JPS6120279Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は振動騒音の低減を図つた自動車用エ
ンジンに関する。

第１図は「自動車工学全書４ガソリンエンジ
ン」等に記載された従来の自動車用エンジンにお
けるハーフスカート形のシリンダブロツク１を示
し、このシリンダブロツク１は複数のライナ部２
を有するとともに、このライナ部２を形成する側
壁３内には冷却水を通過せしめるウオータジヤケ
ツト４が設けられている。そして、側壁３の下部
には外方に円弧状に拡開したスカート部５が一体
的に連接されるとともに、その下端にオイルパン
取付用の取付フランジ６が形成されており、かつ
この取付フランジ６後端部には変速機取付部７が
突出形成されている。また上記スカート部５内に
は複数のベアリング保持部８が一体に成形されて
おり、この保持部８に個々に対向して取り付けら
れたベアリングキヤツプ９との間に、ベアリング
メタルを介してクランク軸を支持する構成となつ
ている。

しかしながら、このような従来の構成にあつて
は、上下あるいは左右の曲げ，ねじれに対する剛
性について格別な配慮がなされていないため、燃
焼衝撃力に起因するクランク軸からの加振入力に
よつてシリンダブロツク１自体が振動し易く、ま
たベアリングキヤツプ９が各独立して設けられて
いるため、同様に燃焼衝撃力によつて各ベアリン
グキヤツプ９が前後方向（クランク軸方向）に倒
れ振動を生じ易く、この倒れ振動がシリンダブロ
ツク１自体の振動と相乗してスカート部５を大き
く加振してしまう。そしてスカート部５では、そ
の構造上左右に拡開する膜振動を生じ、外部へ著
しい騒音を放射してしまうとともに、さらには二
次発音源となるオイルパンをも振動させてしまう
のである。尚、このような振動騒音はシリンダブ
ロツク１を軽合金製として軽量化を図つた場合
や、あるいは第２図に示すようにアツパデツキを
省いた場合に特に著しい。また上記従来のもので
は、シリンダブロツク１後端に取り付けられる変
速機との結合剛性も弱く、変速機との連成振動の
固有振動数が低くなつて低周波の車内騒音が増大
するという欠点もあつた。

この考案はこのような従来の問題点に鑑みてな
されたもので、シリンダブロツク側面に補強リブ
を突設して、曲げ，ねじれ等に対する剛性を向上
させることにより、上記問題点を解決しようとす
るものである。

以下、この考案の一実施例を第３〜５図に基づ
いて詳細に説明する。

図において、１１はシリンダブロツクを、また
１２はベアリングビームを示し、上記シリンダブ
ロツク１１には、そのスカート部１３の両外側面
に、ブロツク前端から後端にわたつて薄板状の補
強リブ１４が一体的に突設されている。この補強
リブ１４は、オイルパン取付フランジのフランジ
面より上方でかつクランク軸の中心線に略一致す
る高さ位置に水平方向に設けられており、オイル
パン取付フランジより外側に突出した状態をなし
ているとともに、その後端部に連続して変速機取
付部１５が形成されている。またシリンダブロツ
ク１１は後端が質量が大きく、剛性を高くする必
要があるので、上記補強リブ１４は、シリンダブ
ロツク１１後端部に向かつて突出幅が漸次大きく
なつており、その最も突出幅が大きい後端部にお
いて上記変速機取付部１５に接続している。

一方、上記ベアリングビーム１２は、半円状の
ベアリング嵌合部を有する複数のベアリングキヤ
ツプ部１６と、このベアリングキヤツプ部１６を
その下部において一体に連結するビーム部１７と
から構成され、例えば両者一体に鋳造されている
もので、上記ベアリングキヤツプ部１６がシリン
ダブロツク１１のベアリング保持部１８にボルト
１９結合されて、ここにクランクシヤフトを軸受
けするようになつている。尚、上記ベアリングキ
ヤツプ部１６とビーム部１７とを別部材とし、例
えばボルト結合等よりベアリングビーム１２を構
成するようにしても良い。

上記の構成にあつては、シリンダブロツク１１
側面の補強リブ１４および下縁に位置するビーム
部１７が補強部材として作用し、第４図のような
断面において３点に配置される形となるこれらの
補強部材によつてシリンダブロツク１１の剛性が
大幅に高められ、その各種振動変形を効果的に抑
止する。即ち、上下方向の曲げに対しては主とし
てビーム部１７が、また左右方向の曲げに対して
は主として薄板状に突出した補強リブ１４が夫々
作用し、かつねじれに対しては補強リブ１４とビ
ーム部１７とが協働して剛性を発揮する。そして
ビーム部１７によつて、各ベアリングキヤツプ部
１６の倒れ振動が抑止され、この倒れ振動に起因
するスカート部１３への加振入力が低減するとと
もに、スカート部１３は薄板状に突出した補強リ
ブ１４に規制されて拡開方向への膜振動が発生し
にくくなり、上記の剛性向上効果と相乗して放射
騒音が著しく低減される。さらにスカート部１３
の振動減少によりオイルパンからの騒音も抑制さ
れる。また、補強リブ１４と変速機取付部１５が
連続しているため、変速機とシリンダブロツク１
１との結合剛性が向上し、低周波の車内騒音が著
しく低減するとともに、プロペラシヤフトの危険
回転速度も上昇する。しかも上記補強リブ１４
は、シリンダブロツク１１後端部に向かうほど断
面積が大きくなつているので、変速機に取り付け
られるシリンダブロツク１１後端部の剛性を十分
なものとすることができ、かつシリンダブロツク
１１前端部側において無用な重量増加を来すこと
がない。

また、上記補強リブ１４を設けたことによりシ
リンダブロツク１１単体で左右の曲げ等に対する
十分な剛性を有するため、ビーム部１７はこれを
考慮する必要が無く、ベアリングキヤツプ１６の
倒れ振動を抑止する最小限の寸法のもので十分な
効果を上げることができ、エンジンの軽量化を損
うことなく、極めて効果的に騒音低減が達成でき
る。

尚、この考案は上記の実施例に限定されるもの
では無く、例えば第２図に示したようなアツパデ
ツキを除去した形式のものにも適用でき、この場
合、この種エンジンの利点である軽量化を損わな
いので特に好適である。

以上の説明で明らかなように、この考案によれ
ば、シリンダブロツクの両側に位置する一対の補
強リブと下縁に位置するビームとの協働によつて
各種振動変形に対する剛性が大幅に向上し、ビー
ムによるベアリングキヤツプの倒れ振動の抑止効
果と相俟つて、エンジンから外部へ放射される騒
音を極めて効果的に低減することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のシリンダブロツクの断面図、第
２図は従来の他の例を示す断面図、第３図はこの
考案の一実施例を示す側面図、第４図は同断面
図、第５図はシリンダブロツクのみ示す下面図で
ある。 １１……シリンダブロツク、１２……ベアリン
グビーム、１３……スカート部、１４……補強リ
ブ、１５……変速機取付部、１６……ベアリング
キヤツプ部、１７……ビーム部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダブロツクのスカート部両外側面にオイ
   ルパン取付フランジのフランジ面より上方でかつ
   クランク軸中心線に略一致した高さ位置に、シリ
   ンダブロツク前端から後端にわたつて薄板状の補
   強リブを、上記オイルパン取付フランジより外側
   に突出した状態に突設し、かつ変速機取付部を上
   記補強リブの後端部に連続して形成するととも
   に、上記補強リブの突出幅を後端部に向かつて漸
   次大きくなるように形成し、更に上記シリンダブ
   ロツクのベアリング保持部に取り付けられる複数
   のベアリングキヤツプを、ビームを介して一体に
   連結したことを特徴とする自動車用エンジン。