JPWO2002087434A1 - 生体状態及び生体状態に影響を及ぼす行為の有効性の判定方法、判定装置、判定システム、判定プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、被験体の生体信号の時系列データから得られるカオス性を表現可能な指標である(1)リアプノフ指数及びエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、(2)ヒグチフラクタル次元を用いることを包含する生体状態の判定方法に関する。
Description
技術分野
本発明は、生体状態の判定方法、判定装置、判定システム、判定プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体に関する。なお、本明細書において、最大リアプノフ指数(λ1)を単にリアプノフ指数と記載することがある。
背景技術
生体の解糖系や酵素の動態、細胞内cAMP、カルシウムイオンの動き等は早くから非平衡なエネルギー状態とシグナル伝達系のフィードバック、クロストークなどと呼ばれる干渉効果によって、カオス的なOscillation(振動)を示すことはよく知られていることである(Albert Goldbetter,Biochemical Oscillations and cellular rhythms−The molecular basis of Periodic and Chaotic behavior−Cambridge University Press)。この非平衡でゆらぎを含んでOscillateするシステムは生命そのものであり、生命の適応能力はカオス的なゆらぎで測られる(Weiming Yang,A.J.Mandell et.al.Physical Review E,Vol.51,Number1,p102−110,1995)。
健康(正常)な時と病態などの非正常時でカオス的なゆらぎに差があるものとして、次の項目が知られている。(W.Yang,同上)
1) 血液関連疾患時の各種の細胞数の経時変化のゆらぎ
2) 薬物刺激時の動物の行動パターンや脳内酵素、脳内レセプターの存在パターンの時間的変化
3) 種々の心疾患時の心拍間隔のパターン
4) 各種刺激感受性生物反応がある刺激に脱感作された時のその持続時間の変化
5) 実験癲癇
6) 神経内分泌細胞が突然変異してガン化したときのホルモン分泌パターン
7) 心移植の拒絶反応の予測に役立つ心電図のパターン
8) 神経変異性疾患時の脳波パターン
9) 加齢に伴なう神経内分泌パターン、心電図、脳波
10)切迫した心室細動時の心電図パターン
このように病態生理学的にも、カオス的なゆらぎの喪失が病態の原因の1つであると考えられる例は数多く知られている。生命の存在原理が自己組織化と呼ばれるゆらぎを含んだ振動統合であることは、プリゴジンの定式化を始め多くの人達の指摘するところであり、神経−ホルモン−免疫系関連薬剤のデータが支持することである。従って、ゆらぎの喪失と病態の関係は生命現象のほとんどすべての範囲にわたっていても驚くにはあたらない。神経−ホルモン−免疫系や心臓の拍動などもカオス的ゆらぎを保つことで健全性を維持していることを表しており、精神・神経・免疫関連疾患や特発性周期疾患もカオス性を保つことが治療と予防につながることを示している。これらの薬剤が示す臨床効果と基礎の動物実験の効果は、これを改善した結果であると考えられる。
脳、神経関連疾患の分野では、脳波や指尖脈波のカオス測定と解析法の進歩によって、例えば神経系のもっている非線形性の全体像を、神経細胞内のイオン濃度、膜電位、シナプス電流、シナプス結合の強さ、新しく生じたシナプス結合、神経系の環境を作る様々な物質、入力信号等々によって、系の巨視的な状態がドラマチックにかつ多様に変化する全体像として把握できることが明らかになっている(合原一幸編、ニューラルシステムにおけるカオス、東京電機大学出版局)。
指尖脈波は、指先の毛細血管を流れる血液の時間的変化を赤外線センサーをつかって、例えば、1分間測定して得られる2次元の電気信号の波形を数学的に4次元のアトラクターとして表示すると共に、そのカオス解析を行うことにより、生体の全体状況の指標の1つにするものである。指尖脈波は少なくとも3コの脈波成分、心臓の拍動成分、呼吸成分、ホルモンによる血管壁への作用成分の3つからなっていると考えられている。それぞれ異なる基本周波数をもつと考えられる、これらの振動成分が統合されて表現されているいるのが、指尖脈波カオスである(金子邦彦、津田一郎 複雑系のカオス的シナリオ、朝倉書店)。
従って、脈波カオスによって表現される生体情報は、中枢神経系と末梢循環器系、代謝系の相互作用の全体像として表現されている。このことが心電図で現われるカオスと比べて、脈波カオスがより精神状態を反映する理由になっている。指尖脈波のカオス解析とその臨床応用に関しては、津田、田原等の論文に詳述されている(Ichiro Tuda,Takashi Tahara Chaotic Pulsation in Human Capillary Vessels and its Dependence on Mental and Physical Conditions,International Journal of bifurcation and Chaos,Vol,2,No2,313−324,1992)(Takeo Sumida et.al.Mental Conditions Reflected by the Chaos of Pulsation in Capillary Vessels,ibid.Vol.10,No.9(2000)2245−2255(田原孝、臨床におけるカオスの応用、バイオメカニズム学会誌、Vol 19,No2,105−116,1995)。
これらの論文の中で、指尖脈波の中に含まれる決定論的カオスは脳波や心電図でも観察できるカオスと本質的に同じであり、人の精神、心理状態、病気、成熟に関係するとされている。神経症やうつ病患者の臨床症状とカオス性の1つの指標であるリアプノフ指数(λ1、λ2)の動きはパラレルであり、症状の改善に伴なってλ1は増加しλ2は減少する。又、アトラクターの構造も病状の改善に伴なって、弱い単純な構造から強い複雑な構造に変化する。
このように、リアプノフ指数が生体の自己組織化能や健全性の1つの指標になることは、今まで述べたことから示唆されることであった。しかしカオス性の指標であるリアプノフ指数の本来の意味は、システムの時間的な非周期性の大きさを表しており、このような指標は時間的にもフラクタルな変化をしていることは、システムがカオス性を示す以上当然のことであると考えられる。また、我々のデータもそのことを示している。従って、このような指標だけを単独に測定して、そのシステムの健全度を測ることは、長期にわたって何回も異なる間隔で測定をくりかえすことによってのみ可能になるような性質のものである。従って、このような指標を臨床診断の場で使うことは、かなり限定された意味しかもちえないものであった。
本発明は、生体状態を判定する方法、及び、ある行為が生体状態にどのような影響を及ぼすのかを判定する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、このような判定方法を実行するための判定装置、判定システム、判定プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明者は、上記課題に鑑み、生体状態を正確に判定する手法について検討を重ねてきた。その結果、脈波などの生体信号の時系列データから一定時間ごとのリアプノフ指数とエントロピーの平均値を求め、これら2種のデータのM−Symmetry法、Wavelet Transform(ウェーブレット法)、Mirror Value(ミラー値)に基づく方法を用いた対称性分析、並びに/或いは、同じ生体信号からベルヌーイシフトを行って、リアプノフ指数とエントロピーの時系列データを求め、これら相関性を求めることにより、良好ないし正常な生体状態と、精神あるいは身体のいずれかの部分に良好でない又は正常でない(疾病状態を含む)部分があるのかを容易に判定できることを見出した。
また、生体信号の時系列データをF−symmetry法に基づき分析してヒグチフラクタル(Higuchi Fractal)次元の比(D1/D2)を算出し、この比を用いた対称性分析をさらに組み合わせることで、判定の精度を著しく向上できることを見出した。
さらに、生体状態の判定後、生体状態に影響を与える可能性のある行為を行った後、さらに生体状態を判定し、該行為の有効性を判定できることを見出した。
本発明は、以下の生体状態の判定方法、判定装置、判定システム、判定プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体を提供するものである。
(1) 被験体の生体信号の時系列データから得られるカオス性を表現可能な指標である(1)リアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、(2)ヒグチフラクタル(Higuchi Fractal)次元を用いることを包含する生体状態の判定方法。
(2) 被験体の生体信号の時系列データから得られるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性を分析する工程、及び該相関性及び/又は対称性の分析結果に基づき生体状態を判定する工程を包含する(1)に記載の方法。
(3) 前記リアプノフ指数と前記エントロピーの相関性をDFA解析法(Detrended Fluctuation Analysis)を用いて分析する(1)に記載の方法。
(4) 前記DFA解析法が、マクロDFA解析を行う工程、及びミクロDFA解析を行う工程を包含する(1)に記載の方法。
(5) 前記リアプノフ指数と前記エントロピーの対称性をM−symmetry法、ウェーブレット(Wavelet)解析法及びミラー値(Mirror Value)に基づく方法からなる群から選ばれるいずれかの方法を用いて分析する(1)に記載の方法。
(6) 被験体の生体信号の時系列データから複数の前記リアプノフ指数及び前記エントロピーを計算し、この複数のリアプノフ指数の中の最大値を最大リアプノフ指数として決定する工程と、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーに対応するオフセット値(Os)を決定する工程と、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーからミラー値を計算する工程と、
前記ミラー値及び前記オフセット値から重み付きリアプノフ指数を計算する工程とを包含する(1)に記載の方法。
(7) 前記ヒグチフラクタル次元として、2つのヒグチのフラクタル次元の比(D1/D2)及び/又はF−定数を用いる(1)に記載の方法。
(8) 被験体の生体信号の時系列データをF−symmetry法を用い、Higuchiのフラクタル次元の比(D1/D2)を算出する工程をさらに含み、リアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性とHiguchiのフラクタル次元の比(D1/D2)に基づき生体状態を判定する(1)に記載の方法。
(9) 前記生体信号の時系列データが脈波から得られる(1)に記載の方法。
(10) 前記生体状態が、被験体の疾病及び非疾病の精神的状態或いは身体的状態である(1)に記載の方法。
(11) (1)に記載の方法に従いある時点での生体状態を判定する工程、生体状態を変化させる可能性のある行為を行う工程、該行為の後に生体信号の時系列データを分析してリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性を測定する工程、前記行為の前後におけるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性を比較して前記行為の生体に対する影響がポジティブであるかネガティブであるか中立(不変)であるかを判定する工程を包含する生体状態に影響を及ぼす可能性のある行為の有効性の判定方法。
(12) 前記行為が、薬物投与、透析、医療器具の使用(例えば、放射線ないしレーザー照射、電気的・磁気的パルスによる治療、リハビリなど)、生体の状態を改善する可能性のある食物の摂取などの疾患の予防又は治療行為、身体的又は精神的刺激の付与からなる群から選ばれる(11)に記載の方法。
(13) 被験体の生体信号の時系列データから複数の前記リアプノフ指数及び前記エントロピーを計算し、この複数のリアプノフ指数の中の最大値を最大リアプノフ指数として決定する工程と、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーからスケーリング係数及びウェーブレット係数を計算する工程とを含む(1)に記載の方法。
(14) 被験体の生体信号の時系列データの計算結果に対してニューラルネットワークによって判定を行う(1)又は(7)に記載の方法。
(15) 被験体の生体信号の時系列データを基に該生体の状態を判定する生体状態の判定装置であって、
処理部及び検出部を備え、
前記処理部は、前記検出部を制御して前記時系列データを採取し、該時系列データからカオス性を表現可能な指標であるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、ヒグチフラクタル次元を計算し、該計算結果を使用して判定を行うことを特徴とする生体状態の判定装置。
(16) 被験体の生体信号の時系列データを採取する測定装置と、前記時系列データを基に生体状態を判定する判定装置とを備え、
前記測定装置は、通信回線を介して前記時系列データを前記判定装置に伝送し、
前記判定装置は、伝送された前記時系列データからカオス性を表現可能な指標であるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、ヒグチフラクタル次元を計算し、該計算結果を使用して判定を行うことを特徴とする生体の状態判定システム。
(17) 被験体の生体信号の時系列データを採取する測定装置と、前記時系列データを基に生体状態を判定する判定装置とを備え、
前記測定装置は、前記時系列データからカオス性を表現可能な指標であるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、ヒグチフラクタル次元を計算し、通信回線を介して前記計算結果を前記判定装置に伝送し、
前記判定装置は、伝送された前記計算結果を使用して判定を行うことを特徴とする生体の状態判定システム。
(18) 前記判定装置は、前記判定の結果を前記測定装置に伝送する(16)または(17)に記載のシステム。
(19) 被験体の生体信号の時系列データを基に該被験体の状態を判定する生体状態の判定装置に、
前記時系列データからカオス性を表現可能な指標であるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、ヒグチフラクタル次元を計算する機能を実現させることを特徴とする生体の状態判定プログラム。
(20) 複数の前記リアプノフ指数の中の最大値を最大リアプノフ指数として決定する機能、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーに対応するオフセット値を決定する機能、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーからミラー値を計算する機能、及び
前記ミラー値及び前記オフセット値から重み付きリアプノフ指数を計算する機能をさらに実現させる(19)に記載のプログラム。
(21) 複数の前記リアプノフ指数の中の最大値を最大リアプノフ指数として決定する機能、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーからスケーリング係数及びウェーブレット係数を計算する機能をさらに実現させる(19)に記載のプログラム。
(22) 前記リアプノフ指数及び前記エントロピーに関してマクロDFA解析及びミクロDFA解析を行う機能をさらに実現させる(19)に記載のプログラム。
(23) 前記時系列データからヒグチフラクタル次元及びF−定数を計算する機能を実現させる(19)に記載の生体状態の判定プログラム。
(24) (19)〜(23)の何れかの項に記載の判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
カオス性の1つの指標であるリアプノフ指数は多数あるが、ここでは最大リアプノフ指数(λ1)を用いる。以下においては、ウォルフの第1リアプノフ指数(λ1)を単にリアプノフ指数として記載する。また、特に断らない限り、リアプノフ指数は最大リアプノフ指数を意味する。
リアプノフ指数及びエントロピーは、脈波、心電図、脳波、心拍数などのカオス・ゆらぎの生体信号の時系列データの測定値から導くことができる。生体信号としては脈波が特に好ましいが、他の生体信号を用いることも可能である。
脈波は、指先から得られる指尖脈波が好ましいが、指先以外の生体表面の計測部位(耳たぶ、掌、指の付け根部分(指輪の位置))で測定してもよい。
脈波測定装置としては、コンピューターコンビニエンス社製の脈波収集装置(Bacs detector)を例示することができる。脈波からのリアプノフ指数及びエントロピーの算出手順は後述するが、リアプノフ指数は、例えば特許番号1891534号(特開平4−208136号公報)明細書の記載に従って、算出することができる。また脈波からのエントロピーの算出は公知の方法(Ichiro Tuda,Takashi Tahara Chaotic Pulsation in Human Capillary Vessels and its Dependence on Mental and Physical Conditions,International Journal of bifurcation and Chaos,Vol,2,No2,313−324,1992)に従い算出することができる。
好ましい1つの実施形態において、脈波などの生体信号の時系列データの測定は、通常1分以上行うことができ、好ましくは約3分から30分程度の時間、連続して或いは2〜18回に分けて測定することができる。1回の連続的測定時間は、1分以上であるのが好ましく、特に2〜5分程度がよい。特に好ましくは、1分×3回の測定を1セットとし、3セットのデータを測定し、解析することである。
本発明の判定方法の被験体は、主としてヒトの被験体を対象としているが、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、マウス、ラット、モルモット、ウサギなどの哺乳動物の被験体について適用することも可能である。
リアプノフ指数とエントロピーを用いる本発明の判定方法では、例えばあるヒト被験体が第1生体状態と第2生体状態のいずれに属するかを判定する場合、予め第1生体状態に属する被験体と、第2生体状態に属する被験体について予めリアプノフ指数とエントロピーに基づき判定基準を決定し、次に各被験体のリアプノフ指数とエントロピーを分析し、該判定基準に従って生体状態が第1の生体状態か第2の生体状態かを判定する。判定される生体状態がn個(nは3以上)ある場合には、第1の生体状態からn番目の生体状態について予め判定基準を作成し、同様に判定することができる。リアプノフ指数とエントロピーに代えて、ヒグチフラクタル次元を用いる場合にも、同様に判定することができる。
判定対象となる生体状態は、正常と非正常(例えば疾患)を判定することも可能であるが、例えば被験体がうつ病又は精神***病のいずれかの精神状態にあることがわかっている場合には、うつ病を第1の生体状態、精神***病を第2の生体状態として判定することも可能である。
判定基準を決定するための各生体状態の被験体の数は、多い方が正確に判定するために好ましく、例えば5以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上である。この被験体数は、判定の開始時の数であり、判定後の被験体は各々の生体状態の基礎データとして記録し、各生体状態の母集団を判定の実施によって増大させていくことで、より正確な判定が可能となる。また、特に精神状態などにおいて正常と非正常(例えばうつ病)の基準が変わったり、新たな病名が付与されたりする場合には、判定基準を決定するための各生体状態の基礎データを変更することも可能である。
本発明において生体状態の判定基準は、各生体状態の被験体に関する測定データから計算されたリアプノフ指数とエントロピーに基づき、好ましくはリアプノフ指数とエントロピーの対称性及び/又は相関性の分析を行い、対称性及び/又は相関性の分析結果に基づき判定基準を準備する。被験体についてリアプノフ指数とエントロピーの対称性を分析する方法として、M−symmetry法、ウェーブレット(Wavelet)法を用いる。相関性の分析方法としては、DFA(Detrended Fluctuation Analysis)解析法や長距離相関を用いる解析法などが使用され得るが、DFA解析法を用いることが好ましい。また、本発明における別の判定基準として、各生体状態の被験体に関する測定データからヒグチフラクタル次元を計算し、これから導出される指標であるF−定数を判定に使用する(F−symmetry法)。生体状態の判定又は生体に対する行為の有効性の判定において、これらの方法を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(実施の形態1)
生体状態の判定装置
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る生体状態の判定装置の概略構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る生体状態の判定装置は、本体部10、検出部20及び通信ケーブル21から構成されている。
本体部10は、中央演算処理部11(以下、CPUと記す)、メモリ部12、記録部13、インタフェース部14、ビデオ部15、データバス16、表示部17、操作部18を備えている。検出部20は、赤外線を放射する発光ダイオード及び発光ダイオードの放射する周波数帯域の赤外線を受信するフォトトランジスタを装備したプローブと、A/D変換器(いずれも図示せず)とを備えている。
CPU11は本体部10内部の各部を制御し、このCPU11による制御及び各部間のデータ伝送はデータバス16を介して行われる。CPU11は、インタフェース部14を介して、操作部18からの指示を受け付ける。
CPU11は、インタフェース部14を介して、検出部20の発光ダイオード及びA/D変換器を制御する。CPU11は、発光ダイオードを制御して赤外線を放射させ、A/D変換器を制御してフォトトランジスタの受信信号をサンプリングさせ、通信ケーブル21及びインタフェース部14を介してサンプリングデータを取得し、記録部13に記録する。例えば、人体の指先にプローブをセットし、指を透過(又は指内部で反射)した赤外線をフォトトランジスタで受信した信号を、所定の時間間隔でサンプリングすることによって、指先部分の血流状態の変化、即ち指尖脈波データを取得することができる。
CPU11は、記録部13からデータをメモリ部12に読み出して、後述する計算等の処理を行った結果を、記録部13の所定領域に記録する。また、CPU11がビデオ部15のビデオメモリ(図示せず)に画像データを書き込むことによって、書き込まれた画像データは、ビデオ部15のビデオ変換器(図示せず)によって表示部17に適したビデオ信号に変換された後、表示部17に伝送されて表示される。
リアプノフ指数とエントロピーの対称性分析
(i)M−symmetry(Mirror value symmetry)法
上記したように、測定データに関してリアプノフ指数とエントロピーの対称性を分析する方法としてはM−symmetryによる方法がある。M−symmetry法とは、脈波時系列信号から得られるリアプノフ指数及びエントロピーが健常人であれば互いに逆方向へ動くことで複雑系としてのシステムの健全性を保っているという考えに基づいて、この2つの指標(リアプノフ指数及びエントロピー)の対称性を数値化する解析法をいう。具体的なデータ処理の手順に関しては後述する。M−symmetry法では、リアプノフ指数とエントロピーの対称性が、高いほど正常に近く、低いほど正常から離れた状態にあると判定される。
図2は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるM−symmetry法を使用する生体状態の判定方法において、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。下記の各ステップにおいて、計算等のデータ処理はメモリ部12上で実行され、その結果は、次のステップで使用される場合など、必要に応じて記録部13の所定の領域に記録されるものとする。
先ず、ステップ21において、複数の被験体に対して指尖脈波の測定を行う。上記したように、検出部20を制御して各々の被験体に対して指尖脈波の測定を行い、採取した指尖脈波データw(i,j;k)を記録部13に記録する。ここで、iは被験体に一意に割り当てた識別番号、jは測定回数、kはサンプリング順にデータに付したサンプリング番号を表わす。各種の測定条件で指尖脈波データを採取可能であるが、以下においては、サンプリング周期を5ミリ秒(msec)とし、各々の被験体に対して3分間の測定を3回行う場合に関して説明する。即ち、各被験体iに関して、各々36000個のデータからなる3つの時系列データ{w(i,j)}が得られる。ここにおいて{ }の記号は、1回のサンプリングデータを時系列データとして表わす記号である。
ステップ22において、指尖脈波データw(i,j;k)を記録部13から読み出し、埋込次元を4に、埋込遅延τを10にセットして、データ{w(i,j)}から、式1によって4次元ベクトルV(i,j;k)(k=1〜36000)を生成する。
ステップ23において、式2及び式3によって、各(i,j)に関して、最大リアプノフ(Lyapunov)指数λ1(i,j)及びエントロピーE(i,j)を計算する。
最大リアプノフ指数λ1(i,j)は、4次元ベクトルV(i,j,k)の各成分w(i,j;k)、w(i,j;k+τ)、w(i,j;k+2τ)、w(i,j;k+3τ)に関して、式2によって計算される4つのλ(i,j)の中の最大のものである。
ここで、{xk}には、4次元ベクトルV(i,j;k)の各成分w(i,j;k)、w(i,j;k+τ)、w(i,j;k+2τ)、w(i,j;k+3τ)の時系列データが使用される。リアプノフ指数λ(i,j)は、所定の関数fを用いて、xk+1=f(xk)の条件が付された力学系において、近接した2点から出発した2つの軌道{xk}が、n→∞のときにどの程度離れて行くかを示している。
また、Pkはデータの存在確率を表わす。即ち、エントロピーE(i,j)は、4次元ベクトルV(i,j;k)の空間をN個の小領域に分割し、全データ個数に対する各小領域内に存在するデータ個数の比率によって各小領域のPkを表わし、全領域に関してPkの和をとることによって得られる。
ステップ24において、エントロピーE(i,j)、最大リアプノフ指数λ1(i,j)を2次元平面にプロットし、全データの重心を計算し、重心を通って、水平線に対して+45度と−45度の境界線を描き、2次元平面(Mirror対称図)を図3に示すように所定の点を基準として8つの領域に区分し、領域I及びIIに対してオフセット値(Os)を、Os=2とし、その他の領域に対してはOs=1と設定する。
ステップ25において、式4によって、ミラー値(Mirror Value)MV(i,j)を計算する。
ここでmax|λ1|、max|E|は、それぞれ、複数の被験体からなる集団全体の測定データに関する、最大リアプノフ指数λ1(i,j)、エントロピーE(i,j)の中の最大値である。ミラー値による正常、DP(うつ病)、SP(***病)の分析結果を図31に例示する。
ステップ26において、最大リアプノフ指数λ1(i,j)、エントロピーE(i,j)が、ステップ23において決定した領域のどの領域に属するかを考慮して、各(i,j)に関して、式5によって重み付きリアプノフ指数λ1w(i,j)を計算する。
即ち、最大リアプノフ指数λ1(i,j)、エントロピーE(i,j)が領域I又はIIに属する場合、Os=2として、それ以外の領域に属する場合には、Os=1として、式5によって重み付きリアプノフ指数λ1w(i,j)を計算する。
ステップ27において、重み付きリアプノフ指数λ1w(i,j)、エントロピーE(i,j)に関して、j回の測定の平均値λ1wav(i)、Eav(i)を計算する。
ステップ28において、縦軸を重み付きリアプノフ指数λ1w(i,j)、横軸をE(i,j)として、(i,j)に関してプロットした図を作成し、ビデオ部15に伝送する。ビデオ部15に伝送されたデータは、表示部17上に表示される。
以上によって、得られた重み付きリアプノフ指数の平均値λ1wav(i)を、母集団に関して実験的に求められた基準値と比較することにより、被験体iの生体状態を判定することが可能となる。実験的に基準値を求める方法は、正常(健康な)被験体の脈波をなるべく多く測定して、重み付きリアプノフ指数を計算しその平均値を基準値とする。重み付きリアプノフ指数の平均値λ1wav(i)が、基準値よりも値が大きければ生体状態は良好と判定できる。
また、ステップ28において得られるプロット図を、母集団に関して実験的に求められた基準線と比較することによっても、被験体iの生体状態を判定することが可能となる。実験的に基準値を求める方法は、正常(健康な)被験体の脈波をなるべく多く測定して、プロット図を作成し、その平均値を基準線とする。
図4はステップ28によって得られるプロット図の一例を示している。例えば、プロットした点が、水平の基準ラインの上方に位置する場合、その被験体の生体状態は正常であると判定でき、下方に位置する場合、異常であると判定することができる。この例では、正常(Normal)、うつ病(DP)、***病(SP)のデータをプロットしているが、正常が基準線より上、うつ病と***病が基準線より下に83%の確率で分布している。
(実施の形態2)
ウェーブレット(Wavelet)変換を使用する対称性分析
次に、被験体についてリアプノフ指数とエントロピーの対称性を分析する方法としてウェーブレット(Wavelet)変換を使用する方法を説明する。図5は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるウェーブレット変換を使用する生体状態の判定方法において、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
ステップ31において、図2のステップ21と同様に、指尖脈波データの測定を行い、記録部13に記録する。本実施の形態においては、特定の被験体iに対する測定だけを行い、1回3分間の測定3回を1セットとして、等時間間隔で3セット以上の測定が行なわれる。以下において、m(m≧3)をセット番号として、測定データをw(i,m,j;k)で表わす。
ステップ32において、図2のステップ22と同様に、埋込次元を4に、埋込遅延τを10にセットして、ステップ31において測定した指尖脈波データからベクトルデータV(i,m,j;k)を生成する。
ステップ33において、図2のステップ23と同様に、最大リアプノフ指数λ1(i,m,j)及びエントロピーE(i,m,j)を計算し、各々のiに関して時系列データとして記録部13に記録する。これによって、1回3分間の測定3回をNセット行う場合、3N個のデータからなる時系列データが得られる。
ステップ34において、ステップ33で得られた最大リアプノフ指数λ1(i,m,j)及びエントロピーE(i,m,j)に関して、ウェーブレット多重解像度分解によって、スケーリング係数S1(λ1)〜S5(λ1)、S1(E)〜S5(E)及びウェーブレット係数W1(λ1)〜W5(λ1)、W1(E)〜W5(E)の時系列波形を計算する。ウェーブレット多重解像度分解は、信号波形を直交関数系で展開する周知の解析方法であり、スケーリング係数及びウェーブレット係数は、展開係数である。
即ち、被験体iの測定データに関するスケーリング係数S1(λ1)〜S5(λ1)とウェーブレット係数W1(λ1)〜W5(λ1)は、最大リアプノフ指数λ1(i,m,j)を時系列データとみなして、ウェーブレット多重解像度分解によって得られる1次元〜5次元のスケーリング係数とウェーブレット係数である。
また、被験体iの測定データに関するスケーリング係数S1(E)〜S5(E)とウェーブレット係数W1(E)〜W5(E)は、エントロピーE(i,m,j)を時系列データとみなして、ウェーブレット多重解像度分解によって得られる1次元〜5次元のスケーリング係数とウェーブレット係数である。
ステップ35において、記録部13から被験体iのスケーリング係数S1(λ1)〜S5(λ1)、S1(E)〜S5(E)及びウェーブレット係数W1(λ1)〜W5(λ1)、W1(E)〜W5(E)を読み出し、時系列データとみなして、図6に示すように、スケーリング係数S1(λ1)〜S5(λ1)の時系列波形とS1(E)〜S5(E)の時系列波形とをそれぞれ同じレベルで重ねたグラフの画像データ、及び各々のウェーブレット係数W1(λ1)〜W5(λ1)の時系列波形とW1(E)〜W5(E)の時系列波形とをそれぞれ同じレベルで重ねたグラフの画像データをビデオメモリ上に作成する。作成されたグラフは表示部17に表示される。
ステップ36において、ステップ35で得られたグラフを元に被験体iの生体状態の判定を行う。即ち、スケーリング係数S1(λ1)〜S5(λ1)の波形とS1(E)〜S5(E)の波形との関係、及びウェーブレット係数W1(λ1)〜W5(λ1)の波形とW1(E)〜W5(E)の波形との関係によって判定を行う。
例えば、投薬の前後にわたって測定したデータに対して、上記した一連のステップにおいて処理し、表示部17にスケーリング係数S1〜S5、ウェーブレット係数W1〜W5、リアプノフ指数λ1、エントロピーEの時系列波形を表示し、これらの波形相互間の対称性を判定基準として、投薬の効果を判定することが可能である。即ち、投薬後に、スケーリング係数S1(λ1)〜S5(λ1)の波形とS1(E)〜S5(E)の波形とが交差を繰り返しながら対称に変化し、且つウェーブレット係数W1(λ1)〜W5(λ1)の波形とW1(E)〜W5(E)の波形とが交差を繰り返しながら対称に変化するようになれば、その投薬に効果があると判定できる。さらに、これらの波形が相互に対称であるほど、投薬の効果が高いと判定することができる。
図6は、がん患者にアガリクスを投薬する前後のリアプノフ指数とエントロピー波形を、上記したように処理して得られた結果の一例を示している。約3週間にわたり、1回100秒間、1日2回〜9回のデータ測定を行った。図6において、上段の2つの波形Orig.signal λ1、Orig.signal Eは、それぞれ測定データのリアプノフ指数λ1、エントロピーEを表わしている。下段の2つの波形は、スケーリング係数S2、ウェーブレット係数W2を表わしており、実線がリアプノフ指数λ1に関する係数、破線がエントロピーEに関する係数を表わしている。
この図から、矢印で示した投薬時以前においては、波形の対称性が低いが、投薬時以後において、波形の対称性が高くなっていることが分かる。即ち、アガリクス投与は一定期間、この2つの指標の対称性ダイナミズムを増強する効果が確認できた。この効果は臨床症状ともよく一致していた。
(実施の形態3)
DFA解析法を用いる相関性の分析
次に、相関性の分析方法であるDFA解析法を用いる判定方法に関して説明する。DFA(Detrended Fluctuation Analysis)解析法は、1993年にBuldyrevによって、ランダムにみえる2つのゆらぎ信号がどの程度似ているかを判定する指標として導入された。その方法は、ランダムにゆらぐ2つの信号波の標準偏差を、比較する範囲を自在に変えながらプロットするものである。1つのゆらぎ信号を拡大得られる信号波形を、元の信号波形とDFA法によって比較することにより、このゆらぎ信号の自己相似性、すなわちフラクタル性を評価することができる。しかし実際の生体からの信号は、非定常なゆらぎであるため、このフラクタル性を指数化することは困難であった。
これを可能にしたのは、比較する対象を局所の平均値にしてしまうという、1995年のGoldbergerらのアイデアによっている。その数式としての表現は、次の2つの式によって表わされる。
ここで、y(k)は全トレンド、B(i)はi番目の値、Baveは平均値をである。
この全トレンドからそれぞれの分割トレンドを引き、次式によってFを計算する。得られたFは、分割領域のべき乗に比例すると考えられ、この法則をパワーロウ(Power−law)と呼ぶ。
ここで、yn(k)は分割した部分のトレンドである。
このF(n)を用いて、logF(n)とlog nのグラフの傾きから、自己相似次元αが計算される。
本実施の形態おいては、例えば脈波に基づく生体信号の時系列データからリアプノフ指数とエントロピーを算出し、DFA解析によりリアプノフ指数とエントロピーの自己相似性を求める。該相関性は自己相似次元αにより決定される。
自己相似次元αは、自己相関係数と一定の関係にあり、
0<α<0.5の場合、グラフからαが求められない反相関状態、
α=0.5の場合、無相関(white noise)、
0.5<α<1.0の場合、永続的な長周期(長距離)の相関状態、
α=1.0の場合、1/fのゆらぎ又はノイズ状態、
α>1.0の場合、フラクタル性や自己相似性を表すパワーロウ(Power−law)がなくなる状態、
α=1.5の場合、ブラウン(Brown)ノイズ状態
をそれぞれ表わしている。
従って、リアプノフ指数の自己相似次元αが生体状態の判定に有効であることが分かる。リアプノフ指数の自己相似次元αは、α=1.0が、正常状態であり、αが1.0に近づくほどよい状態である。また、エントロピーの自己相似次元αは、α=1.5が、正常状態であり、αが1.5に近づくほどよい状態である。
また、ある軽度のうつ病患者に関して、αが0.563(治療前)から0.767(治療後)に変化した事例があり、このことからα値自体の評価に加えて、変化の方向性、即ち生体への行為の前後におけるα値の変化方向も判定に有効であることが分かった。
図7は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるパワーロウ(Power−law)即ちDFA解析法を使用する生体状態の判定方法における、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
ステップ41において、図2のステップ21と同様に、指尖脈波データの測定を行い、記録部13に記録する。本実施の形態においては、特定の被験体iに対する測定だけを行い、1回3分間の測定3回を1セット、3セットを1ラウンドとして、3ラウンド以上、即ち合計27回以上の測定が行なわれる。以下において、m1(m1≧3)をセット番号、m2(m2≧3)をラウンド番号として、測定データをw(i,m2,m1,j;k)で表わす。また、各々の処理において、計算はメモリ部12上で行われ、計算結果は記録部13の所定の領域に記録される。
ステップ42において、記録部13から読み出した測定データに対して、各1回の測定で得られる36000個のデータからなる時系列データ{w(i,m2,m1,j)}の中の連続する5000個のデータw(i,m2,m1,j;k1)〜w(i,m2,m1,j;k1+5000)を新しい時系列データ{w’n(i,m2,m1,j)}として、記録部に記録する。ここで、連続する5000個のデータの先頭は、元の36000個の時系列データ{w(i,m2,m1,j)}の最初のデータから、1秒間(200データ)づつずらして得られるデータとする。従って、先頭データを順に1秒ずつずらすことによって、1個の時系列データ{w(i,m2,m1,j)}から、156個(=1+(36000−5000)/200)の新しい時系列データ{w’n(i,m2,m1,j)}(n=1〜156)が作成される。このデータの先頭位置のシフトを、ベルヌーイシフトと呼ぶ。
ステップ43において、図2のステップ23と同様に、埋込次元=4、埋込遅延=10として、新しい時系列データ{w’(i,m2,m1,j,n)}(n=1〜156)に関して、ベクトルデータV’(i,m2,m1,j,n;k)(k=1〜5000)を生成する。
ステップ44において、図2のステップ23と同様に、測定データw(i,m2,m1,j;k)に関して、式2から最大リアプノフ指数λ1(i,m2,m1,j)を、式3からエントロピーE(i,m2,m1,j)をそれぞれ計算する。
ステップ45において、ステップ44と同様に、各々の{V’(i,m2,m1,j,n)}(n=1〜156)に関して、式2によって得られる4個のリアプノフ指数λ(i,m2,m1,j,n)の中の最大値である最大リアプノフ指数λ1’(i,m2,m1,j,n)、及び式3からエントロピーE(i,m2,m1,j)を計算する。
例えば、1回3分間の測定3回を3ラウンドを行った場合、最大リアプノフ指数の時系列データ{λ1’(i,m2,m1,j)}が27個(=m2×m1×j×n、m1=m2=j=3)、及びエントロピーの時系列データE’(i,m2,m1,j,n)が27個得られる。
ステップ46において、ステップ44で計算した、27個の最大リアプノフ指数λ1(i,m2,m1,j)、及び27個のエントロピーE(i,m2,m1,j)に対するマクロ的なDFA解析を行い、フラクタル自己相似構造を解析する。即ち、上記した式6おいて、λ1(i,m2,m1,j)を時系列データB(i)とし、上記した式7を満たすαを計算してαλ1とする。同様に、E(i,m2,m1,j)を時系列データB(i)として、式7を満たすαを計算してαEとする。
ステップ47において、ステップ45で計算した、各々156個のデータからなる27個の時系列データ{λ1’(i,m2,m1,j)}、27個の時系列データ{E’(i,m2,m1,j)}に対して、ミクロ的なDFA解析を行い、フラクタル自己相似構造を解析する。
即ち、式6において、λ1’(i,m2,m1,j,n)を時系列データB(i)として、式7を満たすαλ1’(i,m2,m1,j)を計算する。同様に、式6おいて、E’(i,m2,m1,j,n)を時系列データB(i)として、式7を満たすαE’(i,m2,m1,j)を計算する。ここで、N=156である。これによって、各々27個のαλ1’(i,m2,m1,j)、αE’(i,m2,m1,j)が計算される。
ステップ48において、ステップ46及び47で計算したαの時間変動によって、投薬の効果を判定する。
例えば、投薬の前後の所定期間にわたって測定したデータに関して、ステップ46で計算したαλ1’及びαE’を時間軸を横軸としてプロットして折れ線グラフを作成し、投薬の前後での折れ線グラフの変動をミクロ的に評価することによって、投薬の有効性を判定することができる。
また、投薬の前後の所定期間にわたって測定したデータに関して、ステップ45で計算したαλ1及びαEを、投薬の前後で比較することによって、投薬の有効性を判定することができる。
上記した第2の実施の形態において、がん患者にアガリクスを投薬した場合(図6参照)の投薬効果を判定することができることを示したが、図8は、同じ投薬実験データのマクロ的なDFA解析の結果を示している。図8の縦軸はリアプノフ指数とエントロピーの時系列データから27個の自己相似次元αを求めこれを1点として表し、3個分づつずらしながら27個の自己相似次元αをプロトしたものである。これにより投薬効果の時間単位の追跡が可能となった。
即ち、図6でもみられたリアプノフ指数とエントロピーの対称性変化は、図8に示すようにアガリクス投与によりダイナミックに変化し、エントロピー値も最高値を記録している。しかしリアプノフ指数は少し低い状態が続いているためアガリクスの効果の限界も示している。
以上のように、被験体iの指尖脈波の測定データを使用して、最大リアプノフ指数λ1及びエントロピーEに関するαλ1(i)、αE(i)、αλ1’(i)、αE’(i)を計算し、これらの値の時間変化を観察することとによって、被験体iの生体状態や投薬効果を判定することが可能となる。例えば、αλ1(i)、αλ1,n(i)が1に近づくほど、1/fノイズ状態に近いと考えられることから、生体の状態が良好であると判定できる。また、αE(i)、αE,n(i)が1.5に近づくほど、ブラウンノイズ状態に近いと考えられることから、投薬の効果があると判定できる。上記したように、1人の被験体に対して指尖脈波の測定が、27回以上であれば有効な判定が可能であるが、54回以上であることがより望ましい。
(実施の形態4)
ヒグチフラクタル次元の比(D1/D2)に基づく方法(F−symmetry法)
次に、F−symmetry法を用いた判定方法に関して説明する。
生体は非定常なカオス性を示し、マルチフラクタルな構造を示すことが知られている。詳しくは後述するが、ヒグチフラクタル(Higuchi Fractal)次元と呼ばれる2つの指標、D1及びD2によってシステムのマルチフラクタル性を表現できる。我々は、健常人約40人に関して解析を行うことによって、この2つの指標の比(D1/D2)が宇宙定数と呼ばれるファイゲンバウム(Feigenbaum)定数と一致することを見出した。
図9は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるヒグチフラクタル次元を使用する生体状態の判定方法において、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
ステップ51において、図2のステップ21と同様に、指尖脈波データの測定を行い、記録部13に記録する。本実施の形態においては、特定の被験体iに対する測定だけを行う。
ステップ52において、図2のステップ22と同様に、埋込次元を4に、埋込遅延τを10にセットして、ステップ51において測定した指尖脈波データからベクトルデータV(i,j,k)を生成する。
ステップ53において、各回の測定データに関して、ヒグチフラクタル次元Dを計算する。ヒグチフラクタル次元Dは、式8で定義され、時系列データを1次元の幾何構造とみなした場合の形状の複雑さを表わしている。
ここで、
t=1〜N/2(整数値)
であり、[]は、括弧内の値を超えない最大の整数を表わし、Sは各回の指尖脈波の測定データ、Nはデータの個数(=36000)である。
式8に示すように、ヒグチフラクタル次元Dはtの関数であるが、指尖脈波データに関して、横軸をlogt、縦軸をlogΔ1としてプロットしたグラフは、図10に示すように、傾きが一定の2つの直線でほぼ近似できる。式8から、ヒグチフラクタル次元Dは、このグラフの傾きに対応することが分かる。従って、それぞれの領域の傾きを、それぞれの領域のヒグチフラクタル次元D1(i,j)、D2(i,j)とする。グラフの傾きの計算は、周知の方法、例えば、最小2乗法によって計算することができる。
ステップ54において、ステップ53の処理によって得られたD1(i,j)、D2(i,j)に関して、被験体iの3回の測定データの平均値D1av(i)、D2av(i)を計算する。
ステップ55において、式9によってF−定数F(i)を計算する。
ステップ56において、ステップ55において計算されたF−定数F(i)と、ファイゲンバウム(Feigenbaum)定数(F=4.6692)とを比較し、F−定数F(i)とファイゲンバウム定数との差が所定値以下であるか否かを判定する。ここで、ファイゲンバウム定数は、M.J.Feigenbaumによって研究され、カオス生成のメカニズムである2分岐構造の比
によって導出される普遍定数であり、例えば「カオス入門−現象の解析と数理」(長島弘幸、馬場良和共著、培風館発行)にその詳細が説明されている。
ステップ57において、横軸をD1av(i)、縦軸をD2av(i)として、F(i)が一定の複数の直線を引き、ステップ54で計算されたD1av(i)、D2av(i)をプロットしたグラフをビデオ部15上に作成する。
式9を書き直すと、
となり、この式は、F(i)が一定の値と仮定すると、傾き(F(i)+1)/(F(i)−1)の直線を表わす。上記で描画する複数の直線は、この傾きを有する直線であり、ファイゲンバウム定数に対応する直線も含まれる。図11は、一定のF値の各々に対応する直線を示したグラフである。
以上のように、ステップ56において、F−定数F(i)とファイゲンバウム定数とを比較することにより、被験体iの生体状態に関して判定を行うことが可能となる。
また、ステップ57においてプロットした点と、ファイゲンバウム定数ラインとの位置関係を評価することにより、被験体iの生体状態に関して判定を行うことが可能となる。
図12及び図13は、複数の被験体に関してステップ51〜57を繰り返し行うことによって得られた結果の一例を示すグラフであり、図12は、ステップ56の比較結果を、図13は、ステップ57において作成されるグラフを示す。
図12においては、正常者とうつ病、***病、喘息、潰瘍性大腸炎患者のデータの平均値を棒グラフで表示している。F−定数は、健常者(Normanl)では4.73、うつ病(DP)では4.06、***病(SP)では3.70、潰瘍性大腸炎(UC)では3.63、喘息(Asthma)では3.76である。図12から、健常者のF−定数は、ファイゲンバウム定数ラインに近く、病気の被験体のF−定数はファイゲンバウム定数ラインから大きく離れていることが分かる。また、疾患の種類によってF−定数は特定の値になることが分かる。
図13においては、正常者とうつ病、***病のデータをプロットしたグラフであるが、正常者はファイゲンバウム定数ライン近辺に分布し、特に***病患者のデータがファイゲンバウム定数ラインから離れて分布していることが分かる。
これら各々の疾患に対応するF−定数の算出は、同一疾患の患者の集団についてF−定数を算出することにより求められる。また、このF−定数は、測定される患者数(母集団)が大きいほど各疾患について正確な数値を求めることができることから、ニューラルネットワークによりデータを蓄積していくことによって、より正確な判定が可能となる。
さらに、F−symmetry法によって得られるヒグチフラクタル次元D1、D2分布の対称性を求め、上記した相関分析法、対称性分析法と組み合わせることにより高精度に生体状態を判定することができる。例えば、第1の実施の形態において説明したように、図4に示した集団に関して、M−symmetry法を用いたリアプノフ指数とエントロピーの対称性の分析結果だけでは識別率が83%であったが、同じ測定データを使用してF−symmetry法による評価を組み合わせることにより、97%の識別率を得ることができた。
またF−定数が類似した被験体(例えば、SPとGLYはF−定数は3.70で同一)に対しては、F−symmetry法のみによって分類することができないが、ミラー値(Mirror Value)やDFA分析で求められる相関次元を組み合わせることによって分類することが可能となる。
(実施の形態5)
生体状態に影響を及ぼす可能性のある行為の有効性の判定方法
以下において、生体状態を変化させる可能性のある行為の実施が薬物の投与である場合を例に取り、リアプノフ指及びエントロピーの時間変動を記録したグラフからそれらの対象性を直接判定する方法に関して説明する。
本実施の形態に係る判定方法において、生体状態を変化させる可能性のある行為が薬物投与である場合、薬物の有効性を判定することができる。2以上の薬剤に関して本実施の形態に係る判定方法により判定することで、いずれの薬剤がより有効性が高いかを薬物投与の初期の段階で判定することができる。また、2以上の薬剤を併用することにより、これら薬剤の併用(相乗)効果についても判定できる。
図14に示すように、一般に、エントロピーとリアプノフ指数が対称的に(一方が減少すれば他方が増加する)変動するのが正常な生存状態を示す。換言すると、これは、リアプノフ指数とエントロピーの差のゆらぎが存在することを意味し、このような状態を「ミラーダイナミック」とも称することができる。具体例としては、図15に示すように、患者Aの治療初期ではリアプノフ指数とエントロピーの差(斜線部分)のゆらぎが大きく、患者Aに対するアモキサピン(23mg×3)及びイミプラミン(10mg×6)の併用投与は、有効性が高いと判定できる。一方、患者Bの治療初期ではリアプノフ指数とエントロピーの差(斜線部分)のゆらぎが小さく、クロキサゾラム1mgの投与の有効性は低いと判定できる。
一方、本実施の形態に係る判定方法のもう1つの基準は、エントロピーとリアプノフ指数の差の時間的な変動の方向性である。該差の変動の方向性が大きくなる方向と、小さくなる方向を交互に示す場合、薬物の有効性が高く、該差の変動にこのような「ゆらぎ」が認められない場合、薬物の有効性は低いと判定される。
当該行為の有効性を判定する本実施の形態に係る判定方法では、リアプノフ指数及びエントロピーの測定を薬剤投与前と投与後の少なくとも2回行う。薬物投与後の測定に関しては、1回のみの測定でもよいが、少なくとも2回測定するのが好ましい。少なくとも2回の測定のうち、少なくとも1回の測定は薬物の投与後、薬物の効果が現れると予測される時期或いはその薬物の効果が現れると予測される時期の後に行うことも可能である。薬物の効果が現れると予測される時期には、例えば薬物の投与後有効血中濃度に達していると予測される時期が例示される。薬物の効果が現れると予測される時期の後には、例えば薬物が有効血中濃度未満に低下したと予測される時期が例示される。少なくとも2回のリアプノフ指数及びエントロピーの測定は、薬物の効果が現れると予測される時期に少なくとも2回行ってもよく、薬物の効果が現れると予測される時期に少なくとも1回及び薬物の効果が現れると予測される時期の後に少なくとも1回行ってもよく、薬物の効果が現れると予測される時期に少なくとも1回及び薬物の投与前や薬物投与後であって有効血中濃度に達する前に少なくとも1回測定してもよい。薬物投与後に少なくとも1回測定されたリアプノフ指数及びエントロピーを薬物投与前の結果と比較し、エントロピーとリアプノフ指数の対称性の差の大小及びエントロピーとリアプノフ指数の差の時間的な変動の方向性を調べることで、薬物の有効性を判定できる。薬物投与の影響によるリアプノフ指数及びエントロピーの値の変動までの時間が長い場合には、薬物投与直後から数十分ないし数時間後、場合によっては十数時間から数日後の値を初期値とし、この初期値と、薬物投与から一定期間経過後のリアプノフ指数及びエントロピーの値を比較することも可能である。
なお、リアプノフ指数及びエントロピーの測定は、2回行ってもよく、例えば毎日薬物を服用する場合には、数日間連続して或いは一定の期間をおいて数回測定してもよい。
(実施の形態6)
生体状態の判定システム
以上においては、判定装置の本体10が、生体状態又は薬効を判定する場合を説明したが、ここではデータ測定と判定処理とを各々別の装置で行う場合に関して説明する。本実施の形態に係る生体状態の判定システムは、通信用インタフェース(図1において図示せず)を備えた本体10、及び本体10から遠隔地に設置されている判定処理を行う解析用コンピュータを備えている。本体10は、通信用インタフェースによって電話回線、ネットワーク回線などの通信回線に接続されており、検出部20で測定を行って記録部13に所定のファイル形式で保存したデータを、通信回線を介して、通信回線に接続された解析用コンピュータに伝送する。解析用コンピュータが、受信した測定データを、上記した方法に従って計算処理し、生体状態等の判定を行う。
通信するデータ量を低減するために、判定装置の本体10が、データ測定と判定処理の一部とを行い、残りの判定処理を解析用コンピュータが行うようにすることも可能である。例えば、第1の実施の形態において、判定装置の本体10がステップ21〜26の処理を行い、その計算結果である重み付きリアプノフ指数λ1w及びエントロピーEを送信し、解析用コンピュータがステップ27〜28の処理を行うようにすることも可能である。例えば、サンプリング周期を5ミリ秒(msec)とし、各々の被験体に対して3分間の測定を3回行い、1つの測定データを1バイトで扱う場合、判定装置の本体10が、各々の被験体に関して36000×3バイト=約108キロバイトのデータを処理するのに対して、その計算結果の重み付きリアプノフ指数λ1w及びエントロピーEは各々3個であり、通信されるデータは各々の被験体に関して6バイトのデータでよいことから、非常に効率的となり、大量の被験体に関するデータの交換が容易になる。
また、複数の依頼元にある本体10から伝送されたデータに関して、解析用コンピュータが行った判定結果を、各々の本体10に一意に付与した番号と対応させてデータベースとして保存及び管理することや、判定結果を所定のデータ形式に変換し、通信回線等を介して対応する依頼元の本体10に伝送することも可能である。また、データの受け渡しは、通信回線を使用せずに、データを記録した記録媒体を運搬することによって行うことも可能である。
以上においては、第1〜第5の実施の形態を各々単独に実行する場合を中心に説明したが、これらの判定方法を組み合わせて行うことも可能であり、第4の実施の形態において説明したように、組み合せて行うことによって、生体状態及び生体状態に影響を及ぼす行為の有効性の判定の信頼性をより高めることが可能になる。
上記した第1〜第4の実施の形態において、データサンプリング周期、1回の測定時間、1セットの測定回数、1ラウンドのセット数は、上記した数値に限定されるものではなく、測定装置の性能などに応じて、または1回の測定にかかる時間及び計算時間が長くなり過ぎない範囲で変更が可能である。また、埋込次元、埋込遅延も上記した数値に限定されるものではなく、計算時間が長くなり過ぎない範囲で変更が可能である。
第1の実施の形態において、8つの領域を2種類に分類したオフセット値は上記した値に限らず、上記以外の異なる2つの値を設定することができる。また、8つの領域の分類は2分類に限らず、更に細かく分類し、各々に対応するオフセット値を設定することも可能である。
第2の実施の形態において、スケーリング係数及びウェーブレット係数として次元の低いものから各々5個の係数を使用したが、より高次元の係数を使用することも可能であり、判定の精度が低くなるが5個よりも少ない個数を使用して判定することも可能である。
第3の実施の形態において、実測データから5000個のデータを抜き出して新たな時系列データとする場合を説明したが、実測データから連続するデータを抜き出す限りにおいて、5000個に限らず、それ以外の個数であってもよい。また、抜き出す最初のデータをずらす間隔、即ちベルヌーイシフトの時間間隔は1秒間に限定されない。
また、各々の実施の形態において、生体の状態を判定する最後のステップは、ニューラルネットワークによって行うことも可能である。例えば、入力層、中間層及び出力層を備え、誤差逆伝搬法(error back propagation)によって、中間層のニューロンの結合係数(各ニューロンへの入力値から出力値を決定するための係数)を学習によって修正する階層型ニューラルネットワークを使用することができる。例えば、第1の実施の形態の重み付き最大リアプノフ指数の平均値λ1wav(i)、第3の実施の形態の自己相似次元αλ1及びαE、第4の実施の形態のF−定数F(i)が各々入力される4個のニューロンを入力層に備え、正常及び疾患に対応する2個のニューロンを出力層に備えることができる。このように構成されたニューラルネットワークに対して、判定結果が明確な母集団の測定データを教師データとして使用し、学習させることによって、高精度の総合的な判定を自動的に行うことが可能となる。
以上にのように、第1〜第5の実施の形態によれば、生体の状態を判定することが可能である。特に、第1〜第4の実施の形態1〜4によれば、1回の測定により測定時における生体状態を判定することが可能である点で、より有効である。
また、第1〜第5の実施の形態によれば、この最初の判定後に、例えば生体状態の改善を意図した行為或いは生体状態に悪影響を及ぼす可能性がある行為が行われ、その行為の生体状態改善効果の程度を判定する場合には、当該行為を行った後に生体状態を判定し、当該行為の前後での生体状態を比較して、当該行為の有効性を判定することが可能である。前記行為の有効性の判定の際に、当該行為後の生体状態を同時に判定することができる。
測定可能な生体状態としては、被験体の正常、病態及び非病態(正常ではないが病態前の状態)の精神的状態或いは身体的状態が例示される。精神的状態としては、精神神経疾患(うつ病、躁病、躁鬱病、心身症、精神***病、神経症、不眠症、てんかん、パーキンゾン病、幻覚症、自閉症)のような病態、不安、焦燥感、神経過敏、興奮、神経痛、虚脱感、めまい、頭痛、精神的疲労、引きこもりなどの非病態症状が例示され、身体的状態としては、ガン、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧、高脂血症、不整脈、高コレステロール血症などの心血管系疾患、慢性肝炎、肝硬変、胃潰瘍、膵炎、糖尿病、慢性腎炎、アレルギー性疾患、ウイルス、細菌、真菌等の感染症、白内障、緑内障などの眼科疾患、不妊症、骨折、腰痛、肩こり、外傷などの疾患、或いはこのような身体的疾患の前段階にある身体的不調状態が例示される。
このような疾患或いは精神的・肉体的不調状態にあると診断された場合、例えば薬物投与、透析、医療器具の使用(例えば、放射線ないしレーザー照射、電気的・磁気的パルスによる治療、リハビリなど)、生体の状態を改善する可能性のある食物の摂取などの疾患の予防又は治療行為、身体的又は精神的刺激の付与行為が例示される。
該行為の生体状態に対する効果の判定は、このような行為の実施後1時間から10日程度経過後に行うことができる。また、該行為の実施後の生体状態の判定は、1回だけでもよく、複数回行ってもよい。この判定により当該行為が生体状態を正常状態にする「ポジティブ」であると判定される場合には、当該行為は継続して行われることになり、生体状態の変化が見られず(「中立」)或いは悪化する(「ネガティブ」)と判定される場合には、他の行為が選択されることになる。
有効性の判定対称となる薬物としては、全ての疾患を治療するための薬物が含まれ、例えば免疫・ホルモン・神経系関連疾患の治療薬が例示される。具体的には、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤などの病原生物に対する薬物、抗癌剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、糖尿病治療剤、ホルモン剤、ビタミン剤、輸液、血液製剤、抗血栓薬、抗高脂血症薬、止血薬、造血薬、強心薬、抗不整脈薬、狭心症治療薬、血管拡張薬、降圧薬、利尿薬、気管支拡張薬、消化性潰瘍治療薬、整腸薬、肝疾患治療薬、膵疾患治療薬、睡眠薬、鎮痛薬、抗てんかん薬、向精神薬、抗不安薬、自律神経作用薬、パーキンソン病治療薬、局所麻酔薬、眼科用剤、皮膚科用剤などが例示される。
生体の状態を改善する可能性のある食物としては、いわゆるサプリメントが挙げられ、食物は、固形物又は飲料の形態で提供される。食物には、ビタミン類や、血圧、血中のコレステロール、脂肪、血糖などを低下させる作用、滋養強壮作用、老化防止作用、体重低下作用などが知られている物質を含む抽出物又は食品素材が例示できる。
身体的刺激としては、運動、マッサージ、鍼灸、気温の変化(高温又は低温)などが例示され、精神的刺激としては、音楽、カウンセリングを含む会話、読書などが例示できる。
例えば、音楽療法の効果やヒトの右脳と左脳の活動状態などを判定可能である。図16は、各年齢、性別の16人の被験体に対して、一番好きな音楽を聴いている状態で、脈波の時系列データを採取し、DFA解析を行って得られた自己相似次元αのグラフを示している。16人には、健常者、疾患を有する人、疾患を有していた人、体調の良い人、体調の悪い人が含まれている。解析の結果、特に体調の良くない人に、ゆらぎ指数の大きい変化が見られ、音楽を聴くことによってαが1.0に近づいてくる、即ち自律神経のゆらぎが1/f法則に近づいてくることが分かった。
また、図17、図18は、被験体に絵を見せた場合、又は計算させた場合における、左右手の指尖脈波を測定し、DFA解析を行って得られた結果を示している。図17の表記は図19と同様であり、グラフの傾きが自己相似次元αを表わしている。左側の上下2つのグラフ、右側の上下2つのグラフは、それぞれ左手、右手の指尖脈波データを解析して得られたグラフであり、上側の2つのグラフ、下側の2つのグラフは、それぞれ絵を見た場合、計算をした場合の指尖脈波データを解析して得られたグラフである。図18は、5人の被験体に対して、同様の実験を行って得られた指尖脈波データを解析した結果の自己相似次元αのグラフを示している。図17,18に示されているように、左右の脳の活動状態を、自己相似次元αの変化として観測可能である。
以上、本発明に係る実施の形態に関して説明したが、以下においては、本発明を具体的に適用した実施例に関して説明する。
(実施例1)
第1の実施例として、うつ病患者A(56歳男性)に関する判定例を示す。この患者は医師によりうつ病と診断され、Benzodiazepine系のAlplazolam(ソラナックス)0.4mg x 3,Bromazepan(レンドルミン)0.25mg x 1、抗うつ薬のMaprotiline(ルジオミール)25mg x 5,Amoxapine(アモキサピン)25mg x 3,Imipramine(トフラニール)10mg x 6が処方されていた。この患者の脈波をコンピューターコンビニエンス社製の脈波収集装置を使用して特許番号1891534に記したように測定し第2の実施の形態の方法で、リアプノフ指数とエントロピーのウェーブレット多重解像度分解を行いスケーリング係数、ウェーブレット係数を計算し、その結果を重ねてグラフを作成すると、図19に示したように矢印の部分に投薬による効果を表す臨界点が見られる。また、図20、図21は、それぞれ第3の実施の形態におけるミクロ的なDFA解析、マクロ的なDFA解析を行った結果を示している。図21に示すように、マクロ的なリアプノフ指数のDFA解析結果のαに関しては、前半と後半とで傾きが変わっており、前半が0.563であり、後半が0.767で1に近づいていることから、患者の状態が改善していることがわかる。実際に、この患者の臨床症状と自覚症状は、完全に回復した。
(実施例2)
第2の実施例として、上記とは別のうつ病患者B(58歳男性)に関する判定例を示す。図22は、患者Bに関する測定データを、第2の実施の形態の方法で、リアプノフ指数とエントロピーのウェーブレット多重解像度分解を行いスケーリング係数、ウェーブレット係数を計算し、その結果を重ねてグラフにしたものである。また、図23、図24は、それぞれ第3の実施の形態のミクロ的なDFA解析、マクロ的なDFA解析を行った結果を示している。
図22から、ミラーダイナミクスパターンは全体的に弱く(グラフの右端の最後の部分にしか見られない)、回復はすぐには見込めない状態だと判断される。
図24に示すマクロ的なリアプノフ指数とエントロピーのDFA解析結果αは、どちらも小さい値であることから、投薬効果、患者の状態とも悪い状態だと判断される。実際に、患者Bにはクロキサゾラム(Cloxazolam)1mg及びアモキサピン25mg×2の投与が行われたが、臨床症状と自覚症状は回復せず、この測定の3ヶ月後も臨床症状の変化は見られなかった。
以上の2つの実施例から分かることは、生体はカオス性の指標であるリアプノフ指数とエントロピーを対称的に変化させることで、単なる分子集合の非平衡開放系とは異なっており、この性質が生命の健全性を示すバロメーターとなっていることである。従って、この対称的なゆらぎの変化が見られなかった患者Bは数ヶ月後の臨床症状の改善が見られず、この状態が見られた患者Aは数ヶ月後に完全に改善した。
(実施例3)
第3の実施例として、第1の実施例と同じうつ病患者A(56歳男性)に関する判定例を示す。この患者の脈波を8月7日、実施例1と同様に測定し、リアプノフ指数を計算した。約10分おきの3回の計算値は、図25に示したように0.98,1.16,0.71であった。また、その時のエントロピーは、上記した方法によって算出すると、5.00,4.96,4.95であった。また午後4時の測定値は、リアプノフ指数が1.97,1.15,0.76であり、エントロピーは、4.72,3.98,5.29である。このときのエントロピーとリアプノフ指数を図25に示すように、重ねて示すと8月8日、8時40分からの4回の測定値はエントロピーが、5.45,5.30,5.17,5.22となり、リアプノフ指数は、0.59,0.75,−0.62,−0.64となり大幅に両指数の差が広がっている。8月9日は朝から夕方にかけて、徐々に差が縮まり、逆に8月10日は3回目測定まで差が広がり、4回目で差が縮まり、5回目でまた開くというように、この両指数はゆらぎながら変動している。もしこれを、リアプノフ指数だけに限って見てみると8月7日から8月11日にわたっての測定値で、1回の測定群内のバラツキは各測定群間のバラツキとほぼ等しく、ゆらぎがある状態とはとても言えない。この状態は臨床的には最悪期を脱したとはいえ臨床症状からも、患者の自覚症状からも改善の兆しがほとんど見えない状態であった。しかしこのような両指数のダイナミックな変動が1ヶ月から2ヶ月続くあいだに、実施例1において示したように、患者Aの臨床症状と自覚症状は、完全に回復した。
このようなダイナミズムが改善の前兆であることは、これから述べる多くの臨床例からも支持されている。従ってリアプノフ指数だけの変動ではわからない両指数のダイナミズムをみることが薬剤の短期効果と長期効果の予測になることが明らかになった。
次に、どのぐらいのゆらぎがあれば良いかは、次の実施例4との比較からも明らかになる。
(実施例4)
第4の実施例として、第2の実施例と同じうつ病患者B(58歳男性)に関する判定例を示す。図26に示すように11月10日から12月1日までの測定を通じて、ほとんどゆらいでいない。11月10日ではリアプノフ指数は、−0.88,0.25,2.16,1.27,2.49であり、その時のエントロピー値は、4.20,4.56,5.05,4.78,4.96であった。図2のように重ねると、1群の測定値(2回から5回)の間で、全てで差があるのは、最初の2点のみであり、この差はエントロピー値で約0、25、リアプノフ指数値で約1であるが、11月10日から12月1日の測定にわたって完全に差がある測定群はない。
これに反して患者Aの場合、8月7日と8日の測定値を重ねた場合エントロピー値で約1、リアプノフ指数値で約4の差がある。2つの図を比べた場合の図1の見た目のダイナミックな変動は、実際の数字にすると上記のようになるが、ゆらぎのある、なしにとってのもう1つの判断は時間的な変動の方向性があるかどうかにかかっている。この例では、患者Aが1日又は2日の測定群間で、変動の方向性が大きくなる方向と、小さくなる方向を示したが、患者Bでは測定群間でこのような方向性は全く観察されなかった。即ち、患者Aで見られたレベルのゆらぎはなかったということになる。上記したように、患者Aは、9月から10月にかけて徐々に服用薬剤を減量し、10月には医師側の判定も患者Aの自覚症状も完全に回復した。10月2日から10月31日の両指数の動きを図3に示す。
図28は図25(8/7−8/11)、図27(10/2−10/31)のリアプノフ指数を比較したものであるが、図25が0〜2の間の変動であったのに対して、図27は約0〜6の間の変動になっており、絶対値(平均値)としてのリアプノフ指数の上昇がみられる。一方、同じ時期のエントロピー値は、図25のおおむね4.5〜5.5の変動に対して、図27はおなじ領域で全体的に低くなっていることがわかる。患者Bはこの測定の3ヶ月後も臨床症状の変化はなかった。
以上の第3及び第4の実施例からも、第1及び第2の実施例と同様に、生体はカオス性の指標であるリアプノフ指数とエントロピーを対称的に変化させることで、単なる分子集合の非平衡開放系とは異なっており、この性質が生命の健全性を示すバロメーターとなっていることが分かる。
以上述べたことから言えることは、薬剤が効果があるかどうかは投薬後数時間から数日又は後に述べる例では数10分後のリアプノフ指数とエントロピーの対称的なダイナミズムが観察できるかどうかで、判断でき、長期的な効果もこのダイナミズムを保てば両指標の絶対値の正常化として判断出来る。
これとは別に、図29に示す患者Bのリアプノフ指数は、基線の動揺を除去するためのハイパスフィルター(1ヘルツ)(前述のChaos Theory Tamed,p153)をかける前の値を示しており、1回の測定群内の値でも0に近い値から10以上と著しい変動を示している。単なるゆらぎの大きさでは、これ以上の大きな変動は考えられない程の大きなゆらぎでありフィルターをかけた後の減少幅は正常値に比較すると異常に大きい。この減少がこの患者のカオス性の異常を代表しており医師の診断とは逆にこの患者の***病的な傾向を表している。このデータはもう一方で、単なるリアプノフ指数だけのゆらぎでは健全性の指標にならないことを示している。患者Aのフィルター処理をしたグラフは、ほぼフィルターなしのグラフと対称的なダイナミズムと絶対値の改善の点では一致していることからも、この減少が患者Bの状態を的確に表現するものといえる。
また図15は、患者Aと患者Bのエントロピーとリアプノフ指数(λ1)の変化の推移を示し、エントロピーとリアプノフ指数(λ1)の差(斜線部分)が変動している患者Aはアモキサピン(25mg×3)及びイミプラミン(10mg×6)の併用が有効であることを示し、患者Bに関してはエントロピーとリアプノフ指数(λ1)の差(斜線部分)の変動が少なく、クロキサゾラム(Cloxazolam)1mg及びアモキサピン25mg×2の投与が有効でないことを示す。
産業上の利用可能性
本発明の生体状態の判定方法によれば、ヒトなどの被験体の測定時点での生体の精神的或いは身体的状態、例えば疾患の有無、疾患がある場合にはその程度、疲労度などを正確に判定することができる。また、本発明の判定方法を用いれば、薬物投与、運動、外部からの刺激(音楽、騒音、会話、高温ないし低温、湿度、明暗(照度)など)を与える行為の前後で生体状態を測定することで、これらの行為の生体状態に対する影響を判定することができる。このような判定方法は、医師による病気の診断支援システム、薬物選択、投与スケジュールの決定、ガンなどの疾患の早期診断などに有用である。
また、判定処置をニューラルネットワークによって実行させ、生体状態に関する信頼できるデータを新しく取得する毎に、そのデータを用いて学習させ、ニューラルネットワークの内部状態を修正することによって、判定精度をさらに向上させることができる。
本発明の方法によれば、生体状態が正常(改善)の方向に向かうのか、異常(悪化)の方向に向かうのかを判定できるので、これにより成人病等の慢性疾患、うつ病(躁鬱病)、精神***病、ノイローゼなどの精神神経疾患、登校ないし出社拒否(引きこもり)などの疾患ないし問題行動を予防ないし改善するのに威力を発揮し、医療費を含めた生体状態の悪化に伴う社会的コストを低減することができる。
本発明によれば、例えば薬物投与、透析、医療器具の使用などの治療手段の有効性に関し、治療手段を実施する初期の段階において個別の被験体に対する有効性を判定することができ、有効な治療手段の早期選択を促し、患者の利益と医療コストの低減を計ることができる。
本発明によれば、判定基準を算出するための母集団を変更することによって、種々の生体状態の判定に対応することができ、種々の分野において有効に利用され得る。また、同じ生体状態の判定を行う場合において、国、地域、時代などによってその基準が変化することがあるが、本発明は、判定基準を算出するための母集団を変更することによってこれに柔軟に対応することができる。
本発明によれば、多数の平均値を正常値とした従来法と異なり、特定データの絶対値と他データとの相対関係を組み合わせることで、一人一人異なるテイラーメイド診断を可能とし、信頼性の高い有効性の判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る生体状態の判定装置の概略構成を示すブロック図である。
図2は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるM−symmetry法を使用する生体状態の判定方法において、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
図3は、最大リアプノフ指数とエントロピーとを軸として2次元平面にプロットした図(Mirror対称図)である。
図4は、ステップ28によって得られるプロット図の一例を示す。
図5は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるウェーブレット変換を使用する生体状態の判定方法において、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
図6は、スケーリング係数S2(λ1)の時系列波形とS2(E)の時系列波形とをそれぞれ同じレベルで重ねたグラフの画像データ、及び各々のウェーブレット係数W2(λ1)の時系列波形とW2(E)の時系列波形とをそれぞれ同じレベルで重ねたグラフの画像データを示す。
図7は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるパワーロウ(Power−law)即ちDFA解析法を使用する生体状態の判定方法における、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
図8は、図6と同じ投薬実験データのマクロ的なDFA解析の結果を示している。
図9は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるヒグチフラクタル次元を使用する生体状態の判定方法において、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
図10は、ヒグチフラクタル次元DのD1及びD2を表す。
図11は、一定のF値の各々に対応する直線を示したグラフである。
図12は、ステップ56の比較結果を示す。
図13は、ステップ57において作成されるグラフを示す。
図14は、エントロピー及びリアプノフ指数と、生・死の状態の関係を示す概念図である。
図15は、患者Aと患者Bのエントロピーとリアプノフ指数(λ1)の変化の推移を示す。縦軸はリアプノフ指数を示し、横軸は測定日を示す。
図16は、各年齢、性別の16人の被験体に対して、一番好きな音楽を聴いている状態で、脈波の時系列データを採取し、DFA解析を行って得られた自己相似次元αのグラフを示している。
図17及び図18は、被験体に絵を見せた場合、又は計算させた場合における、左右手の指尖脈波を測定し、DFA解析を行って得られた結果を示す。
図19は、ウェーブレット多重解像度分解を行いスケーリング係数、ウェーブレット係数を計算し、その結果を重ねて作成したグラフである。図10に示したように矢印の部分に投薬による効果を表す臨界点が見られる。
図20及び図21は、それぞれDFA解析におけるミクロ的なDFA解析、マクロ的なDFA解析を行った結果を示している。
図22は、患者Bに関する測定データを、第2の実施の形態の方法で、リアプノフ指数とエントロピーのウェーブレット多重解像度分解を行いスケーリング係数、ウェーブレット係数を計算し、その結果を重ねてグラフにしたものである。
図23及び図24は、それぞれ第3の実施の形態のミクロ的なDFA解析、マクロ的なDFA解析を行った結果を示している。
図25は、うつ病患者Aの8月7日〜8月11日のリアプノフ指数とエントロピーの値を示す。図25中、◆はエントロピーを示し、●はリアプノフ指数を示す。また、横軸は測定日を示し、縦軸はエントロピー(3〜7)及びリアプノフ指数(−4〜12)を示す。
図26セパゾン(Cloxazolam)1mg及びアモキサピン25mg×2を投与したときの、うつ病患者Bの11月10日、17日、20日、27日、29日及び12月1日のリアプノフ指数とエントロピーの値を示す。図26中、▲はエントロピーを示し、◆はリアプノフ指数を示す。また、横軸は測定日を示し、縦軸はエントロピー(3.5〜7.5)及びリアプノフ指数(−2.0〜12.0)を示す。
図27は、患者Aの10月2日、13日、19日、25日及び31日のリアプノフ指数とエントロピーの値を示す。図27中、◆はエントロピーを示し、●はリアプノフ指数を示す。
図28は、患者Aの8月7日〜8月11日のリアプノフ指数(●)と10月2日、13日、19日、25日及び31日のリアプノフ指数(◆)を示す。
図29は、患者Bのハイパスフィルター(1ヘルツ)をかける前のリアプノフ指数を示す。
図30は、ミラー値による正常、DP(うつ病)、SP(***病)の分析結果を例示する。
本発明は、生体状態の判定方法、判定装置、判定システム、判定プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体に関する。なお、本明細書において、最大リアプノフ指数(λ1)を単にリアプノフ指数と記載することがある。
背景技術
生体の解糖系や酵素の動態、細胞内cAMP、カルシウムイオンの動き等は早くから非平衡なエネルギー状態とシグナル伝達系のフィードバック、クロストークなどと呼ばれる干渉効果によって、カオス的なOscillation(振動)を示すことはよく知られていることである(Albert Goldbetter,Biochemical Oscillations and cellular rhythms−The molecular basis of Periodic and Chaotic behavior−Cambridge University Press)。この非平衡でゆらぎを含んでOscillateするシステムは生命そのものであり、生命の適応能力はカオス的なゆらぎで測られる(Weiming Yang,A.J.Mandell et.al.Physical Review E,Vol.51,Number1,p102−110,1995)。
健康(正常)な時と病態などの非正常時でカオス的なゆらぎに差があるものとして、次の項目が知られている。(W.Yang,同上)
1) 血液関連疾患時の各種の細胞数の経時変化のゆらぎ
2) 薬物刺激時の動物の行動パターンや脳内酵素、脳内レセプターの存在パターンの時間的変化
3) 種々の心疾患時の心拍間隔のパターン
4) 各種刺激感受性生物反応がある刺激に脱感作された時のその持続時間の変化
5) 実験癲癇
6) 神経内分泌細胞が突然変異してガン化したときのホルモン分泌パターン
7) 心移植の拒絶反応の予測に役立つ心電図のパターン
8) 神経変異性疾患時の脳波パターン
9) 加齢に伴なう神経内分泌パターン、心電図、脳波
10)切迫した心室細動時の心電図パターン
このように病態生理学的にも、カオス的なゆらぎの喪失が病態の原因の1つであると考えられる例は数多く知られている。生命の存在原理が自己組織化と呼ばれるゆらぎを含んだ振動統合であることは、プリゴジンの定式化を始め多くの人達の指摘するところであり、神経−ホルモン−免疫系関連薬剤のデータが支持することである。従って、ゆらぎの喪失と病態の関係は生命現象のほとんどすべての範囲にわたっていても驚くにはあたらない。神経−ホルモン−免疫系や心臓の拍動などもカオス的ゆらぎを保つことで健全性を維持していることを表しており、精神・神経・免疫関連疾患や特発性周期疾患もカオス性を保つことが治療と予防につながることを示している。これらの薬剤が示す臨床効果と基礎の動物実験の効果は、これを改善した結果であると考えられる。
脳、神経関連疾患の分野では、脳波や指尖脈波のカオス測定と解析法の進歩によって、例えば神経系のもっている非線形性の全体像を、神経細胞内のイオン濃度、膜電位、シナプス電流、シナプス結合の強さ、新しく生じたシナプス結合、神経系の環境を作る様々な物質、入力信号等々によって、系の巨視的な状態がドラマチックにかつ多様に変化する全体像として把握できることが明らかになっている(合原一幸編、ニューラルシステムにおけるカオス、東京電機大学出版局)。
指尖脈波は、指先の毛細血管を流れる血液の時間的変化を赤外線センサーをつかって、例えば、1分間測定して得られる2次元の電気信号の波形を数学的に4次元のアトラクターとして表示すると共に、そのカオス解析を行うことにより、生体の全体状況の指標の1つにするものである。指尖脈波は少なくとも3コの脈波成分、心臓の拍動成分、呼吸成分、ホルモンによる血管壁への作用成分の3つからなっていると考えられている。それぞれ異なる基本周波数をもつと考えられる、これらの振動成分が統合されて表現されているいるのが、指尖脈波カオスである(金子邦彦、津田一郎 複雑系のカオス的シナリオ、朝倉書店)。
従って、脈波カオスによって表現される生体情報は、中枢神経系と末梢循環器系、代謝系の相互作用の全体像として表現されている。このことが心電図で現われるカオスと比べて、脈波カオスがより精神状態を反映する理由になっている。指尖脈波のカオス解析とその臨床応用に関しては、津田、田原等の論文に詳述されている(Ichiro Tuda,Takashi Tahara Chaotic Pulsation in Human Capillary Vessels and its Dependence on Mental and Physical Conditions,International Journal of bifurcation and Chaos,Vol,2,No2,313−324,1992)(Takeo Sumida et.al.Mental Conditions Reflected by the Chaos of Pulsation in Capillary Vessels,ibid.Vol.10,No.9(2000)2245−2255(田原孝、臨床におけるカオスの応用、バイオメカニズム学会誌、Vol 19,No2,105−116,1995)。
これらの論文の中で、指尖脈波の中に含まれる決定論的カオスは脳波や心電図でも観察できるカオスと本質的に同じであり、人の精神、心理状態、病気、成熟に関係するとされている。神経症やうつ病患者の臨床症状とカオス性の1つの指標であるリアプノフ指数(λ1、λ2)の動きはパラレルであり、症状の改善に伴なってλ1は増加しλ2は減少する。又、アトラクターの構造も病状の改善に伴なって、弱い単純な構造から強い複雑な構造に変化する。
このように、リアプノフ指数が生体の自己組織化能や健全性の1つの指標になることは、今まで述べたことから示唆されることであった。しかしカオス性の指標であるリアプノフ指数の本来の意味は、システムの時間的な非周期性の大きさを表しており、このような指標は時間的にもフラクタルな変化をしていることは、システムがカオス性を示す以上当然のことであると考えられる。また、我々のデータもそのことを示している。従って、このような指標だけを単独に測定して、そのシステムの健全度を測ることは、長期にわたって何回も異なる間隔で測定をくりかえすことによってのみ可能になるような性質のものである。従って、このような指標を臨床診断の場で使うことは、かなり限定された意味しかもちえないものであった。
本発明は、生体状態を判定する方法、及び、ある行為が生体状態にどのような影響を及ぼすのかを判定する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、このような判定方法を実行するための判定装置、判定システム、判定プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明者は、上記課題に鑑み、生体状態を正確に判定する手法について検討を重ねてきた。その結果、脈波などの生体信号の時系列データから一定時間ごとのリアプノフ指数とエントロピーの平均値を求め、これら2種のデータのM−Symmetry法、Wavelet Transform(ウェーブレット法)、Mirror Value(ミラー値)に基づく方法を用いた対称性分析、並びに/或いは、同じ生体信号からベルヌーイシフトを行って、リアプノフ指数とエントロピーの時系列データを求め、これら相関性を求めることにより、良好ないし正常な生体状態と、精神あるいは身体のいずれかの部分に良好でない又は正常でない(疾病状態を含む)部分があるのかを容易に判定できることを見出した。
また、生体信号の時系列データをF−symmetry法に基づき分析してヒグチフラクタル(Higuchi Fractal)次元の比(D1/D2)を算出し、この比を用いた対称性分析をさらに組み合わせることで、判定の精度を著しく向上できることを見出した。
さらに、生体状態の判定後、生体状態に影響を与える可能性のある行為を行った後、さらに生体状態を判定し、該行為の有効性を判定できることを見出した。
本発明は、以下の生体状態の判定方法、判定装置、判定システム、判定プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体を提供するものである。
(1) 被験体の生体信号の時系列データから得られるカオス性を表現可能な指標である(1)リアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、(2)ヒグチフラクタル(Higuchi Fractal)次元を用いることを包含する生体状態の判定方法。
(2) 被験体の生体信号の時系列データから得られるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性を分析する工程、及び該相関性及び/又は対称性の分析結果に基づき生体状態を判定する工程を包含する(1)に記載の方法。
(3) 前記リアプノフ指数と前記エントロピーの相関性をDFA解析法(Detrended Fluctuation Analysis)を用いて分析する(1)に記載の方法。
(4) 前記DFA解析法が、マクロDFA解析を行う工程、及びミクロDFA解析を行う工程を包含する(1)に記載の方法。
(5) 前記リアプノフ指数と前記エントロピーの対称性をM−symmetry法、ウェーブレット(Wavelet)解析法及びミラー値(Mirror Value)に基づく方法からなる群から選ばれるいずれかの方法を用いて分析する(1)に記載の方法。
(6) 被験体の生体信号の時系列データから複数の前記リアプノフ指数及び前記エントロピーを計算し、この複数のリアプノフ指数の中の最大値を最大リアプノフ指数として決定する工程と、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーに対応するオフセット値(Os)を決定する工程と、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーからミラー値を計算する工程と、
前記ミラー値及び前記オフセット値から重み付きリアプノフ指数を計算する工程とを包含する(1)に記載の方法。
(7) 前記ヒグチフラクタル次元として、2つのヒグチのフラクタル次元の比(D1/D2)及び/又はF−定数を用いる(1)に記載の方法。
(8) 被験体の生体信号の時系列データをF−symmetry法を用い、Higuchiのフラクタル次元の比(D1/D2)を算出する工程をさらに含み、リアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性とHiguchiのフラクタル次元の比(D1/D2)に基づき生体状態を判定する(1)に記載の方法。
(9) 前記生体信号の時系列データが脈波から得られる(1)に記載の方法。
(10) 前記生体状態が、被験体の疾病及び非疾病の精神的状態或いは身体的状態である(1)に記載の方法。
(11) (1)に記載の方法に従いある時点での生体状態を判定する工程、生体状態を変化させる可能性のある行為を行う工程、該行為の後に生体信号の時系列データを分析してリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性を測定する工程、前記行為の前後におけるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性を比較して前記行為の生体に対する影響がポジティブであるかネガティブであるか中立(不変)であるかを判定する工程を包含する生体状態に影響を及ぼす可能性のある行為の有効性の判定方法。
(12) 前記行為が、薬物投与、透析、医療器具の使用(例えば、放射線ないしレーザー照射、電気的・磁気的パルスによる治療、リハビリなど)、生体の状態を改善する可能性のある食物の摂取などの疾患の予防又は治療行為、身体的又は精神的刺激の付与からなる群から選ばれる(11)に記載の方法。
(13) 被験体の生体信号の時系列データから複数の前記リアプノフ指数及び前記エントロピーを計算し、この複数のリアプノフ指数の中の最大値を最大リアプノフ指数として決定する工程と、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーからスケーリング係数及びウェーブレット係数を計算する工程とを含む(1)に記載の方法。
(14) 被験体の生体信号の時系列データの計算結果に対してニューラルネットワークによって判定を行う(1)又は(7)に記載の方法。
(15) 被験体の生体信号の時系列データを基に該生体の状態を判定する生体状態の判定装置であって、
処理部及び検出部を備え、
前記処理部は、前記検出部を制御して前記時系列データを採取し、該時系列データからカオス性を表現可能な指標であるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、ヒグチフラクタル次元を計算し、該計算結果を使用して判定を行うことを特徴とする生体状態の判定装置。
(16) 被験体の生体信号の時系列データを採取する測定装置と、前記時系列データを基に生体状態を判定する判定装置とを備え、
前記測定装置は、通信回線を介して前記時系列データを前記判定装置に伝送し、
前記判定装置は、伝送された前記時系列データからカオス性を表現可能な指標であるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、ヒグチフラクタル次元を計算し、該計算結果を使用して判定を行うことを特徴とする生体の状態判定システム。
(17) 被験体の生体信号の時系列データを採取する測定装置と、前記時系列データを基に生体状態を判定する判定装置とを備え、
前記測定装置は、前記時系列データからカオス性を表現可能な指標であるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、ヒグチフラクタル次元を計算し、通信回線を介して前記計算結果を前記判定装置に伝送し、
前記判定装置は、伝送された前記計算結果を使用して判定を行うことを特徴とする生体の状態判定システム。
(18) 前記判定装置は、前記判定の結果を前記測定装置に伝送する(16)または(17)に記載のシステム。
(19) 被験体の生体信号の時系列データを基に該被験体の状態を判定する生体状態の判定装置に、
前記時系列データからカオス性を表現可能な指標であるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、ヒグチフラクタル次元を計算する機能を実現させることを特徴とする生体の状態判定プログラム。
(20) 複数の前記リアプノフ指数の中の最大値を最大リアプノフ指数として決定する機能、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーに対応するオフセット値を決定する機能、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーからミラー値を計算する機能、及び
前記ミラー値及び前記オフセット値から重み付きリアプノフ指数を計算する機能をさらに実現させる(19)に記載のプログラム。
(21) 複数の前記リアプノフ指数の中の最大値を最大リアプノフ指数として決定する機能、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーからスケーリング係数及びウェーブレット係数を計算する機能をさらに実現させる(19)に記載のプログラム。
(22) 前記リアプノフ指数及び前記エントロピーに関してマクロDFA解析及びミクロDFA解析を行う機能をさらに実現させる(19)に記載のプログラム。
(23) 前記時系列データからヒグチフラクタル次元及びF−定数を計算する機能を実現させる(19)に記載の生体状態の判定プログラム。
(24) (19)〜(23)の何れかの項に記載の判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
カオス性の1つの指標であるリアプノフ指数は多数あるが、ここでは最大リアプノフ指数(λ1)を用いる。以下においては、ウォルフの第1リアプノフ指数(λ1)を単にリアプノフ指数として記載する。また、特に断らない限り、リアプノフ指数は最大リアプノフ指数を意味する。
リアプノフ指数及びエントロピーは、脈波、心電図、脳波、心拍数などのカオス・ゆらぎの生体信号の時系列データの測定値から導くことができる。生体信号としては脈波が特に好ましいが、他の生体信号を用いることも可能である。
脈波は、指先から得られる指尖脈波が好ましいが、指先以外の生体表面の計測部位(耳たぶ、掌、指の付け根部分(指輪の位置))で測定してもよい。
脈波測定装置としては、コンピューターコンビニエンス社製の脈波収集装置(Bacs detector)を例示することができる。脈波からのリアプノフ指数及びエントロピーの算出手順は後述するが、リアプノフ指数は、例えば特許番号1891534号(特開平4−208136号公報)明細書の記載に従って、算出することができる。また脈波からのエントロピーの算出は公知の方法(Ichiro Tuda,Takashi Tahara Chaotic Pulsation in Human Capillary Vessels and its Dependence on Mental and Physical Conditions,International Journal of bifurcation and Chaos,Vol,2,No2,313−324,1992)に従い算出することができる。
好ましい1つの実施形態において、脈波などの生体信号の時系列データの測定は、通常1分以上行うことができ、好ましくは約3分から30分程度の時間、連続して或いは2〜18回に分けて測定することができる。1回の連続的測定時間は、1分以上であるのが好ましく、特に2〜5分程度がよい。特に好ましくは、1分×3回の測定を1セットとし、3セットのデータを測定し、解析することである。
本発明の判定方法の被験体は、主としてヒトの被験体を対象としているが、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、マウス、ラット、モルモット、ウサギなどの哺乳動物の被験体について適用することも可能である。
リアプノフ指数とエントロピーを用いる本発明の判定方法では、例えばあるヒト被験体が第1生体状態と第2生体状態のいずれに属するかを判定する場合、予め第1生体状態に属する被験体と、第2生体状態に属する被験体について予めリアプノフ指数とエントロピーに基づき判定基準を決定し、次に各被験体のリアプノフ指数とエントロピーを分析し、該判定基準に従って生体状態が第1の生体状態か第2の生体状態かを判定する。判定される生体状態がn個(nは3以上)ある場合には、第1の生体状態からn番目の生体状態について予め判定基準を作成し、同様に判定することができる。リアプノフ指数とエントロピーに代えて、ヒグチフラクタル次元を用いる場合にも、同様に判定することができる。
判定対象となる生体状態は、正常と非正常(例えば疾患)を判定することも可能であるが、例えば被験体がうつ病又は精神***病のいずれかの精神状態にあることがわかっている場合には、うつ病を第1の生体状態、精神***病を第2の生体状態として判定することも可能である。
判定基準を決定するための各生体状態の被験体の数は、多い方が正確に判定するために好ましく、例えば5以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上である。この被験体数は、判定の開始時の数であり、判定後の被験体は各々の生体状態の基礎データとして記録し、各生体状態の母集団を判定の実施によって増大させていくことで、より正確な判定が可能となる。また、特に精神状態などにおいて正常と非正常(例えばうつ病)の基準が変わったり、新たな病名が付与されたりする場合には、判定基準を決定するための各生体状態の基礎データを変更することも可能である。
本発明において生体状態の判定基準は、各生体状態の被験体に関する測定データから計算されたリアプノフ指数とエントロピーに基づき、好ましくはリアプノフ指数とエントロピーの対称性及び/又は相関性の分析を行い、対称性及び/又は相関性の分析結果に基づき判定基準を準備する。被験体についてリアプノフ指数とエントロピーの対称性を分析する方法として、M−symmetry法、ウェーブレット(Wavelet)法を用いる。相関性の分析方法としては、DFA(Detrended Fluctuation Analysis)解析法や長距離相関を用いる解析法などが使用され得るが、DFA解析法を用いることが好ましい。また、本発明における別の判定基準として、各生体状態の被験体に関する測定データからヒグチフラクタル次元を計算し、これから導出される指標であるF−定数を判定に使用する(F−symmetry法)。生体状態の判定又は生体に対する行為の有効性の判定において、これらの方法を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(実施の形態1)
生体状態の判定装置
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る生体状態の判定装置の概略構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る生体状態の判定装置は、本体部10、検出部20及び通信ケーブル21から構成されている。
本体部10は、中央演算処理部11(以下、CPUと記す)、メモリ部12、記録部13、インタフェース部14、ビデオ部15、データバス16、表示部17、操作部18を備えている。検出部20は、赤外線を放射する発光ダイオード及び発光ダイオードの放射する周波数帯域の赤外線を受信するフォトトランジスタを装備したプローブと、A/D変換器(いずれも図示せず)とを備えている。
CPU11は本体部10内部の各部を制御し、このCPU11による制御及び各部間のデータ伝送はデータバス16を介して行われる。CPU11は、インタフェース部14を介して、操作部18からの指示を受け付ける。
CPU11は、インタフェース部14を介して、検出部20の発光ダイオード及びA/D変換器を制御する。CPU11は、発光ダイオードを制御して赤外線を放射させ、A/D変換器を制御してフォトトランジスタの受信信号をサンプリングさせ、通信ケーブル21及びインタフェース部14を介してサンプリングデータを取得し、記録部13に記録する。例えば、人体の指先にプローブをセットし、指を透過(又は指内部で反射)した赤外線をフォトトランジスタで受信した信号を、所定の時間間隔でサンプリングすることによって、指先部分の血流状態の変化、即ち指尖脈波データを取得することができる。
CPU11は、記録部13からデータをメモリ部12に読み出して、後述する計算等の処理を行った結果を、記録部13の所定領域に記録する。また、CPU11がビデオ部15のビデオメモリ(図示せず)に画像データを書き込むことによって、書き込まれた画像データは、ビデオ部15のビデオ変換器(図示せず)によって表示部17に適したビデオ信号に変換された後、表示部17に伝送されて表示される。
リアプノフ指数とエントロピーの対称性分析
(i)M−symmetry(Mirror value symmetry)法
上記したように、測定データに関してリアプノフ指数とエントロピーの対称性を分析する方法としてはM−symmetryによる方法がある。M−symmetry法とは、脈波時系列信号から得られるリアプノフ指数及びエントロピーが健常人であれば互いに逆方向へ動くことで複雑系としてのシステムの健全性を保っているという考えに基づいて、この2つの指標(リアプノフ指数及びエントロピー)の対称性を数値化する解析法をいう。具体的なデータ処理の手順に関しては後述する。M−symmetry法では、リアプノフ指数とエントロピーの対称性が、高いほど正常に近く、低いほど正常から離れた状態にあると判定される。
図2は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるM−symmetry法を使用する生体状態の判定方法において、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。下記の各ステップにおいて、計算等のデータ処理はメモリ部12上で実行され、その結果は、次のステップで使用される場合など、必要に応じて記録部13の所定の領域に記録されるものとする。
先ず、ステップ21において、複数の被験体に対して指尖脈波の測定を行う。上記したように、検出部20を制御して各々の被験体に対して指尖脈波の測定を行い、採取した指尖脈波データw(i,j;k)を記録部13に記録する。ここで、iは被験体に一意に割り当てた識別番号、jは測定回数、kはサンプリング順にデータに付したサンプリング番号を表わす。各種の測定条件で指尖脈波データを採取可能であるが、以下においては、サンプリング周期を5ミリ秒(msec)とし、各々の被験体に対して3分間の測定を3回行う場合に関して説明する。即ち、各被験体iに関して、各々36000個のデータからなる3つの時系列データ{w(i,j)}が得られる。ここにおいて{ }の記号は、1回のサンプリングデータを時系列データとして表わす記号である。
ステップ22において、指尖脈波データw(i,j;k)を記録部13から読み出し、埋込次元を4に、埋込遅延τを10にセットして、データ{w(i,j)}から、式1によって4次元ベクトルV(i,j;k)(k=1〜36000)を生成する。
ステップ23において、式2及び式3によって、各(i,j)に関して、最大リアプノフ(Lyapunov)指数λ1(i,j)及びエントロピーE(i,j)を計算する。
最大リアプノフ指数λ1(i,j)は、4次元ベクトルV(i,j,k)の各成分w(i,j;k)、w(i,j;k+τ)、w(i,j;k+2τ)、w(i,j;k+3τ)に関して、式2によって計算される4つのλ(i,j)の中の最大のものである。
ここで、{xk}には、4次元ベクトルV(i,j;k)の各成分w(i,j;k)、w(i,j;k+τ)、w(i,j;k+2τ)、w(i,j;k+3τ)の時系列データが使用される。リアプノフ指数λ(i,j)は、所定の関数fを用いて、xk+1=f(xk)の条件が付された力学系において、近接した2点から出発した2つの軌道{xk}が、n→∞のときにどの程度離れて行くかを示している。
また、Pkはデータの存在確率を表わす。即ち、エントロピーE(i,j)は、4次元ベクトルV(i,j;k)の空間をN個の小領域に分割し、全データ個数に対する各小領域内に存在するデータ個数の比率によって各小領域のPkを表わし、全領域に関してPkの和をとることによって得られる。
ステップ24において、エントロピーE(i,j)、最大リアプノフ指数λ1(i,j)を2次元平面にプロットし、全データの重心を計算し、重心を通って、水平線に対して+45度と−45度の境界線を描き、2次元平面(Mirror対称図)を図3に示すように所定の点を基準として8つの領域に区分し、領域I及びIIに対してオフセット値(Os)を、Os=2とし、その他の領域に対してはOs=1と設定する。
ステップ25において、式4によって、ミラー値(Mirror Value)MV(i,j)を計算する。
ここでmax|λ1|、max|E|は、それぞれ、複数の被験体からなる集団全体の測定データに関する、最大リアプノフ指数λ1(i,j)、エントロピーE(i,j)の中の最大値である。ミラー値による正常、DP(うつ病)、SP(***病)の分析結果を図31に例示する。
ステップ26において、最大リアプノフ指数λ1(i,j)、エントロピーE(i,j)が、ステップ23において決定した領域のどの領域に属するかを考慮して、各(i,j)に関して、式5によって重み付きリアプノフ指数λ1w(i,j)を計算する。
即ち、最大リアプノフ指数λ1(i,j)、エントロピーE(i,j)が領域I又はIIに属する場合、Os=2として、それ以外の領域に属する場合には、Os=1として、式5によって重み付きリアプノフ指数λ1w(i,j)を計算する。
ステップ27において、重み付きリアプノフ指数λ1w(i,j)、エントロピーE(i,j)に関して、j回の測定の平均値λ1wav(i)、Eav(i)を計算する。
ステップ28において、縦軸を重み付きリアプノフ指数λ1w(i,j)、横軸をE(i,j)として、(i,j)に関してプロットした図を作成し、ビデオ部15に伝送する。ビデオ部15に伝送されたデータは、表示部17上に表示される。
以上によって、得られた重み付きリアプノフ指数の平均値λ1wav(i)を、母集団に関して実験的に求められた基準値と比較することにより、被験体iの生体状態を判定することが可能となる。実験的に基準値を求める方法は、正常(健康な)被験体の脈波をなるべく多く測定して、重み付きリアプノフ指数を計算しその平均値を基準値とする。重み付きリアプノフ指数の平均値λ1wav(i)が、基準値よりも値が大きければ生体状態は良好と判定できる。
また、ステップ28において得られるプロット図を、母集団に関して実験的に求められた基準線と比較することによっても、被験体iの生体状態を判定することが可能となる。実験的に基準値を求める方法は、正常(健康な)被験体の脈波をなるべく多く測定して、プロット図を作成し、その平均値を基準線とする。
図4はステップ28によって得られるプロット図の一例を示している。例えば、プロットした点が、水平の基準ラインの上方に位置する場合、その被験体の生体状態は正常であると判定でき、下方に位置する場合、異常であると判定することができる。この例では、正常(Normal)、うつ病(DP)、***病(SP)のデータをプロットしているが、正常が基準線より上、うつ病と***病が基準線より下に83%の確率で分布している。
(実施の形態2)
ウェーブレット(Wavelet)変換を使用する対称性分析
次に、被験体についてリアプノフ指数とエントロピーの対称性を分析する方法としてウェーブレット(Wavelet)変換を使用する方法を説明する。図5は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるウェーブレット変換を使用する生体状態の判定方法において、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
ステップ31において、図2のステップ21と同様に、指尖脈波データの測定を行い、記録部13に記録する。本実施の形態においては、特定の被験体iに対する測定だけを行い、1回3分間の測定3回を1セットとして、等時間間隔で3セット以上の測定が行なわれる。以下において、m(m≧3)をセット番号として、測定データをw(i,m,j;k)で表わす。
ステップ32において、図2のステップ22と同様に、埋込次元を4に、埋込遅延τを10にセットして、ステップ31において測定した指尖脈波データからベクトルデータV(i,m,j;k)を生成する。
ステップ33において、図2のステップ23と同様に、最大リアプノフ指数λ1(i,m,j)及びエントロピーE(i,m,j)を計算し、各々のiに関して時系列データとして記録部13に記録する。これによって、1回3分間の測定3回をNセット行う場合、3N個のデータからなる時系列データが得られる。
ステップ34において、ステップ33で得られた最大リアプノフ指数λ1(i,m,j)及びエントロピーE(i,m,j)に関して、ウェーブレット多重解像度分解によって、スケーリング係数S1(λ1)〜S5(λ1)、S1(E)〜S5(E)及びウェーブレット係数W1(λ1)〜W5(λ1)、W1(E)〜W5(E)の時系列波形を計算する。ウェーブレット多重解像度分解は、信号波形を直交関数系で展開する周知の解析方法であり、スケーリング係数及びウェーブレット係数は、展開係数である。
即ち、被験体iの測定データに関するスケーリング係数S1(λ1)〜S5(λ1)とウェーブレット係数W1(λ1)〜W5(λ1)は、最大リアプノフ指数λ1(i,m,j)を時系列データとみなして、ウェーブレット多重解像度分解によって得られる1次元〜5次元のスケーリング係数とウェーブレット係数である。
また、被験体iの測定データに関するスケーリング係数S1(E)〜S5(E)とウェーブレット係数W1(E)〜W5(E)は、エントロピーE(i,m,j)を時系列データとみなして、ウェーブレット多重解像度分解によって得られる1次元〜5次元のスケーリング係数とウェーブレット係数である。
ステップ35において、記録部13から被験体iのスケーリング係数S1(λ1)〜S5(λ1)、S1(E)〜S5(E)及びウェーブレット係数W1(λ1)〜W5(λ1)、W1(E)〜W5(E)を読み出し、時系列データとみなして、図6に示すように、スケーリング係数S1(λ1)〜S5(λ1)の時系列波形とS1(E)〜S5(E)の時系列波形とをそれぞれ同じレベルで重ねたグラフの画像データ、及び各々のウェーブレット係数W1(λ1)〜W5(λ1)の時系列波形とW1(E)〜W5(E)の時系列波形とをそれぞれ同じレベルで重ねたグラフの画像データをビデオメモリ上に作成する。作成されたグラフは表示部17に表示される。
ステップ36において、ステップ35で得られたグラフを元に被験体iの生体状態の判定を行う。即ち、スケーリング係数S1(λ1)〜S5(λ1)の波形とS1(E)〜S5(E)の波形との関係、及びウェーブレット係数W1(λ1)〜W5(λ1)の波形とW1(E)〜W5(E)の波形との関係によって判定を行う。
例えば、投薬の前後にわたって測定したデータに対して、上記した一連のステップにおいて処理し、表示部17にスケーリング係数S1〜S5、ウェーブレット係数W1〜W5、リアプノフ指数λ1、エントロピーEの時系列波形を表示し、これらの波形相互間の対称性を判定基準として、投薬の効果を判定することが可能である。即ち、投薬後に、スケーリング係数S1(λ1)〜S5(λ1)の波形とS1(E)〜S5(E)の波形とが交差を繰り返しながら対称に変化し、且つウェーブレット係数W1(λ1)〜W5(λ1)の波形とW1(E)〜W5(E)の波形とが交差を繰り返しながら対称に変化するようになれば、その投薬に効果があると判定できる。さらに、これらの波形が相互に対称であるほど、投薬の効果が高いと判定することができる。
図6は、がん患者にアガリクスを投薬する前後のリアプノフ指数とエントロピー波形を、上記したように処理して得られた結果の一例を示している。約3週間にわたり、1回100秒間、1日2回〜9回のデータ測定を行った。図6において、上段の2つの波形Orig.signal λ1、Orig.signal Eは、それぞれ測定データのリアプノフ指数λ1、エントロピーEを表わしている。下段の2つの波形は、スケーリング係数S2、ウェーブレット係数W2を表わしており、実線がリアプノフ指数λ1に関する係数、破線がエントロピーEに関する係数を表わしている。
この図から、矢印で示した投薬時以前においては、波形の対称性が低いが、投薬時以後において、波形の対称性が高くなっていることが分かる。即ち、アガリクス投与は一定期間、この2つの指標の対称性ダイナミズムを増強する効果が確認できた。この効果は臨床症状ともよく一致していた。
(実施の形態3)
DFA解析法を用いる相関性の分析
次に、相関性の分析方法であるDFA解析法を用いる判定方法に関して説明する。DFA(Detrended Fluctuation Analysis)解析法は、1993年にBuldyrevによって、ランダムにみえる2つのゆらぎ信号がどの程度似ているかを判定する指標として導入された。その方法は、ランダムにゆらぐ2つの信号波の標準偏差を、比較する範囲を自在に変えながらプロットするものである。1つのゆらぎ信号を拡大得られる信号波形を、元の信号波形とDFA法によって比較することにより、このゆらぎ信号の自己相似性、すなわちフラクタル性を評価することができる。しかし実際の生体からの信号は、非定常なゆらぎであるため、このフラクタル性を指数化することは困難であった。
これを可能にしたのは、比較する対象を局所の平均値にしてしまうという、1995年のGoldbergerらのアイデアによっている。その数式としての表現は、次の2つの式によって表わされる。
ここで、y(k)は全トレンド、B(i)はi番目の値、Baveは平均値をである。
この全トレンドからそれぞれの分割トレンドを引き、次式によってFを計算する。得られたFは、分割領域のべき乗に比例すると考えられ、この法則をパワーロウ(Power−law)と呼ぶ。
ここで、yn(k)は分割した部分のトレンドである。
このF(n)を用いて、logF(n)とlog nのグラフの傾きから、自己相似次元αが計算される。
本実施の形態おいては、例えば脈波に基づく生体信号の時系列データからリアプノフ指数とエントロピーを算出し、DFA解析によりリアプノフ指数とエントロピーの自己相似性を求める。該相関性は自己相似次元αにより決定される。
自己相似次元αは、自己相関係数と一定の関係にあり、
0<α<0.5の場合、グラフからαが求められない反相関状態、
α=0.5の場合、無相関(white noise)、
0.5<α<1.0の場合、永続的な長周期(長距離)の相関状態、
α=1.0の場合、1/fのゆらぎ又はノイズ状態、
α>1.0の場合、フラクタル性や自己相似性を表すパワーロウ(Power−law)がなくなる状態、
α=1.5の場合、ブラウン(Brown)ノイズ状態
をそれぞれ表わしている。
従って、リアプノフ指数の自己相似次元αが生体状態の判定に有効であることが分かる。リアプノフ指数の自己相似次元αは、α=1.0が、正常状態であり、αが1.0に近づくほどよい状態である。また、エントロピーの自己相似次元αは、α=1.5が、正常状態であり、αが1.5に近づくほどよい状態である。
また、ある軽度のうつ病患者に関して、αが0.563(治療前)から0.767(治療後)に変化した事例があり、このことからα値自体の評価に加えて、変化の方向性、即ち生体への行為の前後におけるα値の変化方向も判定に有効であることが分かった。
図7は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるパワーロウ(Power−law)即ちDFA解析法を使用する生体状態の判定方法における、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
ステップ41において、図2のステップ21と同様に、指尖脈波データの測定を行い、記録部13に記録する。本実施の形態においては、特定の被験体iに対する測定だけを行い、1回3分間の測定3回を1セット、3セットを1ラウンドとして、3ラウンド以上、即ち合計27回以上の測定が行なわれる。以下において、m1(m1≧3)をセット番号、m2(m2≧3)をラウンド番号として、測定データをw(i,m2,m1,j;k)で表わす。また、各々の処理において、計算はメモリ部12上で行われ、計算結果は記録部13の所定の領域に記録される。
ステップ42において、記録部13から読み出した測定データに対して、各1回の測定で得られる36000個のデータからなる時系列データ{w(i,m2,m1,j)}の中の連続する5000個のデータw(i,m2,m1,j;k1)〜w(i,m2,m1,j;k1+5000)を新しい時系列データ{w’n(i,m2,m1,j)}として、記録部に記録する。ここで、連続する5000個のデータの先頭は、元の36000個の時系列データ{w(i,m2,m1,j)}の最初のデータから、1秒間(200データ)づつずらして得られるデータとする。従って、先頭データを順に1秒ずつずらすことによって、1個の時系列データ{w(i,m2,m1,j)}から、156個(=1+(36000−5000)/200)の新しい時系列データ{w’n(i,m2,m1,j)}(n=1〜156)が作成される。このデータの先頭位置のシフトを、ベルヌーイシフトと呼ぶ。
ステップ43において、図2のステップ23と同様に、埋込次元=4、埋込遅延=10として、新しい時系列データ{w’(i,m2,m1,j,n)}(n=1〜156)に関して、ベクトルデータV’(i,m2,m1,j,n;k)(k=1〜5000)を生成する。
ステップ44において、図2のステップ23と同様に、測定データw(i,m2,m1,j;k)に関して、式2から最大リアプノフ指数λ1(i,m2,m1,j)を、式3からエントロピーE(i,m2,m1,j)をそれぞれ計算する。
ステップ45において、ステップ44と同様に、各々の{V’(i,m2,m1,j,n)}(n=1〜156)に関して、式2によって得られる4個のリアプノフ指数λ(i,m2,m1,j,n)の中の最大値である最大リアプノフ指数λ1’(i,m2,m1,j,n)、及び式3からエントロピーE(i,m2,m1,j)を計算する。
例えば、1回3分間の測定3回を3ラウンドを行った場合、最大リアプノフ指数の時系列データ{λ1’(i,m2,m1,j)}が27個(=m2×m1×j×n、m1=m2=j=3)、及びエントロピーの時系列データE’(i,m2,m1,j,n)が27個得られる。
ステップ46において、ステップ44で計算した、27個の最大リアプノフ指数λ1(i,m2,m1,j)、及び27個のエントロピーE(i,m2,m1,j)に対するマクロ的なDFA解析を行い、フラクタル自己相似構造を解析する。即ち、上記した式6おいて、λ1(i,m2,m1,j)を時系列データB(i)とし、上記した式7を満たすαを計算してαλ1とする。同様に、E(i,m2,m1,j)を時系列データB(i)として、式7を満たすαを計算してαEとする。
ステップ47において、ステップ45で計算した、各々156個のデータからなる27個の時系列データ{λ1’(i,m2,m1,j)}、27個の時系列データ{E’(i,m2,m1,j)}に対して、ミクロ的なDFA解析を行い、フラクタル自己相似構造を解析する。
即ち、式6において、λ1’(i,m2,m1,j,n)を時系列データB(i)として、式7を満たすαλ1’(i,m2,m1,j)を計算する。同様に、式6おいて、E’(i,m2,m1,j,n)を時系列データB(i)として、式7を満たすαE’(i,m2,m1,j)を計算する。ここで、N=156である。これによって、各々27個のαλ1’(i,m2,m1,j)、αE’(i,m2,m1,j)が計算される。
ステップ48において、ステップ46及び47で計算したαの時間変動によって、投薬の効果を判定する。
例えば、投薬の前後の所定期間にわたって測定したデータに関して、ステップ46で計算したαλ1’及びαE’を時間軸を横軸としてプロットして折れ線グラフを作成し、投薬の前後での折れ線グラフの変動をミクロ的に評価することによって、投薬の有効性を判定することができる。
また、投薬の前後の所定期間にわたって測定したデータに関して、ステップ45で計算したαλ1及びαEを、投薬の前後で比較することによって、投薬の有効性を判定することができる。
上記した第2の実施の形態において、がん患者にアガリクスを投薬した場合(図6参照)の投薬効果を判定することができることを示したが、図8は、同じ投薬実験データのマクロ的なDFA解析の結果を示している。図8の縦軸はリアプノフ指数とエントロピーの時系列データから27個の自己相似次元αを求めこれを1点として表し、3個分づつずらしながら27個の自己相似次元αをプロトしたものである。これにより投薬効果の時間単位の追跡が可能となった。
即ち、図6でもみられたリアプノフ指数とエントロピーの対称性変化は、図8に示すようにアガリクス投与によりダイナミックに変化し、エントロピー値も最高値を記録している。しかしリアプノフ指数は少し低い状態が続いているためアガリクスの効果の限界も示している。
以上のように、被験体iの指尖脈波の測定データを使用して、最大リアプノフ指数λ1及びエントロピーEに関するαλ1(i)、αE(i)、αλ1’(i)、αE’(i)を計算し、これらの値の時間変化を観察することとによって、被験体iの生体状態や投薬効果を判定することが可能となる。例えば、αλ1(i)、αλ1,n(i)が1に近づくほど、1/fノイズ状態に近いと考えられることから、生体の状態が良好であると判定できる。また、αE(i)、αE,n(i)が1.5に近づくほど、ブラウンノイズ状態に近いと考えられることから、投薬の効果があると判定できる。上記したように、1人の被験体に対して指尖脈波の測定が、27回以上であれば有効な判定が可能であるが、54回以上であることがより望ましい。
(実施の形態4)
ヒグチフラクタル次元の比(D1/D2)に基づく方法(F−symmetry法)
次に、F−symmetry法を用いた判定方法に関して説明する。
生体は非定常なカオス性を示し、マルチフラクタルな構造を示すことが知られている。詳しくは後述するが、ヒグチフラクタル(Higuchi Fractal)次元と呼ばれる2つの指標、D1及びD2によってシステムのマルチフラクタル性を表現できる。我々は、健常人約40人に関して解析を行うことによって、この2つの指標の比(D1/D2)が宇宙定数と呼ばれるファイゲンバウム(Feigenbaum)定数と一致することを見出した。
図9は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるヒグチフラクタル次元を使用する生体状態の判定方法において、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
ステップ51において、図2のステップ21と同様に、指尖脈波データの測定を行い、記録部13に記録する。本実施の形態においては、特定の被験体iに対する測定だけを行う。
ステップ52において、図2のステップ22と同様に、埋込次元を4に、埋込遅延τを10にセットして、ステップ51において測定した指尖脈波データからベクトルデータV(i,j,k)を生成する。
ステップ53において、各回の測定データに関して、ヒグチフラクタル次元Dを計算する。ヒグチフラクタル次元Dは、式8で定義され、時系列データを1次元の幾何構造とみなした場合の形状の複雑さを表わしている。
ここで、
t=1〜N/2(整数値)
であり、[]は、括弧内の値を超えない最大の整数を表わし、Sは各回の指尖脈波の測定データ、Nはデータの個数(=36000)である。
式8に示すように、ヒグチフラクタル次元Dはtの関数であるが、指尖脈波データに関して、横軸をlogt、縦軸をlogΔ1としてプロットしたグラフは、図10に示すように、傾きが一定の2つの直線でほぼ近似できる。式8から、ヒグチフラクタル次元Dは、このグラフの傾きに対応することが分かる。従って、それぞれの領域の傾きを、それぞれの領域のヒグチフラクタル次元D1(i,j)、D2(i,j)とする。グラフの傾きの計算は、周知の方法、例えば、最小2乗法によって計算することができる。
ステップ54において、ステップ53の処理によって得られたD1(i,j)、D2(i,j)に関して、被験体iの3回の測定データの平均値D1av(i)、D2av(i)を計算する。
ステップ55において、式9によってF−定数F(i)を計算する。
ステップ56において、ステップ55において計算されたF−定数F(i)と、ファイゲンバウム(Feigenbaum)定数(F=4.6692)とを比較し、F−定数F(i)とファイゲンバウム定数との差が所定値以下であるか否かを判定する。ここで、ファイゲンバウム定数は、M.J.Feigenbaumによって研究され、カオス生成のメカニズムである2分岐構造の比
によって導出される普遍定数であり、例えば「カオス入門−現象の解析と数理」(長島弘幸、馬場良和共著、培風館発行)にその詳細が説明されている。
ステップ57において、横軸をD1av(i)、縦軸をD2av(i)として、F(i)が一定の複数の直線を引き、ステップ54で計算されたD1av(i)、D2av(i)をプロットしたグラフをビデオ部15上に作成する。
式9を書き直すと、
となり、この式は、F(i)が一定の値と仮定すると、傾き(F(i)+1)/(F(i)−1)の直線を表わす。上記で描画する複数の直線は、この傾きを有する直線であり、ファイゲンバウム定数に対応する直線も含まれる。図11は、一定のF値の各々に対応する直線を示したグラフである。
以上のように、ステップ56において、F−定数F(i)とファイゲンバウム定数とを比較することにより、被験体iの生体状態に関して判定を行うことが可能となる。
また、ステップ57においてプロットした点と、ファイゲンバウム定数ラインとの位置関係を評価することにより、被験体iの生体状態に関して判定を行うことが可能となる。
図12及び図13は、複数の被験体に関してステップ51〜57を繰り返し行うことによって得られた結果の一例を示すグラフであり、図12は、ステップ56の比較結果を、図13は、ステップ57において作成されるグラフを示す。
図12においては、正常者とうつ病、***病、喘息、潰瘍性大腸炎患者のデータの平均値を棒グラフで表示している。F−定数は、健常者(Normanl)では4.73、うつ病(DP)では4.06、***病(SP)では3.70、潰瘍性大腸炎(UC)では3.63、喘息(Asthma)では3.76である。図12から、健常者のF−定数は、ファイゲンバウム定数ラインに近く、病気の被験体のF−定数はファイゲンバウム定数ラインから大きく離れていることが分かる。また、疾患の種類によってF−定数は特定の値になることが分かる。
図13においては、正常者とうつ病、***病のデータをプロットしたグラフであるが、正常者はファイゲンバウム定数ライン近辺に分布し、特に***病患者のデータがファイゲンバウム定数ラインから離れて分布していることが分かる。
これら各々の疾患に対応するF−定数の算出は、同一疾患の患者の集団についてF−定数を算出することにより求められる。また、このF−定数は、測定される患者数(母集団)が大きいほど各疾患について正確な数値を求めることができることから、ニューラルネットワークによりデータを蓄積していくことによって、より正確な判定が可能となる。
さらに、F−symmetry法によって得られるヒグチフラクタル次元D1、D2分布の対称性を求め、上記した相関分析法、対称性分析法と組み合わせることにより高精度に生体状態を判定することができる。例えば、第1の実施の形態において説明したように、図4に示した集団に関して、M−symmetry法を用いたリアプノフ指数とエントロピーの対称性の分析結果だけでは識別率が83%であったが、同じ測定データを使用してF−symmetry法による評価を組み合わせることにより、97%の識別率を得ることができた。
またF−定数が類似した被験体(例えば、SPとGLYはF−定数は3.70で同一)に対しては、F−symmetry法のみによって分類することができないが、ミラー値(Mirror Value)やDFA分析で求められる相関次元を組み合わせることによって分類することが可能となる。
(実施の形態5)
生体状態に影響を及ぼす可能性のある行為の有効性の判定方法
以下において、生体状態を変化させる可能性のある行為の実施が薬物の投与である場合を例に取り、リアプノフ指及びエントロピーの時間変動を記録したグラフからそれらの対象性を直接判定する方法に関して説明する。
本実施の形態に係る判定方法において、生体状態を変化させる可能性のある行為が薬物投与である場合、薬物の有効性を判定することができる。2以上の薬剤に関して本実施の形態に係る判定方法により判定することで、いずれの薬剤がより有効性が高いかを薬物投与の初期の段階で判定することができる。また、2以上の薬剤を併用することにより、これら薬剤の併用(相乗)効果についても判定できる。
図14に示すように、一般に、エントロピーとリアプノフ指数が対称的に(一方が減少すれば他方が増加する)変動するのが正常な生存状態を示す。換言すると、これは、リアプノフ指数とエントロピーの差のゆらぎが存在することを意味し、このような状態を「ミラーダイナミック」とも称することができる。具体例としては、図15に示すように、患者Aの治療初期ではリアプノフ指数とエントロピーの差(斜線部分)のゆらぎが大きく、患者Aに対するアモキサピン(23mg×3)及びイミプラミン(10mg×6)の併用投与は、有効性が高いと判定できる。一方、患者Bの治療初期ではリアプノフ指数とエントロピーの差(斜線部分)のゆらぎが小さく、クロキサゾラム1mgの投与の有効性は低いと判定できる。
一方、本実施の形態に係る判定方法のもう1つの基準は、エントロピーとリアプノフ指数の差の時間的な変動の方向性である。該差の変動の方向性が大きくなる方向と、小さくなる方向を交互に示す場合、薬物の有効性が高く、該差の変動にこのような「ゆらぎ」が認められない場合、薬物の有効性は低いと判定される。
当該行為の有効性を判定する本実施の形態に係る判定方法では、リアプノフ指数及びエントロピーの測定を薬剤投与前と投与後の少なくとも2回行う。薬物投与後の測定に関しては、1回のみの測定でもよいが、少なくとも2回測定するのが好ましい。少なくとも2回の測定のうち、少なくとも1回の測定は薬物の投与後、薬物の効果が現れると予測される時期或いはその薬物の効果が現れると予測される時期の後に行うことも可能である。薬物の効果が現れると予測される時期には、例えば薬物の投与後有効血中濃度に達していると予測される時期が例示される。薬物の効果が現れると予測される時期の後には、例えば薬物が有効血中濃度未満に低下したと予測される時期が例示される。少なくとも2回のリアプノフ指数及びエントロピーの測定は、薬物の効果が現れると予測される時期に少なくとも2回行ってもよく、薬物の効果が現れると予測される時期に少なくとも1回及び薬物の効果が現れると予測される時期の後に少なくとも1回行ってもよく、薬物の効果が現れると予測される時期に少なくとも1回及び薬物の投与前や薬物投与後であって有効血中濃度に達する前に少なくとも1回測定してもよい。薬物投与後に少なくとも1回測定されたリアプノフ指数及びエントロピーを薬物投与前の結果と比較し、エントロピーとリアプノフ指数の対称性の差の大小及びエントロピーとリアプノフ指数の差の時間的な変動の方向性を調べることで、薬物の有効性を判定できる。薬物投与の影響によるリアプノフ指数及びエントロピーの値の変動までの時間が長い場合には、薬物投与直後から数十分ないし数時間後、場合によっては十数時間から数日後の値を初期値とし、この初期値と、薬物投与から一定期間経過後のリアプノフ指数及びエントロピーの値を比較することも可能である。
なお、リアプノフ指数及びエントロピーの測定は、2回行ってもよく、例えば毎日薬物を服用する場合には、数日間連続して或いは一定の期間をおいて数回測定してもよい。
(実施の形態6)
生体状態の判定システム
以上においては、判定装置の本体10が、生体状態又は薬効を判定する場合を説明したが、ここではデータ測定と判定処理とを各々別の装置で行う場合に関して説明する。本実施の形態に係る生体状態の判定システムは、通信用インタフェース(図1において図示せず)を備えた本体10、及び本体10から遠隔地に設置されている判定処理を行う解析用コンピュータを備えている。本体10は、通信用インタフェースによって電話回線、ネットワーク回線などの通信回線に接続されており、検出部20で測定を行って記録部13に所定のファイル形式で保存したデータを、通信回線を介して、通信回線に接続された解析用コンピュータに伝送する。解析用コンピュータが、受信した測定データを、上記した方法に従って計算処理し、生体状態等の判定を行う。
通信するデータ量を低減するために、判定装置の本体10が、データ測定と判定処理の一部とを行い、残りの判定処理を解析用コンピュータが行うようにすることも可能である。例えば、第1の実施の形態において、判定装置の本体10がステップ21〜26の処理を行い、その計算結果である重み付きリアプノフ指数λ1w及びエントロピーEを送信し、解析用コンピュータがステップ27〜28の処理を行うようにすることも可能である。例えば、サンプリング周期を5ミリ秒(msec)とし、各々の被験体に対して3分間の測定を3回行い、1つの測定データを1バイトで扱う場合、判定装置の本体10が、各々の被験体に関して36000×3バイト=約108キロバイトのデータを処理するのに対して、その計算結果の重み付きリアプノフ指数λ1w及びエントロピーEは各々3個であり、通信されるデータは各々の被験体に関して6バイトのデータでよいことから、非常に効率的となり、大量の被験体に関するデータの交換が容易になる。
また、複数の依頼元にある本体10から伝送されたデータに関して、解析用コンピュータが行った判定結果を、各々の本体10に一意に付与した番号と対応させてデータベースとして保存及び管理することや、判定結果を所定のデータ形式に変換し、通信回線等を介して対応する依頼元の本体10に伝送することも可能である。また、データの受け渡しは、通信回線を使用せずに、データを記録した記録媒体を運搬することによって行うことも可能である。
以上においては、第1〜第5の実施の形態を各々単独に実行する場合を中心に説明したが、これらの判定方法を組み合わせて行うことも可能であり、第4の実施の形態において説明したように、組み合せて行うことによって、生体状態及び生体状態に影響を及ぼす行為の有効性の判定の信頼性をより高めることが可能になる。
上記した第1〜第4の実施の形態において、データサンプリング周期、1回の測定時間、1セットの測定回数、1ラウンドのセット数は、上記した数値に限定されるものではなく、測定装置の性能などに応じて、または1回の測定にかかる時間及び計算時間が長くなり過ぎない範囲で変更が可能である。また、埋込次元、埋込遅延も上記した数値に限定されるものではなく、計算時間が長くなり過ぎない範囲で変更が可能である。
第1の実施の形態において、8つの領域を2種類に分類したオフセット値は上記した値に限らず、上記以外の異なる2つの値を設定することができる。また、8つの領域の分類は2分類に限らず、更に細かく分類し、各々に対応するオフセット値を設定することも可能である。
第2の実施の形態において、スケーリング係数及びウェーブレット係数として次元の低いものから各々5個の係数を使用したが、より高次元の係数を使用することも可能であり、判定の精度が低くなるが5個よりも少ない個数を使用して判定することも可能である。
第3の実施の形態において、実測データから5000個のデータを抜き出して新たな時系列データとする場合を説明したが、実測データから連続するデータを抜き出す限りにおいて、5000個に限らず、それ以外の個数であってもよい。また、抜き出す最初のデータをずらす間隔、即ちベルヌーイシフトの時間間隔は1秒間に限定されない。
また、各々の実施の形態において、生体の状態を判定する最後のステップは、ニューラルネットワークによって行うことも可能である。例えば、入力層、中間層及び出力層を備え、誤差逆伝搬法(error back propagation)によって、中間層のニューロンの結合係数(各ニューロンへの入力値から出力値を決定するための係数)を学習によって修正する階層型ニューラルネットワークを使用することができる。例えば、第1の実施の形態の重み付き最大リアプノフ指数の平均値λ1wav(i)、第3の実施の形態の自己相似次元αλ1及びαE、第4の実施の形態のF−定数F(i)が各々入力される4個のニューロンを入力層に備え、正常及び疾患に対応する2個のニューロンを出力層に備えることができる。このように構成されたニューラルネットワークに対して、判定結果が明確な母集団の測定データを教師データとして使用し、学習させることによって、高精度の総合的な判定を自動的に行うことが可能となる。
以上にのように、第1〜第5の実施の形態によれば、生体の状態を判定することが可能である。特に、第1〜第4の実施の形態1〜4によれば、1回の測定により測定時における生体状態を判定することが可能である点で、より有効である。
また、第1〜第5の実施の形態によれば、この最初の判定後に、例えば生体状態の改善を意図した行為或いは生体状態に悪影響を及ぼす可能性がある行為が行われ、その行為の生体状態改善効果の程度を判定する場合には、当該行為を行った後に生体状態を判定し、当該行為の前後での生体状態を比較して、当該行為の有効性を判定することが可能である。前記行為の有効性の判定の際に、当該行為後の生体状態を同時に判定することができる。
測定可能な生体状態としては、被験体の正常、病態及び非病態(正常ではないが病態前の状態)の精神的状態或いは身体的状態が例示される。精神的状態としては、精神神経疾患(うつ病、躁病、躁鬱病、心身症、精神***病、神経症、不眠症、てんかん、パーキンゾン病、幻覚症、自閉症)のような病態、不安、焦燥感、神経過敏、興奮、神経痛、虚脱感、めまい、頭痛、精神的疲労、引きこもりなどの非病態症状が例示され、身体的状態としては、ガン、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧、高脂血症、不整脈、高コレステロール血症などの心血管系疾患、慢性肝炎、肝硬変、胃潰瘍、膵炎、糖尿病、慢性腎炎、アレルギー性疾患、ウイルス、細菌、真菌等の感染症、白内障、緑内障などの眼科疾患、不妊症、骨折、腰痛、肩こり、外傷などの疾患、或いはこのような身体的疾患の前段階にある身体的不調状態が例示される。
このような疾患或いは精神的・肉体的不調状態にあると診断された場合、例えば薬物投与、透析、医療器具の使用(例えば、放射線ないしレーザー照射、電気的・磁気的パルスによる治療、リハビリなど)、生体の状態を改善する可能性のある食物の摂取などの疾患の予防又は治療行為、身体的又は精神的刺激の付与行為が例示される。
該行為の生体状態に対する効果の判定は、このような行為の実施後1時間から10日程度経過後に行うことができる。また、該行為の実施後の生体状態の判定は、1回だけでもよく、複数回行ってもよい。この判定により当該行為が生体状態を正常状態にする「ポジティブ」であると判定される場合には、当該行為は継続して行われることになり、生体状態の変化が見られず(「中立」)或いは悪化する(「ネガティブ」)と判定される場合には、他の行為が選択されることになる。
有効性の判定対称となる薬物としては、全ての疾患を治療するための薬物が含まれ、例えば免疫・ホルモン・神経系関連疾患の治療薬が例示される。具体的には、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤などの病原生物に対する薬物、抗癌剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、糖尿病治療剤、ホルモン剤、ビタミン剤、輸液、血液製剤、抗血栓薬、抗高脂血症薬、止血薬、造血薬、強心薬、抗不整脈薬、狭心症治療薬、血管拡張薬、降圧薬、利尿薬、気管支拡張薬、消化性潰瘍治療薬、整腸薬、肝疾患治療薬、膵疾患治療薬、睡眠薬、鎮痛薬、抗てんかん薬、向精神薬、抗不安薬、自律神経作用薬、パーキンソン病治療薬、局所麻酔薬、眼科用剤、皮膚科用剤などが例示される。
生体の状態を改善する可能性のある食物としては、いわゆるサプリメントが挙げられ、食物は、固形物又は飲料の形態で提供される。食物には、ビタミン類や、血圧、血中のコレステロール、脂肪、血糖などを低下させる作用、滋養強壮作用、老化防止作用、体重低下作用などが知られている物質を含む抽出物又は食品素材が例示できる。
身体的刺激としては、運動、マッサージ、鍼灸、気温の変化(高温又は低温)などが例示され、精神的刺激としては、音楽、カウンセリングを含む会話、読書などが例示できる。
例えば、音楽療法の効果やヒトの右脳と左脳の活動状態などを判定可能である。図16は、各年齢、性別の16人の被験体に対して、一番好きな音楽を聴いている状態で、脈波の時系列データを採取し、DFA解析を行って得られた自己相似次元αのグラフを示している。16人には、健常者、疾患を有する人、疾患を有していた人、体調の良い人、体調の悪い人が含まれている。解析の結果、特に体調の良くない人に、ゆらぎ指数の大きい変化が見られ、音楽を聴くことによってαが1.0に近づいてくる、即ち自律神経のゆらぎが1/f法則に近づいてくることが分かった。
また、図17、図18は、被験体に絵を見せた場合、又は計算させた場合における、左右手の指尖脈波を測定し、DFA解析を行って得られた結果を示している。図17の表記は図19と同様であり、グラフの傾きが自己相似次元αを表わしている。左側の上下2つのグラフ、右側の上下2つのグラフは、それぞれ左手、右手の指尖脈波データを解析して得られたグラフであり、上側の2つのグラフ、下側の2つのグラフは、それぞれ絵を見た場合、計算をした場合の指尖脈波データを解析して得られたグラフである。図18は、5人の被験体に対して、同様の実験を行って得られた指尖脈波データを解析した結果の自己相似次元αのグラフを示している。図17,18に示されているように、左右の脳の活動状態を、自己相似次元αの変化として観測可能である。
以上、本発明に係る実施の形態に関して説明したが、以下においては、本発明を具体的に適用した実施例に関して説明する。
(実施例1)
第1の実施例として、うつ病患者A(56歳男性)に関する判定例を示す。この患者は医師によりうつ病と診断され、Benzodiazepine系のAlplazolam(ソラナックス)0.4mg x 3,Bromazepan(レンドルミン)0.25mg x 1、抗うつ薬のMaprotiline(ルジオミール)25mg x 5,Amoxapine(アモキサピン)25mg x 3,Imipramine(トフラニール)10mg x 6が処方されていた。この患者の脈波をコンピューターコンビニエンス社製の脈波収集装置を使用して特許番号1891534に記したように測定し第2の実施の形態の方法で、リアプノフ指数とエントロピーのウェーブレット多重解像度分解を行いスケーリング係数、ウェーブレット係数を計算し、その結果を重ねてグラフを作成すると、図19に示したように矢印の部分に投薬による効果を表す臨界点が見られる。また、図20、図21は、それぞれ第3の実施の形態におけるミクロ的なDFA解析、マクロ的なDFA解析を行った結果を示している。図21に示すように、マクロ的なリアプノフ指数のDFA解析結果のαに関しては、前半と後半とで傾きが変わっており、前半が0.563であり、後半が0.767で1に近づいていることから、患者の状態が改善していることがわかる。実際に、この患者の臨床症状と自覚症状は、完全に回復した。
(実施例2)
第2の実施例として、上記とは別のうつ病患者B(58歳男性)に関する判定例を示す。図22は、患者Bに関する測定データを、第2の実施の形態の方法で、リアプノフ指数とエントロピーのウェーブレット多重解像度分解を行いスケーリング係数、ウェーブレット係数を計算し、その結果を重ねてグラフにしたものである。また、図23、図24は、それぞれ第3の実施の形態のミクロ的なDFA解析、マクロ的なDFA解析を行った結果を示している。
図22から、ミラーダイナミクスパターンは全体的に弱く(グラフの右端の最後の部分にしか見られない)、回復はすぐには見込めない状態だと判断される。
図24に示すマクロ的なリアプノフ指数とエントロピーのDFA解析結果αは、どちらも小さい値であることから、投薬効果、患者の状態とも悪い状態だと判断される。実際に、患者Bにはクロキサゾラム(Cloxazolam)1mg及びアモキサピン25mg×2の投与が行われたが、臨床症状と自覚症状は回復せず、この測定の3ヶ月後も臨床症状の変化は見られなかった。
以上の2つの実施例から分かることは、生体はカオス性の指標であるリアプノフ指数とエントロピーを対称的に変化させることで、単なる分子集合の非平衡開放系とは異なっており、この性質が生命の健全性を示すバロメーターとなっていることである。従って、この対称的なゆらぎの変化が見られなかった患者Bは数ヶ月後の臨床症状の改善が見られず、この状態が見られた患者Aは数ヶ月後に完全に改善した。
(実施例3)
第3の実施例として、第1の実施例と同じうつ病患者A(56歳男性)に関する判定例を示す。この患者の脈波を8月7日、実施例1と同様に測定し、リアプノフ指数を計算した。約10分おきの3回の計算値は、図25に示したように0.98,1.16,0.71であった。また、その時のエントロピーは、上記した方法によって算出すると、5.00,4.96,4.95であった。また午後4時の測定値は、リアプノフ指数が1.97,1.15,0.76であり、エントロピーは、4.72,3.98,5.29である。このときのエントロピーとリアプノフ指数を図25に示すように、重ねて示すと8月8日、8時40分からの4回の測定値はエントロピーが、5.45,5.30,5.17,5.22となり、リアプノフ指数は、0.59,0.75,−0.62,−0.64となり大幅に両指数の差が広がっている。8月9日は朝から夕方にかけて、徐々に差が縮まり、逆に8月10日は3回目測定まで差が広がり、4回目で差が縮まり、5回目でまた開くというように、この両指数はゆらぎながら変動している。もしこれを、リアプノフ指数だけに限って見てみると8月7日から8月11日にわたっての測定値で、1回の測定群内のバラツキは各測定群間のバラツキとほぼ等しく、ゆらぎがある状態とはとても言えない。この状態は臨床的には最悪期を脱したとはいえ臨床症状からも、患者の自覚症状からも改善の兆しがほとんど見えない状態であった。しかしこのような両指数のダイナミックな変動が1ヶ月から2ヶ月続くあいだに、実施例1において示したように、患者Aの臨床症状と自覚症状は、完全に回復した。
このようなダイナミズムが改善の前兆であることは、これから述べる多くの臨床例からも支持されている。従ってリアプノフ指数だけの変動ではわからない両指数のダイナミズムをみることが薬剤の短期効果と長期効果の予測になることが明らかになった。
次に、どのぐらいのゆらぎがあれば良いかは、次の実施例4との比較からも明らかになる。
(実施例4)
第4の実施例として、第2の実施例と同じうつ病患者B(58歳男性)に関する判定例を示す。図26に示すように11月10日から12月1日までの測定を通じて、ほとんどゆらいでいない。11月10日ではリアプノフ指数は、−0.88,0.25,2.16,1.27,2.49であり、その時のエントロピー値は、4.20,4.56,5.05,4.78,4.96であった。図2のように重ねると、1群の測定値(2回から5回)の間で、全てで差があるのは、最初の2点のみであり、この差はエントロピー値で約0、25、リアプノフ指数値で約1であるが、11月10日から12月1日の測定にわたって完全に差がある測定群はない。
これに反して患者Aの場合、8月7日と8日の測定値を重ねた場合エントロピー値で約1、リアプノフ指数値で約4の差がある。2つの図を比べた場合の図1の見た目のダイナミックな変動は、実際の数字にすると上記のようになるが、ゆらぎのある、なしにとってのもう1つの判断は時間的な変動の方向性があるかどうかにかかっている。この例では、患者Aが1日又は2日の測定群間で、変動の方向性が大きくなる方向と、小さくなる方向を示したが、患者Bでは測定群間でこのような方向性は全く観察されなかった。即ち、患者Aで見られたレベルのゆらぎはなかったということになる。上記したように、患者Aは、9月から10月にかけて徐々に服用薬剤を減量し、10月には医師側の判定も患者Aの自覚症状も完全に回復した。10月2日から10月31日の両指数の動きを図3に示す。
図28は図25(8/7−8/11)、図27(10/2−10/31)のリアプノフ指数を比較したものであるが、図25が0〜2の間の変動であったのに対して、図27は約0〜6の間の変動になっており、絶対値(平均値)としてのリアプノフ指数の上昇がみられる。一方、同じ時期のエントロピー値は、図25のおおむね4.5〜5.5の変動に対して、図27はおなじ領域で全体的に低くなっていることがわかる。患者Bはこの測定の3ヶ月後も臨床症状の変化はなかった。
以上の第3及び第4の実施例からも、第1及び第2の実施例と同様に、生体はカオス性の指標であるリアプノフ指数とエントロピーを対称的に変化させることで、単なる分子集合の非平衡開放系とは異なっており、この性質が生命の健全性を示すバロメーターとなっていることが分かる。
以上述べたことから言えることは、薬剤が効果があるかどうかは投薬後数時間から数日又は後に述べる例では数10分後のリアプノフ指数とエントロピーの対称的なダイナミズムが観察できるかどうかで、判断でき、長期的な効果もこのダイナミズムを保てば両指標の絶対値の正常化として判断出来る。
これとは別に、図29に示す患者Bのリアプノフ指数は、基線の動揺を除去するためのハイパスフィルター(1ヘルツ)(前述のChaos Theory Tamed,p153)をかける前の値を示しており、1回の測定群内の値でも0に近い値から10以上と著しい変動を示している。単なるゆらぎの大きさでは、これ以上の大きな変動は考えられない程の大きなゆらぎでありフィルターをかけた後の減少幅は正常値に比較すると異常に大きい。この減少がこの患者のカオス性の異常を代表しており医師の診断とは逆にこの患者の***病的な傾向を表している。このデータはもう一方で、単なるリアプノフ指数だけのゆらぎでは健全性の指標にならないことを示している。患者Aのフィルター処理をしたグラフは、ほぼフィルターなしのグラフと対称的なダイナミズムと絶対値の改善の点では一致していることからも、この減少が患者Bの状態を的確に表現するものといえる。
また図15は、患者Aと患者Bのエントロピーとリアプノフ指数(λ1)の変化の推移を示し、エントロピーとリアプノフ指数(λ1)の差(斜線部分)が変動している患者Aはアモキサピン(25mg×3)及びイミプラミン(10mg×6)の併用が有効であることを示し、患者Bに関してはエントロピーとリアプノフ指数(λ1)の差(斜線部分)の変動が少なく、クロキサゾラム(Cloxazolam)1mg及びアモキサピン25mg×2の投与が有効でないことを示す。
産業上の利用可能性
本発明の生体状態の判定方法によれば、ヒトなどの被験体の測定時点での生体の精神的或いは身体的状態、例えば疾患の有無、疾患がある場合にはその程度、疲労度などを正確に判定することができる。また、本発明の判定方法を用いれば、薬物投与、運動、外部からの刺激(音楽、騒音、会話、高温ないし低温、湿度、明暗(照度)など)を与える行為の前後で生体状態を測定することで、これらの行為の生体状態に対する影響を判定することができる。このような判定方法は、医師による病気の診断支援システム、薬物選択、投与スケジュールの決定、ガンなどの疾患の早期診断などに有用である。
また、判定処置をニューラルネットワークによって実行させ、生体状態に関する信頼できるデータを新しく取得する毎に、そのデータを用いて学習させ、ニューラルネットワークの内部状態を修正することによって、判定精度をさらに向上させることができる。
本発明の方法によれば、生体状態が正常(改善)の方向に向かうのか、異常(悪化)の方向に向かうのかを判定できるので、これにより成人病等の慢性疾患、うつ病(躁鬱病)、精神***病、ノイローゼなどの精神神経疾患、登校ないし出社拒否(引きこもり)などの疾患ないし問題行動を予防ないし改善するのに威力を発揮し、医療費を含めた生体状態の悪化に伴う社会的コストを低減することができる。
本発明によれば、例えば薬物投与、透析、医療器具の使用などの治療手段の有効性に関し、治療手段を実施する初期の段階において個別の被験体に対する有効性を判定することができ、有効な治療手段の早期選択を促し、患者の利益と医療コストの低減を計ることができる。
本発明によれば、判定基準を算出するための母集団を変更することによって、種々の生体状態の判定に対応することができ、種々の分野において有効に利用され得る。また、同じ生体状態の判定を行う場合において、国、地域、時代などによってその基準が変化することがあるが、本発明は、判定基準を算出するための母集団を変更することによってこれに柔軟に対応することができる。
本発明によれば、多数の平均値を正常値とした従来法と異なり、特定データの絶対値と他データとの相対関係を組み合わせることで、一人一人異なるテイラーメイド診断を可能とし、信頼性の高い有効性の判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る生体状態の判定装置の概略構成を示すブロック図である。
図2は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるM−symmetry法を使用する生体状態の判定方法において、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
図3は、最大リアプノフ指数とエントロピーとを軸として2次元平面にプロットした図(Mirror対称図)である。
図4は、ステップ28によって得られるプロット図の一例を示す。
図5は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるウェーブレット変換を使用する生体状態の判定方法において、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
図6は、スケーリング係数S2(λ1)の時系列波形とS2(E)の時系列波形とをそれぞれ同じレベルで重ねたグラフの画像データ、及び各々のウェーブレット係数W2(λ1)の時系列波形とW2(E)の時系列波形とをそれぞれ同じレベルで重ねたグラフの画像データを示す。
図7は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるパワーロウ(Power−law)即ちDFA解析法を使用する生体状態の判定方法における、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
図8は、図6と同じ投薬実験データのマクロ的なDFA解析の結果を示している。
図9は、図1に示した生体状態の判定装置において実行されるヒグチフラクタル次元を使用する生体状態の判定方法において、CPU11が行う処理を示すフローチャートである。
図10は、ヒグチフラクタル次元DのD1及びD2を表す。
図11は、一定のF値の各々に対応する直線を示したグラフである。
図12は、ステップ56の比較結果を示す。
図13は、ステップ57において作成されるグラフを示す。
図14は、エントロピー及びリアプノフ指数と、生・死の状態の関係を示す概念図である。
図15は、患者Aと患者Bのエントロピーとリアプノフ指数(λ1)の変化の推移を示す。縦軸はリアプノフ指数を示し、横軸は測定日を示す。
図16は、各年齢、性別の16人の被験体に対して、一番好きな音楽を聴いている状態で、脈波の時系列データを採取し、DFA解析を行って得られた自己相似次元αのグラフを示している。
図17及び図18は、被験体に絵を見せた場合、又は計算させた場合における、左右手の指尖脈波を測定し、DFA解析を行って得られた結果を示す。
図19は、ウェーブレット多重解像度分解を行いスケーリング係数、ウェーブレット係数を計算し、その結果を重ねて作成したグラフである。図10に示したように矢印の部分に投薬による効果を表す臨界点が見られる。
図20及び図21は、それぞれDFA解析におけるミクロ的なDFA解析、マクロ的なDFA解析を行った結果を示している。
図22は、患者Bに関する測定データを、第2の実施の形態の方法で、リアプノフ指数とエントロピーのウェーブレット多重解像度分解を行いスケーリング係数、ウェーブレット係数を計算し、その結果を重ねてグラフにしたものである。
図23及び図24は、それぞれ第3の実施の形態のミクロ的なDFA解析、マクロ的なDFA解析を行った結果を示している。
図25は、うつ病患者Aの8月7日〜8月11日のリアプノフ指数とエントロピーの値を示す。図25中、◆はエントロピーを示し、●はリアプノフ指数を示す。また、横軸は測定日を示し、縦軸はエントロピー(3〜7)及びリアプノフ指数(−4〜12)を示す。
図26セパゾン(Cloxazolam)1mg及びアモキサピン25mg×2を投与したときの、うつ病患者Bの11月10日、17日、20日、27日、29日及び12月1日のリアプノフ指数とエントロピーの値を示す。図26中、▲はエントロピーを示し、◆はリアプノフ指数を示す。また、横軸は測定日を示し、縦軸はエントロピー(3.5〜7.5)及びリアプノフ指数(−2.0〜12.0)を示す。
図27は、患者Aの10月2日、13日、19日、25日及び31日のリアプノフ指数とエントロピーの値を示す。図27中、◆はエントロピーを示し、●はリアプノフ指数を示す。
図28は、患者Aの8月7日〜8月11日のリアプノフ指数(●)と10月2日、13日、19日、25日及び31日のリアプノフ指数(◆)を示す。
図29は、患者Bのハイパスフィルター(1ヘルツ)をかける前のリアプノフ指数を示す。
図30は、ミラー値による正常、DP(うつ病)、SP(***病)の分析結果を例示する。
Claims (24)
- 被験体の生体信号の時系列データから得られるカオス性を表現可能な指標である(1)リアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、(2)ヒグチフラクタル次元を用いることを包含する生体状態の判定方法。
- 被験体の生体信号の時系列データから得られるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性を分析する工程、及び該相関性及び/又は対称性の分析結果に基づき生体状態を判定する工程を包含する請求項1に記載の方法。
- 前記リアプノフ指数と前記エントロピーの相関性をDFA解析法(Detrended Fluctuation Analysis)を用いて分析する請求項1に記載の方法。
- 前記DFA解析法が、マクロDFA解析を行う工程、及びミクロDFA解析を行う工程を包含する請求項1に記載の方法。
- 前記リアプノフ指数と前記エントロピーの対称性をM−symmetry法、ウェーブレット(Wavelet)解析法及びミラー値(Mirror Value)に基づく方法からなる群から選ばれるいずれかの方法を用いて分析する請求項1に記載の方法。
- 被験体の生体信号の時系列データから複数の前記リアプノフ指数及び前記エントロピーを計算し、この複数のリアプノフ指数の中の最大値を最大リアプノフ指数として決定する工程と、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーに対応するオフセット値(Os)を決定する工程と、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーからミラー値を計算する工程と、
前記ミラー値及び前記オフセット値から重み付きリアプノフ指数を計算する工程とを包含する請求項1に記載の方法。 - 前記ヒグチフラクタル次元として、2つのヒグチフラクタル次元の比(D1/D2)及び/又はF−定数を用いる請求項1に記載の方法。
- 被験体の生体信号の時系列データをF−symmetry法を用い、ヒグチフラクタル次元の比(D1/D2)を算出する工程をさらに含み、リアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性とヒグチフラクタル次元の比(D1/D2)に基づき生体状態を判定する請求項1に記載の方法。
- 前記生体信号の時系列データが脈波から得られる請求項1に記載の方法。
- 前記生体状態が、被験体の疾病及び非疾病の精神的状態或いは身体的状態である請求項1に記載の方法。
- 請求項1に記載の方法に従いある時点での生体状態を判定する工程、生体状態を変化させる可能性のある行為を行う工程、該行為の後に生体信号の時系列データを分析してリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性を測定する工程、前記行為の前後におけるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性を比較して前記行為の生体に対する影響がポジティブであるかネガティブであるか中立(不変)であるかを判定する工程を包含する生体状態に影響を及ぼす可能性のある行為の有効性の判定方法。
- 前記行為が、薬物投与、透析、医療器具の使用(例えば、放射線ないしレーザー照射、電気的・磁気的パルスによる治療、リハビリなど)、生体の状態を改善する可能性のある食物の摂取などの疾患の予防又は治療行為、身体的又は精神的刺激の付与からなる群から選ばれる請求項11に記載の方法。
- 被験体の生体信号の時系列データから複数の前記リアプノフ指数及び前記エントロピーを計算し、この複数のリアプノフ指数の中の最大値を最大リアプノフ指数として決定する工程と、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーからスケーリング係数及びウェーブレット係数を計算する工程とを含む請求項1に記載の方法。 - 被験体の生体信号の時系列データの計算結果に対してニューラルネットワークによって判定を行う請求項1又は第7項に記載の方法。
- 被験体の生体信号の時系列データを基に該生体の状態を判定する生体状態の判定装置であって、
処理部及び検出部を備え、
前記処理部は、前記検出部を制御して前記時系列データを採取し、該時系列データからカオス性を表現可能な指標であるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、ヒグチフラクタル次元を計算し、該計算結果を使用して判定を行うことを特徴とする生体状態の判定装置。 - 被験体の生体信号の時系列データを採取する測定装置と、前記時系列データを基に生体状態を判定する判定装置とを備え、
前記測定装置は、通信回線を介して前記時系列データを前記判定装置に伝送し、
前記判定装置は、伝送された前記時系列データからカオス性を表現可能な指標であるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、ヒグチフラクタル次元を計算し、該計算結果を使用して判定を行うことを特徴とする生体の状態判定システム。 - 被験体の生体信号の時系列データを採取する測定装置と、前記時系列データを基に生体状態を判定する判定装置とを備え、
前記測定装置は、前記時系列データからカオス性を表現可能な指標であるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、ヒグチフラクタル次元を計算し、通信回線を介して前記計算結果を前記判定装置に伝送し、
前記判定装置は、伝送された前記計算結果を使用して判定を行うことを特徴とする生体の状態判定システム。 - 前記判定装置は、前記判定の結果を前記測定装置に伝送する請求項16または17に記載のシステム。
- 被験体の生体信号の時系列データを基に該被験体の状態を判定する生体状態の判定装置に、
前記時系列データからカオス性を表現可能な指標であるリアプノフ指数とエントロピーの相関性及び/又は対称性、及び/又は、ヒグチフラクタル次元を計算する機能を実現させることを特徴とする生体の状態判定プログラム。 - 複数の前記リアプノフ指数の中の最大値を最大リアプノフ指数として決定する機能、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーに対応するオフセット値を決定する機能、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーからミラー値を計算する機能、及び
前記ミラー値及び前記オフセット値から重み付きリアプノフ指数を計算する機能をさらに実現させる請求項19に記載のプログラム。 - 複数の前記リアプノフ指数の中の最大値を最大リアプノフ指数として決定する機能、
前記最大リアプノフ指数及び前記エントロピーからスケーリング係数及びウェーブレット係数を計算する機能をさらに実現させる請求項19に記載のプログラム。 - 前記リアプノフ指数及び前記エントロピーに関してマクロDFA解析及びミクロDFA解析を行う機能をさらに実現させる請求項19に記載のプログラム。
- 前記時系列データからヒグチフラクタル次元及びF−定数を計算する機能を実現させる請求項19に記載の生体状態の判定プログラム。
- 請求項19〜23の何れかの項に記載の判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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