JPH1180839A - スジむら抑制効果に優れた電子部品用低熱膨張合金薄板の製造方法 - Google Patents

スジむら抑制効果に優れた電子部品用低熱膨張合金薄板の製造方法

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JPH1180839A
JPH1180839A JP25793897A JP25793897A JPH1180839A JP H1180839 A JPH1180839 A JP H1180839A JP 25793897 A JP25793897 A JP 25793897A JP 25793897 A JP25793897 A JP 25793897A JP H1180839 A JPH1180839 A JP H1180839A
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JP25793897A
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English (en)
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Tomoaki Hyodo
知明 兵藤
Katsuhisa Yamauchi
克久 山内
Tamako Ariga
珠子 有賀
Daisuke Ozaki
大介 尾崎
Tomohiko Uchino
知彦 内野
Akira Yamamoto
山本  彰
Naoichi Yamamura
直一 山村
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 偏析を有効に防止して、画像の局部的な鮮明
度の低下をもたらすスジむら等のエッチング不良を防止
することができ、かつ高精度のエッチングが可能な電子
部品用低熱膨張合金薄板の製造方法を提供すること。 【解決手段】 Ni:30〜50wt%を含有するFe
−Ni系合金またはNi:20〜40wt%、Co:7
wt%以下を含有し、かつNi+Coが27〜40wt
%であるFe−Ni−Co系合金からなり、造塊法で溶
製された鋼塊または連続鋳造法により溶製されたスラブ
に対して1200〜1300℃の加熱温度で10時間以
上の均熱処理を行い、30%以上の圧下率で分塊圧延
後、さらに1200〜1300℃の加熱温度で10時間
以上の均熱処理を行い、その後熱間圧延および冷間圧延
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シャドウマスクや
リードフレーム等の微細なエッチング加工を施す電子部
品に使用される低熱膨張合金薄板に関し、特に、コンピ
ューターディスプレイに使用される高精細用シャドウマ
スクとして好適な、スジむら抑制効果に優れた低熱膨張
合金の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】シャドウマスクやリードフレーム等の電
子部品は一般にエッチング加工が施されて使用される。
この際に、エッチング速度が速く、かつエッチング後の
孔の端部形状と寸法精度に優れたエッチング性の高い材
料が要求されている。
【0003】以下、シャドウマスクを例にとって説明す
る。シャドウマスクはテレビジョンのブラウン管に使用
されており、電子銃から発射された電子ビームをガラス
体によって支持された蛍光面上の所定の位置に正確に照
射して特定の色調を与えるための多数の細孔を有してい
る。この場合に、発射された電子ビームのうち細孔を通
過して蛍光体に照射されるのは約2割であり、残りの8
割はシャドウマスクに衝突するため、シャドウマスクは
蛍光面を支持するガラス体に比較して高温になる。その
上、シャドウマスク用素材として従来より用いられてき
た低炭素リムド鋼や低炭素アルミキルド鋼等の軟鋼板
は、蛍光面を支持するガラス体に比べて熱膨張率がはる
かに大きいため、これらの間に位置ずれが生じて電子ビ
ームを蛍光面上の所定の位置へ正確に照射することがで
きなくなり、画像が不鮮明になることが多かった。
【0004】画像が不鮮明になることを防止するため
に、シャドウマスクの懸架位置となる支持体の構造を工
夫して、上記位置ずれを補償することも試みられている
が、必ずしも十分とはいえない。さらに近年は、テレビ
ジョン画面の大型化、高品位化や高輝度化に伴って、こ
れらの位置ずれの問題が顕在化している。
【0005】そこで、シャドウマスク用素材として、低
熱膨張材料である36wt%Niを含有するFe−Ni
系合金の使用が拡大している。この合金は従来の低炭素
鋼に比べて熱膨張係数が約1/10と小さく、高輝度画
面における電子ビームの加熱に対してもその低膨張性は
維持されるため、この材料を素材として作製されたシャ
ドウマスクでは、熱膨張による色ずれは生じにくい。
【0006】シャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板
は、通常、連続鋳造法または造塊法によって合金鋼塊を
調整し、次いで分塊圧延、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を
施して製造される。この合金薄板にフォトエッチング加
工により電子ビームの通過孔を形成した後、焼鈍、成型
加工および黒化処理等の各工程を施すことによりシャド
ウマスクが製造される。
【0007】しかし、Fe−Ni系合金薄板を素材とす
るシャドウマスクは、優れた低熱膨張特性を有する一方
で、エッチング性に劣るため、フォトエッチング加工で
良好な孔形状を得ることは困難であり、エッチング不良
により局部的に画像の鮮明度不良を生じることがある。
そこで、このFe−Ni系合金薄板についてエッチング
性を改善する試みがなされている。
【0008】例えば、特公昭59−32859号公報で
は、フォトエッチング加工後の孔形状をシャドウマスク
全面にわたって均一にするためには、エッチング面の結
晶方位の不揃いを防いで、エッチング速度を一定にする
必要があるとして{100}結晶面の配向度を35%以
上とすることによって改善を図っている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年、
テレビジョン画面の大型化およびコンピューターのディ
スプレイへの適用拡大にともない画像のきめ細かさや高
輝度化への要求が一段と高まってきており、このために
電子ビームの通過孔をより高輝度に穿孔するようなエッ
チング加工が必要となってきている。
【0010】特に、コンピューターディスプレイに使用
される高精細のシャドウマスクでは主として板厚0.1
5mm以下の素材が使用され、例えば直径120μm
の孔が270μmピッチで穿孔されており、さらなるフ
ァインピッチ化も試行されている。
【0011】このような微細な孔をエッチング面内にお
いて精度よく穿孔するために、エッチング技術の向上と
ともに、素材の材質の向上が図られてきたが、依然とし
て局部的なエッチング不良に起因する孔形状の不良が発
生しており、画像の局部的な鮮明度不良の一因となって
いる。
【0012】このエッチング不良は、マスク部において
合金薄板の圧延方向に沿った微細な線状のむらとして観
察され、「スジむら」と呼ばれている。このスジむらの
多くは数十μm〜数mmの幅を有し、マスク部の一辺か
ら対辺に達する。これまでNiの偏析あるいは不純物の
偏析によりスジむらが発生することが知られており、ス
ジむらを抑制するために均熱による偏析拡散処理に関し
ていくつかの技術が提案されている。
【0013】例えば、特開平2−54744号公報で
は、スジむらがC、Si、Mn、Cr等の不純物元素の
偏析、あるいは鋳造時の凝固組織により発生するものと
し、0.001〜0.03wt%のBを添加するととも
に、特定条件でスラブを加熱することにより偏析を阻止
し、柱状晶組織を低減してスジむらの抑制を図ってい
る。しかし、実際には、例えばシャドウマスクのように
微細なエッチング加工と低熱膨張が要求される材料で
は、特性を劣化させないためにC、Si、Mn、Cr等
の元素は合計しても1wt%に満たない量に極力低減し
ており、このような偏析によるスジむらは生じ得ず、こ
の技術はFe−36%Ni合金薄板で発生するスジむら
を解消するものではない。一方で、シャドウマスクの黒
化処理では0.02wt%を超えてBが存在すると、黒
化むらが発生して局部的な色ずれが生じる。
【0014】また特開昭60−128253号公報で
は、スジむらの発生原因はNiの成分偏析であり、Fe
−Ni系合金鋼塊を850℃〜融点以下の温度で加熱
し、1ヒートまたは2ヒート以上で40%以上の断面減
少率で鍛造することによりNi偏析を改善することで、
エッチング孔形状を良くし、スジむらをなくす方法を提
案している。しかし、より微細なエッチング孔を高密度
に穿孔する必要のあるコンピューターディスプレー用の
シャドウマスクでは、このように単に断面減少率を40
%以上とするだけではスジむらを解消することができ
ず、また高温での均熱を長時間行うためスラブ表面に酸
化スケールおよびNiが濃化した合金層であるサブスケ
ールが発生し、スラブ手入れに多大な時間が必要であ
る。
【0015】また特公平6−68128号公報では、ス
ジむらの発生原因は成分偏析が最も支配的であるとし、
1350℃以下の温度範囲でlogt≧8.28−6.
09×10-3T(ただしtは保定時間(hr)、Tは材
料温度)で熱処理することを提案している。しかし、こ
の技術のように単に高温で長時間の均熱を施すだけで
は、有効にスジむらを解消することはできず、いたずら
にスラブ表面に酸化スケールおよびサブスケールが発生
するだけである。
【0016】以上述べたように、上記いずれの技術を用
いてもFe−36%Ni合金薄板で発生するようなエッ
チング加工によるスジむらを有効に防止することができ
ず、むしろ、画像の高品位化に伴って、スジむら等のエ
ッチング不良は増加する傾向にあり、偏析改善のための
均熱処理は一層高温かつ長時間化する傾向にある。
【0017】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であって、偏析を有効に防止して、画像の局部的な鮮明
度の低下をもたらすスジむら等のエッチング不良を防止
することができ、かつ高精度のエッチングが可能な電子
部品用低熱膨張合金薄板の製造方法を提供することを目
的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Fe−N
i系低熱膨張合金薄板のエッチング性について種々検討
を行った結果、上述のスジむらはNi偏析に起因して発
生し、スケールの発生を伴うことなくNi偏析を改善す
るためには、造塊インゴットまたは連続鋳造スラブを1
200〜1300℃の加熱温度で10時間以上の均熱処
理を行い、30%以上の圧下率で分塊圧延後、さらに1
200〜1300℃の加熱温度で10時間以上の均熱処
理を行うことが必要なことを見出した。
【0019】Fe−Ni合金の凝固組織は凝固温度によ
って異なり、鍛造温度が高温の場合には柱状晶組織が、
低温の場合には等軸晶組織が発達する(八島、藤井、森
谷:日新製鋼技報、Vol.55(1986)10)。
【0020】1トン以上の大型鋼塊やスラブを造塊法ま
たは連続鋳造法で溶製する場合には数時間の鋳造時間を
必要とし、低温鋳造では鋳造後期で温度が低下する懸念
があり安定した製造ができないため、一般的に高温鋳造
の柱状晶結晶組織となるような凝固条件を選択する。
【0021】図1はFe−Ni合金の凝固組織を模式的
に示したものである。柱状晶組織はFe濃化の樹脂とN
i濃化の樹間とからなり、凝固初期にまず形成される1
次デンドライトと、1次デンドライトから形成される2
次デンドライトが存在する。
【0022】図2はFe−36wt%Ni合金材(アン
バー材)スラブにおいて、鋼塊あるいはスラブの均熱条
件と、その中のNi偏析度との関係を示した図である。
加熱温度が高いほど加熱時間が長いほどNi偏析度は小
さくなることが示されており、偏析低減の観点からは、
より高温長時間の均熱処理が望ましい。
【0023】一方、Fe−Ni合金を高温で酸化すると
表面には酸化鉄が層状に成長し、合金内部には金属/酸
化物混合部と粒界酸化部からなるサブスケールが成長し
やすくなる(引用文献 松野二三朗,錦田俊一:鉄と
鋼,Vol.68(1982)P109〜116,草開
清志,土岐浩之,石黒隆義、大岡耕之:鉄と鋼,Vo
l.74(1988)P119〜126)。このため、
サブスケール低減の観点からは、いたずらに高温処理を
行うことは好ましくない。また、省エネルギーの観点か
らもより低温での均熱処理とする必要がある。
【0024】図3はデンドライトアーム間隔と1300
℃で40時間均熱後のNi偏析度との関係を模式的に示
したものである。デンドライトアーム間隔が高温かつ長
時間の均熱を行っても1000μmと大きい場合には、
Ni濃化部(Ni正偏析)が減少するが、Ni濃度の低
いNi負偏析部の濃度は増加しない。一方、デンドライ
トアーム間隔が300μmと小さい場合には、Ni正偏
析部が減少するだけでなく、Ni負偏析部のNi濃度が
増加し、平均濃度に近づくことが示されている。
【0025】図4は、1200℃で20時間均熱した場
合の、均熱前圧下率とNi偏析度の関係を示す図であ
る。この図には、均熱処理前に圧下を加えない場合には
Ni正偏析は低下するもののNi負偏析改善に効果がな
いのに対して、圧下を加えた後に均熱処理を行ったもの
では、Ni正偏析だけでなくNi負偏析もあわせて改善
されることが示されている。
【0026】デンドライトアーム間隔を狭めた後に均熱
処理を行うことは、Ni負偏析もあわせて改善する点で
効果的であるが、工業的にデンドライトアーム間隔を狭
める方策としては、分塊圧延での圧下や鍛造があり、こ
れらは図1における2次デンドライトアーム間隔を狭め
ることに有効である。しかし、板厚方向に圧下を加える
と、1次デンドライトアームの間隔は狭くならず、逆に
つぶされて1次デンドライト幅が増すと同時に1次デン
ドライトアームの間隔が不揃いとなる。一方、1次デン
ドライトアーム間隔を狭めるために、均熱前に幅方向に
圧下を加えることは製品幅を狭め生産性が劣化する。1
次デンドライトのNi偏析を改善するためには、圧下前
に均熱処理を行うことが必要となる。
【0027】すなわち、鋼塊またはスラブをいたずらに
高温に加熱することなくNi偏析を防止するためには、
1次デンドライトと2次デンドライトの両方を効果的に
拡散させて、1次デンドライトおよび2次デンドライト
の両方のNi偏析を解消する必要があり、そのために
は、均熱処理を行ってから圧下を加え、さらにその後に
均熱処理を行うことが必要である。具体的には、1回目
の均熱処理により1次デンドライトおよび2次デンドラ
イトの偏析を改善し、その後の分塊圧延では2次デンド
ライトアーム間隔を低減して拡散距離を減少させ、2回
目の均熱処理により主として2次デンドライトの偏析
(負偏析)を改善するのである。
【0028】本発明は、このような知見に基づいてなさ
れたものであり、第1に、Ni:30〜50wt%を含
有するFe−Ni系合金からなり、造塊法で溶製された
鋼塊または連続鋳造法により溶製されたスラブに対して
1200〜1300℃の加熱温度で10時間以上の均熱
処理を行い、30%以上の圧下率で分塊圧延後、さらに
1200〜1300℃の加熱温度で10時間以上の均熱
処理を行い、その後熱間圧延および冷間圧延を行うこと
を特徴とする、スジむら抑制効果に優れた電子部品用低
熱膨張合金薄板の製造方法を提供するものである。
【0029】第2に、Ni:20〜40wt%、Co:
7wt%以下を含有し、かつNi+Coが27〜40w
t%であるFe−Ni−Co系合金からなり、造塊法で
溶製された鋼塊または連続鋳造法により溶製されたスラ
ブに対して1200〜1300℃の加熱温度で10時間
以上の均熱処理を行い、30%以上の圧下率で分塊圧延
後、さらに1200〜1300℃の加熱温度で10時間
以上の均熱処理を行い、その後熱間圧延および冷間圧延
を行うことを特徴とする、スジむら抑制効果に優れた電
子部品用低熱膨張合金薄板の製造方法を提供するもので
ある。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明においては、電子部品の性能を低下させる
寸法変化や位置ずれが生じないような十分な低熱膨張性
を得るために、Niを30〜45wt%を含有するFe
−Ni系合金を用いる。このような合金を用いることに
より、室温〜100℃の平均熱膨張係数が2.0×10
-6/℃以下の低熱膨張が実現される。
【0031】また、本発明の他の形態においては、7w
t%以下のCoを添加したFe−Ni−Co系合金を用
いる。この場合には、Ni:20〜40wt%、Co:
7wt%以下を含有し、かつNi+Coが27〜40w
t%である。このような組成の合金を用いることによ
り、上記Fe−Ni系合金と同様の低熱膨張性を得るこ
とができる。Coが7wt%を超えるとエッチング性が
著しく低下するため、Co量の上限を7wt%とする。
【0032】本発明において適用される合金は、上記元
素の他に、本発明の効果が損なわれない範囲であればS
i、Mn、B、N、Oを含有してもよいが、Si≦0.
07wt%、Mn≦0.5wt%、B≦0.02wt
%、N≦0.005wt%、O≦0.002wt%の範
囲に制限することが望ましい。
【0033】これらの元素のうち、Siは溶鋼の脱酸元
素として使用することができるが、過剰に存在すると黒
化処理において板表層に濃化し、均質で黒色の酸化膜形
成を阻害するため0.07wt%以下であることが望ま
しい。Mnは良好な熱間加工性を確保する上で有用であ
るが、過剰に存在するとエッチング性を低下させ、また
黒化処理において板の表層に濃化し、均質で黒色の酸化
膜形成を阻害するため、0.5wt%以下であることが
望ましい。Bは熱間加工性の向上やスケール生成を抑制
する効果があるが、過剰に存在すると黒化処理において
板の表層に濃化し、均質で黒色の酸化膜形成を阻害する
ため、0.02wt%以下とすることが望ましい。Nは
プレス加工性の劣化やエッチング性の劣化をもたらすた
め、0.005wt%以下とすることが望ましい。Oは
プレス前の軟質化焼鈍時に結晶粒の成長を阻害し、プレ
ス成形性を劣化させるので、0.002wt%以下であ
ることが望ましい。
【0034】上記成分組成の低熱膨張合金薄板を得るた
めに、本発明においては、まず、上記成分組成の合金を
転炉または電気炉で溶解し、連続鋳造法あるいは造塊法
でスラブ(連続鋳造法の場合)または鋼塊(造塊法の場
合)を製造する。これに対して1200から1300℃
で10時間以上の条件で1回目の均熱処理を施し、続い
て30%以上の圧下率で分塊圧延を行い、さらに、12
00から1300℃で10時間以上の条件で2回目の均
熱処理を行う。
【0035】各均熱処理において、1200℃未満ある
いは10時間未満であるとNi偏析の拡散効果が小さ
く、スジむらを発生しやすくなる。また、1300℃を
超えるとスケール生成などの悪影響のほうが著しくな
る。また、2回の均熱処理の間の分塊圧延が30%未満
であると2次デンドライトアーム間隔を低減させる効果
が小さくなってしまう。
【0036】2回目の均熱処理の後は、10%以上の圧
下率で分塊圧延することが好ましい。粒界酸化部は鋼板
内部に延びるが、圧下率が大きくなるほどサブスケール
厚(粒界酸化部の厚さ)が薄くなる。最終均熱処理後1
0%以上の圧下を加えることによって均熱処理により伸
びた粒界酸化部を曲げるとともに、金属/酸化物混合部
あるいは金属部と粒界酸化部との伸び率が異なり亀裂を
生ずるため、サブスケールが割れやすくなり、均熱処理
によって生じたスケールを除去するためのスラブ手入れ
の負荷が軽減する。
【0037】このようにして厚さ120〜300mmに
されたスラブに対し、1050〜1250℃で30分間
以上の熱処理を施し、熱間圧延により厚さ2〜3mmの
熱延鋼板を得る。この熱延鋼板について、冷間圧延と7
50℃以上での焼鈍を行い、板厚0.10〜0.25m
mの薄板を製造する。この際に、鋼塊から薄板までの累
積圧下率は99.9%以上とする。これにより、目的と
する電子部品用低熱膨張合金薄板が得られる。
【0038】本発明は、エッチング加工される電子部品
用の合金薄板全般を対象とするが、特に高精度のエッチ
ング加工と低熱膨張性が要求されるエッチング加工によ
る孔ピッチが300μm以下のシャドウマスク用素材の
製造方法として好適である。本発明における低熱膨張特
性を有するFe−Ni系またはFe−Ni−Co系合金
薄板を素材とするシャドウマスクは、熱膨張による位置
ずれが少ないので、これを用いたブラウン管の画像は一
段と鮮明になる。
【0039】
【実施例】以下、本発明の合金薄板をシャドウマスク用
素材として使用する場合の実施例について説明する。表
1に本実施例で用いた鋼の化学成分組成を示す。ここで
はシャドウマスク用素材として必要な低熱膨張特性、黒
化処理性およびプレス成形性が得られるA〜Dの4種類
を溶製した。
【0040】
【表1】
【0041】これらの鋼を溶製した鋼塊およびスラブに
対して、1回目の均熱処理を1150から1320℃で
5〜40時間の条件で行い、その後20〜75%の分解
圧延を行い、次いで2回目の均熱処理を1150〜13
00℃で10〜40時間の条件で行った。その後熱間圧
延して厚さ2.0〜4.0mmの熱延鋼板を得た。さら
に冷間圧延と800℃以上の温度での焼鈍を行い、板厚
0.10〜0.25mmの表2に示す薄板No.1〜1
9を製造した。なお、No.1〜15が本発明例であ
り、No.16〜19が比較例である。
【0042】これらNo.1〜19の薄板を製造した際
の、鋼塊およびスラブの均熱条件および圧下率を表2に
示す。これらの鋼塊およびスラブを使用して製造した薄
板について、Ni偏析度およびエッチング不良の有無、
スラブ手入れ負荷を評価した。その結果を表3に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】エッチング性の評価は電子ビーム通過孔の
孔径が110μmφ、孔ピッチ250μmであるフォト
マスクを使用してフォトエッチング穿孔試験を行い、加
工後のシャドウマスクの外観についてスジむら等のエッ
チング不良の有無と加工精度を判定した。このときのフ
ォトエッチングは、液温60℃、47ボーメ濃度の塩化
第二鉄水溶液をスプレー圧2.0kgf/cm2でスプ
レー処理する条件で行った。エッチング不良の有無は、
一方向光源を用いた透過光および反射光による目視観察
によって判定した。
【0046】表3に示すように、本発明例であるNo.
1〜15ではスラブ手入れ負荷が小さく、スジむらが微
小の低熱膨張合金薄板が得られた。これに対して、比較
例であるNo.18粒界酸化部の厚さが大きく、スラブ
手入れ負荷が大きかった。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
特定組成のFe−Ni系合金またはFe−Ni−Co系
合金を素材として用い、均熱処理条件と最終均熱処理後
の圧下率を所定の範囲に規定することにより、スジむら
等のエッチング不良を防止することができる電子部品用
低熱膨張合金の製造方法が提供される。本発明の方法に
よって製造された電子部品用低熱膨張合金薄板は、特に
高精度の加工が必要なコンピューターディスプレイに使
用されるシャドウマスク用素材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Fe−Ni合金の凝固組織(柱状晶)組織を示
す模式図
【図2】均熱処理条件とNi偏析度との関係を示す図。
【図3】Ni拡散とデンドライトアーム間隔との関係を
示す図。
【図4】均熱前の圧下率とNi偏析度との関係を示す
図。
フロントページの続き (72)発明者 尾崎 大介 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 内野 知彦 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 山本 彰 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 山村 直一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni:30〜50wt%を含有するFe
    −Ni系合金からなり、造塊法で溶製された鋼塊または
    連続鋳造法により溶製されたスラブに対して1200〜
    1300℃の加熱温度で10時間以上の均熱処理を行
    い、30%以上の圧下率で分塊圧延後、さらに1200
    〜1300℃の加熱温度で10時間以上の均熱処理を行
    い、その後熱間圧延および冷間圧延することを特徴とす
    る、スジむら抑制効果に優れた電子部品用低熱膨張合金
    薄板の製造方法。
  2. 【請求項2】 Ni:20〜40wt%、Co:7wt
    %以下を含有し、かつNi+Coが27〜40wt%で
    あるFe−Ni−Co系合金からなり、造塊法で溶製さ
    れた鋼塊または連続鋳造法により溶製されたスラブに対
    して1200〜1300℃の加熱温度で10時間以上の
    均熱処理を行い、30%以上の圧下率で分塊圧延後、さ
    らに1200〜1300℃の加熱温度で10時間以上の
    均熱処理を行い、その後熱間圧延および冷間圧延を行う
    ことを特徴とする、スジむら抑制効果に優れた電子部品
    用低熱膨張合金薄板の製造方法。
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