JPS6255020B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は主に車輌用として用いられらる変速
機の同期噛合装置の改良に関するものである。

自動車用変速機に用いられる同期回転機構の代
表的なものとしてワーナー型同期噛合装置があ
る。この方式にあつては同芯状のカツプリングス
リーブとシンクロハブの間にインサートキーを介
在させ、このインサートキーを媒体としてボーク
リングの同期トルクをシンクロハブに伝達するよ
うにしたもので、特に完全なる同期作用が終了す
るまではカツプリングスリーブが変速ギヤに噛み
合わないので、ギヤの入れ換えに無理がなく、変
速音やギヤの破損を起こすおそれがない等の利点
を有していることは周知の通りである。

しかしながらかかる方式にあつては、ボークリ
ングが摩耗した場合やカツプリングスリーブが規
定ストロークを越えた場合、さらにはカツプリン
グスリーブのシフト動作時にインサートキーが過
度に傾いた際には、第１図に示すようにインサー
トキー１がボークリング２の切欠き３から離脱し
てカツプリングスリーブ４の外側に飛び出し、動
作不良を起こすおそれがある。

また同図から明らかなように、インサートキー
１はスプレツドスプリング５によりカツプリング
スリーブ４の径方向に付勢され、それにより本来
はインサートキー１に形成された突起６をカツプ
リングスリーブ内周の溝７に嵌合させているもの
である。しかしこのような構造においては、(1)イ
ンサートキーのほかスプレツドスプリングを必要
とするために部品点数が多く、それ相応のスペー
スを確保する必要がある、(2)前記のようなインサ
ートキーの飛び出しを可及的に防止するためには
カツプリングスリーブの幅（軸方向長さ）をある
程度長くする必要がある、(3)カツプリングスリー
ブの内周にインサートキーの突起に対応する溝を
形成する必要がある、等の問題があり、全体とし
ての組立加工性および小型化の面で必ずしも十分
に満足できるものではなかつた。

この発明は以上の従来の問題点を解消した同期
噛合装置を提供しようとするもので、ボークリン
グを回転方向に所定の遊びをもつてシンクロハブ
に係合させ、互いにスプライン嵌合するシンクロ
ハブ内周面とカツプリングスリーブ外周面との両
者に軸方向に延びるスプリング挿入溝を形成し、
該スプリング挿入溝にインサートスプリングを挿
入保持させてなり、前記インサートスプリング
は、本体部の両端に、カツプリングスリーブのス
プライン歯の歯すじ方向端部の面取部に弾性的に
係合し、かつボークリングに当接してこれを押動
する曲折部を一体に形成したものである。

以下、この発明の実施例を第２図以下の図面を
用いて詳細に説明する。

第２図および第３図はこの発明に係る同期噛合
装置の全体構成を示すもので、１１，１１はメイ
ンシヤフト１０にそれぞれにベアリング１２，１
２を介して自由回転自在に支承された変速ギヤ、
１４はメインシヤフト１０にスプライン結合によ
り一体に固定されたシンクロハブ、１５，１５は
シンクロハブ１４の両側に対をなして配設された
ボークリングである。

シンクロハブ１４の外周のスプライン歯には内
周にスプライン歯をもつカツプリングスリーブ１
６を軸方向に摺動自在に噛み合わせる一方、この
シンクロハブ１４の両側端面上の三箇所を所定長
さにわたつて切除して第４図に示すように切欠部
１７を形成し、この切欠部１７に後述するボーク
リング１５のスプライン歯をそれぞれ臨ませてあ
る。

またシンクロハブ１４の外周上の三箇所すなわ
ち上記切欠部１７の周方向中心と一致する位置に
は、それぞれにその歯幅方向全長にわたつて切除
してなる断面Ｔ字状のスプリング挿入溝１８が形
成されており、この挿入溝１８に対してインサー
トスプリング１９を嵌合させてある（第４図およ
び第５図参照）。尚、第４図の１４ａはシンクロ
ハブ１４側面に設けた油溝である。

一方、上記スプリング挿入溝１８に対応するカ
ツプリングスリーブ１６の内周については、第８
図に示すように本来のスプライン歯１６ｂ，１６
ｂの側面の一部を切除し、これによつてスプライ
ン溝の幅を拡大させてスプリング挿入溝１６ａと
し、このスプリング挿入溝１６ａと上記シンクロ
ハブ側のスプリング挿入溝１８の間にインサート
スプリング１９を挾持させているものである。

インサートスプリング１９は第６図および第７
図に示すように鋼製の板ばねを略偏平Ｓ字状に析
曲形成して本体部１９ｅとし、本体部１９ｅの両
端に曲折部２９を形成すると共に、本体部中央の
中脚部１９ｃの下面中央には位置決め用の突起１
９ｄを一体に突出形成してある。曲折部２９は、
本体部１９ｅの自由端部を上半部および下半部ご
とにそれぞれ逆向きに折り返すことで上側係合部
１９ａと下側係合部１９ｂとを形成したものであ
る。

そして第９図に示すように上記インサートスプ
リング１９の外側面をスプリング挿入溝１８の内
側面およびカツプリングスリーブ１６のスプリン
グ挿入溝１６ａに嵌入させる一方、上側係合部１
９ａの屈曲基部をカツプリングスリーブ１６内周
のスプライン歯１６ｂの面取部１６ｃにそれぞれ
圧接させ、そのばね力によつて規定位置に自己保
持させてある。さらに第３図および第５図に示す
ように上記突起１９ｄをスプリング挿入溝１８の
底部の凹部１８ａに嵌合させ、それによつてイン
サートスプリング１９の軸方向の位置規制および
飛び出し防止がなされている。

ボークリング１５，１５は内周の円錐面がクラ
ツチギヤ１３，１３の側部に設けられた円錐面に
それぞれ対応するように配設されており、その円
周上の三箇所に組をなして設けられたスプライン
歯がシンクロハブ１４の切欠部１７内に臨み、ボ
ークリング１５側のスプライン歯の歯側面が切欠
部１７の内側壁に対接するように構成してある。
そしてこの両者の対接によつてボークリング１５
とシンクロハブ１４とのトルク伝達が直接行なわ
れるようになつている。尚、ボークリング１５，
１５がスプライン歯の半ピツチ程度左右に動くこ
とができるように所定の遊びを有している点は従
来と同様である。

また、ボークリング１５側のスプライン歯の歯
側面に前記インサートスプリング１９の下側係合
部１９ｂ外端を当接させ、しかも円錐面を構成す
る本体の側部間に突起１９ｄを挾むことにより、
これによつてもまたその軸方向の位置規制および
飛び出し防止を行なつているものである。

次に上記構成に係る同期噛合装置の作用を第９
図を用いて説明する。

図示しないシフトフオークによりカツプリング
スリーブ１６が矢印Ａ方向にシフト動作される
と、カツプリングスリーブ１６のスプライン歯１
６ｂの面取部１６ｃ（斜面）とインサートスプリ
ング１９の上側係合部１９ａとの圧接によりイン
サートスプリング１９が移動力を受け、下側係合
部１９ｂの半円状の頂部がボークリング１５の側
面に圧接してこれを押圧する。

そして、ボークリング１５の円錐面（クラツチ
面）が変速ギヤ１１の円錐面に圧接すると、ボー
クリング１５は変速ギヤ１１の回転方向（第９図
では矢印Ｂ方向とする）に引きずられて回され、
そのスプライン歯の歯側面がシンクロハブ１４側
の切欠部１７の内壁に当接して停止する。この
時、上記ボークリング１５と切欠部１７の当接に
よつて初期同期トルクの伝達がなされると同時
に、カツプリングスリーブ１６とボークリング１
５の面取部同士が接触し、カツプリングスリーブ
１６を押すほどさらにボークリング１５を押圧
し、この面取部同士の接触によつても同期トルク
伝達がなされて同期作用が徐々に促進される。

したがつて、それ以後は周知のように、カツプ
リングスリーブ１６と変速ギヤ１１が完全に同期
すればカツプリングスリーブ１６側のスプライン
歯はインサートスプリング１９の上側係合部１９
ａを乗り越え、かつボークリング１５のスプライ
ン歯の面取部を滑つてボークリング１５およびク
ラツチギヤ１３に完全に噛み合い、これをもつて
同期作用を終了する。

第１０図および第１１図はこの発明の他の実施
例を示すもので、前記実施例と異なりインサート
スプリング３９を樹脂成形体により一体成形とし
たものである。

なお、第１１図は第９図と同様にインサートス
プリング３９をスプリング挿入溝１６ａ，１８に
挿入した状態について示している。

本実施例においては第１０図および第１１図に
示すように、インサートスプリング３９の本体部
３９ｅを樹脂により略Ｈ形に形成してばね性を具
備させる一方、本体部３９ｅの両端に曲折部４９
を一体に形成すると共に、本体部３９ｅの中央部
下面には位置決め用の突起３９ｄを一体に突出形
成してある。そして曲折部４９には第１１図に示
すように、スプライン歯１６ｂの面取部１６ｃに
係合する斜面部３９ａと、ボークリング１５の側
面に当接する押圧面３９ｂとを形成したものであ
る。つまり本実施例の場合には、斜面部３９ａと
押圧面３９ｂとが第１実施例の上側係合部１９ａ
および下側係合部１９ｂと同等の機能を果たすこ
とになる。

したがつて、本実施例の場合にも第１実施例と
同様の作用効果が得られるほか、インサートスプ
リング３９自体が樹脂製であるので、板ばねと異
なりプレス加工や折曲加工を施す必要がないの
で、加工性に優れる利点があり、特に大量生産の
場合のコストダウンに有効である。

以上の説明から明らかなようにこの発明に係る
同期噛合装置にあつては、ボークリングをシンク
ロハブに直接係合させる一方、シンクロハブ外周
面とカツプリングスリーブ内周面との両者にスプ
リング挿入溝を形成し、該スプリング挿入溝にイ
ンサートスプリングを挿入保持させ、その上でイ
ンサートスプリングの本体部の両端にカツプリン
グスリーブのスプライン歯の面取部に係合してボ
ークリングを押動する曲折部を形成したものであ
るから、スプレツドスプリングが不要となり、部
品点数の削減が可能となるのに併せて、インサー
トスプリングの飛び出しのおそれがないのでそれ
だけカツプリングスリーブの幅を短縮化すること
が可能となり、装置全体として小型軽量化を図る
ことができる。

加えて、カツプリングスリーブの内周に従来の
ようなインサートキーに対応する溝を設ける必要
がなく、それによつてカツプリングスリーブを焼
結合金で構成する場合にも２つ割りの型を用いて
容易に製造することが可能となり、総体として組
立加工性の向上および小軽量化に大きく寄与する
ことができる。

更に特許請求の範囲第２項の如く、一対のボー
クリング間に挾まれる位置決め用突起を用いるよ
うにすれば、インサートスプリングは、カツプリ
ングスリーブのシフト動作時においても大きくス
ライドすることなく、位置決めされて、位置ずれ
を起こしたり飛び出したりすることを更に完全に
防止でき、円滑な動作を行なうことができる。

更にまた特許請求の範囲第３項の如く、シンク
ロハブとボークリングとの係合を、シンクロハブ
側面に設けた切欠部とボークリングから部分的に
突出したスプライン歯との係合で行なわせること
により、従来のようにボークリングにインサート
キー挿入用の切欠きを設ける必要がないので、そ
の鋼性を維持しつつ円錐面（クラツチ面）の口径
を大きくとることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のワーナー型同期噛合装置の構成
を示す半断面図、第２図はこの発明に係る同期噛
合装置の全体構成を示す斜視図、第３図は同じく
その全断面図、第４図はシンクロハブの正面図、
第５図は第４図のｃ方向矢視図、第６図はインサ
ートスプリングの平面図、第７図は同じくその正
面図、第８図はカツプリングスリーブのスプライ
ン歯の要部正面図、第９図はカツプリングスリー
ブとインサートスプリングおよびボークリングの
相互関係を示す説明図、第１０図はインサートス
プリングの他の実施例を示す斜視図、第１１図は
第１０図のインサートスプリングとカツプリング
スリーブとの関係を示す説明図である。 １１……変速ギヤ、１４……シンクロハブ、１
５……ボークリング、１６……カツプリングスリ
ーブ、１６ａ……スプリング挿入溝、１６ｂ……
スプライン歯、１６ｃ……面取部、１７……切欠
部、１８……スプリング挿入溝、１９……インサ
ートスプリング、１９ａ……上側係合部、１９ｂ
……下側係合部、１９ｄ……突起、１９ｅ……本
体部、２９……曲折部、３９………インサートス
プリング、３９ａ……斜面部、３９ｂ……押圧
面、３９ｄ……穴起、３９ｅ……本体部、４９…
…曲折部。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 外周にスプライン歯が形成されてなるシンク
   ロハブと、シンクロハブの軸方向両側に配設さ
   れ、内周に円錐クラツチ面を有すると共に外周に
   スプライン歯を有する一対のボークリングと、一
   対のボークリング間に配置され、シンクロハブの
   外周スプライン歯に嵌合するスプライン歯を有す
   るカツプリングスリーブとを備えてなり、カツプ
   リングスリーブのシフト動作に応じいずれか一方
   のボークリングを押動して、その円錐クラツチ面
   を変速ギヤの円錐クラツチ面に接触させることに
   より同期作用を行なわせる変速機の同期噛合装置
   において、ボークリングを回転方向に所定の遊び
   をもつてシンクロハブに係合させ、互いにスプラ
   イン嵌合するシンクロハブ外周面とカツプリング
   スリーブ内周面との両者に軸方向に延びるスプリ
   ング挿入溝を形成し、該スプリング挿入溝にイン
   サートスプリングを挿入保持させてなり、前記イ
   ンサートスプリングは、本体部の両端に、カツプ
   リングスリーブのスプライン歯の歯すじ方向端部
   の面取部に弾性的に係合し、かつボークリングに
   当接してこれを押動する曲折部を一体に形成した
   ことを特徴とする変速機の同期噛合装置。 ２ インサートスプリングは、一対のボークリン
   グ間に挾まれる位置決め用の突起を備えているこ
   とを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の変速
   機の同期噛合装置。 ３ シンクロハブとボークリングとの係合は、シ
   ンクロハブ側面に形成した切欠部と、ボークリン
   グの外周スプライン歯のうちの一部を切除した残
   余のスプライン部とでなされることを特徴とする
   特許請求の範囲第１項または第２項記載の変速機
   の同期噛合装置。 ４ インサートスプリングは、板ばねを略偏平Ｓ
   字状に折曲形成して本体部を形成してなり、その
   両自由端部にカツプリングスリーブのスプライン
   歯の面取部に係合する曲折部を形成したことを特
   徴とする特許請求の範囲第１項〜第３項のいずれ
   かに記載の変速機の同期噛合装置。 ５ インサートスプリングは、樹脂により本体部
   を形成してなり、その両自由端部にカツプリング
   スリーブのスプライン歯の面取部に係合する曲折
   部を形成したことを特徴とする特許請求の範囲第
   １項〜第３項のいずれかに記載の変速機の同期噛
   合装置。