JPH1182150A - 内燃機関の燃焼状態検出装置 - Google Patents

内燃機関の燃焼状態検出装置

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JPH1182150A
JPH1182150A JP24510997A JP24510997A JPH1182150A JP H1182150 A JPH1182150 A JP H1182150A JP 24510997 A JP24510997 A JP 24510997A JP 24510997 A JP24510997 A JP 24510997A JP H1182150 A JPH1182150 A JP H1182150A
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JP
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signal
misfire
cylinder
cylinder pressure
misfire determination
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JP24510997A
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English (en)
Inventor
Masahiro Komachiya
昌宏 小町谷
Nobuo Kurihara
伸夫 栗原
Atsunori Kodama
篤典 児玉
Tatsunori Sakaguchi
龍範 坂口
Takayuki Fumino
高之 文野
Shizuhisa Watanabe
静久 渡辺
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の目的は、低負荷領域等においても失火
判定を精度よく行え、かつ、自動車に搭載して使用可能
な実用的な内燃機関の燃焼状態検出装置を提供すること
にある。 【解決手段】複数の筒内圧検出手段10A,10B,1
0C,10Dによって検出された内燃機関の各気筒の筒
内圧信号は、信号重畳手段20によって重畳される。重
畳された筒内圧信号に基づいて、信号検出手段30は、
失火判定指標を算出し、失火判定手段40は、失火判定
指標と失火判定レベルにを用いて失火状態を判定する。
重畳された筒内圧信号を用いると、失火の有無により
TDC前後の信号波形の対称性に顕著な変化を得ること
ができるため、エンジン燃焼の全域で失火判定を確実に
することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の燃焼状
態を検出する内燃機関の燃焼状態検出装置に係り、特
に、多気筒エンジンの各気筒の失火の有無を検出する内
燃機関の燃焼状態検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】多気筒エンジンの各気筒の失火の有無を
検出することは、内燃機関の制御をする上で重要なこと
である。例えば、燃料経済性の向上を目的として、ドラ
イバビリティに影響を与えない限界まで燃料を希薄化す
るリーン限界制御では、空気に対する燃料の割合が薄く
なり過ぎると失火が生じる。そこで、失火の有無を検出
して失火の起こった気筒の燃料噴射量を増やす方向に制
御することにより、失火状態から回復して、希薄燃焼を
行い、燃料経済性を向上することができる。
【0003】各気筒の失火の有無を検出する方法として
は、例えば、次の2つの方法が知られている。第1の方
法は、例えば、実開昭64-15937号公報に記載さ
れているように、内燃機関の気筒内圧力(以下、「筒内
圧」と称する)を検出し、筒内圧の変化の積分値あるい
は平均値に基づいて、失火発生の有無を検出するもので
ある。この方法では、具体的には、失火が発生すると燃
焼圧力は上昇しないので、正常燃焼時と比べて失火時に
は筒内圧変化の積分値あるいは平均値が減少することに
より失火を検出できる。
【0004】第2の方法は、例えば、特開昭60-16
6739号公報に記載されているように、吸入空気量,
回転速度,クランク角信号に応じて、予めメモリ(RO
M)に記憶してある最適な燃焼状態から決定するように
した基準信号波形(基準燃焼状態)と、所定の方法で検
出された筒内圧の信号波形とを比較することにより、失
火を含めた燃焼状態の変化を詳細に捉えようとするもの
である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、第1の
方法においては、エンジンへの負荷が小さいアイドリン
グ時のように、正常燃焼であっても燃焼圧力の上昇が少
ない場合には、失火判定が困難であるという問題があっ
た。即ち、失火時における筒内圧変化の積分値あるいは
平均値と、アイドリング時のような正常燃焼時における
筒内圧変化の積分値あるいは平均値はほぼ等しいため、
両者の区別が難しく、確実な失火判定が困難なものであ
る。
【0006】それに対して、第2の方法は、低負荷運転
領域においても詳細な失火判定が可能であると考えられ
る。しかしながら、低負荷運転領域から高負荷運転領域
までのエンジン燃焼の全域において、吸入空気量,回転
速度,クランク角信号に応じて、予めメモリ(ROM)
に記憶してある最適な燃焼状態から決定するようにした
基準信号波形(基準燃焼状態)と、所定の方法で検出さ
れた筒内圧の信号波形とを比較しようとすると、第1
に、予め準備しておくべきメモリ(ROM)の記憶容量
をかなり大きくせざるを得ず、自動車に搭載するには実
用的でないものである。また、第2に、基準信号波形
(基準燃焼状態)と筒内圧の信号波形との比較演算のた
めのエンジン制御用マイコンの処理量が大きくなるた
め、現在車両に搭載されているマイコンでは、処理が間
に合わず、自動車に搭載して実施するには実用的でない
ものである。
【0007】本発明の目的は、低負荷領域等においても
失火判定を精度よく行え、かつ、自動車に搭載して使用
可能な実用的な内燃機関の燃焼状態検出装置を提供する
ことにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、内燃機関
の各気筒の筒内圧を検出する複数の筒内圧検出手段と、
これらの筒内圧検出手段によって検出された筒内圧を用
いて失火状態を判定する失火判定手段とを有する内燃機
関の燃焼状態検出装置において、上記複数の筒内圧検出
手段によって検出された複数の気筒の筒内圧信号を重畳
する信号重畳手段を備え、この信号重畳手段に寄って重
畳された筒内圧信号を用いて失火状態を判定するように
したものである。かかる構成により、重畳された筒内圧
信号において、失火が生じた場合、信号波形の著しい変
化が生じ、筒内圧信号波形のピストン上死点(TDC)
前後の対称性に明確な変化が生じることを利用して、失
火判定を確実に行い得るものとなる。
【0009】(2)上記(1)において、好ましくは、
さらに、上記信号重畳手段によって重畳された筒内圧信
号の内、各気筒に対応するピーク値の後に現れる極小値
に対応する失火判定指標を算出する信号検出手段とを備
え、上記失火判定手段は、上記信号検出手段によって算
出された失火判定指標と、あらかじめ設定されている失
火判定レベルを比較して、失火状態を判定するようにし
たものである。かかる構成により、失火判定指標と失火
判定レベルを比較して、失火状態であると判定するよう
にしているため、確実に失火判定を行うことができると
ともに、記憶容量が小さくでき、演算処理も簡単になる
ため、実用的な失火判定を行え得るものとなる。
【0010】(3)上記(1)において、好ましくは、
さらに、上記信号重畳手段によって重畳された筒内圧信
号の内、各気筒における点火後の燃焼圧力上昇範囲にお
ける重畳された筒内圧信号に基づいて、失火判定指標を
算出する信号検出手段とを備え、上記失火判定手段は、
上記信号検出手段によって算出された失火判定指標と、
あらかじめ設定されている失火判定レベルを比較して、
失火状態を判定するようにしたものである。かかる構成
により、失火判定指標と失火判定レベルを比較して、失
火状態であると判定するようにしているため、確実に失
火判定を行うことができるとともに、記憶容量が小さく
でき、演算処理も簡単になるため、実用的な失火判定を
行え得るものとなる。
【0011】(4)上記(3)において、好ましくは、
さらに、上記失火判定手段は、前の気筒において失火状
態を判定したときには、次の気筒における失火判定に用
いる失火判定レベルを切り替えるようにしたものであ
る。かかる構成により、前の気筒において失火状態を判
定したときには、次の気筒における失火判定に用いる失
火判定レベルを切り替えるようにしたため、連続失火の
発生時にも確実に失火判定を行い得るものとなる。
【0012】(5)上記(1)において、好ましくは、
さらに、上記複数の筒内圧検出手段の検出特性のばらつ
きを補正する補正手段を備え、この補正手段により特性
ばらつきの補正された筒内圧信号を用いて、失火状態の
判定をするようにしたものである。かかる構成により、
筒内圧検出手段の検出特性のばらつきを補正するように
したため、正確な失火判定を行い得るものとなる。
【0013】(6)上記(5)において、好ましくは、
上記補正手段は、上記筒内圧検出手段によって検出され
た筒内圧信号のバイアスとゲインを補正するようにした
ものである。かかる構成により、筒内圧検出手段の検出
特性のばらつきを補正するようにしたため、正確な失火
判定を行い得るものとなる。
【0014】(7)上記(5)において、好ましくは、
上記補正手段は、上記信号重畳手段によって重畳された
筒内圧信号の内、各気筒におけるバイアスに対する信号
重畳影響の少ない領域の信号によってバイアス補正値を
得、上記信号重畳手段によって重畳された筒内圧信号の
内、各気筒におけるの爆発燃焼前の圧縮行程での圧力上
昇の割合を捉える領域の信号によってゲインを得て、上
記筒内圧検出手段によって検出された筒内圧信号のバイ
アスとゲインを補正するようにしたものである。かかる
構成により、筒内圧検出手段の検出特性のばらつきを補
正するようにしたため、正確な失火判定を行い得るもの
となる。
【0015】(8)上記(1)において、好ましくは、
上記筒内圧検出手段及び上記信号重畳手段は、光源と、
この光源からの光を伝送するとともに、各気筒の燃焼圧
を受ける受圧部を有する光ファイバと、この光ファイバ
を通過した光を受光する受光手段とによって構成するよ
うにしたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図1〜図5を用いて、本発
明の一実施形態による内燃機関の燃焼状態検出装置につ
いて説明する。最初に、図1を用いて、本発明の一実施
形態による内燃機関の燃焼状態検出装置の全体構成につ
いて説明する。なお、以下の実施形態においては、4ス
トローク4気筒ガソリンエンジンを例にとって説明をす
るが、他の方式の内燃機関における失火検知にも同様に
適用できるものである。図1は、本発明の一実施形態に
よる内燃機関の燃焼状態検出装置の全体構成を示すブロ
ック図である。
【0017】筒内圧検出手段10A,10B,10C,
10Dは、エンジンの各気筒に設けており、各気筒の筒
内圧力を検出し、筒内圧信号を出力する。筒内圧検出手
段10A,10B,10C,10Dとしては、例えば、
シリコン単結晶を用いた圧電式の半導体圧力センサや、
抵抗線歪みゲージを用いる圧力センサ等が用いられる。
筒内圧検出手段は、これらの物に限られるものでなく、
高温高圧状態になり得る筒内圧が検出可能なものであれ
ばよく、例えば、後述するような光ファイバを用いる圧
力センサを用いることも可能である。
【0018】信号重畳手段20は、筒内圧検出手段10
A,10B,10C,10Dによって検出された各気筒
の筒内圧信号を重ね合わせる。従来は、各気筒毎に検出
された筒内圧に基づいて失火を判定するようにしていた
のに対して、本実施形態においては、全ての筒内圧の検
出信号を信号重畳手段20を用いて重畳する点に特徴を
有している。
【0019】信号重畳手段20としては、例えば、演算
増幅素子を用いて構成した一般に知られる信号の線形加
算回路などを用いる。なお、筒内圧検出手段10A,1
0B,10C,10Dとして、抵抗線歪みゲージを用い
る圧力センサを使用する場合には、各歪みゲージを直列
配線することによって、各歪みゲージの出力の線形合成
が可能であるため、この直列配線が信号重畳回路を構成
することになる。
【0020】ここで、図2を用いて、筒内圧検出手段1
0A,10B,10C,10Dによって検出された筒内
圧信号について説明する。図2は、本発明の一実施形態
による内燃機関の燃焼状態検出装置に用いる筒内圧検出
手段によって検出された筒内圧信号の波形図である。
【0021】図2において、横軸はクランク角度を示し
ている。4ストロークエンジンにおいては、吸気−圧縮
−点火・爆発−排気の各行程がクランク角度が720゜
の間で繰り返されるが、図2においては、圧縮上死点T
DC(Top Dead Center)を中心として、−90゜から
+90゜の範囲の圧縮行程から点火・爆発行程の一部を
示している。なお、点火のタイミングは、運転状態に応
じて変化するものであるが、ここでは説明の都合上、圧
縮上死点TDCのタイミングで点火するものとする。縦
軸は筒内圧を示しており、圧縮〜点火・爆発行程で図示
するように筒内圧が変化する。吸気行程や排気行程にお
いても、筒内圧は変化するが、その変化量は、爆発時の
筒内圧の変化に比べて小さいものであり、吸気行程や排
気行程における筒内圧は、図示の状態において、クラン
ク角度が−90゜や+90゜における筒内圧がほぼ維持
されている。
【0022】圧縮行程が進むと共に、筒内圧は徐々に増
加する。そして、圧縮上死点TDCにおいて点火される
ものとすると、爆発行程における筒内圧は、A)高負荷
燃焼時,B)低負荷燃焼時,C)失火時において、図示
するような圧力変化を示す。なお、図においては、圧縮
行程の圧力変化で規格化した筒内圧変化を示している。
失火とは、燃焼による圧力上昇がない状態である。失火
時でもピストンの運動による気体の圧縮は行われるの
で、失火時の筒内圧変化はピストンが最も上昇するクラ
ンク角度、即ちTDC前後でほぼ対称となる。これに対
し燃焼が起る場合、燃焼による圧力上昇は主としてTD
C後に発生する。
【0023】図2に示すように、高負荷燃焼時のように
燃焼圧力が大きい運転状態では、正常燃焼時(A)と失
火時(C)の筒内圧の変化は異なる。従って、従来の筒
内圧の変化の積分値や平均値を用いる失火判定方法で
も、筒内圧のピーク値の低下として失火を容易に検出す
ることができる。しかしながら、エンジンへの負荷が小
さいアイドリング時のように正常燃焼であっても燃焼圧
力の上昇が少ない場合(B)には、燃焼に伴う筒内圧の
ピーク値は失火時(C)と大きく違わない。従って、燃
焼圧力の上昇が少ない場合には、一般に筒内圧ピーク値
の変化から失火を捉えることは困難である。このため、
失火検出は上記TDC前後の信号の対称性に着目するの
が一般的である。
【0024】次に、図3を用いて、筒内圧信号を重畳し
た場合について説明する。図3は、本発明の一実施形態
による内燃機関の燃焼状態検出装置に用いる信号重畳手
段によって重畳された筒内圧信号の波形図である。
【0025】4気筒のエンジンにおいては、図2に示し
た各気筒毎の筒内圧信号の変化が、クランク角度で18
0゜づつずれて発生する。各気筒においていずれも正常
燃焼が行われた場合には、重畳された筒内圧信号は、図
3(A)に示すように、周期的に繰り返す対称な信号波
形となる。なお、図中における1,2,3,4は、各気
筒の番号を示しているが、ここでは、点火の行われた順
に、順次、第1気筒,第2気筒,第3気筒,第4気筒と
いうように符号を付けている。
【0026】それに対して、図3(B)は、4気筒の内
の1つの気筒において失火が発生し、他の3気筒が正常
燃焼をしている場合の重畳された筒内圧信号を示してい
る。図2に示したように、正常燃焼時には、点火後にお
いて筒内圧は上昇し、筒内圧変化はTDC前後で非対称
となる。一方、失火が発生すると、失火による燃焼圧力
上昇の欠落となり、筒内圧変化はTDC前後で対称とな
る。
【0027】ここで、一つの気筒だけが失火する場合を
考えると、失火気筒の圧力上昇時の信号は前の気筒の影
響で正方向にバイアスされているため、失火気筒の信号
波形はTDC前で大きく、 TDC後では小さくなる。
信号重畳のない場合、失火時の筒内圧信号波形はTDC
前後で対称になるが、重畳した筒内圧信号の場合にはT
DC前の方が後より大きくなる。
【0028】即ち、4気筒分の筒内圧信号を重畳する
と、失火気筒の信号ピーク後の信号レベルの低下として
現われる。即ち、図3(B)に示すように、第3気筒の
信号のピークが低下するとともに、ピーク後の極小値の
信号レベルが低下することになる。また、失火の発生し
た第3気筒に続く第4気筒の信号のピークも低下する。
本実施形態においては、この極小値のレベルを用いて、
失火判定するようにしている。この失火判定の具体例に
ついては、図5を用いて後述するが、例えば、図3
(B)に示すように、失火判定レベルLよりも重畳され
た筒内圧信号のレベルが低下した場合に、失火が発生し
たと判定するようにしている。
【0029】また、失火は、4気筒の内の単一の気筒で
のみ発生するものでなく、2つの気筒で発生する場合も
ある。例えば、図3(C)は、第3気筒と第4気筒で失
火が発生した場合を示している。第3気筒と第4気筒で
失火が発生すると、第3気筒と第4気筒及び第1気筒に
対する信号のピーク値が低下するとともに、第3気筒と
第4気筒に対するピーク後の極小値の信号レベルが低下
することになる。
【0030】4気筒のエンジンの燃焼サイクルの内、3
つの気筒若しくは4つの気筒において失火が発生する
と、エンジンが停止するため、一般的には失火判定の必
要は生じないものである。
【0031】次に、図1に戻って、信号重畳手段20に
よって重畳された筒内圧信号は、信号検出手段30に入
力する。信号検出手段30は、入力したアナログ信号を
ディジタル信号に変換するとともに、重畳された筒内圧
信号の極小値に対応する失火判定指標Iを算出する。そ
して、失火判定手段40は、信号検出手段30よって算
出された失火判定指標Iを、予め求められ、記憶されて
いる失火判定レベルLと比較して、失火判定指標Iが失
火判定レベルLよりも低い場合に、失火状態であると判
定する。失火判定レベルLは、低負荷運転領域から高負
荷運転領域までのエンジン燃焼の全域において、吸入空
気量,回転速度,クランク角信号に応じて、予めメモリ
(ROM)に記憶してある。あるいは、エンジン燃焼の
全域をいくつかの代表領域に分けて、各領域毎に記憶す
るようにしてもよいものである。従来の筒内圧の信号波
形を用いる方法では、2次元の情報(時間と筒内圧)で
ある信号波形そのものを記憶する必要があるため、記憶
容量が大きくなるが、上述したように本実施形態では、
失火判定レベルLを記憶するだけであるため、記憶容量
が小さくなる。また、従来は、検出された信号波形と記
憶されている信号波形を比較する必要があるため、その
比較演算処理は膨大なものとなるのに対して、失火判定
指標Iと失火判定レベルLを比較するだけであるので、
演算処理も簡単になる。
【0032】失火判定手段40において失火が判定され
ると、燃焼状態制御手段50は、失火の発生した気筒の
燃焼状態を制御する。燃焼状態の制御としては、例え
ば、燃料経済性の向上を目的として、ドライバビリティ
に影響を与えない限界まで燃料を希薄化するリーン限界
制御では、空気に対する燃料の割合が薄くなり過ぎると
失火が生じるため、失火の起った気筒の燃料噴射量を増
やす方向に制御する。または、失火が判定されると、燃
焼状態制御手段50は、失火発生を表示する。
【0033】ここで、図4及び図5を用いて、失火判定
指標Iの算出方法及び失火判定方法について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による内燃機関の燃焼状態
検出装置に用いる信号検出手段における失火判定指標I
の算出処理及び失火判定手段における失火判定処理の手
順を示すフローチャートであり、図5は、本発明の一実
施形態による内燃機関の燃焼状態検出装置に用いる信号
検出手段における失火判定指標Iの算出及び失火判定手
段における失火判定の説明図である。
【0034】失火の判定を行うためには、図3に示した
原理を用いると、各気筒のピーク値の後に発生する極小
値を求めればよいものである。しかしながら、高速回転
するエンジンに対して検出される筒内圧信号の重畳値か
ら極小値そのものを求めるのは実用的でない。即ち、エ
ンジンが6000rpmで回転している場合、クランク
角度360゜に相当する時間は、100msである。ク
ランク角度1゜毎に重畳された筒内圧信号をサンプリン
グすれば極小値を求めることも可能であるが、その際の
サンプリングタイミングは、0.28msとなる。エン
ジン制御装置に使用するマイコンを用いて、エンジンの
制御も行いながら失火の判定を行うとすると、0.28
ms毎に筒内圧信号をサンプリングしようとすると、殆
どのマイコンの処理は失火判定に費やされ、エンジン制
御自体を行えなくなる。
【0035】そこで、本実施形態においては、重畳され
た筒内圧信号の極小値そのものでなく、極小値に対応す
る信号として、以下に説明するように、失火判定指標I
を算出するようにしている。即ち、図5(A)は、重畳
された筒内圧信号を示しており、例えば、第3気筒にお
いて失火が発生しているものとする。信号検出手段30
は、重畳された筒内圧信号を、各気筒の筒内圧ピークの
間に現われる信号極小値を含む所定のクランク角度範囲
A1,A2,A3,A4について積分するようにしている。
各クランク角度範囲A1,A2,A3,A4は、各気筒の信
号ピーク後に現われる筒内圧低下を検出するために設け
るものである。各クランク角度範囲は例えば、極小値と
なるクランク角度±αとなるクランク角度の間とする。
ここで角度αの値は、サンプリングの間隔にもよるが、
例えばクランク角度で10度くらいというように、重畳
された筒内圧信号の極小値から大きくはずれない範囲に
取られる。
【0036】図4のステップ410において、信号検出
手段40は、第1気筒の判別を行う。失火の判定を行う
にあたっては、4気筒の内のどの気筒の失火であるかを
知る必要があるため、第1気筒の判別を行う。一般に、
エンジンに設けられているクランク角度センサ等は、気
筒判別のためのリファレンス信号REFを出力してい
る。例えば、図5(B)に示す参照信号1は、リファレ
ンス信号REFを示している。リファレンス信号REF
のパルス列は、それぞれの立ち上がりの位置が各気筒の
圧縮上死点TDCのタイミングに相当しており、また第
1気筒についてパルス幅を大きくすることで気筒判別が
できるようにしている。
【0037】気筒判別の方法は、図5に示す方法に限ら
ず、例えば全ての気筒についてパルス幅を変えるように
してもよい。またパルスの立ち上がり、あるいは下がり
の位置が各気筒のTDCと一定のクランク角度ずれるよ
うに設定してもよい。参照信号1は、一例としてクラン
ク軸と共に回転する円盤にスリットを設け、これを通過
する光の有無を検出することで得ることができる。この
場合、スリットの幅を調整することで燃焼サイクルに同
期したパルス幅の異なる信号を得ることができる。
【0038】ステップ420において、変数nに1をセ
ットする。nは、気筒数を表す変数であり、nに1をセ
ットすることにより、第1気筒に対する失火判定指標の
算出及び失火判定の処理とする。
【0039】ステップ430において、信号検出手段3
0は、領域Anの開始点を判定する。即ち、図5(A)
に示すように、重畳された筒内圧信号の中で、各気筒の
ピーク後に現れる極小値付近に、極小値に対応する失火
判定指標Inを求めるための領域Anを設定している。領
域Anは、例えば、圧縮上死点TDCを基準として、
(TDC+90゜)±10゜の範囲としている。即ち、
領域Anの開始点は、TDC+80゜である。
【0040】エンジンに設けられているクランク角度セ
ンサ等は、詳細なクランク角度を知るために必要なポジ
ション信号POSを出力している。例えば、図5(C)
に示す参照信号2は、ポジション信号POSを示してい
る。クランク角度センサは、1度クランク角度(1°C
A:Crank Angel)毎に幅の短いパルスを発生する。参
照信号1の立ち上がりを基準として、参照信号2のパル
ス列を計数することにより、領域Anの開始点を判定す
る。
【0041】ステップ440において、信号検出手段3
0は、筒内圧信号をサンプリングする。信号サンプリン
グは、例えば、クランク角度で6゜毎に行う。なお、サ
ンプリング周期は、6゜に限るものでない。上述したよ
うに、領域Anを(TDC+90゜)±10゜の範囲と
した場合、3点の重畳された筒内圧信号Pn1,Pn2,P
n3がサンプリングされる。
【0042】ステップ450において、信号検出手段3
0は、領域Anの終点を判定する。参照信号1の立ち上
がりを基準として、参照信号2のパルス列を計数するこ
とにより、領域Anの終点を判定する。
【0043】ステップ460において、信号検出手段3
0は、第n気筒の失火判定指標Inを算出する。具体的
には、ステップ440においてサンプリングされた筒内
圧信号Pn1,Pn2,Pn3の和を求め、その和の値を失火
判定指標Inとしている。複数の信号の和を求めること
により、各領域Anに相当する面積を求めることとな
り、領域内の複数のサンプリング値を判定に反映するこ
とで、筒内圧信号へのノイズ影響を低減できる。なお、
サンプリングされた筒内圧信号Pn1,Pn2,Pn3の中の
最小値をもって失火判定指標Inとすることもできる。
【0044】次に、ステップ470において、失火判定
手段40は、ステップ460において算出された失火判
定指標Inと、予め求められ、記憶されている失火判定
レベルLと比較して、失火判定指標Iが失火判定レベル
Lよりも低い場合に、失火状態であると判定する。失火
判定レベルLは、低負荷運転領域から高負荷運転領域ま
でのエンジン燃焼の全域において、吸入空気量,回転速
度,クランク角信号に応じて、予めメモリ(ROM)に
記憶してある。
【0045】エンジンの筒内圧は、主として、エンジン
の負荷を代表する吸入空気量Qのファクタとなる。なぜ
なら、失火の有無に依らずピストンの往復運動による筒
内圧変化は吸入空気量Qに依存するからである。また、
回転速度によっても、バルブタイミングの違いで筒内圧
が変化するため、回転速度もファクタとして失火判定レ
ベルLを記憶しておく。吸入空気量Qとエンジン回転数
Nにより失火判定レベルを変えるようにした失火の判定
式を、数1に示す。
【0046】
【数1】
【0047】数1の失火判定レベルLn(Q,N)は、
吸入空気量とエンジン回転数を軸としたマップの形で予
め保持しておくことができる。この場合、失火判定手段
40は、エンジンコントロールユニットが持っている吸
入空気量Qとエンジン回転数Nの情報に基づき、各気筒
に応じた失火判定レベルのマップから該当する失火判定
レベルLn(Q,N)を呼びだし、これを失火判定に使
用する。気筒毎にレベルを変えることにより、筒内圧検
出手段10に特性のばらつきがある状況でもより正確な
失火判定ができる。なお、気筒毎の失火判定レベルを共
通にすればマップは1つでよく、予め準備しておくべき
メモリ(ROM)の量を低減できる。
【0048】さらに、ステップ480において、変数n
に1を加算し、ステップ490において、変数nが4よ
り大きいか否かを判断し、nが4以下であれば、ステッ
プ430に戻り、第2気筒,第3気筒,第4気筒につい
て、それぞれ、失火判定指標を求め、失火判定を行う。
nが5になると、ステップ410に戻り、第1気筒から
繰り返し、失火判定指標を求め、失火判定を行う。
【0049】図5(A)は、重畳された筒内圧信号を示
しており、例えば、第3気筒において失火が発生する
と、領域A3における失火判定指標I3が失火判定レベル
Lよりも小さくなるため、第3気筒において失火が発生
したと判定することが可能となる。
【0050】信号検出手段30,失火判定手段40は、
燃焼状態制御手段50であるマイコンによるエンジン制
御システムの一部としてエンジンコントロールユニット
内に構成できる。
【0051】なお、以上の説明では、参照信号2のポジ
ション信号POSのパルス数をカウントすることで信号
検出の領域や検出タイミングをクランク角度上で決めて
いるが、こうした参照信号が利用できない場合には、例
えば、エンジンコントロールユニットにあるマイコンの
クロックを基準に参照信号1(REF)のパルス間の平
均時間を求め、これを基に時間領域で信号検出の領域や
検出タイミングを決めてもよいものである。
【0052】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、信号重畳手段によって重畳された筒内圧信号の極小
値に対応する失火判定指標Iを算出し、算出された失火
判定指標Iを、予め求められ、記憶されている失火判定
レベルLと比較して、失火判定指標Iが失火判定レベル
Lよりも低い場合に、失火状態であると判定するように
している。
【0053】また、失火判定レベルを用いて失火判定す
るようにしているため、記憶容量が小さくでき、失火判
定指標Iと失火判定レベルLを比較するだけであるの
で、演算処理も簡単になり、実用的な失火判定を行える
ものとなる。
【0054】次に、図6及び図7を用いて、本発明の第
2の実施形態による内燃機関の燃焼状態検出装置につい
て説明する。図6は、本発明の第2の実施形態による内
燃機関の燃焼状態検出装置の全体構成を示すブロック図
であり、図7は、本発明の第2の実施形態による内燃機
関の燃焼状態検出装置に用いる信号補正手段のブロック
図である。本実施形態において、図1と同一符号は同一
部分を示している。
【0055】筒内圧検出手段10の出力特性のばらつき
がある場合がある。そこで、本実施形態において、信号
補正手段60を用いて、出力特性のばらつきを補正した
後、信号重畳手段20で各信号を重ね合わせることで、
筒内圧検出手段10の出力特性のばらつき影響を受けに
くい失火判定ができるようにしている。
【0056】図7に示すように、本実施形態における信
号補正手段60は、バイアス補正手段62A,62B,
62C,62Dと、ゲイン補正手段64A,64B,6
4C,64Dによって構成されている。
【0057】筒内圧検出手段10の出力特性のばらつき
には、バイアスのばらつきとゲインのばらつきが考えら
れる。バイアスにばらつきがあると、各気筒から得られ
る信号は正負方向にシフトする。ゲインにばらつきがあ
ると、各気筒から得られる信号のスケールが変化する。
バイアスのばらつきが大きいと重畳された筒内圧信号の
オフセット電圧が設定範囲を超えてしまう場合がある。
また、ゲインのばらつきが大きいと、重畳された筒内圧
信号の波形が変化するので、失火判定に好ましくない影
響が出る。
【0058】そこで、本実施形態においては、筒内圧検
出手段10A,…,10Dによって検出された筒内圧信
号をバイアス補正手段62A,…,62Dに取り込み、
バイアスのばらつきを除去するようにしている。バイア
ス補正手段62としては、例えば、直流成分に近い低周
波数成分を除去するフィルタ手段を使うことができる。
バイアス補正手段62の段階で信号をマイコンに取り込
む場合には、信号の最小値、あるいは一定信号長さにつ
いてとった当該信号の最小値の平均値を記憶し、これを
取り込んだ信号データから差し引くことでバイアスの変
動分を除去できる。バイアス成分を一旦除去した後、改
めて基準となる共通の直流成分を信号に加えるようにし
てもよい。
【0059】また、ゲイン補正手段64A,…,64D
は、各信号のゲインのばらつきを補正をするようにして
いる。ゲインの補正には、必要な補正量の判定と、実際
に補正する二つの段階が必要となる。ゲイン補正手段6
4では、例えばその前処理として、バイアス補正された
各信号を取り込み、代表気筒,例えば、第1気筒に対す
るその他の気筒の信号ピークの値を検出し、また代表気
筒の燃焼圧力が規定の大きさになっていない時にはその
補正に必要な値を算定し、それらの積を補正係数k1―
k4とする。例えば、上記の過程において第1気筒の信
号ピークが400ミリボルト、第2気筒の信号ピークが
200ミリボルト、また本来得られるべき信号の値が1
00ミリボルトであるならk1=1/4、 k2=1/
2とする。
【0060】各補正係数は筒内圧自体にばらつきの少な
いエンジン始動時のモータリング時、あるいは短期間燃
料カットした運転時に得られる信号に基づき決定し、次
回係数を決めるまでその値を保持し、信号補正に使用す
る。もちろん補正係数k1―k4は予め別の方法で決定
したものをエンジンコントロールユニットに記憶させて
おいてもよい。
【0061】ゲイン補正手段64は続いて、補正係数k
1―k4を各信号の値に掛けることでゲインのばらつき
を補正する。具体例としては、一般に知られるD/Aコ
ンバータと増幅器を組み合わせた手段によって、信号毎
に補正係数に合わせた増幅・減衰処理を施してスケール
を変更するようにできる。信号が既にマイコンに取り込
まれている場合には全てをデジタル的に処理してもよ
い。
【0062】気筒毎に得られる信号のばらつき補正は、
上述したように、信号重畳前の段階で個別に処理してお
くのが確実ではあるが、バイアス補正用のデータと、ゲ
イン補正用のデータとを決めておけば、信号重畳手段3
0によって重ね合わせられた信号についても近似的な補
正を加えることができる。
【0063】一例として、信号検出手段30による信号
検出後、予め準備された補正用のデータに基づき、検出
されたデータに補正を加えることができる。補正用のデ
ータは、例えば次のように準備すればよい。即ち、重畳
信号全体のバイアス変動分から、それを打ち消すのに必
要なバイアス補正値を求める。また、各信号ピークの値
のばらつきを除き、且つ各ピーク値を規定の範囲に収め
るのに必要な実効的なゲイン補正係数k1―k4を各気
筒に対応して決める。予め決めておいたこれらのデータ
は、エンジンコントロールユニット内に記憶させておく
ことができる。信号検出手段30で検出された信号部分
が、例えば第1気筒の燃焼圧力部分であるなら、検出さ
れたデータに対してバイアス補正をし、ゲイン補正係数
k1を掛けるようにする。信号検出手段30で検出され
た信号部分が、第1気筒と第2気筒の間の信号部分であ
るなら、バイアス補正をした後、 例えばk1とk2か
ら平均処理により実効的に決めた係数を掛けるようにす
る。もちろん始めから実効的な補正用のデータを記憶し
ておくようにしてもよい。
【0064】なお、補正用のデータはエンジンの運転条
件に依存する場合があるが、代表的な運転条件で予め決
めておいた補正データを同様に記憶しておけば、運転条
件毎に最適な信号補正をすることもできる。補正用のデ
ータは、また、エンジン始動時のモータリング時、ある
いは短期間燃料カットした運転時に検出された信号に基
づいてエンジン運転中に決定し、値を逐次エンジンコン
トロールユニット内に記憶させながら更新するようにし
てもよい。
【0065】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、重畳された筒内圧信号の極小値に対応する失火判定
指標Iと失火判定レベルLと比較して、失火状態である
と判定するようにしているため、確実に失火判定を行う
ことができるとともに、記憶容量が小さくでき、演算処
理も簡単になるため、実用的な失火判定を行えるものと
なる。
【0066】また、筒内圧信号のバイアスとゲインを補
正するようにしているため、より正確な失火判定を行え
るものとなる。
【0067】次に、図8〜図12を用いて、本発明の第
3の実施形態による内燃機関の燃焼状態検出装置につい
て説明する。最初に、図8を用いて、本実施形態による
内燃機関の燃焼状態検出装置の全体構成について説明す
る。図8は、本発明の第3の実施形態による内燃機関の
燃焼状態検出装置の全体構成を示すブロック図である。
なお、本実施形態において、図1と同一符号は同一部分
を示している。
【0068】本実施形態においては、光ファイバ筒内圧
センサ70を筒内圧検出手段として用いている。光ファ
イバ筒内圧センサ70は、光源であるレーザダイオード
72Aと、コネクタ74Aを介して接続された光ファイ
バ76と、コネクタ74Bを介して接続されたフォトダ
イオード等の光受光手段72Bとによって構成されてい
る。光ファイバ76は、エンジンヘッドガスケット80
の中に実装されている。光ファイバ76の一部は、エン
ジンの各気筒の燃焼圧力を受ける受圧部78A,78
B,78C,78Dを有している。受圧部78A,78
B,78C,78Dは、光ファイバ76によって直列的
に接続されているため、光ファイバ筒内圧センサ70
は、信号重畳手段としても機能している。
【0069】光ファイバ筒内圧センサ70を構成する光
源であるレーザダイオード72Aから発せられた光は、
光ファイバ76を通過して、受光手段72Bで検出され
る。その間、光ファイバは各気筒に対応する受圧部78
A,78B,78C,78Dを通過する。各受圧部78
A,78B,78C,78Dでは、例えば、気筒内圧力
に応じた曲げ変形を光ファイバ76に与えるようにして
いる。
【0070】変形した光ファイバ76は光損失を被るの
で、受光手段72Bにより検出される光強度を計測する
と、各気筒内の圧力変化を得ることができる。圧力の上
昇は光強度の低下につながるので、受光手段72Bを用
いて光出力を光電変換をし、反転増幅をすると、図2に
示したのと同様な重畳された筒内圧信号を得ることがで
きる。
【0071】図3に示した重畳信号は各信号の線形和と
して求められているが、本実施形態においては、各受圧
部78A,78B,78C,78Dで生じる光損失をデ
シベルで表わしたとき、それらの和として合計の光損失
が決まるようになっている。信号重畳の方式は異なる
が、重畳された信号波形の特徴は共通である。即ち、信
号の合成方法は必ずしも線形和にとる必要はなく、失火
時に得られる信号波形の変化が、信号処理に合わせて顕
著になるように合成すればよいものである。
【0072】なお、光ファイバ筒内圧センサの動作原理
の詳細については、例えば、アプライド・オプティク
ス,第35巻(1996年),p.1143−1150
に記載されている。
【0073】光ファイバ筒内圧センサ70によって得ら
れる信号は、信号検出手段30Aによって失火判定レベ
ルLを算出し、失火判定手段40Aによって失火状態の
判定を行い、さらに、失火が発生すると、燃焼状態制御
手段50によって燃焼状態を制御する。
【0074】本実施形態においては、光ファイバ筒内圧
センサ70によって得られる信号は、各気筒の筒内圧信
号がはじめから重畳された形で得られる。従って、個々
の受圧部78A,78B,78C,78Dに起因する特
性のばらつきは、次のようにして信号検出手段30Aに
よって補正され、特性のばらつきの補正された信号が検
出される。
【0075】ここで、図9を用いて、本実施形態におけ
る信号検出手段30Aによる特性ばらつきの補正及び失
火判定指標Iの算出について説明する。図9は、本発明
の第3の実施形態による内燃機関の燃焼状態検出装置に
おける特性ばらつきの補正及び失火判定レベルLの算出
の原理説明図である。
【0076】図9は、受光手段72Bによって検出され
た各気筒の筒内圧信号が重畳された信号の内、クランク
角度の圧縮上死点TDCを中心として、TDC−90゜
からTDC+90゜の範囲の信号を示しており、一つの
気筒の圧縮・燃焼サイクル中を示している。クランク角
度はTDCを基準としてその前を負、後を正とした角度
を示したものである。
【0077】本実施形態においては、信号検出手段30
Aは、信号重畳手段としての機能を有する光ファイバ筒
内圧センサ70によって重ね合わせられた信号に対し
て、一つの気筒毎に、積分領域C,積分領域Bと積分領
域Gを設けるようにしており、これらの三つの検出領域
に分けて検出する。各信号検出領域から検出された情報
を組み合わせて処理することにより、筒内圧検出手段の
特性ばらつきに起因する失火判定への影響を低減するよ
うにしている。また、エンジンの運転状態に依存する失
火判定指標の変動を抑制できるようにしている。
【0078】積分領域Cは、燃焼圧力を計測する領域で
ある。積分領域Bは、バイアス補正に必要な情報を検出
する領域である。また、積分領域Gは、ゲイン補正に必
要な情報を検出する領域である。
【0079】積分領域Bは、バイアスに対する信号重畳
影響の少ない領域に設定されており、このため積分領域
Bは、信号重畳手段によって重ね合わせられた信号の極
小値を含む所定のクランク角度範囲としている。即ち、
前の気筒の燃焼が終了し、また計測対象の気筒の圧縮圧
力があまり上昇していない段階の圧力を捉えることで、
重畳信号のバイアス変動をリアルタイムに捉えることが
できる。
【0080】具体的には、積分領域Bは、(極小値のク
ランク角度‐α1)〜(極小値のクランク角度+α2)
の範囲を積分領域Bとしている。ここで、クランク角度
α1とα2は前の気筒の燃焼圧力影響が少なく、また、
判定気筒の圧縮行程による圧力上昇の影響が少ない範囲
に選べばよい。図9に示す例では、α1=0度、α2=
30度(何れもクランク角度)としている。
【0081】なお、実際の計測に当たっては、極小値を
求めるためには、サンプリング周期を短くする必要があ
るため、極小値そのものを求める方法は実用的でない。
そのため、本実施形態においては、(TDC−90゜)
〜(TDC−60゜)の範囲を積分領域Bとしている。
さらに、具体的には、計測対象の気筒の前の気筒の圧縮
上死点をTDC(-1)とすると、この圧縮上死点TDC(-
1)+90゜のタイミングで、積分領域Bの計測値を零ク
リアした上で、重畳された筒内圧信号を、(TDC(-1)
+90゜)〜(TDC(-1)+120゜)の範囲で、6゜
毎のタイミングでサンプリングし、サンプリングされた
筒内圧信号を加算して、積分領域Bの値を求めるように
している。
【0082】積分領域Gは、計測気筒の爆発燃焼がまだ
起っていない圧縮行程での圧力上昇の割合を捉えること
ができる領域に設定する。このため積分領域Gは、極小
値から次の点火クランク角度に至るクランク角度範囲に
設けた所定のクランク角度範囲とする。これにより、計
測気筒の点火前、即ち燃焼圧力分を含まない領域での圧
力上昇分を捉えることができる。
【0083】具体的には(点火クランク角度‐β1)か
ら(点火クランク角度‐β2)の範囲の信号増加面積を
積分範囲Gとしている。図9に示した例では、点火タイ
ミングが圧縮上死点TDCに等しいとすると、β1=6
0°、β2=18°(何れもクランク角度)としてい
る。ゲインが大きければ領域Gの面積は大きく、ゲイン
が小さければ領域Gの面積は小さくなる。
【0084】積分領域Cは、爆発燃焼の起っていない領
域を除くと共に、燃焼圧力上昇範囲を効果的に含むよう
に設定する必要がある。このため、積分領域Cは、点火
クランク角度から次の信号極小値に至るクランク角度範
囲に設けた所定のクランク角度範囲とする。これによ
り、点火後から燃焼終了時までの圧力上昇分を捉えるこ
とができる。具体的には(点火クランク角度+γ1)〜
(点火クランク角度+γ2)の範囲を積分領域Cとして
いる。図9に示した例ではγ1=0°、γ2=90°
(何れもクランク角度)としている。
【0085】各積分領域をクランク角度上で決める際、
上述したように信号の極小値や点火時期を与えるクラン
ク角度を基準とする代わりに、クランク角度上で変らな
いTDCを基準にすると、積分領域の設定が簡単にな
る。信号の極小値や点火時期はエンジン制御によって変
化し得るが、TDCは変らないからである。
【0086】例えば、積分領域Gの計測に当たっては、
点火タイミングは、運転状態によって変化するため、点
火クランク角度を基準とすると、検出タイミングが変動
することになる。積分領域Gは、計測気筒の点火前、即
ち燃焼圧力分を含まない領域での圧力上昇分を捉えれば
よいものであるため、本実施形態においては、(TDC
−60゜)〜(TDC−18゜)の範囲を積分領域Gと
している。さらに、具体的には、計測対象の気筒の前の
気筒の圧縮上死点をTDC(-1)とすると、この圧縮上死
点TDC(-1)+120゜のタイミングで、積分領域Gの
計測値を零クリアした上で、重畳された筒内圧信号を、
(TDC(-1)+120゜)〜(TDC(-1)+162゜)
の範囲で、6゜毎のタイミングでサンプリングし、サン
プリングされた筒内圧信号を加算して、積分領域Gの値
を求めるようにしている。
【0087】また、積分領域Cの計測に当たっては、点
火タイミングは、運転状態によって変化するため、点火
クランク角度を基準とすると、検出タイミングが変動す
ることになる。積分領域Gは、計測気筒の点火前、即ち
燃焼圧力分を含まない領域での圧力上昇分を捉えればよ
いものであるため、本実施形態においては、(TDC)
〜(TDC+90゜)の範囲を積分領域Cとしている。
さらに、具体的には、計測対象の気筒の圧縮上死点TD
Cのタイミングで、積分領域Cの計測値を零クリアした
上で、重畳された筒内圧信号を、(TDC)〜(TDC
+90゜)の範囲で、6゜毎のタイミングでサンプリン
グし、サンプリングされた筒内圧信号を加算して、積分
領域Cの値を求めるようにしている。
【0088】TDCを基準に各積分領域を決めると、運
転の状態によっては、例えば、領域Bの始点が極小値の
クランク角度にわずかに至らなかったり、あるいは領域
Gの終点が点火クランク角度をわずかに超えてしまった
りする場合も生じるが、実用上の問題はないものであ
る。従って、実際に定める信号検出のクランク角度範囲
は、予め上記三つの領域と大きくずれないようにTDC
基準に決めた上で固定しておくことができる。
【0089】なお、各積分領域における信号検出は、領
域Gにおいては、最初の検出値を保持しておき、図5に
示した参照信号2を一定数カウントする毎にデータをサ
ンプリングし、信号の増分のみを積算する。また、領域
B,Cにおいては、図5に示した参照信号2を一定数カ
ウントする毎にデータをサンプリングし、信号を積算す
る。信号検出の間隔を、クランク角度上で等間隔になる
ようにすると、領域当りの信号検出数がエンジンの回転
数によらないようにできる。サンプリングの間隔は、例
えば、クランク角度で6゜置きとする。
【0090】しかしながら、信号のサンプリング間隔
は、エンジン回転数に応じて変えてもよく、例えば、低
回転時には、サンプリング間隔を狭くする方が精度よく
信号検出を行える。高回転時には、サンプリング周期が
短くなっているため、6゜よりもサンプリング間隔を短
くすると、サンプリング処理の負担が大きくなる。
【0091】また、信号検出の間隔を必ずしも等間隔に
する必要はなく、例えば、燃焼ピークの現われる位置は
およそ決まっているから、信号の変化の大きな信号ピー
ク値付近を細かく、その他は荒く取るように領域内で設
定することができる。これには領域のサンプリング間隔
をサンプリング開始からの回数によって変えるようにす
ればよい。
【0092】また、サンプリングされた値に応じて、信
号の傾きの変化が小さいときは荒く、変化が大きい時は
細かくなるようにサンプリング間隔をリアルタイムに変
更してもよい。
【0093】次に、信号検出手段30Aによる失火判定
指標Iの算出方法について説明する。本実施形態におい
ては、信号検出手段30Aは、以下の(数2)に基づい
て失火判定指標Iを算出する。
【0094】
【数2】
【0095】なお、(数2)において、Scは領域Cの
積分値であり、SBは領域Bの積分値であり、SGは領域
Gの積分値であり、a及びbは係数である。
【0096】(数2)においては、燃焼圧力を計測する
ための領域Cの面積から領域Bの面積の係数倍を差し引
くことで、バイアス影響を低減するようにしている。ま
た、この結果を領域Gの面積の定数倍で割ることによっ
て、ゲインのばらつき影響を低減するようにしている。
(数2)の右辺は、係数aのとり方を調整すると、TD
C前後の面積の差をゲインについて規格化していると捉
えることができる。即ち、(数2)では筒内圧変化にみ
られるTDC前後の対称性の現われ方をバイアスとゲイ
ンの補正を含めた形で失火判定指標Iに置き換えるよう
にしている。この操作により、重畳された信号に現れる
失火時の特徴的な変化を1つの指標Iに置き換えて扱う
ことができる。
【0097】次に、図10〜図12を用いて、失火判定
手段40Aにおける失火判定について説明する。最初
に、図10を用いて、4気筒の内の一つの気筒において
失火が発生した場合について説明する。図10は、本発
明の第3の実施形態による内燃機関の燃焼状態検出装置
における失火判定の原理説明図である。図10(A)
は、4気筒の内の第3気筒において失火が発生したとき
の重畳された筒内圧信号を示し、図10(B)は、算出
された失火判定指標Iのクランク角度の変動の影響につ
いて示している。
【0098】図3において上述したように、燃焼時の筒
内圧信号に対して、失火時の第3気筒に対する筒内圧信
号は、ピーク値が低下し、また、極小値も低下する。ま
た信号の重畳がない筒内圧信号においてTDC前後の対
称性をみると、図2に示したように、燃焼時はTDC後
が大きく、失火時にはTDC前後が対称に近づく。一
方、重畳された筒内圧力信号を使用する場合には、失火
時の筒内圧力信号はTDC前がむしろ大きくなる。従っ
て、(数2)の係数aを適当に選ぶことにより、燃焼時
と失火時との失火判定指標Iの差を大きくとることがで
きる。
【0099】また、実際の失火判定に際しては、参照信
号として得られるクランク角度は必ずしも安定しておら
ず、例えば±4°CA(Crank Angle)のばらつきが発
生するのが一般的である。このようなクランク角度のば
らつきが発生すると、図10(B)に示すように、筒内
圧信号のTDC前後の面積比は変ることになり、失火判
定指標Iが、クランク角度の変動によって、変化する。
【0100】しかしながら、本実施形態においては、筒
内圧変化のTDC前後の対称性に注目するようにしてい
るため、正常燃焼が行われた第1,第2,第4気筒に対
する失火判定指標Iと、失火が発生した第3気筒に対す
る失火判定指標Iの差を大きくとることができる。従っ
て、失火時の失火判定指標Iより大きなレベルで、正常
燃焼時の失火判定指標Iより小さいレベルに、失火判定
レベルLaを設定することにより、クランク角度の変動
に拘らず、失火の判定を確実に行うことができる。ま
た、これにより、低負荷状態のように失火状態との差が
小さい場合にも、確実に失火判定を行うことができる。
【0101】次に、図11を用いて、4気筒の内の二つ
の気筒において連続失火が発生した場合について説明す
る。図11は、本発明の第3の実施形態による内燃機関
の燃焼状態検出装置における失火判定の原理説明図であ
る。図11(A)は、4気筒の内の第3気筒及び第4気
筒において連続失火が発生したときの重畳された筒内圧
信号を示し、図11(B)は、算出された失火判定指標
Iのクランク角度の変動の影響について示している。
【0102】図11(A)に示すように、第3気筒及び
第4気筒において失火が連続して起る場合、二つ目の気
筒(第4気筒)の信号には、TDC前が大きくなるとい
う特徴は現われない。これは前の気筒が既に失火してお
り、重なるはずの燃焼圧力が上昇していないことによ
る。このため、燃焼時の信号(例えば、第2気筒の信
号)と失火時の信号(第4気筒の信号)を比べると、図
11(B)に示すように、失火判定指標Iに大きな差が
生じない。従って、例えば、失火判定レベルLaを用い
て、失火の判定をしようとすると、変動を示すクランク
角度がθ1よりも大きいときには、第2気筒の失火判定
指標I2は、失火判定レベルLaより大きいため正常燃焼
と判定でき、第4気筒の失火判定指標I4は、失火判定
レベルLaより小さいため赤化と判定できるが、クラン
ク角度がθ1よりも小さいときには、第2気筒の失火判
定指標I2及び第4気筒の失火判定指標I4は、いずれも
失火判定レベルLaより大きいため正常燃焼と誤った判
定をすることになる。特に、アイドリングのようにエン
ジンへの負荷が小さく、燃焼圧力が上昇しない運転状況
では、失火判定レベルLの設定が困難である。
【0103】そこで、本実施形態においては、前気筒の
失火の有無により、失火判定レベルを変えることによ
り、連続失火にも対応できるようにしている。図11
(A)に示すように、第1気筒の筒内圧力のように、一
度失火が起った後再び燃焼が起ると筒内圧信号のTDC
前の面積が同じ燃焼時の信号(第2気筒の信号)に比べ
て減少する。このため、(数2)に基づく信号処理をす
ると、失火判定指標I1は燃焼時の信号の場合の失火判
定指標I2より大きくなる。また、第1気筒のような燃
焼時の失火判定指標I1と第4気筒のような失火時の失
火判定指標I4を比べると、やはり大きな差があること
が分かる。つまり一度失火が起った場合、失火判定レベ
ルを、図11に示すように、失火判定レベルLaから失
火判定レベルLbに設定し直すことにより、クランク角
度の変動によらず失火判定を確実にすることができる。
【0104】ここで、図12を用いて、上述した考えに
基づいて連続失火が発生した場合における失火判定手段
40Aの失火判定処理について説明する。図12は、本
発明の一実施形態による内燃機関の燃焼状態検出装置に
おける連続失火時の失火判定手段の失火判定処理を示す
フローチャートである。
【0105】本実施形態においては、失火発生の有無を
示すフラグFの値によりレベルを変更するようにしてい
る。ステップ1200において、失火判定手段40A
は、信号検出手段30Aが算出した失火を判定しようと
する第n気筒について失火判定指標Inを読み込む。次
に、ステップ1210において、失火判定手段40A
は、エンジンの負荷に相当する吸入空気量とエンジン回
転数とを読み込む。吸入空気量は、エンジンの運転状態
を判断するために用いられるものであるため、吸入空気
量に代えて、吸気負圧を読み込むようにすることもでき
る。
【0106】次に、ステップ1220において、失火判
定手段40Aは、ステップ1210において読み込まれ
た吸入空気量とエンジン回転数の値に基づいて、エンジ
ンの運転状態が予め指定した運転状態にあるか否かを判
断し、指定運転状態にあるときは、ステップ1230に
進み、指定運転状態になりときは、ステップ1250に
進む。予め指定した運転状態とは、低負荷のアイドリン
グ状態など、失火誤判定を生みやすい運転状態である。
指定運転領域にない場合には、ステップ1240におい
て、失火判定手段40Aは、失火判定レベルを変更する
必要はないので、フラグFの値によらずテーブル1から
失火判定レベルを選択する。テーブル1の失火判定レベ
ルは、図11の失火判定レベルLaに相当するものであ
り、吸入空気量あるいはまたエンジン回転数応じた値が
テーブル1に与えられている。
【0107】一方、指定運転領域に有る場合には、ステ
ップ1230において、失火判定手段40Aは、フラグ
Fが”0”か”1”かを判定し、”0”の場合にはステ
ップ1240に進み、”1”の場合には、ステップ12
50に進む。ここで、フラグFが”0”の場合とは、前
の気筒において失火が発生していない場合であり、図1
1(A)に示す例では、第1気筒,第2気筒,第3気筒
の失火判定する場合である。一方、フラグFが”1”の
場合とは、前の気筒において失火が発生している場合で
あり、図11(A)に示す例では、第4気筒の失火判定
する場合である。
【0108】フラグFが”0”の場合には、ステップ1
240において、失火判定手段40Aは、テーブル1か
ら失火判定レベルLnを読み込む。そして、フラグF
が”1”の場合には、ステップ1250において、失火
判定手段40Aは、テーブル2から失火判定レベルLn
を読み込む。テーブル2から読み込まれる失火判定レベ
ルは図11(B)に示した失火判定レベルLbに相当す
る。即ち、フラグFが”1”の場合には、前の気筒で失
火が発生しているため、図11において説明したよう
に、連続失火の可能性があるため、失火判定レベルとし
て、Lbを用いるようにしている。
【0109】次に、ステップ1260において、失火判
定手段40Aは、ステップ1240若しくはステップ1
250において読み込まれた失火判定レベルLa,Lbと
ステップ1200において読み込まれた失火判定指標I
nの大小を比較し、失火判定指標Inが失火判定レベルL
a,Lb以下である時に失火と判定する。
【0110】さらに、ステップ1270において、失火
判定手段40Aは、ステップ1260における判定で第
n気筒に失火が発生していたか否かを判定し、失火が発
生した場合には、ステップ1280に進み、失火が発生
していない場合には、ステップ1290に進む。
【0111】ステップ1280において、失火判定手段
40Aは、失火が発生している場合にはフラグFを”
1”とし、また、ステップ1290において、失火判定
手段40Aは、失火が発生していない場合にはフラグF
を”0”とする。フラグFは、ステップ1230〜12
50において、次の気筒の失火判定の際に用いられる。
これにより、次の気筒の失火判定をする際、運転状態が
再び指定運転領域にあれば、以上の繰り返しにより、失
火判定レベルをLaとLbのように変更することができ
る。
【0112】なお、二つの気筒が一つおきに失火する場
合は、図10に示した一つの気筒で失火が発生した場合
と同じである。また、三つ以上の気筒が失火する場合は
既にエンジンが止まってしまうような状況となるため、
ここでは失火判定の対象としてはおらず、そのような状
況に至る前に失火を捉える必要がある。
【0113】図11に示した燃焼時の第2気筒に対する
筒内圧変化と、失火時の第4気筒に対する筒内圧変化
は、共に、TDCに対する信号の対称性、即ちTDC前
後の面積比の点から見ると、信号重畳をしていない通常
の信号に近いものである。従って、第2気筒のような燃
焼時と第4気筒のような失火時の間で設定の困難であっ
た失火判定レベルが、信号を重畳することにより、第2
気筒のような燃焼時と第3気筒のような失火時、あるい
は第1気筒のような燃焼時と第4気筒のような失火時の
間で容易に設定できるようになる。これにより、本実施
形態では、エンジンの低負荷運転領域を含む全域で精度
よい失火判定を行うことが確認できる。
【0114】本実施形態においては、光ファイバ筒内圧
センサ70によって得られる信号は、各気筒の筒内圧信
号がはじめから重畳された形で得られる。従って、個々
の受圧部78A,78B,78C,78Dに起因する特
性のばらつきは、次のようにして信号検出手段30Aに
よって補正される。即ち、バイアス変動分は、重畳信号
全体の正負方向へのシフトとして現われるので、筒内圧
ピーク間の最小値あるいはその平均値等を検出すること
で信号全体のバイアス補正値を決定し、補正できる。ま
た、気筒毎のゲインのばらつきは、重畳された信号に現
われる筒内圧のピーク値を互いに比較することで近似的
な補正係数を求め、ばらつき影響を低減できる。
【0115】次に、積分領域Cの開始クランク角度θc
をリアルタイムに求める場合の計算式について、(数
3)を用いて説明する。
【0116】
【数3】
【0117】なお、ここで、θcは領域Cの開始クラン
ク角度であり、θignは点火クランク角度であり、θsは
補正角度である。
【0118】積分領域Cは、燃焼圧力の上昇範囲を確実
に含むと同時に、圧縮行程での圧力変化を含まないよう
にするのが望ましいものである。そこで、(数3)にお
いては、積分領域の開始点を点火時期基準に選ぶように
している。具体的には、点火クランク角度θignに対し
て予め設定した補正角度θsを加えた値を積分領域Cの
開始クランク角度θcとしている。補正角度θcを設ける
ことにより、積分領域Cを確実に燃焼領域内にとれるよ
うにしている。
【0119】上述したように、領域の開始・終了クラン
ク角度をあらかじめTDC基準に決めておく場合でも、
領域Cの開始クランク角度を(数3)のようにとると、
点火時期の変動に依らず、燃焼圧力上昇部分を確実に捉
えるようにできる。
【0120】同様にして、領域Gの終点を点火時期基準
に決めることもできる。この場合、補正角度θsは負の
角度にすればよい。但し、領域Gの終点は点火時期前に
設定するため、領域設定時に最新の点火時期がまだ決ま
っていないことがある。その場合、例えば一つ前の燃焼
時の点火時期、あるいは一定運転期間についてみた点火
の平均時期を基準に領域Gの終点を求めることができ
る。
【0121】なお、図8に示したように、筒内圧検出手
段及び信号重畳手段として、光ファイバ筒内圧センサ7
0を用いる場合にも、信号検出手段や失火判定手段とし
て、図1において説明した信号検出手段30や失火判定
手段40を用いることもできる。
【0122】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、重畳された筒内圧信号において、失火が生じた場
合、信号波形の著しい変化が生じ、筒内圧信号波形のピ
ストン上死点(TDC)前後の対称性に明確な変化が生
じることを利用して、判定対象の気筒のピーク後の領域
を用いて、失火判定を確実に行うようにできる。
【0123】また、その変化を失火判定指標Iに置き換
えて、これを失火判定レベルLと比較して、失火状態で
あると判定するようにしているため、確実に失火判定を
行うことができるとともに、記憶容量が小さくでき、演
算処理も簡単になるため、実用的な失火判定を行えるも
のとなる。
【0124】また、筒内圧信号のバイアスとゲインを補
正するようにしているため、より正確な失火判定を行え
るものとなる。
【0125】さらに、連続失火が発生した場合にも、失
火判定レベルを切り替えて使用することにより、正確な
失火判定が可能となる。
【0126】
【発明の効果】本発明によれば、内燃機関の燃焼状態検
出装置において、低負荷領域等においても失火判定を精
度よく行え、かつ、自動車に搭載して使用可能な実用的
なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による内燃機関の燃焼状態
検出装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による内燃機関の燃焼状態
検出装置に用いる筒内圧検出手段によって検出された筒
内圧信号の波形図である。
【図3】本発明の一実施形態による内燃機関の燃焼状態
検出装置に用いる信号重畳手段によって重畳された筒内
圧信号の波形図である。
【図4】本発明の一実施形態による内燃機関の燃焼状態
検出装置に用いる信号検出手段における失火判定指標I
の算出処理及び失火判定手段における失火判定処理の手
順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態による内燃機関の燃焼状態
検出装置に用いる信号検出手段における失火判定指標I
の算出及び失火判定手段における失火判定の説明図であ
る。
【図6】本発明の第2の実施形態による内燃機関の燃焼
状態検出装置の全体構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による内燃機関の燃焼
状態検出装置に用いる信号補正手段のブロック図であ
る。
【図8】本発明の第3の実施形態による内燃機関の燃焼
状態検出装置の全体構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施形態による内燃機関の燃焼
状態検出装置における特性ばらつきの補正及び失火判定
レベルLの算出の原理説明図である。
【図10】本発明の第3の実施形態による内燃機関の燃
焼状態検出装置における失火判定の原理説明図である。
【図11】本発明の第3の実施形態による内燃機関の燃
焼状態検出装置における失火判定の原理説明図である。
【図12】本発明の一実施形態による内燃機関の燃焼状
態検出装置における連続失火時の失火判定手段の失火判
定処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10…筒内圧検出手段 20…信号重畳手段 30…信号検出手段 40…失火判定手段 50…燃焼状態制御 60…信号補正手段 62…バイアス補正手段 64…ゲイン補正手段 70…光ファイバ筒内圧センサ 72a…光源 72b…受光手段 74a,74b…コネクタ 76…光ファイバ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂口 龍範 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器事業部内 (72)発明者 文野 高之 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器事業部内 (72)発明者 渡辺 静久 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器事業部内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内燃機関の各気筒の筒内圧を検出する複数
    の筒内圧検出手段と、 これらの筒内圧検出手段によって検出された筒内圧を用
    いて失火状態を判定する失火判定手段とを有する内燃機
    関の燃焼状態検出装置において、 上記複数の筒内圧検出手段によって検出された複数の気
    筒の筒内圧信号を重畳する信号重畳手段を備え、 この信号重畳手段によって重畳された筒内圧信号を用い
    て失火状態を判定することを特徴とする内燃機関の燃焼
    状態検出装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載の内燃機関の燃焼状態検出装
    置において、さらに、 上記信号重畳手段によって重畳された筒内圧信号の内、
    各気筒に対応するピーク値の後に現れる極小値に対応す
    る失火判定指標を算出する信号検出手段とを備え、 上記失火判定手段は、上記信号検出手段によって算出さ
    れた失火判定指標と、あらかじめ設定されている失火判
    定レベルを比較して、失火状態を判定することを特徴と
    する内燃機関の燃焼状態検出装置。
  3. 【請求項3】請求項1記載の内燃機関の燃焼状態検出装
    置において、さらに、 上記信号重畳手段によって重畳された筒内圧信号の内、
    各気筒における点火後の燃焼圧力上昇範囲における重畳
    された筒内圧信号に基づいて、失火判定指標を算出する
    信号検出手段とを備え、 上記失火判定手段は、上記信号検出手段によって算出さ
    れた失火判定指標と、あらかじめ設定されている失火判
    定レベルを比較して、失火状態を判定することを特徴と
    する内燃機関の燃焼状態検出装置。
  4. 【請求項4】請求項3記載の内燃機関の燃焼状態検出装
    置において、 上記失火判定手段は、前の気筒において失火状態を判定
    したときには、次の気筒における失火判定に用いる失火
    判定レベルを切り替えることを特徴とする内燃機関の燃
    焼状態検出装置。
  5. 【請求項5】請求項1記載の内燃機関の燃焼状態検出装
    置において、さらに、 上記複数の筒内圧検出手段の検出特性のばらつきを補正
    する補正手段を備え、 この補正手段により特性ばらつきの補正された筒内圧信
    号を用いて、失火状態の判定をすることを特徴とする内
    燃機関の燃焼状態検出装置。
  6. 【請求項6】請求項5記載の内燃機関の燃焼状態検出装
    置において、 上記補正手段は、上記筒内圧検出手段によって検出され
    た筒内圧信号のバイアスとゲインを補正することを特徴
    とする内燃機関の燃焼状態検出装置。
  7. 【請求項7】請求項5記載の内燃機関の燃焼状態検出装
    置において、 上記補正手段は、上記信号重畳手段によって重畳された
    筒内圧信号の内、各気筒におけるバイアスに対する信号
    重畳影響の少ない領域の信号によってバイアス補正値を
    得、上記信号重畳手段によって重畳された筒内圧信号の
    内、各気筒におけるの爆発燃焼前の圧縮行程での圧力上
    昇の割合を捉える領域の信号によってゲインを得て、上
    記筒内圧検出手段によって検出された筒内圧信号のバイ
    アスとゲインを補正することを特徴とする内燃機関の燃
    焼状態検出装置。
  8. 【請求項8】請求項1記載の内燃機関の燃焼状態検出装
    置において、 上記筒内圧検出手段及び上記信号重畳手段は、光源と、
    この光源からの光を伝送するとともに、各気筒の燃焼圧
    を受ける受圧部を有する光ファイバと、この光ファイバ
    を通過した光を受光する受光手段とによって構成されて
    いるとを特徴とする内燃機関の燃焼状態検出装置。
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