JPS6042233Y2 - 固転斜板式圧縮機 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、冷媒ガスを圧縮する回転斜板式圧縮機に関し
、特に、潤滑機構の改善に関する。

一般に、回転斜板式圧縮機は、互いに軸方向に整合して
結合された２つのシリンダブロックの外方端に、吸入通
路によって互いに連通された低圧室を夫々設け、仕切部
材によって吸入通路から仕切られた斜板室内に、駆動軸
に傾斜して固装された斜板を収納し、斜板の回転に伴な
ってピストンがシリンダポア内を往復動し、吸入弁およ
び吐出弁と協働して圧縮作用を行なうように構成されて
いる。

前記斜板とピストンとの間にはボールとシューとが互い
に滑動自在に介設され、斜板の回転運動のピストンの往
復運動への変換が円滑に行なわれるようになっている。

そして、これら斜板、ボール、シューおよびピストン間
の接触部分には激しい摩擦が発生しており、このため、
これら接触部分には潤滑油を常時供給する必要がある。

従来、前記接触部分へ潤滑油を供給する潤滑油供給機構
の一つとして、差圧方式があり、駆動軸の回転に伴なっ
て回転する斜板によりシリンダブロック内下方のオイル
溜りから潤滑油をはね上げオイルミストとし、このオイ
ルミストが前記接触部分に供給されるとともに、斜板室
と連通ずるシリンダボア内のピストンの往復動により発
生する斜板室と低圧室側との圧力差により該低圧室側に
導かれ、駆動軸を回転自在に支持しているラジアル軸受
等の潤滑を行なうようになっている。

しかしながら、この差圧方式に依ると、圧縮機内の保持
潤滑油が減少しオイル溜り内の潤滑油レベルが低下して
斜板によるはね上げ量が一時的に減少し、その結果前記
接触部分の潤滑が十分に行なわれなくなり焼付けが発生
すると云う欠陥がある。

特に、上述した斜板室上部のボールとシューは摺動摩擦
の度合が大きい上に潤滑油の供給量が比較的少ないため
に、前記ピストン、シリンダボア、ラジアル軸受等の圧
縮機の他の部分に比して焼付けが発生し易い。

上述のオイル溜り内の保持潤滑油が減少する原因として
は、オイルミストが前述したように圧力差により低圧室
内に導かれるが、特に圧縮機の始動直後は斜板の回転開
始によりオイル溜り内の圧力が急激に低下し、オイルの
発泡現象が生じて比較的多量の潤滑油が低圧室内に導か
れ、低圧室から冷媒ガスと共にシリンダボア内に吸入さ
れて吐出され冷房サイクル内を循環し、この循環途中に
おいて潤滑油が停滞し圧縮機への戻りが遅れた場合、冷
房サイクルからの冷媒や潤滑油の漏出があった場合等、
圧縮機への帰還冷媒ガスが減少するために圧縮機に戻さ
れる潤滑油の量が減少することが等が挙げられる。

また、前述した従来の潤滑方法の欠点を除去するために
、吸入冷媒中に含まれている潤滑油を供給する方法が考
えられており、特に斜板室内の前記接触部分に上流側、
下流側を問わず潤滑油を供給するために、仕切部材の側
壁の中央部分に斜板室と吸入通路とを連通ずる通孔を設
け、この通孔から斜板室内に流入した冷媒を斜板の揺動
運動により斜板室の上流側、下流側に振り分けて冷媒中
の潤滑油により前記接触部分を潤滑する方法も提案され
ている。

しかしながらこの方法に依ると、前記通孔を介して斜板
室内への冷媒の導入を容易にするために、前記吸入通路
に直接開口するように圧縮機本体の中央部分に吸入コネ
クタを半径方向に突出させて設けているので自動車用部
品として重要な取付性を阻害する欠点がある。

従って、本考案は上述した不具合を解消するためになさ
れてものであり、一時的に潤滑油レベルが低下しても斜
板とシューやボール等との接触部分の潤滑を確保するた
め、潤滑油が混入した冷媒ガスの一部を分流して斜板室
内に流通させるようにした補助的給油機構を有し、且つ
、圧縮機の取付性を満足させる回転斜板式圧縮機を提供
することを目的とする。

以下、本考案の実施例を図面を参照して説明する。

第１図乃至第３図は本考案の一実施例を示し、一対のシ
リンダブロック１，１が互いに軸方向に整合して結合さ
れ、その両側にはバルブプレート２．２を挾んでシリン
ダヘッド３，３が固装されている。

このシリンダブロック１，１の軸心に沿って図示しない
駆動源により駆動される駆動軸４がフロント側を外部に
突出して挿入されている。

斜板５が駆動軸４に斜板して固装され、一対のシリンダ
ブロック１，１内に形成された斜板室６内に配され、こ
の斜板５と駆動軸４とは、スラストベアリング７．７お
よびラジアルベアリング８．８を介してシリンダブロッ
ク１，１に対して回転自在に支持されている。

３個の複動形のピストン９が駆動軸４と平行で、且つ円
周方向に等間隔にシリンダブロック１．１に形成された
例えば３個のシリンダボア１２内に各々摺動自在に挿入
されている。

これらのピストン９は、各々その中央部分の内側が斜板
５の周縁をまたぐようにえぐられ、そのえぐられた部分
の対向する両端面に半球状のボールポケット１０．１０
が形成され、これらのボールポケット１０．１０に嵌め
られたボール１１゜１１、およびこのボール１１．１１
に係合するシュー２８．２８を介して、斜板５の両側面
を挾み付けるようにして斜板５とかみ合っている。

従って、駆動軸４の回転に伴なって斜板５は揺動回転し
てその両側面に摺接されるシュー２８に押圧力を与え、
これにより各ピストン９が夫々のシリンダボア１２内を
往復動する。

上記各シリンダボア１２は、その両側がバルブプレート
２，２によって閉じられていると共に、その中央側が斜
板室６に連通している。

前記シリンダヘッド３，３のそれぞれには隔壁１３．１
３が形成され、シリンダヘッド内部をシリンダブロック
１，１の外方端側にそれぞれ位置して設けられた低圧室
１４．１４と高圧室１５゜１５とに仕切っており、更に
リア側低圧室１４には隔壁２９が形成され、該低圧室１
４を第１低圧分室１４ａと第２低圧分室１４ｂとに仕切
っている。

第１低圧分室１４ａと高圧室１５には、数パーセントの
潤滑油が混入した冷房サイクルから低圧室に吸引される
冷媒ガス（以下１冷媒ガスヨと云う。

実用新案登録請求の範囲も同じ。）が吸入または吐出さ
れる吸入口１６と吐出口（図示せず）とがそれぞれ設け
られている。

また、フロント側低圧室１４と第２低圧分室１４ｂとは
バルブプレート２，２に形成された吸入孔１７．１７を
介して、また、高圧室１５．１５は同じくバルブプレー
ト２，２に形成された吐出孔１８．１８を介してそれぞ
れのシリンダボア１２と連通し、吸入孔１７．１７と吐
出孔１８，１８はバルブプレー）２．２の両側に設けら
れた吸入弁１９，１９と吐出弁２０．２０とにより閉じ
られるようにされている。

更に、フロント側の低圧室１４とリア側の第１低圧分室
１４ａはシリンダブロック１内を軸方向に延びるように
形成された吸入通路２１に夫々連通され、同高圧室１５
．１５同志は同じくシリンダブロック１に形成された吐
出通路２２を介して互いに連通されている。

この吸入通路２１および吐出通路２２は、斜板室６を囲
むフロント側およびリア側仕切部材２３．２４によって
斜板室６と仕切られている。

尚、フロント側の低圧室１４にはシール装置２７が配さ
れ、フロント側のシリンダヘッド３と駆動軸４との間を
シールしている。

オイル溜り２６が、斜板室６の下方でフロントおよびリ
ア側のシリンダヘッド３，３まで延長すれ′て形成され
ており、このオイル溜り２６内に溜められている潤滑油
に斜板５の周縁が漬っている。

第３図に示すように、前記仕切部材２３．２４ハ夫々前
後シリンダブ陥ツク１，１を一体に形成された軸方向に
延びる側壁と該側壁の各対応するバルブプレート側の一
端から半径方向に延びる端壁とから成り、斜板室６の軸
方向中心よりも若干下流側において互いに突き合わせて
結合されている。

吸入通路２１はこの突き合わせ部分においてシリンダブ
ロック１の側壁から半径方向に延びるように一体に形成
され且つ仕切部材２３．２４と係合する第１ガス案内壁
１ａによって上流側部分と下流側部分とに仕切られてい
る。

更に、吸入通路２１の上流側部分は、仕切部材２４の端
壁から軸方向に延びるように該仕切部材２４に一体に形
成され且つリア側のバルブプレート２に当接する第２ガ
ス案内壁２４ａによって前記第１低圧分室１４ａに連通
ずる第１吸入分路２１ａと前記第２低圧分室１４ｂに連
通ずる第２吸入分路２１ｂとに仕切られている。

またリア側仕切部材２４の側壁の第１ガス案内壁１ａの
上流側にはガス流入孔２４ｂが、フロント側仕切部材２
３の端壁およびリア側仕切部材２４の端壁の第２吸入分
路２１ｂに臨む部分には流出孔２３ａと２４ｃとが夫々
形成されている。

上記構成において、駆動軸４を回転させると、斜板５が
揺動回転してピストン９が夫々のシリンダボア１２内を
往復動し、吸入弁１９および吐出弁２０と協働して圧縮
作用が行なわれる。

それと共に斜板５の回転によってオイル溜り２６の潤滑
油がはね上げられ、斜板５とシュー２８、シュー２８と
ボール１１、ボール１１とピストン９との接触部分に供
給される。

吸入口１６からリア側の第１低圧分室１４ａに流入した
冷媒ガスは第１低圧分室１４ａが隔壁２９によって第２
低圧分室１４ｂと仕切られているので、流入ガスの全部
が矢印で示すように第１吸入分路２１ａ内に流入する。

第１吸入分路２１ａ内に流入した冷媒ガスは仕切部材２
４の第２ガス案内壁２４ａおよび側壁に沿って軸方向に
流れ、第１ガス案内壁１ａに衝突して角度を変え、流入
孔２４ｂから斜板室６内に流入する。

このようにして斜板室６内に流入した冷媒ガスは斜板室
６が吸入通路２１に比べて容積が大きいので急激に減速
され、且つ、回転する斜板５に衝打されてその方向を急
激に変更されるので、冷媒ガス中にミスト状になって含
まれている比重の大きい潤滑油が分離されて油滴となり
、斜板５とシュー２８等の接触部分に、給油されてこれ
らを潤滑し、斯く潤滑油を分離された冷媒ガスは冷媒ガ
ス流出孔２３ａ、２４ｃからフロント側の吸入通路２１
および第２吸入分路２１ｂへと夫々排出されていく。

この際、冷媒ガスは流入孔２４ｂから斜板５の周縁が通
過する部分に流入するので、斜板５の揺動回転により斜
板室６内の斜板５の上流側、下流側にほぼ均等に分流さ
れ、斜板５の周縁部分に位置し摺動摩擦の度合の大きい
ボール１１やシュー２８などの接触面の潤滑に特に効果
があるとともに、ガス流が半径方向内方に向っているの
でその流速をもって斜板５の回転によって生じる遠心力
のために潤滑油が斜板室から半径方向外方に飛散するの
を防ぐことができる。

従って、オイル溜り２６のオイルレベルが低下して斜板
５による潤滑油のはね上げが一時的になくなっても上記
接触部分への給油が確保されるので、焼付等の危険をな
くすことができる。

また、冷媒ガス中の潤滑油が斜板室６内で分離されるの
で、潤滑油のオイル溜り２６への帰還を早めることがで
きる。

更に、隔壁２９と第２ガス案内壁２４ａと第１ガス案内
壁１ａとを設けることにより、吸入口１６から流入した
冷媒ガスの全部を強制的に斜板室６内に導くので吸入口
１６並びに吸入コネクタ２５を圧縮機の軸端部分に設け
ることができる。

以上説明したように、本考案に依れば、リア側の低圧室
を、隔壁によって吸入口を設けられた第１低圧分室とシ
リンダボアに連通ずる第２低圧分室とに分け、第１ガス
案内壁によって吸入通路をフロント側とリア側に分け、
更に、リア側の吸入通路を第２ガス案内壁によって第１
低圧分室に連通ずる第１吸入分路と第２低圧分室に連通
ずる第２吸入分路とに分け、且つ、第１吸入分路と第２
吸入分路とを夫々斜板室と連通ずるように形成したので
、吸入通路に流入した冷媒ガスの全部を斜板室内に確実
に導き、しかも、斜板の下流側、上流側を問わず均等に
行き亘らせることかでき、斜板室内の摺動部分に確実に
潤滑油を供給することができる。

従ってオイル溜りの潤滑油の量が十分でない場合でも焼
付等を防止することができるとともに、前記仕切部材の
両方に流入孔を流出孔を設けたので吸入冷媒の流れ抵抗
を減少でき、更にまた冷媒ガス中の潤滑油が斜板室内で
分離されるから潤滑油の帰還を早めることができる。

また、吸入コネクタを圧縮機本体の軸端部分に位置させ
ることができるので圧縮機の取付性を阻害することもな
い。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第３図はこの考案の一実施例を示し、第１図
は縦断面図、第２図は斜板、ピストン、ボールおよびシ
ューを省略した第１図のｎ−■線断面図、第３図は第２
図の■−■線断面図である。 １・・・・・・シリンダブロック、１ａ・・・・・・第
１ガス案内壁、５・・・・・・斜板、６・・・・・・斜
板室、１４・・・・・・低圧室、１４ａ・・・・・・第
１低圧分室、１４ｂ・・・・・・第２低圧分室、１６・
・・・・・吸入口、２１・・・・・・吸入通路、２１ａ
・・・・・・第１吸入分路、２１ｂ・・・・・・第２吸
入分路、２３，２４・・・・・・仕切部材、２３ａ・・
・・・・流出孔、２４ａ・・・・・・第２ガス案内壁、
２４ｂ・・・・・・流入孔、２４ｃ・・・・・・流出孔
、２５・・・・・・吸入コネクタ、２９・・・・・・隔
壁。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 互いに軸方向に整合して結合された２つのシリンダブロ
   ックと、各シリンダブロックの外方端側に設けられ一方
   が冷媒ガス吸入口を備えた低圧室を有するシリンダヘッ
   ドと、シリンダブロック内に設けられて両低圧室に連通
   ずる吸入通路と、シリンダブロック内に設けられたシリ
   ンダポアと、軸方向に延びる側壁と半径方向に延びる両
   端壁とから戒り、前記吸入通路の半径方向内方に斜板室
   を画成する仕切部材とを備える回転斜板式圧縮機におい
   て、前記一方の低圧室に該低圧室を前記冷媒ガス吸入口
   が開口する第１低圧分室と前記シリンダポアに連通ずる
   第２低圧分室とに仕切る隔壁を設け、前記吸入通路には
   前記斜板室の軸方向略中央部分に対応する位置にて前記
   吸入通路を冷媒ガス流の上流側および下流側に仕切る第
   １ガス案内壁を設け、更に、前記上流側の吸入通路には
   該上流側の吸入通路を前記第１低圧分室に連通ずる第１
   吸入通路と前記第２低圧分室に連通ずる第２吸入分路と
   に仕切る第２ガス案内壁を設けるとともに、前記第１ガ
   ス案内壁の上流側に位置する前記仕切部材の側壁に前記
   第１吸入分路と前記斜板室とを連通ずるガス流入孔を設
   け、前記仕切部材の前記一方の低圧室側の端壁に前記第
   ２吸入分路と前記斜板室とを連通ずるガス流出孔を、仕
   切部材の他方の低圧室側の端壁に吸入通路と斜板室とを
   連通するガス流出孔を夫々設けて戒ることを特徴とする
   回転斜板式圧縮機。