JPWO2006057444A1 - 細胞の分化度自動診断方法 - Google Patents
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Abstract
非破壊的、かつ、非侵襲的に細胞の分化度を自動診断できる細胞の分化度自動診断方法を提供することを課題とし、具体的には、細胞分化による細胞の形態変化を観察手段で観察し、得られた観察データを基に、細胞の形態変化を形態変化度として数値化して、細胞の分化度を診断する。
Description
本発明は、細胞の分化度自動診断方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、非破壊的、かつ、非侵襲的に細胞の分化度を自動診断できる、新しい細胞の分化度自動診断方法に関するものである。
近年、生体細胞や組織を体外で培養し、得られた細胞や組織を体内、もしくは、体表面の欠損部位、不全部位等の修復や治療に利用するという「再生医療」の研究が発展し、その活用が期待されている。
移植等の再生医療を目的とした、生体細胞や組織の体外培養は、細菌やマイコプラズマ、ウイルス、また埃等の混入による汚染を防止できる培養環境で行う必要がある。つまり、厳重に管理された環境と、施設で行わなければならない。たとえば、クラス100のクリーンルーム内で、作業者が無人衣を着用し、さらにクリーンベンチを用いて高度な無菌操作を行うことで、上記汚染を防止しつつ、再生医療を目的とした細胞等の体外培養を行う方法が知られている。
また、生体細胞や組織を体外で増殖させたり、分化させたりする培養作業を、そのほとんどの工程が無菌的、かつ、自動的に(つまり、作業者の介在がほとんど無い)行える自動培養装置が提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2等)。この自動培養装置によって、無菌操作を自動で実施できるとともに、作業者の介在がほとんどないため、作業者からの汚染を防止することができる。さらに、特殊な施設(特殊なクリーンルーム等)の設置も必要なくなり、再生医療の研究開発におけるコストの削減や、再生医療の研究開発の発展に貢献することができる。
ところで、このような細胞や組織の体外培養の工程の一つに「時間管理」があるが、この時間管理のためには、培養経過の測定が重要である。その中でも、特に培養中の細胞や組織の分化度を測定することが重要である。たとえば、細胞や組織の分化度の変化を経時的に追跡、測定することによって、<1>必要な細胞量まで細胞が分化した時点を判断して、培養を中止すること、あるいは、<2>細胞の分化が不十分であると判断して、培養の継続すること等を効率よく認識することができる。また、分化度の測定は、培養条件を途中で変更する際の判断材料とすることができ、重要な測定項目である。
そして、特に、再生医療を目的とした細胞の分化度の測定に際しては、極めて高い品質管理が要求されるという観点から、測定器具や装置等が培養中の細胞や組織、またその周囲の培養液等に接触することは極力避けることが重要である。したがって、再生医療を目的とした細胞や組織の培養の自動化には、非接触的、非破壊的、あるいは、非侵襲的に培養中の細胞や組織の分化度を測定、診断することが必要となる。
そこで、従来の細胞の分化度の診断としては、マウス等の実験動物に分化度の診断目的の細胞を移植して、移植後の経過を観察することで、分化度を診断する方法が提案されている(たとえば、特許文献3)。また、細胞や組織の分化状態に依存して細胞表面に発現する特定のタンパク質の量を測定して細胞の分化度を診断する方法や、分化状態に依存して発現する特定の遺伝子の発現度合いを解析することで、細胞の分化度を診断する方法等も提案されている(たとえば、特許文献4、特許文献5等)。
しかしながら、上記の特許文献3記載の方法では、細胞や組織を実験動物に効率よく移植するには一定水準以上の熟練した技術を要し、自動化することは困難であり、また実験成果を得られるのは数週間から数ヶ月という長い時間を要し、その間に細胞や組織が死滅したり変質するという問題があった。
また、特許文献4記載のタンパク質の量を測定する方法では、自動的に行う装置は開発されておらず、また測定した細胞や組織は、患者に移植することは安全面からの観点から行うことはできず、測定の目的のために多数の細胞や組織を破壊する必要があった。さらに、特許文献5記載の遺伝子の発現度合いを解析する方法でも、解析には最低でも2から3日を要し、また解析の目的で多数の細胞を破壊する必要があるという問題があった。
そこで本発明は、以上のとおりの背景から、従来の問題を解消し、非破壊的、かつ、非侵襲的に、しかも短時間で細胞の分化度を自動診断できることを課題としている、新しい細胞の分化度自動診断方法を提供する。
特開平11−000161号公報 特開2004−089095号公報 特表2000−500653号公報 再表98/043998号公報 特表2002−523104号公報
移植等の再生医療を目的とした、生体細胞や組織の体外培養は、細菌やマイコプラズマ、ウイルス、また埃等の混入による汚染を防止できる培養環境で行う必要がある。つまり、厳重に管理された環境と、施設で行わなければならない。たとえば、クラス100のクリーンルーム内で、作業者が無人衣を着用し、さらにクリーンベンチを用いて高度な無菌操作を行うことで、上記汚染を防止しつつ、再生医療を目的とした細胞等の体外培養を行う方法が知られている。
また、生体細胞や組織を体外で増殖させたり、分化させたりする培養作業を、そのほとんどの工程が無菌的、かつ、自動的に(つまり、作業者の介在がほとんど無い)行える自動培養装置が提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2等)。この自動培養装置によって、無菌操作を自動で実施できるとともに、作業者の介在がほとんどないため、作業者からの汚染を防止することができる。さらに、特殊な施設(特殊なクリーンルーム等)の設置も必要なくなり、再生医療の研究開発におけるコストの削減や、再生医療の研究開発の発展に貢献することができる。
ところで、このような細胞や組織の体外培養の工程の一つに「時間管理」があるが、この時間管理のためには、培養経過の測定が重要である。その中でも、特に培養中の細胞や組織の分化度を測定することが重要である。たとえば、細胞や組織の分化度の変化を経時的に追跡、測定することによって、<1>必要な細胞量まで細胞が分化した時点を判断して、培養を中止すること、あるいは、<2>細胞の分化が不十分であると判断して、培養の継続すること等を効率よく認識することができる。また、分化度の測定は、培養条件を途中で変更する際の判断材料とすることができ、重要な測定項目である。
そして、特に、再生医療を目的とした細胞の分化度の測定に際しては、極めて高い品質管理が要求されるという観点から、測定器具や装置等が培養中の細胞や組織、またその周囲の培養液等に接触することは極力避けることが重要である。したがって、再生医療を目的とした細胞や組織の培養の自動化には、非接触的、非破壊的、あるいは、非侵襲的に培養中の細胞や組織の分化度を測定、診断することが必要となる。
そこで、従来の細胞の分化度の診断としては、マウス等の実験動物に分化度の診断目的の細胞を移植して、移植後の経過を観察することで、分化度を診断する方法が提案されている(たとえば、特許文献3)。また、細胞や組織の分化状態に依存して細胞表面に発現する特定のタンパク質の量を測定して細胞の分化度を診断する方法や、分化状態に依存して発現する特定の遺伝子の発現度合いを解析することで、細胞の分化度を診断する方法等も提案されている(たとえば、特許文献4、特許文献5等)。
しかしながら、上記の特許文献3記載の方法では、細胞や組織を実験動物に効率よく移植するには一定水準以上の熟練した技術を要し、自動化することは困難であり、また実験成果を得られるのは数週間から数ヶ月という長い時間を要し、その間に細胞や組織が死滅したり変質するという問題があった。
また、特許文献4記載のタンパク質の量を測定する方法では、自動的に行う装置は開発されておらず、また測定した細胞や組織は、患者に移植することは安全面からの観点から行うことはできず、測定の目的のために多数の細胞や組織を破壊する必要があった。さらに、特許文献5記載の遺伝子の発現度合いを解析する方法でも、解析には最低でも2から3日を要し、また解析の目的で多数の細胞を破壊する必要があるという問題があった。
そこで本発明は、以上のとおりの背景から、従来の問題を解消し、非破壊的、かつ、非侵襲的に、しかも短時間で細胞の分化度を自動診断できることを課題としている、新しい細胞の分化度自動診断方法を提供する。
本発明は、上記の課題を解決する手段として、細胞の分化を自動診断する方法として、第1には、細胞分化による細胞の形態変化を観察手段で観察し、得られた観察データを基に、細胞の形態変化を形態変化度として数値化して、細胞の分化度を診断することを特徴としている。
また、本発明は、第2には、観察データは、1個以上の細胞から計測される面積値および長径値のうち、少なくともいずれかの値を有することを特徴とし、第3には、上記第2の発明において、面積値および長径値の両者を有する観察データを基に次式(1)
(式中のXは長径短径面積比、Aは面積値、Lは長径値とする)
から、長径短径面積比を算出し、この長径短径面積比から細胞の分化度を診断することを特徴としている。
さらに、第4には、細胞が幹細胞であって、幹細胞からの分化度を診断することを特徴とし、第5には、幹細胞が間葉系幹細胞であって、間葉系幹細胞からの分化度を診断することを特徴とし、そして、第6には、間葉系幹細胞からの分化度が、軟骨細胞への分化度であることを特徴としている。
さらにまた、第7には、長径短径面積比Xが、特定の閾値以上の細胞の割合から分化度を診断することを特徴とし、第8には、長径短径面積比Xが特定の閾値以上で、かつ、面積値Aが特定の閾値以上である細胞の割合から分化度を診断することを特徴とする。
ここで、本発明は、間葉系幹細胞から軟骨細胞への分化度の診断においては、第9には、長径短径面積比Xの特定閾値が、0.2から0.4の範囲である細胞の割合から分化度を診断することを特徴とし、第10には、長径短径面積比Xの特定閾値が0.2から0.4の範囲であり、かつ、面積値Aの特定閾値が3000から5000μm2である細胞の割合から分化度を診断することを特徴としている。
また、本発明は、細胞を自動診断する装置として、第11には、少なくとも細胞分化による細胞の形態変化を観察する観察手段、観察手段で得られた観察データを基に、細胞の形態変化を形態変化度として数値化する観察データ処理手段、および観察データ処理手段で得られた処理結果を出力する出力手段を備えていることを特徴とすし、第12には、観察手段は、1個以上の細胞から計測される面積値および長径値のうち少なくともいずれかを観察データとして観察するものであることを特徴とし、第13には、観察データ処理手段は、前記観察データを基に次式(1)
(式中のXは長径短径面積比、Aは面積値、Lは長径値とする)
から長径短径面積比を算出し、この長径短径面積比から細胞の形態変化度を数値化するものであることを特徴とし、さらに、第14には、診断対象となる細胞の数値化した形態変化度を、分化前の細胞における形態変化度と分化度を蓄積した第1データベースおよび分化移行時または分化完了後の細胞における形態変化度と分化度を蓄積した第2データベースそれぞれと対比して、細胞の分化度を診断する対比手段を有していることを特徴としている。
さらにまた、本発明は、第15には細胞の自動培養装置として、少なくとも細胞を培養するためのインキュベーター、培養液の供給装置と排出装置、細胞の培養状態を観察する観察手段、および培養容器を連続的もしくは断続的に作動させる作動装置を有している細胞の自動培養装置において、上記第11から第14いずれかの細胞の分化度自動診断装置をも備えていることを特徴としている。
そして、上記第1の発明によれば、非破壊的、かつ、非侵襲的に、しかも短時間で細胞の分化度を自動診断できる。
第2の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、分化度の診断精度を向上させることができる。
第3の発明によれば、上記第2の発明の効果において、さらに分化度の診断精度を向上させることができる。
第4の発明によれば、上記第1から第3の発明の効果に加え、幹細胞からの分化度について、さらに効率よく診断できる。
第5の発明よれば、上記第4の発明の効果において、間葉系幹細胞からの分化度について、さらに効率よく診断できる。
第6の発明によれば、上記第5の発明の効果において、軟骨細胞への分化度について、さらに効率よく診断できる。
第7から第10の発明によれば、上記第3から第6の発明の効果において、さらに効率よく各種の細胞の分化度を診断することができる。
さらに、第11から第14の発明によれば、使用者を問わず、上記第1から10の発明の効果を効率よく得ることができる。
そして、第15の発明によれば、細胞を自動培養できるとともに、上記第11から第14の効果をも発揮することができる。
また、本発明は、第2には、観察データは、1個以上の細胞から計測される面積値および長径値のうち、少なくともいずれかの値を有することを特徴とし、第3には、上記第2の発明において、面積値および長径値の両者を有する観察データを基に次式(1)
(式中のXは長径短径面積比、Aは面積値、Lは長径値とする)
から、長径短径面積比を算出し、この長径短径面積比から細胞の分化度を診断することを特徴としている。
さらに、第4には、細胞が幹細胞であって、幹細胞からの分化度を診断することを特徴とし、第5には、幹細胞が間葉系幹細胞であって、間葉系幹細胞からの分化度を診断することを特徴とし、そして、第6には、間葉系幹細胞からの分化度が、軟骨細胞への分化度であることを特徴としている。
さらにまた、第7には、長径短径面積比Xが、特定の閾値以上の細胞の割合から分化度を診断することを特徴とし、第8には、長径短径面積比Xが特定の閾値以上で、かつ、面積値Aが特定の閾値以上である細胞の割合から分化度を診断することを特徴とする。
ここで、本発明は、間葉系幹細胞から軟骨細胞への分化度の診断においては、第9には、長径短径面積比Xの特定閾値が、0.2から0.4の範囲である細胞の割合から分化度を診断することを特徴とし、第10には、長径短径面積比Xの特定閾値が0.2から0.4の範囲であり、かつ、面積値Aの特定閾値が3000から5000μm2である細胞の割合から分化度を診断することを特徴としている。
また、本発明は、細胞を自動診断する装置として、第11には、少なくとも細胞分化による細胞の形態変化を観察する観察手段、観察手段で得られた観察データを基に、細胞の形態変化を形態変化度として数値化する観察データ処理手段、および観察データ処理手段で得られた処理結果を出力する出力手段を備えていることを特徴とすし、第12には、観察手段は、1個以上の細胞から計測される面積値および長径値のうち少なくともいずれかを観察データとして観察するものであることを特徴とし、第13には、観察データ処理手段は、前記観察データを基に次式(1)
(式中のXは長径短径面積比、Aは面積値、Lは長径値とする)
から長径短径面積比を算出し、この長径短径面積比から細胞の形態変化度を数値化するものであることを特徴とし、さらに、第14には、診断対象となる細胞の数値化した形態変化度を、分化前の細胞における形態変化度と分化度を蓄積した第1データベースおよび分化移行時または分化完了後の細胞における形態変化度と分化度を蓄積した第2データベースそれぞれと対比して、細胞の分化度を診断する対比手段を有していることを特徴としている。
さらにまた、本発明は、第15には細胞の自動培養装置として、少なくとも細胞を培養するためのインキュベーター、培養液の供給装置と排出装置、細胞の培養状態を観察する観察手段、および培養容器を連続的もしくは断続的に作動させる作動装置を有している細胞の自動培養装置において、上記第11から第14いずれかの細胞の分化度自動診断装置をも備えていることを特徴としている。
そして、上記第1の発明によれば、非破壊的、かつ、非侵襲的に、しかも短時間で細胞の分化度を自動診断できる。
第2の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、分化度の診断精度を向上させることができる。
第3の発明によれば、上記第2の発明の効果において、さらに分化度の診断精度を向上させることができる。
第4の発明によれば、上記第1から第3の発明の効果に加え、幹細胞からの分化度について、さらに効率よく診断できる。
第5の発明よれば、上記第4の発明の効果において、間葉系幹細胞からの分化度について、さらに効率よく診断できる。
第6の発明によれば、上記第5の発明の効果において、軟骨細胞への分化度について、さらに効率よく診断できる。
第7から第10の発明によれば、上記第3から第6の発明の効果において、さらに効率よく各種の細胞の分化度を診断することができる。
さらに、第11から第14の発明によれば、使用者を問わず、上記第1から10の発明の効果を効率よく得ることができる。
そして、第15の発明によれば、細胞を自動培養できるとともに、上記第11から第14の効果をも発揮することができる。
図1は、本発明における細胞培養から細胞の分化度診断までのフローチャートを例示した概略図である。
図2は、骨髄間葉系幹細胞から軟骨細胞への分化誘導培養における観察結果を示した図であり、(A)は培養1日目、(B)培養2日目、(C)培養4日目である。
図3は、コントロール培養における観察結果を示した図であり、(A)は培養1日目、(B)培養2日目、(C)培養4日目である。
図2は、骨髄間葉系幹細胞から軟骨細胞への分化誘導培養における観察結果を示した図であり、(A)は培養1日目、(B)培養2日目、(C)培養4日目である。
図3は、コントロール培養における観察結果を示した図であり、(A)は培養1日目、(B)培養2日目、(C)培養4日目である。
本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について詳しく説明する。
本発明の細胞の分化度自動診断方法は、たとえば、閉鎖された無菌状態の内部空間を有する箱体の培養装置内で、培養容器において各種の細胞もしくは組織を培養する自動培養装置を適用することで、効率よく細胞の分化度を、細胞の数や面積、長径、大きさ等から、細胞の形状変化を定量化して測定でき、非破壊的、かつ、非侵襲的に、しかも短時間で自動診断することができる。したがって、通常、この自動培養装置の箱体には、たとえば、細胞を培養するインキュベーター、培養液の供給装置と排出装置、細胞の培養状態の観察手段(観察装置)ならびに、これら観察手段に培養容器を連続的もしくは断続的に作動、移動させる作動装置が配置されている。また、培養状態の観察手段からのデータ信号(観察データ)によって、前記の観察手段の少なくとも、いずれかのものの動作を電気信号により指示制御する指示制御装置等が備えられている。
すなわち、本発明においては、少なくとも細胞の分化度を自動診断するための手段:
<1>培養中もしくは培養終了の細胞における細胞分化による細胞の形態変化を観察する観察手段;
<2>この観察手段で得られた観察データを基に、細胞の形態変化を形態変化度として数値化処理する観察データ処理手段;および
<3>この観察データ処理手段で得られた処理結果を出力する、モニター等の出力手段;
を備えている細胞の分化度自動診断装置も提供し、さらに<4>診断対象の細胞の形態変化度と、すでにデータベース化、すなわち、分化前の細胞の形態変化度と分化度が蓄積されている第1データベース(以下、DB1とする)および分化移行時または分化完了時の細胞の形態変化度と分化度が蓄積されている第2データベース(以下、DB2とする)それぞれと対比して、検量線等を算出することで、細胞の分化度を診断することのできる対比手段をも有する提供するとともに、このような細胞の分化度自動診断装置を、細胞の自動培養装置に適用することで、細胞の分化度を自動診断をも可能とした自動培養装置をも提供することができる。
ここで、本発明の分化度自動診断方法を適用することのできる培養装置としては、特に限定されないが、たとえば、本発明者が開発した、生体由来の細胞や組織を自動で培養することのできる自動培養装置等、各種の培養装置に適用することができる。なお、前記自動培養装置の構成としては、たとえば、閉鎖され、かつ、無菌状態の培養装置内で細胞または組織の培養の一連の培養操作および各種の培養環境制御を自動化した培養装置であって、培養装置内が複数の空間に区分けされていたり、また、細胞や組織等の培養物に対して、非侵襲的に培養物の特性や状態等を測定でき、かつ、これら一連の測定作業を自動化されていてもよい。
本発明の細胞の分化度自動診断方法等における「自動診断」としては、上記のような構成を有する自動培養装置を利用して、対象となる細胞(もしくは組織)、培養容器を作業者等の人手で操作するだけでなく、効率よく細胞の分化度の診断結果を得ることができ、そして、たとえば、後述するCCDカメラ等の観察手段からの吸光度等の1次的に得られる測定値や画像データ等を含む観察データを基にした分化度の診断結果(診断値)を、コンピュータ等で演算、計算する機能を備え、また、得られた診断結果を出力する出力手段、例えば、モニター等を備えていてもよい。
本発明の細胞の分化度自動診断方法等でいう「非破壊的」な診断とは、細胞や組織を生存させたまま細胞の分化度を診断することであり、たとえば、光学顕微鏡等による非接触的な観察方法が挙げられる。また、「非侵襲的」な診断とは、細胞や組織に薬剤等を投与すること等の化学的な影響を与えることなく診断することであり、たとえば、細胞が本来有している蛍光物質の蛍光観察等が挙げられる。
つづいて、本発明の細胞の分化度自動診断方法について説明する。まず、細胞や組織の分化による細胞や組織の形態変化を、たとえば、倒立顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザー共焦点顕微鏡等の光学顕微鏡、原子間力顕微鏡、分子間力顕微鏡、レーザー変位計、さらにはCCDカメラ等の観察機器等をはじめとした各種の観察手段で観察する。そして、これら観察手段で得られた観察データ(顕微鏡観察画像)を基に、細胞や組織の形態変化を「形態変化度」としてコンピュータ等で計算して数値化することを特徴としている。
このとき、本発明の細胞の分化度自動診断方法における「観察データ」は、1個以上の細胞から計測される面積値および長径値のうち、少なくともいずれかの値を有することを特徴としている。つまり、まず「面積値」について説明すると、「面積値」とは、たとえば、細胞(もしくは、組織)の接着面に対する細胞の投影面積、あるいは、細胞(もしくは、組織)の外表面積等であり、観察データとしてコンピュータ等を利用して計算することができる。また、「長径値」とは、たとえば、細胞(もしくは、組織)の画像外周部の最も離れた点の間の距離を意味し、「面積値」と同様に、観察データとしてコンピュータ等を利用して計算することができる。そして、さらに具体的に説明すると、細胞の分化度をより効率よく診断するために、これら「面積値」および「長径値」の両者の値を有する観察データを基に、次式(1)
(式中のXは長径短径面積比、Aは面積値、Lは長径値とする)
から、長径短径面積比として算出し、この長径短径面積比から細胞の分化度を効率よく診断することができる。つまり、この長径短径面積比は、細胞や組織の形態変化の度合いである形態変化度に相当し、ひいては、細胞の分化度に相当するものである。これは、「形態変化度と分化度は、相関する」という、本発明者の鋭意研究の結果である新規の知見に基づいているものである。また、この長径短径面積比は、長径と短径の比に関係する細胞形状を代表するパラメーターであると位置付けることができる。
なお、この観察データについては、上記のとおり各種の観察手段で得られたものであり、細胞の形状に関する2次元的、または3次元的、もしくは時間変化を含めた4次元的なデータ等を例示することができる。
すなわち、本発明の細胞の分化度自動診断方法における「細胞の形態変化(形態変化度)」は、たとえば、繊維芽状、多角形状、円形状、球形状等の形状変化の度合いをはじめ、細胞の外周辺の内角の度数、面積、細胞外周の対角線の本数、対角線の内で最長のものの長さ、細胞の接着面からの最高の高さ、細胞の体積、細胞の体積を細胞の接着面積で割った値、これらの値の経時変化の速度等から求めることができる。
本発明の細胞の分化度自動診断方法における「分化度」についても説明する。「分化度」とは、細胞の分化の程度(度合い)を定量的もしくは半定量的に表す数値である。たとえば、<1>細胞の分化に応じて発現される細胞表面タンパク質の絶対的な量もしくは相対的な量、<2>細胞の分化に応じて発現される遺伝子に対応するmRNA(メッセンジャーRNA)の絶対的な量もしくは相対的な量、<3>細胞の分化に応じて変化する細胞酵素の活性の絶対的な量もしくは相対的な量、さらに<4>細胞の分化に応じてその生産量が変化するタンパク質等の代謝物の絶対的な量もしくは相対的な量等がある。特に本発明における分化度は、ある培養器内の全ての細胞の分化度の平均値として得られてもよいし、あるいは、単一の細胞の値として得られてもよい。
そして、本発明の細胞の分化度自動診断方法の流れとしては、図1に例示したように、診断対象となる細胞を培養し、培養した細胞の培養状態を観察するとともに、細胞形態から細胞の形態変化を観察し、得られた観察結果(観察データ)を形態変化度として数値化処理し、この数値化した形態変化度から細胞の分化度を診断する。さらに説明すると、図1の例のように、例えば、細胞の分化の度合いを定量化する上記<1>〜<4>等で得られる結果を基に、細胞の分化前を示す値を特定し、この値と分化前の細胞を観察して得られた観察データを基にして数値化した形態変化度とを関連付けして閾値として特定し、また、細胞の分化移行もしくは分化完了を示す値を特定し、この値と分化移行時の細胞形状または分化完了時の細胞形状の観察データから数値化した形態変化度とを関連付けて閾値として特定し、これら閾値データそれぞれをDB1、DB2として蓄積しておくことで、次回から細胞の形状を観察して、観察データから形態変化度を取得し、データベース化した閾値と対比させることで、各種の細胞の分化度を自動診断することができる。
さらに説明すると、長径短径面積比Xが、ある特定の閾値以上の細胞の割合から、細胞の分化度を診断することができ、また、長径短径面積比Xがある特定の閾値以上で、かつ、面積値Aが別のある特定の閾値以上である細胞の割合からも、細胞の分化度を診断することができる。なお、長径短径面積比Xおよび面積値A「特定の閾値」とは、細胞の種類によって異なる。
この長径短径面積比Xおよび面積値Aについて、間葉系幹細胞を例に挙げてさらに説明すると、間葉系幹細胞は典型的な繊維芽状、すなわち細長い菱形の針の様な形態を示すことはよく知られており、間葉系幹細胞はその接着面積も長さの割には小さい。このことから、間葉系幹細胞の長径短径面積比Xの値は比較的小さい。これに対して、軟骨組織中の軟骨細胞は一般に丸い形態をとっており、その長径短径面積比Xの値は大きく、接着面積の面積値Aに相当する投影面積は比較的大きい。
本発明で扱う軟骨細胞は、このような軟骨組織中の軟骨細胞ではなく、体外で培養されている状態の軟骨細胞であるため、間葉系幹細胞から分化した軟骨細胞の長径短径面積比Xや、接着面積の面積値Aが大きくなる直接の理由は不明であるが、軟骨組織中の軟骨細胞の形態に近づくゆえに長径短径面積比Xや面積値Aが大きくなると考えることができる。
また、軟骨細胞は細胞外に多量の細胞外タンパク質(例えば、IIコラーゲンやアグリカン等)を分泌蓄積するという特徴を有していることから、分化により生じた軟骨細胞が多量の細胞外タンパク質を自身の周囲に分泌し、その細胞外タンパク質の層の上に軟骨細胞自身が接着し、伸展できる。このため、結果として軟骨細胞の形態が、細長い繊維芽状態から比較的丸に近い、すなわち、長径短径面積比Xが大きい形態となり、また周囲に豊富に分布せしめた細胞外タンパク質に接着することから軟骨細胞の面積値Aも大きくなる。
したがって、種々の細胞の分化、例えば、間葉系幹細胞から軟骨細胞へと分化中の細胞群の中で長径短径面積比Xがある特定の閾値以上、例えば、0.2から0.4の範囲である細胞や、面積値Aがある特定の閾値以上、例えば、3000から5000μm2の細胞、さらには長径短径面積比Xが上記のとおりの特定閾値以上で、かつ、面積値Aが別の上記のとおりの特定閾値以上である細胞が、軟骨細胞への分化が進んだ、あるいは、終了した細胞であると十分に考えることができ、軟骨細胞とて認識、判断することができる。
本発明の細胞の分化度自動診断方法は、このような細胞の分化度を、細胞の形態変化度、すなわち、細胞の数や面積、長径、大きさ等の形状変化の定量化して測定することで、簡単に、診断することができる。
次に、本発明の細胞の分化度自動診断方法が対象としうる「細胞(もしくは、組織)」について説明すると、その由来は、たとえば植物、昆虫および動物等であり、特に動物としては鳥類、爬虫類、両生類、魚類、哺乳類等が挙げられる。さらに、哺乳類としては、ヒト、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ネズミ、ウマ等が例示できる。
そして、本発明の細胞の分化度自動診断方法は、再生医療の発展に大きく貢献し、活用し得るものであることを考慮すると、細胞(もしくは組織)の由来は、ヒトであることが好ましい。さらに、ヒト由来の細胞の中でも、免疫拒絶反応を回避することやより効果的に患者に馴化させるという観点から、患者自身を由来とする自家細胞であることがさらに好ましい。もちろん、本発明の細胞の分化度自動診断方法は、他家細胞に対しても適用することができる。
また、細胞としては、幹細胞をも対象とすることができる。「幹細胞」としては、たとえば、胚性幹細胞、生殖幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞等を対象として、これら細胞の分化度を診断することができる。特に、間葉系幹細胞からの分化度としては、軟骨細胞への分化度への診断を効率よく行うことができる。なお、この「間葉系幹細胞」とは、軟骨、骨、脂肪等をはじめとした間葉系の組織、細胞に分化する能力を有する細胞であり、骨髄液中に存在する骨髄間葉系幹細胞がその代表的な例としてあげることができる。特に、軟骨細胞は、手足の関節軟骨、鼻、耳等の軟骨組織を形成している細胞であり、硝子軟骨細胞や繊維軟骨細胞等が例示でき、本発明の細胞の分化度自動診断方法を利用して、間葉系幹細胞から軟骨細胞への分化度を診断することで、このような軟骨組織を効率よく培養することができる。
さらに、細胞とコラーゲンゲル膜、繭糸、マイクロチップやナイロンメッシュ等の非細胞との融合細胞も対象とすることができる。
もちろん、初代細胞や株化細胞でもよい。初代細胞としては、たとえば、ヒト初代臍帯血細胞、ヒト初代骨髄細胞、ヒト初代神経細胞、ヒト初代心筋細胞、ヒト初代肝細胞、ヒト初代造血細胞、ヒト初代軟骨細胞、ヒト初代間葉系細胞等が例示される。また、株化細胞としては、ヒト子宮ガン由来のHeLa細胞、ヒト肝ガン由来のHuh7細胞等が例示できる。また、これら細胞にプラスミド導入やウイルス感染等の遺伝子操作により得られた細胞もこの出願の発明に用いることができる。なお、「初代細胞」とは、一般に生体から細胞を採取して、50回程度の限られた回数のみ増殖および***する細胞を指し、「株化細胞」は、生体から細胞を採取した後も、50回以上の増殖および***する細胞のことをいう。
一方、「組織」とは、たとえば肝臓、心臓、腎臓、皮膚、骨、軟骨、骨髄等や、これら例示した組織から派生して形成された組織等が挙げられる。
そして、これら細胞を培養する際、任意の種類の細胞または組織を得るため、分化を促進させる因子として分化誘導因子と呼ばれる薬剤を用いることもあるが、この種々の分化誘導因子の中から、最も適した分化誘導因子を用いるには、分化前の細胞の種類と分化後に得られる細胞の種類に依存する。また、単独あるいは複数の分化誘導因子の利用が可能である。これら分化誘導因子として、赤血球細胞に分化誘導させるエリスロポエチン、骨芽細胞への分化誘導を促進させるbone morphogenic protein(BMP)、肝実質細胞等への分化誘導を行うhepatocyte growth factor(HGF)、軟骨細胞へ分化を促進させるtumor growth factor−β(TGF−β)等が例示できる。
これら分化誘導因子は、本発明の細胞の分化度自動診断方法によって得られた分化度の診断結果を基に、適宜にその使用量を効率よく調節することができる。
本発明に用いることができる「培養容器」については、その素材はいかなるものでもよく、たとえばプラスチック製、ガラス製等がある。具体的には、たとえば、プラスチックの素材としては、セルロース等の天然繊維、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリカーボネイト等の合成化合物およびこれらを組み合わせた混合物等がある。また、ポリ乳酸、ポリグリクロン酸等のような生体吸収性または生体分解高分子を用いてもよい。さらに、これらプラスチック素材をコラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン等の天然細胞外マトリックスやエチレンビニルアルコール共重合体等の人工化合物によりコーティングし親水化させて、培養容器として利用してもよい。ジエチルアミン、ジエチルアミノエチル等により修飾したものやプラズマ放電処理等を施し、表面に荷電基を導入したものも利用できる。
このような培養容器は、一般の研究室や実験室で使用されることを主な目的として設計されて市販されているものでもよく、その内容積は一般的には100μL〜500mLであるが、大量培養用の培養容器を使用することもできる。また、培養容器内に細胞や組織を接着や固定をする担体を含ませた培養容器も利用できる。この場合の担体としては、不織布、織物、ゲル、発泡体、繭糸、針金、凍結乾燥された多孔体等が例示できる。さらにまた、培養容器内での物質の移動阻害、促進、選択あるいは細胞の接着等を目的とした限外濾過膜、精密濾過膜、逆浸透膜等のような膜を内部に含ませた培養容器を使用することもできる。
また、培養容器の形状は、受け皿部と蓋部とからなるディッシュ型、液体等を出し入れする開口部が一つまたは複数備えたフラスコ型が例示できる。ディッシュ型の培養容器において、ディッシュ内が複数に区分けされたマルチウェル型やフラスコ型の培養器において、内面の全部または一部がガス透過性を有する多孔質膜からなるものもあり、これらも当然に使用することができる。
以下に実施例を示して、本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこの例によって限定されるものではない。
本発明の細胞の分化度自動診断方法は、たとえば、閉鎖された無菌状態の内部空間を有する箱体の培養装置内で、培養容器において各種の細胞もしくは組織を培養する自動培養装置を適用することで、効率よく細胞の分化度を、細胞の数や面積、長径、大きさ等から、細胞の形状変化を定量化して測定でき、非破壊的、かつ、非侵襲的に、しかも短時間で自動診断することができる。したがって、通常、この自動培養装置の箱体には、たとえば、細胞を培養するインキュベーター、培養液の供給装置と排出装置、細胞の培養状態の観察手段(観察装置)ならびに、これら観察手段に培養容器を連続的もしくは断続的に作動、移動させる作動装置が配置されている。また、培養状態の観察手段からのデータ信号(観察データ)によって、前記の観察手段の少なくとも、いずれかのものの動作を電気信号により指示制御する指示制御装置等が備えられている。
すなわち、本発明においては、少なくとも細胞の分化度を自動診断するための手段:
<1>培養中もしくは培養終了の細胞における細胞分化による細胞の形態変化を観察する観察手段;
<2>この観察手段で得られた観察データを基に、細胞の形態変化を形態変化度として数値化処理する観察データ処理手段;および
<3>この観察データ処理手段で得られた処理結果を出力する、モニター等の出力手段;
を備えている細胞の分化度自動診断装置も提供し、さらに<4>診断対象の細胞の形態変化度と、すでにデータベース化、すなわち、分化前の細胞の形態変化度と分化度が蓄積されている第1データベース(以下、DB1とする)および分化移行時または分化完了時の細胞の形態変化度と分化度が蓄積されている第2データベース(以下、DB2とする)それぞれと対比して、検量線等を算出することで、細胞の分化度を診断することのできる対比手段をも有する提供するとともに、このような細胞の分化度自動診断装置を、細胞の自動培養装置に適用することで、細胞の分化度を自動診断をも可能とした自動培養装置をも提供することができる。
ここで、本発明の分化度自動診断方法を適用することのできる培養装置としては、特に限定されないが、たとえば、本発明者が開発した、生体由来の細胞や組織を自動で培養することのできる自動培養装置等、各種の培養装置に適用することができる。なお、前記自動培養装置の構成としては、たとえば、閉鎖され、かつ、無菌状態の培養装置内で細胞または組織の培養の一連の培養操作および各種の培養環境制御を自動化した培養装置であって、培養装置内が複数の空間に区分けされていたり、また、細胞や組織等の培養物に対して、非侵襲的に培養物の特性や状態等を測定でき、かつ、これら一連の測定作業を自動化されていてもよい。
本発明の細胞の分化度自動診断方法等における「自動診断」としては、上記のような構成を有する自動培養装置を利用して、対象となる細胞(もしくは組織)、培養容器を作業者等の人手で操作するだけでなく、効率よく細胞の分化度の診断結果を得ることができ、そして、たとえば、後述するCCDカメラ等の観察手段からの吸光度等の1次的に得られる測定値や画像データ等を含む観察データを基にした分化度の診断結果(診断値)を、コンピュータ等で演算、計算する機能を備え、また、得られた診断結果を出力する出力手段、例えば、モニター等を備えていてもよい。
本発明の細胞の分化度自動診断方法等でいう「非破壊的」な診断とは、細胞や組織を生存させたまま細胞の分化度を診断することであり、たとえば、光学顕微鏡等による非接触的な観察方法が挙げられる。また、「非侵襲的」な診断とは、細胞や組織に薬剤等を投与すること等の化学的な影響を与えることなく診断することであり、たとえば、細胞が本来有している蛍光物質の蛍光観察等が挙げられる。
つづいて、本発明の細胞の分化度自動診断方法について説明する。まず、細胞や組織の分化による細胞や組織の形態変化を、たとえば、倒立顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザー共焦点顕微鏡等の光学顕微鏡、原子間力顕微鏡、分子間力顕微鏡、レーザー変位計、さらにはCCDカメラ等の観察機器等をはじめとした各種の観察手段で観察する。そして、これら観察手段で得られた観察データ(顕微鏡観察画像)を基に、細胞や組織の形態変化を「形態変化度」としてコンピュータ等で計算して数値化することを特徴としている。
このとき、本発明の細胞の分化度自動診断方法における「観察データ」は、1個以上の細胞から計測される面積値および長径値のうち、少なくともいずれかの値を有することを特徴としている。つまり、まず「面積値」について説明すると、「面積値」とは、たとえば、細胞(もしくは、組織)の接着面に対する細胞の投影面積、あるいは、細胞(もしくは、組織)の外表面積等であり、観察データとしてコンピュータ等を利用して計算することができる。また、「長径値」とは、たとえば、細胞(もしくは、組織)の画像外周部の最も離れた点の間の距離を意味し、「面積値」と同様に、観察データとしてコンピュータ等を利用して計算することができる。そして、さらに具体的に説明すると、細胞の分化度をより効率よく診断するために、これら「面積値」および「長径値」の両者の値を有する観察データを基に、次式(1)
(式中のXは長径短径面積比、Aは面積値、Lは長径値とする)
から、長径短径面積比として算出し、この長径短径面積比から細胞の分化度を効率よく診断することができる。つまり、この長径短径面積比は、細胞や組織の形態変化の度合いである形態変化度に相当し、ひいては、細胞の分化度に相当するものである。これは、「形態変化度と分化度は、相関する」という、本発明者の鋭意研究の結果である新規の知見に基づいているものである。また、この長径短径面積比は、長径と短径の比に関係する細胞形状を代表するパラメーターであると位置付けることができる。
なお、この観察データについては、上記のとおり各種の観察手段で得られたものであり、細胞の形状に関する2次元的、または3次元的、もしくは時間変化を含めた4次元的なデータ等を例示することができる。
すなわち、本発明の細胞の分化度自動診断方法における「細胞の形態変化(形態変化度)」は、たとえば、繊維芽状、多角形状、円形状、球形状等の形状変化の度合いをはじめ、細胞の外周辺の内角の度数、面積、細胞外周の対角線の本数、対角線の内で最長のものの長さ、細胞の接着面からの最高の高さ、細胞の体積、細胞の体積を細胞の接着面積で割った値、これらの値の経時変化の速度等から求めることができる。
本発明の細胞の分化度自動診断方法における「分化度」についても説明する。「分化度」とは、細胞の分化の程度(度合い)を定量的もしくは半定量的に表す数値である。たとえば、<1>細胞の分化に応じて発現される細胞表面タンパク質の絶対的な量もしくは相対的な量、<2>細胞の分化に応じて発現される遺伝子に対応するmRNA(メッセンジャーRNA)の絶対的な量もしくは相対的な量、<3>細胞の分化に応じて変化する細胞酵素の活性の絶対的な量もしくは相対的な量、さらに<4>細胞の分化に応じてその生産量が変化するタンパク質等の代謝物の絶対的な量もしくは相対的な量等がある。特に本発明における分化度は、ある培養器内の全ての細胞の分化度の平均値として得られてもよいし、あるいは、単一の細胞の値として得られてもよい。
そして、本発明の細胞の分化度自動診断方法の流れとしては、図1に例示したように、診断対象となる細胞を培養し、培養した細胞の培養状態を観察するとともに、細胞形態から細胞の形態変化を観察し、得られた観察結果(観察データ)を形態変化度として数値化処理し、この数値化した形態変化度から細胞の分化度を診断する。さらに説明すると、図1の例のように、例えば、細胞の分化の度合いを定量化する上記<1>〜<4>等で得られる結果を基に、細胞の分化前を示す値を特定し、この値と分化前の細胞を観察して得られた観察データを基にして数値化した形態変化度とを関連付けして閾値として特定し、また、細胞の分化移行もしくは分化完了を示す値を特定し、この値と分化移行時の細胞形状または分化完了時の細胞形状の観察データから数値化した形態変化度とを関連付けて閾値として特定し、これら閾値データそれぞれをDB1、DB2として蓄積しておくことで、次回から細胞の形状を観察して、観察データから形態変化度を取得し、データベース化した閾値と対比させることで、各種の細胞の分化度を自動診断することができる。
さらに説明すると、長径短径面積比Xが、ある特定の閾値以上の細胞の割合から、細胞の分化度を診断することができ、また、長径短径面積比Xがある特定の閾値以上で、かつ、面積値Aが別のある特定の閾値以上である細胞の割合からも、細胞の分化度を診断することができる。なお、長径短径面積比Xおよび面積値A「特定の閾値」とは、細胞の種類によって異なる。
この長径短径面積比Xおよび面積値Aについて、間葉系幹細胞を例に挙げてさらに説明すると、間葉系幹細胞は典型的な繊維芽状、すなわち細長い菱形の針の様な形態を示すことはよく知られており、間葉系幹細胞はその接着面積も長さの割には小さい。このことから、間葉系幹細胞の長径短径面積比Xの値は比較的小さい。これに対して、軟骨組織中の軟骨細胞は一般に丸い形態をとっており、その長径短径面積比Xの値は大きく、接着面積の面積値Aに相当する投影面積は比較的大きい。
本発明で扱う軟骨細胞は、このような軟骨組織中の軟骨細胞ではなく、体外で培養されている状態の軟骨細胞であるため、間葉系幹細胞から分化した軟骨細胞の長径短径面積比Xや、接着面積の面積値Aが大きくなる直接の理由は不明であるが、軟骨組織中の軟骨細胞の形態に近づくゆえに長径短径面積比Xや面積値Aが大きくなると考えることができる。
また、軟骨細胞は細胞外に多量の細胞外タンパク質(例えば、IIコラーゲンやアグリカン等)を分泌蓄積するという特徴を有していることから、分化により生じた軟骨細胞が多量の細胞外タンパク質を自身の周囲に分泌し、その細胞外タンパク質の層の上に軟骨細胞自身が接着し、伸展できる。このため、結果として軟骨細胞の形態が、細長い繊維芽状態から比較的丸に近い、すなわち、長径短径面積比Xが大きい形態となり、また周囲に豊富に分布せしめた細胞外タンパク質に接着することから軟骨細胞の面積値Aも大きくなる。
したがって、種々の細胞の分化、例えば、間葉系幹細胞から軟骨細胞へと分化中の細胞群の中で長径短径面積比Xがある特定の閾値以上、例えば、0.2から0.4の範囲である細胞や、面積値Aがある特定の閾値以上、例えば、3000から5000μm2の細胞、さらには長径短径面積比Xが上記のとおりの特定閾値以上で、かつ、面積値Aが別の上記のとおりの特定閾値以上である細胞が、軟骨細胞への分化が進んだ、あるいは、終了した細胞であると十分に考えることができ、軟骨細胞とて認識、判断することができる。
本発明の細胞の分化度自動診断方法は、このような細胞の分化度を、細胞の形態変化度、すなわち、細胞の数や面積、長径、大きさ等の形状変化の定量化して測定することで、簡単に、診断することができる。
次に、本発明の細胞の分化度自動診断方法が対象としうる「細胞(もしくは、組織)」について説明すると、その由来は、たとえば植物、昆虫および動物等であり、特に動物としては鳥類、爬虫類、両生類、魚類、哺乳類等が挙げられる。さらに、哺乳類としては、ヒト、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ネズミ、ウマ等が例示できる。
そして、本発明の細胞の分化度自動診断方法は、再生医療の発展に大きく貢献し、活用し得るものであることを考慮すると、細胞(もしくは組織)の由来は、ヒトであることが好ましい。さらに、ヒト由来の細胞の中でも、免疫拒絶反応を回避することやより効果的に患者に馴化させるという観点から、患者自身を由来とする自家細胞であることがさらに好ましい。もちろん、本発明の細胞の分化度自動診断方法は、他家細胞に対しても適用することができる。
また、細胞としては、幹細胞をも対象とすることができる。「幹細胞」としては、たとえば、胚性幹細胞、生殖幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞等を対象として、これら細胞の分化度を診断することができる。特に、間葉系幹細胞からの分化度としては、軟骨細胞への分化度への診断を効率よく行うことができる。なお、この「間葉系幹細胞」とは、軟骨、骨、脂肪等をはじめとした間葉系の組織、細胞に分化する能力を有する細胞であり、骨髄液中に存在する骨髄間葉系幹細胞がその代表的な例としてあげることができる。特に、軟骨細胞は、手足の関節軟骨、鼻、耳等の軟骨組織を形成している細胞であり、硝子軟骨細胞や繊維軟骨細胞等が例示でき、本発明の細胞の分化度自動診断方法を利用して、間葉系幹細胞から軟骨細胞への分化度を診断することで、このような軟骨組織を効率よく培養することができる。
さらに、細胞とコラーゲンゲル膜、繭糸、マイクロチップやナイロンメッシュ等の非細胞との融合細胞も対象とすることができる。
もちろん、初代細胞や株化細胞でもよい。初代細胞としては、たとえば、ヒト初代臍帯血細胞、ヒト初代骨髄細胞、ヒト初代神経細胞、ヒト初代心筋細胞、ヒト初代肝細胞、ヒト初代造血細胞、ヒト初代軟骨細胞、ヒト初代間葉系細胞等が例示される。また、株化細胞としては、ヒト子宮ガン由来のHeLa細胞、ヒト肝ガン由来のHuh7細胞等が例示できる。また、これら細胞にプラスミド導入やウイルス感染等の遺伝子操作により得られた細胞もこの出願の発明に用いることができる。なお、「初代細胞」とは、一般に生体から細胞を採取して、50回程度の限られた回数のみ増殖および***する細胞を指し、「株化細胞」は、生体から細胞を採取した後も、50回以上の増殖および***する細胞のことをいう。
一方、「組織」とは、たとえば肝臓、心臓、腎臓、皮膚、骨、軟骨、骨髄等や、これら例示した組織から派生して形成された組織等が挙げられる。
そして、これら細胞を培養する際、任意の種類の細胞または組織を得るため、分化を促進させる因子として分化誘導因子と呼ばれる薬剤を用いることもあるが、この種々の分化誘導因子の中から、最も適した分化誘導因子を用いるには、分化前の細胞の種類と分化後に得られる細胞の種類に依存する。また、単独あるいは複数の分化誘導因子の利用が可能である。これら分化誘導因子として、赤血球細胞に分化誘導させるエリスロポエチン、骨芽細胞への分化誘導を促進させるbone morphogenic protein(BMP)、肝実質細胞等への分化誘導を行うhepatocyte growth factor(HGF)、軟骨細胞へ分化を促進させるtumor growth factor−β(TGF−β)等が例示できる。
これら分化誘導因子は、本発明の細胞の分化度自動診断方法によって得られた分化度の診断結果を基に、適宜にその使用量を効率よく調節することができる。
本発明に用いることができる「培養容器」については、その素材はいかなるものでもよく、たとえばプラスチック製、ガラス製等がある。具体的には、たとえば、プラスチックの素材としては、セルロース等の天然繊維、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリカーボネイト等の合成化合物およびこれらを組み合わせた混合物等がある。また、ポリ乳酸、ポリグリクロン酸等のような生体吸収性または生体分解高分子を用いてもよい。さらに、これらプラスチック素材をコラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン等の天然細胞外マトリックスやエチレンビニルアルコール共重合体等の人工化合物によりコーティングし親水化させて、培養容器として利用してもよい。ジエチルアミン、ジエチルアミノエチル等により修飾したものやプラズマ放電処理等を施し、表面に荷電基を導入したものも利用できる。
このような培養容器は、一般の研究室や実験室で使用されることを主な目的として設計されて市販されているものでもよく、その内容積は一般的には100μL〜500mLであるが、大量培養用の培養容器を使用することもできる。また、培養容器内に細胞や組織を接着や固定をする担体を含ませた培養容器も利用できる。この場合の担体としては、不織布、織物、ゲル、発泡体、繭糸、針金、凍結乾燥された多孔体等が例示できる。さらにまた、培養容器内での物質の移動阻害、促進、選択あるいは細胞の接着等を目的とした限外濾過膜、精密濾過膜、逆浸透膜等のような膜を内部に含ませた培養容器を使用することもできる。
また、培養容器の形状は、受け皿部と蓋部とからなるディッシュ型、液体等を出し入れする開口部が一つまたは複数備えたフラスコ型が例示できる。ディッシュ型の培養容器において、ディッシュ内が複数に区分けされたマルチウェル型やフラスコ型の培養器において、内面の全部または一部がガス透過性を有する多孔質膜からなるものもあり、これらも当然に使用することができる。
以下に実施例を示して、本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこの例によって限定されるものではない。
1.骨髄間葉系幹細胞の採取と培養
インフォームドコンセントを経て、3人の健常人ボランティアの堆骨から、13mlづつ、骨髄液を採取した。この骨髄液中の有核細胞数を定法に従いチュルク液を用いて計数し、後述の培養培地を用いてそれぞれ細胞濃度が、6.0×105cells/cm2となるように、細胞培養用ディッシュ(コーニング社製:底面積55cm2、培養液量10ml)に播種し、37℃、5%CO2濃度のインキュベーター内で静置培養した。
上記の培養培地としては、DMEM(ギブコ社製:型番号31600−34)に10%ウシ胎児血清(ギブコ社製:ロット番号26140−079)を添加したものである。
培養開始から1日後および2日後に培地を交換し、浮遊細胞を除去したところ、いずれの培養でもディッシュ底面に接着細胞(骨髄間葉系幹細胞)が形成されていることを確認できた。その後、この接着細胞をコンフルエント近くまで増殖したのを顕微鏡で確認し、その19日後に、全てのディッシュの接着細胞をトリプシン処理によりディッシュから剥離して、トリパンブルー液を用いて接着していた生細胞を計数した。これを、骨髄間葉系幹細胞として、次の培養に用いた。
2.軟骨細胞への分化誘導
上記1.にて培養して回収した骨髄間葉系幹細胞を、次の方法で軟骨細胞へ分化誘導した。なお、培養培地は、DMEM培地に分化誘導因子であるTGF−β3(10ng/ml)とインシュリン様増殖因子(IGF、100ng/ml)を添加して分化誘導用培地として調製し、これを用いた。また、コントロール用培地としてTGF−β3とIGFを添加しないDMEM培地を調製して、この培地による培養も行った。
[1] 骨髄間葉系幹細胞を、100Φ培養ディッシュに、細胞密度が1×103cells/cm2となるように播種し、定法に従い10日間培養した。
[2] 上記[1]の培養の間、経時的に100Φ培養ディッシュの底面に接着した骨髄間葉系幹細胞をトリプシン処理により剥離して、遠心分離機を利用して回収した。
[3] 次に、回収した骨髄間葉系幹細胞を試料とし、リアルタイムRT−PCR法(リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)により軟骨細胞特有のタンパク質であるアグリカンのmRNAの発現量をアグリカン発現率(%)として確認し、骨髄間葉系幹細胞が軟骨細胞へと分化したことを確認した。なお、このとき初代ヒト軟骨細胞の発現量を100%として指標とした。
[4] 上記[3]のmRNA発現量の確認の間、経時的に100Φ培養ディッシュ内の細胞の形態変化についても、倒立顕微鏡で観察した。
[5] この観察結果は、図2および図3に例示したとおりである。図2は、骨髄間葉系幹細胞から軟骨細胞への分化誘導培養における観察結果を示した図であり、(A)は培養1日目、(B)培養2日目、(C)培養4日目である。図3は、コントロール培養における観察結果を示した図であり、(A)は培養1日目、(B)培養2日目、(C)培養4日目である。
[6] 図2に示した分化誘導培養では、図2(A)に示したように細長い形状から、図2(B)および図2(C)と培養日数を追うごとに、多角形状に細胞の形態が変化していることが確認できた。一方、図3に示したコントロール培養では、細胞は、図3(A)(B)(C)に示した何れの培養日数においても、その形状は細長いままであり、ほとんど変化しないことを確認した。
[7] 次に、上記[6]で得られた顕微鏡画像による観察データを基に、コンピュータを利用して50個の細胞の接着面に対する投影面積値(細胞面積値)と長径値を算出、計算し、得られた細胞面積値と長径値から次式(1)
(式中のXは長径短径面積比、Aは面積値、Lは長径値とする)
から、長径短径面積比(つまり、細胞や組織の形態変化度に相当)を計算した。
3.細胞の形態変化度を基に、細胞の分化度の診断
そして、上記2.の[3]で確認したアグリカンのmRNA発現量(アグリカン発現率(%))と、上記2.の[7]で計算した長径短径面積比(形態変化度)とを比較し、両者の相関関係について検討した。そして、その結果として、アグリカンのmRNA発現量(アグリカン発現率(%))と長径短径面積比が、0.3以上の細胞の割合を表1に例示した。
表1に示したとおり、アグリカンのmRNA発現量(アグリカン発現率(%))と長径短径面積比が、極めて高い相関関係を示し、「細胞の形態変化度と、分化度は相関する」ことが確認できた。つまり、細胞の形態変化を観察し、その度合いである形態変化度を計算することで、非破壊的、かつ、非侵襲的に簡単に、しかも精度よく細胞の分化度を診断することができた。なお、この例において、極めて細長い形状を有する細胞は、分化の進行に伴って、その形状は変化するため(細長い形状ではなくなる)、長径短径面積比は分化に伴って大きくなることから、0.3以上の細胞の割合も分化に伴って増大する。
もちろん、本発明は以上の例によって限定されるものではなく、その細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
インフォームドコンセントを経て、3人の健常人ボランティアの堆骨から、13mlづつ、骨髄液を採取した。この骨髄液中の有核細胞数を定法に従いチュルク液を用いて計数し、後述の培養培地を用いてそれぞれ細胞濃度が、6.0×105cells/cm2となるように、細胞培養用ディッシュ(コーニング社製:底面積55cm2、培養液量10ml)に播種し、37℃、5%CO2濃度のインキュベーター内で静置培養した。
上記の培養培地としては、DMEM(ギブコ社製:型番号31600−34)に10%ウシ胎児血清(ギブコ社製:ロット番号26140−079)を添加したものである。
培養開始から1日後および2日後に培地を交換し、浮遊細胞を除去したところ、いずれの培養でもディッシュ底面に接着細胞(骨髄間葉系幹細胞)が形成されていることを確認できた。その後、この接着細胞をコンフルエント近くまで増殖したのを顕微鏡で確認し、その19日後に、全てのディッシュの接着細胞をトリプシン処理によりディッシュから剥離して、トリパンブルー液を用いて接着していた生細胞を計数した。これを、骨髄間葉系幹細胞として、次の培養に用いた。
2.軟骨細胞への分化誘導
上記1.にて培養して回収した骨髄間葉系幹細胞を、次の方法で軟骨細胞へ分化誘導した。なお、培養培地は、DMEM培地に分化誘導因子であるTGF−β3(10ng/ml)とインシュリン様増殖因子(IGF、100ng/ml)を添加して分化誘導用培地として調製し、これを用いた。また、コントロール用培地としてTGF−β3とIGFを添加しないDMEM培地を調製して、この培地による培養も行った。
[1] 骨髄間葉系幹細胞を、100Φ培養ディッシュに、細胞密度が1×103cells/cm2となるように播種し、定法に従い10日間培養した。
[2] 上記[1]の培養の間、経時的に100Φ培養ディッシュの底面に接着した骨髄間葉系幹細胞をトリプシン処理により剥離して、遠心分離機を利用して回収した。
[3] 次に、回収した骨髄間葉系幹細胞を試料とし、リアルタイムRT−PCR法(リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)により軟骨細胞特有のタンパク質であるアグリカンのmRNAの発現量をアグリカン発現率(%)として確認し、骨髄間葉系幹細胞が軟骨細胞へと分化したことを確認した。なお、このとき初代ヒト軟骨細胞の発現量を100%として指標とした。
[4] 上記[3]のmRNA発現量の確認の間、経時的に100Φ培養ディッシュ内の細胞の形態変化についても、倒立顕微鏡で観察した。
[5] この観察結果は、図2および図3に例示したとおりである。図2は、骨髄間葉系幹細胞から軟骨細胞への分化誘導培養における観察結果を示した図であり、(A)は培養1日目、(B)培養2日目、(C)培養4日目である。図3は、コントロール培養における観察結果を示した図であり、(A)は培養1日目、(B)培養2日目、(C)培養4日目である。
[6] 図2に示した分化誘導培養では、図2(A)に示したように細長い形状から、図2(B)および図2(C)と培養日数を追うごとに、多角形状に細胞の形態が変化していることが確認できた。一方、図3に示したコントロール培養では、細胞は、図3(A)(B)(C)に示した何れの培養日数においても、その形状は細長いままであり、ほとんど変化しないことを確認した。
[7] 次に、上記[6]で得られた顕微鏡画像による観察データを基に、コンピュータを利用して50個の細胞の接着面に対する投影面積値(細胞面積値)と長径値を算出、計算し、得られた細胞面積値と長径値から次式(1)
(式中のXは長径短径面積比、Aは面積値、Lは長径値とする)
から、長径短径面積比(つまり、細胞や組織の形態変化度に相当)を計算した。
3.細胞の形態変化度を基に、細胞の分化度の診断
そして、上記2.の[3]で確認したアグリカンのmRNA発現量(アグリカン発現率(%))と、上記2.の[7]で計算した長径短径面積比(形態変化度)とを比較し、両者の相関関係について検討した。そして、その結果として、アグリカンのmRNA発現量(アグリカン発現率(%))と長径短径面積比が、0.3以上の細胞の割合を表1に例示した。
もちろん、本発明は以上の例によって限定されるものではなく、その細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
Claims (15)
- 細胞分化による細胞の形態変化を観察手段で観察し、得られた観察データを基に、細胞の形態変化を形態変化度として数値化して、細胞の分化度を診断することを特徴とする細胞の分化度自動診断方法。
- 観察データは、1個以上の細胞から計測される面積値および長径値のうち、少なくともいずれかの値を有する請求項1記載の細胞の分化度自動診断方法。
- 細胞が幹細胞であって、幹細胞からの分化度を診断する請求項1から3いずれかに記載の細胞の分化度自動診断方法。
- 幹細胞が間葉系幹細胞であって、間葉系幹細胞からの分化度を診断する請求項4記載の細胞の分化度自動診断方法。
- 間葉系幹細胞からの分化度が、軟骨細胞への分化度である請求項5記載の細胞の分化度自動診断方法。
- 長径短径面積比Xが、特定の閾値以上の細胞の割合から分化度を診断することを特徴とする請求項3から6いずれかの細胞の分化度自動診断方法。
- 長径短径面積比Xが特定の閾値以上で、かつ、面積値Aが特定の閾値以上である細胞の割合から分化度を診断することを特徴とする請求項3から6いずれかの細胞の分化度自動診断方法。
- 長径短径面積比Xの特定閾値が、0.2から0.4の範囲である細胞の割合から分化度を診断することを特徴とする請求項6の細胞の分化度自動診断方法。
- 長径短径面積比Xの特定閾値が0.2から0.4の範囲であり、かつ、面積値Aの特定閾値が3000から5000μm2である細胞の割合から分化度を診断することを特徴とする請求項6の細胞の分化度自動診断方法。
- 少なくとも細胞分化による細胞の形態変化を観察する観察手段、観察手段で得られた観察データを基に、細胞の形態変化を形態変化度として数値化する観察データ処理手段、および観察データ処理手段で得られた処理結果を出力する出力手段を備えていることを特徴とする細胞の分化度自動診断装置。
- 観察手段は、1個以上の細胞から計測される面積値および長径値のうち少なくともいずれかを観察データとして観察するものであることを特徴とする請求項11の細胞の分化度自動診断装置。
- 診断対象となる細胞の数値化した形態変化度を、分化前の細胞における形態変化度と分化度を蓄積した第1データベースおよび分化移行時または分化完了後の細胞における形態変化度と分化度を蓄積した第2データベースそれぞれと対比して、細胞の分化度を診断する対比手段を有していることを特徴とする請求項11から13いずれかの細胞の分化度自動診断装置。
- 少なくとも細胞を培養するためのインキュベーター、培養液の供給装置と排出装置、細胞の培養状態を観察する観察手段、および培養容器を連続的もしくは断続的に作動させる作動装置を有している細胞の自動培養装置において、請求項11から14いずれかの細胞の分化度自動診断装置を備えていることを特徴とする細胞の自動培養装置。
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