本発明は、情報記録媒体に記録信号を記録するための情報記録装置、及び情報記録媒体に記録された記録信号を再生するための情報再生装置に関する。
従来、この種の情報記録再生装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。ここでは、この先行例を原型とし、若干の修正を加えた形で、図5、図6を参照しながら説明する。
図5は、従来技術における、信号記録時の、情報記録再生装置の断面構成の一部と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。
図5に示すように、半導体レーザ等の放射光源から出射されたP偏光のレーザ光は、コリメートレンズによって集光されて平行光となった後、ハーフミラーによって2分配される。ハーフミラーによって2分配された一方の光は、1/2波長板を透過してS偏光の光2aとなり(ここまでは図5には示されていないが、以後は破線で表示)、空間変調素子17と凸レンズ4’を順次透過して弱い集光性の光となった後、偏光ビームスプリッタ5’に入射する。偏光ビームスプリッタ5’に入射した光2aは、その偏光面5a’で反射して接合ジャイレータ18を透過した後、対物レンズ7によって集光されて、情報記録媒体8の反射面8Sの手前の点Pb に収束する光束20aとなる。そして、光束20aは、点Pb を境に光軸Lの反対側に移る。
接合ジャイレータ18は、光軸Lを通り紙面に垂直な平面で2つに分けられ、上半分の領域18aでは透過光の偏光方向を時計回りに45度回転させ、下半分の領域18bでは透過光の偏光方向を反時計回りに45度回転させる旋光子を接合したものである。
放射光源から出射されたP偏光のレーザ光のうち、コリメートレンズによって集光されて平行光となった後、ハーフミラーによって2分配されたもう一方の光2b(ここまでは図5には示されていないが、以後は実線で表示)は、光軸Lに沿って偏光ビームスプリッタ5’の偏光面5a’、接合ジャイレータ18を順次透過した後、対物レンズ7によって集光されて、情報記録媒体8の反射面8S上の点P0 に収束する光束20bとなる。
情報記録媒体8は、透明層8aと、透明基板8cと、これらに挟まれたフォトポリマー等の感光層8bとにより構成されている。収束点P0 と収束点Pb は、感光層8bに対してほぼ対称に形成される。
空間変調素子17は、例えば、強誘電性液晶パネルによって構成され、光2aが透過する領域内で碁盤の目状に分割されている。そして、それぞれの領域で独立して位相がπずれたり(位相変調)、又は透過率がゼロになったりしており(振幅変調)、この変調パターンは外部の信号に基づいて更新される。
図5から明らかなように、光束20aと光束20bは、情報記録媒体8の感光層8bの領域で交差する。光束20bのうちで円19内を通る光線2Bは、P偏光が接合ジャイレータ18の領域18bによって反時計回りに45度回転したものとなっており、光束20aのうちで円19内を通る光線2Aは、S偏光が接合ジャイレータ18の領域18aによって時計回りに45度回転したものとなっている。結局、円19内では光線2A、2Bの偏光方向が揃うことになる。この関係は、光軸Lを挟んで円19の反対側に位置する円内を通る光線についても同じである。このように、感光層8bの領域では光束20a、20bの偏光方向が揃うので、光束20a、20bは、互いに干渉して干渉縞を形成する。そして、半導体レーザ等の放射光源の出力が大きい場合には、光束20a、20bが感光層8bを感光させて、感光パターン21(干渉縞の光強度分布に対応して屈折率が変化したパターン)を形成する。この感光パターン21は、空間変調素子17の変調パターンに対応したパターンとなる(すなわち、感光パターン21は、空間変調素子17の変調パターンごとに異なるパターンとして記録される)。
情報記録媒体8は、モータに取り付けられ、当該モータの回転と共に回転する。反射面8Sの表面には、回転方向に沿って径方向に周期的な案内溝(グレーティング)が等ピッチで形成されている。
光束20bの収束点P0 は、案内溝上に位置し、情報記録媒体8の回転に伴って案内溝に沿って移動する。光束20bは、反射面8Sで反射した後、情報記録媒体8を透過し、対物レンズ7によって平行光に変換される。そして、往路において接合ジャイレータ18の領域18aを透過して偏光方向が時計回りに45度回転していた光は、復路においては接合ジャイレータ18の領域18bを透過して元の偏光方向に戻される。また、往路において接合ジャイレータ18の領域18bを透過して偏光方向が反時計回りに45度回転していた光も、復路においては接合ジャイレータ18の領域18aを透過して元の偏光方向に戻される。結局、光束20bの戻り光は、接合ジャイレータ18を透過することによってP偏光の光に戻り、偏光ビームスプリッタ5’の偏光面5a’を透過した後、ホログラム等の分岐手段によって光検出器側に導かれる(この部分は図5には示されていない)。そして、光検出器からの検出信号により、反射面8Sに対するフォーカスエラー信号と案内溝に対するトラッキングエラー信号とが生成され、これらの信号に基づいて、光束20bの収束点が反射面8S上の案内溝上に制御されるように、対物レンズ7が駆動される。
図6は、従来技術における、信号再生時の、情報記録再生装置の断面構成の一部と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。図6においては、図5に比べて、空間変調素子17の変調パターンが異なっている。
図6に示すように、放射光源から出射されたP偏光のレーザ光は、コリメートレンズによって集光されて平行光となった後、ハーフミラーによって2分配される。ハーフミラーによって2分配された一方の光2b’(ここまでは図6には示されていないが、以後は実線で表示)は、光軸Lに沿って偏光ビームスプリッタ5’の偏光面5a’、接合ジャイレータ18を順次透過し、接合ジャイレータ18のそれぞれの領域18a、18bで偏光方向が時計回り、反時計回りに45度回転した後、対物レンズ7によって集光されて、情報記録媒体8の反射面8S上の点P0 に収束する。反射面8Sで反射した光線(反射光)2B’は、感光パターン21内の円19内を伝搬することによって回折光2A’を派生して、光束20a’となる。回折光2A’は、点Pb に集光した後、光軸Lの反対側に移る。そして、当該回折光2A’は、対物レンズ7によって弱い発散性の光となった後、接合ジャイレータ18によって偏光状態が変えられる。回折光2A’の偏光状態が反射光2B’のそれと一致しており、往路においてP偏光が接合ジャイレータ18の領域18aを透過するので、回折光2A’は、P偏光が時計回りに45度回転したものとなっている。これに対し、光軸Lを挟んで円19の反対側に位置する円内を伝搬することによって派生した回折光は、P偏光が反時計回りに45度回転したものとなっている。これらの回折光が接合ジャイレータ18を透過すると、接合ジャイレータ18のそれぞれの領域18a、18bで偏光方向が時計回り、反時計回りに45度回転するので、結局、光束20a’は、S偏光の光束に変換される。従って、光束20a’は、偏光ビームスプリッタ5’の偏光面5a’で反射し、凸レンズ4’によって平行光に変換された後、空間変調素子17を透過する。空間変調素子17は、上記のように、強誘電性液晶パネル等によって構成されており、この信号再生時においては、外部の信号に基づき、透過光を変調しないでそのまま通している。空間変調素子17を透過する光2a’は、感光パターン21の記録信号が反映され、信号記録時の空間変調素子17の変調パターンが光2a’の光強度分布パターンとなって再現される。この透過光2a’は、ホログラムやハーフミラー等によって往路の光路と分岐され、コリメ−トレンズによって集光されて光検出器に導かれる。そして、空間変調素子17の分割パターンに対応した碁盤の目状の光検出セルによって信号光が検出されて、記録信号が再生される。
一方、感光パターン21の領域内での伝搬によって回折しなかった成分20b’は、情報記録媒体8を透過した後、対物レンズ7によって平行光に変換される。そして、往路において接合ジャイレータ18の領域18aを透過して偏光方向が時計回りに45度回転していた光は、復路においては接合ジャイレータ18の領域18bを透過して元の偏光方向に戻される。また、往路において接合ジャイレータ18の領域18bを透過して偏光方向が反時計回りに45度回転していた光も、復路においては接合ジャイレータ18の領域18aを透過して元の偏光方向に戻される。結局、反射光束20b’は、接合ジャイレータ18を透過することによってP偏光の光に戻り、偏光ビームスプリッタ5’の偏光面5a’を透過した後、ホログラム等の分岐手段によって光検出器側に導かれる。そして、光検出器からの検出信号により、反射面8Sに対するフォーカスエラー信号と案内溝に対するトラッキングエラー信号とが生成され、これらの信号に基づいて、収束光の収束点P
0 が反射面8S上の案内溝上に制御されるように、対物レンズ7が駆動される。
特開平11−311938号公報
しかし、上記従来の情報記録再生装置には、以下のような問題がある。
まず、信号記録時には次のような問題がある。すなわち、図5において、光束20aと光束20bに対する情報記録媒体8の反射面8Sからの反射光束は、いずれもその一部が感光パターン21の領域上を透過する。これらの反射光束は、感光パターン21の形成においては迷光であり、大きなノイズを含んだ記録状態となる。また、空間変調素子17を透過した光2aは、周期的に位相や振幅が変化しているために回折し易く、発生した回折光は、空間変調素子17と感光パターン21との距離に比例して透過光(0次回折光)から分離する。そして、この分離が大きすぎると、感光パターン21の領域を外れてしまう。0次回折光には空間変調素子17による信号情報が含まれていないので、回折光成分の少ない感光パターン21は、信号情報が少なく、再生時にコントラストの悪い信号となってしまう。
また、信号再生時には次のような問題がある。すなわち、図6において、記録信号の再生像は空間変調素子17の上に反映される。再生信号の光検出器は、空間変調素子17から離れた位置に配置されるため、光が空間変調素子17から光検出器まで伝搬する間に回折が発生して互いにオーバーラップするので、再生像の品質が著しく劣化してしまう。
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、信号記録時に迷光や回折の影響がない高コントラストの記録を実現することのできる情報記録装置、及び信号再生時に光検出面上での信号品質を大幅に改善することのできる情報再生装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明に係る情報記録装置の構成は、光源と、前記光源から出射された光を多数の回折光に分離する回折手段と、前記多数の回折光をそれぞれ異なった点に集光する集光手段とを備え、前記光源から出射された光が、前記回折手段によって多数の回折光に分離され、前記多数の回折光が、前記集光手段によって情報記録媒体の感光層内のそれぞれ異なった点に集光され、これら集光点の集合によって前記情報記録媒体の前記感光層に情報が記録されることを特徴とする。
また、本発明に係る情報再生装置の構成は、光源と、前記光源から出射された光を集光する集光手段と、微細な光検出セルの集合によって構成された信号検出器とを備え、前記光源から出射された光が、前記集光手段によって情報記録媒体の感光層を透過して前記情報記録媒体の反射面上に集光されると共に、前記反射面で反射して前記感光層を再度透過し、往路と復路での前記感光層の透過によって前記集光手段に向かう再生回折光が発生し、前記再生回折光が前記集光手段を経て前記信号検出器に入射し、前記光検出セルによって前記感光層の情報が再生されることを特徴とする。
前記本発明の情報記録装置の構成においては、前記回折手段の表面は微細領域の集合によって構成され、前記微細領域は、前記回折手段に入力される電気信号によって個別に上下して凹凸の表面を形成し、前記凹凸の表面で反射する光の位相を空間的に変調して、多数の回折光を発生させるのが好ましい。また、この場合には、微細な光検出セルの集合によって構成された信号検出器をさらに備え、前記回折手段で反射する光が回折しない条件で、一部の前記光検出セルの各中心を発光する等強度の光と、前記光源から出射され前記集光手段によって情報記録媒体の反射面上に集光される光と、前記反射面で反射する光とを前記感光層内で干渉させて得られる第1の干渉パターンの第1の光分布を計算し、前記干渉パターンの領域を同じ寸法の微小体で分割し、前記微小体内に含まれる光量を計算して大きい順にn個の微小体を抽出し、前記微小体内に含まれる光量を前記微小体の体積で割った値の光強度で前記微小体の中心から発光するn個の光と、前記光源から出射される光とを前記回折手段の表面上で干渉させて得られる第2の干渉パターンの光分布を計算し、前記第2の干渉パターンの光分布によって前記回折手段の表面の凹凸分布を割り出すのが好ましい。この場合にはさらに、前記光検出セルが、当該光検出セルに配置される発光点の位相が0又はπの2種類の領域に分けられ、これら2種類の領域が交互に並んでいるのが好ましく、前記微小体の中心から発光する光の位相が揃っているのが好ましい。この場合にはさらに、発光する光の基点となる前記光検出セルの組合わせを変えながら前記第1及び第2の干渉パターンの光分布を順次計算して前記回折手段の表面の凹凸分布を割り出し、前記凹凸分布をメモリに格納し、信号記録時に、前記メモリから前記凹凸分布を読み込んで、前記凹凸の表面で反射する光の位相を空間的に変調するのが好ましい。
また、前記本発明の情報記録装置の構成においては、前記回折手段は微細領域の集合によって構成され、前記微細領域は、前記回折手段に入力される電気信号によって内部の屈折率が個別に変化し、前記微細領域を透過する光の位相を空間的に変調して、多数の回折光を発生させるのが好ましい。また、この場合には、微細な光検出セルの集合によって構成された信号検出器をさらに備え、前記回折手段を透過する光が回折しない条件で、一部の前記光検出セルの各中心を発光する等強度の光と、前記光源から出射され前記集光手段によって前記情報記録媒体の反射面上に集光される光と、前記反射面で反射する光とを前記感光層内で干渉させて得られる第1の干渉パターンの第1の光分布を計算し、前記干渉パターンの領域を同じ寸法の微小体で分割し、前記微小体内に含まれる光量を計算して大きい順にn個の微小体を抽出し、前記微小体内に含まれる光量を前記微小体の体積で割った値の光強度で前記微小体の中心から発光するn個の光と、前記光源から出射される光とを前記回折手段の表面上で干渉させて得られる第2の干渉パターンの光分布を計算し、前記第2の干渉パターンの光分布によって前記回折手段の屈折率分布を割り出すのが好ましい。この場合にはさらに、前記光検出セルが、当該光検出セルに配置される発光点の位相が0又はπの2種類の領域に分けられ、これら2種類の領域が交互に並んでいるのが好ましく、前記微小体の中心から発光する光の位相が揃っているのが好ましい。この場合にはさらに、発光する光の基点となる前記光検出セルの組合わせを変えながら前記第1及び第2の干渉パターンの光分布を順次計算して前記回折手段の屈折率分布を割り出し、前記屈折率分布をメモリに格納し、信号記録時に、前記メモリから前記屈折率分布を読み込んで、前記微細領域を透過する光の位相を空間的に変調するのが好ましい。
本発明によれば、記録信号の再生像が最適となるように感光層の記録を行うことができるので、記録信号の読み誤りをなくすことが可能となる。さらには、記録信号の読み誤りが少ない分、信号の密度を高くすることができるので、大容量のメモリを実現することができる。
図1は、本発明の一実施の形態における、信号記録時の、情報記録再生装置の断面構成と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。
図2は、本発明の一実施の形態における、信号記録時の、情報記録再生装置の空間変調素子の構成を示しており、(a)は当該空間変調素子の反射面を示す平面図、(b)は当該空間変調素子の断面図、(c)は当該空間変調素子を構成するアクチュエータの動作状態を示す模式図である。
図3は、本発明の一実施の形態における、信号再生時の、情報記録再生装置の断面構成と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。
図4は、本発明の一実施の形態における情報記録再生装置の信号再生用光検出器(信号検出器)の検出面を示す平面図である。
図5は、従来技術における、信号記録時の、情報記録再生装置の断面構成の一部と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。
図6は、従来技術における、信号再生時の、情報記録再生装置の断面構成の一部と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を参照しながら説明する。尚、従来技術における情報記録再生装置と共通の構成部材については、同一の参照符号を付して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における、信号記録時の、情報記録再生装置の断面構成と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。
図1に示すように、本実施の形態の情報記録再生装置は、半導体レーザ等の放射光源1と、放射光源1から出射された波長λのレーザ光2を多数の回折光に分離する回折手段としての空間変調素子6と、前記多数の回折光をそれぞれ異なった点に集光する集光手段としての対物レンズ7とを備えている。
また、本実施の形態の情報記録再生装置は、放射光源1から出射されたレーザ光2を平行光に変換するコリメートレンズ4と、前記平行光を空間変調素子6に向けて反射するハーフミラー5と、光検出器10a、10bと、戻り光を+1次回折光9aと−1次回折光9bとに分離して、それぞれ光検出器10a、10bに入射させるホログラム3とを備えている。
空間変調素子6の反射面6aは、半導体プロセスによって形成される微細なアクチュエータの集合によって構成され、個々のアクチュエータは、制御装置11の制御信号(電気信号)に基づいて、上下方向(反射面6aの法線方向)に変位する。
情報記録媒体8は、透明層8aと、透明基板8cと、これらに挟まれたフォトポリマー等の感光層8bとにより構成されている。透明層8aの表面は、反射膜が形成されて、反射面8Sとなっている。ここで、情報記録媒体8の反射面8Sには、案内溝や案内ピットが形成されている。
放射光源1から出射されたレーザ光2は、ホログラム3を透過し、コリメートレンズ4によって集光されて平行光となった後、ハーフミラー5のミラー面5aで反射する。ハーフミラー5のミラー面5aで反射した光は、空間変調素子6の反射面6aで反射して光2cとなり、対物レンズ7によって集光されて、情報記録媒体8の反射面8S上の点P0 に収束する。反射面8Sで反射した光は、対物レンズ7、空間変調素子6の反射面6a、ハーフミラー5のミラー面5aを経て、コリメートレンズ4によって集光される。コリメートレンズ4によって集光された光は、ホログラム3によって+1次回折光9aと−1次回折光9bとに分離され、それぞれ光検出器10a、10bに入射する。光検出器10a、10bからは、反射面8Sに対するフォーカスエラー信号と、案内溝や案内ピットに対するトラッキングエラー信号とが生成される。そして、対物レンズ7は、これらの信号に基づいて、反射面8S上の集光スポットにディフォーカスやオフトラックが発生しないように駆動される。
空間変調素子6の個々のアクチュエータの変位により、空間変調素子6の反射面6aで反射する光は多数の回折光に分離され、これら多数の回折光は、対物レンズ7によって、反射面8Sの手前にある感光層8b内の点P1 、P2 、・・・、Pn のn個の点に集光する。これにより、感光層8b内で特定の干渉パターンが形成される。nは例えば10万〜100万程度の数である。この干渉パターンの強度分布に沿って感光層8bが感光し、光強度に応じて屈折率が変化する。すなわち、集光点P1 、P2 、・・・、Pn の集合によって情報記録媒体8の感光層8bに記録信号(情報)が記録される。
尚、集光点P1 、P2 、・・・、Pn は、いずれも0次回折光(集光点P0 に向かう光)が形成する円錐体(対物レンズ7の開口が方形であれば、四角錐体の内部に存在する点である。
図2は、本実施の形態における、信号記録時の、情報記録再生装置の空間変調素子の構成を示しており、(a)は当該空間変調素子の反射面を示す平面図、(b)は当該空間変調素子の断面図、(c)は当該空間変調素子を構成するアクチュエータの動作状態を示す模式図である。
図2(a)、(b)に示すように、空間変調素子6の反射面6aは、碁盤の目状(六角形などの多角形であってもよい)の微細領域(図2(b)、(c)に示すアクチュエータ6a1のミラー6d1)に分割され、碁盤の目の一つ一つの微細領域が紙面に平行な反射面をなしている。ここで、空間変調素子6の反射面6aは、多数のアクチュエータ6a1によって隙間がないように埋められている。そして、碁盤の目の一つ一つの微細領域は、制御装置11(図1参照)からの制御信号によって図2(a)の紙面法線方向に個別に上下して、凹凸の表面を形成する(図2(b))。これにより、反射面6aで反射する光2cの位相が空間的に変調されて、多数の回折光に分離される。
図2(c)に示すように、アクチュエータ6a1は、ミラー6d1と、電極板6b1、6c1とにより構成され、ミラー6d1は電極板6c1に接続されている。そして、電極板6b1、6c1に与えられる電荷量に伴うクーロン力により、電極板6c1が撓み、ミラー6d1が最大で変位量δだけ降下する(図2(c)の右図)。図2(c)の右図は、電極板6b1、6c1に逆極性の電荷を与えて、電極板6b1、6c1が引き合うようにした場合を示しているが、電極板6b1、6c1に同極性の電荷を与えると、ミラー6d1が変位量δだけ上昇する。空間変調素子6の反射面6aの法線が入射光の光軸となす角をθ、レーザ光2の波長をλとすると、ミラー6d1の変位量δはλcosθ以上であれば十分であり、±δの降下上昇によって反射光の位相の全て(−π〜π)を表現することができる。
図3は、本実施の形態における、信号再生時の、情報記録再生装置の断面構成と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。
図3に示すように、本実施の形態の情報記録再生装置は、信号検出器としての信号再生用光検出器14と、ハーフミラー5のミラー面5aを透過した戻り光を信号再生用光検出器14上に集光するコリメートレンズ13とをさらに備えている。その他の構成は、図1に示す情報記録再生装置と同様であるため、図1に示す部材と同一の部材には同一の参照符号を付し、それらの説明は省略する。
放射光源1から出射されたレーザ光2は、ホログラム3を透過し、コリメートレンズ4によって集光されて平行光となった後、ハーフミラー5のミラー面5aで反射する。ハーフミラー5のミラー面5aで反射した光は、空間変調素子6の反射面6aで反射し、対物レンズ7によって集光されて、情報記録媒体8の感光層8bを透過して(往路での透過)情報記録媒体8の反射面8S上の点P0 に収束する。反射面8Sで反射した光は、感光層8bを再度透過し(復路での透過)、対物レンズ7、空間変調素子6の反射面6a、ハーフミラー5のミラー面5aを経て、コリメートレンズ4によって集光される。コリメートレンズ4によって集光された光は、ホログラム3によって+1次回折光9aと−1次回折光9bとに分離され、それぞれ光検出器10a、10bに入射する。光検出器10a、10bからは、反射面8Sに対するフォーカスエラー信号と、案内溝や案内ピットに対するトラッキングエラー信号とが生成される。そして、対物レンズ7は、これらの信号に基づいて、反射面8S上の集光スポットにディフォーカスやオフトラックが発生しないように駆動される。空間変調素子6上の個々のアクチュエータは、制御装置11の制御信号に基づいて、鏡面(全てのアクチュエータのミラー6d1の変位量がゼロの状態)を形成し、空間変調素子6の反射面6aを反射することによって光が回折することはない。また、感光層8bは記録されており、レーザ光2が感光層8bを往復することによって(往路と復路での感光層8bの透過によって)対物レンズ7側に向かう回折光(再生回折光)12が発生する。そして、この回折光12は、対物レンズ7、空間変調素子6の反射面6aを経て、ハーフミラー5のミラー面5aを透過した後、コリメートレンズ13によって集光されて、信号再生用光検出器14上の様々な位置に集光する光の集団15となる。尚、感光層8bで回折せずにそのまま透過する成分は、コリメートレンズ13によって集光されて、信号再生用光検出器14上の中心近傍に集光する光16となる。
図4は、本実施の形態における情報記録再生装置の信号再生用光検出器の検出面を示す平面図である。
図4に示すように、信号再生用光検出器14の検出面は、碁盤の目状をなす微細な光検出セルに分割され、光の集団15がそれぞれの光検出セルの中心近傍に集光し、独立して光の光量が検出される。検出光量があるレベルを超えると信号“1”を、検出光量があるレベルを超えない場合には信号“0”を割り当てることにより、感光層8bに記録された記録信号をページデータとして再生することができる。尚、信号再生用光検出器14の中心近傍に集光する光16は、感光層8bで回折しない成分であり、記録信号を含まないので、信号再生用光検出器14の検出面の中心近傍の領域14aを信号再生領域から除外する。そして、中心近傍の領域14aを除外した信号再生領域に含まれる光検出セルの数をN個とする。
制御装置11の制御信号によって決められる空間変調素子6のアクチュエータの変位情報は、次のようにして決められる。信号再生用光検出器14において、中心近傍の領域14a以外の信号再生領域を構成する光検出セルのうち、信号“1”が割り当てられたものを選び、選択された光検出セルの中心に一定光量(光量P)で位相の揃った発光点(波長λ)を配置する。一方、ハーフミラー5のミラー面5aの反射率をR、透過率をTとして、放射光源1には光量N×P×T/Rの発光点(波長λ)を配置する(光量N×P×T/Rは目安であり、これの1/3〜3倍の範囲の値であればよい)。図3の光学構成(空間変調素子6の反射面6aが鏡面状態)において、これらの発光点から光を同時に発光させ、情報記録媒体8の感光層8b内で形成される干渉パターンの光分布を、情報記録媒体8の反射面8Sからの反射も含めたモデルで波動方程式に基づいて計算する(波動計算)。波動方程式としては、下記(数1)によって表記されるフレネル−キルヒホッフ(Fresnel-Kirchhoff)の回折公式が用いられる。
上記(数1)中、U(P)は点Pにおける複素振幅、Aは定数、λは光の波長、kは波数2π/λ、分母にあるrは発光点と開口面上の点との距離、分母にあるsは開口面上の点と点Pとの距離、cos(n,r)内のrは発光点から開口面に向かう光線の方向ベクトル、cos(n,s)内のsは開口面から点Pに向かう方向ベクトル、cos(n,r)、cos(n,s)内のnは開口面の法線ベクトルを意味し、cos(n,r)、cos(n,s)は括弧内の2つのベクトルのなす方向余弦である。
上記計算によって得られた干渉パターンを強度分布で表し、集光点P0 に向かう光束と感光層8bとの重なりによって形成される円錐台の内部を同じ寸法の直方体で分割し、直方体内の光量を計算して大きい順にn個の直方体を抽出し、それぞれの直方体の中心の3次元位置を計算する。但し、直方体は、対物レンズ7によって無収差で集光する光スポットの3次元的強度分布である楕円体にほぼ外接する形状に相似する。n個の直方体の中心に同位相の発光点(波長λ)を配置し、発光点の光量を、対応する直方体内に含まれる光量に揃える(すなわち、発光点の光強度=直方体内に含まれる光量÷直方体の体積)。放射光源1には光量N×P×T/Rの発光点(波長λ)を配置し(光量N×P×T/Rは目安であり、これの1/3〜3倍の範囲の値であればよい)、これらの発光点から光を同時に発光させ、空間変調素子6の反射面6a上で形成される干渉パターンの光分布を、上記波動方程式に基づいて計算する(波動計算)。そして、この干渉パターンから位相分布を計算する。この位相分布が空間変調素子6のアクチュエータの変位情報となる。例えば、アクチュエータの位置での位相をφ(radian)とすると、反射面6aの法線が入射光の光軸となす角をθとして、アクチュエータのミラー6d1の変位量δはφλcosθ/4πであればよく、空間変調素子6にはこの条件が満たされるように制御信号が送られる。
光検出セルの“0”、“1”の信号割当ての組合わせは、最大で2N だけ存在する。これらの全ての組合わせについて、予め感光層8bで形成される干渉パターンを、上記のようにして波動計算し、さらにはこの干渉パターンを再現するための空間変調素子6のアクチュエータの変位情報を、上記のようにして波動計算しておく。そして、このアクチュエータの変位情報を、記録信号に対応させてテーブルとしてメモリに格納しておき、信号記録時にはメモリからアクチュエータの変位情報を読み取りながら記録信号を感光層8bに書き込んでいく。波動計算には2階積分の演算のために多大な時間を要するが、予め計算して結果をメモリに格納しておけば、信号記録時には読み出し速度に応じた速さでの記録が可能となる。メモリの読み出し速度、すなわち、パ−ソナルコンピュ−タとメモリとの間の接続の転送レートは既に数Gbpsに達しており、感光層8bの感光速度が十分であることを前提として、仮に転送レートを5Gbpsとすると、本実施の形態の情報記録再生装置においてはDVD記録再生装置の1000倍の速さが得られる。尚、半導体プロセスによって形成されるアクチュエータの応答性は数kHzであり、仮に応答性を5kHzとすると、5Gbpsの転送レートを得るためには、記録信号をN=1000×1000のページデータとする必要がある。
感光層8bへの記録は、信号再生時における反射面8Sからの反射の影響等の全ての外乱の影響を含め、信号再生時に光検出セル上に理想的な光スポット(再生光)が投射されるようになされているので、記録信号の読み誤りは殆ど発生しない。また、情報記録媒体の構造(各層の厚さや屈折率、反射面の溝仕様、感光層の記録前後の屈折率等)が変わっても、新しい情報記録媒体の構造に対してアクチュエータの変位情報を再計算し、テーブルとしてメモリに格納するだけで、この情報記録媒体に最適化された記録再生が可能となる。
尚、本実施の形態においては、光源から出射された光を多数の回折光に分離する回折手段として、反射面6aが半導体プロセスによって形成される微細なアクチュエータの集合によって構成された空間変調素子6を例に挙げて説明しているが、光の位相分布を変えることができれば、他の構成の回折手段を用いてもよい。
また、本実施の形態においては、反射によって光の位相分布を変えているが、透過によって光の位相分布を変える構成であってもよい。例えば、互いに対向する2枚の基板間に液晶層を挟み、基板表面の電極による電界の印加によって液晶分子の方位を変化させることにより、液晶層の屈折率を制御して、透過光の位相分布を変える方法などがある。
また、本実施の形態においては、空間変調素子6のアクチュエータの変位情報を決める際に、選択された光検出セルの中心に同光量で位相の揃った発光点を配置したが、他の位相条件であってもよい。例えば、碁盤の目状をなす光検出セルを、仮に市松模様をなす白と黒の2つの領域に分け、白領域の光検出セルに配置される発光点と黒領域の光検出セルに配置される発光点とでπだけ位相差を持たせるような位相条件であってもよい。この条件では隣り合う発光点の位相が必ずπずれるので、信号再生時に光検出セル上に投射される2つの近接光スポットを考える場合、両者の位相もπずれる。従って、その中間点は強度がゼロになり、2つの光スポットがはっきりと分離し、再生光のコントラストが高くなる。
また、本実施の形態においては、感光層8b内のn個の直方体の中心に同位相の発光点を配置したが、必ずしも同位相である必要はなく、n個の発光点から発生する光分布が感光層8bで形成される干渉パターンの光分布と近似するならば、他の位相条件であってもよい。
また、信号再生用光検出器14の信号再生領域を構成する光検出セルの形状は方形である必要はなく、例えば、六角形などの多角形であってもよい。
また、集光点P0 に向かう光束と感光層8bとの重なりによって形成される円錐台の内部を分割する直方体も、直方体以外の形状であってもよく、例えば、六角柱などの多角柱であってもよい。
また、本実施の形態においては、感光層8b内での光強度分布や空間変調素子6のアクチュエータの変位情報が波動計算によって求められているが、本発明は信号検出面上での再生像が最適となるように感光層内での光強度分布の制御を行うものであり、この特徴さえ満足すれば、上記以外の方法によってこれらの情報(感光層8b内での光強度分布、空間変調素子6のアクチュエータの変位情報)を求めてもよい。
さらに、本実施の形態においては、対物レンズ7から情報記録媒体8までの光束がほぼ回転対称な関係にあるが、情報記録媒体8の反射面8Sに斜入射させるなど、回転非対称な構成であってもよく、反射面8Sで反射せずに透過する構成であってもよい。これらの場合、往路と復路で光路が違ってくるので、対物レンズ等の光学部品を別々に設けなければならない。
本発明は、情報記録媒体に記録信号を記録するための情報記録装置、及び情報記録媒体に記録された記録信号を再生するための情報再生装置に適用することができる。
本発明は、情報記録媒体に記録信号を記録するための情報記録装置、及び情報記録媒体に記録された記録信号を再生するための情報再生装置に関する。
従来、この種の情報記録再生装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。ここでは、この先行例を原型とし、若干の修正を加えた形で、図5、図6を参照しながら説明する。
図5は、従来技術における、信号記録時の、情報記録再生装置の断面構成の一部と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。
図5に示すように、半導体レーザ等の放射光源から出射されたP偏光のレーザ光は、コリメートレンズによって集光されて平行光となった後、ハーフミラーによって2分配される。ハーフミラーによって2分配された一方の光は、1/2波長板を透過してS偏光の光2aとなり(ここまでは図5には示されていないが、以後は破線で表示)、空間変調素子17と凸レンズ4’を順次透過して弱い集光性の光となった後、偏光ビームスプリッタ5’に入射する。偏光ビームスプリッタ5’に入射した光2aは、その偏光面5a’で反射して接合ジャイレータ18を透過した後、対物レンズ7によって集光されて、情報記録媒体8の反射面8Sの手前の点Pb に収束する光束20aとなる。そして、光束20aは、点Pb を境に光軸Lの反対側に移る。
接合ジャイレータ18は、光軸Lを通り紙面に垂直な平面で2つに分けられ、上半分の領域18aでは透過光の偏光方向を時計回りに45度回転させ、下半分の領域18bでは透過光の偏光方向を反時計回りに45度回転させる旋光子を接合したものである。
放射光源から出射されたP偏光のレーザ光のうち、コリメートレンズによって集光されて平行光となった後、ハーフミラーによって2分配されたもう一方の光2b(ここまでは図5には示されていないが、以後は実線で表示)は、光軸Lに沿って偏光ビームスプリッタ5’の偏光面5a’、接合ジャイレータ18を順次透過した後、対物レンズ7によって集光されて、情報記録媒体8の反射面8S上の点P0 に収束する光束20bとなる。
情報記録媒体8は、透明層8aと、透明基板8cと、これらに挟まれたフォトポリマー等の感光層8bとにより構成されている。収束点P0 と収束点Pb は、感光層8bに対してほぼ対称に形成される。
空間変調素子17は、例えば、強誘電性液晶パネルによって構成され、光2aが透過する領域内で碁盤の目状に分割されている。そして、それぞれの領域で独立して位相がπずれたり(位相変調)、又は透過率がゼロになったりしており(振幅変調)、この変調パターンは外部の信号に基づいて更新される。
図5から明らかなように、光束20aと光束20bは、情報記録媒体8の感光層8bの領域で交差する。光束20bのうちで円19内を通る光線2Bは、P偏光が接合ジャイレータ18の領域18bによって反時計回りに45度回転したものとなっており、光束20aのうちで円19内を通る光線2Aは、S偏光が接合ジャイレータ18の領域18aによって時計回りに45度回転したものとなっている。結局、円19内では光線2A、2Bの偏光方向が揃うことになる。この関係は、光軸Lを挟んで円19の反対側に位置する円内を通る光線についても同じである。このように、感光層8bの領域では光束20a、20bの偏光方向が揃うので、光束20a、20bは、互いに干渉して干渉縞を形成する。そして、半導体レーザ等の放射光源の出力が大きい場合には、光束20a、20bが感光層8bを感光させて、感光パターン21(干渉縞の光強度分布に対応して屈折率が変化したパターン)を形成する。この感光パターン21は、空間変調素子17の変調パターンに対応したパターンとなる(すなわち、感光パターン21は、空間変調素子17の変調パターンごとに異なるパターンとして記録される)。
情報記録媒体8は、モータに取り付けられ、当該モータの回転と共に回転する。反射面8Sの表面には、回転方向に沿って径方向に周期的な案内溝(グレーティング)が等ピッチで形成されている。
光束20bの収束点P0 は、案内溝上に位置し、情報記録媒体8の回転に伴って案内溝に沿って移動する。光束20bは、反射面8Sで反射した後、情報記録媒体8を透過し、対物レンズ7によって平行光に変換される。そして、往路において接合ジャイレータ18の領域18aを透過して偏光方向が時計回りに45度回転していた光は、復路においては接合ジャイレータ18の領域18bを透過して元の偏光方向に戻される。また、往路において接合ジャイレータ18の領域18bを透過して偏光方向が反時計回りに45度回転していた光も、復路においては接合ジャイレータ18の領域18aを透過して元の偏光方向に戻される。結局、光束20bの戻り光は、接合ジャイレータ18を透過することによってP偏光の光に戻り、偏光ビームスプリッタ5’の偏光面5a’を透過した後、ホログラム等の分岐手段によって光検出器側に導かれる(この部分は図5には示されていない)。そして、光検出器からの検出信号により、反射面8Sに対するフォーカスエラー信号と案内溝に対するトラッキングエラー信号とが生成され、これらの信号に基づいて、光束20bの収束点が反射面8S上の案内溝上に制御されるように、対物レンズ7が駆動される。
図6は、従来技術における、信号再生時の、情報記録再生装置の断面構成の一部と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。図6においては、図5に比べて、空間変調素子17の変調パターンが異なっている。
図6に示すように、放射光源から出射されたP偏光のレーザ光は、コリメートレンズによって集光されて平行光となった後、ハーフミラーによって2分配される。ハーフミラーによって2分配された一方の光2b’(ここまでは図6には示されていないが、以後は実線で表示)は、光軸Lに沿って偏光ビームスプリッタ5’の偏光面5a’、接合ジャイレータ18を順次透過し、接合ジャイレータ18のそれぞれの領域18a、18bで偏光方向が時計回り、反時計回りに45度回転した後、対物レンズ7によって集光されて、情報記録媒体8の反射面8S上の点P0 に収束する。反射面8Sで反射した光線(反射光)2B’は、感光パターン21内の円19内を伝搬することによって回折光2A’を派生して、光束20a’となる。回折光2A’は、点Pb に集光した後、光軸Lの反対側に移る。そして、当該回折光2A’は、対物レンズ7によって弱い発散性の光となった後、接合ジャイレータ18によって偏光状態が変えられる。回折光2A’の偏光状態が反射光2B’のそれと一致しており、往路においてP偏光が接合ジャイレータ18の領域18aを透過するので、回折光2A’は、P偏光が時計回りに45度回転したものとなっている。これに対し、光軸Lを挟んで円19の反対側に位置する円内を伝搬することによって派生した回折光は、P偏光が反時計回りに45度回転したものとなっている。これらの回折光が接合ジャイレータ18を透過すると、接合ジャイレータ18のそれぞれの領域18a、18bで偏光方向が時計回り、反時計回りに45度回転するので、結局、光束20a’は、S偏光の光束に変換される。従って、光束20a’は、偏光ビームスプリッタ5’の偏光面5a’で反射し、凸レンズ4’によって平行光に変換された後、空間変調素子17を透過する。空間変調素子17は、上記のように、強誘電性液晶パネル等によって構成されており、この信号再生時においては、外部の信号に基づき、透過光を変調しないでそのまま通している。空間変調素子17を透過する光2a’は、感光パターン21の記録信号が反映され、信号記録時の空間変調素子17の変調パターンが光2a’の光強度分布パターンとなって再現される。この透過光2a’は、ホログラムやハーフミラー等によって往路の光路と分岐され、コリメ−トレンズによって集光されて光検出器に導かれる。そして、空間変調素子17の分割パターンに対応した碁盤の目状の光検出セルによって信号光が検出されて、記録信号が再生される。
一方、感光パターン21の領域内での伝搬によって回折しなかった成分20b’は、情報記録媒体8を透過した後、対物レンズ7によって平行光に変換される。そして、往路において接合ジャイレータ18の領域18aを透過して偏光方向が時計回りに45度回転していた光は、復路においては接合ジャイレータ18の領域18bを透過して元の偏光方向に戻される。また、往路において接合ジャイレータ18の領域18bを透過して偏光方向が反時計回りに45度回転していた光も、復路においては接合ジャイレータ18の領域18aを透過して元の偏光方向に戻される。結局、反射光束20b’は、接合ジャイレータ18を透過することによってP偏光の光に戻り、偏光ビームスプリッタ5’の偏光面5a’を透過した後、ホログラム等の分岐手段によって光検出器側に導かれる。そして、光検出器からの検出信号により、反射面8Sに対するフォーカスエラー信号と案内溝に対するトラッキングエラー信号とが生成され、これらの信号に基づいて、収束光の収束点P
0 が反射面8S上の案内溝上に制御されるように、対物レンズ7が駆動される。
特開平11−311938号公報
しかし、上記従来の情報記録再生装置には、以下のような問題がある。
まず、信号記録時には次のような問題がある。すなわち、図5において、光束20aと光束20bに対する情報記録媒体8の反射面8Sからの反射光束は、いずれもその一部が感光パターン21の領域上を透過する。これらの反射光束は、感光パターン21の形成においては迷光であり、大きなノイズを含んだ記録状態となる。また、空間変調素子17を透過した光2aは、周期的に位相や振幅が変化しているために回折し易く、発生した回折光は、空間変調素子17と感光パターン21との距離に比例して透過光(0次回折光)から分離する。そして、この分離が大きすぎると、感光パターン21の領域を外れてしまう。0次回折光には空間変調素子17による信号情報が含まれていないので、回折光成分の少ない感光パターン21は、信号情報が少なく、再生時にコントラストの悪い信号となってしまう。
また、信号再生時には次のような問題がある。すなわち、図6において、記録信号の再生像は空間変調素子17の上に反映される。再生信号の光検出器は、空間変調素子17から離れた位置に配置されるため、光が空間変調素子17から光検出器まで伝搬する間に回折が発生して互いにオーバーラップするので、再生像の品質が著しく劣化してしまう。
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、信号記録時に迷光や回折の影響がない高コントラストの記録を実現することのできる情報記録装置、及び信号再生時に光検出面上での信号品質を大幅に改善することのできる情報再生装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明に係る情報記録装置の構成は、光源と、前記光源から出射された光を多数の回折光に分離する回折手段と、前記多数の回折光をそれぞれ異なった点に集光する集光手段とを備え、前記光源から出射された光が、前記回折手段によって多数の回折光に分離され、前記多数の回折光が、前記集光手段によって情報記録媒体の感光層内のそれぞれ異なった点に集光され、これら集光点の集合によって前記情報記録媒体の前記感光層に情報が記録されることを特徴とする。
また、本発明に係る情報再生装置の構成は、光源と、前記光源から出射された光を集光する集光手段と、微細な光検出セルの集合によって構成された信号検出器とを備え、前記光源から出射された光が、前記集光手段によって情報記録媒体の感光層を透過して前記情報記録媒体の反射面上に集光されると共に、前記反射面で反射して前記感光層を再度透過し、往路と復路での前記感光層の透過によって前記集光手段に向かう再生回折光が発生し、前記再生回折光が前記集光手段を経て前記信号検出器に入射し、前記光検出セルによって前記感光層の情報が再生されることを特徴とする。
前記本発明の情報記録装置の構成においては、前記回折手段の表面は微細領域の集合によって構成され、前記微細領域は、前記回折手段に入力される電気信号によって個別に上下して凹凸の表面を形成し、前記凹凸の表面で反射する光の位相を空間的に変調して、多数の回折光を発生させるのが好ましい。また、この場合には、微細な光検出セルの集合によって構成された信号検出器をさらに備え、前記回折手段で反射する光が回折しない条件で、一部の前記光検出セルの各中心を発光する等強度の光と、前記光源から出射され前記集光手段によって情報記録媒体の反射面上に集光される光と、前記反射面で反射する光とを前記感光層内で干渉させて得られる第1の干渉パターンの第1の光分布を計算し、前記干渉パターンの領域を同じ寸法の微小体で分割し、前記微小体内に含まれる光量を計算して大きい順にn個の微小体を抽出し、前記微小体内に含まれる光量を前記微小体の体積で割った値の光強度で前記微小体の中心から発光するn個の光と、前記光源から出射される光とを前記回折手段の表面上で干渉させて得られる第2の干渉パターンの光分布を計算し、前記第2の干渉パターンの光分布によって前記回折手段の表面の凹凸分布を割り出すのが好ましい。この場合にはさらに、前記光検出セルが、当該光検出セルに配置される発光点の位相が0又はπの2種類の領域に分けられ、これら2種類の領域が交互に並んでいるのが好ましく、前記微小体の中心から発光する光の位相が揃っているのが好ましい。この場合にはさらに、発光する光の基点となる前記光検出セルの組合わせを変えながら前記第1及び第2の干渉パターンの光分布を順次計算して前記回折手段の表面の凹凸分布を割り出し、前記凹凸分布をメモリに格納し、信号記録時に、前記メモリから前記凹凸分布を読み込んで、前記凹凸の表面で反射する光の位相を空間的に変調するのが好ましい。
また、前記本発明の情報記録装置の構成においては、前記回折手段は微細領域の集合によって構成され、前記微細領域は、前記回折手段に入力される電気信号によって内部の屈折率が個別に変化し、前記微細領域を透過する光の位相を空間的に変調して、多数の回折光を発生させるのが好ましい。また、この場合には、微細な光検出セルの集合によって構成された信号検出器をさらに備え、前記回折手段を透過する光が回折しない条件で、一部の前記光検出セルの各中心を発光する等強度の光と、前記光源から出射され前記集光手段によって前記情報記録媒体の反射面上に集光される光と、前記反射面で反射する光とを前記感光層内で干渉させて得られる第1の干渉パターンの第1の光分布を計算し、前記干渉パターンの領域を同じ寸法の微小体で分割し、前記微小体内に含まれる光量を計算して大きい順にn個の微小体を抽出し、前記微小体内に含まれる光量を前記微小体の体積で割った値の光強度で前記微小体の中心から発光するn個の光と、前記光源から出射される光とを前記回折手段の表面上で干渉させて得られる第2の干渉パターンの光分布を計算し、前記第2の干渉パターンの光分布によって前記回折手段の屈折率分布を割り出すのが好ましい。この場合にはさらに、前記光検出セルが、当該光検出セルに配置される発光点の位相が0又はπの2種類の領域に分けられ、これら2種類の領域が交互に並んでいるのが好ましく、前記微小体の中心から発光する光の位相が揃っているのが好ましい。この場合にはさらに、発光する光の基点となる前記光検出セルの組合わせを変えながら前記第1及び第2の干渉パターンの光分布を順次計算して前記回折手段の屈折率分布を割り出し、前記屈折率分布をメモリに格納し、信号記録時に、前記メモリから前記屈折率分布を読み込んで、前記微細領域を透過する光の位相を空間的に変調するのが好ましい。
本発明によれば、記録信号の再生像が最適となるように感光層の記録を行うことができるので、記録信号の読み誤りをなくすことが可能となる。さらには、記録信号の読み誤りが少ない分、信号の密度を高くすることができるので、大容量のメモリを実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を参照しながら説明する。尚、従来技術における情報記録再生装置と共通の構成部材については、同一の参照符号を付して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における、信号記録時の、情報記録再生装置の断面構成と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。
図1に示すように、本実施の形態の情報記録再生装置は、半導体レーザ等の放射光源1と、放射光源1から出射された波長λのレーザ光2を多数の回折光に分離する回折手段としての空間変調素子6と、前記多数の回折光をそれぞれ異なった点に集光する集光手段としての対物レンズ7とを備えている。
また、本実施の形態の情報記録再生装置は、放射光源1から出射されたレーザ光2を平行光に変換するコリメートレンズ4と、前記平行光を空間変調素子6に向けて反射するハーフミラー5と、光検出器10a、10bと、戻り光を+1次回折光9aと−1次回折光9bとに分離して、それぞれ光検出器10a、10bに入射させるホログラム3とを備えている。
空間変調素子6の反射面6aは、半導体プロセスによって形成される微細なアクチュエータの集合によって構成され、個々のアクチュエータは、制御装置11の制御信号(電気信号)に基づいて、上下方向(反射面6aの法線方向)に変位する。
情報記録媒体8は、透明層8aと、透明基板8cと、これらに挟まれたフォトポリマー等の感光層8bとにより構成されている。透明層8aの表面は、反射膜が形成されて、反射面8Sとなっている。ここで、情報記録媒体8の反射面8Sには、案内溝や案内ピットが形成されている。
放射光源1から出射されたレーザ光2は、ホログラム3を透過し、コリメートレンズ4によって集光されて平行光となった後、ハーフミラー5のミラー面5aで反射する。ハーフミラー5のミラー面5aで反射した光は、空間変調素子6の反射面6aで反射して光2cとなり、対物レンズ7によって集光されて、情報記録媒体8の反射面8S上の点P0 に収束する。反射面8Sで反射した光は、対物レンズ7、空間変調素子6の反射面6a、ハーフミラー5のミラー面5aを経て、コリメートレンズ4によって集光される。コリメートレンズ4によって集光された光は、ホログラム3によって+1次回折光9aと−1次回折光9bとに分離され、それぞれ光検出器10a、10bに入射する。光検出器10a、10bからは、反射面8Sに対するフォーカスエラー信号と、案内溝や案内ピットに対するトラッキングエラー信号とが生成される。そして、対物レンズ7は、これらの信号に基づいて、反射面8S上の集光スポットにディフォーカスやオフトラックが発生しないように駆動される。
空間変調素子6の個々のアクチュエータの変位により、空間変調素子6の反射面6aで反射する光は多数の回折光に分離され、これら多数の回折光は、対物レンズ7によって、反射面8Sの手前にある感光層8b内の点P1 、P2 、・・・、Pn のn個の点に集光する。これにより、感光層8b内で特定の干渉パターンが形成される。nは例えば10万〜100万程度の数である。この干渉パターンの強度分布に沿って感光層8bが感光し、光強度に応じて屈折率が変化する。すなわち、集光点P1 、P2 、・・・、Pn の集合によって情報記録媒体8の感光層8bに記録信号(情報)が記録される。
尚、集光点P1 、P2 、・・・、Pn は、いずれも0次回折光(集光点P0 に向かう光)が形成する円錐体(対物レンズ7の開口が方形であれば、四角錐体の内部に存在する点である。
図2は、本実施の形態における、信号記録時の、情報記録再生装置の空間変調素子の構成を示しており、(a)は当該空間変調素子の反射面を示す平面図、(b)は当該空間変調素子の断面図、(c)は当該空間変調素子を構成するアクチュエータの動作状態を示す模式図である。
図2(a)、(b)に示すように、空間変調素子6の反射面6aは、碁盤の目状(六角形などの多角形であってもよい)の微細領域(図2(b)、(c)に示すアクチュエータ6a1のミラー6d1)に分割され、碁盤の目の一つ一つの微細領域が紙面に平行な反射面をなしている。ここで、空間変調素子6の反射面6aは、多数のアクチュエータ6a1によって隙間がないように埋められている。そして、碁盤の目の一つ一つの微細領域は、制御装置11(図1参照)からの制御信号によって図2(a)の紙面法線方向に個別に上下して、凹凸の表面を形成する(図2(b))。これにより、反射面6aで反射する光2cの位相が空間的に変調されて、多数の回折光に分離される。
図2(c)に示すように、アクチュエータ6a1は、ミラー6d1と、電極板6b1、6c1とにより構成され、ミラー6d1は電極板6c1に接続されている。そして、電極板6b1、6c1に与えられる電荷量に伴うクーロン力により、電極板6c1が撓み、ミラー6d1が最大で変位量δだけ降下する(図2(c)の右図)。図2(c)の右図は、電極板6b1、6c1に逆極性の電荷を与えて、電極板6b1、6c1が引き合うようにした場合を示しているが、電極板6b1、6c1に同極性の電荷を与えると、ミラー6d1が変位量δだけ上昇する。空間変調素子6の反射面6aの法線が入射光の光軸となす角をθ、レーザ光2の波長をλとすると、ミラー6d1の変位量δはλcosθ以上であれば十分であり、±δの降下上昇によって反射光の位相の全て(−π〜π)を表現することができる。
図3は、本実施の形態における、信号再生時の、情報記録再生装置の断面構成と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。
図3に示すように、本実施の形態の情報記録再生装置は、信号検出器としての信号再生用光検出器14と、ハーフミラー5のミラー面5aを透過した戻り光を信号再生用光検出器14上に集光するコリメートレンズ13とをさらに備えている。その他の構成は、図1に示す情報記録再生装置と同様であるため、図1に示す部材と同一の部材には同一の参照符号を付し、それらの説明は省略する。
放射光源1から出射されたレーザ光2は、ホログラム3を透過し、コリメートレンズ4によって集光されて平行光となった後、ハーフミラー5のミラー面5aで反射する。ハーフミラー5のミラー面5aで反射した光は、空間変調素子6の反射面6aで反射し、対物レンズ7によって集光されて、情報記録媒体8の感光層8bを透過して(往路での透過)情報記録媒体8の反射面8S上の点P0 に収束する。反射面8Sで反射した光は、感光層8bを再度透過し(復路での透過)、対物レンズ7、空間変調素子6の反射面6a、ハーフミラー5のミラー面5aを経て、コリメートレンズ4によって集光される。コリメートレンズ4によって集光された光は、ホログラム3によって+1次回折光9aと−1次回折光9bとに分離され、それぞれ光検出器10a、10bに入射する。光検出器10a、10bからは、反射面8Sに対するフォーカスエラー信号と、案内溝や案内ピットに対するトラッキングエラー信号とが生成される。そして、対物レンズ7は、これらの信号に基づいて、反射面8S上の集光スポットにディフォーカスやオフトラックが発生しないように駆動される。空間変調素子6上の個々のアクチュエータは、制御装置11の制御信号に基づいて、鏡面(全てのアクチュエータのミラー6d1の変位量がゼロの状態)を形成し、空間変調素子6の反射面6aを反射することによって光が回折することはない。また、感光層8bは記録されており、レーザ光2が感光層8bを往復することによって(往路と復路での感光層8bの透過によって)対物レンズ7側に向かう回折光(再生回折光)12が発生する。そして、この回折光12は、対物レンズ7、空間変調素子6の反射面6aを経て、ハーフミラー5のミラー面5aを透過した後、コリメートレンズ13によって集光されて、信号再生用光検出器14上の様々な位置に集光する光の集団15となる。尚、感光層8bで回折せずにそのまま透過する成分は、コリメートレンズ13によって集光されて、信号再生用光検出器14上の中心近傍に集光する光16となる。
図4は、本実施の形態における情報記録再生装置の信号再生用光検出器の検出面を示す平面図である。
図4に示すように、信号再生用光検出器14の検出面は、碁盤の目状をなす微細な光検出セルに分割され、光の集団15がそれぞれの光検出セルの中心近傍に集光し、独立して光の光量が検出される。検出光量があるレベルを超えると信号“1”を、検出光量があるレベルを超えない場合には信号“0”を割り当てることにより、感光層8bに記録された記録信号をページデータとして再生することができる。尚、信号再生用光検出器14の中心近傍に集光する光16は、感光層8bで回折しない成分であり、記録信号を含まないので、信号再生用光検出器14の検出面の中心近傍の領域14aを信号再生領域から除外する。そして、中心近傍の領域14aを除外した信号再生領域に含まれる光検出セルの数をN個とする。
制御装置11の制御信号によって決められる空間変調素子6のアクチュエータの変位情報は、次のようにして決められる。信号再生用光検出器14において、中心近傍の領域14a以外の信号再生領域を構成する光検出セルのうち、信号“1”が割り当てられたものを選び、選択された光検出セルの中心に一定光量(光量P)で位相の揃った発光点(波長λ)を配置する。一方、ハーフミラー5のミラー面5aの反射率をR、透過率をTとして、放射光源1には光量N×P×T/Rの発光点(波長λ)を配置する(光量N×P×T/Rは目安であり、これの1/3〜3倍の範囲の値であればよい)。図3の光学構成(空間変調素子6の反射面6aが鏡面状態)において、これらの発光点から光を同時に発光させ、情報記録媒体8の感光層8b内で形成される干渉パターンの光分布を、情報記録媒体8の反射面8Sからの反射も含めたモデルで波動方程式に基づいて計算する(波動計算)。波動方程式としては、下記(数1)によって表記されるフレネル−キルヒホッフ(Fresnel-Kirchhoff)の回折公式が用いられる。
上記(数1)中、U(P)は点Pにおける複素振幅、Aは定数、λは光の波長、kは波数2π/λ、分母にあるrは発光点と開口面上の点との距離、分母にあるsは開口面上の点と点Pとの距離、cos(n,r)内のrは発光点から開口面に向かう光線の方向ベクトル、cos(n,s)内のsは開口面から点Pに向かう方向ベクトル、cos(n,r)、cos(n,s)内のnは開口面の法線ベクトルを意味し、cos(n,r)、cos(n,s)は括弧内の2つのベクトルのなす方向余弦である。
上記計算によって得られた干渉パターンを強度分布で表し、集光点P0 に向かう光束と感光層8bとの重なりによって形成される円錐台の内部を同じ寸法の直方体で分割し、直方体内の光量を計算して大きい順にn個の直方体を抽出し、それぞれの直方体の中心の3次元位置を計算する。但し、直方体は、対物レンズ7によって無収差で集光する光スポットの3次元的強度分布である楕円体にほぼ外接する形状に相似する。n個の直方体の中心に同位相の発光点(波長λ)を配置し、発光点の光量を、対応する直方体内に含まれる光量に揃える(すなわち、発光点の光強度=直方体内に含まれる光量÷直方体の体積)。放射光源1には光量N×P×T/Rの発光点(波長λ)を配置し(光量N×P×T/Rは目安であり、これの1/3〜3倍の範囲の値であればよい)、これらの発光点から光を同時に発光させ、空間変調素子6の反射面6a上で形成される干渉パターンの光分布を、上記波動方程式に基づいて計算する(波動計算)。そして、この干渉パターンから位相分布を計算する。この位相分布が空間変調素子6のアクチュエータの変位情報となる。例えば、アクチュエータの位置での位相をφ(radian)とすると、反射面6aの法線が入射光の光軸となす角をθとして、アクチュエータのミラー6d1の変位量δはφλcosθ/4πであればよく、空間変調素子6にはこの条件が満たされるように制御信号が送られる。
光検出セルの“0”、“1”の信号割当ての組合わせは、最大で2N だけ存在する。これらの全ての組合わせについて、予め感光層8bで形成される干渉パターンを、上記のようにして波動計算し、さらにはこの干渉パターンを再現するための空間変調素子6のアクチュエータの変位情報を、上記のようにして波動計算しておく。そして、このアクチュエータの変位情報を、記録信号に対応させてテーブルとしてメモリに格納しておき、信号記録時にはメモリからアクチュエータの変位情報を読み取りながら記録信号を感光層8bに書き込んでいく。波動計算には2階積分の演算のために多大な時間を要するが、予め計算して結果をメモリに格納しておけば、信号記録時には読み出し速度に応じた速さでの記録が可能となる。メモリの読み出し速度、すなわち、パ−ソナルコンピュ−タとメモリとの間の接続の転送レートは既に数Gbpsに達しており、感光層8bの感光速度が十分であることを前提として、仮に転送レートを5Gbpsとすると、本実施の形態の情報記録再生装置においてはDVD記録再生装置の1000倍の速さが得られる。尚、半導体プロセスによって形成されるアクチュエータの応答性は数kHzであり、仮に応答性を5kHzとすると、5Gbpsの転送レートを得るためには、記録信号をN=1000×1000のページデータとする必要がある。
感光層8bへの記録は、信号再生時における反射面8Sからの反射の影響等の全ての外乱の影響を含め、信号再生時に光検出セル上に理想的な光スポット(再生光)が投射されるようになされているので、記録信号の読み誤りは殆ど発生しない。また、情報記録媒体の構造(各層の厚さや屈折率、反射面の溝仕様、感光層の記録前後の屈折率等)が変わっても、新しい情報記録媒体の構造に対してアクチュエータの変位情報を再計算し、テーブルとしてメモリに格納するだけで、この情報記録媒体に最適化された記録再生が可能となる。
尚、本実施の形態においては、光源から出射された光を多数の回折光に分離する回折手段として、反射面6aが半導体プロセスによって形成される微細なアクチュエータの集合によって構成された空間変調素子6を例に挙げて説明しているが、光の位相分布を変えることができれば、他の構成の回折手段を用いてもよい。
また、本実施の形態においては、反射によって光の位相分布を変えているが、透過によって光の位相分布を変える構成であってもよい。例えば、互いに対向する2枚の基板間に液晶層を挟み、基板表面の電極による電界の印加によって液晶分子の方位を変化させることにより、液晶層の屈折率を制御して、透過光の位相分布を変える方法などがある。
また、本実施の形態においては、空間変調素子6のアクチュエータの変位情報を決める際に、選択された光検出セルの中心に同光量で位相の揃った発光点を配置したが、他の位相条件であってもよい。例えば、碁盤の目状をなす光検出セルを、仮に市松模様をなす白と黒の2つの領域に分け、白領域の光検出セルに配置される発光点と黒領域の光検出セルに配置される発光点とでπだけ位相差を持たせるような位相条件であってもよい。この条件では隣り合う発光点の位相が必ずπずれるので、信号再生時に光検出セル上に投射される2つの近接光スポットを考える場合、両者の位相もπずれる。従って、その中間点は強度がゼロになり、2つの光スポットがはっきりと分離し、再生光のコントラストが高くなる。
また、本実施の形態においては、感光層8b内のn個の直方体の中心に同位相の発光点を配置したが、必ずしも同位相である必要はなく、n個の発光点から発生する光分布が感光層8bで形成される干渉パターンの光分布と近似するならば、他の位相条件であってもよい。
また、信号再生用光検出器14の信号再生領域を構成する光検出セルの形状は方形である必要はなく、例えば、六角形などの多角形であってもよい。
また、集光点P0 に向かう光束と感光層8bとの重なりによって形成される円錐台の内部を分割する直方体も、直方体以外の形状であってもよく、例えば、六角柱などの多角柱であってもよい。
また、本実施の形態においては、感光層8b内での光強度分布や空間変調素子6のアクチュエータの変位情報が波動計算によって求められているが、本発明は信号検出面上での再生像が最適となるように感光層内での光強度分布の制御を行うものであり、この特徴さえ満足すれば、上記以外の方法によってこれらの情報(感光層8b内での光強度分布、空間変調素子6のアクチュエータの変位情報)を求めてもよい。
さらに、本実施の形態においては、対物レンズ7から情報記録媒体8までの光束がほぼ回転対称な関係にあるが、情報記録媒体8の反射面8Sに斜入射させるなど、回転非対称な構成であってもよく、反射面8Sで反射せずに透過する構成であってもよい。これらの場合、往路と復路で光路が違ってくるので、対物レンズ等の光学部品を別々に設けなければならない。
本発明は、情報記録媒体に記録信号を記録するための情報記録装置、及び情報記録媒体に記録された記録信号を再生するための情報再生装置に適用することができる。
図1は、本発明の一実施の形態における、信号記録時の、情報記録再生装置の断面構成と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。
図2は、本発明の一実施の形態における、信号記録時の、情報記録再生装置の空間変調素子の構成を示しており、(a)は当該空間変調素子の反射面を示す平面図、(b)は当該空間変調素子の断面図、(c)は当該空間変調素子を構成するアクチュエータの動作状態を示す模式図である。
図3は、本発明の一実施の形態における、信号再生時の、情報記録再生装置の断面構成と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。
図4は、本発明の一実施の形態における情報記録再生装置の信号再生用光検出器(信号検出器)の検出面を示す平面図である。
図5は、従来技術における、信号記録時の、情報記録再生装置の断面構成の一部と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。
図6は、従来技術における、信号再生時の、情報記録再生装置の断面構成の一部と情報記録媒体の内部での光束の様子とを示す図である。