JPS6239806B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、変圧器、リアクトル等の油入電気機
器用タンクにかかり、特にシート状の薄鋼板を波
形に折曲げてひれ状の張出部を形成し、その張出
部によつて張出油室を形成した放熱板を有する油
入電気機器用タンクに関する。

一般に、油入電気機器では機器内部で発生した
熱を絶縁油を媒体としてタンク表面から放熱する
ようにしている。このため油入電気機器のタンク
は通常次のようにして放熱効果を高め得る構造と
している。すなわち、側板に放熱フインを取付け
る方法、側板に上下で連通する放熱パイプを取付
ける方法、２枚のパネル板の外周をシーム溶接し
てパネルエレメントを構成し上下のヘツダーをタ
ンクに取付ける方法、および側板を波形に折曲げ
て放熱面積を拡大する方法等があり、特に近年は
後者の２つが多く採用されている。

ところで、前記２枚のパネル板の外周をシーム
溶接して形成したパネルエレメントを必要な放熱
量に応じて複数個溶接により連結固着させて構成
したいわゆるパネル形放熱器（図示せず）は、そ
の製造に多くの工程を要し、その製作に長時間を
要する等の不都合がある。すなわち、その製作に
は、フープ材の所定寸法の切断、プレス成形、パ
ネル板中溝スポツト溶接、パネル板外周シーム溶
接、パネルエレメントひねり矯正、パネルエレメ
ント間組合せ溶接、ヘツダー挿入、ヘツダーとパ
ネルとの溶接、パネル外部補強溶接、パネル放熱
器のタンクへの取付等の多数の工程を必要とす
る。

また、パネル板外周シーム溶接やパネルエレメ
ント間のステツチ溶接等の溶接全長は非常に長く
なり、かつ溶接雰囲気として必ずしも十分でない
抵抗溶接部分が殆んどであり、溶接欠陥による油
洩れの可能性があり信頼性にも欠ける等の問題点
もある。

さらに、放熱器は輸送時に加わる上下、前後、
左右方向の振動加速度の繰返し疲労に対し耐え得
る強度を有しなければならないが、パネル放熱器
は油を含む放熱器重量、放熱器重心部に加わる振
動加速度、およびタンク側壁部から放熱器重心位
置までの距離の相乗積のモーメントが、放熱器上
下部に設けたヘツダーの根元すなわちタンク側壁
取付部に生じ、またパネルエレメント連結溶接部
にも曲げ、ねじり、せん断等の合成力が作用す
る。したがつて、多量の熱を発生する機器におい
ては、パネルエレメントの枚数が多くかつ長さが
大なるものが必要となるため、前述部位に非常に
大きな応力が発生して輸送時に破損に至ることが
ある。そこで、これらの発生応力を許容値以下に
おさえるため、パネル放熱器の外側にてタンクと
連結する補強を必要とし、さらにそのための製作
工数が増大する。

なお、この種放熱器はプレスによりパネル板を
成形しており、プレス型の関係でパネル幅、長
さ、パネル間ピツチの種類が限定され、このため
機器毎に最適のパネル幅、長さ、パネル間ピツチ
を選定することができず、設計自由度に制約をう
け最適設計ができない等の欠点をも有している。

一方、側板を波形に折曲げて放熱面積を拡大す
る方法は、第１図に示すような波形状放熱板が使
用される。すなわち、第２図に断面図で示すよう
に、薄いシート状の鋼板１を波形に折曲せしめ一
定間隔毎にひれ状張出部１ａを形成し、そのひれ
状張出部１ａの先端部を複数個の補強片２によつ
て互いに連結するとともに、上記突出部の上下両
端縁を、第３図のようにそれぞれ圧接し、例えば
MAG溶接などで融着させ１個の放熱板とするも
のである。しかして、この放熱板を使つて油入電
気機器のタンクを構成する場合には、第４図に示
すように、上記放熱板３の上下両端縁をそれぞれ
タンクの上部側板４および下部側板兼底板５に溶
接等により固着する。

この場合、開放形油入電気機器用タンクとする
と、タンクに加わる内圧として油頭があるため、
このタンク内圧に対して上記放熱板のひれ状張出
部における壁面の応力および変形量が許容値以下
となることが要求される。

また、絶縁油の劣化を防止するため密封形のタ
ンクとする場合には、油頭の他に中身の温度上昇
に伴なう絶縁油の膨張とガス室内の温度上昇によ
つてガス室の圧力上昇が起り、これにより張出部
の一部に加わる圧力がその降伏応力を超えると上
記張出部に残留歪が発生することに注意を要す
る。

ところが、上記張出部の応力は、その張出量す
なわち波の深さの自乗に比例し、板厚の自乗に反
比例して発生し、また変形量は波の深さの４乗に
比例し板厚の３乗に反比例して増減するので、張
出部の応力、変形量をそれぞれ許容値以下に押え
るには張出量の大きさに応じて板厚を厚くする必
要があり、また板厚が大きくなれば当然材料費お
よび製品重量が増大する不都合がある。

さらに、第４図の如くタンクの四辺の側壁に波
形状放熱板を構成させた構造では、ひれ状張出部
を放熱効率の点より適切なピツチで設けなければ
ならないので、ひれ状張出部の数はタンクサイズ
に応じた量以上に設けることができない。より大
きな放熱量を必要とする場合には、ひれ状張出部
の張出量を大きくすればよいが、当然製造上制限
があるので、このようなタンク構造は採用できな
い。

本発明はこのような点に鑑み、ひれ状張出部の
板厚を厚くすることなく、機械的強度が大きく放
熱面積も自由に選択することができ、小形軽量で
かつ経済的な油入電気機器用タンクを提供するこ
とを目的とする。

以下、第５図乃至第１５図を参照して本発明の
実施例について説明する。

第５図はタンクの長辺側の側壁を構成する波形
状放熱板１０Ａの平断面図であつて、シート状の
薄鋼板１１を波形に屈曲せしめることによつて一
定間隔毎にひれ状張出部１１ａを連続的に複数個
形成し、その両端にそれぞれ寸法の異なる平板状
部１２，１３を設けており、そのうち寸法の長い
平板状部１３は後述するように長辺側のタンク側
壁部を構成するものである。この波形状放熱板１
０Ａは第７図及び第８図に示すように両端の平板
状部１２，１３がさらにＬ字状あるいはコ字状に
折曲されて隣接する他の波形状放熱板との固着を
行なうための接続端部が形成されている。なお、
各ひれ状張出部１１ａは上下両端縁がそれぞれ圧
接溶接されて袋状になつており、内部を絶縁油が
循環する放熱油室となつている。また各ひれ状張
出部１１ａはそれらの先端部に固着された補強片
１４によつて互に連結されている。

一方、第６図は、タンクの短辺側の側壁を構成
する波形状放熱板１０Ｂの平面断面図であつて、
シート状の薄鋼板１１を波形に折曲せしめること
によつてほぼその全長にわたつて多数のひれ状張
出部１１ａが連続的に形成されており、その両端
部にそれぞれ長辺側の側壁と接合するための平板
状部１５が形成されている。この波形状放熱板１
０Ｂの平板状部１５，１５は第９図及び第１０図
に示すようにひれ状張出部１１ａの張出方向と逆
方向にコ字状に折曲されて接続端部が形成されて
いる。

第１１図は全周が上記波形状放熱板１０Ａ，１
０Ｂによつて構成されたタンク側壁を示す平面断
面図であつて、それぞれ４個の波形状放熱板１０
Ａを使用し、寸法の長い平板状部１３を有する接
続端部どうしまたは他方の接続端部どうしの接合
部１６または１７を油密に固着して構成され、隣
り合う波形状放熱板１０Ａの平板状部１３が最内
側に位置することによりタンク側壁部が形成され
るとともに隣り合う波形状放熱板１０Ａのひれ状
張出部の基部が所定の間隔を介して対向配置され
ることにより、タンク側壁から外方に向けてのび
る通油路２０及びこの通油路２０に直交するよう
に連通する、複数個のひれ状張出部からなる放熱
油室が形成される。また短辺側のタンク側壁は上
記長辺側の２側壁間に波形状放熱板１０Ｂを配設
し、その接続端部と前記の波形状放熱板１０Ａの
接続端部との接合部１７をそれぞれ油密に固着し
て構成され、この波形状放熱板１０Ｂの両端部の
ひれ状張出部の基部が所定の間隔を介して波形状
放熱板１０Ａのひれ状張出部の基部と対向配置さ
れてタンク側壁部外方にのびる通油路２０及びこ
の通油路２０に直交するように連通する、複数個
のひれ状張出部からなる放熱油室が形成される。
しかして、上述のようにして構成されたタンク側
壁の上下両端部に、第１２図および第１３図に示
すように上部側板１８および下部側板兼底板板１
９を固着するとともに、互いに基部が対向する各
ひれ状張出部１１ａ間に形成される連通路２０の
上下部に蓋板２１を溶接により油密に固着するこ
とによつて一個のタンクが構成される。

なお、上記実施例においてはタンクの短辺側の
側壁を、波形状放熱板１０Ｂで構成したものにつ
いて述べたが、波形状放熱板１０Ｂにかえて平板
または湾曲板あるいは多角形板を使用してもよ
く、さらには長辺側の側壁と同様に複数個の波形
状放熱板１０Ｂを使用し、隣接する波形状放熱板
のひれ状張出部の基部が対向するように配設して
構成してもよい。

さらに、各波形状放熱板間の固着部は、各波形
状放熱板の接続端部を第１４図ａ〜ｈ及び第１５
図ａ〜ｆに示すような色々な形状にして溶接を行
なうこともできる。

本発明においては油入電気機器用タンクを上述
のように構成したので、波形状放熱板自体の製造
工程が、フープ材の波形状折曲げ、波状部両端縁
のスクイズ溶接、補強片溶接、波形状放熱板の平
板状部折曲げ、タンク側板組立溶接となり、放熱
器とタンクを含めて従来のタンクの半分以下の工
程で安価にしかも短時間で製作することができ
る。

また、パネル放熱器に比し溶接部全長は約1/4
と大幅に減少し、溶接個所に対する信頼性が増
し、さらにシールドガスを用いた溶接雰囲気の良
好なMAG溶接等で固着できるので、シーム溶
接、ステツチ溶接等の抵抗溶接に比し一層溶接の
信頼性が向上する。

さらに、特定のサイズ専用のプレス型を必要と
せず、ひれ状張出部の長さおよびひれ状張出部間
ピツチを機器毎に最適のもの選択することがで
き、設計自由度を大幅に向上することができると
いう大きな利点をも有する。

また、本発明においては、第１１図に示した実
施例のように、タンク四隅にも自由にひれ状張出
部を形成することができ、一定放熱量において
は、機器外形寸法の縮少化すなわちフロアースペ
ースの減少を計ることができる。

一方、波形状放熱板を使用した従来のタンクで
は機器の発熱量が増大すればひれ状張出部の張出
量（波の深さ）を大きくしたり、あるいは波のピ
ツチを小さくして放熱面積を増すことになるが、
張出量すなわち波の深さは波形成形工程やひれ状
張出部両端縁のスクイズ成形工程における製造設
備の能力に限界があつて大きくできず、またひれ
状張出部の波のピツチも空気側の効果的な放熱特
性を得るためにはあまり小さくできないので、放
熱量の大きい機種には適用できなかつた。

しかも、開放形油入電気機器においては油頭に
よる圧力が、また密封形油入電気機器ではさらに
中身の温度上昇に伴なう絶縁油の膨張とガス室内
温度上昇によるタンク内圧上昇が加わり、これら
のタンク内圧に対するひれ状張出部の応力、変形
量を許容値以下としなければならず、このため波
の深さが大きくなると当然波の深さに応じて板厚
を厚くしなければならず、重量が増加する欠点が
あつた。しかしながら、本発明においては、隣り
合う波形放熱板１０Ａ，１０Ａのひれ状張出部の
基部が対向配置されてタンク側壁部より外方に向
けてのびる通油路２０及びこの通油路２０に直交
するように連通する複数個のひれ状張出部からな
る放熱油室が形成されているので、ひれ状張出部
の張出方向がタンク側壁部と略平行に配置される
ようになり、従つて外方に向つて通油路２０を長
くし、加えてひれ状張出部数を増加することによ
つて、タンクサイズに特に制限を受けることなく
所要放熱面積を確保することができる。

しかも、タンク内圧に応じてひれ状張出部の応
力および変形量が許容値下となるように、タンク
内圧の大なるものについては波の深さを小さくし
て板厚をあげることなく対応がとれ、従来のタン
クに比し材料の低減、製品の軽量化を計ることが
できる。

以上説明したように、本発明においては従来の
タンクに比しその製作工程を半分以下に大幅に削
減でき、安価にしかも短時間で製作することがで
きる。また、四辺に波形状放熱板を構成させる従
来のタンクに比し、放熱面積の増大が容易にで
き、従来と同一放熱量のタンクの場合には板厚の
減少を行なうことができ、材料費の低減、製品の
小形、軽量化をも図ることができる等の効果を奏
する。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の波形状放熱板の概略斜視図、第
２図はその張出部の横断面図、第３図はその縦断
面図、第４図は上記波形状放熱板を使用した油入
電気機器用タンクの斜視図、第５図及び第６図は
タンクの長辺側壁及び短辺側壁を構成する波形状
放熱板の製作途上の平断面図、第７図及び第８図
は長辺側壁を構成する波形状放熱板の平断面図及
び側面図、第９図及び第１０図は短辺側壁を構成
する波形状放熱板の平断面図及び側面図、第１１
図は波形状放熱板によるタンク側壁組立構成図、
第１２図は本発明の油入電気機器タンクの平面
図、第１３図は第１２図のＸ―Ｘ線に沿う断
面図、第１４図ａ〜ｈ及び第１５図ａ〜ｆはそれ
ぞれ波形状放熱板間の固着部の実施例を示す図で
ある。 １０Ａ，１０Ｂ…波形状放熱板、１１ａ…ひれ
状張出部、１２，１３，１５…平板状部、１８…
上部側板、１９…下部側板兼底板。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ シート状の薄鋼板を波形に折曲することによ
   つて複数個のひれ状張出部を形成するとともにそ
   の両側に接続端部を形成しかつ前記各ひれ状張出
   部の上下両端縁を油密に閉塞して内部を絶縁油が
   循環する放熱油室とした波形状放熱板を複数個使
   用し、各波形状放熱板の接続端部を油密に固着し
   てタンク側壁を構成したものにおいて、前記各波
   形状放熱板は一方の接続端部側にタンク側壁部を
   構成する平板状部を有しており、この平板状部を
   有する側の接続端部どうしまたは他方の接続端部
   どうしが油密に固着されて、隣り合う波形状放熱
   板の平板状部によりタンク側壁部を形成するとと
   もに隣り合う波形状放熱板の複数個のひれ状張出
   部の基部が対向して配置されることにより前記タ
   ンク側壁部より外方に向けてのびる通油路及びこ
   の通油路に直交するように連通する複数個のひれ
   状張出部からなる放熱油室を形成したことを特徴
   とする油入電機機器用タンク。