JPWO2008029908A1 - 抗体を含有する安定な凍結乾燥医薬製剤 - Google Patents
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Abstract
抗体を含有する安定な凍結乾燥医薬製剤の提供。抗体を含み、さらに結晶性物質及びポリオールを賦形剤として含む凍結乾燥製剤、又は結晶性物質がアラニンで、ポリオールがスクロース若しくはトレハロースである前記凍結乾燥製剤。
Description
本発明は、抗体の医薬製剤の分野に関する。詳しくは、本発明は抗体を含有する安定な凍結乾燥医薬製剤に関するものである。
近年の生物工学の進展に伴って、組換えDNA技術を駆使し医療用途のタンパク質を大量に純度良く造りだすことが可能となった。しかしながら、タンパク質は従来の化学合成分子とは異なり、分子量が大きくその三次元構造も複雑であるため、そのようなタンパク質を安定に保ったまま安定に保存するには、その物性を考慮した特別な技術が必要となる。タンパク質を安定に保った製剤は、タンパク質に含まれる多数の異なった官能基を保護し、また活性に関与している高次構造を保つ必要があり、タンパク質医薬品の分野において、タンパク質の安定性と活性の両方を維持する安定な製剤の開発が大きな課題となっている。
医療用として有用なタンパク質の一つとして抗体があり、近年、モノクローナル抗体やポリクローナル抗体がヒト臨床試験に供されており、抗腫瘍や自己免疫疾患、感染症など様々な疾病治療を目的とした医薬品分野で注目されている。しかし、精製したモノクローナル抗体やポリクローナル抗体は、溶液中で凝集物及び粒状不溶性微粒子を形成しやすい性質を有するものと認識されており、抗体製剤の開発において問題となっている。そのような望ましくない性質をもたない安定化された抗体製剤が望まれる。
抗体を安定化する方法の一つとして、例えば国際公開第WO98/56418号パンフレットにあるように前もって凍結乾燥を受けていない治療上有効な抗体とpH5.0に維持する酢酸緩衝剤と界面活性剤とポリオールを含有する水性医薬製剤に関して記述している。溶液製剤は製造者にとって取り扱うのが容易かつ最も経済的であり、また、患者に投与するのが最も容易である。しかしながら一般的に、溶液製剤では化学的分解(脱アミド化反応もしくは酸化反応)ならびに物理的劣化(凝集及び沈殿)の影響を受けるため、貯蔵条件の正確な制御が安定性を保持するために必要であり、安定性の低い抗体にとっては商業的応用に対する欠点となりうる。
これに対し、溶液中で比較的不安定である生成物を凍結乾燥することは安定化される生成物をもたらす可能性があり、従って溶液製剤よりも長い貯蔵期間、安定性を有することが当該技術分野で既知である。(非特許文献1を参照)。乾燥された固体中では分解反応は回避されるかもしくは数年の間安定のまま留まる。従って凍結乾燥として既知の技術が、水溶溶液中で乏しい安定性を表す注入可能な医薬品にしばしば使用される。この工程は凍結乾燥すること(Freeze-drying)を必要とし、それにより氷が凍結された溶液から昇華して元の液体の固体の乾燥された成分を残す。該工程は、水性溶液を液体状態で加工しかつ投薬容器に充填し、低温で乾燥してそれにより有害な熱的影響を排除し、そしてそれがより安定でありうる乾燥された状態で保存し得るために多数の利点を有する。加えて、凍結乾燥された生成物は通常迅速に溶解可能であり、そして患者への投与前に容易に再構成される。
しかしながら、所望の特徴を有する凍結乾燥された生成物を達成するために、凍結乾燥工程での使用のための条件及び賦形剤を選ぶのに適切な注意が払わなければならない。適切な賦形剤なしでは、大部分のタンパク質製剤は、凍結乾燥の間に遭遇される凍結及び乾燥、脱水により少なくとも部分的に変性される。加えて、乾燥された固体での長期安定性を保証する賦形剤を選ぶべきである。
抗体を含有する凍結乾燥製剤に関して以下の文献がある。
特許文献1は、抗体、糖又はアミノ糖、アミノ酸及び界面活性剤を含む凍結乾燥製剤を開示している。しかしアラニンとポリオールの組み合わせからなる凍結乾燥製剤が好適であることは提示していない。
特許文献2は、タンパク、緩衝液、アラニン及びマンニトールのみからなる凍結乾燥製剤を開示している。しかしアラニンと非晶質のポリオールの組み合わせからなる凍結乾燥製剤が好適であることは提示していない。
特許文献3は、ヒトモノクローナル抗体1mgあたり1〜20mgのD-マンニトールを用いた安定な凍結乾燥製剤を開示している。しかしアラニンと非晶質のポリオールの組み合わせからなる凍結乾燥製剤が好適であることも、また抗体、アラニン、スクロースの好適な混合比率も提示していない。
またタンパク質の凍結乾燥医薬製剤において、タンパク質の安定化への賦形剤の効果に関する多くの科学文献が存在する。しかし、凍結乾燥生成物の構造とその安定性との間の関係についての理論は、一般的に受け入られていない。同様に、ポリオール及びアミノ酸単独で又は組み合わせての役割は、一組の一般化される性質に従って開示されず、研究されるタンパク質及び使用される賦形剤量に従って、相反する結果が見られた。
また既存特許で開示されている凍結乾燥製剤では異物発生、重合体の増加、酸化体の増加などを生じ、安定な製剤を見出す事ができなかった。例えば特許文献4や特許文献5に開示されているように、還元糖であるマルトースを含有する凍結乾燥製剤では特に保存期間に酸化体の増加が見られた。特許文献2や特許文献3に開示されているようにマンニトールを含有する凍結乾燥製剤では特に保存期間に重合体の増加が見られた。
国際公開第W098/22136A2号パンフレット
国際公開第W097/17064号パンフレット
特開平5-25058号公報
特表平3-504605
国際公開WO89/11297号パンフレット
『Remington’s Pharmaceutical Sciences』 第15版、マック パブリッシング カンパニー(Mack Publishing Co.)、フィラデルフィア州イーストン、pp 1483-1485
本発明は、抗体を含有する安定な凍結乾燥医薬製剤の提供を目的とする。具体的には治療上有効な量の抗体を含み、結晶性物質であるアラニン及び非還元糖であり非晶質であるポリオールを含有する安定な凍結乾燥医薬製剤の提供を目的とする。
本発明者らは、治療上有効な量の抗体を含む安定な凍結乾燥製剤を得るべく鋭意研究を行なった。その結果、治療上有効な量の抗体に、さらに結晶性物質と非還元糖でありかつ非晶質であるポリオールを含有させることにより従来知られている凍結乾燥製剤にはない保存期間に発生する重合物の生成を抑制する効果を有する凍結乾燥製剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1] 抗体を含み、さらにアラニン及びポリオールを賦形剤として含む凍結乾燥製剤。
[2] ポリオールが非還元糖であり、かつ非晶質のポリオールである[1]の凍結乾燥製剤。
[3] ポリオールが非還元糖であり、かつ非晶質の糖である[1]の凍結乾燥製剤。
[4] ポリオールがスクロース又はトレハロースである[3]の凍結乾燥製剤。
[5] 抗体質量1に対するアラニン及びポリオールの質量が、5/6〜50であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの凍結乾燥製剤。
[6] ポリオール質量/アラニン質量比が、0.5〜2.5である[5]の凍結乾燥製剤。
[7] 抗体質量/アラニン質量比が、0.05〜3である[5]又は[6]の凍結乾燥製剤。
[8] 抗体質量とアラニン質量とスクロース質量の3成分の質量の比が1:0.3〜20:0.5〜30である[1]〜[7]のいずれかの凍結乾燥製剤。
[9] さらに、緩衝液を含む[1]〜[8]のいずれかの凍結乾燥製剤。
[10] 緩衝液がグルタミン酸緩衝液である、[9]の凍結乾燥製剤。
[11] 緩衝液の濃度が10mMである[9]又は[10]の凍結乾燥製剤。
[12] さらに、界面活性剤を含む[1]〜[11]のいずれかの凍結乾燥製剤。
[13] 界面活性剤がポリソルベートである、[12]の凍結乾燥製剤。
[14] 抗体を有効成分として含む医薬製剤である、[1]〜[13]のいずれかの凍結乾燥製剤。
[15] 抗体にアラニン及びポリオールを添加して凍結乾燥することを含む、安定な凍結乾燥製剤を製造する方法。
[16] ポリオールが非還元糖であり、かつ非晶質のポリオールである[15]の凍結乾燥製剤を製造する方法。
[17] ポリオールが非還元糖であり、かつ非晶質の糖である[15]の凍結乾燥製剤を製造する方法。
[18] ポリオールがスクロース又はトレハロースである[16]の凍結乾燥製剤を製造する方法。
[19] 抗体質量1に対するアラニン及びポリオールの質量が、5/6〜50である[15]〜[18]のいずれかの凍結乾燥製剤を製造する方法。
[20] ポリオール質量/アラニン質量比が、0.5〜2.5である[19]の凍結乾燥製剤を製造する方法。
[21] 抗体質量/アラニン質量比が、0.05〜3である[19]又は[20]の凍結乾燥製剤を製造する方法。
[22] 抗体質量とアラニン質量とスクロース質量の3成分の質量の比が1:0.3〜20:0.5〜30である[15]〜[21]のいずれかの凍結乾燥製剤を製造する方法。
実施例に示したように、本願発明の抗体を含む製剤は、25℃又は40℃において3箇月保存しても、保存期間中に抗体の重合体、分解物、デアミド体、及び酸化体が増加することなく、安定であり、また抗体の生物学的活性も保持されていることが確認された。本願発明に係る製剤は少なくとも低温(2℃から8℃)において1年以上安定であり、また少なくとも25℃において3箇月間及び/又は40℃において1箇月間安定である。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2006-243144号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
本発明に関連した開示の説明
「安定な製剤」は、その製剤を投与される患者に対して毒性がある成分を含まず、また患者の生体恒常性をできる限り崩さない活性成分以外の添加物を加えることにより、その中の活性成分が保存時において化学的及び/又は物理的及び/又は生物学的安定性を保持するものである。「患者の生体恒常性をできる限り崩さない活性成分以外の添加物」とは過去の治療実績により十分に安全性が確認されたもの、あるいは過去の投与実績がない物質においても細胞、動物への毒性評価あるいはその他の方法により安全性が十分に予測されるものを言う。また「患者の生体恒常性を保つ」とは、活性成分以外の添加剤が患者に許容できない生物活性を有さないこと、及び/又は可能であれば等張(ヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有していること)であることなどが含まれる。
「安定な製剤」は、その製剤を投与される患者に対して毒性がある成分を含まず、また患者の生体恒常性をできる限り崩さない活性成分以外の添加物を加えることにより、その中の活性成分が保存時において化学的及び/又は物理的及び/又は生物学的安定性を保持するものである。「患者の生体恒常性をできる限り崩さない活性成分以外の添加物」とは過去の治療実績により十分に安全性が確認されたもの、あるいは過去の投与実績がない物質においても細胞、動物への毒性評価あるいはその他の方法により安全性が十分に予測されるものを言う。また「患者の生体恒常性を保つ」とは、活性成分以外の添加剤が患者に許容できない生物活性を有さないこと、及び/又は可能であれば等張(ヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有していること)であることなどが含まれる。
凍結乾燥(lyophilization)は、医薬品の調製においてしばしば使用される凍結乾燥(Freeze drying)法である。液体組成物が調製され、次に凍結乾燥して乾燥したケーキ様の製品が形成される。この方法は一般に、すでに凍結しておいた試料を真空下で乾燥して氷を除去し、粉末又はケーキ様物質の形で非水性成分をそのまま残す。凍結乾燥された生成物は、生物活性が喪失することなく長期間かつ高温で保存することができ、適切な希釈剤を加えることにより粒状物を含まない溶液に容易に復元できる。適切な希釈剤は、生物学的に許容される任意の液体であり、その中で凍結乾燥粉末が完全に可溶性になる液体である。水、特に注射用水が好適な希釈剤であり、これは、抗体の安定性に影響を与える塩又は他の物質を含まないからである。凍結乾燥の利点は、種々の分子イベントが大幅に低下するレベルまで水分含量(これは、長期保存で製品を不安定化する)を低下させられることである。凍結乾燥製剤はまた、輸送の物理的ストレスに容易に耐えることができる。復元した製品は、粒状物を含まず、従ってあらかじめ濾過することなく、被験体に非経口的に、好ましくは静脈内又は筋肉内又は皮下投与を行なうことができる。
凍結乾燥製剤の重要な特徴は、製品の復元時間又は再水和するのに必要な時間である。非常に早い完全な再水和を可能にするために、高多孔性の構造を有するケーキが重要である。ケーキ構造はタンパク質濃度、賦形剤の種類と濃度、及び凍結乾燥サイクルのプロセスパラメータを含む多くのパラメータの関数である。一般に復元時間は、タンパク質濃度が上昇すると上昇し、従って、短い復元時間は、高濃度凍結乾燥抗体製剤の開発において重要な目標である。長い復元時間は、より濃縮された溶液にタンパク質がより長時間暴露されるため、製品の品質を劣化させる。さらに使用者の側からは、製品が完全に再水和されるまでに投与することができない。これは、製品が粒状物を含まず、正しい用量が投与され、その無菌性が影響を受けないことを確保するためである。すなわち、迅速な再水和は、患者と医師にとっても好都合である。
タンパク質の安定性は、様々な分析方法により測定される。例えば新・タンパク質精製法理論と実際、RKスコープス著、シュプリンガー・フェアラーク東京出版に概説されている。タンパク質の安定性は、化学的安定性、物理的安定性及び生物的安定性を含む。「化学的安定性」はタンパク質の化学的に変化した状態を検出することにより検定することができる。化学的変化は例えばサイズ排除クロマトグラフやSDS-PAGEにより評価でき得るクリッピングなどのサイズ修飾や、イオン交換クロマトグラフにより評価でき得る電荷状態の変化(例えば脱アミドの結果生じる)及び疎水クロマトグラフにより評価でき得る親水性/疎水性状態の変化(例えば酸化の結果生じる)などを含む。「物理的安定性」は色及び/又は透明性の目視検査時及び/又はサイズ排除クロマトグラフにより評価でき得る、不溶性微粒子及び/又は濁り及び/又は凝集体を生じないことを含む。「生物的安定性」は例えばサイズ排除クロマトグラフやELISAなどにより評価可能な抗原への結合活性を検定することにより評価可能である。
治療用途に有用なタンパク質には抗体が含まれる。抗体は細胞表面に発現するタンパク質に結合し、細胞に対して細胞死あるいは傷害性を誘導する作用を有する抗体を癌などの治療に用いることが試みられている。現在、細胞膜上に存在するレセプターであるCD20を標的としたキメラ抗体(Rituximab)、Her2/neuを標的としたヒト化抗体などのモノクローナル抗体が、悪性腫瘍を対象疾患として使用されており、その治療効果が認められている。また国際公開第WO2003/033538号パンフレットに公開されているようにクラスII主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の一種であるHLA−DR抗体に対するモノクローナル抗体(抗HLA-DR抗体)も有用であると考えられる。抗体は、血中半減期が長く、抗原への特異性が高いという特徴を持ち、抗腫瘍剤として特に有用である。例えば、腫瘍特異的な抗原を標的とした抗体であれば、投与した抗体は腫瘍に集積することが推定されるので、捕体依存性細胞傷害性活性(CDC)や抗体依存性細胞障害性活性(ADCC)による、免疫システムの癌細胞に対する攻撃が期待できる。また、その抗体に放射性核種や細胞毒性物質などの薬剤を結合しておくことにより、結合した薬剤を効率よく腫瘍部位に送達することが可能となり、同時に、非特異的な他組織への該薬剤到達量が減少することで、副作用の軽減も見込むことができる。腫瘍特異的抗原に細胞死を誘導するような活性がある場合はアゴニスティック活性を持つ抗体を投与することで、また、腫瘍特異的な抗体の集積と、抗体の活性による腫瘍の増殖停止又は退縮が期待される。抗体は、上記のようにその特徴から抗腫瘍剤として適用するのに適切であると考えられる。
以上のように、治療用途に好適な多くの抗体が研究、開発、実用化され、医療現場で頻繁に使用されるようになった現状においては、より安定性の優れた抗体を含有する凍結乾燥製剤が当該分野で必要とされている。
発明を実施するための最良の形態
本特許に含まれる「凍結乾燥製剤」とは、医薬効果を有する抗体である活性成分が凍結乾燥された形態であり、固体中において活性成分を明確に効果的であるものとする形態であり、製剤が投与される患者に対して生体恒常性を崩す可能性がある更なる成分を含まないものをいう。ここで「活性成分を明確に効果的であるものとする」とは、含まれる活性成分がその活性を維持しており、医薬効果を失っていないことをいう。
本特許に含まれる「凍結乾燥製剤」とは、医薬効果を有する抗体である活性成分が凍結乾燥された形態であり、固体中において活性成分を明確に効果的であるものとする形態であり、製剤が投与される患者に対して生体恒常性を崩す可能性がある更なる成分を含まないものをいう。ここで「活性成分を明確に効果的であるものとする」とは、含まれる活性成分がその活性を維持しており、医薬効果を失っていないことをいう。
「患者の生体恒常性をできる限り崩さない活性成分以外の添加剤」とは過去の治療実績により十分に安全性が確認されたもの、あるいは過去の投与実績が無い物質においても細胞、動物への毒性評価あるいはその他方法により安全性が十分に予測されるものを言う。すなわち、本発明の凍結乾燥医薬製剤は、医薬効果を有する抗体である活性成分と医薬的に許容できるその他の添加剤を含み得る。また「患者の生体恒常性を保つ」とは、活性成分以外の添加剤が患者に許容できない生物活性を有さないこと、及び/又は可能であれば等張(ヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有していること)であることなどが含まれる。
「安定な製剤」とはその中の活性成分が保存時において化学的及び/又は物理的及び/又は生物学的安定性を保持するものである。好ましくは少なくとも低温(2℃から8℃)において1年以上安定であり、また好ましくは25℃において少なくとも3箇月及び/又は40℃において少なくとも1箇月間安定であり、製剤の凍結融解、光照射及び振動に安定であることをいう。タンパク質の安定性は、様々な分析方法により測定される。「化学的安定性」はタンパク質の化学的に変化した状態を検出し定量することにより検定することができる。化学的変化は例えばサイズ排除クロマトグラフやSDS-PAGEにより評価できるクリッピングなどのサイズ修飾、イオン交換クロマトグラフにより評価できる電荷の変化(例えばデアミドの結果生じる)、及び疎水クロマトグラフにより評価できる親水性/疎水性状態の変化(例えば酸化の結果生じる)などを含む。「物理的安定性」は不溶性異物及び/又は凝集体を生じないことなどを含み、色及び/又は透明性の目視検査及び/又はサイズ排除クロマトグラフにより評価できる。そして、「生物的安定性」は例えばサイズ排除クロマトグラフやELISAなどにより評価可能な抗原への結合活性を検定することにより評価可能である。抗体が化学的又は物理的な変化を受けていない場合、その抗体は生物的安定性を保持している。従って、製剤中の抗体が化学的安定性及び物理的安定性を保持している場合、その製剤は安定であるといえる。すなわち製剤が安定であるかどうかは、含まれる抗体の化学的及び物理的特性の変化の有無を測定することによりわかる。安定な製剤は、抗体の重合体、分解物、デアミド体、酸化体等が保存中に製剤の医薬効果を減じるほど増加することがなく、また不溶性異物や濁りも認められない。本発明の安定な製剤は、少なくとも低温(2℃から8℃)において1年以上保存しても、あるいは少なくとも25℃において3箇月間保存しても、あるいは40℃において1箇月間保存しても、抗体の重合体、分解物、デアミド体、酸化体が製剤の医薬効果を減じるほど増加しない。また製剤を凍結融解しても又は振動を与えても、抗体の重合体、分解物、デアミド体、酸化体が製剤の医薬効果を減じるほど増加しない。本発明の安定な製剤中の抗体の重合体は、保存中に増加することなく、例えば25℃又は40℃で1箇月保存した後にサイズ排除クロマトグラフで測定した場合、製剤中の抗体に対する重合体の割合は小さいことが望ましい。また、本発明の安定な製剤中の抗体の分解物は、保存中に大きく増加することはなく、例えば25℃又は40℃で1箇月保存しても、製剤中の抗体に対する分解物の割合は小さいことが望ましい。また、本発明の安定な製剤中の抗体のデアミド体の量は、保存中に大きく増加することはなく、例えば25℃又は40℃で1箇月保存しても、製剤中の抗体に対するデアミド体の割合は小さいことが望ましい。さらに、本発明の安定な製剤中の抗体の酸化体は、保存中に大きく増加することはなく、例えば25℃又は40℃で1箇月保存しても、製剤中の抗体に対する酸化体の割合は小さいことが望ましい。本発明の凍結乾燥製剤は、保存中に抗体に起因する重合体量が増加することがないことを特徴とする。重合体含量及び分解物含量は、例えばサイズ排除クロマトグラフィーにより測定でき、デアミド体含量は、例えばイオン交換クロマトグラフィーにより測定でき、酸化体含量は、例えば、疎水HPLCにより測定することができる。
本発明における抗体の「治療上有効な量」とは、治療に抗体が有効である疾患の予防又は治療に有効な量を指す。「疾患」とは抗体での治療による利益がある任意の症状である。これは、哺乳類の疾患の素因になる病理的状態を含む慢性及び急性疾患又は疾病を含む。製剤中に存在する抗体の治療上有効な量は、例えば望ましい用量及び投与形態を考慮に入れて決定される。約1mg/mLから約200mg/mL、好ましくは約5mg/mLから約50mg/mL、最も好ましくは約10mg/mL及び/又は約20mg/mLが製剤中の例示的な抗体濃度である。
本特許に含まれる「抗体」とは最も広い意味において使用され、特にモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、又は所望の生物活性を保持する限りは抗体断片を含む。また、本特許に含まれる抗体は、所望の抗原と結合する限り特に制限はなく、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヒツジ抗体、ラクダ抗体、ニワトリ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体等を適宜用いることができる。抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。
本発明は抗体を含有する安定な凍結乾燥医薬製剤に関するものである。製剤中の抗体は、抗体を産生するために該当分野で利用できる当業者に周知の技術を使用して調製される。例示的なモノクローナル抗体の調製方法として、(1)免疫原として使用する、生体高分子の精製及び/又は抗原タンパク質を細胞表面に過剰に発現している細胞の作成、(2)抗原を動物細胞に注射することにより免疫した後、血液を採取しその抗体価を検定して脾臓等の摘出の時期を決定してから、抗体産生細胞を調製する工程、(3)骨髄腫細胞(ミエローマ)の調製、(4)抗体産生細胞とミエローマとの細胞融合、(5)目的とする抗体を産生するハイブリドーマ群の選別、(6)単一細胞クローンへの分割(クローニング)、(7)場合によってはモノクローナル抗体を大量に製造するためのハイブリドーマの培養、又はハイブリドーマを移植した動物の飼育、(8)場合によってはハイブリドーマ等の抗体産生細胞からヒトモノクローナル抗体をコードする遺伝子をクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主(例えば哺乳類細胞細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞など)に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生された組換え型抗体の調製、(9)このようにして得られた抗体の精製、(10)このようにして製造されたモノクローナル抗体の生理活性及びその認識特異性の検討、あるいは標識薬としての特性の検定、等が挙げられる。さらにポリクローナル抗体についても同様に当業者に周知の方法により作製することができる。
本特許に含まれる抗体には抗体の重鎖及び/又は軽鎖の各々のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する重鎖及び/又は軽鎖からなる抗体も包含される。本発明の抗体のアミノ酸配列中への、前記のようなアミノ酸の部分的改変(欠失、置換、挿入、付加)は、そのアミノ酸配列をコードする塩基配列を部分的に改変することにより導入することができる。この塩基配列の部分的改変は、既知の部位特異的変異導入法(site specific mutagenesis)を用いて定法により導入することができる。(Proc Natl Acad Sci USA.,1984 Vol81:5662)。本特許に含まれる抗体には、いずれのイムノグロブリンクラス及びアイソタイプを有する抗体をも包含する。抗体には、サブクラスを組み替えた改変抗体、又はさらに重鎖定常域を改変した改変抗体をも含む。さらに、ヨード、イットリウム、インジウム、テクネチウム等の放射性核種(J.W.Goding,Monoclonal Anibodies:principles and practice,1993 Academic Press)、緑膿菌毒素、ジフテリアトキシン、リシンのような細菌毒素、及びメトトレキセート、マイトマイシン、カリキアマイシンなどの化学療法剤(D.J.King,Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies.,1998 T.J.Intenational Ltd.;M.L.Grossbard.,Monoclonal Antibody-BaseTherapy of Cancer.,1998 Marcel Dekker Inc)、さらに、Maytansinoid等のプロドラッグ(Chari et al.,Cancer Res.,1992 Vol.52:127;Liu et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1996 Vol.93:8681)などを結合させることによりガンなどの疾患の治療効果をさらに増強したものも包含する。
また本特許に含まれる抗体には抗体の機能的断片も含まれる。この「機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、抗体の抗原への作用を1つ以上保持するものを意味し、具体的にはF(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、及びこれらの重合体等が挙げられる(D.J.King.,Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies.,1998 T.J.International Ltd)。
本特許に含まれる抗体は、ポリクローナル抗体又は及びモノクローナル抗体であり、好ましくはヒト抗体、ヒト型化抗体又はキメラ抗体である。該抗体は、好ましくはIgGであり、好ましくはIgGのサブクラスが、IgG1、IgG2、IgG4のいずれかである。またIgGが、定常領域のアミノ酸配列の一部に遺伝子改変により、アミノ酸の欠失、及び/又は、置換、及び又は、挿入が行われたIgGであっても良い。
また、より好ましくは国際公開第WO2003/033538号パンフレットに記載されている抗HLA-DRヒトモノクローナル抗体であるHD3、HD4、HD6、HD7、HD8、HD10、HD4G1、HD4G2Ser、HD4G4、HD8G1、HD8G1Ser、HD8G2、HD8G2Ser、HD8G4である。このうち、HD4、HD6、HD8及びHD10を産生するハイブリドーマは、それぞれFERM BP-7771、FERM BP-7772、FERM BP-7773、FERM BP-7774として、2001年10月11日付で独立行政法人 産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託されている。また、HD3及びHD7を産生するハイブリドーマは、それぞれFERM BP-08534、FERM BP-08536として、2003年10月31日付で同センターに国際寄託されている。さらに、本特許にはCD40に対するヒトモノクローナル抗体も含まれ、好ましくは国際公開第WO2002/088186号パンフレットに記載されている抗CD40アンタゴニスト抗体であるKM281-1-10、KM281-2-10-1-2、KM283-5、KM225-2-56、KM292-1-24、KM341-6-9、4D11、5H10、11E1、5G3、3811、3411、3417、F4-465、および抗CD40アゴニスト抗体であるKM302-1、KM341-1-19、KM643-4-11、2053、2105、3821、3822、285、110、115、F1-102、F2-103、F5-77、F5-157である。このうちハイブリドーマクローンKM302-1、KM281-1-10、KM281-2-10-1-2、は2001年5月9日付でそそれぞれFERM BP-7578、FERM BP-7579、FERM BP-7580として、クローンKM341-1-19及び4D11は2001年9月27日付でそれぞれFERMBP-7759、FERMBP-7758として、クローン2105は2002年4月17日付でFERMBP-8024として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)にブタペスト条約に基づき国際寄託されている。さらに、F2-103、F5-77及びF5-157の重鎖及び軽鎖の可変領域を有するプラスミドは2001年4月19日付でそれぞれATCC PTA-3302(F2-103重鎖)、ATCC PTA-3303(F2-103軽鎖)、ATCC PTA-3304(F5-77重鎖)、ATCC PTA-3305(F5-77軽鎖)、ATCC PTC-3306(F5-157重鎖)、及びATCC PTA-3307(F5-157軽鎖)として、ハイブリドーマクローンF1-102及びF4-465は2001年4月24日付でそれぞれATCC PTA-3337及びATCC PTA-3338として、(American Type Culuture Collection, 10801 University Blvd., Manassas, Virginia, USA)(アメリカ国立菌培養収集所、アメリカ合衆国 ヴァージニア州 20110-2209 マナサス 10801 ユニバーシティブルバード)にブダペスト条約に基づき国際寄託されている。本発明の凍結乾燥製剤は上記のいずれの抗体を用いたときにも安定である。
本発明による凍結乾燥製剤は、有効成分として上記の抗体及び各種添加剤を含む溶液製剤を調製し、その後この溶液を凍結乾燥することによって調製できる。
本発明の好ましい実施形態によれば、凍結乾燥製剤は、抗体の他にポリオール、結晶性物質を含む、さらに緩衝剤及び界面活性剤を含む。
「凍結乾燥」「凍結乾燥された(lyophilized)」及び「凍結乾燥された(Freeze-dried)」は、乾燥すべき物質がまず凍結されて、次に氷又は凍結溶媒が真空環境中で昇華されて除去される工程を意味する。保存中の凍結乾燥品の安定性を増強するために、凍結乾燥前製剤中に賦形剤を含有しても良い。凍結乾燥工程は公知の方法で実施することができる。
本発明に含まれる「添加剤」とは活性成分以外の凍結乾燥製剤に含まれる全ての成分を含み、例えば緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、賦形剤、安定化剤、界面活性剤、防腐剤などが含まれる。また一種の添加剤成分において二種類以上の効果を示すものも含まれる。
「緩衝剤」は酸塩基共役成分の作用によりpHの変化を穏やかにする添加剤を指す。緩衝剤濃度はその緩衝能力及び/又は所望の浸透圧に応じて約1mmol/Lから約50mmo/L、好ましくは5mmol/Lから20mmol/L、最も好適なのは約10mmol/Lである。好ましい緩衝剤はグルタミン酸塩(例えばグルタミン酸ナトリウム)やクエン酸及び他の有機酸緩衝液が含まれる。最も好ましくはグルタミン酸塩である。
「ポリオール」は複数のヒドロキシル基を有する物質であり、凍結乾燥製剤中では賦形剤としても使用される。糖(還元及び非還元糖)、糖アルコール及び糖酸を含む。ここで好適なポリオールは、約600KD未満(例えば約120KDから約400KDの範囲)である分子量を有する。「還元糖」は金属イオンを低減することができるか、又はタンパク質中のリジンと他のアミノ基と共有的に反応できるヘミアセタール基を含むものであり、「非還元糖」は、還元糖のこれらの性質を有さないものである。還元糖の例としてはフルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース及びグルコースである。非還元糖の例としてはスクロース、トレハロース、ソルボース、メレチトース及びラフィノース等を含む。糖アルコールの例としてはマンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトール及びグリセロース等である。糖酸は、L-グルコン酸とその金属塩が含まれる。凍結乾燥製剤への還元糖の使用は酸化体の生成を促進するため好ましくない。また、凍結、乾燥に伴うストレスに対してタンパク質を保護する目的でポリオールを使用する場合には凍結及び乾燥の際に非晶質(アモルファス)構造をとるものが望ましい。凍結の際に非晶質構造をとるポリオールの例示的なものとして、スクロース、トレハロース、ソルビトールなどがある。本発明のポリオールは好ましくは非還元糖かつ非晶質のポリオールであり、又は非還元糖かつ非晶質の糖若しくは糖アルコール等のポリオールである。より好ましくはスクロース、トレハロース、ソルボース、メレチトース及びラフィノースなどの非還元糖かつ非晶質のポリオールであり、最も好ましくはスクロース及びトレハロースである。また、本発明の凍結乾燥製剤は複数のポリオールを含んでいてもよい。
「結晶性物質」とは凍結の際に結晶構造をとるものであればよく、アラニン、グリシン等の結晶性のアミノ酸等を含む。特に好ましくはアラニンであり、5〜40mg/mL、好ましくは10〜30mg/mL、さらに好ましくは15〜25mg/mL、特に好ましくは20mg/mL含まれる。
ポリオール及び結晶性物質は賦形剤や等張化剤として作用し得る。本発明において「賦形剤」とは、凍結乾燥製剤のケーキ形状を維持する機能及び/又は凍結、乾燥に伴うストレスに対してタンパク質を保護する機能をもつ物質をいう。ポリオール及び結晶性物質の他、賦形剤のために使用される一般的な例には、乳糖がある。賦形剤は長期保存時のタンパク質安定性を増強するという点で有用な性質を与える。また、これらの物質は等張化剤としても作用し得る。「等張化剤」は対象の製剤がヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有するよう浸透圧を調整するものを指す。等張製剤は約250から350mOsm/kgの浸透圧を有し、生理食塩水の浸透圧を1とした浸透圧比は約1である事が望ましい。本発明において賦形剤として用いられるアラニンは、ケーキ形状を維持し、ポリオールは、凍結、乾燥に伴うストレスに対してタンパク質を保護する。
本発明において、スクロースのようなポリオールは、抗体凝集に対する安定化剤としても作用し、粒状物の無い溶液に凍結乾燥製剤が復元する時間を短縮するのに重要な役割も果たす。ポリオールは、製剤の所望の浸透圧に応じて変化する量で製剤に加えられる。好ましくは復元後の凍結乾燥製剤は、等張であるが、高張又は低張でもよい。
「界面活性剤」にはポリソルベート(例えばポリソルベート20、80など)又はポロキサマー(例えばポロキサマー188)のような非イオン性界面活性剤が含まれる。添加される界面活性剤の量は、製剤化された抗体の凝集を低減し、及び/又は製剤中の粒子の形成を最小化し、及び/又は容器へのタンパク質の吸着を低減するような量である。本発明において界面活性剤として好ましくはポリソルベートを含み、最も好ましくはポリソルベート80を含む。界面活性剤は製剤中に、好ましくは0.02mg/mLから0.1mg/mL、最も好ましくは約0.05mg/mLの量で存在しうる。
凍結乾燥前組成物の例としては、約1mg/mLから60mg/mLのIgG抗体、約10mmol/Lから20mmol/Lのグルタミン酸ナトリウム(pH5.5)、約0.05mg/mLのポリソルべート80、及び賦形剤として20mg/mLのアラニンと5mg/mLから50mg/mLのスクロースを含む製剤である。上記凍結乾燥前製剤は凍結乾燥されて乾燥した安定な粉末となり、これはヒトへの投与に適した粒状物を含まない溶液に容易に復元することができる。
本発明は抗体に結晶性物質(最も好ましくはアラニン)と非還元糖及び非晶質のポリオール(最も好ましくはスクロース及びトレハロース)を賦形剤として添加し、凍結乾燥することで安定な凍結乾燥製剤を提供する。実質的には、結晶性物質からなる結晶相でケーキ構造を維持し、抗体と非還元糖及び/又は非晶質のポリオール(最も好ましくはスクロース及びトレハロース)からなるアモルファス相によって凍結及び乾燥中のストレスからタンパク質を保護することで、安定な凍結乾燥製剤を導くことができる。
本発明に用いられる賦形剤のアラニンとスクロースの配合比及び配合量は活性成分である抗体濃度に応じ適宜調整される。
Rを凍結乾燥製剤中に存在するスクロースとアラニンの質量比(スクロース質量/アラニン質量)又は濃度比(スクロース濃度/アラニン濃度)とした時、安定性が良好であるRは0.25以上であり、好ましくは0.5から2.5であり、より好ましくは1から2であった。最も好ましくは1.5である。
またQを凍結乾燥製剤中に存在する抗体とアラニンの質量比(抗体質量/アラニン質量)又は濃度比(抗体濃度/アラニン濃度)とした時、R=1.5の比率でスクロース/アラニンを含有する凍結乾燥製剤で安定性が良好であるQは0.05から3、好ましくは0.05から1.5である。
上述のRとQの組合せより、抗体、アラニン及びスクロースからなる安定な凍結乾燥性剤は、抗体質量とアラニン質量とスクロース質量の3成分の質量の比が1:0.3〜20:0.5〜30である。また、抗体に対するアラニンとスクロースの合計質量の比は、1:5/6〜50である。
本発明の凍結乾燥製剤は、復元して用いられる。
「復元」とは、凍結乾燥製剤を溶液で再水和して、粒子の無い清澄化溶液にすることで「復元時間」はそれに必要な時間である。凍結乾燥製剤の重要な特徴は、製品の復元時間又は再水和するのに必要な時間であり、短い時間が要求される。非常に速い完全な再水和を可能にするために、高多孔性の構造を有するケーキが重要である。ケーキ構造は、タンパク質濃度、賦形剤の種類と濃度、及び凍結乾燥サイクルのプロセスパラメータを含む多くのパラメータの関数である。一般に復元時間は、タンパク質濃度が上昇すると上昇する。従って、復元時間が長い場合は、より濃縮された溶液にタンパク質がより長時間暴露されるため、製品の品質を劣化させる。さらに使用者の側からは、製品が完全に再水和されるまで投与することができない。これは、完全に再水和させることにより、製品が粒状物を含まず、正しい用量が投与され、その無菌性が影響を受けていないことを確保するためである。すなわち、迅速な再水和は、患者と医者にとって好都合である。
溶液製剤は、適切な乾燥パラメータを使用して凍結乾燥することができる。凍結乾燥製剤は、抗体の生物活性の安定性を保持し、ヒト被験体への投与を目的とした抗体を、最終製品中での物理的及び化学的分解から守る。
凍結乾燥製剤は、使用時に希釈剤(例えば注射用水)で再水和されて、粒状物を含まない溶液を与える。復元した抗体溶液は、周囲温度で凍結乾燥ケーキを長期保存した後も粒状物を含まない。復元した溶液は、被験体に非経口的に、好ましくは静脈内又は筋肉内又は皮下投与される。
本発明の組成物は、免疫グロブリンを含有する試薬中のタンパク質凝集物と粒状物の形成を最小にし、時間が経っても溶液中の抗体がその免疫活性を維持することを確保する。組成物は、中性又は酸性pHを有する緩衝液中に抗体、アラニン、及びポリオール及び界面活性剤、を含む、水性の凍結乾燥前製剤から調製される無菌の薬剤学的に許容される凍結乾燥製剤を含む。本発明の組成物はさらに、アラニン及びポリオール以外の賦形剤及び/又は等張化剤を含有してもよい。
製剤は、抗体での治療を必要としている哺乳動物、好ましくはヒトに、既知の方法、例えばボーラスとしてもしくは一定時間にわたる連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、大脳内、皮下、関節内、滑液包内、くも膜下腔内、経口、局所的、又は吸入経路により、投与される。好適な実施様態では、製剤は静脈内投与により哺乳動物に投与される。このような目的には、製剤は、例えばシリンジを使用して、又は点滴静注ラインを介して注入される。
本発明を以下の実施例によってさらに詳しく説明する。本発明は次の実施例を参照すれば十分に理解されるであろう。しかし、これら実施例は、発明の範囲を制限するものではない。本発明の記載に基づき種々の変更、修飾が当業者には可能であり、これらの変更、修飾も本発明に含まれる。
実施例1 アラニンと各種賦形剤の組み合わせ
抗体として国際公開第WO2003/033538号パンフレットに記載されているHLA-DRに対する抗体(抗HLA-DR抗体、IgG1)用い、凍結乾燥製剤を調製した。
抗体として国際公開第WO2003/033538号パンフレットに記載されているHLA-DRに対する抗体(抗HLA-DR抗体、IgG1)用い、凍結乾燥製剤を調製した。
(1)製剤検体の調製
本検討に使用した試薬は、抗HLA-DR抗体(約20mg/mL、国際公開第W02003/0033538号パンフレットに記載されている方法に従ってキリンビール社医薬生産技術研究所(2007年7月1日以降は、キリンファーマ株式会社生産技術研究所)にて調製)、L-グルタミン酸ナトリウム一水和物(日本薬局方外医薬品規格)、アラニン(Ala、日本薬局方)、トレハロース(Tor、日本薬局方)、スクロース(Suc、日本薬局方)、塩化ナトリウム(NaCl、日本薬局方)、塩酸(日本薬局方)、ポリソルベート80(日本薬局方)、注射用水(日本薬局方)を用いた。各製剤検体はあらかじめ原薬を含まないプラセボ溶液を作製し、抗HLA-DR抗体溶液をNAPカラム(ファルマシアバイオテク社製)を用いて製剤プラセボ溶液と置換することにより調製した。またタンパク濃度はOD280nm吸光度係数ε=1.4を用い換算し濃度を調整した。
本検討に使用した試薬は、抗HLA-DR抗体(約20mg/mL、国際公開第W02003/0033538号パンフレットに記載されている方法に従ってキリンビール社医薬生産技術研究所(2007年7月1日以降は、キリンファーマ株式会社生産技術研究所)にて調製)、L-グルタミン酸ナトリウム一水和物(日本薬局方外医薬品規格)、アラニン(Ala、日本薬局方)、トレハロース(Tor、日本薬局方)、スクロース(Suc、日本薬局方)、塩化ナトリウム(NaCl、日本薬局方)、塩酸(日本薬局方)、ポリソルベート80(日本薬局方)、注射用水(日本薬局方)を用いた。各製剤検体はあらかじめ原薬を含まないプラセボ溶液を作製し、抗HLA-DR抗体溶液をNAPカラム(ファルマシアバイオテク社製)を用いて製剤プラセボ溶液と置換することにより調製した。またタンパク濃度はOD280nm吸光度係数ε=1.4を用い換算し濃度を調整した。
各製剤検体はクリーンベンチ内で0.22μmフィルター(ミリポア社製)を用い無菌濾過を行い、5mLガラスバイアル(日本薬局方に適合)に1mLずつ充填を行った。充填後、ゴム栓で半打栓を行い、日本真空技術社製の凍結乾燥機を用いて凍結乾燥を行った。また分析検体の希釈及び分析のブランクのための抗HLA-DR抗体を含まない溶液(プラセボ)をクリーンベンチ内で0.22μmボトルトップフィルター(ナルゲン社)を用い無菌濾過を行った。
(2)試験条件
本実施例において安定性評価を行うため、以下の条件に従い各製剤検体にストレスを与えた。
本実施例において安定性評価を行うため、以下の条件に従い各製剤検体にストレスを与えた。
熱安定性試験:40℃又は25℃に制御されたインキュベータ(TABAI ESPEC社製)に1箇月間及び3箇月間保存した。また各検体は熱ストレス負荷後分析開始まで4℃に制御された低温庫に保存した。
(3)分析方法
外観目視:蛍光灯下、肉眼でケーキ形状を調べ、外観図を記述した。
外観目視:蛍光灯下、肉眼でケーキ形状を調べ、外観図を記述した。
以下の分析については、外観目視後、シリンジで注射用水を1mL加え再溶解し、分析を行った。
不溶性異物及び濁り:白色光源の直下、約5000ルクスの明るさの位置で、肉眼で不溶性異物及び濁りの有無を調べた。
サイズ排除HPLC検定(SEC):重合体含量及び分解物含量はサイズ排除高速液体クロマトグラフ法により算出した。必要に応じて検体を1mg/mLに希釈し20μLの注入を雰囲気温度で行った。分離はTSKgel G3000 SWXL 30cm×7.8mm(東ソー社製)カラムを使用し、移動相としては20mmol/Lリン酸ナトリウム、500mmol/L塩化ナトリウムpH7.0を用い0.5mL/分の流量で分析時間は30分、検出を215nmで行った。なお主ピークより前に溶出するものを重合体、後に溶出するものを分解物と定義した。
陽イオン交換HPLC検定(IEC):デアミド体含量は陽イオン交換高速液体クロマトグラフ法により算出した。5mg/mLに適宜希釈を行った検体を60μL注入した。分離カラムとしてTSKgel BIOAssist S(東ソー社製)を用い280nmで検出を行った。移動相としてAに対して20mM酒石酸pH4.5、Bに対して20mM酒石酸、1M塩化ナトリウムpH4.5を用い、最適なグラジェント条件を用い分析を行った。なお、主ピークより前方に溶出した劣化物をデアミド体と定義した。
疎水HPLC検定(HIC):酸化体の含量は疎水クロマトグラフ法により算出した。検体処理液(20mmol/Lリン酸ナトリウム、0.984mol/L硫酸アンモニウム、7.5mmol/Lメチオニン)を用いて1mg/mLに適宜希釈を行った検体を20μL注入した。分離カラムとしてTSKgel Butyl-NPR(東ソー社製)を用いて215nmで分析及び検出を行った。移動相はAとして20mmol/L リン酸ナトリウム、pH6.5を用い、Bとして20mmol/L リン酸ナトリウム、1.2mol/L 硫酸アンモニウム、pH6.5を用い、最適なグラジェント条件を用い分析を行った。なお主ピークより前方に溶出した劣化物を酸化体と定義した。
還元SDS-PAGE検定:必要に応じて検体溶液を400μg/mLに希釈した。検体溶液にSDS Sample Buffer(Invitrogen社製)、Sample Reducing Agent(Invitrogen製)、H2Oを加え、95℃で5分間加熱し、還元検体溶液とした。泳動糟に電気泳動用のTris-Glycine SDS Running buffer(Invitrogen社製)を満たした。試料溶液5μLを4-20%Tris-Glycine Gel(Invitrogen社製)にアプライし、電気泳動を約125V定電圧で、試料溶液に含まれるブロモフェノールブルーの青色がゲルの下端付近に移動するまで行った。泳動終了後のゲルを銀染色し検出した。なお検体及び劣化体のおおよその分子量を判定するために分子量マーカー(97KDa、66KDa、45KDa、30KDa、20KDa、14KDaのタンパク質を含む)を同時に泳動する。
非還元SDS-PAGE検定:必要に応じて検体溶液を400μg/mLに希釈した。検体溶液にLDS Sample Buffer(Invitrogen社製)、H2Oを加え、非還元検体溶液とした。泳動糟に電気泳動用のTris-Acetate SDS Running buffer(Invitrogen社製)を満たした。試料溶液5μLを3-8%Tris-Acetate Gel(Invitrogen社製)にアプライし、電気泳動を約125V定電圧で、試料溶液に含まれるブロモフェノールブルーの青色がゲルの下端付近に移動するまで行った。泳動終了後のゲルを銀染色し検出した。なお検体及び劣化体のおおよその分子量を判定するために分子量マーカー(220KDa、116KDa、97.4KDa、63.3KDa、54.4KDa、36.5KDaのタンパク質を含む)を同時に泳動する。
浸透圧比:自動浸透圧測定装置(アークレー社製 OSMO STATION OM-6050)を用いて浸透圧測定を行い、同時に測定した生理食塩水の浸透圧に対する比を計算した。pH:自動pH測定装置(メトラー・トレド社製MP-230など)を用いてpH測定を行った。測定開始時にpH4、pH7、pH9の標準溶液を用い校正を行った後測定を行った。
水分測定:自動水分気化装置(平沼産業社製 LE-20SA)を接続した微量水分測定装置(平沼産業社製 AQ-2000)を用いて水分量測定を行い、含湿度の計算した。
(4)結果及び考察
図1は各凍結乾燥製剤を25℃及び40℃で保存した時の重合体の変化を示した。重合体量はサイズ排除クロマトグラフにより測定した。アラニンのみを賦形剤とした製剤では40℃1箇月で約5%、40℃3箇月で約9%の重合体増加が確認された。アラニンと塩化ナトリウムを賦形剤とした製剤では、再溶解後の肉眼による目視検査で異物、濁りが確認され、重合体の増加も大きく不安定であった。トレハロース、スクロースと組み合わせた製剤では40℃3箇月保存においても重合体の増加は確認されず非常に安定であった。アラニンに上記で用いたポリオール(トレハロース、スクロース)を組み合わせることで劇的に重合体を抑制することが明らかとなり、安定性が高いことが示された。また、その他の分析項目(ケーキ形状、異物、濁り、分解物、不溶性微粒子、デアミド体、酸化体)においてもアラニンとポリオールを組み合わせた製剤は熱ストレス負荷前後でほとんど変化は認められず、安定であった。
図1は各凍結乾燥製剤を25℃及び40℃で保存した時の重合体の変化を示した。重合体量はサイズ排除クロマトグラフにより測定した。アラニンのみを賦形剤とした製剤では40℃1箇月で約5%、40℃3箇月で約9%の重合体増加が確認された。アラニンと塩化ナトリウムを賦形剤とした製剤では、再溶解後の肉眼による目視検査で異物、濁りが確認され、重合体の増加も大きく不安定であった。トレハロース、スクロースと組み合わせた製剤では40℃3箇月保存においても重合体の増加は確認されず非常に安定であった。アラニンに上記で用いたポリオール(トレハロース、スクロース)を組み合わせることで劇的に重合体を抑制することが明らかとなり、安定性が高いことが示された。また、その他の分析項目(ケーキ形状、異物、濁り、分解物、不溶性微粒子、デアミド体、酸化体)においてもアラニンとポリオールを組み合わせた製剤は熱ストレス負荷前後でほとんど変化は認められず、安定であった。
本実施例より抗体を安定化させる凍結乾燥製剤の賦形剤としてアラニンとポリオールの組み合わせが好適であることが判明した。好ましくは非晶質のポリオール、さらに好ましくは非還元かつ非晶質のポリオール、最も好ましくはポリオールとしてトレハロース、スクロースを用いることが望ましい。
実施例2 スクロース−アラニン比
実施例1でアラニンと組み合わせるポリオールとしてトレハロース又はスクロースが最も好ましいことが明らかとなった。
実施例1でアラニンと組み合わせるポリオールとしてトレハロース又はスクロースが最も好ましいことが明らかとなった。
本実施例ではポリオールとしてスクロースを用い、アラニン濃度を一定とし、アラニンと混合するスクロース濃度を変化させ、重合体の抑制に最適な濃度比率Rの検討を行った。ここでRは凍結乾燥生成物中に存在するスクロース質量/アラニン質量を表す。
抗体として国際公開第WO2003/033538号パンフレットに記載されているHLA-DRに対する抗体(抗HLA-DR抗体、IgG1)を用い、凍結乾燥製剤を調製した。
(1)材料と方法
本実施例に用いた材料及び分析方法は実施例1に示したものと同様である。
本実施例に用いた材料及び分析方法は実施例1に示したものと同様である。
(2)試験条件
実施例1に示した方法と同様に、25℃又は40℃に制御されたインキュベータ(TABAI ESPEC社製)に1箇月間及び3箇月間保存し、熱安定性試験を実施した。また各検体は熱ストレス負荷後分析開始まで4℃に制御された低温庫に保存した。
実施例1に示した方法と同様に、25℃又は40℃に制御されたインキュベータ(TABAI ESPEC社製)に1箇月間及び3箇月間保存し、熱安定性試験を実施した。また各検体は熱ストレス負荷後分析開始まで4℃に制御された低温庫に保存した。
(3)結果及び考察
図2は各凍結乾燥製剤を25℃及び40℃で保存した時の重合体の変化を示した。重合体量はサイズ排除クロマトグラフにより測定した。混合するスクロース質量増加に伴い重合体生成を抑制することが明らかとなり、R=0.25からR=2.5の範囲で安定であることを示した。さらにSDS-PAGE分析においてもサイズ排除クロマトグラフで得られた結果と同様の傾向が認められる泳動像が得られた。
図2は各凍結乾燥製剤を25℃及び40℃で保存した時の重合体の変化を示した。重合体量はサイズ排除クロマトグラフにより測定した。混合するスクロース質量増加に伴い重合体生成を抑制することが明らかとなり、R=0.25からR=2.5の範囲で安定であることを示した。さらにSDS-PAGE分析においてもサイズ排除クロマトグラフで得られた結果と同様の傾向が認められる泳動像が得られた。
本実施例で行なった検討のいずれの濃度においてもケーキが形成され、特にR=1.5以下できれいなケーキを形成し、長期保存に耐え得る形状を示した。またその他の分析項目(異物、濁り、不溶性微粒子、デアミド体、酸化体)においても熱ストレス負荷前後における変化はほとんど確認されず、安定であった。
本実施例において抗体を安定化させる凍結乾燥製剤の賦形剤としてアラニンと組み合わせる最適なスクロース質量比率R(スクロース質量/アラニン質量)が明らかとなった。安定性が良好であるRは0.25以上であり、好ましくは0.5から2.5であり、より好ましくは1から2であり、さらに好ましくは0.75から2であった。最も好ましくは1.5であった。
実施例3 抗体濃度の影響検討
抗体として国際公開第WO2003/033538号パンフレットに記載されているHLA-DRに対する抗体(抗HLA-DR抗体、IgG1)を用い凍結乾燥製剤を調製した。
抗体として国際公開第WO2003/033538号パンフレットに記載されているHLA-DRに対する抗体(抗HLA-DR抗体、IgG1)を用い凍結乾燥製剤を調製した。
本実施例は表3に示した製剤を調製し、実施例2で得られた抗体を安定化させるのに最適なスクロース/アラニン処方(R=1.5)が抗体濃度の異なる製剤に与える影響を評価した。ここでQをアラニン質量に対する抗体質量の比とした。すなわち、Qは凍結乾燥製剤中の抗体質量/アラニン質量を表す。
(1)材料と方法
本実施例に用いた材料及び分析方法は実施例1に示したものと同様である。
本実施例に用いた材料及び分析方法は実施例1に示したものと同様である。
(2)試験条件
実施例1に示した方法と同様に、25℃又は40℃に制御されたインキュベータ(TABAI ESPEC社製)に1箇月間及び3箇月間保存し、熱安定性試験を実施した。また各検体は熱ストレス負荷後分析開始まで4℃に制御された低温庫に保存した。
実施例1に示した方法と同様に、25℃又は40℃に制御されたインキュベータ(TABAI ESPEC社製)に1箇月間及び3箇月間保存し、熱安定性試験を実施した。また各検体は熱ストレス負荷後分析開始まで4℃に制御された低温庫に保存した。
(3)結果及び考察
図3は各凍結乾燥製剤を25℃及び40℃で保存した時の重合体の変化を示した。重合体量はサイズ排除クロマトグラフにより測定した。抗体濃度が最も高濃度である(抗体量が最も多い)Q=3の製剤について、40℃3箇月保存で重合体約2%であった。一般的に抗体濃度が高くなると重合体生成量が増加し、不安定になることが知られている。実施例1の抗体濃度10mg/mL、アラニン単独処方の製剤について、40℃3箇月保存での重合体量が約9%であったことを考慮すると、十分に重合体生成を抑制していることは明らかである。なお抗体濃度が最も低濃度である(抗体量が最も少ない)Q=0.05の製剤についてはストレス負荷前後における変化はほとんど確認されず、安定であった。またその他の分析項目(異物、濁り、分解物、デアミド体、酸化体)においてもストレス負荷前後における変化はほとんど確認されず、安定であった。
図3は各凍結乾燥製剤を25℃及び40℃で保存した時の重合体の変化を示した。重合体量はサイズ排除クロマトグラフにより測定した。抗体濃度が最も高濃度である(抗体量が最も多い)Q=3の製剤について、40℃3箇月保存で重合体約2%であった。一般的に抗体濃度が高くなると重合体生成量が増加し、不安定になることが知られている。実施例1の抗体濃度10mg/mL、アラニン単独処方の製剤について、40℃3箇月保存での重合体量が約9%であったことを考慮すると、十分に重合体生成を抑制していることは明らかである。なお抗体濃度が最も低濃度である(抗体量が最も少ない)Q=0.05の製剤についてはストレス負荷前後における変化はほとんど確認されず、安定であった。またその他の分析項目(異物、濁り、分解物、デアミド体、酸化体)においてもストレス負荷前後における変化はほとんど確認されず、安定であった。
本実施例においてQ=0.05から3に対し、R=1.5の比率でアラニン/スクロースを含有することで安定な凍結乾燥製剤を得ることが明らかとなった。すなわち安定な凍結乾燥製剤は、抗体質量とアラニン質量とスクロース質量の3成分の質量の比が1:0.3〜20:0.5〜30の範囲にある凍結乾燥製剤で得られることを示す。抗体質量に対するアラニン質量とスクロース質量の合計で表した場合(抗体質量を1とする)、1:5/6〜50であり、好ましくは1:1〜20、さらに好ましくは1:1〜10、特に好ましくは1:5である。
実施例4 他の抗体での検討
本検討では実施例2で得られた抗体を安定化させるのに最適なアラニン/スクロース処方(R=1.5)について、国際公報第WO0563981号パンフレットに公開されているCD40に対する組換え完全ヒトIgG4抗体 4D11(抗CD40抗体)を用いて製剤の安定性を検討した。
本検討では実施例2で得られた抗体を安定化させるのに最適なアラニン/スクロース処方(R=1.5)について、国際公報第WO0563981号パンフレットに公開されているCD40に対する組換え完全ヒトIgG4抗体 4D11(抗CD40抗体)を用いて製剤の安定性を検討した。
(1)材料と方法
本実施例に用いた材料及び分析方法は実施例1に示したものと同様である。R=1.5、Q=0.5であり、抗体質量に対するアラニン及びスクロースの質量の比は、1:5であった。
本実施例に用いた材料及び分析方法は実施例1に示したものと同様である。R=1.5、Q=0.5であり、抗体質量に対するアラニン及びスクロースの質量の比は、1:5であった。
(2)試験条件
実施例1に示した方法と同様に、25℃又は40℃に制御されたインキュベータ(TABAI ESPEC社製)に1箇月間及び3箇月間保存し、熱安定性試験を実施した。また各検体は熱ストレス負荷後分析開始まで4℃に制御された低温庫に保存した。
実施例1に示した方法と同様に、25℃又は40℃に制御されたインキュベータ(TABAI ESPEC社製)に1箇月間及び3箇月間保存し、熱安定性試験を実施した。また各検体は熱ストレス負荷後分析開始まで4℃に制御された低温庫に保存した。
(3)結果及び考察
図4は各凍結乾燥製剤を40℃で保存した時の重合体の変化(Initial比:凍結乾燥前の重合体量で割った値であり、凍結乾燥前の値を1とした)を示した。重合体量はサイズ排除HPLCにより測定した。抗CD40抗体においても、賦形剤としてアラニンとスクロースを用いた製剤では保存期間における重合体生成の抑制が確認され、温度及び時間に関わらず本製剤中の抗体は安定に保持された。またその他の分析項目(異物、濁り、分解物、デアミド体、酸化体)においても熱ストレス負荷前後における変化はほとんど確認されず、安定であった。
図4は各凍結乾燥製剤を40℃で保存した時の重合体の変化(Initial比:凍結乾燥前の重合体量で割った値であり、凍結乾燥前の値を1とした)を示した。重合体量はサイズ排除HPLCにより測定した。抗CD40抗体においても、賦形剤としてアラニンとスクロースを用いた製剤では保存期間における重合体生成の抑制が確認され、温度及び時間に関わらず本製剤中の抗体は安定に保持された。またその他の分析項目(異物、濁り、分解物、デアミド体、酸化体)においても熱ストレス負荷前後における変化はほとんど確認されず、安定であった。
本実施例においてアラニン及びスクロースを賦形剤とする安定な凍結乾燥製剤は抗体の種類によらず安定であることが判明した。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
Claims (22)
- 抗体を含み、さらにアラニン及びポリオールを賦形剤として含む凍結乾燥製剤。
- ポリオールが非還元糖であり、かつ非晶質のポリオールである請求項1記載の凍結乾燥製剤。
- ポリオールが非還元糖であり、かつ非晶質の糖である請求項1記載の凍結乾燥製剤。
- ポリオールがスクロース又はトレハロースである請求項3記載の凍結乾燥製剤。
- 抗体質量1に対するアラニン及びポリオールの質量が、5/6〜50である請求項1〜4のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
- ポリオール質量/アラニン質量比が、0.5〜2.5である請求項5記載の凍結乾燥製剤。
- 抗体質量/アラニン質量比が、0.05〜3である請求項5又は6に記載の凍結乾燥製剤。
- 抗体質量とアラニン質量とスクロース質量の3成分の質量の比が1:0.3〜20:0.5〜30である請求項1〜7のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
- さらに、緩衝液を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
- 緩衝液がグルタミン酸緩衝液である、請求項9記載の凍結乾燥製剤。
- 緩衝液の濃度が10mMである請求項9又は10に記載の凍結乾燥製剤。
- さらに、界面活性剤を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
- 界面活性剤がポリソルベートである、請求項12記載の凍結乾燥製剤。
- 抗体を有効成分として含む医薬製剤である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
- 抗体にアラニン及びポリオールを添加して凍結乾燥することを含む、安定な凍結乾燥製剤を製造する方法。
- ポリオールが非還元糖であり、かつ非晶質のポリオールである請求項15記載の凍結乾燥製剤を製造する方法。
- ポリオールが非還元糖であり、かつ非晶質の糖である請求項15記載の凍結乾燥製剤を製造する方法。
- ポリオールがスクロース又はトレハロースである請求項17記載の凍結乾燥製剤を製造する方法。
- 抗体質量1に対するアラニン及びポリオールの質量が、5/6〜50である請求項15〜18のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤を製造する方法。
- ポリオール質量/アラニン質量比が、0.5〜2.5である請求項19記載の凍結乾燥製剤を製造する方法。
- 抗体質量/アラニン質量比が、0.05〜3である請求項19又は20に記載の凍結乾燥製剤を製造する方法。
- 抗体質量とアラニン質量とスクロース質量の3成分の質量の比が1:0.3〜20:0.5〜30である請求項15〜21のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤を製造する方法。
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