JPH1185384A - 角膜網膜電位を用いた視力入力方法及び装置 - Google Patents

角膜網膜電位を用いた視力入力方法及び装置

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JPH1185384A
JPH1185384A JP9238074A JP23807497A JPH1185384A JP H1185384 A JPH1185384 A JP H1185384A JP 9238074 A JP9238074 A JP 9238074A JP 23807497 A JP23807497 A JP 23807497A JP H1185384 A JPH1185384 A JP H1185384A
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JP
Japan
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potential
corneal
retinal potential
visual acuity
corneal retinal
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Application number
JP9238074A
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English (en)
Inventor
Toru Yagi
透 八木
Yoshiaki Kuno
悦章 久野
Yoshiki Uchikawa
嘉樹 内川
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RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Original Assignee
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 注視位置をリアルタイムに視力入力でき、か
つ装置のセットアップが容易であり、装置使用に伴
う疲労が少なく、長時間の使用が可能であり、環境光
の変化や被験者の動きによる誤動作が少なく、安定した
測定ができ、自然視がほとんど妨げられない視力入力
方法及び装置を提供する。 【解決手段】 被験者1の角膜網膜電位2を検出する電
位検出器12と、電位検出器12で検出された角膜網膜
電位2から被験者1の注視位置3をリアルタイムに求め
る演算制御装置14とからなる。演算制御装置14は、
角膜網膜電位と複数の注視位置との関係を予めキャリブ
レーションして勾配の一定な近似直線として記憶し、こ
の関係と角膜網膜電位から注視位置3をリアルタイムに
求める。また、同一の注視位置における角膜網膜電位の
変動値を随時求め、この変動値分を差分して角膜網膜電
位を補償する。更に、角膜網膜電位の変動波形を平滑化
し、瞬きと速い眼球運動による注視位置の急変を低減す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、角膜網膜電位を用
いた視力入力方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】会話、筆談、手話などによるコミュニケ
ーションが困難な重度機能障害を持つ「重度肢体不自由
者」のために、その残存運動機能を活用したコミュニケ
ーション支援装置が求められている。かかる装置とし
て、近年、「眼球運動」を応用した視力入力インターフ
ェースが注目されている。
【0003】これまでに、「角膜反射光法」や「強膜反
射光法」という眼球運動測定法を利用した視力入力イン
ターフェースが提案されてきた(例えば、「眼球運動に
よる文書作成・周辺機器制御装置」,電子通信学会論文
誌(D),Vol.69, No.7, 1986、「頭部装着式ディスプ
レイ装置」,特開平8−160345号、等)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、かかる従来の
視力入力手段は、装置のセットアップが難しい、装
置使用に疲労が伴う、測定が不安定(誤動作が多
い)、自然視が妨げられる、長時間使用ができな
い、等の問題点があった。すなわち、「角膜反射光法」
を用いた視力入力手段では、目に照射した赤外線の反射
光の動きをセンサで捉えて眼球運動を測定するため、
反射光が得られる位置にセンサを厳密に固定しなければ
ならず、装置のセットアップや較正に時間と労力を要す
る問題点があった。
【0005】また、「強膜反射光法」を用いた視力入力
手段では、眼前に固定したフォトダイオードなどの受光
素子で眼の黒目と白目の反射比の違いを検出することに
より眼球運動を測定するため、環境光の変化によって
測定精度が左右される問題点があった。更に、これらの
視力入力手段では、センサが固定位置から数ミリ程度
動いても測定精度に大きな誤差が生じる問題がある。そ
こで実用的な測定精度を得るためには、センサを頭部に
頑丈に固定する必要があり(「非動化」と呼ぶ)、その
結果、被験者に圧迫感を与え、疲労、目眩、嘔吐などの
原因となり、長時間の使用には向かないことが指摘され
ている。
【0006】本発明は上述した種々の問題点を解決する
ために創案されたものである。すなわち、本発明の目的
は、注視位置をリアルタイムに視力入力でき、かつ装
置のセットアップが容易であり、装置使用に伴う疲労
が少なく、長時間の使用が可能であり、環境光の変化
や被験者の動きによる誤動作が少なく、安定した測定が
でき、自然視がほとんど妨げられない視力入力方法及
び装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願発明の発明者等は、
眼球運動と角膜網膜電位との関係を研究し、この角膜網
膜電位が眼球運動とほぼ比例関係にあることを発見し
た。また、この角膜網膜電位は時間と共に変化し、かつ
「瞬き」や眼球の速い動きにより激しく変化するが、こ
れに対する解決策も創案した。本発明はかかる新規の知
見と創案に基づくものである。
【0008】本発明によれば、角膜網膜電位と複数の注
視位置との関係を予めキャリブレーションして記憶し、
該関係と角膜網膜電位から注視位置をリアルタイムに求
める、ことを特徴とする角膜網膜電位を用いた視力入力
方法が提供される。この方法により、被験者の目をはさ
んで、例えばこめかみに2つの電極を貼り、角膜網膜電
位を検出するだけで視力入力が可能となる。この角膜網
膜電位は、電極間に電圧や電流をなんら印加することな
く検出できるので、使用者に対する影響が全くない。従
って、従来の方法と比較して、装置のセットアップが
容易であり、装置使用に伴う疲労が少なく、長時間の
使用が可能であり、環境光の変化や被験者の動きによ
る誤動作が少なく、安定した測定ができ、自然視がほ
とんど妨げられない、等の特徴を有する。
【0009】本発明の好ましい実施形態によれば、前記
関係を勾配の一定な近似直線として記憶する。発明者等
は、眼球運動と角膜網膜電位との関係を複数の被験者の
協力で計測し、被験者が相違しても角膜網膜電位は眼球
運動と常にほぼ比例関係にありその関係を勾配の一定な
直線で正確に近似できることを発見した。従って、この
関係を記憶して利用することにより、視力入力をより簡
単なアルゴリズムにより行うことかできる。
【0010】また、同一の注視位置における角膜網膜電
位の変動値を随時求め、この変動値分を差分して角膜網
膜電位を補償する。角膜網膜電位の絶対値は時間と共に
変化し、その変化の度合は被験者により相違することが
多くの試験結果から明らかとなった。しかし、前述のよ
うに、被験者が相違しても、角膜網膜電位は眼球運動と
常にほぼ比例関係にあるので、同一の注視位置(例えば
正面)における角膜網膜電位の変動値を随時求め、この
変動値分を他の注視位置の場合でも差分することにより
角膜網膜電位を正確に補償することかできる。
【0011】更に、角膜網膜電位の変動波形を平滑化
し、瞬きと速い眼球運動による注視位置の急変を低減す
る。瞬きや速い眼球運動(衝動性眼球運動)による角膜
網膜電位の変化は激しく、これをそのまま注視位置とし
て表示するとカーソルがあらぬ方向に飛び跳ねてしま
い、かえって視力入力が困難になる。従って、角膜網膜
電位を遅れ要素を有する信号処理により変動波形を平滑
化して注視位置の急変を低減することにより、視力入力
をより容易に快適に行うことができる。
【0012】また、本発明によれば、被験者の角膜網膜
電位を検出する電位検出器と、該電位検出器で検出され
た角膜網膜電位と複数の注視位置との関係を予めキャリ
ブレーションして記憶し、該関係と角膜網膜電位から注
視位置をリアルタイムに求める演算制御装置と、を備え
たことを特徴とする角膜網膜電位を用いた視力入力装置
が提供される。
【0013】本発明の構成によれば、電位検出器で角膜
網膜電位を検出し、演算制御装置で注視位置をリアルタ
イムに求めることができる。電位検出器は、例えば被験
者の目をはさんで、例えばこめかみに貼った2つの電極
であり、電極間に電圧や電流をなんら印加することなく
その間に生じる電位(電圧)から角膜網膜電位を検出で
きる。また、演算制御装置は例えばCRT(ディスプレ
イ)を備えたコンピュータであり、CRT上に注視位置
を表示してこれを被験者に注視させることにより、角膜
網膜電位と複数の注視位置との関係を予めキャリブレー
ションして記憶することができ、次いでこの関係を基に
して、検出された角膜網膜電位から注視位置をリアルタ
イムに求めることができる。
【0014】本発明の好ましい実施形態によれば、前記
演算制御装置は、前記関係を勾配の一定な近似直線とし
て記憶する記憶手段と、同一の注視位置における角膜網
膜電位の変動値を随時求め、この変動値分を差分して角
膜網膜電位を補償する補償手段と、角膜網膜電位の変動
波形を平滑化し、瞬きと速い眼球運動による注視位置の
急変を低減する信号処理手段とを備える。
【0015】この構成により、記憶手段(例えばメモリ
ー)により角膜網膜電位と複数の注視位置との関係を勾
配の一定な近似直線として記憶することができ、補償手
段により長時間使用しても、被験者により相違する角膜
網膜電位の絶対値の変化を補償することができ、信号処
理手段により、カーソルがあらぬ方向に飛び跳ねるのを
防ぎ、注視位置の急変を低減して視力入力をより容易に
快適に行うことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態
を図面を参照して説明する。なお、各図において、共通
する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略す
る。図1は、本発明の視力入力方法を模式的に示す図で
ある。この図に示すように、本発明の視力入力方法で
は、被験者1の角膜網膜電位2を検出し、その角膜網膜
電位2から被験者1の注視位置3をリアルタイムに求め
るようになっている。
【0017】人や動物の眼球には、その前面である角膜
が後面の網膜に対して正に帯電しているので、目をはさ
むように1対の電極を配置すれば、眼球の動きに応じて
電極間の電位が変動する。この電位を角膜網膜電位2
(corneoretinal potential)といい、このようにして眼
球運動を測定する手法をEOG法 (Electro Oculo Grap
h)と呼ぶ。このEOG法は、医療現場において従来から
目の診断の1手法として用いられていたが、個人差が大
きいため、定量的な計測や長時間の使用は行われていな
かった。本願発明の発明者等は、眼球運動と角膜網膜電
位との関係に注目し、複数の被験者の角膜網膜電位を長
時間にわたって正確に計測し、多くの有用な知見を得
た。本発明はかかる新規の知見と創案に基づくものであ
る。以下、試験結果と併せて本発明を説明する。
【0018】図2は、図1のシステムにより得られた同
一の注視位置における角膜網膜電位の変化を示す図であ
る。この結果は、ある被験者がCRT(ディスプレイ)
の中央の視覚指標を注視した際、その角膜網膜電位2を
電極貼付後の経過時間に対してプロットしたものであ
る。このように、同一の被験者であってもその角膜網膜
電位が時間とともに変動することは「ドリフト現象」と
して従来から知られていた。
【0019】図2から明らかなように、時間経過に対し
て電位(角膜網膜電位)が大きく変動するが、特に、電
極貼付後の20〜30分までの変動が著しく、その後の
変動は小さくなっている。同様の傾向は被験者全員(7
名)について共通して認められた。その他の点では被験
者ごとに変動の様子が異なり、ドリフト現象に関する共
通点は見出せなかった。
【0020】図3は、角膜網膜電位と複数の注視位置と
の関係を示す試験結果である。この図は、ディスプレイ
内の様々な位置に提示された視覚指標3を被験者が注視
した際の各視覚指標に対する角膜網膜電位である。この
図はある被験者に対して行った結果であり、下から順に
電極貼付後5分、26分、72分の場合である。なお、
この試験では、ディスプレイ内の左30度から右30度
にかけて3度毎に21個の視覚指標を容易し、ランダム
に1つずつ1秒間提示して行った。
【0021】図3において、前述したドリフト現象が原
因で時間の経過とともにグラフの基線が変動している。
一方、各時間においては、視覚指標の各提示位置(横
軸:眼球の偏位角)に対して角膜網膜電位(縦軸)が線
形に変化していることがわかる。すなわち、短時間の測
定ではドリフト現象は大きな問題にならないことが明確
である。更に、各時間の点列がほぼ平行に並んでおり、
眼球の偏位角と角膜網膜電位の線形関係は、時間の経過
に無関係にほぼ同一であることがわかる。
【0022】図4は、同一の注視位置における角膜網膜
電位の変化の勾配を示す図であり、(A)は単一の被験
者に対するもの、(B)は7名の被験者に対するもので
ある。なお、この図において、縦軸は、各経過時間にお
ける偏位角と角膜網膜電位の関係を最小二乗法により求
めた近似直線の傾きである。この図4(A)から、近似
直線の傾きは電極貼付直後からほぼ一定であり、特に経
過時間が長いほどこの変化が少なくなることが明らかと
なった。また、図4(B)から7名の被験者の全員が、
少なくとも15分以上経過すると傾きがほぼ一定になる
ことがわかった。
【0023】図5は本発明による視力入力装置の全体構
成図である。この図に示すように、本発明の視力入力装
置10は、被験者1の角膜網膜電位2を検出する電位検
出器12と、電位検出器12で検出された角膜網膜電位
2から被験者1の注視位置3をリアルタイムに求める演
算制御装置14とからなる。
【0024】電位検出器12は、例えば目(眼球)をは
さむように配置された1対の電極とこの電極間に発生す
る電位を演算制御装置14に入力する信号線とからな
る。1対の電極の他に参照電位を計測するために別の部
位の電位を計測する電極を用いてもよい。電極は、導電
性の電極ペーストを塗布したものであり、被験者の目の
周囲の皮膚に貼付けるのがよい。また、導電性粘着シー
トを素材としたものでもよい。更に、電極の貼付け位置
によっては表情を作る顔筋の筋電が角膜網膜電位に混入
することがあるので、好ましくはその影響の少ない「こ
めかみ」へ貼付けるのがよい。また、垂直方向の眼球運
動の測定精度は水平方向よりも劣るので、好ましくは視
覚指標を水平方向に配置し、電極も水平方向を計測する
ように配置するのがよい。なお、電極の貼付けは必ずし
も不可欠ではなく、例えば電極を「眼鏡」の鼻パッド等
に埋め込んだものを用いてもよい。また、ファインダ等
を覗く際に電極が接触して角膜網膜電位を計測するよう
にしてもよい。
【0025】演算制御装置14は、角膜網膜電位と複数
の注視位置との関係を勾配の一定な近似直線として記憶
する記憶手段15と、同一の注視位置における角膜網膜
電位の変動値を随時求め、この変動値分を差分して角膜
網膜電位を補償する補償手段16と、角膜網膜電位の変
動波形を平滑化し、瞬きと速い眼球運動による注視位置
の急変を低減する信号処理手段17とを備え、角膜網膜
電位と複数の注視位置との関係を予めキャリブレーショ
ンして記憶し、この関係と角膜網膜電位から注視位置を
リアルタイムに求めるようになっている。
【0026】演算制御装置14は、具体的には、十分な
メモリーを有するコンピュータとディスプレイ装置(C
RT)により構成することができる。このコンピュータ
は所定のプログラムにより、後述するアルゴリズムを実
行するようになっている。
【0027】図6は、本発明による角膜網膜電位を補償
する補償手段を示すフローチャートである。この図にお
いて、多点キャリブレーションとは、角膜網膜電位2と
複数の注視位置3との関係を予めキャリブレーションし
て記憶する工程(ステップ)であり、コンピュータを用
いてディスプレイ内の様々な位置に順次視覚指標を提示
して、被験者にこれを注視させて、その際の角膜網膜電
位を測定して記憶する。前述のように、ドリフト現象
は、被験者ごとに変動の様子が異なるが、短時間の測定
ではドリフト現象は問題にならない。また、眼球の偏位
角と角膜網膜電位の線形関係は、時間の経過に無関係に
あり、かつ勾配の一定な近似直線として近似することが
できる。従って、多点キャリブレーションを行うことに
より、眼球の偏位角と角膜網膜電位の線形関係が定ま
り、少なくとも短時間の間は逆に角膜網膜電位から偏位
角を求め被験者の注視位置を求めることができる。
【0028】また、図6における1点キャリブレーショ
ンとは、特定(例えば中央)の注視位置3における角膜
網膜電位2を測定する工程(ステップ)であり、この工
程により同一の注視位置における角膜網膜電位の変動値
を随時求め、この変動値分を差分して角膜網膜電位を補
償することができる。従って、ドリフト現象の影響が生
じないように十分短い時間間隔で、1点キャリブレーシ
ョンを行うことにより、ドリフト現象の影響を回避し、
常にリアルタイムで正確に注視位置を求めることができ
る。
【0029】一方、目の瞬きや速い眼球運動による角膜
網膜電位の変化は激しく、上述した視力入力手段だけで
は、実用的な使用が困難な場合がある。すなわち、「瞬
き」は電気ノイズとして角膜網膜電位に混入するため、
そのまま角膜網膜電位から被験者の注視位置を求めカー
ソルで表示すると、瞬きの影響でカーソルがあらぬ方向
へ飛び跳ねてしまう。図7は、この状態を示す角膜網膜
電位の測定結果であり、矢印で示す「瞬き」により、角
膜網膜電位がスパイク状に急変しているのがわかる。
【0030】同様に、随意的(急に)に他の物を見よう
として注視点を変える時には、「衝動性眼球運動(サッ
ケード運動)」と呼ぶ急速な眼球運動が生じることがあ
る。この衝動性眼球運動は、数百度/秒の速い角速度を
有するため、この速度に対応してカーソルを移動させる
と、視線でカーソルを思いどおりに動かすことが困難又
は全くできないことが実験から判明した。
【0031】図8は、本発明による角膜網膜電位の変動
波形を平滑化する信号処理手段を示すブロック図であ
る。この信号処理手段17は、上述した問題点を解決す
るものであり、角膜網膜電位の変動波形を平滑化し、瞬
きと速い眼球運動による注視位置の急変を低減するよう
になっている。すなわち、図8において、u(n)は角
膜網膜電位、y(n)はカーソルの「最終的な」表示位
置であり、aは多点キャリブレーションによって得られ
た近似直線の傾きを表すパラメータ、bは1点キャリブ
レーションによって得たドリフト変動補正分を表すパラ
メータであり、Dは遅れ要素、kはカーソルの移動量を
決めるパラメータである。
【0032】図8の信号処理手段17では、電位検出器
12で測定された角膜網膜電位u(n)は、(数1)に
よりカーソルの表示位置x(n)に変換される。
【0033】
【数1】
【0034】この表示位置x(n)をそのままディスプ
レイに表示すると、瞬きや衝動性眼球運動の影響で前述
の問題が生じる。そこで、図8の信号処理手段17で
は、(数2)に示すような1次遅れ要素を用いて信号処
理を施していない場合の1/kにカーソルの移動量を減
らすようになっている。
【0035】
【数2】
【0036】図9は、図7の角膜網膜電位に対して、図
8の信号処理手段を適用した結果である。k=1は遅れ
要素を考慮しない場合を示し、k=30はその1/30
の速度でカーソルを動かした場合を示している。この図
から明らかなように、遅れ要素を考慮しないと(k=
1)、カーソルは瞬き等の影響で飛び跳ねるのに対し
て、遅れ要素を考慮すると(k=30)、瞬き等による
スパイク状の波形を平滑化することができ、視線でカー
ソルを思いどおりに動かすことができる。
【0037】図10は、上述した本発明の視力入力装置
による試験結果である。この試験は、7名の被験者に対
して簡単な問題を出し、それを視力入力により答えさせ
たものである。この図において、横軸は試験回数、縦軸
は正答率であり、(A)はk=1の場合、(B)はk=
30の場合である。この図から、本発明の視力入力手段
を完全に使いこなすには多少の「慣れ」が必要である
が、特に、信号処理手段における遅れ要素kを好みに応
じて適切に設定することにより、短時間で短時間で正解
率が飛躍的に向上し(すなわち習得することができ)、
例えば4回程度で90%以上の正解率に達することがわ
かる。
【0038】言い換えれば、図10において、k=1と
k=30ではカーソルの移動速度が異なり、前者が速い
動き、後者が遅い動きとなるが、k=30すなわち遅い
動きのときほど、正解率が高く、本発明による信号処理
手法が有効であることがわかった。
【0039】なお、本発明は上述した実施例に限定され
るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々
変更できることは勿論である。なお、上述の説明では、
重度機能障害を有する人を対象として説明したが、本発
明はこれに限定されず、同様な眼球を有する動物にも同
様に適用することができる。
【0040】
【発明の効果】上述したように、本発明の視力入力方法
及び装置によれば、被験者から角膜網膜電位を検出する
だけでリアルタイムに視力入力が可能であり、かつこの
角膜網膜電位は、電極間に電圧や電流をなんら印加する
ことなく検出できるので、使用者に対する影響が全くな
い。従って、従来の手段と比較して、装置のセットア
ップが容易であり、装置使用に伴う疲労が少なく、長
時間の使用が可能であり、環境光の変化や被験者の動
きによる誤動作が少なく、安定した測定ができ、自然
視がほとんど妨げられない、等の効果を有する。
【0041】また、角膜網膜電位を用いた視力入力で
は、被験者ごとに異なるドリフト現象、被験者の瞬きや
急速な眼球運動が避けられないが、本発明によれば、こ
れらの影響を回避又は補償して、正確な視力入力をリア
ルタイムに行うことができる。従って、本発明の視力入
力方法及び装置は、会話、筆談、手話などによるコミュ
ニケーションが困難な重度機能障害を持つ「重度肢体不
自由者」のためのコミュニケーション支援装置として活
用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の視力入力方法を模式的に示す図であ
る。
【図2】同一の注視位置における角膜網膜電位の変化を
示す図である。
【図3】角膜網膜電位と複数の注視位置との関係を示す
図である。
【図4】同一の注視位置における角膜網膜電位の変化の
勾配を示す図である。
【図5】本発明による視力入力装置の全体構成図であ
る。
【図6】本発明による角膜網膜電位のドリフトを補償す
る補償手段を示すフローチャートである。
【図7】瞬きと速い眼球運動による角膜網膜電位の変化
を示す図である。
【図8】本発明による角膜網膜電位の変動波形を平滑化
する信号処理手段を示すブロック図である。
【図9】図7の角膜網膜電位を信号処理手段により処理
した同様の図である。
【図10】本発明の装置による試験例である。
【符号の説明】
1 被験者 2 角膜網膜電位 3 注視位置(視覚指標) 10 視力入力装置 12 電位検出器 14 演算制御装置 15 記憶手段 16 補償手段 17 信号処理手段

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 角膜網膜電位と複数の注視位置との関係
    を予めキャリブレーションして記憶し、該関係と角膜網
    膜電位から注視位置をリアルタイムに求める、ことを特
    徴とする角膜網膜電位を用いた視力入力方法。
  2. 【請求項2】 前記関係を勾配の一定な近似直線として
    記憶する、ことを特徴とする請求項1に記載の視力入力
    方法。
  3. 【請求項3】 同一の注視位置における角膜網膜電位の
    変動値を随時求め、この変動値分を差分して角膜網膜電
    位を補償する、ことを特徴とする請求項1に記載の視力
    入力方法。
  4. 【請求項4】 角膜網膜電位の変動波形を平滑化し、瞬
    きと速い眼球運動による注視位置の急変を低減する、こ
    とを特徴とする請求項1に記載の視力入力方法。
  5. 【請求項5】 被験者の角膜網膜電位を検出する電位検
    出器と、該電位検出器で検出された角膜網膜電位と複数
    の注視位置との関係を予めキャリブレーションして記憶
    し、該関係と角膜網膜電位から注視位置をリアルタイム
    に求める演算制御装置と、を備えたことを特徴とする角
    膜網膜電位を用いた視力入力装置。
  6. 【請求項6】 前記演算制御装置は、前記関係を勾配の
    一定な近似直線として記憶する記憶手段と、同一の注視
    位置における角膜網膜電位の変動値を随時求め、この変
    動値分を差分して角膜網膜電位を補償する補償手段と、
    角膜網膜電位の変動波形を平滑化し、瞬きと速い眼球運
    動による注視位置の急変を低減する信号処理手段とを備
    える、ことを特徴とする請求項5に記載の視力入力装
    置。
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