が高く、溶媒を容易に留去によって取り除くことができないので好ましくない。
炭素数1から8のアルコール性溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等が挙げられる。これらのアルコール性溶媒は単独でも使用できるし、複数のアルコール性溶媒を混合して使用しても良い。これらのアルコール性溶媒は単独でも用いることができるが、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、極性溶媒から選ばれる少なくとも1種以上の溶媒との混合溶媒として用いる方が好ましい。
炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、極性溶媒から選ばれる少なくとも1種以上の溶媒と炭素数1から8のアルコール性溶媒からなる混合溶媒の組成の制限は特にないが、アルコール性溶媒の効果を有効に発現するためには、混合溶媒100wt%に対し、アルコール性溶媒が、1wt%以上、95wt%以下の範囲で含まれることが好ましい。さらに該アルコール性溶媒の含有量の下限値としては、好ましくは10wt%で使用され、より好ましくは20wt%、特に好ましくは30wt%である。アルコール性溶媒の上限値としては、好ましくは90wt%、より好ましくは80wt%、特に好ましくは70wt%である。
一般式(A)で表されるトリシラノール化合物と一般式(B)で表されるアルコキシシランの反応温度の制限は特にないが、反応温度の下限は、好ましくは−70℃、より好ましくは−50℃、特に好ましくは−30℃である。また反応温度の上限は好ましくは120℃、より好ましくは100℃、特に好ましくは80℃である。−70℃より低い場合は、反応時間が長くなるため好ましくない。また120℃より高い場合は他のシルセスキオキサン化合物が生成し、目的の籠状シルセスキオキサンの収率が低くなるため、好ましくない。また、一般式(A)でトリシラノール化合物と一般式(B)で表されるアルコキシシランの反応では、圧力の制限は特に無く、0.1気圧から200気圧の間で製造することができる。
一般式(A)で表されるトリシラノール化合物及び一般式(B)で表されるアルコキシシランは、それぞれ単一化合物でも良いし、複数の種類の混合物でも良い。
本発明の製造方法の反応で形成される籠状シルセスキオキサン化合物は一般式(C)から(E)で表すことができる。
(RSiO3/2n+3(RSiO3/2) (C)
(RSiO3/2n+h(RSiOH)3−h(R SiO(4−m)/2 (D)
(RSiO3/2n+3(R 2SiO)(R 2SiO3/2H) (E)
ここで、nは2から10の整数である。一般式(D)においては、m=2又は3であり、m=2の場合にはi=1、h=2であり、m=3の場合にはi=h=1から3の整数である。
一般式(C)の籠状シルセスキオキサンの合成法の具体例としては例えば、一般式(A)においてn=4である一般式(2)で表されるトリシラノール化合物を一般式(B)においてm=1であるのRSi(ORと反応させることによって一般式(C)においてn=4である(すなわち一般式(C)が(RSiO3/2(RSiO3/2)である)一般式(8)で表される籠状シルセスキオキサン化合物を得る方法が挙げられる。
Figure 2008041772
Figure 2008041772
一般式(D)で表される籠状シルセスキオキサン化合物の合成の具体例としては、例えば、一般式(A)においてn=4である一般式(2)で表されるトリシラノール化合物を一般式(B)で、m=2のR Si(ORとを反応させると、一般式(D)において、n=4、m=2、i=1、h=2である(すなわち、一般式(D)が (RSiO3/2(RSiOH)(R SiO)である)一般式(9)で表される籠状シルセスキオキサン化合物を得ることができる。
Figure 2008041772
一般式(A)においてn=4である一般式(2)で表されるトリシラノール化合物に一般式(B)においてm=3であるR Si(OR)を1当量、反応させることによって、一般式(D)において、n=4、m=3、h=i=1である(すなわち、一般式(D)が (RSiO3/2(RSiOH)(R SiO1/2)である)一般式(10)で表される籠状シルセスキオキサン化合物を得る事が出来る。
Figure 2008041772
一般式(A)においてn=4である一般式(2)で表されるトリシラノール化合物に一般式(B)においてm=3であるR Si(OR)を2当量、反応させることによって、一般式(D)において、n=4、m=3、h=i=2である(すなわち、一般式(D)が (RSiO3/2(RSiOH)(R SiO1/2である)一般式(11)で表される籠状シルセスキオキサン化合物を得る事が出来る。
Figure 2008041772
一般式(A)においてn=4である一般式(2)で表されるトリシラノール化合物に一般式(B)においてm=3であるR Si(OR)を3当量、反応させることによって、一般式(D)において、n=4、m=3、h=i=3である(すなわち、一般式(D)が (RSiO3/2(R SiO1/2である)一般式(12)で表される籠状シルセスキオキサン化合物を得る事が出来る。
Figure 2008041772
一般式(E)で表される籠状シルセスキオキサン化合物の合成の具体例として、例えば、一般式(A)においてn=4である一般式(2)で表されるトリシラノール化合物に、一般式(B)においてm=2であるR Si(ORを2当量反応させることによって一般式(E)が(RSiO3/2(R SiO)(R SiO3/2H)である一般式(13)で表される籠状シルセスキオキサン化合物を得ることができる。
Figure 2008041772
本発明で形成される籠状シルセスキオキサン化合物の構造として、より好ましいのは、一般式(8)、一般式(9)及び一般式(12)で表される籠状シルセスキオキサン化合物であり、特に好ましいのは一般式(8)で表される籠状シルセスキオキサン化合物である。
次に、生成した籠状シルセスキオキサン化合物を含有する溶液から薄膜蒸留機を使用して、籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法について説明する。
本発明で使用される薄膜蒸留機としては、内部に回転ブレードを有する円筒型の蒸留機であることが好ましい。薄膜蒸留機内の回転ブレードと内壁の間は、0.01mm以上、50mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05mm以上、30mm以下であることが好ましい。ブレードと壁の間が0.01mmより狭い場合は、ブレードを回転時に、ブレードと内壁が当たり、ブレードと内壁を構成する材質が削れる量が多くなるため好ましくない。またブレードと壁の間が50mm以上の場合は、籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液をフィードしたときに、薄膜になりにくく、得られる粉体の粒径が大きくなるため好ましくない。ブレードは固定式でも、可動式でも構わないが、可動式のブレードの方が、薄膜蒸留機を運転時に、ブレードの可動によって、得られる籠状シルセスキオキサンの粉体の粒径が小さくなるため好ましい。
また、本発明で使用される薄膜蒸留機は、熱媒やスチーム等で加熱できるジャケットを備えている物や、ヒーター等で内壁を加熱できる構造の物が好ましい。
本発明で使用されるジャケットやヒーター等で薄膜蒸留機の内壁を加熱する内壁温度とは、ジャケットの熱媒温度や、ヒーター温度で代用することができる。薄膜蒸留機の内壁温度範囲としては、籠状シルセスキオキサン化合物の融点又は軟化温度のいずれかの低い温度より10℃以上低い温度以下であることが好ましい。より好ましくは籠状シルセスキオキサン化合物の融点又は軟化温度のいずれかの低い温度より20℃以上低い温度以下である。溶剤を抜き出しやすくするため、できる限り高い温度まで加熱することが好ましいが、籠状シルセスキオキサン化合物の融点又は軟化温度のいずれかの低い温度より10℃低い温度より高い温度まで薄膜蒸留機の内壁を加熱すると、籠状シルセスキオキサンが凝集してワックス状になり易く、粉体にし難いため好ましくない。
本発明で使用できる籠状シルセスキオキサン化合物の融点又は軟化開始温度のいずれか低い温度が50℃以上であり、より好ましくは70℃以上である。籠状シルセスキオキサン化合物の融点又は軟化開始温度のいずれか低い温度が、50℃未満の場合、生成した籠状シルセスキオキサン化合物は凝集しやすいため、好ましくはない。籠状シルセスキオキサン化合物の融点や軟化温度は、例えば、示差操作熱量測定(DSC)等の測定で容易に分析することができる。
本発明で使用される薄膜蒸留機内の圧力の範囲には、特に制限はないが、籠状シルセスキオキサン化合物の粉体製造後に、粉体に残留する溶剤量を少なくするため、大気圧以下の減圧状態にして薄膜蒸留機を運転することが好ましい。
薄膜蒸留機に導入する籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液中の溶媒は、単独でもよいし、混合溶媒でもよい。本発明では、反応から粉体化まで連続的に実施されるものであり、粉体化前の溶液は、反応により発生したアルコール溶媒を含んでいる場合がある。
薄膜蒸留機に導入する籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液中の溶媒の具体例としては、ヘキサン、シクロヘキサンや、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒や、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の各種のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド、N−メチルピロリドン等の極性溶媒とメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等の炭素数1から8の各種アルコール性溶媒等が挙げられる。
薄膜蒸留機に導入する籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液中の溶媒組成は、反応直後の溶液組成と必ずしも一致するとは限らない。たとえば、濃縮工程を経る場合があり、その溶媒種の沸点の違いにより、溶媒組成が異なる場合がある。
薄膜蒸留機に導入する籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液中の溶媒が、混合溶媒の時、混合溶媒100wt%に対し、該アルコール性溶媒が、1wt%以上、95wt%以下の範囲で含まれることが好ましい。より好ましくは2wt%以上70wt%以下であり、更に好ましくは3wt%以上50wt%以下である。薄膜蒸留機で溶剤を留去した際の粉体化のし易さの観点から、下限値は、1wt%が好ましい。また籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液濃度の観点、あるいは留去すべき溶媒量を抑制する観点、さらに薄膜蒸留機の内壁などの付着などのロスが少ない、粉体中の残留溶媒量を少なくする、という観点から、アルコール性溶媒量の上限値は、95wt%が好ましい。
さらに、このアルコール溶剤量の適切な範囲を選択することによって、より均一な粒径の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を得ることができる。粉体が均一であることは、以下の理由によって極めて重要である。たとえば、籠状シルセスキオキサン化合物の粉体をポリマーと溶融ブレンドする際、押し出し機などを用いることがあるが、その際、粉体の粒径が均一だと、それらの原料のフィード比率が均一になり、連続的に、安定した品質のポリマー組成物を得ることができるからである。
籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液の薄膜蒸留機で処理される際の粘度範囲としては、好ましくは0.1cp以上1000cp以下の範囲であり、より好ましくは0.3cp以上800cp以下である。特に好ましくは0.3cp以上500cp以下の範囲である。1000cpより粘度が高いと、籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液を薄膜蒸留機にフィードするときに、薄膜になり難いため好ましくない。また0.1cp以下の溶液では、籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液の濃度が低くなるため、得られる籠状シルセスキオキサンの粉体に対し、溶媒を薄膜蒸留法で留去しなければいけない量が増え、粉体を得るまでに大きなエネルギーを要するので好ましくない。
また籠状シルセスキオキサンを含む溶液は、上記の一般式(A)で表されるトリシラノール化合物と一般式(B)で表されるアルコキシシランとを反応させて得られた籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液をそのまま、薄膜蒸留機に連続的に導入して処理しても構わないし、反応させて得られた籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液を、濃縮してから薄膜蒸留機で連続的に処理しても構わないし、固体無機物等を添加した後に、薄膜蒸留機で連続的に溶媒留去と粉体化を行っても構わない。
薄膜蒸留機で連続的に処理して得られた籠状シルセスキオキサン化合物を用途に応じて、粉砕機等でさらに細かくしても構わない。粉砕機等で処理することによって、用途に応じた粒径の粉体を得ることができる。
本発明の方法で製造される籠状シルセスキオキサン化合物の粉体の平均粒径の範囲としては、1μm以上、10mm以下が好ましい。より好ましくは3μm以上5mm以下であり、さらにより好ましくは、5μ以上3mm以下である。粉砕しないで粉体を得られる生産性の観点と、前述したように、安定して高品質なポリマーとの組成物を得るという観点から、平均粒径の下限値は、1μmが好ましく、上限値は10mmが好ましい。粉体の平均粒子径は、粒子を篩い分け、各分取部の重量を測定し、粒径分布の累積曲線から、中央累積値にあたる粒子の径(メジアン径)を平均粒径とした。
本発明で製造される籠状シルセスキオキサン化合物の粉体中に含まれる残留溶剤量としては、籠状シルセスキオキサン化合物が樹脂とブレンドされた場合、得られる組成物の機械物性の観点から、籠状シルセスキオキサン化合物の粉体中に含まれる残留溶剤量の上限値は、3wt%が好ましく、より好ましくは1wt%以内である。残留溶剤量としてはガスクロマトグラフィー(GC)や熱重量分析(TG)等で容易に分析することができる。
本発明で得られた籠状シルセスキオキサン化合物は核磁気共鳴装置(1H―NMR、29Si―NMR)や、ガスクロマトグラフィー(GC)、ゲルパーミネーショングラフィー(GPC)、赤外吸収スペクトラム(IR)、マススペクとロメトリー(MS)等で容易に分析することができる。
本発明の製造方法では、ほぼ定量的に目的の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造することができ、触媒を用いた場合でも、触媒成分等が溶媒を留去して粉体化する際に同時に除去されるため、取り扱いが容易となり、工業的に極めて有用な製造法である。なお、さらに高純度の目的物が必要な場合には、その目的品質に応じて、貧溶媒での洗浄、再結晶やカラム分離等の各種の精製法によってさらに精製して使用することもできる。
本発明で得られた籠状シルセスキオキサン化合物の粉体はポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルフォン系樹脂等の熱可塑性樹脂に添加する場合、砕いたり、溶剤ブレンド等をしなくても、押し出し前にプレミックスブレンドや、サイドフィーダー等で別添加する方法等で、均一に添加する事ができる。この中でも特にポリフェニレンエーテル系樹脂に添加することで、流動性、難燃性の向上効果が大きい。
また本発明の方法で得られた籠状シルセスキオキサン化合物の粉体は、従来法の場合のような塩素原子等のハロゲン原子含有化合物を直接の合成原料として使用しないために、ハロゲン化物の含有量が極めて低く、電子材料分野用樹脂添加剤として好適である。
以下、実施例及び比較例により本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
使用したトリシラノール化合物は製造の記載がないものについてはHybrid Plastic社(米国)の製品を使用した。
得られた籠状シルセスキオキサン化合物は次のように分析した。
1) 薄膜蒸留機:櫻製作所製、ハイエバオレーター(R) VHF1001型を使用した。
2) H NMR:日本電子製、GSX400型NMRを使用し、溶媒としてCDClを使用した。
3) 29Si NMR:日本電子製、GSX400型NMRを使用し、溶媒としてCDClを使用した。
4) GC:島津製作所製、GC−1700型GCを使用し、J&W SCIENTIFIC社製DB−1カラムを使用し、クロロホルムに溶解して測定し、得られたピークの面積比より籠状シルセスキオキサンの純度および残存溶剤量を測定した。
5) Electorospray Ionization−Mass Spectrometry(ESI−MS):Thermoquest製LCQを使用し、サンプルをメタノールに0.01mg/mLの濃度に溶解し、ESI−MS法によりm/z=150〜2000の範囲で測定を行った。
6) DSC:島津製作所製、DSC−60Aを使用し、30℃から5℃/分の昇温測定によって、融点又は軟化温度を測定した。
7) 粒子径:ミクロ形電磁振動ふるい器 M-2型(筒井理化学器械(株)製)を用い、粒子を篩い分け、各分取部の重量を測定し、粒径分布の累積曲線から、中央累積値にあたる粒子の径(メジアン径)を平均粒径とした。
実施例1
ジャケット付の10L反応器に、ヘプタイソブチル−ヘプタシルセスキオキサン−トリシラノール2.0kg(一般式(2)において、R=iBu、X=OH)をトルエン2.33kgとメタノール2.33kgからなる混合溶媒に溶解し、ジャケットを冷却することによって、液温度を−5℃に冷却した。次いで、当該溶液に液温が−5〜−10℃の範囲でチューブポンプを使用して、2.1g/分で2−アミノエチル(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン0.572kgを、添加した。添加終了後、−5〜−10℃の範囲で2時間攪拌を行った後、反応液を反応器より抜き出した。次に、溶媒のメタノールとトルエンを50℃のウォーターバスで加温しながら、400kPaで留去し、籠状シルセスキオキサン化合物濃度が60wt%の溶液を得た。得られた籠状シルセスキオキサン化合物溶液の粘度は23℃で11cpであった。溶液のGCより、籠状シルセスキオキサン化合物溶液中に、トルエンが32wt%、メタノールが8wt%含まれていることが分かった。ジャケット温度が80℃、系内を20kPaに減圧した薄膜蒸留機に、上記の籠状シルセスキオキサン溶液を4kg/hで導入し、溶剤を留去・乾燥することによって、白色粉体が2.21kg得られた。平均粒径は、0.85mmであった。5mm以上の塊は0wt%であった。また、薄膜蒸留機の内壁にはほとんど付着物は認められなかった。得られた白色粉体をH及び29SiNMRで分析したところ、化合物Aに特有のピーク(H:0.61ppm、0.96ppm、1.59ppm、1.86ppm、2.45ppm、2.63ppm、2.81ppm、29Si:−67.7ppm、−67.5ppm、−67.0ppm)が得られ、白色粉体のGC分析より、白色粉体の組成は、ヘプタイソブチル−(2−アミノエチル(3−アミノプロピル)オクタシルセスキオキサン(化合物A)が98.1%、オクタイソブチルオクタシルセスキオキサンが0.5%、ヘプタイソブチル−(3−アミノプロピル)オクタシルセスキオキサンが1.2%であることが分かった。またGCより得られた白色粉体中のトルエン含有量は0.3wt%であり、メタノールの含有量は0.1wt%以下であることが分かった。得られた白色粉体のESI−MSより、m/z=918[M+H]が得られた。得られた白色粉体のDSC測定より、軟化開始温度が141℃であることが分かった。
Figure 2008041772
比較例1
実施例1と同様の方法で、反応を行い、籠状シルセスキオキサン化合物からの溶媒留去と乾燥は、エバポレーターを使用して行った。
還流器と滴下ロート付の3つ口ガラスフラスコにヘプタイソブチル−ヘプタシルセスキオキサン−トリシラノール200g(一般式(2)において、R=iBu、X=OH)をトルエン233gとメタノール233gからなる混合溶媒に溶解した。−5℃〜−8℃の範囲でアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン57.2gを滴下した。滴下終了後、2時間攪拌を行った後、エバポレーターを使用して70℃で、濃縮・乾燥を行ったところ、化合物Aで表される籠状シルセスキオキサン化合物を主成分とするワックス状の固まりが得られた。またGCより得られた固まり中のトルエン含有量は2.3wt%であり、メタノールの含有量は0.4wt%であることが分かった。
実施例2
ジャケット付の10L反応器に、ヘプタイソブチル−ヘプタシルセスキオキサン−トリシラノール2.0kg(一般式(2)において、R=iBu、X=OH)をトルエン2.33kgとメタノール2.33kgからなる混合溶媒に溶解し、ジャケットを冷却することによって、液温度を−5℃に冷却した。次いで、当該溶液に液温が−5〜−10℃の範囲でチューブポンプを使用して、2.1g/分で、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.559kgを添加した。添加終了後、−5〜−10℃の範囲で2時間攪拌を行った後、反応器より抜き出した。次に、溶媒のメタノールとトルエンを50℃のウォーターバスで加温しながら、400kPaで留去し、籠状シルセスキオキサン化合物濃度が60wt%の溶液を得た。得られた籠状シルセスキオキサン化合物溶液の粘度は23℃で12cpであった。溶液のGCより、籠状シルセスキオキサン化合物溶液中に、トルエンが32wt%、メタノールが8wt%含まれていることが分かった。ジャケット温度が80℃、系内を20kPaに減圧した薄膜蒸留機に、上記の籠状シルセスキオキサン溶液を4kg/hで導入し、溶剤を留去・乾燥することによって、白色粉体が2132g得られた。平均粒径は、0.64mmであった。5mm以上の塊は0wt%だった。得られた白色粉体をH及び29SiNMRで分析したところ、ヘプタイソブチル−(アミノプロピル)オクタシルセスキオキサン(化合物B)に特有のピーク(H:0.60ppm、0.95ppm、1.59ppm、1.85ppm、2.63ppm、2.81ppm、3.24ppm、29Si:−67.7ppm、−67.5ppm、−67.1ppm)が得られた。GCより得られた白色粉体中の、トルエン含有量は0.2wt%であり、メタノール含有量は0.1wt%以下であることが分かった。また得られた白色粉体のESI−MSを測定しm/z=875M+H]が得られた。得られた白色粉体のDSC測定より、融点が160℃であることが分かった。
Figure 2008041772
実施例3
ジャケット付の10L反応器に、ヘプタイソブチル−ヘプタシルセスキオキサン−トリシラノール2.0kg(一般式(2)において、R=iBu、X=OH)をトルエン2.33kgとメタノール2.33kgからなる混合溶媒に溶解し、トリエチルアミンを50g添加した。チューブポンプを使用して、2.1g/分で25℃でアリルトリエトキシシラン0.410kgを、添加した。添加終了後、2時間攪拌を行った後、液温度を50℃まで上昇させ、2時間攪拌後、反応器より抜き出した。次に、溶媒のメタノールとトルエンを50℃のウォーターバスで加温しながら、400kPaで留去し、籠状シルセスキオキサン化合物濃度が60wt%の溶液を得た。得られた籠状シルセスキオキサン化合物溶液の粘度は23℃で10cpであった。溶液のGCより、籠状シルセスキオキサン化合物溶液中に、トルエンが32wt%、メタノールが8wt%含まれていることが分かった。ジャケット温度が80℃、系内を20kPaに減圧した薄膜蒸留機に、上記の籠状シルセスキオキサン溶液を4kg/hで導入し、溶剤を留去・乾燥することによって、白色粉体が、2167gで得られた。平均粒径は、0.72mmであった。5mm以上の塊は0wt%だった。得られた籠状シルセスキオキサンをH及び29SiNMRで分析したところ、ヘプタイソブチル−(アリル)オクタシルセスキオキサン(化合物C)に特有のピーク(H:0.59ppm、0.96ppm、1.60ppm、1.85ppm、4.89ppm、4.95ppm、5.74ppm、29Si:−67.2ppm、−67.6ppm、−71.5ppm)が得られた。GCより得られた白色粉体中にトルエン含有量として0.3wt%であり、メタノール含有量として0.1wt%以下であることが分かった。また得られた白色粉体のESI−MS(Positive)を測定しm/z=858[M+H]が得られた。得られた白色粉体のDSC測定より、融点が245℃であることが分かった。
Figure 2008041772
実施例4
還流器と滴下ロート付の3つ口ガラスフラスコにヘプタイソブチル−ヘプタシルセスキオキサン−トリシラノール2.0kg(一般式(2)において、R=iBu、X=OH)をトルエン2333gとメタノール2333gからなる混合溶媒に溶解し、トリエチルアミン50gを加えた。室温でビニルトリメキシシラン0.375kgを滴下した。滴下終了後、60℃まで加熱して6時間攪拌を行った。次に、溶媒のメタノールとトルエンを50℃のウォーターバスで加温しながら、400kPaで留去し、籠状シルセスキオキサン化合物濃度が60wt%の溶液を得た。この溶液の粘度は9cpであった。溶液のGCより、籠状シルセスキオキサン化合物溶液中に、トルエンが32wt%、メタノールが8wt%含まれていることが分かった。この溶液をジャケット温度が80℃、減圧度を20kPaに設定した薄膜蒸留機に4kg/hで導入して、白色粉体が、2005g得られた。平均粒径は、0.47mmであった。5mm以上の塊は0wt%だった。得られた白色粉体をH及び29SiNMRで分析したところ、ヘプタイソブチル−(ビニル)オクタシルセスキオキサン(化合物D)に特有のピーク(H:0.62ppm、0.96ppm、1.87ppm、6.02ppm、29Si:−67.2ppm、−67.6ppm、−81.3ppm)が得られた。またGCより得られた白色粉体中にトルエン含有量は0.1wt%であり、メタノール含有量は0.1wt%以下であることが分かった。また得られた白色粉体をESI−MS(Positive)を測定しm/z=844[M+H]が得られた。得られた白色粉体のDSC測定より、融点が232℃であることが分かった。
Figure 2008041772
実施例5
還流器と滴下ロート付の3つ口ガラスフラスコにヘプタイソブチル−ヘプタシルセスキオキサン−トリシラノール2.0kg(一般式(2)において、R=iBu、X=OH)をトルエン2.33kgとメタノール2.33kgからなる混合溶媒に溶解し、トリエチルアミン50gを加えた。室温でメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.628kgを滴下した。室温(約25℃)で、6時間攪拌を行った。次に、溶媒のメタノールとトルエンを50℃のウォーターバスで加温しながら、400kPaで留去し、籠状シルセスキオキサン化合物濃度が60wt%の溶液を得た。この溶液の粘度は23℃で20cpであった。溶液のGCより、籠状シルセスキオキサン化合物溶液中に、トルエンが32wt%、メタノールが8wt%含まれていることが分かった。この溶液をジャケット温度が80℃、減圧度を20kPaに設定した薄膜蒸留機に4kg/hで導入して、白色粉体が2104g得られた。平均粒径は、0.62mmであった。5mm以上の塊は0wt%だった。得られた白色粉体をH及び29SiNMRで分析したところ、ヘプタイソブチル−(メタクリロキシプロピル)オクタシルセスキオキサン(化合物E)に特有のピーク(H:ppm、0.58ppm、0.65ppm、0.94ppm、1.76ppm、1.84ppm、1.93ppm、4.09ppm、5.52ppm、6.08ppm、29Si:−68.0ppm、−68.2ppm、−68.3ppm)が得られた。GCより得られた白色粉体中にトルエン含有量が0.2wt%であり、メタノール含有量は0.1wt%以下であることが分かった。また得られた白色粉体のESI−MS(Positive)を測定しm/z=944[M+H]が得られた。得られた白色粉体のDSC測定より、軟化開始温度が112℃であることが分かった。
Figure 2008041772
実施例6
メタノールの代わりにエタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した。得られた粉体の平均粒径は、0.32mmで、5mm以上の塊が0wt%であった。また、薄膜蒸留機の内壁にはほとんど付着物は認められなかった。
実施例7
メタノールを使わなかったこと以外は、実施例1と同様に実施した。得られた粉体の平均粒径は、0.97mmで、5mm以上の塊が6wt%であった。また、薄膜蒸留機の内壁への付着物は、実施例1と比べて、やや多く認められた。
実施例8
メタノールを使わなかったこと以外は、実施例2と同様に実施した。得られた粉体の平均粒径は、1.1mmで、5mm以上の塊が11wt%であった。
実施例9
<(iBuSiO1.5(iBu(OH)SiO1.0の合成と精製>
内容積500mlの耐圧反応容器に6.36g(152mmol) の水酸化リチウム一水和物をいれ、純水4.64ml(258mmol)、およびアセトン66ml(908mmol)を順に加えて攪拌した。これにイソブチルトリメトキシシラン55.98g(314mmol)を注入し、反応容器を閉じた。
反応溶液を攪拌しながらオイルバスを100℃まで昇温し、さらに3時間反応させた。
反応終了後、反応容器を放冷し、反応溶液を1000mlナスフラスコに移した。反応溶液を攪拌しながら300mlの1規定酢酸水溶液を加えたところ、微粒子物質が分散したスラリー液が得られた。
このスラリー液に、300mlトルエンを加えて撹拌した後、静置して二相分離させた。次に、相分離して得られたトルエン相を孔径0.10μmのPTFEメンブレンフィルター(ADVANTEC社製)でろ過した。ろ液をエバポレーターで濃縮し、固形物が析出しはじめてきたところで濃縮を止め、アセトニトリル300mlを加えて、固形物を析出させた。固形物をろ過分離し、80℃、真空圧75cmHgで2時間乾燥させて白色粉末30.2gを得た。
29SiNMRスペクトル分析により、白色粉末状物質は、(iBuSiO1.5(iBu(OH)SiO1.0で表されるトリシラノール構造を有する多面体オリゴシルセスキオキサン(トリシラノール構造を有する籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体)であることが確認された。 収量30.2gは、トリシラノール化合物として85%の収率に相当する。また、トリシラノール化合物の29SiNMRスペクトルから求めた純度は99.0%であった。トリシラノール化合物中の酢酸イオン含量は、陰イオンクロマトグラフィーによると10ppm以下(検出限界以下)であり、リチウム原子含量はICP−MS分析によると0.13ppmであった。
原料のトリシラノール化合物の製造以外は実施例1に記載の方法と同様に実施した。得られた化合物Aの平均粒径は0.85mmであり、化合物A中に含まれるリチウム原子含量はICP−MS分析より、0.10ppmであった。
以上より明らかであるように、本発明の方法により、高収率かつ、高純度で、粒径均一性に優れた目的の籠状シルセスキオキサンの粉体を効率良く連続的に製造することができる。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2006年10月5日出願の日本特許出願2006−273781に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明の方法によれば、ほぼ定量的に目的の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造することができ、触媒を用いる場合でも、触媒成分等が溶媒を留去して粉体化する際に同時に除去されるため、取り扱いが容易となり、工業的に極めて有用である。また、本発明の方法で得られた籠状シルセスキオキサン化合物の粉体は、従来法の場合のような塩素原子等のハロゲン原子含有化合物を直接の合成原料として使用しないために、ハロゲン化物の含有量が極めて低く、電子材料分野用樹脂添加剤として好適である。

Claims (13)

  1. 一般式(A)で表されるトリシラノール化合物と一般式(B)で表されるアルコキシシランを有機溶媒中、ルイス塩基存在下にて反応させ、籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液を得、次いで該溶液を薄膜蒸留機を用いて溶媒留去と粉体化を同時に実施する籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
    (RSiO3/2(RSiOH) (A)
    Si(OR4−m (B)
    (一般式(A)において、Rは水素原子、炭素原子数1から10の置換又は非置換の炭化水素基又はケイ素原子数1から3のケイ素原子含有基から選ばれ、複数のRは同一でも異なっていても良い。nは2から10の整数である。一般式(B)において、RはRと同じ群から選ばれる基であり、複数のRは同じでも異なっていても良い。ORは炭素原子数1から6のアルコキシル基である。mは1から3の整数である。)
  2. 該一般式(B)で表されるアルコキシシランのRが置換基としてアミノ基を有する、請求項1に記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
  3. 該ルイス塩基が該アミノ基含有アルコキシシランである、請求項2に記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
  4. 該ルイス塩基が、炭素数1以上20以下のアミン化合物である請求項1に記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
  5. 該籠状シルセスキオキサン化合物が、下記一般式(C)〜(E)のいずれかの構造で表される請求項1に記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
    (RSiO3/2n+3(RSiO3/2) (C)
    (RSiO3/2n+h(RSiOH)3−h(R SiO(4−m)/2 (D)
    (RSiO3/2n+3(R 2SiO)(R 2SiO3/2H) (E)
    (n、RおよびRは上記請求項1に記載と同じである。m=2又は3であり、m=2の場合にはi=1、h=2であり、m=3の場合にはi=h=1から3の整数である。)
  6. 該一般式(A)で表されるトリシラノール化合物が、
    (RSiO3/2(RSiOH)
    であり、該一般式(B)で表されるアルコキシシランが
    Si(OR
    であり、該トリシラノール化合物と該アルコキシシランの反応で得られる籠状シルセスキオキサン化合物が
    (RSiO3/2(RSiO3/2
    (RおよびRは上記請求項1に記載と同じである。)
    である、請求項1から5のいずれかに記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
  7. 該籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液の溶媒が、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、極性溶媒から選ばれる少なくとも1種以上の溶媒と、炭素数1から8のアルコール性溶媒からなる混合溶媒であり、かつ該混合溶媒100wt%に対し、該アルコール性溶媒が、1wt%以上、95wt%以下の範囲で含まれる、請求項1から6のいずれかに記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
  8. 籠状シルセスキオキサン化合物を含む溶液の薄膜蒸留機で処理される際の粘度が、0.1cp以上1000cp以下の範囲である、請求項1から7のいずれかに記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
  9. 薄膜蒸留機の内壁温度が、籠状シルセスキオキサンの融点又は軟化開始温度のいずれかの低い温度より10℃以上低い温度である、請求項1から8のいずれかに記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
  10. 該籠状シルセスキオキサン化合物の融点又は軟化開始温度のいずれかの低い温度が50℃以上である、請求項1から9のいずれかに記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
  11. 該籠状シルセスキオキサン化合物の粉体中に含まれる残留溶剤量が3wt%以内である、請求項1から10のいずれかに記載された方法で製造された籠状シルセスキオキサン化合物の粉体。
  12. 一般式(A)で表されるトリシラノール化合物が、以下の工程で示されるアルカリ金属化合物の除去処理されたものである、請求項1から10のいずれかに記載の籠状シルセスキオキサン化合物の粉体を製造する方法。
    (a)トリシラノール化合物を含む組成物を、20℃における水の溶解度が1.0重量%以下である疎水性有機溶媒と接触させて、疎水性有機溶媒に一般式(A)で表されるトリシラノール化合物を溶解した有機相を取得する
    (b)該疎水性有機溶媒相から微粒子分散質を除去する
  13. 該微粒子分散質を除去する工程が、平均孔径0.005μm以上、100μm以下の疎水性フィルターによるろ過処理工程である、請求項12に記載の籠状シルセスキオキサンの粉体を製造する方法。
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