JPH1179241A - ブリスターパック用シート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 紫外線、電子線、γ線などの照射により、能
率よく滅菌することができるブリスターパック用シート
を提供しようとする。 【解決手段】 ブリスターパック用シートのうち、平坦
フィルムにスチレン系樹脂製の薄いフィルムを用い、成
形フィルムに平坦フィルムの厚みに等しいか又はこれよ
りも厚みの大きいポリアミド、ポリカーボネート、熱可
塑性ポリエステル樹脂又はオレフィン系樹脂製のフィル
ムを用いる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、ブリスターパッ
ク用シートに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】ブリスターパックとは、錠剤などを包装
するのに用いられている包装形態である。ブリスターパ
ックは、例えば、プラスチックフィルムに多数の独立し
た泡状の窪みを設けておき、各窪みに１個ずつ錠剤を入
れ、その上にアルミ箔を重ねて貼り合わせて錠剤を各窪
み内に１個ずつ閉じ込めて包装した形態である。ブリス
ターパックは、錠剤を１個ずつ取り出して服用するのに
便利であるから、広く利用されている。

【０００３】上述のように、ブリスターパックには、窪
みを持ったフィルム（以下、これを成形フィルムとい
う）と、平坦なフィルム（以下、これを平坦フィルムと
いう）とが必要とされる。そのうち、成形フィルムには
ポリプロピレン製などのプラスチック製のフィルムが使
用されているが、平坦フィルムは破れ易いものでなけれ
ばならないために、プラスチック製のフィルムはこれま
で使用されないで、紙又はアルミ箔が専ら使用された。

【０００４】錠剤、注射針、注射器などの医療用品をブ
リスターパックすることが行われている。このような医
療用品をブリスターパックするためには、その前に成形
フィルムと平坦フィルムとを滅菌処理に付することが行
われている。その滅菌処理の方法としては、エチレンオ
キサイドガスで処理する方法と、紫外線、電子線又はγ
線等を照射する方法とが行われている。このうち、エチ
レンオキサイドガスで滅菌する方法（以下、ガス法とい
う）は、エチレンオキサイドガスの取扱いに格別な注意
が必要とされ取扱いが厄介なために、紫外線、電子線又
はγ線を照射する方法（以下、これを照射法という）に
次第に変わりつつある。

【０００５】平坦フィルムに紙を使用するブリスターパ
ック法では、ガス法で滅菌すると紙がエチレンオキサイ
ドを吸収するので、包装後に被害を起こすという問題が
あった。また、紙を使用すると、パックを破って物を取
り出す時に、紙が粉末となって飛び散ることがあるの
で、嫌われた。

【０００６】そのため、平坦フィルムにはアルミ箔が多
く用いられることとなった。ところが、アルミ箔を照射
法によって滅菌しようとすると、アルミ箔は光を通さな
いので、一枚ずつ照射する必要があり、従って滅菌を能
率よく行うことができないという欠点がある。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】この発明者は、ブリス
ターパックに伴う上述の問題点に気付き、上述のような
問題のないブリスターパック法を開発しようとした。そ
して、この発明者は、照射法によって能率よく滅菌でき
るブリスターパック用のシートを提供しようとした。

【０００８】

【課題を解決するための手段】これまでブリスターパッ
クを行うのに、成形フィルムにはプラスチック製のもの
を使用して来たが、平坦フィルムにはプラスチック製の
ものが使用されなかった。その理由はよく判らないが、
平坦フィルムにプラスチック製のものを使用したので
は、平坦フィルムが破れにくくなる、と考えたからであ
ろう。

【０００９】この発明者は、プラスチックには色々な特
性を持ったものがあるので、平坦フィルムに、本来破れ
易い性質を持ったプラスチックを選び、これを厚みの薄
いフィルムとして用いることとすれば、上述のような旧
来の考えを打破することができると考えた。また、この
発明者は、平坦フィルムに比べて、成形フィルムに本来
破れ難い性質を持ったプラスチックを選んで用いること
とすれば、上述のような旧来の考えを確実に打破するこ
とができると考えた。

【００１０】具体的には、この発明者は、平坦フィルム
をスチレン系樹脂で作り、その厚みを２０〜７０μｍと
し、他方、成形フィルムをポリアミド、ポリカーボネー
ト、熱可塑性ポリエステル樹脂、又はオレフィン系樹脂
で作り、その厚みを６０〜２００μｍの範囲内で、しか
も上記平坦フィルムの厚みと同等又はこれよりも厚くす
ることによって、上記問題が解決できることを見出し
た。また、両フィルムの少なくとも一方には、その接着
面に融着性薄膜を塗布しておくことが有効であることを
見出した。この発明は、このような知見に基づいて完成
されたものである。

【００１１】この発明は、平坦フィルムと成形フィルム
とから成り、平坦フィルムは厚みが２０〜７０μｍのス
チレン系樹脂製フィルムであり、成形フィルムは厚みが
６０〜２００μｍの範囲内にあって、上記平坦フィルム
の厚みに等しいか又はこれよりも大きい厚みを持ってお
り、ポリアミド、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエス
テル樹脂、又はオレフィン系樹脂で作られ、物品を収容
する窪みが多数分離して形成されたものであることを特
徴とする、ブリスターパック用シートを提供するもので
ある。

【００１２】

【発明の実施の形態】この発明を実施の一例につき図面
に基づいて説明すると、次のとおりである。図１は、こ
の発明に係るブリスターパック用シートの使用状態を示
した一部切欠斜視図である。図２は、図１に示したブリ
スターパック用シートを用いてブリスターパックをした
ときの状態を示した斜視図である。図３は、図２に示し
たブリスターパックから物品を取り出すときの状態を示
した斜視図である。図４は、図２に示したブリスターパ
ックの積み重ね状態を示した側面図である。

【００１３】図１において、１は平坦フィルムであり、
２は成形フィルムであり、３は容器に入れられた注射針
であって、ブリスターパックを施されるべき物品であ
る。この発明に係るブリスターパック用シートは、平坦
フィルム１と成形フィルム２とから成るものである。

【００１４】平坦フィルム１はスチレン系樹脂で作られ
ている。スチレン系樹脂は、スチレンの単独重合体だけ
でなく、スチレンとこれと共重合できる他の単量体との
共重合体を含んでいる。共重合体は、その中でスチレン
が５０モル％以上を占めているものを意味している。他
の単量体としては、例えばアクリロニトリル、ブタジエ
ンである。それらのうちではスチレンの単独重合体を用
いることが好ましい。

【００１５】平坦フィルム１は厚みが２０〜７０μｍと
される。その中でも、厚みはなるべく薄いものが好まし
い。このフィルムは押し出しによって作ることができ
る。平坦フィルム１の一面には融着性薄膜が形成され
る。

【００１６】融着性薄膜とは、加熱し又は超音波をあて
ると、溶融して相互に又は他物に接着するに至る樹脂で
作られた薄膜である。この薄膜は、融着性樹脂を溶融
し、塗布することによって形成することができる。融着
性樹脂は、例えば、低分子量のエチレン・酢酸ビニル共
重合体、エチレン・マレイン酸共重合体などである。こ
れは変性ポリエチレンとも呼ばれている。薄膜の厚さ
は、できるだけ薄いものが好ましく、例えば１０〜３０
μｍの程度のものである。

【００１７】成形フィルム２は、厚さが６０〜２００μ
ｍの範囲内にあって、上記平坦フィルムの厚さに等しい
か、又はこれよりも大きい厚みを持っている。成形フィ
ルム２は、ポリアミド、ポリカーボネート、熱可塑性ポ
リエステル樹脂、又はオレフィン系樹脂で作られてい
る。

【００１８】そのうち、ポリアミドは、アミド結合−Ｃ
ＯＮＨ−を持つ重合体であって、一般にナイロンと呼ば
れている樹脂である。ポリカーボネートは炭酸エステル
結合−Ｏ−Ｃ（＝Ｏ）−Ｏを主鎖に持った重合体であ
る。熱可塑性ポリエステル樹脂は、一般にペット（ＰＥ
Ｔ）と呼ばれている樹脂であって、テレフタル酸のよう
な芳香族二塩基酸と、エチレングリコールのような脂肪
族アルコールとの間で、エステル化反応を起こさせて得
られた高分子量の直鎖状ポリエステルである。オレフィ
ン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブテン−１等低級
オレフィンの単独又は共重合体を意味している。これら
の樹脂のうちではポリアミドを用いることが好ましい。
その理由は、ポリアミドを用いると深い窪みを形成する
ことが容易だからである。

【００１９】成形フィルム２は、物品を収容する窪みが
多数分離して形成されている。すなわち、図１に示した
ように、注射針３を１個ずつ丁度収容するに足るだけの
窪みが、多数形成されている。その窪みは、フィルムを
真空成形、圧縮成形又は圧空成形によって作るものであ
るから、窪みと反対側から見ると、図１のように突起２
１となって見える。

【００２０】成形フィルム２の窪みの開口側に位置する
平面部分には融着性薄膜が形成されている。ここで、窪
みの開口側に位置する面２２は、図１で云うと、成形フ
ィルム２の見えない側の面である。すなわち、突起２１
となって突出している表面と反対側の面である。融着性
薄膜は、面２２の全面に形成されていてもよいが、窪み
を除いたその余の平面部分に形成されるのが好ましい。

【００２１】成形フィルム２に形成すべき融着性薄膜は
平坦フィルム１に形成すべき融着性薄膜と同種のもので
ある。成形フィルム２上の融着性薄膜と、平坦フィルム
１上の融着性薄膜とは、全く同じ組成のものであっても
よいが、また異なった組成のものであってもよい。ま
た、成形フィルム２と平坦フィルム１とには、そのうち
の一方にだけ融着性薄膜が形成されていて、他方には形
成されていなくてもよい。

【００２２】この発明に係るブリスターパック用シート
は、上に述べたような平坦フィルム１と成形フィルム２
とから成るものである。このシートは、図１に示したよ
うに、成形フィルム２の各窪みに１個の物品を入れ、そ
の表面を平坦フィルム１で蔽い、平坦フィルム１と成形
フィルム２との間に融着性薄膜を介在させて重ね、成形
フィルム２の平面部分を平坦フィルム１に密接させ、平
面部分を加熱したり平面部分に超音波を加えたりして、
融着性薄膜を融着させてブリスターパックを行うのに使
用される。

【００２３】この発明に係るブリスターパック用シート
は、例えば図２に示したように、注射針を１個ずつブリ
スターパックするのに使用される。図２では、平坦フィ
ルム１が成形フィルム２と平面部分で融着されて一体と
なっており、成形フィルム２の各窪み内には、注射針３
が１個ずつ収容され、密封されている。すなわち、融着
面４は、平坦フィルム１上の融着性薄膜と、成形フィル
ム２上の融着性薄膜とが融着し合って一体となり、こう
して気密に包装している。窪みの間には平坦フィルム１
と成形フィルム２とを貫通して設けられたミシン目が走
っていて、必要に応じて窪み部分１つだけを分離するこ
とが容易となっている。

【００２４】図２のように、ブリスターパックされた注
射針は、ミシン目５に沿って切断して１個の注射針分の
包装を取り出し、図３に示したようにパックの一部を曲
げ、平坦フィルム１を破って、容器に入った注射針３を
容易に取り出すことができる。

【００２５】この発明は、成形フィルム２を異なる樹脂
で作った複数のフィルムの貼り合わせ体で構成し、複数
のフィルムの１つに湿気又は酸素の透過度の小さいバリ
ヤ性樹脂からなるものを用いて、ブリスターパックをバ
リヤ性のものとすることができる。バリヤ性樹脂として
は、例えばＥＶＯＨ（エチレンと酢酸ビニルとの共重合
体の酢酸ビニルを鹸化したもの）、又はＭＸナイロン
（メタキシリレンジアミンとアジピン酸とを共縮合させ
ることによって得られたポリアミド樹脂）を用いること
ができる。

【００２６】この場合、成形フィルム２にバリヤ性を与
えるだけでブリスターパックをバリヤ性のものにするこ
とができる理由は、次のとおりである。図２に示したよ
うなブリスターパックは、例えば図４に示したように積
み重ねて貯蔵又は運搬される。詳しく云えば、図４にお
ける１つのブリスターパックＡは、同種のブリスターパ
ックＢと背中合わせに、云えかえると、平坦フィルム側
をつき合わせにし、しかも突起２１の位相をズラして密
接され、その次の同種のブリスターパックＣは、ブリス
ターパックＡと同じ方向に向けて置かれ、（詳述する
と、ブリスターパックＣはブリスターパックＢと向かい
合いに置かれ、しかもブリスターパックＣの突起２１が
ブリスターパックＢの突起２１の間へ入り込むように密
接され、）さらにその次のブリスターパックＤは、ブリ
スターパックＢと同じ方向に向けて置かれ、ブリスター
パックＣと背中合わせに密接されて積み重ねられる。こ
のような状態では、空気に触れるのは専ら成形フィルム
２だけであって、平坦フィルム１は殆ど空気に触れな
い。従って、成形フィルム２にバリヤ性を与えるだけ
で、ブリスターパックをバリヤ性のものとすることがで
きる。なお、突起２１の位相のズレは、各ブリスターパ
ックの一端に半端部分Ｐを付設することによって、容易
に行うことができる。

【００２７】

【発明の効果】この発明によれば、ブリスターパック用
シートを平坦フィルムと成形フィルムとから成るものと
し、平坦フィルムを厚みが２０〜７０μｍのスチレン系
樹脂製フィルムで構成し、成形フィルムを厚みが６０〜
２００μｍの範囲内にあって上記平坦フィルムの厚みに
等しいか又はこれよりも大きいものとし、且つ成形フィ
ルムをポリアミド、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエ
ステル樹脂、又はオレフィン系樹脂で作ることとしたか
ら、平坦フィルムは成形フィルムよりも破れ易くなって
いる。また、成形フィルムに物品を収容する窪みを多数
分離して形成し、窪み内に包装すべき物品を入れ、窪み
の開口側に位置する平面部分と、平坦フィルムとの間に
融着性薄膜を介在させて密接させ、熱又は超音波を加え
ることにより融着性薄膜を溶融して容易にブリスターパ
ックを行うことができる。

【００２８】このとき、平坦フィルムの一面、又は成形
フィルムにおける窪みの開口側に位置する平面部分に予
め融着性薄膜を形成しておけば、ブリスターパックは一
層容易となる。

【００２９】こうしてブリスターパックしたものは、重
ね合わせて運搬又は在庫しても平坦フィルムが破れるお
それがなく、従って包装が確実に維持される。とくに、
図４に示したようにして運搬又は在庫させると、狭い空
間内に多量のブリスターパックを収容することができ、
またブリスターパックにバリヤ性を持たせることができ
る。他方、包装したもの１個を取り出し、平坦フィルム
から物品のかどが飛び出すようにパックを捻ると、平坦
フィルムはすぐに破れて物品を取り出すことができる。
こうして、物品の取り出しが容易なために、例えばブリ
スターパックから取り出すと同時に注射針を注射器に接
続することができ、従って作業を素早く行うことができ
る。

【００３０】その上に、この発明に係るブリスターパッ
ク用シートは、合成樹脂を材料としているから、電子
線、紫外線、γ線などを透過させる特性を持っており、
従って照射法により滅菌を能率よく行うことができる。
このために、薬剤又は医療補助品の包装にとくに便利で
ある。この発明は、このような利益を与えるものであ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明に係るブリスターパック用シートの使
用状態を示した一部切欠斜視図である。

【図２】図１に示したブリスターパック用シートを用い
て、ブリスターパックをしたときの斜視図である。

【図３】図２に示したブリスターパックから物品を取り
出すときの状態を示した斜視図である。

【図４】図２に示したブリスターパックの積み重ね状態
を示した側面図である。

【符号の説明】 １ 平坦フィルム ２ 成形フィルム ３ 物品（容器に入れた注射針） ４ 融着面 ５ ミシン目 ２１ 突起 ２２ 成形フィルム２において、窪みの開口
側に位置する面

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 平坦フィルムと成形フィルムとから成
   り、平坦フィルムは厚みが２０〜７０μｍのスチレン系
   樹脂製フィルムであり、成形フィルムは厚みが６０〜２
   ００μｍの範囲内にあって、上記平坦フィルムの厚みに
   等しいか又はこれよりも大きい厚みを持っており、ポリ
   アミド、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル樹
   脂、又はオレフィン系樹脂で作られ、物品を収容する窪
   みが多数分離して形成されたものであることを特徴とす
   る、ブリスターパック用シート。
2. 【請求項２】 平坦フィルムの一面に融着性薄膜が形成
   されていることを特徴とする、請求項１に記載のブリス
   ターパック用シート。
3. 【請求項３】 成形フィルムにおける窪みの開口側に位
   置する平面部分に融着性薄膜が形成されていることを特
   徴とする、請求項１又は２に記載のブリスターパック用
   シート。
4. 【請求項４】 成形フィルムを異なる樹脂で作った複数
   のフィルムの貼り合わせ体で構成し、複数のフィルムの
   １つに湿気又は酸素の透過度の小さいバリヤ性樹脂から
   なるものを用いて、バリヤ性を付与したことを特徴とす
   る、請求項１−３の何れかに記載のブリスターパック用
   シート。