JPS621116B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、空気あるいは冷媒ガスなどを昇圧
するガス圧縮機あるいは膨脹機として用いられる
スクロール流体装置に関する。

まず、スクロール流体装置の基本構成および作
動原理を第１図および第２図により説明する。

スクロール流体装置は、円板状の鏡板１にイン
ボリユート曲線あるいはこれに近似の曲線からな
るうず巻き状のラツプ２を直立させて形成した固
定スクロール３と、この固定スクロール３と同一
形状の鏡板４、ラツプ５からなる旋回スクロール
６とを互いにラツプ２，５を内側に向けてかみ合
わせ、また旋回スクロール６の見かけ上の自転を
阻止するオルダムリング７を固定スクロール３に
固定された静止部分と旋回スクロール６との間に
設けたものである。

このような構成において、旋回スクロール６の
中心Omが固定スクロール３の中心Osのまわりを
時計方向に旋回運動すると、両鏡板１，４および
両ラツプ２，５間に形成され、両ラツプ２，５の
巻き終り端に位置していた密閉空間Va，Vbは、
両スクロール３，６の中心に向つて移動しながら
体積が徐々に縮小していく。

また、旋回スクロール６の中心Omが反時計方
向に旋回運動すると、両スクロール３，６の中心
に位置していた密閉空間Vc，Vdは、両ラツプ
２，５の巻き終り端に向つて移動しながら体積が
徐々に増加していく。

従つて、固定スクロール３の中心に設けられた
ポート８を吐出口とし、旋回スクロール６を時計
方向に旋回運動させてやれば、この装置は圧縮機
として動作する。また、固定スクロール３のポー
ト８から高温高圧のガスを流し込めば、この装置
は、膨張機として動作する。

この装置が作動している状態では、固定スクロ
ール３と旋回スクロール６とを引き離そうとする
力が、密閉空間Va，Vb，Vc，Vd内に存在する流
体圧によつて両スクロール３，６間に発生する。
そのため、このままでは両スクロール３，６は離
れてしまい、正常な圧縮、膨脹、液体移送動作が
できなくなるので、ガス圧あるいはばね圧を旋回
スクロール６の反ラツプ面に作用させて、引き離
そうとする力よりも大きい押し付け力を旋回スク
ロール６に加えている。

このようなスクロール流体装置においては、旋
回スクロール６を旋回運動させる力（圧縮機の場
合）あるいは負荷（膨脹機の場合）の作用点は点
Ｆであり、密閉空間Va，Vb，Vc，Vd内ガス圧の
作用点は点Ｇである。両作用点Ｆ，Ｇに加わる力
は互いに対向しており、しかも両作用点Ｆ，Ｇは
軸方向にはなれているので、旋回スクロール６は
矢印Ｍのようなモーメントを受け、旋回スクロー
ル６の鏡板４が固定スクロール３の鏡板１に局部
的に強く押し付けられる。そのため、固定スクロ
ール３と旋回スクロール６との間の摺動摩擦損失
が増大するとともに、旋回スクロール６が固定ス
クロール３に対して傾いた状態で旋回運動するよ
うになるので両スクロール３，６の鏡板１，４お
よびラツプ２，５の良好な接触がくずれて、ガス
漏れの増加を招く問題があつた。

また、旋回スクロールと静止部分との間の潤滑
に関連するものとしては、米国特許第3924977号
（特開昭52−57507号の対応アメリカ特許）があ
る。

この特許公報には、摺動面の円一円周上に、複
数個のオイルポケツトを設置したものが開示され
ている。しかし、これらのすべてのオイルポケツ
トは、リング状の共通の共通通路に連絡されてお
り、一部のオイルポケツトの領域にのみ大きい押
付け力が作用した場合には、この領域のポケツト
内のオイルが他の領域のオイルポケツトに流れ込
み、大きい押付け力が加わつているにもかかわら
ず、この押付け力が大きい領域のオイルポケツト
内の油圧は上昇しない。そのため、押付け力が局
部的に大きくなるのを抑制する機能はもつていな
い。

この発明の目的は、簡単な構成によつて旋回ス
クロールに作用する押付け力が局部的に大きくな
るのを解消し、これによつて旋回スクロールが固
定スクロールに対して傾いた状態で旋回運動する
のを抑制するとともに両スクロール間の摺動摩擦
損失を軽減することにある。

この発明の特徴は、旋回スクロールの反ラツプ
側の面にガス圧を作用させて旋回スクロールを固
定スクロールに対して押付けた状態で旋回運動さ
せるものにおいて、旋回運動の際、互いに接触す
る両スクロールの鏡板外周部の何れか一方の摺動
面に、回転方向に区画された複数個の各々独立し
たポケツトを有し、これらの各ポケツトと供給源
とを連絡し、供給源からの潤滑液を各ポケツトに
導く供給通路を各ポケツト毎に有し、これらの各
供給通路のそれぞれの途中に絞りまたは逆流阻止
手段を有するものである。

上記のように、ポケツトは回転方向に複数に区
画され、かつ各ポケツト毎に絞りまたは逆流阻止
手段を有し、ポケツト内の潤滑液が供給通路を通
つて流出するのを制限または阻止しているので、
旋回運動の際旋回スクロールに作用する押付け力
が局部的に大きくなる領域（この領域は旋回運動
とともに回転する）に位置するポケツト内の油
は、逃げ場を失い、押付け力の大きさに応じて高
圧となり、局部的に大きくなろうとする押付け力
が打ち消される。

そのため、旋回スクロールの押付け力が局部的
に大きくなろうとする領域のみが固定スクロール
に密着し、それ以外の領域が固定スクロールから
離れる状態すなわち、旋回スクロールの傾きが抑
制される。

旋回スクロールを固定スクロールに向つて押付
けて旋回運動させる方式においては、この押付け
力を、密閉空間のガス圧によつて発生する力（以
下ガス力という）より若干大きく設定するのが一
般的であり、前記押付け力とガス力との差（有効
押付け力）は小さいので、局部的に大きくなる領
域の押付け力の大きさが前記有効押付け力の大き
さに対する比率は高い。そのため、局部的に大き
くなる押付け力によつて起こる旋回スクロールの
傾きなどの悪影響は大きいものであるが、本発明
によれば、これを解消できるという多大な効果が
ある。

以下この発明の実施例を第３図ないし第１０図
により説明する。

なお、前述の通り構成は、圧縮機および膨脹機
のいずれもほぼ同じであるから以下の説明では圧
縮機の場合について述べる。

第３図、第４図、第５図および第６図は、この
発明の第１の実施例を示すものである。

固定スクロール３は、円板状の鏡板１と、この
鏡板１に直立し、インボリユート曲線あるいはこ
れに近似の曲線に成形され、厚さｔおよび高さｈ
が一様なラツプ２とからなり、その中心部に吐出
口８、外周側に吸入口９を備えている。また固定
スクロール３は、鏡板１の外周部に、その中心
Osから等距離の位置に等角度間隔に配置された
複数個たとえば６個の給油孔１０（１０ａ，１０
ｂ，１０ｃ，……）および油ポケツト１３（１３
ａ，１３ｂ，１３ｃ，……）を備えている。これ
らの油ポケツト１３（１３ａ，１３ｂ，１３ｃ，
……）は、隣接するもの同士の間隔が・
（以下旋回半径εという）の２倍以下になるよう
に配列されている。

また、これらの給油孔１０（１０ａ，１０ｂ，
１０ｃ，……）は各々絞り１１（１１ａ，１１
ｂ，１１ｃ，……）を経由して共通の給油配管１
２に連絡されている。給油配管１２は給油ポンプ
（図示せず）に連絡されている。

旋回スクロール６は、円板状の鏡板４に直立
し、固定スクロール３のラツプ２と同一形状に成
形されたラツプ５と、鏡板４の反ラツプ面（以下
背面という）に設けられたスクロールボス６ａと
からなる。スクロールボス６ａの中心は、旋回ス
クロール６の中心Om線上に位置している。

固定スクロール３と旋回スクロール６とは、ラ
ツプ２，５が互いに内側に向けられ、ラツプ２の
巻き終り端２ａとラツプ５の巻き終り端５ａとが
中心Om，Osを結ぶ線上の中間の点Ｏに関して点
対称になるようにかみ合わされている。

フレーム１４は、固定スクロール３のラツプ側
の面に数本のボルトによつて固定され、固定スク
ロール３と向き合つている側には、おう部１４ａ
を備えている。このおう部１４ａは、途中に減圧
弁１５が設けられた配管１６を経由して吐出口８
に連絡されている。

クランクシヤフト１７は、フレーム１４に取付
けられた軸受１８，１９に回転自在に支持され、
その軸心は固定スクロール３の中心Osと一致し
ている。このクランクシヤフト１７は、その端部
にクランクピン１７ａを備え、このクランクピン
１７ａの中心は、クランクシヤフト１７の軸心か
ら旋回半径εに相当する距離だけはなれたところ
に位置している。このクランクピン１７ａは、ス
クロールボス６ａにはめ込まれ、クランクピン１
７とスクロールボス６ａとの間に軸受２０が設け
られている。

パランシングウエイト２１は、クランクシヤフ
ト１７に取り付けられている。

オルダムリング７は、第５図に示すように、一
方の面に溝７ａを備え、他方の面に溝７ａに直交
する溝７ｂを備えており、このオルダムリング７
は、フレーム１４と旋回スクロール６の背面との
間に配置されている。オルダムリング７の溝７ａ
には、フレーム１４に固定されたオルダムキー２
２がはめ込まれ、溝７ｂには旋回スクロール６の
背面に固定されたオルダムキー（図示せず）がは
め込まれている。

メカニカルシール２３は、フレーム１４に固定
されたハウジング２４に納められており、ハウジ
ング２４に固定されたシールリング２５と、クラ
ンクシヤフト１７に移動可能にはめ込まれたフロ
ーテングリング２６と、このフローテングリング
２６をシールリング２５に押し付けるばね２７
と、ハウジング２４とシールリング２５間および
クランクシヤフト１７とフローテングリング２６
間の気密を保つＯリング２８とからなる。

次にこの実施例の動作を説明する。

圧縮を行う際の動作は、作動原理で説明した通
りであるからその説明は省略し、旋回スクロール
６に加わる局部的な強い押し付け力（以下偏つた
押し付け力という）を打ち消す作用を述べる。潤
滑油は、給油配管１２を経由して各絞り１１ａ，
１１ｂ，１１ｃ，……に圧送されてくる。この潤
滑油は各絞り１１ａ，１１ｂ，１１ｃ，……を通
つた後各給油孔１０ａ，１０ｂ……を経由して各
油ポケツト１３ａ，１３ｂ，１３ｃ……に送り込
まれる。各油ポケツト１３ａ，１３ｂ，１３ｃ…
…内には潤滑油が充満する。

一方第３図および第６図に示すように、旋回ス
クロール６を旋回させる力すなわち圧縮をしよう
とする力Faは、旋回スクロール６の中心Omの線
上に作用し、圧縮を妨げようとする力（すなわち
密閉空間Va，Vb……のガス圧）Gaは、両スクロ
ール３，６の中心Os，Omを結ぶ線上で、両中心
Os，Omから等距離の点Ｏの線上に作用する。ま
た軸方向については、力Faはクランクピン１７
ａおよびスクロールボス１２の軸方向長さの中間
の位置Ｆに作用し、力Gaは、旋回スクロール６
のラツプ５の半分の高さの位置Ｇに作用する。

従つて、偏つた押し付け力は、概ね旋回スクロ
ール６の中心Om、固定スクロール３の中心Osを
通る直線を境にして旋回スクロール６を旋回させ
る力Faが向いている側だけに加わることにな
る。この偏つた押し付け力が加わる範囲は、第６
図ａでは中心Osを境にして上方側となり、同様
に第６図ｂでは右方向、第６図ｃでは下方側、第
６図ｄでは左方側となり旋回スクロール６の中心
Omの旋回運動とともに同方向に旋回している。
油ポケツト１３内の油は、絞り１２によつて油ポ
ケツト１３内から供給源に向つて流れるのを制限
された状態であり、この状態で旋回スクロール６
の背面に偏つた押し付け力が加わるので、押し付
け力が加わつた部分に位置する油ポケツト１３内
には押し付け力に対応する油圧が発生して、この
油圧が偏つた押し付け力の全部あるいは一部と平
衡し、偏つた押し付け力の全部あるいは一部が打
ち消される。

第７図はこの発明の第２の実施例を示すもので
ある。この実施例において同一または相当するも
のには第３図、第５図、第６図と同一符号を付し
それらの説明は省略する。

この実施例は、旋回スクロール６および固定ス
クロール３の各ラツプ５，２先端の摺動面に、く
ぼみ２９を設けたものである。その他は第１の実
施例と同じである。くぼみ２９は、ラツプ５，２
に沿つて多数設けられ、各々独立している。な
お、油ポケツト２９は旋回スクロール６のラツプ
５に設けられている状態のみ図示されている。こ
のように、ラツプ５，２の端面に油ポケツト２９
を設けると、吸入ガスあるいは圧縮途中の部屋に
噴射された油が圧縮機の運転中にくぼみ２９に充
満する。

これによつて、ラツプ５，２の摺動面の潤滑を
良好にし同時に、圧力の高い密閉空間たとえば密
閉空間Vdからラツプ５，２を乗り超えて圧力の
低い密閉空間Vd′にガスが漏れるのを効果的に阻
止することができる。

第８図はこの発明の第３の実施例を示すもので
ある。

この実施例は、第１の実施例における油ポケツ
ト１３を２重（多重でもよい）に配置したもので
ある。

油ポケツト１３は内側の油ポケツト１３ｇ，１
３ｈ，１３ｉ，１３ｊ，……と外側の油ポケツト
１３ｏ，１３ｐ，１３ｑ，１３ｒ，１３ｓ……と
からなる。内側の油ポケツトと外側の油ポケツト
との間隔および隣接する油ポケツト同士の間隔
は、旋回半径εの２倍以下になるように各油ポケ
ツトが配列されている。

給油孔１０は各油ポケツト１３（１３ａ，１３
ｂ，……）に対して各々設ける。なおこのように
油ポケツト１３を多重に配列した場合、油ポケツ
ト１３の数が増加するので、次に示すような（第
４の実施例）工夫をすると給油孔１０の数を減ら
すことが可能である。

第９図はこの発明の第４の実施例を示すもので
ある。

この実施例は、第１、第２または第３の実施例
において、各油ポケツト１３ａ，１３ｂ，１３ｃ
……を極く細く絞り機能を有する通路３０で連通
したものである。全部の油ポケツト１３ａ，１３
ｂ，１３ｃ……について隣接するもの同士を互い
に連通してもよいが、ある油ポケツト１３を中心
に両隣りの油ポケツト１３同士すなわち、３個の
油ポケツトを１つのグループとして互いに通路３
０で連通し、真中の油ポケツト１３のみに給油孔
１０を設けるのが好ましい。このように、３個の
油ポケツト１３を１つのグループにすると、給油
孔１０の数を少なくできるとともに、給油孔１０
を備えた油ポケツト１３から給油孔１０を備えな
い両隣りの油ポケツト１３への給油（押し付け力
が加わつた際に油ポケツト１３から漏れ出した油
の補給）が必要量確保できる。

なお前記の各実施例では、油ポケツトを固定ス
クロールに設けた場合だけ述べたが、旋回スクロ
ールに油ポケツトを設けることもできる。この場
合、油ポケツトと給油孔は常時連通状態となるよ
うに両者の位置、大きさ（幅）などを選定しなけ
ればならない。

以上詳細に述べたようにこの発明によれば、固
定スクロールと旋回スクロールとの摺動面に油ポ
ケツト設け、これらの油ポケツトの中で偏つた押
し付け力が加わる部分に位置する油ポケツトに、
偏つた押し付け力の全部あるいは一部を打ち消す
圧力を生じさせて、旋回スクロールに部分的に加
わる強い押し付け力を打ち消しあるいは緩和して
いるので、固定スクロールと旋回スクロールとの
摺動面間の摩擦損失を軽減するとともに、固定ス
クロール、旋回スクロールの両鏡板、両ラツプの
接触を良好に維持してガス漏洩を防止することが
できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、一般的なスクロール流体機械の縦断
面図、第２図は、第１図の−′断面図、第３
図は、この発明の第１の実施例の縦断面図、第４
図は、第３図の−′断面図、第５図は、オル
ダムリングの正面図、第６図は、偏つた押し付け
力が加わる位置を説明する説明図、第７図は、こ
の発明の第２の実施例の縦断面図、第８図は、こ
の発明の第３の実施例の要部拡大断面図、第９図
はこの発明の第４の実施例の要部拡大図である。 １，４……鏡板、２，５……ラツプ、３……固
定スクロール、６……旋回スクロール、７……オ
ルダムリング、８……吐出口、９……吸入口、１
０（１０ａ，１０ｂ，……）……給油孔、１１…
…絞り、１３（１３ａ，１３ｂ，……）……油ポ
ケツト、１４……フレーム、１７……クランクシ
ヤフト、１７ａ……クランクピン、１８，１９，
２０……軸受、２１……バランシングウエイト、
２２……オルダムキー、２３……メカニカルシー
ル、２９（２９ａ，２９ｂ……）……くぼみ、３
０……通路。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 固定スクロールは、鏡板と、この鏡板に直立
   しているうず巻き状のラツプとを有し、旋回スク
   ロールは、鏡板と、この鏡板に直立しているうず
   巻き状のラツプとを有し、これら両スクロール
   は、互いにラツプ同士が向かい合つた状態でかみ
   合い、旋回スクロールが、その反ラツプ側の面に
   作用するガス圧によつて固定スクロールに向つて
   押付けられ、固定スクロールの鏡板外周部と、旋
   回スクロールの鏡板外周部とが接触した状態で見
   かけ上自転することなく旋回運動するものにおい
   て、旋回運動の際、互いに接触する両スクロール
   は鏡板外周部の何れか一方の摺動面に、回転方向
   に区画された複数個の各々独立したポケツトを有
   し、これらの各ポケツトと供給源とを連絡し、供
   給源からの潤滑液を各ポケツトに導く供給通路
   を、各ポケツト毎に有しこれらの各供給通路のそ
   れぞれの途中に、絞りまたは逆流阻止手段を有
   し、旋回運動の際、前記押付け力が局部的に大き
   くなる領域に位置するポケツトから供給源に向つ
   て潤滑液が流れるのを制限しまたは阻止して旋回
   スクロールに作用する押付け力が局部的に大きく
   なるのを抑制することを特徴とするスクロール流
   体装置。 ２ 前記旋回スクロールおよび固定スクロールの
   各ラツプの端面に、ラツプの延長方向に区画され
   た複数のくぼみを有する特許請求の範囲第１項に
   記載のスクロール流体装置。 ３ 前記ポケツトのうちの隣接するもの同士を連
   通する絞り通路を有する特許請求の範囲第１項、
   第２項のいずれかに記載のスクロール流体装置。