JPWO2002027331A1 - 酸化還元反応を用いた測定方法 - Google Patents
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Abstract
試料中の測定対象物を酸化還元反応を用いて測定する方法であって、信頼性に優れる測定値が得られる測定方法を提供する。前記酸化還元反応に先立ち、界面活性剤存在下、試料にテトラゾリウム化合物を添加して、前記試料中に含まれるヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物の還元物質としての影響を排除し、その後、前記測定対象物由来の還元物質または酸化物質を発生させ、この量を酸化還元反応により測定し、この測定値から前記測定対象物の量を決定する。この方法によれば、界面活性剤とヘモグロビンとの混在による濁りを防止できるため、図1に示すように、濁りによる吸光度の上昇が抑制される。前記界面活性剤としては、ポリオキシエチレンエーテル等が使用できる。
Description
技術分野
本発明は、試料中の測定対象物を、酸化還元反応を用いて測定する方法に関する。
背景技術
従来から、酸化還元反応を利用して、試料中の測定対象物の量を測定することは、広く実施されており、例えば、生化学分析や臨床検査等における糖化タンパク質の測定にも適用されている。
例えば、血液中の糖化タンパク質、特に赤血球中の糖化ヘモグロビンは、生体血糖値の過去の履歴を反映しているため、糖尿病診断や治療等における重要な指標とされている。このような赤血球中の糖化タンパク質は、前記酸化還元反応を用いて、例えば、以下に示すようにして測定されている。
まず、赤血球を溶血させた試料を調製し、この溶血試料をフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(以下、「FAOD」という)で処理し、糖化タンパク質の糖化部分に作用させて過酸化水素を発生させる。この過酸化水素量は、前記糖化タンパク質量に対応する。そして、この試料に、ペルオキシダーゼ(以下、「POD」という)および還元剤を添加し、前記PODを触媒として前記過酸化水素と前記還元剤との間で酸化還元反応させる。この時、前記還元剤として、酸化されることにより発色する発色性基質を用いれば、その発色の測定により前記過酸化水素量を測定でき、この結果、赤血球中の糖化タンパク質量を知ることができる。
しかし、血液中には、通常、アスコルビン酸(AsA)、ビリルビン等の各種還元物質が存在し、赤血球中には、さらに、グルタチオン(GSH)等の各種還元物質が存在する。これらの還元物質により、例えば、発生させた前記過酸化水素が還元されたり、前記酸化還元反応が阻害されたり、前記発色性基質が酸化により発色しても、再度還元され退色するおそれがある。このため、赤血球中の糖化タンパク質量を正確に測定することが困難であるという問題があった。
また、試料ごとによって、含まれる前記還元物質の濃度も一定ではないため、測定精度が劣るという問題もあった。
このような問題を回避するために、例えば、種々の酸化剤を前記試料に添加するという方法がある。例えば、特開昭56−151358号公報には、酸化剤としてヨウ素酸や過ヨウ素酸等のハロゲン酸化物を用いる方法が開示されており、特開昭57−13357号公報、特開昭57−161650号公報、特開昭59−193354号公報、特開昭62−169053号公報、特開平3−30697号公報には、酸化剤としてコバルト、鉄、セリウム等の金属錯体を用いる方法が開示されている。
発明の開示
しかしながら、このように改良された従来の方法でも、試料によっては測定精度が十分に向上しない場合もある。また、前述のように、血液中の糖化タンパク質は、糖尿病診断や治療等における重要な指標とされているため、これを測定するための酸化還元反応を用いた測定方法においても、更なる測定精度の向上が望まれている。
そこで、本発明の目的は、試料中の測定対象物を、酸化還元反応を用いて測定する方法であって、信頼性に優れる測定値が得られる測定方法の提供である。
前記目的を達成するために、本発明の測定方法は、試料中の測定対象物を酸化還元反応を用いて測定する方法であって、前記酸化還元反応に先立ち、界面活性剤の存在下、試料にテトラゾリウム化合物を添加して前記試料中の還元物質の影響を排除し、その後、前記測定対象物由来の還元物質または酸化物質の量を酸化還元反応により測定し、この測定値から前記測定対象物の量を決定することを特徴とする。前記テトラゾリウム化合物とは、テトラゾール環構造を有する化合物である。なお、本発明において、「測定対象物由来の還元物質または酸化物質」とは、測定対象物そのもの、もしくは、その中の酸化還元物質、または測定対象物から酸化還元酵素等を用いて発生した酸化還元物質の双方を意味する。
本発明者らは、前記従来の方法では、前記GSHやAsAのような低分子量還元物質の影響は排除されるが、タンパク質等のような高分子量還元物質による影響が排除されておらず、一方、前記テトラゾリウム化合物で処理すれば、前記低分子量還元物質だけでなく、前記高分子量還元物質、特にヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物(以下、両者あわせて「ヘモグロビン」という)の還元物質としての影響を排除できることを見出した。なお、これについて、本出願人は別途出願している(特開2000−210100号公報)。しかしながら、この方法では、例えば、ヘモグロビン等の高分子量還元物質による影響も排除されたにもかかわらず、十分に測定精度が向上しないこと、また、よりいっそうの測定精度の向上が望まれていることから、本発明者らは、さらに鋭意研究を行った。その結果、前記テトラゾリウム化合物の処理によって、例えば、ヘモグロビン等の高分子量還元物質による影響は排除できるが、前記両者を混在させることにより、反応液に濁りが生じることを突き止め、さらに、この濁りの発生を界面活性剤によれば防止できることを見出し、本発明に到達した。このような本発明の測定方法によれば、テトラゾリウム化合物によって還元物質の影響を排除し、かつ、前記テトラゾリウム化合物処理による濁りの発生も抑制するため、還元物質および濁りの両方による測定の妨害を防止でき、よりいっそう高精度な測定が可能となる。このため、本発明の測定方法は、前述のような臨床医療等における各種検査に有用であり、特に糖化ヘモグロビンの測定に適用すれば、糖尿病診断等の指標としての信頼性も向上する。
本発明の測定方法において、前記試料がヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物を含む試料であって、前記試料中のヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物の還元物質としての影響を排除することが好ましい。特に、試料中のヘモグロビンの還元物質としての影響を排除し、かつ前記両者による濁りも排除できるからである。したがって、後述のような血液試料について有用な測定であるといえる。
本発明の測定方法において、試料にテトラゾリウム化合物を添加してから、濁りが発生した混合液にさらに界面活性剤を添加してもよいが、濁りの発生自体を抑制できることから、前記両者を同時に添加したり、予め界面活性剤を添加した試料にテトラゾリウム化合物を添加することが好ましい。
本発明の測定方法において、前記酸化還元反応による測定が、前記反応により生じた発色物質の吸光度測定であることが好ましい。
前記吸光度測定を行う場合、通常、二波長測定が主流である。前記二波長測定は、例えば、測定する対象物(例えば、発色性基質等の発色物質)の極大吸収を示す波長を主波長として前記対象物を測定し、さらに前記主波長と異なる波長を副波長とし、電気的ノイズ、試料の濁り、光量の変化等を測定して、前記主波長における測定値を校正する。したがって、副波長は、例えば、他の混在する物質が吸収を示さない波長であり、かつ、主波長とは約80nm以上離して設定することが好ましい。そこで、本発明者らはさらに研究を重ねた結果、界面活性剤非存在下でHbをテトラゾリウム化合物処理すると、これらの反応物により約700〜900nm、特に約760nm〜900nmの波長に吸収が見られるようになり、この波長での測定が困難であるが、界面活性剤存在下でテトラゾリウム化合物処理すれば、前記波長では吸収が見られないことを見出した。したがって、この約700nm〜900nmの吸収波長に、前記発色物質の測定波長(主波長や副波長)を設定すれば、前記濁りを防止することだけでなく、さらにHbの吸収による影響を受けることなく、吸光度測定を精度よく行うことができる。
本発明の測定方法において、前記発色物質の吸光度測定の測定波長としては、650〜900nmの範囲が好ましく、より好ましくは650〜800nmの範囲であり、特に好ましくは、690〜760nmの範囲である。また、前記波長を主波長とする場合、副波長は、前記主波長よりも大きいことが好ましく、例えば、730〜900nmの範囲が好ましく、より好ましくは800〜900nmの範囲であり、特に好ましくは、800〜850nmの範囲である。
本発明の測定方法において、前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、アルキル硫酸塩および高分子化合物からなる群から選択された少なくとも一つの界面活性剤であることが好ましい。
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等があげられ、好ましくは、ポリオキシエチレンエーテルである。
前記ポリオキシエチレンエーテル[CLHM−O−(CH2CH2O)NH]は、ポリオキシエチレン鎖と炭化水素鎖とがエーテル結合しており、前記炭化水素鎖としては、例えば、アルキル基、アルキルフェニル基等があげられる。前記ポリオキシエチレン鎖の重量平均重合度(N)は8〜23の範囲であり、他方の炭化水素鎖の炭素数(L)は8〜18の範囲であることが好ましく、より好ましくは前記重量平均重合度(N)が8〜15の範囲であり、炭化水素鎖の炭素数(L)が8〜16の範囲であり、特に好ましくは前記重量平均重合度(N)が8〜10の範囲であり、炭化水素鎖の炭素数(L)が8〜14の範囲である。また、前記炭化水素鎖は、例えば、直鎖でもよく、分岐鎖を有していてもよい。前記ポリオキシエチレンエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレン−p−t−オクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール(10)ラウリルエーテル、ポリエチレングリコール(9)ラウリルエーテル等があげられる。
前記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等があげられる。
前記アルキル硫酸塩としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸ナトリウム等があげられる。
前記高分子化合物としては、例えば、水溶性ゼラチン、プルラン等の生体高分子化合物や、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子化合物が使用できる。ポリエチレングリコールの重量平均重合度は、例えば、100〜30,000の範囲であり、好ましくは600〜6000の範囲である。プルランとは、多糖類であり、マルトトリオース残基がα1−6結合で連なった水溶性α−グルカンをいう。
本発明の測定方法は、前記界面活性剤を、試料1mLあたり0.05〜5mmolの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜3mmolの範囲であり、より好ましくは0.2〜1.5mmolの範囲である。また、前記界面活性剤を、テトラゾリウム化合物1molあたり0.2〜15molの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜10molの範囲であり、より好ましくは0.7〜5molの範囲である。
本発明の測定方法において使用する前記テトラゾリウム化合物としては、例えば、テトラゾール環の少なくとも2箇所に環構造置換基を有することが好ましく、より好ましくは、3箇所に環構造置換基を有する構造である。
前記テトラゾリウム化合物が、前述のように、前記テトラゾール環の少なくとも2箇所に環構造置換基を有する場合、前記置換基を、前記テトラゾール環の2位および3位に有することが好ましい。また、テトラゾリウム化合物が3箇所に環構造置換基を有する場合は、前記置換基を、前記テトラゾール環の2位、3位および5位に有することが好ましい。
また、少なくとも2つの環構造置換基の環構造がベンゼン環であることが好ましい。また、ベンゼン環以外の環構造置換基としては、例えば、環骨格にSまたはOを含み、かつ共鳴構造である置換基があげられ、例えば、チエニル基、チアゾイル基等である。
前記テトラゾリウム化合物が、テトラゾール環の少なくとも3箇所に環構造置換基を有し、前記環構造置換基のうち少なくとも2つの環構造置換基の環構造がベンゼン環であることが好ましい。
少なくとも1つの環構造置換基が官能基を有することが好ましく、前記官能基の数が多いことがより好ましい。
前記官能基としては、電子吸引性の官能基が好ましく、例えば、ハロゲン基、エーテル基、エステル基、カルボキシ基、アシル基、ニトロソ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、スルホ基等があげられる。この他にも、例えば、ヒドロペルオキシ基、オキシ基、エポキシ基、エピジオキシ基、オキソ基等の酸素を含む特性基や、メルカプト基、アルキルチオ基、メチルチオメチル基、チオキソ基、スルフィノ基、ベンゼンスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、p−トリルスルホニル基、トシル基、スルファモイル基、イソチオシアネート基等の硫黄を含む特性基等があげられる。これらの電子吸引性官能基の中でも、好ましくは、ニトロ基、スルホ基、ハロゲン基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基である。また、前記電子吸引性の官能基の他に、例えば、フェニル基(C6H5−)、スチリル基(C6H5CH=CH−)等の不飽和炭化水素基等もあげられる。なお、前記官能基は、解離によりイオン化していてもよい。
前記テトラゾリウム化合物は、テトラゾール環の2位および3位にベンゼン環を有し、前記ベンゼン環のうち少なくとも一方が、ハロゲン基、カルボキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、スルホ基、メトキシ基およびエトキシ基からなる群から選択された少なくとも1つの官能基を有することが好ましい。なお、前記両方のベンゼン環が、前記官能基を有してもよい。前記ベンゼン環において、いずれの箇所(ortho−、meta−、pra−)に前記官能基を有してもよい。また、官能基の数も特に制限されず、同じ官能基を有しても、異なる官能基を有してもよい。
前記テトラゾリウム化合物は、例えば、前記テトラゾール環の2位、3位および5位にベンゼン環構造置換基を有する化合物として、例えば、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウム塩、3,3’−(1,1’−ビフェニル−4,4’−ジル)−ビス(2,5−ジフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、3,3’−[3,3’−ジメトキシ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジル]−ビス[2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウム塩]、2,3−ジフェニル−5−(4−クロロフェニル)テトラゾリウム塩、2,5−ジフェニル−3−(p−ジフェニル)テトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−(p−ジフェニル)テトラゾリウム塩、2,5−ジフェニル−3−(4−スチリルフェニル)テトラゾリウム塩、2,5−ジフェニル−3−(m−トリル)テトラゾリウム塩および2,5−ジフェニル−3−(p−トリル)テトラゾリウム塩等があげられる。
また、前記テトラゾリウム化合物は、前述のような化合物には制限されず、この他に、前記テトラゾール環の2箇所にベンゼン環構造置換基および1箇所にその他の環構造置換基を有する化合物も使用でき、例えば、2,3−ジフェニル−5−(2−チエニル)テトラゾリウム塩、2−ベンゾチアゾイル−3−(4−カルボキシ−2−メトキシフェニル)−5−[4−(2−スルホエチル カルバモイル)フェニル]−2H−テトラゾリウム塩、2,2’−ジベンゾチアゾイル−5,5’−ビス[4−ジ(2−スルホエチル)カルバモイルフェニル]−3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ジテトラゾリウム塩および3−(4,5−ジメチル−2−チアゾイル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウム塩等があげられる。
また、前記テトラゾール環の2箇所にベンゼン環構造置換基および1箇所に環構造でない置換基を有するテトラゾリウム化合物も使用でき、例えば、2,3−ジフェニル−5−シアノテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−カルボキシテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−メチルテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−エチルテトラゾリウム塩等があげられる。
前述のテトラゾリウム化合物の中でも、前述のように、環構造置換基を3つ有する化合物が好ましく、より好ましくは、環構造がベンゼン環である置換基を3つ有し、かつ電子吸引性官能基を多く有するものであり、特に好ましくは、2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩である。
なお、このようなテトラゾリウム化合物は、例えば、塩でもよいし、イオン化された状態等であってもよい。また、一種類には限られず、二種以上を併用してもよい。
本発明の測定方法において、前記テトラゾリウム化合物の添加量は、特に制限されず、例えば、試料の種類や前記試料に含まれるヘモグロビンやその他の還元物資の量により適宜決定できる。具体的には、例えば、試料1μL当たり、前記テトラゾリウム化合物を、0.001〜100μmolの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.005〜10μmolの範囲、特に好ましくは、0.01〜1μmolの範囲である。
本発明の測定方法において、前記試料が全血の場合、前記テトラゾリウム化合物を、全血1μL当たり、0.001〜10μmolの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.005〜5μmolの範囲、特に好ましくは0.01〜2μmolの範囲である。なお、全血の血球濃度は、通常、50重量%と推定できる。具体的には、前記テトラゾリウム化合物が2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩の場合は、全血1μL当たり、0.02〜10μmolの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmolの範囲、特に好ましくは0.1〜2μmolの範囲である。
なお、前記界面活性剤の添加量は、テトラゾリウム化合物の添加量に応じて、例えば、前述のようなモル比となるように調整できる。
本発明において、前述のような酸化還元反応により生じた発色物質の吸光度測定とは、例えば、酸化還元酵素を用いた前記還元物質または酸化物質と発色性基質との酸化還元反応により、発色した前記発色性基質(すなわち発色物質)の吸光度測定であることが好ましい。
具体的には、前記測定対象物由来の酸化物質が過酸化水素であり、前記発色性基質として酸化により発色する発色性基質を使用し、前記過酸化水素と前記発色性基質とを酸化還元酵素によって酸化還元反応させることが好ましい。
前記酸化還元酵素としては、特に制限されないが、例えば、PODが好ましく、前記酸化により発色する発色性基質としては、高感度に検出可能であることから、例えば、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウムが好ましい。
本発明の測定方法において、前記測定試料は、特に制限されないが、全血、血漿、血清、血球等の血液試料の他に、例えば、尿、髄液、唾液等の生体試料や、ジュース等の飲料水、醤油、ソース等の食品類等もあげられる。また、血球内成分を測定する場合は、例えば、全血をそのまま溶血させたものを試料としてもよいし、全血から赤血球を分離して、前記赤血球を溶血させたものを試料として用いてもよい。
本発明の測定方法において、前記測定対象物は、前記酸化還元反応を利用するものであれば特に制限されないが、例えば、全血中成分、赤血球内成分、血漿中成分、血清中成分等もがあげられ、好ましくは赤血球内成分である。また、具体的には、例えば、糖化ヘモグロビンや糖化アルブミン等の糖化タンパク質、糖化ペプチド、糖化アミノ酸、グルコース、尿酸、コレステロール、クレアチニン、サルコシン、グリセロール等があげられ、より好ましくは糖化タンパク質であり、特に好ましくは糖化ヘモグロビンである。
本発明の測定方法において、測定対象物が糖化タンパク質の場合、前記糖化タンパク質の糖化部分をFAODで酸化分解することにより過酸化水素を生成させることが好ましい。また、測定対象物が前記糖化ペプチド、糖化アミノ酸の場合も、同様にFAODを作用させることが好ましい。なお、前記糖化タンパク質や糖化ペプチドは、必要に応じて、前記FAOD処理前に、プロテアーゼ処理することが好ましい。
前記FAODとしては、下記式(1)に示す反応を触媒するFAODであることが好ましい。
前記式(1)において、R1は、水酸基もしくは糖化反応前の糖に由来する残基(糖残基)を示す。前記糖残基(R1)は、反応前の糖がアルドースの場合はアルドース残基であり、反応前の糖がケトースの場合、ケトース残基である。例えば、反応前の糖がグルコースの場合は、アマドリ転位により、反応後の構造はフルクトース構造をとるが、この場合、糖残基(R1)は、グルコース残基(アルドース残基)となる。この糖残基(R1)は、例えば、
−[CH(OH)]n−CH2OH
で示すことができ、nは、0〜6の整数である。
前記式(1)において、R2は、特に制限されないが、例えば、糖化アミノ酸、糖化ペプチドまたは糖化タンパク質の場合、α−アミノ基が糖化されている場合と、それ以外のアミノ基が糖化されている場合とで異なる。
前記式(1)において、α−アミノ基が糖化されている場合、R2は、下記式(2)で示すアミノ酸残基またはペプチド残基である。
前記式(2)において、R3はアミノ酸側鎖基を示す。また、R4は水酸基、アミノ酸残基またはペプチド残基を示し、例えば、下記式(3)で示すことができる。下記式(3)において、nは、0以上の整数であり、R3は、前述と同様にアミノ酸側鎖基を示す。
また、前記式(1)において、α−アミノ基以外のアミノ基が糖化されている(アミノ酸側鎖基が糖化されている)場合、R2は下記式(4)で示すことができる。
前記式(4)において、R5は、アミノ酸側鎖基のうち、糖化されたアミノ基以外の部分を示す。例えば、糖化されたアミノ酸がリジンの場合、R5は
−CH2−CH2−CH2−CH2−
であり、
例えば、糖化されたアミノ酸がアルギニンの場合、R5は、
−CH2−CH2−CH2−NH−CH(NH2)−
である。
また、前記式(4)において、R6は、水素、アミノ酸残基またはペプチド残基であり、例えば、下記式(5)で示すことができる。なお、下記式(5)において、nは0以上の整数であり、R3は、前述と同様にアミノ酸側鎖基を示す。
また、前記式(4)において、R7は、水酸基、アミノ酸残基またはペプチド残基であり、例えば、下記式(6)で示すことができる。なお、下記式(6)において、nは0以上の整数であり、R3は、前述と同様にアミノ酸側鎖基を示す。
発明を実施するための最良の形態
つぎに、本発明の測定方法について、血球中の糖化タンパク質を測定する例をあげて説明する。
まず、全血をそのまま溶血し、または全血から遠心分離等の常法により分離した血球画分を溶血し、溶血試料を調製する。この溶血方法は、特に制限されず、例えば、界面活性剤を用いる方法、超音波による方法、浸透圧の差を利用する方法等が使用でき、この中でも前記界面活性剤を用いる方法が好ましい。
溶血用の界面活性剤としては、特に制限されないが、操作の簡便性の点から、後述するテトラゾリウム化合物による前処理と同様の界面活性剤を使用することが好ましい。前記溶血処理の条件は、通常、処理溶液中の血球濃度が、1〜10体積%の場合、前記処理溶液中の濃度が0.01〜5重量%になるように前記界面活性剤を添加し、室温で、数秒(約5秒)〜10分程度攪拌すればよい。
つぎに、界面活性剤存在下において、前記溶血試料に対し前記テトラゾール環構造を有するテトラゾリウム化合物を添加し、前記溶血試料の前処理を行なう。
前記界面活性剤としては、前述のような界面活性剤が使用できる。具体的には、例えば、ポリオキシエチレン−p−t−オクチルフェニルエーテルである市販のTriton系界面活性剤等、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルである市販のTween系界面活性剤等、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである市販のBrij系界面活性剤等が使用できる。この他に、例えば、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル、商品名Nikkol BL−9EX(ポリオキシエチレンの重量平均重合度Nが9:和光純薬工業社製)等のようなポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、商品名Tergitol NPX(ポリオキシエチレンの重量平均重合度Nが約10.5:ナカライテスク社製)および商品名Tergitol NP−40(ポリオキシエチレンの重量平均重合度Nが20:ナカライテスク社製)等のようなポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等も使用できる。
前記界面活性剤の添加割合は前述と同様である。具体的には、前処理溶液中の血球濃度が、1〜10体積%の場合、界面活性剤濃度2〜150mmol/Lの範囲であり、好ましくは5〜100mmol/Lの範囲であり、特に好ましくは10〜50mmol/Lの範囲である。なお、前記溶血試料の調製(溶血処理工程)において、この前処理と同様の界面活性剤を使用する場合、前記溶血処理工程において、予め、この前処理に必要な濃度になるように前記界面活性剤を添加しておいてもよい。また、溶血処理前の試料に、テトラゾリウム化合物および前記界面活性剤を共に添加して、溶血処理と前処理とを同時に行ってもよい。
前記テトラゾリウム化合物としては、前述のようなものが使用でき、その添加割合は、例えば、前処理溶液中の血球濃度が、1〜10体積%の場合、濃度0.02〜2000mmol/Lの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜1000mmol/Lの範囲、特に好ましくは0.4〜200mmol/Lの範囲である。具体的に、前記テトラゾリウム化合物が2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩の場合、濃度0.02〜80mmol/Lの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜20mmol/Lの範囲、特に好ましくは0.2〜15mmol/Lの範囲である。
前記テトラゾリウム化合物は、そのまま使用してもよいが、操作の簡便性や処理効率等の点から、溶媒に溶解したテトラゾリウム化合物溶液として使用することが好ましい。前記溶液の濃度は、テトラゾリウム化合物の種類(例えば、分子量等)等により適宜決定でき、例えば、0.01〜120mmol/Lの範囲であり、好ましくは0.1〜50mmol/Lの範囲、より好ましくは0.2〜20mmol/Lの範囲である。前記溶媒としては、例えば、蒸留水、生理食塩水、緩衝液等が使用でき、前記緩衝液としては、例えば、後述の緩衝液等が使用できる。
この前処理は、通常、緩衝液中で行われる。前記緩衝液としては、例えば、アミン系緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、ならびにCHES、CAPSおよびCAPSO等のグッド緩衝液等が使用でき、好ましくはアミン系緩衝液およびCHES緩衝液である。前記アミン系緩衝液の緩衝剤としては、例えば、グリシン、エチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリスヒドロキシアミノメタン、トリエタノールアミン、グリシンアミド等があげられ、好ましくは、グリシン、グリシンアミド、トリエタノールアミンである。
前記緩衝液のpHは、pH7〜12の範囲が好ましく、より好ましくはpH8〜11の範囲であり、特に好ましくはpH8〜10の範囲である。
この前処理の条件は、特に制限されないが、通常、温度10〜37℃の範囲であり、処理時間10秒〜60分の範囲である。
つぎに、この前処理済み溶血試料に対し、プロテアーゼ処理を行う。これは、後の処理に使用するFAODを測定対象物の糖化部分に作用し易くするためである。
前記プロテアーゼとしては、例えば、セリンプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、メタロプロテイナーゼ等が使用でき、具体的には、メタロプロテアーゼ、トリプシン、プロテナーゼK、キモトリプシン、パパイン、ブロメライン、ズブチリシン、エラスターゼ、アミノペプチダーゼ、ペプシン等が使用できる。
また、糖化タンパク質が糖化ヘモグロビンの場合は、前記糖化Hbを選択的に分解する、ブロメライン、パパイン、ブタ膵臓由来トリプシン、メタロプロテイナーゼ、Bacillus subtillis由来のプロテアーゼ等が好ましく、より好ましくはメタロプロテイナーゼ、ブロメライン、パパインであり、特に好ましくはメタロプロテイナーゼである。このように、選択的に分解するプロテアーゼを使用すれば、糖化Hb分解物を選択的に調製でき、他の糖化タンパク質が分解され難いため、測定精度をさらに向上できるからである。前記Bacillus subtills由来プロテアーゼとしては、商品名プロテアーゼN(例えば、フルカ社製)、商品名プロテアーゼN「アマノ」(天野製薬社製)等があげられる。前記メタロプロテイナーゼとしては、Bacillus属由来メタロプロテイナーゼ(EC3.4.24.4)(例えば、東洋紡社製:商品名トヨチーム)等があげられる。
プロテアーゼ処理の条件は、例えば、使用するプロテアーゼの種類、測定対象物である糖化タンパク質の種類およびその濃度等により適宜決定される。
具体的には、例えば、前記プロテアーゼとしてプロテアーゼKを用いて前記前処理済み溶血試料を処理する場合、通常、反応液中のプロテアーゼ濃度10〜30,000mg/L(1KU/L〜250MU/L)、反応液中の血球濃度0.05〜15体積%、反応温度15〜37℃、反応時間1分〜24時間、pH6〜12の範囲である。このプロテアーゼ処理は、通常、緩衝液中で行われる。前記緩衝液としては、例えば、前記前処理と同様の緩衝液が使用できる。
また、例えば、前記プロテアーゼとしてメタロプロテアーゼを用いて前記前処理済み溶血試料を処理する場合、通常、反応液中のプロテアーゼ濃度0.02g〜6g/L(40KU/L〜40MU/L)、反応液中の血球濃度0.05〜15体積%、反応温度15〜37℃、反応時間1分〜24時間、pH6〜12の範囲である。
つぎに、前記プロテアーゼ処理により得られた分解物を、前記FAODで処理する。このFAOD処理により、前記式(1)に示す反応が触媒される。
このFAOD処理は、前記プロテアーゼ処理と同様に緩衝液中で行うことが好ましい。その処理条件は、使用するFAODの種類、測定対象物である糖化タンパク質の種類およびその濃度等により適宜決定される。
具体的には、例えば、反応液中のFAOD濃度50〜50,000U/L、反応液中の血球濃度0.01〜1体積%、反応温度15〜37℃、反応時間1〜60分、pH6〜9の範囲である。前記緩衝液の種類も特に制限されず、前記プロテアーゼ処理と同様の緩衝液が使用できる。
つぎに、前記FAOD処理で生成した過酸化水素を、酸化還元酵素および前記酸化により発色する発色性基質を用いて酸化還元反応により測定する。
前記酸化還元酵素としては、例えば、POD等が使用できる。
前記発色性基質としては、例えば、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウム、オルトフェニレンジアミン(OPD)、トリンダー試薬と4−アミノアンチピリンとを組み合せた基質等があげらる。前記トリンダー試薬としては、例えば、フェノール、フェノール誘導体、アニリン誘導体、ナフトール、ナフトール誘導体、ナフチルアミン、ナフチルアミン誘導体等があげらる。また、前記アミノアンチピリンの他に、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)、スルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)等も使用できる。このような発色性基質の中でも、特に好ましくは、前述のように、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウムである。
前記酸化還元反応は、通常、緩衝液中で行われ、その条件は、前記生成した過酸化水素の濃度等により適宜決定される。通常、反応液中の酸化還元酵素濃度10〜100,000IU/L、発色性基質濃度0.005〜30mmol/l、反応温度15〜37℃、反応時間6秒〜30分、pH5〜9である。また、前記緩衝液は、特に制限されず、例えば、前記プロテアーゼ処理およびFAOD処理等と同様の緩衝液等が使用できる。
前記酸化還元反応において、例えば、前記発色性基質を用いた場合、前記反応液の発色程度(吸光度)を分光光度計で測定することにより、過酸化水素の量を測定できる。そして、この過酸化水素濃度と検量線等とを用いて、試料中の糖化タンパク質量を求めることができる。
なお、前記過酸化水素量は、前記POD等を用いた酵素的手法の他に、例えば、電気的手法により測定することもできる。
この測定方法において、前記テトラゾリウム化合物による前処理工程は、前述のように、酸化還元反応が実質的に生じる前であれば、特に制限されないが、前記FAOD処理後に過酸化水素が発生することから、前記FAOD処理前に行なうことが好ましい。また、各処理工程は、前述のように別々に行ってもよいが、例えば、以下に示すような組み合わせで同時に行ってもよい処理工程がある。
1:溶血処理+前処理
2:溶血処理+前処理+プロテアーゼ処理
3:プロテアーゼ処理+FAOD処理
4:FAOD処理+発色反応
5:プロテアーゼ処理+FAOD処理+発色反応
また、テトラゾリウム化合物と界面活性剤の添加順序や、前記FAOD、酸化還元酵素および発色性基質の添加順序も特に制限されない。
このような方法によれば、前記試料にテトラゾリウム化合物を接触させることにより、GSH、AsA、ジチオスレイトール、システイン、N−アセチル−システイン等の低分子量還元物質だけでなく、特にヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物の還元物質としての影響を十分に排除することができる。そして、併せて、テトラゾリウム化合物とヘモグロビンとの混在による濁りの発生を防止できる。このため、例えば、前述の吸光度測定になんら影響与えることなく、高精度で測定を行うことができる。
また、前記テトラゾリウム化合物による前処理工程において、例えば、前記テトラゾリウム化合物以外の酸化剤を、さらに併用してもよい。前記酸化剤としては、例えば、ヨード酢酸ナトリウム、ヨーソ酸、過ヨウ素酸等のハロゲン酸化物、EDTA−Fe、アスコルビン酸オキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ等が使用できる。このような酸化剤の添加量は、例えば、試料1μL当たり0.001〜0.1mgの範囲である。
本発明の測定方法において、測定対象物は、酸化還元反応を利用するものであれば、特に制限されず、前記糖化タンパク質の他に、前述のように、糖化ペプチド、糖化アミノ酸、グルコース、コレステロール、尿酸、クレアチニン、サルコシン、グリセロール等があげられる。
過酸化水素を発生させて、前記各測定対象物の量を測定する場合は、例えば、前記グルコースにはグルコースオキシダーゼを、前記コレステロールにはコレステロールオキシダーゼを、前記尿酸にはウリカーゼを、前記クレアチニンにはサルコシンオキシダーゼを、前記サルコシンにはサルコシンオキシダーゼを、前記グリセロールにはグリセロールオキシダーゼを、それぞれ作用させて過酸化水素を発生させればよい。この過酸化水素量の測定方法は、前述と同様にして行なうことができる。また、糖化ペプチド、糖化アミノ酸は、例えば、前記糖化タンパク質の測定と同様にして測定できる。
また、前記テトラゾリウム化合物による試料中のヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物の処理後、測定対象物由来の還元物質を発生させ、この量を酸化還元反応により測定し、この測定値から、前記測定対象物の量を決定する場合は、例えば、以下に示すようにして測定を行なうことができる。
例えば、前記測定対象物がグルコースの場合、例えば、NAD+やNADP+等の存在下、グルコースデヒドロゲナーゼを用いて、NADHやNADPH等の還元物質を発生させる。そして、前記測定対象物由来の還元物質であるNADHやNADPHを、例えば、ジアホラーゼと、還元により発色する基質とを用いて、酸化還元反応により測定する。そして、前述のように、この測定対象物由来の還元物質の濃度と検量線等とを用いて、試料中の測定対象物の量を求めることができる。また、例えば、測定対象物がコレステロールの場合はコレステロールデヒドロゲナーゼを、サルコシンの場合は、サルコシンデヒドロゲナーゼをそれぞれ使用できる。
前記還元により発色する基質としては、特に制限されないが、例えば、前記試料中のヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物の影響を排除するために添加した発色性のテトラゾリウム化合物を用いてもよい。また、各測定波長に応じて、前記試料の前処理に使用したものとは違う種類の発色性のテトラゾリウム化合物を使用してもよい。前記発色性のテトラゾリウム化合物の他には、例えば、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール等も使用できる。なお、より優れた信頼性の測定値を得るために、例えば、前記測定対象物由来の還元物質を測定する前に、予め吸光度を測定しておくことが好ましい。
(実施例)
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
(実施例1)
この実施例は、各種界面活性剤存在下、血球試料をテトラゾリウム化合物で前処理し、濁りの有無を調べた例である。以下に、使用した試料、試薬および方法を示す。
(試料の調製)
健常人の全血を採取し、これを遠心分離(1500G(3000rpm)、3分間)して血球を回収し、この血球に31倍体積量の精製水を添加して希釈および溶血を行ったものを測定試料とした。
(界面活性剤溶液)
下記表1に示す各種界面活性剤を精製水に溶解し、2.4重量%の界面活性剤溶液をそれぞれ調製した。
下記表1に示す界面活性剤において、商品名TritonX−100、商品名Brij35、商品名Nikkol BL−9EXおよび2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸ナトリウムは和光純薬工業社製、商品名TritonX−114、商品名TritonN−101、商品名Tween20、商品名Tergitol NPX、商品名Tergitol NP−40、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、商品名PEG1000および商品名PEG6000はナカライテスク社製、商品名Brij58、商品名Brij98および商品名Arlasolve 200はSIGMA社製、商品名プルランPI−20は林原研究所社製である。
(緩衝液)
CHES緩衝液(pH9.0) 0.2mol/L
(WST−3溶液 :以下同じ)
濃度が1.66mmol/Lになるように、下記化学式(7)に示す2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム モノナトリウム塩(商品名 WST−3、同仁化学研究所社製)を精製水に溶解して調製した。
(濁りの確認方法)
測定試料345μL、界面活性剤溶液150μL、緩衝液300μLおよびWST−3溶液900μLを混合し、37℃で5分間インキュベートした後、この混合液の濁りを目視により確認し、下記評価基準により評価した。なお、比較例として、界面活性剤の代わりに精製水を添加した以外は同様に調製した混合液についても、同様に評価を行った。これらの結果を下記表1に示す。
(濁りの評価)
○: 濁りが生じない
×: 濁りが生じた
前記表1に示すように、界面活性剤存在下でWST−3処理することによって、濁りの発生を防止できた。
(実施例2、比較例2)
この実施例は、界面活性剤の添加量を変えて、テトラゾリウム化合物処理を行った例である。以下に使用した試料、試薬および方法等を示す。
(測定試料の調製)
前記実施例1と同様にして回収した血球(ヘモグロビン濃度約300g/L)に22倍体積量の精製水を添加して、希釈および溶血を行い、測定試料(ヘモグロビン濃度約13.6g/L)を調製した。
(界面活性剤溶液)
実施例1と同じ界面活性剤を所定の濃度(1.0重量%および2.4重量%)になるように、それぞれ0.2mol/L CHES緩衝液(pH9.0)に溶解した。
前記測定試料を精製水で2倍希釈した希釈液25μL、界面活性剤溶液15μLおよびWST−3溶液45μLを混合し、37℃で3分間インキュベートした。混合液中の界面活性剤の終濃度は、0.176重量%および0.424重量%である。インキュベート後、前記混合液について、波長884nmにおける吸光度の測定および前記実施例1と同様にして濁りの評価を行った。また、比較例2として、界面活性剤無添加の条件下、前述と同様にして吸光度測定および濁りの評価を行った。この結果を下記表2に示す。
また、TritonX−100、Tween20およびポリオキシエチレングリコールラウリルエーテルをそれぞれ用いた実施例について、884nm、845nmおよび805nmにおける吸光度を測定したタイムコースを図1〜図3に示す。図1はTritonX−100のタイムコース、図2はTween20のタイムコース、図3はポリオキシエチレングリコールラウリルエーテルのタイムコースを示す。比較例として、界面活性剤無添加の条件におけるタイムコースを図4に示す。
前記表2に示すように、界面活性剤存在下でWST−3処理すれば、濁りを生じることがなく、また、界面活性剤無添加の場合に比べて、吸光度は低く保たれていた。また、図4の比較例におけるタイムコースでは、吸光度の増加が顕著に見られるのに対して、界面活性剤を添加した図1〜図3の実施例のタイムコースでは、十分に吸光度が減少し、濁りによる影響が排除されたことがわかる。
(実施例3、比較例3)
この実施例は、界面活性剤存在下で、糖化アミノ酸を添加した溶血試料をWST−3処理し、前記糖化アミノ酸の測定を行った例である。
(酸化還元反応試薬)
POD(東洋紡社製) 132KU/L
FAOD(旭化成社製) 44KU/L
商品名DA−64(和光純薬工業社製) 0.088mmol/L
リン酸カリウム緩衝液(pH8.0) 0.2mol/L
(糖化バリン溶液の調製)
従来公知の方法により糖化バリン(以下、「FV」という)を作製し、これを精製水に溶解して糖化バリン溶液を調製した。
(界面活性剤溶液)
商品名TritonX−100、商品名Nikkol BL−9EXおよび商品名Tween20を、所定の濃度(1.0重量%および2.4重量%)になるように、それぞれ0.2mol/L CHES緩衝液(pH9.0)に溶解した。
(試料の調製)
実施例1と同様にして回収した血球に、22倍体積量となるように前記FV溶液を添加して、希釈および溶血を行い、これを試料とした。なお、試料は、Hb濃度およびFV濃度の異なる下記4種類(a〜d)を調製した。
(測定方法)
前記試料12.5μLに精製水12.5μLを加え、さらに界面活性剤溶液15μLを添加してから、前記WST−3溶液45μLを添加して、37℃で3分間インキュベートした。この混合液に前記酸化還元反応試薬25μL添加して1分間反応させ、反応後の吸光度(主波長751nmおよび884nm)を測定した。この反応溶液中における界面活性剤の最終濃度は、0.114重量%と0.273重量%である。また、比較例3として、界面活性剤の代わりに前記CHES緩衝液を用いて同様に吸光度測定を行った。これらの結果を下記表3に示す。
下記表中において、界面活性剤濃度の単位%は重量%を示す。また、表中のかっこ内の数値(%)は、試料bおよびd(Hb濃度13.6g/L)の吸光度を、それぞれ試料aおよびc(Hb濃度6.8g/L)の吸光度で割った値(b/a、d/c)の百分率(%)を示し、100%に近い程測定精度に優れることになる。つまり、試料中のFV量は一定であるため、Hb量が二倍になってもFVに依存する吸光度(発色量)が同程度であり、100%に近ければ、濁りの発生を十分に防止し、FVを高精度に測定できたといえる。
前記表3に示すように、界面活性剤存在下でWST−3処理した実施例3では、濁りの発生が防止され、また、特に884nmにおけるHbの吸収が低減された。このため、界面活性剤非存在下の比較例3に比べてかっこ内の値(%)が高く、高精度で測定できたことがわかる。
産業上の利用可能性
以上のように、本発明の測定方法は、界面活性剤存在下で、前記テトラゾリウム化合物を試料に添加することにより、試料中の還元物質の影響を排除でき、かつ、テトラゾリウム化合物とヘモグロビン等の還元物質との混在による濁りの発生も防止できるため、信頼性に優れた測定を行なうことができる。したがって、本発明の測定方法は、例えば、臨床医療における各種分析に適用でき、特に、糖尿病診断において重要である、赤血球中の糖化ヘモグロビン等の糖化タンパク質の測定に有用である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の測定方法の一実施例において、TritonX−100存在下で溶血試料とWST−3とを反応させた時の吸光度の経時変化を示すグラフである。
図2は、本発明の測定方法の前記実施例において、Tween20存在下で溶血試料とWST−3とを反応させた時の吸光度の経時変化を示すグラフである。
図3は、本発明の測定方法の前記実施例において、ポリオキシエチレングリコールラウリルエーテル存在下で溶血試料とWST−3とを反応させた時の吸光度の経時変化を示すグラフである。
図4は、比較例において、界面活性剤無添加の条件下で溶血試料とWST−3とを反応させた時の吸光度の経時変化を示すグラフである。
本発明は、試料中の測定対象物を、酸化還元反応を用いて測定する方法に関する。
背景技術
従来から、酸化還元反応を利用して、試料中の測定対象物の量を測定することは、広く実施されており、例えば、生化学分析や臨床検査等における糖化タンパク質の測定にも適用されている。
例えば、血液中の糖化タンパク質、特に赤血球中の糖化ヘモグロビンは、生体血糖値の過去の履歴を反映しているため、糖尿病診断や治療等における重要な指標とされている。このような赤血球中の糖化タンパク質は、前記酸化還元反応を用いて、例えば、以下に示すようにして測定されている。
まず、赤血球を溶血させた試料を調製し、この溶血試料をフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(以下、「FAOD」という)で処理し、糖化タンパク質の糖化部分に作用させて過酸化水素を発生させる。この過酸化水素量は、前記糖化タンパク質量に対応する。そして、この試料に、ペルオキシダーゼ(以下、「POD」という)および還元剤を添加し、前記PODを触媒として前記過酸化水素と前記還元剤との間で酸化還元反応させる。この時、前記還元剤として、酸化されることにより発色する発色性基質を用いれば、その発色の測定により前記過酸化水素量を測定でき、この結果、赤血球中の糖化タンパク質量を知ることができる。
しかし、血液中には、通常、アスコルビン酸(AsA)、ビリルビン等の各種還元物質が存在し、赤血球中には、さらに、グルタチオン(GSH)等の各種還元物質が存在する。これらの還元物質により、例えば、発生させた前記過酸化水素が還元されたり、前記酸化還元反応が阻害されたり、前記発色性基質が酸化により発色しても、再度還元され退色するおそれがある。このため、赤血球中の糖化タンパク質量を正確に測定することが困難であるという問題があった。
また、試料ごとによって、含まれる前記還元物質の濃度も一定ではないため、測定精度が劣るという問題もあった。
このような問題を回避するために、例えば、種々の酸化剤を前記試料に添加するという方法がある。例えば、特開昭56−151358号公報には、酸化剤としてヨウ素酸や過ヨウ素酸等のハロゲン酸化物を用いる方法が開示されており、特開昭57−13357号公報、特開昭57−161650号公報、特開昭59−193354号公報、特開昭62−169053号公報、特開平3−30697号公報には、酸化剤としてコバルト、鉄、セリウム等の金属錯体を用いる方法が開示されている。
発明の開示
しかしながら、このように改良された従来の方法でも、試料によっては測定精度が十分に向上しない場合もある。また、前述のように、血液中の糖化タンパク質は、糖尿病診断や治療等における重要な指標とされているため、これを測定するための酸化還元反応を用いた測定方法においても、更なる測定精度の向上が望まれている。
そこで、本発明の目的は、試料中の測定対象物を、酸化還元反応を用いて測定する方法であって、信頼性に優れる測定値が得られる測定方法の提供である。
前記目的を達成するために、本発明の測定方法は、試料中の測定対象物を酸化還元反応を用いて測定する方法であって、前記酸化還元反応に先立ち、界面活性剤の存在下、試料にテトラゾリウム化合物を添加して前記試料中の還元物質の影響を排除し、その後、前記測定対象物由来の還元物質または酸化物質の量を酸化還元反応により測定し、この測定値から前記測定対象物の量を決定することを特徴とする。前記テトラゾリウム化合物とは、テトラゾール環構造を有する化合物である。なお、本発明において、「測定対象物由来の還元物質または酸化物質」とは、測定対象物そのもの、もしくは、その中の酸化還元物質、または測定対象物から酸化還元酵素等を用いて発生した酸化還元物質の双方を意味する。
本発明者らは、前記従来の方法では、前記GSHやAsAのような低分子量還元物質の影響は排除されるが、タンパク質等のような高分子量還元物質による影響が排除されておらず、一方、前記テトラゾリウム化合物で処理すれば、前記低分子量還元物質だけでなく、前記高分子量還元物質、特にヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物(以下、両者あわせて「ヘモグロビン」という)の還元物質としての影響を排除できることを見出した。なお、これについて、本出願人は別途出願している(特開2000−210100号公報)。しかしながら、この方法では、例えば、ヘモグロビン等の高分子量還元物質による影響も排除されたにもかかわらず、十分に測定精度が向上しないこと、また、よりいっそうの測定精度の向上が望まれていることから、本発明者らは、さらに鋭意研究を行った。その結果、前記テトラゾリウム化合物の処理によって、例えば、ヘモグロビン等の高分子量還元物質による影響は排除できるが、前記両者を混在させることにより、反応液に濁りが生じることを突き止め、さらに、この濁りの発生を界面活性剤によれば防止できることを見出し、本発明に到達した。このような本発明の測定方法によれば、テトラゾリウム化合物によって還元物質の影響を排除し、かつ、前記テトラゾリウム化合物処理による濁りの発生も抑制するため、還元物質および濁りの両方による測定の妨害を防止でき、よりいっそう高精度な測定が可能となる。このため、本発明の測定方法は、前述のような臨床医療等における各種検査に有用であり、特に糖化ヘモグロビンの測定に適用すれば、糖尿病診断等の指標としての信頼性も向上する。
本発明の測定方法において、前記試料がヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物を含む試料であって、前記試料中のヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物の還元物質としての影響を排除することが好ましい。特に、試料中のヘモグロビンの還元物質としての影響を排除し、かつ前記両者による濁りも排除できるからである。したがって、後述のような血液試料について有用な測定であるといえる。
本発明の測定方法において、試料にテトラゾリウム化合物を添加してから、濁りが発生した混合液にさらに界面活性剤を添加してもよいが、濁りの発生自体を抑制できることから、前記両者を同時に添加したり、予め界面活性剤を添加した試料にテトラゾリウム化合物を添加することが好ましい。
本発明の測定方法において、前記酸化還元反応による測定が、前記反応により生じた発色物質の吸光度測定であることが好ましい。
前記吸光度測定を行う場合、通常、二波長測定が主流である。前記二波長測定は、例えば、測定する対象物(例えば、発色性基質等の発色物質)の極大吸収を示す波長を主波長として前記対象物を測定し、さらに前記主波長と異なる波長を副波長とし、電気的ノイズ、試料の濁り、光量の変化等を測定して、前記主波長における測定値を校正する。したがって、副波長は、例えば、他の混在する物質が吸収を示さない波長であり、かつ、主波長とは約80nm以上離して設定することが好ましい。そこで、本発明者らはさらに研究を重ねた結果、界面活性剤非存在下でHbをテトラゾリウム化合物処理すると、これらの反応物により約700〜900nm、特に約760nm〜900nmの波長に吸収が見られるようになり、この波長での測定が困難であるが、界面活性剤存在下でテトラゾリウム化合物処理すれば、前記波長では吸収が見られないことを見出した。したがって、この約700nm〜900nmの吸収波長に、前記発色物質の測定波長(主波長や副波長)を設定すれば、前記濁りを防止することだけでなく、さらにHbの吸収による影響を受けることなく、吸光度測定を精度よく行うことができる。
本発明の測定方法において、前記発色物質の吸光度測定の測定波長としては、650〜900nmの範囲が好ましく、より好ましくは650〜800nmの範囲であり、特に好ましくは、690〜760nmの範囲である。また、前記波長を主波長とする場合、副波長は、前記主波長よりも大きいことが好ましく、例えば、730〜900nmの範囲が好ましく、より好ましくは800〜900nmの範囲であり、特に好ましくは、800〜850nmの範囲である。
本発明の測定方法において、前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、アルキル硫酸塩および高分子化合物からなる群から選択された少なくとも一つの界面活性剤であることが好ましい。
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等があげられ、好ましくは、ポリオキシエチレンエーテルである。
前記ポリオキシエチレンエーテル[CLHM−O−(CH2CH2O)NH]は、ポリオキシエチレン鎖と炭化水素鎖とがエーテル結合しており、前記炭化水素鎖としては、例えば、アルキル基、アルキルフェニル基等があげられる。前記ポリオキシエチレン鎖の重量平均重合度(N)は8〜23の範囲であり、他方の炭化水素鎖の炭素数(L)は8〜18の範囲であることが好ましく、より好ましくは前記重量平均重合度(N)が8〜15の範囲であり、炭化水素鎖の炭素数(L)が8〜16の範囲であり、特に好ましくは前記重量平均重合度(N)が8〜10の範囲であり、炭化水素鎖の炭素数(L)が8〜14の範囲である。また、前記炭化水素鎖は、例えば、直鎖でもよく、分岐鎖を有していてもよい。前記ポリオキシエチレンエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレン−p−t−オクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール(10)ラウリルエーテル、ポリエチレングリコール(9)ラウリルエーテル等があげられる。
前記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等があげられる。
前記アルキル硫酸塩としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸ナトリウム等があげられる。
前記高分子化合物としては、例えば、水溶性ゼラチン、プルラン等の生体高分子化合物や、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子化合物が使用できる。ポリエチレングリコールの重量平均重合度は、例えば、100〜30,000の範囲であり、好ましくは600〜6000の範囲である。プルランとは、多糖類であり、マルトトリオース残基がα1−6結合で連なった水溶性α−グルカンをいう。
本発明の測定方法は、前記界面活性剤を、試料1mLあたり0.05〜5mmolの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜3mmolの範囲であり、より好ましくは0.2〜1.5mmolの範囲である。また、前記界面活性剤を、テトラゾリウム化合物1molあたり0.2〜15molの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜10molの範囲であり、より好ましくは0.7〜5molの範囲である。
本発明の測定方法において使用する前記テトラゾリウム化合物としては、例えば、テトラゾール環の少なくとも2箇所に環構造置換基を有することが好ましく、より好ましくは、3箇所に環構造置換基を有する構造である。
前記テトラゾリウム化合物が、前述のように、前記テトラゾール環の少なくとも2箇所に環構造置換基を有する場合、前記置換基を、前記テトラゾール環の2位および3位に有することが好ましい。また、テトラゾリウム化合物が3箇所に環構造置換基を有する場合は、前記置換基を、前記テトラゾール環の2位、3位および5位に有することが好ましい。
また、少なくとも2つの環構造置換基の環構造がベンゼン環であることが好ましい。また、ベンゼン環以外の環構造置換基としては、例えば、環骨格にSまたはOを含み、かつ共鳴構造である置換基があげられ、例えば、チエニル基、チアゾイル基等である。
前記テトラゾリウム化合物が、テトラゾール環の少なくとも3箇所に環構造置換基を有し、前記環構造置換基のうち少なくとも2つの環構造置換基の環構造がベンゼン環であることが好ましい。
少なくとも1つの環構造置換基が官能基を有することが好ましく、前記官能基の数が多いことがより好ましい。
前記官能基としては、電子吸引性の官能基が好ましく、例えば、ハロゲン基、エーテル基、エステル基、カルボキシ基、アシル基、ニトロソ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、スルホ基等があげられる。この他にも、例えば、ヒドロペルオキシ基、オキシ基、エポキシ基、エピジオキシ基、オキソ基等の酸素を含む特性基や、メルカプト基、アルキルチオ基、メチルチオメチル基、チオキソ基、スルフィノ基、ベンゼンスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、p−トリルスルホニル基、トシル基、スルファモイル基、イソチオシアネート基等の硫黄を含む特性基等があげられる。これらの電子吸引性官能基の中でも、好ましくは、ニトロ基、スルホ基、ハロゲン基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基である。また、前記電子吸引性の官能基の他に、例えば、フェニル基(C6H5−)、スチリル基(C6H5CH=CH−)等の不飽和炭化水素基等もあげられる。なお、前記官能基は、解離によりイオン化していてもよい。
前記テトラゾリウム化合物は、テトラゾール環の2位および3位にベンゼン環を有し、前記ベンゼン環のうち少なくとも一方が、ハロゲン基、カルボキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、スルホ基、メトキシ基およびエトキシ基からなる群から選択された少なくとも1つの官能基を有することが好ましい。なお、前記両方のベンゼン環が、前記官能基を有してもよい。前記ベンゼン環において、いずれの箇所(ortho−、meta−、pra−)に前記官能基を有してもよい。また、官能基の数も特に制限されず、同じ官能基を有しても、異なる官能基を有してもよい。
前記テトラゾリウム化合物は、例えば、前記テトラゾール環の2位、3位および5位にベンゼン環構造置換基を有する化合物として、例えば、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウム塩、3,3’−(1,1’−ビフェニル−4,4’−ジル)−ビス(2,5−ジフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、3,3’−[3,3’−ジメトキシ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジル]−ビス[2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウム塩]、2,3−ジフェニル−5−(4−クロロフェニル)テトラゾリウム塩、2,5−ジフェニル−3−(p−ジフェニル)テトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−(p−ジフェニル)テトラゾリウム塩、2,5−ジフェニル−3−(4−スチリルフェニル)テトラゾリウム塩、2,5−ジフェニル−3−(m−トリル)テトラゾリウム塩および2,5−ジフェニル−3−(p−トリル)テトラゾリウム塩等があげられる。
また、前記テトラゾリウム化合物は、前述のような化合物には制限されず、この他に、前記テトラゾール環の2箇所にベンゼン環構造置換基および1箇所にその他の環構造置換基を有する化合物も使用でき、例えば、2,3−ジフェニル−5−(2−チエニル)テトラゾリウム塩、2−ベンゾチアゾイル−3−(4−カルボキシ−2−メトキシフェニル)−5−[4−(2−スルホエチル カルバモイル)フェニル]−2H−テトラゾリウム塩、2,2’−ジベンゾチアゾイル−5,5’−ビス[4−ジ(2−スルホエチル)カルバモイルフェニル]−3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ジテトラゾリウム塩および3−(4,5−ジメチル−2−チアゾイル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウム塩等があげられる。
また、前記テトラゾール環の2箇所にベンゼン環構造置換基および1箇所に環構造でない置換基を有するテトラゾリウム化合物も使用でき、例えば、2,3−ジフェニル−5−シアノテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−カルボキシテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−メチルテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−エチルテトラゾリウム塩等があげられる。
前述のテトラゾリウム化合物の中でも、前述のように、環構造置換基を3つ有する化合物が好ましく、より好ましくは、環構造がベンゼン環である置換基を3つ有し、かつ電子吸引性官能基を多く有するものであり、特に好ましくは、2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩である。
なお、このようなテトラゾリウム化合物は、例えば、塩でもよいし、イオン化された状態等であってもよい。また、一種類には限られず、二種以上を併用してもよい。
本発明の測定方法において、前記テトラゾリウム化合物の添加量は、特に制限されず、例えば、試料の種類や前記試料に含まれるヘモグロビンやその他の還元物資の量により適宜決定できる。具体的には、例えば、試料1μL当たり、前記テトラゾリウム化合物を、0.001〜100μmolの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.005〜10μmolの範囲、特に好ましくは、0.01〜1μmolの範囲である。
本発明の測定方法において、前記試料が全血の場合、前記テトラゾリウム化合物を、全血1μL当たり、0.001〜10μmolの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.005〜5μmolの範囲、特に好ましくは0.01〜2μmolの範囲である。なお、全血の血球濃度は、通常、50重量%と推定できる。具体的には、前記テトラゾリウム化合物が2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩の場合は、全血1μL当たり、0.02〜10μmolの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmolの範囲、特に好ましくは0.1〜2μmolの範囲である。
なお、前記界面活性剤の添加量は、テトラゾリウム化合物の添加量に応じて、例えば、前述のようなモル比となるように調整できる。
本発明において、前述のような酸化還元反応により生じた発色物質の吸光度測定とは、例えば、酸化還元酵素を用いた前記還元物質または酸化物質と発色性基質との酸化還元反応により、発色した前記発色性基質(すなわち発色物質)の吸光度測定であることが好ましい。
具体的には、前記測定対象物由来の酸化物質が過酸化水素であり、前記発色性基質として酸化により発色する発色性基質を使用し、前記過酸化水素と前記発色性基質とを酸化還元酵素によって酸化還元反応させることが好ましい。
前記酸化還元酵素としては、特に制限されないが、例えば、PODが好ましく、前記酸化により発色する発色性基質としては、高感度に検出可能であることから、例えば、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウムが好ましい。
本発明の測定方法において、前記測定試料は、特に制限されないが、全血、血漿、血清、血球等の血液試料の他に、例えば、尿、髄液、唾液等の生体試料や、ジュース等の飲料水、醤油、ソース等の食品類等もあげられる。また、血球内成分を測定する場合は、例えば、全血をそのまま溶血させたものを試料としてもよいし、全血から赤血球を分離して、前記赤血球を溶血させたものを試料として用いてもよい。
本発明の測定方法において、前記測定対象物は、前記酸化還元反応を利用するものであれば特に制限されないが、例えば、全血中成分、赤血球内成分、血漿中成分、血清中成分等もがあげられ、好ましくは赤血球内成分である。また、具体的には、例えば、糖化ヘモグロビンや糖化アルブミン等の糖化タンパク質、糖化ペプチド、糖化アミノ酸、グルコース、尿酸、コレステロール、クレアチニン、サルコシン、グリセロール等があげられ、より好ましくは糖化タンパク質であり、特に好ましくは糖化ヘモグロビンである。
本発明の測定方法において、測定対象物が糖化タンパク質の場合、前記糖化タンパク質の糖化部分をFAODで酸化分解することにより過酸化水素を生成させることが好ましい。また、測定対象物が前記糖化ペプチド、糖化アミノ酸の場合も、同様にFAODを作用させることが好ましい。なお、前記糖化タンパク質や糖化ペプチドは、必要に応じて、前記FAOD処理前に、プロテアーゼ処理することが好ましい。
前記FAODとしては、下記式(1)に示す反応を触媒するFAODであることが好ましい。
前記式(1)において、R1は、水酸基もしくは糖化反応前の糖に由来する残基(糖残基)を示す。前記糖残基(R1)は、反応前の糖がアルドースの場合はアルドース残基であり、反応前の糖がケトースの場合、ケトース残基である。例えば、反応前の糖がグルコースの場合は、アマドリ転位により、反応後の構造はフルクトース構造をとるが、この場合、糖残基(R1)は、グルコース残基(アルドース残基)となる。この糖残基(R1)は、例えば、
−[CH(OH)]n−CH2OH
で示すことができ、nは、0〜6の整数である。
前記式(1)において、R2は、特に制限されないが、例えば、糖化アミノ酸、糖化ペプチドまたは糖化タンパク質の場合、α−アミノ基が糖化されている場合と、それ以外のアミノ基が糖化されている場合とで異なる。
前記式(1)において、α−アミノ基が糖化されている場合、R2は、下記式(2)で示すアミノ酸残基またはペプチド残基である。
前記式(2)において、R3はアミノ酸側鎖基を示す。また、R4は水酸基、アミノ酸残基またはペプチド残基を示し、例えば、下記式(3)で示すことができる。下記式(3)において、nは、0以上の整数であり、R3は、前述と同様にアミノ酸側鎖基を示す。
また、前記式(1)において、α−アミノ基以外のアミノ基が糖化されている(アミノ酸側鎖基が糖化されている)場合、R2は下記式(4)で示すことができる。
前記式(4)において、R5は、アミノ酸側鎖基のうち、糖化されたアミノ基以外の部分を示す。例えば、糖化されたアミノ酸がリジンの場合、R5は
−CH2−CH2−CH2−CH2−
であり、
例えば、糖化されたアミノ酸がアルギニンの場合、R5は、
−CH2−CH2−CH2−NH−CH(NH2)−
である。
また、前記式(4)において、R6は、水素、アミノ酸残基またはペプチド残基であり、例えば、下記式(5)で示すことができる。なお、下記式(5)において、nは0以上の整数であり、R3は、前述と同様にアミノ酸側鎖基を示す。
また、前記式(4)において、R7は、水酸基、アミノ酸残基またはペプチド残基であり、例えば、下記式(6)で示すことができる。なお、下記式(6)において、nは0以上の整数であり、R3は、前述と同様にアミノ酸側鎖基を示す。
発明を実施するための最良の形態
つぎに、本発明の測定方法について、血球中の糖化タンパク質を測定する例をあげて説明する。
まず、全血をそのまま溶血し、または全血から遠心分離等の常法により分離した血球画分を溶血し、溶血試料を調製する。この溶血方法は、特に制限されず、例えば、界面活性剤を用いる方法、超音波による方法、浸透圧の差を利用する方法等が使用でき、この中でも前記界面活性剤を用いる方法が好ましい。
溶血用の界面活性剤としては、特に制限されないが、操作の簡便性の点から、後述するテトラゾリウム化合物による前処理と同様の界面活性剤を使用することが好ましい。前記溶血処理の条件は、通常、処理溶液中の血球濃度が、1〜10体積%の場合、前記処理溶液中の濃度が0.01〜5重量%になるように前記界面活性剤を添加し、室温で、数秒(約5秒)〜10分程度攪拌すればよい。
つぎに、界面活性剤存在下において、前記溶血試料に対し前記テトラゾール環構造を有するテトラゾリウム化合物を添加し、前記溶血試料の前処理を行なう。
前記界面活性剤としては、前述のような界面活性剤が使用できる。具体的には、例えば、ポリオキシエチレン−p−t−オクチルフェニルエーテルである市販のTriton系界面活性剤等、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルである市販のTween系界面活性剤等、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである市販のBrij系界面活性剤等が使用できる。この他に、例えば、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル、商品名Nikkol BL−9EX(ポリオキシエチレンの重量平均重合度Nが9:和光純薬工業社製)等のようなポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、商品名Tergitol NPX(ポリオキシエチレンの重量平均重合度Nが約10.5:ナカライテスク社製)および商品名Tergitol NP−40(ポリオキシエチレンの重量平均重合度Nが20:ナカライテスク社製)等のようなポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等も使用できる。
前記界面活性剤の添加割合は前述と同様である。具体的には、前処理溶液中の血球濃度が、1〜10体積%の場合、界面活性剤濃度2〜150mmol/Lの範囲であり、好ましくは5〜100mmol/Lの範囲であり、特に好ましくは10〜50mmol/Lの範囲である。なお、前記溶血試料の調製(溶血処理工程)において、この前処理と同様の界面活性剤を使用する場合、前記溶血処理工程において、予め、この前処理に必要な濃度になるように前記界面活性剤を添加しておいてもよい。また、溶血処理前の試料に、テトラゾリウム化合物および前記界面活性剤を共に添加して、溶血処理と前処理とを同時に行ってもよい。
前記テトラゾリウム化合物としては、前述のようなものが使用でき、その添加割合は、例えば、前処理溶液中の血球濃度が、1〜10体積%の場合、濃度0.02〜2000mmol/Lの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜1000mmol/Lの範囲、特に好ましくは0.4〜200mmol/Lの範囲である。具体的に、前記テトラゾリウム化合物が2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩の場合、濃度0.02〜80mmol/Lの範囲になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜20mmol/Lの範囲、特に好ましくは0.2〜15mmol/Lの範囲である。
前記テトラゾリウム化合物は、そのまま使用してもよいが、操作の簡便性や処理効率等の点から、溶媒に溶解したテトラゾリウム化合物溶液として使用することが好ましい。前記溶液の濃度は、テトラゾリウム化合物の種類(例えば、分子量等)等により適宜決定でき、例えば、0.01〜120mmol/Lの範囲であり、好ましくは0.1〜50mmol/Lの範囲、より好ましくは0.2〜20mmol/Lの範囲である。前記溶媒としては、例えば、蒸留水、生理食塩水、緩衝液等が使用でき、前記緩衝液としては、例えば、後述の緩衝液等が使用できる。
この前処理は、通常、緩衝液中で行われる。前記緩衝液としては、例えば、アミン系緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、ならびにCHES、CAPSおよびCAPSO等のグッド緩衝液等が使用でき、好ましくはアミン系緩衝液およびCHES緩衝液である。前記アミン系緩衝液の緩衝剤としては、例えば、グリシン、エチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリスヒドロキシアミノメタン、トリエタノールアミン、グリシンアミド等があげられ、好ましくは、グリシン、グリシンアミド、トリエタノールアミンである。
前記緩衝液のpHは、pH7〜12の範囲が好ましく、より好ましくはpH8〜11の範囲であり、特に好ましくはpH8〜10の範囲である。
この前処理の条件は、特に制限されないが、通常、温度10〜37℃の範囲であり、処理時間10秒〜60分の範囲である。
つぎに、この前処理済み溶血試料に対し、プロテアーゼ処理を行う。これは、後の処理に使用するFAODを測定対象物の糖化部分に作用し易くするためである。
前記プロテアーゼとしては、例えば、セリンプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、メタロプロテイナーゼ等が使用でき、具体的には、メタロプロテアーゼ、トリプシン、プロテナーゼK、キモトリプシン、パパイン、ブロメライン、ズブチリシン、エラスターゼ、アミノペプチダーゼ、ペプシン等が使用できる。
また、糖化タンパク質が糖化ヘモグロビンの場合は、前記糖化Hbを選択的に分解する、ブロメライン、パパイン、ブタ膵臓由来トリプシン、メタロプロテイナーゼ、Bacillus subtillis由来のプロテアーゼ等が好ましく、より好ましくはメタロプロテイナーゼ、ブロメライン、パパインであり、特に好ましくはメタロプロテイナーゼである。このように、選択的に分解するプロテアーゼを使用すれば、糖化Hb分解物を選択的に調製でき、他の糖化タンパク質が分解され難いため、測定精度をさらに向上できるからである。前記Bacillus subtills由来プロテアーゼとしては、商品名プロテアーゼN(例えば、フルカ社製)、商品名プロテアーゼN「アマノ」(天野製薬社製)等があげられる。前記メタロプロテイナーゼとしては、Bacillus属由来メタロプロテイナーゼ(EC3.4.24.4)(例えば、東洋紡社製:商品名トヨチーム)等があげられる。
プロテアーゼ処理の条件は、例えば、使用するプロテアーゼの種類、測定対象物である糖化タンパク質の種類およびその濃度等により適宜決定される。
具体的には、例えば、前記プロテアーゼとしてプロテアーゼKを用いて前記前処理済み溶血試料を処理する場合、通常、反応液中のプロテアーゼ濃度10〜30,000mg/L(1KU/L〜250MU/L)、反応液中の血球濃度0.05〜15体積%、反応温度15〜37℃、反応時間1分〜24時間、pH6〜12の範囲である。このプロテアーゼ処理は、通常、緩衝液中で行われる。前記緩衝液としては、例えば、前記前処理と同様の緩衝液が使用できる。
また、例えば、前記プロテアーゼとしてメタロプロテアーゼを用いて前記前処理済み溶血試料を処理する場合、通常、反応液中のプロテアーゼ濃度0.02g〜6g/L(40KU/L〜40MU/L)、反応液中の血球濃度0.05〜15体積%、反応温度15〜37℃、反応時間1分〜24時間、pH6〜12の範囲である。
つぎに、前記プロテアーゼ処理により得られた分解物を、前記FAODで処理する。このFAOD処理により、前記式(1)に示す反応が触媒される。
このFAOD処理は、前記プロテアーゼ処理と同様に緩衝液中で行うことが好ましい。その処理条件は、使用するFAODの種類、測定対象物である糖化タンパク質の種類およびその濃度等により適宜決定される。
具体的には、例えば、反応液中のFAOD濃度50〜50,000U/L、反応液中の血球濃度0.01〜1体積%、反応温度15〜37℃、反応時間1〜60分、pH6〜9の範囲である。前記緩衝液の種類も特に制限されず、前記プロテアーゼ処理と同様の緩衝液が使用できる。
つぎに、前記FAOD処理で生成した過酸化水素を、酸化還元酵素および前記酸化により発色する発色性基質を用いて酸化還元反応により測定する。
前記酸化還元酵素としては、例えば、POD等が使用できる。
前記発色性基質としては、例えば、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウム、オルトフェニレンジアミン(OPD)、トリンダー試薬と4−アミノアンチピリンとを組み合せた基質等があげらる。前記トリンダー試薬としては、例えば、フェノール、フェノール誘導体、アニリン誘導体、ナフトール、ナフトール誘導体、ナフチルアミン、ナフチルアミン誘導体等があげらる。また、前記アミノアンチピリンの他に、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)、スルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)等も使用できる。このような発色性基質の中でも、特に好ましくは、前述のように、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウムである。
前記酸化還元反応は、通常、緩衝液中で行われ、その条件は、前記生成した過酸化水素の濃度等により適宜決定される。通常、反応液中の酸化還元酵素濃度10〜100,000IU/L、発色性基質濃度0.005〜30mmol/l、反応温度15〜37℃、反応時間6秒〜30分、pH5〜9である。また、前記緩衝液は、特に制限されず、例えば、前記プロテアーゼ処理およびFAOD処理等と同様の緩衝液等が使用できる。
前記酸化還元反応において、例えば、前記発色性基質を用いた場合、前記反応液の発色程度(吸光度)を分光光度計で測定することにより、過酸化水素の量を測定できる。そして、この過酸化水素濃度と検量線等とを用いて、試料中の糖化タンパク質量を求めることができる。
なお、前記過酸化水素量は、前記POD等を用いた酵素的手法の他に、例えば、電気的手法により測定することもできる。
この測定方法において、前記テトラゾリウム化合物による前処理工程は、前述のように、酸化還元反応が実質的に生じる前であれば、特に制限されないが、前記FAOD処理後に過酸化水素が発生することから、前記FAOD処理前に行なうことが好ましい。また、各処理工程は、前述のように別々に行ってもよいが、例えば、以下に示すような組み合わせで同時に行ってもよい処理工程がある。
1:溶血処理+前処理
2:溶血処理+前処理+プロテアーゼ処理
3:プロテアーゼ処理+FAOD処理
4:FAOD処理+発色反応
5:プロテアーゼ処理+FAOD処理+発色反応
また、テトラゾリウム化合物と界面活性剤の添加順序や、前記FAOD、酸化還元酵素および発色性基質の添加順序も特に制限されない。
このような方法によれば、前記試料にテトラゾリウム化合物を接触させることにより、GSH、AsA、ジチオスレイトール、システイン、N−アセチル−システイン等の低分子量還元物質だけでなく、特にヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物の還元物質としての影響を十分に排除することができる。そして、併せて、テトラゾリウム化合物とヘモグロビンとの混在による濁りの発生を防止できる。このため、例えば、前述の吸光度測定になんら影響与えることなく、高精度で測定を行うことができる。
また、前記テトラゾリウム化合物による前処理工程において、例えば、前記テトラゾリウム化合物以外の酸化剤を、さらに併用してもよい。前記酸化剤としては、例えば、ヨード酢酸ナトリウム、ヨーソ酸、過ヨウ素酸等のハロゲン酸化物、EDTA−Fe、アスコルビン酸オキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ等が使用できる。このような酸化剤の添加量は、例えば、試料1μL当たり0.001〜0.1mgの範囲である。
本発明の測定方法において、測定対象物は、酸化還元反応を利用するものであれば、特に制限されず、前記糖化タンパク質の他に、前述のように、糖化ペプチド、糖化アミノ酸、グルコース、コレステロール、尿酸、クレアチニン、サルコシン、グリセロール等があげられる。
過酸化水素を発生させて、前記各測定対象物の量を測定する場合は、例えば、前記グルコースにはグルコースオキシダーゼを、前記コレステロールにはコレステロールオキシダーゼを、前記尿酸にはウリカーゼを、前記クレアチニンにはサルコシンオキシダーゼを、前記サルコシンにはサルコシンオキシダーゼを、前記グリセロールにはグリセロールオキシダーゼを、それぞれ作用させて過酸化水素を発生させればよい。この過酸化水素量の測定方法は、前述と同様にして行なうことができる。また、糖化ペプチド、糖化アミノ酸は、例えば、前記糖化タンパク質の測定と同様にして測定できる。
また、前記テトラゾリウム化合物による試料中のヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物の処理後、測定対象物由来の還元物質を発生させ、この量を酸化還元反応により測定し、この測定値から、前記測定対象物の量を決定する場合は、例えば、以下に示すようにして測定を行なうことができる。
例えば、前記測定対象物がグルコースの場合、例えば、NAD+やNADP+等の存在下、グルコースデヒドロゲナーゼを用いて、NADHやNADPH等の還元物質を発生させる。そして、前記測定対象物由来の還元物質であるNADHやNADPHを、例えば、ジアホラーゼと、還元により発色する基質とを用いて、酸化還元反応により測定する。そして、前述のように、この測定対象物由来の還元物質の濃度と検量線等とを用いて、試料中の測定対象物の量を求めることができる。また、例えば、測定対象物がコレステロールの場合はコレステロールデヒドロゲナーゼを、サルコシンの場合は、サルコシンデヒドロゲナーゼをそれぞれ使用できる。
前記還元により発色する基質としては、特に制限されないが、例えば、前記試料中のヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物の影響を排除するために添加した発色性のテトラゾリウム化合物を用いてもよい。また、各測定波長に応じて、前記試料の前処理に使用したものとは違う種類の発色性のテトラゾリウム化合物を使用してもよい。前記発色性のテトラゾリウム化合物の他には、例えば、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール等も使用できる。なお、より優れた信頼性の測定値を得るために、例えば、前記測定対象物由来の還元物質を測定する前に、予め吸光度を測定しておくことが好ましい。
(実施例)
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
(実施例1)
この実施例は、各種界面活性剤存在下、血球試料をテトラゾリウム化合物で前処理し、濁りの有無を調べた例である。以下に、使用した試料、試薬および方法を示す。
(試料の調製)
健常人の全血を採取し、これを遠心分離(1500G(3000rpm)、3分間)して血球を回収し、この血球に31倍体積量の精製水を添加して希釈および溶血を行ったものを測定試料とした。
(界面活性剤溶液)
下記表1に示す各種界面活性剤を精製水に溶解し、2.4重量%の界面活性剤溶液をそれぞれ調製した。
下記表1に示す界面活性剤において、商品名TritonX−100、商品名Brij35、商品名Nikkol BL−9EXおよび2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸ナトリウムは和光純薬工業社製、商品名TritonX−114、商品名TritonN−101、商品名Tween20、商品名Tergitol NPX、商品名Tergitol NP−40、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、商品名PEG1000および商品名PEG6000はナカライテスク社製、商品名Brij58、商品名Brij98および商品名Arlasolve 200はSIGMA社製、商品名プルランPI−20は林原研究所社製である。
(緩衝液)
CHES緩衝液(pH9.0) 0.2mol/L
(WST−3溶液 :以下同じ)
濃度が1.66mmol/Lになるように、下記化学式(7)に示す2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム モノナトリウム塩(商品名 WST−3、同仁化学研究所社製)を精製水に溶解して調製した。
(濁りの確認方法)
測定試料345μL、界面活性剤溶液150μL、緩衝液300μLおよびWST−3溶液900μLを混合し、37℃で5分間インキュベートした後、この混合液の濁りを目視により確認し、下記評価基準により評価した。なお、比較例として、界面活性剤の代わりに精製水を添加した以外は同様に調製した混合液についても、同様に評価を行った。これらの結果を下記表1に示す。
(濁りの評価)
○: 濁りが生じない
×: 濁りが生じた
前記表1に示すように、界面活性剤存在下でWST−3処理することによって、濁りの発生を防止できた。
(実施例2、比較例2)
この実施例は、界面活性剤の添加量を変えて、テトラゾリウム化合物処理を行った例である。以下に使用した試料、試薬および方法等を示す。
(測定試料の調製)
前記実施例1と同様にして回収した血球(ヘモグロビン濃度約300g/L)に22倍体積量の精製水を添加して、希釈および溶血を行い、測定試料(ヘモグロビン濃度約13.6g/L)を調製した。
(界面活性剤溶液)
実施例1と同じ界面活性剤を所定の濃度(1.0重量%および2.4重量%)になるように、それぞれ0.2mol/L CHES緩衝液(pH9.0)に溶解した。
前記測定試料を精製水で2倍希釈した希釈液25μL、界面活性剤溶液15μLおよびWST−3溶液45μLを混合し、37℃で3分間インキュベートした。混合液中の界面活性剤の終濃度は、0.176重量%および0.424重量%である。インキュベート後、前記混合液について、波長884nmにおける吸光度の測定および前記実施例1と同様にして濁りの評価を行った。また、比較例2として、界面活性剤無添加の条件下、前述と同様にして吸光度測定および濁りの評価を行った。この結果を下記表2に示す。
また、TritonX−100、Tween20およびポリオキシエチレングリコールラウリルエーテルをそれぞれ用いた実施例について、884nm、845nmおよび805nmにおける吸光度を測定したタイムコースを図1〜図3に示す。図1はTritonX−100のタイムコース、図2はTween20のタイムコース、図3はポリオキシエチレングリコールラウリルエーテルのタイムコースを示す。比較例として、界面活性剤無添加の条件におけるタイムコースを図4に示す。
前記表2に示すように、界面活性剤存在下でWST−3処理すれば、濁りを生じることがなく、また、界面活性剤無添加の場合に比べて、吸光度は低く保たれていた。また、図4の比較例におけるタイムコースでは、吸光度の増加が顕著に見られるのに対して、界面活性剤を添加した図1〜図3の実施例のタイムコースでは、十分に吸光度が減少し、濁りによる影響が排除されたことがわかる。
(実施例3、比較例3)
この実施例は、界面活性剤存在下で、糖化アミノ酸を添加した溶血試料をWST−3処理し、前記糖化アミノ酸の測定を行った例である。
(酸化還元反応試薬)
POD(東洋紡社製) 132KU/L
FAOD(旭化成社製) 44KU/L
商品名DA−64(和光純薬工業社製) 0.088mmol/L
リン酸カリウム緩衝液(pH8.0) 0.2mol/L
(糖化バリン溶液の調製)
従来公知の方法により糖化バリン(以下、「FV」という)を作製し、これを精製水に溶解して糖化バリン溶液を調製した。
(界面活性剤溶液)
商品名TritonX−100、商品名Nikkol BL−9EXおよび商品名Tween20を、所定の濃度(1.0重量%および2.4重量%)になるように、それぞれ0.2mol/L CHES緩衝液(pH9.0)に溶解した。
(試料の調製)
実施例1と同様にして回収した血球に、22倍体積量となるように前記FV溶液を添加して、希釈および溶血を行い、これを試料とした。なお、試料は、Hb濃度およびFV濃度の異なる下記4種類(a〜d)を調製した。
(測定方法)
前記試料12.5μLに精製水12.5μLを加え、さらに界面活性剤溶液15μLを添加してから、前記WST−3溶液45μLを添加して、37℃で3分間インキュベートした。この混合液に前記酸化還元反応試薬25μL添加して1分間反応させ、反応後の吸光度(主波長751nmおよび884nm)を測定した。この反応溶液中における界面活性剤の最終濃度は、0.114重量%と0.273重量%である。また、比較例3として、界面活性剤の代わりに前記CHES緩衝液を用いて同様に吸光度測定を行った。これらの結果を下記表3に示す。
下記表中において、界面活性剤濃度の単位%は重量%を示す。また、表中のかっこ内の数値(%)は、試料bおよびd(Hb濃度13.6g/L)の吸光度を、それぞれ試料aおよびc(Hb濃度6.8g/L)の吸光度で割った値(b/a、d/c)の百分率(%)を示し、100%に近い程測定精度に優れることになる。つまり、試料中のFV量は一定であるため、Hb量が二倍になってもFVに依存する吸光度(発色量)が同程度であり、100%に近ければ、濁りの発生を十分に防止し、FVを高精度に測定できたといえる。
前記表3に示すように、界面活性剤存在下でWST−3処理した実施例3では、濁りの発生が防止され、また、特に884nmにおけるHbの吸収が低減された。このため、界面活性剤非存在下の比較例3に比べてかっこ内の値(%)が高く、高精度で測定できたことがわかる。
産業上の利用可能性
以上のように、本発明の測定方法は、界面活性剤存在下で、前記テトラゾリウム化合物を試料に添加することにより、試料中の還元物質の影響を排除でき、かつ、テトラゾリウム化合物とヘモグロビン等の還元物質との混在による濁りの発生も防止できるため、信頼性に優れた測定を行なうことができる。したがって、本発明の測定方法は、例えば、臨床医療における各種分析に適用でき、特に、糖尿病診断において重要である、赤血球中の糖化ヘモグロビン等の糖化タンパク質の測定に有用である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の測定方法の一実施例において、TritonX−100存在下で溶血試料とWST−3とを反応させた時の吸光度の経時変化を示すグラフである。
図2は、本発明の測定方法の前記実施例において、Tween20存在下で溶血試料とWST−3とを反応させた時の吸光度の経時変化を示すグラフである。
図3は、本発明の測定方法の前記実施例において、ポリオキシエチレングリコールラウリルエーテル存在下で溶血試料とWST−3とを反応させた時の吸光度の経時変化を示すグラフである。
図4は、比較例において、界面活性剤無添加の条件下で溶血試料とWST−3とを反応させた時の吸光度の経時変化を示すグラフである。
Claims (20)
- 試料中の測定対象物を酸化還元反応を用いて測定する方法であって、前記酸化還元反応に先立ち、界面活性剤の存在下、試料にテトラゾリウム化合物を添加して前記試料中の還元物質の影響を排除し、その後、前記測定対象物由来の還元物質または酸化物質の量を酸化還元反応により測定し、この測定値から前記測定対象物の量を決定する測定方法。
- 試料がヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物を含む試料であって、前記試料中のヘモグロビンおよびヘモグロビン分解物の還元物質としての影響を排除する請求の範囲1記載の測定方法。
- 酸化還元反応による測定が、前記反応により生じた発色物質の吸光度測定である請求の範囲1記載の測定方法。
- 発色物質が、酸化還元酵素を用いて、還元物質または酸化物質と発色性基質とを酸化還元反応させることにより発色した発色性基質である請求の範囲3記載の測定方法。
- 吸光度測定における測定波長が、650〜900nmの範囲である請求の範囲3記載の測定方法。
- 吸光度測定における主波長が650〜800nmの範囲であり、副波長が前記主波長より大きくかつ730〜900nmの範囲である請求の範囲3に記載の測定方法。
- 界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、アルキル硫酸塩および高分子化合物からなる群から選択された少なくとも一つの界面活性剤である請求の範囲1記載の測定方法。
- 非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン鎖と炭化水素鎖とがエーテル結合したポリオキシエチレンエーテルである請求の範囲7記載の測定方法。
- ポリオキシエチレン鎖の重量平均重合度が8〜23の範囲であり、炭化水素鎖の炭素数が8〜18の範囲である請求の範囲8記載の測定方法。
- 炭化水素鎖が、アルキル基およびアルキルフェニル基の少なくとも一方の基から構成される請求の範囲8記載の測定方法。
- 炭化水素鎖が、分岐鎖を有する請求の範囲8記載の測定方法。
- 高分子化合物が、水溶性ゼラチン、プルラン、ポリエチレングリコールおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択された少なくとも一つの化合物である請求の範囲7記載の測定方法。
- 界面活性剤を、試料1mLあたり0.05〜5molの範囲になるように添加する請求の範囲1記載の測定方法。
- 界面活性剤を、テトラゾリウム化合物1mol当たり0.2〜15molの範囲になるように添加する請求の範囲1記載の測定方法。
- テトラゾリウム化合物が、テトラゾール環の2位および3位にベンゼン環を有し、前記ベンゼン環のうち少なくとも一方が、ハロゲン基、カルボキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、スルホ基、メトキシ基およびエトキシ基からなる群から選択された少なくとも一つの官能基を有する請求の範囲1記載の測定方法。
- テトラゾリウム化合物が、2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩である請求の範囲1記載の測定方法。
- 測定対象物由来の酸化物質が過酸化水素であり、発色性基質として酸化により発色する発色性基質を使用し、前記過酸化水素と前記発色性基質とを酸化還元酵素によって酸化還元反応させる請求の範囲3記載の測定方法。
- 測定試料が血球を含む請求の範囲1記載の測定方法。
- 測定対象物が、糖化タンパク質である請求の範囲1記載の測定方法。
- 測定対象物が、糖化ヘモグロビンである請求の範囲1記載の測定方法。
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