JPH1182156A - シリンダヘッドの下面構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 シリンダヘッドとシリンダブロックの合面に
ついて、ヘッドボルトの軸力を上げて合面全体の面圧を
上げるようなことなく、合面全体の面圧の均一化を図る
ことでシリンダボア隔壁部での合面の面圧を上げること
により、シリンダヘッドやシリンダブロックの他部品と
の摺接部分を変形させるようなことなく、シリンダボア
隔壁部での合面のシール性を向上させる。 【解決手段】 ヘッドボルトによりガスケットを介して
シリンダブロックの上面に連結されるシリンダヘッド１
において、シリンダブロックの上面と対向するシリンダ
ヘッド１の下面を、その幅方向の中央部付近を境とし
て、少なくともその何れか一方の側で、シリンダヘッド
１の幅方向で中央部付近から端部に向かって斜め上方に
傾斜するような面として形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、エンジン本体にお
いてヘッドボルトによりガスケットを介してシリンダブ
ロックの上面に連結されるシリンダヘッドに関し、特
に、そのようなシリンダヘッドの下面構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】車両用エンジン等のエンジン本体では、
シリンダヘッドとシリンダブロックをガスケットを介し
てヘッドボルトにより一体的に連結しているが、その場
合、シリンダブロックの側に対し、各気筒の配置方向に
沿ったシリンダボアの列の両外側で、シリンダブロック
の両端部と各気筒間に、それぞれヘッドボルト螺合用の
ボルト孔を形成すると共に、該ボルト孔に対応させて、
シリンダヘッドの側に対し、ヘッドボルトを貫通させる
ボルト貫通孔を形成して、各ヘッドボルトをシリンダヘ
ッドのボルト貫通孔を通してシリンダブロックのボルト
孔に螺合することにより、該ヘッドボルトの締め付けに
よって、ガスケットを介して連結されるシリンダヘッド
とシリンダブロックの合面の面圧を維持している。

【０００３】一方、そのようにシリンダヘッドとシリン
ダブロックが連結されているエンジン本体において、ア
ルミ合金製のシリンダブロックには、シリンダボアの内
周面の耐摩耗性を高めるために、シリンダボアに鉄系の
スリーブを嵌め込んだものが従来から一般的に使用され
ていると共に、軽量化を図るために、そのような鉄系の
スリーブを設けることなく、シリンダボアの内周面に耐
摩耗性の高いクロムメッキ等を施した、所謂スリーブレ
スシリンダブロックも従来から一般的に使用されてい
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
な従来のエンジンでは、ヘッドボルトの締め付けによる
シリンダヘッドとシリンダブロックの合面の面圧分布
が、どうしてもヘッドボルト周りでは面圧が高くなり、
ヘッドボルトから離れたシリンダボア隔壁部（各気筒の
シリンダボアの間の薄壁部分）では面圧が低くなってし
まうため、特に、ガスケットで各シリンダボア周りのビ
ード部同士が隣接しているシリンダボア隔壁部では、シ
リンダヘッドとシリンダブロックの合面のシール性が悪
くなり、当該部分において一方のシリンダボアから他方
のシリンダボアにガスが漏れてしまうというような虞が
生じる。

【０００５】そこで、ヘッドボルトの軸力を上げて（ヘ
ッドボルトによる締め付け力を強めて）シリンダヘッド
とシリンダブロックの合面全体の面圧を上げることで、
シリンダボア隔壁部での合面の面圧を上げようとする
と、シリンダヘッドの側で、カム軸の同軸度やリフター
ボアの真円度が悪化したり、また、シリンダブロックの
側で、特に、シリンダボアに鉄系スリーブを設けていな
いスリーブレスシリンダブロックの場合には、シリンダ
ボアが変形したりする虞があって、そのような各部分の
変形によるフリクション，潤滑，オイル消費等への悪影
響が懸念されることとなる。

【０００６】本発明は、上記のような問題を解消するた
めに、シリンダヘッドとシリンダブロックの合面につい
て、ヘッドボルトの軸力を上げて合面全体の面圧を上げ
るようなことなく、合面全体の面圧の均一化を図ること
でシリンダボア隔壁部での合面の面圧を上げることによ
り、シリンダヘッドやシリンダブロックの他部品との摺
接部分を変形させるようなことなく、シリンダボア隔壁
部での合面のシール性を向上させることを課題とするも
のである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記のような
課題を解決するために、上記の請求項１に記載したよう
に、ヘッドボルトによりガスケットを介してシリンダブ
ロックの上面に連結されるシリンダヘッドにおいて、シ
リンダブロックの上面と対向するシリンダヘッドの下面
が、その幅方向の中央部付近を境として、少なくともそ
の何れか一方の側で、シリンダヘッドの幅方向で中央部
付近から端部に向かって斜め上方に傾斜するような面と
して形成されていることを特徴とするものである。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明のシリンダヘッドの
下面構造の実施形態について図面に基づいて説明する。

【０００９】図１および図２は、本発明の下面構造を備
えたシリンダヘッドの一実施形態に係る４気筒エンジン
のシリンダヘッドを示すもので、図１は、シリンダヘッ
ドの前面を示し、図２は、シリンダヘッドの下面を示す
ものである。また、図３および図４は、シリンダヘッド
のエンジン本体におけるシリンダブロックとの連結状態
を示すもので、図３は、図２のＡ−Ａ線に沿った位置で
のシリンダボアを通る縦断面を示し、図４は、図２のＢ
−Ｂ線に沿った位置でのシリンダボア間の隔壁部を通る
縦断面を示すものである。

【００１０】シリンダヘッド１には、図１および図３，
図４に示すように、その上面側に、吸気側と排気側の各
カム軸を支承するための各軸受の下半部１６，１７が、
シリンダヘッド１の長手方向の両端部とその間の適所に
形成されていると共に、その下面側に、図２に示すよう
に、４つの気筒のそれぞれの燃焼室天板部１１が、シリ
ンダヘッド１の長手方向に沿って一列に配列された状態
でそれぞれ凹設されている。

【００１１】そして、そのように各気筒の配置方向に沿
った燃焼室天板部１１の列の両側で、シリンダヘッドの
両端部と各気筒間に、シリンダヘッドをシリンダブロッ
ク１に連結するためのヘッドボルトをそれぞれ貫通させ
るための複数のボルト貫通孔１２が、それぞれシリンダ
ヘッド１を上下方向に貫通してその下端がシリンダヘッ
ド下面に開口するように形成されている。

【００１２】なお、シリンダヘッド１の下面には、各ボ
ルト貫通孔１２以外にも、シリンダヘッド内に形成され
たウォータージャケット１３のシリンダブロック側への
連通部分や、シリンダヘッドの上部に形成されたカム室
からのオイル戻し通路１４のシリンダブロック側への連
通部分等がそれぞれ開口されている

【００１３】そのようなシリンダヘッド１は、図３に示
すように、各燃焼室天板部１１がシリンダブロック２の
各シリンダボア２１の上端開放部を覆うように、シリン
ダブロック２の上面側にガスケット３を介して載置され
た状態で、図４に示すように、シリンダヘッド１の各ボ
ルト貫通孔１２を貫通させたヘッドボルト４をそれぞれ
シリンダブロック２に形成されたボルト孔２２に螺合さ
せて締め付けることにより、その合面にガスケット３を
介装させた状態でシリンダブロック２に対して一体的に
連結される。

【００１４】シリンダブロック２の各シリンダボア２１
は、何れも、その内周面に耐摩耗性の高いクロムメッキ
が施されて、鉄系のスリーブが設けられていない、所謂
スリーブレスであって、ヘッドボルト螺合用の各ボルト
孔２２は、シリンダボア２の列の両側で、シリンダブロ
ック１の長手方向（気筒配列方向）の両端部と、各シリ
ンダボア２１の隔壁部に対応する位置に、それぞれ各シ
リンダボア２を四方から囲むように形成されている。

【００１５】なお、シリンダブロック２については、本
実施形態では、鉄系のスリーブを設けていないスリーブ
レスのアルミ合金製シリンダブロックとなっているが、
そのようなものに限らず、鉄系スリーブを設けたアルミ
合金製シリンダブロックや、鋳鉄製のシリンダブロック
であっても良い。

【００１６】上記のようにヘッドボルト４によりシリン
ダブロック２の上面側に連結されるシリンダヘッド１に
おいて、本実施形態では、ガスケット３を介してシリン
ダブロック２の上面に対向するシリンダヘッド１の下面
が、図５（Ａ）に示すように、その幅方向の中央部付近
（各気筒のシリンダボア２１の中心軸を通る平面Ｘがシ
リンダヘッド１の下面と交差する線）を境として、その
両側で、何れも、中央部から端部に向かって斜め上方に
傾斜するような面となるように、すなわち、シリンダヘ
ッド１の下面が、幅方向の中央部で長手方向に延びる線
を頂点として、下方に凸（横断面が逆山形状）となるよ
うに形成されている。

【００１７】なお、シリンダヘッド１の下面の下方への
凸の程度については、図１および図５（Ａ）では極端に
示されているが、実際には極めて僅かなものであって、
例えば、各気筒のシリンダボア２１の中心軸を通る平面
Ｘがシリンダヘッド１の下面と交差する線の両側での斜
め上方への傾斜角度θについては、９／１０００°程度
のものであり、シリンダヘッド１の幅方向両端を基準と
した中央部の下方への突出距離ｄについては１０μｍ程
度のものである。

【００１８】上記のような下面構造を備えた本実施形態
のシリンダヘッド１によれば、通常（シリンダヘッド１
の下面全体がシリンダブロックの上面と平行な同じ平面
である場合）では、ヘッドボルト４の締め付けによるシ
リンダヘッド１とシリンダブロック２の合面の面圧分布
が、ヘッドボルト周りでは高くなり、ヘッドボルト４か
ら離れる（幅方向で中央部に近づく）に従って低くなる
のに対して、シリンダヘッド１の下面が下方に凸（横断
面逆山形状）となっていることで、合面の面圧分布が均
一化されることとなる。

【００１９】そのため、ヘッドボルト４の軸力を上げる
（締め付け力を強くする）ことなく、ヘッドボルト４か
ら離れたシリンダボア隔壁部の面圧を高めることがで
き、シリンダボア隔壁部でのシリンダヘッド１とシリン
ダブロック２の合面のシール性を向上させることができ
て、その結果、当該部分でのガスの漏れを回避すること
ができると共に、ヘッドボルトの軸力を上げることによ
るカム軸の同軸度やリフターボアの真円度の悪化を防止
することができ、また、特に、シリンダブロックがスリ
ーブレスの場合には、シリンダボアの変形を防止するこ
とができて、それら各部分の変形によるフリクション，
潤滑，オイル消費等への悪影響を回避することができ
る。

【００２０】以上、本発明のシリンダヘッドの下面構造
の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実
施形態に示したような具体的な構造、すなわち、図５
（Ａ）に示すような、シリンダヘッド１の中央部（平面
Ｘ）の両側で何れも斜め上方への傾斜する（横断面が逆
山形）ようなものに限られるものではなく、例えば、図
５（Ｂ）に示すように、シリンダヘッド１の中央部（平
面Ｘ）の片側のみが端部に向かって斜め上方への傾斜す
るような構造によっても実施可能なものである。

【００２１】

【発明の効果】以上説明したような本発明のシリンダヘ
ッドの下面構造によれば、シリンダヘッドとシリンダブ
ロックの合面について、ヘッドボルトの軸力を上げて合
面全体の面圧を上げるようなことなく、合面全体の面圧
の均一化を図ることでシリンダボア隔壁部での合面の面
圧を上げることができ、それによって、シリンダボア隔
壁部での合面のシール性を向上させることができると共
に、シリンダヘッドやシリンダブロックの変形によるフ
リクション，潤滑，オイル消費等への悪影響を回避する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のシリンダヘッドの下面構造の一実施形
態に係るシリンダヘッドを示す前面図。

【図２】図１に示したシリンダヘッドの下面図。

【図３】エンジン本体におけるシリンダヘッドのシリン
ダブロックとの連結状態を示す図２のＡ−Ａ線に沿った
位置でのシリンダボアを通る縦断面図。

【図４】エンジン本体におけるシリンダヘッドのシリン
ダブロックとの連結状態を示す図２のＢ−Ｂ線に沿った
位置でのシリンダボア間の隔壁部を通る縦断面図。

【図５】本発明のシリンダヘッドの下面構造の（Ａ）図
１に示した実施形態について、および（Ｂ）他の実施形
態についての各説明図。

【符号の説明】

１ シリンダヘッド ２ シリンダブロック ３ ガスケット ４ ヘッドボルト

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ヘッドボルトによりガスケットを介して
   シリンダブロックの上面に連結されるシリンダヘッドに
   おいて、シリンダブロックの上面と対向するシリンダヘ
   ッドの下面が、その幅方向の中央部付近を境として、少
   なくともその何れか一方の側で、シリンダヘッドの幅方
   向で中央部付近から端部に向かって斜め上方に傾斜する
   ような面として形成されていることを特徴とするシリン
   ダヘッドの下面構造。