JPWO2003015753A1 - リポソーム製剤 - Google Patents
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Abstract
本発明は、リポソームおよびこのリポソームに取りこまれた物質からなるリポソーム製剤において、リポソームを構成する膜剤がリン脂質と炭素数10〜20の高級飽和脂肪酸の少なくとも1種とを含有し、該高級飽和脂肪酸はリン脂質に対するモル比で30mol%〜50mol%であるリポソーム製剤で、リポソーム製剤原料として安価な組成の膜剤を用い、リポソーム内部への薬物の保持率に優れる。
Description
技術分野
本発明は、改良された薬物保持リポソーム製剤、さらに詳しくは、リポソーム(小胞体)の内部に種々の生理活性物質を封じ込めた薬物保持リポソームの改良された製剤に関する。
背景技術
リポソームは主として脂質よりなる膜を有する閉鎖小胞と定義される。脂質二重層膜の小胞体であるリポソームは,内部に種々の物質を封入でき、また生体由来物質から形成されるため生体適合性に優れることから,薬物送達システムとして有用である。リポソームは、生体膜のモデルとして多くの研究に用いられてきたが、一方で、薬物送達システム(drug delivery system;DDS)へ応用されてきた。また、遺伝子やアンチセンスのキャリアーとして遺伝子工学の分野でも用いられている。ところで薬剤のカプセル化は、薬剤の生体内分布や血流中での滞留時間を変化させる。また標的器官への到達性を改善し、薬物の副作用の軽減や徐放化も可能とする。リポソームを用いる利点としては毒性や抗原性が低いことのほか、用いるリン脂質が生体成分であるために生体内で代謝されることがあげられる。またリポソームは大きさや脂質組成を容易に調節でき、水溶性薬物、脂溶性薬物、高分子、タンパク質など多くのものが封入可能であり、高分子、糖質、抗体、レクチンなどによる表面修飾も容易である。また、膜融合性や、特定の細胞への接着制御などの機能をリポソームに付与することにより、目的にあった薬剤カプセルを構築できる。
このように薬物保持リポソーム製剤は、生体内では不安定な薬物の安定化や生体内における薬物の徐放化に利用することが考えられ、また薬物を特定の臓器に選択的に移行させるための手段としても利用が考えられている。例えば安定化や徐放化を目的とした製剤として、ヘモグロビン、インスリン、ヘパリン、ウロキナーゼ、そのほか種々の抗ガン剤、抗真菌剤等を含有するリポソーム製剤が知られており、標的臓器への薬物の速やかな移行を目的とした製剤として、ユビデカレノン、シトシンアラビノシド、ステロイド、そのほか種々の抗ガン剤、抗真菌剤等を含有するリポソーム製剤が知られている。
従来の薬物保持リポソーム製剤の膜剤として使用されるリン脂質には、卵黄レシチンまたは大豆レシチン等の不飽和レシチン、これらに水素添加した精製飽和レシチン、これらをさらに分離精製したホスフアチジルコリン、ホスフアチジルエタノールアミン、ホスフアチジルイノシトール、ホスフアチジルセリン、スフインゴミエリン等の精製レシチン、またジミリストイルレシチン、ジパルミトイルレシチン、ジステアロイルレシチン等の合成レシチンが挙げられる。これらは生体に対する親和性が良く、注射剤等の非経口用製剤に安全に使用される。しかしながら、従来使用されているリポソーム膜材は、薬物の保持率が必ずしも十分ではない。即ち、単位リポソーム薬剤の中に封じ込められる薬物の量が十分ではなく、さらに効率のよい膜材が要望されている。さらに従来の不飽和レシチンや不飽和脂肪酸(特開昭60−155109号公報)を原料としたリポソーム膜材は、安定牲が不十分であり、In−vitroあるいはIn−Vivoで比較的容易に膜が破壊され、生体内寿命が短い、薬物を放出する等の欠点があった。より安定性の高い精製レシチン、合成レシチンを用いたリポソーム製剤は非常に高価であり、精製レシチン、合成レシチンを製剤原料として用いるには限界がある。また従来知られていた膜剤として炭素数18−20の不飽和高級脂肪酸を5−15wt%含有するリポソームの製法(特開昭60−155109号公報)の範囲では、飽和脂肪酸を用いた場合には、リポソームの薬物保持率が著しく低下するという問題点があった。
従って、本発明の目的は第1に、リポソーム内部への薬物の保持率の優れた薬物保持リポソーム製剤を提供することにある。
本発明の目的は第2に、リポソーム製剤原料として安価な組成の膜剤を提供することにある。
発明の開示
すなわち本発明は、以下の各発明を提供する。
(1)リポソームおよびこのリポソームに取りこまれた物質からなるリポソーム製剤において、リポソームを構成する膜剤がリン脂質と炭素数10〜20の高級飽和脂肪酸の少なくとも1種とを含有し、該高級飽和脂肪酸の含有量がリポソーム構成成分中におけるモル比で30mol%〜50mol%であることを特徴とするリポソーム製剤。
(2)前記リン脂質が飽和リン脂質或いは水素添加リン脂質である(1)に記載のリポソーム製剤。
(3)前記膜剤としてさらにコレステロールを含む(1)または(2)に記載のリポソーム製剤。
(4)上記リポソーム表面には、さらに、親水性高分子鎖部と疎水性部とを有する凝集抑制剤が結合され、該凝集抑制剤は疎水性部がリポソーム中の脂質層に固定されるとともに親水性高分子鎖部はリポソーム表面から外方向に伸びてなるものである(1)〜(3)のいずれかに記載のリポソーム製剤。
(5)上記リポソームに取り込まれた物質は生理活性物質である(1)〜(4)のいずれかに記載のリポソーム製剤。
(6)前記生理活性物質がヘモグロビンである(5)に記載のリポソーム製剤。
発明を実施するための最良の形態
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の薬物保持リポソーム製剤に用いる膜剤としては、リポソームを作成するのに適当な脂質が用いられる。リン脂質としては大豆レシチン、卵黄レシチン等の天然不飽和リン脂質、合成リン脂質、あるいは天然不飽和リン脂質に水素添加を行った天然水素添加リン脂質など、任意のリン脂質を利用することができる。天然のリン脂質は全て不飽和脂肪酸を含んでいるため、本発明の目的をより高度に達成するため、上記天然リン脂質の不飽和脂肪酸を水素で飽和した水素添加リン脂質か合成リン脂質を使用するのがより効果的である。
本発明において用いるリン脂質の代表例としては、レシチン、ホスフアチジルエタノールアミン、ホスフアチジルイノシトール、ホスフアチジルセリン、ホスフアチジルグリセロール、スフインゴミエリン、カルジオリビン等を挙げることができる。さらに、これらに常法に従い水素添加したものが挙げられる。特に大豆レシチン、卵黄レシチン、コーンレシチン、綿実油レシチン、ナタネレシチン等を水素添加した水素添加天然レシチンが好適に使用される。
本発明における高級飽和脂肪酸としては、炭素原子10〜20個を有する高級脂肪酸が望ましく、その例として、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン駿、バルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸等が挙げられる。これらの高級飽和脂肪酸は単独であるいは混合して使用することができる。リポソーム膜構成脂質として好適に使用されるリン脂質の疎水性炭素鎖の炭素数がおよそ14〜18個であるため、リン脂質との親和性から、炭素原子14〜18個を有する高級飽和脂肪酸がより望ましい。高級飽和脂肪酸のリポソーム構成成分に対するモル比としては30mol%以上、かつリン脂質とミセル形成をしないモル比とする。高級飽和脂肪酸の配合量がモル比で30mol%未満でもリポソームを形成し、薬物保持能も有するが、薬物保持率を向上させるためには高級飽和脂肪酸の配合量がモル比で30mol%以上であることが必要である。さらに40mol%以上の場合、本発明の目的とする親和性、安定性、薬物の保持率、安価な膜剤として優れた効果を示すのでより好ましい。リン脂質はラメラ構造となる濃度範囲にて用いないとリポソームとして薬物を保持することができないが、高級飽和指防酸の配合量が増大しすぎると、高級飽和脂妨酸が形成するミセルにリン脂質が取り込まれてしまい、リポソームを形成しなくなる。この時の高級飽和脂肪酸の配合比は脂肪酸の炭素数や条件に応じて変動するが、モル比で約50mol%超となる。従って、高級脂肪酸はこの配合比以下のところで使用しないとリポソームを形成しなくなるため、薬物の保持効率は極端に低下または不能となる。好ましくはモル比で45mol%以下である。従って、高級飽和脂肪酸のリン脂質に対するモル比は30mol%〜50mol%、好ましくは40mol%〜45mol%である。
本発明の膜材には、膜の強度を高めるためにコレステロール、トコフェロール等のステロールを添加することができ、また、生体中における標的臓器への移行や、除放性をコントロールするための物質を添加することも可能である。
本発明のリポソーム製剤に取りこまれ、含有保持される被保持物質としては、リポソームの形成を阻害しない限り特に制限はないが、In−vitroまたはIn−vivoで不安定なもの、血流中に安定に滞留させたい生理活性物質、あるいは特定の臓器に速やかに分布することが所望されているものが好適に使用される。このような披保持物質として、特に薬剤の例としては、ヘモグロビン、インスリン、ヘパリン、ウロキナーゼ、エビヂカレノン、メトトレキセート ネオマイシン、プレオマイシン、テトラサイクリン、チトクロームC、アスパラギナーゼ、シトシンアラビノシド等が挙げられる。その他、薬剤以外のものでも、マーカー、アンチセンス、プラスミドやDNA、RNA等生体内に投与して有効なものであれば特に制限されることはない。本発明の薬物保持リポソーム製剤は、それ自体公知の方法によって製造される。例えば、天然リン脂質、水素添加天然リン脂質、少なくとも1種の上記高級飽和脂肪酸および所望によりステロールをクロロホルム、エタノール等の適当な溶媒に溶解し、得られた溶液から溶媒を留去して脂質混合物を調製する。得られた脂質混合物に、生理活性物質等の薬物の水溶液を加え、得られた混合液を激しく振とう、撹拌或いは超音波処理を行い、薬物水溶液を均一に分散させる。分散液からリポソームに取り込まれなかった薬物を除去し、薬物保持リポソーム製剤を得る。かくして得られたリポソーム製剤は必要により生理的に許容される水溶液、例えば生理食塩水に分散した懸濁状製剤として調整される。本発明のリポソーム製剤は注射剤等の非経口用製剤として投与される。また、本発明のリポソームを凍結乾燥するにあたっては通常の条件でよく、例えば、−20℃〜−80℃で凍結させ、0.3torr以下の減圧下に氷を昇華させるのが好ましい。さらに良好な凍結乾燥ケーキを形成させるためには、例えば、マンニトール、デキストリン、グリシン等の通常用いられる賦形剤を加えておいても良い。
尚、本発明においてリポソーム製剤とは、リポソーム内部に種々の被保持物質が封じ込められた状態のものと定義する。
本発明のリポソーム製剤には、さらに、親水性高分子鎖部と疎水性部とを有する凝集抑制剤が含まれていてもよい。凝集抑制剤量はリポソーム製剤に対して好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜1質量%とすることができる。リポソームを「親水性高分子結合脂質」で修飾する時に、カプセル化される物質が加熱可能な場合、5質量%くらいまで修飾可能である。0.01質量%未満は修飾しても凝集抑制効果が得られにくい。また、1質量%以下であれば加熱しなくとも修飾可能であり生理活性物質やヘモグロビン等の熱に不安定なタンパク質を含有させることができ、凝集抑制効果も十分である。凝集抑制剤をリポソーム製剤に加えると疎水性部分がリポソーム表面へ安定に挿入されリポソーム中の脂質層に固定されるとともに親水性高分子鎖はリポソーム表面から外方向に伸び、リポソームの凝集を抑制する機能を担う。
「凝集抑制剤」の例として、疎水性部としては、各種飽和・不飽和脂肪酸、ステロール、ポリオキシプロピレンアルキルまたはグリセリン脂肪酸エステル、およびリン脂質があげられ、リン脂質が好ましい。
親水性高分子鎖部としては、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、そして、デキストラン、プルラン、フィコール、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナン等の多糖類などである。その中でもポリエチレングリコールは血中滞留性を向上させる効果が顕著であり最も望ましい。ポリエチレングリコール結合リン脂質、ポリエチレングリコール結合コレステロールが好ましい。
以下に実施例をもって、本発明をいっそう具体的に説明するが、これらは実施の一例として示すものであり、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
(実施例1)
リン脂質として水添大豆レシチン(HSPC:分子量790)、コレステロール(分子量376)と高級脂肪酸としてステアリン酸(分子量278)との混合物で量配合比の異なる混合脂質(表1)を、t−BuOH、10mlに溶解後、凍結乾燥しt−BuOHを除去する事で調製した。これにヘモグロビン(45wt%)溶液、20mlを加え、高速攪拌機(クレアミックス社製、CLM−0.8S)を用いて乳化(20℃以下で15000rpm、1min、3回)した。乳化後、各処理物に生理食塩水を30ml加え、4万G、60minで3回カプセル化されなかったヘモグロビンを遠心洗浄した。その後20mlの生理食塩水に分散し0.45μmフィルターを用いて濾過し、ここに凝集防止剤としてポリエチレングリコール(PEG)結合リン脂質を0.1質量%になるように加え、PEG表面修飾リポソームカプセル化ヘモグロビン製剤を得た。
このようにして得られた各配合比のリポソームカプセル化ヘモグロビン製剤中のヘモグロビン濃度を原子吸光にて測定し、HSPC濃度、コレステロール濃度、ステアリン酸濃度を高速液体クロマトグラフィーにて測定した。
この結果よりリポソームにカプセル化されたヘモグロビンであるタンパク質の収率を次式により求めた。
「タンパク収率(%)=(リポソーム内タンパク保持量/調整時タンパク投入量)×100」
この結果、リン脂質に対する脂肪酸のモル比が30mol%未満の場合には、タンパク収率が約10%以下に留まったが、モル比が30mol%〜50mol%の範囲では12%以上のタンパク収率があり、モル比約40mol%ではタンパク収率が16%まで高まることが分かった(図1)。
また、リポソームにカプセル化された投与薬物を、効率よく生体に投与することを考えると脂質量あたりのカプセル化タンパク量は多い程良い、そこで脂質量あたりのカプセル化タンパク量を次式により求めた。
「脂質量あたりのカプセル化タンパク量=(リポソーム内タンパク保持量/(HSPC量+コレステロール量+ステアリン酸量))」
この結果から、リン脂質に対する脂肪酸のモル比が26mol%未満の場合には、全く脂肪酸を含まない場合をのぞき(この場合にはほとんどリポソームカプセル化ヘモグロビン製剤が形成されなかった)脂質量あたりのカプセル化タンパク量は1.2程度に留まったが、モル比が26mol%−50mol%の範囲では脂質量あたりのカプセル化タンパク量が著しく増加し、モル比約46mol%では脂質量あたりのカプセル化タンパク量を1.7にまで高めることが出来た(図2)。
さらに、リポソーム製剤からのIn−Vitro及びIn−Vivoでの薬物の漏れだしの安定性を評価するために、各配合比のリポソームカプセル化ヘモグロビン製剤を50ml遠沈管に入れ37℃にて毎分60回、3時間振とうした後、4万Gで60min遠心し、上清に漏れだしたヘモグロビン量を測定した。漏れ出したヘモグロビン量を、元のリポソームカプセル化ヘモグロビン製剤のヘモグロビン量で除した値をタンパク漏れだし率(%)として図3に示した。
この結果リン脂質に対するモル比が12mol%ぐらいからリポソーム製剤の安定性が高まり、モル比50mol%の範囲まで安定であり、33mol%〜46mol%の範囲で特に安定であることが分かった。モル比50mol%を越えるような範囲では逆にリポソーム製剤の安定性が損なわれることも分かった。
(実施例2)
リン脂質としてHSPC(分子量:790)、コレステロール(分子量:376)に、高級飽和脂肪酸としてラウリン酸(分子量:200)、ミリスチン酸(分子量:228)、パルミチン酸(分子量:256)、ステアリン酸(分子量:278)をHSPCに対するモル比で33.3mol%配合した混合脂質1gを実施例1と同様の方法で調製した。これにヘモグロビン(45wt%)溶液、20mlを加え、高速攪拌機(クレアミックス社製、CLM−0.8S)を用いて乳化(20℃以下で15000rpm、1min、3回)した。乳化後、各処理物に生理食塩水を30ml加え、4万G、60minで3回カプセル化されなかったヘモグロビンを遠心洗浄した。その後20mlの生理食塩水に分散し0.45μmフィルターを用いて濾過し、ここに凝集防止剤としてポリエチレングリコール結合リン脂質を0.1質量%になるように加え、PEG表面修飾リポソームカプセル化ヘモグロビン製剤を得た。
このようにして得られた各脂肪酸配合のリポソームカプセル化ヘモグロビン製剤中のヘモグロビン濃度を原子吸光にて測定し、HSPC濃度、コレステロール濃度、ステアリン酸濃度を高速液体クロマトグラフィーにて測定した。
これから実施例1と同様にタンパク収率及び脂質量あたりのカプセル化タンパク量を求めた(図4)。
この結果からは、炭素数を12−18に変化させることで若干タンパク収率は向上するが、脂質量あたりのカプセル化タンパク量は減少する傾向にあることが分かり、リン脂質に対する脂肪酸含有モル比を30mol%以上にした場合と比して炭素数を変えることによる効果はあまり無く、このリン脂質に対する脂肪酸のモル比が30mol%〜50mol%の範囲では炭素鎖長のちがいによる影響は少ないことが分かった。なお、実施例ではリポソームに取りこまれた物質としてタンパク質の、収率、脂質量当たりの量比、、漏れだし率を測定しているが、タンパク質以外の物質が取りこまれた場合も同様である。
産業上の利用可能性
以上、詳述したように本発明のリポソーム製剤は、リポソーム内部への薬物の保持率の優れた薬物保持リポソーム製剤が提供される。さらに、リポソーム形成が不可能と従来考えられていた量の脂肪酸を特定鎖長の高級飽和脂肪酸として配合することで、リポソームが形成されることを見いだした。リン脂質はリポソーム構成膜材組成中、最も多く配合される物質であり、かつ脂肪酸に比して非常に高価である。本発明は、安価な脂肪酸の配合量を増大させることができ、リン脂質の配合量をはるかに少なくできた。従って、リポソーム製剤原料として安価な組成の膜剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
図1は、脂肪酸仕込み比とタンパク収率を示すグラフである。
図2は、脂肪酸仕込み比と脂質量あたりのカプセル化タンパク量を示すグラフである。
図3は、脂肪酸仕込み比とリポソームの安定性(タンパク質漏れだし率)を示すグラフである。
図4は、脂肪酸炭素鎖の炭素数とリポソーム製剤のタンパク収率及び脂質量あたりのタンパク量を示すグラフである。
本発明は、改良された薬物保持リポソーム製剤、さらに詳しくは、リポソーム(小胞体)の内部に種々の生理活性物質を封じ込めた薬物保持リポソームの改良された製剤に関する。
背景技術
リポソームは主として脂質よりなる膜を有する閉鎖小胞と定義される。脂質二重層膜の小胞体であるリポソームは,内部に種々の物質を封入でき、また生体由来物質から形成されるため生体適合性に優れることから,薬物送達システムとして有用である。リポソームは、生体膜のモデルとして多くの研究に用いられてきたが、一方で、薬物送達システム(drug delivery system;DDS)へ応用されてきた。また、遺伝子やアンチセンスのキャリアーとして遺伝子工学の分野でも用いられている。ところで薬剤のカプセル化は、薬剤の生体内分布や血流中での滞留時間を変化させる。また標的器官への到達性を改善し、薬物の副作用の軽減や徐放化も可能とする。リポソームを用いる利点としては毒性や抗原性が低いことのほか、用いるリン脂質が生体成分であるために生体内で代謝されることがあげられる。またリポソームは大きさや脂質組成を容易に調節でき、水溶性薬物、脂溶性薬物、高分子、タンパク質など多くのものが封入可能であり、高分子、糖質、抗体、レクチンなどによる表面修飾も容易である。また、膜融合性や、特定の細胞への接着制御などの機能をリポソームに付与することにより、目的にあった薬剤カプセルを構築できる。
このように薬物保持リポソーム製剤は、生体内では不安定な薬物の安定化や生体内における薬物の徐放化に利用することが考えられ、また薬物を特定の臓器に選択的に移行させるための手段としても利用が考えられている。例えば安定化や徐放化を目的とした製剤として、ヘモグロビン、インスリン、ヘパリン、ウロキナーゼ、そのほか種々の抗ガン剤、抗真菌剤等を含有するリポソーム製剤が知られており、標的臓器への薬物の速やかな移行を目的とした製剤として、ユビデカレノン、シトシンアラビノシド、ステロイド、そのほか種々の抗ガン剤、抗真菌剤等を含有するリポソーム製剤が知られている。
従来の薬物保持リポソーム製剤の膜剤として使用されるリン脂質には、卵黄レシチンまたは大豆レシチン等の不飽和レシチン、これらに水素添加した精製飽和レシチン、これらをさらに分離精製したホスフアチジルコリン、ホスフアチジルエタノールアミン、ホスフアチジルイノシトール、ホスフアチジルセリン、スフインゴミエリン等の精製レシチン、またジミリストイルレシチン、ジパルミトイルレシチン、ジステアロイルレシチン等の合成レシチンが挙げられる。これらは生体に対する親和性が良く、注射剤等の非経口用製剤に安全に使用される。しかしながら、従来使用されているリポソーム膜材は、薬物の保持率が必ずしも十分ではない。即ち、単位リポソーム薬剤の中に封じ込められる薬物の量が十分ではなく、さらに効率のよい膜材が要望されている。さらに従来の不飽和レシチンや不飽和脂肪酸(特開昭60−155109号公報)を原料としたリポソーム膜材は、安定牲が不十分であり、In−vitroあるいはIn−Vivoで比較的容易に膜が破壊され、生体内寿命が短い、薬物を放出する等の欠点があった。より安定性の高い精製レシチン、合成レシチンを用いたリポソーム製剤は非常に高価であり、精製レシチン、合成レシチンを製剤原料として用いるには限界がある。また従来知られていた膜剤として炭素数18−20の不飽和高級脂肪酸を5−15wt%含有するリポソームの製法(特開昭60−155109号公報)の範囲では、飽和脂肪酸を用いた場合には、リポソームの薬物保持率が著しく低下するという問題点があった。
従って、本発明の目的は第1に、リポソーム内部への薬物の保持率の優れた薬物保持リポソーム製剤を提供することにある。
本発明の目的は第2に、リポソーム製剤原料として安価な組成の膜剤を提供することにある。
発明の開示
すなわち本発明は、以下の各発明を提供する。
(1)リポソームおよびこのリポソームに取りこまれた物質からなるリポソーム製剤において、リポソームを構成する膜剤がリン脂質と炭素数10〜20の高級飽和脂肪酸の少なくとも1種とを含有し、該高級飽和脂肪酸の含有量がリポソーム構成成分中におけるモル比で30mol%〜50mol%であることを特徴とするリポソーム製剤。
(2)前記リン脂質が飽和リン脂質或いは水素添加リン脂質である(1)に記載のリポソーム製剤。
(3)前記膜剤としてさらにコレステロールを含む(1)または(2)に記載のリポソーム製剤。
(4)上記リポソーム表面には、さらに、親水性高分子鎖部と疎水性部とを有する凝集抑制剤が結合され、該凝集抑制剤は疎水性部がリポソーム中の脂質層に固定されるとともに親水性高分子鎖部はリポソーム表面から外方向に伸びてなるものである(1)〜(3)のいずれかに記載のリポソーム製剤。
(5)上記リポソームに取り込まれた物質は生理活性物質である(1)〜(4)のいずれかに記載のリポソーム製剤。
(6)前記生理活性物質がヘモグロビンである(5)に記載のリポソーム製剤。
発明を実施するための最良の形態
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の薬物保持リポソーム製剤に用いる膜剤としては、リポソームを作成するのに適当な脂質が用いられる。リン脂質としては大豆レシチン、卵黄レシチン等の天然不飽和リン脂質、合成リン脂質、あるいは天然不飽和リン脂質に水素添加を行った天然水素添加リン脂質など、任意のリン脂質を利用することができる。天然のリン脂質は全て不飽和脂肪酸を含んでいるため、本発明の目的をより高度に達成するため、上記天然リン脂質の不飽和脂肪酸を水素で飽和した水素添加リン脂質か合成リン脂質を使用するのがより効果的である。
本発明において用いるリン脂質の代表例としては、レシチン、ホスフアチジルエタノールアミン、ホスフアチジルイノシトール、ホスフアチジルセリン、ホスフアチジルグリセロール、スフインゴミエリン、カルジオリビン等を挙げることができる。さらに、これらに常法に従い水素添加したものが挙げられる。特に大豆レシチン、卵黄レシチン、コーンレシチン、綿実油レシチン、ナタネレシチン等を水素添加した水素添加天然レシチンが好適に使用される。
本発明における高級飽和脂肪酸としては、炭素原子10〜20個を有する高級脂肪酸が望ましく、その例として、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン駿、バルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸等が挙げられる。これらの高級飽和脂肪酸は単独であるいは混合して使用することができる。リポソーム膜構成脂質として好適に使用されるリン脂質の疎水性炭素鎖の炭素数がおよそ14〜18個であるため、リン脂質との親和性から、炭素原子14〜18個を有する高級飽和脂肪酸がより望ましい。高級飽和脂肪酸のリポソーム構成成分に対するモル比としては30mol%以上、かつリン脂質とミセル形成をしないモル比とする。高級飽和脂肪酸の配合量がモル比で30mol%未満でもリポソームを形成し、薬物保持能も有するが、薬物保持率を向上させるためには高級飽和脂肪酸の配合量がモル比で30mol%以上であることが必要である。さらに40mol%以上の場合、本発明の目的とする親和性、安定性、薬物の保持率、安価な膜剤として優れた効果を示すのでより好ましい。リン脂質はラメラ構造となる濃度範囲にて用いないとリポソームとして薬物を保持することができないが、高級飽和指防酸の配合量が増大しすぎると、高級飽和脂妨酸が形成するミセルにリン脂質が取り込まれてしまい、リポソームを形成しなくなる。この時の高級飽和脂肪酸の配合比は脂肪酸の炭素数や条件に応じて変動するが、モル比で約50mol%超となる。従って、高級脂肪酸はこの配合比以下のところで使用しないとリポソームを形成しなくなるため、薬物の保持効率は極端に低下または不能となる。好ましくはモル比で45mol%以下である。従って、高級飽和脂肪酸のリン脂質に対するモル比は30mol%〜50mol%、好ましくは40mol%〜45mol%である。
本発明の膜材には、膜の強度を高めるためにコレステロール、トコフェロール等のステロールを添加することができ、また、生体中における標的臓器への移行や、除放性をコントロールするための物質を添加することも可能である。
本発明のリポソーム製剤に取りこまれ、含有保持される被保持物質としては、リポソームの形成を阻害しない限り特に制限はないが、In−vitroまたはIn−vivoで不安定なもの、血流中に安定に滞留させたい生理活性物質、あるいは特定の臓器に速やかに分布することが所望されているものが好適に使用される。このような披保持物質として、特に薬剤の例としては、ヘモグロビン、インスリン、ヘパリン、ウロキナーゼ、エビヂカレノン、メトトレキセート ネオマイシン、プレオマイシン、テトラサイクリン、チトクロームC、アスパラギナーゼ、シトシンアラビノシド等が挙げられる。その他、薬剤以外のものでも、マーカー、アンチセンス、プラスミドやDNA、RNA等生体内に投与して有効なものであれば特に制限されることはない。本発明の薬物保持リポソーム製剤は、それ自体公知の方法によって製造される。例えば、天然リン脂質、水素添加天然リン脂質、少なくとも1種の上記高級飽和脂肪酸および所望によりステロールをクロロホルム、エタノール等の適当な溶媒に溶解し、得られた溶液から溶媒を留去して脂質混合物を調製する。得られた脂質混合物に、生理活性物質等の薬物の水溶液を加え、得られた混合液を激しく振とう、撹拌或いは超音波処理を行い、薬物水溶液を均一に分散させる。分散液からリポソームに取り込まれなかった薬物を除去し、薬物保持リポソーム製剤を得る。かくして得られたリポソーム製剤は必要により生理的に許容される水溶液、例えば生理食塩水に分散した懸濁状製剤として調整される。本発明のリポソーム製剤は注射剤等の非経口用製剤として投与される。また、本発明のリポソームを凍結乾燥するにあたっては通常の条件でよく、例えば、−20℃〜−80℃で凍結させ、0.3torr以下の減圧下に氷を昇華させるのが好ましい。さらに良好な凍結乾燥ケーキを形成させるためには、例えば、マンニトール、デキストリン、グリシン等の通常用いられる賦形剤を加えておいても良い。
尚、本発明においてリポソーム製剤とは、リポソーム内部に種々の被保持物質が封じ込められた状態のものと定義する。
本発明のリポソーム製剤には、さらに、親水性高分子鎖部と疎水性部とを有する凝集抑制剤が含まれていてもよい。凝集抑制剤量はリポソーム製剤に対して好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜1質量%とすることができる。リポソームを「親水性高分子結合脂質」で修飾する時に、カプセル化される物質が加熱可能な場合、5質量%くらいまで修飾可能である。0.01質量%未満は修飾しても凝集抑制効果が得られにくい。また、1質量%以下であれば加熱しなくとも修飾可能であり生理活性物質やヘモグロビン等の熱に不安定なタンパク質を含有させることができ、凝集抑制効果も十分である。凝集抑制剤をリポソーム製剤に加えると疎水性部分がリポソーム表面へ安定に挿入されリポソーム中の脂質層に固定されるとともに親水性高分子鎖はリポソーム表面から外方向に伸び、リポソームの凝集を抑制する機能を担う。
「凝集抑制剤」の例として、疎水性部としては、各種飽和・不飽和脂肪酸、ステロール、ポリオキシプロピレンアルキルまたはグリセリン脂肪酸エステル、およびリン脂質があげられ、リン脂質が好ましい。
親水性高分子鎖部としては、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、そして、デキストラン、プルラン、フィコール、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナン等の多糖類などである。その中でもポリエチレングリコールは血中滞留性を向上させる効果が顕著であり最も望ましい。ポリエチレングリコール結合リン脂質、ポリエチレングリコール結合コレステロールが好ましい。
以下に実施例をもって、本発明をいっそう具体的に説明するが、これらは実施の一例として示すものであり、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
(実施例1)
リン脂質として水添大豆レシチン(HSPC:分子量790)、コレステロール(分子量376)と高級脂肪酸としてステアリン酸(分子量278)との混合物で量配合比の異なる混合脂質(表1)を、t−BuOH、10mlに溶解後、凍結乾燥しt−BuOHを除去する事で調製した。これにヘモグロビン(45wt%)溶液、20mlを加え、高速攪拌機(クレアミックス社製、CLM−0.8S)を用いて乳化(20℃以下で15000rpm、1min、3回)した。乳化後、各処理物に生理食塩水を30ml加え、4万G、60minで3回カプセル化されなかったヘモグロビンを遠心洗浄した。その後20mlの生理食塩水に分散し0.45μmフィルターを用いて濾過し、ここに凝集防止剤としてポリエチレングリコール(PEG)結合リン脂質を0.1質量%になるように加え、PEG表面修飾リポソームカプセル化ヘモグロビン製剤を得た。
このようにして得られた各配合比のリポソームカプセル化ヘモグロビン製剤中のヘモグロビン濃度を原子吸光にて測定し、HSPC濃度、コレステロール濃度、ステアリン酸濃度を高速液体クロマトグラフィーにて測定した。
この結果よりリポソームにカプセル化されたヘモグロビンであるタンパク質の収率を次式により求めた。
「タンパク収率(%)=(リポソーム内タンパク保持量/調整時タンパク投入量)×100」
この結果、リン脂質に対する脂肪酸のモル比が30mol%未満の場合には、タンパク収率が約10%以下に留まったが、モル比が30mol%〜50mol%の範囲では12%以上のタンパク収率があり、モル比約40mol%ではタンパク収率が16%まで高まることが分かった(図1)。
また、リポソームにカプセル化された投与薬物を、効率よく生体に投与することを考えると脂質量あたりのカプセル化タンパク量は多い程良い、そこで脂質量あたりのカプセル化タンパク量を次式により求めた。
「脂質量あたりのカプセル化タンパク量=(リポソーム内タンパク保持量/(HSPC量+コレステロール量+ステアリン酸量))」
この結果から、リン脂質に対する脂肪酸のモル比が26mol%未満の場合には、全く脂肪酸を含まない場合をのぞき(この場合にはほとんどリポソームカプセル化ヘモグロビン製剤が形成されなかった)脂質量あたりのカプセル化タンパク量は1.2程度に留まったが、モル比が26mol%−50mol%の範囲では脂質量あたりのカプセル化タンパク量が著しく増加し、モル比約46mol%では脂質量あたりのカプセル化タンパク量を1.7にまで高めることが出来た(図2)。
さらに、リポソーム製剤からのIn−Vitro及びIn−Vivoでの薬物の漏れだしの安定性を評価するために、各配合比のリポソームカプセル化ヘモグロビン製剤を50ml遠沈管に入れ37℃にて毎分60回、3時間振とうした後、4万Gで60min遠心し、上清に漏れだしたヘモグロビン量を測定した。漏れ出したヘモグロビン量を、元のリポソームカプセル化ヘモグロビン製剤のヘモグロビン量で除した値をタンパク漏れだし率(%)として図3に示した。
この結果リン脂質に対するモル比が12mol%ぐらいからリポソーム製剤の安定性が高まり、モル比50mol%の範囲まで安定であり、33mol%〜46mol%の範囲で特に安定であることが分かった。モル比50mol%を越えるような範囲では逆にリポソーム製剤の安定性が損なわれることも分かった。
(実施例2)
リン脂質としてHSPC(分子量:790)、コレステロール(分子量:376)に、高級飽和脂肪酸としてラウリン酸(分子量:200)、ミリスチン酸(分子量:228)、パルミチン酸(分子量:256)、ステアリン酸(分子量:278)をHSPCに対するモル比で33.3mol%配合した混合脂質1gを実施例1と同様の方法で調製した。これにヘモグロビン(45wt%)溶液、20mlを加え、高速攪拌機(クレアミックス社製、CLM−0.8S)を用いて乳化(20℃以下で15000rpm、1min、3回)した。乳化後、各処理物に生理食塩水を30ml加え、4万G、60minで3回カプセル化されなかったヘモグロビンを遠心洗浄した。その後20mlの生理食塩水に分散し0.45μmフィルターを用いて濾過し、ここに凝集防止剤としてポリエチレングリコール結合リン脂質を0.1質量%になるように加え、PEG表面修飾リポソームカプセル化ヘモグロビン製剤を得た。
このようにして得られた各脂肪酸配合のリポソームカプセル化ヘモグロビン製剤中のヘモグロビン濃度を原子吸光にて測定し、HSPC濃度、コレステロール濃度、ステアリン酸濃度を高速液体クロマトグラフィーにて測定した。
これから実施例1と同様にタンパク収率及び脂質量あたりのカプセル化タンパク量を求めた(図4)。
この結果からは、炭素数を12−18に変化させることで若干タンパク収率は向上するが、脂質量あたりのカプセル化タンパク量は減少する傾向にあることが分かり、リン脂質に対する脂肪酸含有モル比を30mol%以上にした場合と比して炭素数を変えることによる効果はあまり無く、このリン脂質に対する脂肪酸のモル比が30mol%〜50mol%の範囲では炭素鎖長のちがいによる影響は少ないことが分かった。なお、実施例ではリポソームに取りこまれた物質としてタンパク質の、収率、脂質量当たりの量比、、漏れだし率を測定しているが、タンパク質以外の物質が取りこまれた場合も同様である。
産業上の利用可能性
以上、詳述したように本発明のリポソーム製剤は、リポソーム内部への薬物の保持率の優れた薬物保持リポソーム製剤が提供される。さらに、リポソーム形成が不可能と従来考えられていた量の脂肪酸を特定鎖長の高級飽和脂肪酸として配合することで、リポソームが形成されることを見いだした。リン脂質はリポソーム構成膜材組成中、最も多く配合される物質であり、かつ脂肪酸に比して非常に高価である。本発明は、安価な脂肪酸の配合量を増大させることができ、リン脂質の配合量をはるかに少なくできた。従って、リポソーム製剤原料として安価な組成の膜剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
図1は、脂肪酸仕込み比とタンパク収率を示すグラフである。
図2は、脂肪酸仕込み比と脂質量あたりのカプセル化タンパク量を示すグラフである。
図3は、脂肪酸仕込み比とリポソームの安定性(タンパク質漏れだし率)を示すグラフである。
図4は、脂肪酸炭素鎖の炭素数とリポソーム製剤のタンパク収率及び脂質量あたりのタンパク量を示すグラフである。
Claims (6)
- リポソームおよびこのリポソームに取りこまれた物質からなるリポソーム製剤において、リポソームを構成する膜剤がリン脂質と炭素数10〜20の高級飽和脂肪酸の少なくとも1種とを含有し、該高級飽和脂肪酸の含有量がリポソーム構成成分中におけるモル比で30mol%〜50mol%であることを特徴とするリポソーム製剤。
- 前記リン脂質が飽和リン脂質或いは水素添加リン脂質である請求項1に記載のリポソーム製剤。
- 前記膜剤としてさらにコレステロールを含む請求項1または2に記載のリポソーム製剤。
- 上記リポソーム表面には、さらに、親水性高分子鎖部と疎水性部とを有する凝集抑制剤が結合され、該凝集抑制剤は疎水性部がリポソーム中の脂質層に固定されるとともに親水性高分子鎖部はリポソーム表面から外方向に伸びてなるものである請求項1〜3のいずれかに記載のリポソーム製剤。
- 上記リポソームに取り込まれた物質は生理活性物質である請求項1〜4のいずれかに記載のリポソーム製剤。
- 前記生理活性物質がヘモグロビンである請求項5に記載のリポソーム製剤。
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