JPWO2005054463A1 - レトロトランスポゾンを用いた哺乳動物のゲノム改変技術の開発 - Google Patents

レトロトランスポゾンを用いた哺乳動物のゲノム改変技術の開発 Download PDF

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Abstract

本発明は、ゲノムにおいて網羅的な改変を行うことができるように、より効率よいコピー&ペースト型の転位系を開発することを課題とする。上記課題は、−部分的には、LTR型レトロトランスポゾンが転位系において使用することができることを見出したことによって解決される。本発明は、トランスポゾンを用いて外来遺伝子を効率よく細胞に導入する技術に関する。より詳細には、完全なIAPエレメントおよび機能するプロモーター配列を見出し、それらを組み合わせたことによって、初めてレトロトランスポゾンが機能することを検出することができたことによって解決される。

Description

本発明は、細胞に外来核酸分子を導入するためおよびゲノムを改変するためのシステム、キット、組成物に関する。本発明はさらに、トランスジェニック生物の作製およびそのための組成物、キット、システムなどに関する。以下に発明の詳細な説明を記載する。
トランスジェニック生物は、その応用の範囲の広さから、現在非常に注目されている技術である。しかし、効率よくトランスジェニック生物を作製する方法は、それほど開発されておらず、そのようなトランスジェニック生物の効率よい作製方法の開発は注目されている。
最近、トランスポゾンがトランスジェニック生物の作製に応用することが試みられている。トランスポゾン(または、転位可能(transposable)エレメントとも呼ばれる)は、反復配列が並んだ核酸分子または配列である。転位はカット&ペースト形式により行われるとされるDNA型およびコピー&ペースト型とされるRNA型(レトロトランスポゾンともいう)によって生じる。トランスポザーゼは、ある核酸分子への別の核酸の挿入を促進する酵素である。通常、トランスポザーゼは、トランスポゾンの中にある。
DNA型トランスポゾンは、比較的広範な範囲の生物から見出されており、その現象は普遍的であると考えられている。転位はカット&ペースト形式により行われるとされるDNA型およびコピー&ペースト型とされるRNA型(レトロトランスポゾンともいう)によって生じる。脊椎動物でもトランスポゾンが発見されており(Radice,A.D.ら、1994.Mol.Gen.Genet.244,606−612)、Tc1/mariner、hAT(hobo/Ac/Tam)などのスーパーファミリーに属するDNA型トランスポゾンが種々の生物(例えば、魚類、両生類、哺乳動物を含む)(Oosumi et al.、1995.Nature 378,873;Ivics et al.、1995.Mol.Gen.Genet.247,312−322;Koga et al.、1996.Nature 383,30;Lam et al.、1996.J.Mol.Biol.257,359−366、およびLam,W.L.et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93,10870−10875)および植物(Osborne and Baker,1995 Curr.Opin.Cell Biol.7,406−413)から同定されている。トランスポザーゼは、DNA型トランスポゾンのもとあった位置からの切除および再組み込みを触媒または促進する酵素であり、通常はDNA型トランスポゾンの中にあることが知られている(Plasterk,RHA.,1999、TIG 15:326−332;Plasterk RHA.,1996 Curr.Top.Microbiol.Immunol.204,125−143)。DNA型トランスポゾンの自律メンバーは、トランス作用性因子である活性トランスポザーゼを発現することができることから、自分自身が転位可能であるという性質も有する。非自律エレメントは、シス作用性因子であり得、この場合逆方向末端反復配列とも呼ばれる。一部の逆方向反復配列は、1または複数の直列反復配列を含む。このような配列は、末端逆方向反復配列(IRs)中に埋め込まれており、相補性トランスポザーセの存在下で別のエレメントからの移動に用いられ得る。
DNAを細胞に導入するための方法は知られており、例えば、DNA凝縮試薬(例えばリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール等)、脂質含有試薬(例えばリポソーム、多重層小胞体など)およびウィルス媒介法などがある。これらの方法は全てそれ自身の制約をもつ。例えば、DNA凝縮試薬およびウィルス媒介法には、サイズが限定されるという欠点がある。核酸量もまた制約される。導入核酸の組み込みの促進もまた効率がよいというわけではない。
細胞にDNAを導入するための新しい方法、特に細胞の核酸の中への様々なサイズの核酸フラグメントの効率的な組込み、特に細胞のゲノムへのDNAの組込みを促進する方法のニーズが残っている。DNA型のトランスポゾンでの転位系の開発もまた進められているが、この場合のトランスポゾン転位頻度は、該遺伝子が導入された肝臓細胞中わずか約5−6%であり、この方法では遺伝子導入の効率が悪く、系統的にトランスジェニック動物を得ることもできない。また、これまでの方法では、1動物個体の体内で数多くの遺伝子にランダムに変異を導入することが困難であり、その発現頻度も低いものであった。従って、遺伝子変異誘発のための一般的な方法を設計する必要があった。
しかし、上述のようなDNA型のトランスポゾンは、転位前の部位近傍に転位が集中する傾向があり、カット&ペーストというメカニズムの特性上、各細胞において転位前のトランスポゾンのコピー数には転位を増加させることはできない。
他方で、RNA型であるレトロトランスポゾンもまた注目されつつある。RNA型は、転位前の部位に転位場所が依存せず、ゲノムの広範囲に転位することが理解される。したがって、ゲノムの網羅的な改変を目的とする場合には都合がよい。また、コピー&ペーストというメカニズムの特性上、転位前の配列がコピーされて転位されることから、転位の数が転位前のコピー数以上に増加することも可能である。
これまでに、LINE1を用いたベクターを用いて、レトロトランスポゾンでの転位系の開発が試みられている(非特許文献1、特許文献1および2)。しかし、LINE1を用いた系では、ゲノムへの転位配列の挿入の際に、ベクターの欠失が高頻度に伴うことから、応用範囲に限界があるという問題がある。
レトロトランスポゾンには、LTR型というカテゴリーがあり、その中でもintracisternal A particle(IAP)と呼ばれる分類のレトロトランスポゾンある(非特許文献2)。従来用いられていたIAPベクターは、転位に必要な遺伝子に欠失があり、完全なレトロトランスポゾンを含むベクターとして作製されたものがなく、したがって、転位頻度が低く、転位の制御が困難であるという欠点が存在した(非特許文献2)。
Ostertag,E.M.,et al.,Nat Genet.32,655−660,2002 Heidmann O.,et al.,Cell 64,159−170,1991 米国特許第6150160号 米国特許出願2003−0121063号
本発明は、ゲノムにおいて網羅的な改変を行うことができるように、より効率よいコピー&ペースト型の転位系を開発することを課題とする。本発明はさらに、レトロトランスポゾンの転位活性を容易に観察することができる系を開発することを課題とする。
上記課題は、上記状況にかんがみ、鋭意研究を重ねた結果、部分的には、LTR型レトロトランスポゾンが転位系において使用することができることを見出したことによって解決される。本発明はまた、特定のプロモーターを挿入することによってLTR型トランスポゾンの転位活性を見ることができる系を開発したことによって上記課題の一部を解決した。
本発明は、トランスポゾンを用いて外来遺伝子を効率よく細胞に導入する技術に関する。より詳細には、完全なIAPエレメントおよび機能するプロモーター配列を見出し、それらを組み合わせたことによって、初めてレトロトランスポゾンが機能することを検出することができたことによって解決される。

従って、本発明は、以下を提供する。
(1)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、単離された核酸構築物。
(2)上記LTR型レトロトランスポゾンは、Intracisternal A particle(IAP)型レトロトランスポゾンを含む、項目1に記載の核酸構築物。
(3)上記レトロトランスポゾンは、完全長IAPエレメントを含む、項目1に記載の核酸構築物。
(4)上記レトロトランスポゾンは、コードするポリペプチドが機能性である、項目1に記載の核酸構築物。
(5)上記機能は、転写活性、逆転写活性およびインテグラーゼ活性からなる群より選択される少なくとも1つの活性を含む、項目1に記載の核酸構築物。
(6)上記レトロトランスポゾンは、IAPエレメントであり、LTR、gag、polおよびtRNA結合部位からなる群より選択される少なくとも1つのドメインが配列番号1に対して保存された、項目1に記載の核酸構築物。
(7)上記レトロトランスポゾンは、動物のものである、項目1に記載の核酸構築物。
(8)上記レトロトランスポゾンは、哺乳動物のものである、項目1に記載の核酸構築物。
(9)上記レトロトランスポゾンは、げっ歯類または霊長類のものである、項目1に記載の核酸構築物。
(10)上記レトロトランスポゾンは、マウスのものである、項目1に記載の核酸構築物。
(11)上記レトロトランスポゾンは、、IAPエレメントであり、その核酸配列において、5’側のLTR直下にあるtRNA結合部位において、tccgggacgagaaaaの配列が反復していること、およびR領域のttgcttcttgctctcからなる反復配列を2以上含むことからなる群より選択される少なくとも1つの特徴を有する、項目1に記載の核酸構築物。
(12)上記レトロトランスポゾンは、
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2または3および4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2または3および4に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2または3および4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列にストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含む、項目1に記載の核酸構築物。
(13)上記レトロトランスポゾンをコードする核酸配列は、配列番号1を含む、項目1に記載の核酸構築物。
(14)さらに、プロモーター配列を含む、項目1に記載の核酸構築物。
(15)上記プロモーター配列は、ルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有する、項目14に記載の核酸構築物。
(16)上記プロモーター配列は、CMV、CAおよびその改変体からなる群より選択される、項目14に記載の核酸構築物。
(17)上記プロモーター配列は、上記LTR型レトロトランスポゾンにおける5’LTRの一部と置き換えられる、項目14に記載の核酸構築物。
(18)上記プロモーター配列は、上記LTR型レトロトランスポゾンにおける上記5’LTRのうちU3領域の全部または一部と置き換えられる、項目17に記載の核酸構築物。
(19)上記プロモーター配列は、上記レトロトランスポゾンに作動可能に連結される、項目14に記載の核酸構築物。
(20)上記プロモーター配列は、その転写開始部位が上記レトロトランスポゾンの転写開始部位に一致するよう(インフレーム)に配置される、項目14に記載の核酸構築物。
ここで、上記プロモーター配列は、配列番号5〜7のいずれか1つに示される核酸配列、またはその一部もしくは改変体であり得、好ましくは、配列番号6または7に示される核酸配列からなる。
(21)さらに、外来遺伝子をコードする配列を含む、項目1に記載の核酸構築物。
(22)上記外来遺伝子をコードする配列は、上記レトロトランスポゾン内に配置される、項目21に記載の核酸構築物。
(23)上記外来遺伝子は、識別可能な特性を宿主に付与する、項目21に記載の核酸構築物。
(24)上記識別可能な特性は、抗生物質耐性、栄養補充性、酵素活性および蛍光からなる群より選択される、項目23に記載の核酸構築物。
(25)上記外来遺伝子は、neo、GFP、hyg、puro、zeo、bsr、lait、CFP、YFP、RFP、BFPおよびhrGFPからなる群より選択される、項目21に記載の核酸構築物。
(26)上記外来遺伝子は、転写、逆転写およびゲノムへの挿入の過程を経ることによって初めて発現されるように構成される、項目21に記載の核酸構築物。
(27)上記外来遺伝子は、イントロン配列を含む、項目21に記載の核酸構築物。
(28)上記イントロン配列は、上記レトロトランスポゾンとは同一の転写方向(フォワード)に配置される、項目27に記載の核酸構築物。
(29)上記イントロン配列は、スプライスドナー配列およびスプライスアクセプター配列によって挟まれる、項目27に記載の核酸構築物。
(30)上記核酸構築物は、ゲノムの改変のためのものである、項目1に記載の核酸構築物。
(31)上記核酸構築物は、上記レトロトランスポゾンが転位能力を有するか否かを確認するためのものである、項目15に記載の核酸構築物。
(32)上記核酸構築物は、上記外来遺伝子を転位させるためのものである、項目21に記載の核酸構築物。
(33)上記核酸構築物は、上記外来遺伝子を宿主内に導入するために使用される、項目21に記載の核酸構築物。
(34)上記宿主は、真核生物を含む、項目33に記載の核酸構築物。
(35)上記宿主は、哺乳動物を含む、項目33に記載の核酸構築物。
(36)上記宿主は、げっ歯類または霊長類を含む、項目33に記載の核酸構築物。
(37)上記宿主は、マウスである、項目33に記載の核酸構築物。
(38)項目1〜37のいずれか1項に記載の核酸構築物を含む、ベクター。
(39)項目1〜37のいずれか1項に記載の核酸構築物、およびキャリアを含む、組成物。
(40)項目1〜37のいずれか1項に記載の核酸構築物を含む、細胞。
(41)項目1〜37のいずれか1項に記載の核酸構築物を含む、生物またはその一部。
(42)細胞内のゲノムを改変するための方法であって、
A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物を提供する工程;
B)上記細胞に、上記核酸構築物を導入する工程;
C)上記細胞を所定の期間培養する工程;
D)上記核酸構築物によりゲノムが改変された細胞を選択する工程、
を包含する、方法。
(43)上記核酸構築物は、ルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーターをさらに含み、上記所定の期間は転写、逆転写およびゲノムへの挿入が行われるに十分な期間である、項目42に記載の方法。
(44)上記プロモーター配列は、その転写開始部位が上記レトロトランスポゾンの転写開始部位に一致するよう(インフレーム)に配置される、項目42に記載の方法。
(45)上記核酸構築物は、上記レトロトランスポゾン内に作動可能に配置される外来遺伝子を含み、上記選択は、上記外来遺伝子の発現により行われる、項目42に記載の方法。
(46)上記外来遺伝子は、上記レトロトランスポゾンの転写方向とは逆方向(リバース)に配置され、スプライスドナー配列およびスプライスアクセプター配列ならびにそれらに挟まれシスに配置されるイントロン配列を含み、上記所定の期間は、転写、逆転写およびゲノムへの挿入が行われるに十分な期間であり、上記選択は、上記外来遺伝子の発現により行われる、項目42に記載の方法。
(47)上記外来遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子、栄養補充因子、酵素および蛍光物質からなる群より選択される因子をコードし、上記選択は、上記因子によって発現される上記細胞の特性によって行われる、項目46に記載の方法。
(48)上記LTRレトロトランスポゾンは、IAPエレメントを含む、項目42に記載の方法。
(49)上記LTRレトロトランスポゾンは、完全長IAPエレメントを含む、項目42に記載の方法。
(50)上記選択は、ライゲーション媒介PCRによって転位された配列を確認することによって行われる、項目42に記載の方法。
(51)上記導入は、トランスフェクション、形質転換および形質導入からなる群より選択される形態を含む、項目42に記載の方法。
(52)上記導入は、カチオン性脂質およびポリアミン系試薬からなる群より選択される少なくとも1種の物質の存在下で行われる、項目42に記載の方法。
(53)上記細胞は、真核生物を含む、項目42に記載の方法。
(54)上記細胞は、哺乳動物を含む、項目42に記載の方法。
(55)上記細胞は、げっ歯類または霊長類を含む、項目42に記載の方法。
(56)上記レトロトランスポゾンは、真核生物細胞に由来する、項目42に記載の方法。
(57)上記レトロトランスポゾンは、哺乳動物に由来する、項目42に記載の方法。
(58)上記レトロトランスポゾンは、げっ歯類または霊長類に由来する、項目42に記載の方法。
(59)上記細胞と、上記レトロトランスポゾンの天然の宿主は、同一種である、項目42に記載の方法。
(60)上記細胞と、上記レトロトランスポゾンの天然の宿主は、異種である、項目42に記載の方法。
(61)レトロトランスポゾンの転位活性を検定するための方法であって、
A)検定すべきレトロトランスポゾンをコードする核酸配列、およびルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーター配列を含む核酸構築物を提供する工程;
B)上記細胞に、上記核酸構築物を導入する工程;
C)上記細胞を所定の期間培養する工程;および
D)上記核酸構築物による転位を検出する工程、
を包含する、方法。
(62)上記検出は、ライゲーション媒介PCR工程を包含する、項目61に記載の方法。
(63)上記検出は、ゲノムデータベースとライゲーション媒介PCRによって得られた配列を比較する工程を包含する、項目61に記載の方法。
(64)トランスジェニック生物を作製するための方法であって、
A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物を提供する工程;
B)上記核酸構築物を、所望の生物の生殖細胞に導入する工程;
C)上記生殖細胞においてゲノムが改変された生殖細胞を選択する工程;および
D)ゲノムが改変された上記生殖細胞を用いて生物を再生する工程、
を包含する、方法。
(65)細胞内のゲノムを改変するためのキットであって、
A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物;
B)細胞に核酸構築物を導入するための手段;および
C)核酸構築物によりゲノムが改変された細胞を選択する手段、
を備える、キット。
(66)上記細胞に核酸構築物を導入するための手段は、トランスフェクション試薬を含む、項目65に記載のキット。
(67)上記トランスフェクション試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬およびリン酸カルシウムからなる群より選択される、項目66に記載のキット。
(68)上記トランスフェクション試薬は、カチオン性脂質およびポリアミン系試薬からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む、項目66に記載のキット。
(69)上記選択手段は、PCRプライマー、抗生物質耐性遺伝子に対応する抗生物質、栄養補充因子、酵素基質および蛍光物質に対応する検知手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段を含む、項目65に記載のキット。
(70)レトロトランスポゾンの転位活性を検定するためのキットであって、
A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列、およびルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーター配列を含む核酸構築物;
B)上記細胞に核酸構築物を導入する手段;および
C)上記核酸構築物による転位を検出する手段、
を備える、キット。
(71)上記検出手段は、PCRプライマー、抗生物質耐性遺伝子に対応する抗生物質、栄養補充因子、酵素基質および蛍光物質に対応する検知手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段を含む、項目70に記載のキット。
(72)トランスジェニック生物を作製するためのキットであって、
A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物;
B)上記核酸構築物を所望の生物の生殖細胞に導入する手段;
C)上記生殖細胞においてゲノムが改変された生殖細胞を選択する手段;および
D)ゲノムが改変された上記生殖細胞を用いて生物を再生する手段、
を備える、キット。
(73)上記生物を再生する手段は、仮親となる生物体を含む、項目72に記載のキット。
(74)サイトメガロウイルスエンハンサーおよびトリβアクチンプロモーターを含み、上記サイトメガロウイルスエンハンサーおよび上記トリβアクチンプロモーターの少なくとも一方は、天然の全長配列よりも短い配列を含む、プロモーター。
(75)上記短い配列は、転写開始部位より下流の配列が削られていることに起因する、項目74に記載のプロモーター。
(76)転写開始部位より下流の配列が全部削られている、項目74に記載のプロモーター。
(77)転写開始部位より下流の配列およびプロモーター領域の一部が削られている、項目74に記載のプロモーター。
(78)上記サイトメガロウイルスエンハンサーは、配列番号36またはその改変体に示される配列を含む、項目74に記載のプロモーター。
(79)上記トリβアクチンプロモーターは、配列番号8またはその改変体に示される配列を含む、項目74に記載のプロモーター。
(80)配列番号6に示される配列を含む、項目74に記載のプロモーター。このプロモーターは、好ましくは、配列番号6に示される配列からなる。
(81)配列番号7に示される配列を含む、項目74に記載のプロモーター。このプロモーターは、好ましくは、配列番号7に示される配列からなる。
(82)LTR型レトロトランスポゾンの、ゲノム改変のための、使用。
(83)ルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーターの、ゲノム改変のための、使用。
(84)ルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーターの、LTR型レトロトランスポゾンの確認のための、使用。
従って、本発明のこれらおよび他の利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読みかつ理解すれば、当業者には明白になることが理解される。
本発明は、予想外にも、LTR型レトロトランスポゾンが転位を人為的に促進する系に使用することができた。したがって、このような系を用いて、細胞、生物などのゲノムの改変、遺伝子の導入、トランスジェニックマウスの作製などに応用することができ、その有用性は非常に多大かつ広く存在すると考えられる。本発明はまた、予想外にも、LTR型レトロトランスポゾンの転位活性を容易に検出することができる系を提供することができた。したがって、このような系を用いて、LTR型レトロトランスポゾンの転位活性を確認し、トランスジェニックマウスの作製に使用することができるLTRレトロトランスポゾンを容易に同定することができるという効果を奏する。
図1は、DNA型トランスポゾンとRNA型トランスポゾン(レトロトランスポゾン)の比較を示す。 図2Aは、IAPの構造であり、図2Bは、IAPの生活環を示す。 図3Aは、ベクターの構築を示す。図3Bは、IAPの活性の検定方法を示す。図3Cは、G418耐性コロニーの出現頻度の例を示す。 IAPのプロモーター領域の改変による転位の効率化の模式的例示を示す。(A)実施例1において用いられるベクターの構造。(B)CMVプロモーターとR領域の接合部の配列。(C)転位の検出の原理。(D)NIH3T3細胞へのトランスフェクションによる転位の検出。 本発明において用いられ得るIAPが完全な転位能を有することの証明例およびgag−polの発現ユニットを分離することにより転位を制御できることの証明例である。(A)実施例1で用いた各種ベクターの構造を示す。(B)HeLa細胞へのトランスフェクションによる、各々のベクターの活性の検定。 図6は、IAPベクターが遺伝子内へ挿入した例を示す。(A) 図の3’LTRの下流の塩基配列を、ライゲーション媒介性(ligation−mediated )PCRにより決定した場所。(B)(A)で決定した配列をEnsemblデータベースにより、検索した結果を示す。 図7は、CAプロモーターの効果を示す。(A)2つのCA含有ベクター(pCA1gp−neo、pCA2gp−neo)およびpCMVgp−neoの構造。(B)(A)の2つのCAプロモーターとR領域の接合部の配列。(C)CA1、CA2、CMVプロモーターの比較を示す。 図8は、GFPを用いた、転位の可視化例を示す。(A) ベクターの構造。(B)転位に伴うGFPの発現を示す。 図9はマウス個体での組換えの実施例を示す。図8のpCA2gp−hrGFPを有するトランスジェニックマウスを作製し、マウスの尻尾のDNAを鋳型にして、図のprimerでPCRを行った。IAPの転位が起きると、GFP内部のイントロンが無くなるので、0.45kbのバンドが出現すると予想される。図に示したように、13系統のマウスのうち3系統において0.45kbのバンドが検出され、マウス生体内で転位が起きていることが証明された。 図10は、GAGタンパク質のはじめの15アミノ酸が転位に好ましいことの証明を示す。(A) ベクターの構造。図8で自律的転位を示したpCA2gp−hrGFPに対して、gp− pCA2hrGFP−M1ではgag遺伝子の開始コドンに変異を導入しており、その結果、15アミノ酸下流の2番目のATGから翻訳が始まると考えられる。(B) 転位効率の検討。(A)のベクターを用いて、ここに示す3通りの組み合わせでHeLa細胞へトランスフェクトを行い、7日後にGFP陽性細胞の割合をFACSで解析した。その結果、gag遺伝子の本来の翻訳開始部位のATGに変異を導入したpCA2hrGFP−M1では、転位能が消失した。しかし、同様のベクターを、gag−pol完全長の発現ベクターであるpCA2gpとともにトランスフェクトした際には転位能が回復した。これより、GAGタンパク質の翻訳開始部位からの15アミノ酸が、転位に好ましいことが示された。 図11は、非自律型ベクターの転位において、それ自身からGAGタンパク質が翻訳されることが好ましいことを示す。(A)ベクターの構造。はじめの3つのベクターおよびgag−pol発現ベクターは図10と同じ。pCA2gp−hrGFP−M2とpCA2gp−hrGFP−M3では、gagの2番目のATGの直下に終止コドンを導入しており、GAGタンパク質は短い断片としてしか発現できない。GAGタンパク質に変異のある4つのベクターは、それ自体では転位できないので、非自律型ベクターと定義した。(B)転位効率の検討。(A)のトランスファーベクターを、gag−pol発現ベクター(pCA2gp)の存在下、または非存在下(代わりにpBluescriptを使用)でHeLa細胞へトランスフェクトし、7日後にGFP陽性細胞の出現頻度をFACSで解析した。その結果、GAGタンパク質の翻訳が阻害された3つの非自律型ベクターでは、gag−pol発現ベクターの存在下でも転位が著しく低下した。一方、はじめの15アミノ酸以降で完全長の翻訳の起きるpCA2gp−hrGFP−M1のみはgag−pol発現ベクター存在下で高率に転位を認めた。これより、非自律型ベクターの転位には、それ自身からのgagタンパク質が翻訳されることが好ましいことが示された。
(配列の説明)
配列番号1:実施例において例示的に実際に使用したIAP配列。
配列番号2:IAP配列アミノ酸配列(gag#1)。
配列番号3:IAP配列アミノ酸配列(gag#2)。
配列番号4:IAP配列アミノ酸配列(pol)。
配列番号5:CMVプロモーター配列。
配列番号6:CA1プロモーター配列(R領域がなくさらにプロモーター領域が2塩基欠如するもの)。
配列番号7:CA2プロモーター配列(R領域がないもの)。
配列番号8:トリβアクチンプロモーター配列。
配列番号9:実施例1で使用したIAPエレメントの単離のためのフォワードプライマー配列。
配列番号10:実施例1で使用したIAPエレメントの単離のためのリバースプライマー配列。
配列番号11:実施例1で使用したIAPエレメントの完全長単離のためのフォワードプライマー配列。
配列番号12:実施例1で使用したIAPエレメントの完全長単離のためのリバースプライマー配列。
配列番号13:実施例1(c)で使用したCMVプロモーターに関するフォワードプライマー配列。
配列番号14:実施例1(c)で使用したCMVプロモーターに関するリバースプライマー配列。
配列番号15:実施例1(c)で使用したIAPのR領域に関するフォワードプライマー配列。
配列番号16:実施例1(c)で使用したIAPのR領域に関するリバースプライマー配列。
配列番号17:実施例3で使用したリンカーDNAの接続配列。
配列番号18:実施例3で使用したリンカーDNAの接続配列。
配列番号19:実施例3で使用した1回目のリンカー特異的プライマー(フォワード)。
配列番号20:実施例3で使用した1回目のneoカセット特異的プライマー(リバース)。
配列番号21:実施例3で使用した2回目のリンカー特異的プライマー(フォワード)。
配列番号22:実施例3で使用した2回目のneoカセット特異的プライマー(リバース)。
配列番号23:実施例3で使用した2回目のneoカセット特異的代替プライマー(リバース)。
配列番号24:実施例4で使用したチキン・ベータ−アクチンプロモーター転写開始点までの5’側上流のプライマー。
配列番号25:実施例4で使用したチキン・ベータ−アクチンプロモーターの3’側のプライマー。
配列番号26:実施例4で使用したチキン・ベータ−アクチンプロモーターの3’側のプライマー(代替)。
配列番号27:実施例4で使用したIAPのR領域の5’側末端からU5領域の下流の5’側上流のプライマー。
配列番号28:実施例4で使用したIAPのR領域の5’側末端からU5領域の下流の3’側のプライマー。
配列番号29:実施例4で使用したIAPのR領域の5’側末端からU5領域の下流の3’側のプライマー(代替)。
配列番号30:γグロビン イントロン配列。
配列番号31:全長IAPのtRNA結合部位の配列。
配列番号32:全長IAPのR領域の反復配列。
配列番号33:全長IAPに特異的な配列(tRNA結合部位)。
配列番号34:全長IAPに特異的なタンデム反復配列。
配列番号35:全長IAPにおいて見出されるR領域の反復配列。
配列番号36:サイトメガロウイルスエンハンサー配列。
配列番号37:実施例8において使用した1stプライマーのセンス方向の配列(agggctgcggcaagggcaacatcctgttcg)。
配列番号38:実施例8において使用した1stプライマーのアンチセンス方向の配列(gccgccgtcctccacgtaggtcttctccag)。
配列番号39:実施例8において使用した2ndプライマーのセンス方向の配列(ggcaaccagctggtgcagatccgcgtgacc)。
配列番号40:実施例8において使用した2ndプライマーのアンチセンス方向の配列(gtccttcaccacgcccttgctcttcatcag)。
以下、発明の実施の形態を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など、および他の言語における対応する冠詞、形容詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(用語の定義および説明)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において「トランスポゾン」とは、染色体上のある部位から別の部位に移動(転位)し得る核酸分子または核酸配列をいう。代表的には、トランスポゾンは、DNAセグメント(DNA型トランスポゾン)である。DNA型トランスポゾンは、トランスポザーゼにより活性化されて転位する。トランスポゾンとしては、例えば、SBトランスポゾン(Acc.No.L48685)(配列番号1)、配列番号10〜19に示す配列に含まれるものが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「DNA型」トランスポゾンとは、DNAの転位を行うトランスポゾンをいう。通常のトランスポゾンは、DNA型である。代表的な実施形態では、本発明は、DNA型トランスポゾンを利用して実施される。
本明細書において「レトロポゾン」とは、ゲノム中のある位置におけるDNA配列がいったんRNAに転写され,RNAが逆転写酵素の働きで相補的DNA(cDNA)に逆転写されてゲノム中の他の位置に再挿入される任意のDNAを総称していう。このような現象をレトロポジション(retroposition)とよぶことがある。大きく分けて、レトロポゾンは、逆転写酵素保持群と非逆転写酵素保持群との2群に大別される。
レトロポゾンは、ある分類法では、三つのグループに分けることができる。一つ目のグループは、転位因子の配列が転写された後、自らのコードした逆転写酵素によって逆転写をうけ逆転写された遊離のDNAがゲノムに組み込まれるタイプである。この転位の仕方はエイズなどのレトロウィルスがゲノムに組み込まれる様式と似ておりこのタイプの転位因子はレトロウィルスとの関連が深い。このグループは自らの配列の両末端に長い繰り返し(Long Terminal Repeat)を持っているため、LTR型のレトロポゾンと呼ばれる。このグループはヒトゲノム中で8%、45万コピー程度、存在する。ショウジョウバエのコピア因子(copia element)、マウスのintracisternal A particule(IAP)エレメントなどが挙げられる。LTRをもつものは、さらにenv遺伝子をコードしているものとコードしていないもの(ショウジョウバエのコピア因子(copia element)、マウスのintracisternal A particule(IAP)エレメントなどに細分化される。このような転位活性を有するものを、レトロトランスポゾン(retrotransposon)またはRNA型トランスポゾンといい、その転位の現象をレトロトランスポジション(retrotransposition)とよぶ。
二つ目のグループは一つ目のグループと同様に自らが逆転写酵素をコードしている点は同じであるが、逆転写産物が遊離のDNAとなるのではなく、逆転写とゲノムへの組み込みが平行して行われる点で異なる。これらのグループは歴史的な理由からLINE(Long INtersperesed Element,長い散在性反復配列)と呼ばれる。このグループはヒトゲノム中で20%、90万コピー程度、存在する。例えば、ヒトのL1因子(L1 element)などが挙げられるがそれらに限定されない。
三つ目のグループは前者二つが逆転写酵素を持っているのに対して自らの逆転写酵素を持たない点で大きく異なる。このグループはまた、翻訳産物を持たないばかりではなく転写機構においても、他のレトロポゾンと異なる。逆転写酵素をもったレトロポゾンが一般的なmRNAと同様にRNA polymerase IIによって転写するであろうと予想されているのに対しこのグループ(LINEとは逆に短い散在性反復配列SINEと呼ばれる)はtRNAなどと近く、RNA polymerase IIIによって転写する。このグループはヒトゲノム中で13%、150万コピー程度、存在するとされていてコピー数においては最も多く存在すると考えられる。このような逆転写酵素非保持群は、例えば、RNAポリメラーゼによりタンパク質をコードするDNA配列から転写されたmRNAから逆転写で生じた偽遺伝子、核内低分子RNAの偽遺伝子、RNAポリメラーゼにより転写されるSINE(サイン)と総称されている分散型の短い反復配列などが挙げられる。SINEには,ヒトのゲノム中に存在するAluファミリーや,その他tRNAを起原とする多くの例が知られる。
従って、本明細書において「RNA型トランスポゾン」、または「レトロトランスポゾン」とは、交換可能に用いられ、レトロポゾンのうち、転位活性を有するものをさす。本明細書では、レトロトランスポゾンには、レトロウイルスは含まれないことが意図される。
DNA型トランスポゾンとRNA型トランスポゾン(レトロトランスポゾン)の比較を図1に示す。DNA型トランスポゾンでは、トランスポゾンがゲノムから切り出されて他の部位へ挿入されるので、導入できる変異の数は、転位前のトランスポゾンのコピー数を越えることができない。また、転位前の部位の近傍に転位しやすいという性質も持つ。一方、RNA型では、転写されたRNAが逆転写を介してゲノムへ挿入されるため、導入できる変異の数は転位前のレトロトランスポゾンのコピー数に依存せず、転位もゲノム全体に起きる。このように、レトロトランスポゾンでは、導入される変異の網羅性がより高まる可能性がある。
本明細書において「LTR型」レトロトランスポゾンとは、レトロトランスポゾンのうち、その構造内にLTR(long terminal repeat=末端反復配列)配列を含む。そのようなLTR型レトロトランスポゾンとしては、例えば、IAPエレメント、early transposon(ETn)、virus−like 30S RNA(VL30)エレメントなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「LTR」とは、レトロウイルス、レトロトランスポゾンなどのプロウイルスDNAの両端に繰り返されている百〜1000塩基対からなる配列をいう。LTRは、ウイルス遺伝子の転写、逆転写、宿主DNAへの組込みに関わるU3、RおよびU5の各領域から構成される。プロウイルス5’末端および3’末端にあるIR配列(inverted repeat region=逆方向反復)は4〜20塩基対の長さである。U3には転写のエンハンサー配列およびプロモーター配列が含まれる。
本明細書において「非LTR型」レトロトランスポゾンとは、構造中にLTRを有していないレトロトランスポゾンをいう。非LTR型レトロトランスポゾンとしては、例えば、L1(LINE 1)などが挙げられるがそれらに限定されない。
「intracisternal A particule」または「IAP」は、細胞嚢胞内にあることが電子顕微鏡で見出されたところのA型と分類された粒子として見出された粒子である。
本明細書において「IAP」型レトロトランスポゾン、「IAP DNAエレメント」、「IAP RNAエレメント」、「IAP配列」、「IAPエレメント」、「IAPヌクレオチド配列」は、交換可能に用いられ、IAPに見出されるレトロトランスポゾン活性を持つ分子をいう。ただし、本明細書では、特に言及しない限り、IAPは、IAPエレメントと交換可能に使用され得る。なお、特に言及する場合、遺伝子操作やその考案の際の記述については状況に応じて「IAP配列」と記載する。従って、IAPレトロトランスポゾンは、マウスゲノムに見出されるLTR型レトロトランスポゾンの一種をいう。C3Hマウス由来の放射線誘発骨髄性白血病細胞から見出されたレトロトランスポゾンであり、数百から数千のクローンが存在する。そのようなクローンの例としては、例えば、GenBank番号:AB099818; AB099819; AB099820; AB099821; AB099822; AB099823; AB099824; AB099825; AB099826; AB099827; AB099828; AH012499; Z36947; AB026817; D63766; D63767; AH007468; AF097546; AF097545; U79727; U79726; S80638; M58326; M59201などがあり、当業者はこのような例示的な公知配列などから入手可能な配列情報をもとに適切なクローンを入手することができることが理解される。
IAPの概略を図2に示す。
(A)IAPエレメントの構造。両端にlong terminal repeat(LTR)が有り、その間に、gag遺伝子とpol遺伝子が、異なったreading frameで位置している。レトロウイルスとは異なり、機能的なenv遺伝子は無い。LTRは通常のレトロウイルスと同様に、U3、R、U5領域からなる。5’LTRのU3領域がプロモーターとなり、3’LTRのR領域内の配列がpoly A付加シグナルとして機能する。よって、転写は、5’LTRのR領域の5’側上端から、3’LTRのR領域の3’末端までの、図に示した領域で起きる。5’LTRのU3と3’LTRのU5は転写されないが、逆転写の過程で反対側のLTRからコピーされるため、ゲノムへの挿入後は再び完全長のIAPエレメントが再構築される。
(B)IAPの生活環。(A)で述べた領域が転写されたのち、その一部はGag−Pol産生のためのmRNAとして(1)、残りの転写産物はIAPゲノムRNAとして(2)機能する。Gag−PolとIAPゲノムRNAが組み合わさって、粒子状のIAPが産生される(3)。粒子形成はendoplasmic reticulum(ER)の膜上で起き、産生されたIAPの構造体はER内へ放出される。このIAPの構造体は未知の機構により活性化され、IAP RNAからIAP DNAに逆転写されて(4)、宿主細胞のゲノムDNAへ挿入される(5)。
本明細書においてレトロトランスポゾンに関し、「完全長」とは、少なくともLTR(R領域を含む)、gag、polおよびtRNA結合部位に対応する配列を有していることをいう。特に、IAPエレメントについては、数千あるといわれるクローンのうち完全長のものが従来Mietz,J.A.,et al.,J.Virol.61,3020−3029,1987によって報告されていたが、完全長のものが転位システムにおいて使用することができるか否かについては知られていなかった。また、好ましくは、IAPについて完全長には、GAGタンパク質のはじめの15アミノ酸(配列番号1のうちMet Asn Ser Glu Leu Phe Ser Trp Gly Thr Arg Val Pro Val Ser)を含むことが有利であることが本発明において実証されている。
本明細書においてレトロトランスポゾンに関し、「機能性」を有するとは、転位活性を有することをいう。
本明細書においてレトロトランスポゾンに関し、「コンセンサス配列」とは、機能性を有するに必要な最低限の配列をいう。IAPエレメントについては、コンセンサス配列としては、配列番号1に示す配列のうち、LTR(5’側のLTR領域は、配列番号1の1〜443位;ここで、1位〜225位はU3領域であり、226位〜384位はR領域であり、385位〜443位はU5領域である。3’側のLTR領域は、配列番号1の6876位〜7318位であり、ここで、6876位〜7089位はU3領域であり、7090位〜7259位はR領域であり、7260位〜7318位はU5領域である)、gag(配列番号1の670位〜2427位(gag#1)または2430位〜3203位(gag#2))、pol(配列番号1の3440位〜5854位)およびtRNA結合部位(配列番号1の444位〜463位)からなる群より選択される少なくとも1つのドメインが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「転写活性」とはDNAをRNA(特にmRNA)に転写する活性をいう。
本明細書において「逆転写活性」とはRNAをDNAに転写する活性をいう。従って、転写活性とは、「逆」の方向の活性にあたる。
本明細書において「プロモーター」活性とは、転写を活性化するレベルをいう。プロモーター活性は、本明細書において表現するとき、ルシフェラーゼアッセイ(インビトロの系)において活性を観察したときに、rlu(=相対単位)であらわすことができる。本明細書では、CMVプロモーターの活性を、上記インビトロの系で観察したときに、1rlu(単位)の活性を有すると表現することができる。
本明細書において「サイトメガロウイルス」または「CMV」とは、交換可能に用いられ、ククモウイルスグループに属する多粒子性ウイルスである。3種類のウイルス粒子から構成され、これらは、すべて球状の多面体であり、直径約29nmを有する。ゲノムは3本の一本鎖RNAからなる。キュウリ、トマトをはじめ多数の作物のウイルス病の主要な病原体として世界に広く分布する寄主範囲のきわめて広い植物ウイルスである。サイトメガロウイルスのプロモーターは、サイトメガロウイルスの上述のタンパク質をコードするRNAに存在する転写促進活性を有する配列をいう。CMVプロモーターとしては、例えば、配列番号5に示される配列が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「CAG」プロモーターとは、サイトメガロウイルスエンハンサー(好ましくは、サイトメガロウイルス即時初期エンハンサー)とトリ(chickin)βアクチンプロモーターと関連するイントロン配列を含むプロモーターをいう。CAGプロモーターは、例えば、Kosuga M.et al.,Cell Transplant.2000 Sep−Oct;9(5):675−680に記載されている。代表的なCAGプロモーターとしては、配列番号36および配列番号8を含むものが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「CA」プロモーターとは、CAGプロモーターからイントロン配列およびエキソン配列の一部を除いたものをいい、従来にはなかった型のプロモーターをいう。CAプロモーターから削除され得る配列(イントロン配列が主である)は、例えば、転写開始位置を調節することを目的とする場合に好ましい。CAプロモーターの例としては、例えば、配列番号6(CA1)、配列番号7(CA2)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において、「サイトメガロウイルスエンハンサー」または「CMVエンハンサー」とは、CMVに見出されるエンハンサーをいい、代表例としては例えば、配列番号36のものが挙げられる。このエンハンサーは、一般に、非常に活性が強いとされており、プロモーターと組み合わせて用いられ得る。特に、CAGを構成する要素としても用いられている。
本明細書において「トリβアクチンプロモーター」または「チキンβアクチンプロモーター」とは、交換可能に用いられ、トリ(chicken)のβアクチン遺伝子において見出されるプロモーターをいい、代表例としては、例えば、配列番号8のものが挙げられる。このプロモーターは、一般に、非常に活性が強いとされており、エンハンサーと組み合わせて用いられ得る。特に、CAGを構成する要素としても用いられている。
本明細書において「インフレーム」とは、核酸配列同士の配置の仕方をいい、翻訳または転写の開始位置または翻訳フレームが適合していることをいう。転写位置の場合は、転写開始部位とプロモーター配列とが直接連結されることをいう。
本明細書において「リバース」(reverse)とは、核酸配列同士の配置の仕方をいい、ある遺伝子をコードする核酸配列に対して、別の遺伝子をコードする核酸配列が翻訳または転写の方向が逆方向に配置されていることをいう。リバースに配置されている場合は、通常、あるプロモーターの影響下で1つの核酸配列が転写される場合に他方のリバースに配置された核酸配列は転写されない。
本明細書において「フォワード」(forward)とは、核酸配列同士の配置の仕方をいい、ある遺伝子をコードする核酸配列に対して、別の遺伝子をコードする核酸配列が翻訳または転写の方向が同じ方向に配置されていることをいう。
本明細書において「識別可能な特性」とは、外来遺伝子に関して言及するとき、発現された遺伝子産物が任意の手段(例えば、物理学的手段、化学的手段、生物学的手段、生化学的手段など)を用いてその発現を確認することができる特性をいう。そのような識別可能な特性としては、例えば、抗生物質耐性、酵素活性、蛍光などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「イントロン配列」とは、遺伝子またはその転写物の内部にあって,その遺伝子からつくられる、機能をもつ最終RNA産物に含まれない配列をいう。そのようなイントロン配列は、遺伝子配列において、ゲノムに存在するが、mRNAまたはcDNAに存在しない配列を同定することによって当業者が容易に同定することができる。代表的なイントロン配列としては、例えば、γグロビンのイントロン(配列番号30など)が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「スプライスドナー」とは、遺伝子をコードする核酸配列が転写されてできたRNA分子中のイントロン部分が除去され,それに隣接したエキソンの配列が連結する一連の反応において、スプライスされる配列をアクセプターに授与する配列をいう。スプライスドナー配列は、一定の共通配列が知られており、そのような配列としては、例えば、GTRAGT(Rはプリン)が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「スプライスアクセプター」とは、遺伝子をコードする核酸配列が転写されてできたRNA分子中のイントロン部分が除去され,それに隣接したエキソンの配列が連結する一連の反応において、スプライスされる配列をドナーから受け取る配列をいう。スプライスアクセプター配列は、一定の共通配列が知られており、そのような配列としては、例えば、(Y)NCAG(n>11、Nは任意の塩基)が挙げられるがそれらに限定されない。
スプライスドナーとスプライスアクセプターとは、本発明の外来遺伝子をコードする配列においてイントロン配列を挿入する場合に、挿入位置として選択することが好ましい。
本明細書において「ゲノムの改変」とは、ゲノム中の核酸配列、特に機能する遺伝子を改変することをいう。
本明細書において「転位」(transposition)とは、ゲノムなどの核酸配列上のある部位から他の部位へ一定単位の配列が移転することをいう。
レトロトランスポゾンが完全な転位能力を有するか否かは、例えば、以下のようにして証明することができる。その模式図は図3に示される。
図3Aおよび図3Bを用いて、上記例示的アッセイを説明する。(A)ベクターの構築。種々の培養細胞でIAPの転写が高まるように、IAPのプロモーターである5’LTRのU3をCMVプロモーターで置き換える(1)。また、転写 −逆転写の過程を経ることで初めてneo遺伝子が発現するように、neo遺伝子のcoding領域内にneo遺伝子とは逆向きにイントロンを配置したneoカセットを、IAP内へ挿入する(2)。挿入後のイントロンの向きはIAPと同方向だが、neo遺伝子はIAPに対して逆方向であり、図ではneoカセットの文字を反転させることでこれを示した。SD,スプライスドナー;SA,スプライスアクセプター。(B)IAPの活性の検定方法。IAPベクターを細胞へトランスフェクトすると、転写後のスプライシングによってneo遺伝子内に挿入されたイントロンが切り出されて、neo遺伝子のcoding領域が再構成され、細胞はG418耐性になる。
本明細書において「導入」とは、核酸について言及するとき、核酸分子が細胞内に移されることをいう。
ライゲーション媒介PCR(ligation mediated PCR)とは、特定の配列の周囲のゲノム領域をPCRで増幅する反応をいい、ゲノムDNAを制限酵素で切断後にリンカーDNAを接続し、目的の配列内部に設定したプライマーとリンカー特異的なプライマーでPCRを行うことによって実行することができる。
本発明において、トランスジェニック生物に用いられるレトロトランスポゾンは、内因性のものでも外来性のものでも制限なく使用することができるが、好ましくは外来性レトロトランスポゾンを用いることができる。
レトロトランスポゾンの標的配列としては、任意の配列が挙げられる。
レトロトランスポゾンには、主に自らの転位を触媒できる酵素、レトロトランスポゾンの粒子の構成タンパク質を内部にコードしている自己完結型と、これらを欠損した非自己完結型とがある。本発明において使用することが好ましいのは、自己完結型である。そのような自己完結型は、本発明のシステムによって初めて自己完結型であるかどうかを確認することができる。本発明は、そのような自己完結型であるかどうかを確認するシステムを初めて提供したことによって、ゲノムを改変するためのシステムを提供することができたということが説明可能である。
レトロトランスポゾン配列に挟まれる部分には、様々な核酸配列(例えば、マーカー遺伝子、遺伝子発現調節配列、所望の遺伝子など)を挿入することができ、レトロトランスポゾン配列の他に必要に応じて種々の構成要素を組み合わせたトランスポゾン構築物を構築することができる。本発明において、トランスポゾン構築物または転位の誘発に必要な遺伝子を導入する対象となる細胞には、例えば、生物(好ましくは非ヒト生物)の個体に分化し得るポテンシャルをもつ細胞があり、そのような細胞としては例えば幹細胞または受精卵がある。
本発明のトランスジェニック生物には、レトロトランスポゾンを含む核酸構築物を含む始祖(founder)(第1世代だけでなく、この始祖(founder)を基に確立されるトランスジェニック生物の系統も当然に本発明に包含される。さらに、本発明のトランスジェニック生物系統由来の臓器(器官)、組織、卵、***、および受精卵、トランスジェニック生物の系統から確立される株化細胞、トランスジェニック生物の系統から作出される生物クローン個体もまた本発明の範囲に含まれる。本発明のレトロトランスポゾンを含む核酸構築物は、レトロトランスポゾン配列の他に種々の構成要素を組み合わせて構築され、幹細胞または受精卵等に導入することができる。
DNA型トランスポゾンはトランスポザーゼの存在下でDNA上の第一の位置から第二の位置へと移動できる(これを可動性ともいう)。任意の可動カット−アンド−ペースト型トランスポゾンには2つの基本的な成分があり、それは活性トランスポザーゼの起源と、トランスポザーゼにより認識され、かつ、移動するDNA配列である。DNA配列の移動は認識されたDNA配列の間の介在核酸も移動することを可能にする。
これに対してレトロトランスポゾンは、転写、逆転写およびゲノムへの挿入を通じて、自己の配列を複製して遠いところに挿入することができることから、コピーアンドペースト型の転位ということができる。また、ゲノム改変を行う際においても、標的付近の改変のみならず、ゲノム全体において網羅的あるいは万遍なく改変を挿入することができるという効果をもたらす。従って、効率よいレトロトランスポゾン系を用いたゲノム改変ツールの登場は各種分野において多大な効果および有用性をもたらす。
本明細書において「外来遺伝子」とは、本発明の遺伝子転位によって導入されることが意図される遺伝子またはそれをコードする核酸分子をいう。そのような外来遺伝子は、導入が意図される宿主とは異なる起源のものであっても、その宿主由来であってもよい。また、導入が意図される限り、その外来遺伝子をコードする核酸配列は、どのようなタンパク質をコードするものであってもよい。そのような核酸配列によりコードされるタンパク質はマーカータンパク質、例えば、ネオマイシン耐性付与遺伝子(neo)、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、成長ホルモン(例えば遺伝子導入動物の成長を促進するもの)β−ガラクトシダーゼ(lacZ)、ルシフェラーゼ(LUC)、およびインスリン様増殖因子(IGF)などが挙げられるがそれらに限定されない。
トランスジェニック生物の一の実施形態において、タンパク質は細胞からの単離のための生成物である。バイオリアクターとしてのトランスジェニック生物公知である。タンパク質は、例えば、乳、尿、血液、体液、果実または卵の中で大量に生産され得る。乳、尿、血液、体液、果実または卵の中での発現を促進するプロモーターが知られている。そのようなものとしては、カゼインプロモーター、マウス尿性タンパク質プロモーター、β−グロビンプロモーターおよびオボアルブミンプロモーターが挙げられるがそれらに限定されない。組換タンパク質が細胞内でタンパク質を製造するためのその他の方法を利用して製造されており、本発明は、そのような組み換えタンパク質を製造する工場を生産するツールまたは技術として使用することができる。これらまたはその他のタンパク質をコードする核酸を本発明の核酸フラグメントの中に組込み、そして細胞に導入することができる。細胞のDNAの核酸フラグメントの効率的な組込みは本発明の組成物が存在するときに起きる。細胞が遺伝子導入動物の組織または器官の一部であるとき、大量の組換タンパク質が得られ得る。
(細胞・生物学)
本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する生命体をいう。本明細書において使用される細胞は、本発明の核酸分子を導入することができる限り、どのような由来であっても使用することができ、天然に存在する細胞であっても、人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞、遺伝子改変細胞)であってもよい。細胞の供給源としては、例えば、単一の細胞培養物であり得、あるいは、正常に成長したトランスジェニック動物の胚、血液、または体組織、または正常に成長した細胞株由来の細胞のような細胞混合物が挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、形質転換またはトランスフェクションが容易な細胞が使用される。本発明において使用される細胞は、核酸分子を導入することが容易な細胞であることが好ましい。生殖を目的とする場合は、生殖可能な細胞を用いることが好ましい。あるいは、ES細胞を用いることもできる。
本発明で用いられる細胞は、どの生物由来の細胞(たとえば、任意の種類の単細胞生物(例えば、細菌、酵母)または多細胞生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物)、植物(たとえば、単子葉植物、双子葉植物など)など))でもよい。例えば、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来の細胞が用いられ、より詳細には、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。1つの実施形態では、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞、特にヒト由来の細胞が用いられるがそれに限定されない。本発明において用いられる細胞は、上記細胞は、幹細胞であってもよく体細胞であってもよい。また、そのような細胞は、付着細胞、浮遊細胞、組織形成細胞およびそれらの混合物などであり得る。
本発明において、臓器が対象とされる場合、そのような臓器はどのような臓器でもよく、また本発明が対象とする組織または細胞は、生物のどの臓器または器官に由来するものでもよい。本明細書において「臓器」または「器官」とは、互換可能に用いられ、生物個体のある機能が個体内の特定の部分に局在して営まれ,かつその部分が形態的に独立性をもっている構造体をいう。一般に多細胞生物(例えば、動物、植物)では器官は特定の空間的配置をもついくつかの組織からなり、組織は多数の細胞からなる。そのような臓器または器官としては、血管系に関連する臓器または器官が挙げられる。1つの実施形態では、本発明が対象とする臓器は、皮膚、血管、角膜、腎臓、心臓、肝臓、臍帯、腸、神経、肺、胎盤、膵臓、脳、四肢末梢、網膜などが挙げられるがそれらに限定されない。植物の場合は、「器官」は、カルス、根、茎、幹、葉、花、種子、胚芽、胚、果実、胚乳などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「組織」(tissue)とは、多細胞生物において、実質的に同一の機能および/または形態をもつ細胞集団をいう。通常「組織」は、同じ起源を有するが、異なる起源を持つ細胞集団であっても、同一の機能および/または形態を有するのであれば、組織と呼ばれ得る。従って、本発明の幹細胞を用いて組織を再生する場合、2以上の異なる起源を有する細胞集団が一つの組織を構成し得る。通常、組織は、臓器の一部を構成する。動物の組織は,形態的、機能的または発生的根拠に基づき、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織などに区別される。植物では、構成細胞の発達段階によって***組織と永久組織とに大別され、また構成細胞の種類によって単一組織と複合組織とに分けるなど、いろいろな分類が行われている。
本明細書において「幹細胞」とは、自己複製能を有し、多分化能(すなわち多能性)(「pluripotency」)を有する細胞をいう。幹細胞は通常、組織が傷害を受けたときにその組織を再生することができる。本明細書では幹細胞は、胚性幹(ES)細胞または組織幹細胞(組織性幹細胞、組織特異的幹細胞または体性幹細胞ともいう)であり得るがそれらに限定されない。従って、本発明では、幹細胞を直接使用することができる。
本明細書において「体細胞」とは、卵子、***などの生殖細胞以外の細胞であり、そのDNAを次世代に直接引き渡さない全ての細胞をいう。体細胞は通常、多能性が限定されているかまたは消失している。本明細書において使用される体細胞は、天然に存在するものであってもよく、遺伝子改変されたものであってもよい。
本明細書において「単離された」とは、通常の環境において天然に付随する物質が少なくとも低減されていること、好ましくは実質的に含まないことをいう。従って、単離された生物学的因子(例えば、核酸構築物、細胞など)とは、天然の環境において付随する他の物質(たとえば、他の細胞、タンパク質、核酸など)を実質的に含まない細胞をいう。核酸配列またはアミノ酸配列についていう場合、「単離された」とは、たとえば、組換えDNA技術により作製された場合には細胞物質または培養培地を実質的に含まず、化学合成された場合には前駆体化学物質またはその他の化学物質を実質的に含まない、核酸またはポリペプチドを指す。単離された核酸は、好ましくは、その核酸が由来する生物において天然に該核酸に隣接している(flanking)配列(即ち、該核酸の5’末端および3’末端に位置する配列)を含まない。
本明細書において、「樹立された」または「確立された」細胞とは、特定の性質(例えば、多分化能)を維持し、かつ、細胞が培養条件下で安定に増殖し続けるようになった状態をいう。したがって、樹立された幹細胞は、多分化能を維持する。本発明では、1つの実施形態では、安定した結果を提供することができることから、このような樹立された細胞を用いることが好ましい。
本明細書において「分化(した)細胞」とは、機能および形態が特殊化した細胞(例えば、筋細胞、神経細胞など)をいい、幹細胞とは異なり、多能性はないか、またはほとんどない。分化した細胞としては、例えば、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられる。
本明細書において「生物体」は、生命体として存在し得る1個の個体として存在し得る生物の一形態をいう。従って、植物の場合は、例えば、種子なども含まれ得る。
(生化学・分子生物学)
本明細書において、「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子(たとえば、プロモーター)という。本明細書では、遺伝子は、特に言及しない限り、構造遺伝子および調節遺伝子を包含する。したがって、例えば、レトロトランスポゾン遺伝子というときは、通常、レトロトランスポゾンの構造遺伝子およびレトロトランスポゾンのプロモーターの両方を包含するが、本発明の目的を達成することができる限り、レトロトランスポゾンの構造遺伝子またはその改変体のみをさしてもよい。本明細書において通常、遺伝子とは、調節領域、コード領域、エキソン、イントロンを含む。
本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を指すことがある。本明細書においてはまた、「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現された「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を包含する。当業者であれば、遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができる。したがって、通常、本明細書において、遺伝子は、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含し、またその長さに何ら制限されるものではない。従って、本発明の遺伝子には、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNA、およびcDNAを含む1本鎖DNA(センス鎖)、ならびにそのセンス鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(アンチセンス鎖)、およびそれらのフラグメントのいずれもが含まれる。
本明細書において配列(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、配列(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて同一性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、同一性と類似性とは同じ数値を示す。
本明細書では、特に言及しない限り、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTにおいてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.9 (2004.5.12 発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)を包含する。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。タンパク質の遺伝子産物は、通常ポリペプチド形態をとるが、同様の機能を有する限り、ポリペプチドの改変体であってもよい。特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、そのフラグメント、同族体、誘導体、改変体を含む。
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸分子」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。タンパク質などをコードする遺伝子は、通常、このポリヌクレオチド形態をとる。
本明細書において「ヌクレオチド」は、糖部分がリン酸エステルになっているヌクレオシドをいい、DNA、RNAなどを含み、天然のものでも非天然のものでもよい。ここで、ヌクレオシドは、塩基と糖とがN−グリコシド結合をした化合物をいう。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。DNAは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAを含む。
1つの実施形態において、改変体は、天然に存在する対立遺伝子変異体、天然に存在しない変異体、欠失、置換、付加、および/または挿入がなされた変異体;コードされるポリペプチドの機能を実質的に変更しないポリヌクレオチド配列を意味し得る。
1つの実施形態において、これらアミノ酸配列の改変(変異等)は、天然において、例えば変異、翻訳後の修飾等により生じることもあるが、天然由来の遺伝子(例えば本発明の具体例遺伝子)を利用して人為的にこれを行なうこともできる。
1つの実施形態において、上記ポリペプチドは、対立遺伝子変異体、ホモログ、天然の変異体で少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを含む。
本明細書において、「対応する」アミノ酸または核酸とは、それぞれあるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、あるいは有することが予測されるアミノ酸または核酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、あるトランスポゾン配列であれば、そのトランスポゾン配列の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。
本明細書において、「対応する」遺伝子(例えば、核酸分子、ポリペプチドなど)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログあるいは種相同体であり得る。したがって、マウストランスポゾン、マウストランスポザーゼなどに対応する遺伝子は、他の動物においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、マウストランスポゾン、マウストランスポザーゼなど)の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばヒト、ラット、イヌ、ネコ)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。このような対応する遺伝子は、ゲノムデータベースを利用すれば、当業者は容易に得ることができる。そのようなゲノム配列の入手方法は、当該分野において周知であり、本明細書において他の場所に記載される。本発明では、このような検索によって得られた配列も利用可能である。
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能(例えば、マウスIAPなどの機能)を有する限り、上限または加減としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本発明では、マウスレトロトランスポゾンなどとして機能する、すなわち、転位活性(インテグラーゼ(integrase=ゲノムへの挿入活性酵素)活性、転写活性および逆転写活性)を有する限り、どのようなフラグメントであっても使用可能であることが理解される。インテグラーゼとは、溶原化ファージやウイルスが宿主に感染したときに示す,ゲノムDNAを宿主の染色体DNAに組み込む反応(integration)を触媒する酵素をいい、代表的なものにラムダファージのIntタンパク質(φ80,P1,P2,P4,P22,186などのIntが同グループ)とレトロウイルスのINタンパク質などが挙げられる。プロファージの組み込み、またはバクテリアの染色体からの切り出しの促進を観察することによって、その活性を測定することができる。
本明細書において使用される用語「生体分子」とは、生体に関連する分子をいう。
本明細書において「生体」とは、生物学的な有機体をいい、動物、植物、菌類、ウイルスなどを含むがそれらに限定されない。従って、本明細書では生体分子は、生体から抽出される分子を包含するが、それに限定されず、生体に影響を与え得る分子であれば生体分子の定義に入る。したがって、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(たとえば、低分子リガンドなど)もまた生体への効果が意図され得るかぎり、生体分子の定義に入る。そのような生体分子には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカライド、オリゴサッカライド、脂質、低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子など)、これらの複合分子(糖脂質、糖タンパク質、リポタンパク質など)などが包含されるがそれらに限定されない。生体分子にはまた、細胞への導入が企図される限り、細胞自体、組織の一部も包含され得る。通常、生体分子は、核酸、タンパク質、脂質、糖、プロテオリピッド、リポプロテイン、糖タンパク質およびプロテオグリカンなどであり得る。好ましくは、生体分子は、核酸(DNAまたはRNA)またはタンパク質を含む。別の好ましい実施形態では、生体分子は、核酸(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA、あるいはPCRなどによって合成されたDNA)である。他の好ましい実施形態では、生体分子はタンパク質であり得る。好ましくは、そのような生体分子は、ホルモンまたはサイトカインであり得る。
本明細書において「化学合成物」とは、通常の化学技術を用いて合成され得るすべての物質をいう。従って、化学合成物は、化学物質の範囲内にある。実質的には化学物質は、ほぼすべて合成することができる。そのような合成技術は、当該分野において周知であり、当業者は、適宜そのような技術を組み合わせて化学合成物を製造することができる。
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転位活性)を発揮する活性が包含される。ある因子がアンチセンス分子である場合、その生物学的活性は、対象となる核酸分子への結合、それによる発現抑制などを包含する。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドまたはレセプターである場合、そのリガンドまたはレセプターがそれぞれ対応するレセプターまたはリガンドへの結合が生物学的活性に包含される。その生物学的活性が転写調節活性である場合は、転写レベルまたはその変動を調節する活性をいう。例えば、ある因子がレトロトランスポゾンであるとき、その生物学的活性としては、転写活性、逆転写活性、転位活性およびインテグラーゼ活性などが挙げられる。転位活性を測定する例は、例えば、実施例に記載されるような技術が挙げられ、そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって決定することができる。そのような活性測定アッセイの例示としては、例えば、イントロンで分断されたneo遺伝子が転位反応の過程で再構築されて、細胞がG418に対する耐性を獲得することなどが挙げられる。
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1−38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
本明細書において「プローブ」とは、インビトロおよび/またはインビボなどのスクリーニングなどの生物学的実験において用いられる、検索の対象となる物質をいい、例えば、特定の塩基配列を含む核酸分子または特定のアミノ酸配列を含むペプチドなどが挙げられるがそれに限定されない。
通常プローブとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相同なまたは相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましく10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは11の連続するヌクレオチド長の、12の連続するヌクレオチド長の、13の連続するヌクレオチド長の、14の連続するヌクレオチド長の、15の連続するヌクレオチド長の、20の連続するヌクレオチド長の、25の連続するヌクレオチド長の、30の連続するヌクレオチド長の、40の連続するヌクレオチド長の、50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、90%相同な、95%相同な核酸配列が含まれる。
本明細書において、「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195−197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよび in situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本発明では、このような検索によって同定されたレトロトランスポゾン(例えば、IAP)配列などもまた、使用され得る。
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England),Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSOまたはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ***DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015M ナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015M ナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
約20ヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1M NaClにおける融解温度の適切な概算は、
Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)
によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、Developmental Biology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
レトロトランスポゾン(例えば、IAPエレメント、特に完全長のIAPエレメント)またはその改変体もしくはフラグメントなどのタンパク質をコードする天然の核酸および本発明のプロモータ配列は、例えば、配列番号1、6、7などの核酸配列の一部またはその改変体を含むPCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを有するcDNAライブラリーから容易に分離される。好ましいレトロトランスポザーゼまたはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸は、本質的に1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO);1mM EDTA;42℃の温度で 7% SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に2×SSC(600mM NaCl;60mM クエン酸ナトリウム);50℃の0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、さらに好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA; 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に50℃の1×SSC(300mM NaCl;30mM クエン酸ナトリウム);1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、最も好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);200mM リン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に65℃の0.5×SSC(150mM NaCl;15mM クエン酸ナトリウム);0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下に配列番号1などに示される核酸配列の1つまたはその一部とハイブリダイズし得る。
本明細書において「プローブ」とは、インビトロおよび/またはインビボなどのスクリーニングなどの生物学的実験において用いられる、検索の対象となる物質をいい、例えば、特定の塩基配列を含む核酸分子または特定のアミノ酸配列を含むペプチドなどが挙げられるがそれに限定されない。
通常プローブとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相同なまたは相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましくは少なくとも10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは少なくとも11の連続するヌクレオチド長の、少なくとも12の連続するヌクレオチド長の、少なくとも13の連続するヌクレオチド長の、少なくとも14の連続するヌクレオチド長の、少なくとも15の連続するヌクレオチド長の、少なくとも20の連続するヌクレオチド長の、少なくとも25の連続するヌクレオチド長の、少なくとも30の連続するヌクレオチド長の、少なくとも40の連続するヌクレオチド長の、少なくとも50の連続するヌクレオチド長の、少なくとも核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、少なくとも90%相同な、少なくとも95%相同な核酸配列が含まれる。このようなプローブを用いて本発明において使用され得るトランスポゾンを得ることができる。
本明細書における「プライマー」とは、高分子合成酵素反応において、合成される高分子化合物の反応の開始に必要な物質をいう。核酸分子の合成反応では、合成されるべき高分子化合物の一部の配列に相補的な核酸分子(例えば、DNAまたはRNAなど)が用いられ得る。
遺伝子工学分野において通常プライマーとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましく10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは11の連続するヌクレオチド長の、12の連続するヌクレオチド長の、13の連続するヌクレオチド長の、14の連続するヌクレオチド長の、15の連続するヌクレオチド長の、16の連続するヌクレオチド長の、17の連続するヌクレオチド長の、18の連続するヌクレオチド長の、19の連続するヌクレオチド長の、20の連続するヌクレオチド長の、25の連続するヌクレオチド長の、30の連続するヌクレオチド長の、40の連続するヌクレオチド長の、50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、90%相同な、95%相同な核酸配列が含まれる。プライマーとして適切な配列は、合成(増幅)が意図される配列の性質によって変動し得るが、当業者は、意図される配列に応じて適宜プライマーを設計することができる。そのようなプライマーの設計は当該分野において周知であり、手動でおこなってもよくコンピュータプログラム(例えば、LASERGENE,PrimerSelect,DNAStar)を用いて行ってもよい。このようなプライマーを用いて本発明に用いるトランスポゾンを作製することができる。
本明細書において、「エピトープ」とは、抗原決定基を意味する。従って、エピトープには特定の免疫グロブリンによる認識に関与するアミノ酸残基のセット、または、T細胞の場合は、T細胞レセプタータンパク質および/もしくは主要組織適合性複合体(MHC)レセプターによる認識について必要であるアミノ酸残基のセットが包含される。この用語はまた、「抗原決定基」または「抗原決定部位」と交換可能に使用される。免疫系分野において、インビボまたはインビトロで、エピトープは、分子の特徴(例えば、一次ペプチド構造、二次ペプチド構造または三次ペプチド構造および電荷)であり、免疫グロブリン、T細胞レセプターまたはHLA分子によって認識される部位を形成する。ペプチドを含むエピトープは、エピトープに独特な空間的コンフォメーション中に3つ以上のアミノ酸を含み得る。一般に、エピトープは、少なくとも5つのこのようなアミノ酸からなり、代表的には少なくとも6つ、7つ、8つ、9つ、または10のこのようなアミノ酸からなる。エピトープの長さは、より長いほど、もとのペプチドの抗原性に類似することから一般的に好ましいが、コンフォメーションを考慮すると、必ずしもそうでないことがある。アミノ酸の空間的コンフォメーションを決定する方法は、当該分野で公知であり、例えば、X線結晶学、および2次元核磁気共鳴分光法を含む。さらに、所定のタンパク質におけるエピトープの同定は、当該分野で周知の技術を使用して容易に達成される。例えば、Geysenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998(1984)(所定の抗原における免疫原性エピトープの位置を決定するために迅速にペプチドを合成する一般的な方法);米国特許第4,708,871号(抗原のエピトープを同定し、そして化学的に合成するための手順);およびGeysen et al.,Molecular Immunology 23:709(1986)(所定の抗体に対して高い親和性を有するペプチドを同定するための技術)を参照されたい。同じエピトープを認識する抗体は、単純な免疫アッセイにおいて同定され得る。このように、ペプチドを含むエピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。
従って、ペプチドを含むエピトープとして使用するためには、少なくとも3アミノ酸の長さの配列が必要であり、好ましくは、この配列は、少なくとも4アミノ酸、より好ましくは5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸の長さの配列が必要であり得る。エピトープは、市販のキット(例えば、PepSetTM(クラボウ))を用いて当業者が容易に決定することができる。本発明では、あるシグナル伝達において役割を果たすタンパク質のエピトープを提示することによって、シグナル伝達を測定する系を利用してもよい。
本明細書においてある核酸分子またはポリペプチドに「特異的に結合する因子」とは、その核酸分子またはポリペプチドに対するその因子の結合レベルが、その核酸分子またはポリペプチド以外の核酸分子またはポリペプチドに対するその因子の結合レベルと同じかまたはそれよりも高い因子をいう。そのような因子としては、例えば、対象が核酸分子の場合、対象となる核酸分子に対して相補的な配列を有する核酸分子、対象となる核酸配列に対して結合するポリペプチド(例えば、転写因子など)などが挙げられ、対象がポリペプチドの場合、抗体、単鎖抗体、レセプター−リガンドの対のいずれか一方、酵素−基質のいずれか一方などが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、このような特異的に結合する因子(例えば、カルシウムに特異的に結合する因子、特定の遺伝子産物に対する抗体など)は、シグナル伝達を測定する際に利用され得る。
本明細書において「因子」(agent)としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書中で使用される「化合物」は、任意の識別可能な化学物質または分子を意味し、これらには、低分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチド、または核酸が挙げられるが、これらに限定されず、そしてこのような化合物は、天然物または合成物であり得る。
本明細書において「有機低分子」とは、有機分子であって、比較的分子量が小さなものをいう。通常有機低分子は、分子量が約1000以下のものをいうが、それ以上のものであってもよい。有機低分子は、通常当該分野において公知の方法を用いるかそれらを組み合わせて合成することができる。そのような有機低分子は、生物に生産させてもよい。有機低分子としては、例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書中で使用される「接触(させる)」とは、化合物を、直接的または間接的のいずれかで、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して物理的に近接させることを意味する。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、多くの緩衝液、塩、溶液などに存在し得る。接触とは、核酸分子またはそのフラグメントをコードするポリペプチドを含む、例えば、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ(例えば、遺伝子チップ)などに化合物を置くことが挙げられる。
(ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの改変)
本発明では、レトロトランスポゾン(例えば、IAPエレメント)などの機能的ポリペプチドを使用する場合、同様の機能(転位活性など)が達成することができる限り、その改変体を使用してもよい。
ここで、あるタンパク質分子において、配列に含まれるあるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。
親水性指数もまたアミノ酸配列の改変の際に考慮することができる。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
例えば、下記のRNAコドン(それ故、対応のDNAコドンではTがUに置き代わる)が各特定のアミノ酸をコードするのに交換可能に利用できることが当業界において周知である:フェニルアラニン(PheまたはF)UUUまたはUUCロイシン(LeuまたはL)UUA,UUG,CUU,CUC,CUAまたはCUGイソロイシン(IleまたはI)AUU,AUCまたはAUAメチオニン(MetまたはM)AUGバリン(ValまたはV)GUU,GUC,GUA,GUGセリン(SerまたはS)UCU,UCC,UCA,UCG,AGU,AGCプロリン(ProまたはP)CCU,CCC,CCA,CCGスレオニン(ThrまたはT)ACU,ACC,ACA,ACGアラニン(AlaまたはA)GCU,GCG,GCA,GCCチロシン(TyrまたはY)UAUまたはUACヒスチジン(HisまたはH)CAUまたはCACグルタミン(GlnまたはQ)CAAまたはCAGアスパラギン(AsnまたはN)AAUまたはAACリジン(LysまたはK)AAAまたはAAGアスパラギン酸(AspまたはD)GAUまたはGACグルタミン酸(GluまたはE)GAAまたはGAGシステイン(CysまたはC)UGUまたはUGCアルギニン(ArgまたはR)CGU,CGC,CGA,CGG,AGA,AGCグリシン(GlyまたはG)GGUまたはGGCまたはGGAまたはGGG終止コドン UAA,UAGまたはUGA さらに、特定のDNA配列を修飾して特定の細胞タイプは好適なコドンを採用することができる。例えば、E.coliのための好適なコドン用法は、動物およびヒトにとっての好適なコドン用法と同じように公知である。このような変更は当業者に周知であり、本発明の一部を構成する。
このようにして作製した改変体(たとえば、レトロトランスポゾン)もまた、本発明の範囲内にあり、任意のそのような改変体が本発明において利用され得る。
(抗原・抗体)
本明細書において用いられる用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらの断片、例えばF(ab’)およびFabフラグメント、ならびにその他の組換えにより生産された結合体を含む。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてよい。
本明細書中で使用される用語「モノクローナル抗体」は、同質な抗体集団を有する抗体組成物をいう。この用語は、それが作製される様式によって限定されない。この用語は、全免疫グロブリン分子ならびにFab分子、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、およびもとのモノクローナル抗体分子の免疫学的結合特性を示す他の分子を含む。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製する方法は当該分野で公知であり、そして以下でより十分に記載される。
モノクローナル抗体は、当該分野で周知の標準的な技術(例えば、KohlerおよびMilstein,Nature 256:495(1975))またはその改変(例えば、Buckら、In Vitro 18:377(1982))を使用して調製される。代表的には、マウスまたはラットを、タンパク質キャリアに結合したタンパク質で免疫化し、追加免疫し、そして脾臓(および必要に応じていくつかの大きなリンパ節)を取り出し、そして単一細胞を解離する。必要に応じて、この脾臓細胞は、非特異的接着細胞の除去後、抗原でコーティングされたプレートまたはウェルに細胞懸濁液を適用することにより、スクリーニングされ得る。抗原に特異的なイムノグロブリンを発現するB細胞がプレートに結合し、そして懸濁液の残渣でもリンス除去されない。次いで、得られたB細胞(すなわちすべての剥離した脾臓細胞)をミエローマ細胞と融合させて、ハイブリドーマを得、このハイブリドーマを用いてモノクローナル抗体を産生させることができる。
本明細書において「抗原」(antigen)とは、抗体分子によって特異的に結合され得る任意の基質をいう。本明細書において「免疫原」(immunogen)とは、抗原特異的免疫応答を生じるリンパ球活性化を開始し得る抗原をいう。したがって、種々のタンパク質および遺伝子産物は、抗原または免疫原として使用され、抗原抗体反応を利用して本発明のゲノム改変産物の選択に利用することができる。
(遺伝子操作)
本明細書において、「核酸構築物」または「遺伝子カセット」とは、交換可能に用いられ、遺伝子をコードする核酸分子(例えば、DNA、RNA)と、これに必要に応じて作動可能に(すなわち、その核酸の発現を制御し得るように)連結された制御配列(例えば、プロモーター)とを含む核酸配列、ならびに、必要に応じて制御配列(例えば、プロモーター)と、これに作動可能に(すなわち、インフレームに)連結された異種遺伝子とを含む核酸分子をいう。このカセットまたは構築物は、必要に応じて他の調節エレメントと組み合わせて使用することもまた、本発明の範囲に含まれる。好ましい発現カセットは、特定の制限酵素で切断され、容易に回収され得る遺伝子カセットまたは核酸構築物である。
本明細書において遺伝子操作について言及する場合、「ベクター」または「組み換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などの宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチプルクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrookら、前出)に記載されている。
本明細書において「発現ベクター」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
原核細胞に対する組換えベクターとしては、pcDNA3(+)、pBluescript−SK(+/−)、pGEM−T、pEF−BOS、pEGFP、pHAT、pUC18、pFT−DESTTM42GATEWAY(Invitrogen)などが例示される。
動物細胞に対する組換えベクターとしては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107[特開平3−229(Invitrogen)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAMo、pAMoA[J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)]、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus)(MSCV)に基づいたレトロウイルス型発現ベクター、pEF−BOS、pEGFPなどが例示される。
植物細胞に対する組換えベクターとしては、pPCVICEn4HPT、pCGN1548、pCGN1549、pBI221、pBI121などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「ターミネーター」とは、通常遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列をいう。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。
本明細書において「プロモーター」(またはプロモーター配列)とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、通常RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。したがって、本明細書においてある遺伝子のプロモーターの働きを有する部分を「プロモーター部分」という。プロモーターの領域は、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモーター領域を推定することができる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。
本明細書において「エンハンサー」とは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられる配列をいう。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
本明細書において「サイレンサー」とは、遺伝子発現を抑制し静止する機能を有する配列をいう。本発明では、サイレンサーとしてはその機能を有する限り、どのようなものを用いてもよく、サイレンサーを用いなくてもよい。
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。ただし、IAPでは、好ましくは、直接隣接して配置されることが有利である場合がある。
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。 そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)、リポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法が挙げられる。
本明細書において「遺伝子導入試薬」とは、核酸(通常遺伝子をコードするが、それに限定されない)の導入方法において、導入効率を促進するために用いられる試薬をいう。そのような遺伝子導入試薬としては、例えば、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬、リン酸カルシウムなどが挙げられるがそれらに限定されない。トランスフェクションの際に利用される試薬の具体例としては、種々なソースから市販されている試薬が挙げられ、例えば、Effectene Transfection Reagent(cat.no.301425,Qiagen,CA),TransFastTM Transfection Reagent(E2431,Promega,WI),TfxTM−20 Reagent(E2391,Promega,WI),SuperFect Transfection Reagent(301305,Qiagen,CA),PolyFect Transfection Reagent(301105,Qiagen,CA),LipofectAMINE 2000 Reagent(11668−019,Invitrogen corporation,CA),JetPEI(×4)conc.(101−30,Polyplus−transfection,France)およびExGen 500(R0511,Fermentas Inc.,MD)などが挙げられるがそれらに限定されない。本発明においては、本発明の核酸分子を細胞に導入する際にこのような遺伝子導入試薬が使用され得る。
遺伝子導入効率は、単位面積(例えば、1mmなど)あたりの導入外来物質(導入遺伝子)(例えば、レポーター遺伝子の産物、蛍光タンパク質GFPなど)の導入(発現)細胞数、または総信号(蛍光タンパク質の場合は、蛍光)量を測定することによって算定することができる。
本明細書において「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部(組織など)をいう。形質転換体としては、原核生物、酵母、動物、植物、昆虫などの細胞などの生命体の全部または一部(組織など)が例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。本発明において用いられる細胞は、形質転換体であってもよい。
本発明において遺伝子操作などにおいて原核生物細胞が使用される場合、原核生物細胞としては、Escherichia属、Serratia属、Bacillus属、Brevibacterium属、Corynebacterium属、Microbacterium属、Pseudomonas属などに属する原核生物細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1が例示される。あるいは、本発明では、天然物から分離した細胞も使用することができる。
本明細書において遺伝子操作などにおいて使用され得る動物細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、ヒト白血病細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ヒト結腸癌細胞株などを挙げることができる。マウス・ミエローマ細胞としては、ps20、NSOなど、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0など、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC:CRL−1573)など、ヒト白血病細胞としてはBALL−1など、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7、ヒト結腸癌細胞株としてはHCT−15、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH、SK−N−SH−5Y、マウス神経芽細胞腫Neuro2Aなどが例示される。あるいは、本発明では、初代培養細胞も使用することができる。
本明細書において遺伝子操作などにおいて使用され得る植物細胞としては、カルスまたはその一部および懸濁培養細胞、ナス科、イネ科、アブラナ科、バラ科、マメ科、ウリ科、シソ科、ユリ科、アカザ科、セリ科などの植物の細胞が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど遺伝子産物の「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一形態であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
本明細書において「発現量」とは、目的の細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
従って、本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」または「発現量」の「減少」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に減少することをいう。好ましくは、発現の減少は、ポリペプチドの発現量の減少を含む。本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」または「発現量」の「増加」とは、細胞内に遺伝子発現に関連する因子(例えば、発現されるべき遺伝子またはそれを調節する因子)を導入したときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に増加することをいう。好ましくは、発現の増加は、ポリペプチドの発現量の増加を含む。本明細書において遺伝子の「発現」の「誘導」とは、ある細胞にある因子を作用させてその遺伝子の発現量を増加させることをいう。したがって、発現の誘導は、まったくその遺伝子の発現が見られなかった場合にその遺伝子が発現するようにすること、およびすでにその遺伝子の発現が見られていた場合にその遺伝子の発現が増大することを包含する。
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。本発明によって生物または細胞に導入される遺伝子は、特異的に発現するように改変されていてもよい。
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含される。例えば、コラーゲンがそのリガンドと相互作用する場合、その生物学的活性は、結合体の形成または他の生物学的変化を包含する。別の好ましい実施形態では、そのような生物学的活性は、遺伝子転位活性などであり得る。遺伝子転位活性は、その目的とする遺伝子をコードする配列の移動を任意の方法によって確認することによって判定され得る。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる(Molecular Cloning、Current Protocols(本明細書において引用)などを参照)。
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、試薬、粒子など)が提供されるユニットをいう。混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、試薬、粒子など)をどのように処理すべきかを記載する説明書を備えていることが有利である。このような説明書は、どのような媒体であってもよく、例えば、そのような媒体としては、紙媒体、伝送媒体、記録媒体などが挙げられるがそれらに限定されない。伝送媒体としては、例えば、インターネット、イントラネット、エクストラネット、LANなどが挙げられるがそれらに限定されない。記録媒体としては、CD−ROM、CD−R、フレキシブルディスク、DVD−ROM、MD、ミニディスク、MO、メモリースティックなどが挙げられるがそれらに限定されない。
(トランスジェニック生物)
トランスジェニックマウスを作製するための一般的な技術は、国際公開WO0l/13150(Ludwig Inst.Cancer Res.)に記載されている。米国特許第4,873,19l号(Wagner et a1.)は、哺乳動物接合体へのDNAのマイクロインジェクションによって得られた、外因性DNAを有する哺乳動物を教示している。さらに転位性遺伝因子(トランスポゾン)を内因性DNAに挿入あるいはさらに転位させることで、該DNAの構造変化を起こしてこれを不活性化させ、動植物等の変異体を効率的に作出する方法が研究されてきている。トランスポゾンを利用した、染色体への特定遺伝子の導入・付加等が可能となってきている。これらの技術は、基本的にレトロトランスポゾンにおいても使用することができる。
このほかにもまた、トランスジェニック生物を作り出すための様々な方法は、例えば、M.Markkulaら、Rev.Reprod.,1,97−106(1996);R.T.WallらJ.Dairy Sci.,80,2213−2224(1997);J.C.Dalton、ら、Adv.Exp.Med.Biol.,411,419−428(1997);およびH.Lubonら、Transfus.Med.Rev.,10,131−143(1996)などが挙げられるがそれらに限定されない。これらの文献の各々は、本明細書において参考として援用される。
そのような中、最近10年間ほどで、遺伝子機能の解析を目的として、胚性幹(ES)細胞の相同組換えを介したトランスジェニック(ノックアウト、ノックインを含む)動物の解析が重要な手段となってきている。
高等生物では、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子を用いる陽性選択およびHSVのチミジンキナーゼ遺伝子またはジフテリア毒素遺伝子を用いる陰性選択により組換え体の効率的な選別が行われている。PCRまたはサザンブロット法により相同組換え体の選択が行われる。すなわち、標的遺伝子の一部を陽性選択用のネオマイシン耐性遺伝子等で置換し、その末端に陰性選択用のHSVTK遺伝子等を連結したターゲティングベクターを作成し、エレクトロポレーションによりES細胞に導入し、G418およびガンシクロビルの存在下で選択して、生じたコロニーを単離し、さらにPCRまたはサザンブロットにより相同組換え体を選択する。
このように、内在する標的遺伝子を置換または破壊して、機能が喪失したかまたは変更された変異を有するトランスジェニック(標的遺伝子組換え)マウスを作製する方法は、標的とした遺伝子だけに変異が導入されるので、その遺伝子機能の解析に有用である。
所望の相同組換え体を選択した後、得られた組換えES細胞を胚盤注入法または集合キメラ法により正常な胚と混合してES細胞と宿主胚とのキメラマウスを作製する。胚盤注入法では、ES細胞を胚盤胞にガラスピペットで注入する。集合キメラ法では、ES細胞の塊と透明帯を除去した8細胞期の胚とを接着させる。ES細胞を導入した胚盤胞を偽妊娠させた代理母の子宮に移植してキメラマウスを得る。ES細胞は、全能性を有するので、生体内では、生殖細胞を含め、あらゆる種類の細胞に分化することができる。ES細胞由来の生殖細胞を有するキメラマウスと正常マウスを交配させるとES細胞の染色体をヘテロに有するマウスが得られ、このマウス同士を交配するとES細胞の改変染色体をホモに有するトランスジェニックマウスが得られる。得られたキメラマウスから改変染色体をホモに有するトランスジェニックマウスを得るには、雄性キメラマウスと雌性野生型マウスとを交配して、F1世代のヘテロ接合体マウスを産出させ、生まれた雄性および雌性のヘテロ接合体マウスを交配して、F2世代のホモ接合体マウスを選択する。F1およびF2の各世代において所望の遺伝子変異が導入されているか否かは、組換えES細胞のアッセイと同様に、サザンブロッティング、PCR、塩基配列の解読など当該分野において慣用される方法を用いて分析され得る。
しかし、現在行われているトランスジェニック動物の作製技術では、多様な遺伝子機能を選択的に解析することが困難であるという欠点を有する。また容易にトランスジェニック生物を作製できないという欠点も存在する。
また、現行のトランスジェニック動物の作製は、目的の遺伝子を同定した後に、上述のようにその目的の遺伝子を一から置換または破壊および置換することが必要であり、非常に労力および時間がかかる上、熟練した研究者でも必ずうまくいくとは限らない。従って、未だに労働集約的な作業を要する仕事である。
そのため、多様な遺伝子機能を選択的に解析することができないという問題を克服する次世代技術として、Creレコンビナーゼの細胞種特異的発現とCre−loxPの部位特異的組み換えを併用する技術が注目されている。Cre−loxPを用いるトランスジェニックマウスは、標的遺伝子の発現を阻害しない位置にネオマイシン耐性遺伝子を導入し、後に削除するエキソンをはさむようにしてloxP配列を挿入したターゲティングベクターをES細胞に導入し、その後相同組換え体を単離する。この単離したクローンからキメラマウスを得、遺伝子改変マウスが作製される。次に、大腸菌のP1ファージ由来の部位特異的組換え酵素Creを組織特異的に発現するトランスジェニックマウスとこのマウスを交配させると、Creを発現する組織中でのみ遺伝子が破壊される(ここでは、Creは、loxP配列(34bp)を特異的に認識して、2つのloxP配列にはさまれた配列で組換えを起こさせ、これが破壊される)。臓器特異的なプロモータに連結したCre遺伝子を有するトランスジェニックマウスと交配させるか、またはCre遺伝子を有するウイルスベクターを使用して、成体でCreを発現させることができる。
特定の遺伝子を解析する方法としてジーントラップ(遺伝子トラップ)法が注目されている。ジーントラップ法では、プロモータを有しないレポーター遺伝子が細胞に導入され、その遺伝子が偶発的にゲノム上に挿入されると、レポーター遺伝子が発現することを利用して、新規な遺伝子を単離(トラップ)される。ジーントラップ法は、マウス初期胚操作法,胚性幹細胞培養法,相同組換えによる遺伝子ターゲティング法に基づく、効率的な挿入変異と未知遺伝子同定のための方法である(Stanford WL.,et al.,Nature Genetics 2:756−768(2001))。ジーントラップ法では、遺伝子の導入ならびに挿入変異体の選択およびその表現型解析が比較的に容易である。
ジーントラップ法では、例えば、スプライシング/アクセプター配列とポリA付加シグナルとの間にlacZとneoとの融合遺伝子であるβ−geoを連結したジーントラップベクターをES細胞に導入し、G418で選択すると、ES細胞で発現している遺伝子を偶然にトラップしたクローンだけが選択される。
このようにして得られたクローンからキメラ胚を作製すると、トラップした遺伝子の発現パターンにより、さまざまなX−galの染色パターンを示す。このようにして、ジーントラップ法では、未知の遺伝子が単離され、その遺伝子発現パターンが解析され、またその遺伝子が破壊される。
この「レトロトランスポゾン含有トランスジェニック生物」において、レトロトランスポゾンは転位可能な状態で含まれるため染色体上の任意の部位に転位可能であり、この転位により染色体上の任意部位の遺伝子機能を破壊、低下ないし活性化することが可能である。
1つの実施形態において、本発明のこのトランスジェニック生物はレトロトランスポゾンを有する動物幹細胞または受精卵から誘導されているので、本質的に全ての細胞においてレトロトランスポゾン遺伝子を有し、コピーされて挿入されるはずである。本明細書では、「ほぼ全細胞」は、例外的に転位を受けないようなこのような特別な細胞を除く全細胞を意味する。上記生物は、その各細胞においてレトロトランスポゾンがランダムに転位しており、そのため、レトロトランスポゾンにより導入された遺伝子変異に関して個体全体として統一的な変異が見いだされない。
本発明においては、所望のトランスジェニック生物をプレスクリーニングし得る。プレスクリーニングの方法としては、例えばジーントラップ法を用いることができる(Zambrowicz et a1.;Nature,392:608・611(1998);Gossler et al.;Science,244:463−465(1989);Ska11nes,WC.et al.;Genes Dev.6:903・918(1992);Friedrich,G.et al.;Genes Dev.5:1513−1523(1991))。このように、プレスクリーニングを行うことにより遺伝子機能の解明に有望な.トランスジェニック生物を予め選抜してその後2世代以上の交配あるいはその他適宜の手段により、1対の染色体の両遺伝子が変異したトランスジェニック生物を得ることができる。
遺伝子破壊してその表現型を解析する手法は、遺伝子機能を解明するための有効な手段である。哺乳動物個体、特にマウスで網羅的に遺伝子破壊を起こし表現型を解析するためには、克服しなければいけない大きな問題点が二つある。一番目は、網羅的に遺伝子破壊を起こし表現型を目安に遺伝子機能を探る手法、いわゆるフォワードジェネティックスが整備されていないことである。二番目は、遺伝子が一対(両対立遺伝子)あるために片側の遺伝子を破壊しただけでは表現型が現れないことである。両対立遺伝子変異を導入するためには、現在のところ片側の遺伝子が破壊された個体同士の交配に依存している。つまり、両対立遺伝子変異導入個体を得るための交配に長時間をかける必要性がある。
一番目の問題点は、本発明において改良されたレトロトランスポゾンシステムでよりよく克服できる。二番目の問題点は、迅速な両対立遺伝子変異導入法により克服できる二番目の問題点を克服するための具体的手段として、両対立遺伝子変異を有する細胞が高頻度に現れるBloom遺伝子ノックアウトマウスを用いることができる(G.Luo et a1.;Nature Genetics,26:424・429(2000))。Bloom遺伝子を調節可能に発現させるための一例としてのテトラサイクリンレギュレータブルユニット(Tetracyclin regulatable unit)のような手段の導入は、レトロトランスポゾンシステムと組み合わせて行う。例えば、レトロトランスポゾンなどが導入される受精卵等に予めBloom遺伝子を調節可能に発現する手段を導入しておいて交配を行う。得られたレトロトランスポゾン転位部位が導入されたマウスに、BIoom遺伝子の発現を抑制する手段(例えばテトラサイクリンの投与)を実施することで、レトロトランスポゾンシステムにより得られた遺伝子の変異を両対立遺伝子に導入し、表現型の確認を迅速に行うことができる。本発明において選択マーカー遺伝子を用いない場合は、該トランスジェニック生物の細胞からDNAを抽出し、サザンプロット法により転位の有無を調べることで、スクリーニングを行ない得る。本発明によれば、動物体内で、効率のよいレトロトランスポゾン配列の転位を達成することができる。レトロトランスポゾンを用いた変異の導入法によれば、他の方法に比べ、多種多様な表現型をもつ生物を効率よくかつランダムに得ることが可能となる。本発明のトランスジェニック生物は、遺伝子機能研究において、多様な遺伝子変異を導入することにより、複雑な生命現象を解明するためのツールとしてきわめて有用である。
本発明では、レトロトランスポゾン発現システムが動物またはその組織、器官などの細胞集合体となることでレトロトランスポゾンの転位効率が飛躍的に高めることが容易になったのは、本発明において初めて見出された知見である。
本発明の1実施態様によれば遺伝子機能を鮮明する手段として、ランダムにレトロトランスポゾン構築物を導入したトランスジェニック生物群の中から、マーカーあるいは他の手段によりランダムに導入された変異を有する個体を見出すことが可能である。遺伝子機能を網羅的に解析するには、レトロトランスポゾンがゲノムのより多くの部位へ転位する必要がある。
本発明によれば、異なる種マウスから変異マウスを作製することにより、約3万以上あるとされる遺伝子のほぼ全てについて網羅的に変異導入することも可能である。このように、変異を有する生物個体を解析する際、本発明では遺伝子変異の発現頻度が極めて高いので、複数の変異をもつ生物が1個体得られれば、多くの変異の機能変化を一度で分析することができ、遺伝子機能の解明を極めて効率的に行うことができる。トランスポゾン(DNA型)であれば、転位が起こる部位が限定されていることから、網羅率は限定的なものであったが、本発明によって、レトロトランスポゾンが容易に利用することができるようになったことから、上記網羅的変異導入もまた可能となった。
本発明によれば、得られたトランスジェニック生物を交配することで、転位が固定された遺伝子解明上有用な生物を得ることが司能である。ここで「転位が固定された」とは、活性なレトロトランスポゾンを有さないためレトロトランスポゾンの転位によるゲノムの改変数が増加しないことを意味する。具体的には、レトロトランスポゾンがスイッチオフされているか、あるいはレトロトランスポゾンが破壊されていることなどを指す。このようなトランスジェニック哺乳動物個体が得られれば、1個体を調べることで、対応する1種の遺伝子機能をシンプルに解析することができる。
本発明では、レトロトランスポゾンにより変異を導入しているため、突然変異誘発物質などを用いて変異を導入するのと比較して、どこに変異が導入されたのかを外来遺伝子配列あるいはレトロトランスポゾン構築物由来の配列を利用してPCR等の適当な方法により、容易に検出することができる。また、本発明の実施態様においては、培養細胞でなく個体の生物で遺伝子変異を導入することにより、個体レベルでの遺伝子機能の解析が可能である。また、生物個体を生存させたままの状態では操作が困難な組織に対しても、外部から手を加えることなしに、個体体内で遺伝子変異を導入し得る。さらに、同じ組織内であっても転位部位が異なり、従って遺伝的に異なる一群の細胞が存在するので、血液系、免疫系などの任意の組織・臓器・器官で、増殖、分化等における細胞系譜を系統的に調べることができる。
本発明によれば、本発明の新規な生物、特にマウスは、遺伝子機能解明のための便利なモデルシステムを提供する。本発明のこの実施態様は、生きた動物モデルにおいて遺伝性疾患の研究のための疾患モデルシステムを提供し得る。該システムにおいて、動物モデルに導入される疾患遺伝子としては、ヒト疾患原因遺伝子、または生物におけるその相同遺伝子がcDNAの遺伝子全長、cDNAの遺伝子断片、ゲノムDNAの遺伝子全長、あるいはゲノムDNAの遺伝子断片であるものが挙げられる。疾患原因遺伝子は、生物に導入して、得られたトランスジェニック生物をヒト疾患モデル動物として研究に供し得るものであればいずれでも良く、特に限定されないが、ヒト疾患原因遺伝子であるのが好適である。本発明によれば、種々のエンハンサーを含むレトロトランスポゾンが癌原遺伝子の近傍に転位した場合、これらを包含する細胞においては結果的に癌が発現するため、これにより癌原遺伝子をスクリーニングできる。特に、レトロトランスポゾン配列を含むトランスジェニック生物を用いた場合、癌原遺伝子の発現はクローナルであるため、癌は組織だけでなく全体に転位し得る。また同時に、各動物細胞内で転位による遺伝子機能の低下、破壊ないし活性化がランダムに進行しているので、複数の癌が同一個体内で発生することも予測され、癌に関与する遺伝子機能の解明を効率よく進めることができる。さらに、同一個体内で複数の癌を認めた場合、各々の癌細胞においてトランスポゾンベクターの挿入部位が同じかどうかを調べることによって、癌細胞が同一の細胞に由来しているかどうかを調べることができ、癌の転位のメカニズム研究に寄与し得る。
本発明では、本発明のトランスジェニック生物を臓器提供用ドナーとして使用することができる。例えば、ヒトヘの異種間臓器移植のドナーとして考えられる臓器として、具体的には神経細胞、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、角膜、皮膚などが挙げられる。この場合、導入される遺伝子は、例えば異種間での臓器移植に拒絶反応を低減する機能を有する遺伝子あるいは生着率の上昇を期待し得る機能を有する遺伝子が好ましい。
トランスジェニック生物の作製についてはまた、米国特許第5,464,764号公報;米国特許第5,487,992号公報;米国特許第5,627,059号公報;特開2001−54337号公報;Gossler,A.et al.(1989),Science 244,463−465;Wurst,W.et al.(1995),Genetics 139,889−899;Zambrowicz、B.P.et al.(1998),Nature 392,608−611Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.86,8932−8935,1989;Nature,Vol.342,435−438,1989;村松正實、山本雅編集、『実験医学別冊 新訂 遺伝子工学ハンドブック 改訂第3版』(1999年、羊土社発行)中特に239から256頁;相沢慎一(1995)実験医学別冊「ジーンターゲティング−ES細胞を用いた変異マウスの作製」などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において、「ノックアウト」とは、遺伝子について言及されるとき、その遺伝子を破壊(欠損)または機能不全にさせることをいう。従って、ノックアウトの概念は、トランスジェニックの中に含まれる。
本明細書において、「ノックアウト生物」とは、ある遺伝子がノックアウトされた生物(例えば、マウス)をいう。従って、ノックアウト生物の概念は、トランスジェニック生物の中に含まれる。
本明細書においてトランスジェニックの対象とされる「生物」は、トランスポゾンが作用し、そのような系が機能し得る任意の生物が含まれる。このような生物には、動物、植物、細菌などが含まれるがそれらに限定されない。
本明細書において、「動物」は、核酸配列(好ましくは遺伝子をコードする外来配列)の導入を目的とすることができるものであればどのような動物であってもよい。従って、動物には、脊椎動物および無脊椎動物が包含される。動物としては、哺乳動物(例えば、マウス、イヌ、ネコ、ラット、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、イルカ、クジラ、ヤギ、ウマなど)、鳥類(例えば、ニワトリ、ウズラなど)、両生類(例えば、カエルなど)、爬虫類、昆虫(例えば、ショウジョウバエなど)などが挙げられる。好ましくは、動物は、哺乳動物であり得、より好ましくは、ノックアウトを作製することが容易な動物(例えば、マウス)であり得る。別の好ましい形態では、動物は、ヒトのモデル動物として適切であることが判明している動物(例えば、サル)であり得る。ある実施形態では、動物は、非ヒト動物または非ヒト哺乳動物であり得るが、それに限定されない。例えば、ブタ、サル・ウシ・ウマ・ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウサギ、マウス、ラット、またはハムスター等であり、より好ましくは、マウスまたはラットである。ここで本発明の生物には、特に言及しない限り、哺乳動物個体だけでなく個体の一部および個体の有する臓器、器官も包含される。これらはヒト疾患モデルとして、また臓器移植用ドナーとして有用である。
本明細書において用いられる「植物」とは、植物界に属する生物の総称であり、クロロフィル、かたい細胞壁、豊富な永続性の胚的組織の存在,および運動する能力がない生物により特徴付けられる。代表的には、植物は、細胞壁の形成・クロロフィルによる同化作用をもつ顕花植物をいう。「植物」は、単子葉植物および双子葉植物のいずれも含む。好ましい植物としては、例えば、イネ、コムギ、トウモロコシ、オオムギ、ソルガムなどのイネ科に属する単子葉植物が挙げられる。より好ましくは、植物は、イネであり得る。イネとしては、ジャポニカ種、インディカ種のものが挙げられるがそれらに限定されない。より好ましくは、イネは、ジャポニカ種のものであり得る。本明細書において、イネの品種としては、例えば日本晴、ニホンマサリ、コシヒカリ、あきたこまち、どんとこい、ヒノヒカリなどが挙げられるがそれらに限定されない。インディカ種の品種としては、Tetep、Basmati、IR8、湖南早などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましい植物は作物に限られず、花、樹木、芝生、雑草なども含まれる。特に他で示さない限り、植物は、植物体、植物器官、植物組織、植物細胞、および種子のいずれをも意味する。植物器官の例としては、根、葉、茎、および花などが挙げられる。植物細胞の例としては、カルスおよび懸濁培養細胞が挙げられる。
イネ科の植物の例としては、Oryza、Hordenum、Secale、Scccharum、Echinochloa、またはZeaに属する植物が挙げられ、例えば、イネ、オオムギ、ライムギ、ヒエ、モロコシ、トウモロコシなどを含む。
本発明の生産方法に用いられる植物は、好ましくは単子葉植物であり、より好ましくは、イネ科植物である。さらに好ましくは、イネであり得る。
上述の生物において、遺伝子の導入技術はマイクロインジェクション、核酸フラグメントと陽イオン脂質小胞体またはDNA凝縮試薬との組合せ;ならびに核酸フラグメントをウィルスベクターに導入し、そしてこのウィルスベクターを細胞と接触させること、ならびに粒子ボンバードメントおよびエレクトロポレーションから成る群より選ばれる方法を含む。
本明細書において使用され得るウィルスベクターはレトロウィルスベクター、アデノウィルスベクター、ヘルペスウィルスまたはアデノ関連ウィルスベクターからなる群より選ばれるものが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「レトロウイルス」とは、RNAの形で遺伝情報を有し、逆転写酵素によってRNAの情報からDNAを合成するウイルスをいう。したがって、「レトロウイルスベクター」とは、レトロウイルスを遺伝子の担い手(ベクター)として使用した形態をいう。本発明において使用される「レトロウイルスベクター」としては、例えば、Moloney Murine Leukemia Virus(MMLV)、Murine Stem Cell Virus(MSCV)にもとづいたレトロウイルス型発現ベクターなどが挙げられるがそれらに限定されない。
好ましくは、レトロウイルスベクターとしては、pGen−、pMSCVなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において使用される場合「ジーントラップ(法)」とは、目的の細胞に、例えば、プロモーターを欠いたレポーター遺伝子を導入し、染色体上で活性化されているプロモーターの下流に挿入された場合にのみレポーター活性が検出できること利用した遺伝子の同定方法をいう。このようなジーントラップは、「ジーントラップベクター」を、真核生物の宿主染色体中に導入して、宿主遺伝子を破壊することにより達成される。レポーター遺伝子が挿入された遺伝子は、レポーターとの複合タンパク質を発現するため、そのタンパク質をモニターすることによって遺伝子を同定することが可能である。したがって、相同組換えと同様に本来の遺伝子座にレポーター遺伝子が組み込まれるため、転写調節が完全なレポーター系を作ることができる。この手法を用いることによって、遺伝子破壊によって変異体を単離する手法では、得られなかった遺伝子の同定を行うことができる。したがって、本発明では、このようなジーントラップ法もまた利用することができる。
本明細書において「ジーントラップベクター」とは、真核生物遺伝子のmRNAが成熟mRNAとなる過程においてスプライシングを受ける現象を利用して、遺伝子中へ挿入されたベクターを選択するためのベクターである。ジーントラップベクターとしては、(1)プロモーターを有さないレポーター遺伝子のコード領域、およびスプライスアクセプター部位を含むDNA配列を含むベクター、または(2)プロモーターを有するレポーター遺伝子のコード領域、およびスプライスドナー部位を含むDNA配列を含むベクター、ならびに(3)これら(1)および(2)の両方のDNA配列を含むベクターが挙げられるがこれらに限定されない。
上述のようなスプライスアクセプター配列を含むジーントラップベクターは、必要に応じて、ポリA付加シグナルを含んでもよい。スプライスドナー配列を含むジーントラップベクターは、必要に応じて、エンハンサー領域、および/またはmRNA不安定化領域を含んでもよい。ポリA付加シグナルとしては、「AATAAA」が挙げられるが、これに限定されない。
本発明において使用するプロモーターとしては、MC1プロモーター、RNA pol IIプロモーターなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明において使用されるエンハンサーとしては、ポリオーマウイルスエンハンサー(PYF441)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明において使用されるスプライスドナー配列としては、マウスhprt遺伝子エキソン8スプライスドナーが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明において使用されるスプライスアクセプター配列としては、ヒトbcl−2遺伝子エキソン3スプライスアクセプターが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において使用される「レポーター」分子または「レポーター」遺伝子とは、細胞内において遺伝子発現の指標として使用することのできる分子(例えば、ポリペプチド)または遺伝子をいう。そのような分子としては、公知のレポータータンパク質を用いることができ、例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、β−D−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、またはエクオリンなどが挙げられる。ここで、遺伝子の導入方法自体は、当該分野において公知の技術をもちいて所望の材料を用いて行うことができる。そのような場合、例えば、目的とする胚性幹細胞に、例えば、プロモーターを欠いたレポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ遺伝子、グリーン蛍光遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、アルカリホスファターゼ遺伝子、Creレコンビナーゼ遺伝子など)を導入し、染色体上で活性化されているプロモーターの下流に挿入された場合にのみレポーター活性が検出する。使用されるベクターはこのレポーター遺伝子のほか、選択マーカー遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、レスキューマーカー遺伝子(例えば、アンピシリン耐性遺伝子+コリシンE1複製開始起点)などを含んでいてもよい。ここで、選択マーカー遺伝子は、ベクターが入った宿主を選択するために使用される。レスキューマーカー遺伝子は、ベクターをレスキューするために使用される (Joyner,A.L.ed.”Gene Targeting,2nd edition”(Oxford University Press,2000)を参照のこと)。上述のような技術を用いることによって、胚性幹細胞が生成される。この改変胚性幹細胞は、遺伝子がトラップされている。ここで、トラップされているとは、ゲノムへのトラップベクターの挿入により内在性遺伝子が破壊され、同時にそのベクターによって破壊された遺伝子がマーキングされた状態をいう。
特定の配列を有するオリゴヌクレオチドの調製は、当該分野において周知の技術を用いて行うことができ、例えば、Joyner,A.L.ed.”Gene Targeting,2nd edition”(Oxford University Press,2000)に記載される方法で行うことができる。オリゴヌクレオチドは、必要に応じて、蛍光、放射能などで標識することができる。そのような標識方法は当該分野において周知であり、本明細書において引用される文献に記載されている。
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の方法または生物を使用することができる。本発明では、種々のトランスジェニック生物が作製されることから、任意の核酸分子およびその機能調節因子をスクリーニングすることができる。
本発明では、任意の核酸分子を本発明の核酸分子、方法またはシステムを利用することによってスクリーニングすることができる。本発明はまた、そのようなスクリーニングによって同定された化学物質またはその組み合わせを包含することが企図される。
本発明のトランスポゾンシステムは種々の分野に応用できる。例えば、1)本発明の方法を利用して生物の染色体への遺伝子材料を効率的に挿入することができる;2)挿入変異因子としてのトランスポゾンの利用により、生命体の成長、維持、調節および発育に関わる遺伝子の同定、単離および特性を決定することができる(例えば、Kaiserら、1995「Eukeryotic transposable,elements as tools to study gene structure and function」 Mobile Genetic Elements,IRL Press,pp.69−100);3)生命体の成長、維持、調節および発育を調節する転写調節配列の同定、単離およびをの同定することができる(例えば、Andersonら、1996,Mol.Mar.Biol.Biotech.,5,105−113)。一例において、本発明の方法およびシステムは無菌遺伝子導入マウスを作るために利用できる。活性化遺伝子を有する同腹群を交配させ、生物的封じ込めまたは養殖魚の成長率を最大にするために無菌子孫を作ることができる。
(遺伝子治療)
本発明の用途としては、核酸フラグメントを修飾して細胞に遺伝子治療を施す遺伝子を組込むことが挙げられる。遺伝子は組織特異的プロモーターのコントロール下、または汎存プロモーター、またはその遺伝子を必要とする細胞における遺伝子の発現のための1もしくは複数のその他の発現コントロール領域のコントロール下に置く。遺伝子治療に使用される遺伝子としては、例えば、嚢胞性線維症のためのCFTR遺伝子、肺疾患のためのα−1−アンチトリプシン、免疫系疾患のためのアデノシンデアミナーゼ(ADA)、血液細胞疾患のための1×因子およびインターロイキン−2(IL−2)、ならびに癌治療のための腫瘍壊死因子(TNF)などが挙げられるがそれらに限定されない。
遺伝子治療に使用することが可能な遺伝子配列は公知のデーターベース、例えばGenBank、DDBJ、EMBL等において検索し、入手できる。
さらに、本発明は、ライブラリーで作業するまたはそれをスクリーニングするための工程の一部として、配列の機能を評価するため、またはタンパク質発現をスクリーニングするため、または特定の細胞タイプに対する特定のタンパク質または特定の発現コントロール領域に対する効果を評価するために利用することができる。1つの実施形態において、組換え配列のライブラリー、例えばコンビナトリアルライブラリーまたは遺伝子シャフリングの生成物を本発明の核酸フラグメントの中に組込んで、種々の核酸配列を有する核酸フラグメントのライブラリーを作る。次いでこのライブラリーを前述の通りレトロトランスポゾンと一緒に細胞の中に導入する。
(発明を実施するための最良の形態)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。
(LTR型レトロトランスポゾンの核酸構築物)
1つの局面において、本発明は、LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、単離された核酸構築物を提供する。従来LTR型レトロトランスポゾンが、ゲノム異常に関連することは知られていたが、従来は、ゲノム上の未知の部位に存在する活性型のLTR型トランスポゾン由来の別の因子が必要であると考えられていた。従って、実際に単離されたLTR型レトロトランスポゾンがそれ単独で使用することによって、ゲノムの改変、遺伝子の転位、外来遺伝子の導入などに適用することができることが示されたことはなく、本発明は、単独このような用途を実施することを示したという意味で予想外の効果を示すといえる。
LTR型レトロトランスポゾンは、LTRを有する任意のレトロトランスポゾンを使用することができ、そのような配列を有する核酸構築物を当該分野において周知の遺伝子操作方法を用いて構築することができる。このような核酸構築物は、ゲノムの改変など、上述の種々の有用性を有することが当業者が理解することができる。
好ましい実施形態において、上記LTR型レトロトランスポゾンは、Intracisternal A particle(IAP)型レトロトランスポゾン、early transposon(ETn)、virus−like 30S RNA(VL30)レトロトランスポゾンなどを含む。
好ましい実施形態において、上記レトロトランスポゾンは、完全長IAPを含む。従来完全長IAPエレメントというものが提唱されているが、本発明では、実際に転写、逆転写およびゲノムへの挿入活性を有するIAPエレメントを完全長IAPエレメントという。従って、従来完全長IAPエレメントと言われているものの中には、本発明の定義では完全長IAPエレメントに該当しないこともあり得る。しかし、本発明の核酸構築物を用いなければ、このようなレトロトランスポゾン(特にLTR型)の活性を確認することができなかったことから、すでに配列が知られたものにおいて本発明のIAP配列に該当するものが包含されることが理解されるべきであり、そのような配列もまた、本発明の目的において使用することが理解され得る。また、好ましくは、IAPについて完全長には、GAGタンパク質のはじめの15アミノ酸(配列番号1のうち、Met Asn Ser Glu Leu Phe Ser Trp Gly Thr Arg Val Pro Val Ser)を含むことが有利であることが本発明において実証されている。
好ましい実施形態において、上記レトロトランスポゾンは、コードするポリペプチドが機能性である。ここで、機能性であるかどうかを検定する方法は、転写、逆転写およびゲノムへの挿入活性を調べることによって確認することができ、そのような例示として以下の実施例に例示される。従って、機能としては、例えば、転写活性、逆転写活性およびインテグラーゼ活性からなる群より選択される少なくとも1つの活性好ましくは2以上より好ましくはすべてが含まれることが理解される。
好ましい実施形態において、本発明のレトロトランスポゾンは、LTR(特にR領域)、gag、polおよびtRNA結合部位に対応する少なくとも1つの配列(このような配列をコンセンサス配列ということがある)を含む。ここで、このコンセンサス配列は、IAPに関する機能性に関するコンセンサス配列であることが好ましい。
本明細書において、レトロトランスポゾン(たとえば、IAPエレメント)は、動物のものであることが好ましく、より好ましくは、哺乳動物のものであり、さらに好ましくは、げっ歯類または霊長類のものであり、もっとも好ましくはマウスのものであるがそれらに限定されない。
1つの好ましい実施形態において、本発明において使用されるレトロトランスポゾンは、その核酸配列において、5’側のLTR直下にあるtRNA結合部位において、tccgggacgagaaaa(配列番号31)の配列が反復していること、およびR領域のttgcttcttgctctc(配列番号32)からなる反復配列を2以上含むことからなる群より選択される少なくとも1つの特徴を有する。ここで、この共通配列は、機能性IAPをコードする。より好ましくは、今回用いたIAP配列の特徴として、5’側のLTR直下にあるtRNA結合部位において、tccgggacgagaaaa(配列番号31)の配列が反復していること(a)、および、R領域のttgcttcttgctctc(配列番号32)からなる反復配列が5つと多いこと(b)が挙げられる。理論に束縛されないが、aについては、Q14等の白血病細胞に特異的な配列は、5’−LTR直下にあるtRNA結合部位である−tggtgccgaattccggg−(配列番号33)の後半から−AATCCGGGACGAGAA配列(配列番号34)がタンデムに反復していることが本発明のIAPにおいて見出されたからである。これは、逆転写の最初にtRNA−Pheがプライマーとして結合する部位であるが、生殖系列(germ line)IAPエレメントには反復の保持されているものが少なく、腫瘍で同定された特異IAPエレメント挿入部位では全て保持されていることから、逆転写の最初の過程で影響している可能性があると考えるからである。理論に束縛されないが、bについては、R領域にはTTGCTTCTTGC(配列番号35)とTCTCからなる反復配列があり、その反復数が多いことによって、初期逆転写物が二次逆転写を開始する分子間スイッチの部分に相当することから、逆転写の中間過程で影響すると考えられる。
いずれも、MIA14等のBalb/c系で分離されたIAPエレメントには見られない特徴であり、本発明が機能的であることの一つの特徴であると考えられるが、それらが必須というわけではない。
特定の好ましい実施形態において、本発明において使用されるレトロトランスポゾンは、
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2または3および4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2または3および4に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2または3および4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列にストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含み得る。
さらに好ましくは、本発明のレトロトランスポゾンは、配列番号1に示される配列を含み得る。あるいは、本発明のレトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む核酸分子は、配列番号1に示される配列を含み得る。
1つの好ましい実施形態において、上記(c)における置換、付加および欠失の数は、限定され、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ましい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好ましくは、配列番号2または3および4に示されるアミノ酸配列を含むレトロトランスポゾンと類似するかまたは実質的に同一の活性を有する)限り、多い数であってもよい。
別の好ましい実施形態において、上記改変体ポリペプチドが有する生物学的活性としては、例えば、配列番号2または3および4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、未分化性維持、細胞外マトリクスとの相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、そのような生物学的活性は、未分化性維持を含む。この活性を測定するためには、遺伝子導入実験、遺伝子欠損実験、RNAi実験、抗体によるタンパク質機能阻害実験等が考えられる。
別の好ましい実施形態において、対立遺伝子変異体は、配列番号1に示す核酸配列と少なくとも90%の相同性を有することが好ましい。同一系統内のものなどでは、例えば、そのような対立遺伝子変異体は少なくとも99%の相同性を有することが好ましい。
上記種相同体は、その種の遺伝子配列データベースが存在する場合、そのデータベースに対して、本発明の配列番号2または3および4に示されるアミノ酸配列を含むレトロトランスポゾンポリペプチドの全部または一部のアミノ酸配列、または配列番号1に示される核酸配列を含む、レトロトランスポゾンをコードする核酸分子の全部または一部の核酸配列をクエリ配列として検索することによって同定することができる。あるいは、本発明のレトロトランスポゾンの核酸配列の全部または一部をプローブまたはプライマーとして、その種の遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。そのような同定方法は、当該分野において周知であり、本明細書において記載される文献にも記載されている。種相同体は、例えば、配列番号1に示す核酸配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。種相同性は、好ましくは、配列番号1に示す核酸配列と少なくとも約50%の相同性を有する。
好ましい実施形態において、上記(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少なくとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ましくは少なくとも約99%であり得る。
好ましい実施形態において、本発明の核酸分子は、少なくとも8の連続するヌクレオチドであり得る。本発明の核酸分子は、本発明の使用目的によってその適切なヌクレオチド長が変動し得る。より好ましくは、本発明の核酸分子は、少なくとも10の連続するヌクレオチド長であり得、さらに好ましくは少なくとも15の連続するヌクレオチド長であり得、なお好ましくは少なくとも20の連続するヌクレオチド長であり得る。これらのヌクレオチド長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、9、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明の核酸分子は、目的とする用途(例えば、マーカー)として使用することができる限り、その上限の長さは、配列番号1に示す配列の全長であってもよく、それを超える長さであってもよい。あるいは、プライマーとして使用する場合は、通常少なくとも約8のヌクレオチド長であり得、好ましくは約10ヌクレオチド長であり得る。プローブとして使用する場合は、通常少なくとも約15ヌクレオチド長であり得、好ましくは約17ヌクレオチド長であり得る。
より好ましい実施形態において、本発明は、(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;または(b)配列番号2または3および4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドであり得る。
ある好ましい実施形態において、本発明の核酸分子は、その核酸配列において、LTR、gag、polおよびtRNA結合部位からなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含むか、あるいは、5’側のLTR直下にあるtRNA結合部位において、tccgggacgagaaaaの配列が反復していること、およびR領域のttgcttcttgctctcからなる反復配列を2以上含むことからなる群より選択される少なくとも1つの特徴の対応する位置のものがあるがそれらに限定されない。
ここで、より好ましい実施形態では、上記(a)〜(b)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少なくとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ましくは少なくとも約99%であり得る。
好ましい実施形態において、本発明のレトロトランスポゾンをコードする核酸分子またはそのフラグメントおよび改変体は、少なくとも8の連続するヌクレオチド長であり得る。本発明の核酸分子は、本発明の使用目的によってその適切なヌクレオチド長が変動し得る。より好ましくは、本発明の核酸分子は、少なくとも10の連続するヌクレオチド長であり得、さらに好ましくは少なくとも15の連続するヌクレオチド長であり得、なお好ましくは少なくとも20の連続するヌクレオチド長であり得る。これらのヌクレオチド長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、9、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明の核酸分子は、目的とする用途(例えば、アンチセンス、RNAi、マーカー、プライマー、プローブ、所定の因子と相互作用し得ること)として使用することができる限り、その上限の長さは、配列番号1に示す配列の全長であってもよく、それを超える長さであってもよい。あるいは、プライマーとして使用する場合は、通常少なくとも約8のヌクレオチド長であり得、好ましくは約10ヌクレオチド長であり得る。プローブとして使用する場合は、通常少なくとも約15ヌクレオチド長であり得、好ましくは約17ヌクレオチド長であり得る。
特定のより好ましい実施形態において、本発明のレトロトランスポゾンは、配列番号1(効果のあった種の配列)を含む。
(LTR型レトロトランスポゾンの核酸構築物−プロモーター含有形態)
本発明の好ましい実施形態において、本発明の核酸構築物は、レトロトランスポゾン配列の他に、プロモーター配列を含む。プロモーターは、レトロトランスポゾンの転写、逆転写およびゲノムへの挿入において駆動することができるかぎりどのようなプロモーターでも用いることができる。そのようなプロモーターは、いったん配列情報が与えられると、有機合成または生物学的に調製することができる。
好ましい実施形態において、本発明において使用されるプロモーター配列は、ルシフェラーゼ遺伝子上流にそのプロモーター配列を配置して、動物細胞(例えば、HeLa細胞)に遺伝子導入した際に得られる値をCMVプロモーターを用いて得られた値で割った数値が0.1rlu(相対光単位=relative light unit)以上の活性を示す。すなわち、CMVプロモーターの少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%、さらに好ましくは少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも95%、さらにより好ましくは同等以上の活性を有することが有利である。このように強力なプロモーター活性を有することによって、IAPが自己完結型かどうかを観察することが初めて可能となった。
このような強力なプロモーターとしては、例えば、CMVプロモーター、CAプロモーターなどが挙げられるがそれらに限定されない。具体的な配列としては、例えば、配列番号5、6および7からなる群より選択される、1以上の核酸配列、あるいはこれに対して1または数個の付加、欠失および置換からなる群より選択される変異を含むこれらの改変体などが挙げられるがそれらに限定されない。そのような改変体は、CMVプロモーターと少なくとも約10%の活性を有している限り本発明の範囲内にあることが理解される。
より好ましい実施形態において、本発明において使用されるプロモーター配列は、レトロトランスポゾンにおける5’LTRの一部と置き換えられる。この置き換えは、プロモーター活性が保持されるように行われることが好ましい。このように置き換えた配列は、当該分野において周知の方法によって作製することができる。
1つの好ましい実施形態において、本発明において使用されるプロモーター配列は、前記レトロトランスポゾンにおける前記5’LTRのうちU3領域の全部または一部と置き換えられる。U3領域の置き換えは、プロモーター配列が発揮される(好ましくは0.1rlu以上)ように行われる限り、どのように置換されていてもよい。
好ましい実施形態において、本発明の核酸構築物において使用されるプロモーター配列は、レトロトランスポゾンに作動可能に連結される。ここで、作動可能に連結されているかどうかは、プロモーター活性が発揮されたかどうかを、例えば、転写活性、逆転写活性およびインテグラーゼ活性の有無によって確認することができる。
より好ましい実施形態では、このプロモーター配列は、その転写開始部位がレトロトランスポゾンの転写開始部位にインフレームで配置されることが有利である。この形態は、特に、IAPが用いられる場合に好ましい。理論に束縛されることを好まないが、IAPでは、レトロトランスポゾンの転写開始部位が重要であるということがより高い活性に好ましいとされており、より効果的な転位を促進するためには、このようなインフレームな配置が好ましい。インフレームな配置は、プロモーター配列と、転写されるレトロトランスポゾンの転写開始位置とを直接間に介在配列を介させることなく連結させることによって達成することができる。
(LTR型レトロトランスポゾンの核酸構築物−外来遺伝子の転位のための核酸構築物)
別の好ましい実施形態において、本発明の核酸構築物は、外来遺伝子をコードする配列をさらに含む。外来遺伝子をコードする核酸は、どのような遺伝子産物をコードするものであってもよく、どのような位置に配置されていてもよいが、好ましくは、レトロトランスポゾン内に配置される。
好ましい実施形態において、本発明の外来遺伝子は、識別可能な特性を宿主に付与するものであることが好ましい。そのような識別可能な特性は、抗生物質耐性、栄養補充性、酵素、蛍光タンパク質、化学発光タンパク質、色素などが挙げられるがそれらに限定されない。ここで、具体的な外来遺伝子としては、neo、GFP、hyg、puro、zeo、bsr、lacZ、CFP、YFP、RFP、BFPおよびhrGFPなどが挙げられるがそれらに限定されない。
好ましい実施形態において、本発明の核酸構築物に含まれる外来遺伝子は、転写、逆転写およびゲノムへの挿入の過程を経ることによって初めて発現されるように構成される。そのような構成は、当業者であれば、どのように構築することができるかは理解することができるが、一例として、例えば、外来遺伝子がリバースに配置されていたり、あるいは、イントロン配列を介在させることなどが方法として考慮することができる。
従って、本発明の核酸構築物において使用される場合、外来遺伝子は、イントロン配列を含んでいることが好ましいがそれに限定されない。イントロン配列としては、任意のものを使用することができるが、具体的には、例えば、ヒトγグロビン由来イントロンはg配列を使用することができるがそれに限定されない。
好ましい実施形態では、本発明の構築物において用いられるイントロン配列は、レトロトランスポゾンとは、フォワードに、外来遺伝子に対してはリバースに配置することが有利である。レトロトランスポゾンのプロモーターからの転写、スプライシングにより、イントロンが除かれ、その後のゲノムへの挿入により、初めて外来遺伝子が発現されるからである。
好ましい実施形態では、本発明の核酸構築物において用いられるイントロン配列は、レトロトランスポゾンとはトランスに配置されることが有利である。トランスに配置されることによって、同じプロモーターの影響は受けにくくなるからであり、レトロトランスポゾンがコードするタンパク質の発現とは独立して外来遺伝子が発現されるようにさせることができるからである。このようにトランスに配置することによって、外来遺伝子が導入されたかどうかを、レトロトランスポゾンの動きとは無関係に確認することも可能である。
好ましくは、イントロン配列は、スプライスドナー配列およびスプライスアクセプター配列によって挟まれることが有利である。ここで、挟まれ方としては、スプライスドナーとスプライスアクセプターとが作動可能になっていることが好ましい。
本発明の核酸構築物は、種々の用途において有用であり、例えば、ゲノムの改変のため、レトロトランスポゾンが転位能力を有するか否かを確認するため、外来遺伝子を転位させるため、外来遺伝子を宿主内に導入するためなどに用いることができる。これらの用途は具体的であり、かつ、実現可能なものである。ゲノムの改変は、細胞レベルあるいは生物個体レベルであり得る。個体レベルでのゲノム改変を達成するには、トランスジェニック生物を生産する必要がある。このようなトランスジェニック生物は、本発明の核酸構築物を用いて生殖細胞系の細胞ゲノムを改変した後、その細胞を用いてfounder細胞を生産することができれば、その後は当該分野において周知のトランスジェニック生物の生産方法を用いてトランスジェニック生物とすることができる。
あるいは、レトロトランスポゾン(特に、LTR型)が転位能力を有するかどうかは、転写、逆転写およびゲノムへの挿入が検出可能な程度に行われることが必要である。理論に束縛されることを望まないが、従来、プロモーター活性およびLTRレトロトランスポゾンの少なくとも一方の活性が不十分であったことから、LTRレトロトランスポゾンの転位活性を確認するシステムは提供されていなかった。本発明では、少なくともLTRレトロトランスポゾンの活性を確認できる程度に強力なプロモーター活性を提供することによって、LTRレトロトランスポゾンが活性かどうかを確認することができるという予想外の効果を達成する。このことは、別の側面からみると、本発明によって初めて機能的LTR型レトロトランスポゾンの活性を検出し、そのような機能的LTR型レトロトランスポゾンが提供されたといえる。これら2つの構成要件が本発明者らの努力により予想外に成功する組み合わせを見出したことによって完成にいたったものである。ただし、いったん完成したこのような本発明は、本明細書の記載に基づいて、任意の等価な形態で実施することが可能であることを当業者は理解することができる。
好ましい実施形態において、本発明の核酸構築物の外来遺伝子導入の対象となる宿主は、どのような生物のものであってもよいが、好ましくは、真核生物であり、より好ましくは、哺乳動物を含み、さらに好ましくは、げっ歯類または霊長類を含み、もっとも好ましくはマウスであるがそれに限定されないことが理解される。
(ベクター、組成物、細胞)
別の局面において、本発明は、本発明の核酸構築物を含むベクターを提供する。このようなベクターにおいて含まれる核酸構築物は、上述の任意の核酸構築物の形態をとることができる。このようなベクターは、本発明の核酸構築物の他に、他のエレメントを含んでいてもよい。そのようなエレメントとしては、調節配列(例えばプロモーター、エンハンサー、サイレンサー、複製起点など)、制限酵素消化部位、イントロン配列などを含ませることができるがそれらに限定されない。
他の局面において、本発明は、本発明の核酸構築物、および必要に応じてキャリアを含む、組成物を提供する。このような組成物は、薬学的組成物、農薬組成物などであり得るがそれらに限定されない。このようなキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバントなど挙げられるがそれらに限定されない。
別の局面において、本発明は、本発明の核酸構築物を含む細胞、組織、生物体またはその一部を提供する。このような細胞は、どのような細胞であってもよいが、好ましくはトランスジェニック生物を作製する際に使用可能な生殖細胞などであることが有利であるがそれに限定されない。あるいは、レトロトランスポゾンの活性を確認することができるのに適切な細胞であることが好ましく、例えば、そのような細胞としては、NIH3T3、HeLa細胞、F9細胞、胚性幹細胞(ES細胞)などが挙げられるがそれらに限定されない。上記組織もまた、任意の組織またはその一部を用いることができる。上記生物体またはその一部もまた、任意の生物体またはその一部を用いることができる。当業者は、本明細書の開示にかんがみ、容易に上記細胞、組織、生物体またはその一部を作製し、使用することができることが理解される。
(ゲノム改変方法およびキット)
1つの局面において、本発明は、細胞内のゲノムを改変するための方法を提供する。この方法は、A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物を提供する工程;B)該細胞に、該核酸構築物を導入する工程;C)該細胞を所定の期間培養する工程;D)該核酸構築物によりゲノムが改変された細胞を選択する工程、を包含する。本発明は、従来制御不可能であると考えられ、ゲノム改変には使用することができないと考えられていたLTR型レトロトランスポゾンを用いることによって、予想外にゲノムを改変することができる。また、従来達成が報告されていた非LTR型レトロトランスポゾンで達成できていたゲノム改変効率よりも予想外に顕著に高い効率で改変を行うことができるようになった。
本発明のゲノム改変方法において使用されるLTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物は、本明細書において、上記(LTR型レトロトランスポゾンの核酸構築物)において詳述されているように、任意の形態をゲノム改変に用いることができる。
本発明のゲノム改変方法において、細胞に、核酸構築物を導入する技術としては、当該分野において周知の技術を用いることができる。核酸構築物またはベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)、リポフェクション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法などが挙げられる。核酸構築物またはベクターの導入の条件は、細胞および導入される物質の性質によって変動するが、そのような変動は、当業者に周知であり、当業者であれば、与えられた条件に基づいて適宜適切な核酸導入条件を特定することができる。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。好ましくは、トランスフェクションが用いられるがそれに限定されない。トランスフェクションを使用する場合、遺伝子導入剤を用いることが好ましい。遺伝子導入剤としては、例えば、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬、リン酸カルシウムなどが挙げられるがそれらに限定されない。トランスフェクションの際に利用される試薬の具体例としては、種々なソースから市販されている試薬が挙げられ、例えば、Effectene Transfection Reagent(cat.no.301425,Qiagen,CA),TransFastTM Transfection Reagent(E2431,Promega,WI),TfxTM−20 Reagent(E2391,Promega,WI),SuperFect Transfection Reagent(301305,Qiagen,CA),PolyFect Transfection Reagent(301105,Qiagen,CA),LipofectAMINE 2000 Reagent(11668−019,Invitrogen corporation,CA),JetPEI(×4)conc.(101−30,Polyplus−transfection,France)およびExGen 500(R0511,Fermentas Inc.,MD)などが挙げられるがそれらに限定されない。
好ましい実施形態において、導入は、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬などの存在かで行われ、より詳細には、カチオン性脂質、ポリアミン系脂質を用いて、1〜4μgのDNAを6ウェルプレートの各ウェルに培養した細胞に導入するという条件下で行われる。
本発明のゲノム改変方法において細胞を所定の期間培養する技術は、当該分野において周知の任意の培養方法を用いることができる。そのような培養法としては、例えば、適切な培地中で、適切な温度、湿度などの条件(例えば、37℃、100%、CO5%など)の下で行う培養法があるがそれに限定されない。従って、培養方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、本発明の生物が資化し得る炭素源(例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類など)、窒素源(例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸または有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素物質、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等など)、無機塩類(例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等など)等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地(例えば、RPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)]、EagleのMEM培地[Science,122,501(1952)]、DMEM培地[Virology,8,396(1959)]、199培地[Proceedings of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950)]またはこれら培地にウシ胎児血清等を添加した培地等)のいずれを用いてもよい。培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことが好ましいがそれに限定されない。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間であるがそれに限定されない。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。また培養中必要に応じて、アンピシリンまたはテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
本発明のゲノム改変方法において用いられる核酸構築物によりゲノムが改変された細胞を選択する技術としては、当該分野において用いられる任意の方法を用いることができる。選択は、好ましくは、導入された核酸の発現によって変化する宿主細胞の形質に基づいて行われる。例えば、導入された核酸が増殖因子をコードする場合、その所望の機能的性質は、特定の細胞または任意の細胞の増殖の促進である。導入された核酸が抗生物質耐性因子をコードする場合、選択は、抗生物質の存在下でその物質を培養することによって行うことができる。
好ましい実施形態において、本発明のゲノム改変方法において使用される核酸構築物は、ルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーターをさらに含み、培養にかかる所定の期間は転写、逆転写およびゲノムへの挿入が行われるに十分な期間であることが有利である。ゲノムの改変には転写、逆転写およびゲノムへの挿入が実行されることが必要であるからである。そのような転写、逆転写およびゲノムへの挿入が行われるに十分な条件は、当業者が任意に決定することができるが、そのような期間としては例えば、数時間(2−3時間)〜数日(5−10日)までであり得、好ましくは3〜7日(たとえば、72時間程度)であり得、もっとも好ましくは、約5日間(120時間)であり得る。
好ましくは、本発明のゲノム改変方法において用いられるプロモーター配列は、レトロトランスポゾンの転写開始部位にインフレームで配置されていることが有利である。理論に束縛されることを望まないが、このようにインフレームに配置されていることによって、逆転写に影響しない部位からの転写開始が飛躍的に上がり、その結果、転位活性が顕著に上昇するからである。
本発明のゲノム改変方法において用いられる核酸構築物は、前記レトロトランスポゾン内に作動可能に配置される外来遺伝子を含み、選択は、外来遺伝子の発現により行われる。このような外来遺伝子としては、上述の(外来遺伝子の転位のための核酸構築物)において説明されるような外来遺伝子を用いることができる。上記選択のために使用される技術は、外来遺伝子に応じて適宜選択することができる。
好ましい実施形態において、本発明のゲノム改変方法において用いられる外来遺伝子は、レトロトランスポゾンの転写方向とはリバースに配置され、スプライスドナー配列およびスプライスアクセプター配列ならびにそれらに挟まれシスに配置されるイントロン配列を含み、所定の期間は、転写、逆転写およびゲノムへの挿入が行われるに十分な期間であり、選択は、該外来遺伝子の発現により行われる。ここで、リバースの配置は、当該分野において周知の技法によって実施することができる。具体的には、外来遺伝子またはそれを含む発現カセットの転写方向を確認した後に、適切な制限酵素部位などを利用してレトロトランスポゾン構築物の適切な部位に連結することなどが挙げられるがそれらに限定されない。また、スプライスドナー配列およびスプライスアクセプター配列は、当該分野において周知であり、当業者は任意の配列を用いることができる。そのような配列例としては、例えば、スプライスドナー配列としては、GTRAGT(Rはプリン)、好ましくはGTAAGT、スプライスアクセプター配列としては、例えば、(Y)nNCAG(n>11、Nは任意の塩基)、好ましくは(T/C)15ACAGなどが挙げられるがそれらに限定されない。
好ましい実施形態において、本発明において使用される外来遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子、栄養補充因子、酵素遺伝子および蛍光物質をコードする遺伝子(例えば、neo、hyg、puro、zeo、bsr、hisDなど)からなる群より選択される因子をコードし、選択は、因子によって発現される前記細胞の特性によって行われる。栄養補充因子では、該当する栄養の有無によって選択することができる。抗生物質耐性遺伝子では、該当する抗生物質の有無によって選択することができる。そのような栄養(例えば、特定のアミノ酸、ビタミンなど)または抗生物質(例えば、ネオマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシンなど)は、その有効濃度の下限付近で用いることができるが、有効濃度よりはるかに高い濃度で用いてもよく、濃度は限定されない。
好ましい実施形態において、本発明のゲノム改変方法において用いられるLTRレトロトランスポゾンは、IAPエレメントの配列を含む。このようなIAPエレメントの配列は、完全長IAPエレメントの配列であることが望ましく、従って、機能性であることが好ましい。IAPエレメントは、gagおよびpolを含む。gag、polはそれぞれウイルスタンパク質の構造タンパク質、転位に必要な酵素群をコードする。従って、本発明のIAPエレメントの配列は、完全な構造タンパク質および完全な逆転写酵素群をコードしていることがゲノム改変方法において用いるのに好ましい。
本発明のゲノム改変方法における選択では、特定の実施形態では、選択は、ライゲーション媒介PCRによって転位された配列を確認することによって行われ得る。
本発明のゲノム改変方法がターゲットとしている細胞は、任意の細胞を対象とすることができるが、通常、原核生物、酵母、動物、植物、昆虫などの細胞が用いられ、好ましくは、真核生物の細胞であり、より好ましくは哺乳動物の細胞であり、さらに好ましくは、げっ歯類(例えば、マウス、ラットなど)または霊長類(ヒト、ゴリラ、チンパンジー、サル)の細胞であることが有利である。
なお、本発明の細胞は、どのような種類の細胞であってもよいが、好ましくは、真核生物細胞を含み、より好ましくは、哺乳動物細胞を含み、さらに好ましくは、げっ歯類細胞を含むがそれらに限定されない。より好ましくは、マウス、ラットなどのモデル動物のものが有用である。むしろ、本発明の細胞は、導入する核酸分子の性質、目的、核酸分子が導入されるべき宿主との関係で決定されるべきである。本発明の細胞に含まれる核酸分子は、本発明のベクターであってもよい。
本発明の組織は、どのような種類の組織であってもよいが、好ましくは、真核生物組織を含み、より好ましくは、哺乳動物組織を含み、さらに好ましくは、げっ歯類組織を含むがそれらに限定されない。より好ましくは、マウス、ラットなどのモデル動物のものが有用である。むしろ、本発明の組織は、導入する核酸分子の性質、目的、核酸分子が導入されるべき宿主との関係で決定されるべきである。本発明の組織に含まれる核酸分子は、本発明のベクターであってもよい。
本発明の生物は、どのような種類の生物であってもよいが、好ましくは、真核生物生物を含み、より好ましくは、哺乳動物生物を含み、さらに好ましくは、げっ歯類生物を含むがそれらに限定されない。より好ましくは、マウス、ラットなどのモデル動物のものが有用である。むしろ、本発明の生物は、導入する核酸分子の性質、目的、核酸分子が導入されるべき宿主との関係で決定されるべきである。本発明の生物に含まれる核酸分子は、本発明のベクターであってもよい。
本発明のゲノム改変方法において用いられるレトロトランスポゾンは、任意の細胞を対象とすることができるが、通常、原核生物、酵母、動物、植物、昆虫などに由来するレトロトランスポゾンが用いられ、好ましくは、真核生物細胞に由来し、より好ましくは、哺乳動物に由来し、さらに好ましくは、げっ歯類(例えば、マウス、ラットなど)または霊長類(ヒト、ゴリラ、チンパンジー、サル)の細胞に由来するレトロトランスポゾンであることが有利である。
特定の実施形態において、本発明のゲノム改変方法において用いられるレトロトランスポゾン(の天然の宿主)と、対象とする細胞とは、同一種に由来してもよく異なる種に由来してもよく、同一種に由来することが好ましいが、それに限定されない。そのような組み合わせ例としては、例えば、マウス由来のレトロトランスポゾンおよびマウス細胞(同一種)、マウス由来のレトロトランスポゾンおよびヒト細胞(異種)が挙げられるがそれらに限定されない。
別の局面において、本発明は、細胞内のゲノムを改変するためのキットを提供する。このようなキットは、A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物;B)細胞に核酸構築物を導入するための手段;およびC)核酸構築物によりゲノムが改変された細胞を選択する手段を備える。
ここで、LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物は、上述の節(LTR型レトロトランスポゾンの核酸構築物)に記載されるような任意の形態のものを利用することができる。
細胞に核酸構築物を導入するための手段もまた、任意のものを使用することができ、例えば、トランスフェクション試薬を用いることが好ましい。このトランスフェクション試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬およびリン酸カルシウムからなる群より選択される。このようなトランスフェクション試薬としては、例えば、Effectene Transfection Reagent(cat.no.301425,Qiagen,CA),TransFastTM Transfection Reagent(E2431,Promega,WI),TfxTM−20 Reagent(E2391,Promega,WI),SuperFect Transfection Reagent(301305,Qiagen,CA),PolyFect Transfection Reagent(301105,Qiagen,CA),LipofectAMINE 2000 Reagent(11668−019,Invitrogen corporation,CA),JetPEI(×4)conc.(101−30,Polyplus−transfection,France)およびExGen 500(R0511,Fermentas Inc.,MD)などを挙げることができるがそれらに限定されない。
好ましい実施形態において、選択手段は、外来遺伝子の発現を検出する手段(例えば、抗生物質耐性であれば、その抗生物質、栄養補充性であれば、その栄養などであり、あるいは、外来遺伝子の発現を検出する手段(例えば、抗生物質耐性であれば、その抗生物質、栄養補充性であれば、その栄養などであり、あるいは、PCRを行うための手段(例えば、外来遺伝子をコードする配列とレトロトランスポゾンをコードする配列とのネスティドPCRのためのPCRプライマー)などが用いられ得るがそれに限定されない。
キットには、必要に応じて、実験手順を記載した指示書が添付されていることが好ましい。あるいは、本発明のキットには、核酸分子およびレトロトランスポゾンの使用法を記載する説明書が備えられる。この説明書は、紙媒体であってもよいが、伝送媒体(例えば、ネットワーク上の情報)であってもよい。この説明書には、核酸分子の扱い、形質転換法、培養法、再生法、トランスポゾンのインキュベーション法など、トランスジェニック生物に関する種々のプロトコルが記載されている。記載は、単言語であってもよいが、二言語以上の言語が併記されていてもよい。
(レトロトランスポゾンの転位活性の検定およびそのキット)
別の局面において、本発明は、レトロトランスポゾンの転位活性を検定するための方法を提供する。この方法は、A)検定すべきレトロトランスポゾンをコードする核酸配列、およびルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーター配列を含む核酸構築物を提供する工程;B)該細胞に、該核酸構築物を導入する工程;C)該細胞を所定の期間培養する工程;およびD)該核酸構築物による転位を検出する工程、を包含する。本発明は、従来制御不可能であると考えられ、転位活性は観察することができないと考えられていたLTR型レトロトランスポゾンが、特定のプロモーター配列の下で組み込まれて細胞に導入されることによって、予想外に、その転位活性を観察することができるという効果が奏される。
本発明のレトロトランスポゾンの転位活性の検定において使用されるLTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物は、本明細書において、上記(LTR型レトロトランスポゾンの核酸構築物)において詳述されているように、任意の形態をゲノム改変に用いることができる。
本発明のレトロトランスポゾンの転位活性の検定において、細胞に、核酸構築物を導入する技術としては、当該分野において周知の技術を用いることができる。そのような核酸構築物の導入技術は、本明細書において(ゲノム改変法)の節で詳述した。
転位活性の検出は、ライゲーション媒介PCRを用いることが好ましい。転位活性を数値化することができるからである。本発明においてライゲーション媒介PCRを用いる場合は、以下のような手順を用いることができる:
適切な量のゲノムDNAをEcoRV、HincII、MscI、ScaI、SmaI等の制限酵素で切断し、熱処理によって酵素を失活させたのちに、適切なリンカーDNAを接続する。リンカーの接続されたゲノムDNA断片を鋳型として、リンカーに特異的なプライマーと標的(IAPなど)内部のneoカセットに特異的なプライマーとでnested PCRを行う。1回目のPCRで用いたプライマーは、リンカー特異的プライマーおよび外来遺伝子(neoなど)カセット特異的プライマーであり、2回目のPCRで用いたプライマーは、リンカー特異的プライマーおよび外来遺伝子(neoなど)カセット特異的プライマーまたは外来遺伝子(neoなど)カセット特異的プライマーである。
PCRの条件は、適宜決定することができるが、例えば、1回目、2回目ともに、94℃×5分、(94℃×1分−55℃×1分−68℃×2分)を30サイクル、68℃×7分などを用いることができる。例えば、エキスパンドハイファイPCRシステム(Roche)を用いることができる。増幅されたバンドの塩基配列は例えば、ABI PRISM 3100などの配列分析装置により解析し、Ensembl(http://www.ensembl.org/)などのデータベースによってゲノム上の位置とそこに存在する遺伝子を決定することができる。
上述のように本発明のレトロトランスポゾンによる転位活性検出は、ゲノムデータベースとライゲーション媒介PCRによって得られた配列を比較することによって行うことができる。このようなゲノムデータベースとしては、上述のEnsemblの他、GenBank、DDBIなどの他のデータベースを用いることもできる。比較は、任意のツールを用いて行うことができ、例えば、Ensemblに付属のツールを用いてもよい。
別の局面において、本発明は、レトロトランスポゾンの転位活性を検定するためのキットを提供する。この方法は、A)検定すべきレトロトランスポゾンをコードする核酸配列、およびルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーター配列を含む核酸構築物;B)該細胞に核酸構築物を導入する手段;およびC)該核酸構築物による転位を検出する手段、を備える。ここで、個々の核酸構築物、導入手段および転位を検出する手段は、「ゲノム改変方法」において記載される任意の手段を用いることができる。キットには、必要に応じて、実験手順を記載した指示書が添付されていることが好ましい。
好ましい実施形態において、選択手段は、PCRを行うための手段であり、そのような手段は、外来遺伝子をコードする配列とレトロトランスポゾンをコードする配列とのネスティドPCRのためのPCRプライマーを含み得るがそれに限定されない。
(トランスジェニック生物作製法およびキット)
別の局面において、本発明は、トランスジェニック生物を作製するための方法を提供する。このような方法は、A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物を提供する工程;B)該核酸構築物を、所望の生物の生殖細胞に導入する工程;C)該生殖細胞においてゲノムが改変された生殖細胞を選択する工程;およびD)ゲノムが改変された該生殖細胞を用いて生物を再生する工程、を包含する。
LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物は、本発明の上述の節において説明されるような任意の形態を用いることができる。該核酸分子で、所望の生物の生殖細胞に導入することもまた、当該分野における周知技術(例えば、本明細書において記載されるような遺伝子組み換え技術)を用いて行うことができ、上述の遺伝子導入技術のうち任意のものを利用することができる。選択もまた、上述の任意の選択技術を用いることができ、そのような技術は、導入される核酸構築物に応じて変動する。
形質転換された生殖細胞を用いて生物を再生するもまた、生物に応じて適宜適切な方法を当業者は選択することができる。
ゲノムが改変された哺乳動物は、例えば相同組換えを応用したポジティブネガティブセレクション法を用いて作製することができる(米国特許第5,464,764号公報、米国特許第5,487,992号公報、米国特許第5,627,059号公報、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.86,8932−8935,1989、Nature,Vol.342,435−438,1989など)。ジーンターゲティングの概説に関しては、例えば、村松正實、山本雅編集、『実験医学別冊 新訂 遺伝子工学ハンドブック 改訂第3版』(1999年、羊土社発行)中特に239から256頁、相沢慎一(1995)実験医学別冊「ジーンターゲティング−ES細胞を用いた変異マウスの作製」などに記載され、本明細書において使用することができる。
高等生物では、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子を用いる陽性選択とHSVのチミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリア毒素遺伝子を用いる陰性選択により組換え体の効率的な選別が行われている。ノックアウトPCRまたはサザンブロット法により相同組換え体の選択が行われる。すなわち、標的遺伝子の一部を陽性選択用のネオマイシン耐性遺伝子等で置換し、その末端に陰性選択用のHSVTK遺伝子等を連結したターゲティングベクターを作成し、エレクトロポレーションによりES細胞に導入し、G418およびガンシクロビルの存在下で選択して、生じたコロニーを単離し、さらにPCRまたはサザンブロットにより相同組換え体を選択することができる。
このように、機能が改変した変異を有するゲノム改変(標的遺伝子組換え、遺伝子破壊)マウスを作製すると方法は、標的とした遺伝子だけに変異が導入されるので、その遺伝子機能の解析に有用である。
所望の相同組換え体を選択した後、得られた組換えES細胞を胚盤注入法または集合キメラ法により正常な胚と混合してES細胞と宿主胚とのキメラマウスを作製する。胚盤注入法では、ES細胞を胚盤胞にガラスピペットで注入する。集合キメラ法では、ES細胞の塊と透明帯を除去した8細胞期の胚とを接着させる。ES細胞を導入した胚盤胞を偽妊娠させた代理母の子宮に移植してキメラマウスを得る。ES細胞は、全能性を有するので、生体内では、生殖細胞を含め、あらゆる種類の細胞に分化することができる。ES細胞由来の生殖細胞を有するキメラマウスと正常マウスを交配させるとES細胞の染色体をヘテロに有するマウスが得られ、このマウス同士を交配するとES細胞の改変染色体をホモに有するノックアウトマウスが得られる。得られたキメラマウスから改変染色体をホモに有するノックアウトマウスを得るには、雄性キメラマウスと雌性野生型マウスとを交配して、F1世代のヘテロ接合体マウスを産出させ、生まれた雄性および雌性のヘテロ接合体マウスを交配して、F2世代のホモ接合体マウスを選択する。F1およびF2の各世代において所望の遺伝子変異が導入されているか否かは、組換えES細胞のアッセイと同様に、サザンブロッティング、PCR、塩基配列の解読など当該分野において慣用される方法を用いて分析され得る。
好ましい実施形態において、本発明のトランスジェニック生物が対象とする生物は、真核生物である。本発明におけるレトロトランスポゾンの効果がより発揮されやすいからである。
別の好ましい実施形態において、本発明のトランスジェニック生物が対象とする生物は、哺乳動物を含む。本発明におけるレトロトランスポゾンの効果がより発揮されやすいからである。ここで、より好ましくは、この哺乳動物は、げっ歯類動物であり、より好ましくは、マウス、ラットなどのモデル動物である。
別の局面において、本発明は、トランスジェニック生物を作製するためのキットを提供する。この方法は、A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物;B)該核酸構築物を所望の生物の生殖細胞に導入する手段;C)該生殖細胞においてゲノムが改変された生殖細胞を選択する手段;およびD)ゲノムが改変された該生殖細胞を用いて生物を再生する手段、を備える。
ここで、LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物は、上述の節(LTR型レトロトランスポゾンの核酸構築物)に記載されるような任意の形態のものを利用することができる。
核酸構築物の生殖細胞への導入手段は、上述の「ゲノム改変方法」に記載される方法のうち、生殖細胞に適切である任意の技術を用いることができる。
また、選択および再生については、本節において記載される任意の方法のための手段を用いることができる。ここで、再生のための手段には、仮親となる生物体を含み得る。このような仮親は、偽妊娠状態になり得る任意の生物(例えば、マウスなど)を用いることができる。
(新規プロモーター)
本発明は、さらに、新規プロモーターを提供する。このプロモーターは、サイトメガロウイルスエンハンサーおよびトリβアクチンプロモーターを含み、該サイトメガロウイルスエンハンサーおよび該トリβアクチンプロモーターの少なくとも一方は、天然の全長配列よりも短い配列を含む。このように天然の全長配列よりも短い配列を有するは、CAプロモーター配列とも称する。従来は、CAGプロモーター配列の全長がないと、転写活性を発揮しないと考えられていたことから、その一部の配列によってほぼCAGプロモーターに匹敵する活性が得られたことは驚くべき効果であるといえる。
1つの好ましい実施形態において、本発明のプロモーターにおいて全長より短縮される配列は、転写開始部位より下流の配列が削られていることに起因する。従来、転写開始部位以降の配列が不要であることは明らかとなっておらず、従って、本発明は、新規のプロモーター配列を提供するといえる。
より好ましい実施形態では、本発明のプロモーターでは、転写開始部位より下流の配列が全部削られている。このような配列でも削られる前と同程度のプロモーター活性を有することが実証されることは予想外であった。また、転写開始部位より下流の配列がないことによって、転写開始部位に直接連結されるべき配列にも使用することができるプロモーター配列が提供されたことになる。このようなプロモーター配列で、強力なプロモーター活性(例えば、レトロトランスポゾンの転位活性を観察できるようなレベル)を有するものが従来知られておらず、本発明の新規プロモーターは、従来のプロモーターでは発揮することができなかった格別の効果をもたらす。
別の実施形態において、本発明のプロモーターは、さらに、転写開始部位より下流の配列およびプロモーター領域の一部が削られている。転写開始部位に加えて、プロモーター領域(例えば、転写開始部位の上流1塩基、2塩基、3塩基など)が削られていてもプロモーター活性が保持されていることが見出された。従って、この形態の場合、本発明は、プロモーター配列の一部を削る必要がある構成が必要な場合に特に有用である。
このプロモーター配列は、具体的には、例えば、サイトメガロウイルスエンハンサーとして、配列番号36に示される配列を含む。さらに、トリβアクチンプロモーターは、配列番号8に示される配列を含む。
本発明の新規プロモーターとしては、例えば、配列番号5、6または7などが挙げられるがそれらに限定されない。もっとも好ましくは、本発明の新規プロモーターは配列番号7(R領域がないもの)に示される配列を含むか、またはその配列からなる。
別の実施形態において、本発明の新規プロモーターは、配列番号6(R領域がなくさらにプロモーター領域の一部が欠如するもの)に示される配列を含む、またはその配列からなる。
(LTR型レトロトランスポゾンの種々の使用)
別の局面において、本発明は、LTR型レトロトランスポゾンの、ゲノム改変のための、使用を提供する。ゲノム改変のために使用するための種々のLTR型レトロトランスポゾンの形態は、本明細書において詳述されている。
別の局面において、本発明は、ルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーターの、ゲノム改変のための、使用を提供する。ゲノム改変のために使用するための種々のプロモーターの形態は、本明細書において詳述されている。
他の局面において、本発明は、ルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーターの、LTR型レトロトランスポゾンの確認のための、使用を提供する。LTR型レトロトランスポゾンの確認のために使用するための種々のプロモーターの形態は、本明細書において詳述されている。
本発明は、従来不可能または効率が悪かった、網羅的なゲノム改変を簡便に行うことができるようになったという点で従来に比して予想外の効果を達成する。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、請求の範囲によってのみ限定される。
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。以下の実施例において用いられる試薬などは、例外を除き、Sigma(St.Louis,USA)、和光純薬(大阪、日本)、などから市販されるものを用いた。動物の取り扱いは、大阪大学医学部において規定される規準を遵守して行った。本発明で用いる発現ベクターの作製方法を具体例を挙げて説明する。なお、このような例で用いられる出発プラスミド、プロモーター等の構成要素を同等のもので置き換えて実施することは当業者にとって容易である。
以下、本発明の内容を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(実施例1:IAPの構築)
1.IAPベクターの作製
(a)ゲノムからの完全長IAP配列の単離
C3H/Heマウスへの放射線照射により誘発された白血病細胞の中で、塩基配列から完全長と考えられるIAPの転位を認めた細胞(L8065−AML細胞、Ishihara & Tanaka,FEBS Lett 418,205−209,1997)より、PCRによって、このIAPを単離した。まず、このIAP配列の外側のゲノム領域に、以下に記す2つのプライマーを設定した: 5’−GCAGCGGCCGCCGTGGTGGCACACACTTTTAGTCCCCGCAG−3’(配列番号9)および5’−GGCGCACTAGTGATGCCCTCTCAGGCCTCCACTCAGGCACT−3’(配列番号10)。各々、5’末端部に、PCR産物には存在しない制限酵素部位であるNotIおよびSpeIが導入されている。PCRの条件は、94℃×2分、(94℃×15秒 −65℃×30秒 −68℃×6分)を10サイクル、(94℃×15秒 −65℃×30秒 −68℃×((6分+5秒/サイクル)))を20サイクル、72℃×7分であり、エキスパンドハイファイPCRシステム(ロッシュダイアグノスティックス)を用いた。
増幅したバンドをNotIとSpeIで切断し、pBluescript II KS+ベクターのNotI−SpeI部位へクローニングした。得られた10個のクローンについて、ABI PRISM 3100(アプライドバイオシステムズ)により塩基配列を決定し、て、クローニング前のPCR産物のダイレクトシークエンシングの結果と比較したところ、10個のクローンのいずれについても、PCRによる塩基配列置換が起きていた。そこで、塩基配列置換がIAP中心部の2.5 kb BstEII−XbaI領域のみに認めたクローンを選び、以下の方法で、よりフィデリティーの高いPfxポリメラーゼ(インビトロジェン)によるPCR産物に由来する2.5 kb BstEII−XbaI領域と置き換えた。まず、前出のL8065−AML細胞ゲノムを鋳型として、以下のプライマーによりPCRを行った:5’−ATGCCCAGATTTCTTCCACGGCTATTAGGG−3’(配列番号11)および5’−GATGCCCTCTCAGGCCTCCACTCAGGCACT−3’(配列番号12)。PCRの条件は、94℃×2分、(94℃×15秒 −65℃×30秒 −68℃×5分)を25サイクル、68℃×2分であり、Zero Blunt TOPO PCRクローニングキット(インビトロジェン)によってクローニングした。2.5 kb BstEII−XbaI領域に塩基配列置換が導入されていないクローンを同定し、上記のクローンの同領域と置き換えることにより、完全長のIAPベクターを得、pU3gpと命名した。
(b)neoカセットのIAPベクターヘの挿入
ガンマグロビンのイントロンがneo遺伝子に対して逆向きになる方向でneo遺伝子内部へ挿入されたカセットを、pJM101/L1.3(Kimberland et al.Hum Mol Genet 8;1557−1560,1999)のApaLI−AccI断片として単離し、前出のpU3gpのpol遺伝子下流に位置するNdeI認識部位へ挿入した。その際、pU3gpに対して、ガンマグロビンのイントロンが順向きになったクローンを選び、pU3gp−neoと命名した(図4A)。
(c)5’のU3領域のCMVプロモーターでの置換
pcDNA3(インビトロジェン)由来のCMVプロモーター配列を鋳型として、以下のプライマーでPCRを行った:hCMV−U3,5’−CCAAGCGGCCGCTGGCCATTGCATACGTTGTATCCATATC−3’(配列番号13);hCMV−L3,5’−GCGAGAAAAACGGTTCACTAAACGAGCTCTGCTTATATAG−3’(配列番号14)。IAPのR領域の5’側末端からU5領域の下流までの約0.3 kbを、以下のPCRプライマーで増幅した:R−U1,5’−TTAGTGAACCGTTTTTCTCGCTCTCTTGCT−3’(配列番号15);R−L1,5’−TCTGAAATGAAGTATCCCTCCTGCGCCAGT−3’(配列番号16)。いずれも、Pfxポリメラーゼを用い、以下のPCRの条件で行った:94℃×2分、(94℃×15秒 −55℃×30秒 −68℃×1分)を20サイクル、68℃×2分。hCMV−L3とR−U1の5’側が相補的な配列になっているため、両方のPCR産物を混ぜたものを鋳型としてhCMV−U3とR−L1でPCRを行うと、CMVプロモーターとR領域が融合したPCR産物が得られた。その際のPCR条件は以下の通り:94℃×2分、(94℃×15秒 −55℃×30秒 −68℃×1分)を15サイクル、68℃×2分。このPCR産物をZero Blunt TOPO PCRクローニングキットによってクローニングし、PCRによる塩基配列置換の起きていないクローンを同定した。このクローンのNotI−BstEI断片はCMVプロモーター領域 −R領域 −U5領域を含むので、これを、前出のpU3gpおよびpU3gp−neoのNotI−BstEI領域と置き換えることにより、5‘側LTRのU3領域がCMVプロモーターで置き換えられた構造のベクターが得られ、各々、pCMVgp、pCMVgp−neoと命名した(図4A)。
(d)polまたはgag−polに欠失を伴うIAPべクターの作製(図5A)
pCMVgp−neoから、IAPのpol遺伝子領域内のBglII認識部位からpol遺伝子下流のNdeI認識部位までを欠失させたベクターを作製し、pCMVgp−neo−d1とした(図5A)。同様に、pCMVgp−neoから、IAPのgag領域内のBstEII認識部位からpol遺伝子下流のNdeI認識部位までを欠失させたベクターを作製し、pCMVgp−neo−d2とした(図5A)。
(結果)
本実施例のベクター作製のスキームを図4および5に示す。図4Aは、実施例1において用いられるベクターの構造を示す。pU3gp−neoは、マウス白血病細胞由来の、完全長と予想されるIAPエレメントに対して、転位を検出するためのneoカセットを挿入したもの。pCMVgp−neoは、IAPエレメントのプロモーター領域(U3領域)をCMVプロモーターで置き換えたものである。
CMVプロモーターとR領域の接合部の配列を図4Bに示す。図4Bから明らかなように、本実施例では、CMVプロモーターの転写開始点が、IAPの本来の転写開始点(R領域の5’末端部)と一致するように構築した。
図5Aに、本実施例で作製した各種ベクターの構造を示す。pCMVgp−neoは、図4(A)で説明したものと同じものを比較の対象として示している。これに対し、pCMVgp−neo−d1とpCMVgp−neo−d2は、各々、pol遺伝子のBglII切断部位より3’側、gag遺伝子のBstEII切断部位より3’側を欠失させたもの。pCMVgpは、neoカセットを持たない完全長のIAPであり、かつ、U3領域をCMVプロモーターで置き換えたもの。よって、gag−polを発現する。
このベクターを以下の実施例で用いた。
(実施例2:トランスフェクション(ベクターの細胞内への導入)および薬剤選択)
トランスフェクション前日に、25万個の細胞を6穴培養プレートへ播種した。トランスフェクションは、NIH3T3細胞に対しては1.5 μgのDNAをエフェクテン試薬(キアゲン)を用いて、HeLa細胞に対しては4 μgのDNAをリポフェクタミン2000(インビトロジェン)を用いて行った。G418による選択は、トランスフェクション後に細胞を4〜7日間継代したのちに開始した。G418の濃度は、NIH3T3に対しては500 μg/mlを、HeLaに対しては600 μg/mlを用いた。12〜14日経過した時点で、G418耐性コロニー数を算定した。GFPの蛍光は、トランスフェクションから3日後から、顕微鏡下で検出できた。
(結果)
本実施例の結果を図3C、4および5に示す。
図4Cに転位の検出の原理を示す。転写とスプライシングにより、neoカセット内のイントロンが除かれて、neo遺伝子が再構成される。この時点では、転写産物とneo遺伝子が逆方向であるために、neo遺伝子は発現しないが、逆転写とゲノムへの挿入が起きると、neo遺伝子が有するプロモーターから転写が起きてneo遺伝子が発現し、細胞がG418耐性になり、転位の起きたことが示される。
結果例を図3Cに示す。図3Cには、G418耐性コロニーの出現頻度が示される。NIH3T3細胞へベクターをトランスフェクトし、4日後よりG418選択を開始し、12日後に染色した。IAP(i)では数多くのコロニーが出現した一方で、gag−polに変異を導入したベクター(ii)からはコロニーが出現しなかった。よって、今回用いたIAPは、それ自身がコードするGag−Polを用いて転位を起こしていることが証明された。コントロールとして、IAPと同様にCMVプロモーターにより転写され、かつ、同じイントロン入りのneoカセットを持つ非LTR型のLINE1(iii) (gift from John Moran, Cell 110,315,2002)を用いたが、IAPの方がより多くのG418耐性コロニーが出現し、今回用いたIAPの活性の高さが証明された。この結果を、以下に別の側面から記載する。
図4Dに本実施例によるNIH3T3細胞へのトランスフェクションによる転位の検出結果を、5×10の細胞に由来するG418耐性コロニー数で示す。pJM101/L1.3は、他のレトロトランスポゾンであるLINE1を用いたベクター。示される結果から明らかなように、IAP本来のプロモーターであるU3領域を用いた場合ではG418耐性コロニーが出現しなかったのに対し、CMVプロモーターを用いた際には、多数のコロニーが得られ、プロモーターを改変した効果が明らかとなった。また、改変型IAPベクターは、LINE1ベクターと同等以上の転位能を有すことがわかった。
図5に、本発明において用いられ得るIAPが完全な転位能を有すことの証明ができること、およびgag−polの発現ユニットを分離することにより転位を制御できることの証明ができることを示す。
図5Bに、本実施例におけるHeLa細胞へのトランスフェクションによる、各々のベクターの活性の検定を示す。5×10の細胞に由来するG418耐性コロニー数を示す。pCMVgp−neoでは多数のG418耐性コロニーを認めたのに対し、pCMVgp−pol−d1およびCMVgp−pol−d2ではG418耐性コロニーを認めなかったことより、今回のIAPのgag−polが転位に必須であることが明らかとなった。即ち、本発明のIAPは、自立的に転位を起こす能力があるといえる。また、gag−polを発現するpCMVgpを同時にトランスフェクションすることで、pCMVgp−pol−d1およびpCMVgp−pol−d2による転位が検出できた。このことから、IAPベクターを、gag−pol欠損型のIAPベクターとgag−polの発現ベクターの2つに分離することにより、転位を制御できると考えられる。
(実施例3:ライゲーション媒介性(Ligation−mediated)PCRによる、IAPベクターのゲノムへの挿入部位の決定法)
100 ngのゲノムDNAをEcoRV、HincII、MscI、ScaI、SmaI等の制限酵素で切断し、熱処理によって酵素を失活させたのちに、リンカーDNAを接続した。リンカー DNAは、5’−CGAATCGTAACCGTTCGTACGAGAATTCGTACGAGAATCGCTGTCCTCTCCAACGAGCCAAGG−3’(配列番号17)および5’−CCTTGGCTCGTTTTTTTTTGCAAAAA−3’(配列番号18)を相補させることにより作製した。リンカーの接続されたゲノムDNA断片を鋳型として、リンカーに特異的なプライマーとIAP内部のneoカセットに特異的なプライマーとでnested PCRを行った。1回目のPCRで用いたプライマーは、5’−CGAATCGTAACCGTTCGTACGAGAA−3’(配列番号19)(リンカー特異的プライマー)と5’−GAGATGCATGCTTTGCATACTTCTGCCTGC−3’(配列番号20)(neoカセット特異的プライマー)であり、2回目のPCRで用いたプライマーは、5’−TCGTACGAGAATCGCTGTCCTCTCC−3’(配列番号21)(リンカー特異的プライマー)と5’−GGAGCCTGGGGACTTTCCACACCTGGTTGC−3’(配列番号22)(neoカセット特異的プライマー)または5’−GGGGAGCCTGGGGACTTTCCACACCCTAAC−3’ (配列番号23)(neoカセット特異的プライマー)である。PCRの条件は、1回目、2回目ともに、94℃×5分、(94℃×1分−55℃×1分−68℃×2分)を30サイクル、68℃×7分であり、エキスパンドハイファイPCRシステムを用いた。増幅されたバンドの塩基配列はABI PRISM 3100により解析し、Ensemblデータベース(http://www.ensembl.org/)によってゲノム上の位置とそこに存在する遺伝子を決定した(図6AおよびB)。
図6に、本実施例によりIAPベクターが遺伝子内へ挿入した例を示す。図6Aには、ライゲーション媒介性PCRによって決定された領域を示し、Ensemblデータベースによって決定された結果を図6Bに示す。決定した配列をEnsemblデータベースにより、検索した結果、サイトグロビン(cytoglobin)遺伝子内に挿入していることが明らかになり、IAPベクターにより遺伝子へ変異を導入できることが示された。
以上より、本実施例において転位された場所は、染色体11のAL607039にあるサイトグロビン遺伝子であることが明らかになった。従って、本発明は、実際にゲノムに網羅的に転位し得る活性を有することが実証された。
(実施例4:U3領域のCAプロモーターでの置換)
次に、別のプロモータ配列を用いた場合のレトロトランスポゾンの転位活性を観察した。
pCX−EGFP(Okabe et al,FEBS Lett 407;313−319,1997)を鋳型として、CAGプロモーター配列(Niwa et al.Gene 108;193−199,1991)の中のヒト・サイトメガロウイルスエンハンサー領域からチキン・ベータ−アクチンプロモーター転写開始点までを、PCRにより増幅した。5’側上流のプライマーにはCA−U1(5’−GCAATGCGGCCGCATTGATTATTGACTAGTTATTAATAG−3’(配列番号24))を用いた。チキン・ベータ−アクチンプロモーターの転写開始点は2箇所報告されているので(Kost et al,Nucleic Acids Res 11:8287−8301,1983)、3’側のプライマーには、各々に対応する以下の2つのプライマーを用いた:CA−L1,5’−CGAGAAAAACCGCCCGCCGCGCGCTTCGCTTTTTATAGG−3’(配列番号25)およびCA−L2,5’−CGAGAAAAACCCCGCCCGCCGCGCGCTTCGCTTTTTATAG−3’(配列番号26)。この結果増幅される領域を、各々、1型CAプロモーター(CA1)および2型CAプロモーター(CA2)と命名した。PCRにはPfxポリメラーゼを用い、かつ、同ポリメラーゼに添付のエンハンサー試薬を1×の濃度で用いた。PCRの条件は、94℃×2分、(94℃×15秒 −55℃×30秒 −68℃×1分)を30サイクル、68℃×2分である。IAPのR領域の5’側末端からU5領域の下流までの約0.3 kbを、以下のPCRプライマーで増幅した:R−U3,5’−CGCGGCGGGCGGTTTTTCTCGCTCTCTTGCTTCTTG−3’(配列番号27)とR−L1,5’−TCTGAAATGAAGTATCCCTCCTGCGCCAGT−3’(配列番号28)、または、R−U4,5’−CGGCGGGCGGGGTTTTTCTCGCTCTCTTGCTTCTTG−3’(配列番号29)とR−L1。PCRにはPfxポリメラーゼを用い(エンハンサー試薬は使用せず)、PCRの条件は、94℃×2分、(94℃×15秒 −55℃×30秒 −68℃×1分)を15サイクル、68℃×2分である。CA−U1とCA−L1によるPCR産物と、R−U3とR−L1によるPCR産物を混合し、CA−U1とR−L1を用いてPCRを行った。同様に、CA−U1とCA−L2によるPCR産物と、R−U4とR−L1によるPCR産物を混合し、同じくCA−U1とR−L1を用いてPCRを行った。CA−L1、CA−L2とR−U3、R−U4の5’側が相補的な配列になるようにデザインされているため、このPCRによって、ベータ−アクチンプロモーターの転写開始点とR領域の5’末端が融合する。PCRにはPfxポリメラーゼを用い、同ポリメラーゼに添付のエンハンサー試薬を1×の濃度で使用し、以下の条件で増幅した:94℃×2分、(94℃×15秒 −55℃×30秒 −68℃×1分)を30サイクル、68℃×2分。PCR産物をZero Blunt TOPO PCRクローニングキットによってクローニングし、PCRによる塩基配列置換の起きていないクローンを同定したのち、NotI−BspEIで切断後、pCMVgp−neoのNotI−BspI領域と置換した。得られたベクターを、pCA1gp−neoおよびpCA2gp−neoと命名した(図7A)。
(結果)
図7に、CAプロモーターの効果を示す。(A)IAPのプロモーターであるU3領域を、サイトメガロウイルスエンハンサーとチキン・ベータ−アクチンプロモーターで置き換えた2つのベクター(pCA1gp−neo、pCA2gp−neo)を作製した。各々のベクターのプロモーターを、1型CAプロモーター(CA1)、2型CAプロモーター(CA2)と呼ぶ。詳細は(B)を参照。pCMVgp−neoは、図1に同じ。(B)(A)の2つのCAプロモーターとR領域の接合部の配列。チキン・ベータ−アクチンプロモーターの転写開始点は、2箇所報告されている(前出の((方法))の項を参照)。そこで、各々の場合に対応して、転写がR領域の5’末端から始まるようにデザインし、1型および2型のCAプロモーター(CA1、CA2)と命名した。(C)CA1、CA2、CMVプロモーターの比較。トランスフェクション後、5×10のNIH3T3およびHeLaに由来するG418耐性コロニー数を検定した。CA2プロモーターにより、最も多くのコロニーを得た。
図7Bには、1型CAプロモーターおよび2型CAプロモーターを示す。このように、2型CAプロモーターは、1型CAプロモーターよりも2塩基長い。チキン・ベータ−アクチンプロモーターの転写開始点は、2箇所報告されている(上記実施例を参照)。そこで、各々の場合に対応して、転写がR領域の5’末端から始まるようにデザインし、1型および2型のCAプロモーター(CA1、CA2)と命名した。
これらを用いてG418耐性コロニー数を見た結果を図7Cに示す。トランスフェクション後、5×10のNIH3T3およびHeLaに由来するG418耐性コロニー数を検定した。CA2プロモーターにより、最も多くのコロニーを得た。示されるように、2型CAプロモーターによってもたらされる転位活性はCMVなどよりも高い。これは、CAGが通常もっている活性に匹敵またはそれ以上であると見積もられることから、本発明のCAプロモーターの強力なプロモーター活性が実証されたことになる。
(実施例5:hrGFPカセットの作製と、IAPベクターへの挿入)
次に、外来遺伝子として、GFP遺伝子を用いた実証例を提示する。
hrGFP遺伝子(ストラタジーン)の192番目の塩基と193番目の塩基(翻訳開始部位のATGのAを1番目の塩基と定義する)との間に、前出のpJM101/L1.3のneoカセット内のγグロビン−イントロンを、hrGFP遺伝子とは逆方向に挿入した。さらに、このhrGFPカセットを前出のpCMVgpのpol遺伝子下流のNdeI部位へ挿入し、IAPとガンマ・グロビン−イントロンが順方向になるものを同定し、pCMVgp−hrGFPと命名した(図8)。
GFP発現の測定は、GFP・specified Filter(オリンパス、東京、日本)およびオリンパス蛍光倒立顕微鏡を用いて×100〜×400の倍率で行った。
図8に、GFPを用いた、転位の可視化例を示す。(A)ベクターの構造:hrGFP内部にイントロンを配置したGFPカセットを作製し、これを、CA2プロモーターを有すIAPベクターに挿入した。(B)転位に伴うGFPの発現:HeLa細胞へ上記のベクターをトランスフェクトしたところ、GFPの蛍光を発する細胞を同定した。これより、IAPの転位を可視化でき、マウス等のモデル動物での転位の検出に有効と考えられる。
このように、GFPで光る細胞は、実際にレトロトランスポゾンを含むベクターが導入された細胞に限定されていた。外来遺伝子はどのようなものであっても、実施例2、4のneo遺伝子に加えて、GFP遺伝子でも転位が認められることから、転位され得ることが証明された。
(実施例6:レトロトランスポゾンのゲノムへの改変における生物レベルの実証)
この実施例では、本発明者らは、レトロトランスポゾンが実際のトランスジェニック動物において使用することができるかどうか確認する。レトロトランスポゾンベクターをマウス受精卵に注入する。あるいは、レトロトランスポゾンベクターをES細胞へトランスフェクトして、ベクターDNAが転位反応を介さずにゲノムへ挿入されたES細胞を同定する。
(実施例7:トランスジェニックマウスの作製)
実施例6に示されるような系を用いて、トランスジェニックマウスを作製する。手短に述べると、実施例6で得たES細胞を胚盤胞に打ち込んだものを偽妊娠マウスの卵管または子宮に戻してマウスを誕生させる。変異を調べることによって、レトロトランスポゾンのゲノム改変ゲノム効果がトランスジェニック動物においても確認される。
(実施例8:マウス個体でのIAPエレメントの転位の検定)
本実施例では、図8AのベクターのDNA断片をマウス受精卵へ注入し、偽妊娠マウスの卵管へ移植した。得られたマウスを、hrGFPに特異的なプライマーを用いたPCRでスクリーニングすることにより、founderマウスを同定し、野生型マウスと交配することにより、マウスの系統を樹立した。具体的には、図8のpCA2gp-hrGFPを有するトランスジェニックマウスを作製し、マウスの尻尾のDNAを鋳型にして、図8に示される位置に相当するプライマーでPCRを行った。プライマーの配列は以下の通りである。

配列番号37 AGGGCTGCGGCAAGGGCAACATCCTGTTCG(1stセンス)
配列番号38 GCCGCCGTCCTCCACGTAGGTCTTCTCCAG(1stアンチセンス)
配列番号39 GGCAACCAGCTGGTGCAGATCCGCGTGACC(2ndセンス)
配列番号40 GTCCTTCACCACGCCCTTGCTCTTCATCAG(2ndアンチセンス)

IAPの転位が起きると、GFP内部のイントロンが無くなるので、0.45kbのバンドが出現すると予想される。図8に示したように、13系統のマウスのうち3系統において0.45kbのバンドが検出され、マウス生体内で転位が起きていることが証明された。
このとき、仔マウスをGFP用フィルターの付随した蛍光実体顕微鏡(ライカ、WILD M10など)で観察し、GFPシグナルは無いが、ベクター配列は有するマウスを同定することができる。得られたマウスを野生型マウスと交配し、仔マウスを、同様の蛍光実体顕微鏡で観察する。全身で蛍光を発するマウスは、親マウスの生殖細胞形成過程で転位が起きたものと推測され、次世代において変異マウスが作製されたとみなすことができる。
図8Aのベクターでは、1つのベクター内に転位に必要なすべての構成要素が存在しているために、転位の制御が困難である。そこで、転位の制御を可能とするために、以下の実験を行う。まず、gag遺伝子の開始コドンに変異を導入したベクター(次項の実施例9のpCA2gp−hrGFP−M1に相当)を作製し、受精卵へのDNA断片のインジェクションと、その後の偽妊娠マウスへの卵管移植により、マウスの系統を樹立した。このマウスに導入されたIAPエレメントは、pol遺伝子に欠失があるために、自律的には転位できない(非自律型)と考えられる。一方、gag−pol遺伝子断片をIAPエレメントから切り出して強力なプロモーター(例えばCAG プロモーター)の下流に配置したgag−pol発現ベクターを作製し、このベクターを有するマウスを、同様の手法で樹立した。得られたマウスを、上記の非自律型ベクターを有するマウスと交配した。得られた仔マウスより、両方のベクターを持つマウスを同定し、これを野生型マウスと交配した。得られた仔マウスを、蛍光実体顕微鏡で観察する。全身で蛍光を発するマウスは、親マウスの生殖細胞形成過程で転位が起きたものと推測され、次世代において変異マウスが作製されたものとみなすことができる。得られた変異マウスを野生型マウスと交配して、非自律型のIAPベクターを持つがgag−pol発現ベクターを失ったマウスを同定する。このマウスでは、非自律型のIAPベクターが転位能を失ったと考えられる。以上のように、マウス個体内での転位を制御できることを確認することができる。
(実施例9:GAGタンパク質のはじめの15アミノ酸が転位のために好ましい)
次に、GAGタンパク質のはじめの15アミノ酸が転位のために好ましいことを実証した。その具体的な様子は図10に示す。
使用した、ベクターの構造は、図10Aに示す。示されるように、図8で自律的転位を示したpCA2gp−hrGFPに対して、pCA2gp−hrGFP−M1ではgag遺伝子の開始コドンに変異を導入しており、その結果、15アミノ酸下流の2番目のATG(配列番号2の16番目の残基)から翻訳が始まると考えられる。
次に、図10Bに示すように、転位効率を検討した。図10Aのベクターを用いて、ここに示す3通りの組み合わせでHeLa細胞へトランスフェクトを行い、7日後にGFP陽性細胞の割合をFACSで解析した。その結果、gag遺伝子の本来の翻訳開始部位のATGに変異を導入したpCA2gp−hrGFP−M1では、転位能が消失した。しかし、同様のベクターを、gag−pol完全長の発現ベクターであるpCA2gpとともにトランスフェクトした際には転位能が回復した。これより、GAGタンパク質の翻訳開始部位からの15アミノ酸が、転位活性を発揮するのに重要であることが示された。このように、ゲノム改変効果を達成するに好ましいと考えられるIAPの完全配列に、GAGタンパク質のはじめの15アミノ酸を有することが重要であることが明らかになった。
(実施例10:非自律型ベクターの転位において、それ自身からGAGタンパク質が翻訳されることが好ましい)
次に、非自律型ベクターの転位において、それ自身からGAGタンパク質が翻訳されることが好ましいことを実証するために、図10に示されるように実験を行った。
使用したベクターの構造は図11Aに示す。はじめの3つのベクターおよびgag−pol発現ベクターは図10と同じであった。pCA2gp−hrGFP−M2とpCA2gp−hrGFP−M3では、gagの2番目のATGの直下に終止コドンを導入しており、GAGタンパク質は短い断片としてしか発現できない。GAGタンパク質に変異のある4つのベクターは、それ自体では転位できないので、非自律型ベクターと定義した。
次に、図11Bに示すように転位効率を検討した。図11Aのトランスファーベクターを、gag−pol発現ベクター(pCA2gp)の存在下、または非存在下(代わりにpBluescriptを使用)でHeLa細胞へトランスフェクトし、7日後にGFP陽性細胞の出現頻度をFACSで解析した。その結果、GAGタンパク質の翻訳が阻害された3つの非自律型ベクターでは、gag−pol発現ベクターの存在下でも転位が著しく低下した。一方、はじめの15アミノ酸以降で完全長の翻訳の起きるpCA2gp−hrGFP−M1のみはgag−pol発現ベクター存在下で高率に転位を認めた。これより、非自律型ベクターの転位には、それ自身からのgagタンパク質の翻訳が好ましいことが示された。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明を用いれば、ゲノム改変を目的場所から離れた場所でも効率よく行うことができるようになった。このような生物は、モデル動物、スクリーニング、薬理試験などで非常に有用である。

Claims (70)

  1. LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、単離された核酸構築物。
  2. 前記LTR型レトロトランスポゾンは、Intracisternal A particle(IAP)型レトロトランスポゾンを含む、請求項1に記載の核酸構築物。
  3. 前記レトロトランスポゾンは、完全長IAPエレメントを含む、請求項1に記載の核酸構築物。
  4. 前記レトロトランスポゾンは、コードするポリペプチドが機能性である、請求項1に記載の核酸構築物。
  5. 前記機能は、転写活性、逆転写活性およびインテグラーゼ活性からなる群より選択される少なくとも1つの活性を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
  6. 前記レトロトランスポゾンは、IAPエレメントであり、LTR、gag、polおよびtRNA結合部位からなる群より選択される少なくとも1つのドメインが配列番号1に対して保存された、請求項1に記載の核酸構築物。
  7. 前記レトロトランスポゾンは、IAPエレメントであり、その核酸配列において、5’側のLTR直下にあるtRNA結合部位において、tccgggacgagaaaaの配列が反復していること、およびR領域のttgcttcttgctctcからなる反復配列を2以上含むことからなる群より選択される少なくとも1つの特徴を有する、請求項1に記載の核酸構築物。
  8. 前記レトロトランスポゾンは、
    (a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
    (b)配列番号2または3および4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
    (c)配列番号2または3および4に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
    (d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
    (e)配列番号2または3および4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
    (f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列にストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
    (g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
  9. 前記レトロトランスポゾンをコードする核酸配列は、配列番号1を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
  10. さらに、プロモーター配列を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
  11. 前記プロモーター配列は、ルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有する、請求項10に記載の核酸構築物。
  12. 前記プロモーター配列は、CMV、CAおよびその改変体からなる群より選択される、請求項10に記載の核酸構築物。
  13. 前記プロモーター配列は、前記LTR型レトロトランスポゾンにおける5’LTRの一部と置き換えられる、請求項10に記載の核酸構築物。
  14. 前記プロモーター配列は、前記LTR型レトロトランスポゾンにおける前記5’LTRのうちU3領域の全部または一部と置き換えられる、請求項13に記載の核酸構築物。
  15. 前記プロモーター配列は、前記レトロトランスポゾンに作動可能に連結される、請求項10に記載の核酸構築物。
  16. 前記プロモーター配列は、その転写開始部位が前記レトロトランスポゾンの転写開始部位に一致するよう(インフレーム)に配置される、請求項10に記載の核酸構築物。
  17. 前記プロモーター配列は、配列番号5〜7のいずれか1つに示される核酸配列、またはその一部もしくは改変体であって、プロモーター活性を有する核酸配列を含む、請求項10に記載の核酸構築物。
  18. 前記プロモーター配列は、配列番号6または7に示される核酸配列からなる、請求項10に記載の核酸構築物。
  19. さらに、外来遺伝子をコードする配列を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
  20. 前記外来遺伝子をコードする配列は、前記レトロトランスポゾン内に配置される、請求項19に記載の核酸構築物。
  21. 前記外来遺伝子は、識別可能な特性を宿主に付与する、請求項19に記載の核酸構築物。
  22. 前記識別可能な特性は、抗生物質耐性、栄養補充性、酵素活性および蛍光からなる群より選択される、請求項21に記載の核酸構築物。
  23. 前記外来遺伝子は、neo、GFP、hyg、puro、zeo、bsr、lacZ、CFP、YFP、RFP、BFPおよびhrGFPからなる群より選択される、請求項19に記載の核酸構築物。
  24. 前記外来遺伝子は、転写、逆転写およびゲノムへの挿入の過程を経ることによって初めて発現されるように構成される、請求項19に記載の核酸構築物。
  25. 前記外来遺伝子は、イントロン配列を含む、請求項19に記載の核酸構築物。
  26. 前記イントロン配列は、前記レトロトランスポゾンとは同一の転写方向(フォワード)に配置される、請求項25に記載の核酸構築物。
  27. 前記イントロン配列は、スプライスドナー配列およびスプライスアクセプター配列によって挟まれる、請求項25に記載の核酸構築物。
  28. 前記核酸構築物は、ゲノムの改変のためのものである、請求項1に記載の核酸構築物。
  29. 前記核酸構築物は、前記レトロトランスポゾンが転位能力を有するか否かを確認するためのものである、請求項11に記載の核酸構築物。
  30. 前記核酸構築物は、前記外来遺伝子を転位させるためのものである、請求項19に記載の核酸構築物。
  31. 前記核酸構築物は、前記外来遺伝子を宿主内に導入するために使用される、請求項19に記載の核酸構築物。
  32. 細胞内のゲノムを改変するための方法であって、
    A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物を提供する工程;
    B)該細胞に、該核酸構築物を導入する工程;
    C)該細胞を所定の期間培養する工程;
    D)該核酸構築物によりゲノムが改変された細胞を選択する工程、
    を包含する、方法。
  33. 前記核酸構築物は、ルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーターをさらに含み、前記所定の期間は転写、逆転写およびゲノムへの挿入が行われるに十分な期間である、請求項32に記載の方法。
  34. 前記プロモーター配列は、その転写開始部位が前記レトロトランスポゾンの転写開始部位に一致するよう(インフレーム)に配置される、請求項32に記載の方法。
  35. 前記核酸構築物は、前記レトロトランスポゾン内に作動可能に配置される外来遺伝子を含み、前記選択は、該外来遺伝子の発現により行われる、請求項32に記載の方法。
  36. 前記外来遺伝子は、前記レトロトランスポゾンの転写方向とは逆方向(リバース)に配置され、スプライスドナー配列およびスプライスアクセプター配列ならびにそれらに挟まれシスに配置されるイントロン配列を含み、前記所定の期間は、転写、逆転写およびゲノムへの挿入が行われるに十分な期間であり、前記選択は、該外来遺伝子の発現により行われる、請求項32に記載の方法。
  37. 前記外来遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子、栄養補充因子、酵素および蛍光物質からなる群より選択される因子をコードし、前記選択は、該因子によって発現される前記細胞の特性によって行われる、請求項36に記載の方法。
  38. 前記LTRレトロトランスポゾンは、IAPエレメントを含む、請求項32に記載の方法。
  39. 前記LTRレトロトランスポゾンは、完全長IAPエレメントを含む、請求項32に記載の方法。
  40. 前記選択は、ライゲーション媒介PCRによって転位された配列を確認することによって行われる、請求項32に記載の方法。
  41. 前記導入は、トランスフェクション、形質転換および形質導入からなる群より選択される形態を含む、請求項32に記載の方法。
  42. 前記導入は、カチオン性脂質およびポリアミン系試薬からなる群より選択される少なくとも1種の物質の存在下で行われる、請求項32に記載の方法。
  43. 前記細胞と、前記レトロトランスポゾンの天然の宿主は、同一種である、請求項32に記載の方法。
  44. 前記細胞と、前記レトロトランスポゾンの天然の宿主は、異種である、請求項32に記載の方法。
  45. レトロトランスポゾンの転位活性を検定するための方法であって、
    A)検定すべきレトロトランスポゾンをコードする核酸配列、およびルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーター配列を含む核酸構築物を提供する工程;
    B)該細胞に、該核酸構築物を導入する工程;
    C)該細胞を所定の期間培養する工程;および
    D)該核酸構築物による転位を検出する工程、
    を包含する、方法。
  46. 前記検出は、ライゲーション媒介PCR工程を包含する、請求項45に記載の方法。
  47. 前記検出は、ゲノムデータベースとライゲーション媒介PCRによって得られた配列とを比較する工程を包含する、請求項45に記載の方法。
  48. トランスジェニック生物を作製するための方法であって、
    A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物を提供する工程;
    B)該核酸構築物を、所望の生物の生殖細胞に導入する工程;
    C)該生殖細胞においてゲノムが改変された生殖細胞を選択する工程;および
    D)ゲノムが改変された該生殖細胞を用いて生物を再生する工程、
    を包含する、方法。
  49. 細胞内のゲノムを改変するためのキットであって、
    A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物;
    B)細胞に核酸構築物を導入するための手段;および
    C)核酸構築物によりゲノムが改変された細胞を選択する手段、
    を備える、キット。
  50. 前記細胞に核酸構築物を導入するための手段は、トランスフェクション試薬を含む、請求項49に記載のキット。
  51. 前記トランスフェクション試薬は、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬およびリン酸カルシウムからなる群より選択される、請求項48に記載のキット。
  52. 前記トランスフェクション試薬は、カチオン性脂質およびポリアミン系試薬からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む、請求項50に記載のキット。
  53. 前記選択手段は、PCRプライマー、抗生物質耐性遺伝子に対応する抗生物質、栄養補充因子、酵素基質および蛍光物質に対応する検知手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段を含む、請求項49に記載のキット。
  54. レトロトランスポゾンの転位活性を検定するためのキットであって、
    A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列、およびルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーター配列を含む核酸構築物;
    B)該細胞に核酸構築物を導入する手段;および
    C)該核酸構築物による転位を検出する手段、
    を備える、キット。
  55. 前記検出手段は、PCRプライマー、抗生物質耐性遺伝子に対応する抗生物質、栄養補充因子、酵素基質および蛍光物質に対応する検知手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段を含む、請求項54に記載のキット。
  56. トランスジェニック生物を作製するためのキットであって、
    A)LTR型レトロトランスポゾンをコードする核酸配列を含む、核酸構築物;
    B)該核酸構築物を所望の生物の生殖細胞に導入する手段;
    C)該生殖細胞においてゲノムが改変された生殖細胞を選択する手段;および
    D)ゲノムが改変された該生殖細胞を用いて生物を再生する手段、
    を備える、キット。
  57. 前記生物を再生する手段は、仮親となる生物体を含む、請求項56に記載のキット。
  58. サイトメガロウイルスエンハンサーおよびトリβアクチンプロモーターを含み、該サイトメガロウイルスエンハンサーおよび該トリβアクチンプロモーターの少なくとも一方は、天然の全長配列よりも短い配列を含む、プロモーター。
  59. 前記短い配列は、転写開始部位より下流の配列が削られていることに起因する、請求項58に記載のプロモーター。
  60. 転写開始部位より下流の配列が全部削られている、請求項58に記載のプロモーター。
  61. 転写開始部位より下流の配列およびプロモーター領域の一部が削られている、請求項58に記載のプロモーター。
  62. 前記サイトメガロウイルスエンハンサーは、配列番号36またはその改変体に示される配列を含む、請求項58に記載のプロモーター。
  63. 前記トリβアクチンプロモーターは、配列番号8またはその改変体に示される配列を含む、請求項58に記載のプロモーター。
  64. 配列番号6に示される配列を含む、請求項58に記載のプロモーター。
  65. 配列番号7に示される配列を含む、請求項58に記載のプロモーター。
  66. 配列番号6に示される配列からなる、請求項58に記載のプロモーター。
  67. 配列番号7に示される配列からなる、請求項58に記載のプロモーター。
  68. LTR型レトロトランスポゾンの、ゲノム改変のための、使用。
  69. ルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーターの、ゲノム改変のための、使用。
  70. ルシフェラーゼアッセイ(インビトロ系)でみたときに、0.1rlu以上の活性を有するプロモーターの、LTR型レトロトランスポゾンの確認のための、使用。
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