JPWO2004052399A1 - 局所麻酔用組成物 - Google Patents
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Abstract
有効成分である塩酸リドカインなどの局所麻酔薬と、例えば塩酸ジフェンヒドラミン又は塩酸ヒドロキシジンなどの抗ヒスタミン剤からなる群から選ばれる麻酔作用持続剤とを含み、エピネフリンなどのカテコールアミン類を実質的に含有しない局所麻酔用組成物。カテコールアミン類を用いることなく局所麻酔の強度及び持続性が高められており、抜歯などの短時間の歯科手術や口腔外科手術を行うための安全な局所麻酔用組成物として有用である。
Description
本発明は局所麻酔用の組成物に関する。さらに詳しくいうと、本発明は、抜歯などの歯科小手術のために好適な作用持続性を有する安全な局所麻酔用組成物に関するものである。
口腔内外科や歯科領域での手術、特に歯科領域での抜歯などには、リドカイン[Lidocaine:2−diethylamino−N−(2,6−dimethylphenyl)acetamide]を有効成分とする局所注射用の麻酔剤(局所麻酔薬)が用いられている。例えば、「歯科用キシロカインカートリッジ」(藤沢薬品工業株式会社)が臨床で用いられている。この局所麻酔薬は、注射液1ml中に塩酸リドカイン20mg及びエピネフリン0.0125mgを含有する局所投与用の組成物であり、浸潤麻酔または伝達麻酔を行う場合には通常0.3〜1.8mlの量で用いる(同製剤の医薬品添付文書参照)。
一般的に、局所麻酔薬には局所の毛細血管を収縮させて血流を減少させる作用を有するエピネフリンなどのカテコールアミンが配合されている。このカテコールアミンの作用は、血流低下によって手術部位における出血を減少させるとともに、有効成分である麻酔薬の血中移行(拡散)を低減させ、局所組織内に高濃度の麻酔薬を維持して持続的な局所麻酔作用を発揮させることにある(Collins,V.J.,Principles of Anestheslology,2nd Ed.,Lea and Febiger,Philadelphia,1976;歯科用局所麻酔薬については、総説として、歯界展望:別冊「抜歯の臨床」、4.歯科用局所麻酔薬,pp.84−94,1979年を参照のこと)。
しかしながら、局所投与された麻酔剤に含まれるエピネフリンが他の部位や全身においても血管収縮を引き起こす可能性があることから、エピネフリンを含有する歯科用局所麻酔薬については、従来、高血圧、動脈硬化、心不全、甲状腺機能亢進、又は糖尿病の患者や血管攣縮の既往のある患者に対しての投与の危険性が指摘されていた。このため、これらの患者に対しては投与が原則禁忌とされている(「原則禁忌」とは上記の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与することを意味している。平成12年6月付け厚生省医薬***安全対策課課長通知)。
臨床に供されている歯科用リドカイン製剤では1/80,000(g/ml,1mlあたり0.0125mg)のエピネフリンが配合されているが、エピネフリンの副作用を軽減する目的で、抜歯など短時間の歯科手術に好適な持続性を有する局所麻酔用組成物として1/200,000(g/ml)程度のエピネフリン(1mlあたリフリー体換算量で0.005mg)を配合した歯科用麻酔剤が提案されている(国際公開WO97/07794)。もっとも、この製剤では歯科用の小手術などに必要かつ十分な持続的麻酔作用を達成できるものの、エピネフリンによる副作用の可能性を完全に排除できるわけではないことから、局所麻酔薬の作用を持続させるための他の手段の提供が求められていた。
局所麻酔薬の作用持続剤に関して、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどの酸性ムコ多糖類及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体からなる群から選ばれる物質が、塩酸リドカインなどの局所麻酔薬の麻酔作用を持続する作用を有することが知られている(国際公開WO02/055107)。しかしながら、これらの物質以外に局所麻酔薬の作用持続剤として有用な物質はほとんど知られていない。
一方、抗ヒスタミン剤である塩酸ジフェンヒドラミンには局所麻酔作用があることが知られているが、それ自体が塩酸リドカインなどの局所麻酔薬の作用を持続させることについては従来報告がない。また、塩酸ジフェンヒドラミンと塩酸リドカインとを含む皮膚疾患治療のための外用液剤、エアゾール剤、軟膏剤などが知られているが(特公平7−74152号公報、特開平11−228398号公報、特公昭61−46451号公報など)、これらはいずれも塩酸ジフェンヒドラミンの抗ヒスタミン作用をそのまま利用することを目的としたものであり、塩酸リドカインの局所麻酔作用を持続させる目的で塩酸ジフェンヒドラミンを配合しているものではない。
一般的に、局所麻酔薬には局所の毛細血管を収縮させて血流を減少させる作用を有するエピネフリンなどのカテコールアミンが配合されている。このカテコールアミンの作用は、血流低下によって手術部位における出血を減少させるとともに、有効成分である麻酔薬の血中移行(拡散)を低減させ、局所組織内に高濃度の麻酔薬を維持して持続的な局所麻酔作用を発揮させることにある(Collins,V.J.,Principles of Anestheslology,2nd Ed.,Lea and Febiger,Philadelphia,1976;歯科用局所麻酔薬については、総説として、歯界展望:別冊「抜歯の臨床」、4.歯科用局所麻酔薬,pp.84−94,1979年を参照のこと)。
しかしながら、局所投与された麻酔剤に含まれるエピネフリンが他の部位や全身においても血管収縮を引き起こす可能性があることから、エピネフリンを含有する歯科用局所麻酔薬については、従来、高血圧、動脈硬化、心不全、甲状腺機能亢進、又は糖尿病の患者や血管攣縮の既往のある患者に対しての投与の危険性が指摘されていた。このため、これらの患者に対しては投与が原則禁忌とされている(「原則禁忌」とは上記の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与することを意味している。平成12年6月付け厚生省医薬***安全対策課課長通知)。
臨床に供されている歯科用リドカイン製剤では1/80,000(g/ml,1mlあたり0.0125mg)のエピネフリンが配合されているが、エピネフリンの副作用を軽減する目的で、抜歯など短時間の歯科手術に好適な持続性を有する局所麻酔用組成物として1/200,000(g/ml)程度のエピネフリン(1mlあたリフリー体換算量で0.005mg)を配合した歯科用麻酔剤が提案されている(国際公開WO97/07794)。もっとも、この製剤では歯科用の小手術などに必要かつ十分な持続的麻酔作用を達成できるものの、エピネフリンによる副作用の可能性を完全に排除できるわけではないことから、局所麻酔薬の作用を持続させるための他の手段の提供が求められていた。
局所麻酔薬の作用持続剤に関して、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどの酸性ムコ多糖類及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体からなる群から選ばれる物質が、塩酸リドカインなどの局所麻酔薬の麻酔作用を持続する作用を有することが知られている(国際公開WO02/055107)。しかしながら、これらの物質以外に局所麻酔薬の作用持続剤として有用な物質はほとんど知られていない。
一方、抗ヒスタミン剤である塩酸ジフェンヒドラミンには局所麻酔作用があることが知られているが、それ自体が塩酸リドカインなどの局所麻酔薬の作用を持続させることについては従来報告がない。また、塩酸ジフェンヒドラミンと塩酸リドカインとを含む皮膚疾患治療のための外用液剤、エアゾール剤、軟膏剤などが知られているが(特公平7−74152号公報、特開平11−228398号公報、特公昭61−46451号公報など)、これらはいずれも塩酸ジフェンヒドラミンの抗ヒスタミン作用をそのまま利用することを目的としたものであり、塩酸リドカインの局所麻酔作用を持続させる目的で塩酸ジフェンヒドラミンを配合しているものではない。
本発明の課題は、作用の持続性に優れた局所麻酔用の組成物を提供することにある。より具体的には、本発明の課題は、カテコールアミン類を用いることなく、抜歯などの歯科小手術や口腔内外科手術のために好適な作用持続性を発揮できる安全な局所麻酔用組成物を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、塩酸ジフェンヒドラミンや塩酸ヒドロキシジンなどの抗ヒスタミン剤が塩酸リドカインなどの局所麻酔剤の作用を顕著に持続させることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
すなわち、本発明は、有効成分である局所麻酔薬と抗ヒスタミン剤からなる群から選ばれる麻酔作用持続剤とを含み、カテコールアミン類を実質的に含有しない局所麻酔用組成物を提供するものである。上記の局所麻酔用組成物は、好ましくは口腔内外科用又は歯科用の局所麻酔用組成物として提供される。この発明の好ましい態様によれば、局所麻酔薬が塩酸リドカインである上記の局所麻酔用組成物;抗ヒスタミン剤がジフェニルメチル基(該フェニル基は置換又は無置換のいずれであってもよい)を部分構造として有する抗ヒスタミン剤である上記の局所麻酔用組成物;及び抗ヒスタミン剤が塩酸ジフェンヒドラミン又は塩酸ヒドロキシジンである上記の局所麻酔用組成物が提供される。
別の観点からは、抗ヒスタミン剤からなる群から選ばれる局所麻酔薬の作用持続剤が本発明により提供される。この発明の好ましい態様によれば、局所麻酔薬が塩酸リドカインである上記の作用持続剤;抗ヒスタミン剤が塩酸ジフェンヒドラミン又は塩酸ヒドロキシジンである上記の作用持続剤が提供される。
さらに別の観点からは、上記の局所麻酔用組成物の製造のための抗ヒスタミン剤からなる群から選ばれる物質の使用;及び局所麻酔薬の作用を持続させる方法であって、局所麻酔薬とともに抗ヒスタミン剤からなる群から選ばれる物質を局所投与する工程を含む方法が本発明により提供される。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、塩酸ジフェンヒドラミンや塩酸ヒドロキシジンなどの抗ヒスタミン剤が塩酸リドカインなどの局所麻酔剤の作用を顕著に持続させることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
すなわち、本発明は、有効成分である局所麻酔薬と抗ヒスタミン剤からなる群から選ばれる麻酔作用持続剤とを含み、カテコールアミン類を実質的に含有しない局所麻酔用組成物を提供するものである。上記の局所麻酔用組成物は、好ましくは口腔内外科用又は歯科用の局所麻酔用組成物として提供される。この発明の好ましい態様によれば、局所麻酔薬が塩酸リドカインである上記の局所麻酔用組成物;抗ヒスタミン剤がジフェニルメチル基(該フェニル基は置換又は無置換のいずれであってもよい)を部分構造として有する抗ヒスタミン剤である上記の局所麻酔用組成物;及び抗ヒスタミン剤が塩酸ジフェンヒドラミン又は塩酸ヒドロキシジンである上記の局所麻酔用組成物が提供される。
別の観点からは、抗ヒスタミン剤からなる群から選ばれる局所麻酔薬の作用持続剤が本発明により提供される。この発明の好ましい態様によれば、局所麻酔薬が塩酸リドカインである上記の作用持続剤;抗ヒスタミン剤が塩酸ジフェンヒドラミン又は塩酸ヒドロキシジンである上記の作用持続剤が提供される。
さらに別の観点からは、上記の局所麻酔用組成物の製造のための抗ヒスタミン剤からなる群から選ばれる物質の使用;及び局所麻酔薬の作用を持続させる方法であって、局所麻酔薬とともに抗ヒスタミン剤からなる群から選ばれる物質を局所投与する工程を含む方法が本発明により提供される。
第1図は、本発明の局所麻酔用組成物の持続効果を示した図である。モルモット背部皮膚の前部を用いた場合の結果を示す。
第2図は、本発明の局所麻酔用組成物の持続効果を示した図である。モルモット背部皮膚の後部を用いた場合の結果を示す。
第2図は、本発明の局所麻酔用組成物の持続効果を示した図である。モルモット背部皮膚の後部を用いた場合の結果を示す。
本発明の組成物に含まれる局所麻酔薬の種類は特に限定されないが、コカイン、トロパコカインなどのコカイン類似体;プロカイン、テトラカインなどの水溶性アミノ安息香酸エステル類;ピペロカイン、ストバインなどの安息香酸エステル類;シクロメチカイン、パレトキシカインなどのアルコキシ安息香酸エステル類;ジクロニン、ファリカインなどのアミノケトン類;プラモキシンなどのアミノエーテル類;アモラノンなどのベンゾフラノン誘導体;フェナカインなどのアミジン又はグアニジン誘導体;ジペロドンなどのウレタン誘導体;ジブカインなどのキノリン又はイソキノリン誘導体;リドカインなどのアミノ酸アニリド;アミノ安息香酸エチルなどのアミノ安息香酸アルキルエステル類などを挙げることができる。
上記の局所麻酔薬の分類は、便宜上、高木・小澤共編「薬物学」、株式会社南山堂、1976年第2刷発行の第202〜205頁、表32に記載された分類に従って記載したが、上記以外の分類も可能であること、並びに本発明の組成物の有効成分がこれらに限定されないことを理解すべきである。これらの局所麻酔薬は、一般的には、生理学的に許容される塩の形態で使用されるが、そのような塩としては、例えば、塩酸塩又は硫酸塩などの鉱酸塩を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、リドカイン、プロカイン、テトラカイン、ジブカイン、及びそれらの塩からなる群から選ばれる局所麻酔薬を用いることができる。さらに好ましくは、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、塩酸テトラカイン、塩酸ジブカインからなる群から選ばれる局所麻酔薬を用いることができ、塩酸リドカインを用いることが特に好ましい。
抗ヒスタミン剤とは、一般に、ヒスタミン受容体に親和性を有し、ヒスタミンの作用を遮断又は抑制してヒスタミンの作用に拮抗的に作用する薬物を意味しているが、本発明の組成物において局所麻酔薬の作用持続剤として用いられる抗ヒスタミン剤の種類は特に限定されない。例えば、抗ヒスタミン剤として、ジアリールメチル基(該基における2個のアリール基は同一でも異なっていてもよく、例えば、置換若しくは無置換のフェニル基のほか、ピリジル基などのヘテロ原子を環構成原子として含む置換若しくは無置換のヘテロアリール基であってもよい)、好ましくはジフェニルメチル基(該基における2個のフェニル基はそれぞれ置換又は無置換のいずれであってもよい)を部分構造として有するものが好ましい。フェニル基上の置換基としては、塩素原子などのハロゲン原子が好ましい。2個のフェニル基のうちの一方のフェニル基上に1個の塩素原子が置換していることが好ましく、塩素原子はパラ位に存在することがより好ましい。また、2個のフェニル基が無置換であることも好ましい。
より具体的には、抗ヒスタミン剤として、例えば、ジフェンヒドラミン、クロロフェノキサミン、カルビノキサミン、クロロフェニラミン、トロプロパミン、ホモクロルサイクリジン、ジフェニルピラリン、クレマスチン、ヒドロキシジン、メクリジン、ジフェニドールなどを挙げることができる。これらのうち、ジフェンヒドラミン又はヒドロキシジンが好ましい。2種以上の抗ヒスタミン剤を組み合わせて用いることもできる。これらの抗ヒスタミン剤は、薬理学的に許容される塩として用いることができる。薬理学的に許容される塩の種類は当業者に適宜選択可能であるが、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、塩酸ヒドロキシジンなどを具体例として挙げることができる。
抗ヒスタミン剤からなる群から選ばれる麻酔作用持続剤の配合量は、麻酔作用持続剤の種類、局所麻酔薬の種類、所望の局所麻酔の持続時間及び麻酔強度などに応じて適宜選択することができるが、一般的には局所麻酔薬1gに対して0.1g〜10g程度の範囲から選択することができる。局所麻酔用組成物の麻酔持続時間は、例えば日本歯科麻酔学会雑誌,16,pp.10−22,1988;日本歯科麻酔学会雑誌,27,pp.158−164,1999などに記載の方法、あるいは本明細書の実施例に具体的に示した方法などにより、客観的かつ正確に測定可能である。
本発明の局所麻酔用組成物は、一般的には、上記の成分と必要に応じて局所注射用の組成物に配合すべき添加剤として当業者に利用可能な製剤用添加物とを注射用蒸留水に溶解した水溶液状の注射用組成物として提供することができる。また、凍結乾燥製剤などの乾燥形態の製剤として調製し、用時に溶解して使用することも可能である。一般的には、滅菌状態でアンプル、バイアル、又はカートリッジ等に充填された後に臨床に供される。製剤用添加物としては、例えば、浸透圧比を約0.8〜1.3、好ましくは約1.0に調整するための塩化ナトリウム等の等張化剤;pHを約3.0〜7.5、好ましくは3.3〜7.0の範囲に調整するための塩酸又は水酸化ナトリウム等のpH調節剤、パラオキシ安息香酸メチルなどの防腐剤などを用いることができる。
本発明の局所麻酔用組成物は、口腔内外科用または歯科用の小手術、好ましくは歯科での抜歯など数分〜10分程度で終了する手術に好適に使用できる。もっとも、本発明の組成物の適用対象は口腔内外科用または歯科用に限定されることはなく、例えば、皮膚切開などの外科用の局所麻酔に用いることも可能である。本発明の組成物に含まれる局所麻酔薬の作用持続剤は、局所麻酔薬の作用時間を延長するとともに、麻酔強度を高める作用を有している。本発明の局所麻酔用組成物は、エピネフリンなどのカテコールアミン類を実質的に含有しないが、上記の抗ヒスタミン剤により局所麻酔の強度及び持続性が高められており、安全な局所麻酔薬として、高血圧、動脈硬化、心不全、甲状腺機能亢進、又は糖尿病の患者や血管攣縮の既往のある患者に対しても使用できるという特徴がある。
本発明の組成物は当業者に周知の方法で製造可能である。本発明組成物の製造方法の具体例を以下の実施例に詳細に説明したが、本発明の組成物の製造方法は実施例の方法に限定されることはなく、これらの方法に適宜の改変や修飾を加えることが可能である。
上記の局所麻酔薬の分類は、便宜上、高木・小澤共編「薬物学」、株式会社南山堂、1976年第2刷発行の第202〜205頁、表32に記載された分類に従って記載したが、上記以外の分類も可能であること、並びに本発明の組成物の有効成分がこれらに限定されないことを理解すべきである。これらの局所麻酔薬は、一般的には、生理学的に許容される塩の形態で使用されるが、そのような塩としては、例えば、塩酸塩又は硫酸塩などの鉱酸塩を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、リドカイン、プロカイン、テトラカイン、ジブカイン、及びそれらの塩からなる群から選ばれる局所麻酔薬を用いることができる。さらに好ましくは、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、塩酸テトラカイン、塩酸ジブカインからなる群から選ばれる局所麻酔薬を用いることができ、塩酸リドカインを用いることが特に好ましい。
抗ヒスタミン剤とは、一般に、ヒスタミン受容体に親和性を有し、ヒスタミンの作用を遮断又は抑制してヒスタミンの作用に拮抗的に作用する薬物を意味しているが、本発明の組成物において局所麻酔薬の作用持続剤として用いられる抗ヒスタミン剤の種類は特に限定されない。例えば、抗ヒスタミン剤として、ジアリールメチル基(該基における2個のアリール基は同一でも異なっていてもよく、例えば、置換若しくは無置換のフェニル基のほか、ピリジル基などのヘテロ原子を環構成原子として含む置換若しくは無置換のヘテロアリール基であってもよい)、好ましくはジフェニルメチル基(該基における2個のフェニル基はそれぞれ置換又は無置換のいずれであってもよい)を部分構造として有するものが好ましい。フェニル基上の置換基としては、塩素原子などのハロゲン原子が好ましい。2個のフェニル基のうちの一方のフェニル基上に1個の塩素原子が置換していることが好ましく、塩素原子はパラ位に存在することがより好ましい。また、2個のフェニル基が無置換であることも好ましい。
より具体的には、抗ヒスタミン剤として、例えば、ジフェンヒドラミン、クロロフェノキサミン、カルビノキサミン、クロロフェニラミン、トロプロパミン、ホモクロルサイクリジン、ジフェニルピラリン、クレマスチン、ヒドロキシジン、メクリジン、ジフェニドールなどを挙げることができる。これらのうち、ジフェンヒドラミン又はヒドロキシジンが好ましい。2種以上の抗ヒスタミン剤を組み合わせて用いることもできる。これらの抗ヒスタミン剤は、薬理学的に許容される塩として用いることができる。薬理学的に許容される塩の種類は当業者に適宜選択可能であるが、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、塩酸ヒドロキシジンなどを具体例として挙げることができる。
抗ヒスタミン剤からなる群から選ばれる麻酔作用持続剤の配合量は、麻酔作用持続剤の種類、局所麻酔薬の種類、所望の局所麻酔の持続時間及び麻酔強度などに応じて適宜選択することができるが、一般的には局所麻酔薬1gに対して0.1g〜10g程度の範囲から選択することができる。局所麻酔用組成物の麻酔持続時間は、例えば日本歯科麻酔学会雑誌,16,pp.10−22,1988;日本歯科麻酔学会雑誌,27,pp.158−164,1999などに記載の方法、あるいは本明細書の実施例に具体的に示した方法などにより、客観的かつ正確に測定可能である。
本発明の局所麻酔用組成物は、一般的には、上記の成分と必要に応じて局所注射用の組成物に配合すべき添加剤として当業者に利用可能な製剤用添加物とを注射用蒸留水に溶解した水溶液状の注射用組成物として提供することができる。また、凍結乾燥製剤などの乾燥形態の製剤として調製し、用時に溶解して使用することも可能である。一般的には、滅菌状態でアンプル、バイアル、又はカートリッジ等に充填された後に臨床に供される。製剤用添加物としては、例えば、浸透圧比を約0.8〜1.3、好ましくは約1.0に調整するための塩化ナトリウム等の等張化剤;pHを約3.0〜7.5、好ましくは3.3〜7.0の範囲に調整するための塩酸又は水酸化ナトリウム等のpH調節剤、パラオキシ安息香酸メチルなどの防腐剤などを用いることができる。
本発明の局所麻酔用組成物は、口腔内外科用または歯科用の小手術、好ましくは歯科での抜歯など数分〜10分程度で終了する手術に好適に使用できる。もっとも、本発明の組成物の適用対象は口腔内外科用または歯科用に限定されることはなく、例えば、皮膚切開などの外科用の局所麻酔に用いることも可能である。本発明の組成物に含まれる局所麻酔薬の作用持続剤は、局所麻酔薬の作用時間を延長するとともに、麻酔強度を高める作用を有している。本発明の局所麻酔用組成物は、エピネフリンなどのカテコールアミン類を実質的に含有しないが、上記の抗ヒスタミン剤により局所麻酔の強度及び持続性が高められており、安全な局所麻酔薬として、高血圧、動脈硬化、心不全、甲状腺機能亢進、又は糖尿病の患者や血管攣縮の既往のある患者に対しても使用できるという特徴がある。
本発明の組成物は当業者に周知の方法で製造可能である。本発明組成物の製造方法の具体例を以下の実施例に詳細に説明したが、本発明の組成物の製造方法は実施例の方法に限定されることはなく、これらの方法に適宜の改変や修飾を加えることが可能である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例により限定されることはない。
塩酸ジフェンヒドラミン1g及び塩酸リドカイン2gを注射用蒸留水80mLに溶解し、水酸化ナトリウムを適量加えてpH6に調整した後、全量を100mLになるように注射用蒸留水を加えて本発明の局所麻酔用組成物を調製した。
塩酸ジフェンヒドラミン2g及び塩酸リドカイン2gを注射用蒸留水80mLに溶解し、水酸化ナトリウムを適量加えてpH6に調整した後、全量を100mLになるように注射用蒸留水を加えて本発明の局所麻酔用組成物を調製した。
塩酸ヒドロキシジン2.5g及び塩酸リドカイン2gを注射用蒸留水80mLに溶解し、水酸化ナトリウムを適量加えてpH6に調整した後、全量を100mLになるように注射用蒸留水を加えて本発明の局所麻酔用組成物を調製した。
比較例1
塩酸リドカイン2gを注射用蒸留水80mLに溶解し、水酸化ナトリウムを適量加えてpH6に調整した後、全量を100mLになるように注射用蒸留水を加えて塩酸リドカイン溶液を調製した。
比較例2
塩酸ジフェンヒドラミン3gを注射用蒸留水80mLに溶解し、水酸化ナトリウムを適量加えてpH6に調整した後、全量を100mLになるように注射用蒸留水を加えて塩酸ジフェンヒドラミン溶液を調製した。
比較例3
比較のため、100mL中に塩酸リドカイン2g、酒石酸水素エピネフリン2.5mg、ピロ亜硫酸ナトリウム60mg(pH4)を含む市販の局所麻酔剤(オーラ注カートリッジ、昭和薬品化工株式会社製)を用いた。
試験方法
週齢4〜5週、体重300g〜400gのHartley系雄性モルモットを用い、試験前日に前部及び後部の2ヵ所に投与できるように背部の毛を刈った。薬液0.1mLずつを毛を刈った部分(前部及び後部の2ヵ所)に皮内注射し、皮内に生じた丘疹の周囲にマジックで印をつけた。針(注射針:27G)で丘疹の外側を刺激し、収縮反応が生じることを確認した後、丘疹の内側を3〜5秒間隔で6ヵ所刺激して収縮反応が生じなかった回数を測定した。この刺激を15分間隔で投与180分まで行ない、局所麻酔作用の持続性を判定した。結果を表1に示す。この結果から、本発明の局所麻酔用組成物では局所麻酔作用が顕著に持続していることが明らかである。
比較例1
塩酸リドカイン2gを注射用蒸留水80mLに溶解し、水酸化ナトリウムを適量加えてpH6に調整した後、全量を100mLになるように注射用蒸留水を加えて塩酸リドカイン溶液を調製した。
比較例2
塩酸ジフェンヒドラミン3gを注射用蒸留水80mLに溶解し、水酸化ナトリウムを適量加えてpH6に調整した後、全量を100mLになるように注射用蒸留水を加えて塩酸ジフェンヒドラミン溶液を調製した。
比較例3
比較のため、100mL中に塩酸リドカイン2g、酒石酸水素エピネフリン2.5mg、ピロ亜硫酸ナトリウム60mg(pH4)を含む市販の局所麻酔剤(オーラ注カートリッジ、昭和薬品化工株式会社製)を用いた。
試験方法
週齢4〜5週、体重300g〜400gのHartley系雄性モルモットを用い、試験前日に前部及び後部の2ヵ所に投与できるように背部の毛を刈った。薬液0.1mLずつを毛を刈った部分(前部及び後部の2ヵ所)に皮内注射し、皮内に生じた丘疹の周囲にマジックで印をつけた。針(注射針:27G)で丘疹の外側を刺激し、収縮反応が生じることを確認した後、丘疹の内側を3〜5秒間隔で6ヵ所刺激して収縮反応が生じなかった回数を測定した。この刺激を15分間隔で投与180分まで行ない、局所麻酔作用の持続性を判定した。結果を表1に示す。この結果から、本発明の局所麻酔用組成物では局所麻酔作用が顕著に持続していることが明らかである。
本発明の局所麻酔用組成物は、エピネフリンなどのカテコールアミン類を用いることなく局所麻酔の強度及び持続性が高められており、抜歯などの短時間の歯科手術や口腔外科手術を行うための安全な局所麻酔用組成物として有用である。
Claims (7)
- 有効成分である局所麻酔薬と抗ヒスタミン剤からなる群から選ばれる麻酔作用持続剤とを含み、カテコールアミン類を実質的に含有しない局所麻酔用組成物。
- 口腔内外科用又は歯科用の請求の範囲第1項に記載の局所麻酔用組成物。
- 局所麻酔薬が塩酸リドカインである請求の範囲第1項又は第2項に記載の局所麻酔用組成物。
- 抗ヒスタミン剤がジフェニルメチル基(該フェニル基は置換又は無置換のいずれであってもよい)を部分構造として有する抗ヒスタミン剤である請求の範囲第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の局所麻酔用組成物。
- 抗ヒスタミン剤が塩酸ジフェンヒドラミン又は塩酸ヒドロキシジンである請求の範囲第4項に記載の局所麻酔用組成物。
- 抗ヒスタミン剤からなる群から選ばれる局所麻酔薬の作用持続剤。
- 局所麻酔薬が塩酸リドカインである請求の範囲第6項に記載の作用持続剤。
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